痛みの治療のための混合されたORL1/μ−アゴニスト
本発明は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、痛みの治療のための医薬を製造するための使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
限られた期間でかつ引き起こされる刺激が取り除かれた後には一般に再び迅速に弱まる急性痛の他に、特に慢性痛は医学の課題である。完全な侵害受容器の刺激による急性痛の発症は、身体の不可侵性の保持するための警告機能を有する。これに引き続く痛みの回避のための反応が傷害から保護している。慢性痛はこの保護機能を失っている。これは痛み疾患である。慢性痛は、この場合、2つの大きなグループに分類することができる。この病体生理学的侵害受容器痛は、組織外傷後に完全な侵害受容器の興奮によって引き起こされる。これには、特に慢性炎症性痛が属する。それに対して、神経自体の障害により生じる痛みは、神経障害性痛と言われる。
【背景技術】
【0002】
急性痛から慢性痛への移行は、数時間内に行われることがある。例えば、手術の間の及び手術に引き続く痛み治療がこれに該当する。急性痛みの治療は今日では医師の自覚において極めて重要になっているにもかかわらず、術後の痛みの治療は極めて限定的である(非特許文献1:Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51)。急性痛は、組織損傷、例えば手術に引き続き、病体生理学的プロセスを介して、末梢で及び中枢神経系で慢性化されることがある。組織損傷、急性の術後の痛み及び発展する慢性痛の間の関連性は十分に調査されていて、その際、急性痛の強さは、慢性痛の期間に対する予測的ファクターとして観察することができる(Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51)。この理由だけからも既に、急性痛の満足できる治療は不可欠である。
【0003】
急性痛に対処する際の問題は、急性痛において極めて効果的なμ−オピオイド、例えばモルヒネ又はフェンタニルの副作用、特に呼吸抑制である。この副作用は手術直後の患者において場合により死亡につながるため、この医薬は多くの場合に前記痛みに対する満足のいく対処のために十分な量で投与されない。他方で、今日ではオピオイドなしの術後の痛みの治療は考えられない。しかしながら、この呼吸抑制の恐れ及び他のμ−オピオイドに典型の他の副作用は、多くの場合に、オピオイドが強い痛みの場合、例えば癌患者の場合に、少なすぎる量で使用されることにつながる(非特許文献2:Davis et al著, Respiratory Care Journal 1999, 44 (1))。さらに、オピオイドを投与した後に呼吸抑制が生じる危険性は、比較的若い人と比較して老人の場合に高まる。実際に、呼吸抑制が発生する危険性は、人の場合に60才代から明らかに高まる(非特許文献3:Cepeda et al著, Clinical Pharmacology and Therapeutics 2003, 74, 102-112)。従って、呼吸抑制が抑制される、痛みを治療するための新規医薬についての切実な必要性が生じる。
【0004】
しかしながら既に述べたように、慢性痛の治療は大きな挑戦である、それというのも、市場に存在する医薬は、確かに部分的に急性痛の場合には極めて効果的であるが、しかしながら、慢性痛の場合には多くの場合に満足できる痛み治療を生じないためである。
【0005】
炎症性痛
疼痛は、赤色化、腫れ、過熱及び機能障害の他に、炎症の主要な5つの症状のひとつとして生じる。炎症現象は疼痛の発生の最も重要なメカニズムに属する。この典型的な炎症性痛は、ブラジキニン、ヒスタミン及びプロスタグランジンの放出により、組織の酸性化及び侵害受容器への浸出物の加圧を伴い引き起こされる。痛覚は、他の感覚とは異なり順応作用を受けない。むしろ、進行する疼痛刺激は、後続する刺激の処理を増感の意味で強めてしまうことがある。これにより、例えば炎症を起こした組織中での侵害受容器の長期間持続する活性化により、痛み刺激の中枢神経系への流入が増加し、中枢シナプスでの持続的な増感現象が生じる。この中枢の増感現象は、自発的活性の増加及び中枢ニューロンの刺激応答の増強を引き起こし、その受容領域が同様に拡大する(非特許文献4:Coderre et al.著, Pain 1993, 52, 259-285)。中枢ニューロンの応答挙動のこのような変化は、炎症を起こした組織について典型的な自発的痛み及び痛覚過敏(有害刺激に関して疼痛感覚の増大)を引き起こすことがある(非特許文献6:Yaksh et al.著, PNAS 1999, 96, 7680-7686)。
【0006】
炎症の際の最も重要なプロセスのひとつは、アラキドン酸代謝産物の出現である。これらの化合物は侵害受容器を直接的には活性化しないが、C繊維の刺激伝達の閾値を低減し、他の刺激に対して前記侵害受容器を過敏にする。炎症性痛みの治療のために、特に非ステロイド系消炎剤(NSAID)が有効であることが示されている、それというのもこの非ステロイド系消炎剤はアラキドン酸分解を遮断するためである(非特許文献6:Dickensen, A.著, International Congress and Symposium Series - Royal Society of Medicine (2000), 246, 47-54)。慢性痛の長期間治療の際のその適用は、しかしながら部分的に著しく不所望な作用、例えば胃腸の潰瘍又は毒性の腎障害により制限される。
【0007】
しかしながら、炎症性痛みの治療の場合でも阻害剤による刺激の伝達の制御は重要である。μ−オピオイドはこの種類の最も重要な代表例である。慢性の膵臓炎は例えば疼痛を伴い、この疼痛は臨床的に最も治療するのが困難な痛み症状に属する。NSAIDの投与は、前記痛みを可能な限り軽度に減少させるが、高められた出血の危険性により一方で高い危険性を生じさせる。次の段階は、一般にμ−オピオイドを用いた治療である。該当する人物の中に、麻薬依存症が蔓延する(非特許文献7:Vercauteren et al.著, Acta Anaesthesiologica Belgica 1994, 45, 99-105)。従って、炎症性痛の場合に良好に効果的でありかつ依存症の可能性の低い化合物の切実な必要性が生じる。
【0008】
神経障害性痛
神経障害性痛は、末梢神経が機械的、代謝的又は炎症的に損傷される場合に生じる。この場合に生じる疼痛症状は、主に自発的疼痛、痛覚過敏及びアロディニア(痛みは既に非有害刺激によっても引き起こされる)の発生により特徴付けられる。これらの障害の結果として、Na+チャンネルの発現の増加、及びそれによる障害された軸索及びその隣接軸索中での自発的活性が生じる(非特許文献8:England et al.著, Neurology 1996, 47, 272-276)。前記ニューロンの興奮性は向上し、前記ニューロンは高められた放電回数で有する到達する刺激に応答する。痛み敏感性の増大が生じ、これが痛覚過敏及び自発的痛みの発生を引き起こす(非特許文献9:Baron著, Clin. J. Pain 2000;16 (2 Suppl), 12-20)。
【0009】
神経障害性痛の原因及び発症及びそれから治療の必要性も多岐にわたる。この痛みは、脳、脊髄又は末梢神経の損傷又は疾患の結果として生じる。原因は手術であることもあり、例えば切断術、卒中発作、多発性硬化症、脊髄損傷、アルコール又は医薬濫用又は他の毒素、癌疾患、さらに代謝疾患、例えば糖尿病、痛風、腎不全又は肝硬変、又は感染症疾患、例えば単球増加症、腺熱リケッチア症、チフス、ジフテリア、HIV、梅毒又はボレリアによる幻想痛であることもある。この痛み体験は、極めて多様な兆候及び症状を有し、これらは数及び強度においても時間にわたり変化することがある。逆説的にも、神経障害性通を患う患者は、神経障害性痛が同時に増加する場合、急性痛の知覚の低下又は障害を示す。神経障害性痛の典型的な症状は、いらつきとして、突き刺すような、感電するような又は放射するような燃焼感が記載されている。
【0010】
神経障害性痛の薬理学的基礎治療には、三環式の抗抑鬱剤及び抗痙攣剤が属し、これらは単独治療としても、オピオイドと組み合わせても使用される。これらの医薬は、大抵は一定の痛み軽減だけをもたらすが、疼痛からの解放は多くの場合に達成されない。頻繁に生じるこの副作用は、この場合、十分な痛みの緩和を達成するための医薬の用量増加を頻繁に妨害する。実際に、神経障害性痛の十分な治療のためには、急性痛の治療のためよりも頻繁にμ−オピオイドの用量を高めることが必要であり、それにより副作用は更に重要性を増してくる。μ−オピオイドに典型の耐性の発生により、及びそれに伴う用量の増加の必要性によりこの問題は更に高まる。要約すれば、神経障害性痛は今日では治療するのが困難であり、μ−オピオイドの高い投与量により部分的に成果があるだけであることが確認できる(非特許文献10:Saudi著 Pharm. J. 2002, 10 (3), 73-85)。従って、十分な痛み治療を保証するために、医薬の投与量を許容できない副作用が発生するまで高める必要がない、慢性痛を治療するための医薬の切実な必要性が生じる。
【0011】
過去数十年において、オピオイドに典型的な副作用を示さない、慢性痛の治療のための多様な他の作用原理が提案され、かつ切り替えられた。このように、中程度の強さから強い慢性痛の治療の場合には、例えば抗抑鬱剤も使用される、この抗抑鬱剤は気分を晴れやかにする作用の他に鎮痛作用も有している。しかしながら、今までにこの作用原理はμ−オピオイドを痛み治療の中心的地位から排除することはできなかった。この主要な原因のひとつは、μ−オピオイドの今までに達成されていない作用強度である。しかしながら、呼吸抑制の他に、μ−オピオイドは他の欠点も有している:
【0012】
a) オピオイドにより誘導された痛覚過敏
100年を越える以前から、高い痛み感覚がオピオイド禁断症状に属することが公知である。今日では、痛み症状の出現はオピオイド禁断の診断のための基準に属する(非特許文献11:Angst et al著, Anesthesiology 2006, 104, 570-587)。動物及びヒトに関する膨大な数の研究は、所定の場合にμ−オピオイドが痛み感覚における変化を引き起こすことができ、この変化が感覚過敏(痛みを伴う刺激の後の高められた痛み強度の感覚)を引き起こすことを示している。これらの研究は、短期間のオピオイド投与でも、慢性的なオピオイド投与でも、オピオイドにより誘導された痛覚過敏の症状が生じることを示す(非特許文献12:Pud et al著, Drug and Alcohol Dependence 2006, 218-223)。例えば、高いオピオイド割合を用いた麻酔を受けた患者は、催眠剤麻酔を用いた患者と比較して、術後に約3倍量のオピオイドを必要とすることは公知である。この明らかな効果はμ−オピオイドのより安全な使用を同様に制限する、それというのもそれにより必要な用量の増加の際に、副作用、例えば呼吸抑制が大きな意味を有するためである。しかしながら、オピオイドなしでの強い痛みの治療は今日では考えられないため、既に自発的に患者に高い痛み強度を引き起こさない医薬の切実な必要性が生じる。
【0013】
b) 依存症の可能性
痛みの治療のために使用されるμ−オピオイド、例えばモルフィン及びフェンタニルは依存症の可能性を有する。多くの場合、この医薬をやめた場合に禁断症状が生じる。μ−オピオイドのこの副作用により、この極めて効果的な痛みの治療剤の利用が著しく制限される、それというのも依存症の恐れからμ−オピオイドは強い痛みの場合でもしばしば処方されないか又は服用されないためである。従って、極めて効果的であり、かつμ−オピオイドと比較して依存症の可能性が低い痛みの治療剤の切実な必要性が生じる。
【0014】
μ−オピオイドの典型的な副作用は、全ての患者にとって等しく強く形成されるわけではない。この副作用を許容可能である患者グループも存在するが、他方でこの副作用が大きな問題となる患者グループも存在する。しかしながら、平均的には、この副作用は問題であり、μ−オピオイドは本来天然抽出物のオピウムとして使用されており、痛みの治療のために以前から使用されてきているにもかかわらず、前記の問題は今までは解消できていなかった。依存性の可能性のないモルフィン誘導体を合成するという最初の試みは、1874年に既に行われている。しかしながら、得られた物質であるヘロインは、モルフィンと比較して改善された副作用プロフィールを有しなかったことを示した。今日まで、改善された副作用プロフィールを有する極めて有効な鎮痛剤を製造するという多数の更なる研究がなされた。こうして、1925年にオキシコドンが、1946年にメタドン、1961年にフェンタニル及び1965年にチリジンが合成された。しかしながら、前記副作用の明らかな低減はその有効性の明らかな低減を伴うことが判明した。このμ型の副作用は十分に調査されており;この副作用はμ−アンタゴニストのナロキソンを用いて拮抗可能であり、従ってμ−オピオイドの作用プロフィールに属する。今までに、段階3(WHO段階)の臨床的に使用されるμ−オピオイド、例えばフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ブプレノルフィン及びヒドロモルフォンと同じ作用強度を有し、かつ同時に明らかに低い副作用プロフィールを有する医薬は存在していない。
【0015】
要約すると、急性痛の場合でも慢性痛の場合でも、中程度の強さの痛み〜強い痛みの治療は、前記治療の全ての欠点にもかかわらず、大部分はμ−オピオイドの使用に基づくことが確認できた。これは、特に前記化合物の高い作用強度から生じる。しかしながら、前記欠点は重大であり、多くの患者が副作用の恐れから、独自の熟慮の結果もしくは医師の考慮の結果から、必要な治療を受けない。従って、一方でμ−オピオイドの高い有効性を有するが、依存症、高まる痛み感覚、呼吸抑制及び慢性痛における有効性の低下のような欠点が減じられた、作用原理に基づく新規種類の痛みの治療薬の切実な必要性が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51
【非特許文献2】Davis et al著, Respiratory Care Journal 1999, 44 (1)
【非特許文献3】Cepeda et al著, Clinical Pharmacology and Therapeutics 2003, 74, 102-112
【非特許文献4】Coderre et al.著, Pain 1993, 52, 259-285
【非特許文献5】Yaksh et al.著, PNAS 1999, 96, 7680-7686
【非特許文献6】Dickensen, A.著, International Congress and Symposium Series - Royal Society of Medicine (2000), 246, 47-54
【非特許文献7】Vercauteren et al.著, Acta Anaesthesiologica Belgica 1994, 45, 99-105
【非特許文献8】England et al.著, Neurology 1996, 47, 272-276
【非特許文献9】Baron著, Clin. J. Pain 2000;16 (2 Suppl), 12-20
【非特許文献10】Saudi著 Pharm. J. 2002, 10 (3), 73-85
【非特許文献11】Angst et al著, Anesthesiology 2006, 104, 570-587
【非特許文献12】Pud et al著, Drug and Alcohol Dependence 2006, 218-223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、医薬についての作用原理を見出し、前記原理により作用する医薬は一方ではμ−オピオイドの高い有効性を有するが、依存症、呼吸抑制及び慢性痛の場合にμ−オピオイドと比較して有効性が低いというような欠点は低い程度で示すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題は、本発明により解決される。
【0019】
本発明の対象は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30である、混合されたORL1/μ−アゴニストの痛みの治療のための使用である。前記Ki値は、それぞれのレセプターを発現する組み換えCHO細胞に関して測定される。
【0020】
「1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μ」の前記の概念は、省略した形で「ORL1/μ」とする。「少なくとも100nM」の概念は、この親和性が100nM以上(=より低いKi値、例えば99.9nM)にあることを意味する。
【0021】
意外にも、0.1〜30のORL1/μの割合を有する化合物は、ORL1成分がμ型の副作用、例えば呼吸抑制及び依存症の明らかな低減を引き起こすが、この成分の抗オピオイド作用は急性痛の場合の鎮痛作用を妨害しないウィンドウを形成することが判明した。急性痛とは反対に、慢性痛症状の場合には、ORL1成分とμ成分との鎮痛相乗作用を引き起こし、つまり個々のレセプターでの前記化合物の作用が総合作用を提供することにそれぞれ寄与する。それにより、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される0.1〜30のORL1対μの割合を有する化合物の場合には明らかに高められた有効性を達成し、この有効性は満足される効果を生じるために急性痛と比較して用量が減じられることも可能にする。有利に、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1対μの割合は0.1〜20である。本発明による化合物は、親物質の代謝物であることができ、その際、前記代謝物は単独でも又は代謝物混合物として残留する量の親物質との組み合わせで本発明による特性を有することもできる。
【0022】
前記化合物の有効性にとって、μ−オピオイドレセプターに対する前記化合物の親和性又は前記代謝物の親和性が少なくとも100nM(Ki値 ヒト)であることが重要である。この値は、臨床的適用の場合の極めて有効なμ−オピオイド、例えばヒドロコドン(ヒト μ−OR Ki 76nM)、ケトベミドン(ヒト μ−OR Ki 22nM)及びメプタジノール(Ki 150nM ヒトμ−OR)の範囲内にある。有利に、μ−オピオイドレセプターに対する前記化合物の親和性は少なくとも50nMである。
【0023】
本発明による特性を有する化合物の前記の意外な特性は、多数の動物実験により証明された。前記化合物は、ORL1/μ割合の領域幅を有し、本発明による範囲内の混合されたORL1/μアゴニストの例外性を証明する。比較試験のために、今日、強い痛みの治療のために適用される医薬が選択された。B1〜B6の対照物質は、μ−オピオイドのフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ブプレノルフィン及びヒドロモルフォンであり、これら全ては痛みの治療のためのWHO段階基準により段階3−オピオイド類に属する。これらの医薬は、今日では強い痛みの治療のための一般的な基準を提示する。
【0024】
このORL1レセプターは、μ、κ及びδオピオイドレセプターに対して相同性であり、前記内在性リガンドの、ノシセプチン−ペプチドの、前記アミノ酸配列は、公知のオピオイドペプチドのアミノ酸配列に対して極めて類似性を有している。前記ノシセプチンにより誘導化された、前記レセプターの活性化により、Gi/oタンパク質との結合によってアデニラートシクラーゼを阻害し、電圧に依存するカルシウムチャンネルを阻害し、かつカリウムチャンネルを活性化する(Meunier et al.著, Nature 377, 1995, p. 532-535; Ronzoni et al.著, Exp Opin Ther Patents 2001, 11, 525-546)。
【0025】
前記ノシセプチン−ペプチドは、多様な動物モデルにおいて脳内血管適用により前侵害受容的(pronociceptive)及び痛覚過敏的に活性化を示す(Reinscheid et al.著, Science 270, 1995, p. 792-794)。この所見は、ストレスにより誘導される無痛覚症の抑制としても説明することができる(Mogil et al.著, Neuroscience 75, 1996, p. 333-337)。
【0026】
他の側面では、多様な動物モデルにおいて、脊髄内投与の後に、ノシセプチンの抗侵害受容効果も示すことができた。(Abdulla und Smith著, J. Neurosci., 18, 1998, p. 9685-9694)。ノシセプチンは、作用箇所及び前記器官の生理学的状態に応じて、抗侵害受容特性も前侵害受容特性も有する。
【0027】
さらに、内在性のORL−1−リガンドのノシセプチンは神経障害性痛における作用も有することは公知である。さらに、ノシセプチン及びモルフィンは神経障害性痛において相乗作用を示すことを確認することができた(Courteix et al.著, Pain 2004, 110, 236-245)。しかしながら、ノシセプチン自身は、全身投与により急性痛(テールフリック試験で測定)の場合には有効ではない。純粋なORL1−アゴニストは、従って、場合によっては神経障害性痛の治療のために適している。治療すべき痛みが混合形で発症するか又は神経障害性痛の場合に典型的な自発的痛みが生じる場合、純粋なORL−1−アゴニストはしかしながら動物試験からの所見によると十分に有効ではない。
【0028】
前記文献から、混合されたORL1/μ−アゴニストは、例えばEP 0997464又はWO 1999059997からすでに公知である。これらの文献は、しかしながら、混合されたORL1/μ−アゴニストとして具体的な生物学的データの提示なしに記載された構造だけを開示しており、本発明による親和性領域における化合物が利点を有することを開示していない。WO 2001039775は、混合されたORL1/μ−アゴニスト並びに一般に化合物がORL1−親和性及びμ−親和性を有することができる類縁でない特別な範囲を開示しているが、このような化合物の利点の立証はない。
【0029】
純粋なμ−オピオイドと比較した慢性痛の場合の作用の強化
a) 神経障害性痛
典型的なμ−アゴニストとは反対に、意外にも0.1〜30、有利に20までの範囲内の混合されたORL1/μ−アゴニストの場合には、神経障害性痛モデルにおける鎮痛についての有効性の明らかな向上を観察することができる。拮抗作用試験において、前記ORL1−成分は混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に鎮痛作用についての直接的寄与が提供されることが示された(図3)。ORL1/μ−割合が0.5(化合物A4)の物質とモルフィンとの未処理の動物及び神経障害性の動物における直接的比較は、ニューロパシーの形成によりモルフィンの有効性は低下する(このことは臨床的事象と一致する)が、混合されたアゴニストについては増加する傾向を示す(図5、5a、6、6a)。
【0030】
急性痛モデル(テールフリック(Tail-flick)、ラット/マウス)及びニューロパシー痛みモデル(ラットに関するチュング−モデル(Chung-Modell)並びにラット/マウスに関するベネット−モデル(Bennett-Modell))における鎮痛についての有効性の比較は、本発明による特性を有する化合物の例外性を示す(図1及び2参照)。神経障害性痛モデルの場合の鎮痛能力が急性痛モデルの場合よりも低い(5分の1まで)純粋なμ−オピオイドとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛能力は神経障害性痛モデルの場合に急性痛モデルの場合よりも2〜10倍高い。例えば、臨床的に使用されるμ−オピオイドのオキシコドンは、神経障害性痛の場合に、急性痛と比較して3分の1〜5分の1の能力であるが(動物モデルに依存する)、それに対してORL1/μ割合が0.5(化合物A4)の混合されたアゴニストの場合には、神経障害性痛の場合に急性痛の場合よりも約10倍高い能力である。
【0031】
前記効果を生じる範囲の上限は、化合物B8により証明されていて、前記化合物B8はORL1/μ−割合0.03を有し、かつ神経障害性痛モデルの場合に、急性痛モデルの場合よりももはやより良好な効果を示さない。この実施例A1(ORL1/μ−割合が0.1)は、それに対して10倍良好な効果を示す。
【0032】
ORL1/μ−割合が20である化合物A11は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合になお高い作用の強化を示す。この化合物は、急性痛の場合に全身投与により依然として良好な有効性を示す(マウスのテールフリック試験、i.v.ED50=0.42mg/kg)。ORL1/μ−割合が140:1である化合物B9は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合に同様に高い作用の強化を示す。しかしながら、この化合物は、全身投与により急性痛の場合に低すぎるμ−成分のためにもはや効果がない。内因性ORL−1−リガンドのノシセプチンは、急性痛モデル(テールフリック試験、i.v.)の場合にもはや効果を示さない。ORL1−成分の抗オピオイド特性のために、μ−成分と比較して30:1よりも明らかに良好であるORL1−成分を有する化合物の場合には、急性痛の場合の作用は、その作用強度において段階−3−オピオイドと同等であるために悪すぎる。この関係は、ORL1−成分の拮抗作用により表すことができる。この所見は、本発明による特性を有する化合物が、明らかに特殊な特性を有する混合されたμ/ORL1−アゴニストの定義されたサブグループを形成することを示す。本発明による前記範囲の下限は、従って30であり、有利に20である。
【0033】
チュング−モデル(Chung-Modell)での拮抗作用試験の場合に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛についての有効性は両方の成分に起因することが証明された。混合されたORL1/μ−アゴニストの投与後に、μ−アンタゴニストによって、並びにORL1−アンタゴニストによってそれぞれ鎮痛作用の部分的低下を示すことができる(図3及び4)。このことは、μ−オピオイド−成分もORL1−成分も慢性の神経障害性痛の場合に作用に寄与することを証明する。
【0034】
この拮抗作用試験は、本発明による特性が前記化合物のORL1−アゴニスト作用及びμ−アゴニスト作用に直接起因していることを明らかに示している。
【0035】
急性痛及び神経障害性痛における異なる有効性を比較する場合に「痛みの質」(テールフリック、侵害受容刺激vs.チュング(Chung)、触覚アロディニア)の可能な影響を排除するために、A4とモルフィンを比較してチュング動物及び見かけ上手術された動物において試験した。痛みモデルとしてテールフリックを全ての場合で使用した。この直接的な比較は、モルフィンが見かけ上手術された動物に関して極めて良好な作用を有することを示し、これは急性痛の場合に相応するが、手術された動物の場合にニューロパシーの形成の後にモルフィンの有効性は比較的明らかに低下することを示す(図7)。これは臨床的状況にも一致し、臨床におけるμ−オピオイドの問題の一つを示す。それに対して、A4は見かけ上手術された動物に関して明らかな作用を示し、その作用はニューロパシー形成の後でもなお増加することを示す(図8)。これは、神経障害性痛の治療の場合に純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの明らかな利点を示す。
【0036】
従って、100を下回るnMのμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20の1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されたORL1/μ−割合を有する化合物は、神経障害性痛の治療のために有利に使用できる。
【0037】
神経障害性の動物における抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離
他の利点は、本発明の範囲内で混合されたORL1/μ−アゴニストが抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離により示される。いわゆるアロディニアの場合に、関係のない身体領域で確かに痛みを伴わない刺激(例えば接触、温熱刺激、寒冷刺激)により痛みが引き起こされる。この機械的アロディニアは、帯状ヘルペス後の神経痛の際に典型的であり、この寒冷アロディニアは心的外傷後神経損傷及びいくつかの多発性ニューロパシーの場合に頻繁に生じる。特に糖尿病によるニューロパシーの場合には、機械的アロディニアの発症が典型的である(Calcutt及びChaplan著, Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1478-1482)。
