癌治療の効果を高め、その副作用を軽減する方法および栄養製剤
本発明は、化学療法および/または放射線療法を組み合わせて、患者を保護し、かつ癌細胞の感受性を高める方法に関する。より詳しくは、本発明は、患者の慢性的な体重減少を引き起こさずに癌の増殖を抑制し、正常な細胞、組織および臓器を化学療法および/または放射線療法から保護し、かつ低用量、通常用量、高用量の化学療法に対する癌細胞の感受性を高めることができる、栄養学的方法および処方を提供する。それらの方法のいくつかはまた、化学療法を行わない場合でさえも癌の成長を妨げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年10月22日出願の米国仮特許出願第61/254,154号の利益を主張するものであり、その開示内容はすべて参照することによりここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、食事療法および癌の治療に関する。より詳しくは、本発明は、正常な細胞を保護しつつ、癌細胞の化学療法薬に対する感受性を高めるために使用することができる方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
化学療法は、様々な悪性腫瘍と診断された患者の生存を延長させることができる。しかしながら、正常な細胞および組織に対する有害な副作用のために、化学療法の用量の強度、頻度および効能が制限されている。例えば、広く処方されている抗癌剤のドキソルビシンおよびシスプラチンは、それぞれに現れる心毒性および腎毒性によって、その治療能力を完全に発揮することが制限されている(Rajagopalan,S.、Cancer Res. 1988;Hale,J.P.、Arch.Dis.Child 1994;Dobyan,D.C.、J.Pharmacol. E.T1980;Fillastre,J.P.、Toxicology let 1989)。したがって、悪性細胞の殺滅に妥協せずに正常な細胞を選択的に保護することにより、望ましくない毒性を減少させることは、癌治療を促進するための有望な戦略になる。
【0004】
最近、培養細胞、および神経芽細胞腫のマウスにおいて、高用量の化学療法に対し、癌細胞を除き正常な細胞のみを特異的に保護することができる、絶食に基づく治療介入が報告された(Raffaghello,L.、PNAS 2008)。神経芽細胞腫異種移植マウスモデルでは、マウスに、エトポシド治療前の48時間、水のみを与えた。アドリブ摂食(ad lib fed)のマウスでは、高用量のエトポシドが50%の致死率をもたらしたのに対して、絶食は、薬の化学毒性から保護しただけでなく、神経芽細胞腫の転移に依存する死亡も遅延させた(Raffaghello,L.、PNAS 2008)。
【0005】
酵母から哺乳動物に至る生命体においては、カロリー制限がストレス耐性を高め、寿命を延ばすことが知られている。カロリー制限はまた、癌の増殖を遅らせることが示されているが、その効果が小さいうえに、癌患者には有害かつ持続することが非常に困難な長期の体重減少が求められるため、化学療法と併用することはできず、また単独で適用することもできない。
【0006】
したがって、少なくともこれらの理由のために、治療の助けになるとともに、化学療法の副作用を軽減する食事療法を効果的に組み込んだ、さらなる癌の治療法が要望されている。
【発明の概要】
【0007】
このような先行技術の背景に対し、癌の増殖または癌の症状を軽減する方法を提供する。本実施形態の方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪、好ましくは一不飽和脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌細胞の増殖の阻害および抑制に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0008】
他の実施形態では、化学療法薬に対する癌の感受性を高める方法を提供する。この方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌の化学療法から/への感受性(特異的ストレス耐性)の増大に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0009】
絶食は、それまでの化学療法サイクルにより衰弱した、あるいは、ひどく痩せてしまっている癌患者には潜在的に有害であるとする、腫瘍学者が一般に認めている考え方からすれば、これらの結果は興味深い。
【0010】
さらに他の実施形態では、放射線治療に対する癌の感受性を高める方法を提供する。この方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌の放射線療法から/への感受性の増大(ストレス耐性の差)に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0011】
他の実施形態では、単独で投与されたときに癌の増殖を遅延させ、あるいは、化学療法および/または放射線療法からホストを保護し、かつ癌細胞の化学療法および/または放射線療法に対する感受性を高めるための、特定の範囲のタンパク質、必須アミノ酸、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルおよび必須脂肪酸を含有する製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、症例1における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図1Aは好中球;(B)図1Bはリンパ球;(C)図1Cは白血球、WBC、(D)図1Dは血小板;(E)図1Eは赤血球、RBC(F)図1Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図1Gはヘマトクリット、Hct;(H)図1Hは体重、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示す。
【図2】図2は、症例1における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、2サイクルの化学療法単独の平均値と2サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図3】図3は、症例2における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、化学療法単独3サイクルの平均値と5サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図4】図4は、症例3における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図4Aは好中球;(B)図4Bはリンパ球;(C)図4Cは白血球、WBC、(D)図4Dは血小板;(E)図4Eは赤血球、RBC(F)図4Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図4Gはヘマトクリット、Hct;(H)図4Hは前立腺特異抗原(PSA)値、患者は垂直の破線で示した90日間のアビラテロンアセテート(CYP17阻害薬)トライアルに登録され、また、アビラテロンアセテートによる治療の期間を除いて、化学療法の日にG−CSF(Neulasta)を投与され、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、矢印はテストステロンの塗布(クリーム、1%)を示し、臨床検査値の正常範囲は水平の破線で示す。
【図5】図5は、症例3における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、5サイクルの化学療法単独の平均値と7サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図6】図6は、症例4における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図6Aは好中球;(B)図6Bはリンパ球;(C)図6Cは白血球、WBC、(D)図6Dは血小板;(E)図6Eは赤血球、RBC(F)図6Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図6Gはヘマトクリット、Hct;黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示す。
【図7】図7は、症例4における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、5サイクルの化学療法単独の平均値と1サイクルの化学療法−絶食治療を表す。
【図8】図8は、症例5における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、1サイクルの化学療法単独(第1サイクル)と5サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図9】図9は、症例6における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図9Aは好中球;(B)図9Bはリンパ球;(C)図9Cは白血球、WBC;(D)図9Dは血小板;(E)図9Eは赤血球、RBC(F)図9Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図9Gはヘマトクリット、Hct;黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者は71日目に赤血球の輸血(3単位)を受け、また、図示したようにG−CSF(Neulasta)を投与された。
