説明

疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法及びその製造方法で製造された疎水中空ガラスミクロスフェア

本発明は、噴霧乾燥方式により、低コスト疎水中空ガラスミクロスフェアを製造する方法に関し、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムの混合溶液を霧化して、高速度で撹拌しているケイ酸ナトリウムの水ガラス溶液中に入れて、混合溶液噴霧乾燥をしてから、有機ケイ素表面が改質し、疎水ガラスミクロスフェアが得られる。該中空ガラスミクロスフェアは、高生産性、低コスト、高安定性の特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コスト疎水中空ガラスミクロスフェアの製造技術に関する。具体的には、ケイ酸ナトリウム水ガラス、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムを原材料として、低温噴霧乾燥の方法を用い、中空ガラスミクロスフェアが得られ、材料を回収する間に、有機ケイ素防水剤を用いて、中空ガラスミクロスフェアに表面疎水処理を行い、さらに優れた品質の製品が得られるともに、省エネルギーが可能である。
【背景技術】
【0002】
中空ガラスミクロスフェアは、サイズが微小な中空ガラス球形体であり、無機非金属材料に属する。化学成分は、シリコン、ホウ素、カルシウム、カリウム、ナトリウム、酸素などである。典型的な粒径は、5-200μmで、容積重100-300kg/m3であり、質量が軽く、低伝熱性、防音性、高分散性、電気絶縁性及び良好の耐熱性などの優れた点があり、近年に発展し続け、用途が広く、性能が優れ、新型な軽質材料である。中空ガラスミクロスフェアは、流動性が良く、物理・化学性能安定しているので、各種の複合材料として使用することができ、材料密度を低減し、加工性能を向上する役割を果たす。現在、中国国内で使用する中空ガラスミクロスフェアは、主に発電所のフライアッシュから抽出したフロータである。フロータは、中空率が低く、穴のある構造が多く、充填材料として使用する時に添加吸水率、吸油率が高くてある。アメリカ3M会社、波特会社で生産した中空ガラスミクロスフェアは、高強度、高中空率、良好な安定性の要求を満たすことができるが、輸入製品でコストが高いので、押し広めしにくくてある。特許CN1736912A、CN101152978Aには、中空ガラスミクロスフェアの中空率及び物理・化学安定性の問題が、製造工程上解決することができなく、かつ、焼成温度が1000℃以上であり、大量エネルギーを浪費している。特許CN1990401Aは、焼成温度を400〜650℃まで下げられるが、2回焼成方式により製品を得て、エネルギーを増加し、表面改質の問題も解決することできない。アメリカの特許4421562、4340642、4411847は、低温噴霧乾燥の方式を用いて、中空ガラスミクロスフェアを製造し、添加する補助材料は、ホウ酸アンモニウム溶液であり、噴霧乾燥の間において、アンモニアを放出してしまい、環境が汚染され、製造中において、2回乾燥方式を用いて、中空ガラスミクロスフェアの表面の水分を除出し、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムを用いて、中空ガラスミクロスフェアの表面処理を行い、実際の操作中に工程が複雑である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記技術課題を解決するため、本発明の目的は、疎水中空ガラスミクロスフェアを低コスト、低エネルギー消費で製造する方法を提供して、該方法で製造した疎水中空ガラスミクロスフェアは、高強度、高中空率、良好な安定性及び疎水性の特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術課題を解決するため、本発明は、下記とおりの技術方案を採用している。
疎水中空ガラスミクロスフェアの製造の方法であって、下記の通りのステップで実行する:まず、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水を1:0.1〜0.3:0.05〜0.2:0.005〜0.01:5〜8の質量比で、清く透明状のように完全に溶解するまで混合し、補助溶液が得られる。そして、製造された補助溶液を、噴霧方式で撹拌しているケイ酸ナトリウム水ガラス中に入れて、コロイドを形成し、前記ケイ酸ナトリウム水ガラスの質量の使用量は、ホウ酸質量の10〜20倍である。製造されたコロイドを、噴霧乾燥装置に搬送し、噴霧乾燥を行い、中空ガラスミクロスフェア半製品が得られる。最後に、有機ケイ素防水剤を中空ガラスミクロスフェアに入れて、表面疎水処理を行い、前記疎水中空ガラスミクロスフェアが得られる。
【0005】
