説明

疲労検知ケーブル、電子機器及びケーブル疲労検知システム

【課題】
ケーブル線にかかった負荷の情報を記録する情報記録媒体を設け、ケーブルの屈曲や引き伸ばしにより蓄積されたケーブル線の疲労の検知を行う疲労検知機構を含む疲労検知ケーブル、電子機器及びケーブル疲労検知システムを提供する。
【解決手段】
電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部で検出された負荷情報を蓄積して記憶する負荷蓄積情報記憶部と、
前記負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労を判定する負荷強度判定部と、
前記負荷強度判定部の判定結果により前記ケーブルの疲労の状態を警告する警告部を有することを特徴とする疲労検知機構を含む疲労検知ケーブルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝達や電力供給を行うケーブルの疲労検知機構を含む疲労検知ケーブル、疲労検知ケーブルを備えた電子機器及びケーブル疲労検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器との通信や電力供給に使用されるケーブルは、ケーブル線に屈曲運動や引っ張り運動が加わることにより、ケーブル線内の信号線、電力線が断線することがあった。
【0003】
そのため、断線を起こしにくい構造や、特許文献1のようにケーブル線の内側もしくは外側に圧力センサを設置し、閾値以上の負荷がかかった場合に、警告を行う電源供給装置が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−171778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、圧力センサは、所定の閾値より大きな負荷に対して警告を行うものであり、閾値以下の負荷が蓄積されることによってケーブルの疲労が起こるような場合に対応することが難しい。そこで、本発明は上述した事情に鑑み、ケーブルの屈曲や引き伸ばしにより蓄積されたケーブル線の疲労の検知を行う。疲労検知ケーブル、電子機器、ケーブル疲労検知システムを提供し、ケーブルに蓄積された負荷からケーブルの疲労を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、前記負荷強度判定部の判定結果により前記ケーブルの疲労の状態を警告する警告部を有することを特徴とする疲労検知機構を含む疲労検知ケーブルを用いることで解決する。
【0007】
また、上記の課題を解決するための電子機器として、電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、前記負荷強度判定部の判定結果により前記ケーブルの疲労の状態を警告する警告部を有することを特徴とするケーブル疲労検知機構を含む電子機器を用いることで解決する。
【0008】
また、上記の課題を解決するためのケーブル疲労検知システムとして、電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、を含むことを特徴とするケーブル疲労検知システムを用いることで解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、負荷蓄積情報に基づいて判定を行うため、ケーブル線の疲労を検知し断線等の予測を行うことができる。
【0010】
また、請求項3の発明によれば、ケーブルの屈曲性への影響を抑えて、ケーブルの疲労を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル19の各部の配置図。
【図2】本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル19の疲労検知に関するブロック図。
【図3】本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル19の疲労検知フローチャート。
【図4】実施例1に係る疲労検知ケーブル20と電子機器100の概略図。
【図5】実施例1に係る疲労検知ケーブル20と接続されている電子機器100の疲労検知に関するブロック図。
【図6】実施例1に係る疲労検知ケーブル20と接続されている電子機器100のディスプレイ101の表示画面。
【図7】実施例2に係る疲労検知ケーブル21と接続される電子機器200の疲労検知に関するブロック図。
