異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法
【課題】異形コ字状部の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、閉断面を有する成形体を1枚の素材から1部品のまま製造すること。
【解決手段】底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、芯金装置7を用いて側面部の端部を折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、折り曲げ端部同士を接合して閉断面形状を形成する接合工程とを有する。芯金装置7は、側面当接面712、713と端部当接面717との境界角部にエッジ部715を設けてなる芯金本体71と、折り曲げ端部形成後に左右一対の側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部73とを有している。
【解決手段】底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、芯金装置7を用いて側面部の端部を折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、折り曲げ端部同士を接合して閉断面形状を形成する接合工程とを有する。芯金装置7は、側面当接面712、713と端部当接面717との境界角部にエッジ部715を設けてなる芯金本体71と、折り曲げ端部形成後に左右一対の側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部73とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有し、かつ、この異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品として、断面長方形状を有し、その長辺部に相当する面(以下、適宜、長辺部面という)の2面は略平坦な面となっているが、その短辺部に相当する面(以下、適宜、短辺部面という)がシートバックの形状に沿って湾曲した形状を有している部品がある。一方の短辺部面は長手方向に沿って外側に凸状となるように湾曲し、他方の短辺部面は長手方向に沿って内側に凸状となる(内方に窪む)ように湾曲している。
【0003】
このような特殊な形状の部材は、ほぼ平坦な長辺部面における湾曲した両側端部から短辺部面を立設させた部品を2つ成形し、これらの短辺部面を互いに溶接して断面長方形状とすることによって製造していた。なお、曲線状の稜線を有するフランジ製品等のこれまでの成形方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものがある。
【0004】
【特許文献1】特公平6−61581号公報
【特許文献2】特開2002−1445号公報
【特許文献3】特許第2855492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの部品を作ってから接合することによって上記特殊な形状の成形体を製造する方法では、製造工程数が多く、また、材料歩留まりも良くない。さらに、完成品においても2箇所の溶接を行っているので強度上不利であり、溶接部の重量増加によって軽量化を図ることも困難である。
このような問題を解決するには、1枚の素材から最後まで1部品のままで製造でき、かつ、溶接すべき部分を少なくできる方法を見出す必要がある。
【0006】
1枚の素材から製造する方法を確立するためには、上記短辺部面を底面とした断面コ字状の成形体を作製し、その後、コ字状の開口端の部分(左右一対の側面部における底面部と反対側の端部)を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成し、これらを接合することによって閉断面を形成する必要がある。
【0007】
上記折り曲げ端部の曲げ加工を精度よく行うには、芯金を当てた状態でそれに沿って曲げ加工することが有効である。しかしながら、上記のごとく、コ字状部の底面が内方に湾曲している場合には、その形状に沿った芯金を用いると曲げ加工後に閉断面の開口部から芯金を引き抜くことができない。そのため、単純な芯金を用いた手法は採用できない。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたもので、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、底面部と該底面部の両側から立設した左右一対の側面部とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、
芯金装置を用いて、左右一対の上記側面部における上記底面部と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、
上記折り曲げ端部同士を接合して、閉断面形状を形成する接合工程とを有し、
上記端部曲げ工程で用いる上記芯金装置は、上記成形体の上記底面部に当接する底当接面と、上記側面部に当接する左右一対の側面当接面と、上記折り曲げ端部に当接する端部当接面とを有すると共に、上記側面当接面と上記端部当接面との境界角部にエッジ部を設けてなる芯金本体と、
上記折り曲げ端部形成後に左右一対の上記側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部とを有しており、
該側面部拡開補助機構部は、上記芯金本体の左右一対の上記側面当接面からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラと、該ローラを回転可能に支持すると共に該ローラが互いに離れて上記側面当接面から突出するよう付勢するローラ支持部とよりなり、
上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させ、
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与し、該側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させ、
次いで、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成し、
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放することによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記側面部を互いに離れる方向に拡開させて、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設け、
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出すことを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、上記異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、上記端部曲げ工程と、上記接合工程とを有している。そして、ここで注目すべき点は、上記端部曲げ工程で用いる芯金装置として、上記の特殊な構成のものを用いることである。
すなわち、上記芯金装置は、上記芯金本体と、これに組み込まれた側面部拡開補助機構部とを有している。上記側面部拡開補助機構部は、左右一対の上記ローラとこれらを回転可能に支持すると共に付勢するローラ支持部とよりなる。
【0011】
そして、上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させる。これにより、上記芯金本体の上記エッジ部は、上記折り曲げ端部の曲げ起点に対応する位置に配置される。なお、このとき、上記異形コ字状部の左右一対の側面部は、芯金装置の上記ローラによって互いに離れる方向に拡開されている。
【0012】
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与する。押圧力の付与は、例えば、押圧治具等を油圧等のアクチュエータによって押し当てることによって容易に実施できる。そして、この押圧力の付与により、側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させる。
【0013】
次いで、上記側面部への押圧力を付与したまま、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成する。曲げ加工は、曲げ治具を上記側面部に押し当てることによって容易に行うことができる。
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放する。これによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記ローラが芯金本体から突出し、上記側面部を互いに離れる方向に拡開させる。そして、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設ける。これにより、芯金装置を成形体の内部から上記折り曲げ端部の間を通過して抜き出す経路が確保される。
【0014】
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出す。このとき、上記ローラが回転可能であるので、両者の相対移動が補佐され、スムーズな抜き出し作業を行うことができる。
芯金装置を抜き出した後は、成形体の上記側面部が元の位置に復帰するので、上記接合工程を容易に行うことができ、異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体を完成させることができる。
【0015】
このように、本発明では、上記ローラ及びローラ支持部を芯金本体に組み込んだ特殊な芯金装置を用いることによって、異形コ字状部の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、ブランク材を示す平面図。
【図2】実施例1における、(a)予備加工ダイスと予備加工パンチとの間にブランク材を配置した状態、(b)予備加工ダイスと予備加工パンチとによってブランク材を挟持して曲げ加工を施した直後の状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、中間成形の斜視図。
【図4】実施例1における、パンチ、クッション及びダイスを備えた金型の構成を示す説明図。
【図5】実施例1における、(a)パンチとクッションとの間にブランク材を挟持した状態、(b)底面部全体及び側面部の一部のみをダイス刃部間を通過させた状態を示す説明図。
【図6】実施例1における、異形コ字状部を立てた状態の予備成形体を示す斜視図。
【図7】実施例1における、異形コ字状部を寝かせた状態の予備成形体を示す斜視図。
【図8】実施例1における、予備成形体の断面図(図6のA−A線矢視断面図)。
【図9】実施例1における、芯金装置の構成を示す説明図。
【図10】実施例1における、芯金装置の側面部拡開補助機構部を示す説明図。
【図11】実施例1における、芯金装置を異形コ字状部内に挿入して、折り曲げ端部を曲げ成形した状態を示す説明図。
【図12】実施例1における、ローラ支持部の付勢力によって側面部を拡開させて折り曲げ端部の間に間隙を設けた状態を示す説明図。
【図13】実施例1における、ローラを回転させながら芯金装置と成形体とを相対移動させている初期段階を示す説明図。
【図14】実施例1における、芯金装置と成形体との相対移動中に折り曲げ端部先端がローラの凹部に位置している状態を示す説明図。
【図15】実施例1における、芯金装置と成形体との相対移動中に折り曲げ端部先端がローラを乗り越えた状態を示す説明図。
【図16】実施例1における、成形体の閉断面内部から芯金装置が抜けきった状態を示す説明図。
【図17】実施例1における、成形体を示す斜視図。
【図18】実施例1における、成形体の断面図(図17のB−B線矢視断面図)。
【図19】参考例1における、芯金装置の構成を示す説明図。
【図20】参考例1における、端部曲げ工程を実施している状態を示す説明図。
