畳側面の縫着方法及び畳用縫着装置
【課題】 一般的な厚さの畳だけでなく、薄畳の場合であっても、見た目が綺麗で、しかも押さえが利き易く、縫う時間も短くできる畳側面の縫着方法を提供すること。
【解決手段】 畳の縫着の際に、空縫い時に送りをかけることで、逆ハの字状の締付け部92を形成し、その後、畳11の稜線11cと平行となる第1の押え部94と、第2の押え部96とを形成し、更に再度前記締付け部92を形成するような縫い方とする。この新台形縫いは、畳11の側面11aにおいて、台形の左右両辺側に相当する左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bの縫い糸が、上下方向ではなく斜めで、畳11の表面から見た際に、その部分の縫い糸は見え難くなるため、見た目が綺麗である。また、台形の上底(上辺)は、第1の押え部94と第2の押え部96との間に往復縫い部93があるので、押さえが利き易い。更に、左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bで送りが入るので、縫着時間を短縮させることできる。
【解決手段】 畳の縫着の際に、空縫い時に送りをかけることで、逆ハの字状の締付け部92を形成し、その後、畳11の稜線11cと平行となる第1の押え部94と、第2の押え部96とを形成し、更に再度前記締付け部92を形成するような縫い方とする。この新台形縫いは、畳11の側面11aにおいて、台形の左右両辺側に相当する左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bの縫い糸が、上下方向ではなく斜めで、畳11の表面から見た際に、その部分の縫い糸は見え難くなるため、見た目が綺麗である。また、台形の上底(上辺)は、第1の押え部94と第2の押え部96との間に往復縫い部93があるので、押さえが利き易い。更に、左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bで送りが入るので、縫着時間を短縮させることできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳表または縁を畳床の側面に縫着するための畳側面の縫着方法及び畳用縫着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、畳を製造する場合において、畳床に畳表を縫着する場合、畳床に被せられた畳表の長手方向両端部を畳床側へ折り曲げ、畳床の短辺側の側面(框(かまち)面)において、畳床に畳表を縫い付ける、いわゆる框縫いが行われる。また、畳の長辺側においては、畳表の縁部に縫い付けられた縁布を畳床の側面側へ折り返し、その折り返した縁布を畳床の側面に縫い付ける、いわゆる返し縫いが行われる。なお、柔道場用の畳のように、縁布なしの畳の場合には、畳表の長辺側の端部を畳床の側面側へ折り曲げ、その折り曲げた畳表を畳床の側面に縫い付けることが行われる。
【0003】
上記した框縫いを行う場合には、強固に糸締めをする必要があることから、一般に梯子縫いと呼ばれる縫い方が用いられ、また、上記した縁布の返し縫いを行う場合には、軽く糸締めをすればよいことから、一般に千鳥縫いと呼ばれる縫い方が用いられる。従来、畳の側面を縫着する際に使用されるこの種の畳用縫着装置としては、上記梯子縫いは梯子縫い専用機が使用され、上記千鳥縫いは千鳥縫い専用機が使用されるのが一般的であった。
【0004】
本件発明と関連した先行技術としては、千鳥縫いと、梯子縫いに似た変形梯子縫いとを、切替えスイッチにより切り替えられる構成としたものが考えられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−301282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図25には、畳1の短辺側の側面(框の側面)1aに施された梯子縫いの縫い目模様が示されている。梯子縫いの縫い目模様としては、側面1aから裏面1bに向かって上下方向に延びる2本の垂直部2と、畳1の稜線1cと平行な水平部3とを有した模様となっている。なお、図25(a)は畳1の側面図、(b)は前記(a)周辺における透視斜視図である。
【0006】
ところで、畳としては、厚さが50〜60mm程度が一般的であるが、近年では住宅事情等により、厚さが10〜20mm程度の薄いものも提供されるようになっている。このような薄畳の框を上記梯子縫いで縫った場合、押さえは利き易くなるものの、上下方向に延びる2本の垂直部2部分があるため、畳1の表面から見た際に、その部分の縫い糸が見え易く、外観を悪くするという不具合があった。更に、垂直部2は、同じ所を2度縫込むことにより形成され、このとき送りが入らないようになっているので、結果的に縫着時間が長くなってしまっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、一般的な厚さの畳だけでなく、薄畳の場合であっても、見た目が綺麗で、しかも押さえが利き易く、縫う時間も短くできる畳側面の縫着方法を提供することにある。また、第2の目的は、そのような縫着が可能で、しかも、千鳥縫いとの切替えが容易な畳用縫着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した第1の目的を達成するために、本発明の畳側面の縫着方法は、上糸と下糸との二本の縫い糸により畳表または縁布を畳床の側面に縫着する際に、
(イ)上糸を畳床側面の所定の高さ位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後に、元の位置に戻して第1の往復縫い部を形成し、
(ロ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に所定距離移動させながら、上糸を畳床の側面下部において空刺し動作させることにより、畳床の下側の稜線近傍において下糸と掛止めして畳床側面に逆ハの字状の締付け部を形成し、
(ハ)次に、前記所定距離移動した地点で、前記第1の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さ位置で再度往復動作させて、前記第1の往復縫い部と同様な第2の往復縫い部を形成し、
(ニ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、上糸を前記第2の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後、元の位置に戻して第3の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第1の押え部を形成し、
(ホ)次に、再び上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、前記第3の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から前記(イ)と同様な第1の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第2の押え部を形成する。
以下、前記(イ)〜(ホ)の動作を順に繰り返し、畳床の側面に、前記第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより台形状の連続縫い目を形成するようにしたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【0009】
第2の目的を達成するために、本発明の畳用縫着装置は、畳の側面を縫着する畳用縫着装置において、畳の辺に沿って移動可能に設けられた縫着機本体と、
この縫着機本体を移動させる送り機構と、前記縫着機本体に設けられた針モータと、
前記縫着機本体に上位置と下位置との間で移動されるように設けられたミシンアームと、上糸を保持して前記ミシンアームに往復動可能に設けられ、前記ミシンアームが前記上位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の側面から下面側へ刺し込んでその下面側において下糸と絡める縫い動作を行い、前記ミシンアームが前記下位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の下側において下糸と絡める空縫い動作を行う縫い針と、前記針モータの回転に基づき前記縫い針を往復動させる針駆動機構と、前記針モータの回転に基づき回転される千鳥用カムと、この千鳥用カムにより第1の位置と第2の位置との間で移動されるレバーと、このレバーが前記第1の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記上位置に移動させると共に、前記レバーが前記第2の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記下位置に移動させるミシンアーム駆動機構と、前記レバーを前記第1の位置に選択的に保持するように設けられ、そのレバーを第1の位置に保持することに伴い、前記ミシンアーム駆動機構を介して前記ミシンアームを前記上位置に保持させるレバー保持手段と、前記針モータの回転に基づき回転される送りカムと、この送りカムに応動する送りセンサと、千鳥縫いと新台形縫いとを選択的に切り替える切替手段と、この切替手段、前記送りセンサの信号に基づき、前記送り機構、針モータ及びレバー保持手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記切替手段により千鳥縫いが選択された場合には、前記レバー保持手段による前記レバーの保持を常時解除した状態とし、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ移動させながら、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、前記送りセンサの送り信号の停止に基づき前記縫着機本体の移動を停止させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針による第2の往復縫い部を形成することを繰り返して千鳥縫いを実行させ、前記切替手段により新台形縫いが選択された場合には、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させると共に、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第2の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第3の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて前記第1の往復縫い部を形成するということを繰り返して新台形縫いを実行させることを特徴とする(請求項2の発明)。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の畳側面の縫着方法によれば、前記第1の押え部と隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部と隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより形成された連続上の台形縫い目の、いわゆる新台形縫いは、台形の左右両辺側に相当する縫い糸が、上下方向ではなく斜めになる。従って、薄畳の側面を縫着した場合であっても、畳の表面から見た際に、その部分の縫い糸は見え難くなるため、見た目が綺麗で、薄畳に適した縫い方ができる。更に、新台形縫いは、前述した梯子縫いと同様、強固に糸締めすることができると共に、台形の左右両側辺に相当する部分でも送りが入るので、梯子縫いに比べて縫着時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明の畳用縫着装置によれば、切替手段により新台形縫いを選択するだけで、制御手段により上記した新台形縫いを実行することができる。従って、カムなどの機械部品を交換して改造するような面倒なことをすることなく、千鳥縫いと新台形縫いとを簡単に切り替えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の畳側面の縫着方法及び畳用縫着装置を図1〜図12を参照して説明する。
