説明

異方性散乱板及びその製造方法

【課題】優れた異方性散乱強度を有し、耐光性にも優れ、高級感のある光沢模様を備え建材用途に好適な異方性散乱板及び該異方性散乱板の製造方法の提供。
【解決手段】多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体と、該ナノホール構造体における各ナノホール内に充填される充填剤とを有してなり、前記充填剤が透明体であることを特徴とする異方性散乱板である。該ナノホール構造体の屈折率Aと、前記充填剤の屈折率Bとの屈折率差(A−B)が、0.1以上である態様などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り板、間仕切り板、階段側面の覗き見防止部材等の建材用途に好適な異方性散乱板及び該異方性散乱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスペクト比の平均値が1.5以上であり、ナノサイズの透明な金属酸化物、金属炭酸塩化合物等の針状結晶を配向させた状態で含有する異方性散乱膜の製造方法としては、針状結晶をポリマー中に混練した材料を延伸することにより一軸配向させる方法が開示されている(非特許文献1及び2参照)。しかし、これらの文献では、延伸することにより針状結晶の同一平面内での密度が下がってしまい、配向度が上がらないことが問題である。
また、ラングミュア・ブロジェット(LB)法による成膜方法についても報告されている(非特許文献3参照)。しかし、前記LB法による成膜は時間がかかり、大面積化が困難であるという欠点がある。
【0003】
また、液晶を用いたカーボンナノチューブの配向方法が開示されている(非特許文献4参照)。しかし、この方法では、使用する液晶分子は、UV硬化性ではなく、カーボンナノチューブの配向を固定することができないという問題がある。
また、特許文献1には、リオトロピック液晶中にアスペクト比が2以上の形状を有する光学異方性材料を含み、リオトロピック液晶及び光学異方性材料を配向させた光学異方性膜が提案されているが、充分満足できる性能を有するものではなかった。
【0004】
また、特許文献2には、2種のUV硬化性モノマーを光架橋した光制御フィルムを有する低反射率前窓が提案されている。しかし、この提案では、異方性は一方向の傾斜のみであり、正面から一軸の傾斜のみ透過するものであり、耐久性についても十分なものではなかった。
また、特許文献3には、結合剤と多孔質粒子とを含有する光拡散層について提案されている。しかし、この提案の光拡散層では、散乱は全方向であり、正面のみ透過するものであり、耐久性についても十分なものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−294239号公報
【特許文献2】特開2000−177381号公報
【特許文献3】特開2006−119318号公報
【非特許文献1】S.Matsudaら、Jpn.J.Appl.Phy.,2005,44,p187
【非特許文献2】Y.Koikeら、Macromolecules,2004,37(22),p8342−8348
【非特許文献3】F.Kimら、J.Am.Chem.Soc.,2001,123,p4360−4361
【非特許文献4】I.Dierkingら、Adv.Mater.,2004,16(11),p865−869
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた異方性散乱効果を有し、耐光性にも優れており、高級感のある光沢模様を備えているので各種建材用途に好適な異方性散乱板及び該異方性散乱板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ナノホール構造体としてのナノポーラスアルミナ膜のナノホール内に透明な充填剤を含浸させた異方性散乱板が、正面からは向こう側が見えるが、斜め方向からは白く散乱して向こう側が見えないという優れた異方性散乱効果を備えており、特に各種建材用途に好適であることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体と、該ナノホール構造体における各ナノホール内に充填される充填剤とを有してなり、前記充填剤が透明体であることを特徴とする異方性散乱板である。
<2> ナノホール構造体の屈折率Aと、前記充填剤の屈折率Bとの屈折率差(A−B)が、0.1以上である前記<1>に記載の異方性散乱板である。
<3> ナノホール構造体が、ナノポーラスアルミナ膜である前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性散乱板である。
<4> ナノホール構造体におけるナノホールの直径が0.4μm以下であり、アスペクト比(長さ/直径)が1.5以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の異方性散乱板である。
<5> 充填剤の屈折率Bが、1.3以上である前記<2>から<3>のいずれかに記載の異方性散乱板である。
<6> 充填剤が、樹脂、水ガラス、液体、及び液晶から選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の異方性散乱板である。
<7> ナノホール構造体の少なくとも一方の面にポリマー層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の異方性散乱板である。
<8> 多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体を作製するナノホール構造体作製工程と、
前記ナノホール構造体におけるナノホール内に充填剤を充填する充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする異方性散乱板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、優れた異方性散乱効果を有し、耐光性にも優れており、高級感のある光沢模様を備えているので各種建材用途に好適な異方性散乱板及び該異方性散乱板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(異方性散乱板)