【図21】参考例1における、成形体の側面部を底面部と略直角となる状態に曲げる曲げ加工を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法においては、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラは、その外周面に凹部と凸部を設けた歯形形状を有しており、上記折り曲げ端部形成後の上記芯金装置と上記成形体との相対移動の際に、上記折り曲げ端部の先端が上記ローラの上記凹部に位置した状態で上記ローラが回転するよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ローラの上記凹部に上記折り曲げ端部の先端が入り込むことにより、上記間隙を抜ける際に必要な間隙の幅を最小限に抑えることができ、芯金装置の抜き出し作業をよりスムーズにすることができる。
【0018】
なお、上記ローラの回転は、自由回転が可能となっていればよいが、積極的に駆動するようにしてもかまわない。
【0019】
また、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラ支持部は、パイプ状の外軸部と、該外軸部の内部において同軸上に配された内軸部とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバーと、
上記外軸部の他端に固定され、一方の上記ローラを回転可能に支持する第1アームと、
上記内軸部の他端に固定され、他方の上記ローラを回転可能に支持する第2アームとを有してなり、
上記第1アームに設けた上記ローラの回転中心である第1支点と、上記第2アームに設けた上記ローラの回転中心である第2支点とをそれぞれ上記トーションバーの軸心と結んだ線の内角を変化させる際に上記トーションバーのねじり力が作用するよう構成されており、
上記トーションバーのねじり力は、上記端部曲げ工程における上記折り曲げ端部形成後に上記側面部への上記押圧力を解放した際に、上記ローラを介して上記側面部を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の上記折り曲げ端部の間の上記間隙が、上記芯金本体の一対の上記エッジ部の間隔よりも大きくできる力に調整されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記トーションバーの採用によって、別途バネ等を配設することなくローラに対して容易に付勢力を付与することができる。また、トーションバーの採用により、側面部拡開補助機構部全体がコンパクトとなり、上記芯金本体内部への組み込みが容易となる。
【0020】
また、上記芯金本体には、上記側面部拡開補助機構部が2組以上内蔵されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、複数の側面部拡開補助機構部によって安定した側面部の拡開作業を行うことができる。
【0021】
また、上記芯金本体の長手方向両端には、上記異形コ字状部の内部に挿入した際にその長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロックが設けられていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記スライドブロックの存在によって、芯金装置と成形体の相対的な位置関係を安定的に保持しながら引き抜き作業を行うことができる。
【0022】
また、上記エッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は90°未満であることが好ましい(請求項6)。
すなわち、上記折り曲げ端部を曲げ加工した後に、いわゆるスプリングバックによって曲げ角度が緩くなった後に略90°に近づけることができる。具体的には、成形体の材質によって左右されるが、例えばいわゆる100kg級ハイテン材の場合には、スプリングバックの角度を6°〜10°と想定して、上記芯金本体におけるエッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は、80°〜94°の範囲が好ましい。
【0023】
また、上記準備工程において準備する上記異形コ字状部を有する成形体を作製するに当たっては、
平板状のブランク材を準備し、
該ブランク材を上記底面部と上記側面部との間の直線状の境界線を起点に曲げ加工して、上記底面部が平坦面であると共にその両側の上記側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である中間成形体を形成し、
上記底面部における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面を有するパンチと、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面を有するクッションと、上記底面部の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部を有するダイスとを備えた金型を用いて、上記中間成形体の内部に配置した上記パンチの上記凹状挟持面とこれに対向配置させた上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させ、
その後、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入し、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で上記底面部と上記ダイスとの相対移動を停止することにより、上記側面部のうち上記ダイス刃部間を通過していない部分の一部が外方に膨らんだ膨出部となると共に、その周囲が上記底面部に対して略直角に立設した平面状側面部となるように上記異形コ字状部を形成することが好ましい(請求項7)。
【0024】
この場合には、上記のごとく、平板状のブランク材を用いて、一旦上記中間成形体を形成する。この中間成形体は、底面部が平坦面であると共にその両側の側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である形状を有するものなので、単純な曲げ成形によって容易に得ることができる。
【0025】
次に、上記中間成形体に対して上記金型により加工を加える。まず、上記パンチの上記凹状挟持面と上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させる。この底面部の変形を実行すると、その両側の側面部に対し、底面部から離れるほど長手方向に強い引張応力が付与される状態となる。そのため、側面部同士の間が開くように変形すると共に側面部の一部が膨らんで平坦でない状態となる。なお、この時点の変形は、弾性変形の割合も大きいので、上記パンチと上記クッションの挟持状態を解除すると、もとの中間成形体の形状に近づく。そのため、次の工程は、上記パンチと上記クッションとの挟持状態を維持したまま行う。
【0026】
具体的には、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入する。すなわち、上記底面部と上記側面部との間の境界線の部分は、すべて上記ダイス刃部間を通過させる。これにより、上記底面部と上記側面部との間の角部は略直角となる。
そして、上記中間成形体のダイスに対する相対的な前進は、上記底面部全体がダイス刃部を通過した後、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で停止させる。そして、側面部全体がダイス刃部を通過することを避ける。これにより、底面部とその両側から立設した左右一対の側面部とが断面コ字状形状を呈し、かつ、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を得ることができる。
【0027】
このようにして得られた成形体の上記異形コ字状部は、必然的に、その側面部全体が平坦な面ではなく、一部が外方に膨らんだ上記膨出部となる。この膨出部の存在により、側面部の剛性を高めることができる。一方、このような膨出部の形状が許容されない製品には、上記製造方法を適用することはできない。
【0028】
また、上記側面部に形成された上記膨出部は、その周囲の平面状側面部の中に非常に滑らかな自然な形状変化で形成され、不要なしわ等の外観特性を低下させるような特徴は生じない。むしろ、上記膨出部を積極的に設けた形状と見ることもでき、斬新な意匠性さえ醸し出す優れた外観特性が得られる。
一方、上記中間成形体をダイス刃部間を通過させる際に、側面部の全体を通過させた場合には、全体形状が略平坦状になった後、ダイス間から取り出した後に所謂スプリングバック現象によって両側面部間が底面部と離れるほど広がるという現象が生じてしまう。さらに、側面部にしわ状の外観不良が残ってしまい、製品化することが困難となる。
【0029】
このように、上記の方法によって上記異形コ字状部を有する成形体を作製することにより、上記のごとく底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を外観特性に優れた状態で容易に製造することができ、かつ、1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。そして、得られた上記異形コ字状部が、底面部とその両側の側面部とを一体的に連ねたものとなるので、少なくともその底面部においては溶接による接合を行う必要がない。それ故、その分、軽量化を図ることができる。さらには、上記側面部の剛性向上と溶接部の不要化による強度向上効果によって、素材自体の板厚を減少させることもでき、これによる軽量化効果も得ることができる。
【0030】
また、上記ダイスの上記ダイス刃部は平行な2本の直線上に設けられていることが好ましい。この場合には、湾曲した上記底部の長手方向両端部近傍における側面部は比較的深い位置までダイス刃部を通過させ、中央部近傍は比較的浅い位置までだけダイス刃部を通過させるように成形することができる。これにより、上記膨出部の形成位置を中央よりに設定することが可能となる。
なお、上記ダイスのダイス刃部を曲線状に設けて上記膨出部の位置や形を調整することも可能である。
【0031】
また、上記中間成形体は、上記底面部と上記側面部とのなす角度が135°±10°の範囲にあることが好ましい。この場合には、上記パンチとクッションによって上記中間成形体の底面部を挟持した際の変形を容易化することができる。一方、上記底面部と上記側面部とのなす角度が125°未満の場合及び145°を超えてもその後の成形は可能であるが、上記の挟持の際の変形が安定化しないおそれがある。
【0032】
また、上記中間成形体を形成するための上記曲げ加工は、該中間成形体における上記底面部と上記側面部の曲げ形状に対応した谷状成形面を有する予備加工ダイスと、上記曲げ形状に対応した山状成形面を有する予備加工パンチとを用いてこれらの間に上記ブランク材を挟持することによって行うことが好ましい。この場合には、上記予備加工ダイスと予備加工パンチによってブランク材を挟持するだけで容易に中間成形体を成形することができる。
【0033】
また、上記成形体は、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品であることが好ましい(請求項8)。上記成形体は、高強度化及び軽量化を図ることができ、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品として最適である。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法につき、図を用いて説明する。
本例で製造する成形体1は、図17に示すごとく、底面部21と該底面部21の両側から立設した左右一対の側面部22、23とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有する。さらに、成形体1は、左右一対の上記側面部22、23における底面部21と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げた折り曲げ端部227、237同士を接合することにより、上記異形コ字状部20を含む閉断面形状を形成してなる。
また、図17、図18に示すごとく、成形体1の側面部22、23は、外方に膨らんだ膨出部225、235を有すると共に、該膨出部225、235の周囲には上記底面部21に対して略直角に立設した平面状側面部226、236を有する。
【0035】
