説明

異種アルミ合金接合パネル、及び該接合パネルによって構築された圧力容器、LNGタンク

【課題】圧力容器等の大型構造物を構築する際に好適に用いられ、大型構造物の接合強度を維持しながら軽量化、大型化を可能とした異種アルミ合金接合パネル、及び該接合パネルによって構築された圧力容器、LNGタンクを提供する。
【解決手段】異種の板状アルミ合金同士を接合してなる平面若しくは曲面状の異種アルミ合金接合パネル1において、板状難溶接性アルミ合金12と、板状易溶接性アルミ合金11とを摩擦撹拌接合22にて接合して異種アルミ合金接合パネルが形成されてなり、該接合パネルの辺縁側に前記板状易溶接性アルミ合金11が位置するように構成し、複数の接合パネル1により大型構造物を構築する際には、該接合パネル1の辺縁側の板状易溶接性アルミ合金11同士を溶接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種の板状アルミ合金同士を接合して一体に形成された異種アルミ合金接合パネル、及び該接合パネルによって構築された圧力容器、LNGタンクに関し、特に、圧力容器等の大型構造物を構築する際に好適に用いられ、大型構造物の接合強度を維持しながら軽量化、大型化を可能とした異種アルミ合金接合パネル、及び該接合パネルによって構築された圧力容器、LNGタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば船に搭載されるLNGタンクを含む圧力容器、各種プラントに設置された貯蔵タンク又は処理塔、或いは船体、各種車両の車体等は、一般に金属材料で形成されることが主流であり、このような大型構造物を製造する際には、複数の板状金属部材を形成しておき、これらの金属部材を溶接等により接合して組み立てていた。
【0003】
このようにして製造される大型構造物の一例として、LNG船に搭載されるLNGタンクを図4に示す。LNGタンク100は、上側半球部(北半球)と下側半球部(南半球)と中央円環部(赤道部)からなる球形を有しており、図4に示すように、液化天然ガス(LNG)を収容する内槽110と、低温環境を維持するための外槽111と、外槽111の上面に被覆されたタンクカバー112と、LNGタンク100を船体に支持するスカート105とから構成される(特許文献1等参照)。LNGタンク100の内層110は、複数の板状アルミ合金をMIG溶接等の溶接により接合して組み立てられており、板状アルミ合金としては、材料費、溶接性、耐腐食性の観点からAl−Mg系のアルミニウム合金である5083合金が多く用いられていた。
【0004】
大型構造物を構築する際には、強度が重要となり、またLNGタンクのように船で搬送する場合には、軽量であることが求められる。特に強度に関しては、大型構造物の場合、一体成形することができないため、接合部位の強度低下が最も懸念される。
特許文献2(特開2001−269780号公報)には、アルミニウム合金製の低温液化ガス用容器において、該容器を構成する構造部材の突き合わせ溶接継手部を摩擦撹拌接合法により接合した構成が開示されている。これによれば、溶接部位の強度向上を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−153064号公報
【特許文献2】特開2001−269780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように大型構造物は、複数の金属部材を溶接等により接合して構築されるが、構造物の強度向上、特に接合部位の強度向上が求められている。従って、用いられる金属材料や使用部位等によって適した接合方法を採用することが望ましい。しかし、接合する対象が大型であるため十分な接合設備を使用できないことも多く、接合強度を高くしながら簡単に組立てを行なう方法が求められていた。
また、アルミニウム合金を用いたLNGタンクにおいては、近年LNG船の大型化、大容量化傾向によりタンクの大型化が求められているが、アルミニウムの製造限界板厚、厚板化による重量増加等の問題点があり、実現が困難であった。
大型構造物は、高強度化、軽量化を目的として複数の異なる材料を組み合わせて製造されることがあるが、異種の材料同士を接合するときは溶接が困難であり、また溶接できても接合強度が十分に保持できないという問題があった。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、圧力容器等の大型構造物を構築する際に好適に用いられ、大型構造物の接合強度を維持しながら軽量化、大型化を可能とした異種アルミ合金接合パネル、及び該接合パネルによって構築された圧力容器、LNGタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
