説明

癌の診断及び治療のための組成物及び方法

この出願は、哺乳動物例えばヒトにおける、腫瘍及び癌の、mir17−92クラスターを利用する診断、予防及び治療のための方法及び組成物に関係する。この出願は、更に、癌の診断、予防及び治療に有用な化合物及び試薬を同定する方法にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
この出願は、2005年5月2日出願の米国暫定特許出願第60/677,090号(この出願を、本明細書中に、参考としてそっくりそのまま援用する)の利益を請求するものである。
【0002】
癌は、米国における主要な罹患率である。例えば、1996年には、米国癌学会は、1,359,150人の人々が悪性新生物と診断され、554,740人がこれらの病気の一つにより死亡すると見積もった。癌は、全米国人の死亡の23.9パーセントの原因であり、死因としては心疾患(33パーセント)にのみ超されている。不幸にも、癌の死亡率は増加しており、今世紀において、近々、日本におけるように、米国における死亡原因の首位となることが予想されている。
【0003】
癌は、正常な細胞の分裂、成長及び分化を超える無秩序な制御を特徴として共有している。それらの最初の症状発現は、極めて不均一であり、事実上、身体の各臓器及び組織において現れる癌の種類は70種を超える。その上、同様に分類された癌の種類の幾つかは、多数の異なる分子病を表しうる。不幸にも、幾つかの癌は、病気の経過が進んで治療が一層困難になるまで、事実上、無症候性でありえて、予後が悪い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌の治療は、典型的には、外科手術、化学療法及び/又は放射線療法を包含する。癌患者のほぼ50%がこれらの方法を用いて効果的に治療することができるとはいえ、現行の治療法は、すべて、生活の質を低下させる重い副作用を含んでいる。新規な治療標的及び診断マーカーを同定することは、癌患者の診断、予後及び治療を改善するために望ましいことである。本願では、かかる新規な治療標的及び診断マーカーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明の一つの面は、哺乳動物における癌を診断する方法であって、該方法は、a)前癌又は癌であることが疑われる哺乳動物の領域からの生物学的試料中のmir17−92シストロンのコピー数を測定し、それにより試験遺伝子コピー数についてのデータを生成すること;及びb)その試験遺伝子コピー数を対照遺伝子コピー数についてのデータと比較することを含み、該生物学的試料中の該遺伝子の対照と比較しての増幅がその哺乳動物における前癌病変又は癌の存在を示す当該方法を提供する。
【0006】
本発明の他の面は、哺乳動物における癌を診断する方法であって、該方法は、a)前癌又は癌であることが疑われる哺乳動物の領域からの生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされるmiRNAの少なくとも一つの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;及びb)その試験レベルを、mir17−92シストロンによりコードされる各miRNAについての対照レベルについてのデータと比較することを含み、該生物学的試料のmir17−92シストロンの少なくとも一つのメンバーについての対照レベルと比較して上昇した試験レベルがその哺乳動物における前癌病変又は癌の存在を示す当該方法を提供する。
【0007】
本発明の更なる面は、mir17−92シストロンのインヒビターを同定する方法であって、該方法は、a)候補の薬剤をmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAを発現する癌細胞と接触させること;b)その細胞中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;及びc)mir17−92シストロンによりコードされる各mirRNAの試験レベルを候補の薬剤を接触させる前の癌細胞中のそれぞれのレベルと比較することを含み、試験レベルにおける少なくとも一つのmiRNAのレベルの低下が、その候補の薬剤がmir17−92シストロンのインヒビターであることを示す当該方法を提供する。
【0008】
本発明の他の面は、mir17−19bのインヒビターを同定する方法であって、該方法は、a)候補の薬剤をmir17−19b(先端切除されたmir17−92シストロン)によりコードされる少なくとも一つのmiRNAを発現する癌細胞と接触させること;b)その細胞中でmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;及びc)mir17−19bによりコードされる各miRNAの試験レベルを候補の薬剤を接触させる前のこの癌細胞中のそれぞれのレベルと比較することを含み、試験レベルにおける少なくとも一つのmiRNAのレベルの低下が、候補の薬剤がmir17−19bのインヒビターであることを示す当該方法を提供する。
【0009】
本発明の他の面は、mir17−92シストロンのインヒビターを同定する方法であって、該方法は、a)候補の薬剤をmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAを発現する癌細胞と接触させること;b)その細胞中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性を測定し、それにより試験活性レベルについてのデータを生成すること;及びc)mir17−92シストロンによりコードされる各miRNAの試験活性レベルを候補の薬剤を接触させる前のこの癌細胞中のそれぞれの活性レベルと比較することを含み、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの試験活性レベルの低下が、その候補の薬剤がmir17−92シストロンのインヒビターであることを示す当該方法を提供する。
【0010】
本発明の他の面は、mir17−19bインヒビターを同定する方法であって、該方法は、a)候補の薬剤をmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAを発現する癌細胞と接触させること;b)その細胞中のmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性を測定し、それにより試験活性レベルについてのデータを生成すること;及びc)mir17−19bによりコードされる各miRNAの試験活性レベルを候補の薬剤を接触させる前のこの癌細胞中のそれぞれの活性レベルと比較することを含み、mir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの試験活性レベルの低下が、その候補の薬剤がmir17−19bインヒビターであることを示す当該方法を提供する。
【0011】
本発明の他の面は、患者における治療養生法の効力を測定する方法であって、該方法は、a)該患者から得られた第一の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより対照レベルについてのデータを生成すること;b)該治療養生法を患者に施すこと;c)該治療養生法の施与後に、一度に、該患者からの第二の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;及びd)対照レベルを試験レベルとmiRNAベースで比較することを含み、試験レベルにおけるmir17−92シストロンの任意のmiRNAについて、対照レベルと比較して低下を示さないデータが、その治療養生法がその患者において効果的でないことを示す当該方法を提供する。
【0012】
本発明の他の面は、患者における治療養生法の効力を測定する方法であって、該方法は、a)該患者から得られた第一の生物学的試料中のmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定すること;b)該治療養生法を該患者に施与すること;c)該治療養生法の施与後に、該患者から得られた第二の生物学的試料中のmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを一度に測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;及びd)対照レベルを試験レベルとmiRNAベースで比較することを含み、対照レベルと比較しての試験レベルにおけるmir17−19bの任意のmiRNAについての減少がないことを示すデータは、この養生法がこの患者に対して有効でないことを示す当該方法を提供する。
【0013】
更に、本発明の更なる面は、患者における治療効果を有する候補の薬剤を選択するための方法であって、該方法は、a)該患者から得られた第一の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより対照レベルについてのデータを生成すること;b)候補の薬剤を該患者に投与すること;c)試験分子の投与後に、一度に、該患者から得られた第二の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;d)対照レベルを試験レベルとmiRNAベースで比較することを含み、対照レベルと比較しての試験レベルにおけるmir17−92シストロンの任意のmiRNAについての減少がないことを示すデータは、該候補の薬剤が該患者において有効でないことを示し;そしてe)該候補の薬剤を更なる評価又は研究から排除することを含む当該方法を提供する。
【0014】
本発明の他の面は、患者における治療効果を欠く候補の薬剤を排除する方法であって、該方法は、a)該患者から得られた第一の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより対照レベルについてのデータを生成すること;b)候補の薬剤を該患者に投与すること;c)試験分子の投与後に、一度に、該患者から得られた第二の生物学的試料中のmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定し、それにより試験レベルについてのデータを生成すること;d)対照レベルを試験レベルとmiRNAベースで比較することを含み、対照レベルと比較しての試験レベルにおけるmir17−92シストロンの任意のmiRNAについての減少がないことを示すデータは、該候補の薬剤が該患者において有効でないことを示し;そしてe)該候補の薬剤を更なる評価又は研究から排除することを含む当該方法を提供する。
【0015】
本発明の他の面は、癌を治療し又は予防する方法を必要とする個人において癌を治療し又は予防する方法であって、該個人に、有効量のmir17−92シストロンインヒビターを投与することを含む当該方法を提供する。
【0016】
本発明の他の面は、癌を治療し又は予防する方法を必要とする個人において癌を治療し又は予防する方法であって、該個人に、有効量のmir17−19bインヒビターを投与することを含む当該方法を提供する。
【0017】
他の面において、この発明は、単離された核酸化合物であって、細胞中で、mir17−92シストロン転写物又はmir17−19b転写物に生理的条件下でハイブリダイズして、mir17−92シストロン又はmir17−19bシストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現又は活性を低下させる配列を含む当該単離された核酸化合物を提供する。ある具体例において、この単離された核酸化合物は、配列番号1によりコードされる転写物又はその部分例えば配列番号1の少なくとも10の隣接するヌクレオチド残基を含む部分にハイブリダイズする。典型的具体例において、この単離された核酸化合物は、ヌクレオチド残基84〜167、230〜300、235〜256、370〜451、544〜614、671〜757、793〜870、235〜256、若しくは724〜746を含む配列番号1の部分又は配列番号1にハイブリダイズする。ある具体例において、この核酸化合物は、約14〜50ヌクレオチド長である。ある具体例において、この核酸は、mir17−92シストロンによりコードされる転写物の少なくとも8つの隣接するヌクレオチドにハイブリダイズする。ある具体例において、この核酸化合物は、一本鎖である。ある具体例においては、この核酸化合物は、二本鎖である。ある具体例においては、この核酸化合物は、適宜少なくとも一つの修飾された主鎖又は塩基部分を含むDNA分子である。ある具体例においては、この核酸化合物は、適宜少なくとも一つの修飾された主鎖又は塩基部分を含むRNA分子である。ある具体例において、この核酸化合物は、DNA鎖及びRNA鎖を含み、適宜、少なくとも一つの修飾された主鎖又は塩基部分を含む。
【0018】
ある具体例において、この核酸化合物は、アンチセンス核酸化合物である。ある具体例においては、そのアンチセンス核酸化合物は、約15〜30ヌクレオチド長である。ある具体例において、このアンチセンス核酸化合物は、配列番号11を含む。ある具体例において、このアンチセンス核酸化合物は、配列番号12である。ある具体例において、このアンチセンス核酸化合物は、一つの又は修飾された主鎖又は塩基部分を含む。ある具体例において、このアンチセンス核酸化合物は、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシルメチルエステル、カーボネート及びリン酸トリエステルよりなる群から選択する少なくとも一つのヌクレオチド間結合を含む。ある具体例において、改変アンチセンス核酸は、少なくとも一つの2’−O−アルキル化リボヌクレオチドを含む。
【0019】
ある具体例において、この核酸化合物は、RNAi構築物である。ある具体例において、このRNAi構築物は、dsRNAであり、適宜、少なくとも一つの改変主鎖又は塩基部分を含むものである。ある具体例において、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、適宜、少なくとも一つの改変された主鎖又は塩基部分を含むものである。ある具体例において、RNAi構築物の二本鎖部分は、約21〜23ヌクレオチド長である。ある具体例において、このRNAi構築物は、少なくとも一つの主鎖又は塩基部分を含む。ある具体例において、この改変RNAi構築物は、少なくとも一つの、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシルメチルエステル、カーボネート、及びリン酸トリエステルよりなる群から選択するヌクレオチド間結合を有する。ある具体例において、この改変されたRNAi構築物は、少なくとも一つの2’−O−アルキル化リボヌクレオチドを含む。
【0020】
ある具体例において、この核酸化合物は、酵素的核酸である。ある具体例において、この酵素的核酸は、リボザイムである。ある具体例において、この酵素的核酸は、DNA酵素である。
【0021】
他の面において、この発明は、mir17−92シストロン又はmir17−19bシストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの細胞における発現を少なくとも50%阻止する核酸化合物を提供する。ある具体例において、この核酸化合物は、mir17−92シストロン又はmir17−19bシストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの細胞における発現を少なくとも5倍阻止する。
【0022】
他の面において、この発明は、核酸化合物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物であって、該核酸化合物が、細胞においてmir17−92シストロン転写物と生理的条件下でハイブリダイズして、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現又は活性を低下させる当該医薬組成物を提供する。ある具体例において、この医薬組成物は、RNAi構築物及びアンチセンス核酸化合物よりなる群から選択する核酸化合物を含む。
【0023】
他の面において、この発明は、細胞において、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現又は活性を阻止する方法であって、該細胞を、有効量のここに記載の核酸化合物と接触させることを含む当該方法を提供する。ある具体例において、この核酸化合物は、RNAi構築物及びアンチセンス核酸化合物よりなる群から選択される。
【0024】
他の面において、この発明は、細胞におけるmir17−92シストロンの発現を阻止する方法であって、該細胞を、有効量のここに記載の核酸化合物と接触させることを含む当該方法を提供する。ある具体例において、この核酸化合物は、RNAi構築物及びアンチセンス核酸化合物よりなる群から選択される。