【図10】図10は、症例6における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフである。
【図11】図11は、症例7における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図11Aは好中球;(B)図11Bはリンパ球;(C)図11Cは白血球、WBC;(D)図11Dは血小板;(E)図11Eは赤血球、RBC(F)図11Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図11Gはヘマトクリット、Hct;(H)図11Hは前立腺特異抗原(PSA)値、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、矢印はアビラテロンの投与を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者はまた、図示したように、G−CSF Neulasta)を投与された。
【図12】図12は、症例7における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、8サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図13】図13は、症例8における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、4サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図14】図14は、症例9における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、4サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図15】図15は、症例10における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図15Aは好中球;(B)図15Bはリンパ球;(C)図15Cは白血球、WBC;(D)図15Dは血小板;(E)図15Eは赤血球、RBC(F)図15Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図15Gはヘマトクリット、Hct;(G)図15Gはヘマトクリット、Hct、黒三角形は化学療法の日を示す;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者はまた、図示したようにG−CSF(Neulasta)を投与された。
【図16】図16は、症例10における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、6サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図17】図17は、絶食を併用した、または併用しなかった化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフである。(A)図17Aのデータは、この研究の患者全員から報告されたCTCグレードの平均値を表し;アドリブ摂食下の18サイクルの化学療法を、46サイクルの化学療法−絶食治療と比較し;(B)図17Bのデータは、絶食および非絶食のサイクルのマッチングから得られたCTCグレードの平均値を示し;6人の患者が化学療法単独、または化学療法−絶食治療を受け、最も近い2つのサイクルからの自己申告による副作用を互いに比較し、マッチングしたサイクルからのみ統計的分析を行い、データを平均値の標準誤差(SEM)として表し、P値を対でない両側t−検定により計算した(*,P<0.05)。
【図18】図18は、マウス乳癌細胞(4T1−luc)を96ウェル細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、図18Aは、照射(5Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図18Bは、照射(10Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図18Cは、生存率をMTT法により求め、Studentのt−検定(N=60)により統計的分析を行った実験の結果を示した、棒グラフである。
【図19】図19は、マウスグリオーマ(GL26)細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させ、その後、図19Aは、照射(5Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図19Bは、照射(10Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図19Cは、生存率をMTT法により求め、Studentのt−検定(N=60)により統計的分析を行った実験の結果を示した、棒グラフである。
【図20】図20は、体重20〜25gのメスのBALB/cマウスに、同系の乳癌細胞(4T1−luc;2×105細胞/マウス)を皮下注射したところ、13日目には腫瘍が300〜500mm3まで著しく進んでおり、照射(IR;5Gy)前の48時間、マウスを絶食させる治療を開始し、1週間後、STS/IR(3Gy)の第2のサイクルを行い、毎日、Studentのt−検定により統計的分析を行った実験をプロットしたものである(*p<0.05)。
【図21】図21は、体重25〜30gのメスのC57BL/6マウスに、同系のグリオーマ癌細胞(GL26;3×105細胞/マウス)を皮下注射したところ、27日目には腫瘍が500〜1000mm3まで著しく進んでおり、照射(IR;7.5Gy)前の48時間、マウスを絶食させる治療を開始し、1週間後、STS/IR(3Gy)の第2のサイクルを行い、毎日、Studentのt−検定により統計的分析を行った実験をプロットしたものである(*p<0.05)。
【図22】図22は、絶食が腫瘍の化学療法に対する感受性を高めることを示すプロットであり、特に、マウスの(A)図22Aは乳癌(4T1)、(B)図22Bはメラノーマ(B16)および(C)図22Cはグリオーマ(GL26)の皮下腫瘍の進行を、48時間の各絶食サイクルの前後における腫瘍サイズの成長百分率で示している。
【図23】図23は、(A〜C)図23A〜Cは皮下性および(D)図23Dは転移性癌のマウスモデルにおいて、48〜60時間の絶食による体重の減少が、通常の給餌再開後、容易に回復したことを示すプロットである:(A)図23Aはマウス乳癌(4T1)罹患BALB/cマウス、(B)図23Bはマウスメラノーマ(B16)罹患C57BLマウス、および(C)図23Cはグリオーマ(GL26)罹患C57BLマウス、ならびに(D)図23Dはマウス神経芽細胞腫(Neuro2a)罹患A/Jマウス。
【図24】図24は、24〜48時間の絶食が、転移性マウスメラノーマ(B16)の生存を高めたことを示すプロットである。
【図25】図25は、種々の臓器へのB16メラノーマ細胞の転移を、通常の給餌下でDXRを投与されたマウスと比較して示す棒グラフである。
【図26】図26は、マウス神経芽細胞腫:NXS2の2つの転移モデルにおいて、絶食がまた腫瘍の感受性を高め(P<0.001)、長期生存をもたらしたことを示すプロットである。
【図27】図27は、マウス神経芽細胞腫:Neuro2aの2つの転移モデルにおいて、絶食がまた腫瘍の感受性を高め(P=0.005)、長期生存をもたらしたことを示すプロットである。
【図28】図28は、乳癌(4T1)の転移マウスモデルにおいて、絶食が癌細胞の化学療法に対する感受性を高めたことを示すプロットである(ログランク検定、P<0.0005)。
【図29】図29は、絶食がヌードマウスに皮下注射した異種移植ヒト神経芽細胞腫(ACN)の腫瘍進行を抑制したことを示すプロットであり;腫瘍が触知可能になった時点で、全部で5サイクルの絶食を行った[皮下モデルにTukeyポスト検定(27日目の(B)にStudentのt−検定)、転移モデルにログランク検定を使用した、一元配置分散分析、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001]。
【図30】図30は、アドリブ摂食マウスの血清で毒性の低かったDXRおよびCPの用量に対する乳癌細胞の感受性を絶食マウスの血清が増大させたことを示す棒グラフである。対照群は、ヒトおよびマウスの細胞をそれぞれ、10%FBSを加えた1.0g/Lおよび2.0g/Lのグルコース中で培養した。STS群は、1%FBSを加えた0.5g/Lのグルコース中で培養した。MTT還元法により生存率を求めた。グルコースと血清の全ての組み合わせがDXRとCPに及ぼす影響については、図33〜34を参照。
【図31】図31は、絶食マウスの血中グルコース値を示す棒グラフである。
【図32】図32は、STSが17種の癌細胞のうち15種でDXRin vitrに対する感受性を高めたという実験結果を示すプロットであり、4種のマウス癌細胞、すなわち乳癌(4T1)、メラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)および神経芽細胞腫(NXS2およびNeuro2a)、ならびに13種のヒト癌細胞、すなわち前立腺癌(PC3、22RV1)、乳癌(MCF−7、C42B)、神経膠芽細胞腫(U87−MG)、子宮頚癌(HeLa)、結腸癌(LOVO)、神経芽細胞腫(ACN、SH−SY5Y)、類表皮癌(A431)、メラノーマ(MZ−MEL)および卵巣がん(OVCAR)にSTSを適用し、DXRを併用した。
【図33】図33は、グルコースと血清の全ての組み合わせがDXRに及ぼす影響を示すプロットである。
【図34】図34は、グルコースと血清の全ての組み合わせがCPに及ぼす影響を示すプロットである。
