説明

疾患特異的細胞傷害性Tリンパ球の集団を産生および利用する手段

本発明は、ウイルス特異的CTLの集団の産生に関する。この集団は、抗ウイルス特異的遺伝子発現構築物を含有する。この集団をCD4+Tリンパ球の集団またはCD34+造血前駆細胞の集団と組み合わせることができるとともに1種以上のこれらの細胞集団を自己ウイルス陽性個体に送達することができる。本発明はまた、治療用細胞産物および疾患とくに感染症の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、細胞および遺伝子療法に関し、とくに、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クラスの造血細胞単独またはCD4+Tリンパ球クラスおよび/もしくは造血前駆(HP)細胞タイプの外来遺伝子含有造血細胞との組合せに適用される細胞および遺伝子療法に関する。本発明は、これらの細胞集団を産生する方法および治療効果を得るべく該細胞を被験者に送達することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、研究は、患者自身の免疫系を使用する療法の開発に向けられてきている。そのような手法の1つは、養子免疫療法である(Heslop et al, 1996; Walter et al, 1995)。養子免疫療法は、患者の細胞を使用して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の産生を増大させることにより癌または感染症を治療することを目標とする。この技法は、ヒト患者に対する可能性のある臨床治療法として有望視されている(Heslop et al, 1996; Walter et al, 1995)。この方法は、CTLへの提示(これはCTLのex vivo「感作(education)」過程にたとえることができる)に適切なエピトープが既知であるかまたは同定することができる場合に最も効果的に機能する。養子免疫療法はまた、好ましくは、少なくとも1種の疾患特異的エピトープを発現することのできる抗原提示細胞(APC)の存在を必要とする。APCを効率的に産生するための広く受け入れられている方法が現在知られており、たとえば、国際公開PCT/US02/05748が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0003】
単一のエピトープに対する抗原特異的CTLを発生させるべく他のAPC系が使用されてきており、たとえば、1)既定のペプチドでパルスされたヒト樹状細胞(DC);2)リンパ芽球に変換されてペプチドでパルスされた末梢血単核細胞(PBMC);3)天然のペプチドが酸切除されて対象のペプチドで負荷されたリンパ球様細胞株(LCL);4)エンプティークラスI分子を発現するように工学的に操作されたDrosophila細胞;ならびにヒトクラスI分子および共刺激性分子でトランスフェクトされたマウス3T3細胞(Latouche and Sadelain, 2000)が挙げられる。
【0004】
国際公開PCT/US02/05748には、黒色腫関連抗原に由来するいくつかのHLA-A2.1拘束性ペプチドに対してペプチド特異性を呈するCTLを産生されうることが実証されている。これらのCTLは、白血球フェレーシスサンプルから単離され、非天然抗原提示細胞(nnAPC)として、in vitroでDrosophila細胞を用いて黒色腫抗原性ペプチドエピトープを提示した。CTLを20または21日間にわたり増加させ、黒色腫抗原性エピトープで負荷された自己単球APCと共にインターロイキン-2(IL-2)およびインターロイキン-7(IL-7)の存在下でインキュベートする。この処理の後、OKT3を用いて非特異的増加を10日間行い、産物を患者に注入する。
【0005】
造血細胞への治療用遺伝子の導入は、ウイルス感染からCTLを保護する魅力的な可能性を秘めている。たとえば、CTLは、HIV感染に対してとくに感受性がある。治療用遺伝子は、HIV遺伝子発現を標的にすべくCD34+多能性造血前駆細胞に導入されてきた。造血前駆細胞は、CD34+抗原を用いてより成熟した造血細胞から容易に分離可能である。この抗原は、細胞上に存在するが成熟造血細胞上には不在である膜結合型115Kd分子である。CD34+細胞は、多系列のコロニー形成細胞を生成可能であり(Baum et al. 1992)、増大する成熟度の一連の中間細胞を介してリンパ系(CD4+およびCD8+Tリンパ球)造血および骨髄系(単球/マクロファージ)造血を比較的迅速に(3〜6ヶ月で)再構成することができる(Levinsky 1989; Schwartzberg et al. 1992)。CD34+細胞およびCD4+細胞と同様に、CD8+リンパ球は、ex vivoにおける遺伝子療法の候補になりうるが;形質導入されたCD8+細胞が生体内でHIV核酸を標的にする能力については知られていない。CD4+およびCD8+Tリンパ球は、それぞれCD4およびCD8レセプターにより他の細胞タイプから分離可能である。細胞傷害性Tリンパ球CTLは、感染症および悪性疾患への細胞応答に関与するCD8+Tリンパ球のサブセットである(Janeway et al, 1999)。CD4+Tリンパ球は、B細胞(抗体産生-Janeway et al, 1999)に対するTリンパ球ヘルパー機能およびCD8+Tリンパ球に対するヘルパー機能に関与する。
【0006】
後期HIV/AIDSにおいてCD8+CTLが減少する理由の一部は、CD4+Tリンパ球の損失により引き起こされるヘルパー機能の欠如である(Levy, 1994)。HIV/AIDS感染症に関係する主要な細胞は、CD4+およびCD8+Tリンパ球ならびに単球/マクロファージである。単離してから元の個体に再注入されたこれらのタイプの細胞は、正常に移植され機能することが明らかにされている(Schindhelm and Nordon, 1999)。
【0007】
リボザイムは、特異的RNA標的分子を切断することのできる小さい触媒RNA部分である。リボザイムは、いくつかの核酸配列を標的にすべく使用されてきている。たとえば、HIV-1に対するリボザイムは、感染して間もない(逆転写前の)細胞内におけるゲノムウイルスRNAの産生および翻訳前またはゲノムRNAパッケージング前におけるプロウイルスから転写されるウイルスRNAの産生をはじめとするHIV-1生活環のいくつかの段階における妨害により、HIV-1複製を妨害することができる(Sarver et al. 1990; Sun et al. 1996; Sun et al. 1998)。理論上、リボザイムは、遺伝子発現を阻害するその能力に関してアンチセンスよりも有効である。なぜなら、リボザイムはその標的に結合するだけでなくその標的を切断する触媒分子であるからである。さらに、リボザイムは複数のRNA基質分子を切断することができる(Sarver et al. 1990; Sun et al. 1996)。
【0008】
リボザイムによる切断に課される要件としては、RNAの接近可能領域があり、ハンマーヘッドリボザイムの場合にはGUX標的モチーフが必要であるかまたは特定の場合にはNUXで十分なこともある(ここで、Nは、任意のリボヌクレオチドであり、そしてXは、A、C、またはUリボヌクレオチドである)。トランスドミナントrevまたは細胞内抗体のようなタンパク質の治療的使用とは対照的に、触媒RNAは、外来遺伝子を含有する細胞の排除を引き起こす免疫応答を惹起することはないであろう。
【0009】
いくつかの研究により、試験管内反応におけるリボザイムの切断活性ならびに組織培養系におけるHIV-1の実験的および臨床的単離物に対する保護作用が実証されている(Sarver et al. 1990; Sun et al. 1998; Wang et al. 1998)。これらの研究では、ハンマーヘッド型またはヘアピン型リボザイムのいずれかが使用された。たとえば、tat遺伝子の高度に保存された領域に対するハンマーヘッド型リボザイムをRz2として図1に提示する。tat遺伝子は、Tatタンパク質をコードしそれを産生するという点でHIV-1複製に不可欠である。Tatタンパク質は、組み込まれたHIV-1プロウイルスの転写アクチベーターである。Rz2に相補的にハイブリダイズする標的配列は、参照株HIV-HXB2(Genbank受託番号K03455)のヌクレオチド5833〜5849(GGAGCCA GUA GAUCCUA)またはHIV IIIB(Genbank受託番号X01762)のヌクレオチド5865〜5882(GGAGCCA GUA GAUCCUA)を含む。複製不能レトロウイルスベクターLNL6(Genbank受託番号M63653)を含有するプラスミドpLNL6内のneoR遺伝子の3'非翻訳領域にRz2リボザイム配列5'-TTA GGA TCC TGA TGA GTC CGT GAG GAC GAA ACT GGC TC-3'をDNAとして挿入することにより、新しいウイルスRRz2が生成された。リボザイム配列は、既に開示されているようにRRz2内のモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)長末端反復(LTR)からneoR-リボザイム融合転写産物として発現された(Sun, L. -Q. et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 7272-7276; Sun, L. -Q. , et al (1995) Nuc. Acids Res. , 23, 2909-2913; and Sun, L-Q. , et al. (1998) Methods in Molecular Medicine, Therapeutic Applications of Ribozymes (ed KJ Scanlon) Humana Press USA, p51-64。
【0010】
リボザイム遺伝子移入産物RRz2は、2つの第I相臨床試験で使用された。各試験で、各関連細胞集団(CD4+またはCD34+HP細胞)の約半分は、RRz2で形質導入され、そして残りの半分は、対照ベクターLNL6で形質導入された後、細胞は混合されて再注入された(たとえば、Amado, R. et al. (1999) Human Gene Therapy, 10:2255-2270を参照されたい)。
【0011】
HIV感染に関して不一致の遺伝的に同等な4組の双生児を含む第1の試験では、RRz2構築物は、CD4+Tリンパ球(HIV陰性双生児に由来する)の集団にex vivoで導入され、これらの細胞(非遺伝子含有Tリンパ球のバックグラウンド中)は、対応するHIV陽性双生児に注入された。注入後、成熟リンパ系細胞内におけるリボザイム構築物の存在および発現は、少なくとも4年間(調べた最後の時間点)認められた。この第I相試験では、この手法が技術的に実行可能でありかつ安全であることが示された。
【0012】
第2の第I相試験では、RRz2構築物は、CD34+前駆細胞にex vivoで導入された。RRz2含有CD34+-HP細胞の注入により、CD4+およびCD8+Tリンパ球を含むRRz2含有末梢血細胞が形成された。このことは、高感度PCR法により調べられる。成熟リンパ系および骨髄系細胞のいずれにおいても、リボザイム構築物の存在および発現は、3.5年間まで(調べた最後の時間点)認められた。形質導入されたCD34+造血前駆細胞の用量を多くするほど、リボザイム含有細胞の存続性は増大する。さらに、対照ベクター含有Tリンパ球よりもRRz2含有Tリンパ球のほうが生存性が高いという証拠が得られたことから、リボザイムによりTリンパ球はHIV-1の感染および複製から少なくとも部分的に保護されることが示唆される。これらの2つの第I相試験により、この手法、すなわち、遺伝子治療剤含有細胞の導入および残存が、技術的に実行可能であることが示された。
【0013】
抗レトロウイルス剤はHIV/AIDSの治療に使用される。この薬剤は、主にHIV生活環の逆転写酵素段階およびプロテアーゼ段階を標的にする。2002年11月現在で、HIV/AIDSの治療に臨床的に使用されている薬剤は15種程度である(Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-Infected Adults and Adolescents, 2002; http://www.hivatis.org)。一般的には、2種のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤と1種の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤または2種のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤と1種のプロテアーゼ阻害剤が、最適な最初の薬剤の組合せである。臨床的必要性を生じるまでそのような薬剤治療を開始してはならないということが一般に受け入れられているが、その理由は、薬剤によりウイルス耐性が誘発されて重篤になる可能性のある副作用を生じることにある。さらに、すべての所要の時間にすべての薬剤を服用すること(すなわち、コンプライアンスを100%にすること)は、患者にとって非常に困難である。現在入手可能な証拠から、薬剤は一生涯にわたり必要になるであろうと思われるので、投与する必要のある薬剤が少ないほど、ウイルス耐性を誘発したりさらなる顕著な副作用を引き起こしたりする可能性が減少すると考えられる。したがって、抗ウイルス剤の必要性または継続期間を減少させることのできる方法が望まれる。
【0014】
また、HIV特異的CTL集団が疾患進行に影響を及ぼす能力は時間と共に減少すると考えられる。なぜなら、CTLは疾患過程により破壊されて、薬剤の使用時、CTLがより少ないHIV複製に応答するようになるからである。部分的には、これは、ウイルス性エピトープの不在下で成熟時に新しいHIV特異的CTLの産生が欠如することに起因する。したがって、CTLの生存性を向上させる療法が必要である。
【0015】
さらに、以上の理由(HIV耐性の誘発、薬剤の副作用、すべての時間で薬剤療法に対する患者のコンプライアンスを100%にすることの困難さ、HIV特異的CTL応答の抑制)のいずれについても、ある期間にわたる抗レトロウイルス剤の退薬(これ以降では「治療中断」と記す、guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-Infected Adults and Adolescents, 2002; http://www.hivatis.org参照)を行うという考え方を支援する一連の証拠が存在する。そのような治療中断は、比較的短い継続期間(数週間)であってもよいし、より長い継続期間(数ヶ月間)であってもよく、治療中断の安全性は、他の安全対策を施しながら、ウイルス負荷およびCD4+Tリンパ球数の評価を行うにより監視される。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
