説明

異方性造形体、異方性造形体の製造方法および使用

本発明は、ポリマーを含む造形体が、少なくとも2つの炭素原子を有する化合物を有する液体で満たされたタンクへ導かれ、ここで、該ポリマーはポリマーリールから巻出されそして別のリールへ巻取られ、そして該液体は、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを有する、異方性造形体を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性造形体、異方性造形体の製造方法および使用に関し、ここで、これらは、特に、プロトン伝導性電解質膜としておよび分離法における膜として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
例えば、精密濾過(microfiltration)、限外濾過、逆浸透、電気透析およびパーベーパレーション(pervaporation)のような技術目的のための膜は、一般的に公知であり、そして購入可能である。これらの膜は、しばしば、それらの目的に役立つが、公知の膜は、化学的性質またはそれらのサイズに基づいて粒子を分離する。それらの特定形状(例えば、長さ、高さおよび幅の比率)に基づいて粒子を分離する、高度に負荷可能であり、耐薬品性の、熱的に安定な膜は、未だに存在していない。
【0003】
他の膜としては、酸ドープト高分子膜が挙げられ、これは、それらの優れた化学的、熱的および機械的特性に起因して広範囲な用途を有し、そしていわゆるPEM燃料電池における高分子電解質膜(PEM)として特に好適である。
【0004】
塩基性ポリアゾール膜は、濃リン酸または硫酸でドープされ、そしていわゆる高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)におけるプロトンコンダクターおよびセパレータとして機能する。
【0005】
ポリアゾールポリマーの優れた特性に起因して、このような高分子電解質膜は、膜電極ユニット(membrane electrode units)(MEU)を製造するために加工される場合、100℃を超える、特には120℃を超える長時間の作動温度で、燃料電池において使用され得る。この高い長時間の作動温度は、膜電極ユニット(MEU)に存在する貴金属に基づく触媒の活性を増加させることを可能にする。特に炭化水素のいわゆる改質ガソリンを使用する場合、かなりの量の一酸化炭素がリフォーマーガス中に含まれ、そしてこれらは、通常、費用のかかるガスワークアップまたはガス精製によって除去されなければならない。作動温度を増加させることが出来ることは、極めてより高い濃度のCO不純物が長時間にわたって許容されることを可能にする。
【0006】
液体でのポリアゾール膜の処理は、例えばドイツ特許出願第10234236.9号に記載されている。しかし、この文献は、遊離酸を含有する高分子膜のみを記載している。しかし、これらの膜の1つの欠点は、リン酸でドープされた膜の乏しい耐久性である。ここで、耐用年数は、特に、100℃未満、例えば80℃で燃料電池を作動することによって、かなり減少される。
【0007】
これらの問題を解決するために、例えばドイツ特許出願第10209419号において、伝導性がより高レベルの耐久性を有するポリマー電解質に基づく高分子膜が記載されている。
【0008】
このようにして得られた膜は、既に、良好な特性スペクトル(property spectrum)を示している。しかし、全体的な特性スペクトルを改善することは、永久的な課題のままである。
【0009】
この特性スペクトルとしては、特に、膜のメタノール透過性、残留電位および機械的特性が挙げられる。
【0010】
さらに、ドイツ特許出願第10209419号に記載の製造方法において、ドーピングが比較的複雑な様式で行われることは不都合であり、ここで、特に、高レベルの手作業が必要とされる。高レベルの耐久性を有する高分子膜の連続製造は、ドイツ特許出願第10209419号に記載の製造方法を使用して、可能でないかあるいは多大な困難を伴ってのみ可能である。
【0011】
ドイツ特許出願第10209419号に記載される酸基を含むモノマーを含むポリマー膜の膨潤に起因して、膜の機械的特性は、かなり変化する。例えば、弾性係数は初期値の5%へ減少し、その結果、例えば、ドーピング後のポリアゾール膜は、比較的低い機械的安定性を有するだけである。さらに、膜の表面積は、ドーピングの結果として、80%まで増加する。
【0012】
これらの問題ある特性に起因して、酸浴中に膜を配置し次いで該液体浴を多数回交換することによって、これらの膜は、純粋に手動の方法により酸でドープされた。
【0013】
この方法における1つの問題は、特に、液体の高消費である。さらに、先行技術に従う方法は、あまり柔軟でなく、そしてかなりの仕事を必要とする。例えばポリアゾール膜のような、高抵抗を有する多くのポリマー膜は、最初は非常に低いレベルの柔軟性を示し、これは、にもかかわらず、酸での処理の結果として増加し、しかし機械的安定性の減少を生じさせることが注意されるべきである。
【0014】
さらに、プロダクトがバッチで作製される方法は、原則的に、一定レベルの品質に関する問題を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の1つの目的は、それらの特定の形状(例えば、長さ、高さおよび幅の比率)に基づいて、粒子(例えば、蛋白質)を分離する膜を提供することである。膜はまた、高い機械的負荷に耐えることができ、熱安定性であり、そして耐薬品性であるべきであり、その結果、この膜は種々の用途を有し得る。
【0016】
本発明の別の目的は、改善された特性スペクトル有する高分子膜を提供することであり、ここで、特にメタノール透過性が減少され、残留電位は増加され、そして膜の機械的特性が改善される。
【0017】
本発明の別の目的は、上述の課題を解決する方法を提供することである。該方法は、高分子膜を製造するための簡易かつ安全かつ信頼性の高い方法を提供するように意図される。
【0018】
それによって高レベルの複雑性を生じることはなく、非常に柔軟な方法で、処理の間に大幅に変化する膜の機械的挙動へ適応され得る方法がまた提供される。
【0019】
さらに、該方法は、液体の特に低い消費を有するべきである。該方法はまた、コスト効率が高くあるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、請求項1の全ての特徴を有するプロトン伝導性電解質膜の製造方法によって達成される。
【0021】
したがって、本発明は、ポリマー含有造形体(polymer-comprising shaped body)が液体で満たされたトラフを通され、ここで、該ポリマーは1つのリールから巻出され(unwound)そして別のリールへ巻取られ(wound)、ここで、該液体が、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する、異方性造形体(anisotropic shaped bodies)を製造する方法に関する。
【0022】
ここで、比較的一定の品質の膜が、本方法により製造され得、ここで、液体の特に低い消費が、本方法に伴う。さらに、本方法は、費用効率が高い様式で行われ得る。
【0023】
本発明はまた、この方法によって得られ得る異方性造形体に関する。
【0024】
該造形体は、優れた特性プロフィールを示す。この特性スペクトル(property spectrum)としては、特に、メタノール透過性、残留電位およびまた膜の機械的特性が挙げられる。本発明に従う膜は、非常に高い機械的負荷に耐えることができ、熱的に安定であり、そして耐薬品性である。さらに、該膜は、優れた分離性能を示す。ここで、該膜は、長さ、高さおよび幅の比率に基づいて粒子を分離する。
【0025】
織物分野において、上述の手順は、例えば染色との関連で公知である。しかし、布とは異なり、ポリマー含有造形体(例えば、膜)は、短時間で比較的大量の液体を吸収することができない。さらに、織布(textile fabrics)は、本質的に、それらの機械的特性を保持し、そして処理の間わずかにだけそれらの寸法を変化させる。
【0026】
したがって、本発明の溶液は、特に驚くべきであり、何故ならば、本方法は、ポリマー含有造形体(例えば、膜)の変化する特性へ適応されるからである。さらに、膜は、非常に短い時間の間だけ、トラフ中に含まれる液体と接触し、これは処理に悪影響を与えない。したがって、驚くべきことに、ポリマー含有造形体(例えば、膜)の処理はまた、ポリマー含有造形体(例えば、膜)と共に巻き上げられる液体により、巻き上げられた状態(wound-up state)で行われると予想されるに違いない。
【0027】
本発明によれば、ポリマー含有造形体が処理される。ポリマー含有造形体は、当業者によって知られている。好ましくは、ポリマー含有造形体は、ポリマー膜である。
【0028】
好ましいポリマー膜は、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体中において少なくとも3%膨潤を示す。膨潤(swelling)は、少なくとも3%の膜重量の増加を意味すると理解される。膨潤は、好ましくは少なくとも5%、特に好ましくは少なくとも10%である。
【0029】
膨潤Qは、膨潤前の膜の質量m、およびホスホン酸基を含むモノマーの重合後の膜の質量mから重量測定的に測定される。
【0030】
Q=(m−m)/m x 100
ポリマー膜の処理は、ホスホン酸基を含むモノマーを好ましくは少なくとも5重量%含む液体を使用して、好ましくは0℃を超える温度で、特には室温(20℃)〜180℃で行われる。処理はまた、増加された圧力で行われ得る。ここで、限界値は、経済的考慮および技術的可能性に基づいて決定される。
【0031】
処理に使用されるポリマー膜は、一般的に、5〜3000μm、好ましくは10〜1500μmの範囲の厚みを有する。ポリマーからのこのような膜の調製は、一般的に知られており、これらのいくつかは市販されている。用語ポリマー膜(polymer film)は、処理のために使用される膜がポリマーを含むことを意味し、ここで、この膜は更なる通常の添加剤を含有し得る。
【0032】
本発明に従って処理される造形体(好ましくは、ポリマー膜)に含まれる好ましいポリマーとしては、特に、ポリオレフィン、例えばポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシリレン)、ポリアリールメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンと、ペルフルオロプロピルビニルエーテルと、トリフルオロニトロソメタンと、カルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルと、PTFEとのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、環状オレフィンコポリマー、特にノルボルネンのもの;
主鎖にC−O結合を含むポリマー、例えば、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、特に、ポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロラクトン(polypivalolactone)、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
主鎖にC−S結合を含むポリマー、例えば、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン;
主鎖にC−N結合を含むポリマー、例えば、ポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアゾールエーテルケトン、ポリアジン;
液晶性ポリマー(liquid-crystalline polymers)、特にVectra、ならびに
無機ポリマー、例えば、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン、ポリホスファゼンおよびポリチアジルが挙げられる。
【0033】
本発明の1つの特定の局面によれば、1つのまたは異なる繰り返し単位において少なくとも1つの窒素、酸素および/または硫黄原子を含む高温安定性ポリマーが使用される。
【0034】
本発明の文脈において、高温安定性ポリマーは、ポリマー電解質として、120℃を越える温度で燃料電池において長期間にわたって作動され得るポリマーである。長期間にわたってとは、本発明に従う膜は、初期の性能に基づく性能が50%を超えて減少することなく、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも160℃の温度で、少なくとも100時間、好ましくは少なくとも500時間、作動され得ることを意味し、この性能は、WO 01/18894 A2に記載される方法に従って測定され得る。
【0035】
膜を作製するために使用されるポリマーは、好ましくは、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃そして非常に特に好ましくは少なくとも180℃のガラス転移温度またはVicat軟化温度VST/A/50を有するポリマーである。
【0036】
特に好ましいのは、繰り返し単位に少なくとも1つの窒素原子を含むポリマーである。特別に好ましいのは、1繰り返し単位当たり少なくとも1つの窒素へテロ原子を有する少なくとも1つの芳香環を含むポリマーである。このグループ内で、好ましいのは、特に、ポリアゾールに基づくポリマーである。これらの塩基性ポリアゾールポリマーは、1繰り返し単位当たり少なくとも1つの窒素ヘテロ原子を有する少なくとも1つの芳香環を含む。本発明の1つの特定の局面によれば、好ましいポリマー含有造形体、特にポリマー膜は、少なくとも80重量%、特には少なくとも90重量%のポリアゾールを含む。
【0037】
芳香環は、好ましくは、別の環(特に、別の芳香環)と融合され得る1〜3の窒素原子を有する5員または6員環である。
【0038】
ポリアゾールに基づくポリマーは、一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII)
【0039】
【化1】

