異物検査装置
【課題】 コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出するに好適な簡易な構成の異物検査装置を提供する。
【解決手段】 可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの幅方向全域に亘って一様に照射する光源と、コンベア上の可視光および近赤外線光を含む光の照射領域を該コンベアの幅方向に光学的に走査する偏向機構を備えて該光の照射領域を局部的に視野する光学系と、この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および/または該原料中に混入している異物による可視光および近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、この光検出素子が検出した可視光および近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、原材料中に前記異物が混入していると判定する。
【解決手段】 可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの幅方向全域に亘って一様に照射する光源と、コンベア上の可視光および近赤外線光を含む光の照射領域を該コンベアの幅方向に光学的に走査する偏向機構を備えて該光の照射領域を局部的に視野する光学系と、この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および/または該原料中に混入している異物による可視光および近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、この光検出素子が検出した可視光および近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、原材料中に前記異物が混入していると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異物検査装置に係り、特にコンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物、例えば食品としての鮭フレークに混入したピンボーン等の異物を光学的に検出するに好適な簡易な構成の異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、コンベア等で搬送中の食品材料等の搬送物に混入した異物を検出する異物検出方法およびその装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、紫外線領域の波長と可視領域の波長とを含む光を搬送中の原料に照射し、原料から反射される光を撮像して画像信号を輝度レベルでそれぞれ2値化処理する。そして、2値化処理した画像信号が所定のレベルにあるとき、原料に異物が混入していると判定するものである。
【特許文献1】特開2001−13261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した異物検出方法およびその装置は、原料と異物の組み合わせによっては、原料および異物からそれぞれ反射される反射光の輝度レベルに有為な差が見られず異物検出が困難になることがある。具体的に上述した装置では、例えば原料として鮭フレークに混入したピンボーン(異物)の検出は困難である。具体的には、鮭フレークの表面が乾燥している場合、ピンボーンとの吸光度に顕著な差がなく異物(ピンボーン)の混入を誤検出するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に対してなされたものであり、その目的は、コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出するに好適な簡易な構成の異物検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成すべく本発明の異物検査装置は、コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出する異物検査装置であって、特に、
可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの所定領域に一様に照射する光源と、前記コンベア上の前記可視光および前記近赤外線光を含む光の照射領域を局部的に視野する光学系と、この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および該原料に混入している異物による前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、この光検出素子が検出した前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、前記原材料中に前記異物が混入していると判定する異物判定手段とを具備したことを特徴としている。
【0006】
即ち、上述の異物検査装置は、原料と異物とが可視光と近赤外線光とで異なる吸光度特性を有する点に着目してなされたもので、所定の画像処理を行うことによって異物を検出可能とするものである。
好ましくは前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサまたは複数の受光セルを二次元方向に所定のピッチで配列したエリアセンサからなるものとして構成される。
【0007】
したがって、可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、光検出素子(撮像素子)によって前記コンベアの幅方向或いは所定領域を光学的に視野でき、光学系の簡素化が図れる。
【発明の効果】
【0008】
上述の異物検査装置は、異なる波長の光、即ち可視光と近赤外線光とを原料中に照射したとき、原料およびこの原料に混入した異物における可視光および近赤外線光の吸光度がそれぞれ異なることを利用して異物の混入を検出している。つまり、本発明の異物検査装置は、原料および異物の吸光度特性が可視光と近赤外線光とでは正反対となる特性を利用して画像間の輝度レベルを除算または減算等することによって異物を強調しているので、確実に異物を検出することができる。
【0009】
また、前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサを用いているので、可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、該光検出素子によって前記コンベアの幅方向或いは所定領域を光学的に視野でき、光学系の簡素化が図れるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について、鮭フレーク(原料)中に混入したピンボーン(小骨)等の異物を検出する異物検査装置を例に説明する。
