異種製品検出装置及び異種製品検出方法
【課題】各種別毎にある程度まとまった量の各製品に含まれる異種製品を簡単にかつ高い精度で検出する。
【解決手段】本発明の異種製品検出装置及び異種製品検出方法を異種薬剤の検出に適用した場合、搬送状態の錠剤7の一方面からパルス状のテラヘルツ光39を入射し、この薬剤を透過したテラヘルツ光24の電気信号25の時間波形32が錠剤7の材質及び形状によって異なることを利用している。そして、この錠剤毎の時間波形32の相違を該当時間波形に設定した複数の特徴量44の統計量(マハラノビス距離)を用いて、該当錠剤が正当種別か異種であるかを判定する。
【解決手段】本発明の異種製品検出装置及び異種製品検出方法を異種薬剤の検出に適用した場合、搬送状態の錠剤7の一方面からパルス状のテラヘルツ光39を入射し、この薬剤を透過したテラヘルツ光24の電気信号25の時間波形32が錠剤7の材質及び形状によって異なることを利用している。そして、この錠剤毎の時間波形32の相違を該当時間波形に設定した複数の特徴量44の統計量(マハラノビス距離)を用いて、該当錠剤が正当種別か異種であるかを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬工場や食品工場等において、正規の製品(薬剤や食品)に異種物(異種薬剤・異種原料・毒物など)が含まれていることを検出する異種製品検出装置及び異種製品検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、製薬工場や食品工場等においては、正規の製品(薬剤や食品)に誤って異種物(異種薬剤・異種原料・毒物など)が含まれる場合を考慮し、異種物を検出する作業が行われている。以下、本明細書中では、製品の例に薬剤を用い、異種物の例に異種薬剤を用いて説明するが、製品及び異種物はこの例に限定されない。
【0003】
さて、製薬工場等においては多種多様の薬剤が製造されている。これらの薬剤は、形状、色、重量が近似している場合があり、包装機で多品種の薬剤をPTP(press through packing)で包装する際に多数の正規品種の薬剤の中にごく少数の異種薬剤が混入する危険性がある。この場合、例えば10〜20個の同一種別の薬剤が包装された1個のPTP容器(シート)に異種薬剤が混入することになってしまう。
【0004】
通常、工場の最終段階の包装梱包工程において、検査員による目視検査を行い、薬剤の色や形状から薬剤の違いを選別して他の種類の薬剤・薬物成分・薬物以外の物質の混入を防止している。
【0005】
また最近は、PTPシート上の錠剤の画像をCCDカメラで読取って、各錠剤の面積、直径、色を求め、基準の錠剤の面積、直径、色と比較し、異種錠剤かどうかを判別する手法が採用されている。
【0006】
また、PTPシート上の錠剤にハロゲンランプ等、近赤外(1〜2nm)に発光スペクトルを持つ光源の光を照射する。コリメートされた近赤外分光器の視点をガルバノミラーなどで複数の錠剤をスキャンすることにより、各錠剤からの反射光の近赤外スペクトルを測定する。このスペクトルと予め測定しておいた基準錠剤の近赤外スペクトルと比較することにより異種錠剤を検知する手法が採用されている。
【0007】
さらに、波長が30ギガヘルツから5テラヘルツの電波と光の中間の性質を有する「テラヘルツ光」を被測定物に照射して、この被測定物を透過した「テラヘルツ光」のスペクトル波形が被測定物の材質により変化する特性を利用して、この被測定物を透過したテラヘルツ光の波形をスペクトラム分析することにより、被測定物被測定物の内部に含まれる異物を検出する手法が提唱されている(特許文献1)。
【0008】
さらに、特許文献2の「標本検査装置及び標本検査方法」には、上述したテラヘルツ光をPTPシートの各凹部に挿入された薬剤に照射し、この薬剤を透過したテラヘルツ光のスペクトラムを求めて、このスペクトラムと既知錠剤の基準スペクトラムとを比較して、当該薬剤が正当な薬剤か異種薬剤であるかを判定している。
【特許文献1】特開2005−114413号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/001785号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の目視検査による薬剤の判別の場合には見落としの可能性がある。また、薬剤が外見からでは判別しにくい形状のものである場合にはCCDカメラを用いた画像処理などを行っても100パーセントの安全を確保することができなかった。
【0010】
また、上述した近赤外分析を行う手法においては、薬剤表面のみのスペクトル測定のため、フィルムコート錠、糖衣錠への適用が困難であった。
【0011】
薬剤の種類や種別は膨大な数に上り、また多種類の薬剤を同一製造ラインで生産する場合が多くなってきたため同一製造ラインでほぼ同じ形状に形成され、色も同系統である薬剤が生産される場合が増えている。しかし、テラヘルツ光を用いてスペクトラム分析を行う手法においては、個々の薬剤の透過光とその周辺部の背景光との分離が難しく、その結果、薬剤透過光と周辺部背景光の混合したテラヘルツ光の時間波形からスペクトルを算出することになるが、薬剤透過光と周辺部背景光の干渉により、図11のようにスペクトル波形100にうねり101が生じ、スペクトルの細かい分析ができないという問題があった。
【0012】
さらに、時間波形を読みとっている間に、薬剤が搬送されて動くため、ひとつの波形としてデータが読み取れないという問題があった。とくにスペクトルの波数分解能をあげるためには時間波形の測定時間を長くする必要があり、薬剤搬送による動きの影響が大きくなるという問題点があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送しながら異種の製品を確実に検出できる異種製品検出装置及び異種製品検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解消するために、本発明の第1の態様は、搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射部と、この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出部と、このテラヘルツ光検出部から出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取部と、この時間波形読取部で読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出手段で抽出された各特徴量を記憶する特徴量データテーブルと、前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせ生成手段と、前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成手段で生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量で算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出手段と、S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択手段と、検査対象の製品が入力されたとき当該製品の指定製品の基準空間におけるマハラノビス距離を前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出手段と、この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定手段とを備えた異種製品検出装置である。
【0015】
本発明の第2の態様は、前記製品としては、包装容器の幅方向に形成された凹部に挿入されており、前記テラヘルツ光入射部としては、前記包装容器の幅方向に配列され同時にテラヘルツ光を入射させる複数の入射ヘッドを有し、前記テラヘルツ光検出部としては、搬送方向に配列され同時にテラヘルツ光を受光する検出ヘッドと、前記製品の種類ごとに前記テラヘルツ光検出部の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とを設定する手段と、前記製品がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングで信号を発生するトリガー信号発生手段と、このトリガー信号が発生したタイミングから時間波形を記録する手段とを備えた異種製品検出装置である。
【0016】