まず、図3に、畳側面の縫着を行うための畳用縫着装置10全体の概略図を示す。この図3において、畳11を載置する畳載置台12の長手方向に沿って一対のレール13a、13bが設けられていて、縫着機本体14は、そのレール13a、13bに沿って往復移動可能に設けられている。この縫着機本体14は、当該縫着機本体14の下部に設けられたサーボモータからなる送りモータ15(図4参照)を駆動源とする送り機構16により移動されるようになっている。送り機構16としては、詳細には示されていないが、スプロケット17とチェーン18を用いた周知構成のものである。
【0013】
上記縫着機本体14の構成について、図4ないし図10も参照して説明する。縫着機本体14の下部には、図4に示すように針モータ19も設けられている。この針モータ19の回転軸19aに取着されたスプロケット20と、図7及び図8にも示すように、縫着機本体14のフレーム21に回転自在に設けられたハンドル軸22に取着されたスプロケット23との間にチェーン24が掛けられていて、針モータ19の回転がチェーン24を介してハンドル軸22に伝えられるようになっている。針モータ19の回転軸19aの回転方向は、図4中矢印R方向である。ハンドル軸22は、フレーム21に軸受を介してこれを貫通する状態で設けられていて、一端部に円形のハンドル25が取着されている。
【0014】
上記フレーム21には、ハンドル軸22の近傍に位置させて当該ハンドル軸22と平行にカム軸26が回転可能に設けられている。ハンドル軸22に設けられた駆動ギヤ27と、カム軸26に設けられた従動ギヤ28とが噛み合っていて、ハンドル軸22の回転が、両ギヤ27、28を介してカム軸26に伝えられるようになっている。この場合、従動ギヤ28の歯数は駆動ギヤ27の歯数の2倍となっていて、駆動ギヤ27が2回転すると従動ギヤ28が1回転する構成となっている。上記ハンドル軸22には、薄板状の直線送りカム(送りカム)29が当該ハンドル軸22と一体に回転するように取着されている。この直線送りカム29の近傍には、当該直線送りカム29のカム形状に応動してオン/オフする直線送りセンサ(送りセンサ)30が設けられている。
【0015】
上記カム軸26には、厚板状の千鳥用カム31と、それぞれ薄板状の千鳥用送りカム(送りカム)32及び停止カム33とが、当該カム軸26と一体に回転するように取着されている。フレーム21には、千鳥用カム31の近傍に位置させて、ほぼL字状をなす千鳥用レバー34(レバー)が支点35を中心に回動可能に取り付けられている。この千鳥用レバー34には、千鳥用カム31の外周部に沿って転動するローラ36が取着されていて、千鳥用レバー34は、ばね部材37(図4参照)によりローラ36が千鳥用カム31の外周部に接触する方向に付勢されている。千鳥用カム31の外周形状はほぼ扇状をなしている。千鳥用レバー34は、ローラ36が千鳥用カム31の突出量の大きい部分に接触した状態では、図4に実線で示す第1の位置に位置され、ローラ36が千鳥用カム31の突出量の小さい部分に接触した状態では、図4に二点鎖線で示す第2の位置に位置されるようになっている。従って、千鳥用レバー34は、千鳥用カム31によって、第1の位置と第2の位置との間で回動(移動)されるようになっている。
【0016】
千鳥用レバー34の一端部には、引掛け部38が形成されている。この引掛け部38の近傍に位置させて上記フレーム21に、フック39が支点40を中心に回動可能に取り付けられていると共に、エアーシリンダからなるシリンダ41も取り付けられている。このシリンダ41のロッド41aの先端部がフック39に連結されていて、シリンダ41によりフック39が回動されるようになっている。ここで、千鳥用レバー34が図4に実線で示す第1の位置に位置された状態で、シリンダ41の駆動に基づきフック39が千鳥用レバー34の引掛け部38に引っ掛かった状態となると(図4の二点鎖線参照)、そのフック39により千鳥用レバー34が第1の位置に保持されるようになる。この場合、フック39とシリンダ41は、千鳥用レバー34を選択的に第1の位置に保持するレバー保持手段に相当するレバー保持機構42を構成している。
【0017】
上記千鳥用送りカム32の近傍には、当該千鳥用送りカム32のカム形状に応動してオン/オフする千鳥用送りセンサ(送りセンサ)43(図8参照)が設けられ、また、上記停止カム33の近傍には、当該停止カム33のカム形状に応動してオン/オフする停止センサ44(図8参照)が設けられている。なお、停止センサ44は、畳11の側面を後述する縫い針により縫着する際において、その縫い終わり時に縫い針が畳11から抜けた状態を見ることと、縫い始めと縫い終わりに行われる止め縫いの際に用いられるものである。
【0018】
上記千鳥用レバー34の他端部には、当該千鳥用レバー34の回動に基づきミシンアーム45を駆動するためのミシンアーム駆動機構46における第1の千鳥レバーロッド47の一端部が回動可能に連結されている。ミシンアーム45は、フレーム21(図9参照)を挟んで上記ハンドル25とは反対側に配置されていて、図5及び図6にも示すように、ミシンアーム軸48を中心に回動可能に設けられている。
【0019】
上記ミシンアーム駆動機構46における第1の千鳥レバーロッド47の他端部は、第1の千鳥クランクレバー49の一端部に回動可能に連結されている。第1の千鳥クランクレバー49の基端部は、フレーム21に回転自在に設けられたクランク軸50と一体に回動するように連結されている。クランク軸50は、フレーム21に軸受を介してこれを貫通する状態で設けられていて、このクランク軸50には、第1の千鳥クランクレバー49とは反対側に位置させて第2の千鳥クランクレバー51(図5、図6及び図9参照)の基端部がクランク軸50と一体に回動するように連結されている。第2の千鳥クランクレバー51の一端部には第2の千鳥レバーロッド52の一端部が回動可能に連結され、第2の千鳥レバーロッド52の他端部は、伝動レバー53に回動可能に連結されている。
【0020】
伝動レバー53は、フレーム21に回動自在に支持されたレバー軸54にこれと一体に回動するように連結されている。レバー軸54の先端部にはアーム駆動用レバー55の基端部がこれと一体に回動するように連結されていて、このアーム駆動用レバー55の先端部が、ミシンアーム45に回動可能に連結されたアーム駆動用レバーロッド56の端部に回動可能に連結されている。なお、アーム駆動用レバー55には、調整用の長孔55aが形成されていて、当該アーム駆動用レバー55とアーム駆動用レバーロッド56との連結位置を調整できる構成となっている。
【0021】
ここで、上記千鳥用カム31により千鳥用レバー34が第1の位置に回動された状態にあっては、ミシンアーム駆動機構46によりミシンアーム45は、図5に示す上位置に保持される。千鳥用カム31の回転に伴い千鳥用レバー34が第1の位置から第2の位置へ回動するようになると(図4の矢印S1参照)、第1の千鳥クランクレバー49、クランク軸50及び第2の千鳥クランクレバー51が矢印S2方向(図4及び図5参照)へ一体に回動し、これに伴い伝動レバー53、レバー軸54及びアーム駆動用レバー55が図5中矢印S3方向へ一体に回動するようになり、これに伴いアーム駆動用レバーロッド56によりミシンアーム45が、ミシンアーム軸48を支点に矢印S4方向へ回動して図6に示す下位置に位置されるようになる。
【0022】
また、ミシンアーム45が下位置に位置された状態から、千鳥用カム31の回転に伴い千鳥用レバー34が第2の位置から第1の位置へ回動(図4の矢印S1とは反対方向へ回動)するようになると、第1の千鳥クランクレバー49、クランク軸50及び第2の千鳥クランクレバー51が矢印S2とは反対方向へ一体に回動し、これに伴い伝動レバー53、レバー軸54及びアーム駆動用レバー55が矢印S3とは反対方向へ一体に回動するようになり、これに伴いアーム駆動用レバーロッド56によりミシンアーム45が、ミシンアーム軸48を支点に矢印S4とは反対方向へ回動して図5に示す上位置に位置されるようになる。
【0023】
ミシンアーム45の上部には、針アーム60が針アーム軸61を中心に回動可能に設けられている。針アーム60の先端部には円弧状をなす縫い針62が取着されていて、縫い針62は、針案内アーム63の案内部63aに挿通されている。なお、縫い針62には上糸が通される。針アーム軸61には、針アームレバー64も回動可能に設けられていて、この針アームレバー64と針アーム60とは一体に回動するように連結されている。針アームレバー64の端部には、クランクロッド65の一端部が回動可能に連結されていて、このクランクロッド65の他端部が、ミシンアーム45の側面に回転可能に設けられたクランク66に回転可能に連結されている。
【0024】
図9に示すように、上記ハンドル軸22においてハンドル25とは反対側の端部にはスプロケット67が取着され、このスプロケット67と、ミシンアーム軸48に取着されたスプロケット68との間にチェーン69が掛けられている。また、ミシンアーム軸48には、スプロケット68と一体に回転するもう一つのスプロケット70が設けられていて、このスプロケット70と、ミシンアーム48の裏側において上記クランク66と一体に回転するように設けられたスプロケット71(図5、図6参照)との間にチェーン72が掛けられている。
【0025】
ここで、針モータ19の回転は、スプロケット20、23及びチェーン24を介してハンドル軸22に伝えられ、このハンドル軸22の回転は、スプロケット67及びチェーン69を介してスプロケット68に伝えられ、このスプロケット68の回転は、スプロケット70、71及びチェーン72を介してクランク66に伝えられ、このクランク66の回転により、クランクロッド65及び針アームレバー64を介して針アーム60及び縫い針62が図5中矢印S5方向に往復動されるようになっていて、これらの機構が、針モータ19の回転に基づき縫い針62を往復動させる針駆動機構73を構成している。
【0026】
なお、図3において、畳載置台12付近には、詳細には示されてはいないが、畳載置台12に載せられた畳11を所定の位置にセットするためのセット機構74や、畳11を押え固定するためのクランプバー75aを備えた締付け機構75、畳11の向きを180度転換するための方向転換機構76などが設けられている。セット機構74には、畳11のレール13b側への位置を規制する畳ストッパ74aが設けられていて、この畳ストッパ74aは、縫着機本体14による縫着時には縫着機本体14の邪魔にならない退避位置に移動される。クランプバー75aには、縫着運転の自動運転を開始するスタートスイッチ77が設けられている。また、縫着装置の端部には制御盤78が設けられていて、この制御盤78に、切替手段を構成する縫着切替スイッチ79(図10参照)や、電源スイッチなどの他の操作スイッチ80(図10参照)が設けられている。
【0027】
