説明

癌の診断用マーカーおよびその方法

本発明は、乳癌または結腸直腸癌に特異的に過剰発現するCTHRC1、CANP、およびKIAA0101の診断用マーカーを提供するものである。該マーカの検出することにより当該ガンを診断する方法、および前記マーカの発現および活性を阻害することで予防または治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は癌の診断用マーカーに関する。さらに詳しくは、本発明は、CTHRC1、CANP、およびKIAA0101の癌に対する診断用マーカー、それは乳癌と結腸直腸癌の場合に過剰発現されるものに関する。また、本発明は、診断マーカーの活性および発現の阻害を含み、診断マーカーの発現を検出することによる診断方法、ならびに癌の予防および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
世界の300万人以上の人が2003年に新たに癌を発生したことが報告された。韓国においては癌の発生率は毎年増加しており、そして、2002年では数十万人もの数にのぼる。肺癌、結腸直腸癌および乳癌は、概算で全ての癌患者の約40%を占める。食生活の欧米化に伴い、韓国において結直腸癌、乳癌と肺癌の発生が段階的に増加する傾向にある。
【0003】
長い間、癌に対する広範囲および重点的な研究にもかかわらず、確実に癌を治療する有用な方法は、いまだ開発されていない。初期段階の癌を除去する手術は、長期生残の可能性をあげる最も効果的方法であることが知られている。
【0004】
その作用メカニズムに応じて、従来の抗癌剤は、主に補助的な治療、細胞傷害能、およびホルモンに分類される。補助的な治療は、直接、腫瘍細胞を対象とするものではなく、初期の治療の手助けするために使用されており、抗催吐薬、ビスホスホネート、造血成長因子、鎮痛剤などが挙げられる。細胞障害能の治療は、急速な増殖型の細胞をアポトーシスに誘導するよう作用する。ホルモンは、それらの活性機構に従い、アルカリ化剤、抗代謝体、ビカアルカロイド(vikaalkaloids)、およびアントラサイクリン/エトポシドに分けられる。第一の抗癌剤、細胞障害性治療としての使用は、この50年間でさまざまな癌の治療において広く使われていた。しかしながら、非特異的な活性作用は、細胞障害性治療が細胞毒の治療が腫瘍細胞だけに対する阻害活性だけではなく、他の正常な細胞増殖に対しても強力な細胞毒性を示し、その結果、深刻な副作用を招来する。ホルモン剤は、例えば乳房、胸部、前立腺などのホルモンに敏感な組織の腫瘍を無くすために開発された。胸部または前立腺のような組織における腫瘍細胞の細胞分裂は、特定のホルモンによって促進される傾向がある。したがって、これらのホルモン作用の抑制は、癌の進行を阻害する結果となる。
【0005】
ホルモン療法は、毒性は小さいが、副作用もある。加えて、長期間ホルモン剤を投与すると、ホルモン剤に耐性を示す不治の癌を引き起こす。
【0006】
従来の抗癌剤の問題、すなわち、副作用および耐性ができることを解決するための代替手段として、特に癌を標的とする新規な機構を示す新規な治療法が開発されている。治療的機構は様々であるが、革新的な治療は、正常細胞の腫瘍形成中に現れる、特異的マーカーまたは遺伝的異常を利用して、腫瘍を特異的に治療するという点で、共通点がある。近年開発されている治療法は、大きくは、癌治療的機構に関し、血管形成阻害薬、免疫賦活剤および腫瘍標的薬剤に分類することができる。最近、抗癌剤の毒性を最小限化するための代替手段として生じている癌標的療法の最も重要なポイントは、癌細胞に対し特異的な遺伝子を発見することである。それを達成すべく、世界的に非常に著名なバイオ企業が、必死になり、遺伝子発現プロファイル、遺伝子マッピング、プロテオミクス、コンピュータ解析などを通じて、新しい標的遺伝子を調査している。例えば、世界におけるリーディングバイオ企業の一つであるジェネンテックは、最近27年間で、ゲノミクスを使った新規な標的発見計画を向上させ、約1,200の疾患に関連する遺伝子の特許権を有している。近年では、SPDI(Secreted Protein Discovery Initiative)計画が、行われ(1996−2001)、新規な250のタンパク質を含む1,000以上の分泌タンパク質を入手した。このような背景から、乳癌、結腸直腸および肺癌細胞ならびに正常細胞の間の発現レベルの差異をスクリーニングすることを目的として、本発明者らは、鋭意徹底的な癌診断および治療を行い、その結果、3つの新規な遺伝子 CTHRC1、CANPおよびKIAA0101は、乳癌または結腸直腸癌細胞において、特異的に過剰発現することを見出し本発明に至った。また、これら遺伝子の発現が抑制されると、癌細胞は、細胞自然死を遂げ、増殖を遅らせることになることも観察された。すなわち、この遺伝子 CTHRC1、CANPおよびKIAA0101は、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーとして使用することができるだけではなくて、癌治療の標的としても使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示
【課題を解決するための手段】
【0008】
技術的課題
すなわち、本発明の目的は、CTHRC1(コラーゲン トリプル ヘリックス リピート コンテイニング 1)、CANP(癌結合核タンパク質)、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のmRNAレベルを測定しうる薬剤を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーの検出キットを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のタンパク質レベルを測定しうる薬剤を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーの検出キットを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、テスト用生体サンプルおよびコントロールサンプルの間のCTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現レベルを対比することを含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーを検出する方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、所定の遺伝子に特異的なRNA干渉を誘導でき、所定の遺伝子のmRNAに相補的なアンチセンスRNA鎖及び対応するセンスRNA鎖から構成される、siRNA(低分子干渉 RNA)配列を含み、ここで、所定の遺伝子はCTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、乳癌または結腸直腸癌の予防および治療用薬剤組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に特異的な抗体を含む、乳癌または結腸直腸癌の予防および治療用薬剤組成物を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の細胞内のmRNAもしくはタンパク質レベルまたはタンパク質活性を減少させることを有する、乳癌もしくは結腸直腸癌の細胞増殖を抑制するまたは乳癌もしくは結腸直腸癌細胞のアポトーシスの誘導する方法を提供することである。
【0016】
図面の簡単な説明
図1は、DDRT PCRゲルに分離されたDNAを示す。
図2は、DNAチップハイブリダイゼーション画像を示す。
図3は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフを示す。
図4は、動物における腫瘍形成プロセスを示す。
図5は、mRNAレベルの変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
図6は、アポトーシスの誘起および細胞増殖の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
図7は、DNA断片化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
図8は、カスパーゼ活性の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
図9は、膜変性によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
図10は、細胞周期の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
ベストモード
一実施形態によれば、本発明は、乳癌または結腸直腸癌の診断用のマーカーに関し、該マーカーは、CTHRC1(Collagen Triple Helix Repeat Containing 1)、CANP(Cancer−Associated Nucleoprotein)、KIAA0101およびこれらの組合わせからなる群から選ばれる遺伝子を含む。
【0017】
本明細書において用いられる「診断」という用語は、兆候および症状により、また種々の診断的方法から、病状または病気を特定する過程を意味する。
【0018】
本発明の目的に対し、乳癌または結腸直腸癌の診断マーカーが発現するかどうかを調べることにより、乳癌および結腸直腸癌の発生を決定することを意味するために、「診断」は用いられる。
【0019】
本明細書において用いられる「診断用のマーカー」(marker for diagnosis)、「診断のマーカー」(diagnostic marker)または「診断マーカー」(diagnosis marker)という用語は、正常細胞と、乳癌または結腸直腸癌細胞とを区別することができる物質を指す。正常細胞と比較して乳癌または結腸直腸癌細胞において発現レベルが増加する限り、または減少する限り、ポリペプチド、核酸(例えば、mRNA)、脂質、糖脂質、糖蛋白質および単糖類(単糖、二糖、オリゴ糖)等の有機生体分子を、乳癌または結腸直腸癌の診断マーカーとして用いることができる。本発明において有用な乳癌または結腸直腸癌の診断用マーカーは、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびこれらの組合わせから選ばれる遺伝子、または対応する蛋白質であり、該蛋白質の発現レベルは、正常細胞と比較して乳癌または結腸直腸癌細胞において増加する。
【0020】