【0038】
慢性痛患者の所定の患者グループの場合には、しかしながら通常の痛み感覚が十分に存続されているアロディニア及び痛覚過敏に対処する場合に有利である。日常正確において痛みの保護メカニズムが機能しているこれらの患者は、従って、特別にアロディニア及び痛覚過敏にだけ対処するが、一般的な痛み感覚にはできる限り手を付けない投薬法が必要である。このことは、例えば通常ではほとんど痛みを感じない刺激、例えば軽い接触又は着衣による刺激によって典型的な痛みが引き起こされる帯状ヘルペス後の神経痛にも通用する。
【0039】
チュング−モデル(Chung-Modell)の場合には、同側性又は対側性の脚(脊髄神経結紮がなされた側に対して)についての痛み反応の比較試験によって、抗侵害受容作用(対側性)及び抗アロディニア作用(同側性)が区別される。
【0040】
μ−アゴニストのモルフィンについて、1mg/kg iv.の投与後にだけ純粋な抗アロディニア作用が観察することができた。この最大の有効性は、この場合に29%のMPE(最大可能効果)であり、これは弱い作用に相当することが確認された。次に高い試験用量(2.15mg/kg iv.)の場合には、既に明らかな抗侵害受容作用が生じる(図5、5a)従って、モルフィンの場合には明らかな抗アロディニア効果と抗侵害受容効果との明確な分離は達成できない。
【0041】
これに対して、最大の、A4の純粋な抗アロディニア効果は56%MPEである。これは、1μg/kg iv.の試験用量で達成され、良好な有効性に相当する(図6、6a)。これは、純粋なμ−オピオイドと比較した混合されたORL1/μ−アゴニストの更なる利点を示す。
【0042】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に1:10〜20:1の化合物を、有利に一般的な痛み感覚を十分に維持する用量で、アロディニア、痛覚過敏及び自発的痛みの治療のために使用することも有利である。ヒトに関する一般的な痛み感覚の維持は、寒冷昇圧モデルで調査することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0043】
さらに、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に0.1〜20の化合物を、帯状ヘルペス後の神経痛の場合の痛みの治療のために使用することが有利である。
【0044】
多様な神経障害性痛の形態の精確な調査のために、A4は細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の調査のためのモデルにおいて調査された。この細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛は、神経障害性痛の臨床的に極めて重要なサブグループを形成する。この多発性ニューロパシーは細胞増殖抑制剤のビンクリスチンの投与によって引き起こした。従って、ラットに関して、ビンクリスチンを用いた化学療法の後の臨床的症状を模倣する病状が生じた。比較物質として、この場合にモルフィンを調査した。
【0045】
A4は、1μg/kgの用量から、つまり慢性痛においてED50の範囲内にある用量から有意な有効性を示した。しかしながら、0.464μg/kgの低い用量の場合には、まだ有意な有効性を示さなかった(図24)。モルフィンについては、2.15mg/kgの用量から良好な有効性が観察された(ED50 チュング(Chung)ラット 3.7mg/kg)。
【0046】
さらに、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛に対するこの有効性を調査した。この痛みの形態はラットに関するモデルで調査し、この場合、ストレプトゾトシンの投与により糖尿病による多発性ニューロパシーを引き起こした。A4は0.316μg/kg i.v.の試験された最も低い用量で、従って0.464μg/kgの用量ではまだ有意な有効性が観察されなかった細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の場合よりも低い用量範囲で、ラットに関する糖尿病により誘導された機械的痛覚過敏の既に有意な阻害を示した。この低い用量範囲の場合でも、A4は対照グループに効果を示さなかった。このことは、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛の場合に、
1.) 意外にも、A4のこの有効性は他の神経障害性痛の形態の場合よりもさらに良好であり、かつ
2.) A4の抗痛覚過敏作用は、抗侵害受容作用を引き起こさない用量範囲においても既に存在し(図26)、ひいては急性痛敏感性に不利な影響を与えずに多発性神経障害性痛の軽減を可能にすることを意味する。
【0047】
それに対して、モルフィンの場合には、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができる(図27)。糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合にこの標準治療は今日ではモルフィンのようなμ−アゴニストの投与ではなく特にプレガバリンの投与であるため、プレガバリンをさらなる比較として同じモデルにおいて調査した。ここでも、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができることが示された(図28)。これは、糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合の本発明による特性を有する化合物の際立った有効性を強調する。
【0048】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために特に有利に使用される。
【0049】
b) 炎症性痛
2種のin-vivo-モデル(脊髄損傷されたラットに関するシングル−モーターユニット誘導及びCFA**により誘導された痛覚過敏)において、慢性炎症の後で混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性が高められたことを示すことができた。
【0050】
脊髄損傷されたラットにおけるシングルーモーターユニット誘導未処理の動物とカラゲナンにより誘導された炎症後の動物の比較
ラットにおいて、炎症を誘導した後の24時間に、A4(ORL1/μ割合 1:2、図9及び10)及びA11(ORL1:μ割合 20:1)の抗侵害受容作用は炎症前の値と比較して明らかに高められていることが観察される。μ−アゴニストのモルフィンのこの抗侵害受容作用は、それに対して炎症後にはより弱い傾向を示す。(図11及び11a)。このことは、慢性炎症後に、混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性は高められるが、純粋なμ−アゴニストはそれに対して高められないことを示す。
【0051】
CFAにより誘導された痛覚過敏
慢性炎症性痛に対するモデルにおいて、CFAの注射により後ろ脚の炎症を誘導させた。炎症を誘導させた後の1h、3h、24h及び4日後に、触覚性痛覚過敏及び痛覚を測定した。モルフィンは全体の調査期間にわたり軽度に低下する抗痛覚過敏作用又は同じに維持される抗侵害受容作用を示したが、A4の抗痛覚過敏作用及び抗侵害受容作用は24hにわたり増加した。この効果は少なくとも4日間安定である(図12及び12a)。このことは、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛の鎮痛の場合と比較して炎症性痛の場合の鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。
【0052】
内臓性炎症性痛
カラシ油により誘導された非神経性の内臓性炎症のマウスにおける伝達されたアロディニア及び伝達された痛覚過敏についてのモデルにおけるA4及びフェンタニルの比較試験は、両方の疼痛パラメータに対して、純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの有意に高められた有効性を示した。A4の鎮痛についての有効性は、2つの試験した疼痛パラメータに関して、急性痛での鎮痛についての有効性よりも約6倍〜7倍高められる。これに対して、内臓性炎症性痛におけるフェンタニルの鎮痛についての有効性は、急性痛の場合よりも低い。このことは同様に、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、内臓性炎症性痛の場合に混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛と比較して鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。これらの化合物は、従って減少された副作用の他に、純粋なμ−オピオイドと比較して炎症性痛における改善された有効性も示す。
【0053】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、従って炎症性痛において高い有効性により優れている。従って、本発明の主題は、炎症性痛を患う患者の治療のための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。この炎症性痛は、例えばリウマチ性関節炎又は膵臓炎により引き起こされることがある。
【0054】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、急性痛と比較して慢性痛において作用の強化を示すことが判明した。従って、これらの化合物は急性痛において必要な用量を下回る用量で慢性痛において適用されることが有利である。有利に、これらの化合物は慢性痛の場合に、急性痛の場合に適用される用量よりも少なくとも2分の1以下の用量で、特に有利に少なくとも5分の1以下の用量で適用される。動物に関して、この用量はテールフリックにおけるED50として測定することができ、ヒトに関しては寒冷昇圧モデルで測定することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0055】
c) 急性痛
0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有するこの混合されたORL1/μ−アゴニストは、i.v.投与後に多様な急性痛モデル及び種類において完全な有効性を示す。ラットについても、マウスについても(テールフリック、図13)前記効果を示すことができた。
【0056】
混合されたORL1/μ−アゴニストと純粋なμ−アゴニストとの比較において、混合されたORL1/μ−アゴニストは、改善された適合性の場合に同等の有効性を示す。この結果は、混合されたORL1/μ−アゴニストが急性痛の場合においても優れた有効性を有することを示す。これらの化合物は、急性痛の場合のその有効性において段階−3のオピオイドと同等である。このことは、数世紀以来強い痛みの治療の領域を占めていた純粋なμ−アゴニストとは異なるメカニズムを介して鎮痛作用が行われるが、同じ作用強度を有する化合物が存在することを意味している。急性痛と比較して慢性痛におけるその意外な作用の強化の他に、本発明による結合プロフィールを有する化合物は、純粋なμ−アゴニストと比較して明らかに改善された副作用プロフィールをも示す。
【0057】
d) 副作用
オピオイドにより誘導された痛覚過敏
オピオイドの慢性的な投与は、痛みのある患者において痛覚過敏を引き起こす(Chu et al.著 2006, J. Pain 7:43-48参照)。同様の現象が、急性の投与後に禁断症状の形でも生じる(Angst et al.著 2003, Pain 106:49-57)。動物モデルにおいて、純粋なμ−オピオイドは急性の投与後に過渡的な痛覚過敏を誘導し、これは例えばソフト−テールフリックモデルにおいて過渡的「前侵害受容」期間として検出することができる。
【0058】
このオピオイドにより誘導された痛覚過敏は、純粋なμ−オピオイド(フェンタニル及びモルフィン)についての低減された刺激強度(25%熱放射線強度)を用いる改良されたテール−フリックモデルを用いて示すことができる。これとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4及びA7)の急性の投与後には過渡的な痛覚過敏は観察されなかった(図14〜14c)。
【0059】
このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストの慢性的な投与の場合に痛覚過敏を誘導しないか又は純粋なμ−オピオイドと比較してより低い痛覚過敏を生じることを示す。この典型的なμ−オピオイド−副作用のひとつは、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に従って低減される。
【0060】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛みの治療の際のオピオイドにより誘導される痛覚過敏の低減のために有利に使用される。
【0061】
特に、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者の治療の場合に使用するのが有利である。これには、例えば既に痛覚過敏を患いかつ手術を受けなければならない患者、例えば過敏性腸疾患患者(内臓性痛覚過敏)、腫瘍疼痛患者及び筋骨核疼痛を患う患者又は強い作用のオピオイド、例えばフェンタニルを術中に髄腔内に投与された患者(例えば帝王切開患者)が属する。従って、本発明の主題は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者における痛みを緩和するための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0062】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな痛覚過敏を誘導する化合物の使用でもある。
【0063】
禁断
マウスに関するナロキソンにより誘導された禁断飛び跳ね行動において、μ−成分よりも10分の1未満の弱いORL−1成分を有する化合物は、禁断飛び跳ね行動を抑制することを示すことができた。より弱いORL1−成分を有する化合物は、それに対して禁断飛び跳ね行動を引き起こした。「禁断飛び跳ね行動」試験の場合に、マウスは定義された時間にわたり数回試験物質で処理された。μ−オピオイドの場合には、この期間内に身体的依存性が達成された。この治療の完了時に、ナロキソン、μ−アンタゴニストの投与によりオピオイドの作用は突然高められる。身体的依存性が現れた場合にマウスは、飛び跳ね行動の形態を表す特徴的な禁断症状を示す(Saelens JK著, Arch Int Pharmacodyn 190: 213-218, 1971)。
【0064】
本発明による特徴を有する化合物は、ORL1作用成分に基づき、純粋なμ−オピオイドは有していない治療法の改善を引き起こす付加的な特徴を有する。マウスに関する禁断飛び跳ね行動の場合に、組み合わされたORL1/μ−アゴニスト、例えばA9、A6、A4又はA7を用いて治療された動物の場合にはナロキソンによって禁断症状は引き起こされないか僅かな禁断症状が引き起こされるだけであることが示された(図15c〜e参照)。A1はそれに対して、禁断飛び跳ね行動の場合に明らかな禁断症状(図15b)を示した。ラットの自発的禁断の際に、ラットの体重を試験物質の中止後に数日間にわたり記録したが、モルフィンとA1(ORL1:μ 0.1)との間に明らかな差異は認識できない(図16)。モルフィンの中止後にラットの体重はほぼ10%減少するが、A9の中止後には約3%減少するだけであった。0.1のORL1/μ−割合は、ここでも、本発明による特徴を有する化合物の有利な作用までの限界を観察することができる。この特性により100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、身体的依存性に対する高い危険性を有する患者グループに特に適している。このグループには、例えば既にμ−オピオイドを経験している患者が属する。
【0065】
しかしながら、身体的依存症の抑制のために、ORL1−成分はいくらか高められ、その際、前記身体的依存症は、0.1のORL1:μ−割合で既に低減されているのが有利である。痛みの治療のためと、同時に禁断症状の抑制する場合に、前記化合物のORL1/μ割合は少なくとも0.25であるのが有利であり、特に少なくとも0.5であるのが有利である。この高められたORL1成分を有する化合物は、有利に身体的依存性のために特別な危険性を有する患者グループの場合に使用される。
【0066】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな禁断症状を誘導する化合物の使用でもある。前記効果は、実施例において記載された禁断飛び跳ね行動についてのモデル及び自発的禁断についてのモデルにより明らかにすることができる。
【0067】
精神的依存症/中毒の低減
混合されたORL1/μ−アゴニストは、純粋なμ−アゴニストと同様に、ラットの場合に場所条件付け(Platzkonditionierung)を引き起こす。場所嗜好性の誘導のための閾値用量は純粋なμ−オピオイド(B1、B3〜B6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量を明らかに下回るが、前記閾値用量は他方で混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4、A7及びA6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量の範囲内にあるかもしくはそれを上回る(図21)。このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストが純粋なμ−オピオイドと比較して減少された中毒能力を有することを意味する。
【0068】
μ−オピオイドの身体的及び精神的依存能力にもかかわらず、前記μ−オピオイドは以前から臨床において成果を達成して使用されており、この場合、たいていの患者は必要な治療の後に再び前記医薬を取り止めている。所定の患者グループは、しかしながら中毒挙動になりやすい。従って、本発明による特性を有する化合物は、潜在的に中毒になりやすい患者の場合の痛み治療のために使用することが有利である。
【0069】
この患者グループには、例えば精神疾患を有するヒト、特に抑鬱性のヒト又は不安障害を患うヒトが属する(Paton et al.著, Journal of Genetic Psychology 1977, 131, 267-289)。有利に、本発明による特性を有する化合物は、従って、精神疾患を有する患者の場合に、痛みの治療の過程で精神的依存症の危険を低下するために使用される。特に、本発明による特性を有する化合物は、鬱病又は不安障害を患う患者に痛みの治療のために適用するのが有利である。
【0070】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな精神的依存症を誘導する化合物の使用でもある。この効果は、例えば拮抗作用試験により明らかにすることができるが、実施例に記載されたような場所嗜好性のための試験によっても明らかにすることができる。
【0071】
呼吸抑制
μ−媒介された呼吸抑制は、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に明らかに軽減される。この急性の呼吸抑制作用は、完全な鎮痛作用用量でも鎮痛閾値用量でもラットに関して動脈血液のpCO2の上昇として測定された。
【0072】
B1(フェンタニル、図17)及びB4(オキシコドン、図17a)に関して示された純粋なμ−オピオイドの場合に、最大鎮痛作用の時点で、μ−誘導された呼吸抑制に基づき動脈のpCO2の明らかな上昇が生じる。90〜100%の作用用量の場合には、このpCO2値は50%より大きく上昇する。
【0073】
それに対して、前記pCO2値は、A4、A5、A6及びA9のような混合されたORL1/μ−アゴニストの場合にわずかに上昇しただけである(図17b〜e)。数時間にわたり鎮痛について最大に作用する極めて高い用量の場合であっても、この動脈pCO2は約20〜30%上昇するだけである。
【0074】
拮抗作用試験により、
(1) 前記呼吸抑制は、A4とB11との実施例のORL1成分の拮抗作用の後で明らかに強化され(約70%)、かつ
(2) 前記呼吸抑制は、引き続くナロキソンを用いたμ−拮抗作用により完全に抑制される(図18)ことが示された。
【0075】
このことは、本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストの場合の前記の減少した呼吸抑制がORL1−成分に起因していることを示す。この呼吸抑制は、完全にμ−成分により引き起こされる。この拮抗作用試験は、呼吸抑制の低減はORL1−成分によって生じることを証明する。
【0076】
μ−オピオイドにより引き起こされるこの呼吸抑制は特に麻酔の場合に重大な結果を生じる合併症を引き起こしかねないため、本発明による特性を有する化合物は麻酔のため又は麻酔に関連して使用することが有利である。この場合、特に、前記化合物の半減期が1時間より短い場合に有利であり、さらに特に30分より短い場合が有利である。
【0077】
この場合、半減期とは、本発明による特性を有する摂取された化合物の半分が物質代謝され及び/又は排泄されるまでの時間の時間であると解釈される。
【0078】
手術に引き続く場合でも、呼吸抑制の危険は高められる。100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物を使用することにより、より高い用量を術後に使用することができ、それにより、必要な場合には、純粋なμ−アゴニストを用いた場合よりもより強い鎮痛を達成することができる。従って、本発明による特性を有する化合物は術後の痛みの治療のために使用するのが有利である。
【0079】
研究論文にも証明されているように、60才からヒトの場合の呼吸抑制の危険性は若い人と比較して明らかに高まるため(Cepeda et al.著, Clinical Pharmacology & Therapeutics 2003, 74, 102-112)、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物は有利に60才を越える患者の場合の痛みの治療のために使用される。従って、本発明による特性を有する化合物は、60才を越える患者の場合の麻酔、麻酔に関連して又は術後に使用するのが特に有利である。特に、前記化合物は、60才を越える患者に関しても神経障害性痛の治療のために使用するのが有利である。
【0080】
前記呼吸抑制のORL1−成分による低減は、実施例においても示されているように、拮抗作用試験により証明することができる。本発明の主題は、従って、痛みの治療のための、有利に麻酔に関連して又は術後に、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな呼吸抑制を示す化合物の使用でもある。
【0081】
混合されたORL1/μ−アゴニストの場合のより高い安全間隔
一方で減少されたμ−ORにより媒介された呼吸抑制に基づき、及び他方で神経障害性痛の場合に高められた有効性に基づき、混合されたORL1/μ−アゴニストは純粋なμ−オピオイドと比較して明らかに拡大された安全間隔により優れている。動脈のpCO2の上昇についての閾値用量(ED10)は、実施例A1、A5、A7、A6及びA4に関して示された本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストについて、神経障害性痛において半値有効用量(ED50)の約3倍〜20倍上回る(図20)。このことは、特に慢性痛症状の場合に可能なオピオイド性副作用までの間隔は、一方で本発明による特性を有する化合物の高められた有効性に基づきかつ他方で抗オピオイド成分の有効性に基づき、μ型の副作用が治療的範囲において同じ有効性の場合に比較的低減されて生じる程度に大きいことを意味する。
【0082】
本発明による特性を有する化合物の場合に作用と副作用との間のより大きな間隔に基づき、前記化合物は緩和治療患者の場合の痛みの治療のために特に適している。緩和治療患者は、その多重罹患状態に基づき、特に強くオピオイド型の副作用を受けている。従って、本発明の主題は、緩和治療患者の痛みの治療の場合の、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0083】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(Ki値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、従って、要約するとμ−オピオイドを用いた標準的治療と比較して特に以下のような利点を有する:
- 慢性痛の場合の、特に神経障害性痛の場合の及び炎症性痛の場合の作用の強化
- 急性痛の場合の同等の有効性の場合に明らかに低減された副作用、例えば呼吸抑制、禁断/中毒及びオピオイドにより誘導される痛覚過敏を示す。
【0084】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(Ki値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、前記した特性を有する。これらの観察された利点は、特別に試験された化合物が有する特性に基づくのではなく、前記作用メカニズムから生じる効果である。このことは、拮抗作用試験により証明することができた。この場合、ORL1−成分は鎮痛のために寄与し、しかしながらμ型の副作用を抑制することが示された。鎮痛の範囲内で、前記ORL1−成分は相乗的にふるまうが、しかしながら試験された副作用の範囲内では反対的にふるまう。このために重要であるのは両方の成分の割合である。
【0085】
本発明による範囲を定義する値は、in vitroデータに関しており、in vivoで1つ以上の活性の代謝物が形成される場合には、前記代謝物が前記活性に影響を及ぼすことができる。代謝物が形成される場合には、次のケースに区別することができる。
【0086】
a) プロドラッグの使用
本発明による結合プロフィールを示さない化合物は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、従って、本発明による特性を有する代謝物を形成することができる。このことは、前記代謝物のKi値の測定により確認することができる。従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、有効性について及び/又はμ型の副作用の低減についての寄与が拮抗作用試験により検出することができる代謝物を形成する化合物の使用でもある。
【0087】
b) 親物質と共通の又は親物質との一緒に本発明によるプロフィールを形成する代謝物の形成
例えば選択的μ−アゴニストは部分的に選択されたORL1−アゴニストに代謝され、この生じる混合物が本発明による特性を有する、つまり1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されたORL1/μの割合が0.1〜30であり、かつヒトのμ−オピオイド−レセプターに関するKi値は少なくとも100nMである場合に、前記混合物は同様に本発明の主題である。前記混合物は、選択性を有しない化合物から生じることもできるが、それにもかかわらず本発明による範囲外にあることができる。本発明による特性は、一方で、in vivoで生じる前記混合物の結合定数を測定することにより検出することができ(その際、前記濃度はHPLC−MS−試験により決定することができる)、他方で、ORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験によりORL1−成分の慢性痛の場合の作用の強化への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が示されることにより検出することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、代謝物により形成される、本発明による特性を有する物質混合物でもあり、その際、前記混合物の結合定数は本発明の範囲内に一致し、かつ拮抗作用試験により有効性への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が検出することができる。
【0088】
