説明

癌および他の障害の処置に有用な置換ピリミジン誘導体

式(I)の置換ピリミジン誘導体、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体(単離された立体異性体および立体異性体の混合物の両方)(ここで、A=ピリミジン)、そのような化合物を含有する医薬組成物、および、単独の物質としての、または、他の有効成分、例えば細胞傷害性治療剤と組み合わせた、過剰増殖および血管新生傷害を処置するための、これらの化合物または組成物の使用。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物、および、単独の物質としての、または、他の有効成分、例えば細胞傷害性治療剤と組み合わせた、過剰増殖および血管新生障害の処置のためのこれらの化合物または組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
rasシグナル伝達経路の活性化は、細胞の増殖、分化および形質変換に対する深い影響を有する事象のカスケードを示す。rasの下流のエフェクターであるRafキナーゼは、これらのシグナルの細胞表面受容体から細胞核への重要な媒介物であると認識されている(Lowy, D. R.; Willumsen, B. M. Ann. Rev. Biochem. 1993, 62, 851; Bos, J. L. Cancer Res. 1989, 49, 4682)。rafキナーゼに対する不活性化抗体の投与、または、ドミナントネガティブrafキナーゼまたはドミナントネガティブMEK(rafキナーゼの基質)の共発現によって、rafキナーゼシグナル伝達経路を阻害することにより、活性なrasの効果を阻害することは、形質変換した細胞の正常な増殖表現型への復帰を導くことが示された(Daum et al. Trends Biochem. Sci. 1994, 19, 474-80; Fridman et al. J. Biol. Chem. 1994, 269, 30105-8 参照。Kolch ら (Nature 1991 , 349, 426-28)は、膜結合型癌遺伝子において、アンチセンスRNAによるraf発現の阻害が、細胞の増殖を妨害することをさらに示した。同様に、rafキナーゼの阻害(アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる)は、インビトロおよびインビボで、様々なヒトの腫瘍タイプの成長の阻害と相関した(Monia et al., Nat. Med. 1996, 2, 668-75)。Rafキナーゼ活性の低分子阻害剤のいくつかの例は、癌の処置に重要な物質である(Naumann, U.; Eisenman-Tappe, I.; Rapp, U. R. Recent Results Cancer Res. 1997, 143, 237; Monia, B. P.; Johnston, J. F.; Geiger, T.; Muller, M.; Fabbro, D. Nature Medicine 1996, 2, 668)。
【0003】
1−2mmのサイズを超える進行性の腫瘍の成長を支持するために、腫瘍細胞が、機能的間質、即ち、線維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、細胞外マトリックスタンパク質および可溶性因子からなる支持構造を必要とすることが認識されている (Folkman, J., Semin Oncol, 2002. 29(6 Suppi 16), 15-8)。腫瘍は、PDGFおよび形質転換増殖因子−ベータ(TGF−ベータ)などの可溶性増殖因子の分泌を介して間質組織の形成を誘導し、次いで、これが、宿主細胞による線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)などの相補因子の分泌を刺激する。これらの刺激因子は、新しい血管の形成、即ち血管新生を誘導し、それは、酸素および栄養分を腫瘍にもたらし、その成長を可能にし、転移の経路を提供する。間質形成の阻害を対象とするいくつかの治療は、幅広い組織学的タイプに由来する上皮腫瘍の増殖を阻害すると考えられている (George, D. Semin Oncol, 2001. 28(5 Suppl 17), 27-33; Shaheen, R.M., et al., Cancer Res, 2001. 61(4), 1464-8; Shaheen, R.M., et al. Cancer Res, 1999. 59(21), 5412-6)。しかしながら、血管新生過程および腫瘍の進行に関与する複雑な性質および多数の増殖因子のために、単一の経路を標的とする物質は、限定的な効力のものであり得る。宿主の間質における血管新生を誘導するために腫瘍により利用される数々の重要なシグナル伝達経路に対する処置を提供することが望ましい。これらには、間質形成の強力な刺激因子であるPDGF(Ostman, A. and C.H. Heldin, Adv Cancer Res, 2001, 80, 1-38)、線維芽細胞および内皮細胞の化学誘引物質および分裂促進因子であるFGF、および、血管新生の強力な調節因子であるVEGFが含まれる。
【0004】
PDGFは、多くの腫瘍により傍分泌様式で分泌され、線維芽細胞、平滑筋および内皮細胞の成長を促進し、間質形成および血管新生を促進すると考えられている、間質形成のもう一つの重要な調節因子である。PDGFは、元々、サル肉腫ウイルスのv−sis癌遺伝子産物として同定された (Heldin, C.H., et al., J Cell Sci Suppl, 1985, 3, 65-76)。この増殖因子は、2個のペプチド鎖からなり、それらはAまたはB鎖と呼ばれ、それらの一次アミノ酸配列において60%の相当性を有する。これらの鎖はジスルフィド架橋されてAA、BBまたはABホモ−またはヘテロ二量体からなる30kDaの成熟タンパク質を形成する。PDGFは、血小板において高レベルで見出され、内皮細胞および血管平滑筋細胞により発現される。加えて、PDGFの産生は、血管新生化の乏しい腫瘍組織で見出されるもののような低酸素条件下で上方調節される (Kourembanas, S., et al., Kidney Int, 1997, 51(2), 438-43)。PDGFは、1106アミノ酸の124kDa膜貫通型チロシンキナーゼ受容体であるPDGF受容体に高親和性で結合する(Heldin, C.H., A. Ostman, and L. Ronnstrand, Biochim Biophys Acta, 1998. 1378(1), 79-113)。PDGFRは、ホモまたはヘテロ二量体鎖として見出され、それらは、それらのアミノ酸配列全体で30%の相同性を、そして、それらのキナーゼドメイン間で64%の相同性を有する(Heldin, C.H., et al.. Embo J, 1988, 7(5), 1387-93)。PDGFRは、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(Flt4)、c−KitおよびFLT3を含む、分断されたキナーゼドメインを有するチロシンキナーゼ受容体ファミリーのメンバーである。PDGF受容体は、線維芽細胞、平滑筋細胞および周皮細胞で主に、そして、神経細胞、腎メサンギウム細胞、ライディッヒ細胞および中枢神経系のシュワン細胞で、より低い程度に発現される。受容体に結合すると、PDGFは受容体の二量体化を誘導し、チロシン残基の自己およびトランスリン酸化を行い、それは、受容体のキナーゼ活性を高め、SH2タンパク質結合ドメインの活性化を介して下流のエフェクターのリクルートを促進する。PI−3−キナーゼ、ホスホリパーゼC−ガンマ、srcおよびGAP(p21−rasのGTPアーゼ活性化タンパク質)を含む数々のシグナル伝達分子が、活性化PDGFRと複合体を形成する(Soskic, V., et al. Biochemistry, 1999, 38(6), 1757-64)。PI−3−キナーゼの活性化を介して、PDGFは、Rhoシグナル伝達経路を活性化し、細胞の運動および遊走を誘導し、GAPの活性化を介して、p21−rasおよびMAPKシグナル伝達経路の活性化による有糸分裂誘発を誘導する。
【0005】
成人では、PDGFの主要な機能は、創傷治癒の速度を促進および上昇させ、血管のホメオスタシスを維持することであると考えられている(Baker, E.A. and D.J. Leaper, Wound Repair Regen, 2000. 8(5), 392-8; Yu, J., A. Moon, and H.R. Kim, Biochem Biophys Res Commun, 2001. 282(3), 697-700)。PDGFは、血小板において高濃度で見出され、線維芽細胞、平滑筋細胞、好中球およびマクロファージの強力な化学誘引物質である。その創傷治癒における役割に加えて、PDGFは、血管のホメオスタシスの維持を補助すると知られている。新血管の発生中に、PDGFは、血管の構造的完全性に必要である周皮細胞および平滑筋細胞をリクルートする。PDGFは、腫瘍の新血管新生中に同様の役割を果たすと考えられる。その血管新生における役割の一部として、PDGFは、間質液圧を制御し、結合組織細胞と細胞外マトリックスとの相互作用の調節により血管の透過性を調節する。PDGFR活性の阻害は、間質圧を低下させ、腫瘍への細胞毒の流入を助長し、これらの物質の抗腫瘍効力を改善できる(Pietras, K., et al. Cancer Res, 2002. 62(19), 5476-84; Pietras, K., et al. Cancer Res, 2001. 61 (7), 2929-34)。
【0006】
PDGFは、間質細胞または腫瘍細胞上のPDGFR受容体の傍分泌または自己分泌的刺激を介して直接的に、または、組換えによる受容体の増幅または受容体の活性化により、腫瘍の成長を促進できる。過剰発現されたPDGFは、恐らくPDGFの間質形成および血管新生の誘導に対する直接的効果により、PDGF受容体を発現しない2種の細胞タイプである、ヒト黒色腫細胞およびケラチノサイトを形質転換できる(Forsberg, K., et al. Proc Natl Acad Sci U S A., 1993. 90(2), 393-7; Skobe, M. and N.E. Fusenig, Proc Natl Acad Sci U S A, 1998. 95(3), 1050-5)。この腫瘍間質の傍分泌的刺激は、また、腫瘍がPDGFを発現するが受容体を発現しない、結腸、肺、乳房および前立腺の癌腫でも観察される(Bhardwaj, B., et al. Clin Cancer Res, 1996, 2(4), 773-82; Nakanishi, K., et al. Mod Pathol, 1997, 10(4), 341-7; Sundberg, C, et al. Am J Pathol, 1997, 151(2), 479-92; Lindmark, G., et al. Lab Invest, 1993, 69(6), 682-9; Vignaud, J. M., et al, Cancer Res, 1994, 54(20), 5455-63)。分析される腫瘍の大部分がリガンドのPDGFおよび受容体の両方を発現する腫瘍細胞増殖の自己分泌的刺激は、神経膠芽腫(Fleming, T.P., et al. Cancer Res, 1992, 52(16), 4550-3)、軟部組織肉腫(Wang, J., M. D. Coltrera, and A.M. Gown, Cancer Res, 1994, 54(2), 560-4)および卵巣(Henriksen, R., et al. Cancer Res, 1993, 53(19), 4550-4)、前立腺(Fudge, K., C.Y. Wang, and M.E. Stearns, Mod Pathol, 1994, 7(5), 549-54)、膵臓(Funa, K., et al. Cancer Res, 1990, 50(3), 748-53) および肺(Antoniades, H.N., et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 1992, 89(9), 3942-6)の癌で報告された。リガンドに依存しない受容体の活性化は、より低い程度で見出されるが、染色体の転座事象がEts様転写因子TELとPDGF受容体との間の融合タンパク質を形成する慢性骨髄単球性白血病(CMML)で報告された。加えて、PDGFRにおける突然変異の活性化は、c−Kit活性化が関与しない胃腸の間質性腫瘍で見出された(Heinrich, M.C, et al., Science, 2003, 9, 9)。ある種のPDGFR阻害剤は、腫瘍の間質発生を妨害し、腫瘍の増殖および転移を阻害すると考えられている。
【0007】
胚発生およびいくつかの血管新生に依存する疾患の両方における、もう一つの主要な血管新生および血管形成の調節因子は、血管内皮増殖因子(VEGF;血管透過性因子、VPFとも呼ばれる)である。VEGFは、選択的RNAスプライシングによりホモ二量体で存在する分裂促進因子のアイソフォームのファミリーを表す。VEGFアイソフォームは、血管内皮細胞に高度に特異的であると報告されている(概説には、Farrara et al. Endocr. Rev. 1992, 13, 18; Neufield et al. FASEB J. 1999, 13, 9 参照)。
【0008】
VEGFの発現は、低酸素により(Shweiki et al. Nature 1992, 359, 843)、そして、インターロイキン−1、インターロイキン−6、上皮増殖因子および形質転換増殖因子などの様々なサイトカインおよび増殖因子により、誘導されると報告されている。今日までに、VEGFおよびVEGFファミリーのメンバーは、3種の膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mustonen et al. J. Cell Biol., 1995, 129, 895)、VEGF受容体−1(flt−1(fms様チロシンキナーゼ−1)としても知られる)、VEGFR−2(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体(KDR)としても知られる;KDRのマウス類似体は、胎児肝臓キナーゼ1(flk−1)として知られる)およびVEGFR−3(flt−4としても知られる)の1種またはそれ以上に結合すると報告された。KDRおよびflt−1は、異なるシグナル伝達特性を有すると示された(Waltenberger et al. J. Biol. Chem. 1994, 269, 26988); Park et al. Oncogene 1995, 10, 135)。かくして、KDRは無傷の細胞において強力なリガンド依存性チロシンリン酸化を行い、一方、flt−1は、弱い応答を示す。従って、KDRへの結合は、完全な範囲のVEGFが介在する生物学的応答の誘導にとって重大な必要条件であると考えられている。
【0009】
インビボで、VEGFは、血管形成に中心的な役割を果たし、血管新生および血管の透過性化を誘導する。調節が解除されたVEGFの発現は、異常な血管新生および/または透過性亢進過程を特徴とする数々の疾患の発生に寄与する。いくつかの物質によるVEGFが介在するシグナル伝達カスケードの調節は、異常な血管新生および/または透過性亢進過程の有用な制御様式を提供できると考えられている。
【0010】
血管新生は、約1−2mmを超える腫瘍の増殖のために重要な先行条件であると考えられる。この限度より小さい腫瘍では、酸素および栄養分は、拡散により細胞に供給され得る。しかしながら、全ての腫瘍は、ある程度のサイズに達した後、増殖の継続のために血管新生に依存すると考えられている。腫瘍の低酸素領域内の腫瘍原性細胞は、VEGF産生の刺激により応答し、それは、静止状態の内皮細胞の活性化を引き起こし、新しい血管の形成を刺激する(Shweiki et al. Proc. Nat'l. Acad. Sci, 1995, 92, 768)。加えて、血管新生のない腫瘍領域におけるVEGFの産生は、rasシグナル伝達経路を介して進行し得る(Grugel et al. J. Biol. Chem., 1995, 270, 25915; Rak et al. Cancer Res. 1995, 55, 4575)。インサイツのハイブリダイゼーション研究は、VEGF mRNAが、肺(Mattern et al. Br. J. Cancer 1996, 73, 931)、甲状腺(Viglietto et al. Oncogene 1995, 11, 1569)、乳房(Brown et al. Human Pathol. 1995, 26, 86)、胃腸管(Brown et al. Cancer Res. 1993, 53, 4727; Suzuki et al. Cancer Res. 1996, 56, 3004)、腎臓および膀胱(Brown et al. Am. J. Pathol. 1993, 1431, 1255)、卵巣(Olson et al. Cancer Res. 1994, 54, 1255)、および子宮頸(Guidi et al. J. Nat'l Cancer Inst. 1995, 87, 12137)の癌腫、並びに血管肉腫(Hashimoto et al. Lab. Invest. 1995; 73, 859)およびいくつかの頭蓋内腫瘍(Plate et al. Nature 1992, 359, 845; Phillips et al. Int. J. Oncol. 1993, 2, 913; Berkman et al. J. Clin. Invest., 1993, 91, 153)を含む幅広いヒトの腫瘍において強く上方調節されることを示した。KDRに対する中和モノクローナル抗体は、腫瘍の血管新生の妨害に有効であると示された(Kim et al. Nature 1993, 362, 841; Rockwell et al. Mol. Cell. Differ. 1995, 3, 315)。
【0011】
例えば極度の低酸素条件下でのVEGFの過剰発現は、眼内の血管新生を導き、血管の過剰増殖をもたらし、最終的に失明を導き得る。そのような事象のカスケードは、糖尿病性網膜症、虚血性網膜静脈閉塞症および早産児の網膜症を含む数々の網膜症(Aiello et al. New Engl. J. Med. 1994, 331, 1480; Peer et al. Lab. Invest. 1995, 72, 638)および加齢性黄斑変性症(AMD; Lopez et al. Invest. Opththalmol. Vis. Sci. 1996, 37, 855 参照) について観察される。
【0012】
リウマチ性関節炎(RA)において、血管性パンヌスの内殖は、血管新生因子の産生により媒介され得る。免疫反応性VEGFのレベルは、RA患者の滑液中で高く、一方、VEGFレベルは、変形性関節疾患の他の形態の関節炎を有する患者の滑液中で低かった(Koch et al. J. Immunol. 1994, 152, 4149)。血管新生阻害剤AGM−170は、ラットのコラーゲン関節炎モデルにおいて関節の新血管新生を防止すると示された(Peacock et al. J. Exper. Med. 1992, 175, 1135)。
【0013】
VEGF発現の増加は、乾癬の皮膚、並びに、表皮下の水疱形成を伴う水疱性障害、例えば類天疱瘡、多形性紅斑および疱疹状皮膚炎でも示された(Brown et al. J. Invest. Dermatol. 1995, 104, 744)。
【0014】
血管内皮増殖因子(VEGF、VEGF−C、VEGF−D)およびそれらの受容体(VEGFR2、VEGFR3)は、腫瘍血管新生のみならず、リンパ管新生の重要な調節因子でもある。VEGF、VEGF−CおよびVEGF−Dは殆どの腫瘍において、主に腫瘍増殖の期間中に、しばしば実質的に上昇したレベルで、発現される。VEGF発現は、低酸素、ケモカイン、rasなどの癌遺伝子により、または、腫瘍抑制遺伝子の不活性化により、刺激される(McMahon, G. Oncologist 2000, 5(Suppl. 1), 3-10; McDonald, N.Q.; Hendrickson, W.A. Cell 1993, 73, 421-424)。
【0015】
VEGFの生物学的活性は、それらの受容体への結合により媒介される。VEGFR3(Flt−4とも呼ばれる)は、正常な成人組織では、リンパ管内皮で支配的に発現される。VEGFR3の機能は、新しいリンパ管の形成に必要であるが、予め存在するリンパ管の維持には必要ではない。VEGFR3は、また、腫瘍の血管内皮で上方調節される。最近、VEGFR3のリガンドであるVEGF−CおよびVEGF−Dは、哺乳動物のリンパ管新生の調節因子として同定された。腫瘍関連リンパ管新生因子により誘導されるリンパ管新生は、腫瘍内への新しい管の増殖を促進し得、腫瘍細胞に全身的循環への進入路を提供する。リンパに浸潤する細胞は、胸管を介して血流への通路を見出し得る。腫瘍発現の研究は、VEGF−C、VEGF−DおよびVEGFR3発現の、原発腫瘍が拡散する能力に直接関連する臨床病理学的要素(例えば、リンパ節の関与、リンパへの浸潤、二次転移および無病生存率)との直接的比較を可能にした。多数の例で、これらの研究は、リンパ管新生因子の発現と、原発固形腫瘍が転移する能力との間に、統計的相関を示す(Skobe, M. et al. Nature Med. 2001, 7(2), 192-198; Stacker, S.A. et al.. Nature Med. 2001, 7(2), 186-191; Makinen, T. et al. Nature Med. 2001, 7(2), 199-205; Mandriota, S.J. et al. EMBO J. 2001, 20(4), 672-82; Karpanen, T. et al. Cancer Res. 2001, 61(5), 1786-90; Kubo, H. et al. Blood 2000, 96(2), 546-53)。
【0016】
低酸素は、悪性細胞におけるVEGFの産生に重要な刺激であると思われる。p38MAPキナーゼの活性化は、腫瘍細胞による低酸素に応答するVEGFの誘導に必要とされる(Blaschke, F. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2002, 296, 890-896; Shemirani, B. et al. Oral Oncology 2002, 38, 251-257)。VEGF分泌の制御を介する血管新生への関与に加えて、p38MAPキナーゼは、コラゲナーゼ活性の調節およびウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子の発現を介して、悪性細胞の浸潤および様々な腫瘍タイプの遊走を促進する(Laferriere, J. et al. J. Biol. Chem. 2001, 276, 33762-33772; Westermarck, J. et al. Cancer Res. 2000, 60, 7156-7162; Huang, S. et al. J. Biol. Chem. 2000, 275, 12266-12272; Simon, C. et al. Exp. Cell Res. 2001, 277, 344-355)。
【0017】
いくつかのジアリールウレアは、セリン−スレオニンキナーゼおよび/またはチロシンキナーゼ阻害剤としての活性を有すると記載された。癌、血管新生障害および炎症性障害の処置用の医薬組成物の有効成分としてのこれらのジアリールウレアの有用性は、立証された。Redman et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11, 9-12; Smith et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11, 2775-2778; Dumas et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2000, 10, 2047-2050; Dumas et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2000, 10, 2051-2054; Ranges et al., Book of Abstracts, 220th ACS National Meeting, Washington, DC, USA, MEDI 149; Dumas et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 1559-1562; Lowinger et al., Clin. Cancer Res. 2000, 6(suppi.), 335; Lyons et al., Endocr.-Relat. Cancer 2001, 8, 219-225; Riedl et al., Book of Abstracts, 92nd AACR Meeting, New Orleans, LA, USA, abstract 4956; Khire et al., Book of Abstracts, 93rd AACR Meeting, San Francisco, CA, USA, abstract 4211; Lowinger et al., Curr. Pharm. Design 2002, 8, 99-110; Regan et al., J. Med. Chem. 2002, 45, 2994-3008; Pargellis et al., Nature Struct. Biol. 2002, 9(4), 268-272; Carter et al., Book of Abstracts, 92nd AACR Meeting, New Orleans, LA, USA, abstract 4954; Vincent et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 1900; Hilger et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 1916; Moore et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 1816; Strumberg et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 121; Madwed JB: Book of Abstracts, Protein Kinases: Novel Target Identification and Validation for Therapeutic Development, San Diego, CA, USA, March 2002; Roberts et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 473; Tolcher et al., Book of Abstracts, 38th ASCO Meeting, Orlando, FL, USA, abstract 334; および Karp et al., Book of Abstracts, 38th AACR Meeting, San Francisco, CA, USA, abstract 2753 参照。
【0018】
当分野の進歩にも拘わらず、癌の処置および抗癌化合物の必要性が依然として存在している。
【発明の開示】
【0019】
発明の説明
本発明は、
(i)下記式(I)の新規化合物、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体(単離された立体異性体および立体異性体の混合物の両方)、これらを集合的に本明細書において「本発明の化合物」と称する;
(ii)本発明の化合物を含有する医薬組成物;および、
(iii)単独の物質としての、または、他の抗癌物質と組み合わせた、疾患、例えば、過剰増殖性および血管新生障害を処置するための、本発明の化合物または本発明の化合物を含有する医薬組成物の使用
に関する。
【0020】
式Iは、以下の通りである:
【化1】

