説明

異方導電性シートおよびその製造方法、電子部材の接続方法、ならびに電子部品

【課題】凹凸吸収能および絶縁分解能に優れるとともにシート間の位置合わせが容易かつ精緻に行われた、積層型の異方導電性シートを提供する。
【解決手段】2層以上の異方導電層を有し、各々の異方導電層が、シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材であるとともに、各々の異方導電層が、互いに直接対向する一方の異方導電層の導電体領域と他方の異方導電層の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう配置されていることを特徴とする異方導電性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方導電性シートおよびその製造方法、電子部材の接続方法、ならびに電子部品に関する。さらに詳しくは、回路素子相互間の電気的接続やプリント回路基板の検査装置におけるコネクタとして好ましく用いられる異方導電性シートおよびその製造方法、2つの電子部材を電気的に接続する電子部材の接続方法、ならびに2つの電子部材が電気的に接続された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性シートは、厚み方向にのみ導電性を示すもの、または厚み方向に加圧されたときに厚み方向にのみ導電性を示すものである。異方導電性シートは、ハンダ付けまたは機械的嵌合などの手段を用いずにコンパクトな電気的接続を行うことが可能であること、および機械的な衝撃やひずみを吸収してソフトな接続が可能であることなどの特長を有する。このため、電子計算機、電子式デジタル時計、電子カメラおよび携帯電話などの分野において、異方導電性シートを2つの電子部材の間に介在させることにより、2つの電子部材を電気的に接続することが広く行われている。
【0003】
従来、種々の構成を有する異方導電性シートが知られている。例えば、(1)導電性粒子を高分子材料中に均一に分散させて得られる分散型異方導電性シート、(2)厚み方向に伸びる複数の導電部とこれらを相互に絶縁する絶縁部とを有する偏在型異方導電性シートがある。偏在型異方導電性シートは、接続対象である電子部材の電極パターンと対掌のパターンに従った導電部を有するため、分散型異方導電性シートと比較して接続信頼性に優れる。
【0004】
偏在型異方導電性シートとしては、導電部を複数個有する異方導電性シートであって、少なくとも1つの導電部において、シートの一方の表面における導電部の面積と他方の表面における導電部の面積との比が特定の範囲に設定された異方導電性シート(特許文献1)、複数の第1導電部を有する第1基材フィルムと、複数の第2導電部を有する第2基材フィルムとを、第1導電部と第2導電部とが互いに接触した状態で積層して得られる異方導電性シート(特許文献2)などが開示されている。
【0005】
ところで異方導電性シートを用いて携帯電話などに含まれる微小な電子部材を接続する際には、接続対象である電子部材表面の凹凸を吸収する性能(以下「凹凸吸収能」ともいう。)が問題となる。凹凸吸収能は、異方導電性シートの厚みに依存する。例えば異方導電性シートの厚みが大きい程、高い凹凸吸収能が得られる。しかしながら、厚みの大きい偏在型異方導電性シートでは隣接する導電部間の絶縁性能(以下「絶縁分解能」ともいう。)を確保することが困難であり、結果として電子部材間の高い接続信頼性を得ることができない(特許文献3の段落[0008]〜[0009]参照)。
【0006】
本出願人は上記問題に対する一つの解決手段として、表面側異方導電性エラストマー層、中間異方導電性エラストマー層および裏面側異方導電性エラストマー層を有する異方導電性シートを開示している(特許文献3)。前記シートによれば、(1)シート全体の厚みが大きいため高い凹凸吸収能が得られる、(2)各エラストマー層の厚みを小さくできるため、各エラストマー層における隣接する導電部間の絶縁性能が確保され、したがって、接続対象である電子部材における隣接する電極間の絶縁性能が確保される。
【0007】
また、上述の特許文献1や2にも、多層構造を有する異方導電性シートが開示されている。例えば特許文献2には、当該異方導電性シートを用いることにより、電極パターンの狭ピッチ化に対応した微細化が可能であり、厚み方向における導通性能と、面方向における絶縁性能とを併せて実現することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−204176号公報
【特許文献2】特開2008−234996号公報
【特許文献3】特開2010−009911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年では、電子部品の小型化により、電子部材の電極パターンの狭ピッチ化、電極の微細化が必要となっている。これに伴い、偏在型異方導電性シートを積層する場合、シート間の位置合わせを容易かつ精緻に行うことが要求される。上述の特許文献でも前記要求について言及されているが、近年の電子部品の小型化に伴い、さらなる改善が望まれている。本発明は、凹凸吸収能および絶縁分解能に優れるとともにシート間の位置合わせが容易かつ精緻に行われた、積層型の異方導電性シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記構成を備える異方導電性シートにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、以下の例えば[1]〜[8]に関する。
