異方性ナノ多孔質被膜
本発明はマイクロ及びナノ範囲界において制御構造の多孔性被膜を作る方法に関する。特に、限定されないが異方性気孔寸法分布被膜を作る方法及びそのような塗被を用いて得られる被膜に関する。そのような被膜を制御されるように堆積するためにインクジェット式方法の使用を記載する。またマイクロ及びナノ範囲界において制御構造の多孔性被膜に関する。被膜は10 ナノメートル〜10 ミリメートル厚さであり、その多孔性は気孔寸法分布が異方性であるように与えられる。最後にこの被膜で被覆される物を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ及びナノ−寸法ドメインについて制御構造の多孔質被膜を作る方法に関する。特に、限定的ではないが異方性細孔寸法分布の塗膜を作る方法及びそのような塗被を用いて得られる被膜に関する。
それはまたマイクロ及びナノ−寸法ドメインについて制御構造の多孔質被膜に関する。被膜は10 ナノメートル〜10 ミリメートル厚さを有し、その多孔性は細孔寸法分布が異方性であるように与えられる。
本発明は最後に前記被膜で被覆された物に関連する。
【背景技術】
【0002】
被膜は多種技術分野において特に薬用分野において使用されることが可能である。
系統投与薬剤に基づく療法不良は多くの原因を有する、しかし1つの典型的理由は治療されるべき座において必要用量達成不能である。この効果は特に移植に追随する治療に正当である。移植材料は身体に配置されるときには、時間の大部分が基材について長期試験に有害である反応を誘導する小損傷を誘発する。この問題に取組む方法は局部的にこの反応に拮抗する薬剤を使用することである。
薬剤溶離被膜は近年は強い関心をもたらした。現在では全く広範囲に心臓学で血管形成薬剤溶離栓塞杆において使用され、他の展開は臀部及び膝移植についての整形外科で行なわれる。それらは2つの主群に分類されることができる。第1群において、溶離されるべき薬剤は被膜に混合され、被膜の溶解に並行してまたは被膜あるいは被膜の一部を通した拡散によるいずれかで放出されるであろう。第2群において、薬剤は連続溜めとして作用する被膜多孔質に含まれる。体液が多孔性に浸透し、溶解するときに放出される。
任意種類の被膜について、厚さはその安定性に直接影響を有する限界アスペクトである。文献から厚被膜は弱く、時間を通じて破壊する高い傾向があることはよく知られる。被膜厚さを減少することにより寿命は改良される、しかし結果として貯えられる薬剤量は減少される。薬剤で充填されることができ、溜めとして作用する小形中空を生ずることによりこの量は厚さの減少にもかかわらず維持されることができる。
従来技術は薬剤放出用多孔質被膜を生ずる異なる方法を示す。例えば、リード、ルーイ及びライ(Reed, Looi and Lye)(特許文献1)は金属合金の差異侵蝕を使用する。合金の一成分を除去することにより多孔質層を生ずる。ブランダウ及びフィッシャー(Brandau and Fisher)(特許文献2)は陽極酸化と組合せた電解酸化により多孔性を生ずる。ハーレン、コヴァクス及びヴォルフ(Herlein, Kovacs and Wolf)(特許文献3))は電気化学誘導点蝕によって金属栓塞杆表面において気孔を生ずる。これらの孔は次にセラミック層で被覆される。すべてのこれらの場合において、生ずる多孔性は寸法について均質であるかまたは少なくとも均質寸法分布を有するという不利を有する。結果として、薬剤負荷量は低い(小気孔)かまたは放出は短期間(大気孔)にすなわち数時間に発生する。実際には、大量の薬剤を数日〜数週間に貯え、放出するために、被膜は2つの多孔性:溜めとして作用し、薬剤が貯えられる大寸法のもの、及び、放出分子と同様寸法で拡散膜として作用する別のものを組合せなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】カナダ国特許第2503625号明細書
【特許文献2】米国特許第6709379号明細書
【特許文献3】欧州特許第1319416号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
同時に高薬剤負荷量と薬剤緩効性を得ることはマイクロまたはナノ範囲界の気孔寸法分布を有する異方性多孔質被膜で達成される。これらの被膜は、以下の方法
−表面を有する支持体を用意すること、
−前記表面上に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積すること、
−少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積すること(ただし、前記被膜は多孔性である。)、
−前記一時粒子を除去して気孔を形成し、異方性気孔寸法分布の多孔性構造を得ること、前記工程はさらに被膜固定段階を含む、により製造される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】2つの可能実施形態の異なる工程段階を示す図である。
【図2】可能被膜実施形態である。
【図3】別可能被膜実施形態である。
【図4】当該発明に従う方法を受けた対象物第一写真である。
【図5】当該発明に従う方法を受けた対象物第二写真である。
【図6】当該発明に従う方法を受けた対象物第三写真である。
【図7】当該発明に従う方法を受けた対象物第四写真である。
【図8】当該発明に従う方法を受けた対象物第五写真である。
【図9】溜め領域とない領域概略図である。
【図10】栓塞杆突張りについての薄及び厚被膜可能分布である。
【図11】充填手順概略図である。
【0006】
〔表1〕本発明による多孔性表面の異製造可能性を要約する表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明により得られる被膜は気孔が寸法について異なり、異方性に配列されることを特性とする。マイクロ気孔は物体表面に近接して生じ、薬剤を貯えるのに使用され、ところが一方で、ナノ気孔は被膜自由表面に向かって外側に配列され、解離膜として作用する。
【0008】
非限定例として、以後金属基材上の被膜だけを議論する。しかし、同じ説明は任意種類の塗料に適用されることができ、被膜は異種類の物質:金属、セラミックス、ポリマー、ヒドロゲルまたは任意のこれらの物質の組合せからなることができる。それゆえに、下記のセラミックという語はポリマー、金属または組合せにより置換されることができ、同じことが金属にあてはまることにおいて理解される。プロセス段階の差に対して、表1は可能な組合せの大部分について適用されることを必要とする変形を記載する。
【0009】
多孔質被膜は生体に接触するので、好ましくは生体適合性物質からなる。施用に依存してこれは限定的ではないが酸化物、ホスフェート、カーボネート、窒化物または炭窒化物であることができる。酸化物の中では以下のものが望ましい:酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ジルコニウムまたは酸化チタン。ある場合には被膜は時間によって溶解するであろう、そして生体組織により置換されることが可能である生分解性物質からなることもできる。基材は金属、セラミックス、ポリマーまたは任意のこれらの組合せのような物質からなる。ステンレス鋼、ニチノール(Nitinol)、チタン、チタン合金、またはアルミニウムのような金属、及び、ジルコニア、アルミナ、または燐酸カルシウムのようなセラミックスは特に重要である。時間によって溶解するであろう、そして生体組織により置換されることが可能である生分解性物質であることもできる。
【0010】
被膜は10 ナノメートル〜10 ミリメートル、好ましくは200 ナノメートル〜30 マイクロメートルの厚さを有する。厚被膜はより多数の溜め中空の発生を許容し、ところが一方で、薄被膜は機械的により耐性であろう。厚さはそれゆえに必要なだけの薬剤を装填する一方で完全安定度を維持する最適値として選択される。
【0011】
多孔性は寸法分布が異方性であるように造られる。好ましくは、被膜において気孔寸法分布の中央値は物体表面から被膜自由表面へ変化し、前記自由表面は支持体から離れている被膜表面である。好ましくは、被膜自由表面においての気孔寸法分布平均は数μm未満である。
【0012】
別変型において、被膜は異なる多孔度寸法分布の相異部分層からなる。この場合には部分層の1つは数μm未満の平均気孔寸法分布を有し、最小平均気孔寸法分布の部分層は被膜自由表面に近接して配置される。両方の平均気孔径は係数5〜10で異なる。
【0013】
望ましい実施形態において、より小さい多孔度はナノメートル範囲に固定される。膜による液体拡散は拡散係数で記述される。この係数は膜厚さ、気孔密度、それらの大きさおよびそれらのくねりで変化する。特に気孔寸法は拡散するであろう分子寸法と同様であるとすれば拡散に影響するものである。
【0014】
1つの可能な実施形態においてマイクロメートル程度中空は移植材料の上に原型を堆積することにより造られる。この原型は、例えば、基材の上への浸漬被覆により堆積される単層ポリスチレン粒子からなる。次にセラミックで部分的に被覆され、ところが一方で拡散膜はナノ多孔性セラミックの第二層を加えることにより製造される。最後に原型物質は熱処理により除去され、中空が造られる。この実施形態は図2において概略、横断面図に示される。2つの部分層からなるセラミック皮膜は金属基材(1)の上に塗被されている。下層は緻密セラミック(3)についての埋封微孔(2)(ミクロン範囲径の気孔)からなる。上層はナノ多孔性セラミック(4)(ナノメートル範囲の気孔を有するセラミック)からなる。
【0015】