図1はこの実施形態に係る異物検査装置の要部概略構成図であり、1は検査対象物である鮭フレーク(図示せず)を載置して搬送するベルトコンベアである。このベルトコンベア1の上方位置には該ベルトコンベア1上に載置されて搬送される検査対象物(鮭フレーク)に向けて後述する可視光および近赤外線光を含む光を照射するランプ2が設けられている。このランプ2は、可視領域から近赤外線領域を含む光を放射するランプであり、具体的には広帯域の波長領域の光を放射するキセノンランプやハロゲンランプ等が適用される。
【0011】
或いはランプ2は、特に図示しないが例えば領域の光を発するランプと、近赤外線領域の光を発する赤外線ランプとを組み合わせて構成しても勿論かまわない。
尚、このランプ2は、ベルトコンベア1をその幅方向に横切るように設けられており、該ベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って上記可視光および近赤外線光を含む光を一様に照射するものとなっている。この結果、ベルトコンベア1上に載置された検査対象物(鮭フレーク)は、ランプ2からの可視光および近赤外線光を含む光がベルトコンベア1の全幅に亘って照射される照射領域を通過して搬送されるようになっている。
【0012】
ちなみに、特に図示しないがランプ2には冷却装置が設けられており、この冷却装置にて前記ランプ2自体の発熱を抑えることで、その熱が前記検査対象物(鮭フレーク)に加わることがないように配慮されている。
一方、前記ベルトコンベア1の上方位置には、前記可視光および近赤外線光を含む光の照射領域に対峙させて対物レンズ系10が設けられている。
【0013】
尚、前述したランプ2は、上記対物レンズ系10によるベルトコンベア1の視野を妨げることがないように、例えば対物レンズ系10の視野領域を斜め上方から照明するように前記ベルトコンベア1の搬送方向に若干位置をずらして設けられている。これによってベルトコンベア1上での前記ランプ2からの可視光および近赤外線光の照射領域におけるベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って前記対物レンズ系10が視野し得るように、その光学的配置が設定されている。
【0014】
さて上記撮像素子20は、シリコン等の化合物半導体を一列に配置したCCDラインセンサ(リニアセンサ)からなり、その受光面に入射した(受光した)光の強度に応じた電気信号(電圧または電流)をピクセル毎に出力する、いわゆる複合素子からなる。前記結像レンズ系30は、このような撮像素子20の受光面に対峙して設けられて該撮像素子20に導く役割を担う。
【0015】
尚、この実施形態においては前記撮像素子20が2個設けられており、これらの2個の撮像素子20(20a,20b)のそれぞれに対応して2組の結像レンズ系30(30a,30b)が設けられている。そして前述した対物レンズ系10から受光される前記ベルトコンベア1上からの反射光は、ダイクロイックミラー31を介して2つの光路に分光(分波)されるようになっている。そしてダイクロイックミラー31を介して分光(分波)された反射光は、結像レンズ系30(30a,30b)をそれぞれ介して2個の撮像素子20(20a,20b)により導かれて受光されるようになっている。
【0016】
またこの図1に示す例においては、反射光をダイクロイックミラー31に導き、このダイクロイックミラー31にて分光(分波)された全反射ミラー32を介して反射光を撮像素子20aに導くようにその光学系を設定している。しかし全反射ミラー32を用いてその光軸を折り返して設定した光学系は、前述した撮像素子20(20a,20b)や結像レンズ系30(30a,30b)の配置(レイアウト)を考慮してそのコンパクト化を図ったものであり、必ずしも必要なものではない。
【0017】
換言すれば上述した光学系は、前記各結像レンズ系30(30a,30b)がそれぞれ形成する光路、つまり前記各撮像素子20a,20bの視野領域をダイクロイックミラー31を順に介してその光軸を一致させた1本の光路(視野領域)に合成するものである。従っていずれの撮像素子20a,20bにおいても前記ベルトコンベア1上の同一領域を局部的に視野するようになっている。そしてコンベア1上で搬送される検査対象物からの反射光を前記各撮像素子20a,20bのそれぞれにおいて受光するものとなっている。
【0018】
さて上述した如く設けられた2個の撮像素子20a,20bは、例えば図2に示すように互いに異なる特定波長、例えば可視領域の490nmおよび近赤外線領域の810nmまたは1070nmの各波長帯域の反射光をそれぞれ受光してその強度を検出するように構成される。このような波長選択性は、例えば前述したダイクロイックミラー31による光透過・反射特性によって、更には各光路中に介挿された光学フィルタ21a,21bによって付与されるものである。
【0019】
ちなみに図2に示す特性は、二種類の原料(魚肉フレーク)と、この原料中に混入する異物(骨)に対する吸光度(反射光量の指標)の違いを対比して示したものである。また、図3は、図2が示す二種類の魚肉フレーク(原料1,原料2)がそれぞれ有する吸光度から、骨の吸光度の差分を求め、その吸光度差について波長810nmを基準吸光度差0として正規化したグラフである。
【0020】
この図2からは、490nm帯の可視光に対する異物の吸光度に比較して原料の吸光度が高く、また810nm帯および1070nm帯の近赤外線光に対する原料の吸光度は、異物の吸光度と大差ないという特性があることが示される。このような可視領域の波長の光と近赤外線光領域の波長に対する原料と異物との吸光度(反射率)の違いを利用して異物検査を行うべく、この異物検査装置においては前述した2個の撮像素子20a,20bを用いて上述した各特定波長での反射光の強度をそれぞれ検出し、その検出結果に基づいて異物判定を行うものとなっている。
【0021】
具体的にはマイクロプロセッサ等により実現される信号処理部40においては、前記各撮像素子20a,20bの出力から反射光中の可視領域および近赤外線領域での反射光強度をそれぞれ検出し(強度検出手段41)、その検出結果を相互に比較判定することで前記撮像素子20a,20bが局部的に視野したベルトコンベア1上の領域からの反射光が原料によるものであるか、或いは原料中に混入した異物によるものであるかを判定している(異物判定手段42)。そしてその反射光が異物によるものであると判定された場合には、前記ベルトコンベア1上を光学的に偏向走査している視野領域の位置、つまりベルトコンベア1の幅方向の位置を特定し(位置検出手段43)、当該位置に存在する異物を排除するべく排除指令を発するものとなっている。
【0022】
この指令に基づく異物の排除は、特に図示しないが例えばベルトコンベア1による検査対象物(原料および混入した異物)の搬送に同期して、ベルトコンベア1の一端を下方に向けて排出することによって行われる。
或いはベルトコンベア1による検査対象物(原料および混入した異物)の搬送に同期して、該ベルトコンベア1の端部から払い出される検査対象物に対して前記検出位置で特定される部位に向けて局部的に圧縮空気を吹き付けることで、上述した如く検出された異物とその周囲に存在する若干の原料とをその搬送経路から排除することによって行われる。尚、圧縮空気の吹きつけによる異物の排除(吹き飛ばし)については、例えばベルトコンベア1の端部に、その幅方向に沿って所定のピッチで複数の圧縮空気の吹出しノズルを配列しておき、前述した如く検出した位置情報に応じて上記吹出しノズルから択一的に圧縮空気を吹き付けるようにすれば良い。