図10には、本発明の要旨に関係した電気的構成が機能ブロックによって示されている。この図10において、上記縫着切替スイッチ79は、3ポジションスイッチとなっていて、後述する千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとの3つの縫い方を選択できる構成となっている。制御手段たる制御装置81は、マイクロコンピュータを含んだ構成のもので、制御手段を構成するものである。この制御装置81には、上記スタートスイッチ77、縫着切替スイッチ79、他の操作スイッチ80、前記直線送りセンサ30、千鳥用送りセンサ43などからの信号が入力される。そして、制御装置81は、これらの入力信号と、予め備えた制御プログラムに基づき、前記針モータ19、送りモータ15、シリンダ41を制御することにより、後述する千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとを実行する機能を有している。
【0028】
次に、上記のような構成を有する畳用縫着装置10において、まずは千鳥縫いを行う場合についての手順を説明する。千鳥縫いを行う場合には、縫着切替スイッチ79により「千鳥縫い」を選択しておく。そして、縫着する対象の畳11を畳載置台12上に載せ、スタートスイッチ77を押圧操作すると、まずセット機構74により畳11が所定の位置にセットされると共に、締付け機構75により畳11が所定の位置に固定される。この後、制御装置81は、千鳥縫いに先立って、まず縫い針62を動作させて図示しない止め縫い(同じところを何回も縫う)を行う。この止め縫いに続いて、図11に示す千鳥縫いを実行する。この千鳥縫いについて、主に図11及び図12を参照して説明する。
【0029】
ここで、図11は千鳥縫いの縫い方を説明するためのもので、(a)は畳11の側面11aにおける千鳥縫いの縫い目模様を示し、(b)は畳11の側面11a部分を裏面11b側から見た斜視図を示している。また、図12は、千鳥縫いの際の、各センサ30、43のオン/オフ状態、シリンダ41の動作状態、送りモータ15による送り出力、ミシンアーム45の動作状態、及び縫い針62の動作状態を示している。
【0030】
この図12において、直線送りセンサ30の斜線部分は、直線送りカム29の凸部に対応して直線送りセンサ30がオンしている領域を示している。なお、千鳥縫いの場合には、制御装置81は、この直線送りセンサ30の信号は使用しない(無視する)。千鳥用送りセンサ43の斜線部分は、千鳥用送りカム32の凸部に対応して千鳥用送りセンサ43がオンしている領域を示している。シリンダ41については、千鳥縫いの場合には制御は行わず、レバー保持機構42による千鳥用レバー34の保持は常時解除した状態とする。送り出力が出されているときには、送り機構16により縫着機本体14が、縫い進み方向である矢印イ方向(図3、図11参照)へ移動される。ミシンアーム45は、千鳥用カム31によって移動される千鳥用レバー34の移動に伴い、ミシンアーム駆動機構46によって上位置と下位置との間で移動される。縫い針62の動作状態において、上死点とは、針アーム60が図5中、時計回り方向に最も回動し、縫い針62の先端が畳11から抜かれて針案内アーム63の案内部63aに位置した状態であり、下死点とは、針アーム60が図5中、反時計回り方向に最も回動し、縫い針62の先端が畳11側に入り込んだ状態である。
【0031】
いま、図12において、A1で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が往復動されるときからみてみる。ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が図4中反時計回り方向に回動すると、上糸85(図11参照)を保持した縫い針62が畳11の側面11aから裏面11b側へ斜めに刺し通される。そして、その縫い針62が下死点を経て時計回り方向へ回動されて上死点側へ戻されることで、第1の往復縫い部87(図11(b)の点線部分参照)が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B1(図11(b)参照)が形成される。
【0032】
そして、千鳥用カム31の回動に伴いミシンアーム45が下位置へ向けて回動を始めると同時に、千鳥用送りセンサ43がオン(送り信号がオン)する(図12のA2参照)。すると、制御装置81は、送りモータ15により縫着機本体14の矢印イ方向への移動を開始させる(送り出力参照)。そして、図12のA3で示すように、ミシンアーム45が下位置を経て上位置へ戻る間に、縫い針62が1回往復動して、畳11の下方において1回目の空縫い動作を行う。これに伴い、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B2が形成される。縫い針62は上死点へ戻ると、再び下死点側に向けて移動を開始する。また、ミシンアーム45が上位置へ戻ると同時に、千鳥用送りセンサ43がオフ(送り信号が停止)する(図12のA4参照)。すると、制御装置81は、送りモータ15による縫着機本体14の矢印イ方向への送りを停止する。
【0033】
そして、図12のA5で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、再び縫い針62が1回往復動して第2の往復縫い部88が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B3が形成される。これにより、畳11の側面11aに、斜めの2本の押え部89a、89bによりV字状の縫い目が形成される。このような動作を繰り返すことにより、畳11の側面11aにおいて、上糸85が、縫着機本体14の縫い進み方向である矢印イ方向へ向かうに従い上下にジグザグ状となる、千鳥縫いが行われる。
【0034】
次に、本畳用縫着装置10により、略台形状の縫い目模様をなす、いわゆる新台形縫いを行う場合についての手順を説明する。新台形縫いを行う場合には、縫着切替スイッチ79により「新台形縫い」を選択しておく。そして、千鳥縫いの場合と同様に、縫着する対象の畳11を畳載置台12上に載せ、スタートスイッチ77を押圧操作すると、セット機構74により畳11が所定の位置にセットされると共に、締付け機構75により畳11が所定の位置に固定される。この後、制御装置81は、まず止め縫いを行い、この止め縫いに続いて、図1に示す新台形縫いを実行する。この新台形縫いについて、主に図1及び図2を参照して説明する。
【0035】
ここで、図1は新台形縫いの縫い方を説明するためのもので、(a)は畳11の側面11aにおける新台形縫いの縫い目模様を示し、(b)は畳11の側面11a部分を裏面11b側から見た斜視図を示している。また、図2は、新台形縫いの際の、各センサ30、43のオン/オフ状態、シリンダ41の動作状態、送りモータ15による送り出力、ミシンアーム45の動作状態、及び縫い針62の動作状態を示している。
【0036】
いま、図2において、C1で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が往復動されるときからみてみる。ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が1回往復動されると、縫い針62が、畳11の側面11aにおいて所定の高さ位置から裏面11b側へ刺し通され、これにより第1の往復縫い部90(図1(b)の点線部分参照)が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D1(図1(b)参照)が形成される。
【0037】
そして、図2のC2で示すように、ミシンアーム45が上位置から下位置を経て上位置へ戻る間に、縫い針62が1回往復動して、畳11の下方において、1回目の空縫い動作を行う。このとき、ミシンアーム45が上位置から下位置へ向けて移動する際(図2のC3参照)と、下位置から上位置へ向けて移動する際(図2のC4参照)に直線送りセンサ30がオンする。制御装置81は、その直線送りセンサ30がオンしている間、縫着機本体14を矢印イ方向へ所定距離移動させる。これに伴い、畳11の側面11aにおいて、左下がりの斜め部92aが形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D2が形成される。
【0038】
ミシンアーム45が上位置に戻ると、制御装置81は、シリンダ41を動作させる(図2のC5参照)。これにより、レバー保持機構42により千鳥用レバー34が第1の位置(図4の実線位置参照)に保持されるようになり、延いてはミシンアーム45が上位置に保持された状態で、図2のC6で示すように、縫い針62が1回往復動され、これにより第2の往復縫い部91が形成される。このとき、縫い針62の刺込み位置は、前記第1の往復縫い部90の刺込み位置と同じ高さ位置でなされるものである。これらの動作に伴い、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D3が形成され、更に、畳11の側面11aに、左上がりの斜め部92bが形成され、以って畳11の稜線11cに対して逆ハの字状をなす締付け部92が形成される。
【0039】
そして、制御装置81は、直線送りセンサ30がオンしている間(送り信号が出力されている間)、縫着機本体14を矢印イ方向へ移動させる(図2のC7参照)。この後、図2のC8で示すように、縫着機本体14の移動を停止させた状態で、縫い針62が、前記第2の往復縫い部91の刺込み位置と同じ高さの刺込み位置にて、1回往復動されることにより、第3の往復縫い部が形成93が形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D4が形成される。また、畳11の側面11aにおいて、畳11の稜線11cと平行となる第1の押え部94が形成される。
【0040】
そして、制御装置81は、再度、直線送りセンサ30がオンしている間、縫着機本体14を矢印イ方向へ移動させる(図2のC9参照)。そして、千鳥用送りセンサ43がオフすることに伴い、シリンダ41の動作を停止させ(図2のC10参照)、レバー保持機構42による千鳥用レバー34の保持を解除する。これにより、千鳥用レバー34は、千鳥用カム31により、第1の位置と第2の位置との間での移動が可能なる。
【0041】
この後、図2のC11で示すように、縫着機本体14の移動を停止させ、且つミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が、前記第3の往復縫い部93の刺込み位置と同じ高さの刺込み位置にて、1回往復動されることにより、再び第1の往復縫い部90が形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D1が再び形成される。また、畳11の側面11aにおいて、畳11の稜線11cと平行となる第2の押え部96が形成される。
【0042】
このような動作を繰り返すことにより、図1に示すように、畳11の側面11aにおいて、前記左下がりの斜め部92a、換言すれば第1の押え部94に隣り合った逆ハの字状の締付け部92の一辺92aと、前記第1及び第2の押え部94、96と、前記左上がりの斜め部92b、換言すれば前記第2の押え部96に隣り合った逆ハの字状の締付け部92の一辺92aとにより台形状の連続縫い目が、縫着機本体14の縫い進み方向である矢印イ方向に並んだような、新台形縫いが行われる。
【0043】
なお、直線縫いは、縫着切替スイッチ79により「直線縫い」を選択し、周知の縫着方法で行なわれていくものであるので、その詳細は省略する。
