説明

疲労を回復又は軽減するための組成物、および当該組成物を備える医用デバイス

本発明は、疲労を回復又は軽減するための組成物、より詳細には、トランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールを含有する組成物を提供する。さらに、本発明は、疲労を回復又は軽減するための上記組成物を備える医用デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労を回復又は軽減するための組成物に関し、より詳細には、トランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールを含有する組成物に関するものである。さらに、本発明は、上記組成物を備える医用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、「疲労」は深刻な疾患の1つである。1985年の国民意識調査では、疲労感を訴える人が調査対象の66%であった。その後、1999年に15〜65歳の男女3,000名以上に対して行なった疫学調査では、疲労感を感じている人の割合は全体の約60%であり、特に半年以上持続する慢性疲労を患う人が、疲労感を感じている人の半数より多い(すなわち、全体の36%)ということが明らかになった。
【0003】
近年、新緑の緑葉が放散する「緑の香り」が、種々の生理作用を有することが注目されている。「緑の香り」とは、複数の成分の混合物から発せられる香気であり、具体的には、8種の成分の混合物から生じる複合香である。これら8種の成分は、具体的な構造が不明であるが、それぞれ異なる濃度で含まれている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0004】
また、この「緑の香り」は、例えば、拘束ストレスに起因してFos様タンパク質を発現したラットにおいて、緑の香りが内分泌ホルモン系、自律神経系、および/または免疫系に影響することによって、Fos様蛋白の発現が抑制される(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【0005】
ヒノキ科植物の木部および枝葉の切裁を用いた浴用組成物が知られている(例えば、特許文献1を参照のこと)。特許文献1には、「食用及び/又は薬用植物においては溶出する香りなどの各成分によるリフレッシュ効果」と記載されているが、その香りの成分に関する具体的な記載はない。
【0006】
このように、8種からなる複合香である「緑の香り」が奏する効果は、未だ具体的に解明されていない。さらに、8種のうちのどの成分がどのような効果を奏するのかは、具体的に解析されていない。また、ストレス鎮静化作用および疲労回復作用又は疲労軽減作用を有する具体的な化合物は見出されていない。
【特許文献1】特開平11−292756号公報(平成11年10月26日公開)
【非特許文献1】Foods&Food Ingred J Jpn JN No.185、57−59(2000年)
【非特許文献2】第76回日本生理学会講演要旨、第258頁、1999年
本発明は、疲労を回復又は軽減する効果、すなわち抗疲労効果を有する組成物、具体的には慢性疲労症候群の症状の緩和のためおよび/または過労死の予防のための組成物を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、疲労を回復又は軽減させる効果、すなわち抗疲労効果を有する物質について鋭意検討を行った。その結果、トランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールが抗疲労効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の組成物は、上記の課題を解決するために、トランス−2−ヘキセナールまたはシス−3−ヘキセノールを含有することを特徴としている。
【0009】
本発明の組成物は、トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールを両方含有することが好ましい。
【0010】
本発明の組成物は、慢性疲労症候群の症状を緩和することが好ましい。
【0011】
本発明の組成物は、過労又は過労死を予防することが好ましい。
【0012】
本発明の組成物は、芳香性であり、その芳香が抗疲労効果をもたらすことが好ましい。
【0013】
本発明の組成物は、芳香剤、液体洗浄剤、固体洗浄剤、化粧料、浴用組成物、保健衛生材料類、又は口腔用組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、経口摂取できることが好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、食品であることが好ましい。
【0016】
本発明の組成物は、点眼又は点鼻が可能な形態であることが好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、吸入可能な形態であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、疲労を回復又は軽減することができる組成物を提供することができる。
【0019】
本発明の組成物は、疲労を回復又は軽減する薬学的組成物であることが好ましい。
【0020】