図3は本発明の別の可能な実施形態の横断面の略図を示す。その実施形態においてマイクロ気孔(2)はナノ多孔性セラミック(4)に埋封される。この第2の実施形態の上面視写真は図4に示される。1マイクロメートル径マイクロ気孔(5)は上部ナノ多孔性層(6)を通して見られることができる。コントラスト差(マイクロ気孔の黒形状)は不良導電性セラミックの充填効果のためである。同じ被膜は横断面写真として図5に示される。白金棒材7(被膜を区分するために使用される)下に被膜の異なる層が識別されることができる。基材(1)上に1つのものは脱離一時粒子により造られる空孔(2)を有し、前記気孔はナノ粒子(5)とナノ気孔(6)からなる多孔構造(4)により囲まれる。多孔性は基材に隣接して位置する大気孔と被膜自由表面に向かう小気孔が制御されるように造られる。この制御分布は被膜異方性気孔構造を与える。これらの粒子いくつかが一緒に配置されれば、連結マイクロキャビティを得る。
【0016】
さらなる変型において、気孔は水性媒体において緩速解離されることができる親油性溶液により充填されるために疎水性にされるか、または、気孔は親水性溶液により充填されるために親水性にされる。
【0017】
一般的塗被工程
下記のものはそのような異方性被膜を得るために使用される工程の2つの可能変型の説明である。これらの変型についての段階は図1に示される。塗被工程の第1の実施形態は以下の段階を含む:
1)表面を有する支持体または基材は提供される(図1a));
2)1つの一時粒子単層は支持体または基材の上に堆積され、一時粒子構成または原型を形成する(図1b));
3)被膜は支持体または基材の上に堆積される(ただし、被膜はナノ多孔性である。)(図1c));
4)一時粒子は異方性気孔寸法分布を有する多孔性構造を得るために除去され、従って気孔を形成する(図1d));
5)被膜は固着段階によって団結される。
【0018】
工程の第2の実施形態において、被膜は2つの異なる被膜から、前記一時粒子を完全にではなく被覆する第一濃密被膜(図1e)、及び第二ナノ多孔性被膜(図1f)によりなり、前記第一被膜は前記第二多孔性被膜の沈積前に乾燥される。最後に粒子は除去され、異方性寸法分布の気孔を形成し(図1g)、被膜は固着段階によって団結される。この実施形態において、第一被膜は一時粒子近傍に緻密構造を形成する。
【0019】
本説明において、術語「除去する」は一般の意味に使用される。粒子形態について重要変化に関連する、例えば、砕解、溶解または排除のような任意常用術語を包含する。たとえば限定的ではないが、一時粒子の除去は熱的段階、化学的段階、機械的段階、電気機械的または照射段階を含むことが可能である。熱的、化学的または照射段階の場合には一時粒子は全くか、または部分的のみか、例えば粒子は中空にされることができる、いずれかに分解される。機械的段階の場合には一時粒子は機械的に分離されることができる。電気機械的段階の場合には(例えば、超音波処理または超音波振動)、粒子は膨潤される(例えば、PLGAのような高分子粒子の使用により)かまたは砕解されることができる。さらに除去段階と団結段階は1つの単段階であることが可能である。
【0020】
「一時」という用語は「工程中に限定時間のみ存在する」と理解されなければならない。一時粒子は被膜三次元構造及び多孔性を与える原型と見られることができる。
【0021】
語句「粒子単層」とは粒子が支持体表面に関して同レベルであることをいう。各単層について粒子は別のものの上面には位置しない。
【0022】
一時粒子堆積または原型
好ましくは本発明において、この段階は浸漬被覆により実行される。一時粒子は溶液中(例えば、水)にあり、基材は前記溶液に浸漬される。当該分野において知られているように、基材上に存在する粒子密度は、溶液の粒子濃度、基材の取出し速度、及びまた基材表面処理に依存するであろう。すべてのこれらのパラメーターは当業者により調整され、基板上の所望粒子密度を達する。
【0023】
一時粒子及び被膜はスラリーとして、合わせて堆積されることが可能である。
【0024】
粒子
一時粒子径及び形状は任意に選ばれることができる。しかし、優先は形状及び寸法について均質粒子に与えられる。粒子化学組成はまた随意である、しかし好ましくはポリマー、澱粉、シリカ、金属、または細胞のような生物材料の群において選択される。優先は球形状及び均質径のポリマー物質:単分散ポリマービーズに与えられる。例えば、ポリスチレンは有利に使用されることが可能である。それらは多数寸法において容易に利用可能であり、寸法について非常にばらつきがない。代替的に、生体適合ポリマー(例えば、PLGAまたはポリラクチドグリコリド酸型)も使用されることができる。
【0025】
支持体上に堆積されるときに一時粒子は互いに接触しているかまたは少しの空間で隔てられるかいずれかであることができる。接触するときに、接触面の大きさは粒子表面化学及び表面親和性を変化することにより変更されることができる。湿潤粒子を用いることにより増加されるかまたはテフロン(登録商標)のような非湿潤粒子を用いるときには点様接触に減少されることができる。
【0026】
親水性及び/又は疎水性一時粒子を用いることは被膜多様構造の生成を許容する。一時粒子の堆積前に基材は各親水性、疎水性層で局部的に覆われる。このように特定域は一時粒子を類似表面親和性で固着するために適合され、ところが一方で他域への接着は防止される。ステントの場合には変形を受けるほどでない塗層領域だけに有利であるかもしれない;その代わりに脈管内膜に接触して増殖または炎症を予防するために薬剤解離に導く塗層領域だけに有利であるかもしれない。骨または歯科移植材料の場合には、骨内生が好都合である領域とそれが妨げられる領域を選択することが有利であるかもしれない。
【0027】
被膜堆積
異なる手順は被膜堆積に考慮されることができる。使用される被膜先駆物質および被膜の所望性質によって選ばれる。多少の例は以下に与えられる。
【0028】
被膜を基材の上に堆積する第1の手順は、例えば、水のような溶媒においてナノ粒子混合物を被膜先駆物質として使用する。基材は先駆物質混合物に浸漬され、制御速度で引き出される。被膜厚さは混合物粘性及び引取速度で変化する。
別手順は金属アルコキシドのヒドロキシル化及び部分縮合により得られるゾルを被膜先駆物質として使用する。再び、先駆物質は基材の上に浸漬または回転被覆を用いて塗被される。
【0029】
他の手順において、除去しうる粒子と例えば、水に溶解される被膜先駆物質の両方を含むスラリーは基材の上に塗被される。
【0030】
すべての場合に被膜は数段階または部分層で堆積されることができる。各部分層の堆積の間に被膜先駆物質溶媒は、例えば、熱処理により部分的にまたは完全に除去されることができる。このアプローチはより厚く亀裂のない被膜の形成を許す。被膜先駆物質組成も各段階で変更されることができる。これは可変化学組成被膜の形成を許容する。例えば、被膜化学組成は被膜/基材境界面において基材のものと非常に類似していることができ、人体との界面において全く適合性であることができる。被膜を生成するナノ粒子またはゾル−ゲルアプローチは結晶被膜を得る必要温度を減少する利点を提供する。これは特に熱処理されるときに相転移を経てそれゆえにその機械または形状記憶性質部分を失う可能性がある金属基材に有利である。
【0031】
方法の第1の実施形態によれば、一時粒子を全被覆する1つの単独第一被膜の堆積のみが存在し、前記単被膜はナノ多孔性構造を有する。そのような多孔性構造はここで以下に示される粒子の除去を許容する。
【0032】
方法の第2の実施形態によれば、被膜は実際には2つの被膜、堆積(例えば、乾燥される)後に処理される第一被膜、前記第一被膜は堆積粒子を全被覆せず、方法の第1の実施形態においてのように多孔性構造を有する第二被膜を次に含む。
【0033】
典型的には上に示された2つの実施形態によるこれらの被膜はそれ自体当該分野において知られるナノ粒子を用いるかまたはゾル−ゲル方法により実現される。もちろん、多孔性構造を与える他の方法は本発明において予見されることが可能である。
【0034】
粒子排除
一時粒子除去は、例えば、限定的ではないが熱的、化学的、機械的、電気機械的、光化学または照射段階のような異なる方法により達成されることができる。また工程の異なる段階において、被膜要求条件に依存して、固着段階前及び/又は中及び/又は後に生ずることができる。
【0035】
固着
任意の適当な方法は固着段階に使用されることができる。有利には乾燥段階が用いられる。
【0036】
被膜固着段階は粒子除去段階前に起こることができるか、または、粒子除去段階と同時にもしくは粒子除去段階後であっても起こることができる。
【0037】
セラミックスについてこれは晶相が形成される焼結であることができる。ポリマーについてこれは光化学的(可視紫外線による)、熱的または化学的誘導重合であることができる。金属についてまたは一定のセラミックスについてこれは制御(中性または還元)雰囲気下の熱処理であることができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は図3〜図6において示されたものと同様構造を有する被膜実現を記載する。
1つの実施形態において316Lステンレス鋼のような好ましい基材が使用され、塗被されることになる。基材調製は、フェルマ外(生物医学材料工学(Biomed Mater Eng.)、2006年、第16巻、p.381-395)により記載されるように電気化学的に艶出されることができる。
TiO2ナノ粒子(テックパウダー、ローザンヌ、スイス)の懸濁液はPVA(ポリビニルアルコール)、結合剤、及びコロイド安定化を助長するアンモニアを加えることで調製される。ナノ粒子規格値はD10=38nm、D50=62nm、D90=82nm(CPSディスク遠心機TM)である。