【0025】
上記のすべての具体例は、この発明のすべての面に適用しうる、ということが企図される。上記の任意の具体例を、適宜、少なくとも一つの他のかかる具体例と自由に組み合わせることができるということも又、企図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の特定の具体例を、以下に詳細に記載する。しかしながら、これらは、説明のための具体例であり、如何なる点においても制限と解するべきではない。
【0027】
図面の簡単な説明
この特許又は出願ファイルは、少なくとも一つのカラーで製作した図面を含む。このカラーの図面を有する特許又は特許出願公開のコピーは、請求されて必要な料金が支払われた場合には、この事務所から提供される。
図1:mir17−92bクラスターは、B細胞リンパ腫の試料及び細胞株において増大した発現を示している。A.3つのポリシストロン性miRNAクラスターのゲノム組織化を示してある。3つの相同なクラスター中に、保存された順序、miR−17/miR−106a/miR−106b、miR−18、miR−19a/miR−19b−1/miR−19b−2、miR−20/93、及びmiR−92−1/miR−92−2/miR−25(黄色のボックスは、プレmiRNA;紫色のボックスは、成熟miRNA)で配置された5つのパラロググループがある。B.ヒトとマウスのホモログ間での保存のレベルを、mVistaプロット27を用いて表してある(濃紺色は、エキソン;淡青色は、イントロン;橙色は、mir17−92クラスター)。2つの択一的イソ型が、ヒト遺伝子について検出されており、これらを図式表示してある。C.13q31−q32アンプリコンを有する細胞株(Karpas1718、OCI−Ly4、及びOCI−Ly7を含む)におけるミクロRNA発現レベルを、白血病及びリンパ腫細胞株(この遺伝的障害を欠く)並びに皮質血から単離した正常B細胞と比較した(上段)。我々は、この分析に、OCI−Ly8細胞株を含めたが、これは、以前に、13q3132アンプリコンを有する細胞として関係付けられたが、我々の研究において、遺伝子量の増大をc13orf25遺伝子座において示さなかった。191人のヒトのmiRNAについての標準化した1チャンネル測定値を、アレイ上に表されたすべてのmiRNA遺伝子について階層的にクラスター化した。そのデータの抜粋を、図4に表した全クラスター分析と共に示してある。この増幅と相関する発現マップの節点を示してある。let−7節点も又、比較のために示されている(中央パネル)。試験した細胞株において、mir17−92ポリシストロンの発現レベルは、mir17−92遺伝子座でのコピー数と相関している(下段パネル)。D.mir17−92 pri−miRNAのレベルを、46のリンパ腫と47の結腸直腸癌におけるRT−QPCRにより測定して、それぞれ、5人の対応する正常組織において見出されるレベルと比較した。パネルC及びDについては、エラーバーは、平均値からの標準偏差を示している。
図2:mir17−19bクラスターの過剰発現は、マウスにおいてc−myc誘導されたリンパ腫生成を加速する。A.Eμ−mycHSCを用いる養子伝達プロトコールの図式表示。B.MSCVレトロウイルスベクター中のmir17−19b(MSCV mir17−19b)を発現するHSCにより再構成されたマウス又は対照用MSCVウイルスを感染させたマウスを、移植の5週間後から開始する血液塗抹試験によりモニターした。カプラン−マイヤー曲線は、示したように、白血病のないものの生存パーセント又は全体の生存パーセントを表示している。C.Eμ−myc/mir17−19b又はEμ−myc/MSCVを含む腫瘍を有するマウスの外部GFPイメージングは、腫瘍細胞の全体的分布を示している。Eμ−myc/mir17−19b腫瘍は、対照用腫瘍と比較して一層散布された表現型を示している。これらの動物は、それらの診断に従う遺伝子型について典型的なものである。
図3:mir17−19bとc−mycの協力により生成されたリンパ腫の病理学的及び免疫学的分析。A.Eμ−myc/mir17−19bリンパ節腫瘍のH&E、Ki67、B220及びTUNEL染色。「星空」形態は、細胞クラスターがアポトーシスを受けることの顕著な特徴である(黒色矢印)。スケールバーは、10μmである。B.内臓器官、肝臓、脾臓、肺及び腎臓のH&E及びB220染色は、Eμ−myc/mir17−19b腫瘍細胞による浸潤を示した。浸潤は、肝臓の血管周囲及び実質組織の両方で認められた。スケールバーは、50μmである。C.Eμ−myc/mir17−19bリンパ腫の免疫遺伝子型決定。腫瘍細胞は、B細胞特異的マーカーのB220につき陽性に染色されたが、T細胞特異的マーカーのCD4、CD8a及びThy1.2については染色されなかった。腫瘍細胞は、プレB細胞の特徴(CD19につき陽性に染色されるが、成熟B細胞マーカーのIgMについては染色されない)を有した。
図4:白血病及びリンパ腫細胞株のミクロRNA発現マップ。13q31−q32アンプリコンを有すると前記した細胞株(Karpas1718、OCI−Ly4、OCI−Ly7及びOCI−Ly8を含む)におけるミクロRNA発現レベルを、白血病及びリンパ腫細胞株(遺伝的障害を欠く)のもの並びに皮質血から単離した正常B細胞と比較した。全RNAをCy3で標識して、191のヒト成熟ミクロRNAに対するプローブを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせた。バックグラウンド減算した1チャンネル測定値を、log変換して(底2)、メジアン中心標準化した。各細胞株についての4つの独立したデータセットを、メジアンによりかくして、遺伝子のみによって階層的にクラスター化した。黄色は、メジアンに対して相対的に高い発現を示し、青色は、低い発現を示している。mir17−92遺伝子座に対応する節点は、右に拡張されている。
図5:Eμ−myc/mir17−19b B細胞リンパ腫におけるmir17−92の異所的発現。2つの対照用Eμ−myc/MSCVリンパ腫(MSCV_1、MSCV_2)及び2つのEμ−myc/mir17−19bリンパ腫(17−19_1、17−19_2)からのミクロRNA発現を、マイクロアレイ分析により定量した。GFP発現にリンクしたFACSソーティングにより精製したEμ−myc/mir17−19bリンパ腫細胞についてのミクロRNA発現レベルをも測定した(17−19_GFP)。全RNAをCy3で標識して、198のマウス成熟ミクロRNAに対するプローブを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせた。バックグラウンド減算した1チャンネル測定値をlog変換して(底2)、メジアン中心標準化した。各細胞株についての4つの独立したデータセットを、メジアンによりかくした(2つのデータセットしか有しない17−19_2リンパ腫を除く)。Karpas1718(最高の13Q31増幅を有する細胞株)を比較のために示してある。このヒヤーマップは、各保存された(マウス/ヒト)ミクロRNAの、mir17−92遺伝子座における発現、及び4つの比較のためのlet−7ミクロRNAを示している。黄色は、メジアンに対して相対的に高い発現レベルを示し、青色は、低い発現を示している。
図6:mir17−92pri−miRNAのレベルを、リンパ腫、乳房腫瘍、肝細胞癌及び結腸直腸癌において、RT−QPCRにより測定して、それぞれ、対応する正常組織において見出されるレベルと比較した。エラーバーは、平均値からの標準偏差を示している。
図7:mir17−92とp53喪失との間の癌遺伝子の協力。
mir17−92又はmir17−19bの過剰発現は、p53喪失と協力して、リンパ腫生成を加速する。MSCVレトロウイルスベクター中のmir17−92を発現するHSC(MSCVmir17−92)若しくはmir17−19b(MSCVmir17−19b)により再構成された又は対照用MSCVウイルス(MSCVPIG)を感染させたp53-/-マウスを、血液塗沫分析によりモニターした。カプラン−マイヤー曲線は、示したように、白血病のないものの生存又は全体の生存のパーセンテージを表している。時間は、日数で示されている。
図8:mir17−92ポリシストロンからの個々のmiRNAの過剰発現は、マウスにおけるc−myc誘導されたリンパ腫生成を加速する。c−mycは、mir−19bと協力し、一層低い程度で、mir−18と協力する。mir17−92クラスターからのmiRNAを含むEμ−myc/+HSCにより再構成されたマウスにおける腫瘍のないものの生存の測定。MSCVレトロウイルスベクター(MSCV)中のmir17−19bシストロン(MSCV17−19b)、個々のmiRNAmir−17(MSCV17)、mir−18(MSCV18)、mir−19b(MSCV19b)若しくはmir−20(MSCV20)、又はmir−19a、mir−20及びmir−19b(MSCV19a−19b)のサブクラスターを発現するHSCにより再構成されたマウスを血液塗沫分析によりモニターした。カプラン−マイヤー曲線は、示したように、白血病のないもの又は全体の生存のパーセンテージを表している。時間は、日数で示されている。
図9:c−mycのmir−18、mir−19b及びmir19a−19bとの協力に由来する腫瘍の免疫表現型を与える表1を示している。
図10:mir17−92シストロンによりコードされるmir−19bmiRNAレベルのアンチセンスオリゴヌクレオチドを利用する阻止。このグラフは、抗mir19b又は対照用オリゴをトランスフェクトしたKarpas1718細胞についてのMir−19bレベルを示している。このmir−19bレベルは、ABItaqmanアッセイにより測定される。抗mir−19bオリゴヌクレオチドは、各ヌクレオチド残基で2−O−メチル修飾されて、配列ucaguuuugcauggauuugcaca(配列番号:11)を有する。類似の実験を、2−O−メチル修飾を各残基に有して配列uaucugcacuagaugcaccuua(配列番号:12)有する抗mir−18オリゴヌクレオチドを用いて行なうことができる。
図11:ヒトmir−17−92ポリシストロンのDNA配列(配列番号:1)を示している。mir−17、mir−18、mir−19a、mir−20、mir−19b−1、及びmir−92−1ミクロRNA(上から下まで、この順序)をコードするDNA配列には下線を引いて、大文字にしてある。Mir−17は、配列番号:1のヌクレオチド残基84〜167によりコードされており、mir−18は、配列番号:1のヌクレオチド残基230〜300によりコードされ、mir−19aは、配列番号:1のヌクレオチド残基370〜451によりコードされ、mir−20は、ヌクレオチド残基544〜614によりコードされ、mir−19b−1は、配列番号:1のヌクレオチド残基671〜757によりコードされ、mir−92−1は、配列番号:のヌクレオチド残基793〜870によりコードされている。影を付けた領域は、上で論じた抗mir−18オリゴヌクレオチドにより標的とされるmir−18の部分(配列番号:1のヌクレオチド残基235〜256)及び上で論じた抗mir−19bオリゴヌクレオチドにより標的とされるmir−19bの部分(配列番号:1のヌクレオチド残基724〜746)を示している。
【0028】
発明の詳細な説明
I.概観
ミクロRNA(miRNA)は、小さい非コードRNA分子のクラスであり、干渉、RNA転写物のタンパク質への翻訳の阻害を引き起こすことができ、細胞及び身体中の特異的遺伝子の転写後サイレンシングを引き起こすことができる(Zeng及びCullen, RNA, 9(1):112-123, 2003;Kidner及びMartienssen Trends Genet, 19(1):13-6, 2003;Dennis C, Nature, 420(6917):732, 2002;Couzin J, Science 298(5602):2296-7, 2002参照)。今日まで、200より多くのミクロRNAがヒトにおいて記載されてきた。しかしながら、これらの調節性の、非コードRNAの正確な機能は、多いに不明瞭なままである。
【0029】
本発明は、少なくとも部分的に、出願人の、mir17−92シストロン(ミクロRNAクラスター)が腫瘍及び腫瘍細胞株において過剰発現されるという新規な発見に基づいている。重要なことには、出願人は、完全なmir17−92シストロン並びにmir17−19b−1を含む先端切除されたクラスター(「mir17−19b」)が、Eμ−myc又はp53-/-誘導された腫瘍形成をマウスにおいて加速する能力により示されるように、イン・ビボで癌遺伝子として作用しうることを示している(一層詳細には、図及び例示の節を参照されたい)。それ故、このmir17−92シストロン及びそれによりコードされるmiRNAは、腫瘍及び癌の診断、予後予測、理論的薬物デザイン、及び他の治療的介入に利用することができる。従って、本発明は、癌の、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのミクロRNAの発現及び/又は活性を低下させることによる治療方法及び予防方法を特徴とする。ある好適具体例において、本発明の癌の治療方法及び予防方法は、先端切除されたクラスターmir17−19bの発現及び/又は活性を減少させる。ある具体例において、本発明の癌の治療及び予防方法は、miR−19b−1及び/又はmiR−18の発現及び/又は活性を低下させる。以下で一層詳細に記載するように、出願人は又、mir17−92シストロンの発現のインヒビターを、新規な癌治療剤及び予防剤として同定するためのスクリーニング方法を工夫した。
【0030】
用語「mir17−92シストロンのインヒビター」は、ここで用いる場合、次の7つのミクロRNAを含む、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現及び/又は活性を低下させる薬剤を指す:miR−17−5p、miR−17−3p、miR−18、miR−19a、miR−20、miR−19b−1及びmiR−92−1。mir17−92シストロンインヒビターは、mir17−92シストロンに含まれる少なくとも一つのmiRNAの発現のレベルを、その発現を転写レベルで減少させること、分解を増大させること、又は両方の組合せによって直接低下させ、又はmir17−92シストロンの上流のレギュレーターを調節することにより間接的に低下させる薬剤を包含する。mir17−92シストロンインヒビターは、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性を邪魔する薬剤を更に含む(mir17−92シストロンによりコードされるmiRNAの少なくとも一つと、それぞれの標的遺伝子への結合につき競合する非機能的miRNAを含むが、それに限られない)。ある具体例において、mir17−92シストロンインヒビターは、先端切除されたクラスターmir17−19b、mir17−92シストロンの脊椎動物特異的部分、例えばmiR−17−5p、miR−17−3p、miR−18、miR−19a、miR−20及びmiR−19b−1に含まれる少なくとも一つのmiRNAの発現及び/又は活性を特異的に減少させる。ある具体例において、mir17−92インヒビターは、miR−19−b−1及び/又はmiR−18の少なくとも一つの発現及び/又は活性を特異的に低下させる。
【0031】
適当なmir17−92シストロンインヒビターは、生物学的巨大分子例えば核酸又はポリペプチド、化学化合物、化学化合物の混合物、又は細菌、植物、カビ若しくは動物質から単離した抽出物であってよく、その各々は、それを必要とする患者に、当分野で公知の標準的技術により投与することができる。ある具体例において、mir17−92シストロンインヒビターは、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAを阻止するアンチセンス分子である。アンチセンス分子は、ヒトのmiRNAの阻害において有効であることが示されている(A.M. Cheng等、Nucleic Acids Research, 33:1290-1297(2005)参照)。ある別の具体例において、mir17−92シストロンインヒビターは、mir17−92シストロンによりコードされるmirRNAにハイブリダイズし又は立体障害を生じうるオリゴマー化合物である。かかるオリゴマー化合物を作成する方法は、PCT出願WO05013901に記載されている(その全内容を、本明細書中に援用する)。
【0032】
本発明は又、mir17−92シストロンの発現に、一層好ましくはmir17−19bシストロンの発現に基づく、癌の診断方法をも特徴とする。ある具体例において、この発明は、miR19−b−1及び/又はmiR−18の少なくとも一つの発現に基づく、癌の診断方法を特徴とする。
【0033】
II.定義
