説明

異物除去装置、異物除去方法、及びパターン基板の製造方法

【課題】確実に異物を除去することができる異物除去装置、異物除去方法、並びにパターン基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】異物除去装置は、ペリクルフレーム11を介してペリクル膜12が装着されたマスク10の異物を除去する異物除去装置であって、ペリクル膜12側からマスク10に対して超音波を照射して、マスク10のペリクル膜12側に節を有する定在波を発生させる超音波トランスデューサ22と、マスク10の異物15が付着した箇所に光を照射して、異物15をマスク10から離脱させる光源23と、を備え、マスク10から離脱した異物を、定在波の節の方向に移動させて、ペリクル膜12又はペリクルフレーム11に付着させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異物除去装置、異物除去方法、及びマスクの製造方法に関し、特に詳しくは、ペリクル膜が装着されたマスクの異物を除去する異物除去装置、異物除去方法、及びそれを用いたパターン基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程で使用されるフォトマスクを洗浄する方法が開示されている(特許文献1、2)。この方法では、付着物質やパーティクル(以下、まとめて異物とする)にレーザ光を照射して、マスクから異物を除去している。特許文献1では、レーザ光を照射してマスクと物質の結合を弱化している。そして、レーザ光を照射した後、純水に浸漬した状態で、超音波を照射している。超音波の照射によって、結合を弱化した後、有機溶剤に浸漬している。また、特許文献2では、再度、異物が付着しないように、ガスを供給しながら、レーザ光を照射している。これにより、パターン面に付着した異物を除去することができる。
【0003】
さらに、特許文献3では、基板表面に水を付着させた状態で、レーザ光を照射している。具体的には、処理室内に設けられた冷却ステージ上にマスクを載置する。そして、冷却ステージでマスクを冷却すると、基板表面に水が付着する。こうすることで、パルスレーザ光が水に吸収され、水が急激に蒸発する。そして、水が蒸発する際に発生する力によって、異物が基板表面から引き離され除去される。
【0004】
また、パターン面に異物が付着するのを防止するため、マスクにペリクル膜(単にペリクルともいう)を装着することもある。ペリクル膜は、通常、ペリクルフレームを介して、マスクに装着される。従って、マスクのパターン面側の空間は、ペリクル膜、ペリクルフレーム、及びマスクで囲まれて、ほぼ閉空間になる。ペリクル膜に付着した異物を、超音波振動を用いて除去する洗浄方法が開示されている(特許文献4)。この方法では、超音波振動によって、洗剤、又は純水を霧状にして、ペリクル膜に吹き付けている。しかしながら、この方法では、マスクのパターン面に付着した異物を除去することができない。
【0005】
また、特許文献5の異物除去装置では、イオナイザーエアーを用いて、マスクに装着したペリクル膜上の異物、又はペリクル膜なしマスクの異物を除去している。この異物除去装置では、イオナイザーによって帯電されたイオナイザーエアーをエアーノズルからマスクに向けて噴出している。エアーノズルが超音波加振部で加振されているため、イオナイザーエアーは、粗密波になっている。そして、マスクを異物除去室の奥まで搬送する過程で、イオナイザーエアーが異物に当たり、ペリクル膜から離れる。さらに、異物除去室を真空にした状態で、イオナイザーエアーが噴出されている。従って、マスク、又はペリクル膜から離れた異物が速やかに排出される。
【0006】
【特許文献1】特開2006−192426号公報
【特許文献2】特開2007−111682号公報
【特許文献3】特開2000−176671号公報
【特許文献4】特開平4−172453号公報
【特許文献5】特開平2−13952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ペリクル付きマスクでは、マスクのパターン面側がほぼ閉空間となっている。すなわち、パターン面上の空間が、マスク、ペリクル膜、及びペリクルフレームで囲まれる構成となる。したがって、ペリクル膜を装着した状態では、特許文献1、3に示すように、溶液や純水などを用いたウェットプロセスでパターン面上の異物を除去することは困難である。さらに、溶液などを用いると、パターンの光学特性が変化して、露光に影響を与えてしまうおそれもある。従って、ドライプロセスで異物除去を行うことが望まれている。レーザ光を照射して異物を除去する場合、レーザ光の照射エネルギーが高いと、パターンがダメージを受けてしまうこともある。
【0008】
また、異物を確実に除去するためには、一度、除去した異物がマスクに再付着するのを防ぐ必要がある。しかしながら、閉空間になっているため、特許文献2、5に記載されているように、気体の流れを利用して、異物を取り除くことが困難である。このように、特許文献1〜5の方法では、ペリクル付きマスクのパターン面に付着した異物を除去することが困難であるという問題点がある。
