説明

病原体を制御するためのアミノ酸及び核酸配列

本発明は、抗病原体タンパク質をコードしている、ニコチアナ・メガロシホン(Nicotiana megalosiphon)由来の核酸配列に関する。本発明は、病原体に対する抵抗性を示す農学的に興味深いトランスジェニック植物の入手における、この核酸分子の使用にも関する。本発明はさらに、植物病原体を制御するための、この抗病原体タンパク質を含有するバイオプロダクトに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業バイオテクノロジーの分野に、具体的には、病原物質の制御における抗病原体タンパク質の使用に関する。抗病原体タンパク質を、遺伝子組換え植物内で発現させることによって、又はバイオプロダクトとして適用すると、植物病原物質によって生じる疾患について高レベルの制御が得られる。
【背景技術】
【0002】
植物の抗病原体タンパク質は、ダイコン、タマネギ、ウマゴヤシ、コショウ、ジャガイモ及びダイズなどの作物由来の葉、葉鞘、根、塊茎、幹、果実及び花から単離されてきた。抗病原体タンパク質は、生化学及び構造レベルで研究されており、これらはおよそ5KDaであり、45〜54個のアミノ酸を有し、システインに富み、高塩基性で正電荷を持つ小さなペプチドである。植物の抗病原体タンパク質のファミリーは、構造を安定化する8個のシステインのみが保存されていると思われるため、アミノ酸組成に関して多様である。この特徴は、種々の植物の抗病原体タンパク質によって示される多様な生物活性を表している(Broekaert et al.(1995)Plant Physiol.108:1353−8)。
【0003】
植物の抗病原体タンパク質は、タンパク質前駆体の構造によって2つのグループに分けることができ、第1のグループにおいて、タンパク質前駆体は、小胞体由来のシグナルペプチド及び成熟タンパク質領域によって構成されている。このタンパク質は、分泌通路に入り、転写後プロセスのシグナルを有さない。第2のグループにおいて、抗病原体タンパク質は、シグナルペプチドと成熟領域に加えて、およそ33アミノ酸からなるC末端前領域を含有する長い前駆体によって形成される。これまでのところ、これらの抗病原体タンパク質は、ナス科各種においてのみ発見されている(Lay y Anderson(2005)Curr Protein Pept Sci. 6:85−101)。植物の抗病原体タンパク質の全てが同じ作用を有するのではなく、その一部はin vitroにおいて、幅広い糸状菌に対してマイクロモル濃度で潜在的活性を示し、他のものは真菌の増殖を阻害しないが、α−アミラーゼ及び合成のタンパク質を阻害する(Colilla et al(1990)FEBS Lett.270:191−194)。
【0004】
Shai−Matsuzaki−Huangモデルは、大部分の抗病原体タンパク質の活性について説明しており、これは、細胞膜中に正電荷を持つタンパク質が挿入されたために、その正電荷を持つタンパク質と負電荷を持つ標的細胞表面のリン脂質の相互作用が起こった後、原形質膜の内部で多量体の孔形成を引き起こす脂質置換が伴う、ペプチドと原形質膜の相互作用について説明しており、これらの多量体の孔は電位依存性イオン透過チャンネルを構成する(Thomma et al.(2002)Planta 216:193−202)。
【0005】
別のモデルは、多くの抗病原体タンパク質は、細胞質膜の透過処理によってだけではなく、細胞質標的を用いることによってもその作用を生じ、これらのタンパク質は、一旦標的細胞の内部に入ると、デオキシリボ核酸(DNA)合成、リボ核酸(RNA)及びタンパク質に影響を及ぼすという理論に基づいている。このことは、細胞質膜の透過処理を引き起こす陽イオン性タンパク質の能力は、作用機構の主要な原因ではなく、細胞内標的の探索法であり得ることを示唆している(Thomma et al.(2003)Curr Drug Targets Infect Disord.3:1−8)。
【0006】
これまでのところ、多くの種類の抗病原体タンパク質が同定及び特徴付けされており、それらの適用可能性は、遺伝子工学によって細胞ツール及び分子ツールによる植物の疾患に対する抵抗性戦略がもたらされるために、多様である(Thomma et al.(2003)Curr Drug Targets Infect Disord.3:1−8)。ダイコンの抗病原体タンパク質の構成的な発現により、葉の病原体タバコ赤星病菌(Alternaria longipes)に対するタバコの抵抗性が増大し(Terra et al.(1995)Plant Cell 7:573−588)、これは同様にアルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)を有するトマト植物においても起こることが実証された。また、抗病原体タンパク質の構成的な発現によって、圃場条件下でジャガイモ作物において、農学的に重要な真菌バーティシリウム・ダーリエ(Verticillium dahliae)に対する高い抵抗性がもたらされる(Gao et al.(2000)Nat.Biotechnol.18:1307−1310)。
【0007】
一方、ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea)種及びB.カムペストリス(B.campestris)種の抗病原体タンパク質の遺伝子を発現しているイネ植物を改変して種々の位置にあるアミノ酸を置換し、亜熱帯及び熱帯諸国において非常に重要な疾患であるイネいもち病菌(Magnapothe grisea)及びイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae)に対する抵抗性を求めているイネ植物に個々に導入した。これらの抗病原体タンパク質により両方の疾患に対する有効な抵抗性が付与され、これらの遺伝子を改変することによってトランスジェニックイネにおける幅広い抵抗性が増大した(Kawata et al.(2003)JARQ 37:71−76)。
