説明

癌治療におけるHAI−1およびHAI−2

本発明は、癌の治療、特に前立腺癌と乳癌の治療のための新規な治療用組成物に関し、この組成物は、肝細胞増殖因子活性化因子阻害因子であるHAI-1とHAI-2の混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、特に、限定はされないが、前立腺癌および乳癌を治療するための新規な治療用組成物に関する。組成物は、肝細胞増殖因子活性化因子阻害因子、HAI-1およびHAI-2を含む。さらに、本発明は、前記組成物の製造方法と癌を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌には、基底膜の破壊、原発腫瘍からの癌細胞の脱離、間質細胞層への侵入、血液細胞への侵入、血管を介しての標的組織への浸出、および遠隔組織における癌細胞の定着と増殖を含む、複数段階の過程がある。これらの事象を起こすために、癌細胞は、細胞外マトリックス成分を介して転移し、および破壊する能力を獲得しなければならない。間質細胞により分泌された増殖因子と運動因子の配列はこの過程に関係しており、肝細胞増殖因子(HGF)もまた、その1つである。
【0003】
HGFは、当初、肝細胞の増殖因子として同定された、多面的な因子である(Nakamura et al, 1987, Gohda et al, 1988 and Zarnegar et al, 1989)。細胞分散因子(scatter factor, SF)とは区別不能であり、上皮細胞の表面においてC-Metレセプターと結合するとき、HGFは、上皮細胞コロニーを解離させて細胞を分散させることが可能である。この活性は、癌細胞の分散と侵入の調整に重要であると考えられ、HGF/SFとMetは、腫瘍の発生や、腫瘍細胞の侵入、分化、および腫瘍の血管新生における重要な役割を有していることが、多くの最近の研究により証明されている(Bellusci et al, 1994, Rong et al, 1994, Lamszus et al, 1997, Nakamura et al, 1997 and Abounader et al, 1999)。Parrら(2004)もまた、HGFとそのレセプターは、臨床的状況における、例えば乳癌や前立腺癌のような癌の悪性度と関連を有しており、また、腫瘍においてHGFが高レベルであることは、患者の不良である臨床転帰と関連する、と報告している。
【0004】
HGFは、間葉細胞により、分子量約94キロダルトンを有する、不活性な単鎖前駆体型(scHGF)として分泌される。その生物学的機能を発現するためには、単鎖HGFから2本鎖の二量体活性型への細胞外たんぱく質分解変換が必要である(Naka et al, 1992 and Gak et al, 1992)。これまで、5つのプロテイナーゼがHGFの活性化に関与していた。それらの中で、HGF活性化因子(HGFA)が、単鎖HGFから活性化したHGFへの変換において最も強い活性を発現する(Shimomura et al, 1992, Shimomura et al, 1995 and Miyazawa et al, 1993)。HGFAは、例えばヒトの乳癌などのような癌において、異常に高レベルで発現することが示されており、この発現は、患者の不良である臨床転帰と関連する。
【0005】
生体内のHGFの活性とその結果の細胞の運動性の制御において、HGFの活性化が危機的事象にあるとき、HGFA阻害因子は癌のHGF活性制御における重要な役割を果たすことが可能であることが示唆されている。最初の内部HGFA阻害因子(HAI)は、MKN45胃癌細胞株の培養(culture-condition)培地から精製された(Shimomura et al, 1997)。続いて、同じ培地から、第2型のHAIが精製された(Kawaguchi et al 1997)。これらの阻害因子は、それぞれ、HAI-1、HAI-2と表記された。
【0006】
HAI-1とHAI-2は共に、高い割合のアミノ酸配列の同一性がある、2つの特定クニッツ(Kunitz)型阻害因子ドメイン(KD1およびKD2)を有しており、第1のドメインは、HGFAの阻害に関与していると考えられている(Shimomura et al, 1997)。加えて、各HAIは、C末端の近くに、膜貫通ドメイン(TM)と考えられるドメインを有しており、HAIは膜貫通型タンパクと考えられ(Shimomura et al, 1997, Kawaguchi et al, 1997 and Marlor et al, 1997)(図1参照)、そして、この構造は、それらの生物学的活性が、局部組織の細胞表面に対して作用することを裏付けると考えられる。しかしながら、特徴的なドメインの全体構造は、HAI-1とHAI-2との間でほぼ同じであるが、HAI-1分子は、HAI-2が欠いている低比重リポタンパク(LDL)レセプター様ドメインを有しており、そして、HAI-2は、HAI-1が欠いている精巣特異的なエキソンを有している。
【0007】
加えて、これらの2つのタンパクは異なる染色体に位置付けられている。HAI-1は第15染色体(q 15)であり、HAI-2は第19染色体(q 13.11)である。おそらく、5’隣接領域におけるHAI-1とHAI-2の間では相同部分は発見されず、Sp1やGATAs以外の既知の転写因子の潜在的な結合部位は、大きく異なっていると考えられる(Hoh et al, 2000)(図2参照)。HAI-1とHAI-2のゲノム配列は、genbankに提出されている(HAI-1 は、AC 012476, AC 022086, AC 025166, and AC 022835 および HAI-2は、AC 011479)。