本発明の異方性散乱板は、ナノホール構造体と、該ナノホール構造体におけるナノホール内に充填される充填剤とを有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0011】
前記充填剤としては透明体を用いる。該透明体とは、約100μm厚みの膜を作製して吸収率を測ったときに可視光透過率が50%以上の物質を意味する。
本発明においては、前記ナノホール構造体の屈折率Aと、前記充填剤の屈折率Bとの屈折率差(A−B)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。前記屈折率差(A−B)が、0.1未満であると、ナノホール構造体と充填剤との屈折率差として十分な差が確保できず、異方性散乱を起こせないことがある。
なお、前記ナノホール構造体がナノポーラスアルミナ膜である場合には、ナノポーラスアルミナ膜の屈折率は、アルミナバルクと同じ1.76である。
【0012】
<ナノホール構造体>
前記ナノホール構造体としては、前記屈折率差(A−B)の範囲を満たし、多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば陽極酸化アルミナ法によるナノポーラスアルミナ膜、ナノインプリント法による膜、などが挙げられる。
前記略垂直とは、水平面に対し80度〜90度の角度に配向していることを意味し、85度〜90度に配向していることが好ましく、90度(垂直)に配向していることがより好ましい。
前記ナノホール構造体は、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられる。
【0013】
−陽極酸化アルミナ法−
前記陽極酸化アルミナ法は、いわゆるナノポーラスアルミナ膜を作製する方法である。
前記陽極酸化アルミナ法は、表面に導電性膜を有する基材上にアルミニウムを蒸着してアルミニウム蒸着層を形成し、該アルミニウム蒸着層を陽極酸化し、形成されたナノホール内に金属を電鋳してアスペクト比が1.5以上のナノホールを形成し、該ナノホールが前記基材面(水平面)に対し略垂直に配向しているアルミナ膜を形成する方法である。
【0014】
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
【0015】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記基材としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜500μmが好ましく、50μm〜300μmがより好ましい。
【0017】
前記導電性膜としては、透明で電気を通すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素等が挙げられる。これらの中でも、表面抵抗値が低い、耐熱性が良い、化学的な安定性がある、光透過率が高い等の点からフッ素をドーピングした酸化スズ(FTO)、酸化スズインジウム(ITO)が好ましい。
前記導電性膜は、気相法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成される。
前記導電性膜の表面抵抗値としては、100Ω/cm以下が好ましく、10Ω/cm以下がより好ましい。
前記導電性膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましい。
【0018】
前記アルミニウム蒸着層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法(スパッタリング法)などが挙げられる。該アルミニウム蒸着層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
具体的には、厚み約100nmに蒸着したアルミニウム膜を陽極とし、陰極に適当な金属基盤を使って0.5モル/lの蓚酸水溶液の中で酸化すると、ナノポーラスアルミナ膜が作製できる。
【0019】
前記アルミニウム蒸着層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5nm〜200nmがより好ましい。
【0020】
前記陽極酸化処理は、硫酸、リン酸、シュウ酸等の水溶液中で、前記アルミニウム蒸着層に接する電極を陽極として電気分解エッチングさせることにより行うことができる。
前記陽極酸化処理における電解液の種類、濃度、温度、時間等としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記電解液の種類としては、隣接する前記ナノホール列の間隔(ピッチ)が、150nm〜500nmである場合は、希釈リン酸溶液が好適に挙げられ、80nm〜200nmである場合は、希釈蓚酸溶液が好適に挙げられ、10nm〜150nmである場合は、希釈硫酸溶液が好適に挙げられる。いずれの場合も、前記ナノホールのアスペクト比の調整は、陽極酸化処理後にリン酸溶液に浸漬させて前記ナノホールの直径を増加させることにより行うことができる。
【0021】
−ナノインプリント法−
前記ナノインプリント法は、所望のナノホールの直径及びアスペクト比(長さ/直径)を有する凹凸部が形成されたモールド(型、スタンパー)を作製し、該モールドをインプリント層に押し付け、前記モールドの凹凸部をインプリント層に転写する方法である。
前記凹凸部を有するモールドとしては、例えば凹凸パターンを形成した原盤上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原盤上に積層して該金属盤面に凹凸パターンを転写する電鋳工程、金属盤を原盤上から剥離する剥離工程により製造される。
【0022】
前記ナノ構造体におけるナノホールは、貫通した孔として形成されていてもよいし、貫通せず穴(窪み)として形成されていてもよい。
前記ナノホール列の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一方向に平行に配列していることが好ましい。