異種の板状アルミ合金同士を接合してなる平面若しくは曲面状の異種アルミ合金接合パネルにおいて、
板状難溶接性アルミ合金と、板状易溶接性アルミ合金とを摩擦撹拌接合にて接合して異種アルミ合金接合パネルが形成されてなり、該接合パネルの辺縁側に前記板状易溶接性アルミ合金が位置していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、異種アルミ合金接合パネルは、溶接性の異なるアルミ合金を摩擦撹拌接合により接合して一体化した構成となっており、且つ接合パネルの辺縁側に前記板状易溶接性アルミ合金が位置しているため、接合パネル同士を簡単に溶接して組み立てることが可能となる。また、板状難溶接性アルミ合金と板状易溶接性アルミ合金を摩擦撹拌接合により接合しているため、接合強度を高くすることができ、延いては異種アルミ合金接合パネルにより構築した大型構造物の強度を安定的に維持することが可能となる。
【0010】
尚、前記板状難溶接性アルミ合金は、溶接が困難或いは溶接により接合強度が十分に保持し難い材料をいう。例えば、2000系、7000系のアルミニウム合金が挙げられ、主に高強度を有する材料である。
前記板状易溶接性アルミ合金は、溶接が容易或いは溶接により接合強度が十分に保持できる材料をいう。例えば、5000系のアルミニウム合金が挙げられ、具体的には5083合金が好適に用いられる。
このように、板状難溶接性アルミ合金は高強度を示すことが多く、このため本発明の異種アルミ合金接合パネルは、板状難溶接性アルミ合金により材料強度を高くし、また板状易溶接性アルミ合金により溶接性を向上させることが可能となり、両機能を兼ね備えた接合パネルとすることができる。
【0011】
また、前記接合パネルの辺縁側が、少なくとも溶接により他の金属部材と接合する側であることを特徴とする。
前記接合パネルの辺縁側には前記板状易溶接性アルミ合金が位置しているため、他の金属部材と接合する際にも、簡単に且つ溶接強度を高くして接合することが可能となる。
【0012】
さらに、前記板状難溶接性アルミ合金と、前記板状易溶接性アルミ合金との摩擦撹拌接合を行う突き合わせ部は同一の肉厚同士の突き合わせ面とし、該突き合わせ部以外の板状易溶接性アルミ合金の部位は前記突き合わせ面より薄肉としたことを特徴とする。
このように、主に高強度を有する板状難溶接性アルミ合金を薄肉化することにより、異種アルミ合金接合パネル全体の強度を維持したまま軽量化することが可能となる。
【0013】
また、異種の板状アルミ合金同士を接合してなる平面若しくは曲面状の異種アルミ合金接合パネルによって構築されたLNGタンクを含む圧力容器であって、
前記圧力容器は、板状難溶接性アルミ合金と、板状易溶接性アルミ合金とを摩擦撹拌接合にて接合してなる異種アルミ合金接合パネル同士の組み合わせで構成されてなり、前記夫々の接合パネルは、その隣接する辺縁側に板状易溶接性アルミ合金が位置し、両パネル同士が溶接により接合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、異種アルミ合金接合パネルによって構築された圧力容器であるため、軽量化、大型化が可能となる。即ち、主に高強度を示す板状難溶接性アルミ合金により強度が高くなり、板状易溶接性アルミ合金により溶接性を向上させるとともに、異種の板状アルミ合金同士は摩擦撹拌接合により接合しているため接合強度も高くなる。従って、圧力容器の強度を高くすることができるため大型化が可能であるとともに、材料の薄肉化が図れるため軽量化することが可能となる。また、屋外での現場溶接施工を行なう際にも、予め接合パネルを製造しておき、これらを現場に搬送して溶接することで、高強度の大型構造物を簡単に施工することが可能である。
【0015】
さらに、前記異種アルミ合金接合パネルが曲面を有するように形成され、該異種アルミ合金接合パネル間を溶接することにより球体状に組み立てられたことを特徴とする。
上記した異種アルミ合金接合パネルにより球体状の圧力容器を構築しているため、高い座屈強度が得られ、大型で軽量の球体圧力容器を製造することが可能となる。
【0016】
さらにまた、複数の異種アルミ合金接合パネルが接合されて構築され、上側半球部と下側半球部とその間に位置する中央円環部から構成される請求項4記載の球体状のLNGタンクであって、
前記下側半球部、及び前記上側半球部夫々が異種アルミ合金接合パネル同士を溶接して形成されたことを特徴とする。