【0040】
【化2】

【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
[式中、
Arは、同一または異なり、そして各々、四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価または三価または四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Ar10は、同一または異なり、そして各々、二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Ar11は、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単核または多核であり得る)であり、
Xは、同一または異なり、そして各々、酸素、硫黄またはアミノ基{これは、更なる基として、水素原子、1〜20の炭素原子を有する基(好ましくは、分枝または非分枝のアルキルまたはアルコキシ基、あるいはアリール基)を保有する}であり、
Rは、同一または異なり、そして水素、アルキル基または芳香族基であり、但し、式(XX)におけるRは二価の基であり、そして
n、mは、各々、10以上、好ましくは100以上の整数である]
の繰り返しアゾール単位を含む。
【0044】
本発明に従う好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン(cinnoline)、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン(benzopyrazidine)、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレンから誘導され、これらの各々はまた、必要に応じて置換され得る。
【0045】
この場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、いかなる置換パターンをも有し得、フェニレンの場合、例えば、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、オルト−フェニレン、メタ−フェニレンおよびパラ−フェニレンであり得る。特に好ましい基は、ベンゼンおよびビフェニレンから誘導され、これらの各々はまた置換され得る。
【0046】
好ましいアルキル基は、1〜4の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピルおよびt−ブチル基である。
【0047】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基および芳香族基は置換され得る。
【0048】
好ましい置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素)、アミノ基、ヒドロキシル基または短鎖アルキル基(例えば、メチルまたはエチル基)である。
【0049】
好ましいのは、1繰り返し単位内でX基が同一である、式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールである。
【0050】
ポリアゾールはまた、例えばそれらのX基が異なる、異なる繰り返し単位を原理的には有し得る。しかし、好ましくは、繰り返し単位内に同一のX基のみが存在する。
【0051】
本発明の更なる実施形態において、繰り返しアゾール単位を含有するポリマーは、互いに異なる式(I)〜(XXII)の少なくとも2つの単位を含有するコポリマーまたはブレンドである。ポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、統計的コポリマー(statistical copolymers)、周期コポリマー(periodic copolymers)、セグメント化コポリマー(segmented copolymers)および/または交互ポリマー(alternating polymers)の形態であり得る。
【0052】
該ポリマーにおける繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは、10に等しいかまたはこれを超える整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰り返しアゾール単位を含む。
【0053】
本発明の文脈において、好ましいのは、繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むポリマーである。繰り返しベンゾイミダゾール単位を含む非常に好適なポリマーのいくつかの例は、以下の式によって示される:
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
式中、nおよびmは、各々、10以上、好ましくは100以上の整数である。
【0060】
好ましくは使用されるポリアゾール、しかし特にポリベンゾイミダゾールは、高分子量を特徴とする。固有粘度として測定すると、これは、好ましくは、少なくとも0.2dl/g、特には0.8〜10dl/g、特に好ましくは1〜5dl/gである。
【0061】
更なる好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダソール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリトリアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリチアジアゾール、ポリピラゾール、ポリキノキサリン、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)およびポリ(テトラアザピレン)(poly(tetrazapyrenes))である。
【0062】
このようなポリアゾールの製造は公知であり、ここで、1以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1カルボン酸モノマー当たり少なくとも2つの酸基を含む1以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルと溶融状態で反応させ、プレポリマーを形成する。得られたプレポリマーはリアクター内で固化し、次いで機械的に粉砕される。粉末状プレポリマーは、通常、400℃までの温度で、固相重合において最終重合される。
【0063】
好ましいポリベンゾイミダゾールは、Celanese AGから商品名(登録商標)Celazoleで市販されている。
【0064】
特に好ましいのは、Celaneseからの(登録商標)Celazole、特に、ドイツ特許出願第10129458.1号に記載されるような分別により後処理されるポリマーが使用されるものである。
【0065】
好ましいのは、ドイツ特許出願第10117687.2号に記載の方法により得られたポリアゾールである。
【0066】
好ましいポリマーとしては、ポリスルホン、特に、主鎖に芳香族および/またはヘテロ芳香族基を含むポリスルホンが挙げられる。本発明の1つの特定の局面によれば、好ましいポリスルホンおよびポリエーテルスルホンは、ISO1133に従って測定した場合、40cm/10分に等しいかまたはそれ未満、特には30cm/10分に等しいかまたはそれ未満、そして特に好ましくは20cm/10分に等しいかまたはそれ未満のメルトボリュームレート(melt volume rate)MVR300/21.6を有する。ここで、好ましいのは、180℃〜230℃のVicat軟化温度VST/A/50を有するポリスルホンである。本発明の別の好ましい実施形態において、該ポリスルホンの数平均分子量は、30000g/molを超える。
【0067】
ポリスルホンに基づくポリマーとしては、特に、一般式A、B、C、D、E、Fおよび/またはGに従う結合スルホン基(linking sulphone groups)を有する繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる:
【0068】
【化10】