本発明の第1の態様において、ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法が提供される。この方法には、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者から白血球の集団を採取する工程と;
(c)工程(b)の該白血球から得られるCD8+細胞の集団を該nnAPC細胞と共にインキュベートする工程と;
(d)該CD8+細胞を1種以上の支援サイトカインで処理する工程と;
が含まれる。
【0017】
本発明の第2の態様において、ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法が提供される。この方法には、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者からCD8+細胞を採取する工程と;
(c)該CD8+細胞を該nnAPC細胞株と共にインキュベートする工程と;
(d)工程(c)の後でインターロイキン-2(IL-2)およびインターロイキン-7(IL-7)を該CD8+細胞に添加する工程と;
(e)少なくとも1種のウイルス抑制核酸を該CD8+細胞に導入して該ウイルス抑制核酸が発現されるようにする工程と;
(f)前記CD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートする工程と、ここで、該付着細胞は工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの少なくとも1種を提示するものである;
が含まれる。
【0018】
本発明は、一実施形態では、ウイルス性疾患特異的ペプチドエピトープにex vivoで特異的に暴露されて感作された細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の使用に関するものであり、それらのCTLを患者に再注入したときに疾患細胞が根絶されるようにすることを目的とする。さらに、本発明は、他の実施形態では、感作されるCTLの少なくとも何パーセントかを遺伝子改変することによりウイルス性疾患から保護されるかまたはそれに対して耐性をもたせるようにすることに関する。さらに他の形態では、最初に記載の実施形態を単独でまたは上記の2番目に記載の実施形態と組み合わせて使用することが可能である。さらに他の好ましい実施形態では、何パーセントかの遺伝子改変CTLを含んでいてもよいウイルス特異的CTLを単独でまたは一部分が疾患特異的遺伝子で遺伝子改変されている他の造血細胞と組み合わせて使用することができる。
【0019】
ウイルス性疾患特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、感染症の治療に使用することができる。また、疾患防御遺伝子剤による細胞へのさらなる形質導入を行えば、この治療をさらに促進することが可能である。これらの形質導入されたCTLは、単独でまたは他の細胞集団すなわち疾患に対して効能を示す治療用(またはマーカー)遺伝子構築物で形質導入されたCD4+およびCD34+細胞集団と組み合わせて使用することができる。この手法は、HIV-1の療法および保護された血液細胞集団が必要とされる他の細胞/遺伝子療法に有用であろう。本発明はさらに、好ましくは(たとえば抗HIV-1遺伝子治療剤により)ex vivoで形質導入された造血細胞の使用に関する。この造血細胞は、治療効果を得るのに十分な疾患特異的ターゲッティング部分(一実施形態では抗HIV剤含有造血細胞)を含むキメラ造血系を生成するのに十分な数で、単独でまたは他のそのような造血細胞と組み合わせてレシピエント患者に導入される。
【0020】
(抗疾患遺伝子を含むかまたは含まない)抗疾患CTLは、単独でまたはある割合の抗疾患遺伝子含有CD4+Tリンパ球および/もしくはある割合の抗疾患遺伝子含有造血前駆細胞と組み合わせて使用することが可能であり、後者の集団は、ある割合の抗疾患遺伝子含有の骨髄系細胞(単球/マクロファージ)およびリンパ系細胞(CD8+およびCD4+Tリンパ球を含む)を生成し、その結果として該細胞集団は疾患(たとえば、HIV-1の感染および疾患)の進行に影響を及ぼすことができる。
【0021】
他の態様において、本発明は、ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物を提供する。この集団は、第1の態様の方法に従って産生される。
【0022】
他の態様において、本発明は、ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物を提供する。この集団は、第2の態様の方法に従って産生される。
【0023】
本発明のさらに他の態様において、感染症を有する被験者を治療する方法が提供される。この方法には、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)該被験者から白血球の集団を採取する工程と;
(c)工程(b)の該白血球から得られるCD8+細胞の集団を該nnAPC細胞と共にインキュベートする工程と;
(d)該CD8+細胞を1種以上の支援サイトカインで処理する工程と;
(e)工程(d)からのCD8+細胞を該被験者に導入する工程と;
が含まれる。
【0024】
治療方法の態様の好ましい一実施形態では、被験者は2種以上の感染症を有し、各感染症に特異的な少なくとも1種のウイルス特異的抗原ペプチドが工程(a)で利用される。
【0025】
本発明の好ましい方法に利用されるウイルス抑制核酸は、たとえば、ヒトパピローマウイルス症、サイトメガロウイルス症、エプスタイン・バーウイルス症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、麻疹、耳下腺炎、ポリオ、風疹、インフルエンザ、黄熱病、日本脳炎、デング熱、狂犬病、ロタウイルス症、水痘帯状疱疹、チクングニア症 リフトバレー熱、呼吸器合胞体ウイルス症(Respiratory Syncitial Virus)、単純疱疹、コロナウイルス症、マールブルグ症、エボラ症、カリフォルニア脳炎ウイルス症、JCウイルス症、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス症、パルボウイルス症、ライノウイルス症、天然痘、HTLV-1症、HTLV-2症、およびHIV症よりなる群から選択される疾患に特異的でありうる。
【0026】
治療方法の態様にはまた、工程(b)の白血球から得られるCD4+Tリンパ球の集団および/またはCD34+造血前駆細胞の集団をnnAPC細胞と共にインキュベートしてからCD4+Tリンパ球および/またはCD34+前駆細胞を被験者に導入することがさらに含まれていてもよい。
【0027】
いくつかのそのような実施形態では、1種以上の支援サイトカインがCD4+Tリンパ球および/またはCD34+造血前駆細胞に添加される。さらに、ウイルス抑制核酸をCD4+Tリンパ球の集団に導入してウイルス抑制核酸がリンパ球中で発現されるようにしたりかつ/またはCD34+造血前駆細胞の集団に導入してウイルス抑制核酸が前駆細胞中で発現されるようにしたりしてからCD4+Tリンパ球および/またはCD34+前駆細胞を被験者に導入することが可能である。
【0028】
さらに、(単独でまたは他の細胞タイプと組み合わせて)投与されたCTLが疾患に影響を及ぼすのを支援すべく治療中断を用いることが可能である。
【0029】
CD8+細胞に添加される支援サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、およびIL-21よりなる群から選択可能である。
【0030】
本明細書全体にわたり、「comprise(含む)」という単語または「comprises(含む)」もしくは「含んでいる(comprising)」のような変化形は、明示された要素、整数、もしくは工程または一群の要素、整数、もしくは工程が包含されることを示唆するものと理解されるであろうが、他の要素、整数、もしくは工程または一群の要素、整数、もしくは工程がなんら除外されるものではない。
【0031】
本明細書に引用されている参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0032】
本明細書に含まれている文献、作用、材料、装置、物品などに関する考察はいずれも、単に本発明の置かれている状況を示すことを目的としているにすぎない。これらの事項のいずれかもしくはすべてが先行基礎技術の一部をなすことまたは本願の各請求の優先日の前に本発明に関連する分野の一般常識であったことを容認するものと解釈してはならない。
【0033】
発明の好ましい実施形態の詳細な説明
以下に示されているのは、本明細書で使用される略号および定義のリストである。
略号
AIM-V 細胞培養のためのAIM-V培地
APC 抗原提示細胞
CD8+ CD8+T細胞
CD34+細胞 表面上にCD34+抗原を有する細胞;造血前駆細胞のサブセット
細胞純度 任意の集団中における必要な抗原に陽性である細胞のパーセント
CTL 細胞傷害性Tリンパ球;CD8+Tリンパ球のサブセット
DzyNA DNAまたはRNAのリアルタイムPCR検出および定量化の方法であり、たとえば、米国特許第6,140,055号および米国特許第6,201,113号に記載されている。
E エフェクター
Fas CD95としても知られるT細胞上のエピトープ
HP細胞 造血前駆細胞;in vivoで連続的に造血系の種々の系列をすべて形成する多能性細胞
ICAM 細胞間接着分子
IL インターロイキン
LAK リンホカイン活性キラー細胞
LFA リンパ球機能抗原
LNL6 複製遺伝子が切除されネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neor)遺伝子が挿入されたモロニーマウス白血病ウイルス由来ネズミレトロウイルスベクター。このベクターは、複製不能レトロウイルスベクターLNL6(Genbank受託番号M63653)を含有するレトロウイルスのプラスミド(pLNL6)をベースとする。
MHC 主要組織適合複合体
nnAPC 天然に存在しない抗原提示細胞
NP 核タンパク質
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸緩衝食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RPMI Roswell Park Memorial Institute
Rz2 tat遺伝子の高度に保存された領域を標的にする抗HIVハンマーヘッド型リボザイム;Rz2リボザイム配列は、5'-TTA GGA TCC TGA TGA GTC CGT GAG GAC GAA ACT GGC TC-3'である。
RRz2 neorの3'非翻訳領域に挿入されたRz2を有するLNL6よりなるレトロウイルスベクター
RWJRI The R.W. Johnson Pharmaceutical Research Institute
T 標的
TCR T細胞抗原レセプター
TIL 腫瘍浸潤リンパ球
形質導入 細胞中への遺伝子の導入およびその結果としてのその細胞内におけるその遺伝子の発現
VCM ウイルス含有培地
【0034】
以下に示されているのは、種々のペプチドエピトープに対して本明細書で使用される略号のリストである。各アミノ酸残基は、当業者によく知られ使用される一文字コードにより識別される。
アミノ酸 略号
3文字 1文字
アラニン ala A
バリン val V
ロイシン leu L
イソロイシン ile I
プロリン pro P
フェニルアラニン phe F
トリプトファン try W
メチオニン met M
グリシン gly G
セリン ser S
トレオニン thr T
システイン cys C
チロシン tyr Y
アスパラギン asn N
グルタミン gln Q
アスパラギン酸 asp D
グルタミン酸 glu E
リシン lys K
アルギニン arg R
ヒスチジン his H
【0035】