【0008】
病原体の攻撃による作物の損失を減少させるための代替として植物の抗病原体タンパク質を適用することは、化学殺菌剤の適用に関しては有利になる。第1に、植物の抗病原体タンパク質は、宿主植物に対して、そしてこれらの植物由来産物を消費する人々に対しても毒性がない天然物質を構成するように、種子、根及び塊茎から得られる。第2に、他のタンパク質と同様に、抗病原体タンパク質は、天然物質のように急速に分解され、それらの有効性が切れた後には何の残渣も残らない(Thomma et al.(2003)Curr Drug Targets Infect Disord.3:1−8)。
【0009】
多剤耐性株の発生及び日和見病原体として認識されている酵母と同様糸状菌種の新規各種の出現に加えてAIDS、癌及び臓器移植などの疾患のために免疫低下した患者の増加が過去数十年で増大しており、常に真核病原体の制御についてが医学における主要な問題の一つとなっているため、植物の抗病原体タンパク質は、抗真菌薬の開発に用いることもできる(Thomma et al.(2003)Curr Drug Targets Infect Disord.3:1−8)。
【0010】
哺乳動物の細胞と病原体の細胞との間に類似性があるため、抗真菌化合物は、細胞壁の成分及び病原性因子のような、哺乳動物の細胞に存在しない又はめったに存在しない分子に作用すべきであり、また、抗真菌化合物は、できる限り天然で、幅広い作用スペクトルを有し、製造が容易で耐性を誘発しない製品であるべきである(Walsh et al.(2000)Medical Mycology,38:335−347)。一方、真菌の細胞膜は、スフィンゴ脂質のような真菌膜成分が哺乳動物の細胞と構造的に異なるため、これらの薬剤を開発するための魅力的な標的である。植物の抗病原体タンパク質の標的は、真菌の膜の透過処理を引き起こす自己のスフィンゴ脂質であるため、植物の抗病原体タンパク質は、スフィンゴ脂質の生合成を標的とするのではなく、完全に逆に作用する。これにより高い選択性がもたらされ、したがって、真菌の感染に対する治療について興味深い展望がもたらされる。植物の抗病原体タンパク質の一部は、ヒトにおいて臨床的に非常に興味深い病原体であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対してマイクロモル濃度で活性があるDm−AMP1、Hs−AFP1及びRs−AFP2として見出されており、治療法を開発するためのこの種の植物タンパク質の可能性の一例となっている(Thomma et al.(2003)Curr Drug Targets Infect Disord.3:1−8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決するべき重要な問題は、農学及び医学における非常に重要な側面である、広範囲の真菌病原体及び細菌病原体を効率的に制御することができるタンパク質を起源とする抗病原体製品を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の問題の解決に寄与し、ニコチアナ・メガロシホン(Nicotiana megalosiphon)から単離した新規の抗病原体タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)及びアミノ酸配列(配列番号6)を提供する。本発明のヌクレオチド配列は、いくつかの病原物質に著しい効果を有するシステインに富む小さなタンパク質をコードしている。
【0013】
a)配列番号6として特定されるアミノ酸配列、又はb)配列番号6として特定されるアミノ酸に対して1個又は数個のアミノ酸残基が除去、置換及び付加されており、病原物質による感染を制御する特性を維持しているアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている核酸も、本発明の対象である。
【0014】
本発明の一実施形態において、本発明の抗病原体タンパク質をコードしている遺伝子は、いくつかの病原物質に対して植物の抵抗性レベル及び防御力を向上させるために使用する。したがって、本発明は、配列番号6の抗病原体タンパク質の構成的発現又は誘発された発現を導く、配列番号1の核酸を用いた植物の遺伝的形質転換により、病原物質によって引き起こされる植物疾患に対する抵抗性を増大させる方法を含む。
【0015】
本発明の対象の核酸分子は、植物の形質転換に使用することができる。好ましい実現化において、抗病原体タンパク質をコードしているDNA配列は、下記の植物各種の形質転換に用いることができる:トウモロコシ(Zea mays)、アブラナ属種(Brassica sp)、アルファルファ(Medicago sativa)、イネ(Oryza sativa)、モロコシ(bicolor Sorghum)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare)、トウジンビエ(Pennisetum glaucum)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、コムギ(Triticum aestivum)、ダイズ(Glycine max)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、サツマイモ属サツマイモ(Ipomoea sweet potatoes)、キャッサバ(Manihot esculenta)、コーヒー属各種(Coffea spp.)、ココヤシ(Coconuts nucifera)、パイナップル(Pineapples comosus)、ミカン属各種(Citrus spp.)、カカオ(Theobroma cocoa)、チャノキ(Camellia sinensis)、バショウ属各種(Muse spp.)