【0011】
[1]2層以上の異方導電層を有し、各々の異方導電層が、シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材であるとともに、各々の異方導電層が、互いに直接対向する一方の異方導電層の導電体領域と他方の異方導電層の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう配置されていることを特徴とする異方導電性シート。
【0012】
[2]3層以上の異方導電層を有し、各々の異方導電層が、シート上面から投影的に見た前記導電体領域の交差部位が略同一位置となるよう配置されていることを特徴とする前記[1]に記載の異方導電性シート。
【0013】
[3]各々の異方導電層の厚みが、1mm以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の異方導電性シート。
【0014】
[4](1)シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材を複数枚用意する工程、および(2)前記シート部材を、互いに直接対向する一方のシート部材の導電体領域と他方のシート部材の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう積層する工程を有することを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
【0015】
[5]前記工程(2)において、前記シート部材を、シート上面から投影的に見た前記導電体領域の交差部位が略同一位置となるよう順次積層することを特徴とする前記[4]に記載の異方導電性シートの製造方法。
【0016】
[6]各々のシート部材の厚みが、1mm以下であることを特徴とする前記[4]または[5]に記載の異方導電性シートの製造方法。
【0017】
[7]第1の電子部材と第2の電子部材との間に前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の異方導電性シートを介在させることにより、これらの電子部材を電気的に接続することを特徴とする電子部材の接続方法。
【0018】
[8]第1の電子部材と、前記第1の電子部材上に配置された前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の異方導電性シートと、前記シートの前記第1の電子部材が配置された側とは反対側に配置され、前記シートを介して前記第1の電子部材に電気的に接続された第2の電子部材とを有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、近年の電子部品の小型化による電子部材の電極パターンの狭ピッチ化、電極の微細化に対して、凹凸吸収能および絶縁分解能に優れるとともにシート間の位置合わせが容易かつ精緻に行われた、積層型の異方導電性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の異方導電性シートの説明用斜視図である。図1(b)は、図1(a)のAA’面における前記シートの説明用断面図である。図1(c)および(d)は、本発明の異方導電性シートを構成するシート部材の説明用上視図である。
【図2】図2(a1)および(a2)は、異方導電層の積層状態の一例を示す説明用斜視図および上視図である。図2(b1)および(b2)は、異方導電層の積層状態の他の例を示す説明用斜視図および上視図である。
【図3】図3は、本発明の電子部品の説明用断面図である。
【図4】図4は、上記シート部材の説明用斜視図である。
【図5】図5は、上記シート部材の製造過程を示す一例である。
【図6】図6は、上記シート部材の積層過程を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の異方導電性シートおよびその製造方法、電子部材の接続方法、ならびに電子部品の実施形態について、詳細に説明する。なお、以下では適宜図面を参照しているが、本発明は当該図面に限定されるものではない。
【0022】
〔異方導電性シート〕
本発明の異方導電性シート10は、例えば図1(a)および(b)に示すように、2層以上の異方導電層20を有し、各々の異方導電層20がシート部材30からなる。シート部材30は、図1(c)および(d)に示すように、シート部材30の厚み方向に伸びる導電体領域31が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部32と、導電体領域31を相互に絶縁する絶縁部33とから構成される。
【0023】
本発明では、各々の異方導電層20の配置状態(積層状態)に特徴を有している。すなわち、各々の異方導電層20は、互いに直接対向する一方の異方導電層20の導電体領域31と他方の異方導電層20の導電体領域31とがシート上面から投影的に見て交差するよう、好ましくは45〜90度、より好ましくは60〜90度の角度で交差するよう、特に好ましくは略直交するよう配置されている。ここで「互いに直接対向した異方導電層」とは、n層(nは2以上の整数)で構成される異方導電性シートにおいて、第i層(iは1〜n−1の任意の整数)および第i+1層の組を指す。図1(b)に、図1(a)のAA’面における異方導電性シートの断面図を示す。