このように構成した実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
まず、新台形縫いは、梯子縫いとは違い、垂直部に相当する部分がなく、その部分が左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bとなっている。このため、薄畳の場合であっても、畳の表面から縫い糸が見え難くできる。また、新台形縫いは、台形の上辺(上底)において、第1の押え部94と第2の押え部96との間に往復縫い部93がある。このため、糸締めが強くなり、框縫いや、縁布なしの畳の長辺側を縫うのに好適させることが可能となる。
【0044】
また、新台形縫いは、左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bで、つまりは左右両側辺に相当する部分で送りが入るので、縫着時間を短縮させることができる。
また、特に上記した実施例においては、千鳥縫い用の畳用縫着装置10を用い、切替手段である縫着切替スイッチ79を切替えるだけで、千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとを切替えることができる。従って、カム等、大きな構造変更をすることなく上記3種類の縫い方を容易に切替えることができる。
【0045】
なお、上記した実施例で、本発明を、畳11の長辺側を縫着する畳用縫着装置10を用いた例にて示したが、本発明は、畳11の短辺(框)側を縫着する畳用縫着装置を用いても同様に行うことができるので、縫着装置は特に限定されるものではない。
また、千鳥送りセンサ43のセンシング時間やセンシング開始及び終了時間のタイミング等を、直線送りセンサ30のそれに置き換えて代替して制御することにより、前記千鳥用送りセンサ43を使用しないような構成とすることもできる。
【0046】
また、本発明は、縁布の有無に関わらず利用することができることは言うまでもない。
一方、図13〜図16には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第1例が示されている。この畳100は、新台形縫いを短辺側側面100aに施し、長辺側側面100bに千鳥縫いを施した例である。ここで、図13及び図16では、説明の都合上、畳100を点線で示し、縫い目模様(縫い糸)を実線で示している。
【0047】
また、図17及び図20には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第2例が示されている。この畳200は、短辺側側面200aに梯子縫いを施し、長辺側側面200bに新台形縫いを施した例である。
また、図21及び図24には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第3例が示されている。この畳300は、短辺側側面300a及び長辺側側面300bの両方に新台形縫いを施した例である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、(a)は新台形縫い部分の正面図、(b)はその部分を裏面側から見た斜視図
【図2】新台形縫いの際の、センサ信号、送り出力、シリンダ、ミシンアーム及び縫い針の動作状態を示すタイムチャート
【図3】本発明の畳用縫着装置において、その全体の概略的な平面図
【図4】要部の右側面図
【図5】ミシンアームが上位置にある状態の要部の左側面図
【図6】ミシンアームが下位置にある状態の図5相当図
【図7】ハンドル側からの要部の斜視図
【図8】ハンドル及び一部のフレームを取り除いた状態での要部の斜視図
【図9】ミシンアーム側からの要部の斜視図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【図11】千鳥縫いにおける図1相当図
【図12】千鳥縫いにおける図2相当図
【図13】畳の第1例(短辺に新台形縫い、長辺に千鳥縫いを施した畳)を示すもので、(a)は正面、左側面及び平面を表す斜視図、(b)は背面、右側面及び底面を表す斜視図
【図14】畳の第1例を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は底面図
【図15】(a)は図14におけるA−A´部分拡大図、(b)は図14におけるB−B´部分拡大図
【図16】(a)は図14におけるC−C´部とD部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図14におけるE−E´部とF部との重なり範囲の部分拡大図
【図17】畳の第2例(短辺に梯子縫い、長辺に新台形縫いを施した畳)を示す図13相当図
【図18】畳の第2例を示す図14相当図
【図19】(a)は図18におけるG−G´部分拡大図、(b)は図18におけるH−H´部分拡大図
【図20】(a)は図18におけるI−I´部とJ部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図18におけるK−K´部とL部との重なり範囲の部分拡大図
【図21】畳の第3例(短辺及び長辺の両方に新台形縫いを施した畳)を示す図13相当図
【図22】畳の第3例を示す図14相当図
【図23】(a)は図22におけるM−M´部分拡大図、(b)は図22におけるN−N´部分拡大図
【図24】(a)は図22におけるO−O´部とP部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図22におけるQ−Q´部とR部との重なり範囲の部分拡大図
【図25】梯子縫いを示す図1相当図
【符号の説明】
【0049】
図面中、10は畳用縫着装置、11は畳(畳床)、11aは(畳11の)側面、11bは(畳11の)裏面、11cは(畳11の)稜線、14は縫着機本体、16は送り機構、19は針モータ、29は直線送りカム(送りカム)、30は直線送りセンサ(送りセンサ)、31は千鳥用カム、32は千鳥用送りカム(送りカム)、34は千鳥用レバー(レバー)、42はレバー保持機構(レバー保持手段)、43は千鳥用送りセンサ(送りセンサ)、45はミシンアーム、46はミシンアーム駆動機構、62は縫い針、73は針駆動機構、縫着切替スイッチ79(切替手段)、81は制御装置(制御手段)、85は上糸、86は下糸、90は第1の往復縫い部、91は第2の往復縫い部、92は締付け部、92aは左下がり斜め部(第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺)、92bは左上がり斜め部(第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺)、93は第3の往復縫い部、94は第1の押え部、96は第2の押え部である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳表または縁を畳床の側面に縫着するための畳側面の縫着方法及び畳用縫着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、畳を製造する場合において、畳床に畳表を縫着する場合、畳床に被せられた畳表の長手方向両端部を畳床側へ折り曲げ、畳床の短辺側の側面(框(かまち)面)において、畳床に畳表を縫い付ける、いわゆる框縫いが行われる。また、畳の長辺側においては、畳表の縁部に縫い付けられた縁布を畳床の側面側へ折り返し、その折り返した縁布を畳床の側面に縫い付ける、いわゆる返し縫いが行われる。なお、柔道場用の畳のように、縁布なしの畳の場合には、畳表の長辺側の端部を畳床の側面側へ折り曲げ、その折り曲げた畳表を畳床の側面に縫い付けることが行われる。
【0003】
上記した框縫いを行う場合には、強固に糸締めをする必要があることから、一般に梯子縫いと呼ばれる縫い方が用いられ、また、上記した縁布の返し縫いを行う場合には、軽く糸締めをすればよいことから、一般に千鳥縫いと呼ばれる縫い方が用いられる。従来、畳の側面を縫着する際に使用されるこの種の畳用縫着装置としては、上記梯子縫いは梯子縫い専用機が使用され、上記千鳥縫いは千鳥縫い専用機が使用されるのが一般的であった。
【0004】
本件発明と関連した先行技術としては、千鳥縫いと、梯子縫いに似た変形梯子縫いとを、切替えスイッチにより切り替えられる構成としたものが考えられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−301282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図25には、畳1の短辺側の側面(框の側面)1aに施された梯子縫いの縫い目模様が示されている。梯子縫いの縫い目模様としては、側面1aから裏面1bに向かって上下方向に延びる2本の垂直部2と、畳1の稜線1cと平行な水平部3とを有した模様となっている。なお、図25(a)は畳1の側面図、(b)は前記(a)周辺における透視斜視図である。
【0006】
ところで、畳としては、厚さが50〜60mm程度が一般的であるが、近年では住宅事情等により、厚さが10〜20mm程度の薄いものも提供されるようになっている。このような薄畳の框を上記梯子縫いで縫った場合、押さえは利き易くなるものの、上下方向に延びる2本の垂直部2部分があるため、畳1の表面から見た際に、その部分の縫い糸が見え易く、外観を悪くするという不具合があった。更に、垂直部2は、同じ所を2度縫込むことにより形成され、このとき送りが入らないようになっているので、結果的に縫着時間が長くなってしまっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、一般的な厚さの畳だけでなく、薄畳の場合であっても、見た目が綺麗で、しかも押さえが利き易く、縫う時間も短くできる畳側面の縫着方法を提供することにある。また、第2の目的は、そのような縫着が可能で、しかも、千鳥縫いとの切替えが容易な畳用縫着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した第1の目的を達成するために、本発明の畳側面の縫着方法は、上糸と下糸との二本の縫い糸により畳表または縁布を畳床の側面に縫着する際に、
(イ)上糸を畳床側面の所定の高さ位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後に、元の位置に戻して第1の往復縫い部を形成し、
(ロ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に所定距離移動させながら、上糸を畳床の側面下部において空刺し動作させることにより、畳床の下側の稜線近傍において下糸と掛止めして畳床側面に逆ハの字状の締付け部を形成し、
(ハ)次に、前記所定距離移動した地点で、前記第1の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さ位置で再度往復動作させて、前記第1の往復縫い部と同様な第2の往復縫い部を形成し、
(ニ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、上糸を前記第2の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後、元の位置に戻して第3の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第1の押え部を形成し、
(ホ)次に、再び上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、前記第3の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から前記(イ)と同様な第1の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第2の押え部を形成する。
