説明

異物検査装置及びアライメント調整方法

【課題】パターンマッチングし難い条件にあるアライメントマークを持つ半導体ウエハについて、高精度な試料の位置合わせ、高感度な検査を実現する。
【解決手段】アライメントマークの画像データのパターン幅計測、輝度分布取得が可能な解析手段と、積算処理、減算処理、2値化処理、膨張処理、収縮処理が可能な画像処理手段を備え、画像データに処理を加えて、アライメントマークを明瞭にした後にパターンマッチングを行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体欠陥検査装置のように、検査の際にアライメント調整を行ってから、被検査物の表面に存在する異物を検出する異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の被検査物の表面に存在する異物,きず,欠陥,汚れ等(以下では、単に異物と称す)を検出する異物検査装置として、レーザー光等の光ビームを被検査物の表面に照射し、その際に表面で発生した反射光又は散乱光を検出することにより、被検査物の表面における異物の有無を検出するものが知られている。
【0003】
例えば、半導体欠陥検査装置の場合は、本来同一のパターンを有する多数のICチップが形成されている半導体ウェハに光ビームを照射し、各チップより検出した反射光又は散乱光の強度から画像信号を作成し、これを、隣接するチップから得られた画像信号、若しくは予め用意した良品チップの画像信号と比較して、両者の偏差信号がしきい値以上にある場合は異物と判定する。
【0004】
このような異物検査にあっては、被検査物である半導体ウェハに形成されたチップの画像信号を採取するとき、半導体ウェハの表面上の横方向に並設されたチップが、光ビームのスキャン方向に対して平行に載置されていることが必要である。なぜなら、このような異物検査では、検出したチップの画像信号を隣接したチップや良品チップの画像信号と比較して偏差信号を採取するため、チップが光ビームのスキャン方向と平行となるよう半導体ウェハが位置決めされないと、チップ内の配線レイアウトやチップ間のスクライブライン等、検出領域に含まれるパターンの種類や密度の違いで偏差信号にバラツキを生じ、検査結果に影響を及ぼすからである。
【0005】
そこで、このような異物検査装置では、被検査物を光ビームのスキャン方向に対して平行に載置するための位置合わせ方法として、被検査物の表面のチップ内に形成されたアライメントマークを基準に、被検査物内の2点の座標(X、Y)を採取し、その座標から算出された被検査物のズレ量を基に、被検査物が載置された検査ステージを移動させて補正が行われている。
【0006】
一方で、近年の半導体の高集積化、微細化に伴い、より微小な異物の検出が必要となってきている。微小な異物からの反射光又は散乱光を正しく検出するためには、異物検査装置においては、上述した異物を判定するしきい値を低く設定する必要がある。しかし、しきい値を低く設定すると、偏差信号のバラツキによりノイズを異物と誤検出してしまう懸念がある。そのため、異物検査装置にあっては、感度の向上と誤検出の防止の両立が望まれている。
【0007】
そこで 特許文献1記載の装置では、予め用意した良品チップの画像信号から、しきい値を加算し、膨張処理を加えた上限しきい値画像と、しきい値を減算し、収縮処理を加えた下限しきい値画像とを作成し、各チップで検出した画像信号を上限しきい値画像、下限しきい値画像の両方と比較するようにして、パターンのエッジ付近の位置ずれによる誤検出を防止している。
【0008】
また、特許文献2記載の装置では、画像取得後にチップ間の位置合わせ処理を行い、また画像内で演算した複数の特徴量を算出、判定することで異物検出の感度を向上させている。
【0009】
また、特許文献3では、異物判定後の画像(異物が有ると判定され場所を1、異物が無い場所と判定された場所を0とした2値画像)に対して、収縮・膨張処理を行うことで、誤検出した擬似異物を消去している。
【0010】
さらに、感度の向上、及び誤検出の防止には、上述した特許文献1〜3に記載のように、画像信号取得後にこれら処理を行う他に、被検査物を載置した際のさらなる位置合わせ精度の向上により、偏差信号のバラツキを低減することが有効であるが、アライメントマークの微細化や、製造工程に起因したコントラスト低下により、位置合わせが難しくなってきている。
【0011】
このような検査位置の位置合わせ方法に関しては、例えば、特許文献4には、レチクル基板の投影波形を基準画像データ(以下、テンプレート)として準備し、位置調整用レチクル基板から実際に得られた投影波形とのパターンマッチングからズレ量を求める装置が開示されている。
【0012】
また、パターンマッチング方法に関しては、特許文献5には、被検査物から画像信号を検出し、画像を正規化し、同じく正規化したテンプレートと相関値を計算する正規化する正規化相関法が開示されている。
【0013】
また、特許文献6には、画像信号より所定の特徴量を抽出して抽象化パターンを形成し、これと基準画像(テンプレート)から得られた抽象化パターンとをマッチングして一致度を計算する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−91360号公報
【特許文献2】特開2008−39533号公報
【特許文献3】特開2000−180377号公報
【特許文献4】特開平10−106941号公報
【特許文献5】特開2006−107046号公報
【特許文献6】特開平11−340115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した従来技術では、次のような問題点があった。
特許文献1に開示された技術は、位置ずれによる偏差信号のバラツキには配慮が無く、パターンのエッジ付近以外では効果が期待できない。
【0016】
また、特許文献2に開示された技術は、基本的に画素単位での補正を前提としたものであり、画素単位以下の補正に行われる補間(フィッティング)処理には精度の保証がなされていない。
【0017】