ディップコーター(スピードライン・テクノロジーズ(Speedline TechnologiesTM)からのPL 3201)が準備され、取出し速度90 [mm/sec]に調整される。基材は初めに1マイクロメートル径ポリスチレンミクロビーズ水系懸濁液(デューク・サイエンティフィック、バークリー)に浸漬される。表面積ごとの堆積ビーズ数はその懸濁液濃度と取出し速度で変化する。そこでミクロビーズで被覆された基材は次に第二の時間、ビーズをTiO2層で被覆するために以前説明された同じセラミックナノ粒子懸濁液において浸漬被覆される。セラミック層は工程パラメーターと予定される使用に依存して厚さについて変化することができる。この実施例においてビーズは完全に被覆されるものである。TiO2懸濁液はビーズを被覆する圧縮層を形成するものである。最終層厚さは概略1.5マイクロメートルである。
最後に、制御耐候室において10%RH及び37℃で10分の乾燥時間後に被覆基材はオーブンにおいて二段法で焼結される。第一焼去段は500℃、空気下、1時間行なわれる。この段階はポリマービーズが焼き去られ、レンズ形中空をTiO2層に残すものである。焼結第二段階は800℃、1.5時間、制御アルゴン雰囲気で第一に直ちに続く。この第二段階はセラミック層を団結するようにはたらくものである。
【0039】
被膜を与え、装填するインクジェット式方法の使用
異なる種類の現在利用可能インクジェット式プリント技術が存在する。例として以後ドロップ・オン・デマンド式技術を説明する。この技術において物質ミクロ液体粒子は噴射口を通じて表面上に発射される。噴射口及び/表面は全空間方位(x,y,z)に動かされることができる。この運動は表面においての液体粒子最終局在について精密制御を許容する。液体粒子を停止し、表面到達を妨げるためにその軌跡を振らせ、貯蔵器に戻すであろう電界は噴射口出口において印加される。
【0040】
インクジェット式アプローチの利点
インクジェット式方法は上に説明された被膜堆積段階ごと:
・原型堆積用
・セラミック被膜堆積用
・気孔を活性物質で充填するため
に適用されることができる。各段階について工程の完全空間制御を許容する。インクジェット式方法空間分解能はマイクロメートルの数十分の一程度である。
【0041】
インクジェット式方法を用いる原型堆積
原型粒子域と原型粒子のない域を規定することは溜め帯域とそのような溜めのない帯域生成を許容する(図9)。溜め域は次に有効物質を装填されるものであり、ところが一方で溜めのない域はそのような有効物質がないものである。塗被ステントの場合には及び特定の実施形態において、中空は脈管壁に接触する表面においてステント外側に向かって造られるだけのものである。この配置は血流への薬剤直接拡散を最小にするものである。
このアプローチの他の利点はセラミック被膜厚さを変更できることである。セラミック被膜の限界アスペクトはその比較的低変形抵抗である。基材形状が変更されるときには被膜は新規形状に適合されなければならず、これは層の割れを与える可能性がある。これらの割れは相当の離層及び結果として粒解離を発生することがある。変形抵抗は薄塗膜を使用することにより強く改良されることができる。溜めのない域は薄くなりそれゆえにより変形に耐えるものである。特定の実施形態において原型ビーズは弱い変形域についてのみ堆積されることができる。高ひずみ域は、図10において示されるようにセラミックだけで塗被されることができる。
【0042】
インクジェット式方法を用いるセラミック被膜の堆積
ここで再びインクジェット式方法は高い柔軟性を提供する。異なった組成及び多孔度のセラミックは基材相異部分において塗被されることができる。例えば、塗膜の外多孔性(気孔径及び長さ、くねり)は装填活性物質溶離プロファイルを駆動することになる基本要素である。被膜相異領域において異なった多孔度を有することは異効性プロファイル生成を許容するものである。インク噴射はそれゆえにステントについて相異位置に異ナノ粒子懸濁液の堆積を許容し、従って異外多孔性及び物質効性プロファイルをもたらす。
【0043】
インクジェット式方法を用いる被膜充填
1つの実施形態において被膜は以下の手順:
・被塗装置は密室に置かれ、真空を使用される。
・活性物質含有溶液は表面上に堆積される
・真空は後に破られる。気孔についての外圧と真空の組合せは溶液を気孔に駆動する。
・溶媒が蒸発される
によって活性物質を充填される。
インクジェット式方法を用いて気孔を充填することにより詳細には与えられる基材の一定領域を装填することができる。異分子組成は単独被膜において装填されることができ(図11)、その空間局在が調整されることができる(例えば、ある種物質は大部分被塗装置端において配置されることができる一方で他物質は主として中心に位置決定される。)。
【0044】
目的
以前に議論された工程は被膜並びに特有及び原特徴を有するそのような被膜を支持する物の製造を許容する。
【0045】
用途
これらの物の主用途は、上で説明された異なる実施形態と変型から容易に理解されることができるように医療移植材料の分野にある。特に重要なものはステント、整形用及び歯科用移植材料である。多孔性は制御されるように時間でその内容物を解離するものである薬剤溜めとして使用されることができるか、または、組織内生を助けるために使用されてそれゆえに移植材料と生体組織の機械的結合を増加することができる。
【0046】
ステントについて被膜は一または数薬剤を装填されることができる。非限定的な例として与えられる次の薬剤:増殖防止剤、凝固防止物質、感染防止材、制菌性物質の組合せであることができる。
【0047】
対象物はまた整形用または歯科用移植材料であることができる、ただし、気孔は上述ステントについてのものと同様に適合されることが可能である。そのような場合には得られる多孔性は骨生長ファクターのような生長ファクターを蓄積するか、生体適合性を増加するか、または、骨または軟骨組織が生長して固体態様で移植材料に接着するためいずれかに重要であることができる。これは燐酸カルシウムのような吸収性生体作用セラミックスで中空を充填することによっても達成されることができる。
【0048】
したがって支持体は金属から、セラミックスまたはポリマーからなることができる。生分解性物質からなることもできる。
【0049】
この用途において被膜は非多孔性領域を含むことが可能である。そのような領域は10マイクロメートルより大きい最小寸法と10ミリメートルより小さい最大寸法を有することが可能である。変型において、これらの領域は100マイクロメートル大最小寸法を有する。別変型において、これらの領域は1ミリメートル小最大寸法を有する。
【0050】
気孔寸法はまた緩効されることができる活性物質を含むビーズ、粒子またはポリマーを拡散するために適合されることが可能である。
【0051】
代替的にビーズまたは粒子は放射線照射を発することができる。有利にはそのような場合においてビーズまたは粒子は中空内に残ることになる。
【0052】
図及び表
本発明は以下の図及び表からさらに十分に理解されるものである。
【0053】
【表1】
【0054】
図1において被膜工程の異なる段階が示される。1a) は工程前基材(1)を示す。第一段階1b) は一時粒子(8)または原型堆積である。説明において及び表1において表わされるように、粒子は数物質からなることができ、分散した層でまたは緻密層で堆積されることができる。図1c) 及び1d) は、図3において示される実施形態に該当して一可能被膜工程を示す一方で、図1e) 及び1g) は図2において示される実施形態に該当する別被膜工程を示す。第一アプローチにおいて、ナノ多孔性被膜(4)は原型粒子1b) 近傍とそれより上に堆積される一方で、他アプローチにおいて緻密層(3)は初めに原型粒子近傍にそれを被覆することなく堆積され、及び、ナノ多孔性層(4)はこの緻密層および原型粒子より上に堆積される。両事情1d) 及び1g) において原型粒子は最終的に取り除かれて薬剤を装填するのに使用されるマイクロ−気孔を与える。したがって被膜は、例えば、多孔性層を通して僅小効性であることができる薬剤を含むことができる溜構造を形成する。
【0055】
図2は本発明の可能実施形態の横断面略図である。2つの部分層からなるセラミック皮膜は金属基材の上に被覆される。下層は緻密セラミック(3)に埋封されたマイクロ気孔(ミクロン領域径の気孔)からなる。上層はナノ多孔性セラミック(4)(ナノメートル領域気孔のセラミック)からなる。
【0056】
図3はマイクロ気孔(2)は図2において示される緻密セラミック層(3)がなく、ナノ多孔性セラミック(4)に埋封される本発明の別実施形態である。
【0057】
図4は本発明の工程の第一実施形態(1a)〜1d))により製造される構造の上面図画像である。ナノ多孔性層(5)及び(6)により被覆される1マイクロメートル径マイクロ気孔(黒色円形状)を見る。
【0058】
図5は白金棒(7)(被膜を区画するために使用される)のすぐ下に被膜の異なる層を示す被膜横断面を示す。基材(1)上に除去一時粒子により残される空マイクロ気孔(2)を見て、前記気孔はナノ粒子(5)とナノ気孔(6)からなるナノ多孔構造(4)により囲まれる。
【0059】
図6はマイクロ気孔(2)接近図であり、ナノ粒子(5)とナノ気孔(6)と白金棒(7)を有する基材(1)及びナノ多孔構造を示す。
【0060】
図7は被膜上面図であって最密充填粒子群はナノ多孔構造(4)により被覆される連結空微視孔系を造っている。
【0061】
図8は図7において示される被膜の横断面である。基材(1)上に、ナノ多孔構造(4)により囲まれ、白金板(7)により覆われる空連続マイクロ気孔(2)列を見る。
【0062】
図9は被膜横断面を示す略図である。左方には被膜は溜器を含まない、ところが一方で右方にはマイクロメートル寸法溜器を含む。
【0063】
図10はステント支柱略図である。この支柱について強い変形を受けるであろう部分は薄層で被覆される一方で厚被膜は他場所に堆積される。
【0064】
図11は充填手順略図である。インク噴射式方法を用いて第一分子は被膜第一域に装填される一方で他領域は第二分子を装填される。