ここで用いる場合、「癌」は、すべての種類の癌、新生物又は良性若しくは悪性の腫瘍を指す。ここに提供する方法を利用した治療に適した癌には、B細胞悪性腫瘍、リンパ腫、癌腫、肉腫、又は白血病が含まれる。「リンパ腫」は、B又はT細胞のリンパ系における悪性の増殖を指す。「リンパ腫」は、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む多くの種類の悪性の増殖を包含する。「非ホジキンリンパ腫」は、ホジキンリンパ腫でないリンパ系におけるB又はT細胞の悪性の増殖を指す(ホジキンリンパ腫は、例えば、癌領域におけるリード−スターンバーグ細胞の存在を特徴とする)。「癌腫」とは、良性又は悪性の上皮性腫瘍を意味し、乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、結腸癌、CNS癌腫、メラノーマ癌腫、卵巣癌、又は腎臓癌を包含するが、これらに限られない。
【0034】
「B細胞悪性腫瘍」は、B細胞リンパ腫及び白血病を指し、例えば、ホジキン病(すべての形態、例えば、再発したホジキン病、耐性ホジキン病)、非ホジキンリンパ腫(低い等級、中位の等級、高い等級、及び他の型)、小型リンパ球/B細胞慢性リンパ球性白血病(SLL/B−CLL)、ALL−L3(バーキット型白血病)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性白血球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、単球性白血病、骨髄性白血病、前骨髄細胞性白血病、単核細胞性白血病、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、散漫大型細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、AIDS関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、及び血管免疫芽細胞性リンパ腺症を包含する(Gaidono等、「Lymphomas」(Cancer 中):Principles & Practice of Oncology, Vol.2: 2131-2145 (DeVita等編、第5版、1997)参照)。
【0035】
語句「癌の検出」又は「癌の診断」は、動物における癌又は前癌状態の存否を決定することを指す。「癌の検出」は又、動物における前癌又は癌細胞の存在の見込みに関する間接的証拠を得ること又は患者の癌の発生に対する疾病素質を評価することをも指す。癌の検出は、この発明の方法を単独で、他の方法と組み合わせて、又は動物の健康状態に関する情報に照らして利用して、達成することができる。
【0036】
用語「哺乳動物」は、治療又は診断の目的に関して、哺乳動物に分類される任意の動物(ヒト、家庭動物及び家畜、並びに動物園の動物、競技用動物又は愛玩動物例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む)を指す。典型的具体例において、哺乳動物は、ヒトである。
【0037】
用語「前癌」は、悪性腫瘍又は癌へ導きうる変化に関係する特徴を有する細胞又は組織を指す。例には、結腸、肺、卵巣又は乳房組織における腺腫様増殖、又は病気例えば異形成神経症候群、皮膚の悪性メラノーマの前駆体が含まれる。例には又、異形成神経症候群以外の異常な新生物、ポリポーシス症候群、前立腺異形成症、及び他のそのような新生物が含まれる(前癌病変が臨床的に同定しうるか否かによらない)。
【0038】
「腫瘍」は、ここで用いる場合、すべての新生物細胞(悪性か良性かによらない)の成長及び増殖、並びにすべての前癌及び癌の細胞及び組織を指す。
【0039】
III.診断アッセイ
このmir17−92シストロン及びそれによりコードされるmiRNAは、腫瘍及び癌例えば様々な種類のリンパ腫の検出、診断、予後予測、合理的薬物デザイン、及び他の治療的介入に利用することができる。
【0040】
患者から採られた生物学的試料中のmir17−92シストロン又はそれによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの増幅及び/又は過剰発現の検出及び測定は、その患者が腫瘍を発生しているであろうことを示す。特に、mir17−92シストロンの増幅の存在は、癌又は前癌状態例えばリンパ腫についての診断を高い正確さで与える。それ故、本発明は、一面において、患者から採られた試料中のmir17−92シストロンによりコードされるmiRNAの少なくとも一つの発現レベルを測定すること、及びその試料中でかかるmiRNAが過剰発現されているかどうかを測定することによる、哺乳動物組織における癌又は腫瘍の診断又は特性決定のための方法を提供する。他の面において、この発明は、哺乳動物組織における癌又は腫瘍を、患者から採った試料中のmir17−92シストロン又はその部分のゲノム中のコピー数を測定すること、及びかかるゲノム中のコピー数が該試料において増幅されているかどうかを測定することによって、診断し又は特性決定する方法を提供する。mRNA発現レベル及びゲノム中のコピー数を測定及び評価するための様々な技術(ハイブリダイゼーションベースの方法及び増幅ベースの方法を含む)をここに与える。患者の診断に適した試料は、血液、尿、血清、唾液、又は組織試料でありうる。典型的具体例において、診断試料は、前癌又は癌である疑いのある組織の試料例えば生検試料、外科的試料などでありうる。
【0041】
腫瘍中での増幅を受けた標的遺伝子(例えば、mir17−92ポリシストロン)の存在は、それらの標的遺伝子のコピー数、即ち該標的発現産物をコードしている細胞中のDNA配列の数を測定することによって評価することができる。一般に、正常な二倍体細胞は、所定の常染色体遺伝子の2コピーを有する。しかしながら、このコピー数は、例えば、癌細胞において、増幅又は複製によって増大し、又は欠失により減少しうる。特定の遺伝子のコピー数又はmiRNA発現レベルを評価する方法は、当分野で周知であり、とりわけハイブリダイゼーション及び増幅ベースのアッセイが含まれる。
【0042】
幾つかのハイブリダイゼーションベースのアッセイの何れかを用いて、生物学的試料中の細胞におけるmir17−92シストロン又はその部分のコピー数を検出することができる。一つのかかる方法は、サザーンブロット(Ausubel等、又はSambrook等、前出、参照)であり、該方法においては、ゲノムDNAを、典型的には、断片化し、電気泳動により分離し、膜に移してから、mir17−92シストロンに特異的なプローブにハイブリダイズさせる。標的領域についてのプローブからのハイブリダイゼーションシグナルの強度の、同じゲノム中の正常な増幅されてない単一コピーのゲノムDNAの領域からの対照用プローブからのシグナルとの比較は、mir17−92シストロン又はその部分のコピー数の評価を与える。対照と比較して増大したシグナルは、増幅の存在を表す。
【0043】
試料中のmir17−92シストロン又はその部分のコピー数の測定のための他の方法論は、イン・シトゥーハイブリダイゼーション例えば蛍光イン・シトゥーハイブリダイゼーション(FISH)である(Angerer, 1987 Meth. Enzymol., 152:649参照)。一般に、イン・シトゥーハイブリダイゼーションは、次の主要な工程を含む:(1)分析すべき組織又は生物学的構造の固定;(2)該生物学的構造の、標的DNAの接近容易性を増大させて、非特異的結合を減少させるための予備ハイブリダイゼーション処理;(3)核酸の混合物の、生物学的構造又は組織中の核酸へのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後洗浄、及び(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。かかる応用において用いるプローブは、典型的には、例えば放射性同位体又は蛍光レポーターにより標識される。好適なプローブは、ストリンジェントな条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能にするだけ十分に長く、例えば、約50、100又は200ヌクレオチドから約1000ヌクレオチドであり又はそれより長い。
【0044】
DNAコピー数を測定する他の方法論は、比較ゲノム用ハイブリダイゼーション(CGH)である。比較ゲノム用ハイブリダイゼーション法においては、核酸の「試験」コレクションを第一の標識により標識し、第二のコレクション(例えば、正常な細胞又は組織に由来)を第二の標識で標識する。これらの核酸のハイブリダイゼーションの比を、アレイ中の各ファイバーに結合する第一及び第二の標識の比によって決定する。2つの標識からのシグナルの比における、試験コレクション中の遺伝子増幅による差を検出して、該比は、mir17−92シストロン又はその部分のコピー数の測定を与える。DNAコピー数の変動の細胞遺伝学的表示を、CGHにより生成することができ、これは、異なる標識をした試験及び参照用ゲノムDNAからの、染色体の長さに沿った蛍光比を与える。
【0045】
この発明の方法と共に用いるのに適したハイブリダイゼーションプロトコールは、例えば、Albertson (1984) EMBO J. 3:1227-1234;Pinkel (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:9138-9142;EPO Pub. No. 430:402;Methods in Molecular Biology, Vol. 33: In Situ Hybridization Protocols, Choo編、Humana Press, Totowa, N.J. (1994) に記載されている。
【0046】
増幅ベースのアッセイも又、mir17−92シストロン又はその部分のコピー数を測定するために利用することができる。かかるアッセイにおいて、mir17−92シストロンの核酸配列は、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応即ちPCR)におけるテンプレートとして作用する。定量的増幅において、増幅生成物の量は、元の試料中のテンプレートの量に比例する。適当な対照との比較は、上記の原理に従って、mir17−92シストロンのコピー数の測定を与える。TaqManプローブを利用するリアルタイム定量的PCRは、当分野で周知である。リアルタイム定量的PCRの詳細なプロトコールは、例えば、RNAについては、Gibson等、1996, A novel method for real time quantitative RT-PCR. Genome Res., 10:995-1001に、そしてDNAについては、Heid等、1996, Real time quantitative PCR. Genome Res., 10:986-994に与えられている。
【0047】
TaqManベースのアッセイも又、mir17−92シストロンポリヌクレオチド又はその部分を定量するために利用することができる。TaqManベースのアッセイは、5’蛍光染料と3’消光剤とを含む蛍光原性オリゴヌクレオチドプローブを利用する。このプローブは、PCR生成物にハイブリダイズするが、それ自体は、3’末端のブロッキング剤のために伸張することができない。このPCR生成物をその後のサイクルで増幅する場合には、ポリメラーゼ(例えば、AmpliTaq)の5’ヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブの開裂を生じる。この開裂は、5’蛍光染料と3’消光剤を分離し、それにより、増幅の関数としての蛍光の増大を生じる(例えば、word wide web 2 at perkin-elmer.com参照)。
【0048】
コピー数を測定するための他の適当な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu及びWallace, Genomics, 4: 560, 1989; Landegren等、Science, 241:1077, 1988; 及び Barringer等、Gene, 89:117, 1990参照)、転写増幅(Kwoh等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1173, 1989)、自己持続的配列複製(Guatelli等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874, 1990)、ドットPCR、及びリンカーアダプターPCR(例えば)が含まれるが、これらに限られない。
【0049】
DNAコピー数を測定する一つの強力な方法は、マイクロアレイベースのプラットフォームを利用する。マイクロアレイ技術は、高い分解能を提供するので、利用することができる。例えば、伝統的なCGHは、一般に、20Mb限界のマッピング分解能を有するが;マイクロアレイ利用のCGHでは、異なる標識をした試験及び対照用ゲノムDNAの蛍光比は、DNAコピー数の変動の遺伝子座ごとの測定を与え、それにより、増大したマッピング分解能を達成する。様々なマイクロアレイ法の詳細は、文献中に見出すことができる。例えば、米国特許第6,232,068号;Pollack等、Nat. Genet., 23(1):41-6, (1999)、及び他書を参照されたい。
【0050】
これらのハイブリダイゼーション及び増幅ベースの方法は、上記では、mir17−92ポリシストロンのDNAコピー数の参照につき記載されている。しかしながら、当業者は、かかる方法は、mir17−92ポリシストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定するために利用することもできるということを理解するであろう。例えば、miRNAの発現レベルは、例えば、サザーンブロッティング、蛍光イン・シトゥーハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、PCR(又はRT−PCR)などを利用して測定することができる。他の方法は、下記の例示の節に与えてある。
【0051】
本発明は又、他の面において、哺乳動物組織における癌又は腫瘍を、患者から採った試料中のmir17−92シストロン又はその部分のDNAコピー数を測定すること、及びmir17−92シストロンが該試料中で増幅されているかどうかを測定することにより診断する方法をも提供する。一具体例において、この試料は、疑わしい組織の試料であってよい。DNAコピー数を測定して評価するためのハイブリダイゼーションベースの方法及び増幅ベースの方法を含む様々な技術が、上記のように与えられている。従って、本発明は、増幅された遺伝子をDNAレベルで、増大した発現をRNAレベルで検出する方法であって、両方の結果が腫瘍の進行を示す当該方法を提供する。
【0052】
ある具体例において、ここに記載の診断方法は、試験試料の対照用試料との比較を含む。例えば、これらの方法は、試験試料(例えば、癌又は前癌病変について診断すべき患者からの試料)において、mir17−92シストロン又はその部分のゲノムにおけるコピー数を測定すること、mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定すること、及び/又はmir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性レベルを測定することを含みうる。この試験患者からの、ゲノムコピー数、発現レベル及び/又は活性レベルを、次いで、対照用試料からの対応するレベルと比較することができる。対照用試料は、例えば、試験患者が患っていると考えられるものと同じ病気を患っている患者から採った試料であってよい。或は、対照用試料は、初期(例えば、試験患者が、病気状態の徴候を示し始める前)に試験個人から採った試料であってよい。或は、対照用試料は、該試験患者の他の場所から採った試料であってよい(例えば、もし患者が、乳癌について試験される場合には、対照用試料を、その試験患者内の乳房以外の場所から採る)。或は、この対照用試料は、予備測定した測定値であってよく、該測定値は、少なくとも1人の人物について、好ましくは個人の集団について測定されたものであって、データベース例えば電子式データベースに保存されたものである。
【0053】
IV.薬物スクリーニングアッセイ
mir17−92シストロンインヒビターをスクリーニングするための、及びmir17−92シストロンを腫瘍及び癌の徴候を防止及び/又は改善する能力につき評価するための多くのアプローチ、例えば細胞ベースの及び動物モデルベースの試験系も又、与えられる。
【0054】