また、特許文献3に開示された技術は、判定後の画像において、実際に微小な異物が有った場合でも誤検出とみなして消去してしまうおそれがあり、この点については何も配慮されていない。
【0018】
また、特許文献4〜6に開示された技術のような、パターンマッチングを使った位置合わせの場合、後述する図5(a)に示すような、2重枠で形成されたパターンの場合、枠の幅程度ずれた場所でも高い一致度を示してしまい、正しくマッチングが取れない可能性がある。また、コントラストの低いアライメントマークの場合、一致度が低くマッチングできないことについても配慮されていない。
【0019】
本発明は、上記した課題を鑑みなされたものであって、目的被検査物のアライメントマークがパターンマッチングし難い条件にある場合においても、認識不能や誤認識をしないようにパターンマッチングをすることにより、高精度な試料の位置合わせ、高感度な検査を実現することができる異物検査装置、並びにアライメント調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、被検査物の表面に光ビームを照射し、反射光又は散乱光の受光強度より画像信号を取得し、隣接した被検査物から得られた画像信号と比較して被検査物表面に存在する異物の有無を検査する異物検査装置において、前記被検査物の表面上の前記アライメントマークの画像データを採取する装置と、当該採取したアライメントマークのパターン画像のパターン幅又は輝度分布を取得する解析手段と、該解析手段により取得したパターン幅又は輝度分布に基づいて、当該採取したアライメントマークのパターン画像におけるアライメントマークの輪郭に該当する画素部分に対して積算処理、減算処理、2値化処理、膨張処理、収縮処理の中の少なくともいずれかを施す処理手段とを備え、画像データに処理を加えた後にパターンマッチングを行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高精度な試料の位置合わせができ、高感度な検査を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る異物検査装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る異物検査装置による検査動作のフローチャートである。
【図3】二重枠線でその形状が輪郭付けられたパターン画像を、単枠の細線化したパターン画像として登録しなおす場合の、パターン画像の形成処理のフローチャートである。
【図4】アライメント演算処理部が実行する第1の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【図5】不鮮明なアライメントマークのパターン画像を、鮮明なアライメントマークのパターン画像として登録しなおす場合の、パターン画像の形成処理のフローチャートである。
【図6】アライメント演算処理部が実行する第2の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【図7】不鮮明なアライメントマークのパターン画像を、細線化したアライメントマークのパターン画像として登録しなおす場合の、パターン画像の形成処理のフローチャートである。
【図8】アライメント演算処理部が実行する第3の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る異物検査装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る異物検査装置の概略構成図である。
本実施の形態に係る異物検査装置1は、異物検出系の照明部10と、結像手段20a及び受光手段20bを備えた同じく異物検出系の検出部20と、Xスケール30と、Yスケール40と、異物検出系とは別系の表面高さ位置検出系の照明部50と、一対の検出器60a,60bを備えた同じく表面高さ位置検出系の検出部60と、検査の際に被検査物が搭載されて移動可能な検査ステージ70と、異物検出系及び表面高さ位置検出系とは別系のアライメント検出系80と、処理装置100とを有している。
【0025】
被検査物としての、表面にチップ3が形成されたウェハ2は、ウエハテーブル(図1では図示省略)に搭載されて検査ステージ70に搬送された際、まず、アライメント検出系80を含む後述のアライメント装置200を用いて、後述するウェハ2のウェハ座標系と、検査ステージ70の移動座標系との間でのX方向,Y方向のオフセット、及び角度ずれθの補正がなされる。
【0026】
異物検出系の照明部10は、検査光として所定の波長のレーザー光を発生し、その光ビームを被検査物であるウェハ2の表面へ照射する。その際、検査ステージ70がX方向又はY方向へ移動することによって光ビームのウェハ2の表面上における照射位置が相対移動し、レーザー装置10から照射された光ビームがウェハ2の表面を走査することになる。つまり、検査ステージ70を水平面内でその縦/横方向(X−Y方向)に移動させて、ウェハ2の表面全体、又はその中の所望領域(所望のセルやダイ)について、検査光の走査照射を行うことができる。
【0027】
異物検出系の検出部20は、照明部10からのウェハ2の表面への検査光の照射によって、ウェハ2の表面から反射又は散乱する光を受光してその光強度を検出する。その受光手段20bは、例えばTDI(Time Delay and Integration)センサ,CCDセンサ,光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)等から成り、ウェハ2の表面で発生した反射光や散乱光を結像手段20aを介して受光して、その光強度を電気信号に変換し、画像信号として処理装置100へ出力する。
【0028】
Xスケール30及びYスケール40は、例えばレーザースケール等により構成され、検査ステージ70のX方向位置及びY方向位置をそれぞれ検出して、処理装置100へ出力する。これにより、処理装置100では、この検査ステージ70のX方向位置及びY方向位置に基づいて、検査ステージ70に搭載されているウェハ2のウェハ座標系上における光ビームの照射位置を得ることができるとともに、ウェハ2の表面上におけるウェハ座標系上の所望の位置に光ビームを照射することができる。