【0023】
概略的には上述したように構成される本発明の異物検査装置について、ピンボーンが混入した魚肉フレーク(鮭フレーク)について評価試験を行った。この評価試験は、原料から反射される可視光を検出するため光学フィルタ21aとしては、中心波長488nm、半値幅10nmの可視光フィルタを用いた。一方、原料からの反射される近赤外線光を検出するための光学フィルタ21bには、中心波長820nm、半値幅50nmの近赤外線フィルタAまたは中心波長1064nm、半値幅20nmの近赤外線フィルタBの二種類のフィルタを用いた。また光源は、上述した直管状の光源ではなく、球光源を用いた。
【0024】
まず、原料に対する視野範囲を縦45mm×横58mmとしたとき、可視光フィルタ、近赤外線フィルタAおよび近赤外線フィルタBを介して撮像した画像は、それぞれ図4乃至6に示すようになった。これらの図を参照すると、可視光フィルタを介して得られた画像(図4)は、大粒の鮭フレークがグレーになる一方、細長い糸状のピンボーンは、白色になっている。しかしながら、鮭フレークの一部が白っぽく撮像される部位がある。これは、鮭フレークの表面が乾燥したため可視光の吸光度が低下したものである。
【0025】
一方、近赤外線フィルタAおよび近赤外線フィルタBを介して撮像した画像(図5、図6)は、それぞれ鮭フレーク、ピンボーンとも白っぽく撮像されて有為な差を見いだせない。また、図4乃至図6にあっては、光源の照射面内での不均一性やレンズ特性等の影響を受け、撮像された画像の中心が明るくなる一方、周辺がやや暗くなっている。そこで撮像された画像における輝度ムラを改善するべく、撮像された画像に含まれる輝度ムラを除去する画像処理(シェーディング補正)を行う。その結果、図4乃至図6に示した画像は、それぞれ図7乃至図9に示すように補正される。これらの図が示すように、特に周辺部の明るさ(輝度ムラ)が改善されていることが示される。
【0026】
次いで、上述したようにして輝度ムラを補正した画像は、信号処理部40にてそれぞれの画像に含まれる輝度レベルを256段階に階調をつける量子化処理を行い画像データに変換される。そして量子化された画像データは、画像データ間の差分値を求めて新たに画像を生成するために用いられる。
まず信号処理部40は、可視光(中心波長488nm)を照射して得られた画像データ(図4)の輝度レベルから、この輝度レベルに対して平均化処理した画像の輝度レベルとの差分を求める演算を行う。つまりこの演算は、同一波長成分における輝度レベルの差分を求めるものである。その結果、図10に示すようにピンボーンが白色、鮭フレークの部位がムラのある黒色となり、ピンボーンがやや強調された画像が得られる。しかしながら鮭フレークの部位についても全体的に白っぽい部分がある。これは、ピンボーンの輝度レベルの差と鮭フレークの輝度レベルの差が同程度の部分が検出された結果である。つまり、同一波長の光では、ピンボーンのみを浮かび上がらせることが困難であると結論付けることができる。
【0027】
次に、可視光(488nm)を照射して得られた画像(図4)の輝度レベルを量子化した画像データと、近赤外線光(820nmおよび1070nm)を照射して得られた画像(図5および図6)の輝度レベルを量子化して得られた画像データとの差分を求めて得られた画像は、それぞれ図11および図12に示すようにピンボーンの部位(白色)と鮭フレークの部位(黒色)とが明確になっている。これは、図2または図3の吸光度特性に示したように可視領域の波長490nm付近では、魚肉(鮭フレーク)の吸光度が高く、骨(ピンボーン)の吸光度が低い一方、近赤外線領域の波長810nmと波長1070nm付近では、魚肉(鮭フレーク)の吸光度が低く、骨(ピンボーン)の吸光度が高いという特性があるためである。つまり、本発明は、原料(鮭フレーク)と異物(ピンボーン)とが、可視領域と近赤外線領域とでは正反対の吸光度特性がある点に着目してなされたものである。
【0028】
尚、図11と図12との画像データが異なるのは、近赤外線光の波長が異なることと、特に図示しないが光学系に設けたレンズ絞りの差によるものである。ちなみにレンズ絞りに差をもたせるのは、評価試験に用いたハロゲン電球の輝度が波長によって異なっていること、光学フィルタの透過特性が異なることによる。つまり、単純に撮像素子20で撮像した場合、撮像される画像は、真白または真黒の画像となる。このため信号処理部40は画像処理ができないという不都合が生じる。このため本装置にあっては、レンズ絞りを波長毎に調整している。
【0029】
より好ましくは上述したように撮像素子20によって撮像された画像には、中心画像と周辺画像とで光量が不均一になる(輝度ムラ)。また、レンズ絞りの開口度によっては、明るさの分布は非相似となる。このため本装置は、上述した信号処理部40による平均化処理(移動平均処理)またはシェーディング補正によって画像のぼかし処理や輝度ムラの補正をしたり、輝度ムラがないような光度分布を有するランプ2を適用したりする必要がある。或いは、信号処理部40は、画像処理を行う前処理として量子化の重み付けを波長毎に異ならせて最適化処理を行ってもよい。ちなみに図13は、図7に示す画像データの輝度レベルから、この輝度レベルに対して平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像である。
【0030】
さて、同一波長で撮像された画像に含まれる輝度レベルの差分値を求めた場合、輝度ムラ改善前(図10)と輝度ムラ改善後(図13)とではほとんど変化が見られない。これは、シェーディング補正によって、元の画像データが破壊されていないことを意味する。図14または図15は、図7に示す画像データの輝度レベルからそれぞれ図8および図9に示す画像(シェーディング処理後の画像)の輝度レベルを差し引いて得られた画像データである。これらの図に示されるように異なる波長の画像に含まれる輝度レベルの差分値を求め、輝度ムラを改善した場合、図14および図15に示されるようにシェーディング補正によってノイズ成分が除去され異物(ピンボーン)がより強調されることがわかる。したがって本装置は、輝度ムラ改善(シェーディング補正)を行えば画像データにおけるS/Nを向上させ、異物の検出精度を高めことができる。つまり、図14および図15に示すように、反射光における異なる波長の画像データのシェーディング補正を行って差分した画像データは、原料(黒色の部位;鮭フレーク)と異物(白色の部位;ピンボーン)との差異、即ちコントラスト比が大きくなり混入した異物がより明確になる。つまり、異なる波長の画像データのシェーディング補正を行って差分した画像データは、鮭フレークとピンボーンとを明確に区別することができる。
【0031】