【図8】実施例2に係る疲労検知ケーブル21と接続される電子機器200の疲労検知フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル、電子機器及びケーブル疲労検知システムについて図面を用いて説明する。本発明の実施の形態と、実施例について、同様な機能を行うものは、各図を通して、同じ番号を用いる。
【0013】
図1は本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル19の各部の配置図を示す。図2は本発明の実施の形態に係る疲労検知ケーブル19の疲労検知に関するブロック図、図3は本発明を適用できる疲労検知ケーブルを利用した疲労検知処理を示すフローチャートである。
【0014】
図1において、ケーブル線1は、疲労検知ケーブル19に接続される機器が通信等を行うためのもので、電源線、信号線等の線材、シールド材、被覆材等からなっている。ブッシング2は、ケーブル線1とコネクタのハウジング部3とを固定する。ブッシング2はケーブル線1の引っ張りなどの負荷に対して抜けにくくしたり、ケーブル線1の屈曲などの負荷に対して、ケーブル線1の断線を起こしにくくしたりするものである。コネクタのコンタクト部4は、疲労検知ケーブル19とそれに接続される機器との機械的、電気的接点部である。
【0015】
本発明の実施形態におけるケーブル疲労検知機構を含む疲労検知ケーブルを説明する。コネクタ内蔵不揮発性メモリ5は、コネクタの内部の情報記憶部として機能する。ケーブルの負荷耐性情報の基準となるケーブル線1の種別、ケーブル線1の耐屈曲性などを記憶している。また、負荷耐性情報を基準に負荷情報と負荷蓄積情報を判定するための比較用の情報である負荷強度判定情報も保存している。コネクタ内蔵不揮発性メモリ5は、過去の使用状態において疲労検知ケーブル19の圧力センサ9に加わった負荷情報の出力を受け、保存しておくための書き換え可能な不揮発性のメモリである。一回もしくは複数回の負荷情報を負荷蓄積情報として保存することができる。本発明の実施の形態では、同一の情報記憶媒体に記憶されているものとして、図示しているが、各種情報ごとに複数の情報記憶媒体を設置してもよい。小型軽量性からフラッシュメモリを用いることが好ましい。負荷耐性情報の記憶媒体のみをROMを使用するといったことも可能である。また、常時通電している環境においては、揮発性のRAMも用いることができる。コネクタ内蔵不揮発性メモリ5への負荷情報の書き込みは、専用の回路やプロセッサにより動作するプログラムなどを用いることができる。本発明の実施形態において、負荷を蓄積する情報記憶媒体と圧力を検知する手段を一体として備えているが、圧力を検知し外部機器に送信して情報記憶媒体に記憶する機能を有する場合、それぞれ別体として設け、システムとして構築することもできる。
【0016】
電源線及び信号線6は、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5、コンタクト部4やコネクタ内外との電気伝送や電力の制御を行う電力制御部18とを電気的に接続するためのものである。またブッシング2、圧力センサ9、蓄電部16、発電部17、負荷強度判定部11や警告部12も電源線及び信号線によって電力制御部18と接続されている。圧力センサ9は、負荷検出部として機能し、ケーブル線1に引っ張りや屈曲などの負荷が加わった場合に、その負荷強度を検出するためのものである。負荷検出部は負荷情報を検出し判定機能を持つ部位に負荷情報を出力する。本発明の実施の形態において、圧力センサ9は、ケーブルの柔軟性や屈曲性に影響を与えないように、ハウジング部3とブッシング2の間に配置されている。また、ハウジング部3によって、圧力センサ9が保護されていることで、長期の使用に耐えることができる。
【0017】
電力を供給するケーブル、通信信号の伝送を行う同軸ケーブルやLANケーブル、電力や通信信号の双方を伝送するUSBケーブルにも使用することができる。また、多くの回数曲げ耐性評価を行うフレキシブルケーブル等に対しても本発明の思想を適用することができる。
【0018】
図2において疲労予測ケーブル19のコネクタ内部で本発明の実施に関連する部分をブロック図としている。疲労検知ケーブル19に電力や信号を伝送することが可能な電子機器や電源が接続された場合は、疲労予測ケーブル19は、各々の通信形態に対応した、インターフェースとプロトコルによって情報の入出力を行う。また、電力制御部18を通して、蓄電部16に電力を蓄えることができる。
【0019】