、アボカド(American Persea)、イチジク(Ficus casica)、グアバ(Psidium guajava)、マンゴー(Mangifera indicates)、パパイア(Carica papaya)、テンサイ(Beta vulgaris)、サトウキビ属各種(Saccharum spp.)、トマト(Lycopersicon esculentum)、レタス(Lactuca sativa)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、キュウリ(Cucumis sativus)、メロン(Cucumis melo)、ハイビスカス(Hibiscus rosasanensis)、バラ属各種(Rosa spp.)、チューリップ属各種(Tulipa spp.)、テーダマツ(Pinus taeda)、スラッシュマツ(Pinus elliotii)、ポンデローサマツ(ponderous Pinus)、ロッジポールマツ(Pinus contorta)、ラジアータマツ(Pinus radiata)。
【0016】
本発明は、抗病原体タンパク質を産生する農学的に興味深い植物を得るために、さまざまな方法において使用することができる。このようにして、抗病原体タンパク質をコードしている核酸配列(配列番号1)は、農学的に興味深い植物に導入されるプロモーターと組み合わせて用いることができる。抗病原体タンパク質を高レベルで発現させるために、構成的プロモーターを用いることができる。他の形態において、抗病原体タンパク質をコードしている配列を操作し特異的なプロモーターに融合させて、病原体に対して感受性がある植物の特定の組織中での発現を誘導することができる。本発明の別の対象は、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本発明において抗病原体タンパク質と称するこれらのポリペプチドはいずれも病原物質に対する生物活性を有する。本発明の別の対象は、配列番号6と少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド又は抗病原体タンパク質は、組換え法又は化学合成で得られる。本発明の抗病原体タンパク質は、DNA組換え技術によって種々の宿主系において発現させ、そこから単離することができる。本発明の具体化において、抗病原体タンパク質は、酵母において発現させることができる。好ましい実現化において、DNA組換え法のための発現は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において、好ましくは培養からの上清において行う。宿主から開始して、タンパク質単離の技法を利用して本発明のポリペプチドを得ることができる。精製プロセスは、免疫酵素、クロマトグラフィー、細胞沈殿、及び実際に公知のプロセスを用いて実現することができる。
【0018】
安定化ペプチドと融合させたアミノ酸配列(配列番号6)の変異型又は宿主のある一定の区画で発現を誘導し、分子について実証された生物活性を維持しているアミノ酸配列(配列番号6)の変異型も、本発明の対象である。一例が、配列が配列番号7で表示される融合タンパク質である。病原物質に対する制御活性を保持している、配列番号8及び配列番号9のような配列表で特定されている抗病原体タンパク質断片も本発明の対象である。本発明の別の態様は、配列番号6、配列番号7として特定される、病原物質を制御するためのバイオプロダクト又は配列番号6と少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドである。
【0019】
本発明において、これらの抗病原体タンパク質は、初めて、その使用により良い公共認識と少ない規制上の要件がもたらされるよう、高安定性及び低濃度で、病原物質によって起こる主要な植物疾患に対する高防御レベルを付与するバイオプロダクトに用いられる。本発明の抗病原体タンパク質を含有するバイオプロダクトにより、真菌及び細菌に対するこれまで報告されていない高防御レベルが生じる。バイオプロダクトを実現するために、抗病原体タンパク質は、懸濁液、溶液、エマルション、粉末、顆粒、乳剤、エアロゾル、含浸体、アジュバント顆粒、ペースト(pasture)によって、又はカプセル化によって調剤することができる。本発明の実現化において、バイオプロダクトは、遺伝子形質転換された宿主から精製されたポリペプチドを含有する、又は、この宿主の培養物の上清中に含有されたポリペプチドが直接使用される。好ましい実現化において、宿主はP.パストリス(P.pastoris)である。
【0020】
本発明の具体化において、特許請求した配列を有する抗病原体タンパク質、並びにそれらを含有するバイオプロダクトを、下記の多種多様な病原体を制御するために初めて使用することができる:アスペルギルス属(Aspergillus)、アオカビ属(Penicilium)、アルテルナリア属(Alternaria)[(アルテルナリア・ブラシコ−ラ(Alternaria brassicola);アルテルナリア・ソラニ;黒斑病菌(Alternaria alternata)];サトウキビ眼点病菌(Bipolaris sacchari);ボツリティス・シネレア(Botrytis cinerea);セルコスポラ属(Cercospora)[セルコスポラ・キクチイ(Cercospora kikuchii);セルコスポラ・ゼアエ−マイディス(Cercospora zaea−maydis);セルコスポラ・メジカギニス(Cercospora medicaginis);セルコスポラ・ソジナ(Cercospora sojina);セルコスポラ・ソルギ(Cercospora sorghi)];クラドスポリウム・フルバム(Cladosporium fulvun);コレトトリカム属(Colletotrichum)[コレトトリカム・リンデムチアナム(Colletotrichum lindemuthianum);コレトトリカム・デマティウム(Colletotrichum dematium);コレトトリカム・グラミニコーラ(Colletotrichum graminicola)]、ディプロディア・マイディス(Diplodia