疎水性ポリマーに由来する親水性相互貫入ポリマーネットワーク
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なPNまたは半IPNを含む組成物、かかる組成物から作製された製品、ならびにかかる製品を使用する方法。本発明は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程と;疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの内部でイオン性ポリマーを形成するためにイオン化性モノマーを重合し、それによってIPNまたは半IPNを形成する工程とを含む、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なIPNまたは半IPNを産生する方法も含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年7月7日に出願された米国特許出願第61/078,741号;2008年7月8日に出願された米国特許出願第61/079,060号;2008年9月8日に出願された米国特許出願第61/095,273号;および2009年4月2日に出願された米国特許出願第61/166,194号の利益を主張し;これらの先行出願の各々の開示は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
[参照としての組み込み]
本明細書において言及されるすべての出版物および特許出願は、各々の個別の出版物または特許出願が参照として組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同じ程度に、参照として本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワーク、半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワークを製作する方法、かかる半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワークから作られた製品、ならびにかかる製品を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
完全相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)および半相互貫入ポリマーネットワーク(「半IPN」)は、様々な出発材料から生成され、様々な適用に使用されている。IPNおよび半IPNは、それらが作製されるポリマーの有利な特性を組み合わせることができ、それらの成分ポリマーの所望されない特性のいくつかを回避することができる。
【0005】
従来のIPNおよび半IPNは、インプラントのためにコーティングまたは人工軟骨などの生物医学的適用における使用のために提案されている。例えば、米国特許第2005/0147685号;米国特許第2009/0035344号;および米国特許第2009/008846号を参照。しかしながら、提案された適用に対する従来のIPNおよび半IPNの有用性は、それらの組成物の特性によって限定される。さらに、出発材料およびかかる従来の組成物を作製するプロセスは、IPNまたは半IPNのもたらされた特性だけでなく、製造プロセスおよびかかるプロセスで作製された製品の商業的実用化も限定する。さらに、従来のIPNおよび半IPNの機械的特性は使用される成分ポリマーの機械的特性によってしばしば限定され、大部分の実質的に親水性で水膨潤可能なポリマーの事例において、機械的特性は通常かなり低い。例えば、先行技術は、ポリウレタンまたはABSなどの商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なIPNまたは半IPNを作製する実行可能なプロセスを記載していない。
【0006】
最終的に、従来のIPNおよび半IPN組成物の有用性、およびかかる組成物から形成された製品の価値は、強度、潤滑性および摩耗抵抗性などの所望の特徴を持つIPNおよび半IPNを生成できないことによって限定されている。
【発明の概要】
【0007】
特定の医学的適用のために所望される機械的特性は、多くの親水性出発材料の可能な範囲をしばしば越えている。従って、本発明の1つの態様は、他の望ましい特性に加えて高機械強度の目標を達成する有用な手段として、疎水性出発材料の高機械強度を利用し、特定のイオン性ポリマーとそれらの材料を組み合わせる。したがって、先行技術は水膨潤可能なポリマーを採用しそれらをより強くしようとしたが、本発明の1つの態様は強い材料を採用しそれらをより水膨潤可能にする。
【0008】
本出願の目的のために、「相互貫入ポリマーネットワーク」または「DPN」は、分子スケールで少なくとも部分的に織り交ぜられる2つまたはそれ以上のポリマーネットワークを含む材料であるが、互いに共有結合されておらず、化学結合が破断されない限り分離することができない。「半相互貫入ポリマーネットワーク」または「半IPN」は、少なくともいくつかの線状マクロ分子または分岐マクロ分子による少なくとも1つのネットワークの分子スケールでの貫入によって特徴づけられる、1つまたは複数のポリマーネットワークおよび1つまたは複数の線状ポリマーまたは分岐ポリマーを含む材料である。IPNから区別されるように、半IPNは、成分ポリマーネットワークの少なくとも1つが共有結合によって化学的に架橋されないポリマーブレンドである。
【0009】
「ポリマー」は、ホモポリマー(1種類のモノマーに由来するポリマー)、およびコポリマー(1つよりも多い種類のモノマーに由来するポリマー)を含むマクロ分子を含む物質である。「疎水性ポリマー」は、以下の2つの特性の少なくとも1つを有する予備形成されたポリマーネットワークである。(1)少なくとも45°の表面水接触角および(2)ASTM試験基準D570に従って室温で24時間後に2.5%以下の吸水を示す。「親水性ポリマー」は、45°未満の表面水接触角を有するポリマーネットワークであり、ASTM試験基準D570に従って室温で24時間後に2.5%を超える吸水を示す。「イオン性ポリマー」は、イオン性モノマーまたはイオン化性モノマー(または両方)を、それらの性質および位置に関係なく、重量で少なくとも2%含有するマクロ分子からなるポリマーとして定義される。「イオン化性モノマー」は、ポリマーを形成するために他のモノマーに化学的に結合することができ、カルボン酸および/またはスルホン酸などの酸性官能基の存在のために負に荷電する能力も有する低分子である。「熱硬化性ポリマー」は熱可塑性ポリマーとは異なり、加熱された場合融解しないものである。熱硬化性ポリマーは、最初に作製されたときに所定形状へと「硬化」し、その後流動または融解しないが、加熱に際してむしろ分解し、しばしば高度に架橋および/または共有結合により架橋される。「熱可塑性ポリマー」は、熱硬化性ポリマーとは異なり、加熱されたときに融解または流動するものである。熱可塑性ポリマーは通常共有結合により架橋されない。「相分離」は、単相系の多相系への変換、特に、2つのブロックコポリマーの非混和性ブロックの二相への分離(少ない程度の混合が起こる小さな中間相の可能性を持つ)として定義される。本発明は、強度、潤滑性、電気伝導性および摩耗抵抗性などの新しい特性を提供するために、ポリウレタンまたはABSなどの一般的な商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを修飾するプロセスを含む。他の可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは以下に記載される。本発明はIPN組成物および半IPN組成物に加えて、かかる組成物から作製された製品およびかかる製品を使用する方法も含む。本発明のIPN組成物および半IPN組成物は1つまたは複数の以下の特徴を達成することができる。高引張強度および高圧縮強度;低摩擦係数;高含水率および高膨潤能;高透過性;生体適合性;および生体安定性。
【0010】
本発明の適用は、2つのベアリング面の間の静摩擦係数および動摩擦係数を減少させ、船舶、潜水服もしくは水着、他の水上バイクもしくは水上の物体、またはパイプ中の抗力および/またはバイオフィルム形成および/またはフジツボ形成を減少させる、親水性で潤滑な外装または被覆の生成である。さらに、本発明は、電流の伝導、またはプロトン交換膜、燃料電池、ろ過装置およびイオン交換膜などのイオンの透過性を必要とする電気化学的適用における可能性を有する。さらに、本発明は、エンジン、ピストンまたは他の機械もしくは機械部品などの適用のためのベアリングおよび可動部品を作製する方法として使用することができる。本発明は、軟骨代替物、整形外科領域の関節置換物および表面再建装置またはそのコンポーネント、椎間円板、ステント、血管カテーテルまたは尿道カテーテル、コンドーム、心臓弁、血管移植片、ならびに身体の他の領域(皮膚、脳、脊柱、胃腸系、喉頭および軟組織一般など)における短期および長期両方のインプラントを含む多数の生物医学的適用にも使用することができる。さらに、それは、様々な手術道具および手術器具のコンポーネントとして使用することができる。これらの適用のすべてにおいて、薬物は、局所的な薬物送達のために材料の中に取り込むことができる。これらの相互貫入ポリマーネットワークは治療剤がポリマーマトリックスから放出される特異的薬物送達ベヒクルを製作するためにも使用することができる。本発明の1つの態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーの水膨潤可能なIPNまたは半IPNの組成物を提供する。いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも低い摩擦係数を示す。いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりもより水膨潤可能であり、より高いクリープ抵抗を示し、ならびに/またはより高い伝導性および透過性を示す。組成物のいくつかの実施形態は抗酸化剤も含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー前駆体溶液を拡散させイオン性ポリマーを形成するためにモノマーを重合することによって形成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、組成物は水も含み、それは組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成することができる。電解質は水中に溶解することができる。IPNまたは半IPNは負に荷電することもできる。様々な実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、イオン性ポリマーと物理的に絡み合うか、または化学的に架橋されうる。
【0013】
いくつかの実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは規則性ドメインおよび非規則性ドメインを有し、イオン性ポリマーは非規則性ドメイン中に配置することができる。
【0014】
様々な実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサンおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択することができる。イオン性ポリマーは、例えばポリ(アクリル酸)またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)、その組み合わせまたは誘導体でありえる。イオン性ポリマーはカルボキシレート基および/またはスルホン酸基(sulfonate group)を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、イオン性ポリマーは、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への濃度勾配を形成する。濃度勾配は、例えば、組成物内に剛性勾配および/または水和勾配を提供することができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーとは別の層中に配置することができるか、または第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの全体にわたって拡散させることができる、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含む。
【0017】
本発明の別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なBPNまたは半IPNを産生するためのプロセスであって、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程と;熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの内部でイオン性ポリマーを形成するためにイオン化性モノマーを重合し、それによってIPNまたは半IPNを形成する工程とを含むプロセスを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態は、抗酸化剤を加える工程を含む。いくつかの実施形態は、例えば、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成するために水によりIPNまたは半IPNを膨潤する工程を含む。方法は、電解質溶液によりIPNまたは半IPNを膨潤する工程も含むことができる。様々な実施形態は、イオン性ポリマーと疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを化学的に架橋するか、または物理的に絡み合わせる工程を含む。
【0019】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが規則性ドメインおよび非規則性ドメインを有する実施形態において、方法は、重合工程の前にイオン化性モノマー溶液により非規則性ドメインを膨潤する工程を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、アクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される。イオン化性モノマー溶液はアクリル酸溶液でありえ、カルボキシレート基および/またはスルホン酸基を持つモノマーを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、組成物内で剛性勾配および/または水和勾配を提供するために、疎水性の熱可塑性ポリマーの熱硬化物の中のイオン化性モノマー溶液の位置選択的な拡散を介して、IPNまたは半IPNの内のイオン性ポリマーの濃度勾配を形成する工程を含む。
【0022】
方法のいくつかの実施形態は、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程とを重合工程の前に含むことができる。かかる実施形態において、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに隣接する別の層中にありうるか、または第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー内に拡散されうる。
【0023】
いくつかの実施形態は、IPNまたは半IPNの加熱などによって、第1の形状から第2の形状へIPNまたは半IPNを変化させる工程を含む。
【0024】
さらに本発明の別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含み、骨表面に一致する骨接触面を形作る医療用インプラントを提供する。いくつかの実施形態は、インプラントの内部の領域中に配置された液体カプセルも含む。いくつかの実施形態は、骨の中への挿入に適合した挿入部分、ならびに関節腔内の配置に適合し、IPNまたは半IPNを骨および/または骨接触面から延長するステムに付着する骨の係合に適合し、骨の中への挿入に適合した関節界面部分(IPNまたは半IPNと係合された骨ネジ、縫合糸またはステープルなど)を有する。医療用インプラントは、金属ベースの人工器官のような別の装置のベアリングコンポーネントとしても取り込むことができる。
【0025】
医療用インプラントは、医療用インプラントの骨への付着(骨接触面で形成される骨内方成長表面など)に適合した接着剤も含むことができる。いくつかの実施形態において、イオン性ポリマーは、インプラントの第1の部分からインプラントの第2の部分へ濃度勾配を形成する。いくつかの実施形態は、第1の疎水性の熱硬化性樹脂または熱可塑性ポリマーに隣接する第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを有し、イオン性ポリマーは少なくとも第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに相互貫入する。
【0026】
いくつかの実施形態において、水膨潤可能なIPNまたは半IPNは、天然の軟骨の剛性および潤滑性の特性を模倣する特性を有し、関節中の軟骨の置換に適合し構成される。IPNまたは半IPNは、キャップ、カップ、プラグ、マッシュルームならびにステムおよびパッチからなる群から形状を選択することができ、関節丘、脛骨プラトー、半月板、関節唇または関節窩の嵌合に適合させることができる。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、天然の軟骨を、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを有する水膨潤可能なIPNまたは半IPNで置換する工程、および関節を画成する骨表面とIPNまたは半IPNを係合する工程を含む、整形外科領域の関節を修復する方法を提供する。方法は、骨表面にIPNまたは半IPNを接着、縫合、ステープル留め、および/またはネジ留めする工程も含むことができる。方法は金属ベースの人工器官のような別の装置のベアリングコンポーネントとして材料を取り込むことも含むことができる。方法は、骨表面の中へのステム部分を挿入する工程も含むことができる。整形外科領域の関節は、肩関節、手指関節、手関節、足首関節、足関節、足指関節、膝内側関節、膝蓋大腿関節、全膝関節、膝半月板、大腿関節、寛骨臼関節、関節唇関節、肘、椎間ファセット、脊椎関節からなる群から選択することができる。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含み、海洋性船体への付着に適合した船体接触面を有する、海洋性船体被覆を提供する。被覆は紫外線防護剤および/または抗酸化剤も含むことができる。
【0029】
本発明の新規の特色は、以下の請求項で特に説明される。本発明の特色および利点の良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1B】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1C】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1D】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図2】厚み方向に沿って製品中に形成された組成勾配を説明した図である。
【図3】放射方向に沿って製品中に形成された組成勾配を説明した図である。
【図4A】本発明に従う熱可塑性勾配IPNを製作する方法を示した図である。
【図4B】本発明に従うIPN内部の勾配特性の変化を示した図である。
【図4C】勾配IPNにわたるイオン性ポリマーの変化を示す。
【図5】ラミネート構造またはIPNもしくは半IPNを示した図である。
【図6A】勾配IPN製品の造形を示した図である。
【図6B】勾配IPN製品の造形を示した図である。
【図7A】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7B】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7C】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7D】IPNの形状加熱を示した図である。
【図8A】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8B】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8C】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8D】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図9A】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9B】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9C】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9D】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図10A】靭帯を提供する開口を有する骨軟骨移植片を示した図である。
【図10B】靭帯を提供する開口を有する骨軟骨移植片を示した図である。
【図11A】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11B】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11C】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11D】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11E】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図12A】本発明のIPNまたは半IPNのIPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片を示した図である。
【図12B】本発明のIPNまたは半IPNのIPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片を示した図である。
【図13A】肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官を示した図である。
【図13B】肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官を示した図である。
【図14】図14は、滑液包骨軟骨移植片、関節唇骨軟骨移植片、関節窩骨軟骨移植片および上腕頭骨軟骨移植片としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示した図である。
【図15】椎間ファセットの表面再建のための人工器官としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示した図である。
【図16A】本発明の勾配IPN組成物から形成された人工器官軟骨プラグを示した図である。
【図16B】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。
【図16C】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。
【図16D】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。図16Cの実施形態の底部正面図である。
【図17】骨へのプラグの固定のためのネジを形成する螺旋状のネジ山を持つステムが提供される人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図18A】固定のための骨中の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステムを有する人工器官軟骨プラグの実施形態の側面図である。
【図18B】固定のための骨中の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステムを有する人工器官軟骨プラグの実施形態の底部正面図である。
【図19】露出した頭部がステムと実質的に同じ直径である人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図20】露出した頭部がステムよりも狭く、ステムが土台に向かって広くなる人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図21】固定を支援するためにステムが円周状のネジ山を有する人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図22】ステムへ粗い多孔性表面を加えた図19のものに類似する実施形態を示した図である。
【図23】ネジまたはステムなどの追加の固定なしに骨を物理的に把持するように形成された骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図24】ネジ固定のためのネジ穴を有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図25】ネジ固定のためのネジ穴およびネジ頭くぼみを有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図26】骨中の穴の中への挿入のためのステムを有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図27A】両面が潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示した図である。
【図27B】両面が潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示した図である。
【図28】関節中などの、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面へ付着されている整形外科領域のインプラントを示した図である。
【図29】関節中などの、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面へ付着されている整形外科領域のインプラントを示した図である。
【図30A】骨軟骨移植片および本発明の他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示した図である。
【図30B】骨軟骨移植片および本発明の他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示した図である。
【図31A】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図31B】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図31C】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図32】船舶の船体を表面再建する本発明の潤滑なIPNまたは半IPNの組成物の使用を示した図である。
【図33】互いに対して移動する機械部品の境界表面を修飾する潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPNの使用を示した図である。
【図34】パイプの内部表面上の液体抗力を減少させる潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPNの使用を示す。
【図35】鉗子によって保持される水和したPEU/PAA半IPN勾配材料の写真である。
【図36】実施例32と関連した接触角解析を示した図である。
【図37A】実施例33と関連した透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図37B】実施例33と関連した透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図38】実施例34と関連した概略図と共に透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図39】実施例35と関連したPEU/PAA半IPN材料の引張応力−歪み挙動を示した図である。
【図40】実施例36と関連したDSCによって分析されたPEU/PAA半IPN材料のサーマグラム(thermagram)を示した図である。
【図41】実施例36と関連したDSCによって分析されたPEU/PAA半IPN材料の熱解析の結果を示した図である。
【図42】実施例37と関連した静止荷重下のPEU/PAA上のPEU/PAA半IPN材料の摩擦係数を示した図である。
【図43】実施例38と関連した静止荷重下の金属上のPEU/PAA半IPN材料の摩擦係数を示した図である。
【図44A】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図44B】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図44C】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図45A】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図45B】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図45C】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図46】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果の定量化を示した図である。
【図47】実施例40と関連した様々な水性溶媒および有機溶媒中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤挙動を示した図である。
【図48A】実施例41と関連した、水中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤の結果を示した図である。
【図48B】実施例41と関連した、酢酸中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤の結果を示した図である。
【図49】実施例42と関連した、膨潤溶液中のアクリル酸の量の関数としてのPEU/PAA半IPN中ポリアクリル酸含有量を示した図である。
【図50】実施例43と関連した、半IPN中のポリアクリル酸の量の関数としてのPEU/PAA半IPNの膨潤を示した図である。
【図51A】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料の動的圧縮試験の結果を示した図である。
【図51B】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料の動的圧縮試験の結果を示した図である。
【図52】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料への多段階の応力弛緩圧縮応力試験の適用とその後の弛緩の結果を示した図である。
【図53】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料への圧縮応力の適用の結果を示した図である。
【図54−1】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−2】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−3】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−4】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、一般的な商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに潤滑性、透過性、伝導性および摩耗抵抗性などの特質を付与する修飾のためのプロセスを含む。かかる疎水性ポリマーは通常水を吸い上げず、一般的には機械強度、不透過性および絶縁能力について有用である。本発明のプロセスによって修飾可能な疎水性ポリマーの例示的なリストは、以下を含む。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、セルロイド、酢酸セルロース、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、カイデックス(Kydex)(商標登録アクリル/PVCアロイ)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POMまたはアセタール)、ポリアクリレート(アクリル)、ポリアクリロニトリル(PANまたはアクリロニトリル)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEKまたはケトン)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)(ポリスルホンを参照)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、スペクトラロン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびポリウレタン(PU)。様々なポリウレタンは、本明細書に記載されるように、様々なハードセグメント、ソフトセグメントおよび鎖延長剤組成物と共に使用することができる。
【0032】
本発明の1つの態様は、いくつかの修飾可能な熱硬化性疎水性ポリマーまたは熱可塑性疎水性ポリマーの特徴を利用する。ポリマー内の規則性ドメインおよび非規則性(非晶性)ドメインの存在。例えば、ポリウレタンなどのいくつかの疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは相分離し、ハードセグメントの第1のドメインおよびソフトセグメントの第2のドメインを含有し、2つのドメインはモノマーの相互貫入に関して異なる溶解特性を示す。ポリウレタンにおいて、ハードセグメントは主として規則性ドメイン内に配置され、ソフトセグメントは主として非規則性(非晶性)ドメイン内に配置される(開始ポリマーは当然本発明の範囲から逸脱せずに2つ以上のドメインを含有することができる)。本発明のプロセスは、相分離ポリマーの2つのドメインの間の特性のこの差によって、材料のバルクにわたってまたは材料の一部のみにわたって(例えば、特定の領域中に、または勾配で)拡張することができる新しい特性をポリマーへ与えることができる。例えば、非潤滑なポリマーは潤滑にすることができ、そのままでは非伝導性のポリマーは伝導性にすることができ、そのままでは非透過性のポリマーは透過性にすることができる。さらに、プロセスは開始ポリマーへ1つ以上の新しい特性を導入するために反復して行うことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリマー中の相分離は、例えば溶媒および/またはモノマーによるポリマー内の1つまたは複数の分離相の差異的な膨潤を可能にし、次いでそれを使用して新しい特性が与えられる。本発明に従って、例えば、イオン性モノマーを加えることおよび重合することによって、そのままでは非潤滑な材料へ潤滑さを導入することができる。1つの実施形態において、高機械強度および潤滑表面を持つポリマー材料を、イオン化性ビニルモノマーに由来するそのままでは非潤滑な疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーから作製することができる。本発明は、そのままでは疎水性の材料を固体および液体(水)の両方の相を持つ二相性材料に変換することによって、医学的適用、商業的適用および工業的適用で使用される潤滑で高強度の材料に対する当技術分野における必要性に対処する。
【0034】
図1A〜Dは、ハードセグメント10(白い長方形として示される)およびソフトセグメント12(線として示される)のネットワークを含有する熱可塑性ポリウレタンベースのポリマーに関するプロセスを示す。図1Bにおいて、ソフトセグメント12は、開始剤および架橋剤(図示せず)と共にビニルベースのモノマー14(円として示される)および随意の溶媒により膨潤され、一方ハードセグメント材料はほとんど影響されない。この膨潤プロセスはポリマーの溶解ではなく、ソフトセグメントはモノマーおよび随意の溶媒を吸収するので、ハードセグメントは材料を保持する物理的な架橋として作用する。モノマーの重合および架橋の後に、第2のネットワーク16(図1Cおよび1D中で太線として示される)が第1のネットワークの存在下において形成され、第1のポリマーの柔軟な非晶性ドメイン内に第2のポリマー(すなわち重合されたモノマー)が主として隔離されたIPNが生成される。ある程度の分子再構成およびさらなる相分離があるにもかかわらず、ハードセグメントの大部分は規則性および結晶性のままであり、材料へ構造および強度を提供する。
【0035】
このIPNによって提供される新しい特性は、導入された重合モノマーの特性および任意の随意の重合後処理に依存する。かかる新しい特性の実施例は、潤滑さ、伝導性、硬さ、吸収性、透過性、光反応性および熱反応性を含む。例えば、図1D中で示されるように、緩衝水性溶液中での随意の膨潤後に、図1CのIPNの第2のネットワークは、イオン化されるようになり18、IPNは水膨潤され潤滑である。したがって、親水性(すなわち吸水性)を、そのままでは疎水性の材料へと導入することができる。ポリウレタンまたはABSなどの疎水性ポリマー材料が水を吸収するように、ポリアクリル酸および/またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)などの様々なイオン性ポリマーを浸透させることができる。