【0008】
これにも係らず、RNAブロット分析はHAI-1の組織分布はHAI-2とほとんど同じであり、両方の遺伝子は胎盤、腎臓、膵臓、および胃腸管において多量に発現されることを示している(Shimomura et al, 1997 and Kawaguchi et al, 1997)。しかしながら、HAI-1は精巣や卵巣においては僅かしか検出されないのに対し、HAI-2はこれらの組織で多量に発現される。免疫組織化学的に、HAI-1タンパクは胃腸管を含む様々な組織の管、小管、粘膜面を覆う単層円柱上皮細胞の外側面、または基底外側面に局在する(Kataoka et al, 1999)。対照的に、HAI-2タンパクは、様々な組織の上皮細胞の細胞質や、マクロファージ様の単球炎症細胞において検出される(Itoh et al, 2000)。HAI-2はまた、膵臓癌においても過剰に発現される(Muller-Pillasch et al, 1998)。
【0009】
HAI-1とHAI-2の構造的な違い、および細胞局在の違いは、それらが生体内において異なる役割を有していることを示唆する。Oberst (2002)らは、HAI-1は活性HGFAの産生を抑制することにより癌細胞の増殖と運動性を抑える可能性がある、と示唆する。加えて、Kawaguchi (1997)らは、HAI-1とHAI-2は生体内においてHGFAを同時に阻害すると示唆した。しかしながら、最近、Kataokaら(2001)は、厳密な親和性架橋分析によって判断することにより、HGFAの活性型がHAI-2ではなくHAI-1に結合していることを示した。このHGFAのHAI-1の膜型への特異的な結合は、中国ハムスター卵巣細胞による人工的なシステムにおいてさらに確認され、HAI-1の膜型を発現した細胞のみが、外生である投与した成熟HGFAを保持し続けた。Kataokaらは、HAI-1は活性HGFAの細胞阻害因子であるが、HAI-2の膜型は異なると結論を出した。これを支持するものとして、HAI-1の細胞表面の発現は、組織の障害と再生に応じて、HGFAが含まれる上皮細胞において大きく上昇しているが、HAI-2の発現は変化しないという研究が示されている(Itoh et al, 2000)。
【0010】
癌細胞におけるHAI-1とHAI-2の発現の研究もまた、矛盾する結果を与える。例えば、Kangら(2003)は、HAI-1の多量発現は乳癌における不良な患者転帰に関連すると報告しているが、Parrら(2004)は、HAI-1とHAI-2が低分化型の乳房の腫瘍において非常に低いレベルでしか発現せず、乳癌組織におけるHAI-2の全体的な低いレベルの発現は、不良である患者転帰に関係することを発見した。さらに、Kataokaらは、対応する通常の組織と比較したHAI-1とHAI-2の発現は、大腸癌においては維持されるが、胃腸管癌においては低下することを発見した(2000, 1998)。
【0011】
HAI-1とHAI-2の構造情報、発現データ、細胞局在は知られているが、HGFAに結合するための可変的な能力以外のこれらタンパクの機能は、依然として確定されていない。それらの機能の詳細を解明することができれば、これらのタンパクが関与する細胞経路が示唆されることにより、なぜある例においては発現の低レベルが不良である臨床回帰と関連するかについての説明をすることが可能となる。
【0012】
しかしながら、これらのタンパクの機能を取り囲む知識が欠如しているにも係らず、我々は、思いがけなく、癌に関する我々の研究の1つとしてそれらを使用することを選択した。驚くべきことに、我々は、HAI-1とHAI-2が腫瘍成長の阻害に相乗的に作用することを発見した。特に、前立腺腫瘍を有するマウスにおいて、組み換えHAI-1、若しくは組み換えHAI-2のどちらか一方を腹膜へ挿入すると、腫瘍の成長が抑制され、これらタンパクの双方を同時に挿入すると、腫瘍の成長を完全に阻害した(図14参照)。
【0013】
我々の知るところにおいて、これはHAI-1とHAI-2の相乗的な効果が示された最初であり、これらのタンパクは、癌を治療するために共投与される。
【0014】
図14の参照によって理解されるように、HAI-1とHAI-2の共投与により、腫瘍の体積は変化しないか、若しくは、少なくとも、腫瘍の体積が0から10mmの間にあるため、相対的に変化しない。一方で、実験開始後約7日の無処理の腫瘍は、150倍、すなわち0から150mmに成長した。HAI-1およびHAI-2の共投与後の、腫瘍体積の抑えられ、継続的である抑制は、腫瘍成長を阻害、若しくは少なくとも大きく抑制する、これら二つのタンパクの顕著な相乗的効果を明示する。従って、ここでのこれら2つのタンパクの相乗的効果への論及は、腫瘍成長への顕著な効果と、HAI-1若しくはHAI-2のいずれも処理しないときの腫瘍、あるいはHAI-1若しくはHAI-2の一方のみ処理した腫瘍と比較したときの、腫瘍成長を阻害若しくは大きく抑制する、これら2つのタンパクの機能への論及を含む。
【0015】
加えて、我々は、我々の結果が驚くべきものであると確信する。なぜならば、HAI-2はHGFAと相互作用しないという証拠が存在することと、従来の研究ではHAI-1および/またはHAI-2は癌細胞において過剰発現することが示されていたことから考えると、HAI-1およびHAI-2の腫瘍モデルへの投与は、次のいずれかになると想定されたからである。
(a)投与したHAI-1と比較して、腫瘍成長に対して、ほとんど、あるいはまったく効果がない。