【0009】
このように上記の異物除去装置では、ペリクル付きマスクのパターン面に付着した異物を除去することが困難であるという問題点がある。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであって、簡便かつ確実に異物を除去することができる異物除去装置及び異物除去方法、並びにそれを用いたパターン基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかる異物除去装置は、ペリクルフレームを介してペリクル膜が装着されたマスクの異物を除去する異物除去装置であって、前記ペリクル膜側から前記マスクに対して超音波を照射して、前記マスクのペリクル膜側に節を有する定在波を発生させる超音波発生手段と、前記マスクの前記異物が付着した箇所に光を照射して、前記異物を前記マスクから離脱させる光源と、を備え、前記マスクから離脱した異物を、前記定在波の節の方向に移動させて、前記ペリクル膜又は前記ペリクルフレームに付着させるものである。これにより、薬液を用いることなく、ペリクル付きマスク上の異物を除去することができる。よって、簡便かつ確実に異物を除去することができる。また、マスクに対するダメージを軽減することができる。
【0011】
本発明の第2の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記マスクに対する前記定在波の節の位置を前記パターン面に沿って相対移動させるように、前記マスクのステージ又は前記超音波発生手段を駆動する駆動機構をさらに備え、前記定在波の節に前記異物をトラップした状態で、前記駆動機構を駆動することで、前記ペリクルフレームの側面に前記異物を付着させることを特徴とするものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0012】
本発明の第3の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記定在波の節が、前記ペリクル膜の前記マスク側と反対側にあり、前記ペリクル膜に前記異物を付着させるものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記超音波の周波数を変化させることによって、前記定在波の節の位置を前記ペリクル膜と前記マスクとの間の空間から、前記ペリクル膜まで変位させて、前記異物をペリクル膜に付着させることを特徴とするものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記マスクの前記パターン面と反対側から前記マスクを冷却して、前記パターン面に水を凝集させる冷却手段をさらに備え、前記冷却手段によって凝集させた水に前記光源からの光を照射して、前記水とともに前記異物を前記マスクから離脱させることを特徴とするものである。水とともに異物を除去することで、確実に異物を除去することができる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記冷却手段の周辺において、前記マスクを加熱する加熱手段をさらに備えるものである。これにより、効率よく水を凝集させることができる。
【0016】
本発明の第7の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記冷却手段によって水が凝集した領域よりも広い領域に前記光を照射するものである。これにより、水が凝集した領域にシミが形成されるのを防ぐことができる。
【0017】
本発明の第8の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記光源が水に吸収される波長の光を出射することを特徴とするものである。これにより、効率よく、異物を除去することができる。
【0018】
本発明の第9の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記異物を除電するため、前記異物に対してX線を照射するX線照射手段をさらに備えるものである。これにより、付着力を低下することができるため、確実に異物を除去することができる。
【0019】
本発明の第10の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、ペリクルフレームを介してペリクル膜が装着されたマスクの異物を除去する異物除去方法であって、前記マスクの前記異物が付着した箇所に光を照射して、前記異物を前記マスクから離脱させるステップと、前記ペリクル膜側から前記マスクに対して超音波を照射して定在波を発生させ、前記マスクから離脱した異物を前記定在波の節の方向に移動させるステップと、を備えるものである。これにより、薬液を用いることなく、ペリクル付きマスク上の異物を除去することができる。よって、簡便かつ確実に異物を除去することができる。また、マスクに対するダメージを軽減することができる。
【0020】