【0029】
表面高さ位置検出系の照明部50は、被検査物の表面高さ位置を検出するための検査光(レーザー光)として、所定の波長及び角度からなる検査光(レーザー光)を発生する。
【0030】
表面高さ位置検出系の検出部60は、被検査物の上下方向に検出中心位置を互いに異にした一対の検出器60a,60bを備えている。照明部50からのウェハ2の表面への検査光の照射によってウェハ2の表面から反射される光を各検出器60a,60bでそれぞれ受光して光強度を検出し、被検査物の表面高さ位置の検出信号として処理装置100へ供給する。これにより、処理装置100では、各検出器60a,60bからそれぞれ供給される検出信号に基づいて、被検査物の表面高さ位置に応じた異物検出系の焦点位置の調整等を行う。
【0031】
アライメント検出系80は、光源81と、光源81から放射された照明光をウェハ2のアライメントマーク4(4a,4b)上に集光する照明光学系と、ウェハ2からの反射光をCCDカメラ87に集光する結像光学系とを有する。図示の例では、光源81から出射した照明光は投影レンズ82で平行光に変換され、ハーフミラー83で反射され、第1対物レンズ84で集光されてウェハ2の或る点、例えばアライメントマーク4aに照射される。ウェハ2で反射した反射光は第1対物レンズ84で平行光に変換された後、ハーフミラー83を透過して、第2対物レンズ85及び結像レンズ86を介して、CCDカメラ87の撮像素子に結像される。CCDカメラ87は、その光強度を電気信号に変換し、画像信号として処理装置100へ出力する。
【0032】
処理装置100は、例えばPCのような、入出力装置及び機器接続インタフェースを備えているコンピュータ装置を利用して構成される。処理装置100は、A/D変換器110(111,112)と、画像処理装置120(121,122)と、異物判定処理部130と、座標管理装置140と、検査結果記憶装置150と、ステージ制御装置160と、アライメント演算処理部170と、アライメント記憶装置180と、ユーザインタフェース装置190とを有している。
【0033】
A/D変換器111は、異物検出系の検出部20の受光手段20bから供給されるアナログ信号の画像信号を、デジタル信号の画像信号に変換して出力する。
【0034】
画像処理装置121は、例えば遅延回路と差分検出回路とを含んで構成される。遅延回路は、A/D変換器111から画像信号を入力して遅延することにより、検査光の走査で現在光ビームが照射されているチップの1つ前の既に光ビームの照射が終了したチップの画像信号を出力する。差分検出回路は、検査光の走査で現在光ビームが照射されているチップのA/D変換器111からの画像信号と、1つ前の既に光ビームの照射が終了したチップについての遅延回路からの画像信号との差分を生成する。画像処理装置121からは、A/D変換器111からの画像信号と、差分検出回路により生成された画像信号の差分が異物判定処理部130に供給される。なお、画像処理装置121は、遅延回路の代わりに予め用意した良品チップの画像信号のデータを記憶したメモリを備え、良品のチップの画像信号との比較を行い、その画像信号の差分を異物判定処理部130に供給するようにしてもよい。
【0035】
異物判定処理部130は、判定回路131及び係数テーブル132,133を含んで構成されている。係数テーブル132,133は、後述する座標管理装置140から入力される座標情報を基に、その座標情報に対応付けられて格納されている係数を呼び出し、判定回路131へ出力する。この係数テーブル132,133に格納されている係数は、座標情報を基に呼び出されて判定回路131に出力された際に、判定回路131において、画像処理装置121に予め設定されている対応座標の基準のしきい値に乗じられる。したがって、判定回路131では、欠陥判定に用いるしきい値を係数テーブル132,133いずれからの係数を乗算して作成するかにより、柔軟な調整を可能にしている。
【0036】
判定回路131には、画像処理装置121から隣接するチップ相互の画像信号の差分が入力され、係数テーブル132,133からは判定用のしきい値に変更するための係数が入力される。判定回路131は、予め設定されている異物判定のための対応座標の基準のしきい値に対し、予め設定した条件に応じて係数テーブル132,133から供給される係数を選択的に乗算して、画像処理装置121からの対応画素の差分信号に適用する判定用のしきい値を作成する。ここで、予め設定した条件とは、例えば、多数の同一又は同様な製品を検査した過去の検査・分析データの蓄積等に基づき設定されたもので、例えば、画像処理装置120から入力される画像信号の差分がウェハ2のエッジ近傍部分に位置するチップ同士のものであるか否か、等といった条件が該当する。
【0037】
そして、判定回路131は、画像信号の差分と、この作成した判定用のしきい値とを比較し、差分が判定用のしきい値以上である場合には、当該画素の差分信号が異物や欠陥からの散乱光に基づいているものと判定する。このようにして、判定回路131では、光ビームが照射されている半導体ウェハ2上の照射位置等の違いにかかわらず、正確な異物判定が行えるようになっている。
【0038】
その上で、判定回路131は、判定結果を検査結果記憶装置150に出力して記憶させる。その際、判定回路131は、判定に用いたしきい値の大きさ等の情報も検査結果記憶装置150へ併せて出力し、検査結果記憶装置150に判定結果と対応付けて記憶しておくようになっている。
【0039】
このように、異物検出系の照明部10,異物検出系の検出部20,並びに処理装置100におけるA/D変換器111,画像処理装置121,及び異物判定処理部130は、異物検査装置1における異物判定装置として機能する。
【0040】
