説明

異方性導電フィルム及びその製造方法

【課題】大きさの異なる電子部品を高精度に同時実装させる。
【解決手段】200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂層11と、導電性粒子を含有する第2の樹脂層12との2層構造とする。第1の樹脂層11に電子部品を搭載させることにより、IC、FPC及びSMDへの共用が可能となり、同時実装が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された異方性導電フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)及びその他の電子部品をガラス基板に接合させる場合、ICはガラス基板上に実装し(COG:Chip on Glass)、その他の電子部品はフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)上に実装することが行われている。
【0003】
例えば、図6に示す液晶装置のように、コンデンサなどのSMD(Surface Mount Device)101はFPC102上に搭載され、IC103はガラス基板104上に搭載される。また、FPC102とガラス基板104とは、FOG(Film on Glass)用ACF(Anisotropic Conductive Film)105によって接続され、IC103とガラス基板104とは、COG用ACF106によって接続される。
【0004】
しかし、SMD101の搭載方法には、はんだ接合が利用され、リフロー工程が必須であるため、SMD101に高熱が掛かっていた。また、SMD101の接合のために両面型のFPC102が必要となり、コストが増大していた。また、近年の液晶装置の高詳細化に伴って必要なSMD101の数が増加しており、FPC102面積の増大により液晶装置が大きくなっていた。
【0005】
そこで、図7に示す液晶装置のように、SMD用ACF207を用いてSMD201をガラス基板204上に実装することが試みられている(例えば、特許文献1を参照。)。これにより、上述したリフロー工程を省くことができる。また、SMD201をガラス基板205上に実装することにより、FPC202を小型化できると共に、安価な片面FPC202を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−245554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7に示す液晶装置において、SMD201、FPC202及びIC203などの電子部品は大きさが異なるため、これらを搭載する際には、それぞれSMD用ACF207、FOG用ACF205、及びCOG用ACF206が必要である。また、SMD201の搭載には、個別の仮搭載(仮貼り)が必要であり、かなりの工数を要してしまう。
【0008】
また、SMD、FPC及びICを同一のACFを用いて同時実装することも考えられるが、SMD、FPC、及びICで必要とするACF特性がそれぞれ異なるため、これらの電子部品を高精度に一括実装させることは困難である。例えば、コンデンサのような小型SMDをCOG用ACF(タック力:5〜80kPa)上に仮搭載すると、図8に示すようにSMDの位置ずれが発生しまう。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、大きさの異なる電子部品を高精度に同時実装させる異方性導電フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、表面実装部品を保持する能力の1つであるタック力(Tackiness)を規定し、2層構造としたACFを用いることにより、ガラス基板上にSMDを高速仮搭載させ、SMDとICとを同時実装することが可能になることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る異方性導電フィルムは、200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂層と、導電性粒子を含有する第2の樹脂層とが積層されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る異方性導電フィルムの製造方法は、200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂層と、導電性粒子を含有する第2の樹脂層とが積層され、表面実装機によって第1の樹脂層上に電子部品が複数仮搭載され、熱圧着により電子部品と他の電子部品とを同時実装するのに用いられる異方性導電フィルムを製造することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、高いタック力により例えば小型SMDを高速仮搭載可能とし、また、2層構造により例えばCOGにおける粒子補足性を向上させることができるため、ファインピッチ化へ対応でき、大きさの異なる電子部品を高精度に同時実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る異方性導電フィルムを示す断面図である。