【0021】
Aはピリミジンであり、これは、独立してR、OR、S(O)、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノまたはニトロである1個ないし3個の置換基により置換されていることもある;
【0022】
Bは、フェニル、ナフチルまたはピリジルであり、これらは、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし4個の置換基で置換されていることもある。
Bは、好ましくはフェニルであり、これは、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし4個の置換基で置換されていることもある。
【0023】
Lは、
(a)−(CH−O−(CH−、
(b)−(CH−(CH−、
(c)−(CH−C(O)−(CH−、
(d)−(CH−NR−(CH−、
(e)−(CH−NRC(O)−(CH−、
(f)−(CH−S−(CH−、または、
(g)−(CH−C(O)NR−(CH
である架橋基である。
整数mおよびlは、0−4から独立して選択され、典型的には、0−2から選択される。基−(CH−(CH−は、mおよびlが0であるとき、単結合を定義する。
Lは、最も好ましくは−O−または−S−である。
【0024】
Mは、ピリジンまたはピリミジン環であり、これは、
(1)C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
(2)C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル;
(3)C−Cアルコキシ;
(4)ヒドロキシ;
(5)アミノ;
(6)C−Cアルキルアミノ;
(7)C−Cジアルキルアミノ;
(8)ハロゲン;
(9)ニトロ;
(10)C(O)NR
(11)C(O)OR
(12)C(O)R
(13)CN;
(14)C(S)NR
(15a)C(O)NR−NR
(15b)C(O)NR−RC(O)NR
(16)テトラゾリル;
(17)イミダゾリル;
(18)イミダゾリン−2−イル;
(19)1,3,4−オキサジアゾリン−2−イル;
(20)1,3−チアゾリン−2−イル;
(21)5−チオキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−チアゾリン−2−イル;
(22)5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾリン−2−イル;または
(23)式
【化2】