(b)それぞれ、腫瘍成長を増大させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明の1つの態様として、(a)単離され、精製され、または組み換えられた、HA-1、またはそれと相同性を有するタンパクをコードする核酸分子、あるいはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でそれと結合する、単離され、精製され、または組み換えられた核酸分子と、(b) 単離され、精製され、または組み換えられた、HA-2、またはそれと相同性を有するタンパクをコードする核酸分子、あるいはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でそれと結合する、単離され、精製され、または組み換えられた核酸分子とを含む治療用組成物が提供される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、前記相同である核酸分子は、前記精製され、あるいは組み換えらえた、HAI-1あるいはHAI-2のいずれかをコードする核酸分子と少なくとも80%の相同性を有する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、前記治療用組成物は、癌治療の使用のための、あるいは癌治療の使用に適している。
【0019】
特に、治療用組成物は、乳癌、または前立腺癌の治療に適しており、さらに好ましくは、胎盤、腎臓、膵臓、胃腸管、精巣、卵巣の癌である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、核酸分子は、cDNAまたはmRNAを含む、DNAまたはRNAであってもよく、あるいは、組み換えコンストラクトを含むベクターの形態であってもよい。核酸分子がベクターに導入される場合、HAI-1およびHAI-2は単一のプロモーター配列の制御下にあってもよく、または二つの異なるプロモーター配列の制御下にあってもよい。加えて、プロモーター配列は、特異的に誘導してもよい。あるいは、前記プロモーターのいずれか、または両方は、前記タンパクの構成的発現をもたらすようにしてもよい。
【0021】
本発明の異なる態様として、
(a)単離され、精製され、または組み換えられたHA-1タンパクを含むポリペプチド、あるいは、機能的に活性を有するそのフラグメント、あるいは、それと少なくとも80%の相同性を有するポリペプチドと、
(b)単離され、精製され、または組み換えられたHA-2タンパクを含むポリペプチド、あるいは、機能的に活性を有するそのフラグメント、あるいは、それと少なくとも80%の相同性を有するポリペプチドと、を含む治療用組成物が提供される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、この治療用組成物は、癌治療の使用のための、または癌治療の使用に適する。
【0023】
治療されるべき癌は、乳癌または前立腺癌であることが好ましい。本組成物は、膵臓、腎臓、胎盤、胃腸管、精巣、卵巣の癌の治療のための、または適することがより好ましい。
【0024】
本発明の上述した実施形態において、前記HAI-1またはHAI-2をコードする核酸分子、前記HAI-1およびHAI-2タンパクは、相対的に等量とされる。しかしながら、組成物中に両方の産生物が存在する限り、非等量とされてもよい。
【0025】
本発明のさらなる態様として、適当な賦形剤またはキャリア (career)と、局所適用、静脈注射、経口投与、ペッサリーとしての投与のような、特有の投与のために作られる組成物と組み合わせられた上述の治療用組成物を含む、医薬組成物を提供する。これらの目的のための製剤は、当業者によく知られている。
【0026】
本発明のさらなる実施形態として、HAI-1をコードする核酸分子とHAI-2をコードする核酸分子とを含む遺伝子コンストラクトが提供される。
【0027】
本発明の別のさらに好ましい実施形態において、前記遺伝子コンストラクトは、選択されたシステムにおけるHAI-1およびHAI-2の発現に適する。例えば、前記コンストラクトは、哺乳類のシステムにおけるHAI-1およびHAI-2タンパクの選択的発現に適しており、それゆえに、哺乳類のシステムにおいて前記タンパクの発現を可能とするために適する制御配列(プロモーターなど)が含まれている。そのような配列は、当業者によく知られている。
【0028】
あるいは、前記遺伝子コンストラクトはバクテリアあるいは酵母システムにおける発現に適してもよく、それゆえに、当該コンストラクトはこれらの目的に適する制御配列を含む。そのような配列は、当業者によく知られている。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記遺伝子コンストラクトは、前記核酸分子の少なくとも一つと制御的に連関する、少なくとも一つのプロモーター配列を含み、より好ましくは、単一のプロモーターが双方の前記核酸分子に連関する。異なる実施形態においては、各核酸分子は独自のプロモーター配列が提供されてもよい。どちらの場合にも、HAI-1およびHAI-2タンパクが制御可能にあるいは構成的に産生されるように、プロモーター配列は誘導的にまたは構成的に発現されてもよい。
【0030】
さらに好ましくは、各前記核酸分子には分泌シグナルが供給されることにより、発現の後、関連タンパクが分泌の標的とされ、従って、発現産物が細胞培養培地から回収される。この分泌−発現システムが導入されない場合は、代替的に、発現されたタンパクは、適当な手段を使用して関連細胞システムから抽出することにより、精製される。
【0031】