上記成形体1を製造するに当たっては、上記異形コ字状部20を有する成形体(適宜、この状態を予備成形体16という)を準備する準備工程と、上記折り曲げ端部227、237を形成する端部曲げ工程と、上記折り曲げ端部227、237同士を接合して、上記異形コ字状部20を含む閉断面形状を形成する接合工程とを有する。
これらの工程について、順を追って説明する。
【0036】
準備工程を実施するに当たっては、まず、図1に示すごとく、平板状の鋼板よりなるブランク材10を準備する。本例では、側面部22、23の幅寸法に対応させ、ブランク材10の幅寸法を変化させ、概略台形状の形状とした。また、ブランク材10には、予め軽量化のための貫通穴19を複数設けた。
次に、図2、図3に示すごとく、このブランク材10を用いて、中間成形体15を形成する。
【0037】
本例では、図2に示すごとく、一対の予備成形金型4を用いて曲げ加工を実施する。予備成形金型4は、得ようとする中間成形体15(図3)における底面部21と上記側面部22、23の曲げ形状に対応した谷状成形面410を有する予備加工ダイス41と、上記曲げ形状に対応した山状成形面420を有する予備加工パンチ42とよりなる。
【0038】
より具体的には、予備加工ダイス41は、平坦な上面411から下方に窪んだ上記谷状成形面410を有し、谷状成形面410は、平坦な受面412を上面に有するクッション部413を底部に備え、その左右に、上方に近づくほど両者の間の空間距離が広くなるように傾斜した一対のテーパダイス面414を有している。上記クッション部413は、予備加工パンチ42からの押圧力に応じて後退可能に配設されている。
【0039】
予備加工パンチ42の山状成形面420は、平坦な先端面421の左右に、上方に近づくほど両者の間の肉厚寸法が広くなるように傾斜した一対のテーパパンチ面424を有している。先端面421とテーパパンチ面424との間の一対の角部425は、それぞれ得ようとする中間成形体15及び成形体1の底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図1、図3)に対応するよう設けてある。また、上記予備加工ダイス41のテーパダイス面414とテーパパンチ面424とは、得ようとする中間成形体15の側面部21、22の形成角度に対応させて傾斜させてある。本例では、傾斜角αは予備加工パンチ42の相対的な移動方向に対して45°となるように、つまり、底面部21と側面部22、23との間の角度(傾斜角α)が135°となるよう設定した。
【0040】
このような予備成形ダイス4を用い、まずは、図2(a)に示すごとく、予備加工ダイス41の上面411にブランク材10を載置する。このとき、底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図1、図3)となる位置を、予備加工パンチ42の上記角部425に対面する位置に合わせる。
【0041】
次に、図2(b)に示すごとく、予備加工パンチ42を相対的に予備加工ダイス41に向けて前進させ、山状成形面420を谷状成形面410内に挿入する。これにより、ブランク材10は、底面部21と側面部22、23との間の直線状の境界線aを起点に曲げ加工される。そして、図3に示すごとく、底面部21が平坦面であると共にその両側の上記側面部22、23との間のなす角度βがいずれも鈍角の略135°である中間成形体15が得られる。
【0042】
次に、図4に示すごとく、上記底面部21における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面510を有するパンチ51と、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面520を有するクッション52と、上記底面部21の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部530を有するダイス53とを備えた金型5を用いた加工を行う。
【0043】
上記パンチ51は、厚み寸法が得ようとする成形体1の側面部21、22の内寸法に対応した厚みを有する挿入部511を有し、その先端に上記凹状挟持面510を設けてある。そして、挿入部511の側面512と凹状挟持面510とのなす角度γは直角(90°)とした。
【0044】
上記クッション52は、上記パンチ51の挿入部511の上記凹状挟持面510に対向する上端面に、上記凸状挟持面520を有している。
上記ダイス53は、左右一対の上記ダイス刃部530を備え、その間に上記クッション52が配置されている。ダイス刃部530は、その断面形状が円弧状形状となるように設定してある。また、ダイス53の上面531を平坦面とすることによって、ダイス刃部530の長手方向に沿った形状を2本の平行な直線上に設けた。
そして、クッション52は、初期状態において凸状挟持面520をダイス53の上方に突出させた状態で昇降可能に配置されている。
【0045】
上記金型5を用い、図5(a)に示すごとく、上記中間成形体15の内部に配置した上記パンチ51の凹状挟持面510とこれに対向配置させたクッション52の凸状挟持面520によって底面部21を挟持して該底面部21を凹状曲面に変形させる。
この底面部21の変形を実行すると、その両側の側面部22、23に対し、底面部21から離れるほど長手方向に強い引張応力が付与される状態となる。そのため、同図に示すごとく、側面部22、23同士の間が開くように変形すると共に側面部22、23の一部(b部)が膨らんで平坦でない状態となる。なお、この時点の変形は、弾性変形の割合も大きいので、上記パンチ51とクッション52の挟持状態を解除すると、もとの中間成形体15の形状に近づく。そのため、次の工程は、パンチ51とクッション52との挟持状態を維持したまま行う。
【0046】
すなわち、図5(b)に示すごとく、パンチ51とクッション52とによる挟持状態を維持したまま底面部21全体を先頭にしてダイス刃部530間に挿入する。そして、底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図3)の部分は、すべてダイス刃部530間を通過させる。これにより、底面部21と側面部22、23との間の角部は略直角となる。
【0047】
また、同図に示すごとく、中間成形体15のダイス53に対する相対的な前進は、底面部21全体がダイス刃部530を通過した後、側面部22、23の一部のみがダイス刃部530を通過した時点で停止させ、側面部22、23全体がダイス刃部530を通過することを避ける。これにより、図6〜図8に示すごとく、底面部21とその両側から立設した左右一対の側面部22、23とが断面コ字状形状を呈し、かつ、底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有する予備成形体16が得られる。得られた予備成形体16の上記異形コ字状部20は、必然的に、その側面部22、23全体が平坦な面ではなく、一部が外方に膨らんだ上記膨出部225、235となる。この膨出部225、235の存在により、側面部全体が平坦な場合よりも、側面部22、23の剛性を高めることができる。
【0048】
また、側面部22、23に形成された上記膨出部225、235は、その周囲の平面状側面部226、236の中に非常に滑らかな自然な形状変化で形成され、不要なしわ等の外観特性を低下させるような特徴は生じない。むしろ、膨出部225、235を積極的に設けた形状と見ることができ、斬新な意匠性を有する優れた外観特性が得られる。また、予めブランク材10に設けておいた貫通穴19の存在は、成形上まったく問題とならず、上記の優れた外観特性を悪化させることはない。
【0049】
次に、端部曲げ工程を行う。
端部曲げ工程では、図9、図10に示すごとく、特殊な芯金装置7を用いる。芯金装置7は、芯金本体71と、これに組み込まれた側面部拡開補助機構部73とよりなる。
芯金本体71は、図9に示すごとく、成形体1(予備成形体16)の底面部21に当接する底当接面711と、側面部22、23に当接する左右一対の側面当接面712、713と、上記折り曲げ端部227、237に当接する端部当接面717とを有する。さらに、芯金本体71は、側面当接面712、713と端部当接面717との境界角部にエッジ部715を有している。また、エッジ部715を挟む側面当接面712と端部当接面717とがなす角度は、スプリングバックを8°考慮して82°に設定してある。そして、芯金本体71には、二箇所に貫通穴718が設けられており、側面部拡開補助機構部73が二組組み込まれている。
また、芯金本体71の長手方向両端には、異形コ字状部20の内部に挿入した際に長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロック719が設けられている。
【0050】
側面部拡開補助機構部73は、図10に示すごとく、芯金本体71の左右一対の上記側面当接面712、713からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラ741、742と、ローラ741、742を自由回転可能に支持すると共にローラ741、742が互いに離れて側面当接面712、713から突出するよう付勢するローラ支持部76とよりなる。
【0051】
側面部拡開補助機構部73におけるローラ741、742は、その外周面に凹部751と凸部752を設けた歯形形状を有している。
ローラ支持部76は、パイプ状の外軸部761と、外軸部761の内部において同軸上に配された内軸部762とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバー760を有している。外軸部761の他端には、一方のローラ741を回転可能に支持する第1アーム763が固定されている。内軸部762の他端には、他方のローラ742を回転可能に支持する第2アーム764が固定されている。
【0052】
トーションバー76は、第1アーム763に設けたローラ741の回転中心である第1支点P1と、第2アーム764に設けたローラ742の回転中心である第2支点P2とをそれぞれトーションバー76の軸心Cと結んだ線の内角θ(図12参照)を変化させる際に、当該トーションバー76のねじり力が作用するよう構成されている。
また、トーションバー76の一端側には、固定ブロック769が設けられている。この固定ブロック769を上記芯金本体71の内部に埋め込むことにより、側面部拡開補助機構部73全体を芯金本体71に強固に固定できるように構成されている。
【0053】
トーションバー760のねじり力は、後述するように、折り曲げ端部227、237形成後に側面部22、23への押圧力Fを解放した際に、ローラ741、742を介して側面部22、23を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の折り曲げ端部227、237の間の間隙D(図12)が、芯金本体71の一対の上記エッジ部715の間隔よりも大きくできる力に調整されている。
【0054】
このような芯金装置7を用い、まずは、これを予備成形体16の異形コ字状部20の内部に挿入する。このとき、芯金装置7は、その両端のスライドブロック719を予備成形体16の両端に対面させてガイドすることにより、芯金装置7と予備成形体16との相対的な位置関係を安定的に保持しながら挿入することができる。そして、芯金本体71の底当接面711を底面部21に当接させる。これにより、芯金本体71のエッジ部715は、折り曲げ端部227、237の曲げ起点に対応する位置に配置される。なお、このとき、異形コ字状部20の左右一対の側面部22、23は、当初略平行な状態に配置されているものが、芯金装置7のローラ741、742によって互いに離れる方向に拡開される(図示略)。
【0055】
次いで、図11に示すごとく、左右一対の側面部22、23に外方から押圧力Fを付与する。押圧力の付与は、図示しない押圧治具を油圧アクチュエータによって押し当てることによって実施する。そして、この押圧力Fの付与により、側面部22、23を芯金本体71の側面当接面712、713に押し当てると共にローラ741、742を側面当接面712、713の内部に没入させる。
【0056】
次いで、同図に示すごとく、側面部22、23への押圧力を付与したまま、エッジ部715に沿って側面部22、23の端部を曲げ加工して左右一対の折り曲げ端部227、237を形成する。曲げ加工は、曲げ治具(図示略)を側面部22、23に押し当てることによって容易に行うことができる。