の基、
から独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていることもある。
Mは、好ましくは、上記(1)ないし(13)の基から独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていることもあるピリジンである。
【0025】
、R、R、RおよびRの各々は、独立して、
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、
(c)フェニル、
(d)C−Cフェニル−アルキル、
(e)ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、または、
(f)−(CH−X
である。
置換基Xは、飽和、部分飽和または芳香族性である、酸素、窒素および硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含有する5員または6員の複素環式環、または、O、NおよびSからなる群から選択される1個ないし4個のヘテロ原子を有する8員ないし10員の二環式ヘテロアリールである。
【0026】
加えて、RおよびRは、一体となって、N、OまたはSから選択される原子により中断されていてもよい5員または6員の脂肪族環を形成していてもよい。これは、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし3個の置換基で置換されていることもある。
【0027】
は、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、
(c)シアノ、
(d)ニトロ、
(e)ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、または、
(f)−C(O)R、ここで、Rは、C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキルである、
である。
【0028】
は、好ましくは、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、または、
(c)シアノ、または、
(d)ニトロ
であり、最も好ましくは、Rは、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、または、
(c)シアノ
である。
【0029】
は、水素またはC−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキルである。
変数qは、整数0、1、2、3または4である。変数pは、整数0、1または2である。
【0030】
任意の部分が「置換されている」とき、それは、最高数までの指示された置換基を有することができ、各置換基は、その部分の任意の利用可能な位置にあることができ、その置換基上の任意の利用可能な原子を介して結合していてよい。「任意の利用可能な位置」は、当分野で知られているか、または本明細書で教示される手段により化学的に接近可能であり、過度に不安定な分子を創成しない、その部分上の任意の位置を意味する。任意の部分上に2個またはそれ以上の置換基がある場合、各置換基は、いかなる他の置換基からも独立して定義され、従って、同一であるか、または異なることができる。
【0031】
用語「置換されていることもある」は、そのように修飾される部分が、非置換であっても、指定される置換基で置換されていてもよいことを意味する。
【0032】
Mがピリジンであるので、ピリジン置換基としての用語「ヒドロキシ」は、2−、3−および4−ヒドロキシピリジンを含むが、当分野で1−オキソ−ピリジン、1−ヒドロキシ−ピリジンおよびピリジンN−オキシドと呼ばれる構造も含むと理解される。
【0033】
化合物、塩などの単語の複数形が本明細書で使用される場合、単数の化合物、塩なども意味すると解される。
【0034】
用語「C−Cアルキル」は、本明細書で使用するとき、1個ないし5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味し、それは、直鎖であっても、単一または多数の分枝を有する分枝鎖であってもよい。そのような基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが含まれる。
【0035】
用語「C−Cハロアルキル」は、本明細書で使用するとき、ペルハロまでの少なくとも1個のハロゲン原子で置換されている、5個までの炭素原子を有する飽和炭化水素ラジカルを意味する。このラジカルは、直鎖であっても、単一または多数の分枝を有する分枝鎖であってもよい。ハロ置換基には、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードが含まれる。フルオロ、クロロおよびブロモが好ましく、フルオロおよびクロロがより好ましい。ハロゲン置換基は、任意の利用可能な炭素上にあってよい。1個より多いハロゲン置換基がこの部分上に存在するとき、それらは、同一であっても異なっていてもよい。そのようなハロゲン化アルキル置換基の例には、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよび1,1,2,2−テトラフルオロエチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
用語「C−Cアルコキシ」は、本明細書で使用するとき、1個ないし3個の飽和炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ基を意味し、それは、直鎖であっても、単一または多数の分枝を有する分枝鎖であってもよく、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシなどの基を含む。それは、また、2,2−ジクロロエトキシ、トリフルオロメトキシなどのハロゲン化された基も含む。
【0037】
ハロまたはハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。フルオロ、クロロおよびブロモが好ましく、フルオロおよびクロロがより好ましい。
【0038】
用語「C−Cアルキルアミン」は、本明細書で使用するとき、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノまたはイソプロピルアミノを意味する。
【0039】
−Cジアルキルアミンの例には、ジエチルアミノ、エチル−イソプロピルアミノ、メチル−イソブチルアミノおよびジヘキシルアミノが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で使用するとき、単環式および二環式のヘテロアリール環の両方を表す。単環式ヘテロアリールは、5個ないし6個の環の原子を有し、その少なくとも1個はN、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、残りの原子は炭素である、芳香族性単環式環を意味する。1個より多いヘテロ原子がその部分中に存在するとき、それらが同一であっても異なっていてもよいように、それらは他のものから独立して選択される。単環式ヘテロアリール環には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジンおよびトリアジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
用語「二環式ヘテロアリール」は、本明細書で使用するとき、環の一方が上記の単環式ヘテロアリール環から選択され、第2の環が、ベンゼンまたは上記の他の単環式ヘテロアリール環である、縮合二環式部分を意味する。二環式部分中の両方の環がヘテロアリール環であるとき、それらは、当分野で知られている手段により化学的に入手可能である限り、同一であっても異なっていてもよい。二環式ヘテロアリール環には、例えば、限定的ではないが、ベンゾオキサゾール(縮合したベンゼンとオキサゾール)、インダゾール(縮合したベンゼンとピラゾール)、キノリン(縮合したフェニルとピリジン)、キナゾリン(縮合したピリミジンとベンゼン)、イミダゾピリミジン(縮合したイミダゾールとピリミジン)、ナフチリジン(2個の縮合したピリジン)などを含む、合成的に入手可能な5−5、5−6または6−6縮合二環式芳香族構造が含まれる。
【0042】
用語「飽和、部分飽和または芳香族性である、酸素、窒素および硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含有する5員または6員の複素環式環」には、非限定的に、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピペリジノン、テトラヒドロピリミドン、ペンタメチレンスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンなどが含まれる。
【0043】

【化3】

[式中、RおよびRは、一体となって、N、OまたはSから選択される原子により中断されていてもよく、置換されていることもある5員または6員の脂肪族環を形成していてもよい]
の基の非限定的な例には、
【化4】

が含まれる。
【0044】
用語「C−Cフェニル−アルキル」には、非限定的に、3−フェニル−プロピル、2−フェニル−1−メチル−エチルが含まれる。置換されている例には、2−[2−クロロフェニル]エチル、3,4−ジメチルフェニル−メチルなどが含まれる。
【0045】
式Iの化合物は、所望の様々な置換基の位置および性質に応じて、1個またはそれ以上の不斉中心を含有し得る。不斉炭素原子は、(R)もしくは(S)配置または(R,S)配置で存在し得る。ある例では、不斉は、所定の結合、例えば、特定された化合物の2個の置換芳香環を連結する中心の結合についての、限定された回転に起因して存在することもある。環上の置換基は、cisまたはtrans形のいずれかで存在することもある。全てのそのような配置(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)が、本発明の範囲に含まれることを意図している。好ましい化合物は、より望ましい生物学的活性をもたらす式Iの化合物の絶対配置を有するものである。本発明の化合物の、分離された、純粋な、または、部分的に精製された異性体またはラセミ混合物も、本発明の範囲に含まれる。当該異性体の精製および当該異性体混合物の分離は、当分野で知られている標準的な技法により達成できる。
【0046】
常套の方法に従うラセミ混合物の分割により、例えば、光学的に活性な酸または塩基を使用するジアステレオマーの塩の形成、または、共有結合したジアステレオマーの形成により、光学異性体を得ることができる。適当な酸の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジトルオイル酒石酸およびカンファースルホン酸である。ジアステレオ異性体の混合物を、それらの物理および/または化学的差異に基づき、当分野で知られている方法により、例えば、クロマトグラフィーまたは分別再結晶により、それらの個々のジアステレオマーに分離できる。次いで、光学的に活性な塩基または酸を、分離したジアステレオマーの塩から遊離させる。光学異性体の異なる分離方法には、エナンチオマーの分離を最大化するために最適に選択された、常套の修飾を伴う、または伴わない、キラルクロマトグラフィー(例えば、キラルHPLCカラム)の使用が含まれる。適するキラルHPLCカラムは、Diacel により製造されるもの、例えば、とりわけ、Chiracel OD および Chiracel OJ であり、全て日常的に選択できる。誘導体化を伴う、または伴わない、酵素的分離も有用である。式Iの光学活性化合物は、同様に、光学的に活性な出発物質を利用して、キラル合成により得ることができる。
【0047】
本発明は、また、本明細書に開示の化合物の有用な形態、例えば全ての式(I)の化合物の医薬的に許容し得る塩、代謝物およびプロドラッグなどにも関する。用語「医薬的に許容し得る塩」は、本発明の化合物の、比較的非毒性な無機または有機酸付加塩を表す。例えば、S. M. Berge, et al. "Pharmaceutical Salts," J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19 参照。医薬的に許容し得る塩には、塩基として機能する主要な化合物を、無機または有機酸と反応させて、塩、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸の塩を形成させることにより得られるものが含まれる。医薬的に許容し得る塩には、また、主要な化合物が酸として機能し、適当な塩基と反応して、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびコリン塩を形成するものも含まれる。当業者は、特許請求される化合物の酸付加塩は、化合物を適当な無機または有機酸と、数々の既知方法のいずれかで反応させることにより製造し得ることを、さらに認識するであろう。あるいは、アルカリおよびアルカリ土類金属塩を、本発明の化合物を適当な塩基と様々な既知方法で反応させることにより製造する。
【0048】
本発明の化合物の代表的な塩には、例えば、無機または有機の酸または塩基から、当分野で周知の手段により形成される、常套の非毒性の塩および第4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコへプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸、プロピオン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0049】
塩基塩には、カリウムおよびナトリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基とのアンモニウム塩が含まれる。さらに、塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジブチル;および、硫酸ジアミル、長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物、ハロゲン化アラルキル、例えば臭化ベンジルおよびフェネチルなどの物質で四級化し得る。
【0050】
ある種の本発明の化合物は、不安定な官能基でさらに改変でき、それは、インビボ投与後に切り取られて親の活性物質と医薬的に不活性な誘導体化(官能)基をもたらす。一般的にプロドラッグと呼ばれるこれらの誘導体を使用して、例えば、活性物質の物理化学的特性を変更し、活性物質を特定の組織に標的化し、活性物質の薬物動態学的および薬力学的特性を変更し、そして、望まれない副作用を低減することができる。
【0051】
本発明のプロドラッグには、例えば、良好に耐容され、医薬的に許容し得るエステルである本発明の適当な化合物のエステル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはペンチルエステルを含むアルキルエステルが含まれる。フェニル−C−Cアルキルなどのさらなるエステルを使用し得るが、メチルエステルが好ましい。
【0052】
プロドラッグの合成方法は、この主題に関する以下の総説に記載されており、これらの方法の説明について、これらを出典明示により本明細書の一部とする:
・Higuchi, T.; Stella, V. eds. Prodrugs As Novel Drug Delivery Systems. ACS Symposium Series. American Chemical Society: Washington, DC (1975).
・Roche, E. B. Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs. American Pharmaceutical Association: Washington, DC (1977).
・Sinkula, A. A.; Yalkowsky, S. H. J Pharm Sci. 1975, 64, 181-210.
・Stella, V. J.; Charman, W. N. Naringrekar, V. H. Drugs 1985, 29, 455-473.
・Bundgaard, H., ed. Design of Prodrugs. Elsevier: New York (1985).
・Stella, V. J.; Himmelstein, K. J. J. Med. Chem. 1980, 23, 1275-1282.
・Han, H-K; Amidon, G. L. AAPS Pharmsci 2000, 2, 1-11.
・Denny, W. A. Eur. J. Med. Chem. 2001, 36, 577-595.
・Wermuth, C. G. in Wermuth, C. G. ed. The Practice of Medicinal Chemistry Academic Press: San Diego (1996), 697-715.
・Balant, L. P.; Doelker, E. in Wolff, M. E. ed. Burgers Medicinal Chemistry And Drug Discovery John Wiley & Sons: New York (1997), 949-982.
【0053】
本発明の化合物の代謝物には、1個またはそれ以上の窒素がヒドロキシ基で置換されている式Iの化合物の酸化誘導体が含まれる;それには、当分野で1−オキソ−ピリジンと呼ばれる、ピリジン基の窒素原子がオキシド形態である誘導体、または、当分野で1−ヒドロキシ−ピリジンと呼ばれる、ヒドロキシ置換基を有する誘導体が含まれる。
【0054】
式Iの範囲内の関心の高い化合物は、式(III)であり、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体の形態を含む。
【化5】