なお、本発明の各態様として、「装置」の態様を説明したが、これに限らず、「方法」の態様として実現してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の異種製品検出装置及び異種製品検出方法においては、搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射し、この製品を透過したテラヘルツ光の電気信号の時間波形が製品の材質及び形状によって異なることを利用している。そして、この製品毎の時間波形の相違を該当時間波形に設定した複数の特徴量の統計量(マハラノビス距離)を用いて、該当製品が正当種別の製品か、異種の製品であるかを判定することによって、搬送しながら異種の製品を確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態の異種製品検出方法及び異種製品検出装置が適用された異種薬剤検出装置の概略構成図である。この実施形態においては、異種薬剤検出装置は薬剤製造工場のPTP梱包機1に組込まれている。
【0020】
PTP梱包機1において、シート供給部2から供給される包装用シート(以下、単にシートと表記する)3には、凹部4が定められた間隔で二次元的に形成され、搬送路5を図中矢印方向に搬送される。薬剤供給部6は内部に蓄積された各薬剤(以下、錠剤7という)を、搬送路5に順次繰り出されるシート3の凹部4に1個ずつ収納していく。そして、搬送路5の右端にて、アルミシート8にて、錠剤7が収納された凹部4の上面が覆われて、切断機9で所定長さに切断されて、PTPシート(錠剤シート)10として排出される。
【0021】
このPTP梱包機1に組込まれた異種薬剤検出装置において、フェムト秒レーザ発生器11は、フェムト秒レーザ制御部12の指示に基づいて、50MHz〜100MHzの周期で、パルス幅10fs〜100fsの近赤外光(700nm〜1600nm)13を発振する。このフェムト秒レーザ発生器11から出射された近赤外光13はビームスプリッタ14で2方向に分岐される。分岐された一方の近赤外光13aは、図2に示すように、さらに光増幅・分配器15aで分岐され複数のテラヘルツ光出射ユニット16に入射される。
【0022】
各テラヘルツ光出射ユニット16内には、光伝導アンテナ17が収納されており、この光伝導アンテナ17は、制御装置27の駆動制御回路31からバイアス電圧33が印加され、前述したパルス状の近赤外光13aが印加されるとパルス状のテラヘルツ光を出射する。出射されたテラヘルツ光は集光レンズ18で、搬送路5上を一定速度で搬送されているシート3の凹部4に収納された錠剤7に照射される。
【0023】
この錠剤7を上方から下方へ透過したテラヘルツ光はテラヘルツ光受光ユニット19内の集光レンズ20を介して、テラヘルツ光受光部21に入射する。
【0024】
前述したビームスプリッタ14で分岐された他方の近赤外光13bは、光学遅延ユニット22で遅延された後、図2に示すように、さらに光増幅・分配器15bで分岐され、複数のテラヘルツ光受光ユニット19内のテラヘルツ光受光部21に入射する。
【0025】
各テラヘルツ光受光部21は、図3に示すように、錠剤7を上方から下方へ透過したテラヘルツ光24が入射されている期間において、近赤外光13bが印加されると、この印加されている時間だけ、テラヘルツ光24の強度に対応する電流を有した電気信号25を制御装置27の受信部26へ送出する。
【0026】
前記光学遅延ユニット22は、複数の固定ミラー28と1個の移動ミラー29とミラー駆動部30とで構成されており、制御装置27の駆動制御回路31からの指令に基づきタイミング信号(以下、トリガー信号ともいう)入力の待機状態になり、錠剤7がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングでトリガー信号発生装置31aがトリガ信号を発すると、移動ミラー29の位置を順次移動していき、図3に示すように、近赤外光13bのピーク点をテラヘルツ光24の波形の先頭位置すなわち初期遅延時間からの遅延時間Δtを順次増加して行くことにより、その時の電気信号25をサンプリング加算していくことで、テラヘルツ光24の初期遅延時間から遅延時間変動範囲内の1波形分の時間波形32が得られる。なお、時間波形32は薬剤の種類ごとに異なる。このため、薬剤の種類ごとに、光学遅延ユニット22の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とが遅延時間設定部31bに予め設定されている。
【0027】
制御装置27における駆動制御回路31は、フェムト秒レーザ制御部12から入力されるパルス状の近赤外光13の出力の同期信号34に基づいて、遅延時間設定部31bの設定内容を参照しながら、光学遅延ユニット22において順次増加して行く遅延時間Δtを順次、トリガー信号発生装置31aに設定していく。トリガー信号発生装置31aは、この設定された遅延時間Δtが示すタイミングでトリガー信号を発生する。さらに、駆動制御回路31は、データメモリ36に対して、遅延時間Δtが指定区間での電気信号25のサンプリング開始と終了を指示する。
【0028】
遅延時間Δtが順次増加して指定間隔進むごとに各電気信号25をA/D変換器34でデジタルデータにA/D変換して、データメモリ36に書込む。データメモリ36においては、駆動制御回路31から、サンプリング開始が指令されると、各電気信号25をサンプリング開始し、サンプリング終了が指令されると、サンプリングを終了して、図3に示す錠剤7を透過したテラヘルツ光24の1波形分の電気信号の時間波形32が得られるので、この得られた時間波形32を波形メモリ37へ書込む。
【0029】
この制御装置27の波形メモリ37に書込まれた錠剤7を透過したテラヘルツ光24の1波形分の電気信号に変換された時間波形32は、コンピュータからなるデータ処理装置38へ送出される。
【0030】
図5は、テラヘルツ光ビームの断面図であり、テラヘルツ光ビームのビームスポット中心cspが図4(b)の24の位置(錠剤7の中心c7)にある時の状態を示すものである。ビームスポット径dspは、錠剤7の直径d7より大きいため、背景光と錠剤透過光がテラヘルツ光受光部21に到達し検出される。
【0031】
図6は、搬送時に錠剤7がテラヘルツ光ビーム中を移動する様子を示す模式図である。 製造ラインにおいては、テラヘルツ光受光部21で検出されるテラヘルツ光40,24の時間波形32a,32を測定する間に錠剤7が移動するため、図6に示すように錠剤7はテラヘルツ光ビーム中を搬送方向に移動する。
【0032】
図4(c)は、図4(a)に示す厚みHを有する円盤状の錠剤7が、図4(b)に示すように、シート3の凹部4に挿入された状態で、テラヘルツ光出射ユニット16からパルス状のテラヘルツ光39を錠剤7に照射した場合における、この錠剤7を透過したテラヘルツ光24の電気信号に変換された時間波形32を示す図である。
【0033】
この図においては、テラヘルツ光39のビームスポット径が錠剤7より大きい場合、搬送状態において、図4(b)の点線で示す錠剤7を透過しない周辺部の背景光に起因する時間波形32aが時間波形32の前に検出される。錠剤透過光による時間波形32と背景光の時間波形32aとの間の時間差THは、錠剤7の厚みHに比例している。
【0034】
図7は、図4(c)に示す二つの時間波形32、32aのうち、錠剤7を透過したテラヘルツ光24の時間波形32を示す図である。横軸は背景光に起因する時間波形32aのピーク点を時刻tの基準位置(t=0)とした、A/D変換器35におけるサンプリングにおけるサンプル数で示した時刻tであり、縦軸は、電界強度Eである。
【0035】
図8は、コンピュータからなるデータ処理装置38が行う異種薬剤検出機能を示す機能ブロック図である。
【0036】
制御装置27の波形メモリ37から入力された各時間波形32は、移動平均部41でもって移動平均化された後、特徴量抽出部42へ送られる。図7に示す時間波形32の時刻tにおける平均化した値Etは、平均化する前の時刻tにおける値Etを用いて、次のようになる。但し、Lは1回の平均化に用いるデータ数である。
【0037】
Et=(Et-L/2+Et-L/2+1+…+Et+…+Et+L/2)/(L+1)
このように、測定された時間波形32を移動平均化することにより、この時間波形32に含まれるノイズ成分が除去される。ノイズ成分が除去された時間波形32は特徴量抽出部42へ送られる。
【0038】
この実施形態装置においては、個々の錠剤7に対する異種薬剤の判定を実施する前の判定に使用する基準データを作成するために、11種別の錠剤7の各基準錠剤の時間波形32が1種別それぞれ200個分、合計2200個が、図1の制御装置27によって読取られて時間平均化されて特徴量抽出部42へ送られる。基準錠剤7は、欠陥の無い正常な錠剤を示す。特徴量抽出部42は、入力された錠剤7の各基準錠剤の時間波形32の特徴量44を抽出して図9に示す特徴量データテーブル43に書き込む。
【0039】
具体的には、図7に示す時間波形32における個々の時間波形32から得られる下記に示す合計14個の特徴量44(以下、特徴量xjiともいう。但し、j:波形番号。i:特徴量番号。)が特徴量定義メモリ45に記憶されている。なお、以下に述べる特徴量番号i=1〜14の特徴量xji(=xj1,xj2,…,xj13,xj14)は一例であり、時間波形32から抽出可能で薬剤の種類に応じて異なる値の特徴量であれば、任意の特徴量xijを用いるように変形してもよい。