本発明による化合物が及ぼす作用は、2種又はそれ以上の異なる物質の投与によっても達成することができる。これは、一方で、前記混合物の結合定数を決定することにより証明することができ、かつ他方で、慢性痛の場合の作用の強化へのORL1−成分の寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与がORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験により示されることにより証明することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μが0.1よりも選択的であるμ−アゴニストと、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μが30よりも選択的であるORL1−アゴニストとの、痛みの治療のための医薬を製造するための使用でもあり、その際、前記組み合わせは、本発明による化合物の特性を有する、つまり前記組み合わせ又はそのin vivoで生成される代謝物の組み合わせが、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μの親和性の割合が0.1〜30、有利に0.1〜20である。有利にこのような組み合わせは、神経障害性痛の治療のため、特に帯状ヘルペス後の神経痛及びの場合の疼痛及び糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために使用される。さらに、麻酔におけるこのような組み合わせの使用が有利である。特に、前記組み合わせは60才を越えるヒトにおいて使用するのが有利である。
【0089】
本発明による医薬は、少なくとも本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせの他に、場合により適当な添加剤及び/又は助剤、並びに担持剤、充填剤、溶剤、希釈剤、着色剤及び/又は結合剤を含有し、かつ液状の医薬剤形として注射溶液、滴剤又は液剤の形態に、半固体の医薬剤形として顆粒剤、錠剤、ペレット、パッチ、カプセル、プラスター又はエアゾールの形態で投与することができる。この助剤等の選択並びにその使用されるべき量は、前記医薬が、経口、経口的、腸管外、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、点鼻、バッカル、直腸又は局所、例えば皮膚、粘膜及び目に対して適用されるかどうかに依存する。経口適用のために、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、液剤及びシロップ剤の形態の調製物が適しており、腸管外、局所及び吸入適用のために、溶液、懸濁液、容易に再構築可能な乾燥調製物並びにスプレー剤が適している。場合により皮膚浸透を促進する薬剤の添加下で、デポー剤、溶解した形態又はプラスターの形態の本発明による化合物は、適当な経皮適用調製物である。経口又は皮下適用することができる調製物は、本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせを遅延放出することができる。原則として、本発明による医薬に、当業者に公知の他の作用物質が添加されていてもよい。
【0090】
患者に投与すべき作用物質量は、患者の体重、適用種類、適応症及び疾患の重度に依存して変えられる。通常では、本発明による特性を有する少なくとも1種の化合物又は組み合わせ0.005〜20mg/kg、有利に0.05〜5mg/kgが適用される。
【0091】
全て本発明による特性を有する化合物A1〜A10は、スピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループに属する。これらの化合物は、μ−オピオイド−レセプター及び/又はORL−1−レセプターに対する親和性を有し、しかしながら、これらの化合物のサブグループは本発明による特性を有している。
【0092】
従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30であり、糖尿病による多発性神経障害性痛、術後の痛み又は帯状ヘルペスによる神経痛の場合の痛みの治療のための医薬の製造のための、一般式I
【0093】
【化1】
[式中、
R1及びR2は、相互に無関係に、H又はCH3を表し、その際、R1及びR2は同時にHを表さず;
R3は、フェニル、ベンジル又はヘテロアリールを表し、これらはそれぞれ非置換であるか又はF、Cl、OH、CN又はOCH3でモノ又はポリ置換されている;
Wは、NR4、O又はSを表し、
及び
R4は、H;C1〜C5−アルキル、フェニル;C1〜C3−アルキル基を介して結合したフェニル、COR12;SO2R12を表し、
その際、R12は、H;C1〜C7−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、非置換であるか又はOH、F又はCOOC1〜C4−アルキルによりモノ又はポリ置換されている);C4〜C6−シクロアルキル;アリール−、又はヘテロアリール(これは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたフェニル又はヘテロアリール(これらは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝された又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたC5〜C6−シクロアルキル;OR13;NR14R15を表し;
R5は、H;COOR13、CONR13、OR13;C1〜C5−アルキルを表し、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝であり、非置換であるか又はOH、F、CF3又はCNによりモノ又はポリ置換されている;
R6は、Hを表すか;
又はR5及びR6は一緒になって、(CH2)nを表し、その際、n=2、3、4、5又は6を表し、その際、個々の水素原子はF、Cl、NO2、CF3、OR13、CN又はC1〜C5−アルキルにより置換されていてもよく;
R7、R8、R9及びR10は、相互に無関係に、H、F、Cl、Br、NO2、CF3、OH、OCH3、CN、COOR13、NR14R15;C1〜C5−アルキル、ヘテロアリールを表し、これは非置換又はベンジル、CH3、Cl、F、OCH3又はOHによりモノ又はポリ置換されているか;
R13は、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
R14及びR15は、相互に無関係に、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
Xは、O、S、SO、SO2又はNR17を表し;
R17は、H;C1〜C5−アルキル、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝である;COR12又はSO2R12を表す]のスピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループからなる化合物
その純粋なジアステレオマーの形態、そのラセミ体の形態、その純粋なエナンチオマーの形態、又は任意の混合割合での立体異性体の混合物の形態;
塩基として、又はその塩として、特に生理学的に許容される塩又は生理学的に許容される酸又はカチオンの塩の形態でもある。
【0094】
実施例
使用された省略形
AUC 曲線下面積
CFA 完全フロイントアジュバント
DBTC 二塩化ジブチルスズ
MPE 最大可能効果
本発明を次の実施例を用いて明確に説明する。μ−アゴニストに対する代理の典型的な代表物、混合されたμ/ORL1−アゴニスト、ORL1−アゴニスト並びにORL1アンタゴニストを使用した。μ−アンタゴニストとして、臨床的に使用された化合物のナロキソンを使用した。これらの例示的化合物に多数の試験を行い、これらの試験は本発明による特性を有する化合物の例外性を証明する。
【0095】
【表1】
ORL1−結合の測定
一般式Iのシクロヘキサン誘導体を、組換体CHO−ORL1細胞の膜での3H−ノシセプチン/オルファニンFQを用いたのレセプター結合アッセイで試験した。このテストシステムはアルダチ他(Ardati et al.(Mol. Pharmacol., 51, 1997, p. 816-824))により提案された方法により実施した。3H−ノシセプチン/オルファニンFQの濃度はこの試験の場合0.5nMであった。この結合アッセイは、それぞれHepes 50mM中のバッチ200μlあたりそれぞれ膜タンパク質20μg、pH7.4、MgCl2 10mM及びEDTA 1mMを用いて実施した。ORL1レセプターとの結合は、それぞれWGA−SPAビーズ(Amersham-Pharmacia, Freiburg)1mgを使用しながら、室温でこのバッチを1時間のインキュベーションし、引き続きシンチレーションカウンター(Trilux (Wallac, Finnland))で測定することにより決定した。この親和性を表1にc=1μMでの阻害率%でのナノモルのKi値として記載した。
【0096】
μ−結合の測定
ヒトμ−オピエートレセプターに対するレセプター親和性を、微量滴定プレート中で同質のバッチで測定した。このために、それぞれ試験すべき物質の一連の希釈物を、ヒトμ−オピエートレセプターを発現するCHO−K1−細胞のレセプター膜調製物(インキュベーションバッチ250μlあたりタンパク質15〜40μg)(NEN社のRB−HOM−レセプター膜調製物、Zaventem、ベルギー国)と一緒に、放射性リガンド[3H]−ナロキソン(NET719, NEN社, Zaventem、ベルギー国)1nmol/l並びにWGA−SPAビーズ(Amersham/Pharmacia社のWheat germ agglutinin SPA Beads、Freiburg、ドイツ国)1mgの存在で、250μlの全容量で室温で90分間インキュベーションした。インキュベーション緩衝液として、アジ化ナトリウム0.05質量%及びウシ血清アルブミン0.06質量%を補充したトリス−HCl 50mmol/lを使用した。非特異的結合の測定のために、さらにナロキソン25μmol/lを添加した。90分間のインキュベーション時間の完了後に、微量滴定プレートを20分間1000gで遠心分離し、β−カウンター(Microbeta-Trilux、PerkinElmer Wallac社、Freiburg、ドイツ国)中で放射能を測定した。1μmol/lの試験物質の濃度での放射性リガンドのヒトμ−オピエートレセプターに対する結合からの排除率が測定され、特異的結合の阻害率(%阻害)として表した。部分的に、一般式Iの試験すべき化合物の多様な濃度による排除率から出発して、放射性リガンドの50%の排除率が生じるIC50阻害濃度を計算した。Cheng-Prusoffの関係を用いて計算することにより、試験物質についてのKi値が得られた。
【0097】
実施例化合物のKi値は次の表にまとめられている。
【0098】
【表2】
1 定義:1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]
急性痛モデル(テールフリック、ラット/マウス)と神経障害性痛モデル(チュング、ラット;ベネット、ラット/マウス)における鎮痛についての有効性(ED50として、%MPE)の比較:
マウスに関するテールフリックテストでの鎮痛試験
テスト化合物の鎮痛についての有効性を、マウスに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重20〜24gのNMRIマウスを使用した。これらの動物を別々に特別なテストケージ中に入れ、尾の付け根を電気ランプ(Tail-flick Typ 55/12/10.fl, Labtec, Dr. Hess)のフォーカスされた熱放射線にさらした。未処理の動物において前記ランプのスイッチオンから尾を突然動かす動作(痛みの潜伏)までの時間が2.5〜5秒になるように、ランプ強度を調節した。試験化合物の投与前に、これらの動物を30分間2回予備試験し、測定された平均値を投与前試験値として計算した。この痛みの測定は静脈内投与後の20、40及び60分に実施した。この鎮痛作用を、痛みの潜伏の増加率(%MPE)として次の式により測定した:
[(T1-T0)/(T2-T0)] x 100
この場合、T0は物質投与前の潜伏時間であり、T1は物質投与後の潜伏時間であり、T2は最大暴露時間(12秒)である。
【0099】
投与量依存性の決定のために、前記試験化合物を3〜5の対数的に増大する用量(この用量は閾量及び最大有効量を含む)で投与し、回帰分析を用いてED50値を決定した。このED50の算定は、物質の静脈内投与の20分後に効果の最大値で行った。
【0100】
ラットに関するテールフリックテストでの鎮痛試験
テスト化合物の鎮痛についての有効性を、ラットに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重134〜189gのメスのスプラーグドリー(Sprague Dawley)を使用した。これらの動物を別々に特別なテストケージ中に入れ、尾の付け根をランプ(Tail-flick Typ 50/08/1.bc, Labtec, Dr. Hess)のフォーカスされた熱放射線にさらした。未処理の動物において前記ランプのスイッチオンから尾を突然動かす動作(痛みの潜伏)までの時間が2.5〜5秒になるように、ランプ強度を調節した。試験化合物の投与前に、これらの動物を30分間2回予備試験し、測定された平均値を投与前試験値として計算した。この疼痛測定は静脈内投与後の20、40及び60分に実施した。この鎮痛作用を、痛みの潜伏の増加率(%MPE)として次の式により測定した:
[(T1-T0)/(T2-T0)] x 100
この場合、T0は物質投与前の潜伏時間であり、T1は物質投与後の潜伏時間であり、T2は最大暴露時間(12秒)である。
【0101】
投与量依存性の決定のために、それぞれの試験化合物を3〜5の対数的に増大する用量(この用量は閾量及び最大有効量を含む)で投与し、回帰分析を用いてED50値を決定した。このED50の算定は、物質の静脈内投与の20分後に効果の最大値で行った。
【0102】
ラットに関する減少させた燃放射線強度テールフリック
急性の有害熱刺激に関するテスト物質のモジュレーター的な有効性を、ラットに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重200〜250gのオスのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラット(Zuechter: Janvier, Le Genest St. Isle,フランス国)を使用した。これらの動物を、個々に特別な試験コンパートメント中に置き、尾の付け根を無痛覚測定器(モデル 2011, Rhema Labortechnik, Hofheim, ドイツ国)のフォーカスされた熱放射線にさらした。このグループサイズは10匹の動物である。未処理の動物において前記熱放射線のスイッチオンから尾を突然逃避する動作(逃避潜伏)までの時間が約12〜13秒になるように、熱放射線強度を調節した。本発明による物質の投与前に、5分間の間隔で、前記の逃避潜伏を2回測定し、この平均値を対照潜伏時間として定義した。痛みの逃避潜伏の測定を、物質の静脈内投与の10分後に初めて実施した。抗侵害受容効果の消失後(2〜4時間後)に、前記の測定を30分の間隔で、物質の投与後の最大6.5時間まで行った。前記の抗侵害受容作用及び前侵害受容作用は、逃避潜伏時間の増大もしくは低下として次の式により決定した:
(%MPE)=[(T1−T0)/(T2−T0)]×100
この場合、T0:物質投与前の対照潜伏時間、T1:物質投与後の潜伏時間、T2:熱放射線の最大露光時間(30秒)、MPE:最大可能効果
分散分析(repeated measures ANOVA)を用いて、物質グループと賦形剤グループとの間の統計的に有意な差異に関して試験した。この有意水準は≦0.05で試験した。
【0103】
チュング(Chung)−モデル:脊椎神経結紮によるモノ神経障害性痛
動物:市場の飼育業者(Janvier, Genest St. Isle, フランス国)からのオスのスプラーグドリーラット(Sprague Dawley Ratten)(140〜160g)を12:12時間の明暗リズムのもとに保持した。これらの動物は餌及び水道水を自由に与えられた。前記の動物の供給及び手術の間に、1週間の休止期間を設けた。これらの動物は、手術後に4〜5週間の期間にわたり数回試験され、その際、少なくとも1週間の休止期間を設けた。
【0104】
モデルの記載:ペントバルビタール麻酔(Narcoren(R)、60mg/kg i.p.、Merial GmbH, Hallbergmoos, ドイツ国)のもとで、脊柱傍の筋肉部分及びL5腰部の脊椎骨の左側の脊髄プロセスの一部を除去することにより、左側のL5、L6脊髄神経を露出させた。この脊髄神経L5及びL6を注意深く離し、固定結紮具で結紮した(NC-silk black,USP 5/0, metric 1, Braun Melsungen AG, Melsungen, ドイツ国)(Kim and Chung 1992)。結紮後に、筋肉及び隣接する組織を縫合し、この傷を金属クリップで閉じた。
【0105】
数週間の回復期間の後に、前記の動物を機械的アロディニアの測定のために針金の床部を備えたケージ内に置いた。同側性及び/又は対側性の後ろ脚に関して、電気的なフォンフレー(von Frey)フィラメント(Somedic AB, Malmoe、スウェーデン国)を用いて逃避閾値を測定した。5回の刺激の中央値を測定時点とした。前記の動物を、試験物質溶液又は賦形剤溶液の適用後の異なる時間の前後の30分間試験した。これらのデータを、最大可能作用率(%MPE)として、単独の動物(=0%MPE)投与前試験及び独立したSham対照グループ(=100%MPE)の試験値から決定した。これとは別に、逃避閾値をグラムで示した。
【0106】
統計的評価:ED50値及び95%信頼範囲を、片対数の回帰分析により最大作用の時点で決定した。これらのデータは、繰り返し測定及びボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析を用いた分散分析により分析した。このグループサイズは通常ではn=10であった。
【0107】
対照:Kim,S.H.及びChung,J.M.著, An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat, Pain, 50 (1992) 355-363.
ベネットモデル:マウスに関する又はラットに関する神経障害性痛
神経障害性痛における有効性に関するこの調査は、ベネットモデル(chronic constriction injury; Bennett及びXie, 1988, Pain 33: 87-107)で試験した。
【0108】
体重140〜160gのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラットに、ナルコレン−麻酔のもとで、右坐骨神経の4つの緩い結紮を行った。体重16〜18gのNMRIマウスに、ケタベット−ロムプン−麻酔のもとで、右坐骨神経の3つの緩い結紮を行った。これらの動物は、損傷された神経から刺激される脚に神経過敏を発症し、この神経過敏は1週間の回復期間の後で約4週間にわたり、4℃の冷たい金属プレートを用いて数値化した(寒冷アロディニア)。これらの動物を前記プレート上で2minの時間観察し、損傷された脚の逃避反応の数を測定した。物質投与前の値に関して、物質作用を1時間の期間にわたり4回の時点(投与後の約15、30、45、60min)で測定し、生じた曲線下面積(AUC)並びに個々の測定時点に対する寒冷−アロディニアの阻害率を賦形剤対照に対する作用(AUC)及び出発値に対する作用(個々の測定点)をパーセンテージで表した。このグループサイズはn=10であり、抗アロディニア作用の有意性(*=p<0.05)は、繰り返し測定及びボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析を用いる分散分析によって決定した。
【0109】
ビンクリスチンにより誘導された多発性ニューロパシー
このモデルは、文献に記載されている(KO Aley, DB Reichling, JD Levine著, Neuroscience 1996, 73, 259-265)。
【0110】
糖尿病による多発性神経障害性痛
このモデルは、文献に記載されている(SC Ahlgren, JD Levine著, Neuroscience 1993, 52, 1049-1055)。
【0111】
神経障害性痛モデルにおける相対的な作用の強化
【0112】
【表3】
1) テールフリックモデル、ラット
2) テールフリックモデル、マウス
3) ソフトテールフリックモデル、ラット
4) チュングモデル、ラット
5) ベネットモデル、ラット
6) ベネットモデル、マウス
図示するために、前記テールフリックテストからのED50値及び神経障害性痛モデルからのED50値を、テールフリック試験におけるED50値に基準化し、それぞれの半値有効用量の相関を示す(図1及び2参照)
チュングモデルにおけるμ−成分及びORL1成分の拮抗作用
拮抗作用試験において、それぞれ部分的拮抗作用をナロキソン(μ−OR)及びB11(ORL1−R)を用いて示した。このデータは、両方の成分が鎮痛に寄与することを示す(図3参照)。
【0113】
B11の極めて高い用量の場合であっても、つまり、ORL1−作用メカニズムの完全な遮断の場合でも、A4の鎮痛についての有効性は存続する。
【0114】
図4は、A6、A5及びA1のナロキソン又はB11によるμ−成分又はORL1−成分の拮抗作用により拮抗作用されない成分のそれぞれの鎮痛作用は存続することを示す。
【0115】
神経障害性の動物における抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離神経障害性の動物の場合のA4及びモルフィンの比較
チュングモデルの場合には、同側性又は対側性の脚についての痛み反応の比較試験によって、抗侵害受容作用(対側性)及び抗異痛作用(同側性)が区別される。
【0116】
モルフィンについて、1mg/kg iv.の投与後に純粋な抗異痛作用だけは観察することができた。この最大の有効性はこの場合29%MPEである。次に高い試験用量(2.15mg/kg iv.)の場合には、既に明らかな抗侵害受容作用が生じる(図5、5a)。
【0117】
これに対して、最大の、A4の純粋な抗異痛効果は56%MPEである。これは、1μg/kg iv.の試験用量で達成される(図6、6a)。
【0118】
結論:ORL1−成分により、純粋なμ−オピオイドの場合よりも有意に強い抗アロディニア作用が達成される。
【0119】
未処理の動物及び神経障害性の動物におけるA4及びモルフィンの直接的な比較
急性痛及び神経障害性痛における異なる有効性を比較する場合に「痛みの質」(テールフリック、侵害受容刺激vs.チュング、触覚異痛)の可能な影響を排除するために、A4とモルフィンを比較して脊椎神経結紮した動物(チュング−モデル)及び見かけ上手術された動物において試験した。痛みモデルとしてテールフリックを全ての場合で使用した。この直接的比較は、ニューロパシーの形成後にモルフィンの有効性は低下するが(これは臨床的状況に一致)、前記有効性はA4については増加することを示す(図7及び8参照)。
【0120】
急性痛(下記参照)の場合の両方の物質の同等な有効性の場合に、A4の抗アロディニアについての有効性は、フェンタニルの作用の約10倍高い。
【0121】
細胞増殖抑制により誘導された多発性神経障害性痛と糖尿病により誘導された多発性神経障害性痛との比較
A4は、ラットに関してビンクリスチンにより誘導された多発性神経障害性痛の場合に、1μg/kgの用量の場合に有意な有効性を示す(図24)。0.64mg/kgの用量の場合にはまだ有意な有効性は観察できない(14.7±10.2%MPE)。それに対して、糖尿病により誘導された神経障害性痛の場合には、試験された最低の用量(0.316μg/kg)で既に有意な有効性が観察される(図26)。この用量範囲において、まだ抗侵害受容効果は観察できない。臨床的に使用される比較物質のモルフィン及びプレガバリンは、抗侵害受容効果も観察できる用量範囲で、糖尿病による多発性神経障害性痛の場合の有効性が初めて示される(図27、28)。
【0122】
混合されたORL1/μ−アゴニストによる炎症性痛の場合の作用の強化
a)脊髄損傷されたラットにおけるシングル−モーターユニット誘導。未処理の動物とカラゲナンにより誘導された炎症後の動物の比較。
【0123】
このモデルは文献に記載されている(Herrero & Headley著, 1996, Br J Pharmacol 118, 968-972)。
【0124】
炎症の誘導(カラゲナン100μl、1%、足蹠皮内)の24時間後に、は、A4の抗侵害受容作用(機械的刺激(狭窄)もしくは電気的刺激(ワインドアップ)によるSMU活性の阻害として測定)は明らかに高められる(図10及び10a参照)。モルフィンの抗侵害受容作用は、それに対して炎症後でも変化しない(図11及び11a参照)。
【0125】
さらに、このモデルの場合にA11についても、炎症誘導後の作用の強化を示すことができた。
【0126】
CFAにより誘導された痛覚過敏
ラットの場合の完全フロイントアジュバント(CFA)により誘導された痛覚過敏
このCFAにより誘導された痛覚過敏は、慢性炎症性痛の動物モデルである。オスのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラット(150〜180g)を、パラフィンオイルと乳化剤としてのモノオレイン酸マンニットからなる混合物中の、熱により殺菌しかつ乾燥したミコバクテリア(ミコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis);H37 Ra)100μl(完全フロイントアジュバント、CFA)を1回足蹠皮下に注入する(用量1mg/ml)。CFA注入の1日後に、電子的なフォンフレー(von Frey)毛髪(Somedic Sales AB, Hoerby、スウェーデン国)を用いて触覚性痛覚過敏を試験する。このために、動物を格子底を備えたプラスチックボックス中に置き、この格子底は両方の後脚に自由なアクセスを可能にする。von Freyフィラメントを用いて後脚底部を刺激する。機械的刺激に関する同側性の脚及び(未処理の)対側性の脚の神経過敏の定量化のために、脚の逃避閾値をもたらされた圧力のグラム出示す。脚当たり4回の刺激を30秒の時間間隔で繰り返す。4つの測定値から中央値を作成した。同側性の脚及び対側性の脚の逃避閾値を、CFA注入後の異なる時点(1h、3h、1日、4日)で、前(=投与前値)及び物質投与後の多様な時点(測定値)で測定する。溶剤を投与された対照動物グループを共に用いる。物質の有効性は、痛覚過敏の阻害率%として及びさらにMPE%として次のように算定する:
痛覚過敏の阻害率%=(1ーHA測定値/HA投与前値)×100
HA投与前値=物質投与前の対側性の逃避閾値−同側性の逃避閾値
HA測定値=物質投与後の対側性の逃避閾値−同側性の逃避閾値
MPE%=[(WSs ipsi−WSo ipsi)/WSo contra−WSo ipsi]×100
WSo contra=未処理の対側性の脚の逃避閾値
WSo ipsi=未処理の同側性の脚の逃避閾値
WSs ipsi=物質投与により処理された同側性の脚の逃避閾値
MPE%:最大可能効果のパーセンテージ;この最大可能効果は対側性の未処理の脚の逃避閾値として定義される
全体として、試験グループ(物質及び対照)あたり10匹のラットを使用する。平均値±SEMは個々の動物の中間値から算出する。有意性の計算は、繰り返し測定のための2要因分散分析(ANOVA)を用いて行う。相互作用物質適用(処理)の有意性、時間、時間・処理は、ウィルクス(Wilks)のラムダ統計により分析する。有意な処理効果の場合には、フィッシャー(Fischer)テスト、引き続きポストホックデュネット(post hoc Dunnett)テストが実施される。
【0127】
モルフィンは調査期間にわたり抗痛覚過敏作用の軽度な低下又は同じに維持される抗侵害受容作用の傾向を示すが、A4の抗痛覚過敏作用及び抗侵害受容作用は24hにわたり増加する。この効果は少なくとも4日間安定である(図12、12a参照)。
【0128】
マウスの場合のカラシ油により誘導された内臓性炎症性痛
オスのNMRIマウス(体重20〜35g)は、プレキシガラスケージ(14.5×14.5cm、高さ10cm)中の格子蓋上で約30分間順化させる。
【0129】
腹壁に関するフォンフレー(von Frey)フィラメント(1、4、8、16、32mN)を用いた10回の機械的刺激に関するマウスの挙動を、投与前値として集計する。この挙動は、外傷防衛器反応の数の合計に関して又は外傷防衛器反応の質に関して及び、前記反応の数に属する係数(係数1:腹部の軽度な持ち上げ行動、刺激箇所をなめる行動、逃避行動;係数2:後ろ脚を伸ばして逃避する行動、僅かに飛び跳ねる逃避行動、後ろ脚の痙攣、刺激箇所を不意に強くなめる行動;係数3:飛び跳ねによる逃避行動、鳴く行動)を掛け算することによる重み付けに関して及び引き続く全体像に関して分析する。
【0130】
引き続き、カラシ油の投与前の適当な時間に適当な投与方法で前記物質の動力学的特性に応じて試験物質又は賦形剤の適用を行う。このグループサイズは通常ではn=7である。
【0131】