本発明の第11の態様にかかる異物除去装置は、上記の異物除去装置であって、前記マスクに対する前記定在波の節の位置を前記パターン面に沿って相対移動させるように、前記マスクのステージ又は前記超音波発生手段を駆動するステップをさらに備え、前記定在波の節に前記異物をトラップした状態で、前記節の位置を相対移動させることで、前記ペリクルフレームの側面に前記異物を付着させることを特徴とするものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0021】
本発明の第12の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記定在波の節が、前記ペリクル膜の前記マスク側と反対側にあり、前記ペリクル膜に前記異物を付着させるものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0022】
本発明の第13の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記超音波の周波数を変化させることによって、前記定在波の節の位置を前記ペリクル膜と前記マスクとの間の空間から、前記ペリクル膜まで変位させて、前記異物をペリクル膜に付着させることを特徴とするものである。これにより、異物の再付着を防ぐことができ、確実な異物除去が可能になる。
【0023】
本発明の第14の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記マスクの前記パターン面と反対側から前記マスクを冷却して、前記パターン面に水を凝集させるステップをさらに備え、前記凝集させた水に前記光を照射して、前記水とともに前記異物を前記マスクから離脱させることを特徴とするものである。水とともに異物を除去することで、確実に異物を除去することができる。
【0024】
本発明の第15の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記異物の周辺において、前記マスクを加熱しているものである。これにより、効率よく水を凝集させることができる。
【0025】
本発明の第16の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記水が凝集した領域よりも広い領域に前記光を照射するものである。これにより、水が凝集した領域にシミが形成されるのを防ぐことができる。
【0026】
本発明の第17の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、水に吸収される波長の光を照射することを特徴とするものである。これにより、効率よく、異物を除去することができる。
【0027】
本発明の第18の態様にかかる異物除去方法は、上記の異物除去方法であって、前記異物を除電するため、前記異物に対してX線を照射するものである。これにより、付着力を低下することができるため、確実に異物を除去することができる。
【0028】
本発明の第19の態様にかかるパターン基板の製造方法は、マスクにペリクル膜を装着するステップと、上記の異物除去方法を用いて、ペリクル膜が装着されたマスク上の異物を除去するステップと、を備えるものである。これにより、確実に異物を除去したマスクを用いることができるため、生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、簡便かつ確実に異物を除去することができる異物除去装置及び異物除去方法、並びにそれを用いたパターン基板の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施例について以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施例を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
【0031】
実施の形態1.
本実施形態にかかる異物除去装置について図1を用いて説明する。図1は、異物除去装置の構成をも式的に示す側面図である。異物除去装置は、ペリクル膜12付きマスク10のパターン面に付着した異物15を除去する。
【0032】
まず、異物除去の対象となるマスク10の構成について説明する。マスク10は、半導体等の露光工程で使用されるフォトマスクであり、レチクルなどを含むものとする。マスク10上には、露光時に転写されるパターン14が形成されている。このパターン14は、ガラスなどの透明基板上に形成されている。パターン14は、遮光パターンの他、ハーフトーンパターンや、位相シフトパターンなどであってもよい。マスク10のパターン面には、枠状のペリクルフレーム11が装着されている。マスク10のパターン14が形成されている領域を囲むように、ペリクルフレーム11が貼着されている。そして、ペリクルフレーム11のパターン面と反対側には、ペリクル膜12が設けられている。ペリクルフレーム11を介してマスク10にペリクル膜12が装着される。ペリクルフレーム11の高さが、パターン面からペリクル膜12までの高さ(ペリクル高さ)になる。
【0033】