【0024】
また、異方導電層20が3層以上存在する場合には、各々の異方導電層20は、シート上面から投影的に見た導電体領域31の交差部位34が略同一位置となるよう配置されていることが好ましい。ここで「シート上面から投影的に見た交差部位が略同一位置となる」とは、図2(a2)に示すように、n層(nは3以上の整数)で構成される異方導電性シートにおいて、第i層(iは1〜n−2の任意の整数)の導電体領域と第i+1層の導電体領域とのシート上面から見た交差部位34(i,i+1)と、第i+1層の導電体領域と第i+2層の導電体領域とのシート上面から見た交差部位34(i+1,i+2)とが、シート上面から見て重なりを有し、好ましくは一致することを指す。シート上面から投影的に見た導電体領域31の交差部位34が略同一位置とならない場合は、例えば図2(b2)に示すような配置が挙げられる。
【0025】
また、図1(a)および(b)に示すように、n層(nは3以上の整数)で構成される異方導電性シートにおいて、第i層(iは1〜n−2の任意の整数)の導電体領域と第i+2層の導電体領域との位置が、シート上面から投影的に見た場合、一致することが好ましい。
【0026】
本発明の異方導電性シート10は、交差部位34において厚み方向に加圧されたときに厚み方向にのみ導電性を示す。すなわち、交差部位34は、シートの厚み方向全体において導電体領域31から構成されているので、交差部位34において加圧時に電気的接続が可能である。
【0027】
交差部位34は、接続対象である電子部材40等が有する電極41等のパターンに対応して位置決めされる。図3に、一の電子部材40の電極41,42と、他の電子部材40’の電極41’,42’とを、本発明の異方導電性シート10を用いて電気的に接続する例を示す。この例では、相互に接続される電極41,41’あるいは電極42,42’によって異方導電性シート10の交差部位34における導電体領域31が厚み方向に加圧されて変形し、これにより、これらの導電体領域31の厚み方向に導電性粒子による導電路が形成され、電極41,41’間および電極42,42’間の電気的接続が達成される。また、本発明の異方導電性シート10は、各々の異方導電層20の厚みを小さくすることができるとともに互いに対向する異方導電層20の導電体領域31が交差しているので、電極41,42’間および電極42,41’間の絶縁分解能を確保することができる。
【0028】
本発明の異方導電性シート10の層構成は上述のとおりであり、その異方導電層20の層数は該シート10の用途・使用態様に応じて適宜選択すればよく、通常は2〜10層、好ましくは2〜3層である。また、異方導電性シート10の全体の厚みは、通常は1〜100mm、好ましくは1〜10mmである。本発明の異方導電性シート10の構成上、シート全体の厚みを大きくすることができるため、高い凹凸吸収能を得ることができる。
【0029】
各々のシート部材は、直接積層されていてもよく、シート部材間の導電体領域の導通を阻害しない接着剤により複合化されていてもよい。接着剤としては、シリコーンゴムなどが好適に使用できる。
【0030】
本発明の異方導電性シート10は、該シート10を構成する最外層のシート部材30表面において、平面部と該平面部から突出した導電体領域31からなる突起部とを有していてもよい。突起部の形状は特に限定されない。異方導電性シート10がこのような突起部を有していると、加圧時に電極41,42にかかる荷重を軽減できるという利点がある。
【0031】
〈シート部材〉
シート部材30は、シート部材30の厚み方向に伸びる導電体領域31が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部32と、導電体領域31を相互に絶縁する絶縁部33とから構成される。本発明では、シート部材30のシート面をX方向と前記X方向に略直行するY方向とによって規定し、シート部材30の厚み方向をX方向およびY方向の何れとも略直行するZ方向によって規定する。この場合、図4に示すように、導電体領域31は、X方向に伸び、Y方向に幅を有し、かつZ方向にシート部材30の上面から下面にわたって形成されており、導電形成部32は、これら導電体領域31が所定間隔置きに縞状に形成された構成を有する。
【0032】
各々のシート部材30の厚みは、通常は1mm以下、好ましくは0.001〜0.1mmである。本発明では各々のシート部材30の厚みを小さくできるため、接続対象である電子部材40等における隣接する電極41,42間の絶縁分解能が確保される。
【0033】
《導電形成部》
導電形成部32は複数の導電体領域31から構成され、シート部材30において導電体領域31が所定間隔置きに縞状に形成されている。導電体領域31は、シート部材30の上面から下面にわたって形成され、加圧時にシート部材30の厚み方向の導電性を確保する機能を有する。導電体領域31は、例えば導電性粒子の集合体および絶縁性高分子材料から形成されており、厚み方向に加圧されて圧縮されたときに抵抗値が減少して導電性が確保される。
【0034】
導電体領域31のY方向の幅aは、通常は0.02〜1mm、好ましくは0.02〜0.2mmである。隣接する導電体領域31の間隔(ピッチ)bは、通常は0.1〜1mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0035】