maydis);エリシフェ属(Erysiphe)[エリシフェ・グラミニス 品種グラミニス(Erysiphe graminis f.sp.graminis);エリシフェ・グラミニス品種ホルデイ(Erysiphe graminis f.sp.hordei)];フザリウム属(Fusarium)[フザリウム・ニバレ(Fusarium nivale);フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum);フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum);フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum);フザリウム・ソラニ(Fusarium solani);フザリウム・モニリホルメ(Fusarium moniliforme);フザニウム・ロゼウム(Fusarium roseum)];ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)[ヘルミントスポリウム・ツルシクム(Helminthosporium turcicum);ヘルミントスポリウム・カルボヌム(Helminthosporium carbonum);ヘルミントスポリウム・マイディス(Helminthosporium maydis)];イネいもち病菌;マイコスファエレラ・フィジエンシス(Mycosphaerella figensis);ツユカビ属(Peronospora)[ダイズべと病菌(Peronospora manshurica);タバコべと病菌(Peronospora tabacina)];フォーマ・ベタエ(Phoma betae);フィトフトラ属(Phytophthora)[フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi);フィトフトラ・カクトルム(Phytophthora cactorum);フィトフトラ・ファセオリ(Phytophthora phaseoli);フィトフトラ・パラシティカ(Phytophthora parasitica);フィトフトラ・シトロフトラ(Phytophthora citrophthora)、フィトフトラ・メガスペルマ 品種ソジャエ(Phytophthora megasperma f.sp. sojae);ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)]、プシニア属(Puccinia)[プシニア・ソルギ(Puccinia sorghi);プシニア・ストリホルミス(Puccinia striiformis);プシニア・グラミニス 品種トリチシ(Puccinia graminis f.sp.tritici);プシニア・アスパラギ(Puccinia asparagi);プシニア・レコンディタ(Puccinia recondita);プシニア・アラチディス(Puccinia arachidis);プシニア・メラノセファラ(Puccinia melanocephala)]、フハイカビ属(Pythium)[フィチウム・アファニデルマツム(Pythium aphanidermatum);フィチウム・ウルチムム(Pythium ultimum)];イネいもち病菌(Pyricularia oryzae);リゾクトニア属(Rhizoctonia)[リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani);リゾクトニア・セレアリス(Rhizoctonia cerealis)];スセロチウム・ロルフシイ(Scerotium rolfsii);スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum);セプトリア属(Septoria)[セプトリア・リコペルシシ(Septoria lycopersici);セプトリア・グリシネス(Septoria glycines);セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum);セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)];チエラビオプシス・バシコラ(Thielaviopsis basicola);ウスチラゴ属(Ustilago)[トウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis);ウスチラゴ・スシタミネア(Ustilago scitaminea)];バーティシリウム属(Verticillium)[バーティシリウム・ダーリエ;バーティシリウム・アルボアトルム(Verticillium alboatrum)];シュードモナス・シリンガエ グリシネア型(Pseudomonas syringae p.v.glycinea);キサントモナス・カムペストリス ファセオリ型(Xanthomonas campestris p.v.phaseoli);キサントモナス・カムペストリス アルファルファエ型(Xanthomonas campestris p.v.alfalfae);キサントモナス・カムペストリス トランスルセンス型(Xanthomonas campestris p.v.translucens);シュードモナス・シリンガエ シリンガエ型(Pseudomonas syringae p.v.syringae);エルウィニア・カロトボルム カロトボラ型(Erwinia carotovorum p.v.carotovora);エルウィニア・ステワルティ(Erwinia stewartii);クラビバクター・ミチガネンセ ネブラスケンセ亜種(Clavibacter michiganense subsp.Nebraskense);シュードモナス・アベナエ(Pseudomonas avenae);エルウィニア・クリサンテミ ゼア型(Erwinia chrysanthemi p.v.zea);エルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora);キサントモナス・カムペストリス ホルシコラ型(Xanthomonas campestris p.v.holcicola)、シュードモナス・アンドロポゴニス(Pseudomonas andropogonis)及びシュードモナス・アベナエ。好ましい実現化において、バイオプロダクトは、植物の真菌を制御するのに有効である。本発明の具体化において、ポリペプチドは、1〜9μg/mlの濃度範囲でバイオプロダクト中に含まれる。