本発明の医用デバイスは、上記組成物を備えることを特徴とすしている。
【0021】
本発明の医用デバイスは、医療用マスクであることが好ましい。
【0022】
本発明の医用デバイスは、花粉症を患う患者に適用される医療用マスクであることが好ましい。
【0023】
本発明の医用デバイスにおいて、上記組成物は、0.5重量%以下のトランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールを含有することが好ましい。
【0024】
本発明の医用デバイスは、気道疾患の処置に用いられる吸入用エアロゾルのためのデバイスであることが好ましい。
【0025】
本発明の医用デバイスにおいて、上記気道疾患が炎症性又は閉塞性の気道疾患であることが好ましい。
【0026】
本発明の医用デバイスにおいて、上記炎症性又は閉塞性の気道疾患が喘息であることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、種々の疾患を患うことに起因する被験者の疲労を回復又は軽減することができる医用デバイスを提供することができる。
【0028】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】加速度脈波形の典型的なa波、b波、c波、d波、およびe波の5つの成分波を示す図である。
【図2】本発明の組成物または対照となる比較製剤1により得られるATMTの平均反応時間の遅れを示すグラフである。
【図3】本発明の組成物または対照となる比較製剤1により得られる加速度脈波のうちa波の波高変化を示すグラフである。
【図4】比較例2で使用したVAS試験用紙を示す図である。ここに示す図はおよその実際スケールを反映しており、線分としては10cm程度が通常である。
【図5】VAS試験結果の変化を示すグラフである。
【図6】NK活性の変化を示すグラフである。図中、Eはエフェクター細胞、Tは標的細胞を意味し、数値は各細胞比を示している。
【図7】血中DHEAS濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「疲労」は、「身体的または精神的な負荷(いわゆる、ストレス)を連続して付与されたときにみられる一時的な身体的および/または精神的なパフォーマンスの低下」が意図される。「パフォーマンスの低下」は、身体的および/または精神的な作業能力の質的または量的な低下が意図される。本明細書中で使用される場合、「抗疲労効果」は、疲労を回復させる効果又は疲労を軽減させる効果が意図される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、慢性疲労症候群(CFS)とは、原因不明の慢性的な疲労感のために健全な社会生活が送れなくなるという病態をひとつの症候群として捉え、その病因および/または病態を明らかにするために設けられた疾病概念である(日本内科学会雑誌、81:573−582(1992)を参照のこと)。慢性疲労症候群は、これまで健康に生活していた人が風邪などに罹患したことがきっかけとなって、突然発症することが多い。慢性疲労症候群において、原因不明の激しい全身倦怠感とともに微熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛、脱力感、思考力または集中力に関する障害、抑うつ症状、および睡眠障害などの症状が長期にわたって観察される。本明細書中で使用される場合、「慢性疲労症候群の症状を緩和」とは、このような慢性疲労症候群の症状の1つまたはそれ以上を除去、軽減および/または緩解させることを意図する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「過労死」は、長時間過密状態での働きすぎに起因する突然死を意図される。過労死は、現代の日本において広く知られており、大きな社会問題として注目されている。過労死は、その命名者である国立公衆衛生院成人室長・上畑鉄之丞医師によって、医学生理学的には「過重労働が誘因となって高血圧または動脈硬化が悪化して、脳出血、くも膜下出血、または脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの虚血性心疾患、あるいは急性心臓死などを発症して、永久的労働不能または死亡に至った状態」、または「非生理的な労働過程が進行する中で、労働者の正常な労働リズムや生活リズムが崩壊し、その結果、生体内で疲労蓄積が進み、過労状態に移行し、既存の高血圧や動脈硬化が悪化し、ホメオスタシスに破綻をきたした致命的な状態」と定義される。過労死の問題は、医学的、経済的または社会的にも非常に重要であると認識されている。にもかかわらず、その科学的メカニズムについてはほとんど解明されていない。
【0033】
本発明に係る組成物は抗疲労効果を示すので、それを介して疲労または過労死を予防できる。一実施形態において、本発明の組成物は、薬学的組成物であり得る。
【0034】
本発明に係る組成物における有効成分であるトランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールはそれぞれ以下の式で示される:
【0035】

トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールは、容易に入手可能な出発物質から容易に製造することができる(トランス−2−ヘキセナールについては、A.HatanakaおよびM.Ohno、Agric.Biol.Chem.、25,7(1961)、シス−3−ヘキセノールについては、特開昭55−102531号公報(昭和55年8月5日公開)を参照のこと)。