急性大腸炎がカラシ油50μlの直腸投与(PEG200の場合に3.5%)によって誘導される。カラシ油の投与後の2〜12分に、前記の動物は自発的内臓性痛の挙動を示し、これを観察する。この反応の数を、所属する係数で掛け算した(係数1:腹壁をなめる行動;係数2:伸びる行動;腹部を床に押し当てる行動、のけぞる挙動、腹部を収縮、後退る運動又は脇腹の筋肉の収縮)及び引き続き自発的内臓性痛スコアを合計する。動物のグループは、カラシ油の代わりに、PEG200 50μlの直腸適用を受ける。
【0132】
カラシ油の投与後の12〜40分に、新たに腹壁に関するフォンフレー(von Frey)フィラメント(1、4、8、16、32mN)を用いた10回の機械的刺激に関する動物の挙動を観察し、前記したように定量化する。伝達された機械的アロディニアを、この場合、強度1mNのフォンフレー(von Frey)フィラメントを用いた刺激に関する反応の合計から決定する。伝達された機械的痛覚過敏を、強度16mNのフォンフレー(von Frey)フィラメントを用いた刺激に関する重み付けされた反応の合計から決定する。
【0133】
試験物質の作用を、賦形剤と比較して、1.自発的内臓性痛の挙動の阻害、2.伝達された機械的アロディニアの阻害及び3.伝達された機械的痛覚過敏の阻害により記載した。
【0134】
前記データは、繰り返し測定を用いた多要因分散分析により調査し、試験物質の有意な作用が存在する場合(P<0.05)に、個々のデータをボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析により有意性を調査する。用量作用曲線の場合に、半値有効用量を記載するED50値は、線形回帰分析により決定することができる。(Christoph et al.著, 2005, Eur. J. Pharmacol. 507:87-98による)。
【0135】
カラシ油により誘導された非神経性の内臓性炎症のマウスにおける伝達されたアロディニア及び伝達された痛覚過敏についてのモデルにおけるA4及びフェンタニルの比較試験は、全ての3つの疼痛パラメータ、特にアロディニア及び痛覚過敏に対して、純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの有意に高められた有効性を示した。
【0136】
伝達されたアロディニア
【0137】
【表4】
1) テールフリック、マウス
伝達された痛覚過敏
【0138】
【表5】
1) テールフリック、マウス
A4の鎮痛についての有効性は、2つの試験した疼痛パラメータに関して、急性痛での鎮痛についての有効性よりも約6倍〜7倍高い。これに対して、内臓性炎症痛におけるフェンタニルの鎮痛についての有効性は、急性痛の場合よりも低い。
【0139】
急性痛モデルの場合の作用
ORL1:μ−割合1:10〜30:1を有するこの混合されたORL1/μ−アゴニストは、急性痛モデル(テールフリック、マウス及びラット)において完全な有効性を示す。テールフリックの場合のこの結果は、表3に示されている(上記参照)。この効果は、ORL1:μ 1:10〜20:1の実施例により示されている。μ−ORに対するその結合親和性に応じて、この作用強度は標準オピオイド(スフェンタニル、フェンタニル、ブプレノルフィン、オキシコドン、モルヒネ)の範囲内にある(図13参照)。
【0140】
オピオイドにより誘導された痛覚過敏
オピオイドの慢性的な投与は、疼痛患者において痛覚過敏を引き起こす(Chu et al.著 2006, J. Pain 7:43-48参照)。同様の現象が、急性の投与後に禁断症状の形で生じる(Angst et al.著 2003, Pain 106:49-57)。動物モデルの場合に、純粋なμ−オピオイドは急性の投与後に、一時的な痛覚過敏を誘導し(Opioid-induced Hyperalgesia. A qualitative systematic review. Angst and Clark, Anesthesiology 2006; 104:570-87)、この一時的な痛覚過敏は、例えばソフトテールフリック−モデルにおいて一時的な「前侵害受容」期として検出可能である。一致する所見が文献に記載されている。このオピオイドにより誘導された痛覚過敏は、純粋なμ−オピオイド(フェンタニル及びモルフィン)についての改良されたソフト−テールフリック−モデル(25% 熱放射線強度)を用いて示すことができる。これとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4及びA10)の急性の投与後には過渡的な痛覚過敏は観察されなかった(図14〜14c)。
【0141】
身体的依存症の測定
試験は次の2つのモデルで行った:マウスの場合のナロキソンにより誘導された禁断及びラットの場合の自発的禁断。両方のモデルの場合に、この禁断症状は混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に、純粋なμ−アゴニストと比較して明らかに低減した。
【0142】
マウスに関するジャンピングテスト:身体的依存症を決定するための試験(Saelens JK著, Arch Int Pharmacodyn 190: 213-218, 1971)
試験物質を2日間にわたり全体で7回腹腔内に適用する。5回の適用は、最初の日の9:00、10:00、11:00、13:00及び15:00時に行い、2日目には9:00及び11:00時に行う。最初の3回の適用は増加する用量(用量図)で投与し、次いでさらに第3の用量で投与する。この禁断は、最後の物質投与後の2時間にナロキソン30mg/kg(i.p.)で促進させる。その直後に、前記動物を個々に透明な観察ボックス(高さ40cm、直径15cm)に入れ、それぞれ5分の周期で15分間にわたり飛び跳ね反応をカウントする。モルフィンを比較/標準として一定の用量で服用させる。
【0143】
前記禁断の定量化は、ナロキソン適用後の0〜10minに飛び跳ねの数により行う。1グループあたりの10回の飛びはね/10minよりも多い動物の数を決定し、「%ポジティブ動物」と表す。さらに、グループ中の平均的な飛び跳ね周期を算出する。1グループあたり12匹の動物を使用する。
【0144】
μ−アゴニストのB1〜B4は、明らかに禁断飛び跳ね行動を誘導する。このμ−アゴニストB7(L−メタドン、レボメタドン、図15)は、B1〜B4に比較して減少されているが、有意な禁断飛び跳ね運動が誘導される。B8及びA1は、この試験において、有意な禁断飛び跳ね行動を引き起こす(図15a及び15b)。A9は、それに対して、僅かな禁断飛び跳ね行動を引き起こし、より高い用量で完全に抑制される(図15c)。A4又はA7の投与後に、ほとんど有意ではないか又は有意ではない禁断飛び跳ね行動が生じる(図15d及び15e)。
【0145】
ラットに関する自発的禁断:
オピエート自発的禁断に対する研究は、5つのフェーズで実施される。
【0146】
フェーズ1(慢性的治療フェーズ):ラットを3週間にわたり試験物質で処理する。この適用を毎日2〜3回(試験物質の作用期間に応じて)腹腔内で行う。
【0147】
フェーズ2(自発的禁断):引き続き自発的禁断及び1週間の処理しない期間(フェーズ3)を続ける。引き続き、この動物にさらに1週間試験物質を与える(フェーズ4)。
【0148】
フェーズ5(ナロキソンにより誘導された禁断):次いで、ナロキソン(10mg/kg i.p.)で禁断を誘導した。
【0149】
禁断における測定パラメータ:動物の体重、挙動パラメータ:
禁断における(6)主要な症状の評価:震え、唾液分泌、身もだえ、全身的身震い行動(wet dog shakin)、飛び跳ね、歯ぎしり
0=徴候なし、1=軽微、2=重度
最大スコア=12
対照物質としてモルフィンを使用する。
【0150】
このオピエート自発的禁断のための研究は次の文献記載により作成される:
Jaffe JH (1990) Drug addiction and drug abuse. In: Goodman Gilman A, Rall TW, Nies AS, Taylor P (eds.) The pharmacological basis of therapeutics. New York, Pergamon Press: 522-573.
Blaesig J, Herz A, Reinhold K, Zieglgaensberger S (1973) Development of physical dependence on morphine in respect to time and dosage and quantification of the precipitated withdrawal syndrome. Psychopharmacology 33:19-38.
自発的禁断の場合のこの結果は図16に表されている。
【0151】
A4、A7及びA9は、ジャンピングテストにおいて、禁断症状を示さないか又は少なくともモルフィンと比較して明らかに減少した禁断症状を示す。A1(ORL1:μ 1:10)は、禁断飛び跳ねにおいて禁断挙動を引き起こすが、自発的禁断の場合には有意な体重低下が観察されない。しかしながら、モルフィンを予め投与した場合に、ラットの体重は約10%低下した。A1は、従ってモルフィンと比較して依存性の可能性が低いことにより優れている。
【0152】
ORL1依存性メカニズムによるμにより媒介された呼吸抑制の低減
ラットの場合の急性のμにより媒介された呼吸抑制
ラットの場合のpCO2測定及びpO2測定のための方法(血液ガス分析)
テスト物質の呼吸抑制作用を、i.v.投与後に器具が取り付けられた覚醒したラットで調査する。テストパラメータは、物質投与後の動脈血液中の二酸化炭素分圧(pCO2)及び酸素分圧(pO2)の変化である。
【0153】
試験動物:オスのラット、スプラーグドリー(Sprague-Dawley);体重:250〜275g
試験準備:試験物質を適用する少なくとも6日前に、前記ラットをペントバルビタール麻酔のもとで、それぞれPPカテーテルを大腿動脈及び頸静脈内に埋め込む。内に埋め込む。前記カテーテルにヘパリン溶液(4000I.E.)を充填し、ワイヤスティックで閉鎖する。
【0154】
試験経過:前記物質投与又は賦形剤投与は、前記静脈カテーテルを用いて行う。前記物質投与又は賦形剤投与の前及び物質投与又は賦形剤の投与後の規定された時点で、それぞれ動脈カテーテルを開け、ヘパリン溶液約500μlで濯ぐ。次いで、前記カテーテルから血液約100μlを採取し、ヘパリン化された毛管ガラスに収容する。前記カテーテルをもう1回ヘパリン溶液で濯ぎ、再び閉鎖する。動脈血液を、即座に血液ガス分析装置(ABL 5, Radiometer GmbH,Willich、ドイツ国)で測定する。
【0155】
1週間の最低浄化時間の後に、前記動物を新たに試験で使用することができる。
【0156】
試験評価:この血液分析装置は、血液のpCO2及びpO2についての値(mmHg)を自動的に提供する。この分圧に関する物質効果は、物質なしでの又は賦形剤なしでの投与前値と比較したパーセンテージで示す変化として計算した。統計学的評価のために、物質投与後の前記測定値及び賦形剤投与後の時間的同じ測定値を一要因分散分析を用いて比較する。有意な物質効果の場合に、ポストホックデュネット(post hoc Dunnet)試験を実施する。
【0157】
純粋なμ−オピオイド(この場合にはフェンタニル及びオキシコドン、図17及び17a)の場合に、鎮痛作用最大値の時点でμにより誘導された呼吸抑制のために動脈pCO2の明らかな上昇が生じる。90〜100%の有効性の用量の場合には、pCO2値は50%以上に高まる。
【0158】
これと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの場合にpCO2値を測定した。
【0159】
数時間にわたる鎮痛最大作用の用量の場合でさえも、混合されたORL1/μ−アゴニストの投与後の動脈pCO2は、約20〜30%上昇するだけである。
【0160】
この観察された効果を、A4の実施例に関し、その原因について調査した。この場合、時点0でA4とB11(2.15mg/kg)とを一緒に投与し(i.v.)、ORL1成分を拮抗作用し、μ−効果だけを観察した。さらなる試験において、A4+B11の投与後20分にナロキソン(1mg/kg i.v.)を投与し、生じる呼吸抑制効果がμにより媒介される効果だけであるかどうかを試験した。
【0161】
この結果は、純粋なμ−オピオイドと比較してA4の減少された呼吸抑制は、完全に明らかにORL1−成分に起因していることが示された(図18)。B11で拮抗作用した後のpCO2値は、典型的に純粋なμ−オピオイドによる値にまで上昇する。最大pCO2上昇の達成後にナロキソンを投与した場合に、この値は再び低下する。これは、μにより媒介された呼吸抑制はORL1−成分により低減されることを証明している。
【0162】
安全間隔
動脈pCO2の上昇についての閾値用量(ED10)とチュング−モデル(Chung-Modell)で半値有効用量(ED50)との間隔として表される混合されたORL1/μ−アゴニストについての安全間隔及び純粋なμ−アゴニストについての安全間隔を図20に示す。
【0163】
動脈pCO2の上昇時ついての前記閾値用量(ED10)は、A1、A4、A5及びA7の場合に、チュング−モデルの場合の半値有効用量(ED50)を約3〜20倍上回るが、μ−アゴニストB1、B3及びB5についての閾値用量はチュング−モデルの場合の半値有効用量(ED50)の範囲内にあるか、B4についてはそれどころか明らかに下回る。作用と副作用との間のこの安全間隔は、従って、混合されたORL1/μ−アゴニストについては、μ−アゴニストと比較して明らかに拡大されている。
【0164】
精神的依存症/中毒
場所嗜好性の調査のために参照: Tzschentke, T.M., Bruckmann, W. and Friderichs, F. (2002) Lack of sensitization during place conditioning in rats is consistent with the low abuse potential of tramadol. Neuroscience Letters 329, 25-28.
A4、A6及びA7は、場所嗜好性を誘導するが、この場所嗜好性は純粋なμ−アゴニストB1及びB3〜B5と比較して、100分の1までの低い用量範囲にある(図21)。
【0165】
A7の実施例において、ここで低減された場所嗜好性はORL1−成分に起因することを示した。まず、この場所嗜好性を多様な用量で試験した(図22)。
【0166】
A7の投与後にB11で拮抗作用させた。これは、ORL1−成分の遮断後に、場所嗜好性の誘導についての閾値が、低い用量にまで引き下げられることを示すことができる(図23)。この所見は、ORL1−成分が、μ−ORにより媒介される場所嗜好性を緩和することを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、急性痛モデル(テールフリック(Tail-flick)、ラット/マウス)及び神経障害痛モデルの場合の鎮痛作用(ラットに関するチュング−モデル(Chung-Modell)を示す。
【図2】図2は、急性痛モデル及び神経障害痛モデルの場合のラット/マウスに関するベネット−モデル(Bennett-Modell))における鎮痛についての有効性の比較を示す。
【図3】図3は、B11による抗侵害受容効果の拮抗作用をチュング−モデルで示す。
【図4】図4は、B11による抗侵害受容効果の拮抗作用をチュング−モデルで示す。
【図5】図5は、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図5a】図5aは、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図6】図6は、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図6a】図6aは、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図7】図7は、未処理の動物と神経障害性動物の場合のモルフィンの有効性の比較を示す。
【図8】図8は、未処理の動物と神経障害性動物の場合のμ-オピオイドとの比較を示す。
【図9】図9は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図10】図10は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図11】図11は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図11a】図11aは、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図12】図12は、ラットCFA誘導された痛覚過敏症:抗侵害受容効果の測定(抗痛覚過敏効果を含む)(時間依存性−CFA投与後の1h〜4日)を示す。
【図12a】図12aは、抗侵害受容効果(抗痛覚過敏効果を含む)の変化を示す。
【図13】図13は、齧歯類動物−急性痛モデル(テールフリック、ラット)の場合のi.v.ボーラス投与による混合されたORL1/μ−アゴニストと標準オピオイドとの半値有効用量の比較を示す。
【図14】図14は、フェンタニルの投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14a】図14aは、モルフィンの投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14b】図14bは、A7の投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14c】図14cは、A4の投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図15】図15は、レボメタドンの投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15a】図15aは、B8の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15b】図15bは、A1の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15c】図15cは、A9の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15d】図15dは、比較物質としてのモルフィンとA4の投与後の飛び跳ね行動を示す。
【図15e】図15eは、比較物質としてのモルフィンとA4の投与後の飛び跳ね行動を示す。
【図16】図16は、自発的禁断を示す。
【図17】図17は、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17a】図17aは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17b】図17bは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17c】図17cは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17d】図17dは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17e】図17eは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図18】図18は、拮抗作用試験を用いた呼吸抑制に関する混合されたORL1/μ−アゴニストのポジティブな効果の検出を示す。
【図20】図20は、純粋なμ−オピオイド及び混合されたORL1/μ−アゴニストについての呼吸抑制の例に関する鎮痛と副作用との間の間隔の比較を示す。
【図21】図21は、純粋なμ−オピオイドと混合されたORL1/μ−アゴニストについての精神的依存症の例に関する鎮痛と副作用との間の間隔の比較を示す。
【図22】図22は、A7の投与後に観察された場所嗜好性を示す。
【図23】図23は、ORL1−成分の拮抗作用による場所嗜好性の増強を示す。
【図24】図24は、細胞増殖抑制剤に誘導された多発性神経障害性痛を示す。
【図25】図25は、細胞増殖抑制剤に誘導された多発性神経障害性痛を示す。
【図26a】図26aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図26b】図26bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図26c】図26cは、機械的痛覚過敏を示す。
【図27a】図27aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図27b】図27bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28a】図28aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28b】図28bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28c】図28cは、機械的痛覚過敏を示す。
【技術分野】
【0001】
限られた期間でかつ引き起こされる刺激が取り除かれた後には一般に再び迅速に弱まる急性痛の他に、特に慢性痛は医学の課題である。完全な侵害受容器の刺激による急性痛の発症は、身体の不可侵性の保持するための警告機能を有する。これに引き続く痛みの回避のための反応が傷害から保護している。慢性痛はこの保護機能を失っている。これは痛み疾患である。慢性痛は、この場合、2つの大きなグループに分類することができる。この病体生理学的侵害受容器痛は、組織外傷後に完全な侵害受容器の興奮によって引き起こされる。これには、特に慢性炎症性痛が属する。それに対して、神経自体の障害により生じる痛みは、神経障害性痛と言われる。
【背景技術】
【0002】
急性痛から慢性痛への移行は、数時間内に行われることがある。例えば、手術の間の及び手術に引き続く痛み治療がこれに該当する。急性痛みの治療は今日では医師の自覚において極めて重要になっているにもかかわらず、術後の痛みの治療は極めて限定的である(非特許文献1:Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51)。急性痛は、組織損傷、例えば手術に引き続き、病体生理学的プロセスを介して、末梢で及び中枢神経系で慢性化されることがある。組織損傷、急性の術後の痛み及び発展する慢性痛の間の関連性は十分に調査されていて、その際、急性痛の強さは、慢性痛の期間に対する予測的ファクターとして観察することができる(Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51)。この理由だけからも既に、急性痛の満足できる治療は不可欠である。
【0003】
急性痛に対処する際の問題は、急性痛において極めて効果的なμ−オピオイド、例えばモルヒネ又はフェンタニルの副作用、特に呼吸抑制である。この副作用は手術直後の患者において場合により死亡につながるため、この医薬は多くの場合に前記痛みに対する満足のいく対処のために十分な量で投与されない。他方で、今日ではオピオイドなしの術後の痛みの治療は考えられない。しかしながら、この呼吸抑制の恐れ及び他のμ−オピオイドに典型の他の副作用は、多くの場合に、オピオイドが強い痛みの場合、例えば癌患者の場合に、少なすぎる量で使用されることにつながる(非特許文献2:Davis et al著, Respiratory Care Journal 1999, 44 (1))。さらに、オピオイドを投与した後に呼吸抑制が生じる危険性は、比較的若い人と比較して老人の場合に高まる。実際に、呼吸抑制が発生する危険性は、人の場合に60才代から明らかに高まる(非特許文献3:Cepeda et al著, Clinical Pharmacology and Therapeutics 2003, 74, 102-112)。従って、呼吸抑制が抑制される、痛みを治療するための新規医薬についての切実な必要性が生じる。
【0004】
しかしながら既に述べたように、慢性痛の治療は大きな挑戦である、それというのも、市場に存在する医薬は、確かに部分的に急性痛の場合には極めて効果的であるが、しかしながら、慢性痛の場合には多くの場合に満足できる痛み治療を生じないためである。
【0005】
炎症性痛
疼痛は、赤色化、腫れ、過熱及び機能障害の他に、炎症の主要な5つの症状のひとつとして生じる。炎症現象は疼痛の発生の最も重要なメカニズムに属する。この典型的な炎症性痛は、ブラジキニン、ヒスタミン及びプロスタグランジンの放出により、組織の酸性化及び侵害受容器への浸出物の加圧を伴い引き起こされる。痛覚は、他の感覚とは異なり順応作用を受けない。むしろ、進行する疼痛刺激は、後続する刺激の処理を増感の意味で強めてしまうことがある。これにより、例えば炎症を起こした組織中での侵害受容器の長期間持続する活性化により、痛み刺激の中枢神経系への流入が増加し、中枢シナプスでの持続的な増感現象が生じる。この中枢の増感現象は、自発的活性の増加及び中枢ニューロンの刺激応答の増強を引き起こし、その受容領域が同様に拡大する(非特許文献4:Coderre et al.著, Pain 1993, 52, 259-285)。中枢ニューロンの応答挙動のこのような変化は、炎症を起こした組織について典型的な自発的痛み及び痛覚過敏(有害刺激に関して疼痛感覚の増大)を引き起こすことがある(非特許文献6:Yaksh et al.著, PNAS 1999, 96, 7680-7686)。
【0006】
炎症の際の最も重要なプロセスのひとつは、アラキドン酸代謝産物の出現である。これらの化合物は侵害受容器を直接的には活性化しないが、C繊維の刺激伝達の閾値を低減し、他の刺激に対して前記侵害受容器を過敏にする。炎症性痛みの治療のために、特に非ステロイド系消炎剤(NSAID)が有効であることが示されている、それというのもこの非ステロイド系消炎剤はアラキドン酸分解を遮断するためである(非特許文献6:Dickensen, A.著, International Congress and Symposium Series - Royal Society of Medicine (2000), 246, 47-54)。慢性痛の長期間治療の際のその適用は、しかしながら部分的に著しく不所望な作用、例えば胃腸の潰瘍又は毒性の腎障害により制限される。
【0007】
しかしながら、炎症性痛みの治療の場合でも阻害剤による刺激の伝達の制御は重要である。μ−オピオイドはこの種類の最も重要な代表例である。慢性の膵臓炎は例えば疼痛を伴い、この疼痛は臨床的に最も治療するのが困難な痛み症状に属する。NSAIDの投与は、前記痛みを可能な限り軽度に減少させるが、高められた出血の危険性により一方で高い危険性を生じさせる。次の段階は、一般にμ−オピオイドを用いた治療である。該当する人物の中に、麻薬依存症が蔓延する(非特許文献7:Vercauteren et al.著, Acta Anaesthesiologica Belgica 1994, 45, 99-105)。従って、炎症性痛の場合に良好に効果的でありかつ依存症の可能性の低い化合物の切実な必要性が生じる。
【0008】
神経障害性痛
神経障害性痛は、末梢神経が機械的、代謝的又は炎症的に損傷される場合に生じる。この場合に生じる疼痛症状は、主に自発的疼痛、痛覚過敏及びアロディニア(痛みは既に非有害刺激によっても引き起こされる)の発生により特徴付けられる。これらの障害の結果として、Na+チャンネルの発現の増加、及びそれによる障害された軸索及びその隣接軸索中での自発的活性が生じる(非特許文献8:England et al.著, Neurology 1996, 47, 272-276)。前記ニューロンの興奮性は向上し、前記ニューロンは高められた放電回数で有する到達する刺激に応答する。痛み敏感性の増大が生じ、これが痛覚過敏及び自発的痛みの発生を引き起こす(非特許文献9:Baron著, Clin. J. Pain 2000;16 (2 Suppl), 12-20)。
【0009】
神経障害性痛の原因及び発症及びそれから治療の必要性も多岐にわたる。この痛みは、脳、脊髄又は末梢神経の損傷又は疾患の結果として生じる。原因は手術であることもあり、例えば切断術、卒中発作、多発性硬化症、脊髄損傷、アルコール又は医薬濫用又は他の毒素、癌疾患、さらに代謝疾患、例えば糖尿病、痛風、腎不全又は肝硬変、又は感染症疾患、例えば単球増加症、腺熱リケッチア症、チフス、ジフテリア、HIV、梅毒又はボレリアによる幻想痛であることもある。この痛み体験は、極めて多様な兆候及び症状を有し、これらは数及び強度においても時間にわたり変化することがある。逆説的にも、神経障害性通を患う患者は、神経障害性痛が同時に増加する場合、急性痛の知覚の低下又は障害を示す。神経障害性痛の典型的な症状は、いらつきとして、突き刺すような、感電するような又は放射するような燃焼感が記載されている。
【0010】