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ及びナノ−寸法ドメインについて制御構造の多孔質被膜を作る方法に関する。特に、限定的ではないが異方性細孔寸法分布の塗膜を作る方法及びそのような塗被を用いて得られる被膜に関する。
それはまたマイクロ及びナノ−寸法ドメインについて制御構造の多孔質被膜に関する。被膜は10 ナノメートル〜10 ミリメートル厚さを有し、その多孔性は細孔寸法分布が異方性であるように与えられる。
本発明は最後に前記被膜で被覆された物に関連する。
【背景技術】
【0002】
被膜は多種技術分野において特に薬用分野において使用されることが可能である。
系統投与薬剤に基づく療法不良は多くの原因を有する、しかし1つの典型的理由は治療されるべき座において必要用量達成不能である。この効果は特に移植に追随する治療に正当である。移植材料は身体に配置されるときには、時間の大部分が基材について長期試験に有害である反応を誘導する小損傷を誘発する。この問題に取組む方法は局部的にこの反応に拮抗する薬剤を使用することである。
薬剤溶離被膜は近年は強い関心をもたらした。現在では全く広範囲に心臓学で血管形成薬剤溶離栓塞杆において使用され、他の展開は臀部及び膝移植についての整形外科で行なわれる。それらは2つの主群に分類されることができる。第1群において、溶離されるべき薬剤は被膜に混合され、被膜の溶解に並行してまたは被膜あるいは被膜の一部を通した拡散によるいずれかで放出されるであろう。第2群において、薬剤は連続溜めとして作用する被膜多孔質に含まれる。体液が多孔性に浸透し、溶解するときに放出される。
任意種類の被膜について、厚さはその安定性に直接影響を有する限界アスペクトである。文献から厚被膜は弱く、時間を通じて破壊する高い傾向があることはよく知られる。被膜厚さを減少することにより寿命は改良される、しかし結果として貯えられる薬剤量は減少される。薬剤で充填されることができ、溜めとして作用する小形中空を生ずることによりこの量は厚さの減少にもかかわらず維持されることができる。
従来技術は薬剤放出用多孔質被膜を生ずる異なる方法を示す。例えば、リード、ルーイ及びライ(Reed, Looi and Lye)(特許文献1)は金属合金の差異侵蝕を使用する。合金の一成分を除去することにより多孔質層を生ずる。ブランダウ及びフィッシャー(Brandau and Fisher)(特許文献2)は陽極酸化と組合せた電解酸化により多孔性を生ずる。ハーレン、コヴァクス及びヴォルフ(Herlein, Kovacs and Wolf)(特許文献3))は電気化学誘導点蝕によって金属栓塞杆表面において気孔を生ずる。これらの孔は次にセラミック層で被覆される。すべてのこれらの場合において、生ずる多孔性は寸法について均質であるかまたは少なくとも均質寸法分布を有するという不利を有する。結果として、薬剤負荷量は低い(小気孔)かまたは放出は短期間(大気孔)にすなわち数時間に発生する。実際には、大量の薬剤を数日〜数週間に貯え、放出するために、被膜は2つの多孔性:溜めとして作用し、薬剤が貯えられる大寸法のもの、及び、放出分子と同様寸法で拡散膜として作用する別のものを組合せなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】カナダ国特許第2503625号明細書
【特許文献2】米国特許第6709379号明細書
【特許文献3】欧州特許第1319416号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
同時に高薬剤負荷量と薬剤緩効性を得ることはマイクロまたはナノ範囲界の気孔寸法分布を有する異方性多孔質被膜で達成される。これらの被膜は、以下の方法
−表面を有する支持体を用意すること、
−前記表面上に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積すること、
−少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積すること(ただし、前記被膜は多孔性である。)、
−前記一時粒子を除去して気孔を形成し、異方性気孔寸法分布の多孔性構造を得ること、前記工程はさらに被膜固定段階を含む、により製造される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】2つの可能実施形態の異なる工程段階を示す図である。
【図2】可能被膜実施形態である。
【図3】別可能被膜実施形態である。
【図4】当該発明に従う方法を受けた対象物第一写真である。
【図5】当該発明に従う方法を受けた対象物第二写真である。
【図6】当該発明に従う方法を受けた対象物第三写真である。
【図7】当該発明に従う方法を受けた対象物第四写真である。
【図8】当該発明に従う方法を受けた対象物第五写真である。
【図9】溜め領域とない領域概略図である。
【図10】栓塞杆突張りについての薄及び厚被膜可能分布である。
【図11】充填手順概略図である。
【0006】
〔表1〕本発明による多孔性表面の異製造可能性を要約する表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明により得られる被膜は気孔が寸法について異なり、異方性に配列されることを特性とする。マイクロ気孔は物体表面に近接して生じ、薬剤を貯えるのに使用され、ところが一方で、ナノ気孔は被膜自由表面に向かって外側に配列され、解離膜として作用する。
【0008】
非限定例として、以後金属基材上の被膜だけを議論する。しかし、同じ説明は任意種類の塗料に適用されることができ、被膜は異種類の物質:金属、セラミックス、ポリマー、ヒドロゲルまたは任意のこれらの物質の組合せからなることができる。それゆえに、下記のセラミックという語はポリマー、金属または組合せにより置換されることができ、同じことが金属にあてはまることにおいて理解される。プロセス段階の差に対して、表1は可能な組合せの大部分について適用されることを必要とする変形を記載する。
【0009】
多孔質被膜は生体に接触するので、好ましくは生体適合性物質からなる。施用に依存してこれは限定的ではないが酸化物、ホスフェート、カーボネート、窒化物または炭窒化物であることができる。酸化物の中では以下のものが望ましい:酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ジルコニウムまたは酸化チタン。ある場合には被膜は時間によって溶解するであろう、そして生体組織により置換されることが可能である生分解性物質からなることもできる。基材は金属、セラミックス、ポリマーまたは任意のこれらの組合せのような物質からなる。ステンレス鋼、ニチノール(Nitinol)、チタン、チタン合金、またはアルミニウムのような金属、及び、ジルコニア、アルミナ、または燐酸カルシウムのようなセラミックスは特に重要である。時間によって溶解するであろう、そして生体組織により置換されることが可能である生分解性物質であることもできる。
【0010】
被膜は10 ナノメートル〜10 ミリメートル、好ましくは200 ナノメートル〜30 マイクロメートルの厚さを有する。厚被膜はより多数の溜め中空の発生を許容し、ところが一方で、薄被膜は機械的により耐性であろう。厚さはそれゆえに必要なだけの薬剤を装填する一方で完全安定度を維持する最適値として選択される。
【0011】
多孔性は寸法分布が異方性であるように造られる。好ましくは、被膜において気孔寸法分布の中央値は物体表面から被膜自由表面へ変化し、前記自由表面は支持体から離れている被膜表面である。好ましくは、被膜自由表面においての気孔寸法分布平均は数μm未満である。
【0012】
別変型において、被膜は異なる多孔度寸法分布の相異部分層からなる。この場合には部分層の1つは数μm未満の平均気孔寸法分布を有し、最小平均気孔寸法分布の部分層は被膜自由表面に近接して配置される。両方の平均気孔径は係数5〜10で異なる。
【0013】
望ましい実施形態において、より小さい多孔度はナノメートル範囲に固定される。膜による液体拡散は拡散係数で記述される。この係数は膜厚さ、気孔密度、それらの大きさおよびそれらのくねりで変化する。特に気孔寸法は拡散するであろう分子寸法と同様であるとすれば拡散に影響するものである。
【0014】
1つの可能な実施形態においてマイクロメートル程度中空は移植材料の上に原型を堆積することにより造られる。この原型は、例えば、基材の上への浸漬被覆により堆積される単層ポリスチレン粒子からなる。次にセラミックで部分的に被覆され、ところが一方で拡散膜はナノ多孔性セラミックの第二層を加えることにより製造される。最後に原型物質は熱処理により除去され、中空が造られる。この実施形態は図2において概略、横断面図に示される。2つの部分層からなるセラミック皮膜は金属基材(1)の上に塗被されている。下層は緻密セラミック(3)についての埋封微孔(2)(ミクロン範囲径の気孔)からなる。上層はナノ多孔性セラミック(4)(ナノメートル範囲の気孔を有するセラミック)からなる。
【0015】
図3は本発明の別の可能な実施形態の横断面の略図を示す。その実施形態においてマイクロ気孔(2)はナノ多孔性セラミック(4)に埋封される。この第2の実施形態の上面視写真は図4に示される。1マイクロメートル径マイクロ気孔(5)は上部ナノ多孔性層(6)を通して見られることができる。コントラスト差(マイクロ気孔の黒形状)は不良導電性セラミックの充填効果のためである。同じ被膜は横断面写真として図5に示される。白金棒材7(被膜を区分するために使用される)下に被膜の異なる層が識別されることができる。基材(1)上に1つのものは脱離一時粒子により造られる空孔(2)を有し、前記気孔はナノ粒子(5)とナノ気孔(6)からなる多孔構造(4)により囲まれる。多孔性は基材に隣接して位置する大気孔と被膜自由表面に向かう小気孔が制御されるように造られる。この制御分布は被膜異方性気孔構造を与える。これらの粒子いくつかが一緒に配置されれば、連結マイクロキャビティを得る。