【0036】
本発明に係る組成物は、上記成分のいずれか一種を含有しても、両者を含有しても抗疲労効果を発揮する。
【0037】
本発明に係る組成物におけるトランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールの化合物の総含有量は、組成物の形態や適用部位によって異なるが、0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜80重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%である。鼻に近い部位に適用する場合、香りの強さに基づく不快感を考慮すると、好ましくは、0.1〜2重量%であり、最も好ましくは0.1〜1重量%である。
【0038】
本発明に係る組成物は、芳香性であり、その芳香が抗疲労効果をもたらす。本発明に係る組成物は、特に制限されないが、芳香剤、液体洗浄剤、固体洗浄剤、化粧料、浴用組成物、保健衛生材料類、口腔用組成物、食品などとして使用できる。具体的には、以下が挙げられる:室内芳香剤、消臭剤などの芳香剤;食器用洗剤、洗濯用洗剤、日用洗剤などの液体または固体洗浄剤;石鹸、シャンプー、リンスなどの洗浄用化粧品、染毛料、整髪料、養毛料などの頭髪化粧品、クリーム、化粧水、オーデコロン、パックなどの基礎化粧品、おしろい、ファンデーション、ほお紅などのメークアップ化粧品、香水、コロンなどの芳香化粧品、日焼け、日焼け止め化粧品、口紅、リップクリームなどの口唇化粧品などの化粧料;バスオイルなどの各種浴用組成物;清潔ティッシュなどの保健衛生材料類;歯磨き、マウスウオッシュなどの口腔用組成物;および、香(こう)などが挙げられる。
【0039】
本発明に係る組成物は、好ましくは、経口摂取可能な形態であり、例えば、食品に添加されてもよい。
【0040】
本発明に係る組成物を食品や芳香剤などの日用品に調製する場合、必要に応じて、当該食品や日用品に使用される様々な成分や添加物を、本発明に係る組成物の抗疲労効果を損なわない範囲内で任意に選択し、混合して調製する。例えば、固形調製品においては、結合剤として、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルポロリドン、またはポリビニルアルコールなど、賦形剤として、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、オリゴ糖、デンプン、ゼラチン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸など、滑沢剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど、崩壊剤として、例えば、デンプン、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが使用可能である。また、半固形調製品においては、調製品の種類に応じた基剤(例えば、軟膏基剤(例えば、ワセリン、流動パラフィン、ロウなどの炭化水素系基剤、セタノール、高級脂肪酸エステルなど)、ゲル基剤(例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ガム質など)、油性基剤(例えば、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、綿実油などの植物油、プロピレングリコール)など)が利用可能である。さらに、液状調製品においては、基剤として、溶剤、水、油性基剤、溶解補助剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤などが使用可能である。また、本発明に係る組成物には、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、香料などを添加してもよい。
【0041】
本発明に係る組成物に用いられる代表的な成分を以下に例示するが、これらの成分に限定されるものではない。
【0042】
糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、セルビオース、ラクトース、プルラン、ラクツロース、ラフィノース、マルチトール、およびこれらの塩などが挙げられる。
【0043】
増粘剤としては、例えば、多糖類またはその誘導体(アラビアゴム、カラヤゴム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダルマンガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラツクロン酸、キチンまたはその誘導体、キトサンまたはその誘導体、エラスチン、ヘパリンヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セラミド、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒエオロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロースなど)、ポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、ポリビニルメタアクレート、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、リボ核酸、デオキシリボ核酸など、およびこれらの塩などが挙げられる。