【図2】異方性導電フィルムの製品形態の一例を模式的に示す図である。
【図3】本実施の形態に係る異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装方法を説明するための図である。
【図4】サンプル4の異方性導電フィルムを用いて小型SMDを仮搭載させた際の写真の模式図である。
【図5】サンプル7の異方性導電フィルムを用いて小型SMDを仮搭載させた際の写真の模式図である。
【図6】従来の電子部品の実装方法を説明するための図である。
【図7】従来の電子部品の実装方法を説明するための図である。
【図8】従来の異方性導電フィルムを用いて小型SMDを仮搭載させた際の写真の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<異方性導電フィルム>
図1は、本発明の一実施の形態に係る異方性導電フィルムを示す断面図である。この異方性導電フィルム10は、200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂層11と、導電性粒子を含有する第2の樹脂層12とが積層されている。この異方性導電フィルム10を用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合、電子部品側が第1の樹脂層11、ガラス基板側が第2の樹脂層12となるように固着される。特に、本実施の形態に係る異方性導電フィルム10は、表面実装機によって第1の樹脂層11上に電子部品が複数仮搭載され、熱圧着により電子部品と他の電子部品とを同時実装するのに用いられる。表面実装機としては、例えば1.0〜0.1秒/チップ程度に高速仮搭載可能なものを用いることができる。また、表面実装機を用いて仮搭載する電子部品としては、表面実装機に適用可能なSMD(Surface Mount Device)であれば、特に制限されないが、例えば液晶表示装置を製造する際のSMDとしてはコンデンサを挙げることができる。
【0016】
本実施の形態に係る異方性導電フィルムの第1の樹脂層11のタック力が200kPa以上であることにより、例えばコンデンサなどの小型SMDを高速仮搭載する際の位置ずれ防止し、小型SMDを高精度に実装させることができる。タック力の範囲は、好ましくは200〜600kPaであり、さらに好ましくは200〜250kPaである。この範囲内において電子部品の高速仮搭載に十分な保持力が得られ、また、フィルム形状を維持することができる。なお、タック力は、タッキング試験機(TACKINESS TESTER)によってコントロールされた測定用プローブを被測定物に押し付け、引き離す過程での粘着力の最大値を意味する。
【0017】
第1の樹脂層11は、導電性粒子を含有しない絶縁層であり、第2の樹脂層12は、導電粒子を含有する導電層であり、本実施の形態に係る異方性導電フィルムは、第1の樹脂層11と第2の樹脂層が積層された2層構造を有することが好ましい。これにより、例えばIC(Integrated Circuit)をガラス基板に実装する(COG:Chip on Glass)場合、第1の樹脂層11は、ICのバンプの押圧力により流動し、ガラス基板上の電極と導電性粒子との接触を妨げない状態となる。一方、第2の樹脂層12は、導電性粒子が高密度に含まれているため、ICのバンプの押圧力による流動が制限され、導電性粒子が高い捕捉率で捕捉される。なお、導電性粒子の捕捉率は、電子部品と基板との接合前後における端子(バンプ)の単位面積あたりの導電性粒子の数の比を意味する。また、粒子捕捉効率の観点から、第2の樹脂層12の最低溶融粘度は、第1の樹脂層11の最低溶融粘度よりも高いことが好ましい。具体的には、第2の樹脂層12を構成する樹脂の最低溶融粘度は、100〜100000Pa・sであることが好ましく、第1の樹脂層11を構成する樹脂の最低溶融粘度は、10〜10000Pa・sであることが好ましい。最低溶融粘度については、サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら測定することができる。
【0018】
異方性導電フィルム10に用いられる導電性粒子としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。
【0019】
また、異方性導電フィルム10は、常温での粘度が10〜1000kPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜500kPaである。異方性導電フィルム10の粘度が10〜1000kPa・sの範囲であることにより、異方性導電フィルム10を後述するテープ状のリール巻とした場合において、いわゆるはみ出しを防止することができ、また、所定のタック力を維持することができる。
【0020】
第1の樹脂層11及び第2の樹脂層12の組成は、上述のような特徴を害さない限り、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0021】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0022】