【0036】
吸収性に加えて、様々なレベルの透過性(水、イオン、および/または溶質の輸送)を、そのままでは非透過性材料へと導入することができる。例えば、上記されるように、ポリウレタンまたはABSなどの疎水性ポリマー材料が水を吸収するように、ポリアクリル酸および/またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)などのイオン性ポリマーを浸透させることができる。材料のバルクのこの水和は、溶質およびイオンの輸送を可能にする。溶質およびイオンの輸送および水に対する透過性は、IPNの水和相の相連続性によって可能になる。これは、薬物送達、分離プロセス、プロトン交換膜および触媒プロセスを含む様々な適用における有用である。液体が材料にわたりまたは材料を介して流動するので、溶質を捕捉、濾過、またはキレート化するために透過性を利用することができる。さらに、この透過性があるので、本発明の材料は、長期荷重または反復荷重後に液体を再吸収する能力に起因して、それらのコンポーネントの疎水性ポリマーと比較して、クリープ抵抗性および疲労抵抗性を増加させることができる。
【0037】
そのままでは非伝導性の材料へと伝導性を導入することができる。例えば、ハイブリッド材料の少なくとも一部が電流に対して伝導性であるように、ポリウレタンなどの絶縁ポリマー材料は伝導性ポリマー(多価電解質)を浸透させることができる。
【0038】
本発明は、第2のポリマーの化学基の改変、および別のポリマー、分子または生体分子のための第2のポリマー中の連結点の使用も含む。さらに、任意のドメインは、抗酸化剤、イオン、アイオノマー、造影剤、粒子、金属、色素、着色剤、生体分子、ポリマー、タンパク質および/または治療剤などの任意の数の材料でドープされうる。
【0039】
例えば、アクリロキシ官能基、メタクリロキシ官能基、アクリルアミド官能基、アリルエーテル官能基、またはビニル官能基が、ポリウレタンプレポリマーの1つの末端または両方の末端へと取り込まれるならば、第1のポリマーは第2のポリマーをさらに架橋または共重合することができ、次いで開始剤の存在下においてUVまたは温度によって硬化させることができる。例えば、ポリウレタンジメタクリレートまたはポリウレタンビスアクリルアミドは、溶媒(ジメチルアセトアミドなどの)の存在下における硬化および次いで溶媒の蒸発によって、第1のネットワーク中で使用することができる。IPNへ化学的架橋(単なる物理的架橋ではなく)の追加は、連続的な動荷重によって引き起こされるクリープまたは疲労に対する機械的安定性のレベルを増加させる。
【0040】
さらに、マルチアーム(多官能性)ポリオールまたはイソシアネートはポリウレタン中で架橋を生成するために使用することができる。この事例において、完全相互貫入ポリマーネットワークが生成される(半相互貫入ポリマーネットワークではなく)。結果は、ポリウレタンの高強度および高靭性、ならびにポリ(アクリル酸)の潤滑表面および二相性バルク挙動を持つコンポジット材料である。あるいは、他の架橋方法は、ガンマ線または電子線の照射を含むが、これらに限定されないものを使用することができる。これらの特色は、人工関節表面などのベアリング適用のために、または血管系または皮膚などの身体の他の領域におけるより生体適合性で血栓抵抗性の長期インプラントとして特に重要である。水による膨潤は、身体の標的領域への局所送達のための治療剤または薬物などの溶質による吸収も可能にする。
【0041】
別の実施形態において、本発明の、第1のポリマーは第2のポリマーに結びつけることができる。例えば、ポリウレタンはビニル末端基を介して結びつけることができる。末端基と重合されているモノマーの間の反応比に依存して、異なる鎖立体配置をもたらすことができる。例えば、モノマーとそれ自体の反応性がモノマーと末端基よりもはるかに高ければ、第1のポリマーが鎖へ追加される前に、第2のポリマーがほとんど完全に形成されるだろう。一方、モノマーおよび末端基の反応性が類似していれば、ランダムなグラフトタイプ共重合が起こるだろう。モノマーおよび末端基は、例えばThe Polymer Handbook中で公表された相対的反応性比の表の使用によって、それらの反応性比に基づいて選択することができる。これらの結果はハイブリッドコポリマー/相互貫入ポリマーネットワークであるだろう。
【0042】
任意の数または組み合わせのエチレン性不飽和モノマーまたはマクロモノマー(すなわち反応性二重結合/ビニル基を持つ)は、単独でまたは様々な溶媒と組み合わせて使用することができ、かかるモノマーの少なくとも2%がイオン化性である限り、すなわちカルボン酸官能基および/またはスルホン酸官能基を含有する限り、ポリマーの1つまたは複数の相へと選択的に導入することができる。他のモノマーは、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、NIPAAm、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリレート、およびスルホン酸基を含有する任意のビニルベースのモノマー(例えばアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート(または3−スルホプロピルメタクリレート)、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム塩98%)、またはスルホン酸がコンジュゲートされる任意のモノマー(アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基またはアクリルアミド)を含むが、これらに限定されない。モノマーは、アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基またはアクリルアミドへコンジュゲートされるカルボン酸基を含有する任意のモノマーも含むことができる。さらに、カルボキシレート/スルホネートコポリマーを生成するために、カルボキシル酸含有モノマーおよびスルホン酸含有モノマーの両方などの組み合わせでモノマーを使用することができる。これらのモノマーおよびモノマーの組み合わせからもたらされるポリマー上のペンダント官能基は、最終的なポリマーへ他の官能基を与える後続の化学反応を行うことができる。
【0043】
1つの実施形態において、前形成熱可塑性ポリマーは、モノマーに対して約0.1%v/vの架橋剤(例えばトリエチレングリコールジメタクリレートまたはN,Nメチレンビスアクリルアミド)、およびモノマーに対して約0.1%v/vの光開始剤(例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)と共に、アクリル酸中で(またはアクリル酸(1%〜100%)の溶液または他のビニルモノマー溶液中で)浸漬することができる。アクリル酸溶液は、水、塩緩衝液または有機溶媒(ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフランなど)をベースとすることができる。ポリマー中のソフトセグメントの溶媒和のために、ポリマーをモノマーによって膨潤することができる。膨潤されたポリマー中のモノマー含有量は、最小で約1%から最大で約90%にわたることができる。
【0044】
次いでモノマーで膨潤したポリマーを取り出し、ガラス、石英または透明なポリマーから作製された型中に置き、次いで重合を開始するために紫外線(または高温)に曝露し、モノマーを架橋することができる。あるいは、型を使用する代わりに、大気または不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)に完全にまたは部分的に曝露しながら、またはあるいは油(例えばパラフィンまたはミネラルまたはシリコーンオイル)などの別の液体の存在下において、モノマーで膨潤したポリマーは重合することができる。医学的適用のために、型なしにインビボで重合工程を行うことができる可能性がある。
【0045】
使用される開始剤に依存して、紫外線、赤外線もしくは可視光線、化学物質、電荷、または高温への曝露は、疎水性ポリマー内のイオン化性モノマーの重合および架橋をもたらす。一例として、酸性モノマー(例えばアクリル酸)を重合して予備形成された熱可塑性で疎水性のマトリックス内でイオン性ポリマーを形成し、相互貫入ポリマーネットワーク(「IPN」)を形成する。溶媒は、熱および対流によって、または溶媒抽出によって抽出することができる。溶媒抽出はポリマーからの溶媒の抽出に異なる溶媒(水などの)の使用を伴うが、熱または対流は溶媒の蒸発に依存する。イオン性ポリマーのpKa(例えばPAA=4.7のpKa)に依存して、酸性pHはイオン性ポリマーをよりプロトン化するが、より塩基性のpHはよりイオン化する。
【0046】
中性pHのリン酸緩衝食塩水(または他の緩衝塩溶液)などの水性溶液中でのIPNの膨潤は、ポリ(アクリル酸)のイオン化ならびに水および塩によるさらなる膨潤をもたらすだろう。生じた膨潤されたIPNは、親水性で荷電したポリ(アクリル酸)によって付与された潤滑表面、ならびに熱可塑性物質によって付与された高靭性および高機械強度を有するだろう。ポリウレタンベースのIPNの事例において、IPNは、ポリウレタン中の結晶性ハードセグメントが第1のネットワーク中の物理的架橋として作用する構造を有するが、化学的架橋が第2のネットワーク中に存在するだろう。
【0047】
材料はγ線または電子ビーム放射線を使用して合成後に架橋することもできる。1つの実施例において、ポリウレタン/ポリアクリル酸を合成し、次いで例えば、5、10、15、20または25kGyの線量のγ線照射によって、例えば架橋することができる。この事例において、ポリアクリル酸の重合は架橋剤の非存在下において行われ、ポリマーブレンド(物理的IPN)の形成後に、材料はγ線に曝露されるだろう。これは、ポリウレタンの滅菌および架橋の二重目的を有する。γ線照射を使用するポリ(アクリル酸)ヒドロゲルの架橋がポリマーの架橋に対して線量依存性を示すことは当技術分野において公知である。このプロセスは、第1のネットワークポリマーおよび第2のネットワークポリマーの他の組み合わせ(例えばポリウレタンおよびポリメチルメタクリレート、ABSおよびポリアクリル酸など)にも適用することができる。
【0048】
上で同定された開始の熱硬化性疎水性ポリマーおよび熱可塑性疎水性ポリマーに加えて、かかるポリマーに対する修飾物およびその誘導体(スルホン化ポリウレタンなど)を使用することができる。ポリウレタンの事例において、ポリウレタンポリマーは、商業的に入手可能な材料、商業的に入手可能な材料の修飾物、または新素材でありえる。任意の数の化学的性質および化学量論をポリウレタンポリマーを生成するために使用することができる。ハードセグメントについては、使用されるイソシアネートは、1,5ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソフォロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6トリレンジイソシアネートもしくは2,4トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート、またはメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)である。ソフトセグメントについては、使用される化学物質は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンアジパート、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンアジパート、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ポリヘキサメチレンカルボネートグリコール、ポリ(1,6ヘキシル1,2−エチルカルボネート)、および水素添加ポリブタジエンを含む。イソシアネートを持つ反応性末端基が使用されるならば、任意の数のテレケリックポリマーをソフトセグメントおいて使用することができる。例えば、ヒドロキシルアミン末端ポリ(ビニルピロリドン)もしくはアミン末端ポリ(ビニルピロリドン)、ジメチルアクリルアミド、カルボキシレートポリマーもしくはスルホン化ポリマー、テレケリック炭化水素鎖(ヒドロキシル末端基および/またはアミン末端基を持つ)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、または互いと組み合わせたこれらのもの、もしくは上で言及された他のソフトセグメント(例えばPDMS)と組み合わせたこれらのものを使用することができる。ジヒドロキシエチルプロピオン酸(DMPA)(またはその誘導体)などのイオン性ソフトセグメント(または鎖延長剤)は、イオン性鎖延長剤が材料の2%以上含まれない限り、水分散性ポリウレタンを作製するために使用することができる。
【0049】
鎖延長剤は、例えば、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4’メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコールおよびヘキサンジオールを含む。他の適合性のある鎖延長剤は、単独でまたは組み合わせで使用することができる。イソシアネート反応性末端基(例えばヒドロキシルまたはアミン)およびビニルベースの官能基(例えばビニル、メタクリレート、アクリレート、アリルエーテルまたはアクリルアミド)を含有する使用できる架橋鎖延長剤は、いくつかまたはすべての鎖延長剤の代わりに使用することができる。実施例は1,4ジヒドロキシブテンおよびグリセロールメタクリレートを含む。あるいは、架橋は、イソシアネートとの反応のための2つ以上のヒドロキシル基を含有するグリセロールなどのポリオールの使用を介して達成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、第2のネットワーク中の親水性モノマーの少なくとも2%はイオン化性および陰イオン性(負に荷電可能)である。1つのかかる実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルは、アクリル酸モノマーの水性溶液から形成されて、第2のポリマーネットワークとして使用される。他のイオン化性モノマーは、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート(またはスルホプロピルアクリレート)、ビニルスルホン酸などの負に荷電したカルボン酸基またはスルホン酸基を含有するもの、またはヒアルロン酸、ヘパリン硫酸およびコンドロイチン硫酸のビニルコンジュゲートバージョンに加えて、その誘導体または組み合わせを含む。第2のネットワークモノマーは正に荷電しているかまたは陽イオン性でもありえる。これらの他のモノマーは、さらに水または有機溶媒のいずれか中で1%〜99%の範囲であるか、または純粋(100%)でありえる。第2のネットワークを形成するために使用されるモノマーの1つの実施形態は以下の特徴によって記載することができる。(1)ポリウレタンを膨潤することができる、(2)重合することができる、および(3)イオン化性である。
【0051】
他の実施形態は、イオン性ポリマーに加えて、非イオン性でありえるコモノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはその誘導体など)を使用する。これらは、メチルメタクリレートなどのより親水性でない種またはより疎水性のモノマーもしくはマクロモノマーと共重合することができる。これらは、単独で重合できるか、または前記の親水性モノマーおよび/またはイオン化性モノマーと共重合することもできる。
【0052】
これらのモノマーに基づく架橋した線状ポリマー鎖(すなわちマクロ分子)に加えて、タンパク質およびポリペプチド(例えばコラーゲン、ヒアルロン酸またはキトサン)などの生体マクロ分子(線状または架橋された)も、第2のネットワークにおいて使用することができる。第2の材料の選択は標的適用に依存し、例えば整形外科領域の適用において、ヒアルロン酸は関節軟骨の主なコンポーネントであるので有用であろう。さらに、生物学的分子は、それらを材料コンポーネントとして有用にする、固有の生体適合性または治療上の(例えば創傷治癒および/または抗菌)特性などの特定の利益を保有することができる。
【0053】
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート(またはジエチレングリコールジアクリレート)、メチレングリコールジメタクリレート(またはメチレングリコールジアクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(またはテトラエチレングリコールジアクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレートもしくはポリエチレングリコールジアクリラート、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、その誘導体または組み合わせなどの、任意のタイプの適合性のある架橋剤は、任意の前記の第1のネットワークの存在下において、第2のネットワークを架橋するために使用することができる。任意の数の光開始剤も、前駆体溶液/材料との可溶性に依存して使用することができる。これらは、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンを含むが、これらに限定されない。さらに、過酸化ベンゾイル、2−オキソグルタール酸、アゾビスイソブチロニトリルまたは過硫酸カリウム(または過硫酸ナトリウム)などの他の開始剤を使用することができる。例えば、過酸化ベンゾイルは温度開始重合に有用であるが、アゾビスイソブチロニトリルおよび過硫酸ナトリウムはラジカル開始剤として有用である。
【0054】
別の実施形態において、溶媒はモノマーを送達する「トロイの木馬」として使用することができ、モノマーはそのままではポリマーの1つまたは複数の相に対してポリマーを混合しない(または可溶化しない)。溶媒は、ポリマーおよびモノマーの特異的な特質および相に基づいて慎重に選択されなくてはならない。例えば、酢酸は多くのポリウレタンを膨潤することができるが、溶解しない。したがって、酢酸はポリウレタンのバルクの中へアクリルアミド溶液(そのままではポリウレタンに入り込まない)などの他のモノマーを運ぶために使用することができる。これは、アクリルアミドがポリウレタンの1つの相の内部に選択的に重合されることを可能にする。次いで、酢酸は、1つまたは複数の新しい特性を持つポリウレタンを残して洗浄することができる。使用することができる他の溶媒は、ジクロロメタン、メタノール、プロパノール、ブタノール、(または任意のアルキルアルコール)、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ポリマーの相中での可溶性を考慮して、1つの様々な膨潤度を持つ溶媒を選択することができる。膨潤される材料の溶媒およびコンポーネントの可溶性は、The Polymer Handbookなどのポリマー教科書から得ることができるか、または実験的に測定することができる。
【0055】
本発明は、ポリマー材料上にバルク相互貫入された被覆を形成するために使用することができる。この被覆は、下層にあるポリマーマトリックスとほどけずに絡み合い、材料が表面にグラフトされるかまたは連結される従来の表面被覆とは対照的である。バルク相互貫入された被覆の1つの実施例において、熱可塑性ポリマーは1つまたは複数の側面上に被覆されるか、または光開始剤および架橋剤の存在下においてアクリル酸などのイオン化性モノマー中で浸漬される。次いで熱可塑性物質を型中に置き、次いで所定の時間で開始剤(例えば紫外線または熱)に曝露する。型は、モノマーの局部的に特異的な硬化を促進するために完全にまたは部分的に透明におよび/またはマスクすることができる。次いで修飾される材料を緩衝生理食塩溶液中に浸漬して、イオン性ポリマーを中和し表面を潤滑で親水性にする。次いで修飾されるプラスチックは、熱、溶媒、および/または圧力の適用によってさらに再成型することができ、次いで所望される寸法に形作ることができる。次いで修飾されるプラスチックを、未修飾のプラスチック表面に熱または溶媒(アセトンなど)を適用すること、および表面を対象となる表面と接触させることによって、金属、ガラス、プラスチックまたは他の材料などの様々な表面に接着させることができる。
【0056】
本発明の適用の中には、船舶、潜水服もしくは水着、他の水上バイクもしくは水上の物体、パイプ中の抗力および/またはバイオフィルム形成および/またはフジツボ形成を減少させる、親水性で潤滑な外装または被覆の生成がある。さらに、本発明は、エンジン、ピストンまたは他の機械もしくは機械部品などの適用のためのベアリングおよび可動部品を製作する方法として使用することができる。本発明は、人工関節系または身体の他の領域における長期インプラント(血管系もしくは尿路系のためのステントおよびカテーテルまたは皮膚のためのインプラント、パッチもしくは包帯など)においても使用することができる。
【0057】
図2および3は、開始ホモポリマー内で組成勾配を生成するためにどのように本発明を使用することができるかを示す。図2において、IPNは1つの側面22上で形成され、別の側面24に向かって濃度が減少(例えば実質的にホモポリマーのみ)して広がり、厚み方向に沿って材料20中で勾配が形成される。図3において、IPNは外側表面32で最高濃度であり、IPNは中心またはコア34で最低濃度を有しており、IPN濃度勾配は材料30内で放射状となる。円筒または球体の事例において、IPNを形状のコアに配置し疎水性ポリマーを形状の外面に配置して逆の勾配も作製することができる。これは、勾配組成物を介する絶縁疎水性材料内でカプセル化された伝導性半IPNワイヤーを生成するのに有用である。
【0058】
図4Aは、本発明に従う熱可塑性物質勾配IPNを製作する方法を示す。熱可塑性物質材料40の1つの側面は、光開始剤(図示せず)および架橋剤(図示せず)に加えてモノマー溶液42を吸収し、次いでモノマーは熱可塑性物質内で重合および架橋されて(例えば紫外線44により)、勾配IPN46を形成する。中性にpHを増加させること47および周囲の液体の中へ塩を導入すること48は、第2のポリマーネットワークのイオン化をもたらす。あるいは、非イオン性モノマーを(コポリマーを形成するために)部分的に基礎として使用することができる。非イオン性ポリマーは緩衝液溶液によってイオン化されないが、それでもなお親水性表面を生成する。いずれのタイプのモノマー系も水または有機溶媒のいずれかと併用して使用することができる。
【0059】
1つの実施形態において、ポリウレタン(「PU」)が1つの側面上のみのAA中で膨潤されるならば、または膨潤時間がTPのバルクを介するモノマーの拡散が完了しないように限定されるならば、TP/PAA IPNは勾配を生成することができる。これは、整形外科領域の関節置換材料のための骨軟骨移植片の生成で特に有用である。例えば軟骨置換材料の事例において、材料の1つの側面は潤滑で水膨潤になるが、他の側面が固体(純粋な熱可塑性物質)のままである。その間はTP/PAAのIPNとTPとの間の移行であり、PAA含有量は1つの表面から他の表面へと減少する。あるいは、TPの中へのAAの拡散がバルクの中へのモノマーの浸透のタイミングによって正確に制御されるならば、TP/PAAのIPN外面およびPUのみの「コア」を持つバルク材を作製することができる。この立体配置から生じる差異的な膨潤は、材料の機械的挙動および疲労挙動の促進を支援することができる残留応力(膨潤側面で圧縮、非膨潤側面で引張)をもたらすことができる。厚み勾配を持つ材料の事例において、熱可塑性物質のみの材料の土台は、解剖学的な領域または対象に対して装置を錨着、固着、または縫合するために使用することができる。この土台は少ない領域に制限されるか、または大きくなりえ(例えばスカート)、単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネント(例えばストラップ)として外側へ延長することができる。処理の間にまたは膨潤後に熱可塑性物質内で構築された内部応力は、温度誘発性アニーリングによって減少させることができる。例えば、60〜120℃の温度をポリマーをアニールする様々な時間(30分乃至数時間)に対し使用することができ、熱はオーブン中で、熱面によって、放射によって、またはヒートガンによって適用することができる。熱可塑性物質は、例えば、ガンマ線または電子線の放射を使用して後に架橋することができる。
【0060】
図4Bは、所望される組成物を産生するために勾配IPNの特性がどのように変化することができるかを示す。図4Cは、勾配IPNの厚み(2つの表面の間の)にわたって疎水性ポリマーおよびイオン性ポリマーの濃度勾配がどのように変化することができるかを示す。組成勾配は、IPNが1つの側面上で水和されておりより軟質であり、他の側面上であまり水和されておらず(またはまったく水和されていない)剛性である特性勾配を産出する。
【0061】
図5で示されるように、本発明のIPNおよび半IPNから作製された製品はラミネート構造中でも形成することができる。1つの実施例において、IPN構造50は、ポリエーテルウレタンなどの第1の熱可塑性物質(TP1)に相互貫入しているポリ(アクリル酸)などの親水性ポリマー(P)からなり、ポリカーボネートウレタンなどの第2の熱可塑性物質(TP2)の上に形成される。TP1およびTP2の両方は、それら自身で様々な硬さおよび特性の多層からなることができる。さらに、2つ以上の多数の熱可塑性物質層を使用することができ、1つまたは複数の熱可塑性物質を架橋することができる。最終的に、非熱可塑性要素をこの構築物の中へ取り込むことができる。
【0062】
本発明の勾配または均質のIPNおよび半IPNから形成された製品は所望されるように形作ることができる。図6は勾配IPN製品の造形を示す。このプロセスは均質のIPNまたは半IPNを形作るためにも使用することができる。
【0063】
図6中で示されるように、勾配IPNの熱可塑性物質側面50におけるポリマー中の物理的架橋(例えばポリウレタン中のハードセグメント)を再アニールするために熱61を使用することができ、曲げ(例えば型または鋳型の上の)および冷却の後に異なる所望の湾曲をもたらす。図6は、勾配IPNの熱可塑性物質側面上の凸面62および凹面64の両方の湾曲を示す。当然他の形状は所望されるように形成することができる。熱可塑性物質の使用は、例えば、射出成形、反応性射出成形、圧縮成形あるいは代わりに浸漬キャストによって、所望される形状への装置の成形を促進する。次いで成形された装置は、新しいIPN材料を産出するために、続いてネットワーク浸透および重合工程を行うことができる。
【0064】
本発明に従うIPNおよび半IPN製品の造形は人体内でなどのインシトゥーで形成することができる。例えば、図7A〜Bは、熱可塑性物質勾配IPN70が大腿骨骨頭の湾曲72のまわりを包むことが可能になるように加熱すること71を示す。図7C〜Dは、熱可塑性物質勾配IPN73が股関節ソケット75の湾曲に順応することを可能になるように熱74を適用することを図示する。
【0065】
本発明に従って作製された、形作られたか、または形作られていないIPNおよび半IPN製品は、他の表面へ付着させることができる。図8A〜Dは、熱可塑性物質勾配IPN製品80を接着界面83で表面82へ付着するために、溶媒、セメントまたはグルーなどの接着剤81をどのように使用することができるかを示す。溶媒の追加は、例えば、材料を局所的に溶解し、熱可塑性物質は表面との接触および溶媒の乾燥の後に表面に固着する。この方法は、船舶船体表面を含むが、これらに限定されない様々な物体の本発明の「パネル」を生成するために使用することができる。「被覆」は、容器の外形または容器の一部にわたる材料の真空成形によって適用することができる。類似したアプローチは関節中の骨表面へ勾配IPNを付着させるために使用することができる。
【0066】
例えば、本発明の方法によって形成された本発明の組成物は、様々な設定において使用することができる。1つの特定の使用法は骨軟骨移植片中の人工軟骨としてである。本発明は、天然の軟骨の分子構造、および同様に、弾性係数、破砕強度ならびに潤滑表面を模倣する相互貫入ポリマーネットワークに基づいた骨温存関節形成装置を提供する。少なくとも天然の軟骨のこれらの構造面および機能面のいくつかをまねて、本発明の半IPNおよびIPNは、新規の骨温存の「生体模倣性表面再建」関節形成手順の基礎を形成する。軟骨のみを置換するようにデザインされたかかる装置は、潤滑な関節面および骨統合可能な骨界面を特色とする、1セットの可撓性でインプラント可能な装置として製作される。
【0067】
原理上は、装置は身体中のいかなる関節面に対して作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆う装置は類似した骨調製およびポリマーサイジングプロセスを必要とする。股関節中の大腿骨骨頭を覆う装置については、キャップ形状装置が大腿骨骨頭の外形にわたり緊密に嵌合する。寛骨臼を被覆する装置については、半球カップ形状の装置は関節唇を覆って伸びて、合わせ面に大腿骨骨頭を提供するようにソケット中の所定の位置に嵌め込むことができる。このような方法で、患者の股関節の両側は修復することができ、キャップ・オン・キャップ関節連結が生成される。しかしながら、表面の1つのみが破損されるならば、1つの側面のみをキャップすることができ、キャップ・オン・軟骨関節連結が生成される。さらに、本発明の材料は、別の関節置換物の関節連結表面または代替のベアリング面として働く表面再建装置(典型的には金属からなる)のキャッピングまたはライニングに使用することができる。
【0068】
本発明を肩関節(ボール・アンド・ソケット関節も)に対して使用してキャップ形状装置を生成するために、股関節のプロセスに類似するプロセスが使用される。例えば、浅いカップは関節窩の内側をライニングするために生成することができる。さらに、手、手指、肘、足首、足および椎間ファセット中の他の関節のための装置もこの「キャッピング」概念を使用して生成することができる。遠位大腿骨の1つの実施形態において、遠位大腿骨装置体積は骨の外形に従うが、前十字靭帯および後十字靭帯を温存している。
【0069】
本発明に従って形成された人工器官軟骨の1つ実施形態において、75Dのショア硬さで予備形成されたポリエーテルウレタン装置が射出成形される。この装置は、次いで55Dの乾燥ショア硬さに配合されたポリエーテルウレタンを含有するビタミンE含有溶液中で溶液キャストする(例えば、ジメチルアセトアミド中の25%エラスタン(Elasthane)(商標)55D)。次いでキャスト層は溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥することができる。次いで装置をアクリル酸、光開始剤および架橋剤の溶液中で24時間浸漬し、次いでガラス鋳型の上に置き、紫外線に曝露することができる。次いで生じた装置をリン酸緩衝食塩水中で浸漬および洗浄することができる。このプロセスは関節形成適用のための凸面装置または凹面装置のいずれかを生成するために使用される。射出成形された予備形成物は、その側面の1つの上に複数の空間(孔またはフィーチャー)を有し、従来の整形外科の骨セメントにより骨へ錨着することができるようにする。
【0070】
装置の別の実施形態において、1つの側面上で表面フィーチャーを持つ予備形成されたポリカーボネートウレタンを製作し、続いてポリエーテルウレタンの溶液中で側面の1つの浸漬キャストを行い、次いで上述のものに類似するプロセスを行った。なお別の実施形態において、ショア硬さ55D(例えばエラスタン(商標)55D)のポリエーテルウレタン予備形成物を射出成形し、続いて上述のようにモノマー溶液中で浸漬を行う。第2のポリマーネットワークの硬化後に、装置はショア硬さ75Dのポリカーボネートウレタンを持つ1つの側面上で浸漬キャストされる。これらの実施形態のいずれかにおいて、追加の表面フィーチャーは、機械加工(旋盤およびエンドミル)、溶液キャスト、溶剤溶着、超音波溶着または熱溶着を含むが、これらに限定されない多数の手段を介して装置の骨界面側に加えることができる。
【0071】
多孔性ポリカーボネートウレタンIPNおよび半IPN構造は本発明に従って作製することができる。バイオネート(Bionate)(登録商標)55D、バイオネート(登録商標)65Dおよびバイオネート(登録商標)75Dを含むが、これらに限定されないポリカーボネートウレタンの粒子(サイズ範囲:250〜1500μm)は、熱(220〜250℃)、圧力(0.001〜100MPa、および/または10〜30分間の溶媒を使用して、型中で焼結することができる。構造は、50〜2000μmの最終的な孔サイズ、15〜70%の多孔率、および10MPaを越える圧縮強度を有するだろう。最終的な構造は、医学的適用および獣医学的適用のための組織内方成長/統合化を促進する多孔率を有する。この構築物は単独で、または本発明中に記載される任意の潤滑なポリマーから作製された重層ベアリング面と共に使用することができる。軟骨が破損された場合、以下に記載されるように、身体の関節中の軟骨置換プラグとしてこの材料を使用することができる。
【0072】
例えば本発明の方法に従って作製された本発明の組成物は、完全にまたは部分的に合成した骨軟骨移植片として使用することができる。骨軟骨移植片は、多孔性骨または合成多孔性骨様の構造に錨着することができる潤滑な軟骨様の合成ベアリング層からなる。ベアリング層は、潤滑な表面層および剛性の骨固着層の2つの領域を有する。1つの実施形態において、上部のベアリング層の潤滑な領域は、2つのポリマーからなる相互貫入ポリマーネットワークからなる。第1のポリマーは、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを含むが、これらに限定されない高機械強度を持つ疎水性熱可塑性物質、または取り込まれた尿素結合を持つこれらの材料、または取り込まれた尿素結合を持つこれらの材料(例えばポリウレタンウレア)でありえる。第2のポリマーは、アクリル酸および/またはスルホプロピルメタクリレートを含むが、これらに限定されないイオン化性ビニルモノマーに由来する親水性ポリマーでありえる。ベアリング層の下部領域(骨錨着層)は、超音波溶着振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギーおよび電気エネルギーにより流動が引き起こすことができる、剛性の再吸収不可能な熱可塑性物質でありえる。骨錨着層は、骨または骨様の多孔質構造へベアリング層を錨着するために使用される。多孔性骨が使用されるならば、それはヒトまたは動物からの海綿質骨でありえる。合成骨様の材料が使用されるならば、それは多孔性リン酸カルシウム(および/または多孔性炭酸アパタイト、βリン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトを含むが、これらに限定されない他の材料)、またはポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、PLA、PLLA、PLAGA、および/またはPEEKを含むが、これらに限定されない上記されるような多孔性の再吸収可能なまたは再吸収不可能な熱可塑性物質からなることが可能である。ベアリング層は、骨または骨様の構造の孔または空間の中へ骨錨着材料を融解および流動させるために、エネルギーと組み合わせた加圧を介して多孔性骨または骨様の構造に錨着され、その後エネルギー源を除去し、材料は再凝固される)。エネルギー源は、振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギーおよび電気エネルギーを含むことができるが、これらに限定されない。
【0073】
以下の図は、哺乳類(動物またはヒト)の身体中の損傷を受けた関節を部分的にまたは完全に表面再建する装置としての本発明の様々な実施形態を示す。これらの装置は、圧入嵌合、ネジ(金属またはプラスチック、再吸収可能または再吸不収可能のいずれか)、縫合糸(再吸収可能または再吸収不可能)、グルー、粘着剤、光硬化可能粘着剤(例えば、ポリウレタン、または樹脂ベースの)、またはセメント(ポリメチルメタクリレートもしくはリン酸カルシウムまたは歯科用セメントなど)などの任意の数の手段を介して骨へ固定させることができる。
【0074】
図9A〜Dは、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントを、股関節または肩関節などの関節内で軟骨を置換または増大するためにどのように使用することができるかを示す。図9A中で示されるように、人工器官軟骨90は、キャップ部分91および随意の環92を有するソックスとして形成される。人工器官90は、図9B中で示されるように裏返しであり、上腕骨または大腿骨の頭部94を覆って滑らせることができる。図10A〜B中で示される代替の実施形態において、人工器官90は、靭帯96または他の解剖学的構造を提供する開口95を含むことができる。
【0075】
インプラントおよび他の製品は本発明に従う様々な複合体形状で作製することができる。図11A〜Eは、膝関節内で軟骨を置換または増大するために必要な、単独でまたは任意の組み合わせで使用できる本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示す。図11Aは、複数の大腿顆(あるいは単に1つの顆)に係合するように適合させた骨軟骨移植片110を示す。図11Bは、脛骨プラトー113の1つの側面または両側に係合するように適合させた骨軟骨移植片111および112を示す。図11Cは、膝蓋骨114に係合するように適合させ、膝蓋大腿部溝115に係合するように適合させた骨軟骨移植片119により関節連結した、骨軟骨移植片118を示す。図11Dは、外側半月および内側半月を係合するように適合された骨軟骨移植片116および117を示す。図11Eは、これらの人工器官のいくつかが膝関節内部でどのように適所に組み立てることができるかを示す。