【0040】
(a) 0クロス点
時間波形32の強度Eがゼロになる時刻tを0クロス点と定義し、その値t0を求める。データは離散的であるため、正確にはデータEtの符号が替わる区間を直線近似したときE=0と交わる点を0クロス点とする。本アルゴリズムでは、マイナスピークの直前の0クロス点を第1の0クロス点(t01)、第1の0クロス点の次に出現する2番目の0クロス点を2番目の0クロス点(t02)、第2の0クロス点の次に出現する3番目の0クロス点を3番目の0クロス点(t03)と定義して、各0クロス点t01,t02,t03をそれぞれ特徴量xj1, xj2, xj3とする。
【0041】
(b) ピーク点(波形ピーク点)
時間波形には図7の32aの部分に相当する錠剤周辺部通過光と図7の32の部分に相当する錠剤透過光が見られる。ここで32aの部分とは、錠剤7がない状態でテラヘルツ光を受光した時に観測される波形と同じ時刻に観測される波形のことをいい、32の部分とは、32aの波形ピーク以降に出現する大きなピークを持つ波形のことをいう。
【0042】
初めに、32aの部分の時間波形が最大となる時刻t=trを求め、この時刻trを基準ピークとする。
【0043】
次に隣り合う2つの0クロス点間において、時間波形32の傾きがゼロになる時刻tppをピーク点と定義し、ピーク点tppを求める。本アルゴリズムは、1番目、2番目のピーク点tpp1、tpp2を特徴量xj4, xj5とする。さらに各ピーク点を基準ピーク相対値tpp1-r(=tpp1−tr),tpp2-r(=tpp2−tr)に変換した特徴量を計算する。さらに2番目以降のピーク点を1番目のピーク点相対値tpp2-pp1(=tpp2−tpp1)に変換した特徴量を計算する。
【0044】
1番目のピーク点を基準ピーク相対値tpp1-rに変換した特徴量は、錠剤7の厚みHに関連する特徴量となる。2番目以降のピーク点を1番目のピーク点相対値tpp2-pp1に変換した特徴量は、錠剤厚みHの変動の影響を受けにくい特徴量となる。
【0045】
(c) ピークの高さ(波形ピークの高さ)
前述した各ピーク点での時間波形32の値Etppをピークの高さと定義し、その値Eを求める。ピークの高さは、時間波形32の値Eの絶対値ではなく、正側、負側においてそれぞれ個別に求める。今回は、1番目、2番目のピークの高さEtpp1,Etpp2を特徴量xj6, xj7とする。
【0046】
(d) 波形幅
隣り合う2つの0クロス点t0に挟まれた領域の同じ値Eb(=θ・Etpp)を有する2点tb1,tb2間の幅を波形幅tw(=tb2−tb1)と定め、その値を求める。本実施形態では、以下の値Eb1,…,Eb7における波形幅tw1,…,tw7を特徴量xj8,xj9,…,xj13,xj14とする。
【0047】
Eb1(θ1,Etpp2)=0.2Etpp2
Eb2(θ2,Etpp2)=0.4Etpp2
:
Eb6(θ6,Etpp2)=0.8Etpp2
Eb7(θ7,Etpp2)=0.9Etpp2
すなわち、本実施形態では、ピークの高さEtppのθ倍{θ1、θ2、...、θs|0.0≦θ1<θ2<、...、<θs≦1.0}の値Ebにおける波形幅tw1,tw2,…,tw6,tw7を特徴量xj8,xj9,…,xj13,xj14とする。また、この例では、倍数θの値を、θ1=0.2、θ2=0.4、θ3=0.5、θ4=0.6、θ5=0.7、θ6=0.8、θ7=0.9とした。
【0048】
特徴量抽出部42は、移動平均部41より送られてきた11種目の各基準錠剤における合計2200個の時間波形32における14個の特徴量44を抽出して、特徴量データテーブル43の各種別に書込む。この特徴量データテーブル43には、図9に示すように、11種別(種別番号p)毎に、200個の各時間波形32(波形番号j=1〜200)に対して、前述した合計14個の特徴量(特徴量番号i=1〜14)の各特徴量xjiの書込領域が形成されている。
【0049】
特徴量組合せテーブル46内には、図10に示すように、上述した14個の特徴量44における選択・非選択を0/1で表した組合せに組合せ番号gが付されて記憶されている。この組合せ数は214―1=16383通りあり、全組合せを列挙する。したがって、組合せ番号g=1〜16383となる。なお、特徴量組み合わせテーブル46は、上述した14個の特徴量の全組み合わせに限らず、例えば図示しない特徴量組み合わせテーブル生成部により、任意のm個の特徴量から当該m個の特徴量の全組み合わせ(2m−1通りの組み合わせ)を列挙するように生成可能となっている。
【0050】
組合せ特徴量抽出部47は、特徴量データテーブル43内の特徴量組合せテーブル46内に設定された各組合せ番号gの指定する特徴量の組合せで選択された特徴量を抽出し、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48へ出力する。
【0051】
この結果、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48へは、n(=200)個の各波形32(j=1〜n)に対してk個の特徴量44が送られたとする。そして、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48は、次に示す手順で、入力した特徴量データに対するマハラノビス距離算出用基準データを次の手順で算出する。
【0052】
入力した各特徴量xji(j=1〜n、i=1〜k)に対して、下式の基準化処理を実施して、得られた基準化処理後の各特徴量Xjiを改めて特徴量Xjiとする。すなわち、i番目のn個の特徴量x1i〜xniの平均をmiとし、標準偏差をσiとすると、
特徴量Xji=(xji―mi)/σi
となる。
【0053】
次に、特徴量Xjiの相関行列Rを求める。i番目の特徴量とq番目の特徴量との相関計係数riqは下式で与えられる。
【0054】
相関計係数riq=1/k(Xi1Xq1+Xi2Xq2+…+XinXqn)
i=1〜k、q=1〜k
これにより、相関行列Rは下記にて示される。
【数1】
【0055】
次に、この相関行列Rの逆行列Aを求める。相関行列Rの逆行列Aは、要素をajiとすると下式で示される。
【数2】
【0056】
となる。
【0057】
この逆行列Aとmi、σiが(i=1〜k)が組み合わせgのマハラノビス距離算出用基準データであり、マハラノビス距離算出用基準データテーブル49に記録する。
【0058】
基準マハラノビス距離算出部50では基準薬剤の特徴量データを特徴量データテーブル43より取り込み、マハラノビス距離算出用基準データテーブル49から該当する特徴量組み合わせのマハラノビス距離算出用基準データを読み出し、基準化した特徴量Xjiを計算し、逆行列Aを用いて、組合せ番号gの特徴量の組合せに対する一つの種別の基準錠剤7のマハラノビス距離を求める。j番目の時間波形32のマハラノビス距離Djの一般式は以下で与えられる。
【数3】
【0059】
但し、u、v=1〜k、j=1〜n
このようにして計算したマハラノビス距離データはマハラノビス距離データテーブル51に記録される。
【0060】
最適特徴量選択部52では、マハラノビス距離データをマハラノビス距離データテーブル51より読み出しj=1〜nの各時間波形32のマハラノビス距離D1〜Dnを求めて、この組合せ(組合せ番号g)における下式で示すS/N比ηを算出する。
【0061】
η=―10log1/n(1/D12+1/D22+…+1/Dn2)
…(2)
以上で、組合せ番号gの2つの特徴量44の組合せに対する一つの種別の基準錠剤7のS/N比ηの算出処理が終了する。
【0062】
このようにして、合計16383個の組合せに対して、(1)式のマハラノビス距離Dj、(2)式のS/N比ηを算出する。最適特徴量選択部52では、16383通りの組に対するS/N比データから最大値をとる特徴量の組を検索する。その結果を最適特徴量組み合わせテーブル53に書き込み、さらに、この最適組合せに対する特徴量の平均値、標準偏差、逆行列の計算用データをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に書込む。
【0063】
以上の処理を基準薬剤を錠剤7の11種別に亘って、実施される。以上の処理で設定が完了する。
【0064】
検査時には基準錠剤の種別を検査前に指定する。検査用マハラノビス距離算出部55が、検査対象の錠剤7の基準錠剤の種別におけるマハラノビス距離の算出を行う。すなわち、検査対象の錠剤7の時間波形32が入力されると、この時間波形32は移動平均部41で時間平均化処理が実施されたのち、特徴量抽出部42に送られる。
【0065】
特徴量抽出部42ではこの時間波形32に対する14個の特徴量44を計算する。この結果を組み合わせ抽出部47に出力する。組み合わせ抽出部47では入力した14種類の特徴量44のうち、最適特徴量組み合わせテーブル53で選択されている特徴量44のみ検査用マハラノビス距離算出部55に出力する。この検査用マハラノビス距離算出部55では入力した特徴量の基準化した特徴量Xiをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶されている基準錠剤の平均値、標準偏差を用いて算出する。