更により一層、原料とこの原料に混入した異物とを明確に比較するべく反射光に含まれる中心波長488nmの可視光を撮像して得られた画像データの輝度レベルから、この反射光に含まれる中心波長820nmの近赤外線光を撮像して得られた画像データの輝度レベルとの差分を求めて得られた画像データ(図14)と、反射光に含まれる中心波長488nmの可視光を撮像して得られた画像データの輝度レベルから、反射光に含まれる中心波長1064nmの近赤外線光を撮像して得られた画像データの輝度レベルとの差分を求めて得られた画像データ(図15)との積を求めた。その結果、図16に示すような画像が得られた。この画像データは、図14の画像データとほぼ同じ画像である。つまり、原料から反射される反射光のうち、可視光と一つの近赤外光を用いて信号処理した場合と、可視光と二つの近赤外光を用いて信号処理した場合とを比較しても画像データはほぼ同一である。つまり、異物検査装置には、可視光と近赤外線光とをそれぞれ一波長ずつ用いればよいと結論付けることができる。
【0032】
かくして上述した如く構成された異物検査装置によれば、ベルトコンベア1上に載置されて搬送される検査対象物(原料および原料に混入した異物)に対して、ランプ2を用いて上記ベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って一様に可視光および近赤外線光を含む光を照射しているだけなので、その照明光源の構成が非常に簡単である。
また、反射光に含まれる可視光の輝度レベルと、近赤外線光の輝度レベルとの差分を求めれば、原料と異物とで吸光度が異なる特性を有することから原料と異物を確実に判定することができる。更には、撮像素子20にCCDラインセンサを用いているので可視光および近赤外線光の照射部位(領域)を走査する必要がなく、照射系の構成を大幅に簡素化することができる。
【0033】
また可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、撮像素子20によって前記ベルトコンベア1の幅方向に光学的に視野しているので、その光学系の簡素化を図ることができる。また前述したように上記視野領域の偏向走査に連動させて可視光および近赤外線光の照射領域を偏向走査する必要もないので、例えば従来のように照射光学系と、反射光の検出光学系とを1つの光学系として実現する必要がない。また上記照射光学系と反射光の検出光学系との光軸を精度良く合わせる等の調整も不要であり、更には照射光学系と反射光の検出光学系とを分離する為の工夫も必要がない。
【0034】
換言すれば照射光学系と反射光検出光学系とをまとめて1つの光学系を構築した場合には、照射光学系からの光が反射光検出光学系に回り込むことがないように、例えばその光路中に光サーキュレータやハーフミラー等の光学素子を介挿することが必要となる。しかし上述した如く構成された異物検出装置によれば、可視光および近赤外線光の照射系とは独立して、単に反射光を検出する為の光学系を構成するだけで良いので、その光学系を安価に、しかもシンプルに構築することができる。またその光学系の調整やメンテナンスの容易化を図ることができる等の効果が奏せられる。
【0035】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、CCDラインセンサを撮像素子20に適用したものを例示したが、この撮像素子20は、所定の領域を視野するエリアセンサであっても良い。そしてこのエリアセンサによって撮像された画像に対して上述の画像処理を行えば、原料に含まれる異物が検出可能である。
【0036】
また例えばランプ2については、対物レンズ系10を間にしてベルトコンベア1の上流側と下流側とにそれぞれ設け、撮像素子20の視野領域を前記ベルトコンベア1の上流側および下流側の上方位置からそれぞれ可視光または近赤外線光を照射するようにしても良い。
またランプ2として可視光および近赤外線光だけを発するものを用いれば、前述した熱源カットフィルタ3を省略することも可能である。また撮像素子20を用いて検出する反射光の波長については、検出対象物の特性に応じて定めれば良いものであり、その波長に応じた検出特性を有する撮像素子20を選定し、光学フィルタ21を用いて特定波長を選択するようにすれば良い。また前述したダイクロイックミラー31に代えてハーフミラーを用いて検査対象物からの反射光を分光するようにしても良い。但し、この場合には、分光による光量低減が生じることが否めないので、信号処理部40において受光量補正する等の対策が必要となる。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物検査装置の要部概略構成図。
【図2】検査対象物に含まれる原料と異物への照射光の波長に対する吸光度の違いを対比して示す図。
【図3】図2に示す図において原料と異物への照射光の波長に対する吸光度の差分値を、波長810nmを基準吸光度レベル0として正規化して示す図。
【図4】原料と異物からそれぞれ反射される波長488nm近傍の画像データを示す図。
【図5】原料と異物からそれぞれ反射される波長810nm近傍の画像データを示す図。
【図6】原料と異物からそれぞれ反射される波長1064nm近傍の画像データを示す図。
【図7】図4に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図8】図5に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図9】図6に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図10】図4に示す画像データの輝度レベルから図4を平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図11】図4に示す画像データの輝度レベルから図5に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図12】図4に示す画像データの輝度レベルから図6に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図13】図7に示す画像データの輝度レベルから図7を平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図14】図7に示す画像データの輝度レベルから図8に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図15】図7に示す画像データの輝度レベルから図9に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図16】図14の画像データと図15の画像データとの積を求めた画像データを示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルトコンベア
2 ランプ
3 熱源カットフィルタ
10 対物レンズ系
20a,20b 撮像素子
21a,21b 光学フィルタ
30a,30b 結像レンズ系
31 ダイクロイックミラー
32 全反射ミラー
40 信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は異物検査装置に係り、特にコンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物、例えば食品としての鮭フレークに混入したピンボーン等の異物を光学的に検出するに好適な簡易な構成の異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、コンベア等で搬送中の食品材料等の搬送物に混入した異物を検出する異物検出方法およびその装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、紫外線領域の波長と可視領域の波長とを含む光を搬送中の原料に照射し、原料から反射される光を撮像して画像信号を輝度レベルでそれぞれ2値化処理する。そして、2値化処理した画像信号が所定のレベルにあるとき、原料に異物が混入していると判定するものである。