一方、座標管理装置140は、Xスケール30及びYスケール40から供給される検査ステージ70の移動座標系による位置座標を基に、現在の光ビームの照射位置に該当する半導体ウェハ2上のウェハ座標系による位置座標を演算して、その座標情報を出力する。座標管理装置140は、その半導体ウェハ2上のウェハ座標系による位置座標の演算にあたって、異物検査を行うに際してアライメント演算処理部170から供給されるアライメント情報を基に、移動座標系による位置座標とウェハ座標系による位置座標との間に生じているX方向,Y方向,及び回転方向θの座標ずれについて補正し、現在の光ビームの照射位置に該当する半導体ウェハ2上のウェハ座標系による位置座標を演算する。この演算されたウェハ座標系による位置座標は、異物判定処理部130の係数テーブル132,133、検査結果記憶装置150に供給される。これにより、検査結果記憶装置150では、判定結果及びしきい値の大きさ等と対応付けて、該当するウェハ座標系による位置座標も記憶される。
【0041】
ステージ制御装置160は、アライメント調整時、異物検査時等に、設定されたステージ移動条件に従って、Xスケール30及びYスケール40から供給される検査ステージ70の移動座標系による位置座標を基に、検査ステージ70のX方向及びY方向の移動を制御する。その際、例えば、異物検査時等において、ユーザインタフェース装置190を用いてウェハ座標系上の所望領域(所望のセルやダイ)が対象領域として指定され、ステージ移動条件がウェハ座標系上の座標からなる場合には、ステージ制御装置160は、アライメント演算処理部170から供給されるアライメント情報等を基に、その対象領域について、指定されたウェハ座標系上による位置座標から検査ステージ70の移動座標系による位置座標に変換し、検査ステージ70のX方向及びY方向の移動を制御する。
【0042】
また、ステージ制御装置160は、検出部60による被検査物の表面高さ位置の検出結果を基に、検査ステージ70の被検査物の搭載面をZ方向に必要に応じて上下動させて、異物検出系の照明部10からの検査光について焦点位置の調整も行うようになっている。
【0043】
ユーザインタフェース装置190は、出力部としての画像表示部191,例えばキーボード,マウス等といった入力部192を含んでいる。画像表示部191には、画像処理装置120(121,122)から出力される画像信号に基づく検出画像、異物判定処理部130やアライメント処理部170による異物判定結果やアライメント結果、又はアライメント調整や異物検査に係る設定・操作画面、等が表示される。入力部192は、画像表示部191に表示される設定・操作画面の表示に基づいて各種設定操作を行う際等に操作される。
【0044】
一方、A/D変換器112は、アライメント検出系80のCCDカメラ87から供給されるアナログ信号の画像信号を、デジタル信号の画像信号に変換して出力する。画像処理装置122は、A/D変換器112からの画像信号に基づいてCCDカメラ87による撮像部分の画像情報、すなわち検出画像を生成する。なお、アライメント検出系80のCCDカメラ87が、検出画像を直接出力することができる場合は、A/D変換器112及び画像処理装置122は省略可能である。
【0045】
アライメント演算処理部170は、画像処理装置122から入力された画像情報について、予め記憶させておいた設定値、順序で画像処理を実行し、パターン画像を形成する。もし、その処理方法が記憶されていない場合は、ユーザインタフェース部190を使用して、後で説明する方法で新たに登録する。パターン画像形成後は、アライメント演算処理部170は、形成されたパターン画像を計測画像として、次に述べるアライメント記憶装置180に保存しておいた基準アライメントマーク画像とのパターンマッチングを行う。
【0046】
この計測画像と基準アライメントマーク画像との間で一致する形状箇所が見つかり、アライメントマーク4のパターンマッチングが取れた際は、パターンマッチングが取れたアライメントマーク4の実座標として、その一致する形状箇所についての検査ステージ70の移動座標系の座標を取得する。この実座標は、計測画像と基準アライメントマーク画像との間でアライメントマーク4のパターンマッチングが取れた際の、その計測画像を取得するためにステージ制御装置160に指示した、検査ステージ70のX方向及びY方向の移動先についての移動座標系の座標値に基づいて算出されるものである。アライメント演算処理部170は、このようにして、ウェハ2内の異なる2個のチップ3a,3bについてアライメントマーク4a、4bの実座標の取得を行い、この取得したアライメントマーク4a、4bの実座標と、予め基準アライメントマーク画像と対応付けて保存されている基準アライメントマークの、ウェハ座標系における対応する一致する形状箇所の位置座標とから、検査ステージ70の移動座標系と被検査物としてのウェハ2のウェハ座標系との間のX方向,Y方向,及び回転方向θの座標ずれを算出する。そして、アライメント演算処理部170は、このX方向,Y方向,及び回転方向θの座標ずれを補正値として、座標管理装置140やステージ制御装置160といった必要部に供給する。
【0047】
アライメント記憶装置180は、このアライメント演算処理部170の処理に必要な、例えば、基準アライメント画像,基準アライメントマークのウェハ座標系における位置座標,処理順序,計測画像を取得するための検査ステージ70の移動指定範囲,等といったアライメント情報を記憶している。なお、アライメント記憶装置180に保存されているアライメント情報は、異物検査装置1自体がネットワークを介して異物検査に係るデータ管理サーバ等の機器に接続されている場合は、所定の被検査物の異物検査の開始に当たってこれら外部機器により登録更新されるようになっていてもよい。
【0048】
このように、アライメント検出系80,処理装置100におけるA/D変換器112,画像処理装置122,アライメント演算処理部170,及びアライメント記憶装置180は、異物検査装置1におけるアライメント装置200として機能する。
【0049】
次に、本実施の形態に係る異物検査装置1による検査動作について説明する。
図2は、本実施の形態に係る異物検査装置による検査動作のフローチャートである。
【0050】
異物検査の開始に当たって、処理装置100は、図示しない搬送部を作動させて、被検査物のウェハ2を複数収納したウェハカセットから今回検査対象の一のウェハ2を、同じく図示しないプリアライメント用のステージに搬送する(S201)。