CTHRC1(Collagen Triple Helix Repeat Containing 1;GeneID 115908 NM_138455)(これはヒトゲノムプロジェクト(Clark et al,2003;Zhang and Henzel,2004)が完了した後の2003年にクローン化された)は、動脈損傷の際に発現レベルが上昇し、細胞遊走を促進するためにコラーゲンマトリックスの蓄積を阻害することが報告されている(Pyagay et al,2005)。しかしながら、その詳細な機能は不明なままである。
【0021】
CANP(Cancer−Associated Nucleoprotein;GeneID 374393 NM_198947)はヘパトーマ細胞からLiuらによってクローン化された遺伝子として登録された。CANPの全長クローンは、Strausbergらによってクローン化された(Strausberg et al.,2002)。機能および癌との関係に関するCANPについての情報は現在までのところなされていない。
【0022】
KIAA0101(KIAA0101;GeneID 9768 NM_01473β)については、(ORF(オープン・リーディング・フレーム)のみが報告されている(Nagase et al,.1995)。KIAA0101の機能はいまだ決定されていない。Millennium Pharmaceuticals,Inc.が、前立腺癌(米国第6,355,430号)のマーカーとしてのこれらの使用に対する特許権を有する。Mizutaniらは、悪性前立腺癌においてKIAA0101を過剰発現させたことを報告した(Mizutani et al, 2005)。しかしながら、乳癌または結腸直腸癌においてKIAA0101の過剰発現は報告されておらず、また、KIAA0101の発癌性はこれまで観察されていない。
【0023】
本願発明者は、CTHRC1のmRNAレベルが正常細胞と比較して、乳癌細胞において10.9倍、結腸直腸癌において22倍に増加し、CANPのmRNAレベルが正常細胞と比較して、乳癌細胞において11倍、結腸直腸癌において2倍に増加し、そしてKIAA0101のmRNAレベルが正常細胞と比較して、乳癌細胞において12.8倍、結腸直腸癌において2.2倍に増加したことを見出した。
【0024】
したがって、CTHRC1、CANPおよびKIAA0101の発現レベルの定量化は、乳癌または結腸直腸癌の発生を決定することに用いられうる。
【0025】
他の実施形態によれば、本発明は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびこれらの組合わせから選択される遺伝子のmRNAレベルに基づいて、乳癌または結腸直腸癌の診断マーカーを検出するためのキットに関する。
【0026】
詳細には、本発明による乳癌または結腸直腸癌の診断マーカーを検出するキットは、遺伝子のmRNAレベルを測定する試薬を含む。
【0027】
遺伝子のmRNAレベルを測定する試薬は、好ましくは一対のプライマーまたはプローブである。CTHRC1についてはNM_138455(NCBI)、CANPについてはNM_198947(NCBI)、そしてKIAA0101についてはNM_014736(NCBI)において、ヌクレオチド配列が既に見つかっているので、当業者であればヌクレオチド配列に基づいて、遺伝子の予め定められた領域を特異的に増幅することに用いられるプライマーやプローブを設計することができる。
【0028】
本明細書において、「プライマー」という用語は、3’ヒドロキシ末端を有する短い核酸鎖を指し、新たに鋳型鎖を生成させるための開始点としての役割を果たすように相補的な鋳型と塩基対を形成する。DNA合成または複製には、プライマーに加えて、適切なバッファー、適切な温度、重合酵素(DNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)および4種のヌクレオチド三リン酸が必要となる。マーカー遺伝子のCTHRC1、CANPまたはKIAA0101に対して特異的で、本発明に有用なプライマーは、ヌクレオチドが7〜50の長さの範囲であるセンスおよびアンチセンス核酸である。プライマーは、開始点としてプライマーの基本的役割を変えない限り、追加の特性が加えられてもよい。
【0029】
必要であれば、本発明のプライマー配列は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的または化学的方法を用いて直接的にまたは間接的に検出しうる標識を有していてもよい。標識の例としては、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、アルカリホスファターゼ)、ラジオアイソトープ(例えば、32P)、蛍光分子、および化学基(例えば、ビオチン)などが挙げられる。
【0030】
本発明において、「一対のプライマー」という用語は、プライマーペアの全ての組み合わせから選択される1種を指し、各々はセンスヌクレオチド配列とアンチセンスヌクレオチド配列から構成される。好適には、分析結果に特異性と感受性を与えうる一対のプライマーである。プライマーのヌクレオチド配列が、サンプル中に存在する非標的配列に結合せず、非特異的増幅のない、標的遺伝子配列のみを増幅するために用いられうる場合、プライマーは高い特異性を示しうる。本明細書において「非特異的増幅」という用語は、プライマーの非標的配列のハイブリダイゼーションおよび引き続いてのハイブリダイズしたプライマーの伸長に起因する、標的とするヌクレオチド配列以外のヌクレオチド配列の増幅を意味する。
【0031】
本明細書中に使用される、「プローブ」ということばは、数個から数百個の塩基長の、mRNAに特異的に結合できる核酸(例えば、DNAまたはRNA)断片を意味する。本発明で使用できるプローブは、特異的なmRNAの存在または不存在を検出できるように標識される。プローブは、オリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、二本鎖DNA、またはRNAの形態であってもよい。
【0032】
本発明で使用できるプライマーまたはプローブは、ホスホルアミダイト固体担体または他の既知の技術を用いて化学合成されうる。そのヌクレオチド配列は、当該分野において既知の様々な手段を用いて修飾されてもよい。例えば、修飾方法は、以下に限られないが、メチル化、「キャッピング」、天然ヌクレオチドの1以上の相同体による置換、および非荷電リンカー(例えば、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、カルバメートなど)または非荷電リンカー(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)などの、ヌクレオチド間の変更が挙げられる。
【0033】
標的遺伝子の配列が開示されているおかげで、当業者は、既存のデータベースによって標的遺伝子内の配列のうちのハイブリダイゼーションの程度を考慮して非常に特異的でかつ感受性の高いプライマー対の組み合わせを容易に決定できる。本発明の具体的な実施形態においては、CTHRC1の発現は、配列番号:5及び6のプライマーを用いたmRNAレベルで検出され、CANPの発現は、配列番号:7及び8のプライマーを用いたmRNAレベルで検出され、さらに、KIAA0101の発現は、配列番号:9及び10のプライマーを用いたmRNAレベルで検出される。
【0034】
本発明に係る検出キットは、一以上の成分からなる組成物、溶液または装置を含む。
【0035】
好ましくは、乳癌または結腸直腸癌の検出用キットは、RT−PCRに必要な要素を含む。このRT−PCRキットは、詳細には、マーカー遺伝子に特異的なそれぞれのプライマー対に加えて、試験管または他の適当な容器、反応バッファー(様々なpHやMg濃度を有する)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq−ポリメラーゼ、逆転写酵素やDNase等の酵素、RNAaseインヒビター、DEPC−水、及び脱イオン水を含んでもよい。必要であれば、定量用のコントロール遺伝子に特異的なプライマー対をキットに含ませてもよい。
【0036】
加えて、乳癌または結腸直腸癌の診断マーカーの検出用キットは、DNAチップ機能に必要な要素を有していることが好ましい。本発明の好ましい実施形態においては、DNAチップキットは、基質、基質にプローブとして結合する遺伝子または対応するcDNAを有してもよく、さらに必要であれば、基質に結合する定量用のコントロール遺伝子または対応するcDNAを有していてもよい。
【0037】
さらなる実施形態によると、本発明は、CTHRC1、CANP、KIAA0101及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質の発現レベルを定量できる材料を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断用キットに関するものである。
【0038】
詳細には、本発明に係る乳癌または結腸直腸癌の診断用キットは、タンパク質レベルを測定できる物質を含む。
【0039】
タンパク質レベルを測定するのに好ましい物質は、抗体であってもよい。マーカータンパク質CTHRC1、CANP及びKIAA0101が同定されているため、これらのタンパク質に対する抗体の生産は既知の技術を用いて容易に達成されうる。タンパク質CTHRC1、CANPまたはKIAA0101に特異的に結合する限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または組換抗体に関係なく、いずれの抗体を本発明で使用してもよい。
【0040】
タンパク質CTHRC1、CANPまたはKIAA0101を宿主哺乳動物に注射し、ポリクローナル抗体をこの宿主哺乳動物から採取した血清から得る既知の方法を用いて、ポリクローナル抗体を生産してもよい。ポリクローナル抗体の生産に使用できる宿主哺乳動物の例としては、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、サル、ウマ、ブタ、ウシ、イヌなどが挙げられる。
【0041】
モノクローナル抗体の生産に関しては、既知のハイブリドーマ法(Kohler and Milstein (1976), European Jounral of Immunology 6:511−519に言及される)、またはファージ抗体ライブラリー技術(Clackson et al, Nature, 352:624−628, 1991; Marks et al, J. MoI. Biol., 222:58, 1−597, 1991)を用いてなされてもよい。
【0042】
加えて、本発明で使用できる抗体は、2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖から構成される、完全抗体の形態であっても、または抗体分子の機能性断片であってもよい。「抗体分子の機能性断片」ということばは、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFv等に例示される、少なくとも抗原結合機能を有するセグメントを意味する。