疲労検知ケーブル19は負荷情報を記憶させる電力を発生させる起電力発生部をコネクタ内部に備える。起電力発生部には、発電部17、蓄電部16が該当する。発電部17は、太陽電池等の発電機能を有するデバイス及び発電機能を有するデバイスで生成された電力を蓄電部16へ供給する電圧へ変換するための電源回路から成り立っている。蓄電部16は、2次電池、スーパーキャパシタ等の電力を蓄電する機能を有するデバイスから成り立ち、電力制御部18は、電力を制御する制御部及び書き込み等を行うマイコンから成り立っている。電力制御部18は、発電部17より蓄電部16に供給される電力の制御、蓄電部16及び発電部17からコネクタ内部のデバイスへ電力供給する制御等を行っている。
【0020】
疲労検知ケーブル19が電力供給源に接続されているときは、電力供給源から電力制御部18に電力供給を受け、疲労検知ケーブル19の各機能は動作する。それと同時に蓄電部16に電力制御部18を通して電力を蓄える。または、光エネルギーを利用できる環境下では、発電部17で生成された電力は電力制御部18を通して蓄電部16に蓄えられる。必要な電圧、電流が確保できれば、蓄電部16または発電部17の電力により疲労検知ケーブル19が電力供給源から電力供給を受けていない状態でも圧力センサ9が負荷を検出し、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5に負荷蓄積情報を保存する。
【0021】
その他の発電部17の発電手段として、通電により生じる熱により、熱電発電を行う場合や、圧電発電が利用可能である。圧電発電を利用する場合、圧力センサ9と圧電発電素子を重ねた位置に設置されていると良い。圧電発電素子を使用した場合、圧力により発電を行うので、圧力を検知することと発電が同時に行えるため、情報記憶媒体への記憶を行うための起電力を発生させ、利便性が良く省スペース化することができる。
【0022】
負荷強度判定部11は、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5から取り出した負荷蓄積情報と圧力センサ9により検出された負荷情報に対して判定を行う。本実施の形態において、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5は、負荷耐性情報記憶部、負荷蓄積情報記憶部と強度判定情報記憶部としての機能を備える。
【0023】
負荷強度判定部11は、警告種別を判断し、警告部12に警告種別を送るためのものである。警告部12は、負荷強度判定部11により送られた警告種別により、使用者に警告を促すためのもので、液晶などの画面、LEDなどの表示、スピーカーによる音、振動パッドによる振動などにより警告を出すものである。警告の出し方は上記に限定されるものではなく、各種変更可能である。本実施の形態ではスピーカーが警告部12の役割を担っている。
【0024】
強度判定情報記録部に記憶された負荷強度判定情報は比較用負荷強度情報と比較用負荷蓄積情報からなる。比較用負荷強度情報は、ケーブル線1の種類や構成ごとに比較用負荷強度情報を持っている。疲労検知ケーブル19の圧力センサ9に負荷が加わった際は、負荷強度判定部11において加わった負荷情報と比較用負荷強度情報を比較する。負荷強度判定部11は、加わった負荷情報が設定値を超えていないか判断し設定された比較用負荷強度情報より大きい場合に断線の危険を警告部12に出力し、使用者に警告を行う。また、負荷情報を分類して記憶し負荷蓄積情報とすることもできる。そのために同様な構成のケーブルに対しても複数の設定値の異なる比較用負荷強度情報を記憶し警告の種別を変更することができる。負荷強度判定部11は複数の比較用負荷蓄積情報から、ケーブルの種類や構成、状態ごとに異なる閾値を使用し、負荷蓄積情報と比較用負荷蓄積情報の比較を行い、比較用負荷蓄積情報により設定された閾値を超えていないか判断する。
【0025】
なお、警告を行う強度情報の設定値を定める比較用負荷強度情報は、圧力センサ9によって検出された負荷の強度情報がケーブル線1に断線の危険性がある疲労を与えると判断される場合の負荷情報のことである。比較用負荷蓄積情報とは、負荷蓄積情報によりケーブル線1に断線の危険性がある疲労が蓄積されているという情報であり、所定の閾値が設定されている。長時間負荷情報がかかっている場合は、負荷情報に対して時間を区切って複数回検出する。また、検出された時期、負荷強度の各々異なる負荷情報を複数回記録した負荷の強度情報が記録できる。
【0026】
ケーブル線1は、経年劣化や疲労状況によって強度が変わるといったことが考えられる。そのため、負荷強度判定情報は、負荷蓄積情報や使用期間、ケーブルの材質、予想される使用条件などの情報によって参照される値が変数として閾値をメモリに記憶することもできる。また複数の状況を一括で負荷強度判定部11に送信し、負荷強度判定部11が使用するケーブルの状況から強度判定情報を選択しても良い。