本明細書中で使用する場合、「ex vivo」または「ex vivo療法」という用語は、生体物質(典型的には細胞)を患者または好適な代替源(たとえばドナー)から取得して改変細胞を用いて病的症状を治療できるように改変し、改変細胞により得られる治療上の利点を有する長期間にわたる送達または一定した送達により病的症状が改善されるようにする療法に関連付けられる。治療には、患者または代替源から得られる改変された生体物質を患者に再導入することが包含される。ex vivo療法の利点は、患者が治療に伴う望ましからぬ副作用を受けることなく、患者に治療の利点を提供できる点である。たとえば、多くの場合、患者のCTLの増加を刺激すべく、癌またはウイルス感染症を有する患者に高用量のサイトカインが投与される。しかしながら、サイトカインを用いると、多くの場合、患者はインフルエンザ様症候を呈する。ex vivo手順では、患者の体外でCTLの増加を刺激すべくサイトカインが使用されるので、患者は、サイトカインに暴露されたりその結果として生じる副作用を受けたりしないですむ。他の選択肢として、好適な状況または症状では、適切であればかつ被験者に利益をもたらしうるのであれば、同時にIL-2などのようなサイトカインを低レベルで投与して被験者を治療することができる。IL-2の作用は、抗原特異的CTLの存続性を向上させることである。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「主要組織適合複合体」または「MHC」という用語は、ヒト白血球抗原(HLA)をはじめとしてさまざまな種で記述される組織適合抗原系を包含する意味を有する総称である。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「エピトープ」、「ペプチドエピトープ」、「抗原性ペプチド」、および「免疫原性ペプチド」という用語は、哺乳動物で細胞性免疫応答を引き起こすことのできる抗原に由来するペプチドに関連付けられる。そのようなペプチドはまた、該ペプチドで免疫化された動物に由来する抗体と反応しうる。そのようなペプチドは、約5〜20アミノ酸の長さ、好ましくは約8〜15アミノ酸の長さ、最も好ましくは約9〜10アミノ酸の長さでありうる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、「インターロイキン2(IL-2)」という用語は、標的細胞の表面上の特異的レセプターに結合した後で免疫系を刺激してその生物学的作用を発揮するサイトカインに関連付けられる。IL-2は多くの生物学的作用を有する。たとえば、活性BおよびT細胞(細胞傷害性T細胞を含む)、ナチュラルキラー細胞、およびリンホカイン活性キラー(NK)細胞の刺激を誘発することが知られている。IL-2は、処方薬として入手可能であり、たとえば、Chiron Corporation (Emeryville, CA)により製造されているPROLEUKIN(登録商標)が挙げられる。IL-2は、多くの米国特許に開示されているように種々の供給元からおよびさまざまな方法により調製可能である。これらの特許には、米国特許第4,407,945号、同第4,473,642号、および同第4,401,756号にそれぞれ開示されているようにハイブリッドマウスT細胞株または悪性ヒトT細胞株のようなT細胞からのIL-2の調製、ならびに米国特許第4,992,367号、同第4,407,945号、および同第4,473,642号に開示されているように組換えヒトIL-2の調製が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明は、疾患特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の治療用量の富化プールを取得および調製することに関する。一実施形態では、その一部分は、患者に送達すべく治療用遺伝子で形質導入される。治療用遺伝子は、好ましくは、感染症(好ましくはウイルス性疾患)の播種を制限することのできる遺伝子または遺伝子構築物である。これらのCTLは、単独でまたは遺伝子含有CD4+Tリンパ球および/もしくは遺伝子含有CD34+造血前駆細胞と組み合わせて使用されるであろう。HIV症の治療を参照して本発明について具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、本明細書に記載の方法は他のウイルス感染症の治療に使用することも可能である。
【0040】
本発明の好ましい全体像を図2および3に提供する。これには、G-CSF動員(CD34+造血前駆細胞を必要とする場合に必要となる)と併用してまたは併用せずに患者の血液のアフェレーシスにより末梢血単核細胞を取得することが含まれる。CD8+、CD4+、および/またはCD34+Tリンパ球は、別々に、単離、培養、場合により形質導入、ペプチドへの暴露、培養、採取、および注入が行われる。
【0041】
本発明では、CD8+細胞、CD4+細胞と組み合わされたCD8+細胞、CD34+細胞と組み合わされたCD8+細胞、または3つの細胞タイプすべての組合せを注入により患者に戻すことができるように検討が加えられている。
【0042】
本発明の方法を実施するための第1の工程として、天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する。nnAPCは、少なくとも1種かつ15種までの異なる外因性ペプチド(ここで、各ペプチドは、好ましくは少なくとも8アミノ酸、より好ましくは8〜10アミノ酸の長さである)で同時に負荷することが可能であり、その細胞の表面上に該ペプチド分子を提示することができる。
【0043】
抗原提示細胞に負荷するために使用されるペプチドは、感染症に関連付けられものであり、好ましくはウイルス性疾患に関連付けられものである。さまざまなペプチドを使用することができるが、好ましくは、ペプチドは細胞傷害性T細胞応答を刺激することが知られているものである。細胞傷害性応答を刺激することのできるペプチド(たとえば、ウイルス由来ペプチド)は、当技術分野で同定されている。さらに、どのペプチド断片が細胞傷害性T細胞応答を刺激することができるか、したがって、どのペプチド断片が本発明で使用しうる他のペプチドを同定するために使用することができるかが確定されることが知られている方法およびアッセイが存在する。実施例では、HIV特異的細胞傷害性T細胞応答を刺激すべくHIVタンパク質に由来する例示的なペプチドを利用する。
【0044】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、ウイルス感染に対する天然のバリヤーの1つである。ヒトでは、この細胞は、ウイルス含有細胞を破壊することにより、ウイルス負荷を減少させる。たとえば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染では、感染の除去に対する主要な障害の1つは、ウイルスが、この細胞集団に感染して破壊することが一因となって、CTLの産生を減少させることである。本明細書に記載の方法を用いれば、遺伝子改変を含むかまたは含まない疾患特異的CTLの集団を提供することができる。遺伝子改変とは、疾患特異的CTLが疾患により誘発される枯渇を生じることがなく、それにより疾患が改善されるように作用することを意味するものとする。CTL集団(その遺伝子改変が含まれていても含まれていなくてもよい)は、単独でまたは他の遺伝子改変細胞(たとえばCD4+Tリンパ球もしくはCD34+造血前駆細胞)と組み合わせて使用することができる。
【0045】
CD8+Tリンパ球は、nnAPCの存在下で疾患特異的ペプチドエピトープと共に最初にインキュベートされ、さらなる時間にわたり培養される。好ましい実施形態では、CD8+細胞は、nnAPC細胞株と共に約6〜7日間インキュベートされる。nnAPCで刺激した4〜5日後、インターロイキン-2(IL-2)およびインターロイキン-7(IL-7)のような支援サイトカインを培地に添加することができる。好ましい実施形態では、20U/mlのIL-2および30U/mlのIL-7が培地に添加される。
【0046】
本発明の他の実施形態では、ペプチドを発現するnnAPCは、被験者の治療を促進することのできる他のペプチドまたはポリペプチドを発現するようにさらに改変される。たとえば、治療対象の疾患または疾患症状に関連付けられるペプチドの提示に加えて、nnAPCは、細胞-細胞接着を増強したりまたは追加の細胞活性化シグナルを形質導入したりするために、リンパ球機能抗原(LFA-1、LFA-2およびLFA-3)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、および/またはT細胞共刺激因子(CD2、CD28、B7)のようなアクセサリー分子に関連付けられるポリペプチドを発現することができる。
【0047】
nnAPC細胞と共にインキュベートした後、CD8+細胞集団は、感染症防御遺伝子治療剤で形質導入される。好ましくは、形質導入された細胞だけでなく形質導入された細胞の後代においても発現されるように感染症防御遺伝子治療剤を導入する。感染症防御遺伝子治療剤は核酸を含み、さまざまな形態で核酸を細胞に導入する方法が当技術分野で周知である。好ましくは、感染症防御遺伝子治療剤はウイルス性疾患を対象とする。一実施形態では、治療剤はリボザイムである。当業者であればわかるであろうが、当技術分野で公知のさまざまな他のタイプの遺伝子治療剤が存在する。
【0048】
本発明の一例として、治療用遺伝子を含有する細胞のHIV指向性CTL活性の結果としてウイルス負荷を減少させかつCD4+細胞数を増大させることにより治療効果が得られるように、抗HIV遺伝子構築物(RRz2)でCD8+CTLに形質導入する。これらの細胞は、HIV感染細胞を指向してそれらを破壊し、しかもCTLおよび場合によりCD4+細胞は、RRz2遺伝子発現構築物が存在するおかげでHIVの細胞変性効果から保護される。
【0049】
幾人かの研究者は、組織培養で新規な抗ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)剤を用いるさまざまな遺伝子療法を提案し試験してきた。これらの手法には、トランスドミナントタンパク質(Smythe et al. 1994)、細胞内抗体(Marasco et al. 1998)、アンチセンスリボ核酸(RNA)(Sczakiel et al. 1991)、ウイルスデコイ(Kohn et al. 1999)、および触媒リボザイム(Sarver et al. 1990; Sun et al. 1996)の細胞内発現が含まれる。
【0050】
本発明の方法を実施するための好ましい次の工程では、末梢血単核細胞から付着細胞集団を単離した後で産生された自己単球の付着集団の存在下で同疾患特異的ペプチドエピトープと共にCD8+-由来CTL富化集団をさらにインキュベートする。末梢血単核細胞集団から得られる付着細胞、最も好ましくは該被験者または好適なドナーから採取されたCD8+枯渇末梢血に由来する付着単球を約10〜50μg/mlの対象の各ペプチドと共に混合することにより、CD8+細胞をペプチド負荷付着細胞と共に約6〜7日間インキュベートする。
【0051】
末梢血単球は、アフェレーシスの後で末梢血単核細胞集団から単離される。一実施形態では、(刺激能力を保持しつつPBMCのさらなる細胞増殖を防止するのに)必要である十分な線量の放射線で、たとえば、約3,000〜7,000radの範囲、好ましく約5,000radの線量の放射線で、末梢血単球懸濁液に照射する。付着末梢血単球は、細胞懸濁液から単離される。これらの付着細胞は、細胞を約10ng/ml〜10μg/mlの各ペプチドと混合することによりペプチドで負荷される。
【0052】
次に、付着末梢血単球1個に対して約10個のCD8+細胞の比でCD8+細胞を付着末梢血単球と組み合わせる。好ましい実施形態では、細胞を約6〜7日間インキュベートする。組み合わされた細胞は、培地中でIL-2およびIL-7と共にさらにインキュベートすることもできる。他の選択肢として、末梢血単核細胞(PBMC)または他のCD8枯渇PBMCで構成された照射「フィーダー細胞」の存在下でCD3レセプターに対するmAbに細胞を接触させることにより、非特異的にCD8+細胞の懸濁液を刺激することが可能である。フィーダー細胞に照射するために使用される線量は、約3,000〜4,000radの範囲、好ましくは約3,500radである。
【0053】
CTL集団は、増殖因子の存在下でさらに増加させることができる。このほか、好適なCTL活性に関して、さらにはCTL純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率に関して、CD8+懸濁液をアッセイすることができる。細胞が満足すべきものであることが判明すれば、被験者に導入することができる。被験者に細胞を導入または再導入する方法については、当技術分野で公知である。たとえば、骨移植手順の一部分として骨髄を再生着させるために使用される方法またはCD34+細胞を用いる臨床試験で使用される方法が挙げられる(Amado, et al. (1999). Human Gene Therapy, 10:2255-2270参照)。好ましくは、治療1回につき6〜10×109個の用量の細胞が使用され、治療は1〜6回反復可能である。
【0054】
他のCD8+Tリンパ球およびCD4+Tリンパ球と同様に、CTLは、生存および増殖に関してインターロイキン-2に依存する。したがって、一実施形態では、被験者は、CTL細胞集団の投与前または投与後にインターロイキン-2の投与を受けるであろう。インターロイキン-2は、おそらく、CTLの生存、複製、および活性を増大させるであろう。また被験者に導入しうる他のリンパ球細胞タイプの生存を増大させることもできる。好ましい実施形態では、被験者は、細胞集団の投与前および/または投与後に3MIUのIL-2を摂取するであろう。
【0055】
高用量のIL-2は、低用量の連続注入よりも有効であると思われるが、高用量のIL-2はまた、より有毒でもある。最も多く見られる副作用はインフルエンザ様症候である。最も重篤な副作用は、低血圧症、毛細血管漏出症候群、および器官灌流低下である。IL-2は、腎細胞癌および悪性黒色腫の両方に対して臨床的に使用されてきている。低用量皮下療法におけるIFN-α-2bとIL-2の併用が他の臨床状況で報告されている(Pectasides et al., Oncology (1998) 55:10-15; Piga et al., Cancer Immumol Immunotherapy (1997) 44:348-351)。
【0056】
本発明の変更態様において、本発明の方法に従って産生されるCD8+細胞は、感染症を治療するためにCD4+Tリンパ球と組み合わせて被験者に導入される。この態様において、CTL集団は、第1の態様のときと同じように産生され、CD4+集団と同時に処理されるであろうが、ただし、後者の集団は、常に、前者の集団とは別に分離された後、使用される。CD4+集団はまた、好ましくは、CD8+細胞の形質導入に使用したのと同一の感染症防御遺伝子治療剤で形質導入される。
【0057】
本発明のさらなる他の態様において、本発明の方法に従って産生されるCD8+細胞は、感染症を治療するためにCD34+造血前駆細胞と組み合わせて被験者に導入される。この態様において、CTL集団は、第1の態様のときと同じように産生され、CD34+HP細胞集団と同時に処理されるであろうが、ただし、後者の集団は、常に、前者の集団とは別に分離された後、使用される。CD34+HP集団はまた、好ましくは、CD8+細胞の形質導入に使用したのと同一の感染症防御遺伝子治療剤で形質導入される。
【0058】
ペプチドおよび方法がウイルス性疾患の防御を目的とする他の好ましい実施形態では、細胞の投与は、抗レトロウイルス治療の中止(すなわち治療中断)と併用される。「抗ウイルス治療中断」という用語は、ある期間にわたり非細胞療法抗ウイルス治療を中止して非細胞療法抗ウイルス治療中断時に本発明の方法を利用または継続することに関連付けられる。
【0059】
本発明の方法は一般に造血系の感染症に有用であると考えられる。しかしながら、特定用途では、本発明はHIVの療法を目的とする。この場合、HIV陽性被験者から採取された細胞は種々の細胞タイプについて富化され、そして治療用遺伝子は抗HIV産物をコードする。
【実施例】
【0060】
次に、いくつかの実施例を参照しながら本発明についてさらに説明する。
実施例1:
HIV特異的CTLを生成させるためのDrosophila melanogaster細胞に由来する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)の使用