【0043】
好ましくは、本発明に係る診断マーカーの検出用キットは、ELISAを実施するのに必要な要素を含む。このELISAキットは、結合した抗体を検出するための試薬を含み、例えば、標識された二次抗体、発色団、ならびに酵素(例えば、抗体と共役した)およびこの基質を含む。必要であれば、キットは、定量用のコントロールタンパク質に特異的な抗体をさらに有していてもよい。
【0044】
さらなる他の実施形態によると、本発明は、試験用生体サンプルとコントロールサンプルとの、CTHRC1、CANP、KIAA0101及びこれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の発現レベルを比較することを特徴とする、乳癌または結腸直腸癌の診断用マーカーの検出方法に関するものである。
【0045】
本方法において、遺伝子の発現レベルは、mRNAまたはタンパク質レベルで測定されてもよい。その際、既知の方法を用いて、生体サンプルからmRNAまたはタンパク質を分離してもよい。
【0046】
本明細書中に使用される、「生体サンプル」という用語は、マーカー遺伝子CTHRC1、CANPおよび/またはKIAA0101の発現レベルが乳癌または結腸直腸癌の発症時に変化する、生物物質を意味し、その例としては、組織、細胞、全血、血清、唾液、痰、脳脊髄液、及び尿があるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
mRNAレベルの定量分析方法は、RT−PCR、コンペティブRT−PCR、リアルタイムRT−PCR、RNA分解酵素アッセイ、ノーザンブロッティング、およびDNAチップ方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
タンパク質レベルの定量化としては、ウェスタンブロッティング、ELISA、ラジオイムノアッセイ、放射性同位元素標識免疫拡散、オークテロニ(Auchteroni)?、免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ、FACSおよび/またはプロテインチップを使用することができるが、これらの方法に限定されるものではなく、あくまでも例示である。
【0049】
検査法を介して、テストサンプルにおけるマーカー遺伝子の発現レベルを、乳癌または結腸直腸癌を診断するために通常のコントロールにおけるマーカー遺伝子の発現レベルと比較する。まだ更なる実施形態において、本発明は、特にCTHRC1、CANPまたはKIAA0101に作用するsiRNAに関する。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明は、CTHRC1−特異的RNAインターフェランスを誘導することができるsiRNA(低分子干渉RNA)配列を提供し、CTHRC1のmRNAに相補的なアンチセンスRNAストランドおよび対応するセンスRNAストランドを含む。
【0051】
その他の好ましい実施形態において、本発明は、KIAA0101−特異的RNAインターフェランスを誘導することができるsiRNA(低分子干渉RNA)配列を提供し、KIAA0101のmRNAに相補的なアンチセンスRNAストランドおよび対応するセンスRNAを含む。
【0052】
本明細書中に使用される用語、「siRNA」は、RNAインターフェランス経路(RNAi)を含む二重鎖RNAをいい、当該経路において、siRNAがmRNAの分裂を介して目標の遺伝子の発現を妨げるものである。したがって、siRNAは、目標の遺伝子のmRNAおよび相補的なアンチセンスRNAストランドとして同一の配列であるセンスRNAストランドから構成される。目標の遺伝子の発現を抑制する能力をともなって、siRNAは、遺伝子ノックダウン技術または遺伝子治療において通常使用される。
【0053】
siRNAは、重複のRNAストランドの完全塩基対の形態に制限されるものではなく、不整合(対応する塩基は相補性でなくともよい)または隆起(一本鎖の対応する塩基の欠如)に起因して部分的に対になっていない形態でもよい。siRNAは、10から80塩基までの長さの範囲が好ましく、より好ましくは15から60塩基、さらに好ましくは20から40塩基である。siRNAの末端構造は、平滑または付着(blunt または cohesive)でもよい。後者の場合、コーヒシブの数にかかわらず、3’の突出端および5’の突出端を利用することができる。例えば、付着末端は1〜8の塩基、好ましくは2〜6の塩基から成る。さらに、目標の遺伝子における発現インターフェランス効果を維持する限り、siRNAは低分子量RNA(例えばtRNA、rRNA、およびウイルスのRNAといった天然RNA分子、または人工のRNA分子)を片末端の突出部位で有してもよい。siRNAの末端構造に関しては、両端部におけて切断型であるというわけでなく、二重鎖RNAの一方の端における末端がリンカーRNAを介して相互に結合しているステムループ構造であってもよい。ステムにおける対の構造を可能にするのに十分な限り、リンカーの長さは特に制限されない。
【0054】
in−vitroで合成されたsiRNAのトランスフェクションを介して、またはPCR由来のsiRNA発現カセットもしくはsiRNA発現ベクターのインフェクションもしくはトランスフェクションを介して、siRNAは細胞内に導入される。また、当該PCR由来のsiRNA発現カセットは細胞内部で設計されうる。本発明におけるsiRNAに関連して使用される用語である「特異的」または「特異的に」は、細胞内において目標の遺伝子だけを抑制することができ、他の遺伝子を抑制するものではない。本発明において、siRNAは、CTHRC1、CANPまたはKIAA0101の特異的である。CTHRC1、CANPまたはKIAA0101のmRNAレベルを特異的に減少させることができる限り、本発明のsiRNA、特に配列または長さは制限されるものではない。本発明の好ましい実施形態において、SEQ ID NOS.:17および18の塩基配列は、CTHRC1に対するsiRNAを提供し、SEQ ID NOS.:19および20の塩基配列は、CANPに対するsiRNAを提供し、ならびにSEQ ID NOS.:21および22の塩基配列は、KIAA0101に対するsiRNAを提供する。各々のsiRNAは、対応する遺伝子の細胞内における発現レベルを減少すること、アポトーシスを誘導すること、および細胞増殖を抑制することが観測される。それゆえに、本発明におけるsiRNAは、乳癌または結腸直腸癌の予防または治療に有用である
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、乳癌または結腸直腸癌の予防用または治療用製薬組成物に関するものであり、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの化合物の組み合わせの中から選択される遺伝子のmRNAに特に作用するsiRNAを含む。
【0055】
任意に、遺伝子に対するsiRNA特異性に基づく薬剤組成物は、以下の構成:アポトーシス抑止剤をさらに含む。また、細胞にsiRNAの導入を促進する薬剤を、本発明に係る薬剤組成物にさらに含んでもよい。この薬剤は、核酸の導入のための促進因子であってもよい。例えば、リポソームを、リポソーム単独、またはコレステロールを含むステロール類、コール酸塩、およびデオキシコール酸から選択される脂肪親和性キャリアと組み合わせて使用してもよい。
【0056】
siRNAの細胞内導入において、例えばポリ‐L‐リジン、スペルミン、ポリシラザン、PEI(ポリエチレンイミン)、ポリジヒドロイミダゾレニウム(polydihydroimidazolenium)、ポリアリルアミン、キトサンなどのカチオン性ポリマー、または、スクシニレートされた、PLL、スクシにレートされたPEI、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、硫酸デキストラン、ヘパリン、ヒアルロン酸などのアニオン性ポリマーを使用してもよい。
【0057】
さらに他の一つの実施形態において、本発明は、予防法のための製薬の組成または乳癌または結腸直腸癌の予防または治療用の薬剤組成物に関し、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびこれらの化合物の中から選択されるタンパク質への特異的抗体を含む。
治療において使用される際に、直接または間接的、すなわちリンカーを介して既存の薬剤と前記抗体とを結合(例えば共有結合)してもよい。抗体に結合される薬剤の例としては、放射性核種、医薬品、リンフォカイン、トキシンおよび異種機能性(heterofunctional)抗体を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
(1)放射性核種、例えば131I、90Y、105Rh、47Sc、67Cu、212Bi、211At、67Ga、125I、186Re、188Re、177Lu、153Sm、123Iおよび111In、(2)生体反応修飾因子または生体反応修飾剤、例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、およびインターフェロンを含むリンフォカイン、(3)トキシン、例えばリシン、アブリンおよびジフテリア、(4)異種機能性抗体、具体的には相互異核抗体を結合した複合体、すなわち当該複合体は癌細胞および効果細胞(例えば、T細胞のようなキラー細胞)に対して結合しうるもの、ならびに(5)天然物、例えば関与しないまたは複合体化しない抗体を、本発明に係る抗体と結合してもよい。
更なる実施形態に従って、本発明は、乳癌または結腸直腸癌細胞の増殖を抑制する方法、または乳癌または結腸直腸癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法、または
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびこれら化合物の中から選択される遺伝子のタンパク質および細胞内のmRNAレベルの低下、もしくは対応するタンパク質活性の低下を促す方法に関する。
【0058】
この方法で、乳癌または結腸直腸癌を、予防または治療することができる。本発明の発明者によって行われる実験において、ヌードマウスに遺伝子CTHRC1、KIAA0101またはCANPを発現させる細胞株の導入により腫瘍が形成することがわかった。そして、癌細胞の生残および増殖と同様に、遺伝子CTHRC1、KIAA0101またはCANPが腫瘍形成に直接および重要な役割を果たすことが示された。また、遺伝子の細胞内のmRNAもしくはタンパク質レベルの減少、またはタンパク活性の抑制により、癌細胞のアポトーシスの誘起および細胞の増殖の縮小させることが確認された。
【0059】