隣接する前記ナノホール(列)の間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜300nmが好ましく、30nm〜100nmがより好ましい。
また、ナノホールの間隔に規則性があることが好ましい。
前記ナノホールにおける直径(開口径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、0.4μm以下が好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。前記直径が0.4μmを超えると、正面からの散乱まで強くなってしまうことがある。
前記ナノホールにおける長さ(深さ)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、5nm〜500μmが好ましく、50nm〜100μmがより好ましい。
前記ナノホールにおける長さと直径とのアスペクト比(長さ/直径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5以上であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。前記アスペクト比(長さ/直径)が1.5未満であると、異方性が発現せず、単なるスリガラスのような全方向散乱となることがある。
前記ナノホールの間隔、直径、長さ、及びアスペクト比は、例えば切断面を電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0023】
<充填剤>
前記充填剤は、その屈折率Bが、1.3以上であることが好ましく、1.35〜2.5がより好ましく、1.3〜1.7が更に好ましい。
前記充填剤としては、上記屈折率の範囲を満たし、透明な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば樹脂、水ガラス、液体、液晶、無機酸化物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、作製効率の点から樹脂が特に好ましい。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、セルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、などが挙げられる。
前記液体としては、沸点が80℃以上あれば封止後に漏れ出る心配が少なく、例えば水、エチレングリコール、酢酸、酪酸、ヘキサン、シクロヘキサン、などが挙げられる。
前記水ガラスとしては、例えばシラノール基等を含有するものが用いられる。
前記液晶としては、例えばUV硬化型液晶、高分子液晶、などが挙げられる。
前記無機酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、などが挙げられる。
【0024】
−ポリマー層−
前記ナノホール構造体の少なくとも一方の面にはポリマー層を有することが好ましく、両面にポリマー層を有することがより好ましい。該ポリマー層は単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
前記ポリマー層としては、充填剤が樹脂である場合には該樹脂と同じ材料を用いることができる。
また、充填剤が液体である場合には、ナノホール内に充填された液体をポリマー層で封止する役割を果たす。更に、前記ポリマー層は、ナノホール構造体の表面を保護する保護層としての役割も果たす。
【0025】
(異方性散乱板の製造方法)
本発明の異方性散乱板の製造方法は、少なくともナノホール構造体作製工程と、充填工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0026】
−ナノホール構造体作製工程−
前記ナノホール構造体作製工程は、多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体を作製する工程であり、上述した陽極酸化アルミナ法、及びナノインプリント法などにより作製することができる。
【0027】
−充填工程−
前記充填工程は、前記ナノホール構造体におけるナノホール内に充填剤を充填する工程である。
前記充填方法としては、用いる充填剤の種類に応じて異なり適宜選択することができるが、例えば、充填剤が樹脂の場合には、樹脂を含有する液中にナノホール構造体を浸漬して、ナノホール内に樹脂を含浸させた後、乾燥することでナノホール内に樹脂を充填することができる。
前記充填剤が液体の場合には、液体中にナノホール構造体を浸漬して、ナノホール内に液体を含浸させた後、ナノホールを両側からポリマー層で封止することにより、ナノホール内に液体を充填することができる。
前記充填剤が水ガラスの場合には、水ガラス中にナノホール構造体を浸漬して、ナノホール内に液体を含浸させた後、ゾルゲル反応させてガラス化し、ナノホール内にガラスを充填することができる。
【0028】
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば乾燥工程、ポリマー層形成工程、などが挙げられる。
【0029】
ここで、本発明の異方性散乱板において異方性散乱が起こる原理としては、図2の視点Aで示すように、異方性散乱板10を正面方向から見た場合は、高屈折率の充填剤が充填されたナノホールの直径が数十nm以下と入射光の波長より小さいため、可視光領域では透明に見える。一方、図2の視点Bで示すように、斜め方向から見た場合は、高屈折率の充填剤が充填されたナノホールの長さが見えてしまい不透明(白濁)に見える。
【0030】
本発明の異方性散乱板は、例えば、散乱型偏光子、視野角制御フィルム、導光板等の光学用途以外にも高級感のある光沢模様を備えているので、一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の仕切り板、間仕切り、階段側面の覗き見防止部材等の各種建材用途に幅広く用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