【0069】
式中、基Rは、互いに独立して、同一であるかまたは異なり、そして芳香族またはヘテロ芳香族基であり、該基は上記でより詳細に説明されている。これらとしては、特に、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、ピリジン、キノリン、ナフタレン、フェナントレンが挙げられる。
【0070】
本発明の文脈内で好ましいポリスルホンとしては、ホモポリマーおよびコポリマー、例えば、統計的コポリマー(statistical copolymers)が挙げられる。特に好ましいポリスルホンは、式H〜Nの繰り返し単位を含む:
【0071】
【化11】

【0072】
以前に記載されたポリスルホンは、商品名(登録商標)Victrex 200 P、(登録商標)Victrex 720 P、(登録商標)Ultrason E、(登録商標)Ultrason S、(登録商標)Mindel、(登録商標)Radel A、(登録商標)Radel R、(登録商標)Victrex HTA、(登録商標)Astrelおよび(登録商標)Udelで購入可能である。
【0073】
特に好ましいのは、また、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンおよびポリアリールケトンである。これらの高性能ポリマーは、それ自体公知であり、そして商品名Victrex(登録商標)PEEKTM、(登録商標)Hostatec、(登録商標)Kadelで購入可能である。
【0074】
酸基を含むポリマーを使用することも可能である。これらの酸基は、特に、スルホン酸基を含む。ここで、芳香族スルホン酸基を含むポリマーが好ましくは使用され得る。
【0075】
芳香族スルホン酸基は、スルホン酸基(−SOH)が芳香族またはヘテロ芳香族基へ共有結合されている基である。該芳香族基は、該ポリマーの主鎖(骨格)の一部を形成してもよく、または側鎖の一部を形成してもよく、好ましいのは、主鎖に芳香族基を含むポリマーである。スルホン酸基はまた、しばしば、塩の形態で使用され得る。誘導体、例えばエステル(特に、メチルまたはエチルエステル)、あるいはスルホン酸のハロゲン化物を使用することも可能であり、これらは、該膜の作動の間にスルホン酸へ変換される。
【0076】
スルホン酸基で修飾されたポリマーは、好ましくは、0.5〜3meq/gの範囲のスルホン酸基の含有量を有する。この値は、いわゆるイオン交換容量(ion exchange capacity)(IEC)によって測定される。
【0077】
IECを測定するために、スルホン酸基は、遊離酸に変換される。この目的のために、該ポリマーは公知の様式で酸により処理され、過剰な酸は洗浄によって除去される。例えば、スルホン化(sulfonated)ポリマーは、まず、沸騰水中で2時間処理される。引き続いて、過剰の水が取り除かれ(dabbed off)、そしてサンプルは、p<1mbarで、真空乾燥キャビネット中、160℃で15時間乾燥される。次いで、膜の乾燥重量が測定される。このようにして乾燥されたポリマーは、次いで、1時間、80℃で、DMSO中に溶解される。次いで、該溶液は、0.1M NaOHで滴定される。次いで、当量点までの酸の消費量および乾燥重量から、イオン交換容量(IEC)が算出される。
【0078】
このようなポリマーは当業者に公知である。スルホン酸基を含むポリマーは、例えば、ポリマーのスルホン化によって作製され得る。ポリマーのスルホン化の方法は、F. Kucera et. al. Polymer Engineering and Science 1988, Vol. 38, No 5, 783-792に記載されている。ここで、スルホン化条件は、低度のスルホン化が得られるように選択され得る(DE−A−19959289)。
【0079】
非フッ素化ポリマーのさらなるクラスは、高温安定性熱可塑性物質のスルホン化により開発された。例えば、スルホン化ポリエーテルケトン(DE-A-4219077、WO96/01177)、スルホン化ポリスルホン(J. Membr. Sci. 83 (1993) p.211)またはスルホン化ポリフェニレンスルフィド(DE-A-19527435)が公知である。
【0080】
US-A-6110616は、ブタジエンおよびスチレンのコポリマーおよび燃料電池についての使用のためのそれらの引き続いてのスルホン化を記載している。
【0081】
このようなポリマーはまた、酸基を含むモノマーのポリ反応(polyreactions)によって得られ得る。例えば、US-A-5422411に記載されるようなペルフルオロ化(perfluorinated)ポリマーは、トリフルオロスチレンおよびスルホニル−修飾されたトリフルオロスチレンの共重合によって作製され得る。
【0082】
これらのペルフルオロスルホン酸ポリマーとしては、特に、Nafion(登録商標)(US-A-3692569)が挙げられる。US-A-4453991に記載されるように、このポリマーは、溶液にされ、次いでアイオノマーとして使用され得る。
【0083】
酸基を含む好ましいポリマーとしては、特に、US-A-3692569、US-A-5422411およびUS-A-6110616に記載されるように、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、ペルフルオロ化スルホン酸基含有ポリマーが挙げられる。
【0084】
上記のポリマーは、個々にまたは混合物(ブレンド)として使用され得る。ここで、好ましいのは、特に、ポリアゾールおよび/またはポリスルホンを含有するブレンドである。ブレンドを使用することによって、機械的特性が改善され得、そして材料費は軽減され得る。
【0085】
ポリマー含有造形体、例えばポリマー膜は、例えばドイツ特許出願第10110752.8号またはWO 00/44816に記載されるような架橋に起因する、さらなる修飾をさらに含んでもよい。1つの好ましい実施形態において、塩基性ポリマーおよび少なくとも1つのブレンド成分からなりそして膨潤のために使用されるポリマー膜は、ドイツ特許出願第10140147.7号に記載されるような架橋剤をさらに含む。
【0086】
さらに、処理のために使用されるポリマー膜が、ドイツ特許出願第10109829.4号に記載されるように予め処理されるならば、有利である。この変形は、ホスホン酸基を含むモノマーに関して、ポリマー膜の吸収容量(absorption capacity)を増加させるために有利である。
【0087】
ポリマー膜を作製するために、上述のポリマーは、特に、押出し成形され得る。ポリマー膜はまた、キャスティングプロセスによって得られ得る。例えば、ポリアゾールは、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)のような極性・非プロトン性溶媒中に溶解され、そして膜が慣用の方法によって製造され得る。
【0088】
溶媒の残留物を除去するために、このようにして得られた膜は、第一工程において洗浄液体(washing liquid)で処理され得る。この洗浄液体は、好ましくは、アルコール、ケトン、アルカン(脂肪族および脂環式)、エーテル(脂肪族および脂環式)、エステル、カルボン酸[ここで、上記群メンバーはまたハロゲン化されていてもよい]、水、無機酸(例えば、H3PO4、H2SO4)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
特に、C1−C10アルコール、C2−C5ケトン、C1−C10アルカン(脂肪族および脂環式)、C2−C6エーテル(脂肪族および脂環式)、C2−C5エステル、C1−C3カルボン酸、ジクロロメタン、水、無機酸(例えば、H3PO4、H2SO4)おのびそれらの混合物が使用される。これらの液体の中でも、特に好ましいのは水である。
【0090】
本発明の1つの特定の局面によれば、第一工程において使用される液体は、少なくとも70重量%の水を含む。ポリマー膜を洗浄した後、処理液体(treatment liquid)に交換される。
【0091】
洗浄後、膜は、洗浄液体を除去するために乾燥され得る。乾燥は、選択される処理液体の部分蒸気圧の関数として行われる。通常、乾燥は、常圧および20℃〜200℃の温度で行われる。穏やかな乾燥もまた、真空下で行われ得る。乾燥の代わりに、膜をまた軽く叩き、そして従って過剰な処理液体を除去してもよい。順番は重要ではない。
【0092】
溶媒の残留物を除去するための、ポリマー膜(特に、ポリアゾール膜)の上述の洗浄に起因して、膜の機械的特性は、驚くほど改善される。これらの特性としては、特に、膜の弾性係数、引裂強さおよび破壊強さが挙げられる
結果として、放出される溶媒残留物による処理液体の汚染を防止することも可能である。
【0093】
プロトン伝導性を達成するために、これらの膜は、ホスホン酸を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーでドープされる。ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーは、当業者に公知である。これらは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つのホスホン酸基を有する化合物である。好ましくは炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子は、低立体障害の二重結合へと導く基に対して少なくとも2つ(好ましくは3つ)の結合を有する。これらの基としては、特に、水素原子およびハロゲン原子(特に、フッ素原子)が挙げられる。本発明の文脈において、ホスホン酸基を含むポリマーは、重合生成物から生じ、これは、ホスホン酸基を含むモノマーのみをあるいは他のモノマーおよび/または架橋剤と共に重合することによって得られる。
【0094】
ホスホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。ホスホン酸基を含むモノマーはまた、1、2、3またはそれ以上のホスホン酸基を含み得る。
【0095】
一般的に、ホスホン酸基を含むモノマーは、2〜20、好ましくは2〜10の炭素原子を含む。
【0096】
ホスホン酸基を含むポリマーを作製するために使用される、ホスホン酸基を含むモノマーは、好ましくは以下の式の化合物である:

【0097】
【化12】

【0098】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0099】
【化13】

【0100】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0101】
【化14】

【0102】
[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、ORおよび/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次に(in turn) ハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]。
【0103】
ホスホン酸基を含む好ましいモノマーとしては、特に、ホスホン酸基を含むアルケン(例えば、エテンホスホン酸、プロペンホスホン酸、ブテンホスホン酸);ホスホン酸基を含むアクリル酸化合物および/またはメタクリル酸化合物(例えば、2−ホスホノメチルアクリル酸、2−ホスホノメチルメタクリル酸、2−ホスホノメチルアクリル酸アミドおよび2−ホスホノメチルメタクリル酸アミド)が挙げられる。
【0104】
特に好ましくは、例えばAldrichまたはClariant GmbHから得られ得るような、市販のビニルホスホン酸(エテンホスホン酸)が使用される。好ましいビニルホスホン酸は、70%超の純度、特には90%超そして特に好ましくは97%超の純度を有する。
【0105】
ホスホン酸基を含むモノマーはまた、引き続いて酸へ変換され得る誘導体の形態で使用され得、ここで、酸への変換はまた、重合された状態において行われ得る。これらの誘導体としては、特に、ホスホン酸基を含むモノマーの塩、エステル、アミドおよびハロゲン化物が挙げられる。
【0106】
処理のために使用される液体は、好ましくは、該混合物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%、特には少なくとも30重量%そして特に好ましくは少なくとも50重量%の、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含む。
【0107】
処理のために使用される液体は、さらに、追加の有機および/または無機溶媒を含み得る。有機溶媒としては、特に、極性非プロトン性溶媒[例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エステル類(例えば、酢酸エチル)]、ならびに極性プロトン性溶媒[例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよび/またはブタノールのようなアルコール類]が挙げられる。無機溶媒としては、特に、水、リン酸およびポリリン酸が挙げられる。
【0108】
これらは、加工性(processability)に対してプラスに影響し得る。特に、前記モノマーに関する前記膜の吸収容量(absorption capacity)は、有機溶媒を添加することによって改善され得る。このような液体中のホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーの含有量は、一般的に、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは10〜97重量%である。
【0109】
本発明の1つの特定の局面によれば、ホスホン酸基を含むポリマーを作製するために、スルホン酸基を含むモノマーを含む組成物を使用することが可能である。
【0110】
スルホン酸基を含むモノマーは、当業者に公知である。それらは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つのスルホン酸基を含む化合物である。好ましくは、炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子は、低立体障害の二重結合へと導く基に対して少なくとも2つ(好ましくは3つ)の結合を有する。これらの基としては、特に、水素原子およびハロゲン原子(特に、フッ素原子)が挙げられる。本発明の文脈において、スルホン酸基を含むポリマーは、重合生成物から生じ、これは、スルホン酸基を含むモノマーのみをあるいは他のモノマーおよび/または架橋剤と共に重合することによって得られる。
【0111】
スルホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。スルホン酸基を含むモノマーはまた、1、2、3またはそれ以上のスルホン酸基を含み得る。
【0112】
一般的に、スルホン酸を含むモノマーは、2〜20、好ましくは2〜10の炭素原子を含む。
【0113】
スルホン酸基を含むモノマーは、好ましくは以下の式の化合物である:

【0114】
【化15】

【0115】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0116】
【化16】

【0117】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0118】
【化17】

【0119】
[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、ORおよび/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]。
【0120】
スルホン酸基を含む好ましいモノマーとしては、特に、スルホン酸基を含むアルケン(例えば、エテンスルホン酸、プロペンスルホン酸、ブテンスルホン酸);スルホン酸基を含むアクリル酸化合物および/またはメタクリル酸化合物(例えば、2−スルホノメチルアクリル酸、2−スルホノメチルメタクリル酸、2−スルホノメチルアクリル酸アミドおよび2−スルホノメチルメタクリル酸アミド)が挙げられる。
【0121】
特に好ましくは、例えばAldrichまたはClariant GmbHから得られ得るような、市販のビニルスルホン酸(エテンスルホン酸)が使用される。好ましいビニルスルホン酸は、70%超の純度、特には90%超そして特に好ましくは97%超の純度を有する。
【0122】
スルホン酸基を含むモノマーはまた、引き続いて酸へ変換され得る誘導体の形態で使用され得、ここで、酸への変換はまた、重合された状態において行われ得る。これらの誘導体としては、特に、スルホン酸基を含むモノマーの塩、エステル、アミドおよびハロゲン化物が挙げられる。
【0123】
本発明の1つの特定の局面によれば、スルホン酸基を含むモノマーとホスホン酸基を含むモノマーとの重量比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10、そして特に好ましくは2:1〜1:2の範囲内にあり得る。
【0124】
本発明のさらに特定の局面によれば、ホスホン酸基を含むモノマーが、スルホン酸基を含むモノマーよりも好ましい。したがって、特に好ましくは、ホスホン酸基を含むモノマーを含む液体が使用される。
【0125】
本発明のさらなる実施形態において、架橋可能なモノマーが、高分子膜の製造において使用され得る。これらのモノマーは、膜を処理するための液体へ添加され得る。架橋可能なモノマーはまた、液体での処理後に、フラット構造体(flat structure)へ適用されてもよい。
【0126】
架橋可能なモノマーは、特に、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含む化合物である。好ましいのは、ジエン、トリエン、テトラエン、ジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートである。
【0127】
特に好ましいのは、以下の式のジエン、トリエン、テトラエン:
【0128】
【化18】

【0129】
以下の式のジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート:
【0130】
【化19】

【0131】
以下の式のジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート:
【0132】
【化20】