遺伝子の細胞内のmRNAもしくはタンパク質レベルを減少、またはタンパクの活性を抑制しうる物質としては、単独の有機化合物または無機化合物であってもよく;高分子化合物、例えばタンパク質(例えば抗体)、炭水化物、核酸分子(例えばアンチセンスヌクレオチド、siRNA)および脂質;リボザイム;ならびにCTHRC1、CANPまたはKIAA0101に特異的な複数の化合物からなる複合体であってもよい。
【0060】
本発明の実施形態の好ましい一態様において、乳癌または結腸直腸癌の予防または治療法は、細胞増殖の抑制または癌細胞のアポトーシスの誘導のために、siRNAまたはCTHRC1、CANPまたはKIAA0101に特異的に作用する抗体を含む組成物の投与を特徴とする。
【0061】
前記siRNAまたは抗体を含む組成物は、製薬上許容できるキャリアとともに、例えば錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、注射などの種々の剤形が考えられる。
【0062】
前記遺伝子の細胞内のmRNAまたはタンパク質レベルの減少、またはタンパクの活性を抑制しうる物質は、治療または予防して効果的な量で投与されてもよい。前記活性物質の供与量は、疾患の重症度や種類、年齢、性別、体重、および患者の薬物過敏性、治療の種類、投与経路、目標となる細胞など含む種々の要因によって変えられるものであり、当業者によって直ちに決定されることができる。遺伝子の細胞内のmRNAまたはタンパク質レベルの減少、またはタンパクの活性を抑制しうる物質は、従来の医薬品と組み合わせてまたはそれ自体単独で使用されてもよい。後者の場合、物質および薬剤は、同時にまたは逐次投与してもよい。投与は、1回でも複数回でもよい。副作用がなく治療上または予防上の最大の効果を得るために適切な投与量における前記物質を投与することは重要である。上述の要因の全てを考慮して、最良の効果を得るのに十分な最小投薬量を当業者であれば直ぐに決定することができる。
【0063】
本明細書において使用する用語、「投与」は、適切な方法で患者に対して所定の物質の供給することをいう。目標となる組織に投与された物質の輸送できる限りどのような投与経路であってもよい。例えば、本発明の薬剤組成物は、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経口、局所的、鼻腔内、肺内、直腸内、または他の経路で投与してもよい。また、本発明の薬剤組成物は、活性物質を目標とされた細胞へ導くためのデバイスを用いて投与される。
【0064】
本発明のより好ましい理解は、以下の明確な説明された実施例の観点から得られるが、本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
ベストモード
実施例
実施例1:ディファレンシャルディスプレイ(DD)RT−PCRを利用した癌関連部分遺伝子の複製
乳癌、結腸直腸または肺癌に関連した新規な遺伝子の複製のために、癌組織の遺伝子の発現パターンを、ディファレンシャルディスプレイ技術を利用して正常組織の遺伝子のパターンと比較した。発現パターンにおける差異を示す遺伝子を、選択的に単離した(図1)。
その結果、1,495個の複製は乳癌に、1,183個の複製は結直腸癌に、597個の複製は肺癌に関することが検出された。
【0066】
ステップ1)組織サンプリング
結腸直腸癌組織サンプルは、9人の韓国人の成人男性患者と6人の韓国人の成人女性患者から採取され、そして、これらの人はさまざまな進行期(聖メアリーの病院(韓国))であった。乳癌組織サンプルは、乳癌を患う(聖メアリーの病院(韓国))14人の韓国人の成人男性患者から採取された。肺癌組織サンプルは、NSCLC(non−small cell lung cancer)を患う(聖メアリーの病院(韓国))7人の韓国の男性の患者から採取された。一組の生検サンプルは、それぞれの患者において腫瘍状組織周辺の腫瘍状組織および正常組織から回収した。
【0067】
ステップ2)トータルRNA単離
トータルRNAを、QIAGENキット(RNeasy Midi kit, cat#75144; RNeasy mini kit, cat#74104)を利用して単離した。まず、液体窒素中で保存されている組織を、冷たい乳鉢および乳棒ですりつぶし、次いでβ−メルカプトエタノール10μを混合した溶解緩衝液1mLに溶解させた。エチルアルコール70%等量を、前記溶解緩衝液に添加し、次いで、トータルRNAを樹脂に付着させるような前記キットのカラムに当該液を注入した。RNA分解酵素を含んでいない水160のμlの添加により、トータルRNAを分離して溶出させた。トータルRNAの量を測定する分光光度計で、トータルRNAの吸光度が260nmメートルであることが示された。
【0068】
ステップ3)逆転写
各々のサンプルのトータルRNAの2μg(ステップ2において調製された)を、混合して、ランダムなプライマーと70℃で5分間反応させた。次いで、逆転写酵素混合[2.5m MdNTP、5OU RNA分解酵素阻害剤、200U M−MuLV 逆転写酵素、MBI fermentas、cat#EP0442)、IX M−MuLV 反応緩衝液)]と42℃、2時間で反応させてcDNAを合成した。
【0069】
ステップ4)DD−PCR(ディファレンシャルディスプレイポリメラーゼ連鎖反応)
癌細胞と正常細胞との間の発現レベルの異なる遺伝子を単離するために、各々のcDNAを、IU Taq ポリメラーゼ(TaKaRa、cat#R001A)の存在下で、任意のプライマー(GenHunter社、cat#H−AP)20OnMおよびアンカープライマー(GenHunter社、cat#H101−S)20OnMによって増幅した。この際に[35S]dATP(PerkinElmer、cat#NEG734H)を、標識化のために使用した。このように得られたPCR産生物を、3時間、1,700Vで7Mウレア/6%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動する前に、98%のホルムアミド色素に混合して、5分間、80℃で加熱した。3MMワットマンペーパーに転写された後に、前記ゲルを乾燥して、X線フィルムに露光した。X線フィルムの現像から測定値が確認された。
【0070】
ステップ5)DD−PCR産生物の塩基配列
DD−PCRの結果、正常組織と比較して、特に癌組織の遺伝子レベルを増減するために読み込まれたバンドを選択した。前記バンドをゲルから切除し、PCR産生物を脱イオン水で洗浄し、エタノール中で沈殿した。前記DD−PCRにおいて使用された同じプライマーで、沈殿したDNAを再増幅した。この増幅されたDNAを、大腸菌(DH5.alpha.)に形質転換された転写ベクターpGEM−T Easyベクターシステム(プロメガ(cat#Al360))で複製した。LB−寒天で培養した形質転換された大腸菌のコロニーは分離されて、再度LB培養液で培養された。QIAGENキット(QIAprepプラスミドミニプレップキット、cat#27104)を用いて、プラスミドは大腸菌から調製された。制限酵素EcoRIを用いる処理により、挿入のサイズを決定した。Big Dyeシークエンシング反応混合(ABI)を用いて、自動シーケンサー(ABI 3700)で塩基配列を読み取った。相同性を、塩基配列から各々の複製の遺伝子情報を得られるBLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul et al. 1990; http; //www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)、およびNCBI GeneバンクおよびヒューマンESTデータベースのプログラムを利用して調べた。
【0071】
実施例2:マイクロアレイを用いた遺伝子発現の解析
DD RT−PCRにより複製された約3,000種の遺伝子のうち、癌組織に対し高い特異性を示す発現遺伝子だけを選択するために、大規模患者群を対象で二次的選別を行なった。DD RT−PCRにより複製された遺伝子フラグメントを組み込んだヒト3KcDNAチップでは、58人の乳癌患者および32人の結腸腸癌患者から得られた生検サンプルを選別するために設計されている。乳癌患者の58例および結腸腸癌患者の32例より得られた前記チップの結果から、正常細胞と癌細胞とを比較した際に、統計学的有意性で2倍以上増減している遺伝子発現レベルが選択された(図2)。
ステップ1)チップの構成
チップ構成に用いられるcDNAプローブは、PCRによって合成された。フォワードプライマー、5’−CCG CGG GAATTC GAT T−3.prime(SEQ ID NO.: 1) とリバースプライマー5’−GCC GCG AAT TCA CTA GTG−3’(SEQ ID NO.:2)との一組をPCRに使用した。等しく遺伝子の全てを増幅するために、PCR混合(0.3pmoleフォワードプライマー、0.3pmoleリバースプライマー、200mM dNTP、1mMトリス−HCl、5mMKCl、150mMのMgCl、2.5unit Taq ポリメラーゼ、超純水)を、96穴のPCRプレートのそれぞれのウェルに等分し、次いで各々の遺伝子クローンを担持しているプラスミド鋳型DNAそれぞれ0.5mlを添加した。DNAサーマルサイクラーにおいて、PCRは、94℃で前変性5分間から始めて、変性温度94℃で30秒間40サイクル維持し、アニーリング温度55℃で30秒間、および維持温度72℃で30秒行い、最終的にさらに5分間72℃で維持した。このようして得られたPCR産生物は、ミリポアにより製造されている384の穴のPCR純化濾過器でクリーンアップされた。
【0072】
フィルターをかけた後に、cDNAを、BioRoboticsにより製造されている(DNA構成は Digital Genomic companyに委託している))Microgrid II スポッターを使用したGAPSIIスライド(Corningにより製造)に組み込んだ。
【0073】
前記チップの性質は、syto.beta.l染色により決定された。染色された前記スライドは、過剰のプローブを除去するために0.1%のSDSで処理された。100℃で2分間の処理によって、syto.beta.l色素を内部に十分に挿入できるようなプローブが変性された。前記スライドは、5分間でsyto.beta.l色素により染色された。次いで、過剰な色素を蒸留水で二度洗浄した。前記染色されたスライドは、Axonレーザスキャナ635nmで測定されて、チップを正しく構成されたかどうか確認するために視覚的分析を行なった。
【0074】
ステップ2)組織サンプリング
結腸直腸癌組織サンプルは20人の韓国の成年男性患者と12人の韓国の成年女性患者とから採取された。そして、前記患者の年齢は40〜77歳(LabGenomics)であった。乳癌組織サンプルは、58人の韓国人の成年女性患者28〜71歳(LabGenomics)から採取された。一組の生検は、それぞれの患者の腫瘍状の組織周辺で、腫瘍組織と正常組織からサンプルを採取した。