本発明のさらなる態様として、本発明の遺伝子コンストラクトにより形質転換された、あるいは核酸導入された宿主細胞が提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記宿主細胞は哺乳類由来、あるいはバクテリア由来、あるいは酵母細胞システムである。
【0033】
本発明の異なる態様として、ここに記載した組成物の調製方法が提供される。当該方法は、宿主細胞においてHAI-1およびHAI-2を個々に、あるいは共に発現させることと、発現産物を単離およびまたは精製することとを含む。
【0034】
本発明のさらなる代替的な実施形態において、前記治療用組成物は、適当な供給源からHAI-1およびHAI-2を単離することにより製造されてもよく、各タンパクが別個の供給源から産生される場合、単離されたタンパクは治療用組成物を供給するために混合される。
【0035】
本発明はまた、ここに記載された組成物を治療されるべき個体に投与することにより癌を治療する方法を提供する。
【0036】
本発明の好ましい方法において、前記治療されるべき癌は、乳癌または前立腺癌であり、従って、治療されるべき個体は、これらの病気のどちらかを有する患者である。あるいは、治療されるべき癌は、胎盤、腎臓、膵臓、胃腸管、精巣、または卵巣の癌であってもよい。
【0037】
本発明の代替的な実施形態において、本発明が内生HAI-1およびHAI-2の発現、好ましくは過剰発現を引き起こすことにより、作用されるようにしてもよい。これは、内生
タンパクが過剰発現されることを確実にするために、これらの遺伝子のプロモーターを標的とすることにより起こるようにしてもよい。この目的のためのツールは、相対的に高いレベルであって、HAI-1とHAI-2の組合せが癌を治療するために効果があり、さらに、前記コンストラクトがHAI-1および/またはHAI-2をコードする核酸分子のカップリングに適することを確実にするのに十分に高いレベルにおいて、付随される遺伝子が構成的あるいは断続的のいずれかで発現することを確実とすることによって特徴付けられる、構成的あるいは誘導的プロモーターを含む遺伝子コンストラクトを備えるようにしてもよい。
【0038】
本発明のさらなる態様として、少なくもHAI-1またはHAI-2のいずれかをコードする核酸分子の部分とハイブリダイズするために構成されたオリゴヌクレオチドが提供され、より好ましくは、HAI-1またはHAI-2とハイブリダイズするための複数のオリゴヌクレオチドが提供される。より好ましくは、ここに記載された治療用組成物を調製するためのHAI-1またはHAI-2の供給を構築することを目的として、同じものを効果的に増幅するためにHAI-1またはHAI-2に結合する、5’および3’オリゴヌクレオチドが提供される。
【0039】
本発明により提供されるオリゴヌクレオチドが、HAI-1またはHAI-2をコードする野生型あるいは組み換えDNAに結合することができるオリゴヌクレオチドを含むことは、当業者にとって明らかである。
【0040】
まとめとして、我々の最新の研究は、HAI-1とHAI-2の組合せが腫瘍成長の有効な阻害因子であることを示しており、そのため、これらの物質は、共投与したとき、癌治療において特定用途を有する。
【0041】
本発明の異なる態様として、HAI-1またはHAI-2に対する抗体が提供される。
【0042】
本発明による抗体は、増殖促進因子の供給において、特定用途を有する。ここでの開示から当業者が理解するように、HAI-1およびHAI-2の組合せは腫瘍成長を完全に阻害するため、HAI-1またはHAI-2に対する抗体、あるいは抗体の組合せは、これら2つの因子の活性の阻害において効果を有し、その結果、細胞増殖を促進する。従って、懸濁液、好ましくは溶液におけるHAI-1およびHAI-2の抗体の使用は、増殖促進培養培地の開発において、特定用途を有する。
【0043】
本発明のさらなる態様として、HAI-1に対する抗体とHAI-2に対する抗体を含む増殖促進因子が提供される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体はモノクロナール抗体であり、より好ましくは、ヒト化モノクロナール抗体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下の実施例を通して、および以下の図を参照して発明を説明する。
【0046】
ヒトHAIの増幅
ヒトHA-1およびHA-2のcDNAは、通常のヒトの皮膚および乳房の組織から単離したRNAから、逆転写PCTを使用して増幅した。これら産生物の正しい配列は、直接DNAシークエンスを使用して確認した。
【0047】
HAI発現カセットの構成
単離したHAIは、哺乳類の細胞を変異させるのに用いられる、哺乳類発現ベクターpcR3/HisMax(pcDNA4/HisMax TOPO)(図3参照)、あるいは化学的コンピテントE.Coli(chemically competent E.Coli)(pCRT7/VP22-1-TOPO)にそれぞれクローニングされた。バクテリアコロニーにおけるDNA挿入部分の存在と向き(direction)は、direction specific PCRを使用して検証した。上記のものからの発現カセットは、DNA制限酵素を使用して切断された(図4参照)。DNA発現フラグメントは、DNA抽出キットを使用して、アガロースゲルから抽出、および精製された。レトロウィルスベクター、pRev-LXSN、pRev-TREに挿入されたフラグメントは、適合したregistration 酵素、T4DNAリガーゼを使用して(図8、9参照)、同様に切断および精製された。ライゲーションされた産生物は、当方の組織内で化学的コンピテントされたE.ColiのJM109株を変異させるために使用された。挿入部分の存在と向きは、direction specific PCRを使用して同様に検証された。