PCT公報PCT/US02/005748に開示されている方法に従ってヒトクラスI HLA結合性および共刺激性の分子を発現するように改変されたDrosophila melanogaster細胞から、天然に存在しない抗原提示細胞を産生する。この細胞は、15種までの異なるペプチド分子、好ましくは、既にトランスフェクトされたDrosophila細胞の表面上に同時に外因的に負荷されたペプチド分子を提示することができる。このように使用しうるDrosophila細胞株は、次のように産生することができる。
【0061】
発表された手順に従ってDrosophila melanogaster(Oregon-R)の卵からSchneider S2細胞株を調製し、American Type Culture CollectionにCRL 10974として寄託した。10%ウシ胎仔血清で補足された市販のSchneider's Drosophila培地中でS2細胞を増殖させる。
【0062】
S2細胞でMHCクラスIおよび共刺激性のタンパク質を発現するためのpRmHa-3プラスミドベクターを文献に記載されているようにpRmHa-1発現ベクターから誘導した。ベクターは、メタロチオネインプロモーターと、金属応答コンセンサス配列と、Drosophila melanogasterから単離されたポリアデニル化シグナルを保有するアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子と、を含有する。ヒトクラスI HLA A2.1、B7.1、B7.2、ICAM-1、β-2ミクログロブリン、およびLFA-3に対する相補的DNA配列を含むように、プラスミドベクターpRmHa-3プラスミドを改変する。ここで、A2.1は任意のヒトクラスI DNA配列で置換可能である。
【0063】
トランスフェクション用の相補的DNAを次のように調製した:
HLA-A2.1およびβ-2ミクログロブリン: 発表された配列から誘導されたプライマーを用いるK562細胞からの逆転写-PCR
B7.1:発表された配列から誘導されたプライマーを用いるK562細胞からの逆転写-PCR
ICAM-1:発表された配列から誘導されたプライマーを用いるK562細胞からの逆転写-PCR
B7.2:発表された配列から誘導されたプライマーを用いるHL-60細胞(ATCC CCL-240)からの逆転写-PCR
LFA-3:発表された配列から誘導されたプライマーを用いるHL-60細胞(ATCC CCL-240)からの逆転写-PCR
【0064】
phsneoプラスミドと相補的DNAを含有する該pRmHa-3プラスミドとでS2細胞をトランスフェクトした。ゲネチシンを含有するSchneider's培地中で培養することにより、安定にトランスフェクトされた細胞を選択する。使用の24時間前、CuSO4を添加することにより、トランスフェクトされた遺伝子の発現を誘発した。
【0065】
昆虫細胞の増殖に好適な培地(これ以降では「昆虫増殖培地」と記す)中で本発明の昆虫細胞を増殖させる。昆虫増殖培地は、いくつかの販売業者から市販されており、たとえば、SchneiderTM's Drosophila Medium、Grace's Insect Media、およびTC-100 Insect Mediaが挙げられる。他の選択肢として、当業者であれば、昆虫増殖培地を調製することができる。典型的には、培地は、昆虫細胞の増殖を促進および持続するのに必要な成分、たとえば、無機塩(具体的には、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびリン酸ナトリウム)、アミノ酸、種々の炭水化物、および化学種を含むであろう(Schneider, Imogene (1964) Exp. Zool. 156:1:91)。他の選択肢として、培地は、ビタミン、ミネラル、および昆虫細胞の増殖を促進する他の成分を含むこともできる。
【0066】
このDrosophila細胞株は、以下のようにnnAPCを作製するために使用される。
【0067】
Drosophila細胞株は、少なくとも1種かつ15種までの異なる外因性ペプチドで負荷され、各ペプチドは、好ましくは8〜10アミノ酸の長さである。ペプチドは、免疫刺激性エピトープを含有するペプチド分子、好ましくはCTL活性を刺激することをin vitroで実証できるエピトープである。好ましくは、エピトープは、感染因子、好ましくはウイルス、より好ましくは免疫不全ウイルス(たとえばHIV)から同定される。次のペプチドは、HIV/AIDSに使用しうる例であり、これらは、in vitro CTL活性を誘発することを示すことにより確証されている:HIVに対するHLA-A2 T細胞エピトープ(ILKEPVHGV HIVpolおよびSLYNTVATL HIVgag)。これらの2種のエピトープは、それらの2種のペプチドで負荷されたnnAPCで刺激した後で特異的CTLを生成することにより確証された。使用しうるHIVエピトープの他の例は、Part IIA "HIV CTL Epitope Tables"; Part IIB "HIV CTL Epitope Maps"; Part IIC "References" of HIV Molecular Immunology 2001 (Eds Korber et al) Division of AIDS, NIAID http://hiv-web.lanl.gov/immunologyに見いだされる。
【0068】
実施例2:
CD8+細胞の単離
CD8+細胞は、DynabeadTM単離手順(Dynal)を用いてポジティブ選択により白血球搬出サンプルから単離される。1%ヒト血清アルブミン(Baxter-Hyland)および0.2%クエン酸Naで補足されたDulbecco's PBS中の洗浄細胞に抗ヒトCD8マウスモノクロナール抗体(ヒトガンマグロブリン[Gammagard(登録商標)]中50μg/ml)を添加する。穏やかに混合しながら4℃で45分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、1:1のビーズ対細胞比でヒツジ抗マウスIgGでコーティングされたDynal磁気ビーズ(DynabeadTM)を含有する同一の緩衝液中に再懸濁させる。細胞およびビーズを滅菌チューブに入れて4℃で穏やかに45分間混合する。この終了時に、製造業者(Dynal)の説明書に従ってMPC-1(登録商標)セパレーターを用いて、抗体結合細胞を磁気的に取り出す。CD8細胞ビーズ複合体の解離は、CD8ペプチド59〜70(AAEGLDTQRFSG; 配列番号12)の存在下で37℃で45分間インキュベートすることにより達成される。遊離ビーズは、磁気的に除去され、CD8細胞は、計数され、純度を評価するためにフローサイトメトリーにより分析される。
【0069】
実施例3:
CD8+細胞の精製および感作
10%ウシ胎仔血清およびCuSO4で補足されたSchneider's培地(106細胞/ml)中で、トランスフェクトされたDrosophila S2細胞を27℃で24時間インキュベートする。細胞を採取し、洗浄し、100μg/mlのヒトチロシナーゼ369〜377を含有するInsect X-press培地(BioWhittaker)中に再懸濁させる。27℃で3時間インキュベートした後、10%自己血清で補足されたRPMI培地(Gibco)中で、S2細胞をCD8+細胞と1:10の比で混合する。細胞混合物を37℃で好ましくは少なくとも4日間、より好ましくは6〜7日間インキュベートする。その間にDrosophila細胞は全滅する。5日目、IL-2(20U/ml)およびIL-7(30U/ml)を添加してHIV特異的CTL集団を選択的に増加させる。
【0070】
実施例4:
CD8+Tリンパ球の形質導入
一実施形態では、CTL富化CD8+Tリンパ球は、感染症防御遺伝子治療剤(たとえば、RRz2のようにHIVに対する防御を付与するリボザイム)で形質導入される。そのような形質導入は、たとえば、LNL6のようなレトロウイルスを利用することにより行われ、形質導入された細胞中およびその後続の後代細胞中で発現されるように遺伝子剤を導入することが含まれる(たとえば、Knop et al (1999)。
【0071】
実施例5:
PBMCによる細胞の再刺激
白血球搬出の時点で得られた自己CD8枯渇PBMCを解凍し(凍結されていた場合)、洗浄し、10%自己血清(β2ミクログロブリンの供給源として)および10〜50μg/mlの刺激性HIVペプチドを含有するRPMI培地中に106細胞/mlで再懸濁させる。γ線照射(5,000rad)の後、細胞を37℃で2時間インキュベートする。Dulbecco's PBSで洗浄することにより非付着細胞を除去する。10%自己血清および10ng/ml〜10μg/mlの1種以上のHIV刺激性ペプチド(たとえば、HIV(ILKEPVHGV HIVpolおよびSLYNTVATL HIVgag))を含有するHepes緩衝RPMI培地中で90分間インキュベートすることにより、付着単球にペプチドを負荷する。使用しうるHIVエピトープの他の例は、Part IIA "HIV CTL Epitope Tables"; Part IIB "HIV CTL Epitope Maps"; Part IIC "References" of HIV Molecular Immunology 2001 (Eds Korber et al) Division of AIDS, NIAID http://hiv-web.lanl.gov/immunologyに見いだされる。上清を除去し、Drosophila活性化CD8+細胞懸濁液(10%自己血清を含むRPMI培地中3×106細胞/ml)を付着単球1に対して10個のCD8+細胞の比で添加する。37℃で3〜4日間培養した後、IL-2(20U/ml)およびIL-7(30U/ml)を添加してHIV特異的CTL集団を選択的に増加させる。
【0072】
非特異的増加
場合により、自己血清、抗CD3モノクロナール抗体(OKT(登録商標)3)、ならびにIL-2およびγ線照射自己PBMC(たとえば、約3,000〜4,000radの範囲、好ましくは約3,500radの線量)、または他の選択肢としてCD8枯渇PBMCだけ、またはIL-2およびγ線照射自己PBMC(たとえば、約3,000〜4,000radの範囲、好ましくは約3,500radの線量)だけで補足されたRPMI培地中で培養することにより、エフェクター細胞を非特異的に増加させる。
【表1】

【0073】
活性および純度のアッセイ
CTLアッセイ
Malme 3M細胞(ATCC)を51Cr放出アッセイの標的細胞として使用する。4%ウシ胎仔血清、1% HEPES緩衝液、および0.25%ゲンタマイシンを含有するRPMI培地中の5×106 Malme 3M細胞を、37℃において0.1mCi 51Crで1時間標識化する。細胞を4回洗浄し、10%ウシ胎仔血清(HyClone)を含むRPMI中に105細胞/mlになるように希釈する。96ウェルマイクロタイタープレート中で、100μlのエフェクターCTLおよび100μlのペプチド負荷51Cr標識化Malme 3M標的細胞を100:1、20:1、および4:1(エフェクター:標的)の比で組み合わせる。K562細胞を20:1(K562:Malme 3M)の比で添加し、ナチュラルキラー細胞バックグラウンド溶解を減少させる。非腫瘍HLA-A2.1繊維芽細胞株Malme 3を用いて、非特異的溶解を評価する。51Crの自然放出および最大放出を測定するための対照を2重反復試験方式で組み入れる。37℃で6時間インキュベートした後、プレートを遠心し、上清を計数して51Cr放出を測定する。次式:
(サンプルcpm−自然放出cpm)/(最大放出cpm−自然放出cpm)×100
を用いて特異的溶解パーセントを計算する。
【0074】
フローサイトメトリー
in vitro活性化の前および後で、蛍光性モノクロナール抗体およびFACS分析を用いて、いくつかの細胞表面マーカーに関してCD8+細胞を分析する。
【0075】
実施例6:
CD4+細胞の調製
感染症を治療するために、感染因子特異的CD8+由来CTLをCD4+Tリンパ球と併用することもできる。この態様において、CTL集団は、上述したように産生され、CD4+集団と同時に処理されるが、ただし、後者の集団は、常に、前者の集団とは別に分離された後、使用される。CD4+集団は次のように調製され使用される。アフェレーシス産物からCD8+細胞を単離した後、被験者からCD4+細胞を採取する。レトロウイルスでCD4+細胞に形質導入し、活性化し、そして組織培養物中に導入する。OKT3およびIL-2のような物質でCD4+細胞を刺激する。培養の3〜5日目に、抗感染症治療剤で細胞に形質導入する。IL-2および適切な培地変化を用いて、CD4+細胞をさらに刺激して増加させることもできる。CD4+細胞を採取し、洗浄し、無菌検査を行い、患者に注入する。
【0076】
この技法の一例は次のとおりである:COBE Spectra (Gambro BCT, Sweden)を用いて約1×108単核細胞/kgをHIV患者から白血球搬出し、Ficoll/Hypaque (Amersham Pharmacia Biotech, Sweden)密度勾配培地によりCD4+Tリンパ球を単離した。次に、CD8 CELLectorフラスコ(RPR Gencell, USA)を用いて、白血球搬出された細胞をCD8+T細胞枯渇処理に付した。フローサイトメトリーによるT細胞サブセット分析を行うために、枯渇前および枯渇後のサンプルを、CD4-FITC、CD8-PE、およびCD3-perCP、またはイソタイプ対照抗体(BDIS, USA )で染色した(Knop et al, 1999)。
【0077】
次に、CD4+富化Tリンパ球を15mlの対照(LNL6)またはリボザイム(RRz2)GMP等級ウイルスの中で(2重反復試験方式で)37℃で15〜30分間インキュベートし、107細胞あたり50ngの濃度のOKT3(抗CD3)抗体(Orthoclone; Janssen-Cilag, Belgium)で刺激した。
【0078】