ステップ3)トータルRNA単離
液体窒素(LN)中で保存されている組織を、冷たい乳鉢および乳棒ですりつぶし、次いで100mgの組織サンプルをトリゾール試薬 (Invitrogen, cat# 15596− 018)1 iriLと混合した。次のRNA単離工程は、TriZol試薬の製造業者によって提供される手順に従って行なった。このようにして得られたRNAは、当該製造業者によって提供される手順に従ってQIAGENキット(RNeasy Midi kit, cat#75144; RNeasy mini kit, cat#74104)を利用して洗浄した。前記RNAを、260nmで分光光度計により吸光度を測定することで定量した。
【0075】
ステップ4)、サンプル調製と標識化
DNAチップハイブリダイゼーションは、テストRNAから合成されたcDNAを、スライド上に、換言するとチップに合成されたDNAと反応させる工程である。上記マイクロアレイにとって、高純度のDNA20〜50μgを、Cy3またはCy5蛍光染料で標識化して逆転写させた。標識化は、PCRの間ずっとCy色素−結合dUTPによって行なわれた。正常組織および腫瘍組織間のハイブリダイゼーションにおけるコントロールとしての使用のために、レファレンスRNAを調製した。種々の乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、および肺癌細胞から得られた細胞株を、癌組織の特徴を考慮して各々の癌(乳癌細胞株 SK−BR−3、Hs578T、MCF−7,ZR−75−1およびMDA−MB−231、結腸直腸癌細胞株 COLO205、LoVo、WiDr、HT−29、およびDLD−I、ならびに肺癌細胞株 NCI−H23、NCI−H146、NCI−H69、NIH226、およびA549)として選択した。トータルRNAは、各々の細胞株から分離された。トータルRNAの同等の量を混合し、コントロールとしてリファレンスRNAを調製した。このリファレンスRNAをCy3で標識化し、一方乳癌、結腸直腸癌、および正常組織から得られたRNAを、Cy5で標識化した。QIAquick PCR精製キット(QIAGEN(cat#2810.beta.))を用いて、塩、プライマー、洗浄剤、タンパク(酵素)、およびPCRに使用される鋳型RNAを、逆転写を介して得られたcDNAから除去した。精製され、かつ標識化されたcDNAは、65℃、16時間で3Kチップ上のDNAとハイブリダイズされた。これについては、標識化されていないヌクレオチド、例えばCot−1DNAとポリA−RNAを、非特異的ハイブリダイゼーションを阻害するために非特異的競合として加えた。DNAチップは、SSC含有洗浄溶液で洗浄し非特異的ハイブリッドを除去した。
【0076】
ステップ5)チップ画像の取得と制限
チップのハイブリダイゼーションの後、前記チップを、Axon製GenePix 4000Bスキャナで測定し、それぞれのスポットから蛍光データを得た。T前記蛍光データは、TIFFファイルとして保存した。Cy3およびCy5領域から各々得られた緑色および赤色の波長で示された数値の相対比は、対照群と比較してテスト群は遺伝子発現を増減させたことにより、多発性を測定するのに使用した。
【0077】
ステップ6)遺伝子発現の解析
DNAチップの結果を分析しまたは説明するために、各々の遺伝子に対する強度値が、必要になる。Axonから取得したGenePix プログラムは、スキャナから得られるイメージを数値に変換する際に使用された。各々の点の強度値が読み込んだ後、遺伝子スポットに対する数値の統計値は、エラースポットが自動的または手動で削除される手法を利用して得られた。また、アレイ品質管理(QC)操作は、PMT、Cy3およびCy5のレーザ出力、シグナルとバックグラウンドとの相違、強度値の平均偏差、ブロック間の強度値、全てのスポットの強度値、およびNF(特徴無し)に関して行なった。
【0078】
Cy5/Cy3(クリーブランド(Cleveland) et.al(1992))、解析された2,213の乳癌遺伝子および1,940の結腸直腸癌遺伝子間で色素の偏りが生じないように、遺伝子20%またはより大きい不整合の部分を除いて、トータルデータはローズ(Lowess)正常化方法を使用して修正された。BRBアレイツールプログラムを用いて(http://linus.nci.nih.gov/BRB−ArrayTools.html)、組織サンプル間のクラスタリング解析は、組織サンプルオリジンとチップ実験との正当性を証明する。その結果、一つの乳癌組織サンプルと二つの結腸直腸組織サンプルを除いてほとんどすべての組織サンプルが、二つのノード:癌組織と正常組織とに分割されるのを観測された。これらのデータから、この研究に使用される臨床サンプルが、明確に正常と癌組織とに分けられ、かつこのチップ実験が正しく行われたことを裏づけるものであることが示された。乳癌または結腸直腸癌組織と正常組織との間で有意な発現の相違を示す遺伝子を選択するために、SAM(マイクロアレイ有意差解析;http://www−stat.stanford.edu/〜tibs/SAM)で実行した。誤りの許容範囲を超える統計的有意性において発現相違を示し、かつ単純なバリエーションによりむしろ実験結果に主に起因する遺伝子だけが選択されうることによるため、SAMは有益な技術である。この際、統計誤差に基づく遺伝子を選択する可能性が除外されたように、99%以上の信頼性に基づいてFDR(仮の発見率)はゼロになった。
【0079】
実施例3:リアルタイムPCRを用いた癌特異的遺伝子発現アッセイ
DNAチップを使用して識別される遺伝子の中で、癌組織に対して高い特異性を想定したCANP、CTHRC1、およびKIAA0101が選択された。胸部および結腸直腸癌および種々の正常細胞や癌細胞株におけるそれらの胸部および結腸直腸癌特異的発現(図3)を確認するために、これらの候補遺伝子の発現レベルの測定を行なった。この点に関して、乳癌組織、結腸直腸癌組織、20種類の正常組織(副腎、脳、胎児の脳、胎児の肝臓、心臓、腎臓、肝臓、肺臓、胎座、前立腺、唾液腺、骨格筋、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、気管、子宮、小腸、および脊髄)、乳癌細胞株、結直腸癌細胞株、および肺癌細胞株における相対的遺伝子発現を検査した。
【0080】
【表1】

【0081】
リアルタイムPCRのデータから、CTHRC1の場合は、乳癌組織および結腸直腸癌組織において、平均して10倍もの過剰な発現がみられるが、正常組織のではほとんど発現されなかったことが示された。乳癌または結腸直腸癌を患った被験者の80%以上は、正常組織と比較して癌組織においてCTHRC1が2倍の過剰な発現をすることがわかった。CANPは、乳癌および結腸直腸癌の組織と細胞株において過剰に発現されるが、正常組織ではほとんど発現が見られなかった。乳癌を患った被験者の80%以上は、正常組織と比較して癌組織において(平均して11倍)CNAPが2倍以上の過剰な発現をすることがわかった。CANPが2倍以上発現したことが確認された結腸直腸癌の患者は、50%以上にも達した。遺伝子の発現レベルが癌組織および種々の癌細胞株において高いとい事実から推測すると、CANPは、細胞増殖に関与していると考えられる。
【0082】
KIAA0101は、乳癌および結腸直腸癌の組織の細胞株において非常高い発現率を示した。胸部または結直腸癌患者の50%以上は、正常組織と比較して癌組織においてKIAA0101が2倍以上過剰に発現していることが確認された。胸腺、胎児の肝臓、および正常者の小腸におけるこの遺伝子の発現レベルは、結腸直腸癌患者の正常組織のレベルにほぼ等しかった。KIAA0101は、他の正常組織において発現しなかった。通常、KIAA0101の発現挙動は、CANPの発現挙動に類似していることがわかっており、前記発現挙動が、KIAA0101およびCANP相互において機能的に関与していることを暗示している。
【0083】
ステップ1)サンプル調製
癌の生成部位、癌の進行、および生化学的見地ならびにDNAチップの発現結果における、乳癌RNAサンプル56対および結腸直腸癌RNAサンプル32対に対してスクリーニングしたDNAチップから得られた臨床情報に基づいて、乳癌サンプル26対および結腸直腸癌サンプル20対を選択した。癌が生成している器官以外の正常器官の遺伝子の発現レベルを定量するために、20の異なる正常組織のRNAから構成される組織パネル(Clontech Cat.# 636643)を用いた。乳癌細胞株Hs578T、SK−BR−3、およびMCF7、結腸直腸癌細胞株COLO205、LOVOおよびWoDr、ならびに肺癌細胞株A549、NCI−H146、およびNIH226から得られたRNAは、種々の癌細胞株の遺伝子発現の測定に使用された。
【0084】
臨床の組織サンプル、種々の癌細胞株および種々の正常組織から得られたRNAから、cDNAは、オリゴ(Oligo)20VN(dT)プライマーおよびスーパースクリプトIII(Superscript III)(Invitrogen Cat.#18080−044)を用いて合成された。逆転写は、1mgのRNAサンプル、Oligo 20VN(dT)プライマー 2.5M、dNTP 0.5mM、MgCl2 5mM、DTT 1OmN、5OU RNA分解要素50U、スーパースクリプト III 200U、およびIX RT緩衝液(Superscript IIIキットにおいて包含されている)で行なわれた。1時間、50℃での反応により、cDNAの合成を行なった。850℃、5分の加熱により合成を終了した。このように得られたcDNAを、少量等分されて、−70℃で保存した。
【0085】
ステップ2)プライマーの調製
CANP、CTHRC1、およびKIAA0101のcDNA塩基配列に基づいて、CTHRC1、CANP、およびKIAA0101に対して各々特異的なプライマーのセットを合成した。内因性のコントロールとしての用途のために、β−アクチン遺伝子(ACTB)に対する一組のプライマーを、NCBI GeneBankデータベースにより検索されたmRNA塩基配列(NMJDOIlOl)に基づいて合成した。アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)によって提供されているプライマーエクスプレスプログラム(Primer Express program)を用いて、一般的なPCRプライマーの要件を満たし、約80℃のTm値を有し、かつPCR生産物が100bp.の鎖長を有するように、プライマーの全てのセットを設計した。特に遺伝子に用いられるプライマーは、以下の通りである。
【0086】
【化1】

【0087】
ステップ3)反応条件
SYBRグリーンアッセイ(SYBR Green assay)は、SYBRグリーンPCRマスター混合(Applied Biosystems Cat.# 4309155)12.5μlを含む溶液25μl、cDNA、フォワードプライマー、およびリバースプライマーで行なわれた。