【0048】
バクテリアプラスミドの調製と癌細胞への導入
E.Coliにおいてプラスミドの増幅後、プラスミドDNAは、プラスミド調製キットを使用して抽出、および精製された。精製されたHAI-1およびHAI-2をコードするプラスミドは、CHOあるいは乳癌細胞に電気穿孔される。安定に導入された細胞は、G418抗生物質を使用して選択された。
【0049】
pLXSN-HAI-1は、まずE.Coliにおいて増幅された。抽出、および精製後、レトロウィルスプラスミドは、パッケージング細胞株、PT67に電気穿孔された。レトロウィルスのHAI-1またはHAI-2を生成する、安定に導入されたPT67は、G418の選択によって得られた。これらの細胞は、その後に線維芽間質細胞に感染させるために使用されるレトロウィルスストックをつくるために使用された。ヒト線維芽細胞株、MRC5は、毎日新たなウィルスストックに交換されながら、連続して3日間感染された。
【0050】
HAI-1およびHAI-2のための酵母発現システムの開発
HAI-1/HAI-2発現カセットは、安定に修飾され、T4 DNAリガーゼを使用して酵母発現ベクター(図10、11参照)に再挿入された。ライゲーションされたプラスミドは、上述したように、E.Coliを形質転換させるために使用された。適当であるコロニーは、同様に選択され、増幅された。生成されたプラスミドは、エレクトロポレーターを使用して、酵母株に電気穿孔された。導入に成功したコロニーは、同様に選択され、そして検証された。
【0051】
酵母は、メタノールが補われた酵母培地において、特有の条件下で培養された。株の最適条件が開発され、より大きな体積でのその後の増幅に使用された。
【0052】
酵母培養培地は、4℃で保管された。酵母を除いた後、組み換えられたHAI-1あるいはHAI-2を含む調製培地は、特定のサイズのタンパクを保持するとともに濃縮することを可能とする、超ろ過システムを使用して濃縮された。
【0053】
HGFバイオアッセイ
我々は、当方の見解ではHAI-1およびHAI-2の生物活性を試験するのに最適な方法である、MDCK分散アッセイとして知られるHGFバイオアッセイを使用した(図12A、および12b参照)。小さな塊を生成するMDCK細胞は、MRC5細胞とともに、組み換えらえたHAI-1、HA-2、およびそれらを組み合わせたものが処理された。pLXSN/HA-1若しくはHA-2が導入されたMRC5細胞もまた、MDCK細胞と共培養された。24時間後、クリスタルバイオレットを用いて染色するために、MDCK細胞の分散性が評価された。
【0054】
細胞運動アッセイ(cell migration assay)および細胞侵入アッセイ(cell invasion assay)
癌細胞の繊維芽細胞の効果を評価するために、共培養システムを使用する、細胞運動アッセイと細胞侵入アッセイの2つの方法が使用された。運動アッセイのために、癌細胞は、容器の底に配置され、集合可能にされた。集合した細胞は、ニードルの使用により傷つけられた。システムの容器の上部には、レトロウィルス組み換えMRC5細胞(pLXSN-HAI-1あるいはHAI-2)が加えられた。傷つけられた癌細胞の運動は、低速度撮影ビデオを使用して観察され、速度はOptimas社の運動分析ソフトウェアを使用して計算された。癌細胞もまた、組み換えHAI-1、HA-2、それらの組合せ、レトロウィルス組み換えMRC5細胞の上清が処理された。細胞運動もまた、同様に測定された(図13A、13B参照)。
【0055】
試験管内での侵入アッセイにおいては、癌細胞はマトリゲルにより予め覆われた容器の上部に加えられ、容器の底部には、組み換えHAI-1、HAI-2、それらの組合せ、レトロウィルス組み換えMRC5細胞の上清、若しくはMRC5細胞が加えられた。3日後、細胞の侵入性が評価された。
【0056】
ウェスタンブロッティングを用いたHAIタンパクの検出と、アンチHAI-1およびアンチHAI-2抗体の開発
我々はまず、ヒトHAI-1およびHAI-2に特異的であり、KLHに結合する短いペプチドを合成した。その後、結合物はポリクロナール抗体を得る通常の方法を使用してウサギに挿入された。これら抗体は、上述したシステムからの組み換えHAI-1とHAI-2の存在と量を試験するために用いられた。
【0057】
腫瘍モデルにおける組み換えHAI-1および組み換えHAI-2の効果
乳癌細胞MDAMD231若しくは前立腺癌細胞PC-3は、腫瘍を成長させるための特有の混合物を使用して、無胸腺ヌードマウス(4-6週、メス)に皮下注射された。1週間後、腹腔内経路を介しての、濃縮された組み換えHAI-1、組み換えHAI-2、若しくはそれらを組み合わせたものについて、マウスへの毎日の投与を開始した。腫瘍の大きさとマウスの重量は、1週間ごとに測定された(図14参照)。
【0058】
結果
図12、13に示すように、HAI-1あるいはHAI-2が処理されたときに、癌MRC細胞の運動性と侵入性は抑制されたが、HAI-1とHAI-2が併せて投与されたときはさらに抑制された。
【0059】
図14は、マウス腫瘍モデルにおける、組み換えHAI-1および/またはHA-2の腹膜注射の結果を示す。HAI-1、HAI-2単体での結果は腫瘍成長のわずかな抑制を示すが、これらのタンパクの共投与は、腫瘍の成長を完全に阻害した。
【0060】