これにより、LNGタンクの強度を保持しながら大型化、軽量化が図れ、大容量の液化天然ガスを運べることとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、異種アルミ合金接合パネルは、溶接性の異なるアルミ合金を摩擦撹拌接合により接合して一体化した構成となっており、且つ接合パネルの辺縁側に前記板状易溶接性アルミ合金が位置しているため、接合パネル同士を簡単に溶接して組み立てることが可能となる。また、板状難溶接性アルミ合金と板状易溶接性アルミ合金を摩擦撹拌接合により接合しているため、接合強度を高くすることができ、延いては異種アルミ合金接合パネルにより構築した大型構造物の強度を安定的に維持することが可能となる。
板状難溶接性アルミ合金は高強度を示すことが多く、このため本発明の異種アルミ合金接合パネルは、板状難溶接性アルミ合金により材料強度を高くし、また板状易溶接性アルミ合金により溶接性を向上させることが可能となり、両機能を備えた接合パネルとすることができる。
【0018】
また、異種アルミ合金接合パネルの辺縁側には前記板状易溶接性アルミ合金が位置しているため、他の金属部材と接合する際にも、簡単に且つ溶接強度を高くして接合することが可能となる。
さらに、板状難溶接性アルミ合金と、板状易溶接性アルミ合金との摩擦撹拌接合を行う突き合わせ部は同一の肉厚同士の突き合わせ面とし、該突き合わせ部以外の板状易溶接性アルミ合金の部位は前記突き合わせ面より薄肉とすることにより、主に高強度を有する板状難溶接性アルミ合金を薄肉化することにより、異種アルミ合金接合パネル全体の強度を維持したまま軽量化することが可能となる。
【0019】
また、異種アルミ合金接合パネルによって圧力容器を構築することにより、圧力容器の強度を高くすることができるため大型化が可能であるとともに、材料の薄肉化が図れるため軽量化することが可能となる。また、屋外での現場溶接施工を行なう際にも、予め接合パネルを製造しておき、これらを現場に搬送して溶接することで、高強度の大型構造物を簡単に施工することが可能である。
さらに、異種アルミ合金接合パネルにより球体状の圧力容器を構築することにより、高い座屈強度が得られ、大型で軽量の球体圧力容器を製造することが可能となる。
さらにまた、LNGタンクの下側半球部及び前上側半球部夫々を異種アルミ合金接合パネル同士を溶接して形成することにより、LNGタンクの強度を保持しながら大型化、軽量化が図れ、大容量の液化天然ガスを運べることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0021】
本実施形態に係る異種アルミ合金接合パネルは、大型構造物を構築する際に好適に用いられる。大型構造物としては、例えばLNGタンク、各種プラントに設置された貯蔵タンク又は処理塔、或いは船体、各種車両の車体等が挙げられるが、特にLNGタンクを含む圧力容器の構築に好適に用いられる。
図1に、異種アルミ合金接合パネル1の基本構成を示す。異種アルミ合金接合パネル1は、異種アルミ合金同士を接合して一体化して形成した平面若しくは曲面状パネルである。該異種アルミ合金接合パネル1は、主に高強度を有する金属製の板状難溶接性アルミ合金12が中央に配置され、該難溶接性アルミ合金12の辺縁のうち少なくとも溶接により他の金属部材と接合する側に、異種アルミ合金からなる板状易溶接性アルミ合金11が配置されている。そして、難溶接性アルミ合金12と易溶接性アルミ合金11の突き合わせ部が摩擦撹拌接合により接合されている。摩擦撹拌接合は、被接合材の材質より硬質でかつ、溶融温度の高い材質のツールを被接合材の接合部に挿入し、このツールを回転させながら移動することにより、被接合材との間に発生する摩擦熱で被接合材を軟化させ接合する周知の方法である。
【0022】
前記板状難溶接性アルミ合金12は、主に材料強度が高く、且つ溶接が困難或いは溶接により強度が保持し難い材料をいう。例えば、2000系、7000系のアルミニウム合金が挙げられる。
前記易溶接性アルミ合金11は、溶接が容易或いは溶接により強度が保持できる材料をいう。一般的に材料強度は難溶接性アルミ合金12より低い。例えば、5000系のアルミニウム合金が挙げられ、具体的には5083材が好適に用いられる。
【0023】
図1には一例として、4枚の板状難溶接性アルミ合金12とその外周に配置される板状易溶接性アルミ合金11とから構成される異種アルミ合金接合パネル1を示している。難溶接性アルミ合金12同士の接合は、摩擦撹拌接合21が好ましいが、溶接を用いても良い。これは、異種アルミ合金接合パネル1は小型で取り扱いが容易であるため、工場内等の溶接設備が充実した場所にて、十分な強度を保持可能な溶接方法を適用することができるため、この部位の接合は難溶接性アルミ合金であっても溶接可能である。