【0076】
骨軟骨移植片は、手指または手または足首または肘または足または脊椎などの他の関節においても使用することができる。例えば、図12A〜Bは、本発明のIPNまたは半IPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片121および122を示す。図13A〜Bは、肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官131を示す。図14は、滑液包骨軟骨移植片141、関節唇骨軟骨移植片142、関節窩骨軟骨移植片143および上腕頭骨軟骨移植片144としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示す。図15は、椎間ファセットの表面再建のための人工器官151および152としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示す。
【0077】
IPNおよび半IPNの本発明の組成物は関節面の部分的表面再建のための人工器官軟骨プラグとして形成することができる。図16Aは、本発明の勾配IPN組成物から形成された人工器官軟骨プラグ160を示す。プラグ160は製品の熱可塑性側面上にステム部分161を形成し、骨の穴または開口部の中に挿入されるように適合させる。上記されるようにプラグの頭部162は潤滑なIPNまたは半IPNであるように形成される。図16Bは、頭部162の下側163上でおよびステム161の土台164上で多孔性表面が形成される変化を示す。図16C〜Dの実施形態において、多孔性表面は土台164の中心部分165中のみに形成される。すべて実施形態において、ステム161は骨の穴または開口部の中へ圧入嵌合することができ、潤滑なIPN表面が人工器官軟骨として作動するように曝露される。
【0078】
図17は、骨へのプラグの固定のためのネジを形成するために、ステム171が螺旋状のネジ山173を持って提供される人工器官軟骨プラグ170の実施形態を示す。頭部172の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0079】
図18は、固定のための骨の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステム181を有する人工器官軟骨プラグ180の実施形態を示す。プラグ頭部182の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0080】
図19は、露出した頭部部分192がステム191と実質的に同じ直径である人工器官軟骨プラグ190の実施形態を示す。ステム191は固定のために骨の穴へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部192の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0081】
図20は、露出した頭部部分202がステム201よりも狭く、ステム201が土台203に向かって広くなる、人工器官軟骨プラグ200の実施形態を示す。ステム201は固定のために骨の穴の中へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部202の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0082】
図21は、固定を支援するためにステム211が円周状のネジ山を有する人工器官軟骨プラグ210の実施形態を示す。ステム211は固定のために骨の穴の中へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部212の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0083】
図22はステム221へ粗い多孔性表面を加えた図19のものに類似する実施形態を示す。プラグ頭部222の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0084】
図23は、ネジまたはステムなどの追加の固定なしに骨を物理的に把持するように形成された骨軟骨移植片230の実施形態を示す。この実施形態において、人工器官の潤滑なIPNまたは半IPN部分は装置の凹面231上にある。装置の反対の凸面232は、人工器官230が付着される骨の形状に一致させるように形作られる。表面232は骨の内方成長を促進するように多孔性である。この事例における多孔性物質は、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、糖およびその誘導体または組み合わせであるポロゲンにより、本発明において記載されようにポロゲン法から製作することができる。あるいは、多孔性は、熱または溶媒を使用して、ポリマービーズ(例えばポリエーテルウレタンまたはポリカーボネートウレタン)をともに焼結させることに由来することができる。
【0085】
骨への固定のために骨軟骨移植片へネジ穴を提供することができる。図24において、人工器官240は、ネジ242のために2つの穴241を持って提供される。人工器官240の骨と接触する凹側244は骨の内方成長を促進するように多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面243は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0086】
図25において、骨軟骨移植片250は、ネジ253の頭部の収容のためのくぼみ252に加えてネジ穴251を持って提供される。人工器官250の骨と接触する凹側254は骨の内方成長を促進するのに多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面255は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0087】
図26は、骨中の穴の中へ挿入のためのステム261を有する骨軟骨移植片260の実施形態を示す。人工器官260の骨と接触する凹側262は骨の内方成長を促進するように多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面263は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0088】
図27A〜Bは、両側で潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示す。図27Aにおいて、インプラント270は椎間円板を置換するために大きさを合わせて構成される。インプラント270はその上部側面および下部側面上に潤滑なIPN表面または半IPN表面271および272(例えば上記されるように形成された)を有する。図27Bは、V字形の横断面を有する膝スペーサー273を示す。ディスク人工器官270のように、スペーサー273もその上部側面および下部側面上に潤滑なIPN表面または半IPN表面274および275を有する。
【0089】
上記された骨軟骨移植片および他のインプラントの多くは単一の骨表面に張り付けられる。図28および29は、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面(関節中など)へ付着されている整形外科領域のインプラントを示す。図28中で、インプラント280は、骨の内方成長を促進するために、多孔性であるように形成された上部骨接触領域および下部骨接触領域281および282を有する(上記されるように)。インプラント280の内部は液体で満たされたカプセル283である。内部に面するベアリング面284および285は潤滑なIPN表面または半IPN表面である(上述のように)。インプラント280は、例えば、中間挿入スペーサーならびに関節の滑液嚢および軟骨のための置換物として使用することができる。図29のインプラント290は、図28のインプラントに類似するが、関節を画成する骨の対応する穴における挿入および固定のための上部ステムおよび下部ステム291および292を加える。
【0090】
図30A〜Bは、本発明の骨軟骨移植片および他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示す。図30A中で、上記されるように形成された骨軟骨移植片インプラント300は骨301を覆って置かれる。インプラント300は、潤滑なIPNまたは半IPNの表面302、および熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマー単独から形成された骨界面表面303(上記されるように随意で多孔性である)を有する。表面302と表面303との間が、IPNまたは半IPNと疎水性ポリマーとの間の勾配または移行のゾーン304である。経時的に、図30B中で図示されるように、骨組織は、骨301から骨接触面303の中へおよび骨接触面303を介して増殖する。
【0091】
図31A〜Cは、本発明に従って軟骨の関節表面を修復する骨軟骨インプラントの3つの可能な立体配置を図示する。図31Aにおいて、インプラント310は、上記されるように、熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面312へ移行する潤滑なIPN表面または半IPN表面311を有するキャップとして形成される。インプラントされたときに、インプラント310は骨313の外側表面を覆う。
【0092】
図31Bおよび31Cは、上記されるように、インプラント314が熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面316へ移行する潤滑なIPN表面または半IPN表面315を有するパッチまたはプラグ(それぞれ)として形成される立体配置を示す。インプラントされたときに、インプラント314は骨313の調製された開口317内で嵌合する。
【0093】
本発明は非医学的適用を有する。例えば、図32は、船舶の船体を表面再建するために本発明の潤滑なIPN組成物または半IPN組成物の使用を示す。熱可塑性物質勾配IPNのパネル320(上記されるように)は、抗力およびバイオフィルム形成を減少させるために船体322の表面へ付着されている。あるいは、IPN材料は、いくつかの実施形態において、液体として船体上に塗布し、硬化または固化させることが可能である。勾配IPNは、その表面上で負に荷電または非荷電でありえ、1つまたは複数のタイプのモノマー種から作製することができる。様々なUV保護剤および酸化防止剤、または他の添加剤も、性能を改善するためにこれらの材料の中へ取り込むことができる。
【0094】
図33は、回転および平行移動する部品330の表面331ならびに静止部品332の表面333などの互いに対して移動する機械部品の境界表面を修飾する潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPN(上記されるように)の使用を示す。図34は、パイプ342の内部表面340上の液体抗力を減少させるための潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPN(上記したされように)の使用を示す。
【0095】
本発明の材料は電気化学的伝導性を必要とする適用において有用性を有する。IPNおよび半IPNの伝導性は材料の水和したマトリックスを介するイオンの流動に基づく。ポリエーテルウレタンの薄いフィルムを、アクリル酸および水の混合物の4つの異なる組成物(水中で15、30、50および70%のアクリル酸)により膨潤した。次いで各々の膨潤したフィルムを紫外線中で硬化させて半IPNを形成した。次いでフィルムをPBS中で中和した。材料の電気抵抗はオーム計を使用して測定した。抵抗を測定するために、IPNフィルムはペーパータオルで軽くなでて過剰のPBSを除去し、オーム計プローブを60〜70mmのフィルム幅にわたってフィルムへ留めた。初期抵抗値および定常状態抵抗値を記録した。さらに、未修飾のポリエーテルウレタンフィルムおよび液体のPBSの抵抗を測定した。PBSの抵抗は、プローブとの間が60mmのおよその距離で、PBS槽の中にオーム計プローブを直接置くことによって測定した。抵抗測定を以下の表中に示す。
【表1】
【0096】
結果は、半IPNの抵抗が純粋なPBSの液体単独未満(しかし同じ桁内)であることを示す。オーム計の限界は40,000オームであった。絶縁体(ポリウレタンを含むについての典型的な値は1014〜1016オームであり、したがってPEU単独の抵抗値は使用されるメーターの範囲外であった。PEU/PAA半IPNの透過性は、Permeability of articular cartilage. Nature, 1968. 219(5160): p.1260-1中でMaroudas et al.によって記載されたものに類似する装置を使用して測定した。透過性はダルシーの法則(Q=KAΔp/L)に従って計算され、式中、Qは流速[mm3/sec]、Aはプラグの横断面積[mm2]、Δpは適用される圧力勾配[MPa](加圧液体)、Lはヒドロゲルの厚みである。70%のアクリル酸から調製されたPEU/PAA半IPNの透過性は、K=1.45×10-17m4/N*秒であることが見出された。天然の軟骨については、文献の値は1.5×10-16乃至2×10-15m4/N*秒にわたる。したがって、PEU/PAAは軟骨よりも10〜100倍透過性が少なく、それは天然の軟骨と比較して延長した圧縮荷重下での脱水の傾向を少なくすることができる。IPNの透過性は膨潤溶液中のAAの濃度の変更によって調整することができ、AA含有量が高いほど、透過性は高い。これとは対照的に、未修飾のPEU材料単独は溶質に対して効果的に非透過性であり、ある程度の水分(〜1%)を保持するが、実際には溶質透水性マトリックスとして働かない。
【0097】
上記の組成物、製品および方法に対する他の変化および修飾物は以下のものを含む。
【0098】
第1のポリマーは、商業的に入手可能またはカスタムメイドであり、多数の手段(例えば、押出、射出成形、圧縮成形、反応射出成形(RIM)または溶液キャスト)によって作製されるものでありえる。第1のポリマーは架橋されないか、または様々な手段によって架橋することができる。どちらのポリマーも、例えばγ線または電子線放射によって架橋することができる。
【0099】
全体でイオン化性化学基を重量で少なくとも2%含有する限り、任意の数または組み合わせのエチレン性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和マクロモノマー(例えば、反応性二重結合を含有する)を、第2のネットワークまたは次のネットワークの基礎として使用することができる。これらは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリルエーテル基またはアクリルアミド基を含有するものを含むが、これらに限定されない。および多数のペンダント官能基は、カルボン酸、スルホン酸、アセテート、アルコール、エーテル、フェノール、芳香族基または炭素鎖を含むが、これらに限定されないエチレン性不飽和基へコンジュゲートすることができる。
【0100】
ポリウレタンベースのポリマーは以下の通りでありえるが、これらに限定されない。ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタンウレア、シリコーンポリエーテルウレタンまたはシリコーンポリカーボネートウレタン。他のハードセグメント、ソフトセグメントおよび鎖延長剤を持つ他のポリウレタンが可能である。
【0101】
他のポリマーは、シリコーン(ポリジメチルシロキサン)またはポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーなどの第1のネットワーク中で使用することができる。
【0102】
ポリウレタンベースのポリマーが第1のポリマーとして使用される場合、ポリウレタンベースのポリマーの物理的架橋および化学的橋架の程度は、広範囲な化学的橋架から物理的架橋のみ(熱可塑性物質)の間で変動させることができる。化学的橋架の事例において、架橋可能ポリウレタンは、単独で、または熱可塑性物質(架橋されない)ポリウレタンとの混合物として使用することができる。
【0103】
重合の条件(すなわち、雰囲気酸素、UV強度、UV波長、露光時間、温度)を変動することができる。
【0104】
組成勾配の配向および峻度は、モノマー中での浸漬の時間および/または方法などの様々な手段、ならびに外部静水陽圧または外部静水陰圧の適用によって変動させることができる。
【0105】
熱可塑性物質は、発泡または塩溶脱などの様々な技術によって多孔性にすることができる。モノマー(AAなど)による多孔質ポリマー(PUなどの)の膨潤の後に、続いて重合またはAAが行われ、多孔性IPNは形成される。
【0106】
熱可塑性物質の追加層を、表面へ新しい熱可塑性物質を硬化させることまたは乾燥させることによって、IPN側面または熱可塑性物質側面のみ上のいずれかで材料に追加することができる。層はすべて同じ材料でありえるか、または異なる材料(例えば、ABS+ポリウレタン、ポリエーテルウレタン+ポリカーボネートウレタンなど)でありえる。
【0107】
ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、水、ジクロロメタン、プロパノール、メタノール、またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない多数の異なる溶媒を、ポリウレタン、第2のネットワーク、または両方の合成の間に使用することができる。
【0108】
光開始剤(例えば、フェノン含有化合物およびイルガキュア(Irgacure)(登録商標)産物)、熱開始剤または化学開始剤などの任意の数の開始剤を使用することができる。熱開始剤の実例は、アゾ化合物、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)、過硫酸塩(例えば過硫酸カリウムまたは加硫酸アンモニウム)、その誘導体または組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0109】
架橋同一性および密度(例えばモノマーに対する架橋剤のモルで0.0001%〜25%)、開始剤濃度(例えばモノマーに対するモルで0.0001%〜10%)、前駆体ポリマーの分子量、ポリマーの相対的重量パーセント、光波長(UVから可視範囲)、光強度(0.01mW/cm2〜1W/cm2)、温度、pHおよび膨潤液体のイオン強度、ならびに水和のレベルの変化。
【0110】
第2のネットワーク材料は、架橋薬剤の非存在下において合成することができる。
【0111】
これらの材料の含水量は2%乃至99%の間にわたりうる。
【0112】
IPNの異なるコンポーネントは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、他のビニル基含有スルホン酸、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメタクリルアミド)、およびその組み合わせまたは誘導体などのイオン化性モノマーと組み合わせて取り込むことができる。例えば、アクリル酸およびビニルスルホン酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーを第2のネットワークのために生成して、ポリウレタンの第1のネットワークおよびポリ(アクリル酸−コ−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホン酸)コポリマーの第2のネットワークを形成することができる。それらがイオン化性モノマーを重量で少なくとも2%含有し、第1のポリマーが入り込む(膨潤する)ことができる限り、任意のモノマーまたはモノマーの組み合わせは適切な溶媒と併用して使用することができる。
【0113】
IPNは、抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンE、イルガノックス(Irganox)(登録商標)、またはサントホワイト粉末)および/または抗微生物剤(例えば抗生物質)などの特定の添加剤を、バルクまたは表面内に、化学的にまたは物理的のいずれかで取り込むことができた。これらは、例えば、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニルまたはアリルエーテルなどの任意のビニル基含有モノマーによる抗酸化剤のエステル化によって、材料に化学的に結びつけることができる。
【0114】
2つ以上のネットワーク(例えば、3つまたはそれ以上)も形成することができ、その各々は架橋されるかまたは架橋されない。
【0115】
ポリウレタンそれ自体は、水素化ナトリウムの存在下における1,3プロパンスルホンの反応によるウレタン基でのスルホン化、または過剰のイソシアネート基との反応によるウレタン基でのアロファネート結合の形成によってなどの多数の手段で修飾することができる。例えば、ジラウリン酸ジブチルすずの存在下においてトルエン中でポリウレタンと過剰のイソシアナトエチルメタクリレートを2.5時間反応させて、メタクリロキシコンジュゲートポリウレタン表面を産出することができる。次いでメタクリロキシ基を続いて使用して、フリーラジカル重合によって他のメタクリロキシ(または他のビニル基)を含有するモノマーまたはマクロモノマーを連結することができる。IPNの第2のネットワークの形成の前にまたはその後に、かかる修飾を実行することができる。
【0116】
他の修飾は当業者に明らかである。
【実施例】
【0117】
実施例1
1つの実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート55D)を、一晩のモノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸中で一晩浸漬した。ポリカーボネートウレタンを溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンに加えて、セグメント化ポリウレタン尿素をアクリル酸溶液中に置き、同じ様式で重合および洗浄して、潤滑なIPNを産出した。
【0118】
実施例2
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)は、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸中で一晩浸漬した。ポリエーテルウレタンを溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた半IPNは取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンに加えて、ポリカーボネートウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素をアクリル酸溶液中に置き、同じ様式で重合および洗浄して、潤滑なIPNを産出した。
【0119】
実施例3
別の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを、モノマーに対して0.1%v/の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートが加えられた100%アクリル酸溶液中に別々に一晩置いた。重合および架橋の後に、半IPNは膨潤し、潤滑になった。ポリウレタン中にシリコーン(ポリジメチルシロキサン)を追加することは、有用な可能性のある界面化学および特性に加えて、特別なレベルの生体安定性を材料へ追加する。
【0120】
実施例4
別の実施例において、メタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンを紫外線に曝露してポリカーボネートウレタンを架橋し、次いでモノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%アクリル酸中で一晩膨潤した。材料を溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露して、ポリカーボネートウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0121】
実施例5
別の実施例において、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを紫外線に曝露して(0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のメチレングリコールジメタクリレートの存在下において)ポリエーテルウレタンを架橋し、次いで前記の光開始剤および架橋剤を含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0122】
実施例6
別の実施例において、0.1%の前記の光開始剤と共にDMAC中で25%のメタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの溶液を紫外線に曝露して、ポリカーボネートウレタンを架橋した。加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で溶媒を除去した後に、次いでポリカーボネートウレタンの追加層を架橋したポリカーボネートウレタンの1つの側面上でキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリカーボネートウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0123】
実施例7
別の実施例において、0.1%の前記の光開始剤と共にDMAC中で25%のメタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの溶液を紫外線に曝露してポリエーテルウレタンを架橋した。加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で溶媒を除去した後に、次いで、ポリエーテルウレタンの追加層を架橋したポリカーボネートウレタンの1つの側面上でキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0124】
実施例8
実施例の別のセットにおいて、メタクロキシ(methacroxy)官能基化ポリエーテルウレタンの層を射出成形されたポリエーテルウレタンの層上にキャストし、別々に、もう一つの層を射出成形されたポリカーボネートウレタンの層上にキャストした。各々を紫外線に曝露してラミネート構造を産出した。架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0125】
実施例9
1つの実施例において、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を、モノマーに対して0.1%のv/v 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のv/vトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で100%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、ABSの表面上のモノマー溶液を30分間ドロップキャストすることによって遂行した。次いでABSを2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じたABS/PAA勾配IPNを取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。
【0126】
実施例10
熱可塑性物質勾配IPNを再び形作るために、熱を適用した。ABS/PAA勾配IPNはヒートガンを使用して加熱し、次いで円筒状ポリプロピレンチューブ上に置いた。材料を室温まで冷却した後に、アセトンをABS/PAAとポリプロピレンとの間に射出した。手動で圧力を適用し、サンプルを乾燥させた後に、熱可塑性物質勾配IPNでまわりが包まれ、ポリプロピレンチューブへ接着された。
【0127】
実施例11
別の実施例において、熱可塑性物質勾配ABS/PAAのIPNを、ABSとポリカーボネートウレタンとの間のアセトンの射出および手動の圧力の適用によって、ポリカーボネートウレタンへ付着させて、ポリカルボウレタンへ接着させた熱可塑性物質勾配IPNを産出した。
【0128】
実施例12
別の実施例において、湾曲したポリカーボネートウレタンIPNは、ヒートガンを使用してポリウレタン側面上に熱を適用すること、手動で材料の湾曲を回復させること、および水中でIPNを冷却することによって、再び直線状にした。
【0129】
実施例13
別の実施例において、ポリエーテルウレタン溶液(例えばジメチルアセトアミド(「DMAC」)中で20%)をラミネート構造でポリカーボネートウレタンの上にキャストし、加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で乾燥させ、次いでポリエーテルウレタン表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、前記のモノマー溶液中で浸漬された製作物のベッド上にラミネート材ポリエーテルウレタン側面を下して置くことによって遂行した。材料を製作物のマットから取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた勾配半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨張し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを同じ手段で扱って、潤滑な半IPNを産出した。
【0130】
実施例14
別の実施例において、重量で50%塩化ナトリウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)の層を、予備作製されたポリエーテルウレタンポリカーボネートウレタン上で溶液キャストし、対流下の80℃で乾燥した。塩を水中で洗浄してラミネート状のポリウレタン上に多孔性側面を産出した。他の材料は10%乃至80%の間で変動する食塩濃度により作製された。
【0131】
実施例15
別の実施例において、20%のリン酸三カルシウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)の層を、予備作製されたポリエーテルウレタン−ポリカーボネートウレタン上で溶液キャストし、対流下の80℃で乾燥した。リン酸三カルシウムは骨誘導剤としてポリウレタン内に埋め込んだままにした。他の材料は0.001%〜20%で変動するリン酸三カルシウム濃度により作製した。
【0132】
実施例16
別の実施例において、ポリウレタンウレア(例えばジメチルアセトアミド中で20%)をラミネート構造でポリカーボネートウレタンの上にキャストし、次いでポリウレタンウレア表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、前記のモノマー溶液中で浸漬された製作物のベッド上にラミネート材ポリウレタンウレア側面を下にして置くことによって遂行した。ポリカーボネートウレタンを製作物のマットから取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた勾配半IPNは取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、材料をPBS中で洗浄した。
【0133】
実施例17
別の実施例において、溶液中で熱可塑性ポリエーテルウレタン(ジメチルアセトアミド中で25%)と混合した、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを紫外線に曝露して、ポリカーボネートウレタンを架橋した。次いでポリエーテルウレタンの追加層を架橋したポリエーテルウレタンの1つの側面上にキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを前記の光開始剤および架橋剤を含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0134】
実施例18
1つの実施例において、平らなシートを(ジメチルアセトアミド(DMAC)中で熱可塑性ポリウレタンの溶液キャストによって生成した。ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標))、ポリカーボネートウレタン(バイオネート)、ポリエーテルウレタン尿素(バイオスパン(Biospan))、シリコーンポリカーボネートウレタン(カルボシル(Carbosil))およびシリコーンポリエーテルウレタン(パーシル(Pursil))のポリウレタン溶液は、製造業者によって約25%の固形分濃度でジメチルアセトアミド(DMAC)中で合成された。
【0135】
実施例19
球の形状は、ポリウレタン溶液(DMAC中で)中でシリコーン球体に加えて、浸漬被覆ガラスによってもキャストされた。ポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)を、球状ガラス型(49.5mmの外径)上に、および別にシリコーン球体上に浸漬被覆した。溶媒はコンベクションオーブン中で80℃で乾燥させることによって除去した。このプロセスは合計で3つの被覆を生成するためにさらに2回反復した。次いで球体をポリエーテルウレタン(DMAC中で20%)中で浸漬被覆し、次いで対流下の80℃で乾燥した。このプロセスもさらに2回反復した。生じたキャップ形状のラミネート状のポリウレタンを型から取り出し、その外側を0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび0.1%のメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸溶液中に1.5時間浸漬した。キャップを裏返し、球状ガラス型を覆って戻し、紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。次にキャップを型から取り出し、リン酸緩衝食塩水中に置いた。1つの潤滑表面および1つの純粋な熱可塑性物表面を持つ球形の勾配IPNが結果として得られた。このプロセスを実行するために、他の温度および他の溶媒も他の型材料およびポリマー成分に加えて使用することができる。
【0136】
実施例20
別の実施例において、ポリエーテルウレタンは、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤した。材料の1つの側面を軽く叩いて乾燥させ、次いで大気に曝露し、紫外線により処理した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、生じた勾配半IPNを塩水溶液中で洗浄した。他の実験において、材料を硬化の間に窒素またはアルゴンに曝露した。
【0137】
実施例21
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)を射出成形し、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0138】
実施例22
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)75D)を、ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で、1つの側面上に射出成形、浸漬キャスト(溶液キャスト)し、DMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥させた。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0139】
実施例23
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート75D)を、ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で、1つの側面上に射出成形、浸漬キャスト(溶液キャスト)し、DMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0140】
実施例24
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)75D)を射出成形し次いで前記の光開始剤と共にメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で浸漬キャスト(溶液キャスト)し、次いで紫外線に曝露してメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。次いで材料はDMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。次いで乾燥させた材料は、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0141】
実施例25
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート75D)を射出成形し、次いでメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中でエラスタン(商標)55D)中で浸漬キャスト(溶液キャスト)し、次いで紫外線に曝露して、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。次いで材料をDMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。次いで乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、任意の未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0142】