【0044】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)−ポリオキシプロピレン(POP)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマ−235、ポロクサマ−188など)、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POE(60)硬化ヒマシ油などのPOE硬化ヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類、POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類、POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型、イミダゾリン型などの両性界面活性剤;POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテルリン酸またはその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのN−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウムなどのN−アシルタウリン塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、アルキルピリジウム塩(塩化セチルピリジウム、臭化セチルピリジウムなど)などの陽イオン界面活性剤などが挙げられる。なお、括弧内の数字は、付加モル数を示す。
【0045】
本発明に係る組成物は、その活性成分であるトランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールが香りとして鼻腔に作用して、その薬効を呈することが好ましい。
【0046】
1つの実施形態において、本発明に係る組成物は、点眼または点鼻可能な形態であることが好ましい。1つの局面において、本実施形態に係る組成物は、一般に医療目的で使用されている点眼薬または点鼻薬に混合して使用されることが好ましい。
【0047】
別の実施形態において、本発明に係る組成物は、吸入可能な形態であることが好ましい。1つの局面において、本実施形態に係る組成物は、吸入可能なエアロゾル組成物であることが好ましい。より好ましくは、本実施形態に係る組成物は、一般に医療目的で使用されている吸入可能な薬剤と混合して使用されることが好ましい。
【0048】
本発明に係る組成物は、身体的または精神的な負荷、すなわち、ストレスを軽減または鎮静化することによって、疲労を軽減または回復させることができる。ストレスを生じさせる疾患としては、例えば、炎症性または閉塞性の気道疾患(例えば、喘息、急性肺傷害(ALI)、成人性呼吸障害症候群(ARDS)、慢性閉塞肺疾患、慢性気管支炎および気腫を含む気道または肺疾患(COPD、COADまたはCOLD)、気管支拡張症および他の薬物治療(他の吸入薬物治療の結果としての気道過剰反応の悪化))が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。従って、本発明に係る組成物は、喘息などの炎症性または閉塞性の気道疾患を処置または緩和させるための薬剤とともに使用されるとさらに効果的である。
【0049】
本発明に係る組成物は、好ましくは、吸入によって投与される吸入可能型形態である。本発明の一実施形態において、本発明に係る組成物の吸入可能型は、例えば、溶液または分散物の活性成分を含むエアロゾルのような噴霧可能組成物であるか、または水性、有機性または水性/有機性媒体中の活性成分の分散物を含む霧状可能組成物であり得る。
【0050】
本発明に係る組成物の吸入可能型としての使用に好ましいエアロゾル組成物は、当分野に既知の任意のプロペラント(噴霧剤)から選択され得るプロペラントの溶液または分散物の活性成分を含み得る。好ましいプロペラントには、n−プロパン、n−ブタンまたはイソブタンのような炭化水素または2もしくはそれ以上のその炭化水素の混合物、およびハロゲン置換炭化水素、例えばフッ素置換メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタン、特に1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227)、または2またはそれ以上のハロゲン置換炭化水素の混合物が含まれ得る。活性成分がプロペラント中の懸濁液に存在する場合、すなわち、プロペラント中に分散する粒子型で存在する場合、エアロゾル組成物はまた、当分野に既知の滑沢剤および界面活性剤から選択され得る滑沢剤および界面活性剤を含み得る。他の適当なエアロゾル組成物には、界面活性剤なし、または実質的に界面活性剤のないエアロゾル組成物が含まれる。当該エアロゾル組成物は、プロペラントの重量に基づき、約5重量%まで、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%または0.5〜1重量%の活性成分を含み得る。存在するならば、滑沢剤および界面活性剤は、それぞれ、エアロゾル組成物の5重量%および0.5重量%までの量であり得る。当該エアロゾル組成物はまた、特に、加圧測定用量吸入装置による投与のための、組成物の30重量%までの量のエタノールのような共溶媒和物を含み得る。