神経障害性痛の薬理学的基礎治療には、三環式の抗抑鬱剤及び抗痙攣剤が属し、これらは単独治療としても、オピオイドと組み合わせても使用される。これらの医薬は、大抵は一定の痛み軽減だけをもたらすが、疼痛からの解放は多くの場合に達成されない。頻繁に生じるこの副作用は、この場合、十分な痛みの緩和を達成するための医薬の用量増加を頻繁に妨害する。実際に、神経障害性痛の十分な治療のためには、急性痛の治療のためよりも頻繁にμ−オピオイドの用量を高めることが必要であり、それにより副作用は更に重要性を増してくる。μ−オピオイドに典型の耐性の発生により、及びそれに伴う用量の増加の必要性によりこの問題は更に高まる。要約すれば、神経障害性痛は今日では治療するのが困難であり、μ−オピオイドの高い投与量により部分的に成果があるだけであることが確認できる(非特許文献10:Saudi著 Pharm. J. 2002, 10 (3), 73-85)。従って、十分な痛み治療を保証するために、医薬の投与量を許容できない副作用が発生するまで高める必要がない、慢性痛を治療するための医薬の切実な必要性が生じる。
【0011】
過去数十年において、オピオイドに典型的な副作用を示さない、慢性痛の治療のための多様な他の作用原理が提案され、かつ切り替えられた。このように、中程度の強さから強い慢性痛の治療の場合には、例えば抗抑鬱剤も使用される、この抗抑鬱剤は気分を晴れやかにする作用の他に鎮痛作用も有している。しかしながら、今までにこの作用原理はμ−オピオイドを痛み治療の中心的地位から排除することはできなかった。この主要な原因のひとつは、μ−オピオイドの今までに達成されていない作用強度である。しかしながら、呼吸抑制の他に、μ−オピオイドは他の欠点も有している:
【0012】
a) オピオイドにより誘導された痛覚過敏
100年を越える以前から、高い痛み感覚がオピオイド禁断症状に属することが公知である。今日では、痛み症状の出現はオピオイド禁断の診断のための基準に属する(非特許文献11:Angst et al著, Anesthesiology 2006, 104, 570-587)。動物及びヒトに関する膨大な数の研究は、所定の場合にμ−オピオイドが痛み感覚における変化を引き起こすことができ、この変化が感覚過敏(痛みを伴う刺激の後の高められた痛み強度の感覚)を引き起こすことを示している。これらの研究は、短期間のオピオイド投与でも、慢性的なオピオイド投与でも、オピオイドにより誘導された痛覚過敏の症状が生じることを示す(非特許文献12:Pud et al著, Drug and Alcohol Dependence 2006, 218-223)。例えば、高いオピオイド割合を用いた麻酔を受けた患者は、催眠剤麻酔を用いた患者と比較して、術後に約3倍量のオピオイドを必要とすることは公知である。この明らかな効果はμ−オピオイドのより安全な使用を同様に制限する、それというのもそれにより必要な用量の増加の際に、副作用、例えば呼吸抑制が大きな意味を有するためである。しかしながら、オピオイドなしでの強い痛みの治療は今日では考えられないため、既に自発的に患者に高い痛み強度を引き起こさない医薬の切実な必要性が生じる。
【0013】
b) 依存症の可能性
痛みの治療のために使用されるμ−オピオイド、例えばモルフィン及びフェンタニルは依存症の可能性を有する。多くの場合、この医薬をやめた場合に禁断症状が生じる。μ−オピオイドのこの副作用により、この極めて効果的な痛みの治療剤の利用が著しく制限される、それというのも依存症の恐れからμ−オピオイドは強い痛みの場合でもしばしば処方されないか又は服用されないためである。従って、極めて効果的であり、かつμ−オピオイドと比較して依存症の可能性が低い痛みの治療剤の切実な必要性が生じる。
【0014】
μ−オピオイドの典型的な副作用は、全ての患者にとって等しく強く形成されるわけではない。この副作用を許容可能である患者グループも存在するが、他方でこの副作用が大きな問題となる患者グループも存在する。しかしながら、平均的には、この副作用は問題であり、μ−オピオイドは本来天然抽出物のオピウムとして使用されており、痛みの治療のために以前から使用されてきているにもかかわらず、前記の問題は今までは解消できていなかった。依存性の可能性のないモルフィン誘導体を合成するという最初の試みは、1874年に既に行われている。しかしながら、得られた物質であるヘロインは、モルフィンと比較して改善された副作用プロフィールを有しなかったことを示した。今日まで、改善された副作用プロフィールを有する極めて有効な鎮痛剤を製造するという多数の更なる研究がなされた。こうして、1925年にオキシコドンが、1946年にメタドン、1961年にフェンタニル及び1965年にチリジンが合成された。しかしながら、前記副作用の明らかな低減はその有効性の明らかな低減を伴うことが判明した。このμ型の副作用は十分に調査されており;この副作用はμ−アンタゴニストのナロキソンを用いて拮抗可能であり、従ってμ−オピオイドの作用プロフィールに属する。今までに、段階3(WHO段階)の臨床的に使用されるμ−オピオイド、例えばフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ブプレノルフィン及びヒドロモルフォンと同じ作用強度を有し、かつ同時に明らかに低い副作用プロフィールを有する医薬は存在していない。
【0015】
要約すると、急性痛の場合でも慢性痛の場合でも、中程度の強さの痛み〜強い痛みの治療は、前記治療の全ての欠点にもかかわらず、大部分はμ−オピオイドの使用に基づくことが確認できた。これは、特に前記化合物の高い作用強度から生じる。しかしながら、前記欠点は重大であり、多くの患者が副作用の恐れから、独自の熟慮の結果もしくは医師の考慮の結果から、必要な治療を受けない。従って、一方でμ−オピオイドの高い有効性を有するが、依存症、高まる痛み感覚、呼吸抑制及び慢性痛における有効性の低下のような欠点が減じられた、作用原理に基づく新規種類の痛みの治療薬の切実な必要性が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Power著, Brit. J. Anaesth., 2005, 95, 43-51
【非特許文献2】Davis et al著, Respiratory Care Journal 1999, 44 (1)
【非特許文献3】Cepeda et al著, Clinical Pharmacology and Therapeutics 2003, 74, 102-112
【非特許文献4】Coderre et al.著, Pain 1993, 52, 259-285
【非特許文献5】Yaksh et al.著, PNAS 1999, 96, 7680-7686
【非特許文献6】Dickensen, A.著, International Congress and Symposium Series - Royal Society of Medicine (2000), 246, 47-54
【非特許文献7】Vercauteren et al.著, Acta Anaesthesiologica Belgica 1994, 45, 99-105
【非特許文献8】England et al.著, Neurology 1996, 47, 272-276
【非特許文献9】Baron著, Clin. J. Pain 2000;16 (2 Suppl), 12-20
【非特許文献10】Saudi著 Pharm. J. 2002, 10 (3), 73-85
【非特許文献11】Angst et al著, Anesthesiology 2006, 104, 570-587
【非特許文献12】Pud et al著, Drug and Alcohol Dependence 2006, 218-223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、医薬についての作用原理を見出し、前記原理により作用する医薬は一方ではμ−オピオイドの高い有効性を有するが、依存症、呼吸抑制及び慢性痛の場合にμ−オピオイドと比較して有効性が低いというような欠点は低い程度で示すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題は、本発明により解決される。
【0019】
本発明の対象は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30である、混合されたORL1/μ−アゴニストの痛みの治療のための使用である。前記Ki値は、それぞれのレセプターを発現する組み換えCHO細胞に関して測定される。
【0020】
「1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μ」の前記の概念は、省略した形で「ORL1/μ」とする。「少なくとも100nM」の概念は、この親和性が100nM以上(=より低いKi値、例えば99.9nM)にあることを意味する。
【0021】
意外にも、0.1〜30のORL1/μの割合を有する化合物は、ORL1成分がμ型の副作用、例えば呼吸抑制及び依存症の明らかな低減を引き起こすが、この成分の抗オピオイド作用は急性痛の場合の鎮痛作用を妨害しないウィンドウを形成することが判明した。急性痛とは反対に、慢性痛症状の場合には、ORL1成分とμ成分との鎮痛相乗作用を引き起こし、つまり個々のレセプターでの前記化合物の作用が総合作用を提供することにそれぞれ寄与する。それにより、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される0.1〜30のORL1対μの割合を有する化合物の場合には明らかに高められた有効性を達成し、この有効性は満足される効果を生じるために急性痛と比較して用量が減じられることも可能にする。有利に、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1対μの割合は0.1〜20である。本発明による化合物は、親物質の代謝物であることができ、その際、前記代謝物は単独でも又は代謝物混合物として残留する量の親物質との組み合わせで本発明による特性を有することもできる。
【0022】
前記化合物の有効性にとって、μ−オピオイドレセプターに対する前記化合物の親和性又は前記代謝物の親和性が少なくとも100nM(Ki値 ヒト)であることが重要である。この値は、臨床的適用の場合の極めて有効なμ−オピオイド、例えばヒドロコドン(ヒト μ−OR Ki 76nM)、ケトベミドン(ヒト μ−OR Ki 22nM)及びメプタジノール(Ki 150nM ヒトμ−OR)の範囲内にある。有利に、μ−オピオイドレセプターに対する前記化合物の親和性は少なくとも50nMである。
【0023】
本発明による特性を有する化合物の前記の意外な特性は、多数の動物実験により証明された。前記化合物は、ORL1/μ割合の領域幅を有し、本発明による範囲内の混合されたORL1/μアゴニストの例外性を証明する。比較試験のために、今日、強い痛みの治療のために適用される医薬が選択された。B1〜B6の対照物質は、μ−オピオイドのフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ブプレノルフィン及びヒドロモルフォンであり、これら全ては痛みの治療のためのWHO段階基準により段階3−オピオイド類に属する。これらの医薬は、今日では強い痛みの治療のための一般的な基準を提示する。
【0024】
このORL1レセプターは、μ、κ及びδオピオイドレセプターに対して相同性であり、前記内在性リガンドの、ノシセプチン−ペプチドの、前記アミノ酸配列は、公知のオピオイドペプチドのアミノ酸配列に対して極めて類似性を有している。前記ノシセプチンにより誘導化された、前記レセプターの活性化により、Gi/oタンパク質との結合によってアデニラートシクラーゼを阻害し、電圧に依存するカルシウムチャンネルを阻害し、かつカリウムチャンネルを活性化する(Meunier et al.著, Nature 377, 1995, p. 532-535; Ronzoni et al.著, Exp Opin Ther Patents 2001, 11, 525-546)。
【0025】
前記ノシセプチン−ペプチドは、多様な動物モデルにおいて脳内血管適用により前侵害受容的(pronociceptive)及び痛覚過敏的に活性化を示す(Reinscheid et al.著, Science 270, 1995, p. 792-794)。この所見は、ストレスにより誘導される無痛覚症の抑制としても説明することができる(Mogil et al.著, Neuroscience 75, 1996, p. 333-337)。
【0026】
他の側面では、多様な動物モデルにおいて、脊髄内投与の後に、ノシセプチンの抗侵害受容効果も示すことができた。(Abdulla und Smith著, J. Neurosci., 18, 1998, p. 9685-9694)。ノシセプチンは、作用箇所及び前記器官の生理学的状態に応じて、抗侵害受容特性も前侵害受容特性も有する。
【0027】
さらに、内在性のORL−1−リガンドのノシセプチンは神経障害性痛における作用も有することは公知である。さらに、ノシセプチン及びモルフィンは神経障害性痛において相乗作用を示すことを確認することができた(Courteix et al.著, Pain 2004, 110, 236-245)。しかしながら、ノシセプチン自身は、全身投与により急性痛(テールフリック試験で測定)の場合には有効ではない。純粋なORL1−アゴニストは、従って、場合によっては神経障害性痛の治療のために適している。治療すべき痛みが混合形で発症するか又は神経障害性痛の場合に典型的な自発的痛みが生じる場合、純粋なORL−1−アゴニストはしかしながら動物試験からの所見によると十分に有効ではない。
【0028】
前記文献から、混合されたORL1/μ−アゴニストは、例えばEP 0997464又はWO 1999059997からすでに公知である。これらの文献は、しかしながら、混合されたORL1/μ−アゴニストとして具体的な生物学的データの提示なしに記載された構造だけを開示しており、本発明による親和性領域における化合物が利点を有することを開示していない。WO 2001039775は、混合されたORL1/μ−アゴニスト並びに一般に化合物がORL1−親和性及びμ−親和性を有することができる類縁でない特別な範囲を開示しているが、このような化合物の利点の立証はない。
【0029】
純粋なμ−オピオイドと比較した慢性痛の場合の作用の強化
a) 神経障害性痛
典型的なμ−アゴニストとは反対に、意外にも0.1〜30、有利に20までの範囲内の混合されたORL1/μ−アゴニストの場合には、神経障害性痛モデルにおける鎮痛についての有効性の明らかな向上を観察することができる。拮抗作用試験において、前記ORL1−成分は混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に鎮痛作用についての直接的寄与が提供されることが示された(図3)。ORL1/μ−割合が0.5(化合物A4)の物質とモルフィンとの未処理の動物及び神経障害性の動物における直接的比較は、ニューロパシーの形成によりモルフィンの有効性は低下する(このことは臨床的事象と一致する)が、混合されたアゴニストについては増加する傾向を示す(図5、5a、6、6a)。
【0030】
急性痛モデル(テールフリック(Tail-flick)、ラット/マウス)及びニューロパシー痛みモデル(ラットに関するチュング−モデル(Chung-Modell)並びにラット/マウスに関するベネット−モデル(Bennett-Modell))における鎮痛についての有効性の比較は、本発明による特性を有する化合物の例外性を示す(図1及び2参照)。神経障害性痛モデルの場合の鎮痛能力が急性痛モデルの場合よりも低い(5分の1まで)純粋なμ−オピオイドとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛能力は神経障害性痛モデルの場合に急性痛モデルの場合よりも2〜10倍高い。例えば、臨床的に使用されるμ−オピオイドのオキシコドンは、神経障害性痛の場合に、急性痛と比較して3分の1〜5分の1の能力であるが(動物モデルに依存する)、それに対してORL1/μ割合が0.5(化合物A4)の混合されたアゴニストの場合には、神経障害性痛の場合に急性痛の場合よりも約10倍高い能力である。
【0031】
前記効果を生じる範囲の上限は、化合物B8により証明されていて、前記化合物B8はORL1/μ−割合0.03を有し、かつ神経障害性痛モデルの場合に、急性痛モデルの場合よりももはやより良好な効果を示さない。この実施例A1(ORL1/μ−割合が0.1)は、それに対して10倍良好な効果を示す。
【0032】
ORL1/μ−割合が20である化合物A11は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合になお高い作用の強化を示す。この化合物は、急性痛の場合に全身投与により依然として良好な有効性を示す(マウスのテールフリック試験、i.v.ED50=0.42mg/kg)。ORL1/μ−割合が140:1である化合物B9は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合に同様に高い作用の強化を示す。しかしながら、この化合物は、全身投与により急性痛の場合に低すぎるμ−成分のためにもはや効果がない。内因性ORL−1−リガンドのノシセプチンは、急性痛モデル(テールフリック試験、i.v.)の場合にもはや効果を示さない。ORL1−成分の抗オピオイド特性のために、μ−成分と比較して30:1よりも明らかに良好であるORL1−成分を有する化合物の場合には、急性痛の場合の作用は、その作用強度において段階−3−オピオイドと同等であるために悪すぎる。この関係は、ORL1−成分の拮抗作用により表すことができる。この所見は、本発明による特性を有する化合物が、明らかに特殊な特性を有する混合されたμ/ORL1−アゴニストの定義されたサブグループを形成することを示す。本発明による前記範囲の下限は、従って30であり、有利に20である。
【0033】
チュング−モデル(Chung-Modell)での拮抗作用試験の場合に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛についての有効性は両方の成分に起因することが証明された。混合されたORL1/μ−アゴニストの投与後に、μ−アンタゴニストによって、並びにORL1−アンタゴニストによってそれぞれ鎮痛作用の部分的低下を示すことができる(図3及び4)。このことは、μ−オピオイド−成分もORL1−成分も慢性の神経障害性痛の場合に作用に寄与することを証明する。
【0034】
この拮抗作用試験は、本発明による特性が前記化合物のORL1−アゴニスト作用及びμ−アゴニスト作用に直接起因していることを明らかに示している。
【0035】
急性痛及び神経障害性痛における異なる有効性を比較する場合に「痛みの質」(テールフリック、侵害受容刺激vs.チュング(Chung)、触覚アロディニア)の可能な影響を排除するために、A4とモルフィンを比較してチュング動物及び見かけ上手術された動物において試験した。痛みモデルとしてテールフリックを全ての場合で使用した。この直接的な比較は、モルフィンが見かけ上手術された動物に関して極めて良好な作用を有することを示し、これは急性痛の場合に相応するが、手術された動物の場合にニューロパシーの形成の後にモルフィンの有効性は比較的明らかに低下することを示す(図7)。これは臨床的状況にも一致し、臨床におけるμ−オピオイドの問題の一つを示す。それに対して、A4は見かけ上手術された動物に関して明らかな作用を示し、その作用はニューロパシー形成の後でもなお増加することを示す(図8)。これは、神経障害性痛の治療の場合に純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの明らかな利点を示す。
【0036】
従って、100を下回るnMのμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20の1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されたORL1/μ−割合を有する化合物は、神経障害性痛の治療のために有利に使用できる。
【0037】
神経障害性の動物における抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離
他の利点は、本発明の範囲内で混合されたORL1/μ−アゴニストが抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離により示される。いわゆるアロディニアの場合に、関係のない身体領域で確かに痛みを伴わない刺激(例えば接触、温熱刺激、寒冷刺激)により痛みが引き起こされる。この機械的アロディニアは、帯状ヘルペス後の神経痛の際に典型的であり、この寒冷アロディニアは心的外傷後神経損傷及びいくつかの多発性ニューロパシーの場合に頻繁に生じる。特に糖尿病によるニューロパシーの場合には、機械的アロディニアの発症が典型的である(Calcutt及びChaplan著, Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1478-1482)。
【0038】
慢性痛患者の所定の患者グループの場合には、しかしながら通常の痛み感覚が十分に存続されているアロディニア及び痛覚過敏に対処する場合に有利である。日常正確において痛みの保護メカニズムが機能しているこれらの患者は、従って、特別にアロディニア及び痛覚過敏にだけ対処するが、一般的な痛み感覚にはできる限り手を付けない投薬法が必要である。このことは、例えば通常ではほとんど痛みを感じない刺激、例えば軽い接触又は着衣による刺激によって典型的な痛みが引き起こされる帯状ヘルペス後の神経痛にも通用する。
【0039】
チュング−モデル(Chung-Modell)の場合には、同側性又は対側性の脚(脊髄神経結紮がなされた側に対して)についての痛み反応の比較試験によって、抗侵害受容作用(対側性)及び抗アロディニア作用(同側性)が区別される。
【0040】
μ−アゴニストのモルフィンについて、1mg/kg iv.の投与後にだけ純粋な抗アロディニア作用が観察することができた。この最大の有効性は、この場合に29%のMPE(最大可能効果)であり、これは弱い作用に相当することが確認された。次に高い試験用量(2.15mg/kg iv.)の場合には、既に明らかな抗侵害受容作用が生じる(図5、5a)従って、モルフィンの場合には明らかな抗アロディニア効果と抗侵害受容効果との明確な分離は達成できない。
【0041】
これに対して、最大の、A4の純粋な抗アロディニア効果は56%MPEである。これは、1μg/kg iv.の試験用量で達成され、良好な有効性に相当する(図6、6a)。これは、純粋なμ−オピオイドと比較した混合されたORL1/μ−アゴニストの更なる利点を示す。
【0042】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に1:10〜20:1の化合物を、有利に一般的な痛み感覚を十分に維持する用量で、アロディニア、痛覚過敏及び自発的痛みの治療のために使用することも有利である。ヒトに関する一般的な痛み感覚の維持は、寒冷昇圧モデルで調査することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0043】
さらに、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に0.1〜20の化合物を、帯状ヘルペス後の神経痛の場合の痛みの治療のために使用することが有利である。
【0044】
多様な神経障害性痛の形態の精確な調査のために、A4は細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の調査のためのモデルにおいて調査された。この細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛は、神経障害性痛の臨床的に極めて重要なサブグループを形成する。この多発性ニューロパシーは細胞増殖抑制剤のビンクリスチンの投与によって引き起こした。従って、ラットに関して、ビンクリスチンを用いた化学療法の後の臨床的症状を模倣する病状が生じた。比較物質として、この場合にモルフィンを調査した。
【0045】
A4は、1μg/kgの用量から、つまり慢性痛においてED50の範囲内にある用量から有意な有効性を示した。しかしながら、0.464μg/kgの低い用量の場合には、まだ有意な有効性を示さなかった(図24)。モルフィンについては、2.15mg/kgの用量から良好な有効性が観察された(ED50 チュング(Chung)ラット 3.7mg/kg)。
【0046】
さらに、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛に対するこの有効性を調査した。この痛みの形態はラットに関するモデルで調査し、この場合、ストレプトゾトシンの投与により糖尿病による多発性ニューロパシーを引き起こした。A4は0.316μg/kg i.v.の試験された最も低い用量で、従って0.464μg/kgの用量ではまだ有意な有効性が観察されなかった細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の場合よりも低い用量範囲で、ラットに関する糖尿病により誘導された機械的痛覚過敏の既に有意な阻害を示した。この低い用量範囲の場合でも、A4は対照グループに効果を示さなかった。このことは、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛の場合に、
1.) 意外にも、A4のこの有効性は他の神経障害性痛の形態の場合よりもさらに良好であり、かつ
2.) A4の抗痛覚過敏作用は、抗侵害受容作用を引き起こさない用量範囲においても既に存在し(図26)、ひいては急性痛敏感性に不利な影響を与えずに多発性神経障害性痛の軽減を可能にすることを意味する。
【0047】
それに対して、モルフィンの場合には、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができる(図27)。糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合にこの標準治療は今日ではモルフィンのようなμ−アゴニストの投与ではなく特にプレガバリンの投与であるため、プレガバリンをさらなる比較として同じモデルにおいて調査した。ここでも、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができることが示された(図28)。これは、糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合の本発明による特性を有する化合物の際立った有効性を強調する。
【0048】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために特に有利に使用される。
【0049】
b) 炎症性痛
2種のin-vivo-モデル(脊髄損傷されたラットに関するシングル−モーターユニット誘導及びCFA**により誘導された痛覚過敏)において、慢性炎症の後で混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性が高められたことを示すことができた。
【0050】
脊髄損傷されたラットにおけるシングルーモーターユニット誘導未処理の動物とカラゲナンにより誘導された炎症後の動物の比較
ラットにおいて、炎症を誘導した後の24時間に、A4(ORL1/μ割合 1:2、図9及び10)及びA11(ORL1:μ割合 20:1)の抗侵害受容作用は炎症前の値と比較して明らかに高められていることが観察される。μ−アゴニストのモルフィンのこの抗侵害受容作用は、それに対して炎症後にはより弱い傾向を示す。(図11及び11a)。このことは、慢性炎症後に、混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性は高められるが、純粋なμ−アゴニストはそれに対して高められないことを示す。
【0051】
CFAにより誘導された痛覚過敏
慢性炎症性痛に対するモデルにおいて、CFAの注射により後ろ脚の炎症を誘導させた。炎症を誘導させた後の1h、3h、24h及び4日後に、触覚性痛覚過敏及び痛覚を測定した。モルフィンは全体の調査期間にわたり軽度に低下する抗痛覚過敏作用又は同じに維持される抗侵害受容作用を示したが、A4の抗痛覚過敏作用及び抗侵害受容作用は24hにわたり増加した。この効果は少なくとも4日間安定である(図12及び12a)。このことは、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛の鎮痛の場合と比較して炎症性痛の場合の鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。
【0052】
内臓性炎症性痛