【特許文献1】特開2001−13261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した異物検出方法およびその装置は、原料と異物の組み合わせによっては、原料および異物からそれぞれ反射される反射光の輝度レベルに有為な差が見られず異物検出が困難になることがある。具体的に上述した装置では、例えば原料として鮭フレークに混入したピンボーン(異物)の検出は困難である。具体的には、鮭フレークの表面が乾燥している場合、ピンボーンとの吸光度に顕著な差がなく異物(ピンボーン)の混入を誤検出するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に対してなされたものであり、その目的は、コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出するに好適な簡易な構成の異物検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成すべく本発明の異物検査装置は、コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出する異物検査装置であって、特に、
可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの所定領域に一様に照射する光源と、前記コンベア上の前記可視光および前記近赤外線光を含む光の照射領域を局部的に視野する光学系と、この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および該原料に混入している異物による前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、この光検出素子が検出した前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、前記原材料中に前記異物が混入していると判定する異物判定手段とを具備したことを特徴としている。
【0006】
即ち、上述の異物検査装置は、原料と異物とが可視光と近赤外線光とで異なる吸光度特性を有する点に着目してなされたもので、所定の画像処理を行うことによって異物を検出可能とするものである。
好ましくは前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサまたは複数の受光セルを二次元方向に所定のピッチで配列したエリアセンサからなるものとして構成される。
【0007】
したがって、可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、光検出素子(撮像素子)によって前記コンベアの幅方向或いは所定領域を光学的に視野でき、光学系の簡素化が図れる。
【発明の効果】
【0008】
上述の異物検査装置は、異なる波長の光、即ち可視光と近赤外線光とを原料中に照射したとき、原料およびこの原料に混入した異物における可視光および近赤外線光の吸光度がそれぞれ異なることを利用して異物の混入を検出している。つまり、本発明の異物検査装置は、原料および異物の吸光度特性が可視光と近赤外線光とでは正反対となる特性を利用して画像間の輝度レベルを除算または減算等することによって異物を強調しているので、確実に異物を検出することができる。
【0009】
また、前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサを用いているので、可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、該光検出素子によって前記コンベアの幅方向或いは所定領域を光学的に視野でき、光学系の簡素化が図れるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について、鮭フレーク(原料)中に混入したピンボーン(小骨)等の異物を検出する異物検査装置を例に説明する。
図1はこの実施形態に係る異物検査装置の要部概略構成図であり、1は検査対象物である鮭フレーク(図示せず)を載置して搬送するベルトコンベアである。このベルトコンベア1の上方位置には該ベルトコンベア1上に載置されて搬送される検査対象物(鮭フレーク)に向けて後述する可視光および近赤外線光を含む光を照射するランプ2が設けられている。このランプ2は、可視領域から近赤外線領域を含む光を放射するランプであり、具体的には広帯域の波長領域の光を放射するキセノンランプやハロゲンランプ等が適用される。
【0011】
或いはランプ2は、特に図示しないが例えば領域の光を発するランプと、近赤外線領域の光を発する赤外線ランプとを組み合わせて構成しても勿論かまわない。
尚、このランプ2は、ベルトコンベア1をその幅方向に横切るように設けられており、該ベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って上記可視光および近赤外線光を含む光を一様に照射するものとなっている。この結果、ベルトコンベア1上に載置された検査対象物(鮭フレーク)は、ランプ2からの可視光および近赤外線光を含む光がベルトコンベア1の全幅に亘って照射される照射領域を通過して搬送されるようになっている。
【0012】
ちなみに、特に図示しないがランプ2には冷却装置が設けられており、この冷却装置にて前記ランプ2自体の発熱を抑えることで、その熱が前記検査対象物(鮭フレーク)に加わることがないように配慮されている。
一方、前記ベルトコンベア1の上方位置には、前記可視光および近赤外線光を含む光の照射領域に対峙させて対物レンズ系10が設けられている。
【0013】
尚、前述したランプ2は、上記対物レンズ系10によるベルトコンベア1の視野を妨げることがないように、例えば対物レンズ系10の視野領域を斜め上方から照明するように前記ベルトコンベア1の搬送方向に若干位置をずらして設けられている。これによってベルトコンベア1上での前記ランプ2からの可視光および近赤外線光の照射領域におけるベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って前記対物レンズ系10が視野し得るように、その光学的配置が設定されている。
【0014】
さて上記撮像素子20は、シリコン等の化合物半導体を一列に配置したCCDラインセンサ(リニアセンサ)からなり、その受光面に入射した(受光した)光の強度に応じた電気信号(電圧または電流)をピクセル毎に出力する、いわゆる複合素子からなる。前記結像レンズ系30は、このような撮像素子20の受光面に対峙して設けられて該撮像素子20に導く役割を担う。
【0015】
