説明

痙症の兆候および症候の緩和方法

【課題】人間の患者の痙症の兆候および症候の、効果的な緩和方法を提供する。
【解決手段】有効な1日投与量のバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩を含有する制御型ドラッグデリバリーシステムを、人間の患者に1日1回経口投与することを含む方法であって、同一の1日総投与量で1日3回投与される即放性錠剤を用いた従来のバクロフェン治療に対応するセデーションレベルと比較して、該患者のセデーションレベルを減少させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痙症の兆候および症候の緩和方法を提供する。特に、本発明は、バクロフェンの制御型ドラッグデリバリーシステムを1日1回経口投与することを含む、痙症の兆候および症候の緩和方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バクロフェンは、抑制性神経伝達物質と推定されているガンマアミノ酪酸(GABA)の類似体であり、化学的には4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)−ブタン酸として知られている。バクロフェンは、シナプス前部およびシナプス後部の経路を介して作用するGABA作用物質である。主たる作用箇所は脊髄であり、そこでは、バクロフェンにより興奮性神経伝達物質の放出が減少される。バクロフェンは、身体における特定の筋肉の弛緩を促進させるために用いられている。バクロフェンは、多発性硬化症、脳性麻痺、あるいは脊髄の特定の損傷または疾病等の医学的問題によって引き起こされる痙攣、筋痙攣、および筋肉の張りを軽減する。バクロフェンは、多発性硬化症により引き起こされる痙症の兆候および症候を緩和するものとして、屈筋痙攣(flexor spasms )およびそれに付随する痛み、間代性痙攣、ならびに筋固縮を軽減するものとして世界的に認められている。
【0003】
バクロフェンの吸収および消失に関しては、被験者間に大きなばらつきがあるが、平均的には、経口投与後、迅速かつ広範囲にわたって吸収される。バクロフェンの血漿消失半減期は約3.5時間(2〜6時間の範囲)である。バクロフェンは、15%が肝臓において代謝されるが、主に腎臓において未変化体で排出される。従来のバクロフェン治療においては、即放性錠剤、例えば10mgまたは20mgの即放性錠剤が1日3回投与されていた。用量は1日あたり30mg〜100mgの範囲であり、分割して服用される。バクロフェンは、米国において、単一ボーラステスト(single bolus test )の用量における、髄腔内経路により投与される(脊髄カテーテルまたは腰椎穿刺を介した)注入や、特に髄腔内スペースへのバクロフェン注入投与に対して米国食品医薬品局により認可された埋込ポンプによる連用に対しても利用可能である。
【0004】
ここで用いられる「即放性バクロフェン錠剤」という語は、胃液中で崩壊し、その直後に胃液中にバクロフェンを放出するバクロフェン錠剤を指す。即放性バクロフェン錠剤を頻繁に投与することにより、血漿中濃度が変動し、ピークおよびトラフが生じる。ピークは、眠気(セデーション)、眩暈、および筋脱力等の副作用と関連し、トラフにより、筋痙攣の制御が適切に行われなくなる。眠気および筋脱力等の副作用は、処方者が治療が最適となる用量までの漸増(up titration)を行うことを阻む主たる要因として考えられている。従来のバクロフェン治療においては、薬物を頻繁に投与しなくてはならないことが一般の懸念事項である。内科的疾患のある患者による、薬物治療の遵守不良は15%〜85%の範囲であると報告されている。多くの要因が薬物治療の遵守不良と関連するものの、必要な服用回数が最低となる薬物を処方することにより、医者は遵守向上を促進可能であると考えられている。従来のバクロフェン治療と同一の治療上の有効性を有する、1日1回または1日2回(b.i.d.)の用量の処方であれば、治療に対する患者の遵守は大きく向上する。より多くの患者が治療計画に従うことから、治療結果も向上する。
【0005】
しかしながら、従来技術は、バクロフェン放出を8時間を超えて遅延させる、制御型システム、持続性システム、または修正放出システムは適切ではないかもしれないと教示している。メリノ(Merino)ら(『Proc.Eur .Congr .Biopharm.Pharmacokinet.,3rd 』(1987年)、2、564〜73頁)は、ラット小腸におけるバクロフェンの腸管吸収に関する研究を発表している。本参考文献は、よりよい治療上の反応を得るために持続性放出形態の薬剤を投与することや用量を増加させたバクロフェンを用いることは、人間の臨床診療に対しては適切ではない可能性があると結論している。
【0006】
また、メリノらは『生物薬剤学と薬物動態』((1989年)、10(3)、279〜97頁)でも、ラット小腸におけるバクロフェンの腸管吸収に関する研究を発表している。メリノらによると、血漿中レベルを安定した状態で上昇させる必要がある場合には通常の用量のバクロフェンをより短い間隔で投与すること、および、バクロフェンの8時間を超える持続性放出の製剤は避けるべきであることが推奨されている。
【0007】