液状エポキシ樹脂としては、常温で流動性を有していれば、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型などの各種硬化剤が使用できる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法などが存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミドなどや、これらの変性物があり、これらは単独または2種以上の混合体として使用できる。これらの中でも、本実施の形態では、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく用いられる。
【0024】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0025】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時に第1の樹脂層11と第2の樹脂層12との流動性に差が生じ、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0026】
図2は、異方性導電フィルム10の製品形態の一例を模式的に示す図である。この異方性導電フィルム10は、剥離基材13上に第1の樹脂層11と第2の樹脂層12とがこの順に積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の異方性導電フィルムは、第1及び第2のフランジ21に挟持された巻取部22に剥離基材13が外周側となるように巻回積層される。剥離基材13としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。また、第2の樹脂層12上に透明なカバーフィルムを有する構成としてもよい。また、異方性導電フィルム10は、リール形状に限らず、短冊形状であってもよい。
【0027】
図2に示すように異方性導電フィルム10が巻き取られたリール製品として提供される場合、異方性導電フィルム10の粘度を10〜1000kPa・sの範囲とすることにより、異方性導電フィルム10の変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。また、異方性導電フィルム10が短冊形状で2枚以上積層された場合も同様に、変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。
【0028】
また、リールを巻き戻して異方性導電フィルム10を使用する場合、第1の樹脂層11のタック力が第2の樹脂層12のタック力よりも大きくすることにより、第2の樹脂層12が先に剥離基材13から剥離され、ブロッキングを防止することができる。
【0029】
<異方性導電フィルムの製造方法>
次に、上述した異方性導電フィルムの製造方法について説明する。本実施の形態における異方性導電フィルムの製造方法は、200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂膜を、導電性粒子を含有する第2の樹脂膜上に形成する。ここで、第1の樹脂膜と第2の樹脂膜とを貼り付けてもよいし、一方の樹脂膜を形成後、他方の樹脂を塗布乾燥(重ね塗り)させてもよい。なお、第1の樹脂膜及び第2の樹脂膜は、それぞれ第1の樹脂層11及び第2の樹脂層12を構成する。
【0030】
第1の樹脂膜と第2の樹脂膜とを貼り付ける製造方法は、200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂膜を生成する工程と、導電性粒子を含有する第2の樹脂膜を生成する工程と、第1の樹脂膜と第2の樹脂膜とを貼り付ける工程とを有する。第1の樹脂膜を生成する工程では、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた第1の樹脂膜生成用溶液を剥離シート上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、第1の樹脂膜を得る。
【0031】
同様に、第2の樹脂膜を生成する工程では、導電性粒子と、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた第2の樹脂膜生成用溶液を剥離シート上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、第2の樹脂膜を得る。
【0032】
次に、第1の樹脂膜と第2の樹脂膜とを貼り付ける工程では、第2の樹脂膜の剥離シートを剥離して第1の樹脂膜上に貼り付ける。
【0033】
このように第1の樹脂膜と第2の樹脂膜とを貼り付けることにより、剥離基材13上に第1の樹脂層11と第2の樹脂層12とがこの順に積層された異方性導電フィルム10を得ることができる。また、一方の樹脂膜を形成後、他方の樹脂を塗布乾燥(重ね塗り)させて製造する場合、例えば第1の樹脂膜を乾燥させて生成した後、第2の樹脂膜生成用溶液を第1の樹脂膜上に塗布すればよい。