実施例26
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)溶液をキャストし、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する酢酸中の35%のスルホプロピルメタクリレート中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで半IPNを酢酸を除去するために水により洗浄し、次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために塩水溶液中で洗浄した。
【0143】
実施例27
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)溶液をキャストし、次いで、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する水中の35%のスルホプロピルメタクリレートおよび35%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)/ポリ(スルホプロピルメタクリレート)コポリマーを中和し、平衡膨潤を達成し、任意の未反応モノマーを除去するために、半IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0144】
実施例28
別の実施例において、PMMA(プレキシグラス)の矩形のサンプルを、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する水中の100%のアクリル酸中で短時間膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、PMMAおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0145】
実施例29
別の実施例において、ポリジメチルスルホキシド(PDMS、シルガード(Sylgard)(登録商標)184)の矩形の試料を製造者の仕様書に従って調製し、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートと共にテトラヒドロフラン中の35%のアクリル酸溶液中で短時間膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、PDMSおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0146】
実施例30
図35は水和した関節形成装置の横断面であり、関節形成装置が、実際には、1つの側面上で天然の軟骨の構造、弾性係数、破砕強度および潤滑表面、ならびに他の側面上で骨梁の剛性、強度および多孔率をまねる、骨軟骨移植片の合成バージョンであることを示す。装置は、剛性で多孔性の骨様の錨着表面へとスムーズに移行する、潤滑な軟骨様のポリマーを特色とする複合勾配材料からなる。勾配は、天然の関節に先天的な組成の勾配(そこでは軟質で滑らかな軟骨が厚み方向に沿って表面から深い所へ次第により固くより骨様になる)を模倣するようにデザインされた。実際には、この「生体模倣的」勾配は、それらの接触点で装置と骨の剛性を効果的に一致させることによって、骨界面でも微細動作を最小限にしながら下層にある骨に対して生理的な応力分配をもたらすべきである。適切な材料は例えば以下の中で記載され、その開示は参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/079,060号(2008年7月8日に出願);米国特許出願第61/095,273号(2008年9月8日に出願);および米国特許出願第12/148,534(2008年4月17日に出願)。
【0147】
実施例31
図36は接触角解析を示し、本発明の材料が非常に親水性であることを指摘する。一滴の水が表面上に置かれる場合、滴がとる形状は表面の組成物に依存する。親水性表面は水を引きつけてより平らな滴を生成するが、疎水性表面は水を退けてより丸い滴を生成する。表面の親水性の程度は表面と水滴との間で生成された角度の測定によって推測され、接触角と呼ばれる。典型的には、より親水性の表面は水で約0〜45°の接触角を有するが、より疎水性の表面は水で45°よりも大きい接触角を有する。
【0148】
本発明によって作製された荷電したヒドロゲルIPNと水の間の接触角が決定された。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、半IPN(PEU/PAA半IPN)を形成するために硬化させた。硬化後に、荷電したPEU/PAA半IPNはリン酸緩衝食塩水中で水和させた。材料を溶液から取り出し、残りの液体を除去するために表面を短時間軽く叩いた。一滴の水を材料の表面上に置き、ゴニオメーターを使用して接触角を読み取った。結果は、約8°の接触角を示した。比較のために、溶液キャストされたポリウレタンおよび射出成形されたポリウレタンの出発材料上でとられた読み取りはそれぞれ約72°および69°の接触角であった。この結果は、本発明に従うポリウレタンの中へのポリ(アクリル酸)ネットワークの取り込みが劇的に表面親水性を増加させることを実証する。
【0149】
実施例32
荷電したヒドロゲルIPNおよびポリウレタンの構造の差は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって示される。TEMは、材料の高度に拡大されたイメージを生成する。本発明のポリエーテルウレタン/ポリ(アクリル)酸の半IPN(PEU/PAA半IPN)のサンプルおよび未修飾ポリエーテルウレタンのサンプルでTEMを行った。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬および硬化した。それを、TEM解析を行う標準的な手順によって四酸化オスミウムで染色した。図37BはPEU/PAA半IPNを示すが、図37AはPEUの34k倍の拡大イメージを示す。非晶性(ソフト)ドメインおよび規則性(ハード)ドメインに対応する明るい領域および暗い領域のサイズは、未修飾のPEUと比較してPEU/PAA半IPNのTEMイメージで増加した。PEUサンプルと比較してPEU/PAAサンプル中でのより大きなドメインサイズに基づいて、PAAはPEUソフトセグメント内に隔離されたようであり、未修飾のPEUと比較してPEU/PAAサンプル中の相分離の程度はより高い。
【0150】
実施例33
図38は12.4k倍の拡大で図37と同じPEU/PAA半IPN材料のTEMを示す。概略図は、ハードセグメントが相互貫入されたポリマーネットワークのソフトセグメントからどのように相分離するのかを示す。
【0151】
実施例34
図39は、整形外科インプラントの例示的な関節界面表面を含むPEU/PAAのIPNの静的な機械的特性を示す。初期ヤング率、破断時歪みおよび材料の破断時応力を決定するために、一軸引張試験を行った。ドッグボーン試料を、0.3%/秒の歪み率でASTM D638に従って試験した。関節界面材料の材料についての平均真応力−真歪み曲線を図40中に示す。曲線の直線状部分において、弾性係数(真応力、真歪み曲線から提供されるように)は、天然の軟骨について報告された引張特性に非常に近く、E=15.3MPaである。最終的な真応力は、εult=143%の真歪みで、約σult=52MPaであることが見出された(軟骨は約65%の歪みで破壊されることに注目)。張力下の歪み硬化は80%以上の真歪みで観察された。ポアソン比(平衡)は、ドッグボーンのネック領域の側面の収縮の測定によって推定され、v=0.32で歪み範囲に沿って一定していることが見出された。したがって、体積弾性率は等式K=E/3(1−2v)から計算され、18.3MPaであることが見出された。ASTM D695に従う非拘束圧縮プラグ試験から、15.6MPaの圧縮剛性係数(真応力−歪みに基づいて、引張係数と同じように)、および50MPaを越える破壊強度で、PEU/PAA半IPNが優れた圧縮特性を有することが明らかにされる。
【0152】
実施例35
図40は、毎分40℃の加熱率の示差走査熱量測定法(DSC)によって評価したPEUおよびPEU/PAA半IPNサンプルの熱曲線を示す。図41は、2つの異なる加熱率のDSCによって評価したPEUおよびPEU/PAA半IPNサンプルの熱転移を比較する。ガラス転移温度Tg、結晶化温度および融解温度Tmを含む熱転移温度が決定された。Tg未満では、ポリマーの熱容量はより低く、ポリマーはより硬いかまたはよりガラス質である。Tgより上では、ポリマーの熱容量は増加し、ポリマーはより可撓性になる。この温度より上では、いくつかのポリマーについては結晶化温度であり、少なくとも分子のドメインのいくつかはより組織化され本質的には結晶性になる。結晶性部分が完全に融解する場合、より高い温度が融解温度である。変調示差走査熱量計および冷凍冷却システム(RCS90)を持つTA器具Q200 DSCシステムを使用して、ASTM D3418−03試験方法に従って、手順を行った。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、次いで硬化させた。少量(2〜6mg)のPEU/PAA半IPNサンプルを第1のアルミニウムパンの中に置いた。パンの上部に覆いを置き、ユニバーサルクリンピングプレスによりクリンプしてパンと覆いの間のサンプルを挟んだ。第1のパンおよび別に参照パンに熱を適用し、各々に対する電流を変化させて2つの材料の温度を同じに保った。試験材料の熱流を温度に対してグラフ上に表し、曲線の傾斜は熱転移温度を示す(図40)。いくつかの試験は異なる加熱率(毎分10℃および40℃)を使用して行われた。異なる加熱率で試験を行うことによって、図41において見られるように、異なる分解能が熱転移について得られる。Tgが材料の以前の熱履歴に依存しうるので、材料は2つの熱サイクルで行われる。第1の熱サイクルはポリマーがその試験状態で達する条件を標準化するために使用され、第2の試験サイクルは転移温度を生成するために使用される。加熱率が毎分10℃で維持されたときに、PEU/PAA半IPNおよびPEUの両方についてのガラス転移温度(Tg)は、21℃の付近であった。PEUと比較して、結晶化温度および融解温度はPEU/PAAにおいてより低かった。毎分40℃の加熱率では、結晶化温度は、PEUの93℃と比較してPEU/PAAについては90℃であった。加熱率を毎分10℃に低下させたときは、観察された結晶化温度は、PEUの92℃と比較してPEU/PAAについては79℃であった。最終的に、毎分40℃の加熱率では、Tm温度は、PEUの178℃と比較してPEU/PAAについては164℃だった。加熱率を毎分10℃に低下させたときは、観察されたTm温度は、PEUの176℃および186℃に対してPEU/PAAについては154℃であった。PEUのいくつかの分析において、2つのTmが観察され(176℃および186℃)、それはポリマー中で異なるセグメントのためであろう。Tmの変化は、少なくとも部分的には、ポリマーの体積あたりより少ないハードセグメントをもたらす、PAAの追加によって引き起こされるポリマー体積の増加のためである。
【0153】
実施例36
本発明のPEU/PAA半IPNのそれ自体に対する摩擦係数μは、ビルトインのトルクセルを使用して摩耗試験の間にリアルタイムで測定され、0.06乃至0.015の間の範囲で見出され、図42中に示されるように軟骨・オン・軟骨のμ値に類似する。そのより低い(軟骨と比較して)透過性のために、本発明のPEU/PAA半IPNは、より長く、より高い接触圧力でより低い摩擦係数を持ち続けることができる。図42は、2.4MPaの連続的な(静的)接触圧力下で、関節界面材料(グラフ中で「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と標識された)の摩耗試験の間に効果的な摩擦係数を示す。天然の軟骨値に関する文献報告およびUHMWPE・オン・CoCrに関する実験データー/文献報告もプロット中で示される(Mow, 2005; Wright 1982)。予想されるように、摩擦係数は荷重を1Hzのサイクルで適用された時間経過にわたって変わらないことが見出され、類似した結果が軟骨について報告される。材料中の低い摩擦係数は、(a)ハイドロプレーニング作用、(b)材料の固相と液相との間の荷重の共有、(c)水としての薄いフィルムの潤滑性が材料の表面上に持続することで説明することができる。圧力下の材料の軽微な部分的な脱水は、静止荷重下のμの軽微な増加について説明することができる。それに比べて、天然の軟骨は、静止荷重下で大部分のその水を失い、したがってその摩擦係数は迅速により高いレベルまで増加する。荷重の除去および続いて行われる再水和により、天然の軟骨の最初の摩擦係数は回復される。
【0154】
実施例37
摩擦係数は、物体の横移動に耐える力を示す数である。それは垂直力に対する摩擦力の単位のない比として表現される。ポリエーテルウレタン/ポリアクリル酸(PEU/PAA)半IPNについての動摩擦係数を金属上で試験し、動摩擦係数を時間の関数として示す。簡潔には、1片のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、硬化して本発明の水の膨潤可能な半IPNを形成した。直径8.8mmおよび厚み1mmのプラグを切断し、PBS中で膨潤し、次いでPBS中に沈めながら2.0MPaの接触応力で3/16インチステンレス鋼ディスクに対して1Hzの頻度で回転させた。力荷重セルおよびトルク荷重セルの両方を装備したASTM F732スタンダードに従って作製されたカスタムメイドの摩耗試験装置を使用して、動摩擦係数を摩耗試験実験の間にリアルタイムで測定した。材料の動摩擦係数は36時間の期間にわたり0.005乃至0.015の間で変動した。
【0155】
実施例38
本発明のPEU/PAA半IPNの摩耗実験は、ピン・オン・ディスク立体配置を使用して、ASTM F732に従って行われた。結果は図44、45および45中に示される。関節界面材料から形成されたディスクおよびピンを2,500,000のサイクルまで試験した。業界基準材料への比較のための根拠として、CoCrピン・オン・UHMWPE(超高分子量ポリエチレン上のコバルト・クロム)ディスク立体配置も、1,000,000のサイクルで試験した。
【0156】
本発明のPEU/PAA半IPNの試験において、ピンは直径8.8mm厚み2.5mmであった。ディスクは直径88mmおよび厚み2.5mmであった。ピンは、空気圧によって適用される繰返し荷重下で、半径24mmおよび1.33Hzの速度でディスクに対して回転させた。圧力調節器は、所望される力が適用されるように大気圧力を調整するために使用された。荷重は、ディスクの下に荷重セル(センソテック・ハネウェル(Sensotec Honeywell)社、カリフォルニア)を使用して直接測定した。データー収集カード(ナショナル・インスツルメンツ(National Instruments)社、テキサス)を装備したコンピューターに接続されたトルクセル(トランスデューサー・テクニクス(Transducer Techniques)社、カリフォルニア)によって、ディスクとピンとの間で生成された摩擦によって引き起こされたトルクを測定できるように、ディスクおよびピンは機械的に隔離された。ピンおよびディスクはPBSにより充填されたチャンバー中に含有されていた。温度は、熱電対−抵抗器−ファンシステムを使用して制御され37℃で一定に保たれた。等式μ=T/r*F(式中、Tは測定されたトルク、rは回転半径(=24mm)、Fはピン上に適用された全ての力)を使用して、摩擦係数を持続的にモニタリングした。摩擦係数は0.016であり、接触圧力(試験された範囲0.1〜3.5MPa)に依存せず、大きな静的接触荷重下で0.021にわずかに増加したが、液体の回復後にもとの値に戻ることが見出された。100万サイクルごとに重量方法を使用して摩耗を測定した。ディスクおよびピンを3日間の真空乾燥後に別々に秤量した。摩耗試験溶液(PBS)を収集し、視覚的に検討したところ、目視可能な摩耗粒子の徴候は試験のすべての工程で指摘されなかった。摩耗試験のPBS溶液を、任意の摩耗粒子を捕捉するために2.5μmポアフィルターを使用して真空濾過し、残存するPBSの塩を除去するために脱イオン水によりフラッシングし、次いで真空および乾燥剤下で一晩乾燥した。対照として、類似した試験を、UHMWPE(オルトプラスティックス(Orthoplastics)社、英国)上のCoCrピン(フォートウェイン・メタルズ(Fort Wayne Metals)社、インディアナ)を使用して行った。OD=7mmの3個の磨いた(Ra<1.6μm)CoCrの水平なピンを、2.5mmの厚みおよびOD=88mm(回転半径=24mm)の磨いたUHMWPEディスクに対して、同じ器具において3.4MPaの静的接触荷重下で、7℃の隔離された環境で1.2Hzで回転させて試験した。
【0157】
試験後の本発明のPEU/PAA半IPNから形成されたディスクの観察(図44A)から、ピン・オン・ディスク関節連結表面に沿って肉眼で知覚可能な摩耗トラックは示されなかった(図44Bは摩耗トラックの所在の近接概観図である。破線は経路を示すために追加され、放射状の矢印はディスクの中心から始まる)。比較では、図44C中で示されるように、CoCrピンに対する2.0Mサイクルの摩耗後のUHMWPEディスクは、目視可能な126μmの深さのトラックを有する。
【0158】
0.01mgの分解能を有する秤(メトラー・トレド(Mettler Toledo)社、オハイオ)を使用する摩耗試験溶液濾過液の秤量は、PEU/PAA半IPNの体積測定摩耗率が約0.6mg/106サイクルまたは0.63mm3/106サイクルまたは0.63 mm3/150×103mであることを示した。しかしながらこの値は方法の分解能に近い。PEU/PAA半IPNからなる発明の関節界面材料の摩耗試験からの摩耗試験溶液の概略図を図45A中で示し、PBS溶液中で粒子が存在しないことを実証する。図45Bおよび45C中で示されるUHMWPEディスクの摩耗試験溶液の概略図(CoCr・オン・UHMWPE摩耗試験の間に生成された実質的な摩耗残屑粒子を示す)に対して図45Aを比較せよ。
【0159】
結果の正確性を増すために、ほこり、水分および静電気などの外部要因を除去することに関心が払われたが、摩耗値は、利用可能な方法の統計的限界および実用的検出限界に非常に近い。これらの結果は、本発明に従うPEU/PAA半IPN(天然の軟骨のように)が、ほとんど水からなり、表面が水のフィルムにより持続的に潤滑にされるので、固体マトリクスの間で接触が(たとえあるにしても)ほとんどないという仮説と一致している。
【0160】
摩耗粒子測定はCoCr・オン・UHMWPE実験についても行われ、UHMWPEディスク上に目視可能な摩耗トラック(図44B)だけでなく、実質的な肉眼的摩耗残屑(図45BおよびC)を生じた。UHMWPEディスクは秤量され、重量の差から64mg/106のサイクルまたは69mm3/150×103mの平均摩耗率が与えられた(図46)。この研究は、本発明の関節界面材料(「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と標識された)は、関節全置換術において広く使用されるCoCr−UHMWPEの従来の組み合わせよりも摩耗に対して少なくとも100倍以上耐性のあることを指摘する。
【0161】
実施例39
図47は、様々な水性溶媒および有機溶媒中のPEU/PAAおよびPEUの膨潤挙動を示す。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を有するアクリル酸中で浸漬し、半IPNを形成するために硬化させた。IPNまたはエラスタン(商標)55Dの小片を得て秤量した。サンプルを図中で示された溶媒を含有する溶液中で20時間浸漬した(サンプルは膨潤されたが溶解しなかった)。サンプルを溶媒から取り出し、短時間軽く叩いて乾燥し、次いで再び秤量した。膨潤に起因する重量の変化は%差として表現する。エラスタン(商標)55Dは単独で水を取り込まないが、本発明のIPNは容易に水により膨張して潤滑で水和したIPNを形成する。さらに、他の溶媒は出発ポリマーを膨潤するために使用して、本発明のIPNを生成することができる。ポリウレタンの事例において、様々な溶媒が材料を膨潤する能力は、溶媒中のポリマー成分(例えばハードセグメントおよびソフトセグメント)の相対的可溶性に加えて、溶媒(その極性、酸度および分子量など)の特性にも依存する。
【0162】
実施例40
水および酢酸中のアクリル酸によるポリエーテルウレタンの膨潤を検査した。膨潤溶液は、脱イオン水(図48A)および酢酸(図48B)中に10、30、50および70%のアクリル酸モノマーを含有して調製された。エラスタン(商標)(登録商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得て測定した。エラスタン(商標)のサンプルを各々の溶液中に置いた。サンプルは溶媒から取り出し、表面を短時間軽く叩いて乾燥し、次いで再び測定した。膨潤に起因する変化は、もとの長さ(Lo)引く1で割った平衡膨潤後の試料の最終的な長さ(Lf)として表現し、このような方法で、初期状態(y=0)に対する長さの部分的増加を、時間に対してプロットする。エラスタン(商標)55Dの膨潤を溶媒として水または酢酸のいずれかを使用して観察した。より多量のアクリル酸を膨潤溶液中で使用したときにより多くの膨潤が観察された。水または酢酸が溶媒として使用されたかどうかに依存して、エラスタン(商標)サンプルの膨潤に対するアクリル酸の濃度依存性が異なることが、注目される。
【0163】
実施例41
図49は、硬化させた後のPEU/PAA半IPN中に存在するポリ(アクリル酸)の量が、異なる膨潤溶液中のアクリル酸モノマーの出発濃度の関数として、プロットされることを示す。
【0164】
膨潤溶液は、脱イオン水および酢酸中に10、30、50および70%のアクリル酸モノマーを含有して調製された。エラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得て秤量した。サンプルを、架橋剤および開始剤と共に各々の水/アクリル酸または酢酸/アクリル酸溶液の中に置いた。サンプルを硬化させ、水または酢酸のいずれか中のアクリル酸中で膨潤し、溶液から取り出し、乾燥し、次いで再び秤量した。半IPNを形成するエラスタン(商標)55Dの中へのアクリル酸の取り込みは溶媒として水または酢酸のいずれかを使用して観察された。アクリル酸のより高い濃度が膨潤溶液中に存在するときに、より多くのアクリル酸の取り込みが観察された。
【0165】
実施例42
半IPNは本質的には図49中に記載されるように調製し、IPNのポリアクリル酸含有量を決定した。乾燥した材料を秤量し、平衡が達成されるまで塩類溶液中で膨潤し、再び秤量した。半IPNの重量の変化は、ポリアクリル酸の各々の濃度について、膨潤された材料の重量/乾燥材料の重量の比(Ws/Wd)として表現される。ポリマー中のポリアクリル酸の量の増加は、水膨潤可能な半IPNの中への塩類溶液の取り込みの増加と相関する。これらの実験において半IPNがpH7.4に中和され、一価カチオン(主に23g/molの分子量を有するナトリウム)は材料中でカルボキシレート基に対するカウンターイオンであるので、これらの実験において半IPNの乾燥重量は塩類膨潤溶液中に存在する塩を含んでいた。
【0166】
実施例43
図51〜54は、クリープおよび応力弛緩/圧縮の試験の結果を示す。試験は、開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬および硬化させた、エラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)から形成されたPEU/PAA半IPN上で行った。
【0167】
図51は、繰返し圧縮試験の結果を示す。PEU/PAA半IPNの挙動は、永久クリープおよびクリープ回復を決定するために動的圧縮条件下で検査された。永久クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。クリープ回復は、荷重が除去された後の適用された変形の減少率を測定したものである。圧縮試験の実験装置はASTMの標準D695(Standard Test Method for Compressive Properties of Rigid Plastics)に従い、歩行周期において見られる生理的で周期的圧縮荷重を模倣するようにデザインされた正弦波荷重スキームを行うサンプルを用いた。
【0168】
PEU/PAA半IPNのサンプルを取り出して厚み方向で測定し、60,000以上のサイクルについて1Hzの頻度で0〜3MPaの圧縮応力のサイクルを行い、厚み方向で再び測定し、クリープから回復させPBS中で再平衡化(弛緩)させ、厚み方向で再び測定した。図51Aは、1つの図中で重ねた、長さ1秒のサイクルの試験(1番目、1000番目、10,000番目、20,000番目、40,000番目、および60,000番目のサイクルで)を行った代表的なサンプルでの厚み測定の結果を示す。図51Bは、材料の厚みがどのように試験のすべてサイクルにわたって変化するのかを示す。材料の厚み(サイクルの間に荷重を除去した後に測定される)は、1番目のサイクルで2.160mmの初期値から、60,000番目のサイクルまでに約2.000mmに低下した。しかしながら、PBS中の再平衡(弛緩)および最後のサイクルでのクリープ回復後に、材料は2.135mmの厚みに戻り、永久クリープに起因する全厚み減少は1.1%のみであった。
【0169】
図52は、多工程の応力緩和試験を介して決定されるPEU/PAA半IPNの平衡圧縮挙動を示し、その試験では既定の変位を適用し、次いで材料を弛緩(平衡化)させる。特に、これらの試験条件下で、図52中の最後のデーターポイントによって示されるように、荷重の除去後に材料はその平衡値に完全に回復し、完全なクリープ回復を示す。2.20MPaの応力(4番目のデーターポイント)は、有限要素モデルによって予測される股関節装置における最大の機能的応力(股関節を介した体重の3倍の荷重)よりも15%高い。
【0170】
静的クリープ試験も行った(データー不掲載)。クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。静的圧縮下で試験されたPEU/PAA半IPNの挙動は、ASTM D2290−01「Standard Test Methods for Tensile, Compressive, and Flexural Creep and Creep-Rupture of Plastics」に従って試験された。9.525mmの初期直径および1.115mmの厚みを持つPEU/PAA半IPNのプラグを、液体PBSの槽中に初期応力4MPa下で置いた。約20,000秒間応力を適用した後(14.29%の全歪みまで)、荷重を解除し、PBS中で材料を弛緩(再平衡化)させた。プラグの最終的な厚みは1.109mmであった。40,000サイクル以上の後に最終的に回復しないクリープは2.7%であった。
【0171】
図53は、ASTM D395に従う圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。この試験において、9.525mmの初期直径および2.13mmの厚みを持つPEU/PAAのプラグに、PBSを満たした液体槽中で室温で23時間15%の一定の圧縮歪みをかけた。材料をPBS中で弛緩および再平衡化させた後に、プラグの最終的な厚みは2.08mmであった。これは9.5%の圧縮永久ひずみ値を与える。比較の根拠として、PEU単独(エラスタン(商標)55D)は、同じ条件(22時間、室温)下で約45%の圧縮永久ひずみ値を示す。したがって、PEU/PAA半IPN中の多価電解質が存在することにより、負に荷電した多価電解質の親水性および高膨潤能に起因する水によるマトリックスの再水和を介して、永久クリープがPEU材料で起こらないようにする手段が提供される。
【0172】
実施例44
図54は、本発明に従って作製したいくつかの材料のリストを示す。第1のカラムは使用した疎水性ポリマーを示す。修飾が第2のカラムにおいて示されるように疎水性ポリマーに対して行われるならば、修飾のための材料は材料と共にキャストされるか、または、修飾が架橋官能基ならば、修飾を追加し、材料を調製および架橋し、反応させた架橋と共にその後使用した。モノマー、コモノマー(もしあれば)、架橋剤および開始剤は、調製した疎水性ポリマーを膨潤するために、示された溶媒中に図中に示されるように追加された。各々の疎水性ポリマーサンプルは最大2日間膨潤させ、溶液から取り出し、標準的な手順に従う示された方法を使用して硬化させた。材料をPBS中で洗浄および膨潤した。使用される略称は以下のとおりである。MBAA=メチレンビスアクリルアミド、HMPP=2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、TEGDMA=メチレングリコールジメタクリレート、およびH2O=水。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年7月7日に出願された米国特許出願第61/078,741号;2008年7月8日に出願された米国特許出願第61/079,060号;2008年9月8日に出願された米国特許出願第61/095,273号;および2009年4月2日に出願された米国特許出願第61/166,194号の利益を主張し;これらの先行出願の各々の開示は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
[参照としての組み込み]
本明細書において言及されるすべての出版物および特許出願は、各々の個別の出版物または特許出願が参照として組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同じ程度に、参照として本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワーク、半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワークを製作する方法、かかる半相互貫入ポリマーネットワークおよび完全相互貫入ポリマーネットワークから作られた製品、ならびにかかる製品を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
完全相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)および半相互貫入ポリマーネットワーク(「半IPN」)は、様々な出発材料から生成され、様々な適用に使用されている。IPNおよび半IPNは、それらが作製されるポリマーの有利な特性を組み合わせることができ、それらの成分ポリマーの所望されない特性のいくつかを回避することができる。
【0005】
従来のIPNおよび半IPNは、インプラントのためにコーティングまたは人工軟骨などの生物医学的適用における使用のために提案されている。例えば、米国特許第2005/0147685号;米国特許第2009/0035344号;および米国特許第2009/008846号を参照。しかしながら、提案された適用に対する従来のIPNおよび半IPNの有用性は、それらの組成物の特性によって限定される。さらに、出発材料およびかかる従来の組成物を作製するプロセスは、IPNまたは半IPNのもたらされた特性だけでなく、製造プロセスおよびかかるプロセスで作製された製品の商業的実用化も限定する。さらに、従来のIPNおよび半IPNの機械的特性は使用される成分ポリマーの機械的特性によってしばしば限定され、大部分の実質的に親水性で水膨潤可能なポリマーの事例において、機械的特性は通常かなり低い。例えば、先行技術は、ポリウレタンまたはABSなどの商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なIPNまたは半IPNを作製する実行可能なプロセスを記載していない。
【0006】
最終的に、従来のIPNおよび半IPN組成物の有用性、およびかかる組成物から形成された製品の価値は、強度、潤滑性および摩耗抵抗性などの所望の特徴を持つIPNおよび半IPNを生成できないことによって限定されている。
【発明の概要】
【0007】
特定の医学的適用のために所望される機械的特性は、多くの親水性出発材料の可能な範囲をしばしば越えている。従って、本発明の1つの態様は、他の望ましい特性に加えて高機械強度の目標を達成する有用な手段として、疎水性出発材料の高機械強度を利用し、特定のイオン性ポリマーとそれらの材料を組み合わせる。したがって、先行技術は水膨潤可能なポリマーを採用しそれらをより強くしようとしたが、本発明の1つの態様は強い材料を採用しそれらをより水膨潤可能にする。
【0008】
本出願の目的のために、「相互貫入ポリマーネットワーク」または「DPN」は、分子スケールで少なくとも部分的に織り交ぜられる2つまたはそれ以上のポリマーネットワークを含む材料であるが、互いに共有結合されておらず、化学結合が破断されない限り分離することができない。「半相互貫入ポリマーネットワーク」または「半IPN」は、少なくともいくつかの線状マクロ分子または分岐マクロ分子による少なくとも1つのネットワークの分子スケールでの貫入によって特徴づけられる、1つまたは複数のポリマーネットワークおよび1つまたは複数の線状ポリマーまたは分岐ポリマーを含む材料である。IPNから区別されるように、半IPNは、成分ポリマーネットワークの少なくとも1つが共有結合によって化学的に架橋されないポリマーブレンドである。
【0009】
「ポリマー」は、ホモポリマー(1種類のモノマーに由来するポリマー)、およびコポリマー(1つよりも多い種類のモノマーに由来するポリマー)を含むマクロ分子を含む物質である。「疎水性ポリマー」は、以下の2つの特性の少なくとも1つを有する予備形成されたポリマーネットワークである。(1)少なくとも45°の表面水接触角および(2)ASTM試験基準D570に従って室温で24時間後に2.5%以下の吸水を示す。「親水性ポリマー」は、45°未満の表面水接触角を有するポリマーネットワークであり、ASTM試験基準D570に従って室温で24時間後に2.5%を超える吸水を示す。「イオン性ポリマー」は、イオン性モノマーまたはイオン化性モノマー(または両方)を、それらの性質および位置に関係なく、重量で少なくとも2%含有するマクロ分子からなるポリマーとして定義される。「イオン化性モノマー」は、ポリマーを形成するために他のモノマーに化学的に結合することができ、カルボン酸および/またはスルホン酸などの酸性官能基の存在のために負に荷電する能力も有する低分子である。「熱硬化性ポリマー」は熱可塑性ポリマーとは異なり、加熱された場合融解しないものである。熱硬化性ポリマーは、最初に作製されたときに所定形状へと「硬化」し、その後流動または融解しないが、加熱に際してむしろ分解し、しばしば高度に架橋および/または共有結合により架橋される。「熱可塑性ポリマー」は、熱硬化性ポリマーとは異なり、加熱されたときに融解または流動するものである。熱可塑性ポリマーは通常共有結合により架橋されない。「相分離」は、単相系の多相系への変換、特に、2つのブロックコポリマーの非混和性ブロックの二相への分離(少ない程度の混合が起こる小さな中間相の可能性を持つ)として定義される。本発明は、強度、潤滑性、電気伝導性および摩耗抵抗性などの新しい特性を提供するために、ポリウレタンまたはABSなどの一般的な商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを修飾するプロセスを含む。他の可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは以下に記載される。本発明はIPN組成物および半IPN組成物に加えて、かかる組成物から作製された製品およびかかる製品を使用する方法も含む。本発明のIPN組成物および半IPN組成物は1つまたは複数の以下の特徴を達成することができる。高引張強度および高圧縮強度;低摩擦係数;高含水率および高膨潤能;高透過性;生体適合性;および生体安定性。
【0010】
本発明の適用は、2つのベアリング面の間の静摩擦係数および動摩擦係数を減少させ、船舶、潜水服もしくは水着、他の水上バイクもしくは水上の物体、またはパイプ中の抗力および/またはバイオフィルム形成および/またはフジツボ形成を減少させる、親水性で潤滑な外装または被覆の生成である。さらに、本発明は、電流の伝導、またはプロトン交換膜、燃料電池、ろ過装置およびイオン交換膜などのイオンの透過性を必要とする電気化学的適用における可能性を有する。さらに、本発明は、エンジン、ピストンまたは他の機械もしくは機械部品などの適用のためのベアリングおよび可動部品を作製する方法として使用することができる。本発明は、軟骨代替物、整形外科領域の関節置換物および表面再建装置またはそのコンポーネント、椎間円板、ステント、血管カテーテルまたは尿道カテーテル、コンドーム、心臓弁、血管移植片、ならびに身体の他の領域(皮膚、脳、脊柱、胃腸系、喉頭および軟組織一般など)における短期および長期両方のインプラントを含む多数の生物医学的適用にも使用することができる。さらに、それは、様々な手術道具および手術器具のコンポーネントとして使用することができる。これらの適用のすべてにおいて、薬物は、局所的な薬物送達のために材料の中に取り込むことができる。これらの相互貫入ポリマーネットワークは治療剤がポリマーマトリックスから放出される特異的薬物送達ベヒクルを製作するためにも使用することができる。本発明の1つの態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーの水膨潤可能なIPNまたは半IPNの組成物を提供する。いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも低い摩擦係数を示す。いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりもより水膨潤可能であり、より高いクリープ抵抗を示し、ならびに/またはより高い伝導性および透過性を示す。組成物のいくつかの実施形態は抗酸化剤も含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、IPNまたは半IPNは、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー前駆体溶液を拡散させイオン性ポリマーを形成するためにモノマーを重合することによって形成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、組成物は水も含み、それは組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成することができる。電解質は水中に溶解することができる。IPNまたは半IPNは負に荷電することもできる。様々な実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、イオン性ポリマーと物理的に絡み合うか、または化学的に架橋されうる。