バクロフェンは、血漿内の濃度の約12%に相当する脳脊髄液(CSF)内の濃度で、血液−脳関門を通る。CSFからのバクロフェンの消失半減期は、約4〜5時間である。従って、CSFに留まる薬剤の量は、バクロフェンの治療上の効果を左右する。痙症に有意な減少が観察された血漿中最低濃度は90ng/mlであった(クヌートソン(Evert Knutsson),リンドブロム(Ulf Lindblom),マーテンソン(Anders Martensson)「痙攣性不全麻痺の最適な治療反応におけるバクロフェン(リオレサール(商標:Lioresal))の血漿中レベルおよび脳脊髄液中レベル」『神経科学誌(J .Neurological Sciences )』1974年、23:473〜484頁を参照)。1日2回または3回投与される従来の放出性錠剤では、血漿中濃度ひいてはCSF中濃度にピークおよび谷間が生じ、これは好ましくない。本発明者らは、バクロフェンの経口制御型ドラッグデリバリーシステムを開示し、言及することにより本出願に組み込まれる、本発明者らによる同時係属中のPCT出願WO03/011255A1(以下、「‘255出願」とする)においてこの問題を解決しようとした。‘255出願においては、システムが1日1回の投与に適切となるような血液中レベルを実現する処方を例示している。痙症の兆候および症候の緩和においてよりよい効力を提供するシステムを開発するための継続した努力によって、本発明者らは、‘255出願のシステムよりも高いバクロフェンの血漿中レベルを実現する制御型ドラッグデリバリーシステムを設計した(言及することにより本出願に組み込まれる、本発明者らによる同時係属中のPCT出願WO2005/101983A1(以下、「‘983出願」とする)を参照)。健康な人間のボランティアの場合、‘983出願のシステムだけではなく‘255出願のシステムでも、従来のバクロフェン治療により提供されるレベルよりも高い血漿中レベルが実現された。従って、両システムともに、従来のバクロフェン治療と比較してよりよい治療上の効力を提供することが期待された。しかしながら、バクロフェンの血漿中レベルが上昇することにより、特に多重投与の場合、バクロフェン治療に関連する副作用が増加すると考えられた。さらに、患者の痙症の兆候および症候を緩和するために、バクロフェンの臨床用途にどちらのシステムがより好ましいかが明らかではなかった。
【0008】
本発明者らは、制御型ドラッグデリバリーシステムを1日1回経口投与することによる痙症の兆候および症候の緩和方法を見出した。驚くべきかつ予期せぬことに、本方法は、反復投与または多重投与においても、従来のバクロフェン治療に対応するセデーションレベルよりも統計的に有意に低いセデーションレベルを実現した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の要旨
本発明は、有効な1日投与量のバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩を含有する制御型ドラッグデリバリーシステムを、人間の患者に1日1回経口投与することを含む、人間の患者の痙症の兆候および症候の緩和方法であって、同一の1日総投与量で1日3回投与される即放性錠剤を用いた従来のバクロフェン治療に対応するセデーションレベルと比較して、該患者のセデーションレベルを減少させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、治療上有効な量のバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩を含有する経口の制御型ドラッグデリバリーシステムを1日1回投与することによる、痙症の兆候および症候の緩和方法を提供する。痙症の兆候および症候を緩和する1日1回形式の方法は、反復投与または多重投与後、従来のバクロフェン治療に対応するセデーションレベルよりも低いセデーションレベルを実現する。驚くべきことに、制御型ドラッグデリバリーシステムの1回の服用後の血漿中バクロフェンレベルは、従来のバクロフェン治療の投与後の血漿中レベルよりも高いとことが薬物動態学研究により明らかとなった事実にもかかわらず、このことが見出された。
【0011】
痙症の兆候および症候を緩和させるために本発明で用いられる1日1回の制御型ドラッグデリバリーシステムは、1日1回の投与で所望の治療上の効果を提供するのに十分な量のバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩を含有する。本システムは、バクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩の制御された放出を提供するように設計されている。ここで用いられる「制御型ドラッグデリバリーシステム」という語は、1回の服用としての経口投与により、バクロフェンを全身循環させ、その血漿中濃度を緩やかに上昇させ、ついで本システムの経口投与後最初の1時間中のバクロフェン濃度の範囲まで、24時間の間に緩やかに下降させるドラッグデリバリーシステムを指す。例えば、表2は、24時間の時点の血漿中濃度は約33ng/mlであり、これは最初の1時間中に観察される約1〜約80ng/mlの範囲内にあることを示している。
【0012】
ここで用いられる「痙症」という語は、脊髄および脳性の痙症を含む。本発明の日常の方法は、脳卒中、脊髄損傷、横断性脊髄炎、多発性硬化症、脊髄結核、非圧迫性ミエロパチー、頭蓋脊椎奇形、脊髄圧迫、脊髄腫瘍、亜急性連合性脊髄変性症、および脊髄に影響を与える他の要因から引き起こされる痙症の兆候および症候を緩和するのに有用である。
【0013】
ここで用いられる「製剤上許容可能」という語は、正しい医学的判断の範囲内で、不適当な毒性、刺激性、およびアレルギー反応等なしに、合理的な利益/リスク率に従って、人間や下等動物の細胞組織と接触させて用いるのに適切であり、痙症の兆候および症候を緩和するという意図された用途に有効である塩/賦形剤を指す。
【0014】
本発明の制御型ドラッグデリバリーシステムで用いられるバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩の1日投与量は、約15mg〜約80mgの範囲である。用いられるバクロフェンの量は、1日1回の経口投与で痙症を患う患者を楽にするのに十分な量である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好適な一実施形態において、制御型ドラッグデリバリーシステムは、‘255出願で開示されたシステムである。好適な別の実施形態において、制御型ドラッグデリバリーシステムは、‘983出願で開示されたシステムである。
【0016】
表1に示すように、バクロフェンを含有する制御型ドラッグデリバリーシステム(以下、「システムA」とする)をWO2005/101983A1の開示に従って調製した。
【0017】
【表1】