【0021】
配列番号6、配列番号7で特定されるポリペプチド又は配列番号6と少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドを含むバイオプロダクトを植物に適用することを特徴とする、植物病原物質を制御する方法も、本発明の一部である。本発明の別の具体化において、植物病原物質を制御する方法は、本発明のバイオプロダクトをバイオ農薬と組み合わせて適用することを特徴とする。病原物質によって生じる植物疾患に対する抵抗性を増大させるために、配列番号1の核酸配列又は配列番号1由来の核酸配列を用いて遺伝子改変された植物(トランスジェニック植物)も本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】植物(図1A)及び酵母(図1B)において、対象の抗病原体タンパク質を発現ベクターにクローニングする戦略を示す図である。
【図2】サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のアルファ因子由来のシグナルペプチドに融合させたpPIC9Kベクターを用いた、ピキア・パストリスにおける抗病原体タンパク質の発現を示す図である。P.パストリスの上清(A)及び精製画分(B)における抗病原体タンパク質の産生。
【図3】トランスジェニック植物における抗病原体タンパク質の構成的発現の試験及び疾患抵抗性の評価を示す図である。この図は、対照試料及び抗病原体タンパク質を発現しているトランスジェニッククローンにおける、疾患の症状がある葉及び茎の割合を示している。(図3A)タバコの葉に対するペロノスポラ・ヒオシアミ 品種タバシナ(Peronospora hyoscyami f.sp.tabacina)の影響。(図3B)ジャガイモの葉に対するアルテルナリア・ソラニ(Alternate solani)の影響。(図3C)タバコの茎に対するフィトフトラ・パラシティカの影響。(図3D)ジャガイモの葉に対するジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)の影響。図の棒線は、a.接種した対照、b.接種していない対照、c.クローン1.1、d.クローン1.2、e.クローン1.3を示す。
【図4】種々の濃度のいくつかの植物病原体に対する抗病原体タンパク質の活性の試験を示すグラフである。このグラフは、種々の濃度の、アルファ因子のシグナルペプチドに融合した抗病原体タンパク質(A)及びシグナルペプチドなしで合成した抗病原体タンパク質(B)で処理した病原体由来の液体培地における増殖阻害の割合を示している。図4Bの凡例:□アルファ因子のシグナルペプチドに融合させたタンパク質の、ジャガイモ疫病菌に対する効果、◆シグナルペプチドなしのタンパク質の、ジャガイモ疫病菌に対する効果、■対照。
【図5】抗病原体タンパク質NmDef−02製剤の、土壌中の病原体(A)及び空気中の病原体(B)に対する制御効果の試験を示すグラフである。図の棒線は、■対照植物、□殺菌剤で処理した植物、◆抗病原体タンパク質製剤で処理した植物を示す。
【図6】ジャガイモ疫病菌に対する抗病原体タンパク質NmDef−02断片の生物活性を示すグラフである。□ジャガイモ疫病菌に対する配列番号8のペプチドの効果、◆ジャガイモ疫病菌に対する配列番号9のペプチドの効果。
【実施例】
【0023】
(例1)
植物材料の調製、ニコチアナ・メガロシホンからの、抗病原体タンパク質NmDef−02をコードしているDNAの単離及びクローニング
N.メガロシホン(N.megalosiphon)種を、ブラッククラウド(black crowd)とコメの殻を4:1の比率で含有する6インチのポットで生長させ、23℃の温室条件下で維持した。ハバナのタバコ畑で採取したペロノスポラ・ヒオシアミ 品種タバシナの単離体を接種に用いた。接種は、6週齢のこの種の植物に、1ml当たり胞子5×10個の濃度の液滴10μlをいくつか置いて行った。植物を湿度が高い黒いプラスチックの袋の中に12時間置き、感染を促進した(湿度は、袋の内部に水を噴霧して実現した)。
【0024】
接種した6日後、遠心法(spin)の全RNA抽出システム(Promega,Madison,WI,USA)を用いてN.メガロシホンの葉から全RNAを抽出した。最後に、PromegaのcDNA合成システムを用いて二重鎖cDNAを合成した(cDNA)。
【0025】
抑制サブトラクションハイブリダイゼーション選択システム(Clontech,Palo Alto,AC,USA)を使用し、サブトラクションハイブリダイゼーションを用いてcDNAライブラリーを作製した。P.ヒオシアミ(P.hyoscyami)を接種し、接種した6日後に収穫したN.メガロシホン植物から得たcDNAを、サブトラクションの試料として用いた。サブストラクションライブラリーを、説明書に従ってpGEM−T Easyベクター(Promega)にクローニングした。
【0026】
自動シーケンサーを用いてcDNAの配列決定を展開した。配列決定分析後、データベースに報告されているタンパク質との相同性レベルが低いDNA配列を選択し、その後の試験に使用した。
【0027】
(例2)
抗病原体タンパク質NmDef−02の遺伝子を用いた植物の形質転換
タバコトランスジェニック植物の作出:バイナリーベクターの構築