【0027】
負荷強度判定情報について、複数の値に対応しケーブルの状態により変更できることで、疲労の検知をより精度良く行える。
【0028】
また、本発明の実施形態においてケーブル線1は、コネクタ周辺で屈曲、引き伸ばしの負荷を受けやすいためコネクタをケーブル線1の末端に配置した状態を例示した。本発明の思想は、特定部分が断線を起こしやすい構造である場合は、ケーブル線1のいずれの場所に取り付けを行う場合にも適用し得る。ケーブル線1を外側から着脱自在に取り付けるような構造であっても、ケーブル線の間を接続する部材であっても構わない。外側から着脱自在に取り付ける場合は、起電力発生部を備え、圧力センサ9によりコネクタ内蔵メモリ5に負荷蓄積情報を記録することで疲労の状態を検知することが好ましい。
【0029】
また、所定の圧力より大きな圧力がかからないと作動しないマイクロスイッチと圧電発電素子を用いることでコネクタ内蔵メモリ5に負荷の回数を記録する構造としてもよい。この場合、コネクタ内蔵メモリ5に記憶するための起電力も得ることができるため、着脱自在でケーブル線1のいずれの場所にも取り付け可能な疲労検知機構を含む疲労検知ケーブルを実現することができる。また、ケーブル線1の全長に渡って圧力センサ9を備えずにケーブル線1の疲労を検知することができるため、ケーブル線1の屈曲性に影響を与えるおそれが少ない。
【0030】
次に本発明の実施形態について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
S11において、疲労検知ケーブルの起電力発生部、または、外部電力供給により疲労検知ケーブル19に通電される。
【0032】
S12において、疲労検知ケーブル19が通電されると、疲労検知ケーブル19内部のコネクタ内蔵不揮発性メモリ5から、疲労検知ケーブル19の材質や構造などの負荷耐性情報から算出されるケーブルの比較用負荷強度情報とこれまでに疲労検知ケーブル19に加えられた負荷蓄積情報が負荷強度判定部11に送信される。
【0033】
S13において、コネクタ内蔵メモリ5から送られた情報をもとに、負荷強度判定部11において、現在のケーブルの状態に対応した比較用負荷強度情報を特定し、負荷強度判定部11に送信される。疲労検知ケーブル19に加えられた負荷の蓄積情報を確認する。このとき既に負荷蓄積情報が比較用負荷蓄積情報により定められた閾値を超えている場合は、S17へ進み。新品のケーブルで負荷が加わっていない場合や負荷蓄積情報が閾値内である場合は、S14へ進む。
【0034】
S14において、圧力センサ9によりケーブルに負荷が検出されるとS15へ進み、負荷を検出するための電力が供給されている状態で負荷がかかっていない場合はS19とS14を繰り返す。圧力センサ9に負荷が加わった場合、S15へ進む。
【0035】
S15において、負荷強度判定部11により処理内容が決定される。圧力センサ9に加わった負荷情報と比較用負荷強度情報とを比較する。加わった負荷情報が設定された比較用負荷強度情報より大きい場合は、S17へ進み。比較用負荷強度情報の設定値を超えていない場合はS16へ進む。
【0036】
S16において、S14で疲労検知ケーブル14の圧力センサ9に加わった負荷情報と以前にケーブルに加えられた負荷蓄積情報とを基にS14で加わった負荷情報も足し合わせた負荷蓄積情報と、比較用負荷蓄積情報とを比較する。新たな負荷蓄積情報が閾値を超えてしまった場合は、S17へ進む。新たな負荷蓄積情報も閾値を超えなかった場合はS18へ進む。
【0037】
S17において、負荷強度判定部11は疲労検知ケーブル19の疲労の状態を判定し、負荷が大きいとの判定結果により警告部12に警告を出すように指示する。指示を受けた警告部12では、スピーカーのブザー音により使用者に対してケーブルに大きな負荷がかかったことを知らせ、S18へ進む。音量を大きくすることやブザー音の継続時間を長くすることにより、負荷蓄積情報の危険度を知らせる。
【0038】
S18において、S14で圧力センサ9により検出された負荷情報を加えて、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5にそれまで記憶されていた負荷蓄積情報を更新して記憶し、S19へ進む。
【0039】
S19において、負荷を記憶するための負荷を記憶するための電力が少なくなった場合は、記録動作を終了し。電力が負荷を記録することが可能であれば、S14へ進む。
【0040】