式中、Raは、R、ORまたはシアノであり;そして、B、LおよびMは、上記定義の通りである。
【0055】
式Iの範囲内の関心の高い化合物の他の群は、式(IV)のものであり、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体の形態を含む。
【化6】

式中、Raは、R、ORまたはシアノであり;各Rcは、独立して、水素、ハロゲン、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシまたはヒドロキシであり;そして、LおよびMは、上記定義の通りである。
【0056】
式Iの範囲内の関心の高い化合物の他の群は、式(V)のものであり、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体の形態を含む。
【化7】

式中、Ra、RcおよびMは、上記定義の通りである。関心の高い群では、Mは、式III、IVおよびVにおいて、ピリジンであり、典型的には、C(O)NRまたはCNで置換されている。ある関心の高い群では、C(O)NRは、C(O)NHCHまたはC(O)NHである。
【0057】
関心の高い化合物のさらなる群は、式(II)のものであり、それらの塩、代謝物、プロドラッグおよびジアステレオ異性体の形態を含む。
【化8】

式中、Ra、Rcは、上記定義の通りであり、そして、
Rbは、
(1)C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
(2)C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル;
(3)C−Cアルコキシ;
(4)ヒドロキシ;
(5)アミノ;
(6)C−Cアルキルアミノ;
(7)C−Cジアルキルアミノ;
(8)ハロゲン;
(9)ニトロ;
(10)C(O)NR
(11)C(O)OR
(12)C(O)R
(13)CN;
(14)C(S)NR
(15)C(O)NR−RC(O)NR;または、
(16)水素;
であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して上記定義の通りである。
【0058】
関心の高い式IIの化合物の群について、Rbは、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;C−Cアルコキシ;ハロゲン;C(O)NR;CN;C(S)NRまたはC(O)NR−RC(O)NRである。関心の高い式IIの化合物の他の群について、Rbは、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;ハロゲン;C(O)NRまたはCNである。さらなる下位群では、Rbは、C(O)NRまたはCNであるか、または、RbはC(O)NRのみである。
【0059】
式IIの化合物および上述のその群について、各Rcが独立して水素またはフッ素であり、RbがC(O)NHCHまたはC(O)NHである下位群がある。
【0060】
一般的製造方法
本発明のこの実施態様で使用される化合物の製造で利用されるべき特定の方法は、所望の特定の化合物によって決まる。特定の置換基の選択などの要因は、本発明の特定の化合物の製造において辿るべき経路において役割を果たす。これらの要因は、当業者に容易に認識される。
【0061】
本発明の化合物は、既知の化学反応および方法の使用により製造し得る。それにも拘わらず、本発明の化合物の合成において読者を助けるために以下の一般的製造方法を提示し、より詳細な特定の例を、実施例を説明する下記の実験の部で提示する。
【0062】
これらの方法の全ての変動し得る基は、下記で具体的に定義されないならば、一般的な説明に記載した通りである。所定の記号を有する変動し得る基または置換基が所定の構造中で1回より多く使用されるとき、これらの基または置換基の各々は、その記号の定義の範囲内で独立して変動し得ると理解されるべきである。各々の請求される選択的官能基を有する本発明の化合物は、下記方法の各々を用いて製造できないと認識される。各方法の範囲内で、その反応条件に対して安定である選択的置換基が使用されるか、または、反応に参加し得る官能基は、必要であれば保護形態で存在し、そのような保護基の除去は、当業者に周知の方法により、適切な段階で完遂される。
【0063】
本発明の化合物は、常套の化学的方法に従い、かつ/または、下記に開示する通り、購入できるか、日常的な常套の化学的方法により製造できる出発物質から、製造できる。化合物の製造の一般的方法を後述し、代表的化合物の製造を、実施例において具体的に例示説明する。
【0064】
一般方法1
【化9】

化合物(I)は、上記一般方法1に示す反応順序に従い合成できる。従って、化合物(I)は、アミノ化合物(III)をイソシアネート化合物(II)と反応させることにより、合成できる。
【0065】
化合物(II)は、購入できるか、または、当業者に一般的に知られている方法に従い、例えば、アミンを、ホスゲンまたはホスゲン等価物、例えばトリクロロメチルクロロホルメート(ジホスゲン)、ビス(トリクロロメチル)カーボネート(トリホスゲン)、または、N,N'−カルボニルジイミダゾール(CDI)で処理することから;あるいは、アミド、またはカルボン酸誘導体、例えば、エステル、酸ハロゲン化物または無水物のクルチウス(Curtius)型転位により、合成できる。化合物(III)は、購入できるか、または、当業者に一般的に知られている方法に従い合成できる。
【0066】
あるいは、式(I)の化合物は、一般方法2に従い製造でき、ここでは、カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲンなどのカップリング剤を使用して式(IV)のアミノピリミジンおよび式(III)のアミノ化合物を結合させ、式(I)のウレアを形成させる。結合段階は、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエンなどの不活性溶媒中、0℃ないし還流から選択される温度で実施し得る。この結合は、これらの物質を単独で、または、有機または無機塩基の存在下で、当分野で記載される通りに達成し得る。
【0067】
一般方法2
【化10】