<異方性散乱板の作製>
−透明導電性膜の形成−
ポリカーボネートフィルム(商品名:ピュアエース、帝人化成株式会社製)の両面にITO(Tin−doped Indium oxide)膜を膜厚120nmに成膜し、抵抗値10Ω/□の透明導電性膜を作製した。
【0033】
−アルミニウム蒸着膜の形成−
透明導電性膜における透明導電性膜表面にRFスパッタリング法により、膜厚150nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0034】
−陽極酸化によるナノホールの形成−
アルミニウム蒸着膜及び透明導電性膜を0.3Mのシュウ酸水溶液中において、DC10Vで30分間定電圧電解して、平均直径(開口径)20nm、平均長さ(深さ)100nm、平均アスペクト比5のナノホールが多数規則的に形成されたナノホール構造体としてのナノポーラスアルミナ膜を作製した。なお、アルミナバルクの屈折率は1.76であった。前記ナノホールの直径、長さ、及びアスペクト比は、切断面を電子顕微鏡で観察して測定した。
【0035】
−充填剤の充填−
得られたナノポーラスアルミナ膜を、充填剤としてのアクリル樹脂溶液(乾膜屈折率1.48)中に浸漬し、ナノホール内に充填剤を充填して、ガラス基板で両側を挟み込み気泡を押し出した。以上により実施例1の異方性散乱板を作製した。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、充填剤としてのアクリル樹脂溶液をポリエステル樹脂溶液(乾膜屈折率1.52)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の異方性散乱板を作製した。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、平均開口径100nm、平均深さ2500nm、平均アスペクト比25のナノホールが形成されたナノポーラスアルミナ膜を作製した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の異方性散乱板を作製した。
【0038】
(実施例4)
実施例1において、充填剤としてのアクリル樹脂溶液をポリビニルカルバゾール(屈折率1.68)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の異方性散乱板を作製した。
【0039】
(比較例1)
住友化学株式会社製の異方性散乱フィルム(商標:ルミスティW)を異方性散乱板として用いた。なお、この際の斜め45°からの透過率測定は、ルミスティWの散乱が最も強くなる方向で行った。
【0040】
得られた実施例1〜4及び比較例1の各異方性散乱板について、以下のようにして、異方性散乱性、及び耐光性を評価した。結果を表1に示す。
【0041】
<異方性散乱性>
得られた各異方性散乱板の異方性散乱性は、紫外・可視分光光度計(日本分光株式会社製、V−560)を用いて、透過スペクトルの入射角度依存性を調べることにより評価した。なお、入射光に対する、異方性散乱板のサンプルの角度を、0°(正面)及び45°にセッティングして、それぞれの入射角度での透過率を測定した。
【0042】
<経時耐光性>
超高圧水銀灯を使用して、暴光試験を行い、100℃で1,000時間暴光後の上記透過率を測定し、初期との比較により、耐光性を評価した。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の異方性散乱板は、例えば、散乱型偏光子、視野角制御フィルム、導光板等の光学用途;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の仕切り板、間仕切り、階段側面の覗き見防止部材等の建材用途などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の異方性散乱板の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の異方性散乱板の異方性散乱の原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ナノホール構造体
2 ポリマー層
10 異方性散乱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体と、該ナノホール構造体における各ナノホール内に充填される充填剤とを有してなり、前記充填剤が透明体であることを特徴とする異方性散乱板。
【請求項2】
ナノホール構造体の屈折率Aと、前記充填剤の屈折率Bとの屈折率差(A−B)が、0.1以上である請求項1に記載の異方性散乱板。
【請求項3】
ナノホール構造体が、ナノポーラスアルミナ膜である請求項1から2のいずれかに記載の異方性散乱板。
【請求項4】
ナノホール構造体におけるナノホールの直径が0.4μm以下であり、アスペクト比(長さ/直径)が1.5以上である請求項1から3のいずれかに記載の異方性散乱板。
【請求項5】
充填剤の屈折率Bが、1.3以上である請求項2から3のいずれかに記載の異方性散乱板。
【請求項6】
充填剤が、樹脂、水ガラス、液体、及び液晶から選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の異方性散乱板。
【請求項7】
ナノホール構造体の少なくとも一方の面にポリマー層を有する請求項1から6のいずれかに記載の異方性散乱板。
【請求項8】
多数のナノホールが水平面に対して略垂直方向に穿設されたナノホール構造体を作製するナノホール構造体作製工程と、
前記ナノホール構造体におけるナノホール内に充填剤を充填する充填工程と、を少なくとも含むことを特徴とする異方性散乱板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−145410(P2009−145410A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319835(P2007−319835)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】