【0066】
そして、この1つ時間波形32のマハラノビス距離Dを、マハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶されている基準錠剤の逆各行列(逆行列A)を(1)式に代入し、j=1としたときのマハラノビス距離D1をマハラノビス距離Dとする。検査用マハラノビス距離算出部55は、算出したマハラノビス距離Dを異種判定部56へ送出する。
【0067】
異種判定部56は、異種判定しきい値メモリ57に記憶されている異種判定しきい値と算出されたマハラノビス距離Dとを比較する。そして、
マハラノビス距離D<異種判定しきい値
マハラノビス距離D>=異種判定しきい値
の場合は、当該錠剤7の種別は、指定した種別でなく、異なる種別であると判定する。判定結果は表示器部8に表示出力される。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0069】
例えば、複数種別の基準錠剤の平均値、標準偏差、逆各行列(逆行列A)等のマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶保持しておく必要はなく。新たに新種別の錠剤の評価を開始する直前に該当種別の基準錠剤7に対するマハラノビス距離算出用最適基準データの算出とマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に対する登録を実施してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、製薬工場における異種薬剤検出について説明したが、食品工場等において、正規の食品に異種物(異種原料、毒物など)が混入する場合があり、このような異種物を検出することも可能である。すなわち、本実施形態では、製品の例に薬剤を用い、異種物の例に異種薬剤を用いたが、製品及び異種物はこの例に限定されず、製品を透過したテラヘルツ光の電気特性の時間波形が製品及び異種物の間で異なるものであれば、食品等の任意の製品や、異種原料、毒物などの任意の異種物に拡張ないし一般化できる。また、任意の製品への拡張ないし一般化に伴い、薬剤の場合のPTP包装容器は、製品に応じた任意の包装容器に拡張ないし一般化できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係わる異種薬剤検出装置の概略構成図。
【図2】同実施形態の異種薬剤検出装置の要部を取出して示す部分拡大図。
【図3】同異種薬剤検出装置のテラヘルツ光における時間波形の作成手順を示す図。
【図4】時間波形と錠剤の形状との関係を示す図。
【図5】テラヘルツ光ビーム断面を示す模式図。
【図6】搬送時に錠剤がテラヘルツ光ビーム中を移動する様子を示す模式図。
【図7】時間波形に定義された各特徴量を示す図。
【図8】同異種薬剤検出装置のデータ処理装置の機能を示す機能ブロック図。
【図9】同データ処理装置内に形成された特徴量データテーブルの記憶内容を示す図。
【図10】同データ処理装置内に形成された特徴量組み合わせテーブルの記憶内容を示す図。
【図11】従来のスペクトル波形及びうねりを示す模式図。
【符号の説明】
【0072】
1…PTP梱包機、2…シート供給部、3…包装用シート、4…凹部、5…搬送路、7…錠剤、10…PFPシート、11…フェムト秒レーザ発振器、12…フェムト秒レーザ制御部、13,13a、13b…近赤外光、14…ビームスプリッタ、15a、15b…光増幅・分配器、16…テラヘルツ光出射ユニット、17…光伝導アンテナ、19…テラヘルツ光受光ユニット、21…テラヘルツ光受光部、22…光学遅延ユニット、26…受信部、27…制御装置、31…駆動制御回路、32…時間波形、38…データ処理装置、41…移動平均部、42…特徴量抽出部、43…特徴量データテーブル、44…特徴量、45…特徴量定義メモリ、46…特徴量組合わせテーブル、47…組み合わせ特徴量抽出部、48…マハラノビス距離算出用基準データ作成部、49…マハラノビス距離算出用基準データテーブル、50…基準マハラノビス距離算出部、51…マハラノビス距離データテーブル、52…最適特徴量選択部、53…最適特徴量組み合わせテーブル、54…マハラノビス距離算出用最適基準データテーブル、55…検査用マハラノビス距離算出部、56…異種判定部、57…異種判定しきい値メモリ、58…表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬工場や食品工場等において、正規の製品(薬剤や食品)に異種物(異種薬剤・異種原料・毒物など)が含まれていることを検出する異種製品検出装置及び異種製品検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、製薬工場や食品工場等においては、正規の製品(薬剤や食品)に誤って異種物(異種薬剤・異種原料・毒物など)が含まれる場合を考慮し、異種物を検出する作業が行われている。以下、本明細書中では、製品の例に薬剤を用い、異種物の例に異種薬剤を用いて説明するが、製品及び異種物はこの例に限定されない。
【0003】
さて、製薬工場等においては多種多様の薬剤が製造されている。これらの薬剤は、形状、色、重量が近似している場合があり、包装機で多品種の薬剤をPTP(press through packing)で包装する際に多数の正規品種の薬剤の中にごく少数の異種薬剤が混入する危険性がある。この場合、例えば10〜20個の同一種別の薬剤が包装された1個のPTP容器(シート)に異種薬剤が混入することになってしまう。
【0004】
通常、工場の最終段階の包装梱包工程において、検査員による目視検査を行い、薬剤の色や形状から薬剤の違いを選別して他の種類の薬剤・薬物成分・薬物以外の物質の混入を防止している。
【0005】
また最近は、PTPシート上の錠剤の画像をCCDカメラで読取って、各錠剤の面積、直径、色を求め、基準の錠剤の面積、直径、色と比較し、異種錠剤かどうかを判別する手法が採用されている。
【0006】
また、PTPシート上の錠剤にハロゲンランプ等、近赤外(1〜2nm)に発光スペクトルを持つ光源の光を照射する。コリメートされた近赤外分光器の視点をガルバノミラーなどで複数の錠剤をスキャンすることにより、各錠剤からの反射光の近赤外スペクトルを測定する。このスペクトルと予め測定しておいた基準錠剤の近赤外スペクトルと比較することにより異種錠剤を検知する手法が採用されている。
【0007】
さらに、波長が30ギガヘルツから5テラヘルツの電波と光の中間の性質を有する「テラヘルツ光」を被測定物に照射して、この被測定物を透過した「テラヘルツ光」のスペクトル波形が被測定物の材質により変化する特性を利用して、この被測定物を透過したテラヘルツ光の波形をスペクトラム分析することにより、被測定物被測定物の内部に含まれる異物を検出する手法が提唱されている(特許文献1)。
【0008】
さらに、特許文献2の「標本検査装置及び標本検査方法」には、上述したテラヘルツ光をPTPシートの各凹部に挿入された薬剤に照射し、この薬剤を透過したテラヘルツ光のスペクトラムを求めて、このスペクトラムと既知錠剤の基準スペクトラムとを比較して、当該薬剤が正当な薬剤か異種薬剤であるかを判定している。
【特許文献1】特開2005−114413号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/001785号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の目視検査による薬剤の判別の場合には見落としの可能性がある。また、薬剤が外見からでは判別しにくい形状のものである場合にはCCDカメラを用いた画像処理などを行っても100パーセントの安全を確保することができなかった。
【0010】
また、上述した近赤外分析を行う手法においては、薬剤表面のみのスペクトル測定のため、フィルムコート錠、糖衣錠への適用が困難であった。
【0011】
薬剤の種類や種別は膨大な数に上り、また多種類の薬剤を同一製造ラインで生産する場合が多くなってきたため同一製造ラインでほぼ同じ形状に形成され、色も同系統である薬剤が生産される場合が増えている。しかし、テラヘルツ光を用いてスペクトラム分析を行う手法においては、個々の薬剤の透過光とその周辺部の背景光との分離が難しく、その結果、薬剤透過光と周辺部背景光の混合したテラヘルツ光の時間波形からスペクトルを算出することになるが、薬剤透過光と周辺部背景光の干渉により、図11のようにスペクトル波形100にうねり101が生じ、スペクトルの細かい分析ができないという問題があった。
【0012】