【0051】
エアロゾル組成物において、本発明に係る組成物の活性成分は、約10μmまでの、例えば、0.1〜5μm、好ましくは1〜5μmの平均粒径を有し得る。存在するならば、固体担体は、300μmまで、好ましくは、200μmまでの最大粒径を通常有し、都合良くは、40〜100μm、例えば50〜75μmの平均粒径を有する。活性成分の粒子サイズ、およびドライパウダー組成物中に存在する場合の固体担体の粒子サイズは、通常の方法により、例えば、エアージェットミル、ボールミルまたはバイブレーターミル、ミクロ沈殿(microprecipitation)、スプレードライニング、凍結乾燥または臨界超過媒体からの再結晶により望ましいレベルにまで微粉砕し得る。
【0052】
本発明はさらに、本発明に係る組成物を備える医用デバイスを提供する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「医用デバイス」は、本発明に係る組成物を備え、当該組成物の奏する薬理効果に基づいて被験者の呈する疾患(好ましくは、疲労またはストレス)を軽減または治療するためのデバイスが意図される。
【0054】
一実施形態において、本発明に係る医用デバイスは、上述した気道疾患の処置に用いられる吸入用エアロゾルのためのデバイスであることが好ましい。本実施形態に係る医用デバイスは、本発明に係る組成物を備える。本実施形態に係る医用デバイスは、気道疾患を処置するための医薬をさらに備えることが好ましい。
【0055】
炎症性または閉塞性の気道疾患を処置するために使用される吸入用エアロゾルのためのデバイスがいくつかある。もっとも広く使用されているデバイスは、計量投薬吸入器(MDI)であり低沸点プロペラントを含んだ調合体を擁する薬剤調合体の容器からなる(例えば、米国特許第5,404,871号および同第5,364,838号を参照のこと(これらは本明細書中に参考として援用される))。別のタイプのデバイスは、乾燥パウダ吸入(DPI)デバイスである(例えば、米国特許第5,775,320号および同第5,740,794号を参照のこと(これらは本明細書中に参考として援用される))。さらに別のタイプのエーロゾル投薬デバイスは、多孔性の膜組織を通じて調合体を押し出す(例えば、米国特許第5,554,646号および同第5,522,385号を参照のこと(これらは本明細書中に参考として援用される))。
【0056】
本発明に係る組成物がエアロゾル組成物である場合、本発明に係る医用デバイスは吸入装置であり、この吸入装置は、10〜100μl、例えば、25〜50μlのような組成物の測定用量を送達するよう適用されるバルブを提供したエアロゾルバイアル、すなわち、測定用量吸入器として知られる装置である。そのようなエアロゾルバイアルおよび加圧下でエアロゾル組成物を含ませるために適した手順は、吸入治療の当業者に既知である。本発明に係る組成物の吸入可能型が、霧状化可能な水性、有機性または水性/有機性分散物である場合、吸入装置は、既知のネブライザーとして知られ得、例えば、1〜50ml、通常1〜10mlの分散物を含み得るエアージェットネブライザー、または超音波ネブライザーのような通常の空気圧ネブライザー;またはハンドヘルドネブライザーのような機械装置である。本発明に係る組成物の吸入可能型が、微粉砕した粒子型である場合、吸入装置は、例えば、本発明に係る組成物の活性成分の用量単位を含むドライパウダーを含有するカプセルまたはブリスターからのドライパウダーの送達に適用するドライパウダー吸入装置、または、例えば、本発明に係る組成物の活性成分の用量単位を含む3〜25mgのドライパウダーの送達に適用する多用量ドライパウダー吸入(MDPI)装置であり得る。適当なそのドライパウダー吸入装置は当該分野において周知である。例えば、カプセル化型ドライパウダーの送達に適当な装置は、US3991761に記載されたものであり、その一方、適当なMDPI装置は、WO97/20589に記載されたものである。
【0057】
別の実施形態において、本発明に係る医用デバイスは、医療用マスクである。医療用マスクは、上述した気道疾患の対処療法としても有効であるだけでなく、近年問題となっている「花粉症」を患う被験者に対してもまた有効である。花粉症は、日常生活を正常に行なうことを妨げるので、花粉症を患う患者は明らかにストレスを受けており、その結果、その精神的な負荷に基づく疲労を蓄積させている。「花粉症」を患う被験者が、医療用マスクとして本実施形熊に係る医用デバイスを用いることによって、さらに「花粉症」の症状を悪化させないだけでなく、「花粉症」によるストレスおよび当該ストレスに基づく疲労を回復または低減することができる。
【0058】
1つの局面において、本実施形態に係る医用デバイスは、本発明に係る組成物を内包する容器(好ましくは、通気性のメッシュ袋)を備える医療用マスクであることが好ましい。
【0059】
別の局面において、本実施形態に係る医用デバイスは、本発明に係る組成物を含有するガーゼを備える医療用マスクであることが好ましい。この局面において、本発明に係る組成物は、ガーゼに塗布されていることが好ましい。また、この局面において、本発明に係る組成物は、ガーゼに浸透させるための可溶性形態であることが好ましい。