尚、この実施形態においては前記撮像素子20が2個設けられており、これらの2個の撮像素子20(20a,20b)のそれぞれに対応して2組の結像レンズ系30(30a,30b)が設けられている。そして前述した対物レンズ系10から受光される前記ベルトコンベア1上からの反射光は、ダイクロイックミラー31を介して2つの光路に分光(分波)されるようになっている。そしてダイクロイックミラー31を介して分光(分波)された反射光は、結像レンズ系30(30a,30b)をそれぞれ介して2個の撮像素子20(20a,20b)により導かれて受光されるようになっている。
【0016】
またこの図1に示す例においては、反射光をダイクロイックミラー31に導き、このダイクロイックミラー31にて分光(分波)された全反射ミラー32を介して反射光を撮像素子20aに導くようにその光学系を設定している。しかし全反射ミラー32を用いてその光軸を折り返して設定した光学系は、前述した撮像素子20(20a,20b)や結像レンズ系30(30a,30b)の配置(レイアウト)を考慮してそのコンパクト化を図ったものであり、必ずしも必要なものではない。
【0017】
換言すれば上述した光学系は、前記各結像レンズ系30(30a,30b)がそれぞれ形成する光路、つまり前記各撮像素子20a,20bの視野領域をダイクロイックミラー31を順に介してその光軸を一致させた1本の光路(視野領域)に合成するものである。従っていずれの撮像素子20a,20bにおいても前記ベルトコンベア1上の同一領域を局部的に視野するようになっている。そしてコンベア1上で搬送される検査対象物からの反射光を前記各撮像素子20a,20bのそれぞれにおいて受光するものとなっている。
【0018】
さて上述した如く設けられた2個の撮像素子20a,20bは、例えば図2に示すように互いに異なる特定波長、例えば可視領域の490nmおよび近赤外線領域の810nmまたは1070nmの各波長帯域の反射光をそれぞれ受光してその強度を検出するように構成される。このような波長選択性は、例えば前述したダイクロイックミラー31による光透過・反射特性によって、更には各光路中に介挿された光学フィルタ21a,21bによって付与されるものである。
【0019】
ちなみに図2に示す特性は、二種類の原料(魚肉フレーク)と、この原料中に混入する異物(骨)に対する吸光度(反射光量の指標)の違いを対比して示したものである。また、図3は、図2が示す二種類の魚肉フレーク(原料1,原料2)がそれぞれ有する吸光度から、骨の吸光度の差分を求め、その吸光度差について波長810nmを基準吸光度差0として正規化したグラフである。
【0020】
この図2からは、490nm帯の可視光に対する異物の吸光度に比較して原料の吸光度が高く、また810nm帯および1070nm帯の近赤外線光に対する原料の吸光度は、異物の吸光度と大差ないという特性があることが示される。このような可視領域の波長の光と近赤外線光領域の波長に対する原料と異物との吸光度(反射率)の違いを利用して異物検査を行うべく、この異物検査装置においては前述した2個の撮像素子20a,20bを用いて上述した各特定波長での反射光の強度をそれぞれ検出し、その検出結果に基づいて異物判定を行うものとなっている。
【0021】
具体的にはマイクロプロセッサ等により実現される信号処理部40においては、前記各撮像素子20a,20bの出力から反射光中の可視領域および近赤外線領域での反射光強度をそれぞれ検出し(強度検出手段41)、その検出結果を相互に比較判定することで前記撮像素子20a,20bが局部的に視野したベルトコンベア1上の領域からの反射光が原料によるものであるか、或いは原料中に混入した異物によるものであるかを判定している(異物判定手段42)。そしてその反射光が異物によるものであると判定された場合には、前記ベルトコンベア1上を光学的に偏向走査している視野領域の位置、つまりベルトコンベア1の幅方向の位置を特定し(位置検出手段43)、当該位置に存在する異物を排除するべく排除指令を発するものとなっている。
【0022】
この指令に基づく異物の排除は、特に図示しないが例えばベルトコンベア1による検査対象物(原料および混入した異物)の搬送に同期して、ベルトコンベア1の一端を下方に向けて排出することによって行われる。
或いはベルトコンベア1による検査対象物(原料および混入した異物)の搬送に同期して、該ベルトコンベア1の端部から払い出される検査対象物に対して前記検出位置で特定される部位に向けて局部的に圧縮空気を吹き付けることで、上述した如く検出された異物とその周囲に存在する若干の原料とをその搬送経路から排除することによって行われる。尚、圧縮空気の吹きつけによる異物の排除(吹き飛ばし)については、例えばベルトコンベア1の端部に、その幅方向に沿って所定のピッチで複数の圧縮空気の吹出しノズルを配列しておき、前述した如く検出した位置情報に応じて上記吹出しノズルから択一的に圧縮空気を吹き付けるようにすれば良い。
【0023】
概略的には上述したように構成される本発明の異物検査装置について、ピンボーンが混入した魚肉フレーク(鮭フレーク)について評価試験を行った。この評価試験は、原料から反射される可視光を検出するため光学フィルタ21aとしては、中心波長488nm、半値幅10nmの可視光フィルタを用いた。一方、原料からの反射される近赤外線光を検出するための光学フィルタ21bには、中心波長820nm、半値幅50nmの近赤外線フィルタAまたは中心波長1064nm、半値幅20nmの近赤外線フィルタBの二種類のフィルタを用いた。また光源は、上述した直管状の光源ではなく、球光源を用いた。
【0024】
まず、原料に対する視野範囲を縦45mm×横58mmとしたとき、可視光フィルタ、近赤外線フィルタAおよび近赤外線フィルタBを介して撮像した画像は、それぞれ図4乃至6に示すようになった。これらの図を参照すると、可視光フィルタを介して得られた画像(図4)は、大粒の鮭フレークがグレーになる一方、細長い糸状のピンボーンは、白色になっている。しかしながら、鮭フレークの一部が白っぽく撮像される部位がある。これは、鮭フレークの表面が乾燥したため可視光の吸光度が低下したものである。
【0025】
一方、近赤外線フィルタAおよび近赤外線フィルタBを介して撮像した画像(図5、図6)は、それぞれ鮭フレーク、ピンボーンとも白っぽく撮像されて有為な差を見いだせない。また、図4乃至図6にあっては、光源の照射面内での不均一性やレンズ特性等の影響を受け、撮像された画像の中心が明るくなる一方、周辺がやや暗くなっている。そこで撮像された画像における輝度ムラを改善するべく、撮像された画像に含まれる輝度ムラを除去する画像処理(シェーディング補正)を行う。その結果、図4乃至図6に示した画像は、それぞれ図7乃至図9に示すように補正される。これらの図が示すように、特に周辺部の明るさ(輝度ムラ)が改善されていることが示される。
【0026】
次いで、上述したようにして輝度ムラを補正した画像は、信号処理部40にてそれぞれの画像に含まれる輝度レベルを256段階に階調をつける量子化処理を行い画像データに変換される。そして量子化された画像データは、画像データ間の差分値を求めて新たに画像を生成するために用いられる。