【図35】図35は、化学療法に対する癌細胞のSTS依存の増感を、IGF−Iが無効にすることを示す棒グラフであり;グルコース制限下(1%FBS存在下、0.5g/L対2.0g/L)、マウス乳癌(4T1)およびメラノーマ(B16)細胞をrhIGF−I(200μM)で処理し、続いてDXR(16μM)で処理した;Studentのt−検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図36】図36は、その絶食と、酸化ストレスおよびDNA修復の調節とを示す試験結果であり;STSは、遺伝毒性があり、(A)図36Aは乳癌(4T1)においてCPと組み合せ、(B)図36Bはメラノーマ(B16)においてDXRと組み合わせ、および(C)図36Cはグリオーマ(GL26)細胞においてDXRと組み合わせ、コメットアッセイによる測定で、DNAの損傷を相乗的に増加させた。対照群およびSTS群の細胞は、1%FBSを加えた、通常グルコース(2.0g/L)または低濃度グルコース(0.5g/L)でそれぞれ培養した。薬剤は、図22A〜Cのインビボでの研究と一貫性が保たれるように選択した。
【図37】図37は、通常給餌マウスまたは絶食マウスからの皮下乳癌(4T1)に対するマイクロアレイ解析の結果を示したもので、細胞増殖経路の特異的制御を示している。
【図38】図38は、通常給餌マウスまたは絶食マウスからの皮下乳癌(4T1)に対するマイクロアレイ解析の結果を示したもので、リボソームアセンブリー/生合成を含む翻訳機構の増加を示している。
【図39】図39は、マウス乳癌細胞(4T1)において、絶食がAktおよびS6Kを増加させ、eIF2αリン酸化反応を減少させており、翻訳成分の増加と整合していることを示す試験結果であり、(A)図39Aはインビボ、(B)図39Bはインビトロである。
【図40】図40は、STSがインビトロで癌細胞の増殖を妨げており、マウスにおける腫瘍の増殖抑制と整合していることを示す棒グラフである。
【図41】図41は、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)、核因子カッパB(NFkB)、およびヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)などのストレス応答成分の発現において、絶食が、腫瘍においてはこれを顕著に抑制し、正常な臓器においてはこれを大量に誘導することにより、これを特異的に制御したことを示す棒グラフである;Studentのt−検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図42】図42は、STSが、スーパーオキシドマーカー(DHE)により推定される細胞内酸化ストレスを増加させたことを示す試験結果である。
【図43】図43は、STSがCP誘導細胞内スーパーオキシド値を増加させることを示す試験結果であり;インビトロで、マウス乳癌細胞(4T1)を絶食させ、CPで処理した。
【図44】図44は、絶食が、腫瘍内のカスパーゼ3の開裂/活性化レベルを選択的に増加させたが、正常臓器/細胞ではそうでなかったことを示す試験結果であり、(A)図44Aはインビボ、(B)図44Bはインビトロの結果である。
【図45】図45は、細胞のエネルギー機構を維持するために、STSが自己貪食を誘導したことを示す試験結果である。
【図46】図46は、STS処理中の自己貪食の遮断が細胞死をさらに増加させていることを示す棒グラフである。
【図47】図47は、マウス乳癌細胞(4T1)を、FBSを1%含有する通常または低濃度グルコース中において、最も一般的なHO−1誘発剤のヘミン(10μM)で処理し、その後CPを加えた実験結果のプロットである。
【図48】図48は、HO−1が絶食依存性DSRの主たるメディエータであることを示すプロットであり;FBSを通常(10%)または低濃度(1%)で含有する、通常または低濃度グルコース中において、最も一般的なHO−1誘発剤のヘミンで、CP処理前の24時間、およびCP処理中の24間、マウス乳癌細胞を処理した。
【図49】図49は、FBSを1%含有する通常または低濃度グルコース中において、一般に使用されているHO−1阻害剤のZnPP(20μM)でマウス乳癌細胞(4T1)を処理し、その後CPを加えた実験結果のプロットである。
【図50】図50は、HO−1が絶食依存性DSRの主たるメディエータであることを示すプロットであり;FBSを通常(10%)または低濃度(1%)で含有する、通常または低濃度グルコース中において、一般に使用されているHO−1阻害剤のZnPPで、CP処理前の24時間、およびCP処理中の24間マウス乳癌細胞を処理した。
【図51】図51は、絶食に応答して化学療法に対する感受性を高めた絶食依存性腫瘍のモデルを示し、グルコース、IGF−Iおよび他の成長促進分子/因子が減少し、この減少に応答して、悪性細胞が、AKT/S6KおよびeIF2αを活性化させ、翻訳を増加させるが、またストレス耐性タンパク質のFOXO3a、NFkBおよびHO−1の発現を減少させ、これらの変化によって、酸化ストレスおよびDNA損傷の増加、カスパーゼ−3の活性化、ならびに細胞死がもたらされている。
【図52】図52は、対照食(T.D.7912)もしくはアミノ酸処方(AA−D)を与えるか、または2.5日間飢餓させた(短期飢餓、STS)メスのCD1マウスにおける血清IGF−I値の実験結果を示すプロットであり;改変アミノ酸食では、5日間の給餌で、血清IGF−Iが50%まで低下した。
【図53】図53は、短期飢餓(STS)後、改変アミノ酸食を給餌することによって、低血清IGF−I値が維持されたことを示すプロットであり;メスCD1マウスに2.5日間飢餓させた後、2日または4日間、対照食(T.D.7912)または改変アミノ酸食(AA−Dを再び与えた。
【図54】図54は、血中グルコース値を示すプロットであり:(A)図54AはメスのCD1マウスに3日間飢餓させるか、あるいは低カロリー(通常のカロリー摂取量の6%)VCM食(3日間)、または改変アミノ酸食(AA−D、3または5日間)を与え;(B)図54BはメスCD1マウスに2.5日間飢餓させた後、4日間、対照食または改変アミノ酸食を再び与え、餌を取り上げてから4時間後にグルコースを測定した。
【図55】図55は、血清IGF−I値:メスのCD1マウスに2.5日間(STS)飢餓させるか、低カロリーVCM−M食(2日間)の後に、1日間の改変アミノ酸食(M/AA)を与えるか、または低カロリーVCM−H(2日間)の後に、1日間の変法アミノ酸食(H/AA)を与えて、Tukey検定で対照と比較し;(B)図55Bは2日間の低カロリーVCM食の後、1日間の改変アミノ酸食を与えることにより、ドキソルビシン(DXR,18mg/kg)で治療したマウスの生存率が増加した実験結果を示す棒グラフである。
【図56】図56は、メスのCD1マウスに2.5日間、対照(T.D.7912)を与えるか、飢餓させるか、またはVegeGelを与えた実験結果プロットである:(A)図56Aは絶食血中グルコース値;(B)図56Bは血清IGF−I値。
【図57】図57は、メスのCD1マウスに対照食(TD.7912)、カロリー制限ケトン産生食(3日間)、またはカロリー制限ケトン産生食(1日間)を与えた後、VegeGel(2日間)を与えた実験結果のプロットである:(A)図57Aは絶食血中グルコース値;(B)図57Bは血清IGF−I値。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の、現時点で好ましい組成物、実施形態および方法について詳しく説明するが、これは、本発明者らが現時点で知っている本発明の最良の実施モードを構成するものである。図面は必ずしも正確に縮尺したものではない。しかしながら、開示した実施形態が、種々の、他にも取り得る形態で実施することができる本発明の単なる例示であると理解されるべきである。したがって、ここで開示する具体的な詳細は、限定のためでなく、単に、本発明の任意の態様の代表的基礎として、かつ/または本発明を様々に使用するよう当業者に教示するための代表的な基礎として理解されるべきである。
【0014】
実施例を除き、あるいは他に明示されていなければ、物質の量、または反応および/もしくは使用の条件を示す本明細書中のあらゆる数値的量は、本発明の最も広い範囲を記述する際には、「約」という語で修飾されていると理解されるべきである。記述されている数値範囲内での実施が一般には好ましい。また、反対の記載がなければ:パーセント、「部」および比の値は、重量基準であり;本発明に関連した所与の目的に適した、または好ましい物質の群またはクラスについての記載は、群またはクラスのメンバーの任意の2種以上の混合物も同様に適しているか、または好ましいものであるという意味を含んでおり;化学的表現での成分の記載は、明細書中に特定された組み合わせに添加する時の成分をいい、混合後の混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく;頭字語または他の略語の最初の定義は、ここでの同一の略語のその後の全ての使用に適用され、また最初に定義された略語の通常の文法的な変更に準用され;かつ、反対の記載がなければ、特性の測定は、同一の特性に対して先に、または後に参照されたものと同じ手法によって測定される。
【0015】
また、特定の成分および/または条件は、当然ながら変更し得るものであるから、本発明が以下に記載の特定の実施形態および方法に限定されないことも理解されるべきである。さらに、ここで使用する用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的でのみ使用されるものであって、決して限定することを意図するものではない。
【0016】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、特に他の明示がなければ、単数形「a」、「an」および「the」が複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。例えば、ある構成要素を単数形で参照するとき、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0017】