【0060】
本発明は、文部科学省科学技術振興調整費生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」の成果である。
【実施例】
【0061】
以下の実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0062】
(実施例1:組成物)
以下の表1に示す原材料を適宜混合し、芳香性を有する組成物を調製した。同様に対照となる比較製剤1も調製した。比較製剤1は、トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールを含まない点を除き、本発明の組成物と同じ組成を有する。
【0063】


(実施例2:作業効率の低下抑制作用)
(1)試験対象
被験者としての20歳代の男性健常者6名に対して改良したATMT(Advanced Trail Making Test)によって精神作業負荷をあたえ、ATMT前後での疲労を評価した。上記作業負荷の間、上記被験者は、実施例1に示した本発明の組成物または比較製剤1を含むメッシュ袋を挟んだ医療用マスクを用い、本発明の組成物または比較製剤1を吸引しながら作業を行った。同一被験者に対して、一週間以内の異なる二日において盲検法を実施した。喫煙者、および検査日にアレルギー性鼻炎などによる鼻症状を呈した被験者を、本試験から除外した。カフェイン含有食品(コーヒー、ドリンク剤、ガムなど)や抗アレルギー剤などの中枢神経に作用する可能性のある薬剤を常用する被験者および試験当日に使用した被験者もまた除外した。
【0064】
(2)精神作業負荷方法
ATMTは、加齢現象の評価および初期痴呆のスクリーニングに利用される試験である。ATMTでは、タッチディスプレイ上に提示された1〜25までの数字を即座に押すという視覚探索反応課題を行なう。従来、A4紙で行っていたTMT(ランダムに配置された1〜25の数字を一筆書きの要領で線を引く課題)とは異なり、標的となる数字ごとの探索反応時間を測定することが可能であり、また反応ごとに全ての標的数字を再配置させたり、反応済の標的数字を消して新たに標的数字を追加発生させることが可能である。これらの工程を遂行することによって、課題遂行中に観察される精神疲労の増大、または探索効率を高めるためのワーキングメモリー活用度などを評価することが可能である。
【0065】
ATMTにおける画面上に現れる数字の配置は3パターンある。Aパターンでは、標的ボタンを押すとボタンの数字の色が変わり、他のボタンと区別される。Bパターンでは、標的ボタンを押すとそのボタンは消え、他の数字が現れて、画面上に25個の数字が並ぶようになる。Cパターンでは、標的ボタンを押すと、その数字は消えるが、次の画面の他の数字が出現して25個となるとともに、数字の配置も毎回ランダムに変化する。この3パターンで全ての数字をタッチし終わると、作業は終了し作業にかかった時間をコンピューターが計算する。これを1セットとする(特開2002−112981(平成14年4月16日公開)を参照のこと)。
【0066】
この時点までの精神作業負荷として、標的ボタンの数字として20〜69の50個の数字を用い、作業時間を計算しない以外は上記ATMTと同様の改良ATMTを行った。即ち、午前中の4時間にわたりAパターンに基づく課題、Bパターンに基づく課題およびCパターンに基づく課題を連続的に反復して、精神作業負荷を与えた。精力的に作業を行なうことに対する動機付けとして、各課題を完遂する毎に報酬を与えると被験者に伝えた。
【0067】
(3)疲労の評価方法
疲労の評価方法として、上述した改良ATMT(開始直後および最終間際の3セット分の平均反応時間)および加速度脈波の2方法を採用した。
【0068】
(3−1)ATMTを用いた疲労評価
精神作業負荷の前後において、ATMTの課題のうちC課題のみを行い、これを1セットとし、作業にかかった時間を測定した。
【0069】
(3−2)加速度脈波を用いた疲労評価
加速度脈波は、血管の老化または体調評価に利用されている(特開2002−238867(平成14年8月27日公開)を参照のこと)。加速度脈波は、脈波の解析を補助する目的で波形の一次微分波形をさらに微分したものである(佐野祐司、片岡幸雄、生山匡、和田光明、今野廣隆、川村協平、渡辺剛、西田明子、および小山内博:加速度脈波による血液循環の評価とその応用、労働科学、61(3)、129−143(1985)を参照のこと)。加速度脈波は、脈波を2回微分することによって、変曲点を強調して波形の評価を容易にし、その結果、血液循環動態を示すと考えられている。原波形の変曲点が鋭角であればあるほど、二次微分波形の変曲点の振幅も大きくなる(鈴木明祐:生理機能検査法脈波、加速度脈波、現代医療、23(1)、61−65(1991)を参照のこと)。よって、加速度脈波は、変曲点による波形のパターンの認識や測定が容易となり、それ故に生理機能との関連や血行動態の研究にさらに適していると考えられている。加速度脈波形は心臓の収縮期の波形であり、a波、b波、c波、d波、およびe波の5つの成分波が観察される(図1)。図1の縦軸は波高(振幅(mV))を表し、疲労またはストレスを負荷することにより変化すると考えられている(横軸は時間(秒))。この加速度脈波の成分のうち、特にa波の波高の変化が疲労度評価に利用できると考え、精神作業負荷の前後における加速度脈波を測定して、a波の波高の変化を評価した。