次に、カートリッジサイドポートに15mlの細胞懸濁液を注入することにより、富化CD4+Tリンパ球を4つの前培養末梢血リンパ球-MPS人工毛細管カートリッジ(Cellco CellmaxTM, USA)に導入した。最初に、5%熱不活性化自己血漿を含有するAIM-V培地(Gibco BRL)中で細胞を培養した。培養の2日目に、100U/mlのIL-2(rIL-2; Chiron, USA)を培地に添加し、採取時まで保持した。後続の培地添加用に非血漿含有培地を用いることにより、血漿の割合を段階的に減少させ、7日目までに培養物はほとんど血漿を含まない状態にした(残存量0.1%未満)。培養の4日目まで、レザバーへの培地添加はAIM-Vだけであった。細胞の増殖および培地の状態を毎日監視するために、レザバーからサンプルを採取してL-ラクテート濃度を測定することにより、モジュールレザバー中のL-ラクテートの濃度を決定した(L-ラクテート試薬 Sigma, USA)。この決定は、4×106 PBLが1日あたり1mgのラクテートを産生するという概算に基づくものであった(Cellco)。ラクテートの濃度が0.6mg/mlを超えた時、レザバー中の培地を変更した(新たな増殖添加剤を添加し代謝物を除去するため)。
【0079】
標的CD4+リンパ球がラクテート濃度により監視される指数増殖期に到達した時(一般的には培養の3〜5日目)、第2のレトロウイルス形質導入を行った。連続した日に行われる2回の個別の形質導入として、これを実施した(1回目の形質導入では30ml VCMを添加し、2回目には70ml VCMを添加した)。先に記載したようにカートリッジサイドポートを介してVCMを直接注入することにより、形質導入を行った(Knop et al, 1999)。サイドポートに注入する前に、100U/mlのIL-2および硫酸プロタミン(Fisons/ Rhone-Poulenc Rorer, USA)をVCMに添加し、さらに硫酸プロタミンを培養レザバーに添加した。
【0080】
添加した硫酸プロタミンの濃度は5μg/mlの最終濃度になった。
【0081】
培養の8日目、注入の2日前、カートリッジおよびレザバーのそれぞれからサンプルを取り出して採取前試験に供した。実施した分析は、マイコプラズマPCR ELISA(Boehringer Mannheim / Roche, Switzerland)、フローサイトメトリー分析(CD4、CD8、およびCD3)、および無菌試験(Sydpath, St Vincent's Hospital pathology services, Australia)であった。また、先に記載したマーカー付き細胞のパーセントを定量的競合PCRで測定するために(形質導入の指標として)、サンプルを取り出した(Knop et al, 1999)。
【0082】
連続して2日間にわたりL-ラクテート産生のさらなる増加がないことにより決定されるプラトー増殖期に培養物が到達した時(一般的には培養の10日目)、細胞を採取した。製造業者の説明書に従って、追加の毛細管スペースに培地を注入して毛細管細孔を貫通させ、培地でカートリッジをフラッシングすることにより、細胞を採取した。この後、細胞を3回洗浄し(200gで5分間遠心分離)、次に、0.18%生理食塩水、4%グルコース(Baxter)、および2.5%ヒト血清アルブミン(Albumex 20,Red Cross Blood Bank, Australia)を含有する注入緩衝液中に再懸濁させた。この時点でサンプルを取り出して、さらなる試験、すなわち、無菌性(好気性および嫌気性培養)、フローサイトメトリーによる分析、および長期保存性の試験に供した。最終的細胞注入液のサンプルをBioReliance Corporation (以前のMagenta, Rockville,USA)に送り、Mus dunni細胞株中での増幅の後、PG4 S+L-フォーカスアッセイを用いて生物学的複製コンピテントレトロウイルス(RCR)試験に付した。各患者に対して、最後に、4つの細胞集団(2つのLNL6感染細胞および2つのRRz2感染細胞)をプールし、全体積100ml中約2×109細胞で再懸濁させ、1000mlの注入緩衝液の入った輸液バッグに注入した。採取から2時間以内に、細胞産物を適合するHIV-1陽性双生児に1時間かけて注入した。
【0083】
実施例7:
CD34+細胞の調製
本発明はまた、感染症を治療するための感染因子特異的CD8+由来CTLとCD34+HP細胞(HP細胞とも呼ばれる)との併用を提供する。この態様において、CTL集団は、第1の態様のときと同じように産生され、CD34+集団と同時に処理されるであろうが、ただし、後者の集団は、常に、前者の集団とは別に分離された後、使用される。CD34+集団は、たとえば、CD34+クラスの造血前駆(HP)細胞を含む生細胞の集団を当該被験者から取得することと、該細胞集団の処理および/または培養を行って40%を超えるHP細胞部分を含む細胞のプールを提供することと、当該治療用遺伝子が該HP細胞部分で発現されうるように当該治療用遺伝子を該細胞プール内のHP細胞の少なくとも一部分に導入することと、により、調製することができる。この際、得られる生細胞プールは、当該被験者に送達したときに被験者が体重1kgあたり少なくとも0.5×106個の用量の治療用遺伝子含有CD34+HP細胞を摂取するのに十分な治療用遺伝子含有HP細胞を含んで調製される。
【0084】
好ましくは、得られた生細胞プールは、疾患治療用遺伝子治療剤で形質導入され、そして生細胞プールは、当該被験者に送達したときに被験者が体重1kgあたり少なくとも5×106個、より好ましくは2×107個超、さらにより好ましくは5×107個超の用量の治療用遺伝子含有CD34+HP細胞を摂取するのに十分な治療用遺伝子含有CD34+HP細胞を含む。
【0085】
好ましくは、得られる生細胞プールは、当該被験者に送達したときに被験者が全数で少なくとも1×107/kg体重かつ4×107細胞/kgまで、より好ましくは10×107/kgまでまたはそれ以上の細胞(すなわち、治療用遺伝子含有HP細胞および得られた細胞プール中に存在する他のすべての細胞)を摂取できるものでなければならない)。
【0086】
被験者から「採取される」細胞の集団は、当技術分野で周知の方法のいずれかにより取得可能である。たとえば、HP細胞を骨髄から末梢血に動員するように(たとえば、適切量のサイトカイン顆粒球コロニー刺激因子G-CSFを投与することにより)被験者を処置した後でアフェレーシス濾過を行うことが可能である。他の選択肢として、周知の技法に従って骨髄または臍帯血からHP細胞を吸引することが可能である。
【0087】
採取された細胞集団の処理には、1回以上の洗浄工程(たとえば、遠心分離洗浄機もしくは自動細胞洗浄機を用いて)および/またはDendreon DACS System (Charter Medical, Winston Salem, NC)のような装置を用いるデバルキング工程(すなわち、過剰の赤血球、顆粒球、血小板、Tリンパ球を除去するため)、および好ましくはHP細胞選択工程が含まれうる。HP細胞選択は、免疫アフィニティー法またはフローサイトメトリー法により達成可能である。好ましくは、HP細胞選択工程は、CD34+細胞を選択するか、または他の実施形態では成熟/委任造血細胞の抗原枯渇を含みうる(これによりHP細胞が富化される)。そのような細胞は、さまざまな選択装置を用いて選択可能であり、たとえば、Nexell/Baxter Isolex 300I (Irvine, CA)、Miltenyi CliniMACS,(Miltenyi; Biotech GmBH, Bergisch Gladbach, Germany)、Stem Cell Technologies (Vancouver, BC, Canada) StemSep Deviceが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
採取された細胞集団の処理にはまた、細胞数を増大させるための、とくに選択されるHP細胞の数を増大させるための細胞培養工程が含まれうる。細胞培養は、治療用遺伝子を導入するためにも必要とされる。また、そのような遺伝子(複数種も可)含有HP細胞の数を増加させるために、HP細胞の少なくとも一部分に治療用遺伝子を導入した後で追加的に培養細胞を行うことも可能である。
【0089】
初期処理工程(動員、アフェレーシス、HP選択)では、結果として、HP細胞の取得および富化が行われる。HP細胞のパーセントを規定するには、CD34抗原陽性のようなこれらの細胞の測定可能な特性が必要である。当然のことながら、処理された細胞プールは、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも80%のHP細胞を含む。
【0090】
HP細胞の少なくとも一部分に治療用遺伝子または核酸配列を導入する処理は、当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて達成可能であるが、最大の便宜をはかるには、治療用の遺伝子または核酸配列および好ましくは形質導入促進剤(たとえば、レトロウイルスベクターでは、RetroNectinとして知られるフィブロネクチンのCH296断片)を保有するレトロウイルスベクターまたは他のウイルスもしくは非ウイルス(DNAもしくはRNA)ベクターを用いて形質導入を行う。治療用の遺伝子または核酸配列を含有するHP細胞およびそれから(すなわち後続のリンパ系および骨髄系造血から)誘導される細胞は、治療用の遺伝子または核酸配列を含有しかつそれを発現させることができる。
【0091】
好ましい実施形態において、注入は細胞培養物への導入後3日目に行う。
【0092】
これらの各態様において、HIV/AIDSの場合、治療用遺伝子は、タンパク質(たとえば、トランスドミナントタンパク質および細胞内抗体)、アンチセンス分子(たとえば、アンチセンスRNA)、RNAデコイ、アプタマー、干渉RNA、および触媒リボザイムから選択される産物をコードしうる。
【0093】
CD34+造血細胞の単離、培養、形質導入、および再注入を行うための好ましい方法を以下に提供する。
【0094】
この手順の第1の工程は、骨髄から末梢血中にHP細胞を動員する作用剤の使用である。この実施例では、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF、NeupogenTM)を使用し、連続して5日間まで少なくとも10g/kg/日、好ましくは30g/kg/日で1日1回患者に皮下投与する。毎日、G-CSF投与時、全血球算定(CBC)、鑑別血球算定、および血小板算定を行って、白血球増加度を評価する。G-CSF投与の3日目にCD34+細胞算定用の血液サンプルを吸引採取し、末梢血CD34+算定値が20細胞/mm3よりも大きいことを確認してからアフェレーシスを開始する。しかしながら、このCD34+細胞数に達しない場合でも、G-CSF投与の5日目および6日目にアフェレーシスを行うことができないわけではない。
【0095】
アフェレーシスは、末梢血の単核細胞画分を得るための「血液濾過」の方法である。少なくとも2つの異なる時点で(誘発動員の初日を1日目として、好ましくは動員の5および6日目)、Cobe Spectra (Gambra)、Hemonetics (Domedica)、またはAmicus(Baxter)の機械を用いて行われるが、他の実施例では、末梢血CD34+算定値が5細胞/mm3、より好ましくは10細胞/mm3、最も好ましくは20細胞/mm3よりも大きい日に決定することによって、より早い日またはより遅い日にこれを行うことができる。好ましい実施形態では、このアフェレーシスにより、約5リットル(L)の血流から細胞産物が生成されるが、好ましくは、これは5〜10 L、より好ましくは10〜20 L、さらにより好ましくは20L以上であろう。各アフェレーシスからの産物は、別々に処理されるか、または好ましい実施形態では、第2のアフェレーシスの後でプールされる。全細胞数および絶対CD34+細胞数が記録される。これらのアフェレーシスを用いれば、HP(CD34陽性で測定した場合)細胞/kg単位で、5×106超、好ましくは2×107超、より好ましくは4×107超になるであろう。
【0096】
プールされた細胞を洗浄する。
これは、細胞遠心分離によりまたはより好ましくは自動細胞洗浄機を用いて行われ、一例を挙げると、この細胞洗浄は、Nexell CytoMate洗浄機を用いて行われる。
【0097】
一実施形態では、アフェレーシス手順から得られた細胞は、Charter Medical DACS-SCTMシステムのようなシステムを用いて「デバルク」される。産物が2日目の産物とプールするために1日目から一晩保存される実施形態では、2つのアフェレーシス産物は、採取日にデバルクされ、第1の産物は第2の産物がデバルクされるまで保存される。
【0098】
細胞を採取し、プールし(2つの産物が存在する実施形態の場合)、遠心分離によりまたはNexell CytoMate装置などを用いて洗浄する。(3つ以上の産物があれば、最も後の時間点ですべてがプールされるであろう)。
【0099】
CD34+細胞は、Isolex 300i、Miltenyi、またはマーカー(たとえば、CD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66b糖タンパク質A、StemSep)を発現する細胞の系列枯渇ストラテジーを用いて、洗浄後産物から選択される。CD34+または系列枯渇細胞の富化プールは、このタイプの細胞を好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも80%含む。
【0100】
細胞は、遠心分離によりまたはNexell CytoMateなどを用いて洗浄される。
【0101】
細胞を計数し、Iscove's改変Dulbecco's培地+10%ウシ胎仔血清(FBS)(サイトカイン/増殖因子を含有する)と共に細胞培養フラスコ、細胞培養バッグ、または好ましい実施形態では1,000ml (390cm2) Nexell Lifecell X-Fold Culture Bagなどに好ましくは1×105〜5×106細胞/mlで入れる。好ましい実施形態では、このサイトカイン/増殖因子混合物は、幹細胞因子(50ng/ml)および巨核球増殖成長因子100ng/mlよりなる。工程3〜9の結果として、1kgあたり12×107 HP細胞以上(CD34陽性で評価した場合)になるであろう。
【0102】