【0133】
であり、
式中、
Rは、C1−C15アルキル基、C5−C20アリールもしくはヘテロアリール基、NR’、−SO、PR’、Si(R’)であり、ここで上記の基は次に置換され得、
R’は、各々独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、C5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、そして
nは少なくとも2である。
【0134】
上述のR基の置換基は、好ましくはハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ニトリル、アミン、シリルまたはシロキサン基である。
【0135】
特に好ましい架橋剤は、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エポキシアクリレート、例えばエバクリル(ebacryl)、N’,N−メチレンビスアクリルアミド、カルビノール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼンおよび/またはビスフェノール−A−ジメチルアクリレートである。これらの化合物は、例えばSartomer Company Exton,Pennsylvaniaから商品名CN−120、CN104およびCN−980で、市販されている。
【0136】
架橋剤の使用は任意であり、ここで、これらの化合物は、通常、ホスホン酸基を含むモノマーの重量に基づいて、0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の範囲内で使用され得る。
【0137】
ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含む液体は、溶液であり得、ここで、該液体はまた、懸濁および/または分散された成分を含み得る。ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含む液体の粘度は広範囲に渡り得、ここで、該粘度を調節するために、溶媒を添加することかあるいは温度を上昇させることが可能である。動的粘度は、好ましくは0.1〜10,000mPas、特には0.2〜2000mPasの範囲内にあり、ここで、これらの値は、例えばDIN 53015に従って測定され得る。
【0138】
本方法の1つの好ましい実施形態によれば、ポリマー含有造形体は、少なくとも2回、液体で満たされたトラフを通され、ここで、該ポリマー含有造形体は、1つのリールから巻出されそして別のリールへ巻取られ、そして該ポリマー含有造形体のランニング方向が、該リールの回転方向を変化させることによって該処理の間を交互する。
【0139】
前記造形体、例えば膜は、少なくとも2回、好ましくは少なくとも10回、そして特に好ましくは少なくとも25回、液体浴を通され、ここで、膜のランニング方向は、リールの回転方向を変化させることによって交互される。
【0140】
前記造形体が液体を通される速度は、液体のタイプおよび造形体のタイプに依存する。一般的に、該造形体は、0.5〜100m/分、特に1.0〜25m/分の速度で液体浴を通過して引っ張られる。
【0141】
造形体が液体へ浸漬する程度は、好ましくは0.05〜10m、特には0.15m〜2mである。
【0142】
本方法の1つの特定の実施形態によれば、総処理時間は、2分〜10時間の範囲内、好ましくは15分〜3時間の範囲内である。
【0143】
造形体が液体浴を通される速度は、それ自体公知の様式で制御され得る。これとしては、特に、それらの回転速度を測定することによりあるいはタコローラーによりリールの回転速度を制御することが挙げられる。
【0144】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、造形体は、処理の間にドローバック力(drawback force)へ供される。結果として、例えば、特に均一かつ平滑かつ折りたたみのない様式で、膜を巻き上げる(wind up)ことが可能である。さらに、造形体の細孔サイズおよび異方性は、結果として影響され得る。造形体は、好ましくは、0.1〜400N、特には0.2〜300Nおよび特に好ましくは2.4〜120Nの範囲のドローバック力で処理され、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【0145】
好ましくは、膜は、0.5〜200N/m、好ましくは1〜150N/mの範囲の、そして特に好ましくは12〜60N/mの範囲の、膜の幅に基づくドローバック力で、液体で満たされたトラフを通される。該幅は、ここで、液体での処理前のランニング方向(running direction)に対して垂直な膜の長さ寸法をいう。20cm〜200cmの範囲の幅を有する膜に基づいて、これは、0.1〜400N、特には0.2〜300Nそして特に好ましくは2.4〜120Nの範囲の好ましいドローバック力を生じさせ、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【0146】
本発明の1つの特定の局面によれば、液体は膜へ付着し、ここで、好ましくは少なくとも1g/m、特には少なくとも10g/mの液体が、処理後の膜上に残ったままである。この値は、少なくとも1つの洗浄工程により溶媒残渣が除去されている乾燥膜の重量に対する、液体での処理の結果としての重量の増加に関する。
【0147】
洗浄液体(例えば、水)での膜の処理の間、好ましくは1〜1000ml/m、特には5〜250ml/m、特に好ましくは15〜150ml/m、そして非常に特に好ましくは25〜75ml/mが膜に付着する。過剰な液体は、例えばローラーによって、必要に応じて除去され得る。
【0148】
ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーで膜がドープされる場合、好ましくは1〜1000ml/m、特には10〜800ml/m、特に好ましくは50〜600ml/m、そして非常に特に好ましくは100〜400ml/mが膜に付着する。
【0149】
液体浴中での処理後に膜に付着しそしてこれへ浸透する液体の量は、膜が液体浴に通される速度によって制御され得る。
【0150】
液体の量はまた、処理が行われる温度に依存する。本方法が行われる温度は、重要ではなく、そしてしたがって、トラフにおけるモノマーの重合が一般的に回避されることを伴って、広範囲に変動し得る。しかし、一般的に、本方法は、好ましくは、0〜150℃、好ましくは10℃〜100℃の範囲で行われ、ここで、該範囲は液体の物性に依存する。
【0151】
1つの特定の実施形態によれば、トラフに配置される液体は、必要に応じて新しくされるかまたは別の液体と交換され得る。例えば、汚された液体は、同タイプの新しい液体と交換され得る。液体はまた、異なる液体と交換され得る。この手段のために、異なる装置を使用する必要無しに、膜は洗浄およびドープの両方がなされ得る。この手順は、バッチにおいてまたは連続的に行われ得、ここで、個々の成分を計量する(metered in)ことも可能である。
【0152】
1つの特定の実施形態によれば、トラフ中の液体は、液体の均一性を確実にするために循環され得、その結果、例えば組成の変化が回避される。
【0153】
ジガー(Jiggers)は、本方法を行うために特に好適であり、これらのジガーは、例えばDietmar Fries, Ausbildungsmittel, Unterrichtshilfen “Textilveredelung, Beschichten”, Arbeitgeberkreis Gesamttextil AGK (1992) page 2.13において記載されている。これらの装置は、特にMathis AGおよびKuester AGから購入可能である。
【0154】
以下において、本発明を、図1に図示されるジガーを使用して例示し、この記載は本発明を限定するように意図されない。
【0155】
ポリマー膜(1)、例えばポリアゾール膜は、リール(2)から巻出され、そして第2リール(3)へ巻取られ、そして該プロセスにおいて、例えばローラー(4)上を通される。膜はトラフ(5)を通され、そしてそこでローラー(6)上で方向変更される(deflected)。トラフにおいて、膜は液体で処理される。トラフを離れ、続いてさらなる方向変更(deflection)後、巻き上げ前に、過剰の液体は、必要に応じて圧力(これは、さらなるローラー(7)によって発生される)によって除去されてもよい。液体は、通常、ポリアゾール膜へ付着し、その結果、この液体はまた、巻き上げられた状態の膜に対して作用する。
【0156】
液体と接触するジガーの全てのパーツは、さび防止コーティング(rust-proof coating)を施されていてもよい。特に好ましくは、ローラー、リール等のようなそのパーツが好適なプラスチック(例えば、ペルフルオロ化ポリマー、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルスルホン、特に(登録商標)Etlon)でコーティングされているジガーを使用することかもしれない。これは、濃酸で膜をドープするために特に有利である。したがって、ローラーおよびリールは、例えば、ステンレス鋼製であり得る。
【0157】
膜の速度および/またはドローバック力は、例えばローラー(4)および/または(6)によって決定され得、これはその場合タコローラーまたはテンションメーターローラーとして設計される。該装置にはまた、ローラーの速度およびランニング方向を制御する電子制御システムが備えられていてもよい。例えば、全膜(1)が1つのリール(2)から第2リール(3)へ移されると、該装置はランニング方向を自動的に交互させるかもしれない。
【0158】
ジガーの、特にトラフ(5)の温度を制御するための手段がまた提供され得、ここで、巻き上げられた膜への熱エネルギーインプットはまた、リール(2)および(3)の回転速度に特に依存する。
【0159】
ジガーはまた、周囲環境からトラフおよびリールを覆う(cover off)カバー(8)を備えていてもよい。結果として、前記液体の蒸発が防止され得る。例えば濃リン酸のような吸湿性液体はまた、湿気から保護され得、ジガーが乾燥空気または窒素でリンスされることが可能である。
【0160】
技術的特性をさらに改善するために、充填剤(特に、プロトン伝導性充填剤)および追加の酸を膜へ添加することも可能である。このような物質は、好ましくは、100℃で少なくとも10−6S/cm、特には10−5S/cmの真性伝導率(intrinsic conductivity)を有する。添加は、例えば、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体へこれらを添加することによって行われ得る。これらの添加剤はまた、それらが液体形態である場合、該モノマーの重合後に添加され得る。
【0161】
プロトン伝導性充填剤の非限定的な例は、以下である:
スルフェート: 例えば、CsHSO、Fe(SO、(NHH(SO、LiHSO、NaHSO、KHSO、RbSO、LiNSO、NHHSO
ホスフェート: 例えば、Zr(PO、Zr(HPO、HZr(PO、UOPO・3HO、HUOPO、Ce(HPO、Ti(HPO、KHPO、NaHPO、LiHPO、NHPO、CsHPO、CaHPO、MgHPO、HSbP、HSb14、HSb20
ポリ酸: 例えば、HPW1240・nHO(n=21〜29)、HSiW1240・nHO(n=21〜29)、HWO、HSbWO、HPMo1240、HSb11、HTaWO、HNbO、HTiNbO、HTiTaO、HSbTeO、HTi、HSbO3、MoO
セレン化物およびヒ化物: 例えば、(NHH(SeO、UOAsO、(NHH(SeO、KHAsO、CsH(SeO、RbH(SeO
リン化物 :例えば、ZrP、TiP、HfP;
酸化物: 例えば、Al、Sb、ThO、SnO、ZrO、MoO
シリケート: 例えば、ゼオライト、フィロシリケート、テクトシリケート、H−ソーダ沸石、H−モルデン沸石、NH−方沸石(NH4-analcines)、NH−方ソーダ石、NH−ガレート(NH4-gallates)、H−モンモリロナイト;
酸: 例えば、HClO、SbF
充填剤: 例えば、炭化物、特にSiC、Si、繊維、特にガラス繊維、ガラス粉末および/またはポリマー繊維(好ましくは、ポリアゾールに基づくもの)。
【0162】
これらの添加剤は、プロトン伝導性高分子膜中に慣用的な量で含まれ得るが、膜のポジティブな特性(例えば、高伝導率、長寿命および高機械安定性)が、過剰に多い量の添加剤を添加することによってあまりにも大きく損なわれてはいけない。一般的に、重合後の膜は、多くても80重量%、好ましくは多くても50重量%、そして特に好ましくは多くても20重量%の添加剤を含む。
【0163】