S15とS16により、一度の負荷の検出では、疲労検知ケーブル19が危険な状態に至らない場合であっても、ケーブルにかかった負荷の蓄積により、判定を行うため、疲労検知ケーブル19がケーブル線の疲労が蓄積され断線に至るような危険な状態を見逃す可能性を減少させることができる。
【実施例1】
【0041】
実施例1は圧力センサ9を備えたコネクタを有するケーブルを電子機器100の電源ケーブルに利用する場合に関する。疲労検知ケーブル20を電子機器100の内部から外部電源に接続する電子機器100側のコネクタに使用した例を図4へ、電子機器100の制御ブロック図を図5へ示す。本実施例では、負荷強度判定情報が負荷蓄積情報により変化する。
【0042】
図4の電子機器100は、電子機器内部情報やケーブルの情報等の各種情報を表示するディスプレイ101を有し、疲労検知ケーブル20を利用して、壁面の電源110に接続されている。電力線や信号線等は省略している。電源110側のコネクタについても負荷を検出するように構成してもよい。電源110から電子機器100に電力が供給されている場合、ディスプレイ101には、各種情報が表示されている。電子機器100は電力供給を受け不図示の制御部によって各種制御がなされる。本実施例において、圧力センサ9の配置は、コネクタのハウジングとブッシングの間が好ましいが、電子機器100のケースとブッシングの間であっても良い。
【0043】
図5は電子機器100の制御ブロック図であり、疲労検知ケーブル20の内部に圧力センサ9が備えられている。電子機器100はプロセッサよりなる制御部の一機能として、負荷強度を判定する負荷強度判定部11を有する。機器内蔵不揮発性メモリ10には、ケーブルの負荷耐性情報や負荷蓄積情報が保存される。本実施例において、電子機器100は疲労検知ケーブル20を、電子機器100の内部に搭載しているため、実施の形態において、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5に保存されていた情報も、機器内蔵不揮発性メモリ10に保存されている。機器内蔵不揮発性メモリ11もコネクタ内蔵不揮発性メモリ5と同様にフラッシュメモリが好ましい。警告部12は、負荷強度判定部11が警告を指示すると表示部であるディスプレイ101を利用し、表示を行う。
【0044】
本実施例では、負荷の大きさについて比較用負荷強度情報の設定値を複数有し、3段階のレベルを設けている。レベル1からレベル3まで負荷の強度が各レベルの設定値より大きい場合に次の大きさのレベルと判定され分類されるようになっている。レベル1には、1、レベル2には、2、レベル3には、3、と各々重み付けが行われている。総計が200になると次の領域に記憶されるようになる。各領域では、領域が大きくなるほど、各レベルに対応した比較用負荷強度情報が低くなるように設定されている。そのため、ほぼ同一の使用条件下であった場合、この領域1に比べると領域4では、レベル1と判定される負荷情報の回数が減少し、レベル2と判定される負荷情報が増えている。総計の設定値や負荷のレベルに対する重み付けは適宜変更可能である。
【0045】
負荷蓄積情報が、領域4に進んだ時の表示は図6のような表示が行われる。「ケーブルに負荷が蓄積されています。ケーブルの状態を確認してください。」となり、負荷蓄積情報が領域5へ進んだ時の警告は、「ケーブルに断線の危険があります交換を行ってください。」と表示される。また、各々のレベルの負荷情報が積みあがって表示されることでも警告を行っているとみなせる。また、各レベルの負荷が検出された時にメッセージが表示されるようにしても良い。
【0046】
ディスプレイ101が、カラー表示が可能であれば、領域名などに対して色を変更して表示することで注意を喚起するように警告を行っても良い。
【0047】
また、本実施例も実施の形態のように、起電力発生部を備えれば、外部から電力供給をうけていない状態でも負荷蓄積情報を記録し続けることができる。これにより、負荷の蓄積をより精度良く検出することができる。電子機器100の場合、一次電池により起電力を得るといった構成が考えやすい。
【0048】
実施例1も警告を出す条件は実施の形態のフローチャートと同様に、負荷情報が比較用負荷強度情報の設定値を超える場合や、負荷蓄積情報が、比較用負荷蓄積情報の閾値を超えた場合に警告を出す。また、疲労検知ケーブル20の疲労検知機構は電子機器100の内部に存在しているため実施の形態での処理でコネクタ内蔵メモリ5に保存されていた情報や保存する情報は、機器内蔵メモリ10に保存される。
【実施例2】
【0049】