【0068】
加えて、ジアリールウレアの特定の製造は、既に特許文献に記載され、本発明の化合物に適合させることができる。例えば、Miller S. et al, "Inhibition of p38 Kinase using Symmetrical and Unsymmetrical Diphenyl Ureas" PCT 国際出願 WO 99 32463, Miller, S et al. "Inhibition of raf Kinase using Symmetrical and Unsymmetrical Substituted Diphenyl Ureas" PCT 国際出願, WO 99 32436, Dumas, J. et al., "Inhibition of p38 Kinase Activity using Substituted Heterocyclic Ureas" PCT 国際出願 WO 99 32111, Dumas, J. et al., "Method for the Treatment of Neoplasm by Inhibition of raf Kinase using N-Heteroaryl-N'-(hetero)arylureas" PCT 国際出願, WO 99 32106, Dumas, J. et al., "Inhibition of p38 Kinase Activity using Aryl- and Heteroaryl- Substituted Heterocyclic Ureas" PCT 国際出願, WO 99 32110, Dumas, J., et al., "Inhibition of raf Kinase using Aryl- and Heteroaryl- Substituted Heterocyclic Ureas" PCT 国際出願, WO 99 32455, Riedl, B., et al., "O-Carboxy Aryl Substituted Diphenyl Ureas as raf Kinase Inhibitors" PCT 国際出願, WO 00 42012, Riedl, B., et al., "O-Carboxy Aryl Substituted Diphenyl Ureas as p38 Kinase Inhibitors" PCT 国際出願, WO 00 41698, Dumas, J. et al. "Heteroaryl ureas containing nitrogen hetero-atoms as p38 kinase inhibitors" 米国特許出願公開, US 20020065296, Dumas, J. et al. "Preparation of N-aryl-N'-[(acylphenoxy) phenyl]ureas as raf kinase inhibitors" PCT 国際出願, WO 02 62763, Dumas, J. et al. "Inhibition of raf kinase using quinolyl, isoquinolyl or pyridyl ureas" PCT 国際出願, WO 02 85857, Dumas, J. et al. "Preparation of quinolyl, isoquinolyl or pyridyl-ureas as inhibitors of raf kinase for the treatment of tumors and/or cancerous cell growth" 米国特許出願公開, US 20020165394。上記の全ての特許出願を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0069】
化合物(II)の(III)との反応は、好ましくは溶媒中で実施する。適する溶媒は、反応条件下で不活性である常套の有機溶媒を含む。非限定的な例には、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、鉱油留分などの炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;ピリジンなどの複素芳香族類;ジメチルホルムアミドおよびヘキサメチルリン酸tris−アミドなどの極性溶媒;および、上述の溶媒の混合物が含まれる。トルエン、ベンゼンおよびジクロロメタンが好ましい。
【0070】
化合物(III)は、一般的に、化合物(II)1molにつき1ないし3molの量で用いる;等モル量またはわずかに過剰の化合物(III)が好ましい。
【0071】
化合物(II)の(III)との反応は、一般的に、比較的広い温度範囲内で実施する。一般に、それらは、−20ないし200℃、好ましくは0ないし100℃で、より好ましくは25ないし50℃の範囲で実施する。この反応の各段階は、一般的に大気圧下で実施する。しかしながら、それらを、大気圧以上で、または減圧下で実施することも可能である(例えば、0.5ないし5barの範囲で)。反応時間は、一般的に、比較的幅広い範囲で変動し得る。一般に、反応は、2ないし24時間、好ましくは6ないし12時間の期間後に終了する。
【0072】
式Iの化合物の合成および式Iの化合物の合成に関与する中間体の合成で用い得る合成的変換は、当業者に知られているか、利用可能である。合成的変換の収集物は、以下のような編集物中に見出し得る:
・J. March. Advanced Organic Chemistry, 4th ed.; John Wiley: New York (1992)
・R.C. Larock. Comprehensive Organic Transformations, 2nd ed.; Wiley-VCH: New York (1999)
・F.A. Carey; R.J. Sundberg. Advanced Organic Chemistry, 2nd ed.; Plenum Press: New York (1984)
・T.W. Greene; P.G.M. Wuts. Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd ed.; John Wiley: New York (1999)
・L.S. Hegedus. Transition Metals in the Synthesis of Complex Organic Molecules, 2nd ed.; University Science Books: Mill Valley, CA (1994)
・L.A. Paquette, Ed. The Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis; John Wiley: New York (1994)
・A.R. Katritzky; O. Meth-Cohn; C.W. Rees, Eds. Comprehensive Organic Functional Group Transformations; Pergamon Press: Oxford, UK (1995)
・G. Wilkinson; F.G A. Stone; E.W. Abel, Eds. Comprehensive Organometallic Chemistry; Pergamon Press: Oxford, UK (1982)
・B.M. Trost; I. Fleming. Comprehensive Organic Synthesis; Pergamon Press: Oxford, UK (1991)
・A.R. Katritzky; C.W. Rees Eds. Comprehensive Heterocylic Chemistry; Pergamon Press: Oxford, UK (1984)
・A.R. Katritzky; C.W. Rees; E.F.V. Scriven, Eds. Comprehensive Heterocylic Chemistry II; Pergamon Press: Oxford, UK (1996)
・C. Hansch; P.G. Sammes; J.B. Taylor, Eds. Comprehensive Medicinal Chemistry: Pergamon Press: Oxford, UK (1990)。
【0073】
加えて、合成方法論および関連する話題について頻繁に引用される総説には、Organic Reactions; John Wiley: New York; Organic Syntheses; John Wiley: New York; Reagents for Organic Synthesis: John Wiley: New York; The Total Synthesis of Natural Products; John Wiley: New York; The Organic Chemistry of Drug Synthesis; John Wiley: New York; Annual Reports in Organic Synthesis; Academic Press: San Diego CA; および Methoden der Organischen Chemie (Houben-Weyl); Thieme: Stuttgart, Germany が含まれる。さらに、合成的変換のデータベースには、CAS OnLine または SciFinder を使用して検索し得る Chemical Abstracts、SpotFire を使用して検索し得る Handbuch der Organischen Chemie (Beilstein) および REACCS が含まれる。
【0074】
本発明の化合物の製造は、実施例1−13でさらに例示説明される。
【0075】
本発明の化合物の組成物
本発明はまた、1種またはそれ以上の本発明の化合物を含有する医薬組成物に関する。これらの組成物を利用して、それを必要としている患者に投与することにより、所望の薬理的効果を達成できる。患者は、本発明の目的上、特定の症状または疾患の処置を必要としている、ヒトを含む哺乳動物である。
【0076】
本発明の活性化合物は、全身的および/または局所的に作用し得る。この目的で、それらを、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、もしくは耳投与、または、インプラントまたはステントの形態で、投与できる。活性化合物は、これらの投与様式に適する形態で投与できる。
【0077】
経口投与の適当な形態は、活性化合物を、迅速に、かつ/または、改変もしくは制御された方法で放出することにより機能し、活性化合物を結晶および/または無定形および/または溶解形で含有する、先行技術に準じるもの、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、時間的に遅れて溶解する被覆、または、活性化合物の放出を制御する不溶性被覆を有するもの)、口腔で迅速に崩壊する錠剤またはフィルム/オブラート、または、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤および液剤である。
【0078】
非経腸投与は、吸収段階を回避することにより(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内投与により)、または、吸収を含めることにより(例えば、筋肉内、皮下、皮内または腹腔内投与により)、実施できる。適する非経腸投与形は、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および滅菌散剤の形態の注射および点滴製剤である。
【0079】
他の投与様式に適する投与の形態は、例えば、吸入装置(例えば、粉末吸入器、噴霧吸入器)、点鼻薬、液およびスプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤またはフィルム/オブラート、または、カプセル剤、坐剤、耳用および眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローションまたは振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮または治療用システム、乳状ローション、ペースト、フォーム、散布用散剤(dusting powders)、インプラントまたはステントである。
【0080】
活性化合物は、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤を使用して、当業者に周知の方法で、そして先行技術に準じて、上述の投与形に変換できる。補助剤には、例えば、賦形剤(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトールなど)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエートなど)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および/または天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えばアスコルビン酸などの抗酸化剤)、染料(例えば酸化鉄などの無機色素)および味および/または臭気の矯正剤が含まれる。
【0081】
過剰増殖障害の処置方法
本発明は、また、哺乳動物の癌を含む過剰増殖障害を処置するための、式Iの化合物およびそれらを含有する医薬組成物の使用方法に関する。用語「過剰増殖障害」および/または「癌」は、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭部および頸部、甲状腺、副甲状腺の癌およびそれらの遠隔転移などの固形腫瘍を表すのみならず、リンパ腫、肉腫および白血病も含む。
【0082】
乳癌の例には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌および上皮内小葉癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
呼吸器の癌の例には、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、並びに気管支腺腫および胸膜肺芽腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
脳の癌の例には、脳幹および視床下部(hypophtalmic)のグリオーマ、小脳および大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉および松果体の腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
雄性生殖器の腫瘍には、前立腺および精巣の癌が含まれるが、これらに限定されない。雌性生殖器の腫瘍には、子宮内膜、子宮頸、卵巣、膣および外陰部の癌、並びに子宮の肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
消化器の腫瘍には、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸および唾液腺の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
泌尿器の腫瘍には、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管および尿道の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
眼の癌には、眼球内黒色腫および網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
肝臓癌の例には、肝細胞癌(線維層状の変化(fibrolamellar variant)が有る、または無い、肝細胞癌腫)、胆管癌(肝臓内の胆管の癌腫)および混合型の肝細胞性胆管癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
皮膚癌には、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌および非黒色腫皮膚癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
頭部および頸部の癌には、喉頭/下咽頭/鼻咽頭/口咽頭癌、および口唇および口腔の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
リンパ腫には、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
肉腫には、軟部組織の肉腫、線維肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
これらの障害は、ヒトでは十分に特徴解析されているが、他の動物にも同様の病因で存在し、本発明の化合物および医薬組成物の投与により処置できる。
【0096】
野生型および変異体の両方を含むいかなるrafまたはVEGFRポリペプチドも、本発明に従い調節できる。Rafまたはraf−1キナーゼは、少なくとも3個のファミリーのメンバー、A−Raf、B−Rafおよびc−rafまたはRaf−1を含むセリン/スレオニンキナーゼのファミリーである。例えば、Dhillon and Kolch, Arch. Biochem. Biophys., 404:3-9, 2002 参照。C−rafおよびB−Rafは、本発明の化合物の好ましい標的である。B−Rafの変異(例えば、V599E変異体)の活性化は、黒色腫を含む様々な癌で同定され、本明細書に記載の化合物は、それらの活性の阻害に利用できる。変異は、黒色腫などの癌に関連する、K−RASの変異;BRAF遺伝子の変異、例えば位置599での変異、例えばV599E、および/または位置461、462、463、465、468、593、596、60などでの変異を含む。
【0097】
VEGFR−2は、上記の通り、血管新生において役割を果たし、従って、それを阻害することは、腫瘍および、リウマチ性関節炎、変形性関節症、喘息、肺線維症、加齢性黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症、黄斑変性症および早産児の網膜症(ROP)、子宮内膜症、癌、コーツ病、末梢網膜血管新生、血管新生緑内障、乾癬、水晶体後線維増殖症、血管線維腫、炎症などを含む新血管構造を伴う他の疾患の処置に有用である。
【0098】
本発明の方法は、腫瘍細胞増殖の調節を含み、細胞増殖の阻害を含む。後者は、腫瘍細胞の成長および/または分化を、低減、減少、縮小、遅延することなどを示す。用語「増殖」には、細胞の成長および分裂に関するいかなる過程も含まれ、分化およびアポトーシスが含まれる。上記で論じた通り、rafキナーゼは、細胞の増殖、分化およびアポトーシスに関与する細胞質のシグナル伝達カスケードの活性化において重要な役割を果たす。例えば、研究は、c−raf−1をアンチセンスオリゴヌクレオチドにより阻害することが、細胞の増殖を妨害できることを見出した(上記参照)。いかなる量の阻害も治療的であるとみなされる。
【0099】
加えて、本発明は、本発明の化合物に対する感受性を決定するための患者のスクリーニング方法に関する。例えば、提示している発明は、式Iの化合物で処置するための疾患を有する対象の選択方法に関し、以下の段階、例えば、疾患を有する対象から得られたサンプルにおけるRaf、VEGFR−2または他のキナーゼ受容体の発現または活性を測定すること、および、高レベルの発現または活性を有すると同定される対象に該式Iの化合物を投与すること(ここで、該化合物は、請求項1に記載の式Iの化合物である)の1つまたはそれ以上を、任意の有効な順序で含む。
【0100】
用語「感受性」は、例えば、毒性または他の有害作用などに応答する能力を示すために、幅広く使用される。例えば、本発明は、ある症状を本明細書に開示の化合物により調節できるか否かの決定方法に関し、それは、該症状を有する細胞におけるRaf、VEGFR−2または他のキナーゼタンパク質の発現または活性を測定することを含む。その結果は、対象が本発明の化合物に応答するか否かの決定または予測に使用できる。例えば、症状が腫瘍である場合、その方法は、腫瘍が本発明の化合物に感受性であるか否かを予測するのに使用できる。用語「感受性である」は、腫瘍がそれにより処置され得ること、例えば、腫瘍の退縮または細胞死を引き起こすこと、細胞増殖を阻害すること、腫瘍の成長を阻害すること、腫瘍の転移を阻害することなどを意味する。
【0101】