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【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、cDNAに関する、HAI-1(上部)およびHAI-2(下部)遺伝子の編成を示す。エキソンの位置は、エキソンナンバーを有するブラックボックスにより示される。各エキソンのcDNAにおける位置もまた、おおよそのDNAの大きさとともに示される(Itoh et al 2000から引用)。
【図2】図2は、ヒトHAI-1(A)およびHAI-2(B)遺伝子の5’隣接領域のヌクレオチド配列を示す。ヌクレオチド残基は、転写開始部位から負の数で示される。主要でないものを含む可能転写開始部位は、縦の矢印で示される。既知の転写因子の潜在的な結合部位は、それらの名称とともに横の矢印で示される。HAI-1は、影線で示される位置で、5’隣接領域におけるイントロンを有する(Itoh et al 2000から引用)。
【図3】図3(a)は、pcDNA 4/HisMax TOPOマップを示す。この図は、この5.27Kbベクターの機能を示す。クローニング部位は、1184−1185ベース間に位置する。 図3(b)は、pCR-T7/VP-22-1-TOPOマップを示す。この図は、VP-22ベクターの機能を要約する。ベクターは、4.9Kbの大きさであり、クローニング部位は597−598ベースの間である。
【図4】図4(a)は、HAI-1およびHAI-2の切断および発現の詳細を示す。増幅されたHAI-1およびHAI-2標的配列を示すPCR産物は、それぞれ、LN-CAPおよびECV-304におけるものが最も強く、混入も最も少なかった。これらのPCR産物は、TAクローニングに直接用いられた。 図4(b)適当であるHAI挿入部分(1&3)を含む、精製されたHisMaxプラスミドは、クローニングされたHAI配列(2&4)を解離させるために、HindIIIおよびEco RV制限酵素により切断される(注釈:HAI配列のHindIIIの場合は275bp、HAIのEcoRVの場合は45bpである。すなわち、余剰分は0.32Kbである。)1. HisMax (5.27Kb)+HAI-1 (0.8Kb) = 6.07Kb3. HisMax (5.27Kb)+HAI-2 (0.76Kb) = 6.03Kb2. HAI-1 (0.8Kb)+ extras 0.32Kb = 1.12Kb4. HAI-2 (0.76Kb)+ extra 0.32Kb = 1.08Kb); 図4(c)HAI-1およびHAI-2の無細胞発現である。HisMaxベクターは、HAI-1を含む、300のアミノ酸(900bp)からなる分子量32.5kDのタンパクを産生した。また、HAI-2を含む、286のアミノ酸(860bp)からなる31kDaのタンパクが産生された。
【図5】図5(a)は、pRevTREベクターマップを示す。 図5(b)は、pRevTet-Onベクターマップを示す。
【図6】図6は、RevTet-On遺伝子発現のメカニズムを示す。テトラサイクリン反応領域 (tet response element TRE)は、サイトメガロウィルス(PCMV)の最小前初期プロモーターの上流に位置し、不活性の場合は発現しない。ドキシサイクリン(Dox)の存在下において、逆テトラサイクリン制御転写活性化因子(rtTA)がTREに結合するとき、HAIの転写が活性化される。
【図7】図7は、pRevTRE、VP-22、HisMax、HAIプライマー(表9.1に示す)のいずれかを有する標的配列の増幅を示し、可変長のPCR産物を産生する。例えば、HAI-1のためのVP-22 順方向プライマーおよび逆方向プライマーの使用は、1467bpの産物がもたらされる(536+795+136)。(注:TEとは、特異的な翻訳エンハンサーである。一方、PHは、ポリヒスチジンタグの位置を示す)。
【図8】図8(a)は、HismaxおよびVP-22プライマーのセット(表9.1参照)を用いるヘルクラーゼ(Herculase)システム増幅を示す。産生されたバンドは、想定されたサイズであった(サイズの説明の図9.3参照)。1. VP-22 + HAI-1 (672 + 795) = 1.47Kb2. VP-22 + HAI-2 (672 + 759) = 1.43Kb)3. HisMax + HAI-1 (220 + 795) = 1.02Kb4. HisMax + HAI-2 (220 + 759) = 0.98Kb 図8(b)は、pRevTREプライマーのセットを有する、pRevTRE+HAI-1 (HisMax)のバクテリアコロニーチェックを示す。5つのバンドが産生された。想定されたサイズ(260bp+1.02Kb)=1.28Kb 図8(c)は、pRevTREベクター内のHAI-1配列の正しい位置の確認を示す。pRevTRE順方向プライマーとHAI-1逆方向プライマーを使用した。5つのコロニーのうち、1つのみ、pRevTRE内に正しく挿入されたHAI-1が含まれていた。想定されたサイズ(105+175+795)=1.08Kb 図8(d)は、pRevTREプライマーのセットを有する、pRevTRE+HAI-2 (VP.22)のバクテリアコロニーチェックを示す。3つのコロニーが正しい範囲内にバンドを産生した。想定されたサイズ(1.43 Kb+260bp)=1.69kb 図8(e)は、pRevTREベクター内のHAI-2の正しい位置の確認を示す。pRevTREの順方向プライマーとHAI-2の逆方向プライマーを用いて試験した。上記3つのコロニーのうち1つのみ、正しい位置でpRevTREベクター内に挿入されたHAI-2が含まれていた。想定されたサイズ(105+536+759)=1.4Kb。