用語「必須アミノ酸」は、有機体により合成できないアミノ酸をいう。ヒトの必須アミノ酸には、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンが含まれる。さらに、次のアミノ酸―すなわち、ヒスチジン、チロシンおよびセレノシステインも、ある条件下ではヒトに必須である。
【0018】
用語「キロカロリー」(kcal)および「大カロリー(Calorie)」は、食物のカロリーをいう。用語「カロリー(calorie)」はいわゆる小カロリーをいう。
【0019】
用語「患者」は、霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギおよびウシなどのあらゆる哺乳動物を含む、ヒトまたは動物をいう。
【0020】
用語「飢餓させる」は、細胞または患者を低栄養または無栄養状態にすることを意味する。
【0021】
用語「癌」は、無制御な細胞分裂と、増殖し隣接する組織へ直接侵入するか、または転移により離れた部位に生着することにより拡がっていくそれらの細胞の能力を特徴とする疾病または疾患をいう。癌の例としては、これらに限定はされないものの、原発癌、転移癌、癌腫、リンパ腫、白血病、肉腫、中皮腫、膠腫、胚細胞腫、絨毛癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、大腸癌、消化器癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、メラノーマ、脳癌、精巣腫瘍、腎臓癌、皮膚癌、甲状腺癌、頭頚部癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、骨髄腫、神経芽細胞腫、褐色細胞腫および網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0022】
一般に、短期飢餓(STSまたは絶食)が、選択的に腫瘍の成長を妨げ、化学療法毒性から正常細胞を保護するが、癌細胞のそれに対する感受性は高めることがわかった。この目標を達成する方法および組成物の具体的な実施形態について、以下に説明する。本発明の作用は特定のメカニズムに限定されるものではないが、本発明の各種実施形態で観察される保護は、部分的には、その癌細胞に対する効果を妨害せずに、IGF−I経路およびグルコース濃度を調節することによるものである(特異的ストレス耐性、DSR)。絶食の保護効果の基礎は、栄養分が不足または欠乏するとき、再生/成長から保護/維持へエネルギーを配分し直す能力に基づいていると考えられる。長期の食事制限によって引き起こされるIGF−Iおよびグルコースの減少が、絶食に比べてはるかに小さいことを指摘しておかなければならない。さらに、絶食とは異なり、長期の食事制限は、慢性の体重減少を引き起こし、維持することが非常に困難であることから、大部分の癌患者に適していない。代わりに、化学療法前の平均約62時間と、化学療法後の24時間の絶食であれば、様々な毒性治療を受けている癌患者にとって十分に耐えられるものであった。
【0023】
また、細胞の増殖およびストレス応答に関係する経路で一般に見られる発癌突然変異が、絶食中であっても、悪性細胞における高い保護モードへの切り替えを防止し、増殖または増殖関連状態を推進することも指摘しておかなければならない。酵母および哺乳動物についての研究からは、悪性細胞の毒素/オキシダントに対する増感が、保護モードへの移行阻害における増殖促進経路の重複性のために、発癌突然変異のタイプとはほとんど無関係であり得ることが示唆されており、これは大部分の癌細胞および癌タイプが、STSまたは低IGF−Iに応答して保護されないことを示している。
【0024】
本発明の一実施形態においては、癌の増殖または癌の症状を緩和する方法が提供される。本実施形態によれば、癌患者は、同定後、第1の所定期間に第1の食が与えられる。第1の食は、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪、好ましくは一不飽和脂肪から得る。患者の通常のカロリー摂取量は、患者が彼/彼女の体重を維持するために消費するkcal数である。患者の通常のカロリー摂取量は、患者との面接により、あるいは患者の体重を考慮することにより推定し得る。おおまかな目安として、患者の通常のカロリー摂取量は、平均、男で2600kcal/日、女で1850kcal/日である。一つの態様(refinement)では、第1の食で700〜1200kcal/日を患者に与える。特に有用な態様では、第1の食で、平均体重の男性患者には約1100kcal/日を与え、平均体重の女性患者には900kcal/日を与える。通常、第1の所定期間は約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。第1の食における脂肪レベルを見直すために、U.S.Food and Drug Administrationは、典型的な1日当たり2000kcalの食事に対して、次のような栄養の内訳:脂肪65グラム(約585キロカロリー)、タンパク質50グラム(約200キロカロリー)、全炭水化物300グラム(約1200キロカロリー)を推奨している。したがって、第1の食の1つのバージョンでは、炭水化物とタンパク質からのカロリーの大部分は除かれる。
【0025】
第1の食は実質的にいかなる脂肪源を包含してもよいが、一不飽和脂肪源、多価不飽和脂肪源など、不飽和脂肪が多い脂肪源が特に有用である(例えば、オメガ−3/6必須脂肪酸)。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食にはまた、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0026】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。さらに他の一つの態様では、第2の食には、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源には、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0027】
第1の食および第2の食の効果は、患者の多くのパラメータを測定することによりモニターされる。例えば、患者のIGF−Iの血清中濃度は、第2の食の終わりまでには25〜90%減少していることが望ましい。また、患者の血中グルコース濃度も、第2の食の終わりまでには25〜75%減少していることが望ましい。
【0028】
本実施形態の変形では、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3食は、患者の通常の食を補充するためのものである。補充組成物に、必須アミノ酸、ミネラルおよび必須脂肪が含まれるのが特徴である。有利なことに、第3の食は、患者に正常な体重を回復させ、その体力を最大にするであろう。通常、第3の所定期間は、少なくとも5日である。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は、野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。補充組成物はまた、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含有する多成分ミネラル錠を含んでもよく、またビタミンB12などのビタミンB複合体を含有してもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態では、癌の化学療法薬に対する感受性を高める方法が提供される。本方法においては、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を与える。本方法に感受性の高い癌の例としては、限定はされないが、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、グリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫および褐色細胞腫が挙げられる。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得る。通常、第1の所定期間は、約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。上述したように、第1の食は、実質的に任意の脂肪源を包含するが、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪の脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないが、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0030】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。第2の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0031】
患者が第2の食を摂取している間、またはその後に、患者には化学療法薬剤が投与される。通常、化学療法薬剤は、第2の食の48〜72時間後に投与される。本方法が実質的にいかなる化学療法薬に対しても有効であることは、容易に理解される。有用な化学療法薬の例としては、限定はされないものの、DNAアルキル化剤、オキシダント、トポイソメラーゼ阻害薬、およびこれらの組み合わせが挙げられる。有用な化学療法薬の具体例としては、限定はされないものの、メチルメタンスルホネート、シクロホスファミド、エトポシド、および他のトポイソメラーゼ阻害薬、ドキソルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、および他のプラチナベースの薬剤、ゲムシタビン、ドセタキセルまたは5−FUが挙げられる。