一具体例において、スクリーニング法は、先ず候補の薬剤をmir17−92シストロンの少なくとも一つのmiRNAメンバーを発現する癌細胞と接触させ、その後、その細胞におけるmir17−92シストロンの少なくとも一つのメンバーの発現レベルを測定して試験レベルについてのデータを生成することを含む。次いで、mir17−92シストロンの各miRNAメンバーの試験レベルを、候補の薬剤と接触させる前の癌細胞におけるそれぞれのレベルと比較する。或は、mir17−92シストロンの各miRNAメンバーの試験レベルを、公知の活性を有する薬剤又は活性を有しない薬剤(例えば、対照用薬剤)で処理した癌細胞におけるそれぞれのレベルと比較することができる。試験レベルにおけるmir17−92シストロンの少なくとも一つのmiRNAメンバーのレベルの減少は、この候補の薬剤がmir17−92シストロンのインヒビターであり、潜在的な癌治療剤であることを示す。
【0055】
様々なアッセイ形式が十分であり、本願の開示に照らして、ここに特に記載してないものでも、当業者によって理解されるであろう。mir17−92シストロンインヒビターとして作用する能力について試験すべき薬剤は、例えば、細菌、酵母、植物若しくは他の生物体により生成し(例えば、天然物)、化学的に製造し(例えば、ペプチド模倣物を含む小型分子)、又は組換えによって製造することができる。本発明により企図される試験薬剤には、非ペプチド性有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖類、ホルモン、及び核酸分子(例えば、アンチセンス、リボザイム又はRNAi核酸分子)が含まれる。好適具体例において、この試験薬剤は、約2,000ダルトンより小さい分子量を有する小型有機分子である。
【0056】
これらの試験薬剤は、単独で、離散単位で、又は一層大きい複雑さのライブラリー(コンビナトリアルケミストリーなどによる場合)にて与えることができる。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、アルキルハリド、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル及び他のクラスの有機化合物を含むことができる。試験化合物の、この試験系への提示は、化合物の単離された形態又は混合物の何れであってもよい(特に、初期スクリーニング段階において)。
【0057】
幾つかの場合において、少なくとも一つの化合物を、同時に試験することができる。化合物の混合物を試験する場合には、先行する処理により選択された化合物を、分離し(適宜)、適当な方法(例えば、PCR、スクリーニング、クロマトグラフィー)により同定することができる。コンビナトリアル化学合成又は他の方法により製造された化合物(例えば、有機化合物、ペプチド、核酸)の大きなコンビナトリアルライブラリーを試験することができる(例えば、タグを付けた化合物に関しては、Ohlmeyer, M.H.J.等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926(1993)及び De Witt, S.H.等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6009-6913 (1993) を参照されたい;Rutter, W.J.等、米国特許第5,010,175号;Huebner, V.D.等、米国特許第5,182,366号;及びGeysen, H.M., 米国特許第4,833,092号も参照されたい)。本発明によりコンビナトリアルライブラリーから選択した化合物がユニークなタグを有する場合には、個々の化合物の、クロマトグラフィー法による同定が可能である。化合物がタグを有しない場合には、クロマトグラフィーによる分離と、その後の、構造を確認するための質量分析法が、ここに記載した方法により選択した個々の化合物を同定するために利用することのできる典型的な方法である。
【0058】
加えて、動物モデルを利用して、腫瘍及び癌の徴候を治療し又は抑制することのできる薬物及び医薬としての利用のための化合物を同定することができる。例えば、動物モデルを、試験化合物に、かかる改善を該動物において誘出するのに十分な濃度で、十分な時間にわたって曝露することができる。この曝露に対する動物の応答を、腫瘍又は癌に関係する徴候の逆戻りを評価することにより、mir17−92シストロン若しくはその部分のDNAコピー数の変化を評価することにより、及び/又はmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを評価するkとによりモニターすることができる。腫瘍及び癌の少なくとも一つの徴候を逆戻りさせる任意の治療剤(mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの過剰発現を低下させ、及び/又はmir17−92シストロン若しくはその部分のDNAコピー数を減少させるもの)は、ヒトの治療のための候補と考えることができる。試験薬剤の投薬量は、投与量−応答曲線を導くことにより決定することができる。
【0059】
その上、フィンガープリントパターン又は遺伝子発現プロフィルを、細胞及び/又は動物ベースのモデル系で、既知の細胞状態について、例えば、正常か(即ち、既知の新生物形成前か)、新生物か、又は転移状態かについて特性決定することができる。その後、これらの既知のフィンガープリントパターンを比較して、試験化合物の、かかるフィンガープリントパターンを改変する能力、及び該パターンを正常なフィンガープリントパターンのものと密接に似させる能力を確認することができる。例えば、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現に影響を与える化合物の投与は、前癌又は癌のモデル系のフィンガープリントパターンを一層密接に対照(即ち正常)系に似させることができ;こうして、かかる化合物は、癌治療における治療的有用性を有することとなる。他の状況において、一の化合物の投与は、対照系のフィンガープリントパターンが、腫瘍及び癌(例えば、乳癌、結腸癌、肺癌、又は卵巣癌)を真似ることを開始させることができ;それ故、かかる化合物は、腫瘍形成性薬剤として作用し、それは、更に、癌の治療介入及びその診断のための標的として役立ちうる。
【0060】
ある具体例において、ここに記載の薬物スクリーニングアッセイは、候補の薬剤と接触した細胞において、mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル及び/又は活性レベルの測定及びそれらのレベルの対照レベルとの比較を含む。様々な具体例において、対照レベルは、試験薬剤と接触される前の細胞において、又は既知の活性を有する試験薬剤と接触させた細胞において、mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル及び/又は活性レベルであってよい。
【0061】
V.癌治療のための薬剤及び方法
本発明において、上記のアッセイなどにより同定されたmir17−92シストロンインヒビターは、例えば、ヒト患者での癌の治療又は予防のための使用に適した組成物を生成するために利用することができる。
【0062】
ある具体例において、本発明のmir17−92シストロンのインヒビターは、例えば、2000amu未満の、尚一層好ましくは1500amu未満の分子量を有し又は1000amu未満の分子量さえ有する小型の有機分子である。好ましくは、この薬剤は、細胞透過性である。ある好適具体例において、この薬剤は又、経口でも活性である。候補の小型分子化合物は、合成又は天然化合物のライブラリーを含む広範な起源から得ることができる。例えば、広範な有機化合物及び生体分子のランダムな合成及び指示された合成ために、多くの手段を利用することができる(ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む)。或は、細菌、カビ、植物及び動物の抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーを利用することができ又は容易に生成することができる。加えて、天然の又は合成により生成したライブラリー及び化合物を、慣用の、化学的、物理的及び生化学的手段によって改変することができる。公知の薬理学的因子を、構造的類似体を生成するために、指示された又はランダムな化学的改変例えばアシル化、アルキル化、エステル化、及びアミド化にかけることができる。
【0063】
ある面において、本発明のmir17−92シストロンインヒビターには、ペプチド模倣物が含まれる。ここで用いる場合、用語「ペプチド模倣物」は、化学的に改変したペプチド及び非天然アミノ酸を含むペプチド様分子、ペプトイドなどを包含する。ペプチド模倣物は、患者に投与した場合の増大された安定性を含むペプチドを超える様々な利点を提供する。ペプチド模倣物を同定する方法は、当分野で周知であり、潜在的ペプチド模倣物のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングが含まれる。例えば、Cambridge Structural Database は、既知の結晶構造を有する300,000より多くの化合物のコレクションを含んでいる(Allen等、Acta Crystallogr. Section B, 35:2331 (1979))。標的分子の結晶構造が利用可能でない場合には、構造を、例えば、プログラムCONCORD(Rusinko等、J.Chem.Inf.Comput.Sci. 29:251 (1989))を利用して生成することができる。他のデータベース、Available Chemicals Directory (Molecular Design Limited, Informations Systems;San Leandro Calif.)は、約100,000の市販の化合物を含んでおり、mir17−92シストロン又はそれによりコードされるmiRNAの潜在的ペプチド模倣物を同定するために検索することができる。
【0064】
ある別の具体例において、本発明のmir17−92シストロンインヒビターには、アンチセンス核酸が含まれる。一具体例において、この発明は、mir17−92シストロンの少なくとも一つのメンバーの発現を阻害するアンチセンス核酸の利用と関係する。かかるアンチセンス核酸は、例えば、発現プラスミドとして送達することができ、これは、細胞において転写されたとき、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つの成熟miRNAの少なくともユニーク部分に相補的なオリゴヌクレオチドを生成する。或は、この構築物は、エキス・ビボで生成されて、細胞に導入されたときにmiRNA及び/又はかかるmiRNAをコードするゲノム配列とハイブリダイズすることにより発現の阻止を引き起こすオリゴヌクレオチドである。かかるオリゴヌクレオチドプローブは、適宜改変された内因性ヌクレアーゼ例えばエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼに耐性であり、それ故にイン・ビボで安定なオリゴヌクレオチドである。アンチセンス分子は、ヒトmiRNAの阻害において有効であることが示されている(A.M. Cheng等、Nucleic Acids. Research, 33:1290-1297 (2005)参照)。
【0065】
ある具体例において、この発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAサイレンシング複合体中に位置したmiRNAのガイド鎖に相補的である。ある具体例において、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも一つの2’−O−メチルヌクレオチドを含む。ある具体例において、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも一つの2’−O−メチルオリゴヌクレオチドを一端又は両端(例えば、3’及び/又は5’末端)に含む。ある具体例において、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、完全に修飾された2’−O−メチルオリゴヌクレオチドである。ある具体例において、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一つ以上の2’−O−メチルリボヌクレオチドを含む。ある具体例において、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、完全に修飾された2’−O−メチルオリゴリボヌクレオチドである。ある具体例において、この発明は、miR19−b−1及び/又はmiR−18を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0066】
アンチセンス核酸には、RNA−RNA、RNA−DNA又はRNA−PNA(タンパク質核酸)相互作用によって標的核酸に結合して、標的核酸の活性を変更させる非酵素的核酸化合物が含まれる(総説としては、Stein及びCheng, 1993 Science 261, 1004及びWoolf等、米国特許第5,849,902号を参照されたい)。典型的には、アンチセンス分子は、該アンチセンス分子の単一の隣接配列に沿って標的配列に対して相補的である。しかしながら、ある具体例においては、アンチセンス分子は、ループを形成して、基質核酸(ループを形成する)と結合することができる。従って、アンチセンス分子は、2つの(又は、それより多くの)非隣接基質配列に対して相補的であってよく、又はアンチセンス分子の2つの(又は、それより多くの)非隣接配列部分は、標的配列対して相補的であってよく、又は両方である。現行のアンチセンスストラテジーの総説については、Schmajuk等、1999, J. Biol. Chem., 274, 21783-21789, Delihas等、1997, Nature, 15, 751-753, Stein等、1997, Antisense N.A. Drug Dev., 7, 151, Crooke, 2000, Methods Enzymol., 313, 3-45; Crooke, 1998, Biotech. Genet. Eng. Rev., 15, 121-157, Crooke, 1997, Ad. Pharmacol., 40, 1-49を参照されたい。
【0067】
加えて、アンチセンスDNAは、核酸を、DNA−RNA相互作用によって標的とし、それにより、二本鎖の標的核酸を消化するRNアーゼHを活性化するために利用することができる。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも一つのRNアーゼH活性化領域を含むことができ、それは、RNアーゼHを活性化して標的核酸を開裂させることができる。アンチセンスDNAは、化学合成することができ、又は一本鎖DNA発現ベクター又は同等物の利用によって発現させることができる。RNアーゼH活性化領域は、標的核酸に結合して、細胞性RNアーゼ酵素により認識される非共有結合性複合体を形成することのできる核酸化合物の領域(一般に、4〜25ヌクレオチド長以上であり、好ましくは、5〜11ヌクレオチド長である)を指す(例えば、Arrow等、米国特許第5,849,902号;Arrow等、米国特許第5,989,912号参照)。このRNアーゼH酵素は、核酸化合物−標的核酸複合体に結合して、該標的核酸配列を開裂させる。
【0068】
このRNアーゼH活性化領域には、例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、5’−チオホスフェート、ホスホルアミデート又はメチルホスホネート主鎖化学、又はこれらの組合せが含まれる。少なくとも一の主鎖化学に加えて、RNアーゼH活性化領域は又、様々な糖化学をも含むことができる。例えば、RNアーゼH活性化領域は、デオキシリボース、アラビノ、フルオロアラビノ又はこれらの組合せ、ヌクレオチド糖化学を含むことができる。当業者は、前述が非制限的な例であること及びRNアーゼ酵素の活性を支持する核酸のホスフェート、糖及び塩基化学の任意の結合がこのRNアーゼH活性化領域及び本開示の範囲内に入ることを認めるであろう。
【0069】
従って、この開示のアンチセンス核酸には、天然型オリゴヌクレオチド及び改変されたオリゴヌクレオチド(ホスホロチオエート型オリゴデオキシリボヌクレオチド、ホスホロジチオエート型オリゴデオキシリボヌクレオチド、メチルホスホネート型オリゴデオキシリボヌクレオチド、ホスホルアミデート型オリゴデオキシリボヌクレオチド、H−ホスホネート型オリゴデオキシリボヌクレオチド、トリエステル型オリゴデオキシリボヌクレオチド、アルファ−アノマー型オリゴデオキシリボヌクレオチド、ペプチド核酸、他の人工核酸、及び核酸改変化合物を含む)が含まれる。
【0070】