本試験において、抗病原体タンパク質をコードしている遺伝子の完全なcDNAを、配列番号2及び配列番号3のオリゴヌクレオチドを用いて単離し、HindIII/PstI制限部位において形質転換ベクター「pCambia 2300」にクローニングした(図1A)。タバコ植物の遺伝子形質転換を、Zambryski et al.(1983)EMBO Journal,2:2143−2150から得た方法によって行った。この計画のために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のAT2260株を、開発したバイナリーベクターと液体窒素法(Hofgen and Willmitzer(1988)Nucl.Acids Res.16:9877)に使用した。in vitroで培養した変種プチ・ハバナ(Petit Havana)SR1のタバコ(N.tabacum)植物の葉の円盤状切片を形質転換した。マーカー剤として100mg/Lのカナマイシンを用いた。葉の円盤状切片を、ムラシゲ・スクーグ(MS)液体培地中で48時間、組換えアグロバクテリウムと共培養した。タバコ植物の再分化(4〜6週間)を、ショ糖25g/L、6−ベンジルアミノプリン(BAP)1mg/L、ナフタリン酢酸(ANA)0.1mg/L、カナマイシン100mg/L及びクラフォラン(Claf)500mg/Lを含有するMS培地において行った。植物の発根(1〜3週間)を、ショ糖30g/L、カナマイシン100mg/L及びClaf500mg/Lを含有するMSにおいて行った。
【0028】
ジャガイモトランスジェニック植物の作出:バイナリーベクターの構築
本試験において、抗病原体タンパク質をコードしている遺伝子の完全なcDNAを、配列番号2及び配列番号3のオリゴヌクレオチドを用いて単離し、HindIII/PstI制限部位において形質転換ベクター「pCambia 3300」にクローニングした(図1A)。組織培養及び形質転換の試験に使用した植物材料は、ジャガイモ栽培品種「Desiree」由来の植物からin vitroで取得した。植物を試験管内でMS培地において生長させた。培地のpHは5.7に調整した。4週間培養した植物を用い、25℃、照明が2000ルクスの部屋で維持した。再分化試験及び形質転換のベースとして使用した培地はSC(MS塩、ビタミンB1 0.4mg/L、ミオイノシトール100mg/L、ショ糖20g/L、BAP3.5mg/L、ANA0.01mg/L、植物寒天(phytoagar)6g/L)、SB(MS塩、ミオイノシトール100mg/L、ショ糖20g/L、AG3.5mg/L、植物寒天6g/L)及びPP(MS塩、ビタミンB1 0.4mg/L、ミオイノシトール100mg/L、パントテン酸カルシウム2mg/L、ショ糖30g/L、植物寒天6g/L、活性炭5g/L及び硝酸銀−チオ硫酸ナトリウム1mg/L(STS))であった。
【0029】
アグロバクテリウムの「At2260」株及び「LBA4404」株を形質転換に用いた。この細菌を、酵母抽出物1g/L、バクトペプトン(bacto−peptone)1g/L、ショ糖5g/L及びラブレムコ(Lab−lemco)粉末5g/Lを有する培地において、28℃、暗条件下で吸光度(OD)620が0.7〜0.9に達するまで培養した。
【0030】
形質転換−再分化の手順は、以下のように2段階で展開した:in vitroで4週間培養した植物の茎のセグメントを暗闇中25℃で12〜16時間、MS培地でインキュベートし、次いで、A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)を、外植片をMS培地各20mlに対し1mLの当該細菌の懸濁液を用いて7分間インキュベートすることにより感染させ;その外植片を、暗闇中、22℃で48時間、SC培地で共培養し、その外植片を無菌ろ紙上に置いた。その外植片を慎重に、MS培地で洗浄し、無菌ろ紙で慎重に乾燥させた。第1段階において、その外植片を、明条件下、SC選択培地、クラフォラン500mg/L及びホスフィノトリシン(PPT)5mg/Lで15日間培養し、第2段階において、その外植片を、明条件下、SB選択培地、クラフォラン500mg/L及びPPT5mg/Lで培養した。最後に、小植物を、PP選択培地においてクラフォラン500mg/Lを用いて個別化し、PPT5mg/Lにおいて選択した。
【0031】
(例3)
疾患抵抗性に対する抗病原体タンパク質NmDef−02の効果の評価
ペロノスポラ・ヒオシアミ 品種タバシナに対するタバコの疾患抵抗性試験
抗生物質カナマイシンに対する抵抗性を有し、抗病原体タンパク質の遺伝子を有する根付きの植物を、45日間、温室条件下で適応させるためにポットに植えた。45日後、6週齢のトランスジェニッククローン100体からなる群に、ペロノスポラ・ヒオシアミ 品種タバシナの懸濁液を、胞子5×10個/mlの濃度の液滴10μlをいくつか置いて接種した。その植物を12時間、黒いプラスチックの袋の中に置いて水を噴霧し、感染を促進した。1週間後に疾患の症状がある葉の割合を測定して感受性の評価を行った(図3A)。図3Aから分かるように、接種した対照と種々のクローンの間で症状がある葉の割合を比較した場合、この病原体に対する高い抵抗性レベルが実現し、これは、この重要な病原体を制御するために用いた抗病原体タンパク質の有用性を示している。
【0032】
フィトフトラ・パラシティカに対するタバコの疾患抵抗性試験
抗生物質カナマイシンに対する抵抗性を有し、抗病原体タンパク質の遺伝子を有する根付きの植物を、45日間、温室条件下で適応させるためにポットに植えた。45日後、6週齢のトランスジェニッククローン100体からなる群に、P.パラシティカ(P.parasitica)を接種し、1カ月後に疾患の症状がある茎の割合を評価した。
【0033】
評価手順のために、P.パラシティカ(P.parasitica)を、39g/Lの濃度のポテトデキストロース寒天(PDA)培地を含有するペトリ皿で増殖させた。この病原体を10日間、27℃でインキュベートした。タバコ植物に接種するために、病原体を有するPDA円盤状切片(直径1cm)を茎の基部に置き、高湿度、28℃でインキュベートした(図3B)。図3Bから分かるように、抗病原体タンパク質を発現しているクローンは、この作物の実生期において重要な損失を引き起こすこの土壌中の病原体に対して、かつて見られなかった高い抵抗性レベルを実現した。この結果は、この病原体を制御するためにこのタンパク質を使用することが可能であることを実証している。