本発明は、低温噴霧乾燥の技術を採用し、低コストのケイ酸ナトリウム水ガラスを主な原材料とし、ホウ酸アンモニウムの替わりに、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム混合溶液を補助材料とし、生産中において、環境に対する汚染を避けて、中空ガラスミクロスフェアの強度、耐水性と物理・化学の安定性を向上し、材料回収中において、有機ケイ素防水剤により、表面処理を同時に行い、ワンセットの装置で製造、表面処理の全部のプロセスが行え、疎水性良好な中空ガラスミクロスフェアが簡単に得られ、プロセスを簡単化にし、生産中のエネルギー消費を低減している。ここで、ホウ酸は、中空ガラスミクロスフェアが溶融してガラス化する温度を下げることができ、エネルギー消費を低減している。水酸化カリウムは、溶液のアルカリ性を向上するために使用され、ホウ酸を水の中に溶解させることに有利である。水酸化リチウムとケイ酸ナトリウム水ガラスが反応してケイ酸リチウムを生成し、ケイ酸リチウムは、自己乾燥性があり、中空ガラスミクロスフェアの耐水性を向上させることができる。水酸化カルシウムとケイ酸ナトリウム水ガラスが反応して高強度のケイ酸カルシウムが生成され、それにより中空ガラスミクロスフェアの強度及び安定性を向上させることができる。さらに、本発明は、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水の材料投入の質量比が1:0.1〜0.2:0.08〜0.15:0.005〜0.01:5〜8であることが好ましい。また、ケイ酸ナトリウム水ガラスの質量使用量がホウ酸質量の10〜15倍であることが好ましい。本発明の補助溶液の製造は、加熱条件で補助材料を完全に溶解させることが必要であり、加熱温度は特に限定されず、固体が完全に溶解すればよい。
【0006】
本発明は、製造された補助溶液を、噴霧方式でケイ酸ナトリウム水ガラスに入れて、ケイ酸ナトリウム水ガラスのpH値が部分的に大きく変わり、逆変化不可のSiO2の沈殿の形成を防止することができる。
前記本発明の噴霧乾燥は、補助材料にホウ酸が存在しているので、250〜400℃の時に、原料が溶融しガラス化して玉になることができ、本発明は、噴霧乾燥温度が300〜400℃で、風吹出温度が150〜200℃である。
本発明は、有機ケイ素防水剤を用い、噴霧乾燥で得られた中空ガラスミクロスフェア半製品に対して表面疎水処理を行い、前記の有機ケイ素防水剤は、アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ナトリウムメチルシラノレートから選択することができ、ナトリウムメチルシラノレートが好ましい。有機ケイ素防水剤は、低沸点の有機溶剤で、5%〜10%体積濃度の薄い溶液まで希釈され、低沸点の有機溶剤は、アルコール、メタノール及びアセトンであり、コストダウンの観点から、メタノールが好ましい。
本発明の前記有機ケイ素防水剤の添加質量は、ケイ酸ナトリウム水ガラスの添加質量の0.02〜0.5%である。
【0007】
具体的に本発明の推薦方法は下記の通りである。噴霧乾燥装置中において、噴霧乾燥で中空ガラスミクロスフェア半製品が得られた後に、前記有機ケイ素防水剤の薄い溶液を、噴霧方式でサイクロン分離器の前に位置するパイプに入れ、中空ガラスミクロスフェア表面に付着させ、その後、サイクロン分離器に入れて分離を行い、疎水中空ガラスミクロスフェアが得られる。通常、噴霧乾燥装置は、乾燥室とサイクロン分離器を備え、乾燥室とサイクロン分離器は、材料回収パイプを介して接続され、乾燥室から吹出された排気と中空ガラスミクロスフェアの半製品は、材料回収パイプを通過し、サイクロン分離器に入って分離を行い、排気を排出され、粉粒体が材料回収筒に回収されている。本発明は、材料回収パイプに噴水口を取り付けられ、有機ケイ素防水剤をサイクロン分離器の前の材料回収パイプに均一な速度でスプレーし、パイプ中に搬送された中空ガラスミクロスフェアの半製品と混合し、サイクロン分離器で分離された製品が材料回収筒に落下し、室温まで徐々に冷却して、疎水中空ガラスミクロスフェアが得られる。上記の設計により、本発明は、噴霧乾燥装置での材料回収する間において、表面疎水処理を行うことができ、さらに、良好な疎水中空ガラスミクロスフェアの製品が得られる。得られた疎水中空ガラスミクロスフェアは、粒度分布が30 〜 80 μmであり、粒子密度が0.20 〜 0.47 g/m3である。
【発明の効果】
【0008】
従来の技術と比べて、本発明の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法は、ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムを補助材料として使用し、ケイ酸ナトリウム水ガラスに入れ、添加方式が霧化混合であり、有機ケイ素防水剤で、半製品に対して表面疎水処理を行い、本発明の優れた点は、製造プロセス簡単、低コスト、低エネルギー消費、かつ、製造された疎水中空ガラスミクロスフェアの製品は、高強度、高中空率、良好な安定性と疎水性がある。従って、本発明前記の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法は、良好な工業応用の見通しがある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記比率で重さが測られたホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムを、水の中で溶解させ、清く透明な補助材料混合液体が得られた。ケイ酸ナトリウム水ガラスを底部に磁力がある撹拌器に置いて高速度で撹拌し、噴霧ノズルにより、撹拌器の最高部から、補助材料混合液体を水ガラスにスプレーし、前駆体溶液が得られた。前駆体溶液をチューブポンプで噴霧乾燥装置に搬送し、乾燥処理を行う。有機ケイ素防水剤を低沸点の有機溶剤中に溶解させ、均一速度でサイクロン分離器の前の搬送パイプにスプレーするともに、有機ケイ素防水剤は、前駆体溶液と同期に搬送することを完成させている。サイクロン分離器の底部材料回収筒が自然に冷却した後、疎水中空ガラスミクロスフェアの製品が得られ、製品は、主に中空ガラスミクロスフェア、破損した中空ガラスミクロスフェア及び中が詰まっているガラスミクロスフェアの混合物が含まれている。