以下、前記(イ)〜(ホ)の動作を順に繰り返し、畳床の側面に、前記第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより台形状の連続縫い目を形成するようにしたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【0009】
第2の目的を達成するために、本発明の畳用縫着装置は、畳の側面を縫着する畳用縫着装置において、畳の辺に沿って移動可能に設けられた縫着機本体と、
この縫着機本体を移動させる送り機構と、前記縫着機本体に設けられた針モータと、
前記縫着機本体に上位置と下位置との間で移動されるように設けられたミシンアームと、上糸を保持して前記ミシンアームに往復動可能に設けられ、前記ミシンアームが前記上位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の側面から下面側へ刺し込んでその下面側において下糸と絡める縫い動作を行い、前記ミシンアームが前記下位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の下側において下糸と絡める空縫い動作を行う縫い針と、前記針モータの回転に基づき前記縫い針を往復動させる針駆動機構と、前記針モータの回転に基づき回転される千鳥用カムと、この千鳥用カムにより第1の位置と第2の位置との間で移動されるレバーと、このレバーが前記第1の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記上位置に移動させると共に、前記レバーが前記第2の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記下位置に移動させるミシンアーム駆動機構と、前記レバーを前記第1の位置に選択的に保持するように設けられ、そのレバーを第1の位置に保持することに伴い、前記ミシンアーム駆動機構を介して前記ミシンアームを前記上位置に保持させるレバー保持手段と、前記針モータの回転に基づき回転される送りカムと、この送りカムに応動する送りセンサと、千鳥縫いと新台形縫いとを選択的に切り替える切替手段と、この切替手段、前記送りセンサの信号に基づき、前記送り機構、針モータ及びレバー保持手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記切替手段により千鳥縫いが選択された場合には、前記レバー保持手段による前記レバーの保持を常時解除した状態とし、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ移動させながら、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、前記送りセンサの送り信号の停止に基づき前記縫着機本体の移動を停止させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針による第2の往復縫い部を形成することを繰り返して千鳥縫いを実行させ、前記切替手段により新台形縫いが選択された場合には、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させると共に、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第2の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第3の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて前記第1の往復縫い部を形成するということを繰り返して新台形縫いを実行させることを特徴とする(請求項2の発明)。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の畳側面の縫着方法によれば、前記第1の押え部と隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部と隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより形成された連続上の台形縫い目の、いわゆる新台形縫いは、台形の左右両辺側に相当する縫い糸が、上下方向ではなく斜めになる。従って、薄畳の側面を縫着した場合であっても、畳の表面から見た際に、その部分の縫い糸は見え難くなるため、見た目が綺麗で、薄畳に適した縫い方ができる。更に、新台形縫いは、前述した梯子縫いと同様、強固に糸締めすることができると共に、台形の左右両側辺に相当する部分でも送りが入るので、梯子縫いに比べて縫着時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明の畳用縫着装置によれば、切替手段により新台形縫いを選択するだけで、制御手段により上記した新台形縫いを実行することができる。従って、カムなどの機械部品を交換して改造するような面倒なことをすることなく、千鳥縫いと新台形縫いとを簡単に切り替えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の畳側面の縫着方法及び畳用縫着装置を図1〜図12を参照して説明する。
まず、図3に、畳側面の縫着を行うための畳用縫着装置10全体の概略図を示す。この図3において、畳11を載置する畳載置台12の長手方向に沿って一対のレール13a、13bが設けられていて、縫着機本体14は、そのレール13a、13bに沿って往復移動可能に設けられている。この縫着機本体14は、当該縫着機本体14の下部に設けられたサーボモータからなる送りモータ15(図4参照)を駆動源とする送り機構16により移動されるようになっている。送り機構16としては、詳細には示されていないが、スプロケット17とチェーン18を用いた周知構成のものである。
【0013】
上記縫着機本体14の構成について、図4ないし図10も参照して説明する。縫着機本体14の下部には、図4に示すように針モータ19も設けられている。この針モータ19の回転軸19aに取着されたスプロケット20と、図7及び図8にも示すように、縫着機本体14のフレーム21に回転自在に設けられたハンドル軸22に取着されたスプロケット23との間にチェーン24が掛けられていて、針モータ19の回転がチェーン24を介してハンドル軸22に伝えられるようになっている。針モータ19の回転軸19aの回転方向は、図4中矢印R方向である。ハンドル軸22は、フレーム21に軸受を介してこれを貫通する状態で設けられていて、一端部に円形のハンドル25が取着されている。
【0014】
上記フレーム21には、ハンドル軸22の近傍に位置させて当該ハンドル軸22と平行にカム軸26が回転可能に設けられている。ハンドル軸22に設けられた駆動ギヤ27と、カム軸26に設けられた従動ギヤ28とが噛み合っていて、ハンドル軸22の回転が、両ギヤ27、28を介してカム軸26に伝えられるようになっている。この場合、従動ギヤ28の歯数は駆動ギヤ27の歯数の2倍となっていて、駆動ギヤ27が2回転すると従動ギヤ28が1回転する構成となっている。上記ハンドル軸22には、薄板状の直線送りカム(送りカム)29が当該ハンドル軸22と一体に回転するように取着されている。この直線送りカム29の近傍には、当該直線送りカム29のカム形状に応動してオン/オフする直線送りセンサ(送りセンサ)30が設けられている。
【0015】
上記カム軸26には、厚板状の千鳥用カム31と、それぞれ薄板状の千鳥用送りカム(送りカム)32及び停止カム33とが、当該カム軸26と一体に回転するように取着されている。フレーム21には、千鳥用カム31の近傍に位置させて、ほぼL字状をなす千鳥用レバー34(レバー)が支点35を中心に回動可能に取り付けられている。この千鳥用レバー34には、千鳥用カム31の外周部に沿って転動するローラ36が取着されていて、千鳥用レバー34は、ばね部材37(図4参照)によりローラ36が千鳥用カム31の外周部に接触する方向に付勢されている。千鳥用カム31の外周形状はほぼ扇状をなしている。千鳥用レバー34は、ローラ36が千鳥用カム31の突出量の大きい部分に接触した状態では、図4に実線で示す第1の位置に位置され、ローラ36が千鳥用カム31の突出量の小さい部分に接触した状態では、図4に二点鎖線で示す第2の位置に位置されるようになっている。従って、千鳥用レバー34は、千鳥用カム31によって、第1の位置と第2の位置との間で回動(移動)されるようになっている。
【0016】
千鳥用レバー34の一端部には、引掛け部38が形成されている。この引掛け部38の近傍に位置させて上記フレーム21に、フック39が支点40を中心に回動可能に取り付けられていると共に、エアーシリンダからなるシリンダ41も取り付けられている。このシリンダ41のロッド41aの先端部がフック39に連結されていて、シリンダ41によりフック39が回動されるようになっている。ここで、千鳥用レバー34が図4に実線で示す第1の位置に位置された状態で、シリンダ41の駆動に基づきフック39が千鳥用レバー34の引掛け部38に引っ掛かった状態となると(図4の二点鎖線参照)、そのフック39により千鳥用レバー34が第1の位置に保持されるようになる。この場合、フック39とシリンダ41は、千鳥用レバー34を選択的に第1の位置に保持するレバー保持手段に相当するレバー保持機構42を構成している。
【0017】
上記千鳥用送りカム32の近傍には、当該千鳥用送りカム32のカム形状に応動してオン/オフする千鳥用送りセンサ(送りセンサ)43(図8参照)が設けられ、また、上記停止カム33の近傍には、当該停止カム33のカム形状に応動してオン/オフする停止センサ44(図8参照)が設けられている。なお、停止センサ44は、畳11の側面を後述する縫い針により縫着する際において、その縫い終わり時に縫い針が畳11から抜けた状態を見ることと、縫い始めと縫い終わりに行われる止め縫いの際に用いられるものである。
【0018】
上記千鳥用レバー34の他端部には、当該千鳥用レバー34の回動に基づきミシンアーム45を駆動するためのミシンアーム駆動機構46における第1の千鳥レバーロッド47の一端部が回動可能に連結されている。ミシンアーム45は、フレーム21(図9参照)を挟んで上記ハンドル25とは反対側に配置されていて、図5及び図6にも示すように、ミシンアーム軸48を中心に回動可能に設けられている。
【0019】
上記ミシンアーム駆動機構46における第1の千鳥レバーロッド47の他端部は、第1の千鳥クランクレバー49の一端部に回動可能に連結されている。第1の千鳥クランクレバー49の基端部は、フレーム21に回転自在に設けられたクランク軸50と一体に回動するように連結されている。クランク軸50は、フレーム21に軸受を介してこれを貫通する状態で設けられていて、このクランク軸50には、第1の千鳥クランクレバー49とは反対側に位置させて第2の千鳥クランクレバー51(図5、図6及び図9参照)の基端部がクランク軸50と一体に回動するように連結されている。第2の千鳥クランクレバー51の一端部には第2の千鳥レバーロッド52の一端部が回動可能に連結され、第2の千鳥レバーロッド52の他端部は、伝動レバー53に回動可能に連結されている。
【0020】