【0032】
本発明の変形では、続いて、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3の食は、患者の通常のカロリー摂取量を補うものであり、補充組成物を含む。補充組成物に、必須アミノ酸が含まれるのが特徴である。補充組成物にはまた、天然の、必須脂肪酸源、ビタミン源およびミネラル源、ならびに鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含む多成分ミネラル錠が含まれていてもよく、また、ビタミンB12などのビタミンB複合体が含まれていてもよい。
【0033】
上記したように、第3の食を患者の通常の食と共に与えることにより、患者は正常な体重を回復し、体力が最大になるであろう。通常、第3の所定期間は少なくとも5日であり、無期限に続けてもよい。一つの態様では、第3の所定期間は、約4日〜約14日である。この目的のためには、1週間がほぼ最適であると推定される。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。第3の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0034】
本実施形態の方法は、多くの治療上の利点を提供する。例えば、この方法によれば、患者に第1の食および第2の食が与えられていないときの化学療法薬の標準的な使用期間よりもより長い期間、患者に化学療法薬を与えることが可能になる。このような期間の増大は、第1および第2の食が、化学療法薬の毒作用を減少させ、かつ/または癌細胞の化学療法薬に対する感受性を、正常(すなわち、非癌性の)細胞よりも高めたことの結果である。多くの患者で、第1および第2の食を使用しない治療プロトコールよりも、ホストを保護する第1および第2の食によって、化学療法薬をより大量に投与することが可能になる。通常、そのような薬剤は、一般に患者が耐えられる量より少なくとも10%多く投与することができる。しかしながら、ある種の患者では、そのような薬剤の用量は、10%〜40%増加させることができる。そのようなシナリオでは、患者をより積極的に治療することができる。他の一つの態様では、癌の感受性を高める第1および第2の食は、最適に近い、または増大した応答を維持しながら、患者に与える化学療法薬の量を通常より少なくできるという効果を有する。そのような場合、化学療法薬剤は、通常投与する量より少なくとも10%少ない量を投与することができる。ある種の患者では、望ましくない毒性を低下させるために、そのような薬剤の用量を10%〜40%減少させることができる。本方法によればまた、好ましくない副作用を示す化学療法治療を患者に継続させることが可能になる。その場合、患者が化学療法に関連する毒性症状を示すことを確認した後、上述した方法および期間で、第1、第2および第3の食を与える。有利なことに、本方法によればまた、末期にあると確認され、他の方法では治療を中断するであろう患者に対し、治療を継続することが可能になる。さらに他の変形では、長期に亘る化学療法薬の投与中、例えば、5−FUによる5日間の治療中に、第1および第2の食が与えられる。
【0035】
本発明の他の実施形態では、癌の放射線療法に対する感受性を高める方法が提供される。本方法においては、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を与える。本方法に感受性の高い癌の例としては、限定はされないが、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、グリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫および褐色細胞腫が挙げられる。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得る。通常、第1の所定期間は、約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。上述したように、第1の食は、実質的に任意の脂肪源を包含するが、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪の脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないが、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0036】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。第2の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0037】
患者が第2の食を摂取している間、またはその後、患者には放射線療法が行われる。通常、放射線療法は第2の食の48〜72時間後に行われる。
【0038】
本発明の変形では、続いて、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3食は、患者の通常のカロリー摂取量を補うものであり、補充組成物を含む。補充組成物に、必須アミノ酸が含まれるのが特徴である。補充組成物にはまた、天然の、必須脂肪酸源、ビタミン源およびミネラル源、ならびに鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含む多成分ミネラル錠が含まれていてもよく、また、ビタミンB12などのビタミンB複合体が含まれていてもよい。
【0039】
上記したように、第3の食を患者の通常の食と共に与えることにより、患者は正常な体重を回復し、体力が最大になるであろう。通常、第3の所定期間は少なくとも5日であり、無期限に続けてもよい。一つの態様では、第3の所定期間は、約4日〜約14日である。この目的のためには、1週間がほぼ最適であると推定される。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。第3の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態では、癌患者に食事を提供するための、癌の増殖を抑制し、化学療法薬の効果を高める治療食パッケージが提供される。治療食パッケージは、上記の方法が必要とする適切な栄養とカロリーを提供するように考えられている。治療食パッケージには、第1の食事コンポーネント、第2の食事コンポーネントおよび補充組成物が含まれる。第1の食事コンポーネントは、上述した第1の食の栄養成分を提供する。第1の食事コンポーネントは、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、かつそのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る食事に分割される。第1の食事コンポーネントは、第1の所定期間に十分な量の食事を提供する。ある一つの態様では、第1の食事コンポーネントはまた、5食分の野菜に相当する抽出物およびオメガ−3/6必須脂肪酸を含む。
【0041】
第2の食事コンポーネントは、上記第2のダイエット食の栄養成分を提供する。第2の食事コンポーネントは、癌患者に最大500kcal/日を与える食事に分割される。第2の食事コンポーネントは、第2の所定期間に十分な量の食事を提供する。第2の食事コンポーネントはまた、5食分の野菜に相当する抽出物の他、ミネラルおよびオメガ−3/6必須脂肪酸も含む。
【0042】
補充組成物は、少なくとも部分的に、上述した第3の食の栄養成分を提供する。通常、補充組成物は、患者に通常のカロリー摂取量の幾分かを提供するために、患者の通常の食と併用される。補充組成物は、必須アミノ酸を含む。補充組成物は、第3の所定期間に十分な量の補充物を提供する。
【0043】
上記したように、第1の食事コンポーネントは高脂肪である。第1の食事コンポーネントは実質的に任意の脂肪源を包含し得るが、脂肪の潜在的に有害な心血管の副作用を最小化するため、特にこの食を度々使用するであろう患者には、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食事コンポーネントにはまた、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0044】
上記したように、第2の食事コンポーネントは、患者に非常に低いカロリーを提供する。一つの態様では、第2の食事コンポーネントには、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0045】
補充組成物は、患者の通常の体重および体力が維持されるように(または、体重減少があったならば、回復するように)考えられている。一つの態様では、補充組成物はさらに、5食分の野菜に相当する抽出物の他、ミネラルおよびオメガ−3/6必須脂肪酸も含む。補充組成物は、目標とする体重および体力が達成されるように、通常の食と共に摂取すべきであると認識すべきである。上記したように、一般に、通常の食は患者の通常のカロリー摂取量をほぼ提供するであろう。
【0046】
一つの変型例では、治療食パッケージはまた、第1の食のコンポーネント、第2の食のコンポーネントおよび補充組成物を癌患者に与えるための使用説明書を含む。使用説明書は、方法に関し、上で記載した詳細を提供するであろう。一つの態様では、使用説明書には、第1の食のコンポーネントが、上記のように、第1の所定期間を通して患者に提供されるべきことが記載される。通常、第1の所定期間は約1〜2日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。使用説明書にはまた、第2の食のコンポーネントが、上記のように、第2の所定期間を通して患者に提供されるべきことが記載される。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は約3日である。使用説明書にはまた、補充組成物が通常の食と共に、そして特に、患者の体重および体力を維持または回復するのに十分な量の追加食品と共に摂取すべきであることが記載される。通常、第3の所定期間は少なくとも5日である。一つの態様では、第3の所定期間は約4日〜約14日である。この目的のためには1週間がほぼ最適であることがわかっている。