【0051】
処理装置100は、このプリアライメント用のステージに載置されたウェハ2の外周及びVノッチ(又はオリフラ等)の位置をプリアライメント用の検出器を用いて検出する。処理装置100は、その検出結果に基づいて、プリアライメント用のステージを移動及び回転して、ウェハ2の回転ずれθが一定の範囲内に収まるように粗調整した後(S202)、搬送部を作動させて、プリアライメント用のステージから検査ステージ70に搬送して載置する(S203)。したがって、ウェハ2が検査ステージ70に載置された状態では、ウェハ2の回転ずれθが一定の範囲内に収まるように粗調整されている。その後、処理装置100は、アライメント装置200としてのアライメント演算処理部170等に対し、ステップS204〜S216に示したアライメント動作を実行させる。
【0052】
まず、アライメント演算処理部170は、アライメント記憶装置180に保存されているアライメント情報を基に、アライメント検出系80による照明光の照射位置が、ウェハ上の予め指定したチップ(第1チップ)3aになるように、検査ステージ70を移動させる(S204)。移動後、アライメント演算処理部170は、さらに、アライメント記憶装置180に保存されているアライメント情報を基に、チップ3a周辺のアライメントマークがあると思しき場所がアライメント検出系80による照明光の照射位置になるように検査ステージ70を移動指定範囲に基づき移動させ(S205)、その場所の画像情報を採取する(S206)。アライメント演算処理部170は、その採取した画像情報について、予め記憶させておいた設定値、順序で後述するパターン画像の形成処理を実行し、その採取した画像情報についてのパターン画像を取得する(S207)。そして、アライメント演算処理部170は、この取得したパターン画像を計測画像として、アライメント記憶装置180に保存しておいた基準アライメントマーク画像とのパターンマッチングを行う(S208)。アライメント演算処理部170は、計測画像と基準アライメント画像との間で一致する形状箇所が見つかり、アライメントマーク4aのパターンマッチングが取れた際は、パターンマッチングが取れたアライメントマーク4aの実座標として、その一致する形状箇所についての検査ステージ70の移動座標系の座標を取得する(S209)。これに対し、このパターンマッチングが取れなかった場合は、アライメント演算処理部170は、この取得したパターン画像内にアライメントマーク4aは無いと判断し、再度、ステップS205〜S208を実行する。
【0053】
一方、アライメント演算処理部170は、第1チップ3aにてアライメントマーク4aを検出したならば(S209)、今度は、アライメント記憶装置180に保存されているアライメント情報を基に、アライメント検出系80による照明光の照射位置が、ウェハ上の予め指定したチップ(第2チップ)3bになるように、検査ステージ70を移動させる(S210)。そして、アライメント演算処理部170は、第1チップ3aに対して行ったステップS205〜S208の処理と同様な、検査ステージ70の移動指定範囲に基づくチップ3b周辺のアライメントマーク4bがあると思しき場所のサーチ処理(S211)、その場所でのアライメントマーク4bの画像情報採取処理(S212)、パターン画像の形成処理(S213)、パターン画像と基準アライメントマーク画像とのパターンマッチング処理(S214)を、パターン画像と基準アライメントマーク画像との間で一致する形状箇所が見つかり、アライメントマーク4bのパターンマッチングが取れるまで、検査ステージ70の移動指定範囲において繰り返して行う。
【0054】
そして、アライメント演算処理部170は、ステップS214のパターンマッチング処理でパターン画像と基準アライメントマーク画像との間で一致する形状箇所が見つかり、アライメントマーク4bのパターンマッチングが取れたならば、この一致した形状箇所の検査ステージ70のX方向及びY方向の移動先についての移動座標系の座標値を、アライメントマーク4bの場所の実座標として取得する(S215)。
【0055】
この取得したアライメントマーク4a,4bの場所の実座標を基に、アライメント演算処理部170は、ウェハ2のウェハ座標系と、検査ステージ70の移動座標系との間でのX方向,Y方向のオフセット、及び角度ずれθを算出する(S216)。その上で、アライメント演算処理部170は、これらを補正値として、座標管理装置140やステージ制御装置160といった必要部に供給する。
【0056】
処理装置100は、アライメント演算処理部170を含むアライメント装置200による上述したアライメント動作が終わったならば、異物判定処理部130を含む異物判定装置としての前述したウェハ検査処理を実行する(S217)。そして、処理装置100は、前述したウェハ検査処理を実行終了したならば、検査が終了したウェハ2を検査ステージ70から搬出し(S218)、ウェハ2をウェハカセット収納に搬送して戻す。
【0057】
その上で、本実施の形態に係る異物検査装置1では、アライメント演算処理部170が、この計測画像と基準アライメントマーク画像とのパターンマッチングを行う際に、基準アライメントマーク画像上の基準アライメントマークが例えば二重枠線のような多重枠線や太い単枠でその形状が輪郭付けられていたり、基準アライメントマーク画像自体が不鮮明である場合であっても、上述のステップS207,S213と同様なパターン画像の形成処理を行い、単枠で細線化したり、鮮明化した基準アライメントマークのパターン画像の形成処理を行う。そして、多重枠線や太い単枠でその形状が輪郭付けられた基準アライメントマークや不鮮明な元の基準アライメントマーク画像に代えて、この単枠で細線化したり、鮮明化した基準アライメントマークのパターン画像を基準アライメントマーク画像として登録しなおことができることができるようになっている。
【0058】
さらに、そのパターン画像の形成処理で取得した、単枠で細線化したり、鮮明化した基準アライメントマークのパターン画像を得るための設定値、順序は、被検査物から採取したアライメントマークのパターン画像を得るために、利用することができるようになっている。