【0016】
さらなる変型において、気孔は水性媒体において緩速解離されることができる親油性溶液により充填されるために疎水性にされるか、または、気孔は親水性溶液により充填されるために親水性にされる。
【0017】
一般的塗被工程
下記のものはそのような異方性被膜を得るために使用される工程の2つの可能変型の説明である。これらの変型についての段階は図1に示される。塗被工程の第1の実施形態は以下の段階を含む:
1)表面を有する支持体または基材は提供される(図1a));
2)1つの一時粒子単層は支持体または基材の上に堆積され、一時粒子構成または原型を形成する(図1b));
3)被膜は支持体または基材の上に堆積される(ただし、被膜はナノ多孔性である。)(図1c));
4)一時粒子は異方性気孔寸法分布を有する多孔性構造を得るために除去され、従って気孔を形成する(図1d));
5)被膜は固着段階によって団結される。
【0018】
工程の第2の実施形態において、被膜は2つの異なる被膜から、前記一時粒子を完全にではなく被覆する第一濃密被膜(図1e)、及び第二ナノ多孔性被膜(図1f)によりなり、前記第一被膜は前記第二多孔性被膜の沈積前に乾燥される。最後に粒子は除去され、異方性寸法分布の気孔を形成し(図1g)、被膜は固着段階によって団結される。この実施形態において、第一被膜は一時粒子近傍に緻密構造を形成する。
【0019】
本説明において、術語「除去する」は一般の意味に使用される。粒子形態について重要変化に関連する、例えば、砕解、溶解または排除のような任意常用術語を包含する。たとえば限定的ではないが、一時粒子の除去は熱的段階、化学的段階、機械的段階、電気機械的または照射段階を含むことが可能である。熱的、化学的または照射段階の場合には一時粒子は全くか、または部分的のみか、例えば粒子は中空にされることができる、いずれかに分解される。機械的段階の場合には一時粒子は機械的に分離されることができる。電気機械的段階の場合には(例えば、超音波処理または超音波振動)、粒子は膨潤される(例えば、PLGAのような高分子粒子の使用により)かまたは砕解されることができる。さらに除去段階と団結段階は1つの単段階であることが可能である。
【0020】
「一時」という用語は「工程中に限定時間のみ存在する」と理解されなければならない。一時粒子は被膜三次元構造及び多孔性を与える原型と見られることができる。
【0021】
語句「粒子単層」とは粒子が支持体表面に関して同レベルであることをいう。各単層について粒子は別のものの上面には位置しない。
【0022】
一時粒子堆積または原型
好ましくは本発明において、この段階は浸漬被覆により実行される。一時粒子は溶液中(例えば、水)にあり、基材は前記溶液に浸漬される。当該分野において知られているように、基材上に存在する粒子密度は、溶液の粒子濃度、基材の取出し速度、及びまた基材表面処理に依存するであろう。すべてのこれらのパラメーターは当業者により調整され、基板上の所望粒子密度を達する。
【0023】
一時粒子及び被膜はスラリーとして、合わせて堆積されることが可能である。
【0024】
粒子
一時粒子径及び形状は任意に選ばれることができる。しかし、優先は形状及び寸法について均質粒子に与えられる。粒子化学組成はまた随意である、しかし好ましくはポリマー、澱粉、シリカ、金属、または細胞のような生物材料の群において選択される。優先は球形状及び均質径のポリマー物質:単分散ポリマービーズに与えられる。例えば、ポリスチレンは有利に使用されることが可能である。それらは多数寸法において容易に利用可能であり、寸法について非常にばらつきがない。代替的に、生体適合ポリマー(例えば、PLGAまたはポリラクチドグリコリド酸型)も使用されることができる。
【0025】
支持体上に堆積されるときに一時粒子は互いに接触しているかまたは少しの空間で隔てられるかいずれかであることができる。接触するときに、接触面の大きさは粒子表面化学及び表面親和性を変化することにより変更されることができる。湿潤粒子を用いることにより増加されるかまたはテフロン(登録商標)のような非湿潤粒子を用いるときには点様接触に減少されることができる。
【0026】
親水性及び/又は疎水性一時粒子を用いることは被膜多様構造の生成を許容する。一時粒子の堆積前に基材は各親水性、疎水性層で局部的に覆われる。このように特定域は一時粒子を類似表面親和性で固着するために適合され、ところが一方で他域への接着は防止される。ステントの場合には変形を受けるほどでない塗層領域だけに有利であるかもしれない;その代わりに脈管内膜に接触して増殖または炎症を予防するために薬剤解離に導く塗層領域だけに有利であるかもしれない。骨または歯科移植材料の場合には、骨内生が好都合である領域とそれが妨げられる領域を選択することが有利であるかもしれない。
【0027】
被膜堆積
異なる手順は被膜堆積に考慮されることができる。使用される被膜先駆物質および被膜の所望性質によって選ばれる。多少の例は以下に与えられる。
【0028】
被膜を基材の上に堆積する第1の手順は、例えば、水のような溶媒においてナノ粒子混合物を被膜先駆物質として使用する。基材は先駆物質混合物に浸漬され、制御速度で引き出される。被膜厚さは混合物粘性及び引取速度で変化する。
別手順は金属アルコキシドのヒドロキシル化及び部分縮合により得られるゾルを被膜先駆物質として使用する。再び、先駆物質は基材の上に浸漬または回転被覆を用いて塗被される。
【0029】
他の手順において、除去しうる粒子と例えば、水に溶解される被膜先駆物質の両方を含むスラリーは基材の上に塗被される。
【0030】
すべての場合に被膜は数段階または部分層で堆積されることができる。各部分層の堆積の間に被膜先駆物質溶媒は、例えば、熱処理により部分的にまたは完全に除去されることができる。このアプローチはより厚く亀裂のない被膜の形成を許す。被膜先駆物質組成も各段階で変更されることができる。これは可変化学組成被膜の形成を許容する。例えば、被膜化学組成は被膜/基材境界面において基材のものと非常に類似していることができ、人体との界面において全く適合性であることができる。被膜を生成するナノ粒子またはゾル−ゲルアプローチは結晶被膜を得る必要温度を減少する利点を提供する。これは特に熱処理されるときに相転移を経てそれゆえにその機械または形状記憶性質部分を失う可能性がある金属基材に有利である。
【0031】
方法の第1の実施形態によれば、一時粒子を全被覆する1つの単独第一被膜の堆積のみが存在し、前記単被膜はナノ多孔性構造を有する。そのような多孔性構造はここで以下に示される粒子の除去を許容する。
【0032】
方法の第2の実施形態によれば、被膜は実際には2つの被膜、堆積(例えば、乾燥される)後に処理される第一被膜、前記第一被膜は堆積粒子を全被覆せず、方法の第1の実施形態においてのように多孔性構造を有する第二被膜を次に含む。
【0033】
典型的には上に示された2つの実施形態によるこれらの被膜はそれ自体当該分野において知られるナノ粒子を用いるかまたはゾル−ゲル方法により実現される。もちろん、多孔性構造を与える他の方法は本発明において予見されることが可能である。
【0034】
粒子排除
一時粒子除去は、例えば、限定的ではないが熱的、化学的、機械的、電気機械的、光化学または照射段階のような異なる方法により達成されることができる。また工程の異なる段階において、被膜要求条件に依存して、固着段階前及び/又は中及び/又は後に生ずることができる。
【0035】
固着
任意の適当な方法は固着段階に使用されることができる。有利には乾燥段階が用いられる。
【0036】
被膜固着段階は粒子除去段階前に起こることができるか、または、粒子除去段階と同時にもしくは粒子除去段階後であっても起こることができる。
【0037】
セラミックスについてこれは晶相が形成される焼結であることができる。ポリマーについてこれは光化学的(可視紫外線による)、熱的または化学的誘導重合であることができる。金属についてまたは一定のセラミックスについてこれは制御(中性または還元)雰囲気下の熱処理であることができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は図3〜図6において示されたものと同様構造を有する被膜実現を記載する。
1つの実施形態において316Lステンレス鋼のような好ましい基材が使用され、塗被されることになる。基材調製は、フェルマ外(生物医学材料工学(Biomed Mater Eng.)、2006年、第16巻、p.381-395)により記載されるように電気化学的に艶出されることができる。
TiO2ナノ粒子(テックパウダー、ローザンヌ、スイス)の懸濁液はPVA(ポリビニルアルコール)、結合剤、及びコロイド安定化を助長するアンモニアを加えることで調製される。ナノ粒子規格値はD10=38nm、D50=62nm、D90=82nm(CPSディスク遠心機TM)である。
ディップコーター(スピードライン・テクノロジーズ(Speedline TechnologiesTM)からのPL 3201)が準備され、取出し速度90 [mm/sec]に調整される。基材は初めに1マイクロメートル径ポリスチレンミクロビーズ水系懸濁液(デューク・サイエンティフィック、バークリー)に浸漬される。表面積ごとの堆積ビーズ数はその懸濁液濃度と取出し速度で変化する。そこでミクロビーズで被覆された基材は次に第二の時間、ビーズをTiO2層で被覆するために以前説明された同じセラミックナノ粒子懸濁液において浸漬被覆される。セラミック層は工程パラメーターと予定される使用に依存して厚さについて変化することができる。この実施例においてビーズは完全に被覆されるものである。TiO2懸濁液はビーズを被覆する圧縮層を形成するものである。最終層厚さは概略1.5マイクロメートルである。