【0088】
逆転写に使用するトータルRNAが50ngの量になるようにcDNAを添加した。前記プライマーに関しては、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを、100nM、300nMおよび900nMの3×3の濃度の組み合わせの中から選択した合計を使用した。また、当該組み合わせは、不特定の合成がないように最良の遺伝子増幅を示した。β−アクチン、CTHRC1、CANP、およびKIAA0101に対する各々のプライマー特性は、300nMの濃度で使用された。cDNAを有しない陰性コントロールサンプルを、また非特異的生産物の生産を評価するプライマーの全てのセットを調製した。ウェル間の違いおよびピペット操作エラーに起因した実験誤差を減らすために、前記の同じ実験を、2または3回繰り返した。PCRは、50℃でアニーリング1分間から始めて、95℃で変性に10分間行い、変性温度95℃で15秒、およびアニーリング温度60℃で1分間40〜50サイクル行なった。PCR終了後、分離実験は、非特異的増幅を検討するために装置により提供される手順に従って行なった。
【0089】
ステップ4)相対的遺伝子発現レベルの測定
cDNAの濃度は、標準曲線から検討された臨床のサンプルのCt(閾値サイクル)値から逸脱しない範囲内で決められた。標準曲線のためのサンプルとして、組織サンプルから調製されたRNAの混合液からcDNAが使用された。標準曲線を算出する実験は、各々の反応で同一のプレートの範囲内で三度繰り返し行なった。各々の反応におけるCt値が著しく他と異なる場合、一つの反応のCt値が除外された。残りの2つまたは3つの反応のCt値の平均値を用いて、標準曲線をプロットした。この際、標準曲線がほぼ1の相関係数(R2)およびほぼ3.3の傾きを有するように閾値をコントロールした。
【0090】
標準曲線を目的としたcDNA内の特異的な遺伝子の正確な量は知られていないため、このアッセイ実験で測定される遺伝子の量は、標準サンプルに関連する発現レベルであったかもしれない。各々のサンプルにおけるCt値は、標準曲線を描く際に閾値群を利用して決められた。Ct値と標準曲線との比較により、遺伝子レベルが得られた。サンプルによるcDNA濃度の変化量を、各々のサンプルの相対的な遺伝子発現レベルを決定するために規格化した。
【0091】
サンプル間におけるcDNA濃度の相違は、主に逆転写効率の違いに起因すると考えられる。逆転写が同じ条件の下で行なわれるにもかかわらず、合成されるcDNAの総量がPCR装置の孔間の変化量に起因して異なる。なぜなら、cDNAだけを単離する工程または逆転写の後におけるcDNAの濃度を測定する工程がなく、逆転写効率に起因しているサンプル間のcDNA濃度差が、内因性のコントロールに規格化されうるからである。ハウスキーピング遺伝子β−アクチンを、内因性のコントロールとして使用した。各々のcDNAにおける内因性のコントロールの相対濃度は、上述の方法を利用して決定され、そして、各々のサンプルへの規格化層(normalization fold)を計算することによっておこなった。内因性のコントロールが全てのサンプルにおいて同じレベルで発現する仮定の下に、各々のcDNAの相対的な量は、内因性のコントロールの発現レベルに比例する。したがって、cDNA相違を修正するための規格化層(normalization fold)は、内因性のコントロールの相対量とは相反するものである。
【0092】
DNAの濃度差が正確だと、与えられた標準曲線を利用して得られた遺伝子量は、相対的な遺伝子発現レベルを得るための規格化層(normalization fold)により乗じられる。
【0093】
実施例4:細胞における過剰発現の効果の解析
腫瘍形成における癌特異性CTHRC1、KIAA0101とCANPの過剰発現の効果を検討するために、対応している遺伝子を過剰発現した細胞株を調製した。形質転換細胞株をヌードマウスへの注入することにより、注入部位で異なった腫瘍1.5−2cmの長さの異なる腫瘍が形成される(図4)。これらのデータは、過剰発現される際、各々の遺伝子が腫瘍形成においての重要な役割を果たすことを示している。
【0094】
ステップ1)全長遺伝子複製
1−1.全長CTHRC1の複製
CTHRC1は、単一のORF(オープン・リーディングフレーム)732bp長から構成されている。CTHRC1の増幅を用いて、CTHRC1に対して特異的なプライマー一対は、全長ORFを構成するPCRのようなヌクレオチド配列NM_138455(NCBI)に基づいて設計された。
【0095】
【化2】

【0096】
乳癌組織のトータルRNAから合成されたcDNAライブラリーは、鋳型としての機能を果たすと同時にPCRが行なわれた。3’と5’プライマーのそれぞれが、鋳型cDNA100ngにつき、10pmole量使用された。PCRは、変性温度94℃で30分間、35のサイクル、アニーリング温度68℃で2分間、伸長温度72℃で7分間行なった。PCR産生DNAは、1.5%のアガロースゲルで電気泳動して前記サイズを測定した。制限酵素を伴う処理は、機能遺伝子の正確な増幅を検査するのに有益であった。増幅された全長cDNAは、pGEM Tイージーベクター(プロメガ(Cat#A1360))で複製して全長遺伝子を保護した。
【0097】
1−2.全長CANPの複製
CANPは、単一ORF 2205bpから構成されている。CANP増幅を用いて、CANPに対して特異的なプライマー一対は、全長ORFを構成するPCRのようなヌクレオチド配列NM_198947(NCBI)に基づいて設計された。
【0098】
【化3】

【0099】
乳癌組織のトータルRNAから合成されたcDNAライブラリーは、鋳型としての機能を果たすと同時にPCRが行なわれた。それぞれのプライマーが、鋳型cDNA100ngにつき、10pmole量使用された。PCRは、変性温度94℃で30分間、35のサイクル、アニーリング温度68℃で2分間、伸長温度72℃で7分間行なった。PCR産生DNAは、1.5%のアガロースゲルで電気泳動して前記サイズを測定した。制限酵素を伴う処理は、機能遺伝子の正確な増幅を検査するのに有益であった。増幅された全長cDNAは、pGEM Tイージーベクター(プロメガ(Cat#A1360))で複製して全長遺伝子を保護した。
【0100】
1−3.KIAA0101の複製
KIAA0101は、単一ORF 336bpから構成されている。KIAA0101増幅を用いて、KIAA0101に対して特異的なプライマー一対は、全長ORFを構成するPCRのようなヌクレオチド配列NM_014736(NCBI)に基づいて設計された。
【0101】
【化4】

【0102】
乳癌組織のトータルRNAから合成されたcDNAライブラリーは、鋳型としての機能を果たすと同時にPCRが行なわれた。3’および5’プライマーのそれぞれが、鋳型cDNA100ngにつき、10pmole量使用された。PCRは、変性温度94℃で30分間、35のサイクル、アニーリング温度68℃で2分間、伸長温度72℃で7分間行なった。PCR産生DNAは、1.5%のアガロースゲルで電気泳動して前記サイズを測定した。制限酵素を伴う処理は、機能遺伝子の正確な増幅を検査するのに有益であった。増幅された全長cDNAは、pGEM Tイージーベクター(プロメガ(Cat#A1360))で複製して全長遺伝子を保護した。
【0103】
ステップ2)発現ベクターの設計
CTHRC1、CANP、およびKIAA0101の複製のために、特定されている制限酵素部位、pDOR221 ベクター (Invitrogen, Cat# 12535−019)で29bp長 attB部位が、PCR産生物の両端に付けた。ゲイトウェイテクノロジー(Invitrogen、2003年9月22日、25−0522)に従って、PCRを二度行なって、attBアダプターをPCR産生物の両端に結合させた。attB−PCR産生物は、QIAGEN PCR精製キット(QIAGEN(Cat# 28106))によって洗浄されて、BP Clonase Enzyme(Invitrogen(Cat# 11789−013))を用いてattP含有ドナーベクター(pDONR221)に複製した。塩基配列の解析は、各々の遺伝子のコード領域が正確に複製されたか否かを検査するために全体遺伝子に対して行なった。pDONR221ベクターに複製された遺伝子を、LR Clonase(Invitrogen(Cat# 11791−019))を用いて、形質転換のためにpcDNA−DEST40(Invitrogen(Cat# 12274−015))ゲートウェイベクターにトランスファーした。
【0104】
ステップ3)細胞の形質転換
前記プラスミドpcDNA−DEST40/CANP、pcDNA−DEST40/KIAA0101およびpcDNA−DEST40/CTHRC1は、それぞれが特異性遺伝子として作用し、リポフェクタミン TM 2000(LipofectamineTM 2000)(Invitrogen, cat#11668))を用いてヒト胎児腎臓細胞株293(ATCC(cat#CRL1573))にトランスフェクションさせて、ジェネティチン(Geneticin )(Invitrogen, cat#11811−023))と約3週間処理させてプラスミドを取り込ませた前記細胞を選択した。単細胞由来の単一コロニーを採取し、以下の96穴プレートで培養した。
【0105】
新しく取り込まれた発現ベクターのタンパク発現を特定するために、タンパク質を形質転換細胞株から抽出してウェスタンブロッティング解析を行なった。その理由は、対象タンパク質の各々が会合することによるものであり、V5エピトープおよび6xHis Tagは、間接的に対象タンパク質の細胞内の発現を確認するために、それぞれ抗−V5−HRP抗体 (Invitrogen, cat# R961−25) および抗−His (C−term)−HRP抗体 (Invitrogen, cat# R931−25)を用いて発現レベルを測定された。
【0106】
均一な発現率を維持された細胞株を確保するために、1つの細胞に対して1つの穴を割り当てられる方法で、選択された過剰発現細胞を希釈し、96穴プレートに等分された。2〜3日間のインキュベーションの後、各穴の複製数を顕微鏡で測定した。一つの穴に対して一つの複製を形成した穴ごとにマーキングし、さらに一週間インキュベートした。トリプシン処理で分離した後、クローンをマークされた穴から取り出し、さらに多数の細胞を得るために48の穴、24穴および6穴プレートに移した。
【0107】
ステップ4)動物における発癌性
上記ステップ3)から得た過剰発現細胞を、10匹の5週間目ヌードマウスの皮下に注入した。注入後20日において、10匹全てのハツカネズミからサイズの異なる腫瘍1.5〜2cmが注入部位において観察された。
【0108】