【0018】
バクロフェン、マニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化珪素、タルク、およびステアリン酸マグネシウムを混合、強圧した。得られたスラッグを粉砕し、ルブリタブ(商標:Lubritab )およびマニトールSD200と混合し、サイズ0のハードゼラチンカプセルに詰めた。イソプロピルアルコール中にアルギン酸、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、マニトール、ポビドン、タルクおよびポリソルベート20を含有する15重量%塗液(サブコーティング用)を調製し、カプセル重量が約25%増加するまで、該調製物で上記カプセルを被覆した。イソプロピルアルコール中にポリカルボフィル、ユードラギット(商標:Eudragit )L−100−55、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、マニトール、ポリエチレングリコール400、フタル酸ジエチル、ポリソルベート20、およびタルクを含有する15重量%塗液(第1のコーティング用)で、重量が約25重量%増加するまで、上記サブコーティングで被覆したカプセルを被覆した。
【0019】
最後に、精製水中にバクロフェン、ポビドンK−30、タルク、およびポリソルベート20を含有する12重量%塗液(トップコーティング用)で、上記被覆されたカプセルを被覆した。
【0020】
上記のシステムAと同様に、薬剤と各賦形剤との比を同一に保ったままで、バクロフェン45mgを含有する被覆されたカプセルの形態をとるシステムBを調製した。
【0021】
システムAのバクロフェンの生物学的利用能を、1日3回投与されるバクロフェン(10mg)の即放性錠剤と比較した。両剤に対して、オープンラベル・ランダム化・比較・2ウェイクロスオーバー(two-way crossover )試験を行った。
【0022】
薬物動態評価は、血液サンプリングにより測定されたバクロフェンの血漿中レベルに基づいて行われた。血液サンプルは、服用前、次いで服用後0.5時間、1.0時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、14時間、16時間、16.5時間、17時間、18時間、19時間、20時間、22時間、24時間、30時間、および36時間の時点で得た。
【0023】
14名の健康な男性ボランティアを試験に登録し、全員が試験を完了させた。被験者は一晩中絶食し、服用30分前に高脂肪の食事を与えられた。服用後少なくとも4時間は食事が許可されなかった。服用2時間前から服用2時間後までは水分摂取が禁止されていたが、その他の時間は自由な摂取が許可されていた。服用4時間後、8時間後、および12時間後、ならびにその後適切な時間に標準的な食事が提供された。施設滞在中、両期間ともに食事計画は同一とした。
【0024】
被験者は、絶食後、常温の水240mlで、バクロフェン30mgを含有するシステムAの組成物を試験薬として摂取した。従来のバクロフェン治療には、1日3回投与される、バクロフェン10mgを含有する、英国チバ・ラボ(CibaLabs)社製のバクロフェン即放性錠剤を用いた。最初の服用は、高脂肪の食事の30分間後に行い、残りの2回の服用は食事を特別なものにすることなく8時間後および16時間後に行った。
【0025】
異なる時点で採取したサンプルのバクロフェンの血漿中濃度を取得し、14名のボランティアの平均を得た。表2にデータを示す。
【0026】
【表2】