【0059】
以下、上述のステップS207,S213でアライメント演算処理部170が実行する基準アライメントマークや被検査物から採取したアライメントマークについてのパターン画像の形成処理について詳述する。
【0060】
ここでは、まず、第1の実施例として、二重枠線でその形状が輪郭付けられた基準アライメントマークについて、上述のステップS207,S213と同様なアライメントマークのパターン画像の形成処理を予め記憶させておいた設定値、順序で実行し、単枠の細線化した基準アライメントマーク画像のパターン画像を作成する場合において、アライメント演算処理部170が実行するパターン画像の形成処理を説明する。
【0061】
図3は、二重枠線でその形状が輪郭付けられた基準アライメントマークのパターン画像を、単枠の細線化したパターン画像として登録しなおす場合の、パターン画像の形成処理のフローチャートである。
【0062】
図4は、その際にアライメント演算処理部が実行する第1の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【0063】
まず、ユーザは、ユーザインタフェース部190の入力部192を操作して、図4(a)に示すような、アライメント記憶装置180に保存されている二重枠線でその形状が輪郭付けられた基準アライメントマークのパターン画像400を採取し、ユーザインタフェース部190の画像表示部191に表示させる(S301)。
【0064】
次に、ユーザは、ユーザインタフェース部190の画像表示部191の画面上で、基準アライメントマークの二重枠線のオリジナルのパターン画像400から、その二重枠線の枠間(線間)距離を計測する箇所401(例えば、X方向401x,Y方向401yの2箇所)を、ユーザインタフェース部190の入力部192を操作して設定選択する(S302)。
【0065】
これにより、アライメント演算処理部170は、アライメント記憶装置180からこのオリジナルの基準アライメントマークのパターン画像400の選択箇所401に係る断面プロファイルを取得し、そこからこの計測箇所401x,401yの枠間距離dx1,dy1を計測する(S303)。
【0066】
アライメント演算処理部170は、この計測した枠間距離dx1,dy1を基に、式(1),式(2)に従って計算し、x方向、y方向それぞれについて、二重枠線がつながるような最小の収縮処理の幅ex1,ey1を決定する。
【0067】
【数1】

【0068】
ここで、枠間距離dx1,dy1は、オリジナルの基準アライメントマークのパターン画像400上の画素数により取り込まれ、枠間距離dx1,dy1の画素数が偶数である場合は、二重枠線がつながる最小の収縮処理の幅ex,eyを式(1)に基づき、dx1/2,dy1/2に決定し、枠間距離dx1,dy1の画素数が奇数である場合は、二重枠線がつながる最小の収縮処理の幅ex,eyを式(2)に基づき、(dx1+1)/2,(dy1+1)/2に決定する。
【0069】
続いて、アライメント演算処理部170は、この決定した収縮範囲(収縮処理の幅ex1,ey1)で、オリジナルの基準アライメントマークのパターン画像400について、画像情報の収縮処理を行う(S304)。
【0070】
ここで、収縮処理とは、パターン画像400の収縮範囲内における各画素の輝度値を、近傍の画素中の最小輝度値に置き換える処理である。
【0071】
例えば、近傍の画素を、自身を取り巻く8画素として規定した場合、その輝度値の置き換え処理について式で表すと、式(3)のようになる。
【0072】
【数2】

【0073】
式(3)は、収縮範囲内の位置(i,j)で表わされる画素を対象画素とし、この対象画素の輝度を、自身と自身を取り巻く8個の位置(i−1,j−1)〜(i+1,j+1)の画素の中で、輝度が最も低い画素の輝度値に置き換える方法を示している。
【0074】
なお、式(3)において、i,jは画素の位置、Destは処理後の対象画素の輝度、Imgは元の対象画像の輝度をそれぞれ表す。
【0075】
図4(b)は、図4(a)に示したオリジナルの基準アライメントマークのパターン画像に適切な収縮処理を加えた例を示したものである。
【0076】
この決定した収縮範囲内の収縮処理により、オリジナルの基準アライメントマークのパターン画像400の二重枠線の間の領域が埋まり、単枠の太い基準アライメントマークのパターン画像410が形成される。また、同時に、オリジナルの基準アライメントマークのパターン画像400中の、収縮範囲内の明るい孤立点も除去することができる。
【0077】
この収縮処理後、アライメント演算処理部170は、この形成した単枠の太い基準アライメントマークのパターン画像410のパターン幅(dx2,dy2)を計測する(S305)。
【0078】
この時、計測場所は2重枠線の枠間距離計測の場合と同じ場所401,402を使用するようにしてもよいし、新たな別の場所411,412を前述したステップS302の処理と同様にしてユーザが選択するようにしてもよい。
【0079】
そして、アライメント演算処理部170は、この計測したパターン幅dx2,dy2を基に、式(4),式(5)に従って計算し、x方向、y方向それぞれについて、その単枠のパターン幅(枠線の太さ)が最小になる、最大の膨張処理の幅fx2,fy2を決定する。
【0080】
【数3】

【0081】
ここで、この最大の膨張処理の幅fx2,fy2は、計測したパターン幅dx2,dy2の画素数が偶数である場合は、単枠が無くならないように最大の膨張処理の幅fx2,fy2を、式(4)に基づき{dx2/2}−1,{dy2/2}−1に決定し、枠間距離dx2,dy2の画素数が奇数である場合は、単枠が無くならないように最大の膨張処理の幅fx2,fy2を式(5)に基づき、{dx2+1}/2,{ dy2+1}/2に決定する。
【0082】
続いて、アライメント演算処理部170は、この単枠の太い基準アライメントマークのパターン画像410に基づき決定した膨張範囲(膨張処理の幅fx2,fy2)で、このパターン画像410について、画像情報の膨張処理を行う(S306)。
【0083】