【0034】
<異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装>
次に、異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装方法について説明する。本実施の形態に係る異方性導電フィルムは、タック力が高いため小型SMDを高速仮搭載しても位置ずれが生じにくい。また、2層構造であるため、粒子捕捉性が良く、ファインピッチのICを実装することができる。すなわち、本実施の形態に係る異方性導電フィルムによれば、大きさ、種類などの異なる電子部品を一括実装することができる。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装方法を説明するための図である。この図3に示す液晶装置において、SMD31、FPC32及びIC33は、異方性導電フィルム10によってそれぞれガラス基板の電極に接続されている。SMD31は、コンデンサであり、実装時において、表面実装機を用いて異方性導電フィルム10の第1の樹脂層側に高速仮搭載され、また、FPC32及びIC33は、第1の樹脂層の他の実装領域に配置される。そして、例えば熱圧着ヘッドを用いてこれらの電子部品を一括して熱圧着させることによって、SMD31、FPC32及びIC33がガラス基板の電極に電気的に接続される。
【0036】
すなわち、ガラス基板上の電極を含む実装領域に異方性導電フィルム10を全面的に配置し、この異方性導電フィルム10上の電極位置に異なる実装方式の電子部品(SMD31、FPC32及びIC33)を配置し、例えば熱圧着ヘッドを用いてこれらの電子部品を一括して熱圧着させることにより、従来の半田接合を用いた場合に比べタクトタイムを大幅に向上させることができる。
【0037】
このようにSMDの接合を従来用いられていた半田からACFにすることにより、高速実装が可能となる。また、半田接合よりも接合の面積を少なくすることができるとともに、SMDの仮搭載時の位置ずれを防止することができるため、SMD間距離を短くして小型SMDを搭載することが可能となり、高詳細化を実現することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。先ず、表1に示す配合割合となるように、フェノキシ樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤と、シリカ粒子と、導電性粒子とをトルエンに溶解させ、この溶解液を所定の乾燥厚となるように剥離フィルム上に塗工し、オーブンで乾燥させて樹脂A〜Gを作製した。
【0039】
表1中、「PKHH」は、フェノキシアソシエイツ社製のフェノキシ樹脂である。また、「EP828」は、ジャパンエポキシレンジ株式会社製のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂である。また、「HX3941」は、旭化成ケミカル株式会社製のマイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤である。また、「A−187」は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のエポキシ系シランカップリング剤である。また、「RY200」は、日本アエロジル株式会社製の疎水性シリカ粒子である。また、「Ni/Auメッキアクリル樹脂粒子」は、積水化学工業株式会社製の導電性粒子である。また、表1中の各配合割合は質量部を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
次に、表1に示す樹脂A〜Gを用いて異方性導電フィルムのサンプル1〜7を作製した。
【0042】
[サンプル1]
膜厚25μmの樹脂Fからなる1層構造の異方性導電フィルムを作製した。
【0043】
[サンプル2]
膜厚25μmの樹脂Gからなる1層構造の異方性導電フィルムを作製した。
【0044】
[サンプル3]
膜厚15μmの樹脂Aからなる第1の樹脂膜と、膜厚10μmの樹脂Gからなる第2の樹脂膜とを貼り付け、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。なお、この異方性導電フィルムを用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合は、電子部品側が第1の樹脂膜、ガラス基板側が第2の樹脂膜となるように固着される。
【0045】
[サンプル4]
膜厚15μmの樹脂Bからなる第1の樹脂膜と、膜厚10μmの樹脂Gからなる第2の樹脂膜とを貼り付け、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。なお、この異方性導電フィルムを用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合は、サンプル3と同様に電子部品側が第1の樹脂膜、ガラス基板側が第2の樹脂膜となるように固着される。
【0046】
[サンプル5]