【0070】
(4)結果
ATMTの平均反応時間の検討では、比較製剤1を用いると、開始直後に3.03秒であったものが、作業終了間際には3.38秒に延長していた(約1.11倍)。一方、本発明の組成物を用いると、開始直後に3.13秒であったものが、作業終了間際でも3.13秒であり、全く延長しなかった(データは示さず)。このデータに基づいて平均反応時間の遅延をグラフに示した(図2)。比較製剤1における遅延時間が0.348秒であるのに対して、本発明の組成物における遅延時間は0.001秒であり、本発明の組成物と比較製剤1との間で有意な差が認められた(P<0.05)(図2)。
【0071】
加速度脈波のうちa波の波高を測定したところ、本発明の組成物と比較製剤1との間に有意な差が認められた。a波の波高が比較製剤1では、ATMT開始前の361.3からATMT終了後の129.9へ大きく減少したが(0.36倍)、本発明の組成物では、ATMT開始前の296.8からATMT終了後の210.8まで0.77倍しか減少しなかった(P<0.05)。この結果より、トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールは、精神作業負荷に伴う疲労による作業効率の低下を抑える効果を有することが明らかになった(図3)。
【0072】
(実施例3:慢性疲労症候群の各症状に対する緩和効果)
(1)対象患者
慢性疲労症候群と診断された患者(CFS患者)8名に対して実施例1にて調製した本発明の組成物を適用して、各症状の変化について検討した。
【0073】
使用条件は、1回10分程度、1日あたり3〜7回、12週間にわたって本発明の組成物の香りを吸引させて、臨床症状の変化、VAS(visual analogue scale)、NK活性、および血液中のDHEAS(dehydroepiandrosterone sulfate)を指標にして、慢性疲労症候群の症状を評価した。なお、本試験は、長期間のビタミン剤投与または漢方薬投与などの治療を行っているにもかかわらず慢性疲労症候群の症状が緩和されない患者を対象とし、かつ当該治療を持続させた状況下で行った。
【0074】
(2)評価項目
(2−1)慢性疲労症候群の専門医による診察に基づいて、臨床症状を評価した。
【0075】
(2−2)VASとは、線分の両端に基準となる表現を記した紙を被験者に見せて、当該被験者の測定したい内容がその線分のどのあたりに相当するかをチェックして評価する方法である。VASは、全体の長さに対する左端(または右端)からの長さの比を算出することによって、質問項目に対する定量的な結果を得ることができ、その結果、多くの被験者からの結果を平均するなどの処理を行なうことができるという利点を持つ方法である。本実施例において使用したVAS試験用紙を図4に示す。
【0076】
(2−3)NK活性とは、NK(ナチュラルキラー)細胞が、癌細胞などを攻撃する作用の強度を示す。NK活性は、一般的には免疫力の指標、または慢性疲労症候群の指標としても広く採用されている。また、CFS患者ではNK活性が低下するということが知られている(医学のあゆみ、Vol.204、No.5、381−386を参照のこと)。
【0077】
NK活性の測定方法では、被験者の末梢血単核球および51Crで標識した癌細胞を用いる。51Crは、標識されたがん細胞の生存中は細胞から遊離しないが、癌細胞が死ぬと細胞から遊離するという性質を有する物質である。この標識された癌細胞と末梢血単核球とを混合し、一定時間後の遊離標識物質量(A値:NK細胞によって殺された癌細胞の数に相当する)を測定する。A値を、すべての癌細胞が破壊されたときに細胞から遊離される標識物質の量(B値:癌細胞の総数に相当)で除することによって、NK活性(A/B×100(%))が求められる。NK活性の値が大きいほど、多くの癌細胞が死滅したことを示す。
【0078】
以下、標準51Cr遊離測定方法を用いたNK細胞活性の検査手順を具体的に示す。
【0079】
(2−3−1)エフェクター細胞の調製
ヘパリン添加末梢血を比重遠心分離法(Conray−Ficll:d−1.077)を用いてエフェクター細胞を分離し、PBSを用いて細胞を洗浄し(2回)、次いで、10%FBSを補充したRPMI1640培養液をこの細胞に添加して、細胞数を1×10個/mlに調整した。
【0080】
(2−3−2)標的細胞の調製
浮遊継代培養細胞(K−562細胞)を遠心分離して収集し、この細胞に50〜100μCiの51Cr−クロム酸ナトリウムを添加し、次いで、この細胞を37℃で1時間培養し、PBSを用いて洗浄し(2回)、10%FBSを補充したRPMI1640培養液を添加して、細胞数を1×10個/mlに調整した。
【0081】
(2−3−3)培養
マイクロタイタープレートの各ウェルに標的細胞を分注し、全てのウェルにおける遊離値(上記B値)を得るために1N塩酸を、天然の遊離値(対照)を得るために10%FBSを補充したRPMI1640培養液を、そして実験遊離値を得るためにエフェクター細胞(E/T=20)をそれぞれ分注した。次いで、プレート遠心器にて800rpmで5分間遠心し、5%CO培養器中で3.5時間培養した。
【0082】
(2−3−4)NK活性の測定
培養したプレートより、各ウェルから培養上清を採取し、γ−シンチレーションカウンターを用いて遊離した51Cr値を測定し、次の式を用いてNK活性を算出した。