さらに、時間波形を読みとっている間に、薬剤が搬送されて動くため、ひとつの波形としてデータが読み取れないという問題があった。とくにスペクトルの波数分解能をあげるためには時間波形の測定時間を長くする必要があり、薬剤搬送による動きの影響が大きくなるという問題点があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送しながら異種の製品を確実に検出できる異種製品検出装置及び異種製品検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解消するために、本発明の第1の態様は、搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射部と、この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出部と、このテラヘルツ光検出部から出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取部と、この時間波形読取部で読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出手段で抽出された各特徴量を記憶する特徴量データテーブルと、前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせ生成手段と、前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成手段で生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量で算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出手段と、S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択手段と、検査対象の製品が入力されたとき当該製品の指定製品の基準空間におけるマハラノビス距離を前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出手段と、この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定手段とを備えた異種製品検出装置である。
【0015】
本発明の第2の態様は、前記製品としては、包装容器の幅方向に形成された凹部に挿入されており、前記テラヘルツ光入射部としては、前記包装容器の幅方向に配列され同時にテラヘルツ光を入射させる複数の入射ヘッドを有し、前記テラヘルツ光検出部としては、搬送方向に配列され同時にテラヘルツ光を受光する検出ヘッドと、前記製品の種類ごとに前記テラヘルツ光検出部の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とを設定する手段と、前記製品がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングで信号を発生するトリガー信号発生手段と、このトリガー信号が発生したタイミングから時間波形を記録する手段とを備えた異種製品検出装置である。
【0016】
なお、本発明の各態様として、「装置」の態様を説明したが、これに限らず、「方法」の態様として実現してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の異種製品検出装置及び異種製品検出方法においては、搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射し、この製品を透過したテラヘルツ光の電気信号の時間波形が製品の材質及び形状によって異なることを利用している。そして、この製品毎の時間波形の相違を該当時間波形に設定した複数の特徴量の統計量(マハラノビス距離)を用いて、該当製品が正当種別の製品か、異種の製品であるかを判定することによって、搬送しながら異種の製品を確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態の異種製品検出方法及び異種製品検出装置が適用された異種薬剤検出装置の概略構成図である。この実施形態においては、異種薬剤検出装置は薬剤製造工場のPTP梱包機1に組込まれている。
【0020】
PTP梱包機1において、シート供給部2から供給される包装用シート(以下、単にシートと表記する)3には、凹部4が定められた間隔で二次元的に形成され、搬送路5を図中矢印方向に搬送される。薬剤供給部6は内部に蓄積された各薬剤(以下、錠剤7という)を、搬送路5に順次繰り出されるシート3の凹部4に1個ずつ収納していく。そして、搬送路5の右端にて、アルミシート8にて、錠剤7が収納された凹部4の上面が覆われて、切断機9で所定長さに切断されて、PTPシート(錠剤シート)10として排出される。
【0021】
このPTP梱包機1に組込まれた異種薬剤検出装置において、フェムト秒レーザ発生器11は、フェムト秒レーザ制御部12の指示に基づいて、50MHz〜100MHzの周期で、パルス幅10fs〜100fsの近赤外光(700nm〜1600nm)13を発振する。このフェムト秒レーザ発生器11から出射された近赤外光13はビームスプリッタ14で2方向に分岐される。分岐された一方の近赤外光13aは、図2に示すように、さらに光増幅・分配器15aで分岐され複数のテラヘルツ光出射ユニット16に入射される。
【0022】
各テラヘルツ光出射ユニット16内には、光伝導アンテナ17が収納されており、この光伝導アンテナ17は、制御装置27の駆動制御回路31からバイアス電圧33が印加され、前述したパルス状の近赤外光13aが印加されるとパルス状のテラヘルツ光を出射する。出射されたテラヘルツ光は集光レンズ18で、搬送路5上を一定速度で搬送されているシート3の凹部4に収納された錠剤7に照射される。
【0023】
この錠剤7を上方から下方へ透過したテラヘルツ光はテラヘルツ光受光ユニット19内の集光レンズ20を介して、テラヘルツ光受光部21に入射する。
【0024】
前述したビームスプリッタ14で分岐された他方の近赤外光13bは、光学遅延ユニット22で遅延された後、図2に示すように、さらに光増幅・分配器15bで分岐され、複数のテラヘルツ光受光ユニット19内のテラヘルツ光受光部21に入射する。
【0025】
各テラヘルツ光受光部21は、図3に示すように、錠剤7を上方から下方へ透過したテラヘルツ光24が入射されている期間において、近赤外光13bが印加されると、この印加されている時間だけ、テラヘルツ光24の強度に対応する電流を有した電気信号25を制御装置27の受信部26へ送出する。
【0026】
前記光学遅延ユニット22は、複数の固定ミラー28と1個の移動ミラー29とミラー駆動部30とで構成されており、制御装置27の駆動制御回路31からの指令に基づきタイミング信号(以下、トリガー信号ともいう)入力の待機状態になり、錠剤7がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングでトリガー信号発生装置31aがトリガ信号を発すると、移動ミラー29の位置を順次移動していき、図3に示すように、近赤外光13bのピーク点をテラヘルツ光24の波形の先頭位置すなわち初期遅延時間からの遅延時間Δtを順次増加して行くことにより、その時の電気信号25をサンプリング加算していくことで、テラヘルツ光24の初期遅延時間から遅延時間変動範囲内の1波形分の時間波形32が得られる。なお、時間波形32は薬剤の種類ごとに異なる。このため、薬剤の種類ごとに、光学遅延ユニット22の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とが遅延時間設定部31bに予め設定されている。
【0027】
制御装置27における駆動制御回路31は、フェムト秒レーザ制御部12から入力されるパルス状の近赤外光13の出力の同期信号34に基づいて、遅延時間設定部31bの設定内容を参照しながら、光学遅延ユニット22において順次増加して行く遅延時間Δtを順次、トリガー信号発生装置31aに設定していく。トリガー信号発生装置31aは、この設定された遅延時間Δtが示すタイミングでトリガー信号を発生する。さらに、駆動制御回路31は、データメモリ36に対して、遅延時間Δtが指定区間での電気信号25のサンプリング開始と終了を指示する。
【0028】
遅延時間Δtが順次増加して指定間隔進むごとに各電気信号25をA/D変換器34でデジタルデータにA/D変換して、データメモリ36に書込む。データメモリ36においては、駆動制御回路31から、サンプリング開始が指令されると、各電気信号25をサンプリング開始し、サンプリング終了が指令されると、サンプリングを終了して、図3に示す錠剤7を透過したテラヘルツ光24の1波形分の電気信号の時間波形32が得られるので、この得られた時間波形32を波形メモリ37へ書込む。
【0029】
この制御装置27の波形メモリ37に書込まれた錠剤7を透過したテラヘルツ光24の1波形分の電気信号に変換された時間波形32は、コンピュータからなるデータ処理装置38へ送出される。
【0030】