【0057】
次いで、図12に示すごとく、側面部22、23への押圧力Fを解放する。これによって、ローラ支持部76の付勢力によってローラ741、742が芯金本体71から突出し、側面部22、23を互いに離れる方向に拡開させる。そして、一対の折り曲げ端部227、237の間に間隙Dを設ける。これにより、芯金装置7を成形体1の内部から折り曲げ端部227、237の間を通過して抜き出す経路が確保される。
【0058】
次いで、図13〜図16に示すごとく、ローラ741、742を回転させながら芯金装置7と成形体1とを相対移動させ、間隙Dから芯金装置7を抜き出す。このとき、ローラ741、742が回転可能であるので、両者の相対移動が補佐され、スムーズな抜き出し作業を行うことができる。
【0059】
特に、上記ローラ741、742は、上述したごとく、その外周面に凹部751と凸部752を設けた歯形形状を有している。そのため、芯金装置7と成形体1とを相対移動させる間に、図14に示すごとく、折り曲げ端部227、237の先端が上記凹部751に入り込んだ状態となる。そのため、折り曲げ端部227、237の間隔をローラ741、742の最大外径の位置よりは小さくすることができ、よりスムーズな相対移動を実現することができる。
【0060】
また、芯金装置7の両端のスライドブロック719が成形体1の両端に対面してガイドするので、芯金装置7と成形体1との相対的な位置関係を安定的に保持しながら抜き出し作業を実施することが可能である。
【0061】
図16に示すごとく、芯金装置7を内部から抜き出した後は、左右一対の側面部22、23がもとの略平行な状態まで戻ろうとする。
そして、図17に示すごとく、側面部22、23が略平行となると共に、折り曲げ端部227、237の先端が重なり合った状態となる。なお、左右一対の側面部22、23が略平行な状態まで戻らずに、折り曲げ端部227、237の先端が平板状態のままとなることもある。この場合には、側面部22、23を押圧することによって、容易に略平行な状態に戻すことができる。
【0062】
その後、本例では、重なり合った折り曲げ端部227、237を溶接により接合する。
これにより、同図に示すごとく、底面部21と該底面部21の両側から立設した左右一対の側面部22、23とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有し、かつ、左右一対の上記側面部22、23における底面部21と反対側の折り曲げ端部227、237同士を接合することにより、上記異形コ字状部20を含む略長方形の閉断面形状を有する成形体1が得られる。
【0063】
このように、本例の製造方法を用いれば、異形コ字状部20を含む閉断面形状の成形体1を外観特性に優れた状態で容易に製造することができる。特に、ローラ741、742及びローラ支持部76を芯金本体7に組み込んだ特殊な芯金装置を用いることによって、異形コ字状部20の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体1を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。
【0064】
また、得られた成形体1の異形コ字状部20が、底面部21とその両側の側面部22、23とを一体的に連ねたものとなるので、少なくとも底面部21側においては溶接による接合を行う必要がない。それ故、その分、軽量化を図ることができる。さらには、上記側面部22、23の剛性向上と溶接部の不要化による強度向上効果によって、素材自体の板厚を減少させることもでき、これによる軽量化効果も得ることができる。
【0065】
また、本例では、準備した予備成形体16は、側面部22、23に膨出部225、235を有しており、最終的な閉断面形状の成形体1においても膨出部225、235がそのまま残っている。この膨出部225、235の存在により、成形体1は、側面部22、23の剛性に優れ強度的に優れたものとなり、かつ、外観特性も斬新な意匠性を醸し出す優れたものとなる。
【0066】
(参考例1)
本発明と同様の課題を解決するための参考例を示す。
本例は、上述した実施例1における異形コ字状部20を有する成形体(予備成形体)16を用い、その後の端部曲げ工程を実施例1と異なる方法で行った例である。
【0067】
すなわち、本例では、図19に示すごとく、芯金装置8として、実施例1における側面部拡開補助機構部73を設けていない芯金本体81を備えたものを用いる。芯金本体81は、側面部拡開補助機構部73を設けていない以外は、上述した芯金本体71と同様であり、エッジ部715等を備えている。
【0068】
上記成形体16は、図20(a)に示すごとく、端部曲げ工程を実施する前に、その側面部22、23を、底面部21から離れるほど拡がるオープン形状に成形しておく。拡がり間隔は、後に形成される折り曲げ端部227、237が存在する状態において、その間隔が上記芯金本体81の厚み寸法よりも大きくなる寸法に設定しておく。
【0069】
そして、図20(a)(b)に示すごとく、芯金本体81を成形体16の内部に位置させ、側面部22、23を図示しない押圧手段によって押圧し、芯金本体81に密着させる。次いで、図20(c)に示すごとく、エッジ部715に沿って曲げ加工を実施し、折り曲げ端部227、237を成形する。
次に、図20(d)に示すごとく、側面部22、23への押圧力を解放することにより、側面部22、23は元のオープン形状に戻る。これにより、折り曲げ端部227、237の間隔は芯金本体81の厚み寸法以上に拡がる。そのため、容易に芯金本体81を得られた成形体1から抜き出すことができる。
【0070】
その後、図21に示すごとく、接合工程を行う前に、芯金装置を挿入していない状態で、成形体1の側面部22、23の根本を内方に向けてパンチ85によって押圧することにより曲げ加工を行い、側面部22、23と底面部21との角度を略直角にする。その後、実施例1と同様の接合工程を行う。
このように、本参考例では、曲げ加工を行うことを前提に、シンプルな芯金装置8を用いた端部曲げ工程を実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 成形体
16 予備成形体
20 異形コ字状部
21 底面部
22、23 側面部
225、235 膨出部
226、236 平面状側面部
227、237 折り曲げ端部
4 予備成形金型
5 金型
51 パンチ
52 クッション
53 ダイス
7 芯金装置
71 芯金本体
73 側面部拡開補助機構部
741、742 ローラ
751 凹部
752 凸部
76 ローラ支持部
760 トーションバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有し、かつ、この異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品として、断面長方形状を有し、その長辺部に相当する面(以下、適宜、長辺部面という)の2面は略平坦な面となっているが、その短辺部に相当する面(以下、適宜、短辺部面という)がシートバックの形状に沿って湾曲した形状を有している部品がある。一方の短辺部面は長手方向に沿って外側に凸状となるように湾曲し、他方の短辺部面は長手方向に沿って内側に凸状となる(内方に窪む)ように湾曲している。
【0003】
このような特殊な形状の部材は、ほぼ平坦な長辺部面における湾曲した両側端部から短辺部面を立設させた部品を2つ成形し、これらの短辺部面を互いに溶接して断面長方形状とすることによって製造していた。なお、曲線状の稜線を有するフランジ製品等のこれまでの成形方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものがある。
【0004】
【特許文献1】特公平6−61581号公報
【特許文献2】特開2002−1445号公報
【特許文献3】特許第2855492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの部品を作ってから接合することによって上記特殊な形状の成形体を製造する方法では、製造工程数が多く、また、材料歩留まりも良くない。さらに、完成品においても2箇所の溶接を行っているので強度上不利であり、溶接部の重量増加によって軽量化を図ることも困難である。
このような問題を解決するには、1枚の素材から最後まで1部品のままで製造でき、かつ、溶接すべき部分を少なくできる方法を見出す必要がある。
【0006】
1枚の素材から製造する方法を確立するためには、上記短辺部面を底面とした断面コ字状の成形体を作製し、その後、コ字状の開口端の部分(左右一対の側面部における底面部と反対側の端部)を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成し、これらを接合することによって閉断面を形成する必要がある。
【0007】
上記折り曲げ端部の曲げ加工を精度よく行うには、芯金を当てた状態でそれに沿って曲げ加工することが有効である。しかしながら、上記のごとく、コ字状部の底面が内方に湾曲している場合には、その形状に沿った芯金を用いると曲げ加工後に閉断面の開口部から芯金を引き抜くことができない。そのため、単純な芯金を用いた手法は採用できない。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたもので、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、底面部と該底面部の両側から立設した左右一対の側面部とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、
芯金装置を用いて、左右一対の上記側面部における上記底面部と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、
上記折り曲げ端部同士を接合して、閉断面形状を形成する接合工程とを有し、
上記端部曲げ工程で用いる上記芯金装置は、上記成形体の上記底面部に当接する底当接面と、上記側面部に当接する左右一対の側面当接面と、上記折り曲げ端部に当接する端部当接面とを有すると共に、上記側面当接面と上記端部当接面との境界角部にエッジ部を設けてなる芯金本体と、
上記折り曲げ端部形成後に左右一対の上記側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部とを有しており、
該側面部拡開補助機構部は、上記芯金本体の左右一対の上記側面当接面からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラと、該ローラを回転可能に支持すると共に該ローラが互いに離れて上記側面当接面から突出するよう付勢するローラ支持部とよりなり、
上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させ、
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与し、該側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させ、
次いで、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成し、
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放することによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記側面部を互いに離れる方向に拡開させて、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設け、
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出すことを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、上記異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、上記端部曲げ工程と、上記接合工程とを有している。そして、ここで注目すべき点は、上記端部曲げ工程で用いる芯金装置として、上記の特殊な構成のものを用いることである。
すなわち、上記芯金装置は、上記芯金本体と、これに組み込まれた側面部拡開補助機構部とを有している。上記側面部拡開補助機構部は、左右一対の上記ローラとこれらを回転可能に支持すると共に付勢するローラ支持部とよりなる。