【0027】
WinNonlinソフトウェアを用いて算出した薬物動態パラメータを、表3に示す。
【表3】

【0028】
バクロフェンの血漿中レベルは、投与から約16時間までの時間の大半は、本発明のシステムAの方が高かったことが明らかになった。しかしながら、16時間から24時間までは、血漿中レベルは1日3回与えられる即放性錠剤の方が高かった。本発明のシステムAにより得られるピーク血漿中レベルは、1日3回与えられる即放性錠剤の投与後に得られるピーク血漿中レベルよりも高かった。
【0029】
表4に示すように、制御型ドラッグデリバリーシステム(以下、「システムC」とする)をWO03/011255A1の開示に従って調製した。
【0030】
【表4】

【0031】
バクロフェン、マニトール、ヒドロキシエチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムを、ASTM(アメリカ材料試験協会)規格の篩#40に通し、上記成分を混合してドライパウダー状の混合物とすることにより、制御型ドラッグデリバリーシステム(システムC)の核を得た。HPMCK4M水溶液を用いて、ドライパウダー状の混合物を造粒した。このようにして得られた造粒体を、適切な篩に通して乾燥させた。乾燥した造粒体をプロソルブSMCC90、タルク、およびPEG8000の混合物で潤滑化し、圧縮して核を得た。バクロフェン、HPMCE5、タルク、プロピレングリコール、および二酸化チタンの混合物の含水アルコール溶液で核を被覆し、本発明の制御型ドラッグデリバリーシステムを得た。
【0032】
このようにして得られた錠剤に対して、米国薬局方タイプII(パドル)に従った溶出装置を用いて、50rpm、37℃で溶出試験を行った。溶出溶媒として、0.1規定塩酸を1000ml用いた。
【0033】
錠剤は、約6分間で浮上した。溶出試験の結果を、表5に示す。
【0034】
【表5】

【0035】
バクロフェン30mgを含有する制御型ドラッグデリバリーシステムCの投与後のバクロフェンの薬物動態を、1日3回与えられる即放性錠剤との比較において試験した。両剤に対して、オープンラベル・ランダム化・比較・2ウェイクロスオーバー試験を行った。
【0036】
薬物動態評価は、血液サンプリングにより測定されたバクロフェンの血漿中レベルに基づいて行われた。血液サンプルは、服用前、次いで試験薬服用後0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、12.5時間、13時間、13.5時間、14時間、15時間、16時間、20時間、および24時間の時点で得た。
【0037】
12名の健康な男性ボランティアを試験に登録し、全員が試験を完了させた。被験者は一晩中絶食し、服用前に高脂肪の朝食を与えられた。服用2時間前から服用2時間後までは水分摂取が禁止されていたが、その他の時間は自由な摂取が許可されていた。服用4時間後、8時間後、およびその後適切な時間に標準的な食事が提供された。両期間ともに食事計画は同一とした。
【0038】
被験者は、絶食後、常温の水240mlで、バクロフェン(システムC、30mg)の単一の錠剤を5日間摂取した。
【0039】
異なる時点で採取したサンプルのバクロフェンの血漿中濃度を取得し、12名のボランティアの平均を得た。表6にデータを示す。
【0040】
【表6】