他の改変は、オリゴヌクレオチド分子の内部又は末端にあるものを含み、ヌクレオシドリン酸結合間の分子への付加物例えばコレステロール、コレステリル、又はジアミン化合物(変化する数の炭素残基を、アミノ基と、末端リボース、デオキシリボース及びホスフェート修飾との間に有する)を含み、これらは、開裂し、又は対抗鎖に若しくは関連酵素若しくは他のタンパク質(ゲノムに結合する)に架橋する。かかる改変されたオリゴヌクレオチドの例には、改変された塩基及び/又は糖例えばリボースの代りのアラビノースを有するオリゴヌクレオチド、又は水酸基以外の(3’位)及びリン酸基以外の(5’位)化学基に3’及び5’位の両方で結合された糖を有する3’,5’−置換されたオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0071】
糖に対する改変の他の例は、リボース部分の2’位への改変であって、これは、制限はしないが、−O−低級アルキル基(1〜6の飽和又は不飽和炭素原子を含む)により、又は−O−アリール、若しくはアリル基(2〜6炭素原子を有する)により、若しくはアミノ、若しくはハロ基により2’−O−置換されたものを含み、ここに、かかる−O−アルキル、アリール又はアリル基は、置換されていてよく(例えば、ハロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル シアノ、ニトロ アシル アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルバルコキシ、又はアミノ基により)又は置換されてなくてもよい。この開示の特に有用なオリゴヌクレオチドの非制限的例は、3’,5’又は3’及び5’末端で2’−O−アルキル化されたリボヌクレオチドを有し、少なくとも4又は5つの隣接ヌクレオチドがそのように改変されている。2’−O−アルキル化基の例には、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、及び2’−O−ブチルが含まれるが、これらに限られない。
【0072】
ある場合には、天然型及び改変されたアンチセンス核酸の合成を、例えば、ABI(Applied Biosystems Inc.)により製造された381A DNAシンセサイザー又は394DNA/RNAシンセサイザーを利用して、ホスホルアミダイト法(ABIから入手可能な指示書、又はF. Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press (1991)参照)に従って行なうことができる。このホスホルアミダイト法においては、核酸関連分子を、改変されたデオキシリボヌクレオシド又は改変されたリボヌクレオシドの3’末端と、他の改変されたデオキシリボヌクレオシド、改変されたリボヌクレオシド、オリゴ−改変されたデオキシリボヌクレオチド又はオリゴ−改変されたリボヌクレオチドの5’末端との間の、シアノエチル基などの基により保護されたホスホルアミダイトを含む試薬の利用による縮合により合成する。この合成の最終サイクルを完了して、糖部分の5’末端で水酸基に結合した保護基(例えば、ジメトキシトリチル基)を有する生成物を与える。こうして室温で合成されたオリゴマーを、支持体から開裂させて、そのヌクレオチド及びリン酸部分を脱保護する。この方法において、天然型オリゴ核酸化合物が、粗製型で得られる。これらのホスホロチオエート型核酸は又、ホスホルアミダイト法によって、シンセサイザーABIを用いて、上記の天然型と類似の仕方で合成することもできる。この合成の最終サイクル後の手順も又、天然型と同じである。
【0073】
こうして得られた粗製核酸(天然型又は改変型)を、通常の方法例えばエタノール沈殿、又は逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィー(高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)中)、超臨界流体クロマトグラフィーにより精製することができ、更に、電気泳動によって精製することができる。逆相クロマトグラフィー用のカートリッジ例えばtC18−パック化SepPak Plus(ロングボディー/ENV)(Waters)を利用することもできる。これらの天然型及び改変された(例えば、ホスホロチオエート型)核酸の純度を、HPLCにより分析することができる。
【0074】
他の具体例において、この発明は、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現を低下させるRNA干渉(RNAi)の利用に関係する。RNAi構築物は、標的遺伝子の発現を特異的にブロックすることのできる二本鎖RNAを含む。「RNA干渉」又は「RNAi」は、初期には、植物及び蠕虫において認められた二本鎖RNA(dsRNA)が遺伝子発現を特異的な転写後様式でブロックするという現象に適用された用語である。RNAiは、遺伝子発現をイン・ビトロ又はイン・ビボで阻止する有用な方法を提供する。RNAi構築物は、標的核酸配列と同一若しくは実質的に同一のdsRNAの長いストレッチ又は標的核酸配列の一領域のみと同一若しくは実質的に同一のdsRNAの短いストレッチを含みうる。
【0075】
ここで用いる場合、用語「RNAi構築物」は、小型の干渉性RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びイン・ビボで開裂してsiRNAを形成しうる他のRNA種を包含する包括的用語である。RNAi構築物は、ここでは、細胞においてdsRNA若しくはヘアピンRNAを形成することのできる転写物及び/又はイン・ビボでsiRNAを生成することのできる転写物を生じさせることのできる発現ベクター(RNAi発現ベクターとも呼ばれる)をも包含する。ある具体例において、これらのRNAi構築物は、非酵素的核酸である。
【0076】
適宜、これらのRNAi構築物は、細胞の生理的条件下で、阻止すべき遺伝子(即ち、「標的」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部分のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。この二本鎖RNAは、天然のRNAに、RNAiを媒介する能力を有するだけ十分に類似していることのみを必要とする。従って、ここに記載のRNAi構築物は、遺伝子変異、株多型又は進化的相違により予想されうる配列の変化を許容することができるという利点を有している。標的配列とRNAi構築物配列との間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中1つ以下、又は10塩基対中1つ以下、又は20塩基対中1つ以下、又は50塩基対中1つ以下である。siRNA二本鎖の中心におけるミスマッチは、最も重大であり、本質的に、標的RNAの開裂を完全に停止する。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3’末端のヌクレオチドは、標的の認識の特異性に有意に寄与していない。配列同一性は、配列比較及び当分野で公知のアラインメントアルゴリズム(Gribskov及びDevereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991, 及びその中で引用された文献参照)及び、ヌクレオチド配列間の差異パーセントを例えばデフォルトパラメーターを利用するBESTFITソフトウェア(例えば、ウィスコンシン大学のGenetic Computing Group)において実行されるスミス−ウォーターマンアルゴリズムによって計算することにより最適化することができる。阻害性RNAと標的遺伝子の部分との間の90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きい配列同一性又は100%の配列同一性は、好適である。或は、このRNAの二本鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部分と特異的条件下(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES、pH6.4、1mM EDTA、50℃又は70℃での12〜16時間にわたるハイブリダイゼーションとその後の洗浄)でハイブリダイズすることのできるヌクレオチド配列として、機能的に限定することができる。
【0077】
この二本鎖構造は、自己相補的な一本鎖RNA又は2本の相補的RNA鎖によって形成されうる。RNA二本鎖形成は、細胞の内部又は外部の何れにおいても開始されうる。このRNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入することができる。高投与量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)の二本鎖物質ほど、一層有効な阻止を生じうるが、一層低い投与量も又、特定の応用には有用でありうる。阻止は、RNAの二本鎖領域に対応する核酸配列が遺伝子阻止のための標的とされる点で、配列特異的である。
【0078】
主題のRNAi構築物は、「小型の干渉性RNA」又は「siRNA」であってよい。これらの核酸は、凡そ19〜30ヌクレオチド長であり、尚一層好ましくは21〜23ヌクレオチド長である。これらのsiRNAは、ヌクレアーゼ複合体をリクルートして、それらの複合体を特異的配列への対合により標的mRNAに誘導すると理解されている。結果として、標的mRNAは、タンパク質複合体中のヌクレアーゼにより分解される。特定の具体例において、これらの21〜23ヌクレオチドsiRNA分子は、3’水酸基を含む。ある具体例において、これらのsiRNA構築物は、一層長い二本鎖RNAの、例えばダイサー酵素の存在下でのプロセッシングにより生成することができる。一具体例においては、キイロショウジョウバエのイン・ビトロ系が用いられる。この具体例においては、dsRNAは、キイロショウジョウバエ胚から得られた可溶性抽出物と結合し、それにより一つの組合せを生成する。この組合せは、この二本鎖RNAがプロセッシングを受けて約21〜23ヌクレオチドのRNA分子になる条件下で維持される。これらのsiRNA分子は、当業者に公知の幾つかの技術を利用して精製することができる。例えば、ゲル電気泳動を利用して、siRNAを精製することができる。或は、非変性方法例えば非変性カラムクロマトグラフィーを利用して、siRNAを精製することができる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、抗体を利用するアフィニティー精製を利用してsiRNAを精製することができる。
【0079】
或は、このRNAi構築物は、ヘアピン構造の形態である(ヘアピンRNAと呼ばれる)。これらのヘアピンRNAは、合成することができる。外因的に合成することができ、又はRNAポリメラーゼIIIプロモーターからイン・ビボで転写することにより形成することができる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためのかかるヘアピンRNAの作成及び利用の例は、例えば、Paddison等、Genes Dev, 2002, 16:948-58;McCaffrey等、Nature, 2002, 418:38-9;McManus等、RNA, 2002, 8:842-50;Yu等、Proc Natl Acad Sci USA, 2002, 99:6047-52に記載されている。好ましくは、かかるヘアピンRNAは、細胞内又は動物内で処理されて、所望の遺伝子の連続的で安定な抑制を確実にする。siRNAは、細胞内でのヘアピンRNAのプロセッシングにより生成されうるということは、当分野で公知である。
【0080】
他の具体例において、この発明は、mRNA転写物を触媒的に開裂してmRNAの翻訳を妨げるようにデザインされたリボザイム分子の利用に関係する(例えば、1990年10月4日に公開されたPCT国際公開WO90/11364;Sarver等、Science 247:1222-1225;及び米国特許第5,093,246号参照)。mRNAを位置特異的な認識配列で開裂させるリボザイムを利用して、特定のmRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッドリボザイムの利用が好適である。ハンマーヘッドリボザイムは、mRNAを、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域により指図された位置で開裂させる。唯一つ必要なことは、標的mRNAが、2つの塩基5’−UG−3’の後続配列を有することである。このハンマーヘッドリボザイムの構築及び製造は、当分野で周知であり、Haselof及びGerlach, 1988, Nature, 334:585-591に一層完全に記載されている。本発明のリボザイムは又、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以後「Cech型リボザイム」)例えばテトラヒメナ・サーモフィラ中に自然に存在するもの(IVS又はL−19IVS RNAとして知られる)及び沢山記載されてきたもの(例えば、Zaug等、1984, Science, 224:574-578;Zaug及びCech, 1986, Science, 231:470-475;Zaug等、1986, Nature, 324:429-433;University Patent Inc.の公開された国際特許出願第WO88/04300;Been及びCech, 1986, Cell, 47:207-216参照)をも含む。
【0081】
更なる具体例において、この発明は、DNA酵素の、mir17−92シストロンにコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現を阻止するための利用に関係する。DNA酵素は、アンチセンス技術とリボザイム技術の両方の機構的特徴の幾つかをを含んでいる。DNA酵素は、それらが特定の標的核酸配列を、アンチセンスオリゴヌクレオチドのように認識するようにデザインされているが、それらは、リボザイムのように、触媒的であって標的核酸を特異的に開裂する。簡単には、標的核酸を特異的に認識して開裂する理想的DNA酵素をデザインするためには、当業者は、先ず、ユニークな標的配列を同定しなければならない。好ましくは、このユニーク又は実質的にユニークな配列は、約18〜22ヌクレオチドのG/Cリッチな領域である。高いG/C含量は、DNA酵素と標的配列との間の一層強い相互作用を確実にするのを助成する。DNA酵素を合成する際には、該酵素に該メッセージを標的とさせる特異的アンチセンス認識配列が分割され、それで、それは、DNA酵素の2つのアームを含むこととなり、DNA酵素のループは、2つの特異的アームの間に置かれることとなる。DNA酵素を作成して投与する方法は、例えば、米国特許第6,110,462号中に見出すことができる。
【0082】
病気(病状)及び治療の性質によって、この発明の癌治療剤の投与は、他の治療の施与中に及び/又はその後に継続することができる。これらの癌治療剤は、単一投与量で、又は多投与量で作成することができる。幾つかの例において、この癌治療剤の投与は、慣用の治療の少なくとも数日前に開始されるが、他の例においては、投与は、慣用の治療の施与直前又は施与中に開始される。
【0083】
更なる具体例において、この発明は、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現を阻止するための核酸アプタマーの利用と関係する。核酸アプタマーは、関心ある特定の分子に高い親和性と特異性で結合することのできる核酸又は核酸様分子である。核酸アプタマーは又、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性部分の三次元構造を真似る核酸分子であってよい。核酸−アプタマーは、典型的には、約9〜300ヌクレオチド(又はその類似体)長である。一層一般的には、アプタマーは、約30〜100ヌクレオチド(又はその類似体)長である。核酸−アプタマーは、合成法、組換え法及び精製法を含む任意の公知の方法に依って製造することができる(James W., Current Opinion in Pharmacology, 1:540-546 (2001); Colas等、Nature 380:548-550 (1996))。
【0084】
この発明の一つの面により、本発明のアプタマーは、改変されてない又は化学改変されたRNA、DNA、PNA又はポリヌクレオチドを包含する。選択の方法は、アフィニティークロマトグラフィー、及び逆転写(RT)又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅方法であってよいが、これらに限られない。アプタマーは、環境中の意図する標的分子との複合体を形成することのできる特異的結合領域を有し、同じ環境中の他の物質は、この核酸と複合体化されない。
【0085】
この発明は又、アプタマー並びに調節ポリペプチドのコード領域を含む核酸(例えば、mRNA分子)を提供する。このアプタマーは、リガンドのアプタマーへの結合が調節ポリペプチドの翻訳を妨げるように核酸分子中に位置される。
【0086】