第1のフラスコ、組織培養バッグ(好ましい実施形態のLifecell Culture Bagなどを含む)から細胞を採取し、Cytomate装置などを用いてレトロウイルス上清(この一例は200mlアリコートである)中に再懸濁させ、第2の組織培養容器(この一タイプは、レトロウイルス形質導入促進剤を有するLifecell X-Fold Culture Bagである)中に移す。そのような作用剤は、ポリブレン、硫酸プロタミン、カチオン性脂質、または好ましい実施形態では1〜4 mcg/cm2のRetroNectinであらかじめコーティングされている組織培養容器中を包含する。4〜10時間後または24時間後まで、CytoMateなどを用いてトランスファー手順が反復されるであろう;この第2の形質導入のために、細胞は新しい組織培養容器(ポリブレン、硫酸プロタミン)に移されるかまたはそれが入っていたのと同一もしくは類似のRetroNectin被覆容器に戻される。好ましい実施形態では、これはレトロウイルス上清の新たなアリコート中で行われ、一晩培養される。他の実施形態では、これは行われないかまたは類似した時間で数回反復される。レトロウイルス上清のアリコートが無菌試験のために採取される。この結果として、1kgあたり6×107遺伝子含有HP細胞以上(CD34陽性で評価した場合)になるであろう。この数は、DzyNA PCRのような定量的アッセイにより決定される。形質導入効率は、少なくとも20%、好ましくは30〜50%の範囲、より好ましくは50%超であろう。
【0103】
9日目の朝、細胞を採取し、標準的な細胞遠心分離機または自動システムを用いて洗浄する(たとえば、細胞培養物のCytomateサンプル)。この結果として、1kgあたり5.7×107遺伝子含有HP細胞以上(CD34陽性で評価した場合)になるであろう。
【0104】
担体として5%ヒト血清アルブミンなどを含有する生理学的注入緩衝液中に細胞を再懸濁させる。無菌性(好気、嫌気、真菌、マイコプラズマ)を調べるために、アリコートサンプルを取り出す。エンドトキシン(LAL)およびグラム染色の試験の結果が得られるまで、注入産物を放出させない。
【0105】
CD34+細胞調製物は、必要に応じて前投薬された患者に投与される。好ましい実施形態では、患者は、担体として5%ヒト血清アルブミンなどを含有する生理学的注入緩衝液中の体重1キログラムあたり0.5〜6×107形質導入CD34+細胞(細胞/kg)の単回注入を受ける。患者1人あたりの形質導入CD34+細胞の用量は、動員、アフェレーシス、単離、培養および形質導入の手順の各工程の効率に依存するであろう。CD34+細胞(形質導入型または非形質導入型)の合計数は、細胞計数およびフローサイトメトリーにより決定される。導入された遺伝子含有HP細胞により、キメラ造血系が形成され、骨髄中に何パーセントかの遺伝子含有HP細胞が存在するようになる。好ましい実施形態(HIV/AIDSを治療するための一実施形態)では、遺伝子含有HP細胞のこのパーセントは、少なくとも5%、好ましくは10%超、より好ましくは20%超である。
【0106】
好ましい実施形態では、被験者は、骨髄除去または他の髄前処置療法を必要とせず、細胞送達工程により、少なくとも0.5×106治療用遺伝子含有CD34+細胞/kg体重が被験者に投与される。第I相CD34+臨床試験では、これは、抗HIV産物を含有する成熟したリンパ系(CD4+およびCD8+Tリンパ球)および骨髄系(単球/マクロファージ)の細胞の存続性(注入後1年間を超えて遺伝子含有細胞が存在する)を呈するキメラ造血系を産生するのに「十分な」用量の細胞であることが判明した。
【0107】
実施例8:
IL-2の使用
治療上の利点を得るべく注入後にIL-2を使用する。使用目的にかなったIL-2の最小用量は、3週間ごとに12日間にわたり皮下投与する場合、2〜4 MIU/m2(100万国際単位/平方メートル)、好ましくは3MIU/m2である。免疫活性化を監視し、リンパ球、活性CD4+およびCD8+T細胞、NK細胞、ならびに単球のDR発現の有意な増加を監視する。
【0108】
CD8+細胞の表面上に高親和性IL-2レセプター(CD25/CD122/CD132)が存在することから、この細胞はin vivoで低用量のIL-2に応答しうることが示唆される。
【0109】
実施例9:
細胞の注入
細胞は、細胞注入のような常用的な方法に従って被験者に送達される。細胞は、好ましくは、薬理学的に許容される担体(たとえば、5%ヒト血清アルブミン)を用いて送達される。最初に(すなわち、細胞の再注入の前)、被験者を骨髄除去または他の造血系前処置療法に付してもよいし、付さなくてもよい。
【0110】
実施例10:
遺伝子構築物の発現(Expession)の監視
注入細胞中に形質導入された遺伝子構築物の存在は、いくつかの方法により監視することができる。好ましい方法では、定量的リアルタイムPCR手順(DzyNA-PCR)が用いられる。DzyNA-PCR(Todd et al. 2000)ならびに特許第6,140,055号および第6,201,113号には、疾患または外来因子の存在に関連付けられる特異的遺伝子配列を検出するための一般的ストラテジーが提供されている。この方法は、単一の密閉容器中でリアルタイム蛍光検出と組み合わされたホモジニアス核酸増幅を可能にするシステムを提供する。このストラテジーには、10:23 DNAzyme(Santoro et al. 1997)の相補的(アンチセンス)配列を保有するDzyNAプライマーを用いる遺伝子配列のin vitro増幅が含まれる。増幅時、反応混合物に含まれるリポーター基質を切断するDNAzymeの活性(センス)コピーを含有するアンプリコンが産生される。PCR時のアンプリコンの蓄積は、リポーター基質内のDNAzyme切断部位の反対側に組み込まれた蛍光/消光染料分子の分離により生じる蛍光の変化により監視される。このリポーター基質の切断は、標的核酸配列の満足すべき増幅を示唆する。リアルタイム測定は、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)またはリアルタイムで蛍光を監視する能力を有する他のサーモサイクラーを用いて行うことができる。
【0111】
DzyNA-PCRは、疾患または外来因子の存在に関連付けられる特異的遺伝子配列を検出するための一般的ストラテジーである。この方法は、単一の密閉容器中でリアルタイム蛍光検出と組み合わされたホモジニアス核酸増幅を可能にするシステムを提供する。このストラテジーには、10:23 DNAzymeの相補的(アンチセンス)配列を保有するDzyNAプライマーを用いる遺伝子配列のin vitro増幅が含まれる。増幅時、反応混合物に含まれるリポーター基質を切断するDNAzymeの活性(センス)コピーを含有するアンプリコンが産生される。PCR時のアンプリコンの蓄積は、リポーター基質内のDNAzyme切断部位の両側に組み込まれた蛍光/消光染料分子の分離により生じる蛍光の変化により監視される。このリポーター基質の切断は、標的核酸配列の満足すべき増幅を示唆する。リアルタイム測定は、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System またはリアルタイムで蛍光を監視する能力を有する他のサーモサイクラー(たとえば、Corbett Rotor-Gene、Stratagene Mx 4000、Cepheid SmartCycler、Roche LightCycler、Biorad iCyclerなど)を用いて行うことができる。
【0112】
DzyNA PCRプロトコールは、ネオマイシン耐性遺伝子を含有するベクターおよび治療剤を分析するために開発されてきた。このアッセイは、種々の用途を有しており、たとえば、細胞の形質導入パーセントの推定、ならびに遺伝子療法を受けている患者内における形質導入細胞またはその後代の存在および定量の監視が挙げられる。
【0113】
リポーター基質Sub G5-FD、はTrilink Biotechnologies(California, USA)により合成されたものである。Sub G5-FD(以下に示す)は、RNA(以下に小文字で示す)およびDNAヌクレオチドの両方を含有するキメラ分子である。それは、PCR時におけるDNAポリメラーゼによるその伸長を防止する3'リン酸基を有する。Sub G5-FDは、指定の「T」デオキシリボヌクレオチドにFAM(F)部分およびDABCYL(D)部分を結合させて合成されたものである。リポーター基質の切断は、485nm(FAM励起波長)で励起させて530nm(FAM発光波長)で監視することができる。
【0114】
SubG5 -FDをここに示す:
5'CACCAAAAGAGAAC(T-F)GCAATguT(T-D)CAGGACCCACAGGAGCG-p 3' (SEQ ID No:7)
2つのPCRプライマーは、Sigma Genosys (NSW, Australia)により合成されたものである。5'PCRプライマー(5L1A)は、ネオマイシン耐性遺伝子にハイブリダイズする。3'プライマー(3L1Dz5)は、(a)活性DNAzymeの触媒不活性アンチセンス配列を含有する5'領域と、(b)ネオマイシン耐性遺伝子に相補的な3'領域と、を含有するDzyNA PCRプライマーである。5L1Aおよび3L1Dz5を用いるPCR増幅時、5L1Aの伸長により産生されるアンプリコンは、ネオマイシン耐性配列とその3'領域に組み込まれたDNAzymeの触媒活性センスコピーとの両方を含有する。活性DNAzymeは、RNA/DNAリポーター基質Sub G5-FDを切断するようにデザインされる。
【0115】
PCRプライマーの配列をここに示す:
5L1A (5'プライマー)
5' GAG TTC TAC CGG CAG TGC AAA 3'
3L1Dz5 (3' DzyNAプライマー)
5' CAC CAA AAG AGA ACT GCA ATT CGT TGT AGC TAG CCT TTC AGG ACC CAC AGG AGC GGC AAG CAA TTC GTT CTG TAT C 3'
ヒト細胞株CEMT4はAmerican Type Culture Collection (Rockville, MD)から入手した。ネオマイシン耐性遺伝子を含有するレトロウイルスでCEMT4細胞に形質導入した。QIAGEN DNeasy Tissue Kit (QIAGEN Pty Ltd, Victoria, Australia. Cat # 69504)を用いて、CEM T4細胞からおよびネオマイシン耐性遺伝子を保有するレトロウイルスで形質導入されたCEMT4細胞からゲノムDNAを単離した。形質導入されたDNAが次のパーセント、すなわち、100%、11%、1.2%、0.1%、0.02%、および0%(つまり形質導入されていないCEMT4が100%)になるように、形質導入された細胞から抽出されたDNAを形質導入されていない細胞に由来するDNAと混合した(重量基準)。
【0116】
CEM T4細胞からおよびネオマイシン耐性遺伝子を保有するレトロウイルスで形質導入されたCEMT4細胞から単離されたゲノムDNAをDzyNA PCRにより増幅した。反応系は、40μlの全反応系体積中に、30 pmole 5L1A、1 pmole 3L1Dz5、10 pmol Sub G5-FD、20U RNasin (Promega, Catalogue # N2515)、20pmol ROX受動的参照染料、および1×QIAGEN HotStarTaq Master mix (QIAGEN Pty Ltd, Victoria, Australia. Catalogue # 203445)+2.5mM MgCl2を含有するものであった。1μgのゲノムDNAを含有する二重反復試験方式の反応系を構築した。対照の反応系は、ゲノムDNAを除いてすべての反応成分を含有していた。反応系をABI Prism 7700 Sequence Detection Systemに入れ、95℃で10分間変性し、70℃(1サイクルごとに1℃ずつ温度を低下させる)で1分間および94℃で1分間のサイクルに10回付した。この後、60℃で1分間および94℃で30秒間のさらなるサイクルに60回付した。PCRのアニーリング/伸長段階で、ABI Prism 7700 Sequence Detection Systemにより蛍光を測定した。
【0117】
ネオマイシン耐性遺伝子を含有するゲノムDNAを有する反応系では、530nmにおけるFAM蛍光が、対照の反応系で観測される蛍光よりも増大することが示された。形質導入されたCEMT4細胞に由来するDNAを含有する1μgのゲノムDNAを分析したとき、形質導入された細胞100〜0.02%の範囲にわたり検量線は直線であった(一貫してR2>0.99)。形質導入されていない細胞に由来するDNAすなわち欠失DNAを含有する反応系でも、70回の熱サイクルのPCR時に閾値レベルよりも増大はした。標準量を用いて作成された検量線を使用すれば、未知のサンプルにおいて、ネオマイシン耐性遺伝子を含有する細胞またはDNAの割合を推定することができる。この実施例に記載されている実験には、ネオマイシン耐性トランスジーンの検出および定量に使用することのできる1セットの反応条件が示されている。このプロトコールは、当業者であれば容易に変更可能であり、それを用いてプロトコール変更後にネオマイシン耐性遺伝子からのRNA転写産物を検出したり反応混合物中への逆転写産物の組込みを検出したりすることができる。
【0118】
当業者であればわかるであろうが、広義に記述された本発明の精神または範囲から逸脱することなく特定の実施形態に示された本発明に多くの変更および/または修正を加えることが可能である。したがって、本実施形態は、いかなる点においても、例示されたものであって限定されたものではないとみなされる。
【0119】
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【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、HIV-1ゲノム内のリボザイム標的部位の位置の説明図を提供する。パネルAは、複製遺伝子、調節遺伝子、およびアクセサリー遺伝子の位置を示すHIV-1ゲノムの概略図を提供し;パネルBは、tat遺伝子内の相補的な標的配列およびハイブリダイズ配列と共にリボザイム配列を提供する。標的GUA切断部位には丸が付けられており;そしてCは、TatおよびVprタンパク質をコードする遺伝子中のGUA標的配列の位置を提供する。
【図2】図2は、本発明の方法の種々の主要な工程の説明図を提供する。
【図3】図3は、上記の図2に関係する抗原を提示する方法の説明図を提供する。アフェレーシスにより末梢血単核細胞が生成され、それからCD8+Tリンパ球および単球が単離される。
【図4】図4は、種々の細胞タイプ - CD8+、CD4+、CD34+の個体発生の説明図を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法であって、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者から白血球の集団を採取する工程と;