図5は、テラヘルツ光ビームの断面図であり、テラヘルツ光ビームのビームスポット中心cspが図4(b)の24の位置(錠剤7の中心c7)にある時の状態を示すものである。ビームスポット径dspは、錠剤7の直径d7より大きいため、背景光と錠剤透過光がテラヘルツ光受光部21に到達し検出される。
【0031】
図6は、搬送時に錠剤7がテラヘルツ光ビーム中を移動する様子を示す模式図である。 製造ラインにおいては、テラヘルツ光受光部21で検出されるテラヘルツ光40,24の時間波形32a,32を測定する間に錠剤7が移動するため、図6に示すように錠剤7はテラヘルツ光ビーム中を搬送方向に移動する。
【0032】
図4(c)は、図4(a)に示す厚みHを有する円盤状の錠剤7が、図4(b)に示すように、シート3の凹部4に挿入された状態で、テラヘルツ光出射ユニット16からパルス状のテラヘルツ光39を錠剤7に照射した場合における、この錠剤7を透過したテラヘルツ光24の電気信号に変換された時間波形32を示す図である。
【0033】
この図においては、テラヘルツ光39のビームスポット径が錠剤7より大きい場合、搬送状態において、図4(b)の点線で示す錠剤7を透過しない周辺部の背景光に起因する時間波形32aが時間波形32の前に検出される。錠剤透過光による時間波形32と背景光の時間波形32aとの間の時間差THは、錠剤7の厚みHに比例している。
【0034】
図7は、図4(c)に示す二つの時間波形32、32aのうち、錠剤7を透過したテラヘルツ光24の時間波形32を示す図である。横軸は背景光に起因する時間波形32aのピーク点を時刻tの基準位置(t=0)とした、A/D変換器35におけるサンプリングにおけるサンプル数で示した時刻tであり、縦軸は、電界強度Eである。
【0035】
図8は、コンピュータからなるデータ処理装置38が行う異種薬剤検出機能を示す機能ブロック図である。
【0036】
制御装置27の波形メモリ37から入力された各時間波形32は、移動平均部41でもって移動平均化された後、特徴量抽出部42へ送られる。図7に示す時間波形32の時刻tにおける平均化した値Etは、平均化する前の時刻tにおける値Etを用いて、次のようになる。但し、Lは1回の平均化に用いるデータ数である。
【0037】
Et=(Et-L/2+Et-L/2+1+…+Et+…+Et+L/2)/(L+1)
このように、測定された時間波形32を移動平均化することにより、この時間波形32に含まれるノイズ成分が除去される。ノイズ成分が除去された時間波形32は特徴量抽出部42へ送られる。
【0038】
この実施形態装置においては、個々の錠剤7に対する異種薬剤の判定を実施する前の判定に使用する基準データを作成するために、11種別の錠剤7の各基準錠剤の時間波形32が1種別それぞれ200個分、合計2200個が、図1の制御装置27によって読取られて時間平均化されて特徴量抽出部42へ送られる。基準錠剤7は、欠陥の無い正常な錠剤を示す。特徴量抽出部42は、入力された錠剤7の各基準錠剤の時間波形32の特徴量44を抽出して図9に示す特徴量データテーブル43に書き込む。
【0039】
具体的には、図7に示す時間波形32における個々の時間波形32から得られる下記に示す合計14個の特徴量44(以下、特徴量xjiともいう。但し、j:波形番号。i:特徴量番号。)が特徴量定義メモリ45に記憶されている。なお、以下に述べる特徴量番号i=1〜14の特徴量xji(=xj1,xj2,…,xj13,xj14)は一例であり、時間波形32から抽出可能で薬剤の種類に応じて異なる値の特徴量であれば、任意の特徴量xijを用いるように変形してもよい。
【0040】
(a) 0クロス点
時間波形32の強度Eがゼロになる時刻tを0クロス点と定義し、その値t0を求める。データは離散的であるため、正確にはデータEtの符号が替わる区間を直線近似したときE=0と交わる点を0クロス点とする。本アルゴリズムでは、マイナスピークの直前の0クロス点を第1の0クロス点(t01)、第1の0クロス点の次に出現する2番目の0クロス点を2番目の0クロス点(t02)、第2の0クロス点の次に出現する3番目の0クロス点を3番目の0クロス点(t03)と定義して、各0クロス点t01,t02,t03をそれぞれ特徴量xj1, xj2, xj3とする。
【0041】
(b) ピーク点(波形ピーク点)
時間波形には図7の32aの部分に相当する錠剤周辺部通過光と図7の32の部分に相当する錠剤透過光が見られる。ここで32aの部分とは、錠剤7がない状態でテラヘルツ光を受光した時に観測される波形と同じ時刻に観測される波形のことをいい、32の部分とは、32aの波形ピーク以降に出現する大きなピークを持つ波形のことをいう。
【0042】
初めに、32aの部分の時間波形が最大となる時刻t=trを求め、この時刻trを基準ピークとする。
【0043】
次に隣り合う2つの0クロス点間において、時間波形32の傾きがゼロになる時刻tppをピーク点と定義し、ピーク点tppを求める。本アルゴリズムは、1番目、2番目のピーク点tpp1、tpp2を特徴量xj4, xj5とする。さらに各ピーク点を基準ピーク相対値tpp1-r(=tpp1−tr),tpp2-r(=tpp2−tr)に変換した特徴量を計算する。さらに2番目以降のピーク点を1番目のピーク点相対値tpp2-pp1(=tpp2−tpp1)に変換した特徴量を計算する。
【0044】
1番目のピーク点を基準ピーク相対値tpp1-rに変換した特徴量は、錠剤7の厚みHに関連する特徴量となる。2番目以降のピーク点を1番目のピーク点相対値tpp2-pp1に変換した特徴量は、錠剤厚みHの変動の影響を受けにくい特徴量となる。
【0045】
(c) ピークの高さ(波形ピークの高さ)
前述した各ピーク点での時間波形32の値Etppをピークの高さと定義し、その値Eを求める。ピークの高さは、時間波形32の値Eの絶対値ではなく、正側、負側においてそれぞれ個別に求める。今回は、1番目、2番目のピークの高さEtpp1,Etpp2を特徴量xj6, xj7とする。
【0046】
(d) 波形幅
隣り合う2つの0クロス点t0に挟まれた領域の同じ値Eb(=θ・Etpp)を有する2点tb1,tb2間の幅を波形幅tw(=tb2−tb1)と定め、その値を求める。本実施形態では、以下の値Eb1,…,Eb7における波形幅tw1,…,tw7を特徴量xj8,xj9,…,xj13,xj14とする。
【0047】
Eb1(θ1,Etpp2)=0.2Etpp2
Eb2(θ2,Etpp2)=0.4Etpp2
:
Eb6(θ6,Etpp2)=0.8Etpp2
Eb7(θ7,Etpp2)=0.9Etpp2
すなわち、本実施形態では、ピークの高さEtppのθ倍{θ1、θ2、...、θs|0.0≦θ1<θ2<、...、<θs≦1.0}の値Ebにおける波形幅tw1,tw2,…,tw6,tw7を特徴量xj8,xj9,…,xj13,xj14とする。また、この例では、倍数θの値を、θ1=0.2、θ2=0.4、θ3=0.5、θ4=0.6、θ5=0.7、θ6=0.8、θ7=0.9とした。
【0048】
特徴量抽出部42は、移動平均部41より送られてきた11種目の各基準錠剤における合計2200個の時間波形32における14個の特徴量44を抽出して、特徴量データテーブル43の各種別に書込む。この特徴量データテーブル43には、図9に示すように、11種別(種別番号p)毎に、200個の各時間波形32(波形番号j=1〜200)に対して、前述した合計14個の特徴量(特徴量番号i=1〜14)の各特徴量xjiの書込領域が形成されている。
【0049】
特徴量組合せテーブル46内には、図10に示すように、上述した14個の特徴量44における選択・非選択を0/1で表した組合せに組合せ番号gが付されて記憶されている。この組合せ数は214―1=16383通りあり、全組合せを列挙する。したがって、組合せ番号g=1〜16383となる。なお、特徴量組み合わせテーブル46は、上述した14個の特徴量の全組み合わせに限らず、例えば図示しない特徴量組み合わせテーブル生成部により、任意のm個の特徴量から当該m個の特徴量の全組み合わせ(2m−1通りの組み合わせ)を列挙するように生成可能となっている。
【0050】
組合せ特徴量抽出部47は、特徴量データテーブル43内の特徴量組合せテーブル46内に設定された各組合せ番号gの指定する特徴量の組合せで選択された特徴量を抽出し、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48へ出力する。
【0051】
この結果、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48へは、n(=200)個の各波形32(j=1〜n)に対してk個の特徴量44が送られたとする。そして、マハラノビス距離算出用基準データ作成部48は、次に示す手順で、入力した特徴量データに対するマハラノビス距離算出用基準データを次の手順で算出する。
【0052】
入力した各特徴量xji(j=1〜n、i=1〜k)に対して、下式の基準化処理を実施して、得られた基準化処理後の各特徴量Xjiを改めて特徴量Xjiとする。すなわち、i番目のn個の特徴量x1i〜xniの平均をmiとし、標準偏差をσiとすると、