【0011】
そして、上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させる。これにより、上記芯金本体の上記エッジ部は、上記折り曲げ端部の曲げ起点に対応する位置に配置される。なお、このとき、上記異形コ字状部の左右一対の側面部は、芯金装置の上記ローラによって互いに離れる方向に拡開されている。
【0012】
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与する。押圧力の付与は、例えば、押圧治具等を油圧等のアクチュエータによって押し当てることによって容易に実施できる。そして、この押圧力の付与により、側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させる。
【0013】
次いで、上記側面部への押圧力を付与したまま、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成する。曲げ加工は、曲げ治具を上記側面部に押し当てることによって容易に行うことができる。
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放する。これによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記ローラが芯金本体から突出し、上記側面部を互いに離れる方向に拡開させる。そして、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設ける。これにより、芯金装置を成形体の内部から上記折り曲げ端部の間を通過して抜き出す経路が確保される。
【0014】
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出す。このとき、上記ローラが回転可能であるので、両者の相対移動が補佐され、スムーズな抜き出し作業を行うことができる。
芯金装置を抜き出した後は、成形体の上記側面部が元の位置に復帰するので、上記接合工程を容易に行うことができ、異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体を完成させることができる。
【0015】
このように、本発明では、上記ローラ及びローラ支持部を芯金本体に組み込んだ特殊な芯金装置を用いることによって、異形コ字状部の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、ブランク材を示す平面図。
【図2】実施例1における、(a)予備加工ダイスと予備加工パンチとの間にブランク材を配置した状態、(b)予備加工ダイスと予備加工パンチとによってブランク材を挟持して曲げ加工を施した直後の状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、中間成形の斜視図。
【図4】実施例1における、パンチ、クッション及びダイスを備えた金型の構成を示す説明図。
【図5】実施例1における、(a)パンチとクッションとの間にブランク材を挟持した状態、(b)底面部全体及び側面部の一部のみをダイス刃部間を通過させた状態を示す説明図。
【図6】実施例1における、異形コ字状部を立てた状態の予備成形体を示す斜視図。
【図7】実施例1における、異形コ字状部を寝かせた状態の予備成形体を示す斜視図。
【図8】実施例1における、予備成形体の断面図(図6のA−A線矢視断面図)。
【図9】実施例1における、芯金装置の構成を示す説明図。
【図10】実施例1における、芯金装置の側面部拡開補助機構部を示す説明図。
【図11】実施例1における、芯金装置を異形コ字状部内に挿入して、折り曲げ端部を曲げ成形した状態を示す説明図。
【図12】実施例1における、ローラ支持部の付勢力によって側面部を拡開させて折り曲げ端部の間に間隙を設けた状態を示す説明図。
【図13】実施例1における、ローラを回転させながら芯金装置と成形体とを相対移動させている初期段階を示す説明図。
【図14】実施例1における、芯金装置と成形体との相対移動中に折り曲げ端部先端がローラの凹部に位置している状態を示す説明図。
【図15】実施例1における、芯金装置と成形体との相対移動中に折り曲げ端部先端がローラを乗り越えた状態を示す説明図。
【図16】実施例1における、成形体の閉断面内部から芯金装置が抜けきった状態を示す説明図。
【図17】実施例1における、成形体を示す斜視図。
【図18】実施例1における、成形体の断面図(図17のB−B線矢視断面図)。
【図19】参考例1における、芯金装置の構成を示す説明図。
【図20】参考例1における、端部曲げ工程を実施している状態を示す説明図。
【図21】参考例1における、成形体の側面部を底面部と略直角となる状態に曲げる曲げ加工を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法においては、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラは、その外周面に凹部と凸部を設けた歯形形状を有しており、上記折り曲げ端部形成後の上記芯金装置と上記成形体との相対移動の際に、上記折り曲げ端部の先端が上記ローラの上記凹部に位置した状態で上記ローラが回転するよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ローラの上記凹部に上記折り曲げ端部の先端が入り込むことにより、上記間隙を抜ける際に必要な間隙の幅を最小限に抑えることができ、芯金装置の抜き出し作業をよりスムーズにすることができる。
【0018】
なお、上記ローラの回転は、自由回転が可能となっていればよいが、積極的に駆動するようにしてもかまわない。
【0019】
また、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラ支持部は、パイプ状の外軸部と、該外軸部の内部において同軸上に配された内軸部とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバーと、
上記外軸部の他端に固定され、一方の上記ローラを回転可能に支持する第1アームと、
上記内軸部の他端に固定され、他方の上記ローラを回転可能に支持する第2アームとを有してなり、
上記第1アームに設けた上記ローラの回転中心である第1支点と、上記第2アームに設けた上記ローラの回転中心である第2支点とをそれぞれ上記トーションバーの軸心と結んだ線の内角を変化させる際に上記トーションバーのねじり力が作用するよう構成されており、
上記トーションバーのねじり力は、上記端部曲げ工程における上記折り曲げ端部形成後に上記側面部への上記押圧力を解放した際に、上記ローラを介して上記側面部を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の上記折り曲げ端部の間の上記間隙が、上記芯金本体の一対の上記エッジ部の間隔よりも大きくできる力に調整されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記トーションバーの採用によって、別途バネ等を配設することなくローラに対して容易に付勢力を付与することができる。また、トーションバーの採用により、側面部拡開補助機構部全体がコンパクトとなり、上記芯金本体内部への組み込みが容易となる。
【0020】
また、上記芯金本体には、上記側面部拡開補助機構部が2組以上内蔵されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、複数の側面部拡開補助機構部によって安定した側面部の拡開作業を行うことができる。
【0021】
また、上記芯金本体の長手方向両端には、上記異形コ字状部の内部に挿入した際にその長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロックが設けられていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記スライドブロックの存在によって、芯金装置と成形体の相対的な位置関係を安定的に保持しながら引き抜き作業を行うことができる。
【0022】
また、上記エッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は90°未満であることが好ましい(請求項6)。
すなわち、上記折り曲げ端部を曲げ加工した後に、いわゆるスプリングバックによって曲げ角度が緩くなった後に略90°に近づけることができる。具体的には、成形体の材質によって左右されるが、例えばいわゆる100kg級ハイテン材の場合には、スプリングバックの角度を6°〜10°と想定して、上記芯金本体におけるエッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は、80°〜94°の範囲が好ましい。
【0023】
また、上記準備工程において準備する上記異形コ字状部を有する成形体を作製するに当たっては、
平板状のブランク材を準備し、
該ブランク材を上記底面部と上記側面部との間の直線状の境界線を起点に曲げ加工して、上記底面部が平坦面であると共にその両側の上記側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である中間成形体を形成し、
上記底面部における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面を有するパンチと、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面を有するクッションと、上記底面部の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部を有するダイスとを備えた金型を用いて、上記中間成形体の内部に配置した上記パンチの上記凹状挟持面とこれに対向配置させた上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させ、
その後、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入し、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で上記底面部と上記ダイスとの相対移動を停止することにより、上記側面部のうち上記ダイス刃部間を通過していない部分の一部が外方に膨らんだ膨出部となると共に、その周囲が上記底面部に対して略直角に立設した平面状側面部となるように上記異形コ字状部を形成することが好ましい(請求項7)。
【0024】
この場合には、上記のごとく、平板状のブランク材を用いて、一旦上記中間成形体を形成する。この中間成形体は、底面部が平坦面であると共にその両側の側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である形状を有するものなので、単純な曲げ成形によって容易に得ることができる。
【0025】
次に、上記中間成形体に対して上記金型により加工を加える。まず、上記パンチの上記凹状挟持面と上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させる。この底面部の変形を実行すると、その両側の側面部に対し、底面部から離れるほど長手方向に強い引張応力が付与される状態となる。そのため、側面部同士の間が開くように変形すると共に側面部の一部が膨らんで平坦でない状態となる。なお、この時点の変形は、弾性変形の割合も大きいので、上記パンチと上記クッションの挟持状態を解除すると、もとの中間成形体の形状に近づく。そのため、次の工程は、上記パンチと上記クッションとの挟持状態を維持したまま行う。
【0026】
具体的には、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入する。すなわち、上記底面部と上記側面部との間の境界線の部分は、すべて上記ダイス刃部間を通過させる。これにより、上記底面部と上記側面部との間の角部は略直角となる。
そして、上記中間成形体のダイスに対する相対的な前進は、上記底面部全体がダイス刃部を通過した後、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で停止させる。そして、側面部全体がダイス刃部を通過することを避ける。これにより、底面部とその両側から立設した左右一対の側面部とが断面コ字状形状を呈し、かつ、底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を得ることができる。