腫瘍などの症状が本発明の化合物に対して感受性であるか否かは、日常的に決定できる。例えば、その症状を示す細胞または組織(例えば、腫瘍細胞、生検サンプルなど)を、Raf、VEGFR−2または他のキナーゼタンパク質の存在および/または活性についてアッセイできる。高いレベルの発現および/または活性が認められたら、このことは、その対象が本発明の化合物に応答し、それから利益を受けることを示し得る。遺伝子発現のレベル(例えば、mRNAレベル)、遺伝子の増幅または遺伝子産物の活性(例えば、チロシンキナーゼ活性)を、対応する遺伝子およびシグナル伝達経路に関して細胞の状態を特徴解析するために利用できる。例えば、本発明の標的遺伝子はチロシンキナーゼ活性を有し、従って、細胞または組織の状態を評価するためにキナーゼ活性を使用できる。下記の実施例では、それによりリン酸化される基質のレベルを見ることにより活性を測定した。これは、定量的(例えば、同位元素、分光測定法などを使用する)に、または、レベルが視覚的に評価され、+1ないし+4の強度レベルを割り当てられる実施例のように、準定量的に行うことができる。高レベルのリン酸化された基質を有する(および、多数の細胞が高められた活性を示す)細胞または組織は、高レベルのキナーゼ活性を有するとみなすことができ、従って、本発明の化合物による治療の候補であり得る。1つより多い活性を評価でき、いくつかの標的の結果は、対象の症状(例えば腫瘍)が本発明の化合物に対して応答性であるか否かを決定するのに利用できる。
【0102】
標的活性の高いレベルは、対照または他の基準に対して相対的であり得る。例えば、以下の実施例では、高レベルの活性は、通常は実質的なレベルの標的遺伝子を発現しない組織部位における細胞タイプ(間質性)を参照した。従って、高レベルは、細胞が比較に使用される標準または対照よりも統計的に高い量の測定される活性またはリン酸化基質を示す場合であり得る。高レベルは、また、25%またはそれ以上の細胞が標的活性を示す場合であり得る。
【0103】
本方法は、さらに、正常な対照を有するサンプルにおける発現、または、正常または非罹患組織から得られるサンプルにおける発現を比較する段階を含み得る。比較は、標準に対して、電子的形態で(例えば、データベースに対して)など、手動で行い得る。正常な対照は、アッセイで提供される標準的サンプルであり得る;それは、同じ患者から、隣接するが罹患していない組織から得ることができる;または、それは、予め定められた値であり得る、など。遺伝子発現、タンパク質発現(例えば、細胞における量)、タンパク質の活性(例えば、キナーゼ活性)などを決定できる。
【0104】
例えば、癌患者からの生検を、Raf、VEGFR−2または他のキナーゼタンパク質の存在、量および/または活性についてアッセイできる。これらの1つまたはそれ以上の発現または活性の増加は、その癌を本発明の化合物による処置の標的にできることを示し得る。例えば、raf活性を、それがERKのリン酸化を導き、リン酸化ERKをもたらすカスケード(即ちraf/MEK/ERK)を開始させる能力により監視できる。癌におけるリン酸化ERKレベルの上昇は、そのraf活性が上昇していることを示し、それを処置するための本発明の化合物の使用を示唆する。生検サンプルに加えて、リン酸化ERK(他のマーカー)は、血清、血液、脳脊髄液、尿などの他の体液で、例えば末梢血リンパ球(PBL)で、測定することもできる。後者について、下記実施例に記載の通り、ERKリン酸化の阻害は、酢酸ミリスチン酸ホルボールによる活性化の後、抗体を使用して測定できる。
【0105】
加えて、癌を有する患者を、組織が新血管新生を経験しているか否か、そしてどの程度であるかに基づいて、選択および監視できる。これは、上記で論じた通り、例えば、血管マーカー(例えばCD31)の免疫組織化学的検査、VGFRリガンドの循環レベルなどを使用して、評価できる。
【0106】
患者の選択および監視は、体液(例えば血液)中の、VEGFR−2または他のキナーゼ受容体の細胞外部分を含む様々な受容体に由来する、正常なレベルを超える脱落した外部ドメインの出現に基づいて行うこともできる。検出方法は、例えば、細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を使用して、日常的に実施できる。
【0107】
発現の測定は、細胞に存在するか、またはそれから脱落したポリペプチドの存在量を決定または検出すること、並びに、mRNAの存在量がその細胞により製造されるポリペプチドの量を反映するとみなされる場合に、根底にあるmRNAを測定することを含む。さらに、Raf、VEGFR−2および他のキナーゼタンパク質の遺伝子を分析して、異常な発現またはポリペプチド活性の原因である遺伝子の欠陥があるか否かを決定できる。遺伝子配列は、公的に入手可能である;例えば、NM_004333ヒトv−rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子相同体B1(BRAF);NM_002253ヒトVEGFR2。
【0108】
本発明は、また、疾患の処置における本発明の化合物の効力の評価方法も提供し、それは、1つまたはそれ以上の以下の段階、例えば、本発明の化合物で処置された対象から得られるサンプルにおけるRaf、VEGFR−2または他のキナーゼタンパク質の発現または活性を測定すること、および、該発現または活性に対する該化合物の効果を測定することを、任意の有効な順序で含む。測定段階は、既に説明した通りに実施できる。
【0109】
例えば、本発明の化合物で処置された患者から、生検サンプルを取り出し、次いで、上述のシグナル伝達分子の存在および/または活性についてアッセイすることができる。上記で論じた通り、癌組織におけるリン酸化ERKのレベルの低下(例えば、正常な組織または処置前と比較して)は、その化合物がインビボでの効力および治療効果を発揮していることを示す。
【0110】
発現または活性に対する化合物の効果の決定は、組織サンプルと対象または他のタイプの標準との比較段階を実施することを含む。使用できる標準の例には、処置前の組織サンプル、非罹患組織または罹患組織の非罹患領域からの組織サンプル(例えば、形質変換されていない、癌性ではない組織の領域など)などが含まれるがこれらに限定されない。標準は、また、そのマーカーについて確立された正常なレベルの発現を代表する値、値の範囲であり得る。比較は、また、本発明の化合物を用いる処置療法中に少なくとも2つの異なる時点で回収されたサンプルの間で行うこともできる。例えば、薬物処置の開始後様々な時間からサンプルを回収でき、発現および/または活性レベルの分析は、対象の進行/予後、例えば、対象がどのように薬物療法に応答しているかの監視に、使用できる。例えば、毎日、週に2回、毎週、隔週、毎月、毎年、複数の時点(少なくとも2、3、4、8、12回など)の任意の時点を使用できる。
【0111】
本方法は、適切な投与量および投与法、例えば、どれくらいの量の化合物を投与するのか、そして、どのような頻度で投与するのか、を決定するために使用できる。組織のシグナル伝達分子に対するその効果を監視することにより、医師は、適切な処置プロトコール、および、それが例えばシグナル伝達経路の調節または阻害に対する所望の効果を達成しているか否かを、決定できる。例えば、化合物がリン酸化ERKなどのマーカーの量を下げるのに有効でないならば、患者への投与量を増やすか、より頻繁に与えることができる。同様に、化合物がリン酸化ERKまたは疾患状態の他のマーカーのレベルを下げるのに有効であると示されるとき、投与量および/または頻度を減らすことができる。他の処置、例えば放射線照射、化学療法、および、他の物質と組み合わせて化合物を投与できるので、対象の監視を、疾患の進行に対する処置方法の組み合わされた効果を評価するのに使用できる。
【0112】
患者に投与すべき有効成分(式Iの化合物)の総量は、一般的に、1日当たり約0.01mg/体重kgないし約50mg/体重kgの範囲にある。過剰増殖障害の処置に有用な化合物を評価するために知られている標準的な実験室の技法に基づき、標準的な毒性試験により、そして、哺乳動物における上記で特定される症状の処置の決定について標準的な薬理アッセイにより、そして、これらの結果をこれらの症状の処置に使用される既知の薬剤の結果と比較することにより、本発明の化合物および医薬組成物の有効な投与量を当業者により容易に決定できる。投与される有効成分の量は、特定の化合物および用いる用量単位、投与の様式および時間、処置の期間、処置される患者の年齢、性別および一般的状態、処置される症状の性質および程度、薬物代謝および排出の速度、可能な薬物の組合せおよび薬物−薬物相互作用などの考慮事項に応じて、幅広く変動し得る。
【0113】
本発明の化合物および医薬組成物を、単独の物質として、または、組合せが許容できない有害作用をもたらさない場合、1種またはそれ以上の他の治療と組み合わせて、投与できる。例えば、それらは、細胞傷害性物質、シグナル伝達阻害剤と、または、他の抗癌剤または療法と、そして、それらの混合物および組合せと、組み合わせることができる。
【0114】
ある実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物を、細胞傷害性抗癌剤と組み合わせることができる。そのような物質の例は、the Merck Index 第11版(1996)に見出すことができる。これらの物質には、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、コラスパーゼ(colaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(adriamycine))、エピルビシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、6−メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、チオグアニン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシンが非限定的に含まれる。
【0115】
本発明の化合物および医薬組成物と使用するのに適する他の細胞傷害性薬物には、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (Ninth Edition, 1996, McGraw-Hill)で、新生物性疾患の処置に使用できると認められている化合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの物質には、アミノグルテチミド、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、5−アザシチジン、クラドリビン、ブスルファン、ジエチルスチルベストロール、2',2'−ジフルオロデオキシシチジン、ドセタキセル、エリスロヒドロキシノニルアデニン(erythrohydroxynonyladenine)、エチニルエストラジオール、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロデオキシウリジン一リン酸塩、リン酸フルダラビン、フルオキシメステロン、フルタミド、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、イダルビシン、インターフェロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、ミトタン、パクリタキセル、ペントスタチン、N−ホスホノアセチル−L−アスパラギン酸(PALA)、プリカマイシン、セムスチン、テニポシド、プロピオン酸テストステロン、チオテパ、トリメチルメラミン、ウリジンおよびビノレルビンが非限定的に含まれる。
【0116】
本発明の化合物および医薬組成物と組み合わせて使用するのに適する他の細胞傷害性抗癌剤には、オキサリプラチン、ゲムシタビン、カペシタビン、エポシロンおよびその天然または合成誘導体、テモゾロミド(Quinn et al., J. Clin. Oncology 2003, 21(4), 646-651)、トシツモマブ(ベキサール(Bexxar))、トラベデクチン(trabedectin)(Vidal et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3181)およびキネシン紡錘体タンパク質Eg5の阻害剤(Wood et al., Curr. Opin. Pharmacol. 2001, 1, 370-377)などの、新しく発見された細胞毒素(cytotoxic principle)も含まれる。
【0117】
他の実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物は、他のシグナル伝達阻害剤と組み合わせることができる。特に関心があるのは、EGFR、HER−2およびHER−4などのEGFRファミリー(Raymond et al., Drugs 2000, 60 (Suppl.1), 15-23; Harari et al., Oncogene 2000, 19 (53), 6102-6114)およびそれらの各々のリガンドを標的とするシグナル伝達阻害剤である。そのような物質の例には、ハーセプチン(トラスツズマブ)、エルビタクス(Erbitux)(セツキシマブ)およびパーツズマブ(pertuzumab)などの抗体治療剤が非限定的に含まれる。そのような治療剤の例には、また、ZD-1839 / Iressa (Baselga et al., Drugs 2000, 60 (Suppl. 1), 33-40)、OSI-774 / Tarceva (Pollack et al. J. Pharm. Exp. Ther. 1999, 291(2), 739-748)、CI-1033 (Bridges, Curr. Med. Chem. 1999, 6, 825-843)、GW-2016 (Lackey et al., 92nd AACR Meeting, New Orleans, March 24-28, 2001, abstract 4582)、CP-724,714 (Jani et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3122)、HKI-272 (Rabindran et al., Cancer Res. 2004, 64, 3958-3965) およびEKB-569 (Greenberger et al., 11th NCI-EORTC-AACR Symposium on New Drugs in Cancer Therapy, Amsterdam, November 7-10, 2000, abstract 388)などの低分子キナーゼ阻害剤も非限定的に含まれる。
【0118】
他の実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物は、分断されたキナーゼドメインのファミリーの受容体キナーゼ(VEGFR、FGFR、PDGFR、flt−3、c−kit、c−fmsなど)およびそれらの各々のリガンドを標的とする他のシグナル伝達阻害剤と組み合わせることができる。これらの物質には、アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ)などの抗体が非限定的に含まれる。これらの物質には、また、STI-571 / Gleevec (Zvelebil, Curr. Opin. Oncol., Endocr. Metab. Invest. Drugs 2000, 2(1), 74-82)、PTK-787 (Wood et al., Cancer Res. 2000, 60(8), 2178-2189)、SU-11248 (Demetri et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3001)、ZD-6474 (Hennequin et al., 92nd AACR Meeting, New Orleans, March 24-28, 2001, abstract 3152)、AG-13736 (Herbst et al., Clin. Cancer Res. 2003, 9, 16 (suppl 1), abstract C253)、KRN-951 (Taguchi et al., 95th AACR Meeting, Orlando, FL, 2004, abstract 2575)、CP-547,632 (Beebe et al., Cancer Res. 2003, 63, 7301-7309)、CP-673,451 (Roberts et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 3989)、CHIR-258 (Lee et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 2130)、MLN-518 (Shen et al., Blood 2003, 102, 11, abstract 476)およびAZD-2171 (Hennequin et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 4539)などの低分子阻害剤も非限定的に含まれる。
【0119】
他の実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物は、Raf/MEK/ERK伝達経路(Avruch et al., Recent Prog. Horm. Res. 2001, 56, 127-155)、またはPKB(akt)経路(Lawlor et al., J. Cell Sci. 2001, 114, 2903-2910)の阻害剤と組み合わせることができる。これらには、PD-325901 (Sebolt-Leopold et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 4003)およびARRY-142886 (Wallace et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 3891)が非限定的に含まれる。
【0120】
他の実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤と組み合わせることができる。そのような物質の例には、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、LAQ-824 (Ottmann et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3024)、LBH-589 (Beck et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3025)、MS-275 (Ryan et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 2452) および FR-901228 (Piekarz et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, abstract 3028) が非限定的に含まれる。
【0121】
他の実施態様では、本発明の化合物および医薬組成物は、プロテオソーム阻害剤およびm−TOR阻害剤などの他の抗癌剤と組み合わせることができる。これらには、ボルテゾミブ (Mackay et al., Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 2004, 23, Abstract 3109)およびCCI-779 (Wu et al., Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004, 45, abstract 3849) が非限定的に含まれる。
【0122】
一般的に、本発明の化合物または医薬組成物との組合せにおける、細胞傷害性および/または細胞分裂停止性の抗癌剤の使用は、以下に役立つ:
(1)各物質を単独で投与するのと比較して、腫瘍の成長を低減させるのにより良好な効力を達成するか、または、腫瘍を除去しさえする、
(2)投与される物質がより少ない量で投与されることを提供する、
(3)有害な薬理的合併症が単剤の化学療法およびある種の併用療法で観察されるものよりも少ない、患者に良好に耐容される化学療法の処置プロトコールを提供する、
(4)哺乳動物、特にヒトにおいて、より幅広い範囲の様々な癌のタイプの処置を提供する、
(5)処置される患者の間に、より高い応答率を提供する、
(6)標準的な化学療法の処置と比較して、処置される患者の間により長い生存時間を提供する、
(7)腫瘍の進行により長い時間をもたらす、および/または、
(8)他の癌作用物質の組合せが拮抗作用を奏する既知の例と比較して、単独で使用される物質のものと少なくとも同程度に良好な効力および耐容性の結果を達成する。
【0123】
当業者は、前述の情報および当分野で入手可能な情報を使用して、本発明を最大限利用できると考えられる。本明細書に記載の本発明の精神または範囲から逸脱せずに、本発明に変更および改変を行い得ることが、当業者に明らかである。
上記および下記で引用する全ての刊行物、出願および特許は、出典明示により本明細書の一部とする。
【実施例】
【0124】
実施例
本明細書で使用される略号
【表1】