特徴量Xji=(xji―mi)/σi
となる。
【0053】
次に、特徴量Xjiの相関行列Rを求める。i番目の特徴量とq番目の特徴量との相関計係数riqは下式で与えられる。
【0054】
相関計係数riq=1/k(Xi1Xq1+Xi2Xq2+…+XinXqn)
i=1〜k、q=1〜k
これにより、相関行列Rは下記にて示される。
【数1】
【0055】
次に、この相関行列Rの逆行列Aを求める。相関行列Rの逆行列Aは、要素をajiとすると下式で示される。
【数2】
【0056】
となる。
【0057】
この逆行列Aとmi、σiが(i=1〜k)が組み合わせgのマハラノビス距離算出用基準データであり、マハラノビス距離算出用基準データテーブル49に記録する。
【0058】
基準マハラノビス距離算出部50では基準薬剤の特徴量データを特徴量データテーブル43より取り込み、マハラノビス距離算出用基準データテーブル49から該当する特徴量組み合わせのマハラノビス距離算出用基準データを読み出し、基準化した特徴量Xjiを計算し、逆行列Aを用いて、組合せ番号gの特徴量の組合せに対する一つの種別の基準錠剤7のマハラノビス距離を求める。j番目の時間波形32のマハラノビス距離Djの一般式は以下で与えられる。
【数3】
【0059】
但し、u、v=1〜k、j=1〜n
このようにして計算したマハラノビス距離データはマハラノビス距離データテーブル51に記録される。
【0060】
最適特徴量選択部52では、マハラノビス距離データをマハラノビス距離データテーブル51より読み出しj=1〜nの各時間波形32のマハラノビス距離D1〜Dnを求めて、この組合せ(組合せ番号g)における下式で示すS/N比ηを算出する。
【0061】
η=―10log1/n(1/D12+1/D22+…+1/Dn2)
…(2)
以上で、組合せ番号gの2つの特徴量44の組合せに対する一つの種別の基準錠剤7のS/N比ηの算出処理が終了する。
【0062】
このようにして、合計16383個の組合せに対して、(1)式のマハラノビス距離Dj、(2)式のS/N比ηを算出する。最適特徴量選択部52では、16383通りの組に対するS/N比データから最大値をとる特徴量の組を検索する。その結果を最適特徴量組み合わせテーブル53に書き込み、さらに、この最適組合せに対する特徴量の平均値、標準偏差、逆行列の計算用データをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に書込む。
【0063】
以上の処理を基準薬剤を錠剤7の11種別に亘って、実施される。以上の処理で設定が完了する。
【0064】
検査時には基準錠剤の種別を検査前に指定する。検査用マハラノビス距離算出部55が、検査対象の錠剤7の基準錠剤の種別におけるマハラノビス距離の算出を行う。すなわち、検査対象の錠剤7の時間波形32が入力されると、この時間波形32は移動平均部41で時間平均化処理が実施されたのち、特徴量抽出部42に送られる。
【0065】
特徴量抽出部42ではこの時間波形32に対する14個の特徴量44を計算する。この結果を組み合わせ抽出部47に出力する。組み合わせ抽出部47では入力した14種類の特徴量44のうち、最適特徴量組み合わせテーブル53で選択されている特徴量44のみ検査用マハラノビス距離算出部55に出力する。この検査用マハラノビス距離算出部55では入力した特徴量の基準化した特徴量Xiをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶されている基準錠剤の平均値、標準偏差を用いて算出する。
【0066】
そして、この1つ時間波形32のマハラノビス距離Dを、マハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶されている基準錠剤の逆各行列(逆行列A)を(1)式に代入し、j=1としたときのマハラノビス距離D1をマハラノビス距離Dとする。検査用マハラノビス距離算出部55は、算出したマハラノビス距離Dを異種判定部56へ送出する。
【0067】
異種判定部56は、異種判定しきい値メモリ57に記憶されている異種判定しきい値と算出されたマハラノビス距離Dとを比較する。そして、
マハラノビス距離D<異種判定しきい値
マハラノビス距離D>=異種判定しきい値
の場合は、当該錠剤7の種別は、指定した種別でなく、異なる種別であると判定する。判定結果は表示器部8に表示出力される。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0069】
例えば、複数種別の基準錠剤の平均値、標準偏差、逆各行列(逆行列A)等のマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に記憶保持しておく必要はなく。新たに新種別の錠剤の評価を開始する直前に該当種別の基準錠剤7に対するマハラノビス距離算出用最適基準データの算出とマハラノビス距離算出用最適基準データテーブル54に対する登録を実施してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、製薬工場における異種薬剤検出について説明したが、食品工場等において、正規の食品に異種物(異種原料、毒物など)が混入する場合があり、このような異種物を検出することも可能である。すなわち、本実施形態では、製品の例に薬剤を用い、異種物の例に異種薬剤を用いたが、製品及び異種物はこの例に限定されず、製品を透過したテラヘルツ光の電気特性の時間波形が製品及び異種物の間で異なるものであれば、食品等の任意の製品や、異種原料、毒物などの任意の異種物に拡張ないし一般化できる。また、任意の製品への拡張ないし一般化に伴い、薬剤の場合のPTP包装容器は、製品に応じた任意の包装容器に拡張ないし一般化できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係わる異種薬剤検出装置の概略構成図。
【図2】同実施形態の異種薬剤検出装置の要部を取出して示す部分拡大図。
【図3】同異種薬剤検出装置のテラヘルツ光における時間波形の作成手順を示す図。
【図4】時間波形と錠剤の形状との関係を示す図。
【図5】テラヘルツ光ビーム断面を示す模式図。
【図6】搬送時に錠剤がテラヘルツ光ビーム中を移動する様子を示す模式図。
【図7】時間波形に定義された各特徴量を示す図。
【図8】同異種薬剤検出装置のデータ処理装置の機能を示す機能ブロック図。
【図9】同データ処理装置内に形成された特徴量データテーブルの記憶内容を示す図。
【図10】同データ処理装置内に形成された特徴量組み合わせテーブルの記憶内容を示す図。
【図11】従来のスペクトル波形及びうねりを示す模式図。
【符号の説明】
【0072】
1…PTP梱包機、2…シート供給部、3…包装用シート、4…凹部、5…搬送路、7…錠剤、10…PFPシート、11…フェムト秒レーザ発振器、12…フェムト秒レーザ制御部、13,13a、13b…近赤外光、14…ビームスプリッタ、15a、15b…光増幅・分配器、16…テラヘルツ光出射ユニット、17…光伝導アンテナ、19…テラヘルツ光受光ユニット、21…テラヘルツ光受光部、22…光学遅延ユニット、26…受信部、27…制御装置、31…駆動制御回路、32…時間波形、38…データ処理装置、41…移動平均部、42…特徴量抽出部、43…特徴量データテーブル、44…特徴量、45…特徴量定義メモリ、46…特徴量組合わせテーブル、47…組み合わせ特徴量抽出部、48…マハラノビス距離算出用基準データ作成部、49…マハラノビス距離算出用基準データテーブル、50…基準マハラノビス距離算出部、51…マハラノビス距離データテーブル、52…最適特徴量選択部、53…最適特徴量組み合わせテーブル、54…マハラノビス距離算出用最適基準データテーブル、55…検査用マハラノビス距離算出部、56…異種判定部、57…異種判定しきい値メモリ、58…表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射部と、
この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出部と、
このテラヘルツ光検出部から出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取部と、
この時間波形読取部で読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出手段で抽出された各特徴量を記憶する特徴量データテーブルと、
前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせテーブル生成手段と、
前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成手段で生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量で算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出手段と、