【0013】
いくつかの実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは規則性ドメインおよび非規則性ドメインを有し、イオン性ポリマーは非規則性ドメイン中に配置することができる。
【0014】
様々な実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサンおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択することができる。イオン性ポリマーは、例えばポリ(アクリル酸)またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)、その組み合わせまたは誘導体でありえる。イオン性ポリマーはカルボキシレート基および/またはスルホン酸基(sulfonate group)を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、イオン性ポリマーは、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への濃度勾配を形成する。濃度勾配は、例えば、組成物内に剛性勾配および/または水和勾配を提供することができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーとは別の層中に配置することができるか、または第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの全体にわたって拡散させることができる、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含む。
【0017】
本発明の別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なBPNまたは半IPNを産生するためのプロセスであって、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程と;熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの内部でイオン性ポリマーを形成するためにイオン化性モノマーを重合し、それによってIPNまたは半IPNを形成する工程とを含むプロセスを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態は、抗酸化剤を加える工程を含む。いくつかの実施形態は、例えば、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成するために水によりIPNまたは半IPNを膨潤する工程を含む。方法は、電解質溶液によりIPNまたは半IPNを膨潤する工程も含むことができる。様々な実施形態は、イオン性ポリマーと疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを化学的に架橋するか、または物理的に絡み合わせる工程を含む。
【0019】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが規則性ドメインおよび非規則性ドメインを有する実施形態において、方法は、重合工程の前にイオン化性モノマー溶液により非規則性ドメインを膨潤する工程を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、アクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される。イオン化性モノマー溶液はアクリル酸溶液でありえ、カルボキシレート基および/またはスルホン酸基を持つモノマーを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、組成物内で剛性勾配および/または水和勾配を提供するために、疎水性の熱可塑性ポリマーの熱硬化物の中のイオン化性モノマー溶液の位置選択的な拡散を介して、IPNまたは半IPNの内のイオン性ポリマーの濃度勾配を形成する工程を含む。
【0022】
方法のいくつかの実施形態は、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程とを重合工程の前に含むことができる。かかる実施形態において、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに隣接する別の層中にありうるか、または第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー内に拡散されうる。
【0023】
いくつかの実施形態は、IPNまたは半IPNの加熱などによって、第1の形状から第2の形状へIPNまたは半IPNを変化させる工程を含む。
【0024】
さらに本発明の別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含み、骨表面に一致する骨接触面を形作る医療用インプラントを提供する。いくつかの実施形態は、インプラントの内部の領域中に配置された液体カプセルも含む。いくつかの実施形態は、骨の中への挿入に適合した挿入部分、ならびに関節腔内の配置に適合し、IPNまたは半IPNを骨および/または骨接触面から延長するステムに付着する骨の係合に適合し、骨の中への挿入に適合した関節界面部分(IPNまたは半IPNと係合された骨ネジ、縫合糸またはステープルなど)を有する。医療用インプラントは、金属ベースの人工器官のような別の装置のベアリングコンポーネントとしても取り込むことができる。
【0025】
医療用インプラントは、医療用インプラントの骨への付着(骨接触面で形成される骨内方成長表面など)に適合した接着剤も含むことができる。いくつかの実施形態において、イオン性ポリマーは、インプラントの第1の部分からインプラントの第2の部分へ濃度勾配を形成する。いくつかの実施形態は、第1の疎水性の熱硬化性樹脂または熱可塑性ポリマーに隣接する第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを有し、イオン性ポリマーは少なくとも第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに相互貫入する。
【0026】
いくつかの実施形態において、水膨潤可能なIPNまたは半IPNは、天然の軟骨の剛性および潤滑性の特性を模倣する特性を有し、関節中の軟骨の置換に適合し構成される。IPNまたは半IPNは、キャップ、カップ、プラグ、マッシュルームならびにステムおよびパッチからなる群から形状を選択することができ、関節丘、脛骨プラトー、半月板、関節唇または関節窩の嵌合に適合させることができる。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、天然の軟骨を、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを有する水膨潤可能なIPNまたは半IPNで置換する工程、および関節を画成する骨表面とIPNまたは半IPNを係合する工程を含む、整形外科領域の関節を修復する方法を提供する。方法は、骨表面にIPNまたは半IPNを接着、縫合、ステープル留め、および/またはネジ留めする工程も含むことができる。方法は金属ベースの人工器官のような別の装置のベアリングコンポーネントとして材料を取り込むことも含むことができる。方法は、骨表面の中へのステム部分を挿入する工程も含むことができる。整形外科領域の関節は、肩関節、手指関節、手関節、足首関節、足関節、足指関節、膝内側関節、膝蓋大腿関節、全膝関節、膝半月板、大腿関節、寛骨臼関節、関節唇関節、肘、椎間ファセット、脊椎関節からなる群から選択することができる。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含み、海洋性船体への付着に適合した船体接触面を有する、海洋性船体被覆を提供する。被覆は紫外線防護剤および/または抗酸化剤も含むことができる。
【0029】
本発明の新規の特色は、以下の請求項で特に説明される。本発明の特色および利点の良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1B】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1C】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図1D】本発明の1つの態様に記載のIPNまたは半IPNを形成する方法を示した図である。
【図2】厚み方向に沿って製品中に形成された組成勾配を説明した図である。
【図3】放射方向に沿って製品中に形成された組成勾配を説明した図である。
【図4A】本発明に従う熱可塑性勾配IPNを製作する方法を示した図である。
【図4B】本発明に従うIPN内部の勾配特性の変化を示した図である。
【図4C】勾配IPNにわたるイオン性ポリマーの変化を示す。
【図5】ラミネート構造またはIPNもしくは半IPNを示した図である。
【図6A】勾配IPN製品の造形を示した図である。
【図6B】勾配IPN製品の造形を示した図である。
【図7A】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7B】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7C】IPNの形状加熱を示した図である。
【図7D】IPNの形状加熱を示した図である。
【図8A】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8B】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8C】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図8D】表面に対する勾配IPN製品の接着を示した図である。
【図9A】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9B】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9C】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図9D】関節内の軟骨を置換または増大するために本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントをどのように使用することができるか示した図である。
【図10A】靭帯を提供する開口を有する骨軟骨移植片を示した図である。
【図10B】靭帯を提供する開口を有する骨軟骨移植片を示した図である。
【図11A】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11B】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11C】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11D】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図11E】膝関節内の軟骨の置換または増大に必要とされる単独または任意の組み合わせで使用することができる、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示した図である。
【図12A】本発明のIPNまたは半IPNのIPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片を示した図である。
【図12B】本発明のIPNまたは半IPNのIPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片を示した図である。
【図13A】肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官を示した図である。
【図13B】肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官を示した図である。
【図14】図14は、滑液包骨軟骨移植片、関節唇骨軟骨移植片、関節窩骨軟骨移植片および上腕頭骨軟骨移植片としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示した図である。
【図15】椎間ファセットの表面再建のための人工器官としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示した図である。
【図16A】本発明の勾配IPN組成物から形成された人工器官軟骨プラグを示した図である。
【図16B】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。
【図16C】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。
【図16D】多孔性表面が軟骨プラグ上に形成される実施形態を示した図である。図16Cの実施形態の底部正面図である。
【図17】骨へのプラグの固定のためのネジを形成する螺旋状のネジ山を持つステムが提供される人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図18A】固定のための骨中の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステムを有する人工器官軟骨プラグの実施形態の側面図である。
【図18B】固定のための骨中の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステムを有する人工器官軟骨プラグの実施形態の底部正面図である。
【図19】露出した頭部がステムと実質的に同じ直径である人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図20】露出した頭部がステムよりも狭く、ステムが土台に向かって広くなる人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図21】固定を支援するためにステムが円周状のネジ山を有する人工器官軟骨プラグの実施形態を示した図である。
【図22】ステムへ粗い多孔性表面を加えた図19のものに類似する実施形態を示した図である。
【図23】ネジまたはステムなどの追加の固定なしに骨を物理的に把持するように形成された骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図24】ネジ固定のためのネジ穴を有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図25】ネジ固定のためのネジ穴およびネジ頭くぼみを有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図26】骨中の穴の中への挿入のためのステムを有する骨軟骨移植片の実施形態を示した図である。
【図27A】両面が潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示した図である。
【図27B】両面が潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示した図である。
【図28】関節中などの、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面へ付着されている整形外科領域のインプラントを示した図である。
【図29】関節中などの、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面へ付着されている整形外科領域のインプラントを示した図である。
【図30A】骨軟骨移植片および本発明の他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示した図である。
【図30B】骨軟骨移植片および本発明の他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示した図である。
【図31A】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図31B】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図31C】本発明に従う軟骨の関節表面を修復するために骨軟骨インプラントの可能な配置を示した図である。
【図32】船舶の船体を表面再建する本発明の潤滑なIPNまたは半IPNの組成物の使用を示した図である。
【図33】互いに対して移動する機械部品の境界表面を修飾する潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPNの使用を示した図である。
【図34】パイプの内部表面上の液体抗力を減少させる潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPNの使用を示す。
【図35】鉗子によって保持される水和したPEU/PAA半IPN勾配材料の写真である。
【図36】実施例32と関連した接触角解析を示した図である。
【図37A】実施例33と関連した透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図37B】実施例33と関連した透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図38】実施例34と関連した概略図と共に透過電子顕微鏡解析によるPEU/PAA半IPN材料を示した図である。
【図39】実施例35と関連したPEU/PAA半IPN材料の引張応力−歪み挙動を示した図である。
【図40】実施例36と関連したDSCによって分析されたPEU/PAA半IPN材料のサーマグラム(thermagram)を示した図である。
【図41】実施例36と関連したDSCによって分析されたPEU/PAA半IPN材料の熱解析の結果を示した図である。
【図42】実施例37と関連した静止荷重下のPEU/PAA上のPEU/PAA半IPN材料の摩擦係数を示した図である。
【図43】実施例38と関連した静止荷重下の金属上のPEU/PAA半IPN材料の摩擦係数を示した図である。
【図44A】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図44B】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図44C】金属・オン・UHMWPEからのUHMWPEサンプル摩耗試験と比較した、実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示した図である。
【図45A】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図45B】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図45C】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果を示Aした図である。
【図46】実施例39と関連したPEU/PAA半IPN材料の摩耗試験の結果の定量化を示した図である。
【図47】実施例40と関連した様々な水性溶媒および有機溶媒中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤挙動を示した図である。
【図48A】実施例41と関連した、水中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤の結果を示した図である。
【図48B】実施例41と関連した、酢酸中のポリエーテルウレタンおよびPEU/PAA半IPNの膨潤の結果を示した図である。
【図49】実施例42と関連した、膨潤溶液中のアクリル酸の量の関数としてのPEU/PAA半IPN中ポリアクリル酸含有量を示した図である。
【図50】実施例43と関連した、半IPN中のポリアクリル酸の量の関数としてのPEU/PAA半IPNの膨潤を示した図である。
【図51A】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料の動的圧縮試験の結果を示した図である。
【図51B】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料の動的圧縮試験の結果を示した図である。
【図52】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料への多段階の応力弛緩圧縮応力試験の適用とその後の弛緩の結果を示した図である。
【図53】実施例44と関連した、PEU/PAA半IPN材料への圧縮応力の適用の結果を示した図である。
【図54−1】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−2】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−3】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【図54−4】本発明に従って作製した材料の部分的リストを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、一般的な商業的に入手可能な疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに潤滑性、透過性、伝導性および摩耗抵抗性などの特質を付与する修飾のためのプロセスを含む。かかる疎水性ポリマーは通常水を吸い上げず、一般的には機械強度、不透過性および絶縁能力について有用である。本発明のプロセスによって修飾可能な疎水性ポリマーの例示的なリストは、以下を含む。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、セルロイド、酢酸セルロース、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、カイデックス(Kydex)(商標登録アクリル/PVCアロイ)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POMまたはアセタール)、ポリアクリレート(アクリル)、ポリアクリロニトリル(PANまたはアクリロニトリル)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEKまたはケトン)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)(ポリスルホンを参照)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、スペクトラロン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびポリウレタン(PU)。様々なポリウレタンは、本明細書に記載されるように、様々なハードセグメント、ソフトセグメントおよび鎖延長剤組成物と共に使用することができる。
【0032】
本発明の1つの態様は、いくつかの修飾可能な熱硬化性疎水性ポリマーまたは熱可塑性疎水性ポリマーの特徴を利用する。ポリマー内の規則性ドメインおよび非規則性(非晶性)ドメインの存在。例えば、ポリウレタンなどのいくつかの疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーは相分離し、ハードセグメントの第1のドメインおよびソフトセグメントの第2のドメインを含有し、2つのドメインはモノマーの相互貫入に関して異なる溶解特性を示す。ポリウレタンにおいて、ハードセグメントは主として規則性ドメイン内に配置され、ソフトセグメントは主として非規則性(非晶性)ドメイン内に配置される(開始ポリマーは当然本発明の範囲から逸脱せずに2つ以上のドメインを含有することができる)。本発明のプロセスは、相分離ポリマーの2つのドメインの間の特性のこの差によって、材料のバルクにわたってまたは材料の一部のみにわたって(例えば、特定の領域中に、または勾配で)拡張することができる新しい特性をポリマーへ与えることができる。例えば、非潤滑なポリマーは潤滑にすることができ、そのままでは非伝導性のポリマーは伝導性にすることができ、そのままでは非透過性のポリマーは透過性にすることができる。さらに、プロセスは開始ポリマーへ1つ以上の新しい特性を導入するために反復して行うことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリマー中の相分離は、例えば溶媒および/またはモノマーによるポリマー内の1つまたは複数の分離相の差異的な膨潤を可能にし、次いでそれを使用して新しい特性が与えられる。本発明に従って、例えば、イオン性モノマーを加えることおよび重合することによって、そのままでは非潤滑な材料へ潤滑さを導入することができる。1つの実施形態において、高機械強度および潤滑表面を持つポリマー材料を、イオン化性ビニルモノマーに由来するそのままでは非潤滑な疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーから作製することができる。本発明は、そのままでは疎水性の材料を固体および液体(水)の両方の相を持つ二相性材料に変換することによって、医学的適用、商業的適用および工業的適用で使用される潤滑で高強度の材料に対する当技術分野における必要性に対処する。
【0034】
図1A〜Dは、ハードセグメント10(白い長方形として示される)およびソフトセグメント12(線として示される)のネットワークを含有する熱可塑性ポリウレタンベースのポリマーに関するプロセスを示す。図1Bにおいて、ソフトセグメント12は、開始剤および架橋剤(図示せず)と共にビニルベースのモノマー14(円として示される)および随意の溶媒により膨潤され、一方ハードセグメント材料はほとんど影響されない。この膨潤プロセスはポリマーの溶解ではなく、ソフトセグメントはモノマーおよび随意の溶媒を吸収するので、ハードセグメントは材料を保持する物理的な架橋として作用する。モノマーの重合および架橋の後に、第2のネットワーク16(図1Cおよび1D中で太線として示される)が第1のネットワークの存在下において形成され、第1のポリマーの柔軟な非晶性ドメイン内に第2のポリマー(すなわち重合されたモノマー)が主として隔離されたIPNが生成される。ある程度の分子再構成およびさらなる相分離があるにもかかわらず、ハードセグメントの大部分は規則性および結晶性のままであり、材料へ構造および強度を提供する。
【0035】
このIPNによって提供される新しい特性は、導入された重合モノマーの特性および任意の随意の重合後処理に依存する。かかる新しい特性の実施例は、潤滑さ、伝導性、硬さ、吸収性、透過性、光反応性および熱反応性を含む。例えば、図1D中で示されるように、緩衝水性溶液中での随意の膨潤後に、図1CのIPNの第2のネットワークは、イオン化されるようになり18、IPNは水膨潤され潤滑である。したがって、親水性(すなわち吸水性)を、そのままでは疎水性の材料へと導入することができる。ポリウレタンまたはABSなどの疎水性ポリマー材料が水を吸収するように、ポリアクリル酸および/またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)などの様々なイオン性ポリマーを浸透させることができる。
【0036】
吸収性に加えて、様々なレベルの透過性(水、イオン、および/または溶質の輸送)を、そのままでは非透過性材料へと導入することができる。例えば、上記されるように、ポリウレタンまたはABSなどの疎水性ポリマー材料が水を吸収するように、ポリアクリル酸および/またはポリ(スルホプロピルメタクリレート)などのイオン性ポリマーを浸透させることができる。材料のバルクのこの水和は、溶質およびイオンの輸送を可能にする。溶質およびイオンの輸送および水に対する透過性は、IPNの水和相の相連続性によって可能になる。これは、薬物送達、分離プロセス、プロトン交換膜および触媒プロセスを含む様々な適用における有用である。液体が材料にわたりまたは材料を介して流動するので、溶質を捕捉、濾過、またはキレート化するために透過性を利用することができる。さらに、この透過性があるので、本発明の材料は、長期荷重または反復荷重後に液体を再吸収する能力に起因して、それらのコンポーネントの疎水性ポリマーと比較して、クリープ抵抗性および疲労抵抗性を増加させることができる。
【0037】
そのままでは非伝導性の材料へと伝導性を導入することができる。例えば、ハイブリッド材料の少なくとも一部が電流に対して伝導性であるように、ポリウレタンなどの絶縁ポリマー材料は伝導性ポリマー(多価電解質)を浸透させることができる。
【0038】
本発明は、第2のポリマーの化学基の改変、および別のポリマー、分子または生体分子のための第2のポリマー中の連結点の使用も含む。さらに、任意のドメインは、抗酸化剤、イオン、アイオノマー、造影剤、粒子、金属、色素、着色剤、生体分子、ポリマー、タンパク質および/または治療剤などの任意の数の材料でドープされうる。
【0039】
例えば、アクリロキシ官能基、メタクリロキシ官能基、アクリルアミド官能基、アリルエーテル官能基、またはビニル官能基が、ポリウレタンプレポリマーの1つの末端または両方の末端へと取り込まれるならば、第1のポリマーは第2のポリマーをさらに架橋または共重合することができ、次いで開始剤の存在下においてUVまたは温度によって硬化させることができる。例えば、ポリウレタンジメタクリレートまたはポリウレタンビスアクリルアミドは、溶媒(ジメチルアセトアミドなどの)の存在下における硬化および次いで溶媒の蒸発によって、第1のネットワーク中で使用することができる。IPNへ化学的架橋(単なる物理的架橋ではなく)の追加は、連続的な動荷重によって引き起こされるクリープまたは疲労に対する機械的安定性のレベルを増加させる。
【0040】
さらに、マルチアーム(多官能性)ポリオールまたはイソシアネートはポリウレタン中で架橋を生成するために使用することができる。この事例において、完全相互貫入ポリマーネットワークが生成される(半相互貫入ポリマーネットワークではなく)。結果は、ポリウレタンの高強度および高靭性、ならびにポリ(アクリル酸)の潤滑表面および二相性バルク挙動を持つコンポジット材料である。あるいは、他の架橋方法は、ガンマ線または電子線の照射を含むが、これらに限定されないものを使用することができる。これらの特色は、人工関節表面などのベアリング適用のために、または血管系または皮膚などの身体の他の領域におけるより生体適合性で血栓抵抗性の長期インプラントとして特に重要である。水による膨潤は、身体の標的領域への局所送達のための治療剤または薬物などの溶質による吸収も可能にする。
【0041】
別の実施形態において、本発明の、第1のポリマーは第2のポリマーに結びつけることができる。例えば、ポリウレタンはビニル末端基を介して結びつけることができる。末端基と重合されているモノマーの間の反応比に依存して、異なる鎖立体配置をもたらすことができる。例えば、モノマーとそれ自体の反応性がモノマーと末端基よりもはるかに高ければ、第1のポリマーが鎖へ追加される前に、第2のポリマーがほとんど完全に形成されるだろう。一方、モノマーおよび末端基の反応性が類似していれば、ランダムなグラフトタイプ共重合が起こるだろう。モノマーおよび末端基は、例えばThe Polymer Handbook中で公表された相対的反応性比の表の使用によって、それらの反応性比に基づいて選択することができる。これらの結果はハイブリッドコポリマー/相互貫入ポリマーネットワークであるだろう。
【0042】
任意の数または組み合わせのエチレン性不飽和モノマーまたはマクロモノマー(すなわち反応性二重結合/ビニル基を持つ)は、単独でまたは様々な溶媒と組み合わせて使用することができ、かかるモノマーの少なくとも2%がイオン化性である限り、すなわちカルボン酸官能基および/またはスルホン酸官能基を含有する限り、ポリマーの1つまたは複数の相へと選択的に導入することができる。他のモノマーは、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、NIPAAm、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリレート、およびスルホン酸基を含有する任意のビニルベースのモノマー(例えばアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート(または3−スルホプロピルメタクリレート)、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム塩98%)、またはスルホン酸がコンジュゲートされる任意のモノマー(アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基またはアクリルアミド)を含むが、これらに限定されない。モノマーは、アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基またはアクリルアミドへコンジュゲートされるカルボン酸基を含有する任意のモノマーも含むことができる。さらに、カルボキシレート/スルホネートコポリマーを生成するために、カルボキシル酸含有モノマーおよびスルホン酸含有モノマーの両方などの組み合わせでモノマーを使用することができる。これらのモノマーおよびモノマーの組み合わせからもたらされるポリマー上のペンダント官能基は、最終的なポリマーへ他の官能基を与える後続の化学反応を行うことができる。
【0043】
1つの実施形態において、前形成熱可塑性ポリマーは、モノマーに対して約0.1%v/vの架橋剤(例えばトリエチレングリコールジメタクリレートまたはN,Nメチレンビスアクリルアミド)、およびモノマーに対して約0.1%v/vの光開始剤(例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)と共に、アクリル酸中で(またはアクリル酸(1%〜100%)の溶液または他のビニルモノマー溶液中で)浸漬することができる。アクリル酸溶液は、水、塩緩衝液または有機溶媒(ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフランなど)をベースとすることができる。ポリマー中のソフトセグメントの溶媒和のために、ポリマーをモノマーによって膨潤することができる。膨潤されたポリマー中のモノマー含有量は、最小で約1%から最大で約90%にわたることができる。
【0044】
次いでモノマーで膨潤したポリマーを取り出し、ガラス、石英または透明なポリマーから作製された型中に置き、次いで重合を開始するために紫外線(または高温)に曝露し、モノマーを架橋することができる。あるいは、型を使用する代わりに、大気または不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)に完全にまたは部分的に曝露しながら、またはあるいは油(例えばパラフィンまたはミネラルまたはシリコーンオイル)などの別の液体の存在下において、モノマーで膨潤したポリマーは重合することができる。医学的適用のために、型なしにインビボで重合工程を行うことができる可能性がある。
【0045】
使用される開始剤に依存して、紫外線、赤外線もしくは可視光線、化学物質、電荷、または高温への曝露は、疎水性ポリマー内のイオン化性モノマーの重合および架橋をもたらす。一例として、酸性モノマー(例えばアクリル酸)を重合して予備形成された熱可塑性で疎水性のマトリックス内でイオン性ポリマーを形成し、相互貫入ポリマーネットワーク(「IPN」)を形成する。溶媒は、熱および対流によって、または溶媒抽出によって抽出することができる。溶媒抽出はポリマーからの溶媒の抽出に異なる溶媒(水などの)の使用を伴うが、熱または対流は溶媒の蒸発に依存する。イオン性ポリマーのpKa(例えばPAA=4.7のpKa)に依存して、酸性pHはイオン性ポリマーをよりプロトン化するが、より塩基性のpHはよりイオン化する。
【0046】
中性pHのリン酸緩衝食塩水(または他の緩衝塩溶液)などの水性溶液中でのIPNの膨潤は、ポリ(アクリル酸)のイオン化ならびに水および塩によるさらなる膨潤をもたらすだろう。生じた膨潤されたIPNは、親水性で荷電したポリ(アクリル酸)によって付与された潤滑表面、ならびに熱可塑性物質によって付与された高靭性および高機械強度を有するだろう。ポリウレタンベースのIPNの事例において、IPNは、ポリウレタン中の結晶性ハードセグメントが第1のネットワーク中の物理的架橋として作用する構造を有するが、化学的架橋が第2のネットワーク中に存在するだろう。
【0047】
材料はγ線または電子ビーム放射線を使用して合成後に架橋することもできる。1つの実施例において、ポリウレタン/ポリアクリル酸を合成し、次いで例えば、5、10、15、20または25kGyの線量のγ線照射によって、例えば架橋することができる。この事例において、ポリアクリル酸の重合は架橋剤の非存在下において行われ、ポリマーブレンド(物理的IPN)の形成後に、材料はγ線に曝露されるだろう。これは、ポリウレタンの滅菌および架橋の二重目的を有する。γ線照射を使用するポリ(アクリル酸)ヒドロゲルの架橋がポリマーの架橋に対して線量依存性を示すことは当技術分野において公知である。このプロセスは、第1のネットワークポリマーおよび第2のネットワークポリマーの他の組み合わせ(例えばポリウレタンおよびポリメチルメタクリレート、ABSおよびポリアクリル酸など)にも適用することができる。