膜厚15μmの樹脂Cからなる第1の樹脂膜と、膜厚10μmの樹脂Gからなる第2の樹脂膜とを貼り付け、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。なお、この異方性導電フィルムを用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合は、サンプル3と同様に電子部品側が第1の樹脂膜、ガラス基板側が第2の樹脂膜となるように固着される。
【0047】
[サンプル6]
膜厚15μmの樹脂Dからなる第1の樹脂膜と、膜厚10μmの樹脂Gからなる第2の樹脂膜とを貼り付け、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。なお、この異方性導電フィルムを用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合は、サンプル3と同様に電子部品側が第1の樹脂膜、ガラス基板側が第2の樹脂膜となるように固着される。
【0048】
[サンプル7]
膜厚15μmの樹脂Eからなる第1の樹脂膜と、膜厚10μmの樹脂Gからなる第2の樹脂膜とを貼り付け、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。なお、この異方性導電フィルムを用いて電子部品をガラス基板に実装させる場合は、サンプル3と同様に電子部品側が第1の樹脂膜、ガラス基板側が第2の樹脂膜となるように固着される。
【0049】
表2にサンプル1〜7の各種試験結果を示す。タック力、仮搭載性、絶縁性、粒子捕捉性、接続抵抗、接着強度、粘度、及び巻締り性の各試験は、次のように行った。なお、サンプル1〜4は、比較例又は参照例に該当し、サンプル5〜7は実施例に該当する。
【0050】
[タック力]
タック試験機((株)レスカ製TACII)を用い、22℃の雰囲気下において、プローブ直径5mm(ステンレス製鏡面、円柱状)、押し付け荷重196kgf、押し付け速度30mm/min、剥離速度5mm/minの測定条件で行い、ピーク強度を各サンプルのタック力(kPa)とした。ここで、各サンプルのタック力は、電子部品搭載側のフィルムのタック力を表す。
【0051】
[仮搭載性]
表面実装機(ヤマハ発動機(株)社製YV100II)を用いて、0.7mm厚のガラス基板(コーニング(株)製1737F)上の各サンプルに10個のSMD((株)村田製作所製1005コンデンサ、外形寸法:L1.0mm×W0.5mm×H0.4mm)を0.3mmの素子間ギャップで仮搭載した。SMDの位置ずれがある場合を×、位置ずれがない場合を○とした。
【0052】
[絶縁性]
0.7mm厚のガラス基板(コーニング(株)製1737F)上の各サンプルにIC(バンプ間スペース:12.5μm)を熱圧着し、接続体を得た。ガラス基板の隣接するパッド間に30Vの電圧を加え絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗が1.0×10−6Ω以下をショートとした。ショートの場合を×とし、ショートでない場合を○とした。
【0053】
[粒子捕捉性]
ICを仮固定した際の各バンプ下に存在する導電性粒子の数(平均)と、熱圧着後の粒子捕捉数(平均)とをカウントし、下記式により捕捉効率を求めた。捕捉効率が20%以上の場合を○とし、20%未満の場合を×とした。
捕捉効率(%)=(熱圧着後に捕捉した粒子数)/(仮固定時バンプ下に存在する粒子数)×100
【0054】
[接続抵抗]
0.7mm厚のガラス基板(コーニング(株)製1737F)上の各サンプルにIC(バンプ間スペース:12.5μm)を熱圧着し、接続体を得た。そして、ICのバンプとガラス基板のパッド間の初期接続抵抗(Ω)を測定した。接続抵抗が5Ωより小さい場合を○、5Ω以上の場合を×とした。
【0055】
[接着強度]
0.7mm厚のガラス基板(コーニング(株)製1737F)上の各サンプルにIC(バンプ間スペース:12.5μm)を熱圧着し、接続体を得た。そして、この接続体を引張強度50cm/minで90℃方向に剥離したときの剥離強度を初期接着強度(N/cm)とした。接着強度が3N/cmより小さい場合を×とし、3N/cm以上の場合を○とした。
【0056】
[粘度]
応力制御型レオメータ(Haake社製RS150)を用い、各サンプルの最低粘度(kPa・s)を測定した。コーンとしては直径8mm、角度2度のものを使用し、測定範囲は30℃〜250℃とした。また、電子部品搭載側の樹脂フィルム及びガラス基板側の樹脂フィルムについても同様にして測定した。
【0057】
[はみ出しの有無]
各サンプルを2.0mmにスリットし、コア直径を2.54mm、外形110mmのリールに0.2N/mmのテンションで巻き取り、室温で1日放置した。外観観察により、はみ出しが無い場合を○とし、はみ出しが有る場合を×とした。
【0058】
【表2】

【0059】
また、図4は、サンプル4の異方性導電フィルムを用いて小型SMDを仮搭載させた際の様子を示す図である。また、図5は、サンプル7の異方性導電フィルムを用いて小型SMDを仮搭載させた際の様子を示す図である。これらは、上記[仮搭載性]の条件と同様に、表面実装機を用いて、サンプル上に10個のSMD((株)村田製作所製1005コンデンサ)を0.3mmの素子間ギャップで2列仮搭載させた。