伝動レバー53は、フレーム21に回動自在に支持されたレバー軸54にこれと一体に回動するように連結されている。レバー軸54の先端部にはアーム駆動用レバー55の基端部がこれと一体に回動するように連結されていて、このアーム駆動用レバー55の先端部が、ミシンアーム45に回動可能に連結されたアーム駆動用レバーロッド56の端部に回動可能に連結されている。なお、アーム駆動用レバー55には、調整用の長孔55aが形成されていて、当該アーム駆動用レバー55とアーム駆動用レバーロッド56との連結位置を調整できる構成となっている。
【0021】
ここで、上記千鳥用カム31により千鳥用レバー34が第1の位置に回動された状態にあっては、ミシンアーム駆動機構46によりミシンアーム45は、図5に示す上位置に保持される。千鳥用カム31の回転に伴い千鳥用レバー34が第1の位置から第2の位置へ回動するようになると(図4の矢印S1参照)、第1の千鳥クランクレバー49、クランク軸50及び第2の千鳥クランクレバー51が矢印S2方向(図4及び図5参照)へ一体に回動し、これに伴い伝動レバー53、レバー軸54及びアーム駆動用レバー55が図5中矢印S3方向へ一体に回動するようになり、これに伴いアーム駆動用レバーロッド56によりミシンアーム45が、ミシンアーム軸48を支点に矢印S4方向へ回動して図6に示す下位置に位置されるようになる。
【0022】
また、ミシンアーム45が下位置に位置された状態から、千鳥用カム31の回転に伴い千鳥用レバー34が第2の位置から第1の位置へ回動(図4の矢印S1とは反対方向へ回動)するようになると、第1の千鳥クランクレバー49、クランク軸50及び第2の千鳥クランクレバー51が矢印S2とは反対方向へ一体に回動し、これに伴い伝動レバー53、レバー軸54及びアーム駆動用レバー55が矢印S3とは反対方向へ一体に回動するようになり、これに伴いアーム駆動用レバーロッド56によりミシンアーム45が、ミシンアーム軸48を支点に矢印S4とは反対方向へ回動して図5に示す上位置に位置されるようになる。
【0023】
ミシンアーム45の上部には、針アーム60が針アーム軸61を中心に回動可能に設けられている。針アーム60の先端部には円弧状をなす縫い針62が取着されていて、縫い針62は、針案内アーム63の案内部63aに挿通されている。なお、縫い針62には上糸が通される。針アーム軸61には、針アームレバー64も回動可能に設けられていて、この針アームレバー64と針アーム60とは一体に回動するように連結されている。針アームレバー64の端部には、クランクロッド65の一端部が回動可能に連結されていて、このクランクロッド65の他端部が、ミシンアーム45の側面に回転可能に設けられたクランク66に回転可能に連結されている。
【0024】
図9に示すように、上記ハンドル軸22においてハンドル25とは反対側の端部にはスプロケット67が取着され、このスプロケット67と、ミシンアーム軸48に取着されたスプロケット68との間にチェーン69が掛けられている。また、ミシンアーム軸48には、スプロケット68と一体に回転するもう一つのスプロケット70が設けられていて、このスプロケット70と、ミシンアーム48の裏側において上記クランク66と一体に回転するように設けられたスプロケット71(図5、図6参照)との間にチェーン72が掛けられている。
【0025】
ここで、針モータ19の回転は、スプロケット20、23及びチェーン24を介してハンドル軸22に伝えられ、このハンドル軸22の回転は、スプロケット67及びチェーン69を介してスプロケット68に伝えられ、このスプロケット68の回転は、スプロケット70、71及びチェーン72を介してクランク66に伝えられ、このクランク66の回転により、クランクロッド65及び針アームレバー64を介して針アーム60及び縫い針62が図5中矢印S5方向に往復動されるようになっていて、これらの機構が、針モータ19の回転に基づき縫い針62を往復動させる針駆動機構73を構成している。
【0026】
なお、図3において、畳載置台12付近には、詳細には示されてはいないが、畳載置台12に載せられた畳11を所定の位置にセットするためのセット機構74や、畳11を押え固定するためのクランプバー75aを備えた締付け機構75、畳11の向きを180度転換するための方向転換機構76などが設けられている。セット機構74には、畳11のレール13b側への位置を規制する畳ストッパ74aが設けられていて、この畳ストッパ74aは、縫着機本体14による縫着時には縫着機本体14の邪魔にならない退避位置に移動される。クランプバー75aには、縫着運転の自動運転を開始するスタートスイッチ77が設けられている。また、縫着装置の端部には制御盤78が設けられていて、この制御盤78に、切替手段を構成する縫着切替スイッチ79(図10参照)や、電源スイッチなどの他の操作スイッチ80(図10参照)が設けられている。
【0027】
図10には、本発明の要旨に関係した電気的構成が機能ブロックによって示されている。この図10において、上記縫着切替スイッチ79は、3ポジションスイッチとなっていて、後述する千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとの3つの縫い方を選択できる構成となっている。制御手段たる制御装置81は、マイクロコンピュータを含んだ構成のもので、制御手段を構成するものである。この制御装置81には、上記スタートスイッチ77、縫着切替スイッチ79、他の操作スイッチ80、前記直線送りセンサ30、千鳥用送りセンサ43などからの信号が入力される。そして、制御装置81は、これらの入力信号と、予め備えた制御プログラムに基づき、前記針モータ19、送りモータ15、シリンダ41を制御することにより、後述する千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとを実行する機能を有している。
【0028】
次に、上記のような構成を有する畳用縫着装置10において、まずは千鳥縫いを行う場合についての手順を説明する。千鳥縫いを行う場合には、縫着切替スイッチ79により「千鳥縫い」を選択しておく。そして、縫着する対象の畳11を畳載置台12上に載せ、スタートスイッチ77を押圧操作すると、まずセット機構74により畳11が所定の位置にセットされると共に、締付け機構75により畳11が所定の位置に固定される。この後、制御装置81は、千鳥縫いに先立って、まず縫い針62を動作させて図示しない止め縫い(同じところを何回も縫う)を行う。この止め縫いに続いて、図11に示す千鳥縫いを実行する。この千鳥縫いについて、主に図11及び図12を参照して説明する。
【0029】
ここで、図11は千鳥縫いの縫い方を説明するためのもので、(a)は畳11の側面11aにおける千鳥縫いの縫い目模様を示し、(b)は畳11の側面11a部分を裏面11b側から見た斜視図を示している。また、図12は、千鳥縫いの際の、各センサ30、43のオン/オフ状態、シリンダ41の動作状態、送りモータ15による送り出力、ミシンアーム45の動作状態、及び縫い針62の動作状態を示している。
【0030】
この図12において、直線送りセンサ30の斜線部分は、直線送りカム29の凸部に対応して直線送りセンサ30がオンしている領域を示している。なお、千鳥縫いの場合には、制御装置81は、この直線送りセンサ30の信号は使用しない(無視する)。千鳥用送りセンサ43の斜線部分は、千鳥用送りカム32の凸部に対応して千鳥用送りセンサ43がオンしている領域を示している。シリンダ41については、千鳥縫いの場合には制御は行わず、レバー保持機構42による千鳥用レバー34の保持は常時解除した状態とする。送り出力が出されているときには、送り機構16により縫着機本体14が、縫い進み方向である矢印イ方向(図3、図11参照)へ移動される。ミシンアーム45は、千鳥用カム31によって移動される千鳥用レバー34の移動に伴い、ミシンアーム駆動機構46によって上位置と下位置との間で移動される。縫い針62の動作状態において、上死点とは、針アーム60が図5中、時計回り方向に最も回動し、縫い針62の先端が畳11から抜かれて針案内アーム63の案内部63aに位置した状態であり、下死点とは、針アーム60が図5中、反時計回り方向に最も回動し、縫い針62の先端が畳11側に入り込んだ状態である。
【0031】
いま、図12において、A1で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が往復動されるときからみてみる。ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が図4中反時計回り方向に回動すると、上糸85(図11参照)を保持した縫い針62が畳11の側面11aから裏面11b側へ斜めに刺し通される。そして、その縫い針62が下死点を経て時計回り方向へ回動されて上死点側へ戻されることで、第1の往復縫い部87(図11(b)の点線部分参照)が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B1(図11(b)参照)が形成される。
【0032】
そして、千鳥用カム31の回動に伴いミシンアーム45が下位置へ向けて回動を始めると同時に、千鳥用送りセンサ43がオン(送り信号がオン)する(図12のA2参照)。すると、制御装置81は、送りモータ15により縫着機本体14の矢印イ方向への移動を開始させる(送り出力参照)。そして、図12のA3で示すように、ミシンアーム45が下位置を経て上位置へ戻る間に、縫い針62が1回往復動して、畳11の下方において1回目の空縫い動作を行う。これに伴い、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B2が形成される。縫い針62は上死点へ戻ると、再び下死点側に向けて移動を開始する。また、ミシンアーム45が上位置へ戻ると同時に、千鳥用送りセンサ43がオフ(送り信号が停止)する(図12のA4参照)。すると、制御装置81は、送りモータ15による縫着機本体14の矢印イ方向への送りを停止する。
【0033】
そして、図12のA5で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、再び縫い針62が1回往復動して第2の往復縫い部88が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部B3が形成される。これにより、畳11の側面11aに、斜めの2本の押え部89a、89bによりV字状の縫い目が形成される。このような動作を繰り返すことにより、畳11の側面11aにおいて、上糸85が、縫着機本体14の縫い進み方向である矢印イ方向へ向かうに従い上下にジグザグ状となる、千鳥縫いが行われる。
【0034】
次に、本畳用縫着装置10により、略台形状の縫い目模様をなす、いわゆる新台形縫いを行う場合についての手順を説明する。新台形縫いを行う場合には、縫着切替スイッチ79により「新台形縫い」を選択しておく。そして、千鳥縫いの場合と同様に、縫着する対象の畳11を畳載置台12上に載せ、スタートスイッチ77を押圧操作すると、セット機構74により畳11が所定の位置にセットされると共に、締付け機構75により畳11が所定の位置に固定される。この後、制御装置81は、まず止め縫いを行い、この止め縫いに続いて、図1に示す新台形縫いを実行する。この新台形縫いについて、主に図1及び図2を参照して説明する。
【0035】
ここで、図1は新台形縫いの縫い方を説明するためのもので、(a)は畳11の側面11aにおける新台形縫いの縫い目模様を示し、(b)は畳11の側面11a部分を裏面11b側から見た斜視図を示している。また、図2は、新台形縫いの際の、各センサ30、43のオン/オフ状態、シリンダ41の動作状態、送りモータ15による送り出力、ミシンアーム45の動作状態、及び縫い針62の動作状態を示している。
【0036】