【0034】
ジャガイモ疫病菌に対するジャガイモの疾患抵抗性試験
この試験は、5週齢のジャガイモトランスジェニック植物に、明るさ、温度及び相対湿度の制御条件下でジャガイモ疫病菌を接種することにある。抗病原体タンパク質を発現している5週齢のクローン約100体を、遊走子10個/mlの懸濁液で拡散させた。このクローンを、相対湿度85〜95%及び温度23℃の制御条件下で維持した。接種した1週間後の、症状がある葉の割合を、この病原体に対する感受性の尺度として用いた(図3C)。この病原体は制御するのが極めて困難であるので、これは予想外の結果であった。図3Cにおいて、抗病原体タンパク質を発現しているクローンは、対照と比較して高い抵抗性レベルを示した。この結果は、この病原体の制御においてこのタンパク質を用いることの可能性、とりわけ世界的なレベルでの重要性について指摘している。
【0035】
アルテルナリア・ソラニに対するジャガイモの疾患抵抗性試験
真菌アルテルナリア・ソラニを、明るさ、温度及び相対湿度の制御条件下で、5週齢のジャガイモトランスジェニック植物100体に接種した。クローンに、胞子10個/mlの懸濁液を拡散させた。このクローンを、相対湿度85〜95%及び温度20℃の制御条件下で維持した。接種した1週間後の、症状がある葉の割合を、この病原体に対する感受性の尺度として用いた(図3D)。3種の分析クローンがこの病原体に対する高い抵抗性レベルを示し、制御するためにこのタンパク質を用いることの可能性が初めて提供される。
【0036】
(例4)
ピキア・パストリス培養物の上清における、細胞外での抗病原体タンパク質NmDef−02の発現ベクターの構築
N.メガロシホン(N.megalosiphon)由来の抗病原体タンパク質をコードしている遺伝子を、配列番号4及び配列番号5に対応する特異的オリゴヌクレオチドを用いて単離し、発現ベクターpPIC9kのクローニングに必要な制限酵素部位XhoI/EcoRIを有する、抗病原体タンパク質NmDef−02をコードしている遺伝子の完全な配列を得た。このクローニング戦略により、得られるタンパク質が配列番号7に属するよう、対象のタンパク質のアミノ末端にサッカロマイセス・セレビシエのアルファ因子のシグナルペプチドが付加される(図1B)。P.パストリスのGS115株を形質転換する前にプラスミドをBgIIIで直鎖化した。電気穿孔法によって形質転換を行った。GS115株は、形質転換後にHis表現型を獲得するhis3栄養要求性変異株である。Hisクローンをグルコース最小培地で選択し、そのクローンをグリセロール最小培地で培養し、28℃で126時間、メタノールを用いて誘導した。
【0037】
形質転換されたクローンをドットブロットによって同定した。サザンブロット法を用いて、Mut(低メタノール)表現型及びHis表現型に対応する組換えプラスミドを発現させるためのP.パストリス由来の遺伝子AOX1の置換のために起こった組込みを測定した。P.パストリスは低レベルの自己のタンパク質を分泌し、その培地にタンパク質を補充する必要はなく、細胞内の培地に分泌されるタンパク質は、培養物中の全タンパク質の大部分(80%を超える)を構成することが期待され得る(Tschopp et al.(1987)Bio/Technology 5:1305−1308)。P.パストリス(P.pastoris)において、5リットルのバッシュ内で培地にメタノールを加えることによって抗病原体タンパク質を発現させた。抗病原体タンパク質の発現及びその完全性を、質量分析によって確認した。
【0038】
(例5)
抗病原体タンパク質の精製及びその生物活性のアッセイ
アルファ因子のシグナルペプチドに融合させた抗病原体タンパク質(NmDef−Plus)を、25mMの酢酸ナトリウム、pH4.5で透析し;透析の産物を、25mMの酢酸ナトリウム、pH4.5で平衡化した陽イオン交換樹脂CM−Sepharosaの高速流を通して使い;タンパク質を1Mの塩化ナトリウム、50mMのトリス、pH7.6を用いて溶出することによって、培地の上清から精製した。タンパク質含有画分を回収し、孔サイズ(カットオフ)が3kDaの膜を用いた超遠心システムを使用して濃縮した。254nmの波長を検出に用いた。SDS−PAGE、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(15%ris−Glicne)を用いたポリアクリルアミドにおける電気泳動によって精製の確認を行い、銀染色法によってタンパク質を可視化した(図2)。
【0039】
分光光度法及びブルーラクトフェノールを用いた染色による光学顕微鏡法を通じた菌糸体の分析によって、抗病原体タンパク質の抗真菌活性を定量化した(Terras et al.(1992)J.Biol.Chem.267:14301−15309)。ポテト−グルコース液体培地50μL、病原体の胞子懸濁液50μL及び部分的に精製した抗病原体タンパク質20μLを加えた96ウェルプレートにおいて評価を行った。
【0040】
病原体の増殖阻害の割合(PIC)を、以前の報告(Terras et al.(1992)J.Biol.Chem.267:14301−15309)に従って、以下の方程式によって測定した。
【数1】

【0041】
阻害の割合間の関係は、アッセイを開始した48時間後の、対照及び処理した試料について認識された読み取り値(595nmに対する)を先の方程式に適用することによってもたらされる(図4A)。
【0042】
アルファ因子のシグナルペプチドを有さない抗病原体タンパク質を化学合成し、病原体ジャガイモ疫病菌(P.infestans)に対する、種々の濃度でのその効果を、以前の報告(Terras et al.(1992)J.Biol.Chem.267:14301−15309)に従って評価した(図4B)。