他の面において、本発明は、癌又は腫瘍並びにそれらと関係する徴候を治療し又は制御する方法を提供する。任意の薬剤例えば前記のアッセイ系で同定されたものを、腫瘍及び癌の徴候を防止し及び/又は改善する能力につき試験することができる。ここで用いる場合、阻止する、制御する、改善する、防止する、治療する、及び抑制するは、集合的に且つ交換可能に、癌の形成、発生、又は成長を停止又は遅延させること及び癌の徴候を排除するか減少させることを意味する。
【0087】
ある具体例において、mir17−92シストロンインヒビターは、組合せ療法の部分として投与することができる。ある具体例において、組合せ療法は、ここに記載の2以上のmir17−92シストロンインヒビターの投与を含むことができる。ある具体例において、組合せ療法は、2以上の核酸インヒビター(例えば、アンチセンス、リボザイム、又はRNAi構築物、又はこれらの組合せ)を含む。典型的具体例において、組合せ療法は、miR19−b−1及びmiR−18を標的とするアンチセンス核酸を含む。ある具体例において、この発明は、mir17−92シストロンインヒビター及び慣用の化学療法剤例えばパクリタキセル、アラビノシド、5−FU、シスプラチンなどを含む組合せ療法を提供する。他の化学療法剤は、例えば、米国特許出願第2005/0112060号に記載されている。他の具体例において、この発明は、B細胞性の悪性腫瘍の治療のための組合せ療法であって、少なくとも一つのmir17−92インヒビター及び抗−CD20モノクローナル抗体又は抗−CD22モノクローナル抗体を含む当該組合せ療法を提供する。CD20モノクローナル抗体の例は、例えば、Rituximab(商標)を包含する。CD22モノクローナル抗体の例は、例えば、米国特許第5,789,557号及びPCT公開第WO98/42378号、WO00/20864号及びWO98/41641号に記載されている。
【0088】
VI.癌治療の効力をモニターする方法
一面において、本発明は、癌の治療養生法の効力をモニターする方法、及び腫瘍の阻止のための臨床試験又は他の研究における化合物の効力をモニターする方法を提供する。このモニタリングは、癌治療のための治療養生法の適用のコース又は臨床試験又は他の研究の任意の時点で患者から採った生物学的試料において、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現の変化したレベル或は細胞集団又は組織におけるmir17−92シストロンの増幅を検出し、測定することにより達成することができる。治療又は試験又は研究の後期に採った試料における初期のデータよりも一層低い発現のレベル及び/又は増幅は、その治療養生法がその患者における癌の制御に効果的であること、又はその化合物が腫瘍の阻止に効果的であることを示す。対照的に、治療又は試験又は研究の後期に採った試料が、発現及び/又は増幅レベルにおいて、初期データよりも統計的に有意の減少を示さないことは、この治療養生法が、この患者における癌の制御に有効でないこと又はこの化合物が、腫瘍の阻止に有効でないことを示している。勿論、このタイムコース研究は、該治療養生法又は化合物が、何らかの効果を発揮するのに十分な時間が与えられるようにデザインすべきである。
【0089】
それ故、化合物の腫瘍及び癌に対する影響は、臨床試験又は他の研究において及び基礎的薬物スクリーニングにおいてモニターすることができる。例えば、臨床試験又は他の研究において、試料を患者から得て、RNAを調製して、ここに記載したようなノーザンブロット分析又はTaqMan RT−PCRにより分析することができる。適当な試料には、例えば、血液、尿、唾液、血清、又は組織試料が含まれる。ある具体例において、腫瘍細胞は、問題の組織例えば乳房、結腸、肺、又は卵巣腫瘍から生検又は外科手術によって分離することができる。そうして生成されたフィンガープリント発現プロフィル又はmiRNAは、乳癌、結腸癌、肺癌、又は卵巣癌又はB細胞若しくはT細胞性悪性腫瘍を含む様々な癌の推定のバイオマーカーとして役立ちうる。特に、mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現は、かかるバイオマーカーとして役立つ。従って、mir17−92シストロンから異なって発現されるか又は過剰発現される少なくともひとつのmiRNAの発現レベルをモニターすることにより、有効な治療プロトコールを、適当な化学療法的抗癌剤又はここに記載の少なくとも一つのmir17−92シストロンインヒビターを利用して開発することができる。
【0090】
VII.医薬配合物
この発明の組成物を配合して、様々な病状を阻止するために、活性成分を哺乳動物の身体内にある薬剤作用部位と接触させる手段によって投与することができる。それらは、医薬と一緒の利用に利用可能な任意の慣用の手段によって、個々の治療用活性成分として又は治療用活性成分と組み合わせて投与することができる。それらは、単独で投与することができるが、一般には、選択した投与経路及び標準的製薬プラクティスに基いて選択される製薬用キャリアーと共に投与される。
【0091】
本発明に従う利用のための医薬組成物は、慣用の仕方で、少なくとも一つの生理学的に許容しうるキャリアー又は賦形剤を利用して配合することができる。この発明の治療用組成物は、全身投与及び局所投与を含む様々な投与経路のために配合することができる。技術及び配合物は、一般に、Remmington's Pharmaceutical Sciences (Meade Publishing Co., Easton, ペンシルベニア)中に見出すことができる。全身投与のためには、注射(筋肉注射、静脈注射、腹腔内注射、及び皮下注射を含む)が好適である。注射のためには、この発明の治療用組成物を、液体溶液、好ましくは生理的に適合性の緩衝液例えばハンクス溶液又はリンゲル液にて配合することができる。加えて、これらの治療用組成物は、固体形態で配合して、使用直前に再溶解又は再懸濁させることができる。凍結乾燥形態も又、含まれる。
【0092】
経口投与のためには、これらの治療用組成物は、例えば、錠剤又はカプセルの形態で、慣用の手段によって、製薬上許容しうる賦形剤例えば結合剤(例えば、ゼラチン化前のトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉又はナトリウム澱粉グリコレート);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)と共に摂ることができる。これらの錠剤は、当分野で周知の方法により被覆することができる。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態で摂ることができ、又はそれらは、水若しくは他の適当なビヒクルで使用前に構成するための乾燥生成物として提供することもできる。かかる液体調製物は、慣用の手段によって、製薬上許容しうる添加剤例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化した可食脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画された植物油);及び防腐剤(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)を用いて調製することができる。これらの調製物は又、適宜、緩衝塩、調味料、着色料及び甘味料を含むことができる。
【0093】
経口投与のための調製物は、活性剤の制御された放出を与えるように適当に配合することができる。頬内投与のために、治療用組成物を、慣用の仕方で配合された錠剤又は菓子錠剤の形態とすることができる。吸入による投与のために、本発明による利用のための組成物は、加圧パック又は適当な噴射剤例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当なガスを利用する噴霧器からのエアゾールスプレー授与の形態で便利に送達される。加圧エアゾールの場合には、投薬単位は、計量された量を送達するための弁を用意することにより決定される。治療剤の粉末混合物及び適当な粉末基剤例えばラクトース又は澱粉を含む、吸入器又は吹き入れ器における使用のための、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジを配合することができる。
【0094】
これらの治療用組成物は、注射(例えば、ボーラス注射又は連続的点滴)による非経口投与のために配合することができる。注射のための配合物は、単位投薬形態で、例えばアンプル又は多投与量容器(防腐剤を伴う)で提供することができる。これらの組成物は、懸濁液、溶液又は乳液(油性又は水性ビヒクル中)などの形態で摂ることができ、配合用薬剤例えば懸濁化剤、安定剤及び/又は分散助剤を含むことができる。或は、この活性成分は、適当なビヒクル例えば無菌の発熱物質を含まない水での、使用前の構成のための粉末形態であってよい。
【0095】
上記の配合物に加えて、これらの組成物は、デポー製剤として配合することもできる。かかる長期作用性配合物は、移植により(例えば、皮下又は筋肉内移植)又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、これらの治療用組成物は、適当な高分子物質又は疎水性物質(例えば、許容しうる油中の乳液として)又はイオン交換樹脂と配合することができ、又は溶解度の乏しい誘導体として例えば溶解度の乏しい塩として配合することができる。
【0096】
全身投与は又、経粘膜又は経皮的手段によるものであってもよい。経粘膜又は経皮的投与のためには、透過すべきバリヤーに適した浸透剤が配合物において用いられる。かかる浸透剤は、一般に、当分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のためには胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が含まれる。加えて、洗剤を利用して、透過を容易にすることができる。経粘膜投与は、鼻スプレーによるものか又は坐薬を利用するものであってよい。局所投与のためには、この発明の組成物を、軟膏、膏薬、ゲル又はクリーム(一般に、当分野で公知)に配合する。洗浄溶液を局所的に利用して、傷又は炎症を治療して治癒を加速することができる。経口投与のためには、これらの治療用組成物を、慣用の経口投与形態例えばカプセル、錠剤及びトニックに配合することができる。
【0097】
これらの治療用組成物は、所望であれば、活性成分を含む少なくとも一単位投薬形態を含みうるパック又はディスペンサーデバイスにて提供することができる。このパックは、例えば、金属又はプラスチック薄片例えばブリスターパックを包含する。このパック又はディスペンサーデバイスは、投与のための指示書を伴わせることができる。
【0098】
本発明の組成物は又、持続的及び/又は時限式放出用配合物として配合することができる。かかる持続的及び/又は時限式放出用配合物は、当業者に周知の持続的放出手段又は送達用デバイス(米国特許第3,845,770号;3,916,899号;3,536,809号;3,598,123号;4,008,719号;4,710,384号;5,674,533号;5,059,595号;5,591,767号;5,120,548号;5,073,543号;5,639,476号;5,354,556号;及び5,733,566号に記載されたようなもの(これらの開示を各々、参考として本明細書中に援用する))によって作成することができる。本発明のこれらの医薬組成物を利用して、活性成分の少なくとも一つの遅い又は持続的な放出を、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、浸透性膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアなど、又はこれらの組合せの利用により提供して、所望の放出プロフィルを変動する割合で与えることができる。当業者に公知の適当な持続的放出用配合物(ここに記載のものを含む)は、この発明の医薬組成物を用いる利用のために容易に選択することができる。従って、経口投与に適した単位投薬形態例えば、持続的放出に適合された錠剤、カプセル、ゲルキャップ、キャプレッツ、粉末など(これらに限られない)は、本発明に包含される。
【0099】
投与される投薬量は、骨の病気の徴候の改善を生じるのに十分な化合物の治療上有効な量であり、勿論、既知の因子例えば特定の活性成分の薬力学的特性並びにその投与の仕方及び経路;レシピエントの年齢、性別、健康状態及び体重;徴候の性質及び程度;併用する治療の種類、治療の頻度及び所望の効果によって変化する。
【0100】
本発明の治療用組成物の毒性及び治療効力は、細胞培養又は実験動物において標準的製薬手順により例えばLD50(集団の50%に対して致死的である投与量)及びED50(集団の50%に治療上有効である投与量)を測定することよって測定することができる。毒性効果と治療効果との間の投与量比は、治療インデックスであり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療インデックスを示す治療剤は、好適である。毒性の副作用を示す治療用組成物を用いることはできるが、感染していない細胞に対する潜在的ダメージを最少にしてそれにより副作用を減じるために、かかる治療剤を冒された組織部位を標的とする送達システムをデザインするように注意すべきである。
【0101】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトにおける利用のための投薬量の範囲を処方する際に利用することができる。この投薬量は、好ましくは、ED50を含むが毒性は殆ど又は全くない循環する濃度の範囲内にある。この投薬量は、この範囲内で、用いられる投薬形態及び投与経路によって変化しうる。この発明の方法において用いられる任意の薬剤について、治療上有効な投与量は、初期には、細胞培養アッセイから見積もることができる。投与量は、動物モデルにおいて、IC50(即ち、徴候の半最大阻止又は生化学的活性の阻止を達成する試験治療剤の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように処方することができる(細胞培養で測定)。かかる情報は、ヒトにおける有用な投与量を一層正確に決定するために利用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0102】
小型分子薬剤の適当な投与量は、当業者例えば医師に公知の幾つかの因子に依存するということは理解される。この小型分子の投与量は、例えば、治療される患者又は試料の正体、大きさ、及び状態により、更には、組成物を投与する経路、及び該小型分子がこの発明の核酸又はポリペプチドに対して有することを開業医が望む効果によって変化する。典型的な投与量は、患者又は試料の重量1キログラム当たりのミリグラム又はマイクログラム量の小型分子を含む(例えば、1キログラム当たり約1マイクログラム〜500ミリグラム、1キログラム当たり約100マイクログラム〜5ミリグラム、又は1キログラム当たり約1〜50マイクログラム)。
【0103】
ここに記載のこれらの方法は、決して包括的ではなく、特殊な応用に適合する方法が、当業者には明らかとなろう。その上、これらの組成物の有効量は、更に、所望の効果を発揮することの知られた化合物に対する類推から概算することができる。
【0104】
本発明の実際面は、別途示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の慣用の技術(これらは、当業者の技能の内にある)を用いる。かかる技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第二版、Sambrook, Fritsch及びManiatis編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, I及びII巻(D.N. Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編、1984);Mullis等、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames及びS.J. Higgins編、1984);Transcription And Translation (B.D. Hames及びS.J. Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells (R.I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);学術論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J.H. Miller及びM.P. Calos編、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, 154及び155巻 (Wu等編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編、Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, I-IV巻(D.M. Weir及びC.C. Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。本願中で引用したすべての特許、特許出願及び参考文献を、そっくりそのまま、参考として本明細書中に援用する。