導電体領域31における導電性粒子の含有割合は、体積分率で通常は5〜80%、好ましくは20〜60%である。この割合が過小である場合には、充分に電気抵抗値の小さいシート部材が得られないことがある。一方、この割合が過大である場合には、得られる導電体領域31は脆弱になることがある。
【0036】
《絶縁部》
絶縁部32は、導電体領域31を面方向に囲むように高分子材料から形成され、複数の導電体領域31を相互に絶縁し、シート部材30の面方向の絶縁性を確保する機能を有する。絶縁部32には、導電性粒子が全くあるいは殆ど含有されていない。
【0037】
〈シート部材の製造方法〉
本発明の異方導電性シートを構成するシート部材の製造方法について説明する。
シート部材は、絶縁性高分子材料と導電性粒子とを含有する成形材料を用いて製造することができる。先ず、絶縁性高分子材料と導電性粒子とを含有する成形材料を調製する。ここで、成形材料に対して、必要に応じて減圧による脱泡処理を行うことができる。成形材料において、導電性粒子の含有割合(体積分率)は、形成される導電体領域における導電性粒子の含有割合などを考慮して定められるが、通常は5〜40%、好ましくは8〜33%、より好ましくは10〜30%である。
【0038】
《絶縁性高分子材料》
絶縁性高分子材料としては、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエステルゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンブロック共重合体ゴム、スチレンイソプロピレンブロック共重合体ゴム、軟質エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
絶縁性高分子材料としては、シート部材製造時の温度で液状であるかまたは流動性を有し、その後硬化する材料が好ましい。絶縁性高分子材料がこのような性質を有すると、シート部材製造時に磁場を作用させることにより磁性を有する導電性粒子を配向または集合させることができ、その後、絶縁性高分子材料を硬化させて磁性を有する導電性粒子を固定することができる。例えば、熱硬化型のシリコーンゴムは、常温で液状であり、加熱により硬化して固形ゴムになるので好ましい。また例えば、軟質エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性軟質樹脂などは、常温で固体であっても、シート部材製造時に流動性を有し、シート部材製造後は固体となるので好ましい。
【0040】
《導電性粒子》
導電性粒子としては、導電体領域を形成する際に成形材料中において導電性粒子を容易に移動させることができる観点から、磁性を有する導電性粒子が好ましい。磁性を有する導電性粒子としては、(1)鉄、ニッケル、コバルトなどの磁性を有する金属の粒子またはこれらの合金の粒子、(2)鉄、ニッケル、コバルトなどの磁性を有する金属を含有する粒子、(3)前記(1)または(2)の粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面に金、銀、パラジウム、ロジウムなどの導電性金属をメッキして得られる被覆粒子、(4)非磁性金属粒子もしくはガラスビーズなどの無機物質粒子またはポリマー粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面にニッケル、コバルトなどの導電性磁性体をメッキして得られる被覆粒子、(5)前記(3)または(4)の芯粒子に、導電性磁性体および導電性金属の両方を被覆して得られる被覆粒子などが挙げられる。これらの中では、ニッケル粒子を芯粒子とし、その表面に金や銀などの導電性金属をメッキして得られる被覆粒子が好ましい。芯粒子の表面に導電性金属を被覆する手段としては、無電解メッキなどが挙げられる。
【0041】
導電性粒子として芯粒子の表面に導電性金属を被覆して得られる被覆粒子を用いる場合には、良好な導電性が得られる観点から、芯粒子の表面における導電性金属の被覆率(芯粒子の表面積に対する導電性金属の被覆面積の割合)は40%以上であることが好ましく、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは47〜95%である。また、導電性金属の被覆量は芯粒子に対して2.5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜45重量%、さらに好ましくは3.5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
【0042】
導電性粒子の粒子径は1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは2〜400μm、さらに好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μmである。導電性粒子の粒子径分布(Dw/Dn)は1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4である。
【0043】
導電性粒子の形状は特に限定されないが、絶縁性高分子材料中に容易に分散させることができる点で、球状の粒子、星形状の粒子またはこれらが凝集した2次粒子であることが好ましい。
【0044】