最後に、制御耐候室において10%RH及び37℃で10分の乾燥時間後に被覆基材はオーブンにおいて二段法で焼結される。第一焼去段は500℃、空気下、1時間行なわれる。この段階はポリマービーズが焼き去られ、レンズ形中空をTiO2層に残すものである。焼結第二段階は800℃、1.5時間、制御アルゴン雰囲気で第一に直ちに続く。この第二段階はセラミック層を団結するようにはたらくものである。
【0039】
被膜を与え、装填するインクジェット式方法の使用
異なる種類の現在利用可能インクジェット式プリント技術が存在する。例として以後ドロップ・オン・デマンド式技術を説明する。この技術において物質ミクロ液体粒子は噴射口を通じて表面上に発射される。噴射口及び/表面は全空間方位(x,y,z)に動かされることができる。この運動は表面においての液体粒子最終局在について精密制御を許容する。液体粒子を停止し、表面到達を妨げるためにその軌跡を振らせ、貯蔵器に戻すであろう電界は噴射口出口において印加される。
【0040】
インクジェット式アプローチの利点
インクジェット式方法は上に説明された被膜堆積段階ごと:
・原型堆積用
・セラミック被膜堆積用
・気孔を活性物質で充填するため
に適用されることができる。各段階について工程の完全空間制御を許容する。インクジェット式方法空間分解能はマイクロメートルの数十分の一程度である。
【0041】
インクジェット式方法を用いる原型堆積
原型粒子域と原型粒子のない域を規定することは溜め帯域とそのような溜めのない帯域生成を許容する(図9)。溜め域は次に有効物質を装填されるものであり、ところが一方で溜めのない域はそのような有効物質がないものである。塗被ステントの場合には及び特定の実施形態において、中空は脈管壁に接触する表面においてステント外側に向かって造られるだけのものである。この配置は血流への薬剤直接拡散を最小にするものである。
このアプローチの他の利点はセラミック被膜厚さを変更できることである。セラミック被膜の限界アスペクトはその比較的低変形抵抗である。基材形状が変更されるときには被膜は新規形状に適合されなければならず、これは層の割れを与える可能性がある。これらの割れは相当の離層及び結果として粒解離を発生することがある。変形抵抗は薄塗膜を使用することにより強く改良されることができる。溜めのない域は薄くなりそれゆえにより変形に耐えるものである。特定の実施形態において原型ビーズは弱い変形域についてのみ堆積されることができる。高ひずみ域は、図10において示されるようにセラミックだけで塗被されることができる。
【0042】
インクジェット式方法を用いるセラミック被膜の堆積
ここで再びインクジェット式方法は高い柔軟性を提供する。異なった組成及び多孔度のセラミックは基材相異部分において塗被されることができる。例えば、塗膜の外多孔性(気孔径及び長さ、くねり)は装填活性物質溶離プロファイルを駆動することになる基本要素である。被膜相異領域において異なった多孔度を有することは異効性プロファイル生成を許容するものである。インク噴射はそれゆえにステントについて相異位置に異ナノ粒子懸濁液の堆積を許容し、従って異外多孔性及び物質効性プロファイルをもたらす。
【0043】
インクジェット式方法を用いる被膜充填
1つの実施形態において被膜は以下の手順:
・被塗装置は密室に置かれ、真空を使用される。
・活性物質含有溶液は表面上に堆積される
・真空は後に破られる。気孔についての外圧と真空の組合せは溶液を気孔に駆動する。
・溶媒が蒸発される
によって活性物質を充填される。
インクジェット式方法を用いて気孔を充填することにより詳細には与えられる基材の一定領域を装填することができる。異分子組成は単独被膜において装填されることができ(図11)、その空間局在が調整されることができる(例えば、ある種物質は大部分被塗装置端において配置されることができる一方で他物質は主として中心に位置決定される。)。
【0044】
目的
以前に議論された工程は被膜並びに特有及び原特徴を有するそのような被膜を支持する物の製造を許容する。
【0045】
用途
これらの物の主用途は、上で説明された異なる実施形態と変型から容易に理解されることができるように医療移植材料の分野にある。特に重要なものはステント、整形用及び歯科用移植材料である。多孔性は制御されるように時間でその内容物を解離するものである薬剤溜めとして使用されることができるか、または、組織内生を助けるために使用されてそれゆえに移植材料と生体組織の機械的結合を増加することができる。
【0046】
ステントについて被膜は一または数薬剤を装填されることができる。非限定的な例として与えられる次の薬剤:増殖防止剤、凝固防止物質、感染防止材、制菌性物質の組合せであることができる。
【0047】
対象物はまた整形用または歯科用移植材料であることができる、ただし、気孔は上述ステントについてのものと同様に適合されることが可能である。そのような場合には得られる多孔性は骨生長ファクターのような生長ファクターを蓄積するか、生体適合性を増加するか、または、骨または軟骨組織が生長して固体態様で移植材料に接着するためいずれかに重要であることができる。これは燐酸カルシウムのような吸収性生体作用セラミックスで中空を充填することによっても達成されることができる。
【0048】
したがって支持体は金属から、セラミックスまたはポリマーからなることができる。生分解性物質からなることもできる。
【0049】
この用途において被膜は非多孔性領域を含むことが可能である。そのような領域は10マイクロメートルより大きい最小寸法と10ミリメートルより小さい最大寸法を有することが可能である。変型において、これらの領域は100マイクロメートル大最小寸法を有する。別変型において、これらの領域は1ミリメートル小最大寸法を有する。
【0050】
気孔寸法はまた緩効されることができる活性物質を含むビーズ、粒子またはポリマーを拡散するために適合されることが可能である。
【0051】
代替的にビーズまたは粒子は放射線照射を発することができる。有利にはそのような場合においてビーズまたは粒子は中空内に残ることになる。
【0052】
図及び表
本発明は以下の図及び表からさらに十分に理解されるものである。
【0053】
【表1】
【0054】
図1において被膜工程の異なる段階が示される。1a) は工程前基材(1)を示す。第一段階1b) は一時粒子(8)または原型堆積である。説明において及び表1において表わされるように、粒子は数物質からなることができ、分散した層でまたは緻密層で堆積されることができる。図1c) 及び1d) は、図3において示される実施形態に該当して一可能被膜工程を示す一方で、図1e) 及び1g) は図2において示される実施形態に該当する別被膜工程を示す。第一アプローチにおいて、ナノ多孔性被膜(4)は原型粒子1b) 近傍とそれより上に堆積される一方で、他アプローチにおいて緻密層(3)は初めに原型粒子近傍にそれを被覆することなく堆積され、及び、ナノ多孔性層(4)はこの緻密層および原型粒子より上に堆積される。両事情1d) 及び1g) において原型粒子は最終的に取り除かれて薬剤を装填するのに使用されるマイクロ−気孔を与える。したがって被膜は、例えば、多孔性層を通して僅小効性であることができる薬剤を含むことができる溜構造を形成する。
【0055】
図2は本発明の可能実施形態の横断面略図である。2つの部分層からなるセラミック皮膜は金属基材の上に被覆される。下層は緻密セラミック(3)に埋封されたマイクロ気孔(ミクロン領域径の気孔)からなる。上層はナノ多孔性セラミック(4)(ナノメートル領域気孔のセラミック)からなる。
【0056】
図3はマイクロ気孔(2)は図2において示される緻密セラミック層(3)がなく、ナノ多孔性セラミック(4)に埋封される本発明の別実施形態である。
【0057】
図4は本発明の工程の第一実施形態(1a)〜1d))により製造される構造の上面図画像である。ナノ多孔性層(5)及び(6)により被覆される1マイクロメートル径マイクロ気孔(黒色円形状)を見る。
【0058】
図5は白金棒(7)(被膜を区画するために使用される)のすぐ下に被膜の異なる層を示す被膜横断面を示す。基材(1)上に除去一時粒子により残される空マイクロ気孔(2)を見て、前記気孔はナノ粒子(5)とナノ気孔(6)からなるナノ多孔構造(4)により囲まれる。
【0059】
図6はマイクロ気孔(2)接近図であり、ナノ粒子(5)とナノ気孔(6)と白金棒(7)を有する基材(1)及びナノ多孔構造を示す。
【0060】
図7は被膜上面図であって最密充填粒子群はナノ多孔構造(4)により被覆される連結空微視孔系を造っている。
【0061】
図8は図7において示される被膜の横断面である。基材(1)上に、ナノ多孔構造(4)により囲まれ、白金板(7)により覆われる空連続マイクロ気孔(2)列を見る。
【0062】
図9は被膜横断面を示す略図である。左方には被膜は溜器を含まない、ところが一方で右方にはマイクロメートル寸法溜器を含む。
【0063】
図10はステント支柱略図である。この支柱について強い変形を受けるであろう部分は薄層で被覆される一方で厚被膜は他場所に堆積される。
【0064】
図11は充填手順略図である。インク噴射式方法を用いて第一分子は被膜第一域に装填される一方で他領域は第二分子を装填される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロまたはナノ範囲界異方性気孔径分布および10 ナノメートル〜10 ミリメートル厚さを有する表面多孔性被膜であって、以下の段階:
−表面を有する支持体を提供すること、
−前記表面に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積すること、
−少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積すること(ただし、前記被膜は多孔質である。)、
−異方性気孔寸法分布の多孔性構造を得るために前記一時粒子を除去して気孔を形成することを含み、さらに被膜固着段階を含む工程により得られる被膜。