従って、パターン面上の空間がマスク10、ペリクルフレーム11、及びペリクル膜12で囲まれた閉空間(ペリクル空間)となる。これにより、外部から飛来する異物15がパターン面に付着するのを防ぐことができる。異物除去装置は、ペリクル膜12を装着した後に、パターン面に付着した異物15を除去する。すなわち、ペリクル膜越しに異物除去を行う。具体的には、超音波、及び光を照射することによって、パターン面から異物15を除去する。なお、異物15はマスク10上にあってはいけないものを示す。
【0034】
異物除去装置は、ステージ21、超音波トランスデューサ22、光源23、レンズ24、駆動機構28を備えている。ステージ21には、マスク10が載置される。すなわち、マスク10のパターン面と反対面がステージ21に当接する。ステージ21は、中空のXYステージであり、マスク10の端部を支持する。ステージ21には、駆動機構28が設けられている。駆動機構28には、サーボモータなどのアクチュエータが設けられている。この駆動機構28がステージ21をXY方向に駆動する。ステージ21を駆動すると、ステージ21上のマスク10が矢印の方向に移動する。すなわち、マスク10がステージ21とともに、パターン面に沿った方向に移動する。
【0035】
マスク10の上方には、超音波トランスデューサ22が配設されている。超音波トランスデューサ22は、超音波を発生する超音波発生手段である。すなわち、超音波トランスデューサ22は可聴範囲を越える周波数の音波を生成する。そして、超音波トランスデューサ22は、ペリクル膜12側からマスク10に対して超音波を照射する。すなわち、超音波トランスデューサ22はペリクル膜12の外からマスク10上の異物15に向けて超音波を照射する。なお、ペリクル膜12は、厚さ数μm程度の高分子膜であるため、音波の透過にほとんど影響はない。これにより、ペリクル膜12を介して、異物15に超音波を照射することができる。超音波トランスデューサ22は、マスク10のパターン面に対して垂直に超音波を照射する。たとえば、超音波はマスク10に対して連続的に照射される。
【0036】
また、マスク10の下方には、光源23が設けられている。光源23としては、パルス光を出射するキセノンフラッシュランプ光源などを用いることができる。あるいは、YAGレーザの高調波や、エキシマレーザ等を用いてもよい。光源23から出射された光は、レンズ24で集光される。レンズ24で屈折された光は、ステージ21の中空部分を通ってマスク10に入射する。光は、パターン面と反対側からマスク10に入射する。そして、光源23からの光は、マスク10を透過して、パターン面に付着した異物15に照射される。
【0037】
超音波トランスデューサ22とマスク10のパターン面との距離が超音波のλ/2の偶数倍となっていれば、定在波が生じる。反射面であるパターン面は、音圧が高いので、異物15が音圧の低い方に移動していく。すなわち、異物15が定在波の節の方向に移動していく。なお、λは、超音波の波長である。
【0038】
音圧だけでは、異物15をマスク10から引き離す力が不十分である場合、光源23から、DUV(Deep UltraViolet)パルス光を照射する。異物15が有機物の場合、有機物の一部が光分解して、付着力を低下させる。例えば、マスク10に付着する異物15の多くは、有機物が糊の役目を果たしている。これにより、マスク10に対する付着力が増大している。従って、紫外光の照射によって、有機物を分解すると、付着力が低下する。また、同時に、光パルスを吸収して発生する熱的な衝撃により異物15がマスク10から一瞬浮き上がる。すなわち、異物15が光パルスを吸収することで、マスク10から離脱する。このとき、超音波が照射されているため、マスク10から離脱した異物15が定在波の節の方向に移動する。これにより、異物15がマスク10のパターン面から離れていく。
【0039】
ここで、超音波による異物15の除去について、図2を用いて説明する。図2は、超音波が照射されているマスク10を模式的に示す側面断面図である。図2では、定在波の節(音圧が低い部分)と腹(音圧が高い部分)の位置が模式的に示されている。パターン面からの距離がλ/4となる位置が音圧の節となる。また、パターン面からの距離がλ/2の位置が音圧の腹となる。
【0040】
例として、超音波トランスデューサ22が40kHz、400Wの超音波ホーンであるとする。空気中の音速を340m/s(国際標準大気海面上気温での音速)とすると、λ/2=4.25mm=340/(2×40kHz)となる。そして、λ/2がパターン面からのペリクル膜12の高さよりも小さい場合、ペリクル膜12とマスク10のパターン面との間に、定在波の節が生成される。光照射でマスク10から離脱した異物15は、超音波振動によって、節に向かって移動する。ペリクル空間中に定在波の節が存在する場合、パターン面からλ/4の高さまで異物15が浮上する。すなわち、図2(a)に示すように、定在波の節の位置で、異物15がトラップされる。超音波を照射している限り、異物15がペリクル空間中に安定して浮かぶことになる。異物15を浮上させた状態で、ステージ21を横方向に移動させる。すなわち、図2(a)に示す矢印の方向にステージを移動させると、図2(b)に示すように、ペリクルフレーム11の内側の側面に異物15が接着する。ペリクルフレーム11の内壁には、接着層が形成されているため、異物15が内壁に設けられた接着層に付着する。これにより、一度離脱した異物15がパターン面に再付着するのを防ぐことができる。よって、ペリクル空間内の異物を確実に除去することができる。