【0083】

(2−4)DHEAS(dehydroepiandrosterone sulfate)は神経ホルモンであり、疲労状態で低下することが知られている(特開平8−293413(平成10年5月6日公開)を参照のこと)。
【0084】
(3)結果
(3−1)臨床症状について
本発明の組成物の適用開始2週間目ごろに、全身倦怠感の軽減とともに、不安感や緊張感の緩和、筋肉痛、関節痛の軽減などが認められ、本発明の組成物の適用開始12週目には、8症例全てにおいて臨床症状の改善が認められた。
【0085】
(3−2)VASについて
本発明の組成物の適用開始前のスコアは7.3±1.4であったが、本発明の組成物の適用開始後12週間目において6.6±2.1となり、慢性疲労の症状の緩和が認められた(図5)。
【0086】
(3−3)NK活性について
本発明の組成物の適用開始前と比較して、本発明の組成物の適用開始12週間後では、どの細胞比の条件下においても明らかにNK活性の増加が認められた(図6)。これは、トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールが慢性疲労症候群の症状を緩和する機能があることを示している。
【0087】
(3−4)DHEASについて
本発明の組成物の適用開始前に比べ、本発明の組成物の適用開始12週間後では、血中DHEAS濃度が増加した(図7)。これは、トランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールが慢性疲労症候群の症状を緩和する機能があることを示している。
【0088】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
【0089】
本発明の抗疲労組成物を用いれば、日常生活の質を向上することができ、さらに医療費高騰問題などを背景に注目されている予防医学に貢献することができる。また、多忙な現代人を襲う過労または過労死を予防するだけでなく、慢性疲労症候群の処置を実現するので、疲労を原因とする問題解決に大いに貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノールを含有することを特徴とする疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項2】
慢性疲労症候群の症状を緩和することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項3】
過労または過労死を予防することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項4】
芳香性であり、その芳香が抗疲労効果をもたらすことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項5】
芳香剤、液体洗浄剤、固体洗浄剤、化粧料、浴用組成物、保健衛生材料類、または口腔用組成物であることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項6】
経口摂取できることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項7】
食品であることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項8】
点眼または点鼻が可能な形態であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項9】
吸入可能な形態であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の疲労を回復又は軽減するための組成物。
【請求項10】
請求の範囲第1項に記載の組成物を備えることを特徴とする医用デバイス。
【請求項11】
医療用マスクであることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の医用デバイス。
【請求項12】
上記医療用マスクが花粉症を患う患者に適用されることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の医用デバイス。
【請求項13】
上記組成物が0.5重量%以下のトランス−2−ヘキセナールおよびシス−3−ヘキセノールを含有することを特徴とする請求の範囲第10項に記載の医用デバイス。
【請求項14】
気道疾患の処置に用いられる吸入用エアロゾルのためのデバイスであることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の医用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/000286
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511060(P2005−511060)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009020
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(303030922)株式会社総合医科学研究所 (12)
【出願人】(596037367)
【出願人】(500210855)
【Fターム(参考)】