【0041】
上記システムCと同様に、薬剤と各賦形剤との比を同一に保ったままで、システムD、すなわちバクロフェン45mgを含有する制御型ドラッグデリバリーシステムを調製した。
【0042】
システムAおよびB(グループA)ならびにシステムCおよびD(グループB)の組成物を、mg単位で同一の1日総投与量の従来のバクロフェン治療(1日3回与えられえる即放性(IR)錠剤)で安定していた神経痙症の患者に用いて臨床試験を行った。臨床試験として、ランダム化(1:1)・対照・平行群・多施設・二重盲検法の試験を4週間行った。治療下で発現した有害事象への安全性評価を、両グループの患者に対して行った。合計90名の患者(年齢18〜65歳の男性患者および女性患者)を8つの試験施設に登録した。バクロフェンIR(30〜60mg/日)で既に安定していた患者を、各用量レベルに分類されるランダム化シーケンスによる2つの治療グループのいずれかに無作為に分けた。IR処方からグループAまたはグループBへの切り替えは、同一の用量レベルで行った。
【0043】
グループAに無作為に入れられた患者は、1日あたり、システムAまたはB(30mgまたは45mg)のカプセル1つを4週間摂取した。グループBに無作為に入れられた患者は、1日あたり、システムCまたはD(30mgまたは45mg)の錠剤1つを4週間摂取した。試験薬は、朝、朝食前の空腹時に与えられた。
【0044】
主たる分析変数は、ベースラインと考えられる従来のバクロフェン治療との比較における、治療期間終了時のアッシュワース固縮尺度スコアの調整平均変化量とした。患者・治療あたりに2つの値、すなわち、(従来のバクロフェン治療による)ベースライン値および4週間治療終了時の値を考察した。システムCで治療された患者は、ビジット5(visit 5 )で、アッシュワース尺度スコアが好ましくも0.37(標準偏差0.49)減少した。システムAで治療された患者は、アッシュワース尺度スコアが0.37(標準偏差0.50)減少した。表7に主たる効力変数の終了時分析結果を示す。
【0045】
【表7】

【0046】
表8に、グループAおよびグループBのセデーションスコア分析結果を示す。
【表8】

【0047】
上記の表から明らかなように、驚くべきことに、両グループにおいて、バクロフェンIR(すなわちベースライン)に比して統計的かつ臨床的に有意なセデーションスコアの向上が多重投与後も見られた。よって、両グループは、制御型ドラッグデリバリーシステムによって提供される高い血漿中レベルにも関わらず、バクロフェンIRに比較して、より優れたセデーションプロファイルひいてはより高い安全性を有する。
【0048】
以上、特定の実施形態および本出願に組み込まれる言及を参照して本発明を説明したが、これは例示にすぎず本発明の精神または範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。上記明細書には本発明の好適な実施形態が含まれるが、開示された発明原理に従って、本発明の範囲から逸脱することなく種々に変更、改良され得ることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効な1日投与量のバクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩を含有する制御型ドラッグデリバリーシステムを、人間の患者に1日1回経口投与することを含む、人間の患者の痙症の兆候および症候の緩和方法であって、同一の1日総投与量で1日3回投与される即放性錠剤を用いた従来のバクロフェン治療と比較して、該患者のセデーションレベルを減少させる方法。
【請求項2】
前記バクロフェンまたは製剤上許容可能なその塩の1日投与量が、約15mg〜約80mgの範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バクロフェンの1日投与量が、30mgである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バクロフェンの1日投与量が、45mgである請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2007−302657(P2007−302657A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−116586(P2007−116586)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(503252832)サン・ファーマシューティカル・インダストリーズ・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LIMITED
【Fターム(参考)】