実施例5:RNAi(RNAインターフェランス)を用いた癌特異的遺伝子の機能のための解析
癌細胞の機能における癌組織で特異的に発現する遺伝子の効果を検討した。この際、癌−特異的発現を示すことが確認された遺伝子は、RNAインターフェランス(RNAi)を用いることにより発現が阻害され、細胞がリアルタイムPCRを通してどのようにして影響を与えたかについて検討した。
【0109】
1.RNAiを使用した遺伝子発現の特異的抑制
siRNAの導入は、リアルタイムPCR(図5)を通して対応する遺伝子の特定のノックダウンを引き起こすことが確認された。CTHRC1、CANPまたはKIAA0101に対して特異的なsiRNAが取り込まれたテスト群、前記遺伝子に対して非特異的な混合されたネガティブsiRNAが取り込まれたコントロール、および非siRNA処理されたコントロールが比較される。内部に注入された遺伝子特異性siRNAを有するテスト群だけが、対応する遺伝子の特異的な阻害を示す。CTHRC1のsiRNA処理の6時間経過後、テスト群がコントロールと比較してCTHRC1のmRNAの発現が30%以上のノックダウンを示した。前記処理の24時間経過後、テスト群がコントロールと比較してCTHRC1のmRNAの発現が80%以上のノックダウンを示した。CANPのsiRNAに関しては、前記処理の6時間経過後、テスト群がコントロールと比較してCANPのmRNAの発現が70%以上のノックダウンを示していた。KIAA0101のsiRNAでは、前記処理の12時間経過後、KIAA0101発現が80%のノックダウンを示していた。siRNA−特異性遺伝子発現のノックダウン効果は、少なくとも48時間維持された。目標とされた遺伝子のメッセンジャーRNAレベルの有意差が、ネガティブsiRNAなしとありでのコントロール群の処理においては、対象の遺伝子のmRNAレベルの差がほとんどみられなかった。
【0110】
2.細胞死誘起と細胞増殖の減退における遺伝子発現の抑制効果
遺伝子のノックダウン効果およびトランスフェクションの毒性を検討するために、EthD−1蛍光染料を用いて細胞の生死を観察した。そして、前記観察した死細胞を抜粋した(図6A)。また、生存細胞を時間とともにモニターし、細胞増殖における遺伝子抑圧の効果を計数した(図6B)。
【0111】
死細胞であると判断したEthD−1蛍光色素から得た蛍光画像で、死細胞の計数を、確認した際に、CTHRC1遺伝子の抑制により、コントロールと比較して細胞の総数の50%以上が、細胞死を引き起こした。未処置のコントロールでは細胞数が72時間で3倍に増加したのに対して、CTHRC1遺伝子の発現が抑制されたテスト群では、72時間経過してもほとんど増殖しなかった。これらの結果から、CTHRC1の抑制は、細胞死の誘起および細胞増殖の抑制を促すことがわかった。
【0112】
CANP遺伝子の発現が抑制された場合、コントロールと比較すると、細胞死を受けた細胞の数は、siRNA処理から6時間経過した後増大し、かつ前記処理の後24時間経過後では、40%以上であるとわかった。未処置のコントロールでは細胞数が72時間で3倍に増加したのに対して、CANP遺伝子の発現が抑制されたテスト群では、72時間経過してもほとんど増殖しなかった。これらの結果から、CANP遺伝子の抑制は、細胞死の誘起および細胞増殖の抑制を促すことがわかった。これらの結果から、CANPの抑制は、細胞死の誘起および細胞増殖の抑制を促すことがわかった。
【0113】
KIAA0101のsiRNAの場合は、KIAA0101のsiRNA処理の12時間経過後、mRNAレベルでは顕著な変化が確認されたが、前記処理の6時間経過後から細胞死が進んだことがEtD−1染色により確認された。KIAA0101遺伝子の抑制では、細胞数の30%以上が細胞死を引き起こし、72時間以内では細胞増殖が観察されなかった。これらの結果から、KIAA0101の抑制は、細胞死の誘起および細胞増殖の抑制を促すことがわかった。
【0114】
ネガティブsiRNA処理されたコントロール群に関しては、siRNAの導入に従って細胞死を引き起こさなかったが、未処置のコントロール群などでは同じ範囲で細胞増殖を示した。これらをもとに、上記の実験において得られたデータから、細胞死の誘起およびCTHRC1、CANPまたはKIAA0101のsiRNAの導入に伴う細胞増殖の抑制が、特に各々の遺伝子の抑制に起因することが立証される。
【0115】
3.遺伝子抑圧によるアポトーシスの誘起
遺伝子抑制、カスパーゼ活性、アポトーシス関連の酵素(図8)、DNA断片化(図7)および膜変性によって誘導される細胞死のタイプを決定することを解析した、またアポトーシスおよびネクローシスが発生した度合いを時間でモニターした(図9)。
【0116】
CTHRC1遺伝子が抑制されると、siRNAの導入の直後から、カスパーゼ活性が増大し始めて、コントロールと比較すると4倍に増大し、導入から24時間経過後が最大値を示すことわかった。DNAの断片化は徐々に増大し、またコントロールと比較すると、導入から72時間経過後、5倍に増大するとわかった。アポトーシスが進行すると、細胞膜のPS(ホスファチジルセリン)が外部にさらされた。
【0117】
CANP遺伝子が抑制されると、siRNAの導入から6時間経過後からカスパーゼ活性が増大し始めて、導入から24時間経過後、コントロールと比較すると4倍に増加することわかった。DNAの断片化は徐々に増大し、コントロールと比較すると、導入から72時間経過後、8倍に増大するとわかった。アポトーシスが進行すると、細胞膜のPS(ホスファチジルセリン)が外部にさらされた。
【0118】
KIAA0101遺伝子が抑制されると、siRNAの導入直後からカスパーゼ活性が増大し始めて、導入から24時間経過後、コントロールと比較すると45倍に増加することわかった。DNAの断片化は徐々に増大し、コントロールと比較すると、導入から72時間経過後、3倍に増大するとわかった。アポトーシスが進行すると、細胞膜のPS(ホスファチジルセリン)が外部にさらされた。
【0119】
カスパーゼ活性、DNAの断片化および膜変性の機構を特定したアポトーシスの頻度は、ほぼKIAA0101、CANPおよびCTHRC1と同程度の増大が観察される。ネガティブsiRNA処理された群については、ほとんど全くsiRNA導入に起因した細胞死を誘起されず、CTHRC1、CANPまたはKIAA0101のsiRNAの導入に従った細胞アポトーシスの誘起は、特に各々の遺伝子の抑制から生じる結果となった。また、これらの結果から、新規な癌−特異性遺伝子CTHRC1、CANPおよびKIAA0101の発現抑制によって、細胞死(おそらくアポトーシス)が生じることが示され、新規な癌−特異性遺伝子CTHRC1、CANPおよびKIAA0101が細胞の生存に対して重要な役割を担うことも示された。
【0120】
4.細胞分裂における遺伝子抑圧の効果
遺伝子抑圧によって誘導される細胞増殖−抑圧効果を検討するために、細胞周期変化は、PI(ヨウ化プロピジウム)により測定した(図10)。コントロールと比較すると、CTHRC1のsiRNA処理された細胞は、当該処理から3時間経過した後では、S期およびG2/M期の細胞の比率において約20%減少させ、GO/G1期の細胞の比率が約20%増大させた。コントロールと比較すると、CANPのsiRNA処理された細胞により、GO/G1期の細胞の比率を5〜30%増大させる一方で、S期における細胞比率を最大で120%減少させ、かつG2/M期の細胞の比率において60%減少させた。コントロールと比較すると、KIAA0101のsiRNA処理された細胞により、S期における細胞比率を最大で125%減少させ、かつG2/M期の細胞の比率において50%減少させ、さらにGOG1期の細胞の比率を10〜40%増大させたことがわかった。
【0121】
CTHRC1、CANPおよび/またはKIAA0101が低いレベルで発現している際に、アポトーシスは、Gl期の細胞を抑えるように誘導され、それによって細胞増殖を抑制すると考えられている。ネガティブsiRNA処理された細胞は、細胞増殖の抑制でもなくsiRNAの導入による細胞死でもないことが示された。従って、CTHRC1、CANPまたはKIAA0101のsiRNAの導入による細胞周期における変化により、特に各々の遺伝子の抑制を促す。
【0122】
ステップ1)siRNA(低分子干渉RNA)構成
CTHRC1、CANPおよびKIAA0101の全長mRNA配列は、NCBI GeneBankプログラムを利用して得られた(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)。siRNAを、InvitrogenのBlock−ITTMRNAiデザイナー(http://www.invitrogen.com/)を用いて設計し、かつ合成した。それぞれの遺伝子のSsiRNA塩基配列を以下に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
ステップ2)、siRNA のトランスフェクション
乳癌細胞株MCF−7およびSK−BR3、結腸直腸癌細胞株WiDrおよびHCT116、ならびに肺癌細胞株A549.を実験で使用した。各々の細胞株は、3X10細胞/ウェルの量の48穴プレートに等分された。16時間経過後、各々の遺伝子またはネガティブsiRNA(Invitrogen(cat#12935−100))に対する各々の遺伝子は、蛍光オリゴ(Invitrogen(cat#13750−062))に加えて、混合したリポフェクタミン(LipofectamineTM)2000 (Invitrogen, cat#11668−027)であり、これらの遺伝子を、既に細胞株が存在する培地に加えた。24、48および72時間の間隔で、細胞株を、siRNAの濃度に従ってモニターした。siRNAおよび蛍光性オリゴの使用については、20nM原液で貯蔵されて、10OmM KOAc、3OmM HEPES−KOH、および2mM MgOAc.を含むpH7.4の緩衝液で希釈した。
【0125】
ステップ3)遺伝子ノックダウンによるmRNAレベルの変化
mRNAノックダウンを測定することは、RNAi技術を介することであり、細胞株を12穴プレートに2X10細胞/穴の量で等分して、かつ16時間培養された。その後、10nM、20nM、50nMおよび100nMのsiRNAを、1mlのリポフェクタミン(lipofectamine)に混合して、細胞が既に育った培地に添加した。次いで、添加し、6、12、24および48時間経過した後トータルRNAを抽出した。RNAを、RNeasymicroキット(QIAGEN(cat#74004))により抽出した。DNase(QIAGEN(cat#79254))処理により、RNAサンプルからゲノムDNAのトレース量を除去した。
【0126】