【0041】
なお、上記の説明では、異物15をペリクルフレーム11の内壁に付着させるために、ステージ21を移動させたが、超音波トランスデューサ22を移動させてもよい。すなわち、超音波トランスデューサ22とマスク10とをパターン面に沿って相対移動すればよい。これにより、浮遊した異物15が横方向に移動して、ペリクルフレーム11の内壁まで到達する。そして、ペリクルフレーム11の内壁に設けられた接着層に異物15が付着する。
【0042】
一方、超音波の周波数を低くすると、節の位置がペリクル空間の外側になる。すなわち、パターン面から節までの距離が、パターン面からペリクル膜12までの距離よりも大きくなる。この場合、異物15が節に移動する間に、ペリクル膜12に付着する。従って、一度、パターン面から除去した異物が、パターン面に再付着するのを防ぐことができる。すなわち、節への移動中に、異物15がペリクル膜12に捕獲される。従って、ステージ21を移動させることなく、異物15を確実に除去することができる。このように、周波数とペリクル膜12の高さとの関係に応じて、異物15が捕獲される場所が異なる。すなわち、ペリクル膜12の高さがλ/2よりも小さい場合、ステージ21を移動して、ペリクルフレーム11の内壁で異物15を捕獲する。一方、ペリクル膜12の高さがλ/2よりも大きい場合、ペリクル膜12で異物15を捕獲する。これにより、一度、除去した異物15がパターン面に再付着するのを防ぐことができる。また、異物を除去するのに好適な周波数の超音波を使用することができる。
【0043】
なお、超音波の強度は、異物15がマスクのパターン面から離脱し、かつマスク10がダメージを受けない程度に設定される。このように、音波強度をコントロールすることで、マスク10のパターン14にダメージを与えることなく、確実に異物除去することができる。超音波の供給方法は、パルス/バースト可能とする。また、超音波をチャープして、異物15をペリクル膜12まで移動させてもよい。すなわち、時間とともに超音波の周波数を変化させていき、節の位置を徐々に変位させる。これにより、一度、定在波の節で安定して浮上していた異物が、ペリクル膜12の方向に移動していく。よって、異物15をペリクル膜に付着させることができる。また、異物15の除去に適した周波数の超音波を照射することができるため、確実な異物除去が可能になる。
【0044】
音波作用を起こすためには、音波照射エリアをガス雰囲気にする必要がある。光を利用する場合、音波照射エリアを不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。これにより、効率よく、光を照射することができる。すなわち、音波照射エリアに、酸素などの活性ガスがある場合、光エネルギーによって活性ガスが反応してしまう。この場合、異物15の離脱に用いられる光エネルギーの効率が低下する。このため、不活性ガスの供給を制御しながら、光を照射することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスなどを用いることが好ましい。
【0045】
上記のように、光を照射することで、異物15の付着力を低下させることができる。よって、低い音波強度で異物15をパターン面から除去することができる。これにより、パターン14やペリクル膜の損傷を防ぐことができる。また、低いの光強度で、異物を離脱することができるため、光照射によるパターンの損傷を防ぐことができる。さらに、パルス光を照射する場合、パルス光の立ち上がりやパルス幅を調整することで、パターン14の損傷を防ぐことができる。光、及び超音波の両方を用いることで、パターン14に対するダメージを軽減することができる。
【0046】
なお、光は、マスク10の裏面からではなく、表面側から照射してもよい。すなわち、ペリクル膜12を介してマスク10のパターン面に光を照射してもよい。この場合、ペリクル膜12に対するダメージを軽減するように光を照射する。従って、ペリクル膜12に対する吸収が小さい波長を用いることが好ましい。また、パターン面から離脱させた異物15を、ペリクルフレーム11、又はペリクル膜12に付着させている。よって、再度、パターン面に異物15が付着して、欠陥となることがない。このように、確実に異物15を除去することができる。さらに、薬液などを用いる必要がないため、異物15を簡便に除去することができる。また、薬液によるパターン14の光学特性の劣化がないため、異物15の除去工程を繰り返し行うことが可能になる。よって、確実に異物15を除去することができる。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる異物除去装置について、図3を用いて説明する。図3は、異物除去装置の構成を模式的に示す側面断面図である。本実施の形態にかかる異物除去装置には、実施の形態1で示した異物除去装置に加えて、X線源25が設けられている。X線源25以外の基本的構成については、実施の形態1で示した異物除去装置と同じであるため、適宜説明を省略する。