【実施例】
【0105】
典型的具体例
この発明は、今や、一般的に記載されたので、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されよう(該実施例は、単に、本発明のある面及び具体例の説明を目的として含まれるものであって、この発明を制限することを意図したものではない)。
【0106】
ミクロRNA(miRNA)は、比較的最近、遺伝子発現を調節する小型の、非コードRNA(ncRNA)の新規なクラスとして現れたものである。新生初期miRNA転写物(pri−miRNA)は、2つのリボヌクレアーゼIII酵素、ドロシャ(Drosha)及びダイサー(Dicer)2,3による順次的プロセッシングを受けて、成熟miRNA(18〜24nt長)が生じる。miRNAは、RNAiエフェクター複合体、RISCに組み込まれて、特異的mRNAを標的とする(翻訳抑制又はmRNA開裂のために)4-6。数百のmiRNAがクローン化及び/又は予想されてきたが、ほんの一握りだけが機能的に特性決定されただけである。例えば、lin−4及びlet−7は、C.エレガンスにおける幼虫の発生のタイミングを調節する7,8。lsy−6及びmir−273は、C.エレガンス化学的感受性ニューロンにおける左右非対称性遺伝子を制御する9,10。バンタム(Bantam)は、キイロショウジョウバエにおいて細胞成長を刺激してアポトーシスを妨げ11、miR181は、哺乳動物において、B細胞分化を強化する。これらの発見は、コンピューターによる標的予想と組み合わせて、広いスペクトルの生理的及び発生的過程を調節するmiRNAと一致する。
【0107】
マイクロアレイベースの発現研究は、特定の腫瘍の表現型と相関するmiRNA発現プロフィルにおける特殊な変更を示している(J.M.T.及びS.M.H., 未公表)。変更された発現を示すものの内で、mir1792シストロンは、13q31(広汎性大型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、一次皮膚B細胞リンパ腫及び幾つかの他の腫瘍型の場合に増幅されるゲノム遺伝子座)に位置される1,13。これらは、このアンプリコン、c13orf25及びGPC5のエピセンターにおける唯2つの注釈を付けられた遺伝子である。以前の研究は、c13orf25が、増大した発現がそのアンプリコンの存在と普遍的に相関している唯一のものであることを示した1。それ故、c13orf25は、13q31アンプリコンの標的として関連付けられてきた1。c13orf25が実際にタンパク質をコードしていることは、予想されるORFが密接に関係する種において保存されていない短いペプチド(<70a.a)しかコードしていないのでありそうにない。むしろ、c13orf25転写物は、一連の7つのミクロRNA、miR−17−5p、miR−17−3p、miR−18、miR−19a、miR−20、miR−19b−1及びmiR−92−1の機能的前駆体であるようである(図1A)。加えて、このクラスターは、X染色体上の相同のmir106a−92クラスター及び第7染色体上のmir106b−25クラスターに関係している(図1A)。ヒトc13orf25遺伝子座とそのマウスのオルソログとのアラインメントは、mir17−92ポリシストロンとその隣接配列内でのみ広範な配列保存を示した。c13orf25及びそのマウスオルソログから得られたESTの幾つかは、mir17−92クラスターの3’末端で終了しており、これは、この位置のドロシャプロセッシング部位の存在と一致する(図1B)。
【0108】
13q31−q32増幅の主たる結果は、mir17−92クラスターに由来する成熟miRNA種の評価であろう。我々は、以前に、13q31−q32領域に増幅を有するとして記載された14つの細胞株を得て、遺伝子量が、それらの細胞株の3つにおいてc13orf25遺伝子座で増大することをQPCR分析を利用して確認した。191の成熟miRNAの豊富さが、これら4つの細胞株において評価され、正常B細胞並びにこのアンプリコンを欠く5つの白血病及びリンパ腫細胞株と比較された(図1C;図4)。SAM分析(Significance Analysis of Microarrays)15を利用して、我々は、高レベル発現がc13orf25の増大した遺伝子量と相関する6つのmiRNAを同定した(表2)。5つは、mir17−92シストロンに由来し、6番目(miR−106a)は、おそらく、それが2つの末端ヌクレオチドにおいてのみ異なるmiR−17−5pへの交雑の結果として同定される(図1C)。この仮説は、mir106a−92遺伝子座がこれらの細胞株においてコピー数の変化を示さないという観察(示してない)により支持される。各細胞株において、発現レベルは、mir17−92遺伝子座のコピー数と相関した(図1C、下段パネル)。我々は又、リンパ腫及び結腸直腸癌の両方を含む一連のヒト腫瘍試料におけるmir17−92前駆体の発現をも調べた。13の広汎性大型B細胞リンパ腫及び6の濾胞性リンパ腫を含む46のリンパ腫試料の内、我々は、これらの試料の65%において、有意の(>5倍)過剰発現を見た。分析したB細胞リンパ腫試料のすべてを考慮して、pri−miRNA発現の平均増加は、約10倍であった(図1D)。対照的に、結腸直腸癌は、pri−miRNAの過剰発現を殆ど示さなかった。この事例では、この遺伝子座からの発現の増大は、通常より少なく(15%の試料が、5倍を超えるアップレギュレーションを示す)、過剰発現の程度は、かなり低かった(図1D)。
【0109】
一緒に考えて、我々のデータは、mir17−92が腫瘍の発生に寄与しうるという仮説を促進した。この考えを直接検証するために、我々は、ヒトB細胞リンパ腫のマウスモデルを利用した。免疫グロブリン重鎖エンハンサー(Eμ)により駆動されるc−myc腫瘍遺伝子を有するトランスジェニック動物は、B細胞リンパ腫を4〜6月齢までに発症する16。同様に、Eμ−mycトランスジェニック胎児肝により駆動される造血幹細胞(HSC)は、致死線量照射されたレシピエントに移植した場合、B細胞リンパ腫を、匹敵する潜伏期で生じる(図2A)17-20
【0110】
それ故、我々は、Eμ−myc/+HSCに、mir17−19b−1(以後、mir1719b)を含む先端切除されたクラスター、mir17−92miRNAシストロンの脊椎動物特異的な部分の発現を指示するMSCVレトロウイルスを感染させた(図1A)。このウイルスは又、GFPトランスジーンをも含んで、我々が、感染した幹細胞をイン・ビトロ及びイン・ビボで追跡するのを可能にした(図2A)。対照用MSCVベクターを有するEμ−myc/+HSCにより再構成されたマウスは、予想される潜伏期(3〜6ヵ月)の後に、不完全な浸透度を有するリンパ腫を発症した(図2B)。同様に、我々は、96の異なる単一マイクロRNAのサブセットを発現するEμ−myc/+HSCにより再構成した40匹より多くの動物を試験した(表3)。我々は、各事例においてmiRNA過剰発現を確認しなかったが、我々は、如何なる病気の有意の加速された開始も認めなかった。対照的に、mir17−19bポリシストロンとc−mycを同時発現する動物の100%は、移植後平均50日で、白血病を発症し(標準偏差=13日、p<0.0001、ログランク試験を利用してMSCV対照と比較)、結局、平均65日齢(標準偏差=13日、p<0.0001、MSCV対照と比較;図2B)で、B細胞リンパ腫により死亡した。一例を除いてすべてにおいて、リンパ腫は、一次リンパ腫は、結合したGFPマーカーによって、可視化することができた(図2C、表1)。これらのmir17−19bクラスターからの成熟miRNAは、これらの腫瘍において、高レベルの発現(パラログのmir106a−92遺伝子座からのmiRNAと比べて)及びmir17−19bの類似の発現レベル(増大したc13orf25遺伝子量を有するKarpas1718リンパ腫細胞株と比べて)を示す(図5)。完全なmir17−92シストロンも又、動物の小集団において試験した。これらは、mir17−19bを発現するHSCにより再構成されたものと類似の結果を与えたが、細胞株における研究は、完全なクラスターを発現するために用いた構築物が一層低レベルの成熟miRNAを与えることを示し、これは、我々の研究の大部分を先端切除されたmir17−19bクラスターに集中させた。研究は進行中であるが、我々は、腫瘍形成を完全なポリシストロンを用いて見られる程度まで加速することのできるmir17−19bクラスターの何らかの個別のメンバーを発見しなければならない(示してない)。
【0111】
これらのEμ−Myc/mir17−19bリンパ腫は、一次腫瘍細胞をC57B6/Jレシピエントに移植した場合2〜3週間以内にB細胞リンパ腫を誘発して4〜5週間後に致死的となるので、過形成というよりもむしろ真に悪性腫瘍である。これらの二次的腫瘍は、元の腫瘍と区別できない病理学的特徴を示し、更なる2回の連続的移植の後において腫瘍形成能を保持している(データは、示してない)。それ故、ミクロRNAクラスターは、マウスにおいてEμ−myc誘発された腫瘍形成を加速することができる。
【0112】
Eμ−myc/mir17−19bモザイク動物の病理学的証明は、リンパ節の広範な腫脹、脾臓の過形成、リンパ腫細胞による胸腺浸潤、及び白血病を包含した(図2C)。進行したリンパ腫の動物は、骨髄の機能不全のために、骨髄外での造血を示した。その上、14匹の動物の内の6匹は、腰部結節におけるかなりの腫瘍成長と関連した後肢の麻痺を示した。c−mycとmir17−19bの組み合わされた発現から生じた腫瘍は、一貫して、肝臓、肺、及びときには腎臓を含むリンパ性区画の外側の内臓を侵襲する(図2C、表1及び図3B)。加えて、Eμ−myc/mir17−19bリンパ腫は、広範なアポトーシスを伴わない高い有糸分裂インデックスを示す(図3A)。これは、ミクロRNAクラスターを欠き、高度のアポトーシスを示すEμ−myc/MSCV腫瘍と対照的である(図3A)。これらの発見は、Eμ−mycとmir17−19bの間の協力が、不適当な増殖に対する正常のアポトーシス応答を回避することのできる高度に悪性の、播種性リンパ腫を生じさせることを示している。
【0113】
Eμ−myc誘発されたリンパ腫は、Bリンパ性細胞系統を起源とするが、それにもかかわらず、これらの腫瘍細胞の発生学的特徴は、それらが成熟B細胞又はプレB細胞の何れにでも似ることができるのでステージ特異的でない。これらのEμ−myc/mir17−19bリンパ腫の細胞系統を試験するために、我々は、B細胞特異的マーカー、B220、並びにT細胞特異的マーカー、CD4及びCD8aを含む細胞表面マーカーの発現を評価した。驚くことではないが、すべての腫瘍は、B細胞起源であり、B220に陽性に染色され、CD4及びCD8aについては陰性である(図3C及び表1)。次に、我々は、これらの腫瘍を、プレB細胞を成熟B細胞から識別するためにCD19及びIgM発現につき分析した。一つの例外はあるが、Eμ−myc/mir17−19bリンパ腫は、純粋に、プレB細胞系統(Thy1lowCD19+B220+IgM)に由来し(表1)、これは、mir17−19bの過剰発現が、B細胞前駆体の我々の実験条件下での形質転換に非常に有利であることを示唆している。
【0114】
理論に拘束されることは望まないが、腫瘍病理学の研究は、このクラスターの増大した発現が、イン・ビボで上昇したmyc発現に対するプロアポトーシス応答を静めることを示唆している。加えて、我々は、以前に、このmiRNAシストロンが、胚性幹細胞において高度に発現されること及びその発現がマウスの胎児の発生中に減少することを示した21。それ故、これらのmiRNAが、「幹」特性を促進し又は初期発生細胞系統の特徴を特定することはありうることである。
【0115】
以前の状況証拠は、幾つかのmiRNAの腫瘍形成への潜在的な関与を示していた。miRNAは、哺乳動物のゲノムの1%しか占めないが、miRNA遺伝子の50%より多くが、癌において、増幅、欠失及び転座と関係する領域に位置している22。様々な腫瘍型の発現の研究は、miRNAプロフィルの特別の変化をも示した22-25。例えば、mir−15及びmir−16は、B細胞慢性リンパ球性白血病において、頻繁に、欠失及び/又はダウンレギュレートされ26;miR−143及びmiR−145は、直腸結腸新生物において低下した発現を示し25、そしてmiR−155及びそのncRNA宿主遺伝子、BICは、バーキットリンパシュの患者において100倍アップレギュレートされる24。ここに、我々は、一つのmiRNAポリシストロンが、腫瘍特異的な増幅の対象であるだけでなく、それは、腫瘍及び腫瘍細胞株において過剰発現もされること及びイン・ビボで腫瘍遺伝子として作用することができることを示した。我々の結果は、非コードRNAは、腫瘍遺伝子及び腫瘍サプレッサーネットワークの分子構造物の一体式部分として作用することができることを示している。
【0116】
方法
miRNA発現プロファイリング
5μgの全RNAを、RNAリガーゼ及びCy3結合したジヌクレオチドを用いて標識し、Thomson等21に記載されたようにカスタムオリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズさせた。Cy3の中位の強度値を、フィルターリングして、バックグラウンドの2倍を超えないデータ点を除去した。値を、ログ変換して(底2)、アレイによりメジアン中央化した。クラスタリングを、スタンフォード大学のクラスタープログラムを利用して、遺伝子によりメジアン中央化された値を用いて実施した。樹状図及び発現マップを、スタンフォード大学のTreeviewプログラムにより生成した。
【0117】
細胞株
miRNAの豊富さの測定を、Karpas1718(絨毛様リンパ球を有する脾臓リンパ腫に由来、英国、ケンブリッジ大学、A. Karpas寄贈)、OCI−Ly4、OCI−Ly7及びOCI−Ly8(広汎性大型B細胞リンパ腫由来、コロンビア大学、R. Della-Favera寄贈)を利用して行なった。13q31−q32アンプリコンを欠く細胞株は、Raji(B細胞、バーキットリンパ腫由来、ATCC)、Namalwa(B細胞、バーキットリンパ腫由来、ATCC)、HG1125(EBV形質転換したヒトリンパ芽球様細胞、Cold Spring Harbor Laboratory, B. Stillman寄贈)、Manca(リンパ芽球様細胞、慢性骨髄性白血病由来)、Jurkat、増殖中のB細胞(C57B6/Ly5.2マウスから単離されて、培養においてリポ多糖による刺激により増殖した脾臓B細胞)、及び正常B細胞(臍帯血由来、Cambrex, ニュージャージー)であった。
【0118】
RT−QPCR分析及びコピー数分析
腫瘍試料を、Cooperative Human Tissue Network, USA (world wide web、chtn.ims.nci.nih.gov)から得た。5人の個人からの対応する正常組織RNAを、Biochain Institute Inc (Hayward, カリフォルニア)から購入した。蛍光原リアルタイムPCRのために、mir17−92pri−miRNAを増幅するプライマー及び対照用β−アクチンmRNAプローブを、Primer Express ソフトウェア(V.2)を用いて、次のようにデザインした:mir17−92フォワードプライマー、CAGTAAAGGTAAGGAGAGCTCAATCTG (配列番号2)、mir17−92リバースプライマー、CATACAACCACTAAGCTAAAGAATAATCTGA (配列番号3)及びmir17−92プローブ、(6-FAM)-TGGAAATAAGATCATCATGCCCACTTGAGAC-(TAMRA)(肺列番号4)、β−アクチンフォワードプライマー、GCAAAGACCTGTACGCCAACA (配列番号5);β−アクチンリバースプライマー、TGCATCCTGTCGGCAATG (配列番号6);β−アクチンプローブ、(6-FAM)-TGGCGGCACCACCATGTACC-(TAMRA)(配列番号7)。各RNA試料中のmir17−92プライマーとβ−アクチンプライマーによって検出されるRNA種の比は、RT−QPCRにより、ABI7900HT Taqman配列検出器を利用して、標準曲線法に従って、三連で測定した。その後、すべての値を、5つの対応する標準試料の平均化した比を用いて標準化した。ABI7900HT配列検出器を利用するDNAコピー数測定のために、我々は、QPCR分析を、上記と同じmir17−92プライマーセットを利用して実施して、そのデータを、染色体領域6p22に対応する参照用プローブ(フォワードプライマーGGTCTCTATTTGCACTTGGCTGAT (配列番号8);リバースプライマーTTTTCATTGTTGACCAAGCTAGACA (配列番号9);プローブ、(6-FAM)-TAGGGCATACTGCCTGCATATTTCCTGCT-(TAMRA)(配列番号10))又はβ−アクチンプローブに対して標準化した。これらの報告した値は、標準参照用プローブを超えるmir17−92遺伝子座におけるDNAコピー数の比を表している。