更に、この膜はまた、ペルフルオロ化スルホン酸添加剤(perfluorinated sulfonic acid additives)(好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、非常に好ましくは0.2〜10重量%)を含み得る。これらの添加剤は、性能の改善、カソード付近の酸素溶解性および酸素拡散性の増加、ならびに白金へのリン酸およびホスフェートの吸着の減少へと導く。(Electrolyte additives for phosphoric acid fuel cells. Gang, Xiao; Hjuler, H. A.; Olsen, C.; Berg, R. W.; Bjerrum, N. J.. Chem. Dep. A, Tech. Univ. Denmark, Lyngby, Den. J. Electrochem. Soc. (1993), 140(4), 896-902 および Perfluorosulfonimide as an additive in phosphoric acid fuel cell. Razaq, M.; Razaq, A.; Yeager, E.; DesMarteau, Darryl D.; Singh, S. Case Cent. Electrochem. Sci., Case West. Reserve Univ., Cleveland, OH, USA. J. Electrochem. Soc. (1989), 136(2), 385-90.)。
【0164】
ペルフルオロ化スルホン酸添加剤の非限定的な例は、以下である:
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリエチルアンモニウムペルフルオロヘキサンスルホネートおよびペルフルオロスルホンイミド。
【0165】
ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含む液体での膜の処理後、膜中に含まれるモノマーは重合され得る。
【0166】
ホスホン酸基を含むモノマーを含むモノマーの重合は、好ましくは、フリーラジカル経路によって行われる。フリーラジカル形成は、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に行われ得る。
【0167】
例えば、開始溶液(starter solution)が、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体での処理後に適用され得る。これは、先行技術から公知であるそれ自体公知の手段(例えば、スプレーイング、ディッピングなど)によって行われ得る。ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体へ開始溶液を添加することも可能である。
【0168】
好適なフリーラジカル発生剤(free-radical generators)は、特に、アゾ化合物、ペルオキシ化合物、ペルスルフェート化合物またはアゾアミジンである。非限定的な例は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過硫酸二カリウム、アンモニウムペルオキシジスルフェート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸アミジン)ヒドロクロリド、ベンゾピナコール、ジベンジル誘導体、メチルエチレンケトンペルオキシド、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート、ジクメンペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ならびに名称(登録商標)Vazo、例えば(登録商標)Vazo V50および(登録商標)Vazo WSでDuPontから得られ得るフリーラジカル発生剤である。
【0169】
放射へ暴露されるとフリーラジカルを形成するフリーラジカル発生剤がまた使用され得る。好ましい化合物としては、特に、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP,Upjon Corp)、n−ブチルベンゾインエーテル(登録商標 Trigonal−14, AKZO)および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(登録商標 Igacure 651)および1−ベンゾイルシクロヘキサノール(登録商標 Igacure 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(登録商標 Irgacure 819)および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン−1−オン(登録商標 Irgacure 2959)が挙げられ、これらは、各ケースにおいて、Ciba Geigy Corpから市販されている。
【0170】
典型的には0.0001〜5重量%、特には0.01〜3重量%(ホスホン酸基を含むモノマーの重量に基づく)のフリーラジカル発生剤が添加される。フリーラジカル発生剤の量は、所望の重合度に依存して変更され得る。
【0171】
重合はまた、IRまたはNIRへの暴露によっても行われ得る(IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長または約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)。この場合、湿った膜が照射されることも可能である。重合に加えて、照射もまた乾燥をもたらす。
【0172】
重合はまた、400nm未満の波長を有するUV光への暴露によっても行われ得る。この重合方法は、それ自体公知であり、そして例えば、Hans Joerg Elias, Makromolekulare Chemie, 5th edition, vol. 1, pages 492-511;D.R. Arnold, N.C. Baird, J.R. Bolton, J.C.D. Brand, P.W.M. Jacobs, P. de Mayo, W.R. Ware, Photochemistry - An Introduction, Academic Press, New York および M.K. Mishra, Radical Photopolymerization of Vinyl Monomers, J. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem. Phys. C22 (1982-1983) 409に記載されている。
【0173】
重合はまた、β線、γ線および/または電子線への暴露によっても達成され得る。本発明の1つの特定の実施形態によれば、膜は、1〜300kGy、好ましくは3〜250kGyそして非常に特に好ましくは20〜200kGyの範囲の放射線量で照射される。
【0174】
ホスホン酸基を含むモノマーの重合は、好ましくは室温(20℃)超かつ200℃未満の温度、特には40℃〜150℃の温度、特に好ましくは50℃〜120℃で行われる。重合は、好ましくは大気圧で行われるが、圧力下でも行われ得る。重合は、フラット構造体(flat structure)の硬化へ導き、ここで、この硬化は、微小硬度測定(microhardness measurement)によってモニターされ得る。重合によってもたらされる硬度の増加は、重合前の膜の硬度に基づいて、好ましくは少なくとも20%である。
【0175】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、膜は、高い機械的安定性を有する。この値は、膜の硬度から得られ、これは、DIN 50539に従う微小硬度測定によって測定される。この目的のために、膜は、20sにわたってVickersダイヤモンドにより3mNの力へ連続的に供され、そして侵入深度(penetration depth)が測定される。したがって、室温での硬度は、少なくとも0.01N/mm、好ましくは少なくとも0.1N/mm、そして非常に特に好ましくは少なくとも1N/mmであり、これはいかなる限定をも示すように意図されない。次いで、力が、5s間3mNで一定に維持され、そして侵入深度からクリープが算出される。好ましい膜において、これらの条件下でのクリープCHU0.003/20/5は、20%未満、好ましくは10%未満、そして非常に特に好ましくは5%未満である。微小硬度測定によって測定されるモジュラスは、少なくとも0.5MPa、特には少なくとも5MPa、そして非常に特に好ましくは少なくとも10MPaでのYHUであり、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【0176】
所望の重合度に応じて、重合後に得られるフラット構造体は、自己支持性膜(self-supporting membrane)である。好ましくは、重合度は、少なくとも2、特には少なくとも5、特に好ましくは少なくとも30の繰り返し単位、特には少なくとも50の繰り返し単位、非常に特に好ましくは少なくとも100の繰り返し単位である。この重合度は、GPC法によって測定され得る数平均分子量Mより測定される。該膜に含まれるホスホン酸基を含むポリマーを分解無しに単離することに関する問題に起因して、この値は、サンプルを使用して測定され、これは、ポリマーを添加することなく、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを重合することによって行われる。ここで、ホスホン酸基を含むモノマーとフリーラジカル開始剤との重量割合は、膜が製造される条件と比較して一定に維持される。比較重合において達成されるコンバージョン(conversion)は、使用されるホスホン酸基を含むモノマーに基づいて、好ましくは20%以上、特には40%以上、そして特に好ましくは75%以上である。
【0177】
膜に含まれるホスホン酸基を含むポリマーは、好ましくは、ブロードな分子量分布を有する。例えば、ホスホン酸基を含むポリマーは、1〜20、特に好ましくは3〜10の範囲の多分散度M/Mを有し得る。
【0178】
プロトン伝導性膜の含水量は、好ましくは多くとも15重量%、特に好ましくは多くとも10重量%、そして非常に特に好ましくは多くとも5重量%である。
【0179】
この関係において、膜の伝導率は、Grotthusメカニズムに基づき得、その結果として、該システムはいかなる追加の湿潤化をも必要としないと推測され得る。従って、好ましい膜は、ホスホン酸基を含む低分子量ポリマーの比率を含む。例えば、2〜20の範囲の重合度で、ホスホン酸基を含むポリマーの比率は、ホスホン酸基を含むポリマーの重量に基づいて、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%であり得る。
【0180】
重合は、層厚みの減少へ導き得る。好ましくは、自己支持性膜の厚みは、15〜1000μm、好ましくは20〜500μm、特には30〜250μmである。
【0181】
第一工程においてポリマー膜へ組み込まれたモノマーの第一重合後、得られる膜を、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体で再度処理してもよい。結果として、膜中のホスホン酸基を含むポリマーの含有量は、増加され得る。この関係において、膜の安定性は、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーで膜をドーピングすることによって減少することが、注意されるべきである。しかし、膜の安定性は、特定の値未満に低下してはならず、これは使用される装置に依存する。しかし、モノマーの重合は膜の安定性を増加させ、その結果、ドーピングプロセスは、例えば高分子膜中のホスホン酸基の含有量を増加させるために、繰り返され得る。
【0182】
本発明の1つの特定の局面によれば、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体での処理工程と該モノマーの引き続いての重合との組合せが、少なくとも2回、好ましくは少なくとも4回、そして特に好ましくは少なくとも6回行われ得る。
【0183】
重合に続いて、膜は、表面において、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に架橋され得る。この膜表面の硬化は、更に、膜の特性を改善する。
【0184】
1つの特定の局面によれば、膜は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、そして特に好ましくは少なくとも250℃の温度へ加熱され得る。熱的架橋は、好ましくは、酸素の存在下で行われる。この方法工程において、酸素濃度は、通常、5〜50容量%、好ましくは10〜40容量%の範囲であり、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【0185】