【0027】
このようにして得られた成形体の上記異形コ字状部は、必然的に、その側面部全体が平坦な面ではなく、一部が外方に膨らんだ上記膨出部となる。この膨出部の存在により、側面部の剛性を高めることができる。一方、このような膨出部の形状が許容されない製品には、上記製造方法を適用することはできない。
【0028】
また、上記側面部に形成された上記膨出部は、その周囲の平面状側面部の中に非常に滑らかな自然な形状変化で形成され、不要なしわ等の外観特性を低下させるような特徴は生じない。むしろ、上記膨出部を積極的に設けた形状と見ることもでき、斬新な意匠性さえ醸し出す優れた外観特性が得られる。
一方、上記中間成形体をダイス刃部間を通過させる際に、側面部の全体を通過させた場合には、全体形状が略平坦状になった後、ダイス間から取り出した後に所謂スプリングバック現象によって両側面部間が底面部と離れるほど広がるという現象が生じてしまう。さらに、側面部にしわ状の外観不良が残ってしまい、製品化することが困難となる。
【0029】
このように、上記の方法によって上記異形コ字状部を有する成形体を作製することにより、上記のごとく底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を外観特性に優れた状態で容易に製造することができ、かつ、1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。そして、得られた上記異形コ字状部が、底面部とその両側の側面部とを一体的に連ねたものとなるので、少なくともその底面部においては溶接による接合を行う必要がない。それ故、その分、軽量化を図ることができる。さらには、上記側面部の剛性向上と溶接部の不要化による強度向上効果によって、素材自体の板厚を減少させることもでき、これによる軽量化効果も得ることができる。
【0030】
また、上記ダイスの上記ダイス刃部は平行な2本の直線上に設けられていることが好ましい。この場合には、湾曲した上記底部の長手方向両端部近傍における側面部は比較的深い位置までダイス刃部を通過させ、中央部近傍は比較的浅い位置までだけダイス刃部を通過させるように成形することができる。これにより、上記膨出部の形成位置を中央よりに設定することが可能となる。
なお、上記ダイスのダイス刃部を曲線状に設けて上記膨出部の位置や形を調整することも可能である。
【0031】
また、上記中間成形体は、上記底面部と上記側面部とのなす角度が135°±10°の範囲にあることが好ましい。この場合には、上記パンチとクッションによって上記中間成形体の底面部を挟持した際の変形を容易化することができる。一方、上記底面部と上記側面部とのなす角度が125°未満の場合及び145°を超えてもその後の成形は可能であるが、上記の挟持の際の変形が安定化しないおそれがある。
【0032】
また、上記中間成形体を形成するための上記曲げ加工は、該中間成形体における上記底面部と上記側面部の曲げ形状に対応した谷状成形面を有する予備加工ダイスと、上記曲げ形状に対応した山状成形面を有する予備加工パンチとを用いてこれらの間に上記ブランク材を挟持することによって行うことが好ましい。この場合には、上記予備加工ダイスと予備加工パンチによってブランク材を挟持するだけで容易に中間成形体を成形することができる。
【0033】
また、上記成形体は、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品であることが好ましい(請求項8)。上記成形体は、高強度化及び軽量化を図ることができ、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品として最適である。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法につき、図を用いて説明する。
本例で製造する成形体1は、図17に示すごとく、底面部21と該底面部21の両側から立設した左右一対の側面部22、23とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有する。さらに、成形体1は、左右一対の上記側面部22、23における底面部21と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げた折り曲げ端部227、237同士を接合することにより、上記異形コ字状部20を含む閉断面形状を形成してなる。
また、図17、図18に示すごとく、成形体1の側面部22、23は、外方に膨らんだ膨出部225、235を有すると共に、該膨出部225、235の周囲には上記底面部21に対して略直角に立設した平面状側面部226、236を有する。
【0035】
上記成形体1を製造するに当たっては、上記異形コ字状部20を有する成形体(適宜、この状態を予備成形体16という)を準備する準備工程と、上記折り曲げ端部227、237を形成する端部曲げ工程と、上記折り曲げ端部227、237同士を接合して、上記異形コ字状部20を含む閉断面形状を形成する接合工程とを有する。
これらの工程について、順を追って説明する。
【0036】
準備工程を実施するに当たっては、まず、図1に示すごとく、平板状の鋼板よりなるブランク材10を準備する。本例では、側面部22、23の幅寸法に対応させ、ブランク材10の幅寸法を変化させ、概略台形状の形状とした。また、ブランク材10には、予め軽量化のための貫通穴19を複数設けた。
次に、図2、図3に示すごとく、このブランク材10を用いて、中間成形体15を形成する。
【0037】
本例では、図2に示すごとく、一対の予備成形金型4を用いて曲げ加工を実施する。予備成形金型4は、得ようとする中間成形体15(図3)における底面部21と上記側面部22、23の曲げ形状に対応した谷状成形面410を有する予備加工ダイス41と、上記曲げ形状に対応した山状成形面420を有する予備加工パンチ42とよりなる。
【0038】
より具体的には、予備加工ダイス41は、平坦な上面411から下方に窪んだ上記谷状成形面410を有し、谷状成形面410は、平坦な受面412を上面に有するクッション部413を底部に備え、その左右に、上方に近づくほど両者の間の空間距離が広くなるように傾斜した一対のテーパダイス面414を有している。上記クッション部413は、予備加工パンチ42からの押圧力に応じて後退可能に配設されている。
【0039】
予備加工パンチ42の山状成形面420は、平坦な先端面421の左右に、上方に近づくほど両者の間の肉厚寸法が広くなるように傾斜した一対のテーパパンチ面424を有している。先端面421とテーパパンチ面424との間の一対の角部425は、それぞれ得ようとする中間成形体15及び成形体1の底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図1、図3)に対応するよう設けてある。また、上記予備加工ダイス41のテーパダイス面414とテーパパンチ面424とは、得ようとする中間成形体15の側面部21、22の形成角度に対応させて傾斜させてある。本例では、傾斜角αは予備加工パンチ42の相対的な移動方向に対して45°となるように、つまり、底面部21と側面部22、23との間の角度(傾斜角α)が135°となるよう設定した。
【0040】
このような予備成形ダイス4を用い、まずは、図2(a)に示すごとく、予備加工ダイス41の上面411にブランク材10を載置する。このとき、底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図1、図3)となる位置を、予備加工パンチ42の上記角部425に対面する位置に合わせる。
【0041】
次に、図2(b)に示すごとく、予備加工パンチ42を相対的に予備加工ダイス41に向けて前進させ、山状成形面420を谷状成形面410内に挿入する。これにより、ブランク材10は、底面部21と側面部22、23との間の直線状の境界線aを起点に曲げ加工される。そして、図3に示すごとく、底面部21が平坦面であると共にその両側の上記側面部22、23との間のなす角度βがいずれも鈍角の略135°である中間成形体15が得られる。
【0042】
次に、図4に示すごとく、上記底面部21における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面510を有するパンチ51と、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面520を有するクッション52と、上記底面部21の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部530を有するダイス53とを備えた金型5を用いた加工を行う。
【0043】
上記パンチ51は、厚み寸法が得ようとする成形体1の側面部21、22の内寸法に対応した厚みを有する挿入部511を有し、その先端に上記凹状挟持面510を設けてある。そして、挿入部511の側面512と凹状挟持面510とのなす角度γは直角(90°)とした。
【0044】
上記クッション52は、上記パンチ51の挿入部511の上記凹状挟持面510に対向する上端面に、上記凸状挟持面520を有している。
上記ダイス53は、左右一対の上記ダイス刃部530を備え、その間に上記クッション52が配置されている。ダイス刃部530は、その断面形状が円弧状形状となるように設定してある。また、ダイス53の上面531を平坦面とすることによって、ダイス刃部530の長手方向に沿った形状を2本の平行な直線上に設けた。
そして、クッション52は、初期状態において凸状挟持面520をダイス53の上方に突出させた状態で昇降可能に配置されている。
【0045】
上記金型5を用い、図5(a)に示すごとく、上記中間成形体15の内部に配置した上記パンチ51の凹状挟持面510とこれに対向配置させたクッション52の凸状挟持面520によって底面部21を挟持して該底面部21を凹状曲面に変形させる。
この底面部21の変形を実行すると、その両側の側面部22、23に対し、底面部21から離れるほど長手方向に強い引張応力が付与される状態となる。そのため、同図に示すごとく、側面部22、23同士の間が開くように変形すると共に側面部22、23の一部(b部)が膨らんで平坦でない状態となる。なお、この時点の変形は、弾性変形の割合も大きいので、上記パンチ51とクッション52の挟持状態を解除すると、もとの中間成形体15の形状に近づく。そのため、次の工程は、パンチ51とクッション52との挟持状態を維持したまま行う。
【0046】
すなわち、図5(b)に示すごとく、パンチ51とクッション52とによる挟持状態を維持したまま底面部21全体を先頭にしてダイス刃部530間に挿入する。そして、底面部21と側面部22、23との間の境界線a(図3)の部分は、すべてダイス刃部530間を通過させる。これにより、底面部21と側面部22、23との間の角部は略直角となる。
【0047】
また、同図に示すごとく、中間成形体15のダイス53に対する相対的な前進は、底面部21全体がダイス刃部530を通過した後、側面部22、23の一部のみがダイス刃部530を通過した時点で停止させ、側面部22、23全体がダイス刃部530を通過することを避ける。これにより、図6〜図8に示すごとく、底面部21とその両側から立設した左右一対の側面部22、23とが断面コ字状形状を呈し、かつ、底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有する予備成形体16が得られる。得られた予備成形体16の上記異形コ字状部20は、必然的に、その側面部22、23全体が平坦な面ではなく、一部が外方に膨らんだ上記膨出部225、235となる。この膨出部225、235の存在により、側面部全体が平坦な場合よりも、側面部22、23の剛性を高めることができる。
【0048】
また、側面部22、23に形成された上記膨出部225、235は、その周囲の平面状側面部226、236の中に非常に滑らかな自然な形状変化で形成され、不要なしわ等の外観特性を低下させるような特徴は生じない。むしろ、膨出部225、235を積極的に設けた形状と見ることができ、斬新な意匠性を有する優れた外観特性が得られる。また、予めブランク材10に設けておいた貫通穴19の存在は、成形上まったく問題とならず、上記の優れた外観特性を悪化させることはない。