【0125】
以下の実施例の収率の百分率は、最低のモル量で使用された出発成分を参照する。
【0126】
LC−MSの条件:2つの Gilson 306 ポンプ、Gilson 215 Autosampler、Gilson ダイオードアレイ検出器、YMC Pro C-18 カラム (2 x 23 mm, 120 A)およびz−スプレーエレクトロスプレーイオン化を用いる Micromass LCZ シングル四重極型質量分析計を備えた Gilson HPLC システムを使用して、HPLC−エレクトロスプレー質量分析(HPLC ES−MS)を得た。120−800amuで、2秒間にわたりスペクトルをスキャンした。アナログチャネルとして、ELSD(蒸発光散乱検出器)のデータも獲得した。バッファーA:0.02%TFAを含む水中の2%アセトニトリル、および、バッファーB:0.02%TFAを含むアセトニトリル中の2%水を用いて、1.5mL/分でグラジエント溶離を使用した。サンプルを以下の通りに溶離した:0.5分間にわたり90%A、3.5分間かけて95%Bまで勾配状、95%Bで0.5分間維持、次いで、0.1分間かけてカラムを初期条件に戻す。総ラン時間は4.8分間である。
【0127】
6−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミンの製造
【化11】

本方法は、US5,756,275およびWO02/38569に記載の方法から派生した。250mLの丸底フラスコ中、6−トリフルオロメチル−4−ピリミジノール(10g、60.9mmol)を、オキシ塩化リン70mL(0.73mol)に溶解した。溶液を7時間還流で加熱した。次いで、冷却した反応溶液を、30%水酸化アンモニウム200mLに徐々に添加し、得られた混合物を終夜室温で撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(2x100mL)で抽出し、合わせた抽出物を乾燥させ(MgSO)、真空で蒸発させ、6−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミン(1.4g、収率14%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.50 (s, 1 H), 7.60 (broad s, 2 H), 6.90 (s, 1 H); LC-MS m/z 164.1 [M+H]+.
【0128】
実施例1
4−{3−フルオロ−4−[3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド
【化12】

8mLのスクリューキャップバイアル中、4−アミノ−6−トリフルオロメチルピリミジン(170mg、1.04mmol)を、ジクロロエタン(0.35mL)中の1,1'−カルボニルジイミダゾール(169mg、1.04mmol)のスラリーに添加した。混合物を60℃で30時間加熱した。次いで、4−(4−アミノ−3−フルオロ−フェノキシ)−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド(170mg、1.04mmol)を添加し、混合物を終夜60℃で加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、固体残渣をメタノールで洗浄し、表題生成物を白色固体として得た(139mg、収率30%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.6 (s, 1 H), 9.7 (s, 1 H), 9.0 (s, 1 H), 8.8 (s, 1 H), 8.5 (d, 1 H), 8.20 (m, 2 H), 7.40 (m, 2 H), 7.18 (d, 1 H), 7.10 (d, 1 H), 2.80 (s, 3 H). LC-MS m/z 451.3 [M+H]+.
【0129】
実施例2
4−{4−[3−(6−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イル)−ウレイド]−フェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド
【化13】

表題化合物を、4−{3−フルオロ−4−[3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドと同じ方法で、4−(4−アミノ−3−フルオロ−フェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドを4−(4−アミノフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドに置き換えて、製造した。LC-MS m/z 433.1 [M+H]+; TLC Rf = 0.8 (EtOAc).
【0130】
実施例3
4−{4−[3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}−2−メチルピリジン
【化14】

表題化合物を、4−{3−フルオロ−4−[3−(6−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イル)−ウレイド]−フェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドと同じ方法で、4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシピリジン−2−カルボン酸メチルアミドを4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンに置き換えて、製造した。LC-MS m/z 389.9 [M+H]+; TLC Rf = 0.45 (EtOAc).
【0131】
実施例4
1−[2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニル]−3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレア
【化15】

無水THF(4mL)中の2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミン(100mg、0.61mmol)およびN,N−ジエチルイソプロピルアミン(0.13mL、0.74mmol、1.2eq)の溶液に、トリフェニルホスフィン(67.3mg、0.23mmol、0.37eq)を一度に添加した。反応混合物を75℃で撹拌した。2.5時間後、無水THF(2.5mL)中の4−アミノ−6−トリフルオロピリミジン(133.8mg、0.61mmol、1.0eq)の溶液を添加し、反応混合物を75℃で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を、EtOAcおよび飽和水性重炭酸ナトリウム溶液に分配した。有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗製油状物を、中速液体クロマトグラフィー(Biotage)で精製し、75%EtOAc/ヘキサンで溶離した。DCM/ヘキサンから結晶化し、表題化合物(60mg、24%)を淡黄色固体として得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.54 (broad s, 1 H), 9.69 (broad s, 1H), 9.02 (s, 1H), 8.32 (d, J = 6.0 Hz, 1 H), 8.19 ないし 8.12 (m, 2H), 7.28 (dd, J = 11.7, 2.7 Hz, 1H), 7.02 (ddd, J = 9.0, 3.0,1.2 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.475 (dd, J = 6.0, 2.7 Hz, 1H), 2.40 (s, 3H); LC-MS m/z 408 [M+H]+, RT = 2.30 分。
【0132】
実施例5
1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレア
【化16】

表題化合物を、1−[2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニル]−3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレアについて記載したのと同じ方法で、2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンを4−(ピリジン−4−イルオキシ)−フェニルアミンに置き換えて、製造した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.21 (broad s, 1H), 9.68 (broad s, 1H), 8.99 (s, 1H), 8.44 ないし 8.43 (broad s, 2H), 8.16 (d, J = 1.2 Hz, 1 H), 7.60 ないし 7.57 (m, 2H), 7.18 ないし 7.14 (m, 2H), 6.88 (dd, J = 4.5, 1.5 Hz, 2H); LC-MS m/z 376 [M+H]+, RT = 2.17 分.
【0133】
実施例6
1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレア
【化17】

表題化合物を、1−[2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニル]−3−(6−トリフルオロメチルピリミジン−4−イル)ウレアについて記載したのと同じ方法で、2−フルオロ−4−(2−メチルピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンを3−フルオロ−4−(2−クロロ−ピリジン−4−イル−オキシ)フェニルアミンに置き換えて、製造した。1H-NMR (DMSO-d6), 10.30 (broad s, 1 H), 9.88 (broad s, 1 H), 9.01 (s, 1H), 8.29 (d, J = 6.0 Hz, 1 H), 8.15 (d, J = 1.2 Hz, 1 H), 7.75 (dd, J = 12.6, 2.7 Hz, 1 H), 7.40 (t, J = 8.7 Hz, 1 H), 7.34 ないし 7.29 (m, 1 H), 7.06 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 6.97 (dd, J = 5.7, 2.4 Hz, 1H); LC-MS m/z 428, [M+H]+, RT = 3.77 分.
【0134】
実施例7
4−{3−フルオロ−4−[3−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド
【化18】

THF(0.7mL)中の6−アミノ−4−t−ブチルピリミジン(20.0mg;0.13mmol)、トリホスゲン(14.52mg;0.05mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(20.51mg;0.16mmol)の溶液を、70℃で4時間加熱した。次いで、DMF(1.5mL)中の4−(4−アミノ−3−フルオロ−フェノキシ)−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド(34.5mg;0.13mmol)の溶液を添加し、反応混合物を70℃でさらに8時間加熱し、次いで、EtOAcと飽和水性NaHCOの間で抽出した。有機層を乾燥させ、減圧下で蒸発させ、粗製油状物を得、それをHPLCで精製し、表題化合物(14mg、9%)を得た。1H-NMR (CD3OD) δ 8.73 (s, 1 H), 8.48 (d, J = 4.0 Hz, 1 H), 8.29 (t, J = 4.0 Hz, 1 H), 7.57 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 7.58-7.08 (m, 3H), 7.01 (s, 1 H), 2.94 (s, 3H), 1.36 (s, 9H). LC-MS m/z 439 [M+H]+.
【0135】
実施例8
1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレア
【化19】

無水1,2−ジクロロエタン(1.9mL)中の6−アミノ−4−tert−ブチルピリミジン(150.0mg;0.99mmol)の溶液に、1,1'−カルボニルジ(1,2,4−トリアゾール)(195.4mg、1.19mmol、1.2eq)を添加し、反応混合物を65℃で3日間撹拌した。次いで、無水1,2−ジクロロエタン(1.9mL)中の4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボニトリル(227.4mg;0.99mmol、1.0eq)の溶液を添加し、反応混合物を65℃で5時間加熱した。反応をEtOAcで希釈し、有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させ、粗製油状物を得た。DCMからのトリチュレーションにより、表題化合物(211mg、52%)を白色固体として得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.37 (broad s, 1H), 10.08 (broad s, 1 H), 8.75 (d, J = 1.2 Hz, 1 H), 8.59 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.25 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 2.7 Hz, 1 H), 7.59 (s, 1H), 7.37 (dd, J = 12.0, 2.7 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 5.4, 2.4 Hz, 1H), 7.08 (ddd, J = 9.0, 2.7, 1.5 Hz, 1 H), 1.26 (s, 9H); LC-MS m/z 407 [M+H]+, RT = 3.17 分
【0136】
実施例9
4−{4−[3−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸アミド
【化20】

2:1v/vアセトン/水(11mL)中の1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロ−フェニル]ウレア(141mg、0.35mmol)および過炭酸ナトリウム(25%Hを含む)(218mg、1.4mmol、4.0eq)の混合物を、60℃で16時間撹拌した。反応を酢酸エチルと水に分配し、水層を酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。合わせた有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。メタノールからのトリチュレーションにより、表題化合物(63mg、43%)を白色固体として得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.32 (broad s, 1 H), 10.08 (broad s, 1H), 8.75 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.51 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.23 (t, J = 9.3 Hz, 1 H), 8.12 (broad s, 1H), 7.71 (broad s, 1H), 7.61 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 11.4, 2.4 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 5.7, 2.7 Hz, 1H), 7.08 (ddd, J = 9.0, 2.7, 1.5 Hz, 1H), 1.26 (s, 9H); LC-MS m/z 425 [M+H]+, RT = 3.16 分.
【0137】
実施例10
4−{4−[3−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボチオ酸(carbothioic acid)アミド
【化21】

表題化合物を、1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレアについて記載したのと同じ方法で、4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボニトリルを4−(4−アミノフェノキシ)ピリジン−2−チオアミドで置き換えて、製造した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.32 (broad s, 1H), 10.20 (broad s, 1H), 10.13 (s, 1H), 9.93 (broad s, 1H), 9.72 (s, 1H), 8.74 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.46 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 1.2 Hz, 1 H), 7.64 ないし 7.60 (m, 2H), 7.21 ないし 7.17 (m, 2H), 7.12 (dd, J = 5.7, 3.0 Hz, 1H), 1.26 (s, 9H); LC-MS m/z 423 [M+H]+, RT = 3.39 分.
【0138】
実施例11
1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレア
【化22】

表題化合物を、1−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)−3−[4−(2−シアノピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロフェニル]ウレアについて記載したのと同じ方法で、4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボニトリルを4−(4−アミノフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルカルバモイル−メチルアミドで置き換えて、製造した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.10 (broad s, 1 H), 9.71 (broad s, 1 H), 8.87 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 8.73 (d, J = 1.5 Hz, 1 H), 8.52 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.85 ないし 7.80 (m, 1H), 7.67 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.63 ないし 7.60 (m, 2H), 7.35 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.19 ないし 7.15 (m, 3H), 3.82 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 2.55 (d, J = 4.2 Hz, 3H), 1.25 (s, 9H); LC-MS m/z 478 [M+H]+, RT = 2.47 分.
【0139】
実施例12
4−{3−フルオロ−4−[3−(6−メトキシピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド
【化23】

THF(2.0mL)中の6−アミノ−4−メトキシピリミジン(50.0mg;0.39mmol)、トリホスゲン(43.0mg;0.14mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(60.7mg;0.47mmol)の溶液を、70℃で4時間加熱した。次いで、DMF(1.0mL)中の4−(4−アミノ−3−フルオロ−フェノキシ)−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド(102.3mg;0.39mmol)の溶液を添加し、反応混合物を70℃でさらに8時間加熱し、次いで、EtOAcと飽和水性NaHCOの間で抽出した。有機層を乾燥させ、蒸発させ、粗製油状物を得、それをHPLCにより精製し、表題化合物(14mg、9%)を得た。1H-NMR (CD3OD) δ 8.36 (s, 1H), 8.35 (s, 1 H), 8.14 (t, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.46 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 7.00-6.86 (m, 3H), 6.60 (s, 1 H), 3.86 (s, 3H). 2.83 (s, 3H); LC-MS m/z 413 [M+H]+.
【0140】
実施例13
4−{4−[3−(6−フェニルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボチオ酸アミド
【化24】