S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択手段と、
検査対象の製品が入力されたとき当該製品の基準空間におけるマハラノビス距離を前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出手段と、
この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定手段と
を備えたことを特徴とする異種製品検出装置。
【請求項2】
前記製品は、包装容器の幅方向に形成された凹部に挿入されており、
前記テラヘルツ光入射部は、前記包装容器の幅方向に配列され同時にテラヘルツ光を入射させる複数の入射ヘッドを有し、
前記テラヘルツ光検出部は、搬送方向に配列され同時にテラヘルツ光を受光する検出ヘッドと、
前記製品の種類ごとに前記テラヘルツ光検出部の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とを設定する手段と、
前記製品がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングで信号を発生するトリガー信号発生手段と、
このトリガー信号が発生したタイミングから時間波形を記録する手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の異種製品検出装置。
【請求項3】
搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射ステップと、
この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出ステップと、
このテラヘルツ光検出ステップから出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取ステップと、
この時間波形読取ステップで読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
製品周辺部通過光に対応する時間波形の第一ピーク点を基準ピークとして算出するステップと
前記特徴量の内、0クロス点、波形ピーク点を前記基準ピークに基づく値にする値に変換するステップと
予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出ステップで抽出された各特徴量を特徴量データテーブルに記憶するステップと、
前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせテーブル生成ステップと、
前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成ステップで生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量のみで算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出ステップと、
S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択ステップと、
検査対象の製品が入力されたとき当該製品の基準空間におけるマハラノビス距離を、前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出ステップと、
この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定ステップと
を備えたことを特徴とする異種製品検出方法。
【請求項1】
搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射部と、
この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出部と、
このテラヘルツ光検出部から出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取部と、
この時間波形読取部で読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出手段で抽出された各特徴量を記憶する特徴量データテーブルと、
前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせテーブル生成手段と、
前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成手段で生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量で算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出手段と、
S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択手段と、
検査対象の製品が入力されたとき当該製品の基準空間におけるマハラノビス距離を前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出手段と、
この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定手段と
を備えたことを特徴とする異種製品検出装置。
【請求項2】
前記製品は、包装容器の幅方向に形成された凹部に挿入されており、
前記テラヘルツ光入射部は、前記包装容器の幅方向に配列され同時にテラヘルツ光を入射させる複数の入射ヘッドを有し、
前記テラヘルツ光検出部は、搬送方向に配列され同時にテラヘルツ光を受光する検出ヘッドと、
前記製品の種類ごとに前記テラヘルツ光検出部の遅延時間初期値と遅延時間変動範囲とを設定する手段と、
前記製品がテラヘルツ光ビーム中心位置から予め設定された任意の距離の位置に到達するタイミングで信号を発生するトリガー信号発生手段と、
このトリガー信号が発生したタイミングから時間波形を記録する手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の異種製品検出装置。
【請求項3】
搬送路に沿って搬送状態の製品の一方面からパルス状のテラヘルツ光を入射するテラヘルツ光入射ステップと、
この製品ならびにこの製品の周辺部を透過したテラヘルツ光を受光して電気信号に変換して出力するテラヘルツ光検出ステップと、
このテラヘルツ光検出ステップから出力された電気信号に変換された各透過テラヘルツ光の時間波形を読取る時間波形読取ステップと、
この時間波形読取ステップで読取られた各時間波形における予め定められた0クロス点、波形ピーク点、波形ピークの高さ、波形の幅に基づく複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
製品周辺部通過光に対応する時間波形の第一ピーク点を基準ピークとして算出するステップと
前記特徴量の内、0クロス点、波形ピーク点を前記基準ピークに基づく値にする値に変換するステップと
予め指定された種別の基準製品において前記特徴量抽出ステップで抽出された各特徴量を特徴量データテーブルに記憶するステップと、
前記複数の特徴量から複数の特徴量の全組合せを列挙する特徴量組み合わせテーブル生成ステップと、
前記特徴量データテーブルに記憶された各特徴量のうち前記特徴量組み合わせ生成ステップで生成された特徴量の各組合せ毎に、当該組合せの各特徴量のみで算出された組合せ毎のマハラノビス距離を算出する基準マハラノビス距離算出ステップと、
S/N比が最大となる特徴量の組合せを選択するとともに、この選択された特徴量の組み合わせに対応するマハラノビス距離算出用最適基準データをマハラノビス計算用最適基準データテーブルに書込む組合せ選択ステップと、
検査対象の製品が入力されたとき当該製品の基準空間におけるマハラノビス距離を、前記マハラノビス計算用最適基準データテーブルに記憶された前記マハラノビス計算用最適基準データを用いて計算する検査用マハラノビス距離算出ステップと、
この算出されたマハラノビス距離に基づいて当該製品の異種判断を行う異種判定ステップと
を備えたことを特徴とする異種製品検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−216890(P2010−216890A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61893(P2009−61893)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(504299106)株式会社先端赤外 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(504299106)株式会社先端赤外 (3)
【Fターム(参考)】
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