まず信号処理部40は、可視光(中心波長488nm)を照射して得られた画像データ(図4)の輝度レベルから、この輝度レベルに対して平均化処理した画像の輝度レベルとの差分を求める演算を行う。つまりこの演算は、同一波長成分における輝度レベルの差分を求めるものである。その結果、図10に示すようにピンボーンが白色、鮭フレークの部位がムラのある黒色となり、ピンボーンがやや強調された画像が得られる。しかしながら鮭フレークの部位についても全体的に白っぽい部分がある。これは、ピンボーンの輝度レベルの差と鮭フレークの輝度レベルの差が同程度の部分が検出された結果である。つまり、同一波長の光では、ピンボーンのみを浮かび上がらせることが困難であると結論付けることができる。
【0027】
次に、可視光(488nm)を照射して得られた画像(図4)の輝度レベルを量子化した画像データと、近赤外線光(820nmおよび1070nm)を照射して得られた画像(図5および図6)の輝度レベルを量子化して得られた画像データとの差分を求めて得られた画像は、それぞれ図11および図12に示すようにピンボーンの部位(白色)と鮭フレークの部位(黒色)とが明確になっている。これは、図2または図3の吸光度特性に示したように可視領域の波長490nm付近では、魚肉(鮭フレーク)の吸光度が高く、骨(ピンボーン)の吸光度が低い一方、近赤外線領域の波長810nmと波長1070nm付近では、魚肉(鮭フレーク)の吸光度が低く、骨(ピンボーン)の吸光度が高いという特性があるためである。つまり、本発明は、原料(鮭フレーク)と異物(ピンボーン)とが、可視領域と近赤外線領域とでは正反対の吸光度特性がある点に着目してなされたものである。
【0028】
尚、図11と図12との画像データが異なるのは、近赤外線光の波長が異なることと、特に図示しないが光学系に設けたレンズ絞りの差によるものである。ちなみにレンズ絞りに差をもたせるのは、評価試験に用いたハロゲン電球の輝度が波長によって異なっていること、光学フィルタの透過特性が異なることによる。つまり、単純に撮像素子20で撮像した場合、撮像される画像は、真白または真黒の画像となる。このため信号処理部40は画像処理ができないという不都合が生じる。このため本装置にあっては、レンズ絞りを波長毎に調整している。
【0029】
より好ましくは上述したように撮像素子20によって撮像された画像には、中心画像と周辺画像とで光量が不均一になる(輝度ムラ)。また、レンズ絞りの開口度によっては、明るさの分布は非相似となる。このため本装置は、上述した信号処理部40による平均化処理(移動平均処理)またはシェーディング補正によって画像のぼかし処理や輝度ムラの補正をしたり、輝度ムラがないような光度分布を有するランプ2を適用したりする必要がある。或いは、信号処理部40は、画像処理を行う前処理として量子化の重み付けを波長毎に異ならせて最適化処理を行ってもよい。ちなみに図13は、図7に示す画像データの輝度レベルから、この輝度レベルに対して平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像である。
【0030】
さて、同一波長で撮像された画像に含まれる輝度レベルの差分値を求めた場合、輝度ムラ改善前(図10)と輝度ムラ改善後(図13)とではほとんど変化が見られない。これは、シェーディング補正によって、元の画像データが破壊されていないことを意味する。図14または図15は、図7に示す画像データの輝度レベルからそれぞれ図8および図9に示す画像(シェーディング処理後の画像)の輝度レベルを差し引いて得られた画像データである。これらの図に示されるように異なる波長の画像に含まれる輝度レベルの差分値を求め、輝度ムラを改善した場合、図14および図15に示されるようにシェーディング補正によってノイズ成分が除去され異物(ピンボーン)がより強調されることがわかる。したがって本装置は、輝度ムラ改善(シェーディング補正)を行えば画像データにおけるS/Nを向上させ、異物の検出精度を高めことができる。つまり、図14および図15に示すように、反射光における異なる波長の画像データのシェーディング補正を行って差分した画像データは、原料(黒色の部位;鮭フレーク)と異物(白色の部位;ピンボーン)との差異、即ちコントラスト比が大きくなり混入した異物がより明確になる。つまり、異なる波長の画像データのシェーディング補正を行って差分した画像データは、鮭フレークとピンボーンとを明確に区別することができる。
【0031】
更により一層、原料とこの原料に混入した異物とを明確に比較するべく反射光に含まれる中心波長488nmの可視光を撮像して得られた画像データの輝度レベルから、この反射光に含まれる中心波長820nmの近赤外線光を撮像して得られた画像データの輝度レベルとの差分を求めて得られた画像データ(図14)と、反射光に含まれる中心波長488nmの可視光を撮像して得られた画像データの輝度レベルから、反射光に含まれる中心波長1064nmの近赤外線光を撮像して得られた画像データの輝度レベルとの差分を求めて得られた画像データ(図15)との積を求めた。その結果、図16に示すような画像が得られた。この画像データは、図14の画像データとほぼ同じ画像である。つまり、原料から反射される反射光のうち、可視光と一つの近赤外光を用いて信号処理した場合と、可視光と二つの近赤外光を用いて信号処理した場合とを比較しても画像データはほぼ同一である。つまり、異物検査装置には、可視光と近赤外線光とをそれぞれ一波長ずつ用いればよいと結論付けることができる。
【0032】
かくして上述した如く構成された異物検査装置によれば、ベルトコンベア1上に載置されて搬送される検査対象物(原料および原料に混入した異物)に対して、ランプ2を用いて上記ベルトコンベア1の幅方向の全域に亘って一様に可視光および近赤外線光を含む光を照射しているだけなので、その照明光源の構成が非常に簡単である。
また、反射光に含まれる可視光の輝度レベルと、近赤外線光の輝度レベルとの差分を求めれば、原料と異物とで吸光度が異なる特性を有することから原料と異物を確実に判定することができる。更には、撮像素子20にCCDラインセンサを用いているので可視光および近赤外線光の照射部位(領域)を走査する必要がなく、照射系の構成を大幅に簡素化することができる。
【0033】
また可視光および近赤外線光を照射した検査対象物からの反射光を検出するに際しては、撮像素子20によって前記ベルトコンベア1の幅方向に光学的に視野しているので、その光学系の簡素化を図ることができる。また前述したように上記視野領域の偏向走査に連動させて可視光および近赤外線光の照射領域を偏向走査する必要もないので、例えば従来のように照射光学系と、反射光の検出光学系とを1つの光学系として実現する必要がない。また上記照射光学系と反射光の検出光学系との光軸を精度良く合わせる等の調整も不要であり、更には照射光学系と反射光の検出光学系とを分離する為の工夫も必要がない。
【0034】
換言すれば照射光学系と反射光検出光学系とをまとめて1つの光学系を構築した場合には、照射光学系からの光が反射光検出光学系に回り込むことがないように、例えばその光路中に光サーキュレータやハーフミラー等の光学素子を介挿することが必要となる。しかし上述した如く構成された異物検出装置によれば、可視光および近赤外線光の照射系とは独立して、単に反射光を検出する為の光学系を構成するだけで良いので、その光学系を安価に、しかもシンプルに構築することができる。またその光学系の調整やメンテナンスの容易化を図ることができる等の効果が奏せられる。