【0048】
X線源25は、ペリクル膜12側から異物15に対して軟X線を照射する。すなわち、X線源25からの軟X線はペリクル膜12を介して、マスク10に入射する。これにより、帯電した異物15を除電することができる。よって、異物15の付着力を低下させることができる。
【0049】
また、本実施の形態では、光源23がマスク10のペリクル膜側に設置されている。すなわち、光源23からの光は、ペリクル膜12を介してマスク10に入射する。これにより、異物15に光が照射され、付着力を低下させることができる。なお、X線、及び光は、パターン14、及びペリクル膜12に損傷を与えないエネルギーで照射される。例えば、光源23としてNd:YAGレーザ等を用いることができる。そして、DUVのパルスレーザ光を異物15に対して照射する。例えば、レーザアブレーションによって、異物15が反跳して、マスク10から離脱する。そして、離脱した異物を、超音波によって、ペリクル膜12、又はペリクルフレーム11に移動させる。これにより、実施の形態1と同様に、異物を確実に除去することができる。
【0050】
このように、本実施形態にかかる異物除去装置には、光源23とともに、X線源25が設けられている。そして、X線源25からX線を異物15に照射して、異物15を除電する。これにより、クーロン力が低下して、付着力を低下させることができる。そして、実施形態1と同様にレーザ光、及び超音波を照射して、異物を除去する。これにより、確実に異物15を除去することができる。
【0051】
実施の形態3.
本実施の形態にかかる異物除去装置について、図4を用いて説明する。図4は、異物除去装置の構成を模式的に示す側面断面図である。本実施の形態にかかる異物除去装置には、実施の形態1で示した異物除去装置に加えて、加熱手段26、及び冷却手段27が設けられている。なお、加熱手段26、及び冷却手段27以外の基本的な構成は、実施の形態1で示した異物除去装置と同じであるため、適宜説明を省略する。
【0052】
マスク10の裏面側には、冷却手段27が設けられている。すなわち、マスク10のパターン面と反対側の面に、冷却手段27が設置されている。冷却手段27は、裏面側から、マスク10を冷却する。また、冷却手段27は、異物15が付着した箇所の直下に配置されている。冷却手段27としては、コールドプレート、液体窒素ノズル、ボルテックスチューブなどを用いることができる。そして、冷却手段27がマスク10を冷却することで、異物15、及びその近傍が冷却される。すなわち、異物15箇所が部分的に冷却される。すると、異物15近傍の水分が凝集して、水の膜となる。ペリクル空間内の水分がパターン面上に凝集する。すなわち、マスク10が結露して、パターン面に水の膜が形成される。マスク10のパターン面では、異物15を含む領域に水が付着する。水を凝集させた後に、レーザ光、及び超音波を用いて異物15を除去する。すなわち、冷却した後に、光を照射する。
【0053】
異物15が有機物の場合、水が付着することによって、異物15の付着力が低下する。そして、実施の形態1と同様に、光、及び超音波を照射して、異物15を除去する。これにより、低いパワーで異物15を除去することができる。また、マスク10を冷却して、異物15の付着箇所に水の膜を形成することで、有機物の異物15であっても、確実に除去することができる。
【0054】
本実施の形態では、光源23として、水に吸収される光を出射するCOレーザが用いられている。あるいは、Er:YAGレーザやNd:YAGレーザ等を用いてもよい。そして、水に対して吸収係数が大きい、赤外線などを照射する。具体的には、波長1μm〜10μm程度のレーザ光を照射することが好ましい。水に吸収される波長の光を用いることで、低パワーのレーザ光で、異物15を除去することが可能になる。よって、パターン14やペリクル膜12に対するダメージを低減することができる。また、異物15の種類や、異物15の直下のパターン14に関係なく、確実に異物15を除去することができる。また、パターン14上に異物15が付着している場合は、水に対する吸収係数が大きい波長ではなく、パターン14に対する吸収係数が大きい波長の光を用いてもよい。
【0055】
なお、光源23はマスク10のペリクル膜側に配置されている。すなわち、ペリクル膜12を介してマスク10のパターン面上に付着した異物15に光を照射する。よって、ペリクル膜12に影響が小さい波長の光を用いることが好ましい。また、結露により水が付着した領域よりも広い領域にレーザ光を照射することが好ましい。すなわち、冷却する領域よりも広い領域に、パルス光を照射する。これにより、水の付着によって、パターン面に新たなシミが生じるのを防ぐことができる。すなわち、微量の水全体が急激に加熱されて蒸発するため、パターン面上にシミが発生するのを防ぐことができる。これにより、露光に対する影響を軽減することができる。この場合、レーザ光のスポットを所定の大きさに成形して、マスク10に照射する。