架橋はまた、IRもしくはNIR(IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長または約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)および/またはUV光への暴露によって行われ得る。別の方法は、β線、γ線および/または電子線への暴露である。ここで、放射線量は、好ましくは5〜250kGy、特には10〜200kGyである。照射は、空気または不活性ガス下で行われ得る。結果として、膜の使用特性、特にその耐久性が、改善される。
【0186】
所望の架橋度に依存して、架橋反応の期間は、広範囲に渡り得る。一般的に、この反応時間は、1秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間の範囲であり、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【0187】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、膜は、膜の総重量に基づいて、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、そして特に好ましくは少なくとも7重量%のリン(元素として)を含む。リンの割合は、元素分析によって測定され得る。この目的のために、膜は、減圧(1mbar)下、110℃で3時間乾燥される。
【0188】
ホスホン酸基を含むポリマーは、好ましくは、少なくとも5meq/g、特に好ましくは少なくとも10meq/gのホスホン酸基の含有量を有する。この値は、いわゆるイオン交換容量(IEC)によって測定される。
【0189】
IECを測定するために、ホスホン酸基は遊離酸に変換され、測定はホスホン酸基を含むモノマーの重合前に行われる。次いで、サンプルは、0.1M NaOHで滴定される。次いで、当量点までの酸の消費量および乾燥重量から、イオン交換容量(IEC)が算出される。
【0190】
本方法によって得られ得る高分子膜は、既に公知のドープされた高分子膜と比較して改善された材料特性を有する。特に、それらは、公知のドープされた高分子膜よりも良好な性能を示す。これは、特に、改善された真性プロトン伝導率(intrinsic proton conductivity)に起因し、これは、特に、ホスホン酸基を含むポリマーの存在に起因する。120℃の温度で、この伝導率は、少なくとも1mS/cm、好ましくは少なくとも2mS/cm、特に少なくとも5mS/cmである。
【0191】
さらに、前記膜は、70℃の温度であってさえ高伝導率を有する。該伝導率は、特に、膜中のスルホン酸基含有量に依存する。この割合が高くなるほど、低温での伝導率がより良好となる。ここで、膜は、低温で湿潤化され得る。この目的のために、エネルギー源として使用される化合物(例えば、水素)は、ある比率の水と共に提供され得る。しかし、多くの場合において、該反応によって形成される水は、湿潤化を達成するに十分である。
【0192】
比伝導率を、定電位モードにおける4極配置でのインピーダンス分光法(impedance spectroscopy in a 4-pole arrangement in potentiostatic mode)によって、そして白金電極(ワイヤ、直径0.25mm)を使用して、測定する。集電電極間(current-collecting electrodes)のギャップは2cmである。得られるスペクトルを、オーム抵抗およびキャパシタの並列配置からなるシンプルなモデルで評価する。リン酸ドープされた膜のサンプル断面を、サンプルが搭載される直前に測定する。温度依存性を測定するために、測定セルを、オーブン中において所望の温度までもっていき、該温度は、該サンプルのすぐ隣に配置されたPt−100熱電対によって制御する。温度が達成された後、該サンプルを、測定開始前の10分間、この温度で維持する。
【0193】
いわゆる液体ダイレクトメタノール型燃料電池(liquid direct methanol fuel cell)における90℃および0.5Mメタノール溶液での作動の間の交差電流密度(crossover current density)は、好ましくは100mA/cm未満、特には70mA/cm未満、特に好ましくは50mA/cm未満、そして非常に特に好ましくは10mA/cm未満である。いわゆるガス状ダイレクトメタノール型燃料電池(gaseous direct methanol fuel cell)における160℃および2Mメタノール溶液での作動の間の交差電流密度は、好ましくは100mA/cm未満、特には50mA/cm未満、非常に特に好ましくは10mA/cm未満である。
【0194】
交差電流密度を測定するために、カソードで放出される二酸化炭素の量を、COセンサーによって測定する。COの量についてこのようにして得られる値から、P. Zelenay, S.C. Thomas, S. Gottesfeld in S. Gottesfeld, T.F. Fuller “Proton Conducting Membrane Fuel Cells II“ ECS Proc. vol. 98-27 pages 300-308によって記載されるように、交差電流密度を算出する。
【0195】
真性伝導性高分子膜(intrinsically conductive polymer membranes)の使用の可能な分野としては、特に、燃料電池、電気分解、キャパシタおよびバッテリーシステムにおける使用が挙げられる。それらの特性プロフィールに起因して、該高分子膜は、好ましくは、燃料電池、特にダイレクトメタノール型燃料電池において使用され得る。
【0196】
好ましい異方性造形体はまた、例えば精密濾過(microfiltration)、限外濾過、逆浸透、電気透析およびパーベーパレーション(pervaporation)のために使用され得る膜である。これらの造形体は、特に、液体での処理後にホスホン酸基を含むモノマーを除去することによって得られ得る。これは、例えば、前述の洗浄液体で洗浄することによって達成され得る。
【0197】
好ましい膜の細孔のいくつかの形状は、異方性である。したがって、細孔は、円形形状を有さず、むしろ、高さおよび幅の点で異なる寸法を有する形状を有する。これらの細孔の幅は、好ましくは、1.5nm〜700nmの範囲、特には8nm〜400nmの範囲、そして特に好ましくは15nm〜200nmにある。これらの細孔の高さは、好ましくは、1nm〜500nmの範囲、特には5nm〜300nmの範囲、そして特に好ましくは10nm〜150nmにある。二次元的に考える場合、幅は、ここで、細孔の最大の長さ寸法(longitudinal dimension)として理解され、そして高さは、細孔の最小の長さ寸法として理解される。高さに対する幅の比率は、好ましくは、1.2〜20の範囲、特には1.5〜10の範囲、そして特に好ましくは2〜5の範囲にある。これらの値は、特に、透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)によって測定され得る。
【0198】
本発明の1つの特定の局面によれば、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%の細孔が、異方性形状を有する。
【0199】
本発明の異方性造形体、例えば精密濾過(microfiltration)、限外濾過等のための膜、あるいは特に燃料電池において使用され得るプロトン伝導性高分子電解質膜は、好ましくは、少なくとも50MPa、特には少なくとも100MPaおよび特に好ましくは少なくとも150Mpaの最大弾性係数を有する。最小弾性係数に対する最大弾性係数の比率は、好ましくは少なくとも1.5、特には少なくとも1.8および特に好ましくは少なくとも2.1である。最大弾性係数は、一般的に、ロード方向において測定される値から得られ、一方、最小値は、ロード方向に垂直の値から生じる。ロード方向(load direction)は、本方法に従ってリール上へ巻き上げるプロセスの間に張力が発せられる方向をいう。弾性係数は、ドイツ特許出願第10129458.1号に記載されるように、引張り試験によって測定され得る。
【0200】
本発明は、実施例に基づいて下記により詳細に説明し、これはいかなる限定をも示すように意図されない。
【実施例】
【0201】
ドイツ特許出願第10331365.6号に記載されるように作製した、長さ10m、幅36cmおよび厚み55μmを有するPBI膜を、70℃で、90%濃度のビニルホスホン酸水溶液(VPA)5lで満たされたトラフへ導入した。膜を、3m/分の速度でリールから供給し、そして0.63N/cmのドローバック力に供し、そして別のリールへ巻取った。PBI膜のランニング方向を、リールの回転方向を変化させることによって、処理の間に交互した。膜を合計3時間ドープした。ドーピング後の膜の厚みは、105μmであった。次いで、ドープされた膜を、99kJ/kgの放射線量で照射した。
【0202】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】ポリマー膜(1)、例えばポリアゾール膜は、リール(2)から巻出され、そして第2リール(3)へ巻取られ、そして該プロセスにおいて、例えばローラー(4)上を通される。膜はトラフ(5)を通され、そしてそこでローラー(6)上で方向変更される(deflected)。トラフにおいて、膜は液体で処理される。トラフを離れ、続いてさらなる方向変更(deflection)後、巻き上げ前に、過剰の液体は、必要に応じて圧力(これは、さらなるローラー(7)によって発生される)によって除去されてもよい。液体は、通常、ポリアゾール膜へ付着し、その結果、この液体はまた、巻き上げられた状態の膜に対して作用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー含有造形体が液体で満たされたトラフを通され、ここで、該ポリマーは1つのリールから巻出されそして別のリールへ巻取られ、該液体が、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有することを特徴とする、異方性造形体を製造する方法。
【請求項2】
ポリマー含有造形体が液体で満たされたトラフを少なくとも2回通され、ここで、該ポリマー含有造形体は1つのリールから巻出されそして別のリールへ巻取られ、そして該ポリマー含有造形体のランニング方向が、該リールの回転方向を変化させることによって該処理の間に交互することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー含有造形体が高分子膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が、該液体の総重量に基づいて、ホスホン酸基を含むモノマーを少なくとも50重量%含有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー含有造形体がポリアゾールを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー含有造形体が少なくとも80重量%のポリアゾールを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体が前記処理後に前記高分子膜へ付着することを特徴とする、請求項3〜6の1以上に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1g/mの液体が前記膜へ付着することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子膜が、先ず、少なくとも70重量%の水を含む液体で処理され、次いで、該高分子膜が、より低い含水量を有する液体で処理されることを特徴とする、請求項3〜8の1以上に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー含有造形体が、少なくとも10回、前記液体浴を通されることを特徴とする、請求項2〜9の1以上に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー含有造形体が、0.5〜100m/分の速度で前記液体浴を通されることを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー含有造形体が、0.5〜200N/mの範囲で、該膜幅に基づいて、ドローバック力(drawback force)で通されることを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項13】
前記膜が15分〜3時間処理されることを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項14】
前記液体が、