【0060】
図4及び図5を比べれば分かるように、サンプル7を用いた方がサンプル4を用いるよりも高速仮搭載時のコンデンサの位置を高精度に保つことができる。これは、サンプル7の搭載側の樹脂フィルムEがサンプル4の搭載側の樹脂フィルムBよりも多くの液状エポキシ樹脂を含有し、高いタック力を有しているためである。
【0061】
また、表2に示す各種試験結果から分かるように、電子部品搭載側の第1の樹脂層が200kPa以上のタック力を有し、且つガラス基板側の第2の樹脂層が導電性粒子を含有することにより、IC、FPC及びSMDのいずれの搭載にも使用することができる。例えば、サンプル5〜サンプル7は、2層構造を有し、且つ200kPa以上のタック力を有しているため、コンデンサを高速仮搭載可能となり、また、IC、FPC等の電子部品との同時実装が可能となる。
【0062】
なお、サンプル1は、200kPa以上のタック力を有しているが、樹脂フィルムFのみの単層であるため、良好な絶縁性及び粒子捕捉性が得られない。また、サンプル2は、高速仮搭載に対応するだけのタック力を有しておらず、また、樹脂フィルムGのみの単層であるため、良好な絶縁性、粒子捕捉性、及び接着強度が得られず、IC、FPC及びSMDのいずれの実装にも適していない。また、サンプル3、4は、2層構造を有しているが、そのタック力は従来のACFと同レベルであり、高速仮搭載に対応するだけのレベルではなく、SMDの実装に適していない。
【0063】
また、異方性導電フィルムの粘度が10〜1000kPa・sであることにより、フィルム形状を維持し、リールに巻き取った際のはみ出しを防止することができる。例えば、サンプル6とサンプル7とは、フェノキシ樹脂に対する液状エポキシ樹脂の配合割合が同じであるが、サンプル6は粘度が低すぎるため、リールに巻き取る際、はみ出しが発生してしまう。一方、サンプル7は、適当な粘度を有しているため、リールに巻き取る際のはみ出しを防止することができる。
【0064】
また、表1に示す各樹脂の配合割合から分かるように、電子部品搭載側の第1の樹脂層における液状エポキシ樹脂の配合割合が、フェノキシ樹脂100質量部に対して100〜150質量部であることにより、優れたタック力を維持することができる。例えば、サンプル1、5〜7の搭載側で使用されている樹脂フィルムC〜Fは、上記配合割合の範囲であるため、200kPa以上ものタック力を得ることができる。
【0065】
また、樹脂にシリカ粒子を添加することにより、タック力を増加させた際の粘度の低下を防止し、フィルム形状を維持することができる。例えば、サンプル6の搭載側のフィルムDとサンプル7の搭載側のフィルムEとを比べれば分かるように、シリカ粒子を含有する樹脂フィルムEは、タック力を維持しつつ、液状エポキシ樹脂の含有量の増加による粘度の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0066】
10 異方性導電フィルム、11 第1の樹脂層、12 2第の樹脂層、13 剥離基材、21 フランジ、22 巻取部、31 SMD、32 FPC、33 IC、101 SMD、102 FPC、103 IC、104 ガラス基板、105 FOG用ACF、106 COG用AFC、201 SMD、202 FPC、203 IC、204 ガラス基板、205 FOG用ACF、206 COG用ACF、207 SMD用ACF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200kPa以上のタック力を有する第1の樹脂層と、
導電性粒子を含有する第2の樹脂層と
が積層された異方性導電フィルム。
【請求項2】
常温での粘度が、10〜1000kPa・sである請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤とを含有する請求項2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
上記第2の樹脂層が、無機フィラーを含有する請求項3記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
上記第1の樹脂層が、無機フィラーを含有する請求項4記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
表面実装機によって上記第1の樹脂層上に電子部品が複数仮搭載され、熱圧着により上記電子部品と他の電子部品とを同時実装するのに用いられる請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
上記請求項6記載の異方性導電フィルムを製造する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−76808(P2011−76808A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225771(P2009−225771)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】