【請求項2】
該被膜気孔寸法分布中央値は該物体表面から該被膜自由表面に変化する、請求項1に記載の被膜。
【請求項3】
該被膜気孔寸法分布中央値は該物体表面から該被膜自由表面に減少する、請求項2に記載の被膜。
【請求項4】
該被膜自由表面において該気孔寸法分布平均値は1μm未満である、請求項1に記載の被膜。
【請求項5】
該被膜は異多孔度寸法分布の相異部分層からなる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項6】
該部分層の1つは1μm未満平均気孔寸法分布を有する、請求項5に記載の被膜。
【請求項7】
最小平均気孔寸法分布の該部分層は該被膜自由表面に接近して配置される、請求項6に記載の被膜。
【請求項8】
該2つの多孔度平均気孔径は係数5〜10で異なる、請求項5に記載の被膜。
【請求項9】
該2つの多孔度平均気孔径は係数100以上で異なる、請求項5に記載の被膜。
【請求項10】
該気孔寸法は医療目的についての活性物質貯蔵及び拡散に適合される、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項11】
該物質は薬剤、凝固防止剤、増殖防止物質、抗生物質、制菌性物質または生長ファクターである、請求項10に記載の被膜。
【請求項12】
前記気孔は細胞を受け入れるために適合される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項13】
該被膜厚さは200 ナノメートルに少なくとも等しい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項14】
該被膜厚さは30 マイクロメートル未満である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項15】
該被膜は、酸化物、燐酸塩、炭酸塩、窒化物または炭窒化物のようなセラミック、または金属、またはポリマー、またはヒドロゲルからなる、請求項1〜14に記載の被膜。
【請求項16】
酸化物は酸化チタン、酸化タンタル、酸化珪素、酸化イリジウムまたは酸化ジルコニウムである、請求項15に記載の被膜。
【請求項17】
前記被膜はナノ粉末からまたは溶液のような液体先駆物質もしくはゾルから得られる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項18】
気孔表面は疎水物質からなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項19】
気孔は親水物質からなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項20】
該被膜は生分解性物質からなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の被膜物。
【請求項22】
この対象物は医療用移植材料である、請求項21に記載の物。
【請求項23】
この対象物はステントである、請求項22に記載の物。
【請求項24】
この対象物は整形用移植材料である、請求項22に記載の物。
【請求項25】
支持材は金属、セラミック、高分子またはそれらの任意組合せからなる、請求項21に記載の物。
【請求項26】
支持材は生分解物質からなる、請求項21に記載の物。
【請求項27】
該被膜は非多孔質領域を含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載の物。
【請求項28】
これらの領域は10 マイクロメートル大最小寸法と10 ミリメートル少最大寸法を有する、請求項27に記載の物。
【請求項29】
これらの領域は100 マイクロメートル大最小寸法を有する、請求項28に記載の物。
【請求項30】
これらの領域は1 ミリメートル少最大寸法を有する、請求項28に記載の物。
【請求項31】
物体支持材においてマイクロまたはナノ範囲界気孔寸法分布の異方性被膜を製造する方法であって、以下の段階:
− 表面を有する支持材を用意し、
− 前記表面上に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積し、
− 少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積し(ただし、前記被膜は多孔性である。)、
− 前記一時粒子を除去し、気孔を形成して異方気孔寸法分布多孔性構造を得る段階を特徴とする、前記工程はさらに被膜固着段階を含む方法。
【請求項32】
前記被膜は前記一時粒子を全くは被覆しない第一層により、及び第二多孔性層によりなり、前記第一層は前記第二多孔性層堆積前に乾燥される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第一層は前記一時粒子の近くに稠密構造を形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記一時粒子は少なくとも二相異径を有する、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記一時粒子は該支持材上に相接するように堆積される、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
該一時粒子と該被膜はスラリーとして共に堆積される、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記一時粒子は高分子、澱粉、セラミックス、シリカ、金属または生物物質の群において選択される、請求項31〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記高分子粒子はポリスチレンビーズである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
該支持体は初めに該支持体上に各疎水親水領域を与える各疎水親水層により部分的または完全に被覆される、請求項31〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
疎水または親水粒子は該基材疎水または親水領域の上に限定的に一時粒子単層を堆積するために使用される、請求項31〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
該被膜固着段階は該粒子除去段階前に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
該被膜固着段階は該粒子除去段階と同時に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
該被膜固着段階は該粒子除去段階後に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記一時粒子は熱的段階、化学的段階、電気機械的段階、光化学的、機械的または照射段階により該層から除去される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記固着段階は乾燥段階を含む、請求項31〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記固着段階は温度、UV、光化学的または光縮合段階である、請求項31〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
固着段階は陽極酸化が続く、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
該気孔は次に浸漬被覆段階により充填される、請求項31〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
該気孔表面は疎水物質からなる、請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
該気孔表面は親水物質からなる、請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
任意の以下の段階はインクジェット式方法を用いて行なわれる:
−一時粒子堆積
−被膜堆積
−気孔を充填
請求項31〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
該一時粒子は該支持体特定域上に堆積され、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
該被膜は該支持体特定域上に堆積され、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
活性物質の気孔充填は該支持体特定域においてなされ、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
マイクロまたはナノ範囲界異方性気孔径分布および10 ナノメートル〜10 ミリメートル厚さを有する表面多孔性被膜であって、以下の段階:
−表面を有する支持体を提供すること、
−前記表面に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積すること、
−少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積すること(ただし、前記被膜は多孔質である。)、
−異方性気孔寸法分布の多孔性構造を得るために前記一時粒子を除去して気孔を形成することを含み、さらに被膜固着段階を含む工程により得られる被膜。
【請求項2】
該被膜気孔寸法分布中央値は該物体表面から該被膜自由表面に変化する、請求項1に記載の被膜。
【請求項3】
該被膜気孔寸法分布中央値は該物体表面から該被膜自由表面に減少する、請求項2に記載の被膜。