【0047】
本実施形態の変形例では、治療食パッケージは、容器(例えば、箱)に詰められる。一つの態様では、第1の食のコンポーネントおよび第2の食事コンポーネントはそれぞれ、1日量に分けられ、それを示すラベルが付される。さらに他の態様では、各1日分はさらに3食分に分けられる。通常、各食事は、固形食、ミルクセーキおよびスープの組み合わせ(1日目)で、2、3および4日目はスープとミルクセーキのみ(3食/日)であろう。各パッケージにはまた、必須脂肪酸、ミネラルおよびビタミンを含む錠剤、および/または野菜抽出物が入っているであろう。箱にはまた、錠剤の形態をしているであろう1週間分の補充食も入っているであろう。一般に、食の全てのコンポーネントで、それらに含まれる品目はいずれも非天然のものは最小限にされる。
【0048】
以下の実施例は、本発明の各種実施形態を説明するものである。当業者であれば、本発明の精神と特許請求の範囲内に多くの変形があることを認めるであろう。
【実施例】
【0049】
実験1
多様な悪性腫瘍があると診断された患者らが、化学療法の前(48〜140時間)および/または後(24〜56時間)に自発的に絶食を行った10の症例について記載する。絶食と組み合わせて平均4サイクルの化学療法を受けた10人の患者は、空腹以外は誰も、絶食自体による重大な副作用を訴えることはなかった。毒性のグレード分け、National Cancer Institute(NCI)のCommon Toxicity Criteria(CTC)に基づいて行い、そして5人の患者が自己申告した副作用は、絶食が疲労、衰弱および消化器への副作用から保護し得ることを示している。癌の進行をモニターできた患者では、絶食が化学療法依存の腫瘍量または腫瘍マーカーの減少を阻害することはなかった。臨床転帰および患者の生活の質を高めることにおける絶食の役割を調べるには、制御した臨床試験が必要であるが、ここに示した10の症例は、化学療法と併用した絶食は、妥当であり、安全であり、かつ従来の化学療法を増強する可能性を有していることを示唆している。
【0050】
各種タイプの癌と診断され、化学療法の前後に自発的に絶食を行った患者について、10の症例を報告する。自己評価による健康転帰と血液検査の結果に基づいて示された結果は、絶食が安全であって、癌細胞の殺滅を阻害せずに化学療法による多くの副作用を軽減し得ることを示唆している。
【0051】
症例1:
ドセタキセル(DTX)およびシクロホスファミド(CP)による補助化学療法が推奨された、ステージIIAの乳癌と診断された51歳の白人女性。彼女は第1回の化学療法を実施する前に絶食を行った。絶食の方法は、化学療法前の120時間、および化学療法後の60時間(計180時間)はカロリーを完全に断ち、その間、彼女は水とビタミンのみを摂取するというものであった。患者は、この長期に亘る絶食を重大な不都合もなく終え、体重は7ポンド減少したが、これは治療が終わるまでに回復した(図IH)。絶食−化学療法のサイクル後、患者は軽い疲労、口内乾燥、吃逆を経験した(図2)が、それにもかかわらず、彼女は日々の活動(1日に12時間まで仕事)を行うことができた。対照的に、その後の化学療法サイクル(第2回および第3回)では、彼女は絶食せずに化学療法を受け、軽度から重度に至る疲労、衰弱、悪心、腹部痙攣および下痢を訴えた(図2)。今度は、副作用によって彼女はいつもの仕事のスケジュールをこなせなかった。第4回および最後のサイクルでは、化学療法前の120時間、および化学療法後の24時間の絶食からなる異なる方法であったが、再度、絶食することを選択した。注目すべきことに、前のサイクルで組織には蓄積された損傷が見込まれるにもかかわらず、彼女が自己申告した副作用は軽度なものであった。これと一致して、血液検査の結果も、絶食が血液細胞の保護に好ましい効果をもたらし得ることを支持するものであった。化学療法の前に絶食を行ったときは、総白血球数(WBC)および好中球絶対数(ANC)は、最下点で僅かではあるが一貫して増大した(図1A、C;表1)。さらに、絶食−化学療法において、第1および第4サイクルそれぞれで、血小板数は減少せず、むしろ安定を維持するか、または増加することが観察された。(図1D)。興味深いことに、144時間の絶食と併用した第4回化学療法サイクル後、ANC、WBCおよび血小板数は、80日前の化学療法の開始以来、最高値に達した(図1A、CおよびD)。研究室での数値とCTCの調査は、概ね、絶食が安全であって、化学療法による有害な副作用からこの患者を保護することができたことを示唆している。
【0052】
症例2:
2008年2月に食道腺癌と診断された68歳の白人男性。診断時までに、CT−PETスキャンで左副腎への転移が発見され、これはステージIVの疾患と一致する。初期の治療は、シスプラチン(CDDP)を併用した5−フルオロウラシル(5−FU)であった。この化学療法と同時に、彼はまた最初の2サイクルで局所放射線照射を受けた。この期間を通して患者は、重度の衰弱、極度の疲労、激しい嘔吐および重篤な末梢神経障害を含む多くの副作用を経験した(図3)。さらに患者は、放射線治療により最も引き起こされやすい、重篤な粘膜炎に続いて強い嚥下障害を訴えた。第3のサイクルの間、重度の悪心と難治性嘔吐のために、5−FUの投与を中断せざるを得なかった(図3)。化学療法と放射線を使用する攻撃的な治療にもかかわらず、彼の病気は進行した。2008年8月に測定した新しいCT−PETからは、右の副腎、右肺の下葉、左仙骨、および烏口突起への新たな転移の展開が示された。これらのことから、彼の化学療法の強化が促された(第4のサイクル)。カルボプラチン(CBDCA)のDTXおよび5−Fuとの併用(5−FUは96時間投与された)。患者は、第4のサイクルの間、化学療法前72時間と、化学療法後51時間の絶食を組み込んだ。化学療法後51時間絶食したのは、5−FUの継続投与から保護するためであった。患者は体重が約7ポンド減少したが、通常食を再開して最初の数日のうちに4ポンド回復した(データを示さず)。このサイクルの間、3種類の化学療法薬剤を併用したが、報告された自己申告の副作用は、アドリブ食−化学療法サイクルより一貫して軽度であった(図3)。第5の化学療法治療の前に、患者は再び絶食することを選択した。前に彼が受けたような96時間の5−FUの点滴を受ける代わりに、同用量の薬が48時間以内に投与され、絶食の方法も薬剤送達前の48時間と薬剤送達後56時間に修正された。興味深いことに、自己申告の副作用が軽度であったばかりでなく、CT−PETスキャンで記録された臨床応答も励みになるものであった。主な食道腫瘤、副腎転移、および肺の右下葉小結節の標準摂取率(SUV)が減少したことが、スキャンで示された。第6、第7、第8サイクルでは、患者は化学療法治療の前後で絶食を行った(表3)。毒性の蓄積が予想されたにもかかわらず、第7化学療法サイクルの間に軽い下痢と腹部痙攣があったことを除いて、ほとんどの副作用が絶食により軽減された。非常に攻撃的な癌であり、十分に耐えられた化学療法であったにもかかわらず、患者の病気は進行し、患者は2009年2月に死亡した。
【0053】
症例3:
2000年7月に、グリーソンスコア7、PSA値5.8ng/mlの両側前立腺癌と診断された74歳の白人男性。2000年9月に前立腺切除を行い、2003年1月にPSA値が1.4ng/mlに上昇するまでは、検出不能のPSA値であった。ビカルタミドおよびフィナステリドと共に酢酸リュープロリドが処方された。しかしながら、テストステロンの欠乏に関係した重度の副作用のために、2004年4月にはこれらの薬の投与を中止せざるを得なかった。この病気をコントロールするために、トリプトレリンパモ酸塩、ニルタミド、サリドマイド、CPおよびケトコナゾールを含む、異なる薬剤が使用された。2007年には、患者のPSA値は9ng/mlに達し、骨スキャン中に新たな転移が認められた。1週当たり25mg/m2のDTXを投与したが、PSA値は増加を続け、40.6ng/ml(データを示さず)に達した。ベバシズマブを治療に加え、それによって初めて、PSAが顕著に低下した(データを示さず)。これに一致して、新たな骨スキャンは全体的な改善を示した。化学療法を伴うサイクルを通じて、患者は、疲労、衰弱、金属味、眩暈、失念、短期記憶障害および末梢神経障害を含む重篤な副作用を経験した(図5)。化学療法治療の停止後、彼のPSAは急激に上昇した。3週サイクルで75mg/m2のDTX投与が方法として選択され、患者は、再度、重篤な副作用を経験することになった(図5)。2008年6月、化学療法を中止した。患者は、CYP17(非性腺アンドロゲンの生合成に必要な一連の反応を触媒するミクロゾーム酵素)を選択的に遮断することができる薬剤である酢酸アビラテロンのフェーズIII臨床試験に参加した(Derek RaghavanおよびEric A.Klein著、J.C.O、2008)。試験中、患者のPSA値は20.9ng/dlまで上昇し(図4H)、化学療法治療の再開を促された。今度は、患者は化学療法前に絶食することを選択した。彼の絶食スケジュールは、ほとんどが薬剤投与前60時間および薬剤投与後24であった(表3)。PSA値は化学療法−絶食治療(DTX 75mg/m2)を再開すると直ちに低下し、そして注目すべきことに、患者の副作用の報告は、以前のアドリブ食化学療法サイクルのときよりかなり少なかった(図5)。患者の経験と一致して、血液検査の結果は、治療の期間中一貫して安定しており、正常範囲に留まっていた(図4A〜G)。最後の3サイクルの間、患者に、絶食に加えて、化学療法前の5日間、テストステロン(クリーム1%)を塗布した。その結果、PSA値はテストステロン値と共に顕著に増加した。それにもかかわらず、絶食と併用した3サイクルの化学療法により、PSAは34.2ng/mlから6.43ng/mlへと低下した(図4H)。これらの結果は、絶食が癌細胞を部分的に保護し得る可能性を支持するものではない。