【0049】
次に、端部曲げ工程を行う。
端部曲げ工程では、図9、図10に示すごとく、特殊な芯金装置7を用いる。芯金装置7は、芯金本体71と、これに組み込まれた側面部拡開補助機構部73とよりなる。
芯金本体71は、図9に示すごとく、成形体1(予備成形体16)の底面部21に当接する底当接面711と、側面部22、23に当接する左右一対の側面当接面712、713と、上記折り曲げ端部227、237に当接する端部当接面717とを有する。さらに、芯金本体71は、側面当接面712、713と端部当接面717との境界角部にエッジ部715を有している。また、エッジ部715を挟む側面当接面712と端部当接面717とがなす角度は、スプリングバックを8°考慮して82°に設定してある。そして、芯金本体71には、二箇所に貫通穴718が設けられており、側面部拡開補助機構部73が二組組み込まれている。
また、芯金本体71の長手方向両端には、異形コ字状部20の内部に挿入した際に長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロック719が設けられている。
【0050】
側面部拡開補助機構部73は、図10に示すごとく、芯金本体71の左右一対の上記側面当接面712、713からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラ741、742と、ローラ741、742を自由回転可能に支持すると共にローラ741、742が互いに離れて側面当接面712、713から突出するよう付勢するローラ支持部76とよりなる。
【0051】
側面部拡開補助機構部73におけるローラ741、742は、その外周面に凹部751と凸部752を設けた歯形形状を有している。
ローラ支持部76は、パイプ状の外軸部761と、外軸部761の内部において同軸上に配された内軸部762とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバー760を有している。外軸部761の他端には、一方のローラ741を回転可能に支持する第1アーム763が固定されている。内軸部762の他端には、他方のローラ742を回転可能に支持する第2アーム764が固定されている。
【0052】
トーションバー76は、第1アーム763に設けたローラ741の回転中心である第1支点P1と、第2アーム764に設けたローラ742の回転中心である第2支点P2とをそれぞれトーションバー76の軸心Cと結んだ線の内角θ(図12参照)を変化させる際に、当該トーションバー76のねじり力が作用するよう構成されている。
また、トーションバー76の一端側には、固定ブロック769が設けられている。この固定ブロック769を上記芯金本体71の内部に埋め込むことにより、側面部拡開補助機構部73全体を芯金本体71に強固に固定できるように構成されている。
【0053】
トーションバー760のねじり力は、後述するように、折り曲げ端部227、237形成後に側面部22、23への押圧力Fを解放した際に、ローラ741、742を介して側面部22、23を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の折り曲げ端部227、237の間の間隙D(図12)が、芯金本体71の一対の上記エッジ部715の間隔よりも大きくできる力に調整されている。
【0054】
このような芯金装置7を用い、まずは、これを予備成形体16の異形コ字状部20の内部に挿入する。このとき、芯金装置7は、その両端のスライドブロック719を予備成形体16の両端に対面させてガイドすることにより、芯金装置7と予備成形体16との相対的な位置関係を安定的に保持しながら挿入することができる。そして、芯金本体71の底当接面711を底面部21に当接させる。これにより、芯金本体71のエッジ部715は、折り曲げ端部227、237の曲げ起点に対応する位置に配置される。なお、このとき、異形コ字状部20の左右一対の側面部22、23は、当初略平行な状態に配置されているものが、芯金装置7のローラ741、742によって互いに離れる方向に拡開される(図示略)。
【0055】
次いで、図11に示すごとく、左右一対の側面部22、23に外方から押圧力Fを付与する。押圧力の付与は、図示しない押圧治具を油圧アクチュエータによって押し当てることによって実施する。そして、この押圧力Fの付与により、側面部22、23を芯金本体71の側面当接面712、713に押し当てると共にローラ741、742を側面当接面712、713の内部に没入させる。
【0056】
次いで、同図に示すごとく、側面部22、23への押圧力を付与したまま、エッジ部715に沿って側面部22、23の端部を曲げ加工して左右一対の折り曲げ端部227、237を形成する。曲げ加工は、曲げ治具(図示略)を側面部22、23に押し当てることによって容易に行うことができる。
【0057】
次いで、図12に示すごとく、側面部22、23への押圧力Fを解放する。これによって、ローラ支持部76の付勢力によってローラ741、742が芯金本体71から突出し、側面部22、23を互いに離れる方向に拡開させる。そして、一対の折り曲げ端部227、237の間に間隙Dを設ける。これにより、芯金装置7を成形体1の内部から折り曲げ端部227、237の間を通過して抜き出す経路が確保される。
【0058】
次いで、図13〜図16に示すごとく、ローラ741、742を回転させながら芯金装置7と成形体1とを相対移動させ、間隙Dから芯金装置7を抜き出す。このとき、ローラ741、742が回転可能であるので、両者の相対移動が補佐され、スムーズな抜き出し作業を行うことができる。
【0059】
特に、上記ローラ741、742は、上述したごとく、その外周面に凹部751と凸部752を設けた歯形形状を有している。そのため、芯金装置7と成形体1とを相対移動させる間に、図14に示すごとく、折り曲げ端部227、237の先端が上記凹部751に入り込んだ状態となる。そのため、折り曲げ端部227、237の間隔をローラ741、742の最大外径の位置よりは小さくすることができ、よりスムーズな相対移動を実現することができる。
【0060】
また、芯金装置7の両端のスライドブロック719が成形体1の両端に対面してガイドするので、芯金装置7と成形体1との相対的な位置関係を安定的に保持しながら抜き出し作業を実施することが可能である。
【0061】
図16に示すごとく、芯金装置7を内部から抜き出した後は、左右一対の側面部22、23がもとの略平行な状態まで戻ろうとする。
そして、図17に示すごとく、側面部22、23が略平行となると共に、折り曲げ端部227、237の先端が重なり合った状態となる。なお、左右一対の側面部22、23が略平行な状態まで戻らずに、折り曲げ端部227、237の先端が平板状態のままとなることもある。この場合には、側面部22、23を押圧することによって、容易に略平行な状態に戻すことができる。
【0062】
その後、本例では、重なり合った折り曲げ端部227、237を溶接により接合する。
これにより、同図に示すごとく、底面部21と該底面部21の両側から立設した左右一対の側面部22、23とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部21が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部20を有し、かつ、左右一対の上記側面部22、23における底面部21と反対側の折り曲げ端部227、237同士を接合することにより、上記異形コ字状部20を含む略長方形の閉断面形状を有する成形体1が得られる。
【0063】
このように、本例の製造方法を用いれば、異形コ字状部20を含む閉断面形状の成形体1を外観特性に優れた状態で容易に製造することができる。特に、ローラ741、742及びローラ支持部76を芯金本体7に組み込んだ特殊な芯金装置を用いることによって、異形コ字状部20の端部を折り曲げて閉断面を形成する際に、容易かつ精度よく曲げ加工ができ、上記閉断面を有する成形体1を1枚の素材から1部品のまま高い歩留まりで製造することができる。
【0064】
また、得られた成形体1の異形コ字状部20が、底面部21とその両側の側面部22、23とを一体的に連ねたものとなるので、少なくとも底面部21側においては溶接による接合を行う必要がない。それ故、その分、軽量化を図ることができる。さらには、上記側面部22、23の剛性向上と溶接部の不要化による強度向上効果によって、素材自体の板厚を減少させることもでき、これによる軽量化効果も得ることができる。
【0065】
また、本例では、準備した予備成形体16は、側面部22、23に膨出部225、235を有しており、最終的な閉断面形状の成形体1においても膨出部225、235がそのまま残っている。この膨出部225、235の存在により、成形体1は、側面部22、23の剛性に優れ強度的に優れたものとなり、かつ、外観特性も斬新な意匠性を醸し出す優れたものとなる。
【0066】
(参考例1)
本発明と同様の課題を解決するための参考例を示す。
本例は、上述した実施例1における異形コ字状部20を有する成形体(予備成形体)16を用い、その後の端部曲げ工程を実施例1と異なる方法で行った例である。
【0067】
すなわち、本例では、図19に示すごとく、芯金装置8として、実施例1における側面部拡開補助機構部73を設けていない芯金本体81を備えたものを用いる。芯金本体81は、側面部拡開補助機構部73を設けていない以外は、上述した芯金本体71と同様であり、エッジ部715等を備えている。
【0068】
上記成形体16は、図20(a)に示すごとく、端部曲げ工程を実施する前に、その側面部22、23を、底面部21から離れるほど拡がるオープン形状に成形しておく。拡がり間隔は、後に形成される折り曲げ端部227、237が存在する状態において、その間隔が上記芯金本体81の厚み寸法よりも大きくなる寸法に設定しておく。
【0069】
そして、図20(a)(b)に示すごとく、芯金本体81を成形体16の内部に位置させ、側面部22、23を図示しない押圧手段によって押圧し、芯金本体81に密着させる。次いで、図20(c)に示すごとく、エッジ部715に沿って曲げ加工を実施し、折り曲げ端部227、237を成形する。
次に、図20(d)に示すごとく、側面部22、23への押圧力を解放することにより、側面部22、23は元のオープン形状に戻る。これにより、折り曲げ端部227、237の間隔は芯金本体81の厚み寸法以上に拡がる。そのため、容易に芯金本体81を得られた成形体1から抜き出すことができる。
【0070】
その後、図21に示すごとく、接合工程を行う前に、芯金装置を挿入していない状態で、成形体1の側面部22、23の根本を内方に向けてパンチ85によって押圧することにより曲げ加工を行い、側面部22、23と底面部21との角度を略直角にする。その後、実施例1と同様の接合工程を行う。
このように、本参考例では、曲げ加工を行うことを前提に、シンプルな芯金装置8を用いた端部曲げ工程を実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 成形体
16 予備成形体
20 異形コ字状部
21 底面部
22、23 側面部
225、235 膨出部
226、236 平面状側面部
227、237 折り曲げ端部
4 予備成形金型
5 金型
51 パンチ
52 クッション
53 ダイス
7 芯金装置
71 芯金本体
73 側面部拡開補助機構部
741、742 ローラ
751 凹部
752 凸部
76 ローラ支持部
760 トーションバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と該底面部の両側から立設した左右一対の側面部とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、
芯金装置を用いて、左右一対の上記側面部における上記底面部と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、
上記折り曲げ端部同士を接合して、閉断面形状を形成する接合工程とを有し、
上記端部曲げ工程で用いる上記芯金装置は、上記成形体の上記底面部に当接する底当接面と、上記側面部に当接する左右一対の側面当接面と、上記折り曲げ端部に当接する端部当接面とを有すると共に、上記側面当接面と上記端部当接面との境界角部にエッジ部を設けてなる芯金本体と、
上記折り曲げ端部形成後に左右一対の上記側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部とを有しており、