【0035】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、CCDラインセンサを撮像素子20に適用したものを例示したが、この撮像素子20は、所定の領域を視野するエリアセンサであっても良い。そしてこのエリアセンサによって撮像された画像に対して上述の画像処理を行えば、原料に含まれる異物が検出可能である。
【0036】
また例えばランプ2については、対物レンズ系10を間にしてベルトコンベア1の上流側と下流側とにそれぞれ設け、撮像素子20の視野領域を前記ベルトコンベア1の上流側および下流側の上方位置からそれぞれ可視光または近赤外線光を照射するようにしても良い。
またランプ2として可視光および近赤外線光だけを発するものを用いれば、前述した熱源カットフィルタ3を省略することも可能である。また撮像素子20を用いて検出する反射光の波長については、検出対象物の特性に応じて定めれば良いものであり、その波長に応じた検出特性を有する撮像素子20を選定し、光学フィルタ21を用いて特定波長を選択するようにすれば良い。また前述したダイクロイックミラー31に代えてハーフミラーを用いて検査対象物からの反射光を分光するようにしても良い。但し、この場合には、分光による光量低減が生じることが否めないので、信号処理部40において受光量補正する等の対策が必要となる。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物検査装置の要部概略構成図。
【図2】検査対象物に含まれる原料と異物への照射光の波長に対する吸光度の違いを対比して示す図。
【図3】図2に示す図において原料と異物への照射光の波長に対する吸光度の差分値を、波長810nmを基準吸光度レベル0として正規化して示す図。
【図4】原料と異物からそれぞれ反射される波長488nm近傍の画像データを示す図。
【図5】原料と異物からそれぞれ反射される波長810nm近傍の画像データを示す図。
【図6】原料と異物からそれぞれ反射される波長1064nm近傍の画像データを示す図。
【図7】図4に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図8】図5に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図9】図6に示す画像データをシェーディング補正した画像データを示す図。
【図10】図4に示す画像データの輝度レベルから図4を平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図11】図4に示す画像データの輝度レベルから図5に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図12】図4に示す画像データの輝度レベルから図6に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図13】図7に示す画像データの輝度レベルから図7を平均化処理した画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図14】図7に示す画像データの輝度レベルから図8に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図15】図7に示す画像データの輝度レベルから図9に示す画像の輝度レベルを差し引いて得られた画像データを示す図。
【図16】図14の画像データと図15の画像データとの積を求めた画像データを示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルトコンベア
2 ランプ
3 熱源カットフィルタ
10 対物レンズ系
20a,20b 撮像素子
21a,21b 光学フィルタ
30a,30b 結像レンズ系
31 ダイクロイックミラー
32 全反射ミラー
40 信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出する異物検査装置であって、
可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの所定領域を一様に照射する光源と、
前記コンベア上の前記可視光および前記近赤外線光を含む光の照射領域を局部的に視野する光学系と、
この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および該原料に混入している異物による前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、
この光検出素子が検出した前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、前記原材料中に前記異物が混入していると判定する異物判定手段と
を具備したことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサまたは複数の受光セルを二次元方向に所定のピッチで配列したエリアセンサからなるものである請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項1】
コンベア上に載置されて搬送される原料中に混入している異物を光学的に検出する異物検査装置であって、
可視光および近赤外線光を含む光を前記コンベアの所定領域を一様に照射する光源と、
前記コンベア上の前記可視光および前記近赤外線光を含む光の照射領域を局部的に視野する光学系と、
この光学系を介して前記コンベア上に載置された原料および該原料に混入している異物による前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度をそれぞれ検出する光検出素子と、
この光検出素子が検出した前記可視光および前記近赤外線光の反射光の強度の差分値が所定のレベル値を超えたとき、前記原材料中に前記異物が混入していると判定する異物判定手段と
を具備したことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記光検出素子は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサまたは複数の受光セルを二次元方向に所定のピッチで配列したエリアセンサからなるものである請求項1に記載の異物検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−177890(P2006−177890A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373793(P2004−373793)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(592118686)ジェイティエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(592118686)ジェイティエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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