このような導電性粒子を用いることにより、得られるシート部材の導電体領域は加圧変形が容易となり、また、当該導電体領域において導電性粒子間に充分な電気的接触が得られる。
【0045】
次いで、(1)スペーサーを介して一対の金型によって形成される成形空間に、成形材料を充填する工程、および(2)前記成形空間の厚み方向に平行磁場を作用させ、さらに成形材料を硬化させる工程を経て、上記シート部材を製造することができる。
【0046】
《工程(1)》
工程(1)は、図5(a)に示すように、スペーサー120を介して一対の金型によって形成される成形空間130に、成形材料を充填する工程である。一対の金型は、上型100と下型110とから構成され、スペーサー120を介してこれらが互いに対向するよう配置される。成形空間130は、導電体領域形成予定部131と絶縁部形成予定部132とから構成される。
【0047】
上型100は、強磁性体からなる板状基材101と、板状基材101の下面に形成された磁性体部102および非磁性体部103とから構成される。磁性体部102は、形成される導電体領域31のパターンに対応するパターンに従って複数形成され、非磁性体部103は磁性体部102以外の箇所に形成されている。
【0048】
下型110は、強磁性体からなる板状基材111と、板状基材111の上面に形成された磁性体部112および非磁性体部113とから構成される。磁性体部112は、形成される導電体領域31のパターンに対応するパターンに従って複数形成され、非磁性体部113は磁性体部112以外の箇所に形成されている。
【0049】
上型100および下型110の各々における板状基材101,111および磁性体部102,112を構成する強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金などが挙げられる。上型100および下型110の各々における非磁性体部103,113を構成する材料としては、銅などの非磁性金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂などが挙げられる。
【0050】
《工程(2)》
工程(2)は、成形空間130の厚み方向に平行磁場を作用させ、さらに成形材料を硬化させる工程である。成形材料の硬化は、平行磁場の作用中であっても作用後であってもよい。平行磁場の強度は、0.02〜2テスラとなる大きさが好ましい。
【0051】
例えば、一対の金型を挟むようにして、上型の平型板の電磁石140aと下型の平型板の電磁石140bとを配置する。この状態で電磁石140a,140bを動作させ、上型100の磁性体部102からこれに対応する下型110の磁性体部112に向かう方向に平行磁場を作用させる。また、平行磁場を作用させる手段としては、電磁石の代わりに永久磁石を用いることもできる。これにより、導電体領域形成予定部131において、絶縁部形成予定部132より強い平行磁場が厚み方向に作用されることになる。この分布を有する平行磁場により、成型材料内の導電性粒子が導電体領域形成予定部131に集まり、導電性粒子が局在化する。そして、平行磁場を作用させたまま、あるいは平行磁場を除いた後、成型材料を加熱などにより硬化させる。
【0052】
成形材料の硬化処理は、絶縁性高分子材料の種類によって適宜選定されるが、通常、加熱処理によって行われる。具体的な加熱温度および加熱時間は、絶縁性高分子材料などの種類、導電性粒子の配向に要する時間などを考慮して適宜設定される。
【0053】
以上のようにして、シート部材30の厚み方向に伸びる導電体領域31が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部32と、導電体領域31を相互に絶縁する絶縁部33とから構成されるシート部材30を製造することができる。
【0054】
〔異方導電性シートの製造方法〕
本発明の異方導電性シートの製造方法について説明する。
本発明の異方導電性シートの製造方法は、(1)シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材を複数枚用意する工程、および(2)前記シート部材を、互いに直接対向する一方のシート部材の導電体領域と他方のシート部材の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう積層する工程を有する。
【0055】
〈工程(1)〉
工程(1)では、異方導電性シートの層数に合わせて、上述のシート部材を複数枚用意する。シート部材は、単一の種類のシート部材であってもよく、異なる種類のシート部材(例えば、厚みや材質の異なるシート部材)であってもよい。
【0056】
例えば、図6(a)に示すように、各々のシート部材における導電体領域の幅およびピッチが同一で(すなわち、導電体領域を積層方向に揃え)、各々の厚みが異なっていてもよいシート部材からなるシート部材群を用意する。
【0057】
あるいは、図6(b)に示すように、各々のシート部材における導電体領域の幅およびピッチが同一で、各々の厚みが異なっていてもよいシート部材からなるA群と、各々のシート部材における導電体領域の幅およびピッチが同一(但し、A群に属するシート部材における導電体領域の幅およびピッチとは異なる)で、各々の厚みが異なっていてもよいシート部材からなるB群とを用意する。
【0058】
〈工程(2)〉