カラシ油により誘導された非神経性の内臓性炎症のマウスにおける伝達されたアロディニア及び伝達された痛覚過敏についてのモデルにおけるA4及びフェンタニルの比較試験は、両方の疼痛パラメータに対して、純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの有意に高められた有効性を示した。A4の鎮痛についての有効性は、2つの試験した疼痛パラメータに関して、急性痛での鎮痛についての有効性よりも約6倍〜7倍高められる。これに対して、内臓性炎症性痛におけるフェンタニルの鎮痛についての有効性は、急性痛の場合よりも低い。このことは同様に、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、内臓性炎症性痛の場合に混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛と比較して鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。これらの化合物は、従って減少された副作用の他に、純粋なμ−オピオイドと比較して炎症性痛における改善された有効性も示す。
【0053】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、従って炎症性痛において高い有効性により優れている。従って、本発明の主題は、炎症性痛を患う患者の治療のための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。この炎症性痛は、例えばリウマチ性関節炎又は膵臓炎により引き起こされることがある。
【0054】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、急性痛と比較して慢性痛において作用の強化を示すことが判明した。従って、これらの化合物は急性痛において必要な用量を下回る用量で慢性痛において適用されることが有利である。有利に、これらの化合物は慢性痛の場合に、急性痛の場合に適用される用量よりも少なくとも2分の1以下の用量で、特に有利に少なくとも5分の1以下の用量で適用される。動物に関して、この用量はテールフリックにおけるED50として測定することができ、ヒトに関しては寒冷昇圧モデルで測定することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0055】
c) 急性痛
0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有するこの混合されたORL1/μ−アゴニストは、i.v.投与後に多様な急性痛モデル及び種類において完全な有効性を示す。ラットについても、マウスについても(テールフリック、図13)前記効果を示すことができた。
【0056】
混合されたORL1/μ−アゴニストと純粋なμ−アゴニストとの比較において、混合されたORL1/μ−アゴニストは、改善された適合性の場合に同等の有効性を示す。この結果は、混合されたORL1/μ−アゴニストが急性痛の場合においても優れた有効性を有することを示す。これらの化合物は、急性痛の場合のその有効性において段階−3のオピオイドと同等である。このことは、数世紀以来強い痛みの治療の領域を占めていた純粋なμ−アゴニストとは異なるメカニズムを介して鎮痛作用が行われるが、同じ作用強度を有する化合物が存在することを意味している。急性痛と比較して慢性痛におけるその意外な作用の強化の他に、本発明による結合プロフィールを有する化合物は、純粋なμ−アゴニストと比較して明らかに改善された副作用プロフィールをも示す。
【0057】
d) 副作用
オピオイドにより誘導された痛覚過敏
オピオイドの慢性的な投与は、痛みのある患者において痛覚過敏を引き起こす(Chu et al.著 2006, J. Pain 7:43-48参照)。同様の現象が、急性の投与後に禁断症状の形でも生じる(Angst et al.著 2003, Pain 106:49-57)。動物モデルにおいて、純粋なμ−オピオイドは急性の投与後に過渡的な痛覚過敏を誘導し、これは例えばソフト−テールフリックモデルにおいて過渡的「前侵害受容」期間として検出することができる。
【0058】
このオピオイドにより誘導された痛覚過敏は、純粋なμ−オピオイド(フェンタニル及びモルフィン)についての低減された刺激強度(25%熱放射線強度)を用いる改良されたテール−フリックモデルを用いて示すことができる。これとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4及びA7)の急性の投与後には過渡的な痛覚過敏は観察されなかった(図14〜14c)。
【0059】
このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストの慢性的な投与の場合に痛覚過敏を誘導しないか又は純粋なμ−オピオイドと比較してより低い痛覚過敏を生じることを示す。この典型的なμ−オピオイド−副作用のひとつは、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に従って低減される。
【0060】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛みの治療の際のオピオイドにより誘導される痛覚過敏の低減のために有利に使用される。
【0061】
特に、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者の治療の場合に使用するのが有利である。これには、例えば既に痛覚過敏を患いかつ手術を受けなければならない患者、例えば過敏性腸疾患患者(内臓性痛覚過敏)、腫瘍疼痛患者及び筋骨核疼痛を患う患者又は強い作用のオピオイド、例えばフェンタニルを術中に髄腔内に投与された患者(例えば帝王切開患者)が属する。従って、本発明の主題は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者における痛みを緩和するための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0062】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな痛覚過敏を誘導する化合物の使用でもある。
【0063】
禁断
マウスに関するナロキソンにより誘導された禁断飛び跳ね行動において、μ−成分よりも10分の1未満の弱いORL−1成分を有する化合物は、禁断飛び跳ね行動を抑制することを示すことができた。より弱いORL1−成分を有する化合物は、それに対して禁断飛び跳ね行動を引き起こした。「禁断飛び跳ね行動」試験の場合に、マウスは定義された時間にわたり数回試験物質で処理された。μ−オピオイドの場合には、この期間内に身体的依存性が達成された。この治療の完了時に、ナロキソン、μ−アンタゴニストの投与によりオピオイドの作用は突然高められる。身体的依存性が現れた場合にマウスは、飛び跳ね行動の形態を表す特徴的な禁断症状を示す(Saelens JK著, Arch Int Pharmacodyn 190: 213-218, 1971)。
【0064】
本発明による特徴を有する化合物は、ORL1作用成分に基づき、純粋なμ−オピオイドは有していない治療法の改善を引き起こす付加的な特徴を有する。マウスに関する禁断飛び跳ね行動の場合に、組み合わされたORL1/μ−アゴニスト、例えばA9、A6、A4又はA7を用いて治療された動物の場合にはナロキソンによって禁断症状は引き起こされないか僅かな禁断症状が引き起こされるだけであることが示された(図15c〜e参照)。A1はそれに対して、禁断飛び跳ね行動の場合に明らかな禁断症状(図15b)を示した。ラットの自発的禁断の際に、ラットの体重を試験物質の中止後に数日間にわたり記録したが、モルフィンとA1(ORL1:μ 0.1)との間に明らかな差異は認識できない(図16)。モルフィンの中止後にラットの体重はほぼ10%減少するが、A9の中止後には約3%減少するだけであった。0.1のORL1/μ−割合は、ここでも、本発明による特徴を有する化合物の有利な作用までの限界を観察することができる。この特性により100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、身体的依存性に対する高い危険性を有する患者グループに特に適している。このグループには、例えば既にμ−オピオイドを経験している患者が属する。
【0065】
しかしながら、身体的依存症の抑制のために、ORL1−成分はいくらか高められ、その際、前記身体的依存症は、0.1のORL1:μ−割合で既に低減されているのが有利である。痛みの治療のためと、同時に禁断症状の抑制する場合に、前記化合物のORL1/μ割合は少なくとも0.25であるのが有利であり、特に少なくとも0.5であるのが有利である。この高められたORL1成分を有する化合物は、有利に身体的依存性のために特別な危険性を有する患者グループの場合に使用される。
【0066】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな禁断症状を誘導する化合物の使用でもある。前記効果は、実施例において記載された禁断飛び跳ね行動についてのモデル及び自発的禁断についてのモデルにより明らかにすることができる。
【0067】
精神的依存症/中毒の低減
混合されたORL1/μ−アゴニストは、純粋なμ−アゴニストと同様に、ラットの場合に場所条件付け(Platzkonditionierung)を引き起こす。場所嗜好性の誘導のための閾値用量は純粋なμ−オピオイド(B1、B3〜B6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量を明らかに下回るが、前記閾値用量は他方で混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4、A7及びA6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量の範囲内にあるかもしくはそれを上回る(図21)。このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストが純粋なμ−オピオイドと比較して減少された中毒能力を有することを意味する。
【0068】
μ−オピオイドの身体的及び精神的依存能力にもかかわらず、前記μ−オピオイドは以前から臨床において成果を達成して使用されており、この場合、たいていの患者は必要な治療の後に再び前記医薬を取り止めている。所定の患者グループは、しかしながら中毒挙動になりやすい。従って、本発明による特性を有する化合物は、潜在的に中毒になりやすい患者の場合の痛み治療のために使用することが有利である。
【0069】
この患者グループには、例えば精神疾患を有するヒト、特に抑鬱性のヒト又は不安障害を患うヒトが属する(Paton et al.著, Journal of Genetic Psychology 1977, 131, 267-289)。有利に、本発明による特性を有する化合物は、従って、精神疾患を有する患者の場合に、痛みの治療の過程で精神的依存症の危険を低下するために使用される。特に、本発明による特性を有する化合物は、鬱病又は不安障害を患う患者に痛みの治療のために適用するのが有利である。
【0070】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな精神的依存症を誘導する化合物の使用でもある。この効果は、例えば拮抗作用試験により明らかにすることができるが、実施例に記載されたような場所嗜好性のための試験によっても明らかにすることができる。
【0071】
呼吸抑制
μ−媒介された呼吸抑制は、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に明らかに軽減される。この急性の呼吸抑制作用は、完全な鎮痛作用用量でも鎮痛閾値用量でもラットに関して動脈血液のpCO2の上昇として測定された。
【0072】
B1(フェンタニル、図17)及びB4(オキシコドン、図17a)に関して示された純粋なμ−オピオイドの場合に、最大鎮痛作用の時点で、μ−誘導された呼吸抑制に基づき動脈のpCO2の明らかな上昇が生じる。90〜100%の作用用量の場合には、このpCO2値は50%より大きく上昇する。
【0073】
それに対して、前記pCO2値は、A4、A5、A6及びA9のような混合されたORL1/μ−アゴニストの場合にわずかに上昇しただけである(図17b〜e)。数時間にわたり鎮痛について最大に作用する極めて高い用量の場合であっても、この動脈pCO2は約20〜30%上昇するだけである。
【0074】
拮抗作用試験により、
(1) 前記呼吸抑制は、A4とB11との実施例のORL1成分の拮抗作用の後で明らかに強化され(約70%)、かつ
(2) 前記呼吸抑制は、引き続くナロキソンを用いたμ−拮抗作用により完全に抑制される(図18)ことが示された。
【0075】
このことは、本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストの場合の前記の減少した呼吸抑制がORL1−成分に起因していることを示す。この呼吸抑制は、完全にμ−成分により引き起こされる。この拮抗作用試験は、呼吸抑制の低減はORL1−成分によって生じることを証明する。
【0076】
μ−オピオイドにより引き起こされるこの呼吸抑制は特に麻酔の場合に重大な結果を生じる合併症を引き起こしかねないため、本発明による特性を有する化合物は麻酔のため又は麻酔に関連して使用することが有利である。この場合、特に、前記化合物の半減期が1時間より短い場合に有利であり、さらに特に30分より短い場合が有利である。
【0077】
この場合、半減期とは、本発明による特性を有する摂取された化合物の半分が物質代謝され及び/又は排泄されるまでの時間の時間であると解釈される。
【0078】
手術に引き続く場合でも、呼吸抑制の危険は高められる。100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物を使用することにより、より高い用量を術後に使用することができ、それにより、必要な場合には、純粋なμ−アゴニストを用いた場合よりもより強い鎮痛を達成することができる。従って、本発明による特性を有する化合物は術後の痛みの治療のために使用するのが有利である。
【0079】
研究論文にも証明されているように、60才からヒトの場合の呼吸抑制の危険性は若い人と比較して明らかに高まるため(Cepeda et al.著, Clinical Pharmacology & Therapeutics 2003, 74, 102-112)、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物は有利に60才を越える患者の場合の痛みの治療のために使用される。従って、本発明による特性を有する化合物は、60才を越える患者の場合の麻酔、麻酔に関連して又は術後に使用するのが特に有利である。特に、前記化合物は、60才を越える患者に関しても神経障害性痛の治療のために使用するのが有利である。
【0080】
前記呼吸抑制のORL1−成分による低減は、実施例においても示されているように、拮抗作用試験により証明することができる。本発明の主題は、従って、痛みの治療のための、有利に麻酔に関連して又は術後に、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな呼吸抑制を示す化合物の使用でもある。
【0081】
混合されたORL1/μ−アゴニストの場合のより高い安全間隔
一方で減少されたμ−ORにより媒介された呼吸抑制に基づき、及び他方で神経障害性痛の場合に高められた有効性に基づき、混合されたORL1/μ−アゴニストは純粋なμ−オピオイドと比較して明らかに拡大された安全間隔により優れている。動脈のpCO2の上昇についての閾値用量(ED10)は、実施例A1、A5、A7、A6及びA4に関して示された本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストについて、神経障害性痛において半値有効用量(ED50)の約3倍〜20倍上回る(図20)。このことは、特に慢性痛症状の場合に可能なオピオイド性副作用までの間隔は、一方で本発明による特性を有する化合物の高められた有効性に基づきかつ他方で抗オピオイド成分の有効性に基づき、μ型の副作用が治療的範囲において同じ有効性の場合に比較的低減されて生じる程度に大きいことを意味する。
【0082】
本発明による特性を有する化合物の場合に作用と副作用との間のより大きな間隔に基づき、前記化合物は緩和治療患者の場合の痛みの治療のために特に適している。緩和治療患者は、その多重罹患状態に基づき、特に強くオピオイド型の副作用を受けている。従って、本発明の主題は、緩和治療患者の痛みの治療の場合の、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのKi値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0083】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(Ki値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、従って、要約するとμ−オピオイドを用いた標準的治療と比較して特に以下のような利点を有する:
- 慢性痛の場合の、特に神経障害性痛の場合の及び炎症性痛の場合の作用の強化
- 急性痛の場合の同等の有効性の場合に明らかに低減された副作用、例えば呼吸抑制、禁断/中毒及びオピオイドにより誘導される痛覚過敏を示す。
【0084】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(Ki値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、前記した特性を有する。これらの観察された利点は、特別に試験された化合物が有する特性に基づくのではなく、前記作用メカニズムから生じる効果である。このことは、拮抗作用試験により証明することができた。この場合、ORL1−成分は鎮痛のために寄与し、しかしながらμ型の副作用を抑制することが示された。鎮痛の範囲内で、前記ORL1−成分は相乗的にふるまうが、しかしながら試験された副作用の範囲内では反対的にふるまう。このために重要であるのは両方の成分の割合である。
【0085】
本発明による範囲を定義する値は、in vitroデータに関しており、in vivoで1つ以上の活性の代謝物が形成される場合には、前記代謝物が前記活性に影響を及ぼすことができる。代謝物が形成される場合には、次のケースに区別することができる。
【0086】
a) プロドラッグの使用
本発明による結合プロフィールを示さない化合物は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、従って、本発明による特性を有する代謝物を形成することができる。このことは、前記代謝物のKi値の測定により確認することができる。従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、有効性について及び/又はμ型の副作用の低減についての寄与が拮抗作用試験により検出することができる代謝物を形成する化合物の使用でもある。
【0087】
b) 親物質と共通の又は親物質との一緒に本発明によるプロフィールを形成する代謝物の形成
例えば選択的μ−アゴニストは部分的に選択されたORL1−アゴニストに代謝され、この生じる混合物が本発明による特性を有する、つまり1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されたORL1/μの割合が0.1〜30であり、かつヒトのμ−オピオイド−レセプターに関するKi値は少なくとも100nMである場合に、前記混合物は同様に本発明の主題である。前記混合物は、選択性を有しない化合物から生じることもできるが、それにもかかわらず本発明による範囲外にあることができる。本発明による特性は、一方で、in vivoで生じる前記混合物の結合定数を測定することにより検出することができ(その際、前記濃度はHPLC−MS−試験により決定することができる)、他方で、ORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験によりORL1−成分の慢性痛の場合の作用の強化への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が示されることにより検出することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、代謝物により形成される、本発明による特性を有する物質混合物でもあり、その際、前記混合物の結合定数は本発明の範囲内に一致し、かつ拮抗作用試験により有効性への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が検出することができる。
【0088】
本発明による化合物が及ぼす作用は、2種又はそれ以上の異なる物質の投与によっても達成することができる。これは、一方で、前記混合物の結合定数を決定することにより証明することができ、かつ他方で、慢性痛の場合の作用の強化へのORL1−成分の寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与がORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験により示されることにより証明することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μが0.1よりも選択的であるμ−アゴニストと、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μが30よりも選択的であるORL1−アゴニストとの、痛みの治療のための医薬を製造するための使用でもあり、その際、前記組み合わせは、本発明による化合物の特性を有する、つまり前記組み合わせ又はそのin vivoで生成される代謝物の組み合わせが、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義されるORL1/μの親和性の割合が0.1〜30、有利に0.1〜20である。有利にこのような組み合わせは、神経障害性痛の治療のため、特に帯状ヘルペス後の神経痛及びの場合の疼痛及び糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために使用される。さらに、麻酔におけるこのような組み合わせの使用が有利である。特に、前記組み合わせは60才を越えるヒトにおいて使用するのが有利である。
【0089】
本発明による医薬は、少なくとも本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせの他に、場合により適当な添加剤及び/又は助剤、並びに担持剤、充填剤、溶剤、希釈剤、着色剤及び/又は結合剤を含有し、かつ液状の医薬剤形として注射溶液、滴剤又は液剤の形態に、半固体の医薬剤形として顆粒剤、錠剤、ペレット、パッチ、カプセル、プラスター又はエアゾールの形態で投与することができる。この助剤等の選択並びにその使用されるべき量は、前記医薬が、経口、経口的、腸管外、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、点鼻、バッカル、直腸又は局所、例えば皮膚、粘膜及び目に対して適用されるかどうかに依存する。経口適用のために、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、液剤及びシロップ剤の形態の調製物が適しており、腸管外、局所及び吸入適用のために、溶液、懸濁液、容易に再構築可能な乾燥調製物並びにスプレー剤が適している。場合により皮膚浸透を促進する薬剤の添加下で、デポー剤、溶解した形態又はプラスターの形態の本発明による化合物は、適当な経皮適用調製物である。経口又は皮下適用することができる調製物は、本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせを遅延放出することができる。原則として、本発明による医薬に、当業者に公知の他の作用物質が添加されていてもよい。
【0090】
患者に投与すべき作用物質量は、患者の体重、適用種類、適応症及び疾患の重度に依存して変えられる。通常では、本発明による特性を有する少なくとも1種の化合物又は組み合わせ0.005〜20mg/kg、有利に0.05〜5mg/kgが適用される。
【0091】
全て本発明による特性を有する化合物A1〜A10は、スピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループに属する。これらの化合物は、μ−オピオイド−レセプター及び/又はORL−1−レセプターに対する親和性を有し、しかしながら、これらの化合物のサブグループは本発明による特性を有している。
【0092】
従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30であり、糖尿病による多発性神経障害性痛、術後の痛み又は帯状ヘルペスによる神経痛の場合の痛みの治療のための医薬の製造のための、一般式I
【0093】
【化1】
[式中、
R1及びR2は、相互に無関係に、H又はCH3を表し、その際、R1及びR2は同時にHを表さず;
R3は、フェニル、ベンジル又はヘテロアリールを表し、これらはそれぞれ非置換であるか又はF、Cl、OH、CN又はOCH3でモノ又はポリ置換されている;
Wは、NR4、O又はSを表し、
及び
R4は、H;C1〜C5−アルキル、フェニル;C1〜C3−アルキル基を介して結合したフェニル、COR12;SO2R12を表し、
その際、R12は、H;C1〜C7−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、非置換であるか又はOH、F又はCOOC1〜C4−アルキルによりモノ又はポリ置換されている);C4〜C6−シクロアルキル;アリール−、又はヘテロアリール(これは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたフェニル又はヘテロアリール(これらは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝された又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたC5〜C6−シクロアルキル;OR13;NR14R15を表し;
R5は、H;COOR13、CONR13、OR13;C1〜C5−アルキルを表し、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝であり、非置換であるか又はOH、F、CF3又はCNによりモノ又はポリ置換されている;
R6は、Hを表すか;
又はR5及びR6は一緒になって、(CH2)nを表し、その際、n=2、3、4、5又は6を表し、その際、個々の水素原子はF、Cl、NO2、CF3、OR13、CN又はC1〜C5−アルキルにより置換されていてもよく;
R7、R8、R9及びR10は、相互に無関係に、H、F、Cl、Br、NO2、CF3、OH、OCH3、CN、COOR13、NR14R15;C1〜C5−アルキル、ヘテロアリールを表し、これは非置換又はベンジル、CH3、Cl、F、OCH3又はOHによりモノ又はポリ置換されているか;
R13は、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
R14及びR15は、相互に無関係に、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
Xは、O、S、SO、SO2又はNR17を表し;
R17は、H;C1〜C5−アルキル、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝である;COR12又はSO2R12を表す]のスピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループからなる化合物
その純粋なジアステレオマーの形態、そのラセミ体の形態、その純粋なエナンチオマーの形態、又は任意の混合割合での立体異性体の混合物の形態;
塩基として、又はその塩として、特に生理学的に許容される塩又は生理学的に許容される酸又はカチオンの塩の形態でもある。
【0094】
実施例
使用された省略形
AUC 曲線下面積
CFA 完全フロイントアジュバント
DBTC 二塩化ジブチルスズ
MPE 最大可能効果
本発明を次の実施例を用いて明確に説明する。μ−アゴニストに対する代理の典型的な代表物、混合されたμ/ORL1−アゴニスト、ORL1−アゴニスト並びにORL1アンタゴニストを使用した。μ−アンタゴニストとして、臨床的に使用された化合物のナロキソンを使用した。これらの例示的化合物に多数の試験を行い、これらの試験は本発明による特性を有する化合物の例外性を証明する。
【0095】
【表1】
ORL1−結合の測定
一般式Iのシクロヘキサン誘導体を、組換体CHO−ORL1細胞の膜での3H−ノシセプチン/オルファニンFQを用いたのレセプター結合アッセイで試験した。このテストシステムはアルダチ他(Ardati et al.(Mol. Pharmacol., 51, 1997, p. 816-824))により提案された方法により実施した。3H−ノシセプチン/オルファニンFQの濃度はこの試験の場合0.5nMであった。この結合アッセイは、それぞれHepes 50mM中のバッチ200μlあたりそれぞれ膜タンパク質20μg、pH7.4、MgCl2 10mM及びEDTA 1mMを用いて実施した。ORL1レセプターとの結合は、それぞれWGA−SPAビーズ(Amersham-Pharmacia, Freiburg)1mgを使用しながら、室温でこのバッチを1時間のインキュベーションし、引き続きシンチレーションカウンター(Trilux (Wallac, Finnland))で測定することにより決定した。この親和性を表1にc=1μMでの阻害率%でのナノモルのKi値として記載した。