表題化合物を、4−{4−[3−(6−tert−ブチルピリミジン−4−イル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボチオ酸アミドについて記載したのと同じ方法で、6−アミノ−4−tert−ブチルピリミジンを6−アミノ−4−フェニルピリミジンに置き換えて、製造した。 1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.18 (broad s, 1H), 10.04 (broad s, 1H), 9.91 (broad s, 1H), 9.85 (broad s, 1H), 8.78 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 5.7Hz, 1H), 8.15 (s, 1 H), 8.06 ないし 8.02 (m, 2H), 7.94 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.54 ないし 7.52 (m, 3H), 7.20 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.12 (dd, J = 5.7, 3.0 Hz, 1H); LC-MS m/z 443 [M+H]+, RT = 3.19分.
【0141】
実施例14
c−raf(raf−1)生化学アッセイ
Lckキナーゼにより活性化(リン酸化)されたc−raf酵素を用いて、c−raf生化学アッセイを実施した。ポリヘドリンプロモーターの制御下で、GST−c−raf(アミノ酸302ないしアミノ酸648)およびLck(全長)を発現するバキュロウイルスで細胞を共感染させることにより、Lckにより活性化されたc−raf(Lck/c−raf)をSf9昆虫細胞で産生した。両バキュロウイルスは、感染効率2.5で使用し、感染の48時間後に細胞を回収した。
【0142】
GST−MEK−1(全長)融合タンパク質を発現するバキュロウイルスを感染効率5で細胞に感染させ、細胞を感染の48時間後に回収することにより、MEK−1タンパク質をSf9昆虫細胞で産生した。GST−c−raf302−648およびGST−MEK−1に、同様の精製方法を使用した。
【0143】
形質移入された細胞を、湿重量で100mg/mLの細胞生物量で、10mMリン酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウム、pH7.3、0.5% Triton X-100 およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するバッファーに懸濁した。細胞を Polytron ホモジナイザーで破砕し、30,000gで30分間遠心分離した。30,000gの上清を GSH-Sepharose にアプライした。その樹脂を、50mM Tris、pH8.0、150mM NaClおよび0.01% Triton X-100 を含有するバッファーで洗浄した。GSTタグ付きタンパク質を、100mM Glutathione、50mM Tris、pH8.0、150mM NaClおよび0.01% Triton X-100 を含有する溶液で溶離した。精製されたタンパク質を、20mM Tris、pH7.5、150mM NaClおよび20%グリセロールを含有するバッファーに透析した。
【0144】
試験化合物を、保存濃度の3倍希釈を使用して、DMSOに連続希釈し、典型的には50μMないし20nMの範囲とした(アッセイにおける最終濃度は、1μMないし0.4nMの範囲にある)。96ウェルの Costar ポリプロピレンプレート (Costar 3365) における放射性フィルターマット(filtermat)アッセイとして、c−Raf生化学アッセイを実施した。プレートに、50mM HEPES pH7.5、70mM NaCl、Lck/c−raf80ngおよびMEK−1 1μgを含有する溶液75μLを入れた。続いて、連続希釈した個々の化合物2μLを、ATPの添加に先立ち反応に添加した。5μM ATPおよび0.3μCi[33P]−ATPを含有するATP溶液25μLで反応を開始した。プレートを密封し、32℃で1時間インキュベートした。4%リン酸50μLの添加により反応をクエンチし、Wallac Tomtec Harvester を使用して、P30フィルターマット(PerkinElmer)上に回収した。フィルターマットを、最初に1%リン酸で、二番目に脱イオンHOで洗浄した。フィルターをマイクロ波で乾燥し、シンチレーション液に浸し、Wallac 1205 Betaplate Counter (Wallac Inc., Atlanta, GA, U.S.A.) で読み取った。結果をパーセント阻害として表した。
%阻害=[100−(Tib/T)]x100、式中、
ib=(阻害剤ありのカウント/分)−(バックグラウンド)
=(阻害剤なしのカウント/分)−(バックグラウンド)
【0145】
実施例15
flk−1(マウスVEGFR−2)生化学アッセイ
このアッセイは、96ウェルの不透明なプレート (Costar 3915) において、TR−FRET様式で実施した。反応条件は、以下の通りである:10μM ATP、25nMポリGT−ビオチン、2nM Eu−標識リン酸化−TyrAb、10nM APC、7nM flk−1(キナーゼドメイン)、1%DMSO、50mM HEPES pH7.5、10mM MgCl、0.1mM EDTA、0.015%BRIJ、0.1mg/mL BSA、0.1%メルカプト−エタノール)。反応は、酵素の添加により開始される。各ウェルの最終反応体積は、100μLである。Perkin Elmer Victor V Multilabel カウンターで、反応開始の約1.5−2.0時間後に、615および665nMの両方でプレートを読み取った。シグナルを、各ウェルにつき、比:(665nm/615nm)10000として算出した。
【0146】
flk−1キナーゼに対するIC50の生成のために、酵素による開始に先立ち試験化合物を添加した。50%DMSO/50%dHO溶液中、1:3に連続希釈した化合物で、50倍の保存プレートを作成した。その保存溶液2μLをアッセイに添加することにより、1%DMSO中、10μM−4.56nMの範囲の最終化合物濃度を得た。パーセント阻害によりデータを表した:%阻害=100−((阻害剤ありのシグナル−バックグラウンド)/(阻害剤なしのシグナル−バックグラウンド))100。
【0147】
実施例1−13の化合物は、c−rafおよびflk−1生化学アッセイのいずれかまたは両方で、有意な阻害(IC50<10μM)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Aはピリミジンであり、
これは、独立してR、OR、S(O)、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノまたはニトロである1個ないし3個の置換基により置換されていることもあり;
Bは、フェニル、ナフチルまたはピリジルであり、これらは、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし4個の置換基で置換されていることもあり;
Lは、
(a)−(CH−O−(CH−、
(b)−(CH−(CH−、
(c)−(CH−C(O)−(CH−、
(d)−(CH−NR−(CH−、
(e)−(CH−NRC(O)−(CH−、
(f)−(CH−S−(CH−、または、
(g)−(CH−C(O)NR−(CH
である架橋基であり、整数mおよびlは、0−4から独立して選択され、−(CH−(CH−は、mおよびlが0であるとき、単結合であり;
Mは、ピリジンまたはピリミジン環であり、これは、
(1)C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
(2)C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル;
(3)C−Cアルコキシ;
(4)ヒドロキシ;
(5)アミノ;
(6)C−Cアルキルアミノ;
(7)C−Cジアルキルアミノ;
(8)ハロゲン;
(9)ニトロ;
(10)C(O)NR
(11)C(O)OR
(12)C(O)R
(13)CN;
(14)C(S)NR
(15a)C(O)NR−NR
(15b)C(O)NR−R−C(O)NR
(16)テトラゾリル;
(17)イミダゾリル;
(18)イミダゾリン−2−イル;
(19)1,3,4−オキサジアゾリン−2−イル;
(20)1,3−チアゾリン−2−イル;
(21)5−チオキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−チアゾリン−2−イル;
(22)5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾリン−2−イル;または
(23)式
【化2】

の基、
から独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていることもあり;
、R、R、RおよびRの各々は、独立して、
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、
(c)フェニル、
(d)C−Cフェニル−アルキル、
(e)ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、または、
(f)−(CH−X
であり、置換基Xは、飽和、部分飽和または芳香族性である、酸素、窒素および硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含有する5員または6員の複素環式環、または、O、NおよびSからなる群から選択される1個ないし4個のヘテロ原子を有する8員ないし10員の二環式ヘテロアリールであり;
およびRは、一体となって、5員または6員の脂肪族環を形成していてもよく、これは、N、OまたはSから選択される原子により中断されていてもよく、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし3個の置換基で置換されていることもあり;
は、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、
(c)シアノ、
(d)ニトロ、
(e)ペルハロ置換までのC−Cの直鎖または分枝鎖のハロ−置換アルキル、または、
(f)−C(O)R、ここで、Rは、C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキルである、
であり;
は、水素、または、C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキルであり;
変数qは、整数0、1、2、3または4であり、変数pは、整数0、1または2である]
の化合物、その塩、代謝物、プロドラッグまたはジアステレオ異性体(単離された立体異性体または立体異性体の混合物のいずれか)。
【請求項2】
Bがフェニルであり、これは、独立してC−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノまたはニトロである1個ないし4個の置換基で置換されていることもある、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lが−O−または−S−である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Mがピリジンであり、これは、
(1)C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
(2)C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル;
(3)C−Cアルコキシ;
(4)ヒドロキシ;
(5)アミノ;
(6)C−Cアルキルアミノ;
(7)C−Cジアルキルアミノ;
(8)ハロゲン;
(9)ニトロ;
(10)C(O)NR
(11)C(O)OR
(12)C(O)R
(13)CN;
(15a)C(O)NR−NR;または
(15b)C(O)NR−R−C(O)NR
の基から独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていることもある、請求項1、請求項2または請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、または、
(c)シアノ、または、
(d)ニトロ
である、請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、独立して:
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、または、
(c)シアノ
である、請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
式(III)
【化3】

[式中、
Raは、R、ORまたはシアノであり;
そして、B、LおよびMは、請求項1に記載の通りである]
である請求項1に記載の化合物、その塩、代謝物、プロドラッグまたはジアステレオ異性体(単離された立体異性体または立体異性体の混合物のいずれか)。
【請求項8】
式(IV)
【化4】

[式中、
Raは、R、ORまたはシアノであり;
各Rcは、独立して、水素、ハロゲン、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシまたはヒドロキシであり;
そして、LおよびMは、請求項1に記載の通りである]
である請求項1に記載の化合物、その塩、代謝物、プロドラッグまたはジアステレオ異性体(単離された立体異性体または立体異性体の混合物のいずれか)。
【請求項9】
式(V)
【化5】

[式中、
Raは、R、ORまたはシアノであり;
各Rcは、独立して、水素、ハロゲン、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシまたはヒドロキシであり;
そして、Mは、請求項1に記載の通りである]
である請求項1に記載の化合物、その塩、代謝物、プロドラッグまたはジアステレオ異性体(単離された立体異性体または立体異性体の混合物のいずれか)。
【請求項10】
Mがピリジンである、請求項8または請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Mが、C(O)NRまたはCNにより置換されているピリジンである、請求項8または請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
MがC(O)NRにより置換されているピリジンである、請求項8または請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
MがC(O)NHCHまたはC(O)NHにより置換されているピリジンである、請求項8または請求項9に記載の化合物。
【請求項14】
式(II)
【化6】

[式中、
Raは、R、ORまたはシアノであり;
各Rcは、独立して、水素、ハロゲン、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル、C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル、C−Cアルコキシまたはヒドロキシであり;
Rbは、
(1)C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
(2)C−Cの直鎖または分枝鎖のハロアルキル;
(3)C−Cアルコキシ;
(4)ヒドロキシ;
(5)アミノ;
(6)C−Cアルキルアミノ;
(7)C−Cジアルキルアミノ;
(8)ハロゲン;
(9)ニトロ;
(10)C(O)NR
(11)C(O)OR
(12)C(O)R
(13)CN;
(14)C(S)NR
(15)C(O)NR−RC(O)NR;または、
(16)水素;
であり、
、RおよびRの各々は、独立して、
(a)水素、
(b)C−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、または、
(c)フェニル
であり、
そして、Rは、水素またはC−Cの直鎖、分枝鎖または環状のアルキルである]
の化合物、その塩、代謝物、プロドラッグまたはジアステレオ異性体(単離された立体異性体または立体異性体の混合物のいずれか)。
【請求項15】
Rbが、
−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;
−Cアルコキシ;
ハロゲン;
C(O)NR
CN;
C(S)NRまたは
C(O)NR−RC(O)NR
である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Rbが、C−Cの直鎖または分枝鎖のアルキル;ハロゲン;C(O)NRまたはCNである、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
Rcが独立して水素またはフッ素である、請求項14、請求項15または請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
RbがC(O)NRまたはCNである、請求項14、請求項15、請求項16または請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
RbがC(O)NRである、請求項14、請求項15、請求項16または請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
RbがC(O)NHCHまたはC(O)NHである、請求項14、請求項15、請求項16または請求項17に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−521449(P2009−521449A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547428(P2008−547428)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048382
【国際公開番号】WO2007/075650
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】