いま、図2において、C1で示すように、ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が往復動されるときからみてみる。ミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が1回往復動されると、縫い針62が、畳11の側面11aにおいて所定の高さ位置から裏面11b側へ刺し通され、これにより第1の往復縫い部90(図1(b)の点線部分参照)が形成されると共に、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D1(図1(b)参照)が形成される。
【0037】
そして、図2のC2で示すように、ミシンアーム45が上位置から下位置を経て上位置へ戻る間に、縫い針62が1回往復動して、畳11の下方において、1回目の空縫い動作を行う。このとき、ミシンアーム45が上位置から下位置へ向けて移動する際(図2のC3参照)と、下位置から上位置へ向けて移動する際(図2のC4参照)に直線送りセンサ30がオンする。制御装置81は、その直線送りセンサ30がオンしている間、縫着機本体14を矢印イ方向へ所定距離移動させる。これに伴い、畳11の側面11aにおいて、左下がりの斜め部92aが形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D2が形成される。
【0038】
ミシンアーム45が上位置に戻ると、制御装置81は、シリンダ41を動作させる(図2のC5参照)。これにより、レバー保持機構42により千鳥用レバー34が第1の位置(図4の実線位置参照)に保持されるようになり、延いてはミシンアーム45が上位置に保持された状態で、図2のC6で示すように、縫い針62が1回往復動され、これにより第2の往復縫い部91が形成される。このとき、縫い針62の刺込み位置は、前記第1の往復縫い部90の刺込み位置と同じ高さ位置でなされるものである。これらの動作に伴い、畳11の裏面11b側において上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D3が形成され、更に、畳11の側面11aに、左上がりの斜め部92bが形成され、以って畳11の稜線11cに対して逆ハの字状をなす締付け部92が形成される。
【0039】
そして、制御装置81は、直線送りセンサ30がオンしている間(送り信号が出力されている間)、縫着機本体14を矢印イ方向へ移動させる(図2のC7参照)。この後、図2のC8で示すように、縫着機本体14の移動を停止させた状態で、縫い針62が、前記第2の往復縫い部91の刺込み位置と同じ高さの刺込み位置にて、1回往復動されることにより、第3の往復縫い部が形成93が形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D4が形成される。また、畳11の側面11aにおいて、畳11の稜線11cと平行となる第1の押え部94が形成される。
【0040】
そして、制御装置81は、再度、直線送りセンサ30がオンしている間、縫着機本体14を矢印イ方向へ移動させる(図2のC9参照)。そして、千鳥用送りセンサ43がオフすることに伴い、シリンダ41の動作を停止させ(図2のC10参照)、レバー保持機構42による千鳥用レバー34の保持を解除する。これにより、千鳥用レバー34は、千鳥用カム31により、第1の位置と第2の位置との間での移動が可能なる。
【0041】
この後、図2のC11で示すように、縫着機本体14の移動を停止させ、且つミシンアーム45が上位置に位置された状態で、縫い針62が、前記第3の往復縫い部93の刺込み位置と同じ高さの刺込み位置にて、1回往復動されることにより、再び第1の往復縫い部90が形成されると共に、畳11の裏面11b側において、上糸85と下糸86とを絡めた掛止め部D1が再び形成される。また、畳11の側面11aにおいて、畳11の稜線11cと平行となる第2の押え部96が形成される。
【0042】
このような動作を繰り返すことにより、図1に示すように、畳11の側面11aにおいて、前記左下がりの斜め部92a、換言すれば第1の押え部94に隣り合った逆ハの字状の締付け部92の一辺92aと、前記第1及び第2の押え部94、96と、前記左上がりの斜め部92b、換言すれば前記第2の押え部96に隣り合った逆ハの字状の締付け部92の一辺92aとにより台形状の連続縫い目が、縫着機本体14の縫い進み方向である矢印イ方向に並んだような、新台形縫いが行われる。
【0043】
なお、直線縫いは、縫着切替スイッチ79により「直線縫い」を選択し、周知の縫着方法で行なわれていくものであるので、その詳細は省略する。
このように構成した実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
まず、新台形縫いは、梯子縫いとは違い、垂直部に相当する部分がなく、その部分が左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bとなっている。このため、薄畳の場合であっても、畳の表面から縫い糸が見え難くできる。また、新台形縫いは、台形の上辺(上底)において、第1の押え部94と第2の押え部96との間に往復縫い部93がある。このため、糸締めが強くなり、框縫いや、縁布なしの畳の長辺側を縫うのに好適させることが可能となる。
【0044】
また、新台形縫いは、左下がり斜め部92a、左上がり斜め部92bで、つまりは左右両側辺に相当する部分で送りが入るので、縫着時間を短縮させることができる。
また、特に上記した実施例においては、千鳥縫い用の畳用縫着装置10を用い、切替手段である縫着切替スイッチ79を切替えるだけで、千鳥縫いと、新台形縫いと、直線縫いとを切替えることができる。従って、カム等、大きな構造変更をすることなく上記3種類の縫い方を容易に切替えることができる。
【0045】
なお、上記した実施例で、本発明を、畳11の長辺側を縫着する畳用縫着装置10を用いた例にて示したが、本発明は、畳11の短辺(框)側を縫着する畳用縫着装置を用いても同様に行うことができるので、縫着装置は特に限定されるものではない。
また、千鳥送りセンサ43のセンシング時間やセンシング開始及び終了時間のタイミング等を、直線送りセンサ30のそれに置き換えて代替して制御することにより、前記千鳥用送りセンサ43を使用しないような構成とすることもできる。
【0046】
また、本発明は、縁布の有無に関わらず利用することができることは言うまでもない。
一方、図13〜図16には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第1例が示されている。この畳100は、新台形縫いを短辺側側面100aに施し、長辺側側面100bに千鳥縫いを施した例である。ここで、図13及び図16では、説明の都合上、畳100を点線で示し、縫い目模様(縫い糸)を実線で示している。
【0047】
また、図17及び図20には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第2例が示されている。この畳200は、短辺側側面200aに梯子縫いを施し、長辺側側面200bに新台形縫いを施した例である。
また、図21及び図24には、本発明の新台形縫いを使用した畳の第3例が示されている。この畳300は、短辺側側面300a及び長辺側側面300bの両方に新台形縫いを施した例である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、(a)は新台形縫い部分の正面図、(b)はその部分を裏面側から見た斜視図
【図2】新台形縫いの際の、センサ信号、送り出力、シリンダ、ミシンアーム及び縫い針の動作状態を示すタイムチャート
【図3】本発明の畳用縫着装置において、その全体の概略的な平面図
【図4】要部の右側面図
【図5】ミシンアームが上位置にある状態の要部の左側面図
【図6】ミシンアームが下位置にある状態の図5相当図
【図7】ハンドル側からの要部の斜視図
【図8】ハンドル及び一部のフレームを取り除いた状態での要部の斜視図
【図9】ミシンアーム側からの要部の斜視図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【図11】千鳥縫いにおける図1相当図
【図12】千鳥縫いにおける図2相当図
【図13】畳の第1例(短辺に新台形縫い、長辺に千鳥縫いを施した畳)を示すもので、(a)は正面、左側面及び平面を表す斜視図、(b)は背面、右側面及び底面を表す斜視図
【図14】畳の第1例を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は底面図
【図15】(a)は図14におけるA−A´部分拡大図、(b)は図14におけるB−B´部分拡大図
【図16】(a)は図14におけるC−C´部とD部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図14におけるE−E´部とF部との重なり範囲の部分拡大図
【図17】畳の第2例(短辺に梯子縫い、長辺に新台形縫いを施した畳)を示す図13相当図
【図18】畳の第2例を示す図14相当図
【図19】(a)は図18におけるG−G´部分拡大図、(b)は図18におけるH−H´部分拡大図
【図20】(a)は図18におけるI−I´部とJ部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図18におけるK−K´部とL部との重なり範囲の部分拡大図
【図21】畳の第3例(短辺及び長辺の両方に新台形縫いを施した畳)を示す図13相当図
【図22】畳の第3例を示す図14相当図
【図23】(a)は図22におけるM−M´部分拡大図、(b)は図22におけるN−N´部分拡大図
【図24】(a)は図22におけるO−O´部とP部との重なり範囲の部分拡大図、(b)は図22におけるQ−Q´部とR部との重なり範囲の部分拡大図
【図25】梯子縫いを示す図1相当図
【符号の説明】
【0049】
図面中、10は畳用縫着装置、11は畳(畳床)、11aは(畳11の)側面、11bは(畳11の)裏面、11cは(畳11の)稜線、14は縫着機本体、16は送り機構、19は針モータ、29は直線送りカム(送りカム)、30は直線送りセンサ(送りセンサ)、31は千鳥用カム、32は千鳥用送りカム(送りカム)、34は千鳥用レバー(レバー)、42はレバー保持機構(レバー保持手段)、43は千鳥用送りセンサ(送りセンサ)、45はミシンアーム、46はミシンアーム駆動機構、62は縫い針、73は針駆動機構、縫着切替スイッチ79(切替手段)、81は制御装置(制御手段)、85は上糸、86は下糸、90は第1の往復縫い部、91は第2の往復縫い部、92は締付け部、92aは左下がり斜め部(第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺)、92bは左上がり斜め部(第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺)、93は第3の往復縫い部、94は第1の押え部、96は第2の押え部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸と下糸との二本の縫い糸により畳表または縁布を畳床の側面に縫着する際に、
(イ)上糸を畳床側面の所定の高さ位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後に、元の位置に戻して第1の往復縫い部を形成し、
(ロ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に所定距離移動させながら、上糸を畳床の側面下部において空刺し動作させることにより、畳床の下側の稜線近傍において下糸と掛止めして畳床側面に逆ハの字状の締付け部を形成し、