一方、周囲に配置される易溶接性アルミ合金11と、難溶接性アルミ合金12との接合は、摩擦撹拌接合22とする。これは、少なくとも一方が難溶接性アルミ合金である異材間接合の場合、接合強度を低下させないためには摩擦撹拌接合を用いる必要があるためである。
図2に、異種アルミ合金接合パネル1の側断面図を示す。同図に示されるように、難溶接性アルミ合金12は易溶接性アルミ合金11より肉厚を薄くすることが好ましい。このとき、難溶接性アルミ合金12と易溶接性アルミ合金11の突き合わせ面は同一の肉厚とし、難溶接性アルミ合金12の突合せ部以外の部位を薄肉化する。
【0024】
このように本実施形態によれば、異種アルミ合金接合パネル1は、溶接性の異なるアルミ合金を摩擦撹拌接合により接合して一体化した構成となっており、且つ接合パネル1の辺縁側に板状易溶接性アルミ合金11が位置しているため、接合パネル同士を簡単に溶接して組み立てることが可能となる。また、板状難溶接性アルミ合金12と板状易溶接性アルミ合金11を摩擦撹拌接合により接合しているため、接合強度を高くすることができ、延いては異種アルミ合金接合パネル1により構築した大型構造物の強度を安定的に維持することが可能となる。
また、板状難溶接性アルミ合金12は高強度を示すことが多く、このため本実施形態の異種アルミ合金接合パネル1は、板状難溶接性アルミ合金12により材料強度を高くし、また板状易溶接性アルミ合金11により溶接性を向上させることが可能となり、両機能を備えた接合パネルとすることができる。
【0025】
さらに、異種アルミ合金接合パネル1の辺縁側には板状易溶接性アルミ合金11が位置しているため、他の金属部材と接合する際にも、簡単に且つ溶接強度を高くして接合することが可能となる。
さらにまた、板状難溶接性アルミ合金12と、板状易溶接性アルミ合金11との摩擦撹拌接合22を行う突き合わせ部は同一の肉厚同士の突き合わせ面とし、該突き合わせ部以外の板状易溶接性アルミ合金の部位は前記突き合わせ面より薄肉とすることにより、主に高強度を有する板状難溶接性アルミ合金12を薄肉化することにより、異種アルミ合金接合パネル1全体の強度を維持したまま軽量化することが可能となる。
【実施例】
【0026】
本実施例として、異種アルミ合金接合パネル1を球形の圧力容器とし、液化天然ガス(LNG)を貯留するLNGタンクに適用した例につき説明する。図5に、LNGタンクを搭載したLNG船を示す。LNG船50は、例えば4個のアルミニウム製の球形LNGタンク100を搭載した船舶であり、これらのLNGタンク100は、夫々その内部に、低温にて液化された天然ガスを貯蔵することができるように構成されたものである。
船体は、主としてステンレス鋼材で形成される。LNGタンク100は、スカート105を介して船体に固定される。
【0027】
図4に、LNGタンク100の概略断面図を示す。LNGタンク100は、アルミニウム合金で形成され、液化天然ガスが収容される内槽110と、防熱材で形成される外槽111と、外槽111の上部表面を被覆するタンクカバー112と、LNGタンク100を船体に支持するスカート105と、スカート105の下部に設けられ重量調節機能を有するバラスト113とを備える。尚、以下の図3で説明するLNGタンク100は、アルミニウム合金で形成される内槽110を指す。
【0028】
図3に、上記したLNGタンク100を、異種アルミ合金接合パネル1により形成した構成を示す。異種アルミ合金接合パネル1の構成は図1及び図2に示した通りである。
LNGタンク100は、上側半球部(北半球)101と、下側半球部(南半球)102と、該上側半球部101と下側半球部102の間に位置する中央円環部(赤道部)103とから構成される。
異種アルミ合金接合パネル1は、下側半球部102、或いは上側半球部101と下側半球部102の両方に配置される。LNGタンク100に用いられる異種アルミ合金接合パネル1は、タンクの球面に沿った曲面状に形成されている。そして、この曲面状の異種アルミ合金接合パネル1の周囲に位置する易溶接性アルミ合金11同士をMIG溶接等の溶接23により接合し、LNGタンク100を球体状に組み立てる。
【0029】
また、LNGタンク100に用いられる異種アルミ合金接合パネル1において、難溶接性アルミ合金12のうち、易溶接性アルミ合金11との突き合わせ部は該易溶接性アルミ合金11と同一の肉厚同士の突き合わせ面とし、突き合わせ部以外の部位は易溶接性アルミ合金11より薄肉に形成する。このとき、薄肉にした難溶接性アルミ合金12の肉厚は、両板材の材料強度が同等以上となる肉厚に設定される。これにより、LNGタンク100の強度を保持しながら軽量化が図れ、延いてはタンクをより大型化でき大容量の液化天然ガスを運べることとなる。