【0096】
μ−結合の測定
ヒトμ−オピエートレセプターに対するレセプター親和性を、微量滴定プレート中で同質のバッチで測定した。このために、それぞれ試験すべき物質の一連の希釈物を、ヒトμ−オピエートレセプターを発現するCHO−K1−細胞のレセプター膜調製物(インキュベーションバッチ250μlあたりタンパク質15〜40μg)(NEN社のRB−HOM−レセプター膜調製物、Zaventem、ベルギー国)と一緒に、放射性リガンド[3H]−ナロキソン(NET719, NEN社, Zaventem、ベルギー国)1nmol/l並びにWGA−SPAビーズ(Amersham/Pharmacia社のWheat germ agglutinin SPA Beads、Freiburg、ドイツ国)1mgの存在で、250μlの全容量で室温で90分間インキュベーションした。インキュベーション緩衝液として、アジ化ナトリウム0.05質量%及びウシ血清アルブミン0.06質量%を補充したトリス−HCl 50mmol/lを使用した。非特異的結合の測定のために、さらにナロキソン25μmol/lを添加した。90分間のインキュベーション時間の完了後に、微量滴定プレートを20分間1000gで遠心分離し、β−カウンター(Microbeta-Trilux、PerkinElmer Wallac社、Freiburg、ドイツ国)中で放射能を測定した。1μmol/lの試験物質の濃度での放射性リガンドのヒトμ−オピエートレセプターに対する結合からの排除率が測定され、特異的結合の阻害率(%阻害)として表した。部分的に、一般式Iの試験すべき化合物の多様な濃度による排除率から出発して、放射性リガンドの50%の排除率が生じるIC50阻害濃度を計算した。Cheng-Prusoffの関係を用いて計算することにより、試験物質についてのKi値が得られた。
【0097】
実施例化合物のKi値は次の表にまとめられている。
【0098】
【表2】
1 定義:1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]
急性痛モデル(テールフリック、ラット/マウス)と神経障害性痛モデル(チュング、ラット;ベネット、ラット/マウス)における鎮痛についての有効性(ED50として、%MPE)の比較:
マウスに関するテールフリックテストでの鎮痛試験
テスト化合物の鎮痛についての有効性を、マウスに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重20〜24gのNMRIマウスを使用した。これらの動物を別々に特別なテストケージ中に入れ、尾の付け根を電気ランプ(Tail-flick Typ 55/12/10.fl, Labtec, Dr. Hess)のフォーカスされた熱放射線にさらした。未処理の動物において前記ランプのスイッチオンから尾を突然動かす動作(痛みの潜伏)までの時間が2.5〜5秒になるように、ランプ強度を調節した。試験化合物の投与前に、これらの動物を30分間2回予備試験し、測定された平均値を投与前試験値として計算した。この痛みの測定は静脈内投与後の20、40及び60分に実施した。この鎮痛作用を、痛みの潜伏の増加率(%MPE)として次の式により測定した:
[(T1-T0)/(T2-T0)] x 100
この場合、T0は物質投与前の潜伏時間であり、T1は物質投与後の潜伏時間であり、T2は最大暴露時間(12秒)である。
【0099】
投与量依存性の決定のために、前記試験化合物を3〜5の対数的に増大する用量(この用量は閾量及び最大有効量を含む)で投与し、回帰分析を用いてED50値を決定した。このED50の算定は、物質の静脈内投与の20分後に効果の最大値で行った。
【0100】
ラットに関するテールフリックテストでの鎮痛試験
テスト化合物の鎮痛についての有効性を、ラットに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重134〜189gのメスのスプラーグドリー(Sprague Dawley)を使用した。これらの動物を別々に特別なテストケージ中に入れ、尾の付け根をランプ(Tail-flick Typ 50/08/1.bc, Labtec, Dr. Hess)のフォーカスされた熱放射線にさらした。未処理の動物において前記ランプのスイッチオンから尾を突然動かす動作(痛みの潜伏)までの時間が2.5〜5秒になるように、ランプ強度を調節した。試験化合物の投与前に、これらの動物を30分間2回予備試験し、測定された平均値を投与前試験値として計算した。この疼痛測定は静脈内投与後の20、40及び60分に実施した。この鎮痛作用を、痛みの潜伏の増加率(%MPE)として次の式により測定した:
[(T1-T0)/(T2-T0)] x 100
この場合、T0は物質投与前の潜伏時間であり、T1は物質投与後の潜伏時間であり、T2は最大暴露時間(12秒)である。
【0101】
投与量依存性の決定のために、それぞれの試験化合物を3〜5の対数的に増大する用量(この用量は閾量及び最大有効量を含む)で投与し、回帰分析を用いてED50値を決定した。このED50の算定は、物質の静脈内投与の20分後に効果の最大値で行った。
【0102】
ラットに関する減少させた燃放射線強度テールフリック
急性の有害熱刺激に関するテスト物質のモジュレーター的な有効性を、ラットに関する熱放射線(テールフリック)テストでドゥアモー及びスミス(D'Amour and Smith (J. Pharm. Exp. Ther. 72, 74 79 (1941))の方法により試験した。このために、体重200〜250gのオスのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラット(Zuechter: Janvier, Le Genest St. Isle,フランス国)を使用した。これらの動物を、個々に特別な試験コンパートメント中に置き、尾の付け根を無痛覚測定器(モデル 2011, Rhema Labortechnik, Hofheim, ドイツ国)のフォーカスされた熱放射線にさらした。このグループサイズは10匹の動物である。未処理の動物において前記熱放射線のスイッチオンから尾を突然逃避する動作(逃避潜伏)までの時間が約12〜13秒になるように、熱放射線強度を調節した。本発明による物質の投与前に、5分間の間隔で、前記の逃避潜伏を2回測定し、この平均値を対照潜伏時間として定義した。痛みの逃避潜伏の測定を、物質の静脈内投与の10分後に初めて実施した。抗侵害受容効果の消失後(2〜4時間後)に、前記の測定を30分の間隔で、物質の投与後の最大6.5時間まで行った。前記の抗侵害受容作用及び前侵害受容作用は、逃避潜伏時間の増大もしくは低下として次の式により決定した:
(%MPE)=[(T1−T0)/(T2−T0)]×100
この場合、T0:物質投与前の対照潜伏時間、T1:物質投与後の潜伏時間、T2:熱放射線の最大露光時間(30秒)、MPE:最大可能効果
分散分析(repeated measures ANOVA)を用いて、物質グループと賦形剤グループとの間の統計的に有意な差異に関して試験した。この有意水準は≦0.05で試験した。
【0103】
チュング(Chung)−モデル:脊椎神経結紮によるモノ神経障害性痛
動物:市場の飼育業者(Janvier, Genest St. Isle, フランス国)からのオスのスプラーグドリーラット(Sprague Dawley Ratten)(140〜160g)を12:12時間の明暗リズムのもとに保持した。これらの動物は餌及び水道水を自由に与えられた。前記の動物の供給及び手術の間に、1週間の休止期間を設けた。これらの動物は、手術後に4〜5週間の期間にわたり数回試験され、その際、少なくとも1週間の休止期間を設けた。
【0104】
モデルの記載:ペントバルビタール麻酔(Narcoren(R)、60mg/kg i.p.、Merial GmbH, Hallbergmoos, ドイツ国)のもとで、脊柱傍の筋肉部分及びL5腰部の脊椎骨の左側の脊髄プロセスの一部を除去することにより、左側のL5、L6脊髄神経を露出させた。この脊髄神経L5及びL6を注意深く離し、固定結紮具で結紮した(NC-silk black,USP 5/0, metric 1, Braun Melsungen AG, Melsungen, ドイツ国)(Kim and Chung 1992)。結紮後に、筋肉及び隣接する組織を縫合し、この傷を金属クリップで閉じた。
【0105】
数週間の回復期間の後に、前記の動物を機械的アロディニアの測定のために針金の床部を備えたケージ内に置いた。同側性及び/又は対側性の後ろ脚に関して、電気的なフォンフレー(von Frey)フィラメント(Somedic AB, Malmoe、スウェーデン国)を用いて逃避閾値を測定した。5回の刺激の中央値を測定時点とした。前記の動物を、試験物質溶液又は賦形剤溶液の適用後の異なる時間の前後の30分間試験した。これらのデータを、最大可能作用率(%MPE)として、単独の動物(=0%MPE)投与前試験及び独立したSham対照グループ(=100%MPE)の試験値から決定した。これとは別に、逃避閾値をグラムで示した。
【0106】
統計的評価:ED50値及び95%信頼範囲を、片対数の回帰分析により最大作用の時点で決定した。これらのデータは、繰り返し測定及びボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析を用いた分散分析により分析した。このグループサイズは通常ではn=10であった。
【0107】
対照:Kim,S.H.及びChung,J.M.著, An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat, Pain, 50 (1992) 355-363.
ベネットモデル:マウスに関する又はラットに関する神経障害性痛
神経障害性痛における有効性に関するこの調査は、ベネットモデル(chronic constriction injury; Bennett及びXie, 1988, Pain 33: 87-107)で試験した。
【0108】
体重140〜160gのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラットに、ナルコレン−麻酔のもとで、右坐骨神経の4つの緩い結紮を行った。体重16〜18gのNMRIマウスに、ケタベット−ロムプン−麻酔のもとで、右坐骨神経の3つの緩い結紮を行った。これらの動物は、損傷された神経から刺激される脚に神経過敏を発症し、この神経過敏は1週間の回復期間の後で約4週間にわたり、4℃の冷たい金属プレートを用いて数値化した(寒冷アロディニア)。これらの動物を前記プレート上で2minの時間観察し、損傷された脚の逃避反応の数を測定した。物質投与前の値に関して、物質作用を1時間の期間にわたり4回の時点(投与後の約15、30、45、60min)で測定し、生じた曲線下面積(AUC)並びに個々の測定時点に対する寒冷−アロディニアの阻害率を賦形剤対照に対する作用(AUC)及び出発値に対する作用(個々の測定点)をパーセンテージで表した。このグループサイズはn=10であり、抗アロディニア作用の有意性(*=p<0.05)は、繰り返し測定及びボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析を用いる分散分析によって決定した。
【0109】
ビンクリスチンにより誘導された多発性ニューロパシー
このモデルは、文献に記載されている(KO Aley, DB Reichling, JD Levine著, Neuroscience 1996, 73, 259-265)。
【0110】
糖尿病による多発性神経障害性痛
このモデルは、文献に記載されている(SC Ahlgren, JD Levine著, Neuroscience 1993, 52, 1049-1055)。
【0111】
神経障害性痛モデルにおける相対的な作用の強化
【0112】
【表3】
1) テールフリックモデル、ラット
2) テールフリックモデル、マウス
3) ソフトテールフリックモデル、ラット
4) チュングモデル、ラット
5) ベネットモデル、ラット
6) ベネットモデル、マウス
図示するために、前記テールフリックテストからのED50値及び神経障害性痛モデルからのED50値を、テールフリック試験におけるED50値に基準化し、それぞれの半値有効用量の相関を示す(図1及び2参照)
チュングモデルにおけるμ−成分及びORL1成分の拮抗作用
拮抗作用試験において、それぞれ部分的拮抗作用をナロキソン(μ−OR)及びB11(ORL1−R)を用いて示した。このデータは、両方の成分が鎮痛に寄与することを示す(図3参照)。
【0113】
B11の極めて高い用量の場合であっても、つまり、ORL1−作用メカニズムの完全な遮断の場合でも、A4の鎮痛についての有効性は存続する。
【0114】
図4は、A6、A5及びA1のナロキソン又はB11によるμ−成分又はORL1−成分の拮抗作用により拮抗作用されない成分のそれぞれの鎮痛作用は存続することを示す。
【0115】
神経障害性の動物における抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離神経障害性の動物の場合のA4及びモルフィンの比較
チュングモデルの場合には、同側性又は対側性の脚についての痛み反応の比較試験によって、抗侵害受容作用(対側性)及び抗異痛作用(同側性)が区別される。
【0116】
モルフィンについて、1mg/kg iv.の投与後に純粋な抗異痛作用だけは観察することができた。この最大の有効性はこの場合29%MPEである。次に高い試験用量(2.15mg/kg iv.)の場合には、既に明らかな抗侵害受容作用が生じる(図5、5a)。
【0117】
これに対して、最大の、A4の純粋な抗異痛効果は56%MPEである。これは、1μg/kg iv.の試験用量で達成される(図6、6a)。
【0118】
結論:ORL1−成分により、純粋なμ−オピオイドの場合よりも有意に強い抗アロディニア作用が達成される。
【0119】
未処理の動物及び神経障害性の動物におけるA4及びモルフィンの直接的な比較
急性痛及び神経障害性痛における異なる有効性を比較する場合に「痛みの質」(テールフリック、侵害受容刺激vs.チュング、触覚異痛)の可能な影響を排除するために、A4とモルフィンを比較して脊椎神経結紮した動物(チュング−モデル)及び見かけ上手術された動物において試験した。痛みモデルとしてテールフリックを全ての場合で使用した。この直接的比較は、ニューロパシーの形成後にモルフィンの有効性は低下するが(これは臨床的状況に一致)、前記有効性はA4については増加することを示す(図7及び8参照)。
【0120】
急性痛(下記参照)の場合の両方の物質の同等な有効性の場合に、A4の抗アロディニアについての有効性は、フェンタニルの作用の約10倍高い。
【0121】
細胞増殖抑制により誘導された多発性神経障害性痛と糖尿病により誘導された多発性神経障害性痛との比較
A4は、ラットに関してビンクリスチンにより誘導された多発性神経障害性痛の場合に、1μg/kgの用量の場合に有意な有効性を示す(図24)。0.64mg/kgの用量の場合にはまだ有意な有効性は観察できない(14.7±10.2%MPE)。それに対して、糖尿病により誘導された神経障害性痛の場合には、試験された最低の用量(0.316μg/kg)で既に有意な有効性が観察される(図26)。この用量範囲において、まだ抗侵害受容効果は観察できない。臨床的に使用される比較物質のモルフィン及びプレガバリンは、抗侵害受容効果も観察できる用量範囲で、糖尿病による多発性神経障害性痛の場合の有効性が初めて示される(図27、28)。
【0122】
混合されたORL1/μ−アゴニストによる炎症性痛の場合の作用の強化
a)脊髄損傷されたラットにおけるシングル−モーターユニット誘導。未処理の動物とカラゲナンにより誘導された炎症後の動物の比較。
【0123】
このモデルは文献に記載されている(Herrero & Headley著, 1996, Br J Pharmacol 118, 968-972)。
【0124】
炎症の誘導(カラゲナン100μl、1%、足蹠皮内)の24時間後に、は、A4の抗侵害受容作用(機械的刺激(狭窄)もしくは電気的刺激(ワインドアップ)によるSMU活性の阻害として測定)は明らかに高められる(図10及び10a参照)。モルフィンの抗侵害受容作用は、それに対して炎症後でも変化しない(図11及び11a参照)。
【0125】
さらに、このモデルの場合にA11についても、炎症誘導後の作用の強化を示すことができた。
【0126】
CFAにより誘導された痛覚過敏
ラットの場合の完全フロイントアジュバント(CFA)により誘導された痛覚過敏
このCFAにより誘導された痛覚過敏は、慢性炎症性痛の動物モデルである。オスのスプラーグドリー(Sprague-Dawley)ラット(150〜180g)を、パラフィンオイルと乳化剤としてのモノオレイン酸マンニットからなる混合物中の、熱により殺菌しかつ乾燥したミコバクテリア(ミコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis);H37 Ra)100μl(完全フロイントアジュバント、CFA)を1回足蹠皮下に注入する(用量1mg/ml)。CFA注入の1日後に、電子的なフォンフレー(von Frey)毛髪(Somedic Sales AB, Hoerby、スウェーデン国)を用いて触覚性痛覚過敏を試験する。このために、動物を格子底を備えたプラスチックボックス中に置き、この格子底は両方の後脚に自由なアクセスを可能にする。von Freyフィラメントを用いて後脚底部を刺激する。機械的刺激に関する同側性の脚及び(未処理の)対側性の脚の神経過敏の定量化のために、脚の逃避閾値をもたらされた圧力のグラム出示す。脚当たり4回の刺激を30秒の時間間隔で繰り返す。4つの測定値から中央値を作成した。同側性の脚及び対側性の脚の逃避閾値を、CFA注入後の異なる時点(1h、3h、1日、4日)で、前(=投与前値)及び物質投与後の多様な時点(測定値)で測定する。溶剤を投与された対照動物グループを共に用いる。物質の有効性は、痛覚過敏の阻害率%として及びさらにMPE%として次のように算定する:
痛覚過敏の阻害率%=(1ーHA測定値/HA投与前値)×100
HA投与前値=物質投与前の対側性の逃避閾値−同側性の逃避閾値
HA測定値=物質投与後の対側性の逃避閾値−同側性の逃避閾値
MPE%=[(WSs ipsi−WSo ipsi)/WSo contra−WSo ipsi]×100
WSo contra=未処理の対側性の脚の逃避閾値
WSo ipsi=未処理の同側性の脚の逃避閾値
WSs ipsi=物質投与により処理された同側性の脚の逃避閾値
MPE%:最大可能効果のパーセンテージ;この最大可能効果は対側性の未処理の脚の逃避閾値として定義される
全体として、試験グループ(物質及び対照)あたり10匹のラットを使用する。平均値±SEMは個々の動物の中間値から算出する。有意性の計算は、繰り返し測定のための2要因分散分析(ANOVA)を用いて行う。相互作用物質適用(処理)の有意性、時間、時間・処理は、ウィルクス(Wilks)のラムダ統計により分析する。有意な処理効果の場合には、フィッシャー(Fischer)テスト、引き続きポストホックデュネット(post hoc Dunnett)テストが実施される。
【0127】
モルフィンは調査期間にわたり抗痛覚過敏作用の軽度な低下又は同じに維持される抗侵害受容作用の傾向を示すが、A4の抗痛覚過敏作用及び抗侵害受容作用は24hにわたり増加する。この効果は少なくとも4日間安定である(図12、12a参照)。
【0128】
マウスの場合のカラシ油により誘導された内臓性炎症性痛
オスのNMRIマウス(体重20〜35g)は、プレキシガラスケージ(14.5×14.5cm、高さ10cm)中の格子蓋上で約30分間順化させる。
【0129】
腹壁に関するフォンフレー(von Frey)フィラメント(1、4、8、16、32mN)を用いた10回の機械的刺激に関するマウスの挙動を、投与前値として集計する。この挙動は、外傷防衛器反応の数の合計に関して又は外傷防衛器反応の質に関して及び、前記反応の数に属する係数(係数1:腹部の軽度な持ち上げ行動、刺激箇所をなめる行動、逃避行動;係数2:後ろ脚を伸ばして逃避する行動、僅かに飛び跳ねる逃避行動、後ろ脚の痙攣、刺激箇所を不意に強くなめる行動;係数3:飛び跳ねによる逃避行動、鳴く行動)を掛け算することによる重み付けに関して及び引き続く全体像に関して分析する。
【0130】
引き続き、カラシ油の投与前の適当な時間に適当な投与方法で前記物質の動力学的特性に応じて試験物質又は賦形剤の適用を行う。このグループサイズは通常ではn=7である。
【0131】
急性大腸炎がカラシ油50μlの直腸投与(PEG200の場合に3.5%)によって誘導される。カラシ油の投与後の2〜12分に、前記の動物は自発的内臓性痛の挙動を示し、これを観察する。この反応の数を、所属する係数で掛け算した(係数1:腹壁をなめる行動;係数2:伸びる行動;腹部を床に押し当てる行動、のけぞる挙動、腹部を収縮、後退る運動又は脇腹の筋肉の収縮)及び引き続き自発的内臓性痛スコアを合計する。動物のグループは、カラシ油の代わりに、PEG200 50μlの直腸適用を受ける。
【0132】
カラシ油の投与後の12〜40分に、新たに腹壁に関するフォンフレー(von Frey)フィラメント(1、4、8、16、32mN)を用いた10回の機械的刺激に関する動物の挙動を観察し、前記したように定量化する。伝達された機械的アロディニアを、この場合、強度1mNのフォンフレー(von Frey)フィラメントを用いた刺激に関する反応の合計から決定する。伝達された機械的痛覚過敏を、強度16mNのフォンフレー(von Frey)フィラメントを用いた刺激に関する重み付けされた反応の合計から決定する。
【0133】
試験物質の作用を、賦形剤と比較して、1.自発的内臓性痛の挙動の阻害、2.伝達された機械的アロディニアの阻害及び3.伝達された機械的痛覚過敏の阻害により記載した。
【0134】
前記データは、繰り返し測定を用いた多要因分散分析により調査し、試験物質の有意な作用が存在する場合(P<0.05)に、個々のデータをボンフェローニ(Bonferroni)によるポストホック(post hoc)分析により有意性を調査する。用量作用曲線の場合に、半値有効用量を記載するED50値は、線形回帰分析により決定することができる。(Christoph et al.著, 2005, Eur. J. Pharmacol. 507:87-98による)。
【0135】
カラシ油により誘導された非神経性の内臓性炎症のマウスにおける伝達されたアロディニア及び伝達された痛覚過敏についてのモデルにおけるA4及びフェンタニルの比較試験は、全ての3つの疼痛パラメータ、特にアロディニア及び痛覚過敏に対して、純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの有意に高められた有効性を示した。
【0136】
伝達されたアロディニア
【0137】
【表4】
1) テールフリック、マウス
伝達された痛覚過敏
【0138】
【表5】
1) テールフリック、マウス
A4の鎮痛についての有効性は、2つの試験した疼痛パラメータに関して、急性痛での鎮痛についての有効性よりも約6倍〜7倍高い。これに対して、内臓性炎症痛におけるフェンタニルの鎮痛についての有効性は、急性痛の場合よりも低い。
【0139】
急性痛モデルの場合の作用
ORL1:μ−割合1:10〜30:1を有するこの混合されたORL1/μ−アゴニストは、急性痛モデル(テールフリック、マウス及びラット)において完全な有効性を示す。テールフリックの場合のこの結果は、表3に示されている(上記参照)。この効果は、ORL1:μ 1:10〜20:1の実施例により示されている。μ−ORに対するその結合親和性に応じて、この作用強度は標準オピオイド(スフェンタニル、フェンタニル、ブプレノルフィン、オキシコドン、モルヒネ)の範囲内にある(図13参照)。
【0140】
オピオイドにより誘導された痛覚過敏
オピオイドの慢性的な投与は、疼痛患者において痛覚過敏を引き起こす(Chu et al.著 2006, J. Pain 7:43-48参照)。同様の現象が、急性の投与後に禁断症状の形で生じる(Angst et al.著 2003, Pain 106:49-57)。動物モデルの場合に、純粋なμ−オピオイドは急性の投与後に、一時的な痛覚過敏を誘導し(Opioid-induced Hyperalgesia. A qualitative systematic review. Angst and Clark, Anesthesiology 2006; 104:570-87)、この一時的な痛覚過敏は、例えばソフトテールフリック−モデルにおいて一時的な「前侵害受容」期として検出可能である。一致する所見が文献に記載されている。このオピオイドにより誘導された痛覚過敏は、純粋なμ−オピオイド(フェンタニル及びモルフィン)についての改良されたソフト−テールフリック−モデル(25% 熱放射線強度)を用いて示すことができる。これとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4及びA10)の急性の投与後には過渡的な痛覚過敏は観察されなかった(図14〜14c)。
【0141】
身体的依存症の測定
試験は次の2つのモデルで行った:マウスの場合のナロキソンにより誘導された禁断及びラットの場合の自発的禁断。両方のモデルの場合に、この禁断症状は混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に、純粋なμ−アゴニストと比較して明らかに低減した。
【0142】
マウスに関するジャンピングテスト:身体的依存症を決定するための試験(Saelens JK著, Arch Int Pharmacodyn 190: 213-218, 1971)
試験物質を2日間にわたり全体で7回腹腔内に適用する。5回の適用は、最初の日の9:00、10:00、11:00、13:00及び15:00時に行い、2日目には9:00及び11:00時に行う。最初の3回の適用は増加する用量(用量図)で投与し、次いでさらに第3の用量で投与する。この禁断は、最後の物質投与後の2時間にナロキソン30mg/kg(i.p.)で促進させる。その直後に、前記動物を個々に透明な観察ボックス(高さ40cm、直径15cm)に入れ、それぞれ5分の周期で15分間にわたり飛び跳ね反応をカウントする。モルフィンを比較/標準として一定の用量で服用させる。
【0143】
前記禁断の定量化は、ナロキソン適用後の0〜10minに飛び跳ねの数により行う。1グループあたりの10回の飛びはね/10minよりも多い動物の数を決定し、「%ポジティブ動物」と表す。さらに、グループ中の平均的な飛び跳ね周期を算出する。1グループあたり12匹の動物を使用する。
【0144】
μ−アゴニストのB1〜B4は、明らかに禁断飛び跳ね行動を誘導する。このμ−アゴニストB7(L−メタドン、レボメタドン、図15)は、B1〜B4に比較して減少されているが、有意な禁断飛び跳ね運動が誘導される。B8及びA1は、この試験において、有意な禁断飛び跳ね行動を引き起こす(図15a及び15b)。A9は、それに対して、僅かな禁断飛び跳ね行動を引き起こし、より高い用量で完全に抑制される(図15c)。A4又はA7の投与後に、ほとんど有意ではないか又は有意ではない禁断飛び跳ね行動が生じる(図15d及び15e)。
【0145】
ラットに関する自発的禁断:
オピエート自発的禁断に対する研究は、5つのフェーズで実施される。
【0146】
フェーズ1(慢性的治療フェーズ):ラットを3週間にわたり試験物質で処理する。この適用を毎日2〜3回(試験物質の作用期間に応じて)腹腔内で行う。
【0147】
フェーズ2(自発的禁断):引き続き自発的禁断及び1週間の処理しない期間(フェーズ3)を続ける。引き続き、この動物にさらに1週間試験物質を与える(フェーズ4)。
【0148】
フェーズ5(ナロキソンにより誘導された禁断):次いで、ナロキソン(10mg/kg i.p.)で禁断を誘導した。
【0149】
禁断における測定パラメータ:動物の体重、挙動パラメータ:
禁断における(6)主要な症状の評価:震え、唾液分泌、身もだえ、全身的身震い行動(wet dog shakin)、飛び跳ね、歯ぎしり
0=徴候なし、1=軽微、2=重度
最大スコア=12
対照物質としてモルフィンを使用する。
【0150】
このオピエート自発的禁断のための研究は次の文献記載により作成される:
Jaffe JH (1990) Drug addiction and drug abuse. In: Goodman Gilman A, Rall TW, Nies AS, Taylor P (eds.) The pharmacological basis of therapeutics. New York, Pergamon Press: 522-573.