【0056】
本実施形態では、水に対してレーザ光を照射している。レーザアブレーションによって、水が急激に蒸発する。これにより、異物15の直下のパターンの膜剥がれを防止することができる。すなわち、水が急激に蒸発することで、水の表面張力が瞬間的に無くなる。よって、水の蒸発時に水が異物15のパターンを引き連れて、マスク10から離れていくことのを防ぐことができる。異物15がパターン14上に存在する場合でも、異物15の直下のパターン14のダメージを低減することができる。よって、パターン14にダメージを与えることなく、異物を除去することができる。
【0057】
さらに、マスク10の裏面側には、加熱手段26が配設されている。加熱手段26は、例えば、ホットプレートなどのヒータであり、裏面側からマスク10を加熱する。加熱手段26は、ペリクル膜12がペリクルフレーム11から剥がれないような温度までマスク10を加熱する。加熱手段26は、マスク10の異物が付着箇所を除いた部分に配置される。すなわち、マスク10の異物箇所の周辺を加熱する。従って、異物箇所のみが冷却手段27によって部分的に冷却され、その周辺が加熱手段26が加熱される。異物15の周辺の領域では、水が凝集されなくなる。異物15の外側部分では、水が付着しなくなる。異物15の付着箇所のみに対して、水の膜が形成されるようになる。すなわち、異物15箇所以外では、水が凝集されず、異物15箇所のみに、効率よく水を凝集させることができる。よって、ペリクル空間内の水分を効率よく、凝集させることができる。よって、異物除去に対して十分な厚さの水の膜を容易に形成することができる。また、シミの発生を防ぐことができる。
【0058】
さらに、水が凝固するまで冷却した場合、氷を融解した後に、異物15を除去することが好ましい。すなわち、凝集させた水が凝固して氷となった後、氷が融解するまで待つ。そして、光照射と超音波照射によって、異物を除去する。こうすることで、十分な量の水を凝集することができる。すなわち、十分に低い温度まで冷却することで、凝集する水の膜厚を増加することができる。これにより、有機物からなる異物15の付着力を十分に低下させることができる。よって、確実に異物を除去することができる。
【0059】
その他の実施の形態.
実施形態1〜3で記載した、光の波長、超音波の周波数などの数値は、好適な一例であり、特に記載した数値に限定されるものではない。また、上記の実施形態1〜3を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、実施の形態2の異物除去装置に対して、冷却手段27又は加熱手段26などを設けてもよい。マスク10の裏面側に冷却手段27などを配設する場合、ペリクル膜12側からマスク10に光を照射することが好ましい。
【0060】
上記の異物除去方法を生産工程に組み込むことで、生産性を向上することができる。すなわち、透明基板上にパターン14を形成して、マスク10を製造する。そのマスク10にペリクルフレーム11を介してペリクル膜12を装着する。そして、ペリクル付きマスク10に対して、上記のように、異物除去を行う。異物除去を行う場合、マスク10の異物15が付着した箇所に光を照射して、異物15をマスク10から離脱させる。そして、ペリクル膜12側からマスク10に対して超音波を照射して定在波を発生させる。マスク10から離脱した異物15を定在波の節の方向に移動する。これにより、異物を確実に除去することができ、マスクの生産性を向上することができる。さらに、異物15が除去されたマスク10を用いて露光を行う。これにより、異物15が確実に除去されたマスク10を用いた露光が行われる。よって、半導体などのパターン基板の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態1にかかる異物除去装置の全体構成を模式的に示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施形態1にかかる異物除去装置の異物除去工程を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態2にかかる異物除去装置の全体構成を模式的に示す側面断面図である。
【図4】本発明の実施形態2にかかる異物除去装置の全体構成を模式的に示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 マスク
11 ペリクルフレーム
12 ペリクル膜
14 パターン
15 異物
21 ステージ
22 超音波トランスデューサ
23 光源
24 レンズ
26 加熱手段
27 冷却手段
28 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルフレームを介してペリクル膜が装着されたマスクの異物を除去する異物除去装置であって、
前記ペリクル膜側から前記マスクに対して超音波を照射して、前記マスクのペリクル膜側に節を有する定在波を発生させる超音波発生手段と、
前記マスクの前記異物が付着した箇所に光を照射して、前記異物を前記マスクから離脱させる光源と、を備え、