該側面部拡開補助機構部は、上記芯金本体の左右一対の上記側面当接面からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラと、該ローラを回転可能に支持すると共に該ローラが互いに離れて上記側面当接面から突出するよう付勢するローラ支持部とよりなり、
上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させ、
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与し、該側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させ、
次いで、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成し、
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放することによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記側面部を互いに離れる方向に拡開させて、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設け、
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出すことを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラは、その外周面に凹部と凸部を設けた歯形形状を有しており、上記折り曲げ端部形成後の上記芯金装置と上記成形体との相対移動の際に、上記折り曲げ端部の先端が上記ローラの上記凹部に位置した状態で上記ローラが回転するよう構成されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラ支持部は、パイプ状の外軸部と、該外軸部の内部において同軸上に配された内軸部とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバーと、
上記外軸部の他端に固定され、一方の上記ローラを回転可能に支持する第1アームと、
上記内軸部の他端に固定され、他方の上記ローラを回転可能に支持する第2アームとを有してなり、
上記第1アームに設けた上記ローラの回転中心である第1支点と、上記第2アームに設けた上記ローラの回転中心である第2支点とをそれぞれ上記トーションバーの軸心と結んだ線の内角を変化させる際に上記トーションバーのねじり力が作用するよう構成されており、
上記トーションバーのねじり力は、上記端部曲げ工程における上記折り曲げ端部形成後に上記側面部への上記押圧力を解放した際に、上記ローラを介して上記側面部を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の上記折り曲げ端部の間の上記間隙が、上記芯金本体の一対の上記エッジ部の間隔よりも大きくできる力に調整されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、上記芯金本体には、上記側面部拡開補助機構部が2組以上内蔵されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記芯金本体の長手方向両端には、上記異形コ字状部の内部に挿入した際にその長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロックが設けられていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記エッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は90°未満であることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記準備工程において準備する上記異形コ字状部を有する成形体を作製するに当たっては、
平板状のブランク材を準備し、
該ブランク材を上記底面部と上記側面部との間の直線状の境界線を起点に曲げ加工して、上記底面部が平坦面であると共にその両側の上記側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である中間成形体を形成し、
上記底面部における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面を有するパンチと、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面を有するクッションと、上記底面部の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部を有するダイスとを備えた金型を用いて、上記中間成形体の内部に配置した上記パンチの上記凹状挟持面とこれに対向配置させた上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させ、
その後、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入し、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で上記底面部と上記ダイスとの相対移動を停止することにより、上記側面部のうち上記ダイス刃部間を通過していない部分の一部が外方に膨らんだ膨出部となると共に、その周囲が上記底面部に対して略直角に立設した平面状側面部となるように上記異形コ字状部を形成することを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、上記成形体は、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品であることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項1】
底面部と該底面部の両側から立設した左右一対の側面部とを有する断面コ字状形状を呈し、上記底面部が長手方向に沿って内方に窪むように曲がった凹状曲面を呈してなる異形コ字状部を有する成形体を準備する準備工程と、
芯金装置を用いて、左右一対の上記側面部における上記底面部と反対側の端部を、互いに近づく方向に折り曲げて折り曲げ端部を形成する端部曲げ工程と、
上記折り曲げ端部同士を接合して、閉断面形状を形成する接合工程とを有し、
上記端部曲げ工程で用いる上記芯金装置は、上記成形体の上記底面部に当接する底当接面と、上記側面部に当接する左右一対の側面当接面と、上記折り曲げ端部に当接する端部当接面とを有すると共に、上記側面当接面と上記端部当接面との境界角部にエッジ部を設けてなる芯金本体と、
上記折り曲げ端部形成後に左右一対の上記側面部を互いに離れる方向に拡開させるための側面部拡開補助機構部とを有しており、
該側面部拡開補助機構部は、上記芯金本体の左右一対の上記側面当接面からそれぞれ出没可能に設けられた左右一対のローラと、該ローラを回転可能に支持すると共に該ローラが互いに離れて上記側面当接面から突出するよう付勢するローラ支持部とよりなり、
上記端部曲げ工程では、上記芯金装置を上記異形コ字状部の内部に挿入し、上記底当接面を上記底面部に当接させ、
次いで、左右一対の上記側面部に外方から押圧力を付与し、該側面部を上記芯金装置の上記側面当接面に押し当てると共に上記ローラを該側面当接面の内部に没入させ、
次いで、上記エッジ部に沿って上記側面部の端部を曲げ加工して左右一対の上記折り曲げ端部を形成し、
次いで、上記側面部への上記押圧力を解放することによって、上記ローラ支持部の付勢力によって上記側面部を互いに離れる方向に拡開させて、一対の上記折り曲げ端部の間に間隙を設け、
次いで、上記ローラを回転させながら上記芯金装置と上記成形体とを相対移動させ、上記間隙から上記芯金装置を抜き出すことを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラは、その外周面に凹部と凸部を設けた歯形形状を有しており、上記折り曲げ端部形成後の上記芯金装置と上記成形体との相対移動の際に、上記折り曲げ端部の先端が上記ローラの上記凹部に位置した状態で上記ローラが回転するよう構成されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記側面部拡開補助機構部における上記ローラ支持部は、パイプ状の外軸部と、該外軸部の内部において同軸上に配された内軸部とを有すると共に両者の一端を固定してなるトーションバーと、
上記外軸部の他端に固定され、一方の上記ローラを回転可能に支持する第1アームと、
上記内軸部の他端に固定され、他方の上記ローラを回転可能に支持する第2アームとを有してなり、
上記第1アームに設けた上記ローラの回転中心である第1支点と、上記第2アームに設けた上記ローラの回転中心である第2支点とをそれぞれ上記トーションバーの軸心と結んだ線の内角を変化させる際に上記トーションバーのねじり力が作用するよう構成されており、
上記トーションバーのねじり力は、上記端部曲げ工程における上記折り曲げ端部形成後に上記側面部への上記押圧力を解放した際に、上記ローラを介して上記側面部を互いに離れる方向に拡開させることにより得られる一対の上記折り曲げ端部の間の上記間隙が、上記芯金本体の一対の上記エッジ部の間隔よりも大きくできる力に調整されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、上記芯金本体には、上記側面部拡開補助機構部が2組以上内蔵されていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記芯金本体の長手方向両端には、上記異形コ字状部の内部に挿入した際にその長手方向両端に対面して位置決めを行うためのスライドブロックが設けられていることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記エッジ部を挟む上記側面当接面と上記端部当接面とがなす角度は90°未満であることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記準備工程において準備する上記異形コ字状部を有する成形体を作製するに当たっては、
平板状のブランク材を準備し、
該ブランク材を上記底面部と上記側面部との間の直線状の境界線を起点に曲げ加工して、上記底面部が平坦面であると共にその両側の上記側面部との間のなす角度がいずれも鈍角である中間成形体を形成し、
上記底面部における所望の上記凹状曲面の内面形状に対応した凹状挟持面を有するパンチと、上記凹状曲面の外面形状に対応した凸状挟持面を有するクッションと、上記底面部の外幅寸法に対応する間隔を空けて配置されたダイス刃部を有するダイスとを備えた金型を用いて、上記中間成形体の内部に配置した上記パンチの上記凹状挟持面とこれに対向配置させた上記クッションの上記凸状挟持面によって上記底面部を挟持して該底面部を上記凹状曲面に変形させ、
その後、上記パンチと上記クッションとによる挟持状態を維持したまま上記底面部全体を先頭にして上記ダイス刃部間に挿入し、上記側面部の一部のみが上記ダイス刃部を通過した時点で上記底面部と上記ダイスとの相対移動を停止することにより、上記側面部のうち上記ダイス刃部間を通過していない部分の一部が外方に膨らんだ膨出部となると共に、その周囲が上記底面部に対して略直角に立設した平面状側面部となるように上記異形コ字状部を形成することを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、上記成形体は、車両用シートのシートバック内に内蔵されるフレーム部品であることを特徴とする異形コ字状部を含む閉断面形状を有する成形体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−20149(P2011−20149A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167563(P2009−167563)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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