Blaesig J, Herz A, Reinhold K, Zieglgaensberger S (1973) Development of physical dependence on morphine in respect to time and dosage and quantification of the precipitated withdrawal syndrome. Psychopharmacology 33:19-38.
自発的禁断の場合のこの結果は図16に表されている。
【0151】
A4、A7及びA9は、ジャンピングテストにおいて、禁断症状を示さないか又は少なくともモルフィンと比較して明らかに減少した禁断症状を示す。A1(ORL1:μ 1:10)は、禁断飛び跳ねにおいて禁断挙動を引き起こすが、自発的禁断の場合には有意な体重低下が観察されない。しかしながら、モルフィンを予め投与した場合に、ラットの体重は約10%低下した。A1は、従ってモルフィンと比較して依存性の可能性が低いことにより優れている。
【0152】
ORL1依存性メカニズムによるμにより媒介された呼吸抑制の低減
ラットの場合の急性のμにより媒介された呼吸抑制
ラットの場合のpCO2測定及びpO2測定のための方法(血液ガス分析)
テスト物質の呼吸抑制作用を、i.v.投与後に器具が取り付けられた覚醒したラットで調査する。テストパラメータは、物質投与後の動脈血液中の二酸化炭素分圧(pCO2)及び酸素分圧(pO2)の変化である。
【0153】
試験動物:オスのラット、スプラーグドリー(Sprague-Dawley);体重:250〜275g
試験準備:試験物質を適用する少なくとも6日前に、前記ラットをペントバルビタール麻酔のもとで、それぞれPPカテーテルを大腿動脈及び頸静脈内に埋め込む。内に埋め込む。前記カテーテルにヘパリン溶液(4000I.E.)を充填し、ワイヤスティックで閉鎖する。
【0154】
試験経過:前記物質投与又は賦形剤投与は、前記静脈カテーテルを用いて行う。前記物質投与又は賦形剤投与の前及び物質投与又は賦形剤の投与後の規定された時点で、それぞれ動脈カテーテルを開け、ヘパリン溶液約500μlで濯ぐ。次いで、前記カテーテルから血液約100μlを採取し、ヘパリン化された毛管ガラスに収容する。前記カテーテルをもう1回ヘパリン溶液で濯ぎ、再び閉鎖する。動脈血液を、即座に血液ガス分析装置(ABL 5, Radiometer GmbH,Willich、ドイツ国)で測定する。
【0155】
1週間の最低浄化時間の後に、前記動物を新たに試験で使用することができる。
【0156】
試験評価:この血液分析装置は、血液のpCO2及びpO2についての値(mmHg)を自動的に提供する。この分圧に関する物質効果は、物質なしでの又は賦形剤なしでの投与前値と比較したパーセンテージで示す変化として計算した。統計学的評価のために、物質投与後の前記測定値及び賦形剤投与後の時間的同じ測定値を一要因分散分析を用いて比較する。有意な物質効果の場合に、ポストホックデュネット(post hoc Dunnet)試験を実施する。
【0157】
純粋なμ−オピオイド(この場合にはフェンタニル及びオキシコドン、図17及び17a)の場合に、鎮痛作用最大値の時点でμにより誘導された呼吸抑制のために動脈pCO2の明らかな上昇が生じる。90〜100%の有効性の用量の場合には、pCO2値は50%以上に高まる。
【0158】
これと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの場合にpCO2値を測定した。
【0159】
数時間にわたる鎮痛最大作用の用量の場合でさえも、混合されたORL1/μ−アゴニストの投与後の動脈pCO2は、約20〜30%上昇するだけである。
【0160】
この観察された効果を、A4の実施例に関し、その原因について調査した。この場合、時点0でA4とB11(2.15mg/kg)とを一緒に投与し(i.v.)、ORL1成分を拮抗作用し、μ−効果だけを観察した。さらなる試験において、A4+B11の投与後20分にナロキソン(1mg/kg i.v.)を投与し、生じる呼吸抑制効果がμにより媒介される効果だけであるかどうかを試験した。
【0161】
この結果は、純粋なμ−オピオイドと比較してA4の減少された呼吸抑制は、完全に明らかにORL1−成分に起因していることが示された(図18)。B11で拮抗作用した後のpCO2値は、典型的に純粋なμ−オピオイドによる値にまで上昇する。最大pCO2上昇の達成後にナロキソンを投与した場合に、この値は再び低下する。これは、μにより媒介された呼吸抑制はORL1−成分により低減されることを証明している。
【0162】
安全間隔
動脈pCO2の上昇についての閾値用量(ED10)とチュング−モデル(Chung-Modell)で半値有効用量(ED50)との間隔として表される混合されたORL1/μ−アゴニストについての安全間隔及び純粋なμ−アゴニストについての安全間隔を図20に示す。
【0163】
動脈pCO2の上昇時ついての前記閾値用量(ED10)は、A1、A4、A5及びA7の場合に、チュング−モデルの場合の半値有効用量(ED50)を約3〜20倍上回るが、μ−アゴニストB1、B3及びB5についての閾値用量はチュング−モデルの場合の半値有効用量(ED50)の範囲内にあるか、B4についてはそれどころか明らかに下回る。作用と副作用との間のこの安全間隔は、従って、混合されたORL1/μ−アゴニストについては、μ−アゴニストと比較して明らかに拡大されている。
【0164】
精神的依存症/中毒
場所嗜好性の調査のために参照: Tzschentke, T.M., Bruckmann, W. and Friderichs, F. (2002) Lack of sensitization during place conditioning in rats is consistent with the low abuse potential of tramadol. Neuroscience Letters 329, 25-28.
A4、A6及びA7は、場所嗜好性を誘導するが、この場所嗜好性は純粋なμ−アゴニストB1及びB3〜B5と比較して、100分の1までの低い用量範囲にある(図21)。
【0165】
A7の実施例において、ここで低減された場所嗜好性はORL1−成分に起因することを示した。まず、この場所嗜好性を多様な用量で試験した(図22)。
【0166】
A7の投与後にB11で拮抗作用させた。これは、ORL1−成分の遮断後に、場所嗜好性の誘導についての閾値が、低い用量にまで引き下げられることを示すことができる(図23)。この所見は、ORL1−成分が、μ−ORにより媒介される場所嗜好性を緩和することを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、急性痛モデル(テールフリック(Tail-flick)、ラット/マウス)及び神経障害痛モデルの場合の鎮痛作用(ラットに関するチュング−モデル(Chung-Modell)を示す。
【図2】図2は、急性痛モデル及び神経障害痛モデルの場合のラット/マウスに関するベネット−モデル(Bennett-Modell))における鎮痛についての有効性の比較を示す。
【図3】図3は、B11による抗侵害受容効果の拮抗作用をチュング−モデルで示す。
【図4】図4は、B11による抗侵害受容効果の拮抗作用をチュング−モデルで示す。
【図5】図5は、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図5a】図5aは、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図6】図6は、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図6a】図6aは、神経障害性動物の場合の抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離を示す。
【図7】図7は、未処理の動物と神経障害性動物の場合のモルフィンの有効性の比較を示す。
【図8】図8は、未処理の動物と神経障害性動物の場合のμ-オピオイドとの比較を示す。
【図9】図9は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図10】図10は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図11】図11は、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図11a】図11aは、炎症性痛:脊髄損傷したラットの場合のシングルモーターユニット誘導、未処理の動物とカラギーナンで前処理した動物の比較を示す。
【図12】図12は、ラットCFA誘導された痛覚過敏症:抗侵害受容効果の測定(抗痛覚過敏効果を含む)(時間依存性−CFA投与後の1h〜4日)を示す。
【図12a】図12aは、抗侵害受容効果(抗痛覚過敏効果を含む)の変化を示す。
【図13】図13は、齧歯類動物−急性痛モデル(テールフリック、ラット)の場合のi.v.ボーラス投与による混合されたORL1/μ−アゴニストと標準オピオイドとの半値有効用量の比較を示す。
【図14】図14は、フェンタニルの投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14a】図14aは、モルフィンの投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14b】図14bは、A7の投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図14c】図14cは、A4の投与後の一時的痛覚過敏の出現を示す。
【図15】図15は、レボメタドンの投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15a】図15aは、B8の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15b】図15bは、A1の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15c】図15cは、A9の投与後の禁断飛び跳ね行動を示す。
【図15d】図15dは、比較物質としてのモルフィンとA4の投与後の飛び跳ね行動を示す。
【図15e】図15eは、比較物質としてのモルフィンとA4の投与後の飛び跳ね行動を示す。
【図16】図16は、自発的禁断を示す。
【図17】図17は、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17a】図17aは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17b】図17bは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17c】図17cは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17d】図17dは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図17e】図17eは、テールフリックテストの場合の鎮痛作用についての時間推移及びそれに比較したそれぞれの鎮痛完全作用用量についての動脈pCO2の時間推移及び鎮痛閾値用量(それぞれボーラスi.v.投与)を示す。
【図18】図18は、拮抗作用試験を用いた呼吸抑制に関する混合されたORL1/μ−アゴニストのポジティブな効果の検出を示す。
【図20】図20は、純粋なμ−オピオイド及び混合されたORL1/μ−アゴニストについての呼吸抑制の例に関する鎮痛と副作用との間の間隔の比較を示す。
【図21】図21は、純粋なμ−オピオイドと混合されたORL1/μ−アゴニストについての精神的依存症の例に関する鎮痛と副作用との間の間隔の比較を示す。
【図22】図22は、A7の投与後に観察された場所嗜好性を示す。
【図23】図23は、ORL1−成分の拮抗作用による場所嗜好性の増強を示す。
【図24】図24は、細胞増殖抑制剤に誘導された多発性神経障害性痛を示す。
【図25】図25は、細胞増殖抑制剤に誘導された多発性神経障害性痛を示す。
【図26a】図26aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図26b】図26bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図26c】図26cは、機械的痛覚過敏を示す。
【図27a】図27aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図27b】図27bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28a】図28aは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28b】図28bは、機械的痛覚過敏を示す。
【図28c】図28cは、機械的痛覚過敏を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項2】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、痛覚過敏を発症する危険性の高い患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項3】
前記患者が過敏性腸疾患患者、腫瘍痛患者又は筋骨核痛を患う患者であることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記医薬を麻酔のため又は麻酔の間の鎮痛のために使用することを特徴とする、請求項2又は3記載の使用。
【請求項5】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、60才を越える患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項6】
前記化合物を麻酔の際に使用する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、潜在的に中毒になりやすい患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項8】
精神疾患を患う患者の場合の痛みの治療のための、請求項7記載の使用。
【請求項9】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、炎症性疾患のために疼痛を患う患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項10】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項11】
慢性痛みの治療のための、請求項10記載の使用。
【請求項12】
神経障害性痛の治療のための、請求項11記載の使用。
【請求項13】
帯状ヘルペスによる神経痛の場合の痛みの治療のための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記化合物を、急性痛の場合に必要な用量を下回る用量で適用する、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記化合物を、急性痛の場合に適用される用量よりも少なくとも2分の1以下の用量で、特に有利に少なくとも5分の1以下の用量で適用する、請求項14記載の使用。
【請求項16】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、術後の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項17】
1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される0.1のORL1/μよりも選択的であるμ−アゴニストと1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される30のORL1/μよりも選択的であるORL1−アゴニストとの、請求項10記載の化合物の特徴を有する混合物の形での、痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項18】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物が、親化合物の個々の代謝物であるか又は場合によりin vivoで形成される代謝物の混合物として本発明による特徴を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項又は16項記載の使用。
【請求項19】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30であるように選択された、一般式I
【化1】
[式中、
R1及びR2は、相互に無関係に、H又はCH3を表し、その際、R1及びR2は同時にHを表さず;
R3は、フェニル、ベンジル又はヘテロアリールを表し、これらはそれぞれ非置換であるか又はF、Cl、OH、CN又はOCH3でモノ又はポリ置換されている;
Wは、NR4、O又はSを表し、
及び
R4は、H;C1〜C5−アルキル、フェニル;C1〜C3−アルキル基を介して結合したフェニル、COR12;SO2R12を表し、
その際、R12は、H;C1〜C7−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、非置換であるか又はOH、F又はCOOC1〜C4−アルキルによりモノ又はポリ置換されている);C4〜C6−シクロアルキル;アリール−、又はヘテロアリール(これは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたフェニル又はヘテロアリール(これらは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝された又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたC5〜C6−シクロアルキル;OR13;NR14R15を表し;
R5は、H;COOR13、CONR13、OR13;C1〜C5−アルキル(飽和又は不飽和、分枝又は非分枝、非置換であるか又はOH、F、CF3又はCNでモノ又はポリ置換されている)を表し;
R6は、Hを表し;
又はR5及びR6は一緒になって(CH2)nを形成し、n=2、3、4、5又は6を表し、その際、個々の水素原子は、F、Cl、NO2、CF3、OR13、CN又はC1〜C5−アルキルにより置換されていてもよく;
R7、R8、R9及びR10は、相互に無関係に、H、F、Cl、Br、NO2、CF3、OH、OCH3、CN、COOR13、NR14R15;C1〜C5−アルキル、ヘテロアリール(非置換であるか又はベンジル、CH3、Cl、F、OCH3又はOHでモノ又はポリ置換されている)を表し;
その際、R13は、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
R14及びR15は、相互に無関係に、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
Xは、O、S、SO、SO2又はNR17を表し;
R17は、H;C1〜C5−アルキル(飽和又は不飽和の、分枝又は非分枝);COR12又はSO2R12を表す]
のスピロ環式シクロヘキサン誘導体、その純粋なジアステレオマーの形態、そのラセミ体の形態、その純粋なエナンチオマーの形態、又は任意の混合割合での立体異性体の混合物の形態;塩基として、又はその塩の形態で、特に生理学的に許容される塩又は生理学的に許容される酸又はカチオンの塩の形態の、糖尿病による多発性神経障害性痛、術後の疼痛又は帯状ヘルペスによる神経痛の治療のための医薬の製造のための使用。
【請求項20】
次の群:
1,1−(3−メチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−6−フルオロ−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−(3−メチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(3−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−(3−ジメチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−6−フルオロ−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−メチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール シトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール ヘミシトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール シトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(3−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール ヘミシトラート
1,1−(3−ジメチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−メチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール シトラート
から選ばれる化合物の、糖尿病による多発性神経障害性痛又は帯状ヘルペス後の神経痛の際の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項21】
術後の痛みの治療のための、請求項20記載の化合物の使用。
【請求項22】
痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな呼吸抑制を有するように選択された化合物の使用。
【請求項23】
1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される親和性ORL1/μの割合が0.1〜20であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項記載の使用。
【請求項1】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項2】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、痛覚過敏を発症する危険性の高い患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項3】
前記患者が過敏性腸疾患患者、腫瘍痛患者又は筋骨核痛を患う患者であることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記医薬を麻酔のため又は麻酔の間の鎮痛のために使用することを特徴とする、請求項2又は3記載の使用。
【請求項5】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、60才を越える患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項6】
前記化合物を麻酔の際に使用する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、潜在的に中毒になりやすい患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項8】
精神疾患を患う患者の場合の痛みの治療のための、請求項7記載の使用。
【請求項9】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、炎症性疾患のために疼痛を患う患者の場合の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項10】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項11】
慢性痛みの治療のための、請求項10記載の使用。
【請求項12】
神経障害性痛の治療のための、請求項11記載の使用。
【請求項13】
帯状ヘルペスによる神経痛の場合の痛みの治療のための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記化合物を、急性痛の場合に必要な用量を下回る用量で適用する、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記化合物を、急性痛の場合に適用される用量よりも少なくとも2分の1以下の用量で、特に有利に少なくとも5分の1以下の用量で適用する、請求項14記載の使用。
【請求項16】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物の、術後の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項17】
1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される0.1のORL1/μよりも選択的であるμ−アゴニストと1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される30のORL1/μよりも選択的であるORL1−アゴニストとの、請求項10記載の化合物の特徴を有する混合物の形での、痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項18】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30である化合物が、親化合物の個々の代謝物であるか又は場合によりin vivoで形成される代謝物の混合物として本発明による特徴を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項又は16項記載の使用。
【請求項19】
少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30であるように選択された、一般式I
【化1】
[式中、
R1及びR2は、相互に無関係に、H又はCH3を表し、その際、R1及びR2は同時にHを表さず;
R3は、フェニル、ベンジル又はヘテロアリールを表し、これらはそれぞれ非置換であるか又はF、Cl、OH、CN又はOCH3でモノ又はポリ置換されている;
Wは、NR4、O又はSを表し、
及び
R4は、H;C1〜C5−アルキル、フェニル;C1〜C3−アルキル基を介して結合したフェニル、COR12;SO2R12を表し、
その際、R12は、H;C1〜C7−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、非置換であるか又はOH、F又はCOOC1〜C4−アルキルによりモノ又はポリ置換されている);C4〜C6−シクロアルキル;アリール−、又はヘテロアリール(これは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたフェニル又はヘテロアリール(これらは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF3、OCH3、C1〜C4−アルキル(これは分枝された又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF3、OCH3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC1〜C3−アルキルを介して結合されたC5〜C6−シクロアルキル;OR13;NR14R15を表し;
R5は、H;COOR13、CONR13、OR13;C1〜C5−アルキル(飽和又は不飽和、分枝又は非分枝、非置換であるか又はOH、F、CF3又はCNでモノ又はポリ置換されている)を表し;
R6は、Hを表し;
又はR5及びR6は一緒になって(CH2)nを形成し、n=2、3、4、5又は6を表し、その際、個々の水素原子は、F、Cl、NO2、CF3、OR13、CN又はC1〜C5−アルキルにより置換されていてもよく;
R7、R8、R9及びR10は、相互に無関係に、H、F、Cl、Br、NO2、CF3、OH、OCH3、CN、COOR13、NR14R15;C1〜C5−アルキル、ヘテロアリール(非置換であるか又はベンジル、CH3、Cl、F、OCH3又はOHでモノ又はポリ置換されている)を表し;
その際、R13は、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
R14及びR15は、相互に無関係に、H又はC1〜C5−アルキルを表し;
Xは、O、S、SO、SO2又はNR17を表し;
R17は、H;C1〜C5−アルキル(飽和又は不飽和の、分枝又は非分枝);COR12又はSO2R12を表す]
のスピロ環式シクロヘキサン誘導体、その純粋なジアステレオマーの形態、そのラセミ体の形態、その純粋なエナンチオマーの形態、又は任意の混合割合での立体異性体の混合物の形態;塩基として、又はその塩の形態で、特に生理学的に許容される塩又は生理学的に許容される酸又はカチオンの塩の形態の、糖尿病による多発性神経障害性痛、術後の疼痛又は帯状ヘルペスによる神経痛の治療のための医薬の製造のための使用。
【請求項20】
次の群:
1,1−(3−メチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−6−フルオロ−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−(3−メチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(3−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−(3−ジメチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−6−フルオロ−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−メチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール シトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール ヘミシトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール シトラート
1,1−[3−ジメチルアミノ−3−(3−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]−6−フルオロインドール ヘミシトラート
1,1−(3−ジメチルアミノ−3−フェニルペンタメチレン)−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール ヘミシトラート
1,1−[3−メチルアミノ−3−(2−チエニル)ペンタメチレン]−1,3,4,9−テトラヒドロ−ピラノ[3,4−b]インドール シトラート
から選ばれる化合物の、糖尿病による多発性神経障害性痛又は帯状ヘルペス後の神経痛の際の痛みの治療のための医薬を製造するための使用。
【請求項21】
術後の痛みの治療のための、請求項20記載の化合物の使用。
【請求項22】
痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな呼吸抑制を有するように選択された化合物の使用。
【請求項23】
1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される親和性ORL1/μの割合が0.1〜20であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図6】
【図6a】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11a】
【図12】
【図12a】
【図13】
【図14】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図15e】
【図16】
【図17】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図17e】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26a】
【図26b】
【図26c】
【図27a】
【図27b】
【図28a】
【図28b】
【図28c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図6】
【図6a】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11a】
【図12】
【図12a】
【図13】
【図14】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図15e】
【図16】
【図17】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図17e】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26a】
【図26b】
【図26c】
【図27a】
【図27b】
【図28a】
【図28b】
【図28c】
【公表番号】特表2010−504926(P2010−504926A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529599(P2009−529599)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008379
【国際公開番号】WO2008/040481
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008379
【国際公開番号】WO2008/040481
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】
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