【0048】
上で同定された開始の熱硬化性疎水性ポリマーおよび熱可塑性疎水性ポリマーに加えて、かかるポリマーに対する修飾物およびその誘導体(スルホン化ポリウレタンなど)を使用することができる。ポリウレタンの事例において、ポリウレタンポリマーは、商業的に入手可能な材料、商業的に入手可能な材料の修飾物、または新素材でありえる。任意の数の化学的性質および化学量論をポリウレタンポリマーを生成するために使用することができる。ハードセグメントについては、使用されるイソシアネートは、1,5ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソフォロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6トリレンジイソシアネートもしくは2,4トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート、またはメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)である。ソフトセグメントについては、使用される化学物質は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンアジパート、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンアジパート、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ポリヘキサメチレンカルボネートグリコール、ポリ(1,6ヘキシル1,2−エチルカルボネート)、および水素添加ポリブタジエンを含む。イソシアネートを持つ反応性末端基が使用されるならば、任意の数のテレケリックポリマーをソフトセグメントおいて使用することができる。例えば、ヒドロキシルアミン末端ポリ(ビニルピロリドン)もしくはアミン末端ポリ(ビニルピロリドン)、ジメチルアクリルアミド、カルボキシレートポリマーもしくはスルホン化ポリマー、テレケリック炭化水素鎖(ヒドロキシル末端基および/またはアミン末端基を持つ)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、または互いと組み合わせたこれらのもの、もしくは上で言及された他のソフトセグメント(例えばPDMS)と組み合わせたこれらのものを使用することができる。ジヒドロキシエチルプロピオン酸(DMPA)(またはその誘導体)などのイオン性ソフトセグメント(または鎖延長剤)は、イオン性鎖延長剤が材料の2%以上含まれない限り、水分散性ポリウレタンを作製するために使用することができる。
【0049】
鎖延長剤は、例えば、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4’メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコールおよびヘキサンジオールを含む。他の適合性のある鎖延長剤は、単独でまたは組み合わせで使用することができる。イソシアネート反応性末端基(例えばヒドロキシルまたはアミン)およびビニルベースの官能基(例えばビニル、メタクリレート、アクリレート、アリルエーテルまたはアクリルアミド)を含有する使用できる架橋鎖延長剤は、いくつかまたはすべての鎖延長剤の代わりに使用することができる。実施例は1,4ジヒドロキシブテンおよびグリセロールメタクリレートを含む。あるいは、架橋は、イソシアネートとの反応のための2つ以上のヒドロキシル基を含有するグリセロールなどのポリオールの使用を介して達成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、第2のネットワーク中の親水性モノマーの少なくとも2%はイオン化性および陰イオン性(負に荷電可能)である。1つのかかる実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルは、アクリル酸モノマーの水性溶液から形成されて、第2のポリマーネットワークとして使用される。他のイオン化性モノマーは、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート(またはスルホプロピルアクリレート)、ビニルスルホン酸などの負に荷電したカルボン酸基またはスルホン酸基を含有するもの、またはヒアルロン酸、ヘパリン硫酸およびコンドロイチン硫酸のビニルコンジュゲートバージョンに加えて、その誘導体または組み合わせを含む。第2のネットワークモノマーは正に荷電しているかまたは陽イオン性でもありえる。これらの他のモノマーは、さらに水または有機溶媒のいずれか中で1%〜99%の範囲であるか、または純粋(100%)でありえる。第2のネットワークを形成するために使用されるモノマーの1つの実施形態は以下の特徴によって記載することができる。(1)ポリウレタンを膨潤することができる、(2)重合することができる、および(3)イオン化性である。
【0051】
他の実施形態は、イオン性ポリマーに加えて、非イオン性でありえるコモノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはその誘導体など)を使用する。これらは、メチルメタクリレートなどのより親水性でない種またはより疎水性のモノマーもしくはマクロモノマーと共重合することができる。これらは、単独で重合できるか、または前記の親水性モノマーおよび/またはイオン化性モノマーと共重合することもできる。
【0052】
これらのモノマーに基づく架橋した線状ポリマー鎖(すなわちマクロ分子)に加えて、タンパク質およびポリペプチド(例えばコラーゲン、ヒアルロン酸またはキトサン)などの生体マクロ分子(線状または架橋された)も、第2のネットワークにおいて使用することができる。第2の材料の選択は標的適用に依存し、例えば整形外科領域の適用において、ヒアルロン酸は関節軟骨の主なコンポーネントであるので有用であろう。さらに、生物学的分子は、それらを材料コンポーネントとして有用にする、固有の生体適合性または治療上の(例えば創傷治癒および/または抗菌)特性などの特定の利益を保有することができる。
【0053】
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート(またはジエチレングリコールジアクリレート)、メチレングリコールジメタクリレート(またはメチレングリコールジアクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(またはテトラエチレングリコールジアクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレートもしくはポリエチレングリコールジアクリラート、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、その誘導体または組み合わせなどの、任意のタイプの適合性のある架橋剤は、任意の前記の第1のネットワークの存在下において、第2のネットワークを架橋するために使用することができる。任意の数の光開始剤も、前駆体溶液/材料との可溶性に依存して使用することができる。これらは、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンを含むが、これらに限定されない。さらに、過酸化ベンゾイル、2−オキソグルタール酸、アゾビスイソブチロニトリルまたは過硫酸カリウム(または過硫酸ナトリウム)などの他の開始剤を使用することができる。例えば、過酸化ベンゾイルは温度開始重合に有用であるが、アゾビスイソブチロニトリルおよび過硫酸ナトリウムはラジカル開始剤として有用である。
【0054】
別の実施形態において、溶媒はモノマーを送達する「トロイの木馬」として使用することができ、モノマーはそのままではポリマーの1つまたは複数の相に対してポリマーを混合しない(または可溶化しない)。溶媒は、ポリマーおよびモノマーの特異的な特質および相に基づいて慎重に選択されなくてはならない。例えば、酢酸は多くのポリウレタンを膨潤することができるが、溶解しない。したがって、酢酸はポリウレタンのバルクの中へアクリルアミド溶液(そのままではポリウレタンに入り込まない)などの他のモノマーを運ぶために使用することができる。これは、アクリルアミドがポリウレタンの1つの相の内部に選択的に重合されることを可能にする。次いで、酢酸は、1つまたは複数の新しい特性を持つポリウレタンを残して洗浄することができる。使用することができる他の溶媒は、ジクロロメタン、メタノール、プロパノール、ブタノール、(または任意のアルキルアルコール)、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ポリマーの相中での可溶性を考慮して、1つの様々な膨潤度を持つ溶媒を選択することができる。膨潤される材料の溶媒およびコンポーネントの可溶性は、The Polymer Handbookなどのポリマー教科書から得ることができるか、または実験的に測定することができる。
【0055】
本発明は、ポリマー材料上にバルク相互貫入された被覆を形成するために使用することができる。この被覆は、下層にあるポリマーマトリックスとほどけずに絡み合い、材料が表面にグラフトされるかまたは連結される従来の表面被覆とは対照的である。バルク相互貫入された被覆の1つの実施例において、熱可塑性ポリマーは1つまたは複数の側面上に被覆されるか、または光開始剤および架橋剤の存在下においてアクリル酸などのイオン化性モノマー中で浸漬される。次いで熱可塑性物質を型中に置き、次いで所定の時間で開始剤(例えば紫外線または熱)に曝露する。型は、モノマーの局部的に特異的な硬化を促進するために完全にまたは部分的に透明におよび/またはマスクすることができる。次いで修飾される材料を緩衝生理食塩溶液中に浸漬して、イオン性ポリマーを中和し表面を潤滑で親水性にする。次いで修飾されるプラスチックは、熱、溶媒、および/または圧力の適用によってさらに再成型することができ、次いで所望される寸法に形作ることができる。次いで修飾されるプラスチックを、未修飾のプラスチック表面に熱または溶媒(アセトンなど)を適用すること、および表面を対象となる表面と接触させることによって、金属、ガラス、プラスチックまたは他の材料などの様々な表面に接着させることができる。
【0056】
本発明の適用の中には、船舶、潜水服もしくは水着、他の水上バイクもしくは水上の物体、パイプ中の抗力および/またはバイオフィルム形成および/またはフジツボ形成を減少させる、親水性で潤滑な外装または被覆の生成がある。さらに、本発明は、エンジン、ピストンまたは他の機械もしくは機械部品などの適用のためのベアリングおよび可動部品を製作する方法として使用することができる。本発明は、人工関節系または身体の他の領域における長期インプラント(血管系もしくは尿路系のためのステントおよびカテーテルまたは皮膚のためのインプラント、パッチもしくは包帯など)においても使用することができる。
【0057】
図2および3は、開始ホモポリマー内で組成勾配を生成するためにどのように本発明を使用することができるかを示す。図2において、IPNは1つの側面22上で形成され、別の側面24に向かって濃度が減少(例えば実質的にホモポリマーのみ)して広がり、厚み方向に沿って材料20中で勾配が形成される。図3において、IPNは外側表面32で最高濃度であり、IPNは中心またはコア34で最低濃度を有しており、IPN濃度勾配は材料30内で放射状となる。円筒または球体の事例において、IPNを形状のコアに配置し疎水性ポリマーを形状の外面に配置して逆の勾配も作製することができる。これは、勾配組成物を介する絶縁疎水性材料内でカプセル化された伝導性半IPNワイヤーを生成するのに有用である。
【0058】
図4Aは、本発明に従う熱可塑性物質勾配IPNを製作する方法を示す。熱可塑性物質材料40の1つの側面は、光開始剤(図示せず)および架橋剤(図示せず)に加えてモノマー溶液42を吸収し、次いでモノマーは熱可塑性物質内で重合および架橋されて(例えば紫外線44により)、勾配IPN46を形成する。中性にpHを増加させること47および周囲の液体の中へ塩を導入すること48は、第2のポリマーネットワークのイオン化をもたらす。あるいは、非イオン性モノマーを(コポリマーを形成するために)部分的に基礎として使用することができる。非イオン性ポリマーは緩衝液溶液によってイオン化されないが、それでもなお親水性表面を生成する。いずれのタイプのモノマー系も水または有機溶媒のいずれかと併用して使用することができる。
【0059】
1つの実施形態において、ポリウレタン(「PU」)が1つの側面上のみのAA中で膨潤されるならば、または膨潤時間がTPのバルクを介するモノマーの拡散が完了しないように限定されるならば、TP/PAA IPNは勾配を生成することができる。これは、整形外科領域の関節置換材料のための骨軟骨移植片の生成で特に有用である。例えば軟骨置換材料の事例において、材料の1つの側面は潤滑で水膨潤になるが、他の側面が固体(純粋な熱可塑性物質)のままである。その間はTP/PAAのIPNとTPとの間の移行であり、PAA含有量は1つの表面から他の表面へと減少する。あるいは、TPの中へのAAの拡散がバルクの中へのモノマーの浸透のタイミングによって正確に制御されるならば、TP/PAAのIPN外面およびPUのみの「コア」を持つバルク材を作製することができる。この立体配置から生じる差異的な膨潤は、材料の機械的挙動および疲労挙動の促進を支援することができる残留応力(膨潤側面で圧縮、非膨潤側面で引張)をもたらすことができる。厚み勾配を持つ材料の事例において、熱可塑性物質のみの材料の土台は、解剖学的な領域または対象に対して装置を錨着、固着、または縫合するために使用することができる。この土台は少ない領域に制限されるか、または大きくなりえ(例えばスカート)、単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネント(例えばストラップ)として外側へ延長することができる。処理の間にまたは膨潤後に熱可塑性物質内で構築された内部応力は、温度誘発性アニーリングによって減少させることができる。例えば、60〜120℃の温度をポリマーをアニールする様々な時間(30分乃至数時間)に対し使用することができ、熱はオーブン中で、熱面によって、放射によって、またはヒートガンによって適用することができる。熱可塑性物質は、例えば、ガンマ線または電子線の放射を使用して後に架橋することができる。
【0060】
図4Bは、所望される組成物を産生するために勾配IPNの特性がどのように変化することができるかを示す。図4Cは、勾配IPNの厚み(2つの表面の間の)にわたって疎水性ポリマーおよびイオン性ポリマーの濃度勾配がどのように変化することができるかを示す。組成勾配は、IPNが1つの側面上で水和されておりより軟質であり、他の側面上であまり水和されておらず(またはまったく水和されていない)剛性である特性勾配を産出する。
【0061】
図5で示されるように、本発明のIPNおよび半IPNから作製された製品はラミネート構造中でも形成することができる。1つの実施例において、IPN構造50は、ポリエーテルウレタンなどの第1の熱可塑性物質(TP1)に相互貫入しているポリ(アクリル酸)などの親水性ポリマー(P)からなり、ポリカーボネートウレタンなどの第2の熱可塑性物質(TP2)の上に形成される。TP1およびTP2の両方は、それら自身で様々な硬さおよび特性の多層からなることができる。さらに、2つ以上の多数の熱可塑性物質層を使用することができ、1つまたは複数の熱可塑性物質を架橋することができる。最終的に、非熱可塑性要素をこの構築物の中へ取り込むことができる。
【0062】
本発明の勾配または均質のIPNおよび半IPNから形成された製品は所望されるように形作ることができる。図6は勾配IPN製品の造形を示す。このプロセスは均質のIPNまたは半IPNを形作るためにも使用することができる。
【0063】
図6中で示されるように、勾配IPNの熱可塑性物質側面50におけるポリマー中の物理的架橋(例えばポリウレタン中のハードセグメント)を再アニールするために熱61を使用することができ、曲げ(例えば型または鋳型の上の)および冷却の後に異なる所望の湾曲をもたらす。図6は、勾配IPNの熱可塑性物質側面上の凸面62および凹面64の両方の湾曲を示す。当然他の形状は所望されるように形成することができる。熱可塑性物質の使用は、例えば、射出成形、反応性射出成形、圧縮成形あるいは代わりに浸漬キャストによって、所望される形状への装置の成形を促進する。次いで成形された装置は、新しいIPN材料を産出するために、続いてネットワーク浸透および重合工程を行うことができる。
【0064】
本発明に従うIPNおよび半IPN製品の造形は人体内でなどのインシトゥーで形成することができる。例えば、図7A〜Bは、熱可塑性物質勾配IPN70が大腿骨骨頭の湾曲72のまわりを包むことが可能になるように加熱すること71を示す。図7C〜Dは、熱可塑性物質勾配IPN73が股関節ソケット75の湾曲に順応することを可能になるように熱74を適用することを図示する。
【0065】
本発明に従って作製された、形作られたか、または形作られていないIPNおよび半IPN製品は、他の表面へ付着させることができる。図8A〜Dは、熱可塑性物質勾配IPN製品80を接着界面83で表面82へ付着するために、溶媒、セメントまたはグルーなどの接着剤81をどのように使用することができるかを示す。溶媒の追加は、例えば、材料を局所的に溶解し、熱可塑性物質は表面との接触および溶媒の乾燥の後に表面に固着する。この方法は、船舶船体表面を含むが、これらに限定されない様々な物体の本発明の「パネル」を生成するために使用することができる。「被覆」は、容器の外形または容器の一部にわたる材料の真空成形によって適用することができる。類似したアプローチは関節中の骨表面へ勾配IPNを付着させるために使用することができる。
【0066】
例えば、本発明の方法によって形成された本発明の組成物は、様々な設定において使用することができる。1つの特定の使用法は骨軟骨移植片中の人工軟骨としてである。本発明は、天然の軟骨の分子構造、および同様に、弾性係数、破砕強度ならびに潤滑表面を模倣する相互貫入ポリマーネットワークに基づいた骨温存関節形成装置を提供する。少なくとも天然の軟骨のこれらの構造面および機能面のいくつかをまねて、本発明の半IPNおよびIPNは、新規の骨温存の「生体模倣性表面再建」関節形成手順の基礎を形成する。軟骨のみを置換するようにデザインされたかかる装置は、潤滑な関節面および骨統合可能な骨界面を特色とする、1セットの可撓性でインプラント可能な装置として製作される。
【0067】
原理上は、装置は身体中のいかなる関節面に対して作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆う装置は類似した骨調製およびポリマーサイジングプロセスを必要とする。股関節中の大腿骨骨頭を覆う装置については、キャップ形状装置が大腿骨骨頭の外形にわたり緊密に嵌合する。寛骨臼を被覆する装置については、半球カップ形状の装置は関節唇を覆って伸びて、合わせ面に大腿骨骨頭を提供するようにソケット中の所定の位置に嵌め込むことができる。このような方法で、患者の股関節の両側は修復することができ、キャップ・オン・キャップ関節連結が生成される。しかしながら、表面の1つのみが破損されるならば、1つの側面のみをキャップすることができ、キャップ・オン・軟骨関節連結が生成される。さらに、本発明の材料は、別の関節置換物の関節連結表面または代替のベアリング面として働く表面再建装置(典型的には金属からなる)のキャッピングまたはライニングに使用することができる。
【0068】
本発明を肩関節(ボール・アンド・ソケット関節も)に対して使用してキャップ形状装置を生成するために、股関節のプロセスに類似するプロセスが使用される。例えば、浅いカップは関節窩の内側をライニングするために生成することができる。さらに、手、手指、肘、足首、足および椎間ファセット中の他の関節のための装置もこの「キャッピング」概念を使用して生成することができる。遠位大腿骨の1つの実施形態において、遠位大腿骨装置体積は骨の外形に従うが、前十字靭帯および後十字靭帯を温存している。
【0069】
本発明に従って形成された人工器官軟骨の1つ実施形態において、75Dのショア硬さで予備形成されたポリエーテルウレタン装置が射出成形される。この装置は、次いで55Dの乾燥ショア硬さに配合されたポリエーテルウレタンを含有するビタミンE含有溶液中で溶液キャストする(例えば、ジメチルアセトアミド中の25%エラスタン(Elasthane)(商標)55D)。次いでキャスト層は溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥することができる。次いで装置をアクリル酸、光開始剤および架橋剤の溶液中で24時間浸漬し、次いでガラス鋳型の上に置き、紫外線に曝露することができる。次いで生じた装置をリン酸緩衝食塩水中で浸漬および洗浄することができる。このプロセスは関節形成適用のための凸面装置または凹面装置のいずれかを生成するために使用される。射出成形された予備形成物は、その側面の1つの上に複数の空間(孔またはフィーチャー)を有し、従来の整形外科の骨セメントにより骨へ錨着することができるようにする。
【0070】
装置の別の実施形態において、1つの側面上で表面フィーチャーを持つ予備形成されたポリカーボネートウレタンを製作し、続いてポリエーテルウレタンの溶液中で側面の1つの浸漬キャストを行い、次いで上述のものに類似するプロセスを行った。なお別の実施形態において、ショア硬さ55D(例えばエラスタン(商標)55D)のポリエーテルウレタン予備形成物を射出成形し、続いて上述のようにモノマー溶液中で浸漬を行う。第2のポリマーネットワークの硬化後に、装置はショア硬さ75Dのポリカーボネートウレタンを持つ1つの側面上で浸漬キャストされる。これらの実施形態のいずれかにおいて、追加の表面フィーチャーは、機械加工(旋盤およびエンドミル)、溶液キャスト、溶剤溶着、超音波溶着または熱溶着を含むが、これらに限定されない多数の手段を介して装置の骨界面側に加えることができる。
【0071】
多孔性ポリカーボネートウレタンIPNおよび半IPN構造は本発明に従って作製することができる。バイオネート(Bionate)(登録商標)55D、バイオネート(登録商標)65Dおよびバイオネート(登録商標)75Dを含むが、これらに限定されないポリカーボネートウレタンの粒子(サイズ範囲:250〜1500μm)は、熱(220〜250℃)、圧力(0.001〜100MPa、および/または10〜30分間の溶媒を使用して、型中で焼結することができる。構造は、50〜2000μmの最終的な孔サイズ、15〜70%の多孔率、および10MPaを越える圧縮強度を有するだろう。最終的な構造は、医学的適用および獣医学的適用のための組織内方成長/統合化を促進する多孔率を有する。この構築物は単独で、または本発明中に記載される任意の潤滑なポリマーから作製された重層ベアリング面と共に使用することができる。軟骨が破損された場合、以下に記載されるように、身体の関節中の軟骨置換プラグとしてこの材料を使用することができる。
【0072】
例えば本発明の方法に従って作製された本発明の組成物は、完全にまたは部分的に合成した骨軟骨移植片として使用することができる。骨軟骨移植片は、多孔性骨または合成多孔性骨様の構造に錨着することができる潤滑な軟骨様の合成ベアリング層からなる。ベアリング層は、潤滑な表面層および剛性の骨固着層の2つの領域を有する。1つの実施形態において、上部のベアリング層の潤滑な領域は、2つのポリマーからなる相互貫入ポリマーネットワークからなる。第1のポリマーは、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを含むが、これらに限定されない高機械強度を持つ疎水性熱可塑性物質、または取り込まれた尿素結合を持つこれらの材料、または取り込まれた尿素結合を持つこれらの材料(例えばポリウレタンウレア)でありえる。第2のポリマーは、アクリル酸および/またはスルホプロピルメタクリレートを含むが、これらに限定されないイオン化性ビニルモノマーに由来する親水性ポリマーでありえる。ベアリング層の下部領域(骨錨着層)は、超音波溶着振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギーおよび電気エネルギーにより流動が引き起こすことができる、剛性の再吸収不可能な熱可塑性物質でありえる。骨錨着層は、骨または骨様の多孔質構造へベアリング層を錨着するために使用される。多孔性骨が使用されるならば、それはヒトまたは動物からの海綿質骨でありえる。合成骨様の材料が使用されるならば、それは多孔性リン酸カルシウム(および/または多孔性炭酸アパタイト、βリン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトを含むが、これらに限定されない他の材料)、またはポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、PLA、PLLA、PLAGA、および/またはPEEKを含むが、これらに限定されない上記されるような多孔性の再吸収可能なまたは再吸収不可能な熱可塑性物質からなることが可能である。ベアリング層は、骨または骨様の構造の孔または空間の中へ骨錨着材料を融解および流動させるために、エネルギーと組み合わせた加圧を介して多孔性骨または骨様の構造に錨着され、その後エネルギー源を除去し、材料は再凝固される)。エネルギー源は、振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギーおよび電気エネルギーを含むことができるが、これらに限定されない。
【0073】
以下の図は、哺乳類(動物またはヒト)の身体中の損傷を受けた関節を部分的にまたは完全に表面再建する装置としての本発明の様々な実施形態を示す。これらの装置は、圧入嵌合、ネジ(金属またはプラスチック、再吸収可能または再吸不収可能のいずれか)、縫合糸(再吸収可能または再吸収不可能)、グルー、粘着剤、光硬化可能粘着剤(例えば、ポリウレタン、または樹脂ベースの)、またはセメント(ポリメチルメタクリレートもしくはリン酸カルシウムまたは歯科用セメントなど)などの任意の数の手段を介して骨へ固定させることができる。
【0074】
図9A〜Dは、本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片インプラントを、股関節または肩関節などの関節内で軟骨を置換または増大するためにどのように使用することができるかを示す。図9A中で示されるように、人工器官軟骨90は、キャップ部分91および随意の環92を有するソックスとして形成される。人工器官90は、図9B中で示されるように裏返しであり、上腕骨または大腿骨の頭部94を覆って滑らせることができる。図10A〜B中で示される代替の実施形態において、人工器官90は、靭帯96または他の解剖学的構造を提供する開口95を含むことができる。
【0075】
インプラントおよび他の製品は本発明に従う様々な複合体形状で作製することができる。図11A〜Eは、膝関節内で軟骨を置換または増大するために必要な、単独でまたは任意の組み合わせで使用できる本発明のIPNまたは半IPNから形成された骨軟骨移植片を示す。図11Aは、複数の大腿顆(あるいは単に1つの顆)に係合するように適合させた骨軟骨移植片110を示す。図11Bは、脛骨プラトー113の1つの側面または両側に係合するように適合させた骨軟骨移植片111および112を示す。図11Cは、膝蓋骨114に係合するように適合させ、膝蓋大腿部溝115に係合するように適合させた骨軟骨移植片119により関節連結した、骨軟骨移植片118を示す。図11Dは、外側半月および内側半月を係合するように適合された骨軟骨移植片116および117を示す。図11Eは、これらの人工器官のいくつかが膝関節内部でどのように適所に組み立てることができるかを示す。
【0076】
骨軟骨移植片は、手指または手または足首または肘または足または脊椎などの他の関節においても使用することができる。例えば、図12A〜Bは、本発明のIPNまたは半IPNから形成され、手指関節における使用ために形作られた骨軟骨移植片121および122を示す。図13A〜Bは、肩関節唇または股関節唇の置換または表面再建で使用される本発明のIPNまたは半IPNから形成された関節唇人工器官131を示す。図14は、滑液包骨軟骨移植片141、関節唇骨軟骨移植片142、関節窩骨軟骨移植片143および上腕頭骨軟骨移植片144としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示す。図15は、椎間ファセットの表面再建のための人工器官151および152としての本発明のIPNまたは半IPNの使用を示す。
【0077】
IPNおよび半IPNの本発明の組成物は関節面の部分的表面再建のための人工器官軟骨プラグとして形成することができる。図16Aは、本発明の勾配IPN組成物から形成された人工器官軟骨プラグ160を示す。プラグ160は製品の熱可塑性側面上にステム部分161を形成し、骨の穴または開口部の中に挿入されるように適合させる。上記されるようにプラグの頭部162は潤滑なIPNまたは半IPNであるように形成される。図16Bは、頭部162の下側163上でおよびステム161の土台164上で多孔性表面が形成される変化を示す。図16C〜Dの実施形態において、多孔性表面は土台164の中心部分165中のみに形成される。すべて実施形態において、ステム161は骨の穴または開口部の中へ圧入嵌合することができ、潤滑なIPN表面が人工器官軟骨として作動するように曝露される。
【0078】
図17は、骨へのプラグの固定のためのネジを形成するために、ステム171が螺旋状のネジ山173を持って提供される人工器官軟骨プラグ170の実施形態を示す。頭部172の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0079】
図18は、固定のための骨の穴の中への圧入嵌合挿入のための3つのステム181を有する人工器官軟骨プラグ180の実施形態を示す。プラグ頭部182の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0080】
図19は、露出した頭部部分192がステム191と実質的に同じ直径である人工器官軟骨プラグ190の実施形態を示す。ステム191は固定のために骨の穴へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部192の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0081】
図20は、露出した頭部部分202がステム201よりも狭く、ステム201が土台203に向かって広くなる、人工器官軟骨プラグ200の実施形態を示す。ステム201は固定のために骨の穴の中へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部202の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0082】
図21は、固定を支援するためにステム211が円周状のネジ山を有する人工器官軟骨プラグ210の実施形態を示す。ステム211は固定のために骨の穴の中へ圧入嵌合することができる。プラグ頭部212の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0083】
図22はステム221へ粗い多孔性表面を加えた図19のものに類似する実施形態を示す。プラグ頭部222の上部表面は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0084】
図23は、ネジまたはステムなどの追加の固定なしに骨を物理的に把持するように形成された骨軟骨移植片230の実施形態を示す。この実施形態において、人工器官の潤滑なIPNまたは半IPN部分は装置の凹面231上にある。装置の反対の凸面232は、人工器官230が付着される骨の形状に一致させるように形作られる。表面232は骨の内方成長を促進するように多孔性である。この事例における多孔性物質は、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、糖およびその誘導体または組み合わせであるポロゲンにより、本発明において記載されようにポロゲン法から製作することができる。あるいは、多孔性は、熱または溶媒を使用して、ポリマービーズ(例えばポリエーテルウレタンまたはポリカーボネートウレタン)をともに焼結させることに由来することができる。
【0085】
骨への固定のために骨軟骨移植片へネジ穴を提供することができる。図24において、人工器官240は、ネジ242のために2つの穴241を持って提供される。人工器官240の骨と接触する凹側244は骨の内方成長を促進するように多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面243は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0086】
図25において、骨軟骨移植片250は、ネジ253の頭部の収容のためのくぼみ252に加えてネジ穴251を持って提供される。人工器官250の骨と接触する凹側254は骨の内方成長を促進するのに多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面255は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0087】
図26は、骨中の穴の中へ挿入のためのステム261を有する骨軟骨移植片260の実施形態を示す。人工器官260の骨と接触する凹側262は骨の内方成長を促進するように多孔性であり(上述のように)、骨の物理的把持に適合した形状を有する。人工器官の外凸面263は上述のように潤滑なIPNまたは半IPNである。
【0088】
図27A〜Bは、両側で潤滑なインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示す。図27Aにおいて、インプラント270は椎間円板を置換するために大きさを合わせて構成される。インプラント270はその上部側面および下部側面上に潤滑なIPN表面または半IPN表面271および272(例えば上記されるように形成された)を有する。図27Bは、V字形の横断面を有する膝スペーサー273を示す。ディスク人工器官270のように、スペーサー273もその上部側面および下部側面上に潤滑なIPN表面または半IPN表面274および275を有する。
【0089】
上記された骨軟骨移植片および他のインプラントの多くは単一の骨表面に張り付けられる。図28および29は、互いに対して移動する2つの骨または他の解剖学的な要素の表面(関節中など)へ付着されている整形外科領域のインプラントを示す。図28中で、インプラント280は、骨の内方成長を促進するために、多孔性であるように形成された上部骨接触領域および下部骨接触領域281および282を有する(上記されるように)。インプラント280の内部は液体で満たされたカプセル283である。内部に面するベアリング面284および285は潤滑なIPN表面または半IPN表面である(上述のように)。インプラント280は、例えば、中間挿入スペーサーならびに関節の滑液嚢および軟骨のための置換物として使用することができる。図29のインプラント290は、図28のインプラントに類似するが、関節を画成する骨の対応する穴における挿入および固定のための上部ステムおよび下部ステム291および292を加える。
【0090】
図30A〜Bは、本発明の骨軟骨移植片および他のインプラントの骨の中への統合化を経時的に示す。図30A中で、上記されるように形成された骨軟骨移植片インプラント300は骨301を覆って置かれる。インプラント300は、潤滑なIPNまたは半IPNの表面302、および熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマー単独から形成された骨界面表面303(上記されるように随意で多孔性である)を有する。表面302と表面303との間が、IPNまたは半IPNと疎水性ポリマーとの間の勾配または移行のゾーン304である。経時的に、図30B中で図示されるように、骨組織は、骨301から骨接触面303の中へおよび骨接触面303を介して増殖する。
【0091】
図31A〜Cは、本発明に従って軟骨の関節表面を修復する骨軟骨インプラントの3つの可能な立体配置を図示する。図31Aにおいて、インプラント310は、上記されるように、熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面312へ移行する潤滑なIPN表面または半IPN表面311を有するキャップとして形成される。インプラントされたときに、インプラント310は骨313の外側表面を覆う。
【0092】
図31Bおよび31Cは、上記されるように、インプラント314が熱硬化性または熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面316へ移行する潤滑なIPN表面または半IPN表面315を有するパッチまたはプラグ(それぞれ)として形成される立体配置を示す。インプラントされたときに、インプラント314は骨313の調製された開口317内で嵌合する。
【0093】
本発明は非医学的適用を有する。例えば、図32は、船舶の船体を表面再建するために本発明の潤滑なIPN組成物または半IPN組成物の使用を示す。熱可塑性物質勾配IPNのパネル320(上記されるように)は、抗力およびバイオフィルム形成を減少させるために船体322の表面へ付着されている。あるいは、IPN材料は、いくつかの実施形態において、液体として船体上に塗布し、硬化または固化させることが可能である。勾配IPNは、その表面上で負に荷電または非荷電でありえ、1つまたは複数のタイプのモノマー種から作製することができる。様々なUV保護剤および酸化防止剤、または他の添加剤も、性能を改善するためにこれらの材料の中へ取り込むことができる。