【化1】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化2】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化3】

[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、ORおよび/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
のホスホン酸基を含むモノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項15】
前記液体が、

【化4】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化5】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化6】

[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、ORおよび/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15アルキレン基、二価のC1−C15アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20アリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、次にハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
のスルホン酸基を含むモノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項16】
前記液体が、架橋可能でありそして少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含むモノマーを少なくとも1種含むことを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項17】
前記液体が、分散および/または懸濁されたポリマーを少なくとも1つ含有することを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項18】
得られるプロトン伝導性電解質膜における、前記液体での処理後に得られる、前記ホスホン酸基を含むモノマーを重合することを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項19】
前記重合後に、得られる膜を、ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体で再度処理することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ホスホン酸基を含むモノマーおよび/またはスルホン酸基を含むモノマーを含有する液体での処理工程と該モノマーの引き続いての重合との組合せが、少なくとも4回行われることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ホスホン酸基を含むモノマーが、前記処理後、前記膜から除去されることを特徴とする、請求項1〜17の1以上に記載の方法。
【請求項22】
ジガー(jigger)がポリマー含有造形体の処理のために使用されることを特徴とする、前記請求項の1以上に記載の方法。
【請求項23】
前記方法1〜22の1つによって得られ得る、異方性造形体。
【請求項24】
最小弾性係数に対する最大弾性係数の比率が少なくとも2であることを特徴とする、請求項23に記載の異方性造形体。
【請求項25】
前記異方性造形体が、ホスホン酸基を含むポリマーを少なくとも50重量%含有することを特徴とする、請求項23または24に記載の異方性造形体。
【請求項26】
前記異方性造形体が細孔を含み、このサイズが異方性であることを特徴とする、請求項23または24に記載の異方性造形体。
【請求項27】
前記細孔の高さに対する幅の比率が1.5〜5の範囲にあることを特徴とする、請求項26に記載の異方性造形体。
【請求項28】
高分子膜の最小弾性係数に対する最大弾性係数の比率が少なくとも2であることを特徴とする、ホスホン酸を含むポリマーを含有するプロトン伝導性高分子膜。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−537317(P2007−537317A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512120(P2007−512120)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005283
【国際公開番号】WO2005/111123
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505118475)ペミアス ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】