本発明の製品を水の中に置くと、良好の疎水性、低沈殿率を表現し、且つ、高中空率と良好な物理・化学安定性を有し、本発明の製品は、幅広く応用することができる添加剤であり、例えば、改質剤、増強剤、硬化剤及び充填材料として用いられる。
【0010】
以下の表1は、本発明の12個の異なる実施例である。
実施例2のサンプル測定については、熱伝導係数は0.043W/mK、粒度分布40〜120μm、粒子密度0.18 g/m3、成球率85%である。
実施例3のサンプル測定については、熱伝導係数0.045W/mK、粒度分布30〜90μm、粒子密度0.25 g/m3、成球率88%である。
実施例6のサンプル測定については、熱伝導係数0.05W/mK、粒度分布60〜140μm、粒子密度0.21 g/m3、成球率87%である。
実施例9のサンプル測定については、熱伝導係数0.046W/mK、粒度分布30〜70μm、粒子密度0.26 g/m3、成球率81%である。
実施例12のサンプル測定については、熱伝導係数0.048W/mK、粒度分布40〜100μm、粒子密度0.2 g/m3、成球率87%である。

実施例1〜12は表1に示す
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法であって、ホウ酸塩溶液を製造し、前記溶液をケイ酸ナトリウム水ガラスと混合させ、コロイドを形成し、前記コロイドに対して噴霧乾燥を行い、半製品が得られた後に表面処理を行うことを含まれ、
ホウ酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水を、1:0.1〜0.3:0.05〜0.2:0.005〜0.01:5〜8の質量比で混合させ、清く透明状のように完全に溶解させ、補助溶液が得られ、
得られた補助溶液を噴霧方式で攪拌しているケイ酸ナトリウム水ガラスに入れて、コロイドを形成し、前記ケイ酸ナトリウム水ガラスの質量使用量が硼酸質量の10〜20倍であり、
得られたコロイドを噴霧乾燥装置に搬送し、常圧で噴霧乾燥を行い、中空ガラスミクロスフェアの半製品が得られ、
有機ケイ素防水剤を用い、中空ガラスミクロスフェア表面に対して、表面疎水処理を行い、前記疎水中空ガラスミクロスフェアが得られるというステップを備えることが特徴とする疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項2】
前記噴霧乾燥の設定乾燥温度は250〜400℃であり、風吹出温度は120〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素防水剤は、アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriethoxysilane)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ-Glycidyloxypropyltrimethoxysilane)、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane)、ナトリウムメチルシラノレート(Sodium methylsiliconate)の中の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項4】
前記有機ケイ素防水剤はナトリウムメチルシラノレートであることを特徴とする請求項3に記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項5】
前記有機ケイ素防水剤の添加質量は、ケイ酸ナトリウム水ガラス添加質量の0.02〜0.5%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項6】
前記有機ケイ素防水剤を噴霧方式でサイクロン分離器の前に位置するパイプに入れて、中空ガラスミクロスフェア表面に付着させた後、サイクロン分離器に入って分離を行い、疎水中空ガラスミクロスフェアが得られることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の疎水中空ガラスミクロスフェアの製造方法で製造された疎水中空ガラスミクロスフェア。
【請求項8】
粒度分布が30 〜 80 μmである、請求項7に記載の疎水中空ガラスミクロスフェア。
【請求項9】
粒子密度が0.20 〜 0.47 g/m3である、請求項7に記載の疎水中空ガラスミクロスフェア。

【公表番号】特表2013−518802(P2013−518802A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552226(P2012−552226)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000988
【国際公開番号】WO2011/097777
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511292242)浙江通達機械有限公司 (1)
【Fターム(参考)】