【図9】図9(a)は、β-アクチンの品質管理(quality control)チェックを示す。 図9 (b)は、pRevTRE+HAI-1コンストラクトが導入されたMRC5線維芽細胞の、導入の確認に使用された、pRevTREプライマーセットを示す。 図9 (c)HAI-1プライマーセットは、HAI-1が、pRevTRE+HAI-1が導入されたMRC5細胞内にのみ存在することを示す。 図9(d)HAI-2プライマーセットは、HAI-2導入細胞内でHAI-2が高レベルで存在することを示す。野生型およびHAI-1導入線維芽細胞は、HAI-2の非常にわずかなバンドしか示さない。
【図10】図10 (a)は、予め配列を決定したDNAから、標的配列を増幅するハイフィデリティPCR(hi-fidelity PCR)反応を示す。これは、プルーフリーディング酵素の存在により、DNAストランドのエラーのない増幅を確実にする。 図10 (b)は、予め配列を決定したDNAから、標的配列を増幅するハイフィデリティPCR反応を示す。これは、プルーフリーディング酵素の存在により、DNAストランドのエラーのない増幅を確実にする。 図10 (c)は、Sna B1酵素により開環された、Pic9ベクターを示す。挿入されたHAI DNAストランドは、snaB1およびEcoRV酵素により切断されたストランドの両端を有する。 図10 (d)は、HAIのPIC9へのライゲーションである。このライゲーション方法は、T4 DNAリガーゼとして知られる、隣接するヌクレオチドの5’リン酸と3’水酸基の間の、2つのDNAストランドの結合を触媒する酵素の存在を必要とする。
【図11】図11 (a)は、コンストラクトがポジティブであるコロニーの同定を示す。PCRは、20から30のバクテリアのコロニーからHAI配列が挿入されたPIC9を含むものを同定するために用いられた。PIC9プラスミドプライマーのAOXセットが用いられた。挿入されていない=500bp、挿入されている=1300bp。 図11 (b)は、PIC-HAIコンストラクトの増幅、プラスミド精製、および切断を示す。(1)は精製されたプラスミドを、(2)はPme1およびNot1により切断されたHAI-1を、(3)はPme1およびNot1により切断されたHAI-2を示す。残り全ては、挿入位置チェックである。 図11 (c)は、選択後の形質転換と、その後の増幅に適したコロニーの同定を示す。ポジティブな酵母コロニーの選択である。 図11(d)組み換えHAI-1およびHAI-2タンパクは、酵母培養培地から採取され、増幅、HAI-1タンパク分泌の誘導、および、HAI-1およびHAI-2タンパク誘導のウェスタンブロット分析後に、研究室で開発された抗体を使用して検出した。 図11(e)は、研究室で開発された抗体で検出するHAI-1およびHAI-2タンパク合成を示す。
【図12a】図12(a)は、生物活性を有するHGF/SFのバイオアッセイ分析を示す。
【図12b】図12(b)は、MDCKバイオアッセイを示す。
【図13a】図13(a)は、共培養乳癌細胞侵入アッセイを示す。野生型と形質転換されたMRC5線維芽細胞は、24ウェルプレートで培養され、MDA-MB-231乳癌細胞の侵入を増進するためのHGF/SFの供給源として使用された。対照と比較して、野生型の線維芽細胞は侵入の割合が顕著に増加した。しかしながら、侵入された細胞の数の減少により示されるように、形質転換された線維芽細胞により産生された活性HGF/SFのレベルは顕著に低くかった。
【図13b】図13(b)は、酵母HAIタンパク侵入アッセイを示す。
【図14】図14は、腫瘍をHAI-1、HAI-2、あるいはその両方に17日間以上晒したときの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単離され、精製され、または組み換えられた、HAI-1を含むポリペプチド/タンパク、あるいは、機能的に活性を有するそのフラグメント、あるいは、それと少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド/タンパクと、
(b)単離され、精製され、または組み換えられた、HAI-2を含むポリペプチド/タンパク、あるいは、機能的に活性を有するそのフラグメント、あるいは、それと少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド/タンパクと、を含む治療用組成物。
【請求項2】
(a)と(b)は、等量で存在する請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項3】
(a)と(b)は、非等量で存在する請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項4】
安定な賦形剤またはキャリア(carrier)がさらに含まれる請求項1から3のいずれか1つに記載の治療用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、癌を治療するために使用される請求項1から4のいずれか1つに記載の治療用組成物。
【請求項6】
前記癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、腎臓癌、胎盤癌、胃腸管癌、精巣癌、卵巣癌のいずれか1つである請求項5に記載の治療用組成物。
【請求項7】
(a)単離され、精製され、または組み換えられた、HAI-1、または、それと少なくとも80%の相同性を有するタンパクをコードする核酸分子、あるいは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でそれに結合する、単離され、精製され、または組み換えられた核酸分子と、