工程(2)では、上述のシート部材を、互いに直接対向する一方のシート部材の導電体領域と他方のシート部材の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう、好ましくは略直交するよう積層する。シート部材を3枚以上用いる場合には、上述のシート部材を、シート上面から投影的に見た導電体領域の交差部位が略同一位置となるよう順次積層することが好ましい。ここで「互いに直接対向したシート部材」、「シート上面から投影的に見た交差部位が略同一位置となる」の意味は、〔異方導電性シート〕の欄で説明したとおりである。
【0059】
例えば、図6(a)に示すように、シート部材群に属するシート部材を、互いに直接対向したシート部材の導電体領域が交差するように、所定の角度をなして(例:45〜90度異なる姿勢で、好ましくは60〜90度異なる姿勢で、具体的には90度異なる姿勢で)順次積層すればよい。
【0060】
あるいは、図6(b)に示すように、A群およびB群にそれぞれ属するシート部材を、それぞれの導電体領域が交差するように、所定の角度をなして(例:45〜90度異なる姿勢で、好ましくは60〜90度異なる姿勢で、具体的には90度異なる姿勢で)交互に積層すればよい。
【0061】
シート部材を積層する際には、シート部材間の導電体領域の導通を阻害しない接着剤の存在下で、あるいは非存在下でシート部材同士を張り合わせるなどの方法により、シート部材を複合化することができる。接着剤としては、シリコーンゴムなどが好適に使用できる。また、別の方法として、接着剤などを用いずにシート部材同士を熱融着させる方法、接着剤などを用いずに、後述する取付治具などを用いて一体化させる方法などが挙げられる。また、積層されたシート部材は必要に応じて裁断することができる。
【0062】
本発明の異方導電性シートの製造方法では、シート部材を上記のような条件で簡便に積層することができるので、シート部材間の位置合わせを精緻に行うことができる。したがって、本発明の異方導電性シートは、近年の電子部品の小型化による電子部材の電極パターンの狭ピッチ化、電極の微細化にも対応することができる。
以上のようにして、本発明の異方導電性シートを製造することができる。
【0063】
〔電子部材の接続方法および電子部品〕
本発明の電子部材の接続方法は、図3に示すように、第1の電子部材40と第2の電子部材40’との間に本発明の異方導電性シート10を介在させることにより、これらの電子部材を電気的に接続することを特徴とする。
【0064】
また、本発明の電子部品は、図3に示すように、第1の電子部材40と、前記第1の電子部材40上に配置された本発明の異方導電性シート10と、前記シート10の前記第1の電子部材40が配置された側とは反対側に配置され、前記シート10を介して前記第1の電子部材40に電気的に接続された第2の電子部材40’とを有する。
【0065】
ここで、本発明の異方導電性シート10における交差部位34が第1の電子部材40の電極41,42等および第2の電子部材40’の電極41’,42’等によって加圧され、これにより導通路が形成され、第1の電子部材40と第2の電子部材40’とが電気的に接続される。
【0066】
第1の電子部材40、異方導電性シート10および第2の電子部材40’は、必要に応じて、接着剤や取付治具構造などの適宜の手段によって相互に固定されている。なお、本発明において取付治具構造とは、雄雌構造によるはめこみ構造や、フック構造など、部材の形状に特徴を有することで部材同士が嵌合可能となる構造のことである。
以下、第1の電子部材および第2の電子部材について説明する。
【0067】
〈第1の電子部材〉
第1の電子部材としては、特に限定されず種々のものを用いることができる。例えば、リジッドプリント配線板(PCB)、フレキシブルプリント配線板(FPC)、フレックスリジッドプリント配線板などのプリント配線板が挙げられる。プリント配線板は、片面プリント配線板、両面プリント配線板、多層プリント配線板の何れでもよい。プリント配線板などの第1の電子部材は、基板と、該基板上に形成された配線および第2の電子部材の電極に対応するパターンに従った複数の電極とを有している。
【0068】
PCBのリジッド基板を構成する材料としては、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型フェノール樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂、ガラス繊維補強型ビスマレイミドトリアジン樹脂等の複合樹脂材料;二酸化珪素、アルミナ等のセラミック材料などが挙げられる。FPCのフレキシブル基板を構成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0069】
第1の電子部材が有する配線および電極の材質としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、カーボン、アルミニウム、酸化インジウムスズ(ITO)などが挙げられる。第1の電子部材が有する電極のピッチは通常は0.1〜5mmである。第1の電子部材が有する基板の厚みは、通常は0.1〜5mmである。
【0070】
〈第2の電子部材〉