【0043】
図4A及び4Bにおいて、抗病原体タンパク質は、アルファ因子のシグナルペプチドに融合したかシグナルペプチドを用いずに化学合成したかのいずれかで、高レベルでの植物病原体の増殖阻害を実現した。非常に興味深いことに、報告されている他の抗真菌タンパク質によっては現在までに実現していない、重要な植物病原体の阻害が初めて観察された。別の予期されなかった結果及びこの抗病原体タンパク質を幅広い作用スペクトルで利用可能にする結果は、細菌病原体において示された高い阻害レベルであった(表1)。
【表1】

【0044】
(例6)
土壌中及び空気中の真菌病原体に対する、抗病原体タンパク質NmDef−02製剤による制御の実証
タバコ種の種子を、抗病原体タンパク質製剤(9μg/ml)及び5%アルギン酸ナトリウムで処理し、その後、その種子を、ブラッククラウド及びコメを4:1の比率で含有する6インチのポット内で発芽させ、23℃の温室で維持した。対照として、この処理に、10%次亜塩素酸ナトリウムで処理した種子及び何の処理もしていないタイプの種子を用いた。30日目に評価を行い、自然感染によって枯れた植物の割合を測定した(図5A)。
【0045】
一方、温室内の植物100体に、5μg/mlの濃度の有効成分及び5%アルギン酸ナトリウムを有する抗病原体タンパク質製剤を噴霧した。対照として、40g/Lの濃度の殺菌剤ベノミルを有する散布剤及び水を使用した。処理を適用した45日後、自然感染による症状がある葉の割合を評価した(図5B)。
【0046】
図5A及び5Bにおいて、抗病原体タンパク質製剤により、使用した対照と比較して、土壌中及び空気中の真菌病原体の制御が実現し、この結果は今までのところ報告されておらず、植物病原体の制御において、このタンパク質をバイオプロダクトとして使用することを可能にしている。
【0047】
(例7)
抗病原体タンパク質NmDef−02断片の生物活性
抗病原体タンパク質NmDef−02の断片を化学合成によって得た(配列番号8及び配列番号9)。病原体ジャガイモ疫病菌に対する効果を、報告されている情報(Terras et al.(1992)J.Biol.Chem.267:14301−15309)に従って、種々の濃度に関して評価した。それを図6に示す。得られた結果から、配列番号9のタンパク質画分を用いると、病原体の制御又は阻害を実現するためにタンパク質画分を使用することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1として特定される核酸配列を含む核酸。
【請求項2】
a)配列番号6として特定されるアミノ酸配列、又はb)配列番号6として特定されるアミノ酸に対して1個又は数個のアミノ酸残基が除去、置換及び付加されており、病原物質による感染を制御する特性を維持しているアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている核酸。
【請求項3】
配列番号6を含む抗病原体タンパク質の構成的発現又は誘導された発現を導く、配列番号1として特定される核酸配列を含む核酸配列を用いた植物の遺伝子形質転換により、病原物質によって生じる植物疾患に対する抵抗性を増大させる方法。
【請求項4】
配列番号6又は配列番号7として特定されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項5】
配列番号6と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列をそのポリペプチド鎖に含むポリペプチド。
【請求項6】
組換え法又は化学合成によって得られる、請求項4及び5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
組換えDNA法による発現を、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、好ましくはその培養上清において行う、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
配列番号6、配列番号7として特定されるポリペプチド又は配列番号6と少なくとも60%の相同性を有するポリペプチドを含む、病原物質を制御するためのバイオプロダクト。
【請求項9】
ポリペプチドが遺伝子形質転換された宿主から精製され、又はそのような宿主の培養物の上清中に含有されたポリペプチドが直接使用される、請求項8に記載のバイオプロダクト。
【請求項10】
宿主がP.パストリス(P.pastoris)である、請求項9に記載のバイオプロダクト。
【請求項11】
病原物質が真菌病原体である、請求項8に記載のバイオプロダクト。
【請求項12】
ポリペプチドが1〜9μg/mlの濃度範囲にある、請求項8に記載のバイオプロダクト。
【請求項13】
配列番号6又は配列番号7として特定されるポリペプチドの断片を含む、病原物質を制御するためのバイオプロダクト。
【請求項14】
請求項8に記載のバイオプロダクトを植物に適用することを特徴とする、植物病原物質を制御する方法。
【請求項15】
請求項8に記載のバイオプロダクトをバイオ農薬と混合して適用することを特徴とする、植物病原物質を制御する方法。
【請求項16】
病原物質によって生じる植物疾患に対する抵抗性を増大させるために、配列番号1として特定される核酸配列を用いて遺伝子改変された植物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−515092(P2011−515092A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501095(P2011−501095)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/CU2009/000003
【国際公開番号】WO2009/117975
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】