定量リアルタイムPCRを用いて、RNAiに起因する遺伝子ノックダウン効果を測定した。抽出したRNAは、スーパースプリクトIII(Superscript III)リバーストランスクリプターゼ(Invitrogen(cat#18080−044))およびポリdTプライマーを用いて逆転写させた。PCR産生物を、SYBR緑色アッセイによって検出した。このアッセイに対して、SYBRグリーンPCRマスター混合(Applied Biosystems(cat#4309155)))12.5μlを、cDNA、フォワードプライマー、およびリバースプライマーと混合し最終体積を25μlにした。逆転写に使用されるトータルRNAを50ngにするように、cDNAを添加した。プライマーの各々を、300ngの量に添加した。逆転写効率に起因するサンプル間のcDNA濃度差は、内因性のコントロールベータ−アクチンによって標準化された。
【0127】
ステップ4)遺伝子ノックダウンによる表現型における変化
トランスフェクションの毒性および遺伝子ノックダウンの効果を検討するために、EthD−1蛍光染料(エチジウムホモダイマ−1、Sigma、cat#E1169)を用いて細胞の生死を観察した。そして、当該蛍光染料は死細胞に選択的である。細胞を2mMのEthD−1で処理した。siRNAのトランスフェクション効果を、蛍光顕微鏡(オリンパス1X51)によって観察した。蛍光性画像は、FITC波長(ex=494nm(em=519nm))における蛍光性オリゴおよびテキサス−レッド波長(ex=528nm(em=617nm))におけるEthD−1から求められた。
【0128】
ステップ5)遺伝子ノックダウンによる細胞増殖の変化
細胞株を3X10細胞/ウェルの量の96穴プレートに等分して、16時間培養した。
その後、10nM、20nM、50nMおよび10OnMのsiRNAを、0.1mlのリポフェクタミン(lipofectamine)に混合して、細胞が既に育った培地に添加し、次いで、添加してから24、48、および72時間経過した後、細胞計測アッセイを行なった。siRNAがトランスフェクトされた細胞を、トリプシン(GIBCO, cat#15090−04.beta.)50μlで分離し、損傷細胞をトリパンブルー染料(GIBCO, cat#15250−061)50μlで染色して、へもメーターで生存細胞を計測した。
【0129】
ステップ6)アポトーシス測定
6−1.DNA断片化の測定
細胞死検出ELISAキット(ロシュ(cat#1774425))で、アポトーシスまたはネクローシスを受けた細胞のDNA断片化パターンを検討した。siRNAを細胞株に導入してRNAiを行なった後、壊死の細胞死モードにおける細胞を含む上清を分離し、かつアポトーシスによる細胞死モードにおける細胞は、当該DNAを単離するために溶解された。DNAをストラプタビジン(straptavidin)を被覆したマイクロプレートに配置して、抗−ヒストンビオチン抗体(anti−histon biotin)および抗−DNA POD抗体と反応させた。ペルオキシダーゼ基質ABTSで着色の後、405nmの吸光度が測定された。測定された吸光度値からバックグラウンド値を予測した後に残った吸光度値を用いて、濃縮係数(細胞質にリリースされたモノ/オリゴヌクレオゾーム(oligonucleosome)の比)を算出した。これらのパラメータから、遺伝子ノックダウンに起因する細胞死を、定量的に分析した。
【0130】
6−2.カスパーゼ活性の測定
ホモジニウスカスパーゼアッセイキット(ロシュ(cat#3005372))を用いて、アポトーシスが誘導された細胞のカスパーゼ活性を測定した。siRNAを細胞株に導入して、RNAiを行い、蛍光物質Rhodamine110を結合したカスパーゼ基質DEVD−RIlOと反応した。蛍光を、500−560nm(放出波長)がフィルターをかける470−500nm(励起波長)フィルターと500〜560nm(放出波長)フィルターとを備えた蛍光測定読取機で測定した。測定した吸光度値からブランク値を残した吸光度値(相対的な蛍光ユニット(RFU))を用いて、誘導係数(IF、テスト群:コントロールのカスパーゼ活性比))を計算するといった方法で結果の解析を行なった。これらのパラメータから、遺伝子ノックダウンに起因したカスパーゼ活性変化を定量的に分析した。
【0131】
6−3.膜変性の測定
アポトーシスを受けた細胞において、PS(ホスファチジルセリン)を細胞膜の外部にさらした。さらされたPSを、特にPSに結合しているAnnexin−VでAnnexin V−FITCアポトーシスキット(BD(cat#K2025−l))を用いて検出した。細胞死がその中にsiRNAを促したことを介して細胞株で誘導された。細胞をFITC−結合アネキシン−V( FITC−coupledAnnexin−V)と反応させて、BectonCoulter製のフローサイトメータで計数した。この時に、壊死の細胞から後期段階においてアポトーシスを起こした細胞を区別するようにDNAに対して特異的なPI(ヨウ化プロピジウム)をAnnexin−Vに加えてインキュベートした。
【0132】
ステップ7)細胞周期変化の測定
siRNAを細胞株にトランスフェクトして、対応する遺伝子をノックダウンした後、70%エタノールで固化させた。前記DNAは、DNA−特異性PI(ヨウ化プロピジウム)で染色されて、フローサイトメータで測定された。細胞周期の期は、DNAレベルによって区別された。
【0133】
産業上の利用分野
本明細書述べられているように、乳癌または結腸直腸癌は、CTHRC1、CANP、KIAA0101およびこれらの混合物からなる群から選択された遺伝子の発現を検出することではっきりと診断することができ、かつ遺伝子の発現および活性を阻害することによって、乳癌または結腸直腸癌を効果的に予防または治療されうる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、DDRT PCRゲルに分離されたDNAを示す。
【図2】図2は、DNAチップハイブリダイゼーション画像を示す。
【図3】図3は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフを示す。
【図4】図4は、動物における腫瘍形成プロセスを示す。
【図5】図5は、mRNAレベルの変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
【図6】図6は、アポトーシスの誘起および細胞増殖の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
【図7】図7は、DNA断片化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
【図8】図8はカスパーゼ活性の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
【図9】図9は、膜変性によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。
【図10】図10は、細胞周期の変化によるRNAiの特異的遺伝子抑制を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTHRC1(コラーゲン トリプル ヘリックス リピート コンテイニング 1)、CANP(癌結合核タンパク質)、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカー。
【請求項2】
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカー。
【請求項3】
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のmRNAレベルを測定しうる薬剤を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーの検出キット。
【請求項4】
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のタンパク質レベルを測定しうる薬剤を含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーの検出キット。
【請求項5】
テスト用生体サンプルおよびコントロールサンプルの間のCTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現レベルを対比することを含む、乳癌または結腸直腸癌の診断的マーカーを検出する方法。
【請求項6】
前記生体サンプルは、組織、細胞、全血、血清、唾液、痰、脳脊髄液、および尿からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定の遺伝子に特異的なRNAインターフェランスを誘導でき、所定の遺伝子のmRNAに相補的なアンチセンスRNA鎖及び対応するセンスRNA鎖から構成される、siRNA(低分子干渉 RNA)配列を含み、ここで、所定の遺伝子はCTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、乳癌または結腸直腸癌の予防および治療用薬剤組成物。
【請求項8】
前記siRNAは、SEQ ID NOS.:17および18、SEQ ID NOS.:19および20、ならびにSEQ ID NOS.:21および22で示されるヌクレオチドの対を構成する、請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に特異的な抗体を含む、乳癌または結腸直腸癌の予防および治療用薬剤組成物。
【請求項10】
CTHRC1、CANP、KIAA0101およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の細胞内のmRNAもしくはタンパク質レベルまたはタンパク質活性を減少させることを有する、乳癌もしくは結腸直腸癌の細胞増殖を抑制するまたは乳癌もしくは結腸直腸癌細胞のアポトーシスの誘導する方法。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の薬剤組成物を投与することを含む、乳癌もしくは結腸直腸癌の細胞増殖を抑制するまたは乳癌もしくは結腸直腸癌細胞のアポトーシスの誘導する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−507515(P2009−507515A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531011(P2008−531011)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003620
【国際公開番号】WO2007/032631
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508076668)ダエウーン カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】