第2の電子部材としては、特に限定されず種々のものを用いることができる。例えば、上述のプリント配線板の他、トランジスタ、ダイオード、リレー、スイッチ、ICチップもしくはLSIチップまたはそれらのパッケージ;マルチチップモジュール(MCM)などのモジュール;抵抗、コンデンサ、水晶振動子、スピーカー、マイクロフォン、変成器(コイル)、インダクターなどの受動部品、TFT型液晶表示パネル、STN型液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスパネルなどの表示パネルなどが挙げられる。プリント配線板などの第2の電子部材は、基板と、該基板上に形成された配線および第1の電子部材の電極に対応するパターンに従った複数の電極とを有している。
【0071】
第2の電子部材が有する配線および電極の材質としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、カーボン、アルミニウム、酸化インジウムスズ(ITO)などが挙げられる。第2の電子部材が有する電極のピッチは通常は0.1〜5mmである。第2の電子部材が有する基板の厚みは、通常は0.1〜5mmである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の異方導電性シートおよび電子部品を携帯用電子機器に組み込むことにより、小型あるいは薄型の携帯用電子機器を実現することができる。携帯用電子機器としては、携帯電話機、デジタルカメラ、ビデオカメラ等のカメラ、ポータブルオーディオプレーヤ、ポータブルDVDプレーヤ、ポータブルノートパソコンなどが挙げられる。
【0073】
本発明の電子部材の接続方法は、電子計算機、電子式デジタル時計、電子カメラなどの分野における、電子部材間の電気的接続に好適に適用することができる。
上記開示された本発明の実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0074】
10・・・異方導電性シート
20・・・異方導電層
30・・・シート部材
31・・・導電体領域
32・・・導電形成部
33・・・絶縁部
34・・・交差部位
40、40’・・・電子部材
41、41’、42、42’・・・電極
100・・・上型
101・・・板状基材
102・・・磁性体部
103・・・非磁性体部
110・・・下型
111・・・板状基材
112・・・磁性体部
113・・・非磁性体部
120・・・スペーサー
130・・・成形空間
131・・・導電体領域形成予定部
132・・・絶縁部形成予定部
140a,140b・・・電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の異方導電層を有し、
各々の異方導電層が、シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材であるとともに、
各々の異方導電層が、互いに直接対向する一方の異方導電層の導電体領域と他方の異方導電層の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう配置されている
ことを特徴とする異方導電性シート。
【請求項2】
3層以上の異方導電層を有し、
各々の異方導電層が、シート上面から投影的に見た前記導電体領域の交差部位が略同一位置となるよう配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の異方導電性シート。
【請求項3】
各々の異方導電層の厚みが、1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方導電性シート。
【請求項4】
(1)シート部材の厚み方向に伸びる導電体領域が所定間隔置きに縞状に形成された導電形成部と、前記導電体領域を相互に絶縁する絶縁部とから構成されるシート部材を複数枚用意する工程、および
(2)前記シート部材を、互いに直接対向する一方のシート部材の導電体領域と他方のシート部材の導電体領域とがシート上面から投影的に見て交差するよう積層する工程
を有することを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、前記シート部材を、シート上面から投影的に見た前記導電体領域の交差部位が略同一位置となるよう順次積層することを特徴とする請求項4に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項6】
各々のシート部材の厚みが、1mm以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項7】
第1の電子部材と第2の電子部材との間に請求項1〜3の何れか一項に記載の異方導電性シートを介在させることにより、これらの電子部材を電気的に接続することを特徴とする電子部材の接続方法。
【請求項8】
第1の電子部材と、前記第1の電子部材上に配置された請求項1〜3の何れか一項に記載の異方導電性シートと、前記シートの前記第1の電子部材が配置された側とは反対側に配置され、前記シートを介して前記第1の電子部材に電気的に接続された第2の電子部材とを有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43579(P2012−43579A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182347(P2010−182347)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】