図7は実施例2の疲労検知ケーブル、電子機器及び疲労検知システムの構成を示す実施の形態に係るブロック図、図8は本発明を適用できる疲労検知ケーブルを利用した疲労検知処理を示すフローチャートである。疲労検知ケーブル21と電子機器200が各々役割分担を行っているので、コネクタ内蔵メモリ5と機器内蔵メモリ10に保存される情報が分担されている。
【0050】
コネクタ内蔵不揮発性メモリ5は、ケーブルの負荷耐性情報と負荷蓄積情報を保存している。疲労検知ケーブル21が接続された際に、電子機器200にケーブルの負荷耐性情報及び負荷蓄積情報が、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5から取り出される。疲労検知ケーブル21と接続される電子機器200は、一般的なパーソナルコンピュータであっても、専用の疲労検知機器や家電製品であってもよい。疲労検知ケーブル21の圧力センサ9の位置は、図1と同様にケーブルのハウジングとブッシングの間にあることによって、ケーブル線の屈曲性への影響を低減できる。
【0051】
電子機器200における本発明に関連する構成として、機器内蔵不揮発性メモリ10、負荷強度判定部11、警告部12を備える。様々な情報を記憶する情報記憶媒体である機器内蔵不揮発性メモリ10は、接続されるケーブルの種類ごとに負荷強度を判定するための負荷強度判定情報を保存している。負荷強度判定部11は、圧力センサ9により検出された負荷情報に対して、機器内蔵不揮発性メモリ10から取り出した負荷強度判定情報と、コネクタ内蔵不揮発性メモリ5から取り出したケーブルの負荷耐性情報及び負荷蓄積情報に基づいた判定を行う。
【0052】
次に本発明を適用できる疲労検知ケーブル、電子機器及び疲労検知システムの実施例2について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
S101において、電子機器200に疲労検知ケーブル21を接続する。
【0054】
S102において、疲労検知ケーブル21を接続すると、疲労検知ケーブル21内部のコネクタ内蔵不揮発性メモリ5から、疲労検知ケーブル21の材質や構造などからなるケーブルの負荷耐性情報とこれまでに疲労検知ケーブル21に加えられた負荷蓄積情報が電子機器200に送られる。
【0055】
S103において、疲労検知ケーブル21から送られた情報をもとに、電子機器200において、接続されたケーブルに対応した負荷強度判定情報を特定し、負荷強度判定部11に送信される。疲労検知ケーブル21に加えられた負荷の蓄積情報を確認する。このとき既に負荷蓄積情報が比較用負荷蓄積情報により定められた閾値を超えている場合は、S107へ進み。負荷蓄積情報が閾値内である場合S104へ進む。
【0056】
S104において、圧力センサ9によりケーブルに負荷が検出されるとS105へ進み、負荷がかからず、作業を継続している場合はS108とS104を繰り返す。圧力センサ9に負荷が加わった場合、S105へ進む。
【0057】
S105において、負荷強度判定部11により処理内容が決定される。圧力センサ9に加わった負荷情報と比較用負荷強度情報とを比較する。加わった負荷情報が比較用負荷強度情報より大きい場合は、S107へ進み。比較用負荷強度情報の設定値を超えていない場合はS106へ進む。
【0058】
S106において、S104で圧力センサ9に加わった負荷情報とコネクタ内蔵メモリ5に記憶されているケーブルに加えられた負荷蓄積情報とを基にS104で加わった負荷情報も足し合わせた負荷蓄積情報と、比較用負荷蓄積情報とを比較する。新たな負荷蓄積情報が閾値を超えてしまった場合は、S107へ進み。新たな負荷蓄積情報も閾値を超えなかった場合はS108へ進む。
【0059】
S107において、負荷強度判定部11から警告部12に警告を出すように命令される。命令を受けた警告部12では、不図示の液晶等の表示部による表示で「ケーブルに大きな負荷がかかりました」と表示する。
【0060】
S108において、作業を続行する場合は、S104へ進み。作業を終了する場合はS109へ進む。
【0061】
S109において、作業が終了すると作業終了までに疲労検知ケーブル21に加えられた屈曲や引っ張りなどの負荷蓄積情報が疲労検知ケーブル21のコネクタ内蔵不揮発性メモリ5に送信され保存される。保存後、電子機器200から疲労検知ケーブル21を取り外し終了する。
【0062】
電子機器200が通信機能を備えている場合などは、公知の通信技術を用いて、負荷情報を通信回線で接続された外部の電子機器へ送信し、外部の電子機器が判定を行ってもよい。また、判定を接続された電子機器で行い、疲労の情報を出力する出力部を備え判定結果のみを外部機器に送信することも可能である。そのため、本発明はそれぞれの機器の接続関係がどのような場合であってもケーブル線に圧力センサ9が配置され、負荷情報を蓄積し記憶する記憶媒体と負荷蓄積情報の判定を行う負荷強度判定部を備えたシステムに応用することができる。