(c)工程(b)の該白血球から得られるCD8+細胞の集団を該nnAPC細胞と共にインキュベートする工程と;
(d)該CD8+細胞を1種以上の支援サイトカインで処理する工程と;
が含まれる、上記方法。
【請求項2】
前記nnAPC細胞が、複数の前記ウイルス特異的抗原を提示するものであり、かつ細胞を少なくとも2種の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより調製されたものであり、各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)からのCD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートすることがさらに含まれ、該付着細胞が工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの1種以上を提示するものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のウイルス抑制核酸を前記CD8+細胞に導入することがさらに含まれる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス抑制核酸が、トランスドミナントタンパク質、細胞内抗体、アンチセンス分子、RNAデコイ、干渉RNA、アプタマー、およびリボザイムよりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス抑制核酸がリボザイムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルス抑制核酸が、ヒトパピローマウイルス症、サイトメガロウイルス症、エプスタイン・バーウイルス症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、麻疹、耳下腺炎、ポリオ、風疹、インフルエンザ、黄熱病、日本脳炎、デング熱、狂犬病、ロタウイルス症、水痘帯状疱疹、チクングニア症 リフトバレー熱、呼吸器合胞体ウイルス症(Respiratory Syncitial Virus)、単純疱疹、コロナウイルス症、マールブルグ症、エボラ症、カリフォルニア脳炎ウイルス症、JCウイルス症、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス症、パルボウイルス症、ライノウイルス症、天然痘、HTLV-1症、HTLV-2症、およびHIV症よりなる群から選択される疾患に特異的である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス抑制核酸がHIV症に特異的である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス抑制核酸がCTL後代に継承される、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記付着細胞が、前記採取工程(b)時に得られる付着単球である、請求項3〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記付着単球が、末梢血単球の懸濁液から、該末梢血単球の増殖を防止するのに必要とされる十分な線量のγ線を該懸濁液に照射した後で単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベートする工程(c)が、付着末梢血単球1個に対して約10個のCD8+細胞の比で前記CD8+細胞を前記付着末梢血単球と組み合わせることを含む、請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD8+細胞が、細胞傷害性T細胞活性、CTL細胞純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率よりなる群から選択される少なくとも1つのパラメーターに関して試験される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記支援サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、およびIL-21よりなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)を開始した約4日後またはそれ以後に前記支援サイトカインが工程(d)で前記CD8+細胞に添加される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記nnAPC細胞がnnAPC細胞株を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法であって、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者からCD8+細胞を採取する工程と;
(c)該CD8+細胞を該nnAPC細胞株と共にインキュベートする工程と;
(d)工程(c)の後でインターロイキン-2(IL-2)およびインターロイキン-7(IL-7)を該CD8+細胞に添加する工程と;
(e)少なくとも1種のウイルス抑制核酸を該CD8+細胞に導入して該ウイルス抑制核酸が発現されるようにする工程と;
(f)前記CD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートする工程と、ここで、該付着細胞は工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの少なくとも1種を提示するものである;
が含まれる、上記方法。
【請求項18】
前記nnAPC細胞株が、複数のウイルス特異的抗原を提示するものであり、かつ細胞株を少なくとも8アミノ酸の長さの少なくとも2種の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより調製されたものであり、各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルス抑制核酸がリボザイムである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス抑制核酸がHIV症に特異的である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス抑制核酸がCTL後代に継承される、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記付着細胞が、前記採取工程(b)時に得られた付着単球である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの少なくとも1種を提示する前記付着細胞が、付着細胞を1種以上の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより産生されるものであり、該ペプチドまたは各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記付着単球が、末梢血単球の懸濁液から、該末梢血単球のさらなる細胞増殖を防止するのに必要とされる十分な線量のγ線を該懸濁液に照射した後で単離される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記γ線の線量が約3,000〜7,000radの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記インキュベートする工程(f)が、付着細胞1個に対して約10個のCD8+細胞の比で前記CD8+細胞を前記付着細胞と組み合わせることをさらに含む、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記CD8+細胞が、細胞傷害性T細胞活性、CTL細胞純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率よりなる群から選択される少なくとも1種のパラメーターに関して試験される、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記CD8+細胞を被験者に導入する工程がさらに含まれる、請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ウイルス抑制核酸を含むCD4+Tリンパ球もまた前記被験者に導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ウイルス抑制核酸を含むCD34+造血前駆細胞もまた前記被験者に導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ウイルス抑制核酸を含むCD34+造血前駆細胞およびウイルス抑制核酸を含むCD4+Tリンパ球の両方が前記被験者に導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
IL-2が前記細胞導入工程の後で前記被験者に投与される、請求項28〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記被験者がHIV抗原の存在に関する試験で陽性を示す、請求項17〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記CD8+細胞を前記被験者に導入した後、ある期間にわたり抗レトロウイルス療法が停止される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物であって、該集団が請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に従って産生されたものである、上記治療用細胞産物。
【請求項36】
ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物であって、該集団が請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法に従って産生されたものである、上記治療用細胞産物。
【請求項37】
感染症を有する被験者を治療する方法であって、治療上有効な用量の請求項35または36に記載の治療用細胞産物を該被験者に投与することが含まれる、上記方法。
【請求項38】
感染症を有する被験者を治療する方法であって、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)該被験者から白血球の集団を採取する工程と;
(c)工程(b)の該白血球から得られるCD8+細胞の集団を該nnAPC細胞と共にインキュベートする工程と;
(d)該CD8+細胞を1種以上の支援サイトカインで処理する工程と;
(e)工程(d)からのCD8+細胞を該被験者に導入する工程と;
が含まれる、上記方法。
【請求項39】
nnAPC細胞が、複数の前記ウイルス特異的抗原を提示するものであり、かつ細胞を少なくとも2種の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより調製されたものであり、各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートすることがさらに含まれ、該付着細胞が工程(a)と同じウイルス特異的抗原ペプチドのうちの1種以上を提示するものである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1種のウイルス抑制核酸を前記CD8+細胞に導入して該ウイルス抑制核酸がリンパ球中で発現されるようにすることがさらに含まれる、請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルス抑制核酸が、トランスドミナントタンパク質、細胞内抗体、アンチセンス分子、RNAデコイ、干渉RNA、アプタマー、およびリボザイムよりなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルス抑制核酸がリボザイムである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルス抑制核酸が、ヒトパピローマウイルス症、サイトメガロウイルス症、エプスタイン・バーウイルス症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、麻疹、耳下腺炎、ポリオ、風疹、インフルエンザ、黄熱病、日本脳炎、デング熱、狂犬病、ロタウイルス症、水痘帯状疱疹、チクングニア症 リフトバレー熱、呼吸器合胞体ウイルス症(Respiratory Syncitial Virus)、単純疱疹、コロナウイルス症、マールブルグ症、エボラ症、カリフォルニア脳炎ウイルス症、JCウイルス症、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス症、パルボウイルス症、ライノウイルス症、天然痘、HTLV-1症、HTLV-2症、およびHIV症よりなる群から選択される疾患に特異的である、請求項38〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ウイルス抑制核酸がHIV症に特異的である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルス抑制核酸がCTL後代に継承される、請求項41〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記付着細胞が、前記採取工程(b)時に得られた付着単球である、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