【0119】
Eμ−mycHSCの養子移入
胎児肝由来のHSCを、E13.5−E15.5Eμ−myc/+胎児から分離して、MSCV単独で又はmir17−19bクラスターを発現するMSCVで形質導入した。リンパ腫形成の観察された加速が挿入突然変異誘発による可能性を排除するために、実験を、8匹のEμ−myc/+胎児から分離した胎児肝細胞を利用して、MSCV17−19b及びMSCV対照についての個々の感染を用いて行なった。我々の研究で用いたMSCVレトロウイルスベクターは、PGK−ピューロマイシン−IRES−GFP(PIG)カセット18を含んでいる。感染率は、FACSソーティングにより評価して、典型的には、全胎児肝細胞の40%であった。MSCV−mir17−19b−PIG及びMSCV−PIG(対照)に感染したHSCを、その後、6〜8週齢の致死的照射したC57BL/6レシピエントマウスに移植した17。腫瘍の開始を、血液塗抹分析により監視し、腫瘍試料を、組織病理学的研究のために4%パラホルムアルデヒド中に集め、又はFACS用に単一細胞懸濁液として調製した。
【0120】
我々は又、myc誘発されたリンパ腫形成を加速するmiRNAを探すために96のmiRNAのスクリーニングを行なった。この実験において、約50bpの隣接配列を有する各プレ−miRNAを、SV40−GFPを含むMSCVベクター中のCMVプロモーターの下流にクローン化した。それぞれ特異的なmiRNAを過剰発現する8つの個別のMSCV構築物を、同濃度でプールした。12プールのDNAを各々用いてウイルスを生成して、上記の3匹のレシピエント動物への養子移入のためのEμ−myc/+胎児肝細胞に感染させた。レシピエント動物を、腫瘍形成について、少なくとも6ヵ月にわたって監視した。リンパ腫を発症したものについては、腫瘍細胞を、大きくなったリンパ節から調製して、GFP発現につきFACS分析にかけた。
【0121】
組織学
組織試料を、4%パラホルムアルデヒドにて固定し、パラフィンに包埋して、5μmのスライスに切り、ヘモトキシリン及びエオシンにより染色した。Ki−67検出(ウサギ抗Ki67、NovoCastra, Newcastle, 英国)のために、代表的な切片をパラフィン除去して、等級付けしたアルコール中で再水和して、アビジン−ビオチンイムノペルオキシダーゼ法を用いて処理した。次いで、切片を、マイクロ波オーブン処理とその後の標準的手順による抗原回復にかけた。ジアミノベンジジンを色原体として、ヘマトキシリンを核対比染色剤として用いた。B220免疫組織化学(ラット抗マウスCD45R/B220−クローンRA3−6B2、BD Biosciences Pharmingen)のために、抗原回復のための予備処理は、必要とされなかった。TUNELアッセイによるアポトーシス比の分析を、公開されたプロトコール28に従って行なった。
【0122】





【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
【表4】





【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】mir17−92bクラスターは、B細胞リンパ腫の試料及び細胞株において増大した発現を示していることを示した図である。
【図2】mir17−19bクラスターの過剰発現は、マウスにおいてc−myc誘導されたリンパ腫生成を加速することを示した図である。
【図3】mir17−19bとc−mycの協力により生成されたリンパ腫の病理学的及び免疫学的分析を示した図である。
【図4】白血病及びリンパ腫細胞株のミクロRNA発現マップである。
【図5】Eμ−myc/mir17−19b B細胞リンパ腫におけるmir17−92の異所的発現を示した図である。
【図6】mir17−92pri−miRNAのレベルを、リンパ腫、乳房腫瘍、肝細胞癌及び結腸直腸癌において、RT−QPCRにより測定して、それぞれ、対応する正常組織において見出されるレベルと比較した図である。
【図7】mir17−92とp53喪失との間の癌遺伝子の協力を示した図である。
【図8】mir17−92ポリシストロンからの個々のmiRNAの過剰発現は、マウスにおけるc−myc誘導されたリンパ腫生成を加速することを示した図である。
【図9】c−mycのmir−18、mir−19b及びmir19a−19bとの協力に由来する腫瘍の免疫表現型を与える表1を示している図である。
【図10】mir17−92シストロンによりコードされるmir−19bmiRNAレベルのアンチセンスオリゴヌクレオチドを利用する阻止を示している図である。
【図11】ヒトmir−17−92ポリシストロンのDNA配列(配列番号:1)を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌について患者を診断する方法であって、該方法は、下記:
a)患者からの生物学的試料において、(i) mir17−92シストロン又はその部分のゲノム中のコピー数、(ii) このmir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、又は(iii) このmir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性レベルの少なくとも一つを測定し;そして
b)このゲノム中のコピー数、発現レベル又は活性レベルを対照と比較することを含み、このゲノム中のコピー数、発現レベル又は活性レベルの対照と比較しての差異が該患者における癌を示す当該方法。
【請求項2】
患者が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が、ヒトである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
癌が、リンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
miR19−b−1、miR−18、又はmiR19−b−1とmiR−18の発現レベルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
miR19−b−1、miR−18、又はmiR19−b−1とmiR−18の活性レベルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料が、血液、尿、唾液、血清又は組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料が、前癌又は癌であることが疑われる哺乳動物の一領域からの組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
mir17−19bのゲノム中のコピー数、mir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、又はmir17−19bによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの活性レベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
mir17−92シストロンのインヒビターを同定する方法であって、該方法は、下記:
a)mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAを発現する癌細胞を候補の薬剤と接触させ;
b)該細胞においてmir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、活性レベル、又は発現レベルと活性レベルを測定し;そして
c)試験薬剤と接触後の細胞において該mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、活性レベル、又は発現レベルと活性レベルを、対照と比較することを含み、該細胞中の少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、活性レベル、又は発現レベルと活性レベルの、対照と比較しての減少が、候補の薬剤がmir17−92シストロンのインヒビターであることを示す当該方法。
【請求項12】
癌細胞が、miR19−b−1、miR−18、又は両方を発現する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
癌細胞が、B細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
候補の薬剤が、核酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi構築物、又はリボザイムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
候補の薬剤が、小型分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
癌細胞が、ヒトの細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つのmiRNAが、mir17−19bによりコードされる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
ある量の候補の薬剤、又はその類似体を調製することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
候補の薬剤又はその類似体の、動物における効力及び毒性についての治療的プロファイリングを行なうことを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
候補の薬剤又はその類似体を医薬配合物中に配合することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
適当な動物毒性プロフィルを有する候補の薬剤又はその類似体の医薬製剤を製造することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
適当な動物毒性プロフィルを有する候補の薬剤又はその類似体の医薬製剤をヘルスケアプロバイダーに売ることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
患者における治療養生法の効力を測定する方法であって、該方法は、下記:
a)mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、活性レベル、又は両方を、患者から得られた第一の生物学的試料において測定し、それにより対照レベルを生成し;
b)mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現レベル、活性レベル、又は両方を、治療養生法の施与後の時点で患者から得られた第二の生物学的試料において測定し、それにより試験レベルのデータを生成し;そして
d)対照レベルを試験レベルとmiRNAベースで比較することを含み、mir17−92シストロン又はその部分によりコードされる少なくとも一つのmiRNAの、対照レベルに対する試験レベルでの発現レベル、活性レベル、又は両方における減少を示すデータが、該治療養生法が、該患者において有効であることを示す当該方法。
【請求項25】
治療養生法を患者に施与することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
癌を治療し又は予防することを必要とする患者において癌を治療し又は予防する方法であって、該患者に、有効量のmir17−92シストロン又はmir17−19bのインヒビターを投与することを含む当該方法。
【請求項27】
癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
癌が、リンパ腫である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
患者が、哺乳動物である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
患者が、ヒトである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
インヒビターが、核酸インヒビターである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
インヒビターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi構築物、又はリボザイムである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
インヒビターが、mir17−92シストロン又はmir17−19bによりコードされるmiRNAの少なくとも一部分に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、該部分がRNAサイレンシング複合体にガイド配列として組み込まれている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
インヒビターが、少なくとも一つの2’−O−メチルヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
核酸インヒビターが、mir17−92シストロン又はmir17−19bによりコードされるmiRNAを標的とする、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
核酸インヒビターが、miR19−b−1を標的とする、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
核酸インヒビターが、miR−18を標的とする、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
核酸インヒビターが、配列番号11を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
核酸インヒビターが、配列番号12を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
生理的条件下でmir17−92シストロンにハイブリダイズして、細胞中でmir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現又は活性を低下させる配列を含む単離された核酸化合物。
【請求項41】
アンチセンス核酸化合物である、請求項40に記載の核酸化合物。
【請求項42】
アンチセンス核酸化合物が、配列番号11を含む、請求項41に記載の核酸化合物。
【請求項43】
アンチセンス核酸化合物が、配列番号12を含む、請求項41に記載の核酸化合物。
【請求項44】
アンチセンス核酸が、少なくとも、2’−O−メチルオリゴヌクレオチドを含む、請求項41に記載の核酸化合物。
【請求項45】
核酸化合物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物であって、該核酸化合物が、mir17−92シストロン転写物に生理的条件下でハイブリダイズして、細胞において該mir17−92シストロンによりコードされる少なくとも一つのmiRNAの発現又は活性を低下させる、当該医薬組成物。

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2008−539731(P2008−539731A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510167(P2008−510167)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/016987
【国際公開番号】WO2006/119365
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(504278156)
【出願人】(507364001)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA
【住所又は居所原語表記】33 Bynum Hall,Chapel Hill,NC 27599 U.S.A.
【Fターム(参考)】