(ハ)次に、前記所定距離移動した地点で、前記第1の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さ位置で再度往復動作させて、前記第1の往復縫い部と同様な第2の往復縫い部を形成し、
(ニ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、上糸を前記第2の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後、元の位置に戻して第3の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第1の押え部を形成し、
(ホ)次に、再び上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、前記第3の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から前記(イ)と同様な第1の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第2の押え部を形成する。
以下、前記(イ)〜(ホ)の動作を順に繰り返し、畳床の側面に、前記第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより台形状の連続縫い目を形成するようにしたことを特徴とする畳側面の縫着方法。
【請求項2】
畳の側面を縫着する畳用縫着装置において、
畳の辺に沿って移動可能に設けられた縫着機本体と、
この縫着機本体を移動させる送り機構と、
前記縫着機本体に設けられた針モータと、
前記縫着機本体に上位置と下位置との間で移動されるように設けられたミシンアームと、
上糸を保持して前記ミシンアームに往復動可能に設けられ、前記ミシンアームが前記上位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の側面から下面側へ刺し込んでその下面側において下糸と絡める縫い動作を行い、前記ミシンアームが前記下位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の下側において下糸と絡める空縫い動作を行う縫い針と、
前記針モータの回転に基づき前記縫い針を往復動させる針駆動機構と、
前記針モータの回転に基づき回転される千鳥用カムと、
この千鳥用カムにより第1の位置と第2の位置との間で移動されるレバーと、
このレバーが前記第1の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記上位置に移動させると共に、前記レバーが前記第2の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記下位置に移動させるミシンアーム駆動機構と、
前記レバーを前記第1の位置に選択的に保持するように設けられ、そのレバーを第1の位置に保持することに伴い、前記ミシンアーム駆動機構を介して前記ミシンアームを前記上位置に保持させるレバー保持手段と、
前記針モータの回転に基づき回転される送りカムと、
この送りカムに応動する送りセンサと、
千鳥縫いと新台形縫いとを選択的に切り替える切替手段と、
この切替手段、前記送りセンサの信号に基づき、前記送り機構、針モータ及びレバー保持手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記切替手段により千鳥縫いが選択された場合には、前記レバー保持手段による前記レバーの保持を常時解除した状態とし、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ移動させながら、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、前記送りセンサの送り信号の停止に基づき前記縫着機本体の移動を停止させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針による第2の往復縫い部を形成することを繰り返して千鳥縫いを実行させ、
前記切替手段により新台形縫いが選択された場合には、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させると共に、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第2の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第3の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて前記第1の往復縫い部を形成するということを繰り返して新台形縫いを実行させることを特徴とする畳用縫着装置。
【請求項1】
上糸と下糸との二本の縫い糸により畳表または縁布を畳床の側面に縫着する際に、
(イ)上糸を畳床側面の所定の高さ位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後に、元の位置に戻して第1の往復縫い部を形成し、
(ロ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に所定距離移動させながら、上糸を畳床の側面下部において空刺し動作させることにより、畳床の下側の稜線近傍において下糸と掛止めして畳床側面に逆ハの字状の締付け部を形成し、
(ハ)次に、前記所定距離移動した地点で、前記第1の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さ位置で再度往復動作させて、前記第1の往復縫い部と同様な第2の往復縫い部を形成し、
(ニ)次に、上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、上糸を前記第2の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から畳床の裏面側へ斜状に刺し通し、当該裏面側において下糸と掛止めした後、元の位置に戻して第3の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第1の押え部を形成し、
(ホ)次に、再び上糸及び下糸を畳床の縫い進み方向へ相対的に移動させ、前記第3の往復縫い部の刺込み位置と同じ高さの位置から前記(イ)と同様な第1の往復縫い部を形成することで、畳床側面に当該畳床の稜線に平行となる第2の押え部を形成する。
以下、前記(イ)〜(ホ)の動作を順に繰り返し、畳床の側面に、前記第1の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺と、前記第1及び第2の押え部と、前記第2の押え部に隣り合った逆ハの字状の締付け部の一辺とにより台形状の連続縫い目を形成するようにしたことを特徴とする畳側面の縫着方法。
【請求項2】
畳の側面を縫着する畳用縫着装置において、
畳の辺に沿って移動可能に設けられた縫着機本体と、
この縫着機本体を移動させる送り機構と、
前記縫着機本体に設けられた針モータと、
前記縫着機本体に上位置と下位置との間で移動されるように設けられたミシンアームと、
上糸を保持して前記ミシンアームに往復動可能に設けられ、前記ミシンアームが前記上位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の側面から下面側へ刺し込んでその下面側において下糸と絡める縫い動作を行い、前記ミシンアームが前記下位置にあるときに往復動することに伴い前記上糸を畳の下側において下糸と絡める空縫い動作を行う縫い針と、
前記針モータの回転に基づき前記縫い針を往復動させる針駆動機構と、
前記針モータの回転に基づき回転される千鳥用カムと、
この千鳥用カムにより第1の位置と第2の位置との間で移動されるレバーと、
このレバーが前記第1の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記上位置に移動させると共に、前記レバーが前記第2の位置に移動されることに伴い前記ミシンアームを前記下位置に移動させるミシンアーム駆動機構と、
前記レバーを前記第1の位置に選択的に保持するように設けられ、そのレバーを第1の位置に保持することに伴い、前記ミシンアーム駆動機構を介して前記ミシンアームを前記上位置に保持させるレバー保持手段と、
前記針モータの回転に基づき回転される送りカムと、
この送りカムに応動する送りセンサと、
千鳥縫いと新台形縫いとを選択的に切り替える切替手段と、
この切替手段、前記送りセンサの信号に基づき、前記送り機構、針モータ及びレバー保持手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記切替手段により千鳥縫いが選択された場合には、前記レバー保持手段による前記レバーの保持を常時解除した状態とし、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ移動させながら、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、前記送りセンサの送り信号の停止に基づき前記縫着機本体の移動を停止させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で前記縫い針による第2の往復縫い部を形成することを繰り返して千鳥縫いを実行させ、
前記切替手段により新台形縫いが選択された場合には、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第1の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置から下位置を経て再度上位置へ移動する間に、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させると共に、前記縫い針を往復動させて1回の空縫い動作を行わせ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第2の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて第3の往復縫い部を形成し、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記送りセンサの送り信号に基づき前記送り機構により前記縫着機本体を縫い進み方向へ所定距離移動させ、この後、前記ミシンアームが前記上位置に位置された状態で、前記縫い針を往復動させて前記第1の往復縫い部を形成するということを繰り返して新台形縫いを実行させることを特徴とする畳用縫着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−394(P2006−394A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179974(P2004−179974)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(593005220)東海機器工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(593005220)東海機器工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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