【0030】
本実施例によれば、異種アルミ合金接合パネル1によってLNGタンク100等の圧力容器を構築することにより、圧力容器の強度を高くすることができるため大型化が可能であるとともに、材料の薄肉化が図れるため軽量化することが可能となる。また、屋外での現場溶接施工を行なう際にも、予め接合パネルを製造しておき、これらを現場に搬送して溶接することで、高強度の大型構造物を簡単に施工することが可能である。
さらに、異種アルミ合金接合パネル1により球体状の圧力容器を構築することにより、高い座屈強度が得られ、大型で軽量の球体圧力容器を製造することが可能となる。
さらにまた、LNGタンク100の下側半球部及び前上側半球部夫々を異種アルミ合金接合パネル同士を溶接して形成することにより、LNGタンク100の強度を保持しながら大型化、軽量化が図れ、大容量の液化天然ガスを運べることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、高強度で軽量な大型構造物を簡単に溶接組立することができるため、各種プラントに設置された貯蔵タンク又は処理塔、或いは船体、各種車両の車体等に代表される大型構造物全般に適用可能であり、特にLNG船に搭載されるLNGタンクを含む圧力容器に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に実施形態に係る異種アルミ合金接合パネルの基本構成図である。
【図2】図1の異種アルミ合金接合パネルの側断面図である。
【図3】本実施例に係る異種アルミ合金接合パネルを用いたLNGタンクの概略図である。
【図4】LNGタンクの概略断面図である。
【図5】LNGタンクを搭載したLNG船の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 異種アルミ合金接合パネル
11 板状易溶接性アルミ合金
12 板状難溶接性アルミ合金
21 摩擦撹拌接合又は溶接
22 摩擦撹拌接合
23 溶接
50 LNG船
100 LNGタンク
101 上側半球部
102 下側半球部
103 中央環状部
105 スカート
110 内槽
111 外槽
112 タンクカバー
113 バラスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種の板状アルミ合金同士を接合してなる平面若しくは曲面状の異種アルミ合金接合パネルにおいて、
板状難溶接性アルミ合金と、板状易溶接性アルミ合金とを摩擦撹拌接合にて接合して異種アルミ合金接合パネルが形成されてなり、該接合パネルの辺縁側に前記板状易溶接性アルミ合金が位置していることを特徴とする異種アルミ合金接合パネル。
【請求項2】
前記接合パネルの辺縁側が、少なくとも溶接により他の金属部材と接合する側であることを特徴とする請求項1記載の異種アルミ合金接合パネル。
【請求項3】
前記板状難溶接性アルミ合金と、前記板状易溶接性アルミ合金との摩擦撹拌接合を行う突き合わせ部は同一の肉厚同士の突き合わせ面とし、該突き合わせ部以外の板状易溶接性アルミ合金の部位は前記突き合わせ面より薄肉としたことを特徴とする請求項1記載の異種アルミ合金接合パネル。
【請求項4】
異種の板状アルミ合金同士を接合してなる平面若しくは曲面状の異種アルミ合金接合パネルによって構築されたLNGタンクを含む圧力容器であって、
前記圧力容器は、板状難溶接性アルミ合金と、板状易溶接性アルミ合金とを摩擦撹拌接合にて接合してなる異種アルミ合金接合パネル同士の組み合わせで構成されてなり、前記夫々の接合パネルは、その隣接する辺縁側に板状易溶接性アルミ合金が位置し、両パネル同士が溶接により接合されていることを特徴とする異種アルミ合金接合パネルによって構築された圧力容器。
【請求項5】
前記異種アルミ合金接合パネルが曲面を有するように形成され、該異種アルミ合金接合パネル間を溶接することにより球体状に組み立てられたことを特徴とする請求項4記載の異種アルミ合金接合パネルによって構築された圧力容器。
【請求項6】
複数の異種アルミ合金接合パネルが接合されて構築され、上側半球部と下側半球部とその間に位置する中央円環部から構成される請求項4記載の球体状のLNGタンクであって、
前記下側半球部及び前記上側半球部夫々が異種アルミ合金接合パネル同士を溶接して形成されたことを特徴とする異種アルミ合金接合パネルによって構築されたLNGタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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