【0094】
図33は、回転および平行移動する部品330の表面331ならびに静止部品332の表面333などの互いに対して移動する機械部品の境界表面を修飾する潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPN(上記されるように)の使用を示す。図34は、パイプ342の内部表面340上の液体抗力を減少させるための潤滑な熱可塑性または熱硬化性のIPN(上記したされように)の使用を示す。
【0095】
本発明の材料は電気化学的伝導性を必要とする適用において有用性を有する。IPNおよび半IPNの伝導性は材料の水和したマトリックスを介するイオンの流動に基づく。ポリエーテルウレタンの薄いフィルムを、アクリル酸および水の混合物の4つの異なる組成物(水中で15、30、50および70%のアクリル酸)により膨潤した。次いで各々の膨潤したフィルムを紫外線中で硬化させて半IPNを形成した。次いでフィルムをPBS中で中和した。材料の電気抵抗はオーム計を使用して測定した。抵抗を測定するために、IPNフィルムはペーパータオルで軽くなでて過剰のPBSを除去し、オーム計プローブを60〜70mmのフィルム幅にわたってフィルムへ留めた。初期抵抗値および定常状態抵抗値を記録した。さらに、未修飾のポリエーテルウレタンフィルムおよび液体のPBSの抵抗を測定した。PBSの抵抗は、プローブとの間が60mmのおよその距離で、PBS槽の中にオーム計プローブを直接置くことによって測定した。抵抗測定を以下の表中に示す。
【表1】
【0096】
結果は、半IPNの抵抗が純粋なPBSの液体単独未満(しかし同じ桁内)であることを示す。オーム計の限界は40,000オームであった。絶縁体(ポリウレタンを含むについての典型的な値は1014〜1016オームであり、したがってPEU単独の抵抗値は使用されるメーターの範囲外であった。PEU/PAA半IPNの透過性は、Permeability of articular cartilage. Nature, 1968. 219(5160): p.1260-1中でMaroudas et al.によって記載されたものに類似する装置を使用して測定した。透過性はダルシーの法則(Q=KAΔp/L)に従って計算され、式中、Qは流速[mm3/sec]、Aはプラグの横断面積[mm2]、Δpは適用される圧力勾配[MPa](加圧液体)、Lはヒドロゲルの厚みである。70%のアクリル酸から調製されたPEU/PAA半IPNの透過性は、K=1.45×10-17m4/N*秒であることが見出された。天然の軟骨については、文献の値は1.5×10-16乃至2×10-15m4/N*秒にわたる。したがって、PEU/PAAは軟骨よりも10〜100倍透過性が少なく、それは天然の軟骨と比較して延長した圧縮荷重下での脱水の傾向を少なくすることができる。IPNの透過性は膨潤溶液中のAAの濃度の変更によって調整することができ、AA含有量が高いほど、透過性は高い。これとは対照的に、未修飾のPEU材料単独は溶質に対して効果的に非透過性であり、ある程度の水分(〜1%)を保持するが、実際には溶質透水性マトリックスとして働かない。
【0097】
上記の組成物、製品および方法に対する他の変化および修飾物は以下のものを含む。
【0098】
第1のポリマーは、商業的に入手可能またはカスタムメイドであり、多数の手段(例えば、押出、射出成形、圧縮成形、反応射出成形(RIM)または溶液キャスト)によって作製されるものでありえる。第1のポリマーは架橋されないか、または様々な手段によって架橋することができる。どちらのポリマーも、例えばγ線または電子線放射によって架橋することができる。
【0099】
全体でイオン化性化学基を重量で少なくとも2%含有する限り、任意の数または組み合わせのエチレン性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和マクロモノマー(例えば、反応性二重結合を含有する)を、第2のネットワークまたは次のネットワークの基礎として使用することができる。これらは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリルエーテル基またはアクリルアミド基を含有するものを含むが、これらに限定されない。および多数のペンダント官能基は、カルボン酸、スルホン酸、アセテート、アルコール、エーテル、フェノール、芳香族基または炭素鎖を含むが、これらに限定されないエチレン性不飽和基へコンジュゲートすることができる。
【0100】
ポリウレタンベースのポリマーは以下の通りでありえるが、これらに限定されない。ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタンウレア、シリコーンポリエーテルウレタンまたはシリコーンポリカーボネートウレタン。他のハードセグメント、ソフトセグメントおよび鎖延長剤を持つ他のポリウレタンが可能である。
【0101】
他のポリマーは、シリコーン(ポリジメチルシロキサン)またはポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーなどの第1のネットワーク中で使用することができる。
【0102】
ポリウレタンベースのポリマーが第1のポリマーとして使用される場合、ポリウレタンベースのポリマーの物理的架橋および化学的橋架の程度は、広範囲な化学的橋架から物理的架橋のみ(熱可塑性物質)の間で変動させることができる。化学的橋架の事例において、架橋可能ポリウレタンは、単独で、または熱可塑性物質(架橋されない)ポリウレタンとの混合物として使用することができる。
【0103】
重合の条件(すなわち、雰囲気酸素、UV強度、UV波長、露光時間、温度)を変動することができる。
【0104】
組成勾配の配向および峻度は、モノマー中での浸漬の時間および/または方法などの様々な手段、ならびに外部静水陽圧または外部静水陰圧の適用によって変動させることができる。
【0105】
熱可塑性物質は、発泡または塩溶脱などの様々な技術によって多孔性にすることができる。モノマー(AAなど)による多孔質ポリマー(PUなどの)の膨潤の後に、続いて重合またはAAが行われ、多孔性IPNは形成される。
【0106】
熱可塑性物質の追加層を、表面へ新しい熱可塑性物質を硬化させることまたは乾燥させることによって、IPN側面または熱可塑性物質側面のみ上のいずれかで材料に追加することができる。層はすべて同じ材料でありえるか、または異なる材料(例えば、ABS+ポリウレタン、ポリエーテルウレタン+ポリカーボネートウレタンなど)でありえる。
【0107】
ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、水、ジクロロメタン、プロパノール、メタノール、またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない多数の異なる溶媒を、ポリウレタン、第2のネットワーク、または両方の合成の間に使用することができる。
【0108】
光開始剤(例えば、フェノン含有化合物およびイルガキュア(Irgacure)(登録商標)産物)、熱開始剤または化学開始剤などの任意の数の開始剤を使用することができる。熱開始剤の実例は、アゾ化合物、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)、過硫酸塩(例えば過硫酸カリウムまたは加硫酸アンモニウム)、その誘導体または組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0109】
架橋同一性および密度(例えばモノマーに対する架橋剤のモルで0.0001%〜25%)、開始剤濃度(例えばモノマーに対するモルで0.0001%〜10%)、前駆体ポリマーの分子量、ポリマーの相対的重量パーセント、光波長(UVから可視範囲)、光強度(0.01mW/cm2〜1W/cm2)、温度、pHおよび膨潤液体のイオン強度、ならびに水和のレベルの変化。
【0110】
第2のネットワーク材料は、架橋薬剤の非存在下において合成することができる。
【0111】
これらの材料の含水量は2%乃至99%の間にわたりうる。
【0112】
IPNの異なるコンポーネントは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、他のビニル基含有スルホン酸、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメタクリルアミド)、およびその組み合わせまたは誘導体などのイオン化性モノマーと組み合わせて取り込むことができる。例えば、アクリル酸およびビニルスルホン酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーを第2のネットワークのために生成して、ポリウレタンの第1のネットワークおよびポリ(アクリル酸−コ−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホン酸)コポリマーの第2のネットワークを形成することができる。それらがイオン化性モノマーを重量で少なくとも2%含有し、第1のポリマーが入り込む(膨潤する)ことができる限り、任意のモノマーまたはモノマーの組み合わせは適切な溶媒と併用して使用することができる。
【0113】
IPNは、抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンE、イルガノックス(Irganox)(登録商標)、またはサントホワイト粉末)および/または抗微生物剤(例えば抗生物質)などの特定の添加剤を、バルクまたは表面内に、化学的にまたは物理的のいずれかで取り込むことができた。これらは、例えば、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニルまたはアリルエーテルなどの任意のビニル基含有モノマーによる抗酸化剤のエステル化によって、材料に化学的に結びつけることができる。
【0114】
2つ以上のネットワーク(例えば、3つまたはそれ以上)も形成することができ、その各々は架橋されるかまたは架橋されない。
【0115】
ポリウレタンそれ自体は、水素化ナトリウムの存在下における1,3プロパンスルホンの反応によるウレタン基でのスルホン化、または過剰のイソシアネート基との反応によるウレタン基でのアロファネート結合の形成によってなどの多数の手段で修飾することができる。例えば、ジラウリン酸ジブチルすずの存在下においてトルエン中でポリウレタンと過剰のイソシアナトエチルメタクリレートを2.5時間反応させて、メタクリロキシコンジュゲートポリウレタン表面を産出することができる。次いでメタクリロキシ基を続いて使用して、フリーラジカル重合によって他のメタクリロキシ(または他のビニル基)を含有するモノマーまたはマクロモノマーを連結することができる。IPNの第2のネットワークの形成の前にまたはその後に、かかる修飾を実行することができる。
【0116】
他の修飾は当業者に明らかである。
【実施例】
【0117】
実施例1
1つの実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート55D)を、一晩のモノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸中で一晩浸漬した。ポリカーボネートウレタンを溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンに加えて、セグメント化ポリウレタン尿素をアクリル酸溶液中に置き、同じ様式で重合および洗浄して、潤滑なIPNを産出した。
【0118】
実施例2
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)は、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸中で一晩浸漬した。ポリエーテルウレタンを溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた半IPNは取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンに加えて、ポリカーボネートウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素をアクリル酸溶液中に置き、同じ様式で重合および洗浄して、潤滑なIPNを産出した。
【0119】
実施例3
別の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを、モノマーに対して0.1%v/の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートが加えられた100%アクリル酸溶液中に別々に一晩置いた。重合および架橋の後に、半IPNは膨潤し、潤滑になった。ポリウレタン中にシリコーン(ポリジメチルシロキサン)を追加することは、有用な可能性のある界面化学および特性に加えて、特別なレベルの生体安定性を材料へ追加する。
【0120】
実施例4
別の実施例において、メタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンを紫外線に曝露してポリカーボネートウレタンを架橋し、次いでモノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%アクリル酸中で一晩膨潤した。材料を溶液から取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露して、ポリカーボネートウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0121】
実施例5
別の実施例において、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを紫外線に曝露して(0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のメチレングリコールジメタクリレートの存在下において)ポリエーテルウレタンを架橋し、次いで前記の光開始剤および架橋剤を含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0122】
実施例6
別の実施例において、0.1%の前記の光開始剤と共にDMAC中で25%のメタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの溶液を紫外線に曝露して、ポリカーボネートウレタンを架橋した。加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で溶媒を除去した後に、次いでポリカーボネートウレタンの追加層を架橋したポリカーボネートウレタンの1つの側面上でキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリカーボネートウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0123】
実施例7
別の実施例において、0.1%の前記の光開始剤と共にDMAC中で25%のメタクリロキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの溶液を紫外線に曝露してポリエーテルウレタンを架橋した。加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で溶媒を除去した後に、次いで、ポリエーテルウレタンの追加層を架橋したポリカーボネートウレタンの1つの側面上でキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0124】
実施例8
実施例の別のセットにおいて、メタクロキシ(methacroxy)官能基化ポリエーテルウレタンの層を射出成形されたポリエーテルウレタンの層上にキャストし、別々に、もう一つの層を射出成形されたポリカーボネートウレタンの層上にキャストした。各々を紫外線に曝露してラミネート構造を産出した。架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0125】
実施例9
1つの実施例において、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を、モノマーに対して0.1%のv/v 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のv/vトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で100%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、ABSの表面上のモノマー溶液を30分間ドロップキャストすることによって遂行した。次いでABSを2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じたABS/PAA勾配IPNを取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。
【0126】
実施例10
熱可塑性物質勾配IPNを再び形作るために、熱を適用した。ABS/PAA勾配IPNはヒートガンを使用して加熱し、次いで円筒状ポリプロピレンチューブ上に置いた。材料を室温まで冷却した後に、アセトンをABS/PAAとポリプロピレンとの間に射出した。手動で圧力を適用し、サンプルを乾燥させた後に、熱可塑性物質勾配IPNでまわりが包まれ、ポリプロピレンチューブへ接着された。
【0127】
実施例11
別の実施例において、熱可塑性物質勾配ABS/PAAのIPNを、ABSとポリカーボネートウレタンとの間のアセトンの射出および手動の圧力の適用によって、ポリカーボネートウレタンへ付着させて、ポリカルボウレタンへ接着させた熱可塑性物質勾配IPNを産出した。
【0128】
実施例12
別の実施例において、湾曲したポリカーボネートウレタンIPNは、ヒートガンを使用してポリウレタン側面上に熱を適用すること、手動で材料の湾曲を回復させること、および水中でIPNを冷却することによって、再び直線状にした。
【0129】
実施例13
別の実施例において、ポリエーテルウレタン溶液(例えばジメチルアセトアミド(「DMAC」)中で20%)をラミネート構造でポリカーボネートウレタンの上にキャストし、加熱した(60℃)コンベクションオーブン中で乾燥させ、次いでポリエーテルウレタン表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、前記のモノマー溶液中で浸漬された製作物のベッド上にラミネート材ポリエーテルウレタン側面を下して置くことによって遂行した。材料を製作物のマットから取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた勾配半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨張し、数時間以内に潤滑になった。他の実施例において、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素、シリコーンポリエーテルウレタンおよびシリコーンポリカーボネートウレタンを同じ手段で扱って、潤滑な半IPNを産出した。
【0130】
実施例14
別の実施例において、重量で50%塩化ナトリウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)の層を、予備作製されたポリエーテルウレタンポリカーボネートウレタン上で溶液キャストし、対流下の80℃で乾燥した。塩を水中で洗浄してラミネート状のポリウレタン上に多孔性側面を産出した。他の材料は10%乃至80%の間で変動する食塩濃度により作製された。
【0131】
実施例15
別の実施例において、20%のリン酸三カルシウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)の層を、予備作製されたポリエーテルウレタン−ポリカーボネートウレタン上で溶液キャストし、対流下の80℃で乾燥した。リン酸三カルシウムは骨誘導剤としてポリウレタン内に埋め込んだままにした。他の材料は0.001%〜20%で変動するリン酸三カルシウム濃度により作製した。
【0132】
実施例16
別の実施例において、ポリウレタンウレア(例えばジメチルアセトアミド中で20%)をラミネート構造でポリカーボネートウレタンの上にキャストし、次いでポリウレタンウレア表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸に15分間曝露した。表面の曝露は、前記のモノマー溶液中で浸漬された製作物のベッド上にラミネート材ポリウレタンウレア側面を下にして置くことによって遂行した。ポリカーボネートウレタンを製作物のマットから取り出し、2つのスライドグラスの間に置き、次いで紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。生じた勾配半IPNは取り出し、次いでリン酸緩衝食塩水中で洗浄および膨潤した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑になった。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、材料をPBS中で洗浄した。
【0133】
実施例17
別の実施例において、溶液中で熱可塑性ポリエーテルウレタン(ジメチルアセトアミド中で25%)と混合した、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを紫外線に曝露して、ポリカーボネートウレタンを架橋した。次いでポリエーテルウレタンの追加層を架橋したポリエーテルウレタンの1つの側面上にキャストしてラミネート構造を産出し、次いで架橋した側面のみを前記の光開始剤および架橋剤を含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0134】
実施例18
1つの実施例において、平らなシートを(ジメチルアセトアミド(DMAC)中で熱可塑性ポリウレタンの溶液キャストによって生成した。ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標))、ポリカーボネートウレタン(バイオネート)、ポリエーテルウレタン尿素(バイオスパン(Biospan))、シリコーンポリカーボネートウレタン(カルボシル(Carbosil))およびシリコーンポリエーテルウレタン(パーシル(Pursil))のポリウレタン溶液は、製造業者によって約25%の固形分濃度でジメチルアセトアミド(DMAC)中で合成された。
【0135】
実施例19
球の形状は、ポリウレタン溶液(DMAC中で)中でシリコーン球体に加えて、浸漬被覆ガラスによってもキャストされた。ポリカーボネートウレタン(DMAC中で20%)を、球状ガラス型(49.5mmの外径)上に、および別にシリコーン球体上に浸漬被覆した。溶媒はコンベクションオーブン中で80℃で乾燥させることによって除去した。このプロセスは合計で3つの被覆を生成するためにさらに2回反復した。次いで球体をポリエーテルウレタン(DMAC中で20%)中で浸漬被覆し、次いで対流下の80℃で乾燥した。このプロセスもさらに2回反復した。生じたキャップ形状のラミネート状のポリウレタンを型から取り出し、その外側を0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび0.1%のメチレングリコールジメタクリレートを含有する水中で70%のアクリル酸溶液中に1.5時間浸漬した。キャップを裏返し、球状ガラス型を覆って戻し、紫外線(2mW/cm2)に15分間曝露した。次にキャップを型から取り出し、リン酸緩衝食塩水中に置いた。1つの潤滑表面および1つの純粋な熱可塑性物表面を持つ球形の勾配IPNが結果として得られた。このプロセスを実行するために、他の温度および他の溶媒も他の型材料およびポリマー成分に加えて使用することができる。
【0136】
実施例20
別の実施例において、ポリエーテルウレタンは、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%のメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤した。材料の1つの側面を軽く叩いて乾燥させ、次いで大気に曝露し、紫外線により処理した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、生じた勾配半IPNを塩水溶液中で洗浄した。他の実験において、材料を硬化の間に窒素またはアルゴンに曝露した。
【0137】
実施例21
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)を射出成形し、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0138】
実施例22
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)75D)を、ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で、1つの側面上に射出成形、浸漬キャスト(溶液キャスト)し、DMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥させた。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0139】
実施例23
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート75D)を、ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で、1つの側面上に射出成形、浸漬キャスト(溶液キャスト)し、DMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0140】
実施例24
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)75D)を射出成形し次いで前記の光開始剤と共にメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中のエラスタン(商標)55D)中で浸漬キャスト(溶液キャスト)し、次いで紫外線に曝露してメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。次いで材料はDMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。次いで乾燥させた材料は、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0141】
実施例25
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(バイオネート75D)を射出成形し、次いでメタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%のDMAC中でエラスタン(商標)55D)中で浸漬キャスト(溶液キャスト)し、次いで紫外線に曝露して、メタクリロキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。次いで材料をDMAC溶媒を除去するためにコンベクションオーブン中で乾燥した。次いで乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートを含有する70%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、任意の未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0142】
実施例26
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)溶液をキャストし、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する酢酸中の35%のスルホプロピルメタクリレート中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いで半IPNを酢酸を除去するために水により洗浄し、次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために塩水溶液中で洗浄した。
【0143】
実施例27
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(エラスタン(商標)55D)溶液をキャストし、次いで、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する水中の35%のスルホプロピルメタクリレートおよび35%のアクリル酸中で膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、ポリエーテルウレタンおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)/ポリ(スルホプロピルメタクリレート)コポリマーを中和し、平衡膨潤を達成し、任意の未反応モノマーを除去するために、半IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0144】
実施例28
別の実施例において、PMMA(プレキシグラス)の矩形のサンプルを、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含有する水中の100%のアクリル酸中で短時間膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、PMMAおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。次いでポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0145】
実施例29
別の実施例において、ポリジメチルスルホキシド(PDMS、シルガード(Sylgard)(登録商標)184)の矩形の試料を製造者の仕様書に従って調製し、次いで0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンおよび0.1%v/vのメチレングリコールジメタクリレートと共にテトラヒドロフラン中の35%のアクリル酸溶液中で短時間膨潤し、続いてUV開始架橋を行って、PDMSおよびポリ(アクリル酸)の完全相互貫入ポリマーネットワークを産出した。ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去するために、IPNを塩水溶液中で洗浄した。
【0146】
実施例30
図35は水和した関節形成装置の横断面であり、関節形成装置が、実際には、1つの側面上で天然の軟骨の構造、弾性係数、破砕強度および潤滑表面、ならびに他の側面上で骨梁の剛性、強度および多孔率をまねる、骨軟骨移植片の合成バージョンであることを示す。装置は、剛性で多孔性の骨様の錨着表面へとスムーズに移行する、潤滑な軟骨様のポリマーを特色とする複合勾配材料からなる。勾配は、天然の関節に先天的な組成の勾配(そこでは軟質で滑らかな軟骨が厚み方向に沿って表面から深い所へ次第により固くより骨様になる)を模倣するようにデザインされた。実際には、この「生体模倣的」勾配は、それらの接触点で装置と骨の剛性を効果的に一致させることによって、骨界面でも微細動作を最小限にしながら下層にある骨に対して生理的な応力分配をもたらすべきである。適切な材料は例えば以下の中で記載され、その開示は参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/079,060号(2008年7月8日に出願);米国特許出願第61/095,273号(2008年9月8日に出願);および米国特許出願第12/148,534(2008年4月17日に出願)。
【0147】
実施例31
図36は接触角解析を示し、本発明の材料が非常に親水性であることを指摘する。一滴の水が表面上に置かれる場合、滴がとる形状は表面の組成物に依存する。親水性表面は水を引きつけてより平らな滴を生成するが、疎水性表面は水を退けてより丸い滴を生成する。表面の親水性の程度は表面と水滴との間で生成された角度の測定によって推測され、接触角と呼ばれる。典型的には、より親水性の表面は水で約0〜45°の接触角を有するが、より疎水性の表面は水で45°よりも大きい接触角を有する。
【0148】
本発明によって作製された荷電したヒドロゲルIPNと水の間の接触角が決定された。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、半IPN(PEU/PAA半IPN)を形成するために硬化させた。硬化後に、荷電したPEU/PAA半IPNはリン酸緩衝食塩水中で水和させた。材料を溶液から取り出し、残りの液体を除去するために表面を短時間軽く叩いた。一滴の水を材料の表面上に置き、ゴニオメーターを使用して接触角を読み取った。結果は、約8°の接触角を示した。比較のために、溶液キャストされたポリウレタンおよび射出成形されたポリウレタンの出発材料上でとられた読み取りはそれぞれ約72°および69°の接触角であった。この結果は、本発明に従うポリウレタンの中へのポリ(アクリル酸)ネットワークの取り込みが劇的に表面親水性を増加させることを実証する。
【0149】
実施例32
荷電したヒドロゲルIPNおよびポリウレタンの構造の差は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって示される。TEMは、材料の高度に拡大されたイメージを生成する。本発明のポリエーテルウレタン/ポリ(アクリル)酸の半IPN(PEU/PAA半IPN)のサンプルおよび未修飾ポリエーテルウレタンのサンプルでTEMを行った。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬および硬化した。それを、TEM解析を行う標準的な手順によって四酸化オスミウムで染色した。図37BはPEU/PAA半IPNを示すが、図37AはPEUの34k倍の拡大イメージを示す。非晶性(ソフト)ドメインおよび規則性(ハード)ドメインに対応する明るい領域および暗い領域のサイズは、未修飾のPEUと比較してPEU/PAA半IPNのTEMイメージで増加した。PEUサンプルと比較してPEU/PAAサンプル中でのより大きなドメインサイズに基づいて、PAAはPEUソフトセグメント内に隔離されたようであり、未修飾のPEUと比較してPEU/PAAサンプル中の相分離の程度はより高い。
【0150】
実施例33
図38は12.4k倍の拡大で図37と同じPEU/PAA半IPN材料のTEMを示す。概略図は、ハードセグメントが相互貫入されたポリマーネットワークのソフトセグメントからどのように相分離するのかを示す。
【0151】
実施例34
図39は、整形外科インプラントの例示的な関節界面表面を含むPEU/PAAのIPNの静的な機械的特性を示す。初期ヤング率、破断時歪みおよび材料の破断時応力を決定するために、一軸引張試験を行った。ドッグボーン試料を、0.3%/秒の歪み率でASTM D638に従って試験した。関節界面材料の材料についての平均真応力−真歪み曲線を図40中に示す。曲線の直線状部分において、弾性係数(真応力、真歪み曲線から提供されるように)は、天然の軟骨について報告された引張特性に非常に近く、E=15.3MPaである。最終的な真応力は、εult=143%の真歪みで、約σult=52MPaであることが見出された(軟骨は約65%の歪みで破壊されることに注目)。張力下の歪み硬化は80%以上の真歪みで観察された。ポアソン比(平衡)は、ドッグボーンのネック領域の側面の収縮の測定によって推定され、v=0.32で歪み範囲に沿って一定していることが見出された。したがって、体積弾性率は等式K=E/3(1−2v)から計算され、18.3MPaであることが見出された。ASTM D695に従う非拘束圧縮プラグ試験から、15.6MPaの圧縮剛性係数(真応力−歪みに基づいて、引張係数と同じように)、および50MPaを越える破壊強度で、PEU/PAA半IPNが優れた圧縮特性を有することが明らかにされる。
【0152】
実施例35
図40は、毎分40℃の加熱率の示差走査熱量測定法(DSC)によって評価したPEUおよびPEU/PAA半IPNサンプルの熱曲線を示す。図41は、2つの異なる加熱率のDSCによって評価したPEUおよびPEU/PAA半IPNサンプルの熱転移を比較する。ガラス転移温度Tg、結晶化温度および融解温度Tmを含む熱転移温度が決定された。Tg未満では、ポリマーの熱容量はより低く、ポリマーはより硬いかまたはよりガラス質である。Tgより上では、ポリマーの熱容量は増加し、ポリマーはより可撓性になる。この温度より上では、いくつかのポリマーについては結晶化温度であり、少なくとも分子のドメインのいくつかはより組織化され本質的には結晶性になる。結晶性部分が完全に融解する場合、より高い温度が融解温度である。変調示差走査熱量計および冷凍冷却システム(RCS90)を持つTA器具Q200 DSCシステムを使用して、ASTM D3418−03試験方法に従って、手順を行った。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、次いで硬化させた。少量(2〜6mg)のPEU/PAA半IPNサンプルを第1のアルミニウムパンの中に置いた。パンの上部に覆いを置き、ユニバーサルクリンピングプレスによりクリンプしてパンと覆いの間のサンプルを挟んだ。第1のパンおよび別に参照パンに熱を適用し、各々に対する電流を変化させて2つの材料の温度を同じに保った。試験材料の熱流を温度に対してグラフ上に表し、曲線の傾斜は熱転移温度を示す(図40)。いくつかの試験は異なる加熱率(毎分10℃および40℃)を使用して行われた。異なる加熱率で試験を行うことによって、図41において見られるように、異なる分解能が熱転移について得られる。Tgが材料の以前の熱履歴に依存しうるので、材料は2つの熱サイクルで行われる。第1の熱サイクルはポリマーがその試験状態で達する条件を標準化するために使用され、第2の試験サイクルは転移温度を生成するために使用される。加熱率が毎分10℃で維持されたときに、PEU/PAA半IPNおよびPEUの両方についてのガラス転移温度(Tg)は、21℃の付近であった。PEUと比較して、結晶化温度および融解温度はPEU/PAAにおいてより低かった。毎分40℃の加熱率では、結晶化温度は、PEUの93℃と比較してPEU/PAAについては90℃であった。加熱率を毎分10℃に低下させたときは、観察された結晶化温度は、PEUの92℃と比較してPEU/PAAについては79℃であった。最終的に、毎分40℃の加熱率では、Tm温度は、PEUの178℃と比較してPEU/PAAについては164℃だった。加熱率を毎分10℃に低下させたときは、観察されたTm温度は、PEUの176℃および186℃に対してPEU/PAAについては154℃であった。PEUのいくつかの分析において、2つのTmが観察され(176℃および186℃)、それはポリマー中で異なるセグメントのためであろう。Tmの変化は、少なくとも部分的には、ポリマーの体積あたりより少ないハードセグメントをもたらす、PAAの追加によって引き起こされるポリマー体積の増加のためである。