ここで、膨張処理とは、パターン画像410の膨張範囲内における各画素の輝度値を、近傍の画素中の最大輝度値に置き換える処理である。
【0084】
例えば、近傍の画素を、自身を取り巻く8画素として規定した場合、その輝度値の置き換え処理について式で表すと、式(6)のようになる。
【0085】
【数4】

【0086】
式(6)は、膨張縮範囲内の位置(i,j)で表わされる画素を対象画素とし、この対象画素の輝度を、自身と自身を取り巻く8個の位置(i−1,j−1)〜(i+1,j+1)の画素の中で、輝度が最も高い画素の輝度値に置き換える方法を示している。
【0087】
なお、式(6)において、i,jは画素の位置、Destは処理後の対象画素の輝度、Imgは元の対象画像の輝度をそれぞれ表す。
【0088】
図4(c)は、図4(b)に示した単枠の太い基準アライメントマークのパターン画像に適切な膨張処理を加えた例を示したものである。
【0089】
この決定した膨張範囲内の膨張縮処理により、単枠の太い基準アライメントマークのパターン画像410のパターン幅は細くなり、パターン幅が最小の、例えば1〜2画素の単枠線の基準アライメントマークのパターン画像420が形成される。また、同時に、画像中の、膨張範囲内の暗い孤立点を除去することもできる。
【0090】
以上述べた、一連の収縮処理及び膨張処理からなるパターン画像の形成処理を加えることで、オリジナルの二重枠線の基準アライメントマークのパターン画像400から、単枠の細線化した基準アライメントマークのパターン画像420を作成し、登録することができる。
【0091】
アライメント演算処理部170は、前述の図2におけるステップS205〜S208及びステップS211〜S214のアライメント実行時には、基準アライメントマークのパターン画像420を画像登録時に決定した収縮処理、膨張処理の範囲と同じ範囲で、ステップ206及びステップS212で採取したパターン画像についても、ステップ207及びステップS213に示すパターン画像の形成処理で収縮処理、膨張処理を行ってから、この一連の収縮処理及び膨張処理からなるパターン画像の形成処理を加えた基準アライメントマークのパターン画像420と、図2のステップ208及びステップS214に示すパターンマッチング処理を行う(S307)。
【0092】
もし、ステップ207及びステップS213で行った、基準アライメントマークのパターン画像420を形成した際の順序、設定で、被検査物から採取したパターン画像について形成処理を行い、その収縮、膨張処理の結果、パターンの一部が失われてしまう場合は(S308)、ステップ304以下の処理を繰り返し行うにあたって、必要に応じて、収縮処理の範囲を広げたり、或いは膨張処理の範囲を狭めたりすることもできるし、パターンが太く残ってしまう場合には、膨張処理の範囲を広げることもできる。
【0093】
次に、第2の実施例として、図3のステップ207及びステップS213に示すパターン画像の形成処理で、不鮮明なパターンを明瞭化する場合の、アライメント演算処理部170が実行するパターン画像の形成処理を説明する。
【0094】
図5は、不鮮明なアライメントマークのパターン画像を、鮮明なアライメントマークのパターン画像に登録しなおす場合の、パターン画像の形成処理のフローチャートである。
【0095】
図6は、その際にアライメント演算処理部が実行する第2の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【0096】
不鮮明パターンは、例えばウェハ上に別の材質でパターンを形成した際に、パターンの材質の光学特性がウェハと近い時に発生する。この時、ユーザは、例えば図6(a)に示すような、不鮮明なアライメントマークのパターン画像を取得後(S501)、まずパターン画像のS/N改善処理を施す(S502)。
【0097】
S/N改善処理は、ランダムノイズを低減するために、複数回画像を取得し、積算処理をかけてもよいし、CCDカメラの感度ムラの影響を低減するために、配線等のパターンの無い場所でパターン画像を取得して減算処理を行ってもよいし、又は両方の処理を適用してもよい。
【0098】
続いて、アライメント演算処理部170は、アライメントマークのパターン画像の輝度分布を取得する(S503)。
【0099】
輝度分布は、例えば図6(b)に示すように、材質毎に異なる輝度値にピークを持っているため、そこから最適な値(輝度ピークの間の谷の部分)をしきい値に決定して(S504)、例えば図6(c)に示すように、画像を2値化する(S504)。
【0100】
以上の一連の処理を加えることで、不鮮明なアライメントマークのパターン画像を鮮明にすることができ、アライメント成功確率を向上させることができる。
【0101】
本実施例のパターン画像の形成処理は、基準アライメントマークのパターン画像の登録時のみに基準アライメントマークのパターン画像に対して適用してもよいし、アライメント実行時に、図2に示すステップ206及びステップS212で被検査物から採取したパターン画像にステップ207及びステップS213で適用してもよい。その適用についても、パターン画像の登録時又は採取時に、アライメント演算処理部170が登録又は採取したパターン画像に基づいて自動でしきい値を決定して2値化して行う構成とすることも、ユーザインタフェース装置190を用いてユーザにしきい値の決定等を確認させながら行わせる構成とすることも可能である(S506)。基準アライメントマーク画像登録時のみに適用した場合は、アライメント時間の増加を防ぐことができる。
【0102】
もし、輝度分布から適切なしきい値が決められない場合は(S507)、S/N改善処理からやり直してもよいし、実際にしきい値を振りながら2値化前の画像とパターンマッチングをかけ、一致度が最大になる値をしきい値としてもよい。
【0103】
また、アライメントマークとその周辺部が3種類以上の材質で形成されている場合、しきい値を複数用意して多値化(例えば、3種類の材質の場合、2個のしきい値で3値化)してもよい。
【0104】
次に、第3の実施例として、図3のステップ207及びステップS213に示すパターン画像の形成処理で、不鮮明なパターンを明瞭化する場合の、アライメント演算処理部170が実行するパターン画像の形成処理を説明する。