【請求項4】
該被膜自由表面において該気孔寸法分布平均値は1μm未満である、請求項1に記載の被膜。
【請求項5】
該被膜は異多孔度寸法分布の相異部分層からなる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項6】
該部分層の1つは1μm未満平均気孔寸法分布を有する、請求項5に記載の被膜。
【請求項7】
最小平均気孔寸法分布の該部分層は該被膜自由表面に接近して配置される、請求項6に記載の被膜。
【請求項8】
該2つの多孔度平均気孔径は係数5〜10で異なる、請求項5に記載の被膜。
【請求項9】
該2つの多孔度平均気孔径は係数100以上で異なる、請求項5に記載の被膜。
【請求項10】
該気孔寸法は医療目的についての活性物質貯蔵及び拡散に適合される、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項11】
該物質は薬剤、凝固防止剤、増殖防止物質、抗生物質、制菌性物質または生長ファクターである、請求項10に記載の被膜。
【請求項12】
前記気孔は細胞を受け入れるために適合される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項13】
該被膜厚さは200 ナノメートルに少なくとも等しい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項14】
該被膜厚さは30 マイクロメートル未満である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項15】
該被膜は、酸化物、燐酸塩、炭酸塩、窒化物または炭窒化物のようなセラミック、または金属、またはポリマー、またはヒドロゲルからなる、請求項1〜14に記載の被膜。
【請求項16】
酸化物は酸化チタン、酸化タンタル、酸化珪素、酸化イリジウムまたは酸化ジルコニウムである、請求項15に記載の被膜。
【請求項17】
前記被膜はナノ粉末からまたは溶液のような液体先駆物質もしくはゾルから得られる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項18】
気孔表面は疎水物質からなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項19】
気孔は親水物質からなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項20】
該被膜は生分解性物質からなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の被膜。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の被膜物。
【請求項22】
この対象物は医療用移植材料である、請求項21に記載の物。
【請求項23】
この対象物はステントである、請求項22に記載の物。
【請求項24】
この対象物は整形用移植材料である、請求項22に記載の物。
【請求項25】
支持材は金属、セラミック、高分子またはそれらの任意組合せからなる、請求項21に記載の物。
【請求項26】
支持材は生分解物質からなる、請求項21に記載の物。
【請求項27】
該被膜は非多孔質領域を含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載の物。
【請求項28】
これらの領域は10 マイクロメートル大最小寸法と10 ミリメートル少最大寸法を有する、請求項27に記載の物。
【請求項29】
これらの領域は100 マイクロメートル大最小寸法を有する、請求項28に記載の物。
【請求項30】
これらの領域は1 ミリメートル少最大寸法を有する、請求項28に記載の物。
【請求項31】
物体支持材においてマイクロまたはナノ範囲界気孔寸法分布の異方性被膜を製造する方法であって、以下の段階:
− 表面を有する支持材を用意し、
− 前記表面上に少なくとも1つの一時粒子第一単層を堆積し、
− 少なくとも被膜を前記一時粒子上に堆積し(ただし、前記被膜は多孔性である。)、
− 前記一時粒子を除去し、気孔を形成して異方気孔寸法分布多孔性構造を得る段階を特徴とする、前記工程はさらに被膜固着段階を含む方法。
【請求項32】
前記被膜は前記一時粒子を全くは被覆しない第一層により、及び第二多孔性層によりなり、前記第一層は前記第二多孔性層堆積前に乾燥される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第一層は前記一時粒子の近くに稠密構造を形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記一時粒子は少なくとも二相異径を有する、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記一時粒子は該支持材上に相接するように堆積される、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
該一時粒子と該被膜はスラリーとして共に堆積される、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記一時粒子は高分子、澱粉、セラミックス、シリカ、金属または生物物質の群において選択される、請求項31〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記高分子粒子はポリスチレンビーズである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
該支持体は初めに該支持体上に各疎水親水領域を与える各疎水親水層により部分的または完全に被覆される、請求項31〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
疎水または親水粒子は該基材疎水または親水領域の上に限定的に一時粒子単層を堆積するために使用される、請求項31〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
該被膜固着段階は該粒子除去段階前に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
該被膜固着段階は該粒子除去段階と同時に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
該被膜固着段階は該粒子除去段階後に発生する、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記一時粒子は熱的段階、化学的段階、電気機械的段階、光化学的、機械的または照射段階により該層から除去される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記固着段階は乾燥段階を含む、請求項31〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記固着段階は温度、UV、光化学的または光縮合段階である、請求項31〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
固着段階は陽極酸化が続く、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
該気孔は次に浸漬被覆段階により充填される、請求項31〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
該気孔表面は疎水物質からなる、請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
該気孔表面は親水物質からなる、請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
任意の以下の段階はインクジェット式方法を用いて行なわれる:
−一時粒子堆積
−被膜堆積
−気孔を充填
請求項31〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
該一時粒子は該支持体特定域上に堆積され、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
該被膜は該支持体特定域上に堆積され、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
活性物質の気孔充填は該支持体特定域においてなされ、これらの領域はあらかじめ自由に選択される、請求項31〜53のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−537208(P2009−537208A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510605(P2009−510605)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051869
【国際公開番号】WO2007/148240
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508079681)デビオテック ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051869
【国際公開番号】WO2007/148240
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508079681)デビオテック ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
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