前記マスクから離脱した異物を、前記定在波の節の方向に移動させて、前記ペリクル膜又は前記ペリクルフレームに付着させる異物除去装置。
【請求項2】
前記マスクに対する前記定在波の節の位置を前記パターン面に沿って相対移動させるように、前記マスクのステージ又は前記超音波発生手段を駆動する駆動機構をさらに備え、
前記定在波の節に前記異物をトラップした状態で、前記駆動機構を駆動することで、前記ペリクルフレームの側面に前記異物を付着させることを特徴とする請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記定在波の節が、前記ペリクル膜の前記マスク側と反対側にあり、前記ペリクル膜に前記異物を付着させる請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記超音波の周波数を変化させることによって、前記定在波の節の位置を前記ペリクル膜と前記マスクとの間の空間から、前記ペリクル膜まで変位させて、前記異物をペリクル膜に付着させることを特徴とする請求項3に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記マスクの前記パターン面と反対側から前記マスクを冷却して、前記パターン面に水を凝集させる冷却手段をさらに備え、
前記冷却手段によって凝集させた水に前記光源からの光を照射して、前記水とともに前記異物を前記マスクから離脱させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記冷却手段の周辺において、前記マスクを加熱する加熱手段をさらに備える請求項5に記載の異物除去装置。
【請求項7】
前記冷却手段によって水が凝集した領域よりも広い領域に前記光を照射する請求項5、又は6に記載の異物除去装置。
【請求項8】
前記光源が水に吸収される波長の光を出射することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項9】
前記異物を除電するため、前記異物に対してX線を照射するX線照射手段をさらに備える請求項1乃至8のいずれか記載の異物除去装置。
【請求項10】
ペリクルフレームを介してペリクル膜が装着されたマスクの異物を除去する異物除去方法であって、
前記マスクの前記異物が付着した箇所に光を照射して、前記異物を前記マスクから離脱させるステップと、
前記ペリクル膜側から前記マスクに対して超音波を照射して定在波を発生させ、前記マスクから離脱した異物を前記定在波の節の方向に移動させるステップと、を備える異物除去方法。
【請求項11】
前記マスクに対する前記定在波の節の位置を前記パターン面に沿って相対移動させるように、前記マスクのステージ又は前記超音波発生手段を駆動するステップをさらに備え、
前記定在波の節に前記異物をトラップした状態で、前記節の位置を相対移動させることで、前記ペリクルフレームの側面に前記異物を付着させることを特徴とする請求項10に記載の異物除去方法。
【請求項12】
前記定在波の節が、前記ペリクル膜の前記マスク側と反対側にあり、前記ペリクル膜に前記異物を付着させる請求項10に記載の異物除去方法。
【請求項13】
前記超音波の周波数を変化させることによって、前記定在波の節の位置を前記ペリクル膜と前記マスクとの間の空間から、前記ペリクル膜まで変位させて、前記異物をペリクル膜に付着させることを特徴とする請求項12に記載の異物除去方法。
【請求項14】
前記マスクの前記パターン面と反対側から前記マスクを冷却して、前記パターン面に水を凝集させるステップをさらに備え、
前記凝集させた水に前記光を照射して、前記水とともに前記異物を前記マスクから離脱させることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の異物除去方法。
【請求項15】
前記異物の周辺において、前記マスクを加熱している請求項14に記載の異物除去方法。
【請求項16】
前記水が凝集した領域よりも広い領域に前記光を照射する請求項14、又は15に記載の異物除去方法。
【請求項17】
水に吸収される波長の光を照射することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の異物除去方法。
【請求項18】
前記異物を除電するため、前記異物に対してX線を照射する請求項10乃至17のいずれか記載の異物除去方法。
【請求項19】
マスクにペリクル膜を装着するステップと、
請求項10乃至18のいずれか1項に記載の異物除去方法を用いて、ペリクル膜が装着されたマスク上の異物を除去するステップと、を備えるパターン基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−45283(P2010−45283A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209679(P2008−209679)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【出願人】(590002172)株式会社プレテック (41)
【Fターム(参考)】