【0105】
図7は、不鮮明なアライメントのパターン画像を、細線化したアライメントマークのパターン画像として登録する時のフローチャートである。
【0106】
図8は、その際にアライメント演算処理部が実行する第2の実施例に係るパターン画像の形成処理の経過を模式的に表した図である。
【0107】
材質間の輝度ピークが近い場合や、ノイズを十分低減できなかった場合、図8(a)に示すように、アライメントマークのパターン画像中の、パターン部、背景部の両方に多数の孤立点(ノイズ)が乗ってしまうことがある。
【0108】
このような不鮮明パターンは、例えばウェハ上に別の材質でパターンを形成した際に、材質間の輝度ピークが近い場合や、ノイズを十分低減できなかった場合に発生する。
【0109】
この時、ユーザは、アライメントマークのパターン画像を取得後(S701)、まず画像のS/N改善処理を施す(S702)。
【0110】
そして、ユーザは、まず、S/N改善処理を施したパターン画像を2値化した上で(S703)、ユーザインタフェース装置190を用いて、画像のパターン部(アライメントマーク)、背景部(アライメントマークの周り)を見比べ、パターン部の方が明るい場合は前述した収縮処理を、暗い場合は前述した膨張処理を第一の処理として選択し、逆の処理(収縮なら膨張、膨張なら収縮)を第二の処理として選択する(S704)。この2値化処理選択処理は、装置側のアライメント演算処理部170が、アライメント記憶装置180に予め記憶されている情報を基に自動的に実行することも可能である。
【0111】
図8 (a)は、上述したステップS703で2値化した画像例である。
この場合はパターン部が背景部よりも明るいため、膨張処理を第一の処理として、収縮処理を第二の処理として選択する。続いて、選択した順序に従って処理を加える。
【0112】
第一の処理の範囲は、ユーザインタフェース装置190を用いて、処理後の画像を確認しながら、パターン画像内部のノイズ(孤立点)が消去できるようにユーザが設定してもよいし、装置側のアライメント演算処理部170が、パターン画像内のノイズ(孤立点)のうち、一番大きいものを検出して、そこから処理幅を決定するようにしてもよい。
【0113】
第一の処理を加えると(S704)、例えば図8(b)のような、パターン中のノイズが無い画像を得ることができる。その後に、この画像に対して第二の処理を加える(S706)。
【0114】
第二の処理の範囲は、背景部のノイズ(孤立点)が消去できるような範囲をユーザが設定してもよいし、実施例1と同じように、装置側でパターン幅を計測し、パターン幅が最小となるように設定してもよい。
【0115】
以上の一連の処理を加えることで、不鮮明なパターン画像から、細線化した鮮明なパターン画像を作成し、登録することができる。
【0116】
アライメント実行時には、実施例1と同じように処理範囲を登録時と同じにして、アライメント演算処理部170が採取したパターン画像に対して上述した同様に第一,第二の処理等を実行すればよいし(S707)、もし、収縮、膨張処理の結果ノイズが残る、パターンの一部が欠ける等の問題があれば(S708)、装置側で処理の範囲や2値化の閾値を変えるようにしてもよいし、若しくはユーザインタフェース装置190を用いてユーザが変更できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 異物検査装置、
2 ウェハ
3 チップ
4 アライメントマーク
10 照明部(異物検出系)、
20 検出部(異物検出系)、
30 Xスケール、
40 Yスケール、
50 照明部(表面高さ位置検出系)、
60 検出器(表面高さ位置検出系)、
70 検査ステージ
80 アライメント検出系、
100 処理装置、
110(111,112) A/D変換器、
120(121,122) 画像処理装置、
130 異物判定処理部、
131 判定回路
132,133 テーブル
140 座標管理装置、
150 検査結果記憶装置、
160 ステージ制御装置、
170 アライメント演算処理部
180 アライメント記憶装置
190 ユーザインタフェース装置
191 画像表示部
192 入力部
200 アライメント測定装置
400 基準アライメントマーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面に光ビームを照射し、反射光又は散乱光の受光強度より画像信号を取得し、隣接した被検査物から得られた画像信号と比較して被検査物表面に存在する異物の有無を検査する異物検査装置において、
前記被検査物の表面上の前記アライメントマークの画像データを採取する装置と、
当該採取したアライメントマークのパターン画像のパターン幅又は輝度分布を取得する解析手段と、
該解析手段により取得したパターン幅又は輝度分布に基づいて、当該採取したアライメントマークのパターン画像におけるアライメントマークの輪郭に該当する画素部分に対して積算処理、減算処理、2値化処理、膨張処理、収縮処理の中の少なくともいずれかを施す処理手段と
を備えていることを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
被検査物の表面上の前記アライメントマークの画像データを採取する採取工程、
当該採取したアライメントマークのパターン画像のパターン幅又は輝度分布を取得する解析する解析工程、
該解析工程により取得したパターン幅又は輝度分布に基づいて、アライメントマークの輪郭に該当するパターン画像の画素部分に対して積算処理、減算処理、2値化処理、膨張処理、収縮処理の中の少なくともいずれかを施す処理工程
を有するアライメント調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78143(P2012−78143A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221987(P2010−221987)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】