【0063】
疲労検知ケーブル21とコネクタ内蔵メモリ5が不可分である場合、負荷判定部を備えた電子機器が変更されても、同様な判定を行うことができる。また、実施の形態のように、起電力発生部を備えることで、電力を得られない状況を回避しやすくし、正確な疲労検知を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ケーブル線
2 ブッシング
3 コネクタのハウジング部
5 コネクタ内蔵不揮発性メモリ
9 圧力センサ
10 機器内蔵不揮発性メモリ
11 負荷強度判定部
12 警告部
19 疲労検知ケーブル
100 電子機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、
前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、
前記負荷強度判定部の判定結果により前記ケーブルの疲労の状態を警告する警告部を有することを特徴とする疲労検知機構を含む疲労検知ケーブル。
【請求項2】
前記負荷蓄積情報記憶部は、前記負荷検出部の検出した複数回の負荷情報を記憶していることを特徴とした請求項1記載の疲労検知機構を含む疲労検知ケーブル。
【請求項3】
前記負荷検出部は、前記ケーブルのコネクタとブッシングの間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の疲労検知機構を含む疲労検知ケーブル。
【請求項4】
さらに、前記負荷情報を前記負荷蓄積情報記憶部に記憶させる電力の起電力発生部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載の疲労検知ケーブル。
【請求項5】
電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、
前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、
前記負荷強度判定部の判定結果により前記ケーブルの疲労の状態を警告する警告部を有することを特徴とするケーブル疲労検知機構を含む電子機器。
【請求項6】
さらに、前記負荷情報を前記負荷蓄積情報記憶部に記憶する電力の起電力発生部を備えることを特徴とする請求項5記載のケーブル疲労検知機構を含む電子機器。
【請求項7】
前記負荷検出部は、前記ケーブルのコネクタとブッシングの間に配置されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のケーブル疲労検知機構を含む電子機器。
【請求項8】
前記負荷強度判定部の判定結果により警告を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項5から請求項7いずれか一項記載のケーブル疲労検知機構を含む電子機器。
【請求項9】
電力や信号を伝送するケーブルの受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部で検出された負荷情報を記憶する負荷蓄積情報記憶部と、
前記負荷蓄積情報記憶部に記憶された負荷蓄積情報から前記ケーブルの疲労の状態を判定する負荷強度判定部と、
を含むことを特徴とするケーブル疲労検知システム。
【請求項10】
前記負荷検出部は、前記ケーブルのコネクタとブッシングの間に配置されていることを特徴とする請求項9記載の疲労検知機構を含むケーブル疲労検知システム。
【請求項11】
前記負荷強度判定部は負荷情報を判定するための比較用負荷強度情報に基づいて判定を行い、
前記負荷強度判定部は、複数の前記比較用負荷強度情報により
前記負荷情報を分類して前記負荷蓄積情報記憶部に記憶することを特徴とした請求項9または請求項10記載のケーブル疲労検知システム。
【請求項12】
さらに、前記比較用負荷強度情報は、前記負荷蓄積情報に対応して変化することを特徴とした請求項11に記載のケーブル疲労検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−37249(P2012−37249A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174889(P2010−174889)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】