工程(a)と同じウイルス特異的抗原ペプチドのうちの少なくとも1種を提示する前記付着細胞が、付着細胞を1種以上の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより産生されるものであり、該ペプチドまたは各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記付着単球が、末梢血単球の懸濁液から、該末梢血単球のさらなる細胞増殖を防止するのに必要とされる十分な線量のγ線を該懸濁液に照射した後で単離される、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記γ線の線量が約3,000〜7,000radの範囲である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記インキュベートする工程(c)が、付着末梢血単球1個に対して約10個のCD8+細胞の比で前記CD8+細胞を前記付着末梢血単球と組み合わせることをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記CD8+細胞が、細胞傷害性T細胞活性、CTL細胞純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率よりなる群から選択される少なくとも1種のパラメーターに関して試験される、請求項38〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記CD8+細胞とは別に、工程(b)の前記白血球から得られるCD4+Tリンパ球の集団を前記nnAPC細胞と共にインキュベートすることと、該CD4+Tリンパ球を前記被験者に導入することと、がさらに含まれる、請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記Tリンパ球を前記被験者に導入する前に1種以上の支援サイトカインを前記CD4+Tリンパ球に添加することがさらに含まれる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記Tリンパ球を前記被験者に導入する前にウイルス抑制核酸を前記CD4+Tリンパ球の集団に導入して該ウイルス抑制核酸がリンパ球中で発現されるようにすることがさらに含まれる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記CD8+細胞とは別にCD34+造血前駆細胞の集団を前記nnAPC細胞と共にある時間にわたりインキュベートして該CD34+細胞を刺激してから該CD34+細胞を前記被験者に導入することがさらに含まれる、請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記CD34+細胞を前記被験者に導入する前に1種以上の支援サイトカインを前記CD34+造血前駆細胞に添加することがさらに含まれる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記CD34+細胞を前記被験者に導入する前にウイルス抑制核酸を前記CD34+造血前駆細胞の集団に導入して該ウイルス抑制核酸が前記CD34+細胞中で発現されるようにすることがさらに含まれる、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
ウイルス抑制核酸を含むCD34+造血前駆細胞およびウイルス抑制核酸を含むCD4+Tリンパ球の両方が前記被験者に導入される、請求項38〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記支援サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、およびIL-21よりなる群から選択される、請求項38〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記支援サイトカインがIL-2およびIL-7である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記CD8+細胞が前記nnAPC細胞と共に約5〜7日間にわたりインキュベートされる、請求項38〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
工程(c)を開始した約4日後またはそれ以後に、前記支援サイトカインが前記CD8+細胞に添加される、請求項38〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記被験者が2種以上の感染症を有し、かつ前記nnAPC細胞が各疾患に対してそれぞれ少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する、請求項38〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記nnAPC細胞が細胞株を含む、請求項38〜64のいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法であって、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者から白血球の集団を採取する工程と;
(c)工程(b)の該白血球から得られるCD8+細胞の集団を該nnAPC細胞と共にインキュベートする工程と;
(d)該CD8+細胞を1種以上の支援サイトカインで処理する工程と;
が含まれる、上記方法。
【請求項2】
前記nnAPC細胞が、複数の前記ウイルス特異的抗原を提示するものであり、かつ細胞を少なくとも2種の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより調製されたものであり、各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)からのCD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートすることがさらに含まれ、該付着細胞が工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの1種以上を提示するものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のウイルス抑制核酸を前記CD8+細胞に導入することがさらに含まれる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス抑制核酸が、トランスドミナントタンパク質をコードする核酸、細胞内抗体をコードする核酸、アンチセンス分子、RNAデコイ、干渉RNA、アプタマー、およびリボザイムよりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス抑制核酸がリボザイムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルス抑制核酸が、ヒトパピローマウイルス症、サイトメガロウイルス症、エプスタイン・バーウイルス症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、麻疹、耳下腺炎、ポリオ、風疹、インフルエンザ、黄熱病、日本脳炎、デング熱、狂犬病、ロタウイルス症、水痘帯状疱疹、チクングニア症 リフトバレー熱、呼吸器合胞体ウイルス症(Respiratory Syncitial Virus)、単純疱疹、コロナウイルス症、マールブルグ症、エボラ症、カリフォルニア脳炎ウイルス症、JCウイルス症、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス症、パルボウイルス症、ライノウイルス症、天然痘、HTLV-1症、HTLV-2症、およびHIV症よりなる群から選択される疾患に特異的である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス抑制核酸がHIV症に特異的である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス抑制核酸がCTL後代に継承される、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記付着細胞が、前記採取工程(b)時に得られる付着単球である、請求項3〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記付着単球が、末梢血単球の懸濁液から、該末梢血単球の増殖を防止するのに必要とされる十分な線量のγ線を該懸濁液に照射した後で単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベートする工程(c)が、付着末梢血単球1個に対して約10個のCD8+細胞の比で前記CD8+細胞を前記付着末梢血単球と組み合わせることを含む、請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD8+細胞が、細胞傷害性T細胞活性、CTL細胞純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率よりなる群から選択される少なくとも1つのパラメーターに関して試験される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記支援サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、およびIL-21よりなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)を開始した約4日後またはそれ以後に前記支援サイトカインが工程(d)で前記CD8+細胞に添加される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記nnAPC細胞がnnAPC細胞株を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を産生する方法であって、
(a)少なくとも1種のウイルス特異的抗原を提示する天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製する工程と;
(b)被験者からCD8+細胞を採取する工程と;
(c)該CD8+細胞を該nnAPC細胞株と共にインキュベートする工程と;
(d)工程(c)の後でインターロイキン-2(IL-2)およびインターロイキン-7(IL-7)を該CD8+細胞に添加する工程と;
(e)少なくとも1種のウイルス抑制核酸を該CD8+細胞に導入して該ウイルス抑制核酸が発現されるようにする工程と;
(f)前記CD8+細胞を非増殖性末梢血単核細胞由来付着細胞と共にインキュベートする工程と、ここで、該付着細胞は工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの少なくとも1種を提示するものである;
が含まれる、上記方法。
【請求項18】
前記nnAPC細胞株が、複数のウイルス特異的抗原を提示するものであり、かつ細胞株を少なくとも8アミノ酸の長さの少なくとも2種の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより調製されたものであり、各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルス抑制核酸がリボザイムである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス抑制核酸がHIV症に特異的である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス抑制核酸がCTL後代に継承される、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記付着細胞が、前記採取工程(b)時に得られた付着単球である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)と同じウイルス特異的抗原のうちの少なくとも1種を提示する前記付着細胞が、付着細胞を1種以上の異なるペプチドと共にインキュベートすることにより産生されるものであり、該ペプチドまたは各ペプチドが、それぞれ、前記ウイルス特異的抗原のうちの1種を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記付着単球が、末梢血単球の懸濁液から、該末梢血単球のさらなる細胞増殖を防止するのに必要とされる十分な線量のγ線を該懸濁液に照射した後で単離される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記γ線の線量が約3,000〜7,000radの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記インキュベートする工程(f)が、付着細胞1個に対して約10個のCD8+細胞の比で前記CD8+細胞を前記付着細胞と組み合わせることをさらに含む、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記CD8+細胞が、細胞傷害性T細胞活性、CTL細胞純度、無菌性、およびエンドトキシン含有率よりなる群から選択される少なくとも1種のパラメーターに関して試験される、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物であって、該集団が請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に従って産生されたものである、上記治療用細胞産物。
【請求項29】
ウイルス抑制核酸で形質導入されたかつウイルス特異的CTL活性が得られるように感作された細胞傷害性Tリンパ球集団を含む治療用細胞産物であって、該集団が請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法に従って産生されたものである、上記治療用細胞産物。
【請求項30】
感染症を有する被験者を治療するための薬剤の製造における、請求項28または29に記載の治療用細胞産物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505259(P2006−505259A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548938(P2004−548938)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001476
【国際公開番号】WO2004/042041
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(501059604)ジョンソン・アンド・ジョンソン・リサーチ・ピー・ティー・ワイ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON & JOHNSON, RESEARCH, PTY. LIMITED.
【住所又は居所原語表記】1 Central Avenue, Eveleigh 1430, NSW, Australia.
【Fターム(参考)】