【0153】
実施例36
本発明のPEU/PAA半IPNのそれ自体に対する摩擦係数μは、ビルトインのトルクセルを使用して摩耗試験の間にリアルタイムで測定され、0.06乃至0.015の間の範囲で見出され、図42中に示されるように軟骨・オン・軟骨のμ値に類似する。そのより低い(軟骨と比較して)透過性のために、本発明のPEU/PAA半IPNは、より長く、より高い接触圧力でより低い摩擦係数を持ち続けることができる。図42は、2.4MPaの連続的な(静的)接触圧力下で、関節界面材料(グラフ中で「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と標識された)の摩耗試験の間に効果的な摩擦係数を示す。天然の軟骨値に関する文献報告およびUHMWPE・オン・CoCrに関する実験データー/文献報告もプロット中で示される(Mow, 2005; Wright 1982)。予想されるように、摩擦係数は荷重を1Hzのサイクルで適用された時間経過にわたって変わらないことが見出され、類似した結果が軟骨について報告される。材料中の低い摩擦係数は、(a)ハイドロプレーニング作用、(b)材料の固相と液相との間の荷重の共有、(c)水としての薄いフィルムの潤滑性が材料の表面上に持続することで説明することができる。圧力下の材料の軽微な部分的な脱水は、静止荷重下のμの軽微な増加について説明することができる。それに比べて、天然の軟骨は、静止荷重下で大部分のその水を失い、したがってその摩擦係数は迅速により高いレベルまで増加する。荷重の除去および続いて行われる再水和により、天然の軟骨の最初の摩擦係数は回復される。
【0154】
実施例37
摩擦係数は、物体の横移動に耐える力を示す数である。それは垂直力に対する摩擦力の単位のない比として表現される。ポリエーテルウレタン/ポリアクリル酸(PEU/PAA)半IPNについての動摩擦係数を金属上で試験し、動摩擦係数を時間の関数として示す。簡潔には、1片のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬し、硬化して本発明の水の膨潤可能な半IPNを形成した。直径8.8mmおよび厚み1mmのプラグを切断し、PBS中で膨潤し、次いでPBS中に沈めながら2.0MPaの接触応力で3/16インチステンレス鋼ディスクに対して1Hzの頻度で回転させた。力荷重セルおよびトルク荷重セルの両方を装備したASTM F732スタンダードに従って作製されたカスタムメイドの摩耗試験装置を使用して、動摩擦係数を摩耗試験実験の間にリアルタイムで測定した。材料の動摩擦係数は36時間の期間にわたり0.005乃至0.015の間で変動した。
【0155】
実施例38
本発明のPEU/PAA半IPNの摩耗実験は、ピン・オン・ディスク立体配置を使用して、ASTM F732に従って行われた。結果は図44、45および45中に示される。関節界面材料から形成されたディスクおよびピンを2,500,000のサイクルまで試験した。業界基準材料への比較のための根拠として、CoCrピン・オン・UHMWPE(超高分子量ポリエチレン上のコバルト・クロム)ディスク立体配置も、1,000,000のサイクルで試験した。
【0156】
本発明のPEU/PAA半IPNの試験において、ピンは直径8.8mm厚み2.5mmであった。ディスクは直径88mmおよび厚み2.5mmであった。ピンは、空気圧によって適用される繰返し荷重下で、半径24mmおよび1.33Hzの速度でディスクに対して回転させた。圧力調節器は、所望される力が適用されるように大気圧力を調整するために使用された。荷重は、ディスクの下に荷重セル(センソテック・ハネウェル(Sensotec Honeywell)社、カリフォルニア)を使用して直接測定した。データー収集カード(ナショナル・インスツルメンツ(National Instruments)社、テキサス)を装備したコンピューターに接続されたトルクセル(トランスデューサー・テクニクス(Transducer Techniques)社、カリフォルニア)によって、ディスクとピンとの間で生成された摩擦によって引き起こされたトルクを測定できるように、ディスクおよびピンは機械的に隔離された。ピンおよびディスクはPBSにより充填されたチャンバー中に含有されていた。温度は、熱電対−抵抗器−ファンシステムを使用して制御され37℃で一定に保たれた。等式μ=T/r*F(式中、Tは測定されたトルク、rは回転半径(=24mm)、Fはピン上に適用された全ての力)を使用して、摩擦係数を持続的にモニタリングした。摩擦係数は0.016であり、接触圧力(試験された範囲0.1〜3.5MPa)に依存せず、大きな静的接触荷重下で0.021にわずかに増加したが、液体の回復後にもとの値に戻ることが見出された。100万サイクルごとに重量方法を使用して摩耗を測定した。ディスクおよびピンを3日間の真空乾燥後に別々に秤量した。摩耗試験溶液(PBS)を収集し、視覚的に検討したところ、目視可能な摩耗粒子の徴候は試験のすべての工程で指摘されなかった。摩耗試験のPBS溶液を、任意の摩耗粒子を捕捉するために2.5μmポアフィルターを使用して真空濾過し、残存するPBSの塩を除去するために脱イオン水によりフラッシングし、次いで真空および乾燥剤下で一晩乾燥した。対照として、類似した試験を、UHMWPE(オルトプラスティックス(Orthoplastics)社、英国)上のCoCrピン(フォートウェイン・メタルズ(Fort Wayne Metals)社、インディアナ)を使用して行った。OD=7mmの3個の磨いた(Ra<1.6μm)CoCrの水平なピンを、2.5mmの厚みおよびOD=88mm(回転半径=24mm)の磨いたUHMWPEディスクに対して、同じ器具において3.4MPaの静的接触荷重下で、7℃の隔離された環境で1.2Hzで回転させて試験した。
【0157】
試験後の本発明のPEU/PAA半IPNから形成されたディスクの観察(図44A)から、ピン・オン・ディスク関節連結表面に沿って肉眼で知覚可能な摩耗トラックは示されなかった(図44Bは摩耗トラックの所在の近接概観図である。破線は経路を示すために追加され、放射状の矢印はディスクの中心から始まる)。比較では、図44C中で示されるように、CoCrピンに対する2.0Mサイクルの摩耗後のUHMWPEディスクは、目視可能な126μmの深さのトラックを有する。
【0158】
0.01mgの分解能を有する秤(メトラー・トレド(Mettler Toledo)社、オハイオ)を使用する摩耗試験溶液濾過液の秤量は、PEU/PAA半IPNの体積測定摩耗率が約0.6mg/106サイクルまたは0.63mm3/106サイクルまたは0.63 mm3/150×103mであることを示した。しかしながらこの値は方法の分解能に近い。PEU/PAA半IPNからなる発明の関節界面材料の摩耗試験からの摩耗試験溶液の概略図を図45A中で示し、PBS溶液中で粒子が存在しないことを実証する。図45Bおよび45C中で示されるUHMWPEディスクの摩耗試験溶液の概略図(CoCr・オン・UHMWPE摩耗試験の間に生成された実質的な摩耗残屑粒子を示す)に対して図45Aを比較せよ。
【0159】
結果の正確性を増すために、ほこり、水分および静電気などの外部要因を除去することに関心が払われたが、摩耗値は、利用可能な方法の統計的限界および実用的検出限界に非常に近い。これらの結果は、本発明に従うPEU/PAA半IPN(天然の軟骨のように)が、ほとんど水からなり、表面が水のフィルムにより持続的に潤滑にされるので、固体マトリクスの間で接触が(たとえあるにしても)ほとんどないという仮説と一致している。
【0160】
摩耗粒子測定はCoCr・オン・UHMWPE実験についても行われ、UHMWPEディスク上に目視可能な摩耗トラック(図44B)だけでなく、実質的な肉眼的摩耗残屑(図45BおよびC)を生じた。UHMWPEディスクは秤量され、重量の差から64mg/106のサイクルまたは69mm3/150×103mの平均摩耗率が与えられた(図46)。この研究は、本発明の関節界面材料(「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と標識された)は、関節全置換術において広く使用されるCoCr−UHMWPEの従来の組み合わせよりも摩耗に対して少なくとも100倍以上耐性のあることを指摘する。
【0161】
実施例39
図47は、様々な水性溶媒および有機溶媒中のPEU/PAAおよびPEUの膨潤挙動を示す。簡潔には、1枚のエラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤および架橋剤を有するアクリル酸中で浸漬し、半IPNを形成するために硬化させた。IPNまたはエラスタン(商標)55Dの小片を得て秤量した。サンプルを図中で示された溶媒を含有する溶液中で20時間浸漬した(サンプルは膨潤されたが溶解しなかった)。サンプルを溶媒から取り出し、短時間軽く叩いて乾燥し、次いで再び秤量した。膨潤に起因する重量の変化は%差として表現する。エラスタン(商標)55Dは単独で水を取り込まないが、本発明のIPNは容易に水により膨張して潤滑で水和したIPNを形成する。さらに、他の溶媒は出発ポリマーを膨潤するために使用して、本発明のIPNを生成することができる。ポリウレタンの事例において、様々な溶媒が材料を膨潤する能力は、溶媒中のポリマー成分(例えばハードセグメントおよびソフトセグメント)の相対的可溶性に加えて、溶媒(その極性、酸度および分子量など)の特性にも依存する。
【0162】
実施例40
水および酢酸中のアクリル酸によるポリエーテルウレタンの膨潤を検査した。膨潤溶液は、脱イオン水(図48A)および酢酸(図48B)中に10、30、50および70%のアクリル酸モノマーを含有して調製された。エラスタン(商標)(登録商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得て測定した。エラスタン(商標)のサンプルを各々の溶液中に置いた。サンプルは溶媒から取り出し、表面を短時間軽く叩いて乾燥し、次いで再び測定した。膨潤に起因する変化は、もとの長さ(Lo)引く1で割った平衡膨潤後の試料の最終的な長さ(Lf)として表現し、このような方法で、初期状態(y=0)に対する長さの部分的増加を、時間に対してプロットする。エラスタン(商標)55Dの膨潤を溶媒として水または酢酸のいずれかを使用して観察した。より多量のアクリル酸を膨潤溶液中で使用したときにより多くの膨潤が観察された。水または酢酸が溶媒として使用されたかどうかに依存して、エラスタン(商標)サンプルの膨潤に対するアクリル酸の濃度依存性が異なることが、注目される。
【0163】
実施例41
図49は、硬化させた後のPEU/PAA半IPN中に存在するポリ(アクリル酸)の量が、異なる膨潤溶液中のアクリル酸モノマーの出発濃度の関数として、プロットされることを示す。
【0164】
膨潤溶液は、脱イオン水および酢酸中に10、30、50および70%のアクリル酸モノマーを含有して調製された。エラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得て秤量した。サンプルを、架橋剤および開始剤と共に各々の水/アクリル酸または酢酸/アクリル酸溶液の中に置いた。サンプルを硬化させ、水または酢酸のいずれか中のアクリル酸中で膨潤し、溶液から取り出し、乾燥し、次いで再び秤量した。半IPNを形成するエラスタン(商標)55Dの中へのアクリル酸の取り込みは溶媒として水または酢酸のいずれかを使用して観察された。アクリル酸のより高い濃度が膨潤溶液中に存在するときに、より多くのアクリル酸の取り込みが観察された。
【0165】
実施例42
半IPNは本質的には図49中に記載されるように調製し、IPNのポリアクリル酸含有量を決定した。乾燥した材料を秤量し、平衡が達成されるまで塩類溶液中で膨潤し、再び秤量した。半IPNの重量の変化は、ポリアクリル酸の各々の濃度について、膨潤された材料の重量/乾燥材料の重量の比(Ws/Wd)として表現される。ポリマー中のポリアクリル酸の量の増加は、水膨潤可能な半IPNの中への塩類溶液の取り込みの増加と相関する。これらの実験において半IPNがpH7.4に中和され、一価カチオン(主に23g/molの分子量を有するナトリウム)は材料中でカルボキシレート基に対するカウンターイオンであるので、これらの実験において半IPNの乾燥重量は塩類膨潤溶液中に存在する塩を含んでいた。
【0166】
実施例43
図51〜54は、クリープおよび応力弛緩/圧縮の試験の結果を示す。試験は、開始剤および架橋剤を含有するアクリル酸中で浸漬および硬化させた、エラスタン(商標)55D(ポリエーテルウレタン)から形成されたPEU/PAA半IPN上で行った。
【0167】
図51は、繰返し圧縮試験の結果を示す。PEU/PAA半IPNの挙動は、永久クリープおよびクリープ回復を決定するために動的圧縮条件下で検査された。永久クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。クリープ回復は、荷重が除去された後の適用された変形の減少率を測定したものである。圧縮試験の実験装置はASTMの標準D695(Standard Test Method for Compressive Properties of Rigid Plastics)に従い、歩行周期において見られる生理的で周期的圧縮荷重を模倣するようにデザインされた正弦波荷重スキームを行うサンプルを用いた。
【0168】
PEU/PAA半IPNのサンプルを取り出して厚み方向で測定し、60,000以上のサイクルについて1Hzの頻度で0〜3MPaの圧縮応力のサイクルを行い、厚み方向で再び測定し、クリープから回復させPBS中で再平衡化(弛緩)させ、厚み方向で再び測定した。図51Aは、1つの図中で重ねた、長さ1秒のサイクルの試験(1番目、1000番目、10,000番目、20,000番目、40,000番目、および60,000番目のサイクルで)を行った代表的なサンプルでの厚み測定の結果を示す。図51Bは、材料の厚みがどのように試験のすべてサイクルにわたって変化するのかを示す。材料の厚み(サイクルの間に荷重を除去した後に測定される)は、1番目のサイクルで2.160mmの初期値から、60,000番目のサイクルまでに約2.000mmに低下した。しかしながら、PBS中の再平衡(弛緩)および最後のサイクルでのクリープ回復後に、材料は2.135mmの厚みに戻り、永久クリープに起因する全厚み減少は1.1%のみであった。
【0169】
図52は、多工程の応力緩和試験を介して決定されるPEU/PAA半IPNの平衡圧縮挙動を示し、その試験では既定の変位を適用し、次いで材料を弛緩(平衡化)させる。特に、これらの試験条件下で、図52中の最後のデーターポイントによって示されるように、荷重の除去後に材料はその平衡値に完全に回復し、完全なクリープ回復を示す。2.20MPaの応力(4番目のデーターポイント)は、有限要素モデルによって予測される股関節装置における最大の機能的応力(股関節を介した体重の3倍の荷重)よりも15%高い。
【0170】
静的クリープ試験も行った(データー不掲載)。クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。静的圧縮下で試験されたPEU/PAA半IPNの挙動は、ASTM D2290−01「Standard Test Methods for Tensile, Compressive, and Flexural Creep and Creep-Rupture of Plastics」に従って試験された。9.525mmの初期直径および1.115mmの厚みを持つPEU/PAA半IPNのプラグを、液体PBSの槽中に初期応力4MPa下で置いた。約20,000秒間応力を適用した後(14.29%の全歪みまで)、荷重を解除し、PBS中で材料を弛緩(再平衡化)させた。プラグの最終的な厚みは1.109mmであった。40,000サイクル以上の後に最終的に回復しないクリープは2.7%であった。
【0171】
図53は、ASTM D395に従う圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。この試験において、9.525mmの初期直径および2.13mmの厚みを持つPEU/PAAのプラグに、PBSを満たした液体槽中で室温で23時間15%の一定の圧縮歪みをかけた。材料をPBS中で弛緩および再平衡化させた後に、プラグの最終的な厚みは2.08mmであった。これは9.5%の圧縮永久ひずみ値を与える。比較の根拠として、PEU単独(エラスタン(商標)55D)は、同じ条件(22時間、室温)下で約45%の圧縮永久ひずみ値を示す。したがって、PEU/PAA半IPN中の多価電解質が存在することにより、負に荷電した多価電解質の親水性および高膨潤能に起因する水によるマトリックスの再水和を介して、永久クリープがPEU材料で起こらないようにする手段が提供される。
【0172】
実施例44
図54は、本発明に従って作製したいくつかの材料のリストを示す。第1のカラムは使用した疎水性ポリマーを示す。修飾が第2のカラムにおいて示されるように疎水性ポリマーに対して行われるならば、修飾のための材料は材料と共にキャストされるか、または、修飾が架橋官能基ならば、修飾を追加し、材料を調製および架橋し、反応させた架橋と共にその後使用した。モノマー、コモノマー(もしあれば)、架橋剤および開始剤は、調製した疎水性ポリマーを膨潤するために、示された溶媒中に図中に示されるように追加された。各々の疎水性ポリマーサンプルは最大2日間膨潤させ、溶液から取り出し、標準的な手順に従う示された方法を使用して硬化させた。材料をPBS中で洗浄および膨潤した。使用される略称は以下のとおりである。MBAA=メチレンビスアクリルアミド、HMPP=2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、TEGDMA=メチレングリコールジメタクリレート、およびH2O=水。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含む組成物。
【請求項2】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも低い摩擦係数を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも水膨潤可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも高い伝導度を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記IPNまたは半IPNが、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー前駆体を拡散させること、およびイオン性ポリマーを形成するためにモノマーを重合することによって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
水をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記水が、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水中に溶解した電解質をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記IPNまたは半IPNが負に荷電している、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーがイオン性ポリマーと物理的に絡み合っている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーがイオン性ポリマーに化学的に架橋される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、規則性ドメインおよび非規則性ドメインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記イオン性ポリマーが前記非規則性ドメイン中に配置される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記イオン性ポリマーがカルボキシレート基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記イオン性ポリマーがスルホン酸基をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記イオン性ポリマーがスルホン酸基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記イオン性ポリマーがポリアクリル酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記イオン性ポリマーが、前記組成物の第1の部分から前記組成物の第2の部分への濃度勾配を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記濃度勾配が組成物内で剛性勾配を提供する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含み、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーとは別の層中に配置される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの全体にわたって拡散される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なIPNまたは半IPNを製造する方法であって、
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置くことと;
熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させることと;
熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの内部でイオン性ポリマーを形成するためにイオン化性モノマーを重合し、それによってIPNまたは半IPNを形成することと
を含む方法。
【請求項26】
抗酸化剤をさらに加えることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
水によりIPNまたは半IPNを膨潤することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成することをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
電解質溶液によりIPNまたは半IPNを膨潤することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項30】
イオン性ポリマーに疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを化学的に架橋することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項31】
イオン性ポリマーと疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを物理的に絡み合わせることをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、規則性ドメインおよび非規則性ドメインを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
重合工程の前にイオン化性モノマー溶液により非規則性ドメインを膨潤することをさらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記イオン化性モノマーがカルボキシレート基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン化性モノマーがスルホン酸基をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記イオン化性モノマーがスルホン酸基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記イオン化性モノマー溶液がアクリル酸溶液である、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
疎水性の熱可塑性ポリマーの熱硬化物の中のイオン化性モノマー溶液の位置選択的な拡散を介して、IPNまたは半IPNの内のイオン性ポリマーの濃度勾配を形成することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記濃度勾配が組成物内で剛性勾配を提供する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーであり、
第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;
第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程と
を重合工程の前にさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに隣接する別の層中にある、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー内に拡散される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
第1の形状から第2の形状へIPNまたは半IPNを変化させることをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記変化させる工程がIPNまたは半IPNを加熱することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーおよびイオン性ポリマーを含む水膨潤可能なIPNまたは半IPNを含む組成物。
【請求項2】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも低い摩擦係数を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも水膨潤可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記IPNまたは半IPNが、前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーよりも高い伝導度を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記IPNまたは半IPNが、疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー前駆体を拡散させること、およびイオン性ポリマーを形成するためにモノマーを重合することによって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
水をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記水が、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水中に溶解した電解質をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記IPNまたは半IPNが負に荷電している、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーがイオン性ポリマーと物理的に絡み合っている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーがイオン性ポリマーに化学的に架橋される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、規則性ドメインおよび非規則性ドメインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記イオン性ポリマーが前記非規則性ドメイン中に配置される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記イオン性ポリマーがカルボキシレート基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記イオン性ポリマーがスルホン酸基をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記イオン性ポリマーがスルホン酸基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記イオン性ポリマーがポリアクリル酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記イオン性ポリマーが、前記組成物の第1の部分から前記組成物の第2の部分への濃度勾配を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記濃度勾配が組成物内で剛性勾配を提供する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含み、第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーとは別の層中に配置される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの全体にわたって拡散される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーから水膨潤可能なIPNまたは半IPNを製造する方法であって、
疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置くことと;
熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させることと;
熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの内部でイオン性ポリマーを形成するためにイオン化性モノマーを重合し、それによってIPNまたは半IPNを形成することと
を含む方法。
【請求項26】
抗酸化剤をさらに加えることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
水によりIPNまたは半IPNを膨潤することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成することをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
電解質溶液によりIPNまたは半IPNを膨潤することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項30】
イオン性ポリマーに疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを化学的に架橋することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項31】
イオン性ポリマーと疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを物理的に絡み合わせることをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、規則性ドメインおよび非規則性ドメインを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
重合工程の前にイオン化性モノマー溶液により非規則性ドメインを膨潤することをさらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記イオン化性モノマーがカルボキシレート基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン化性モノマーがスルホン酸基をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記イオン化性モノマーがスルホン酸基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記イオン化性モノマー溶液がアクリル酸溶液である、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
疎水性の熱可塑性ポリマーの熱硬化物の中のイオン化性モノマー溶液の位置選択的な拡散を介して、IPNまたは半IPNの内のイオン性ポリマーの濃度勾配を形成することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記濃度勾配が組成物内で剛性勾配を提供する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーであり、
第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの固体形態と接触させてイオン化性モノマー溶液を置く工程と;
第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの中にイオン化性モノマー溶液を拡散させる工程と
を重合工程の前にさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーに隣接する別の層中にある、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーが、前記第1の疎水性の熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー内に拡散される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
第1の形状から第2の形状へIPNまたは半IPNを変化させることをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記変化させる工程がIPNまたは半IPNを加熱することを含む、請求項44に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A−6B】
【図7A−7B】
【図7C−7D】
【図8A−8B】
【図8C−8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【図30A−30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46】
【図47】
【図48A】
【図48B】
【図49】
【図50】
【図51A】
【図51B】
【図52】
【図53】
【図54−1】
【図54−2】
【図54−3】
【図54−4】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A−6B】
【図7A−7B】
【図7C−7D】
【図8A−8B】
【図8C−8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【図30A−30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37A】
【図37B】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46】
【図47】
【図48A】
【図48B】
【図49】
【図50】
【図51A】
【図51B】
【図52】
【図53】
【図54−1】
【図54−2】
【図54−3】
【図54−4】
【公表番号】特表2011−527377(P2011−527377A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517526(P2011−517526)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049846
【国際公開番号】WO2010/005992
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510252427)バイオミメディカ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049846
【国際公開番号】WO2010/005992
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510252427)バイオミメディカ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]