(b) 単離され、精製され、または組み換えられた、HAI-2、または、それと少なくとも80%の相同性を有するタンパクをコードする核酸分子、あるいは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でそれに結合する、単離され、精製され、または組み換えられた核酸分子と、を含む治療用組成物。
【請求項8】
前記核酸分子は、DNA、RNA、組み換えコンストラクトのいずれか1つである請求項7に記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記核酸分子は、ベクターに組み込まれる請求項8に記載の治療用組成物。
【請求項10】
前記核酸分子は、前記タンパクの構成的発現または誘導的発現のいずれかを供与する関連プロモーターを含む請求項7から9のいずれか1つに記載の治療用組成物。
【請求項11】
HAI-1とHAI-2は、同一プロモーターおよび/または発現因子の制御下にあり、HAI-1とHAI-2のいずれか、または双方は、構成的に発現されるか、または誘導的に発現される請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項12】
HAI-1とHAI-2の発現は、HAI-1をコードする配列およびHAI-2をコードする配列のそれぞれと制御的に連関する単一プロモーター、または同一プロモーターのいずれかの制御下にある請求項10または11に記載の治療用組成物。
【請求項13】
HAI-1とHAI-2をコードする各核酸分子は、異なる、それ自体のプロモーターを有する請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項14】
前記HAI-1とHAI-2をコードする核酸分子は、選択された宿主システムにおける発現に適する、または対象とする請求項7から13のいずれか1つに記載の治療用組成物。
【請求項15】
前記宿主システムは、哺乳類、またはバクテリア、または酵母である請求項14に記載の治療用組成物。
【請求項16】
HAI-1および/またはHAI-2をコードする分子に分泌シグナルが提供されることにより、関連タンパクの発現の後、そのタンパクが分泌の対象となる請求項7から15のいずれか1つに記載の治療用組成物。
【請求項17】
請求項7から16に記載の治療用組成物により形質転換した、または核酸導入された宿主細胞。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1つに記載の治療用組成物の製造方法であって、
(a)宿主細胞が請求項7から16に記載の治療用組成物により形質転換される、または核酸導入される、
(b)宿主細胞が前記治療用組成物の発現が可能である条件下で培養される、
(c)発現産物であるHAI-1とHAI-2とが回収される、治療用組成物の製造方法。
【請求項19】
前記宿主細胞は請求項16に記載の治療用組成物により形質転換され、または核酸導入され、方法の(C)部分は細胞培養培地から発現産物を回収することを含む請求項18に記載の治療用組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1から6に記載の治療用組成物の調整方法であって、(a)哺乳類の組織の適した供給源からHAI-1タンパクおよび/またはHAI-2タンパクを得て、各タンパクが別々の供給源から単離されたとき、単離された2つの産生物を混合することを含む治療用組成物の調整方法。
【請求項21】
請求項1から6に記載の治療用組成物の調整方法であって、
(a)癌組織、前癌組織、隣接組織、またはこれらのうちいずれかの組織の部分において、HAI-1およびHAI-2の内生発現を開始させ、促進させ、増進させることを含む治療用組成物の調整方法。
【請求項22】
前記発現は、HAI-1および/またはHAI-2遺伝子のプロモーターの活性化により、開始され、促進され、または増進される請求項21に記載の治療用組成物の調整方法。
【請求項23】
HAI-1、あるいは、および/またはHAI-2の産生を増加させるために、適当な手段を用いて、HAI-1および/またはHAI-2をコードする核酸分子がさらに増幅される請求項18から20のいずれか1つに記載の治療用組成物の調製方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法で使用されるプライマー。
【請求項25】
治療されるべき個体に請求項1から16に記載の治療用組成物を投与することを含む癌の治療方法。
【請求項26】
請求項1から6に記載の治療用組成物に対する抗体。
【請求項27】
HAI-1に対する抗体と、HAI-2に対する抗体を含む増殖促進培養培地。
【請求項28】
HAI-1に対する抗体と、HAI-2に対する抗体を含む増殖促進因子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−509117(P2008−509117A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524388(P2007−524388)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002950
【国際公開番号】WO2006/013334
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504043462)ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】