【0054】
症例4:
2008年6月に低分化の非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された61歳の白人女性。最初にCTスキャンで見られた腫瘤は、PETスタディ(2008年、6月)で異化亢進であることがわかり、生検の結果とも相関した。同じPETスキャンで、多数の縦隔および左の肺門周囲のリンパ節に、広範囲に及ぶ転移性の病変が認められた。骨、肝臓、脾臓および膵臓への転移も認められた。最初の治療は、21日毎にDTXを75mg/m2とCBDCAを540mg/m2投与することから始められた。彼女は通常の食を摂っていたが、最初の5サイクルの間、各化学療法治療の後で平均4ポンド体重が減少した。化学療法毒性が原因である可能性が最も高い。彼女の報告によれば、元の体重に戻るのに約3週間を要したということであった。経験した副作用の中でも、彼女は激しい筋痙攣、下肢神経障害、強い疲労、口内および舌の痛み、内出血のしやすさ、ならびに腸の不快感を訴えた(図7)。同じ薬と用量からなる第6サイクルの間、患者は、化学療法前48時間と化学療法後24時間、絶食した。この期間中に彼女の体重は約6ポンド減少したが、これは10日で回復した(データを示さず)。患者は、軽い疲労と衰弱以外は、先の5回のサイクルの間に経験した他の副作用を訴えることはなかった(図7)。なお、末梢神経障害、脱毛または短期記憶障害などの蓄積性の副作用は、一度発現すると絶食により元に戻すことはできないことに留意しなければならない。一方、急性の有毒な副作用は、絶食状態で化学療法を行うと、回避できた(図7)。第6および最後のサイクルの後で、患者から、薬剤投与の僅か3日後に3マイルを歩けるほど急速に活力が回復したとの報告があった。患者の血液検査では大きな差異は認められなかった(図6A〜G)。2009年2月に行われた最後の放射線検査(PET)は、ベースライン検査と比較して、主要腫瘤(左肺の下葉)の病変が安定しており、かつ脾臓および肝臓中のトレーサーの吸収が減少していることを示した。
【0055】
症例5:
2008年にステージIVの子宮体部漿液性腺癌であると診断された74歳の女性患者。外科的処置(TAH−BSO)に続いて補助化学療法を行うことが推奨された。さらに、骨盤、傍大静脈および大静脈前のリンパ節を切除した。最後に右尿管が大きく肥大していたので、右腎摘出を行った。CBDCA(480mg)およびパクリタクセル(280mg)の投与を、21日毎に、6サイクル行った。第1の治療の間、患者は通常の食を摂っており、疲労、衰弱、脱毛、頭痛を経験し、胃腸の不快感を訴えた(図8)。一方、サイクル2〜6の間は、患者は薬剤投与の前後に絶食を行い、化学療法後の副作用が軽減したことを報告した(表3;図8)。他の報告と一致して、絶食は化学療法依存の癌細胞殺滅を妨害することはなく、これは第4サイクルの後でCA−125腫瘍マーカーが87%減少したことで実証された(データを示さず)。
【0056】
症例6:
2007年7月に、右卵巣腫瘤(10×12cm)と診断された44歳の白人女性患者。外科的処置(TAH−BSO)が行われた。腫瘍は、卵巣被膜への浸潤がなく、切除した30+のリンパ節は全て陰性であった。彼女の病変はステージIAの卵巣癌肉腫とグレードづけられた。最初に行われた治療は、イホスファミドとCDDPによる6サイクルのコースであり、患者はこれを2007年7月から11月まで受けた。2008年1月に行われた彼女の最初のCTスキャンでは、卵巣の病変の拡大は認められなかった。7か月後、MRIによって新たな多数の肺結節が見出された。この発見はCTスキャンにより確認され、脾臓領域における数か所の異常(低密度の像=MTS?)、および脊椎の退行性変化と共に、20を超える新たな小結節が肺の内部に認められた。これらの結果に基づき、Taxol、カルボプラチンおよびアバスチンを含む薬剤による新たな投薬計画が立てられた。2008年8月に点滴が開始され、3週間のスケジュールで行われた。同時に、患者には、高用量のビタミンC(50mg/日)が追加された。2008年9月には、CTスキャンによる再評価が行われ、散在する多数の両側性肺結節のサイズと数が顕著に減少したことを示した。しかしながら、11月までに、主な結節の1つが0.5〜0.8cmまで拡大していることがCTスキャンにより判明し、病気が進行していることを示した。1日目にゲムシタビン、続いて8日目にゲムシタビンおよびドセタキセルからなる新たな治療が決められた。しかしながら、最初にゲムシタビンを総量(900mg/m2)投与した後、患者の好中球減少(図9A)および血小板減少(図9D)が長引き、そのためその後の治療を中止しなければならなくなった。第2のサイクルでは、患者へのゲムシタビンの投与量を減らした(720mg/m2)が、再び長期に亘る好中球減少および血小板減少がみられ、当初のスケジュールを完遂することは困難であった。第3サイクルの前に、患者は化学療法前62時間と化学療法後24時間の絶食を行った。患者は、絶食を行ったか否かにかかわらず、副作用を報告することはなかったが、興味深いことに、血液検査は絶食−化学療法治療の間に顕著な改善を示した(図10)。最下点はあまり明瞭でないが、最高点はANC、リンパ球およびWBC数においてはかなり高くなっていく傾向が認められた(それぞれ図9A、B、C;表2)。さらに、第1および第2の化学療法サイクルの間、ゲムシタビン単独では、血小板数が急速かつ大幅に減少し、回復にそれぞれ11および12日を要した(表2)。しかしながら、最初の絶食−化学療法併用治療(第3サイクル)の後は、血小板数は減少せず、むしろ増加した(図9D)。先の化学療法単独治療と比べて、血小板の最下点はより低い値となったが、これは、3種類の化学療法薬の相加効果で説明できよう(図9D;表2)。それにもかかわらず、化学療法単独と比較すれば、絶食−化学療法治療の間は、血小板数の最高点と正常値への回復時間は、それぞれきわめて明瞭であり、かつ短縮された(図9D;表2)。複数回の絶食/化学療法後の血小板の、この顕著な改善と急速な回復は、患者が化学療法治療を完遂させるのを可能としたばかりでなく、この戦略が、血液細胞前駆体に対する保護効果を有し得るものであり、血小板および顆粒球の急速な再増殖を可能にすることを示唆している。
【0057】
症例7:
1998年7月にグリーソンスコアー8の前立腺腺癌と診断された66歳の白人男性。同年に実施したProstaScint検査では、右腸骨リンパ節に放射性トレーサーの明白な吸収がみられ、ステージD1の病気と一致した。1998年に、患者は初めて、酢酸リュープロリドとビカルタミドによる治療を受けた。1999年9月には、これらの薬剤を減らして、フィナステライドが処方された。2000年12月、CTスキャンから、病気の局所進行が疑われた。彼は、酢酸リュープロリドによる第2サイクルを開始し、また高線量率(HDR)近接照射療法、および強度変調放射線療法(IMRT)による外部ビーム照射も受けた。病気をコントロールするために、ビカルタミド、トリプトレリンパモ酸塩およびナンドロロンなどの複数の薬剤を使用する相補的治療を行った。しかしながら、治療を止める度に、彼のPSA値は急激に上昇した。2008年4月、Combidexスキャンにより、3×5cmの骨盤腔内腫瘤と左の水腎症が見つかり、同年6月には、新たなPSA値の逆戻りがあり、そしてまた新たなCTスキャン測定により、さらに左腸骨領域の腫瘤を確認したため、DTXによる治療が促された。患者は、化学療法前60〜66時間と化学療法後8〜24時間の絶食を行うことを決めた(表3)。絶食中、患者は意識が朦朧とし、血圧が大きく低下する経験をしたが、化学療法後の自己申告による副作用は、7回の連続DTXサイクル後に発現した足の軽度の振動感覚以外にはほとんど何もなかった(図12)。患者の検査結果を解析すると、ANC、WBC,血小板およびリンパ球数は正常の範囲に維持されていたが、赤血球とその関連パラメータ(ヘマトクリットおよびヘモグロビン)はそうでなかった(図11A〜G)。このことは、血液細胞の中には絶食依存性の保護の利益を受け得るものがあり、その他はそうでないことを示唆している。最後に、サイクルを通してPSA値は一貫して減少傾向を示したが、これは絶食が前立腺癌細胞の殺滅を妨げなかったことを立証するものである(図11H)。
【0058】
症例8:
ステージIIAの乳癌(HER2+)と診断された53歳の白人女性患者。2008年に行われた乳腺腫瘤摘出手術後、患者は21日毎に予定された4サイクルの化学療法を受けた。投与計画にはDXT(75mg/m2)およびCP(600mg/m2)が含まれた。4サイクルを通して、患者は化学療法実施前64時間と化学療法実施後24時間の絶食を行った。報告された副作用には、軽度の衰弱および軽度の短期記憶障害が含まれた(図13)
【0059】
症例9:
乳癌と診断され、補助化学療法が推奨された乳癌と診断された48歳の白人女性患者。彼女の化学療法は、21日スケジュールの4サイクルのCP(1100mg)併用ドキソルビシン(DXR)(110mg)と、それに続く、週1回の頻度による12週のパクリタキセルおよびトラスツズマブからなるものであった。患者は、最初の化学療法治療の前に、48時間の絶食を行ったが、副作用の言及はなかった。第2のサイクルの間、患者は化学療法前60時間と、薬剤投与後5時間の絶食を組み込んだ。興味深いことに、彼女は絶食を行うことにいかなる困難も示さなかった。彼女は脱毛と軽度の衰弱を経験したが、化学療法でよく報告されている他の副作用に苦しむことはなかった(図14)。
【0060】
症例10:
RER2陽性乳癌と診断された78歳の白人女性。診断時および複雑な乳腺腫瘤摘出手術の後、患者は乳房全切除術を受けた。G−CSF(Neulasta)を補ったCBDCA400mg(AUC=6)、DTX(75mg/m2)による6サイクルの補助化学療法と、その後の6か月までのトラスツズマブによる化学療法が、腫瘍学者により指示された(表3)。化学療法治療の期間を通して、患者は薬剤投与の前後に絶食を行った。患者は変動がある絶食法を採用したが、重度の副作用は経験しなかった(図16;表3)。さらに血液検査の結果では、WBC、ANC、血小板およびリンパ球の数は、治療期間を通して正常な範囲であった(図15A〜D)。
【0061】
経験した副作用の重篤度を調べるために、10人の患者全員からの自己申告評価を得た。化学療法毒性の副作用の多くは蓄積性のものであるため、調査データは、絶食および非絶食を伴った化学療法の組み合わせの、全ての副作用を含めて比較した(図17A)。National Cancer InstituteのCommon Toxicity Criteriaに基づいて、毒性のグレードを付けた。励まされたことに、化学療法−絶食サイクルはほとんど治療の後期で行われたにもかかわらず、患者全員から、比較的良好な自己申告の健康転帰が語られた。化学療法−絶食が行われたときはいつも、10人の患者全員から悪心、嘔吐、下痢、腹部痙攣および口内触痛の報告がされることは実質的になかったが、一方、アドリブ食が与えられた患者では6人のうち5人までが、これらの症状の中の少なくとも1つを報告した(図17A)。全ての化学療法治療と併用して常に絶食が行われた4人の患者は、大部分の副作用で低い重篤度を報告した(図12、13、14、16)。軽度の衰弱と脱毛のみが多くの患者から報告された。絶食またはアドリブ食の両方と共に化学療法を受けた6人の患者では、自己申告の副作用の重篤度は、患者が絶食したか、しなかったかにかかわらず、化学療法の最も近接した2つのサイクルのみを考慮して決めた。絶食と併用した場合には、自己申告の副作用の多くで、重篤度の一般的かつ大きな減少が見られた(図17B)。疲労および衰弱などの症状が顕著に減少する(それぞれ、p<0.001およびp<0.00193)一方、絶食を併用したサイクルが一貫して最後に実施されたにもかかわらず、嘔吐および下痢は、絶食との併用時には決して経験されなかった(図17B)。注目すべきことに、CTC基準の調査に含まれる副作用で、絶食により平均重篤度が上昇したものは全くなかった(図17A、17B)。
【0062】
小規模かつ不均質な患者グループのこの調査結果は、絶食は安全であり、かつ癌患者が十分に耐え得るものであって、複数の化学療法依存副作用を改善し得ることを示唆している。患者による副作用の判断には先入観が影響し得るであろうが、化学療法後の血液検査の結果が示す改善傾向は、絶食が、実際、種々の化学療法薬から保護し得ることを立証している。注目すべきことに、絶食が各種毒物およびストレスから酵母およびマウスを保護することが知られており(Rafaghello、LPNAS、2008;Matsson,M.著、Annual Rev.Nutr 2005)、したがって、多くの化学療法薬からヒトを保護する効果があることは、驚くべきことではないであろう。
【0063】
結果
メジアン年齢が61歳(44〜78歳の範囲)の、女性7人および男性3人の、化学療法を受けている10人の癌患者が、この研究に参加している。4人は乳癌を患い、2人は前立腺癌、そして4人は卵巣癌、子宮、肺の非小細胞癌または食道腺癌を患っていた。患者は全員、彼らを治療する腫瘍学者の監視の下、化学療法前に合計48〜140時間の絶食および/または化学療法後24〜56時間の絶食を自発的に行った。全ての症例で、絶食によく耐えることができた。空腹および血圧低下が、長い絶食の後に患者が言う共通の症状であった。
【0064】
考察
癌治療中に一般に推奨される食は、栄養不足を防止または高める、脂肪のない体を保護する、栄養が関係する副作用(食欲減退、悪心、味覚の変化、または腸の変化など)を最小にするという総合的な目標に基づく(Doyle、Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment、2006)。化学療法後の標準的な食とは対照的に、このシリーズの大部分の患者は、疲労、衰弱、悪心、嘔吐および腹部痙攣などの副作用が軽減されるため、絶食は実行可能であり、有益であると報告した。絶食中に、眩暈、空腹または頭痛などの軽い症状は生じたが、仕事を含む通常な活動を妨げるほどのレベルではなかった。
【0065】
癌患者においては、体重の減少が重大な関心事である。これは、癌自体、化学療法後の食欲減退、または胃腸障害によるものであり得る。注目すべきことに、この症例報告では、ほとんどの患者が絶食中の体重減少を急激に回復した。絶食と、絶食を行わない両方の化学療法を受けた患者では、化学毒性の副作用は、絶食−化学療法サイクル中に低減するようであった。この介入によって寛解されると思われる症状は、主として胃腸および体質に関するものであった。
【0066】
非悪性細胞においては、絶食/グルコース欠乏などの厳しい条件になると、生命体を刺激して成長/再生を抑制し、そのエネルギーを維持/修復に使用させ、生存の機会を最大にさせる(Longo. Nature. 2005)。したがって、IGF−Iなどの成長因子は減少し(Thiessen,J.P. Endocrine Rev 1994;Stephen R.Spindler Annual review of nutrition 2007)、熱ショックタンパク質(HSP70)やグルコース応答タンパク質(GRP78)などの小胞体ストレス応答(UPR)などのストレス耐性機構が亢進する(Mote,P.L. Mechanism Age Dev 1998;Lee,A.S. Trends in biochemical science 2001;Ramachandra K.Reddy J.ofBiological.Chemistry 2003)。正常な細胞はこれらの変化に応答し、一方、悪性の細胞は増殖信号の自給自足のために応答しない(Hanahan. Hallmarks of cancer. 2000)。したがって、絶食は、癌細胞に対する薬剤活性を低下させることなく、化学療法の毒性から正常細胞を選択的に保護するであろう。
【0067】
結果は、僅かに10人の患者による、未だ予備的なものであるが、それにもかかわらず、ここに示された副作用の大部分は蓄積性パターンを有し、かつ化学療法−絶食サイクルの大半が治療の後の方で行われているので、有望である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
実験2
図18を参照すると、絶食は悪性細胞の放射線照射に対する感受性を高める。マウス乳癌(4T1−luc)細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、放射線照射前の48時間、培地を低または高グルコース培地のいずれかに切り替えた(5または10Gy;図18A、18B)。生存率をMTT試験により測定した(図18C)。統計的分析をStudentのt−検定(N=60)により行った。
【0081】
図19を参照すると、絶食は悪性細胞の放射線照射に対する感受性を高める。マウスグリオーマ(GL26)細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、放射線照射前の48時間、培地を低または高グルコース培地のいずれかに切り替えた(5または10Gy;図19A、19B)。生存率をMTT試験により測定した(図19C)。統計的分析をStudentのt−検定(N=60)により行った。
【0082】
図20を参照すると、STS(絶食)はマウス乳癌細胞の放射線照射に対する感受性を高め、マウスにおける腫瘍のコントロール性を増大させる。体重20〜25gのメスのBALB/cマウスに同系の乳癌細胞(4T1−luc;2×105細胞/マウス)を皮下注射した。13日目には、腫瘍は300〜500mm3にまで著しく進んでおり、放射線照射(IR;5Gy)前48時間、マウスを絶食させて治療を開始した。1週間後に第2のSTS/IR(3Gy)サイクルを行った。毎日、Studentの検定により統計的分析を行った。*p<0.05。
【0083】
図21を参照すると、STS(絶食)はマウスグリオーマ癌細胞の放射線照射に対する感受性を高め、マウスにおける腫瘍のコントロール性を増大させる。体重25〜30gのメスのC57BL/6マウスに同系のグリオーマ癌細胞(GL26;3×105細胞/マウス)を皮下注射した。27日目には、腫瘍は500〜1000mm3にまで著しく進んでおり、放射線照射(IR;7.5Gy)前の48時間、マウスを絶食させて治療を開始した。1週間後に第2のSTS/IR(3Gy)サイクルを行った。毎日、Studentの検定により統計的分析を行った。*p<0.05。
【0084】
実験3
絶食により引き起こされるエネルギー源、成長因子および他の細胞外因子の多くの変化が、保護を阻害するだけでなく、多様な癌細胞の化学療法薬に対する感受性の増大を促進するという仮説を試験した。
【0085】
絶食が化学療法毒性を相乗的に増大させるか否かを調べるために、マウス乳癌(4T1)、メラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)およびマウス神経芽細胞腫(NXS2、Neuro−2−a)、ならびにヒト神経芽細胞腫(ACN)の細胞を使用して、各種のマウス癌モデルについて研究を行った。水の摂取は常に可能にした状態で、48〜60時間、餌を全く与えないことによって、短期の飢餓(STS)状態、すなわち絶食状態にした。予想通り、アドリブ食下で行われた化学療法は、皮下腫瘍の成長を遅らせた(図22A〜C)。注目すべきことに、絶食単独の2サイクル(各48時間)は、化学療法治療の2サイクルと同等の効果があった。絶食単独の効果は第2サイクル後までは維持されなかったが、皮下メラノーマ腫瘤(B16細胞)を有するマウスで、類似の効果が観察され(図22B)、また皮下グリオーマ腫瘤(GL26細胞)を有するマウスでも類似の効果が観察された(図22C)。グリオーマモデルの絶食は、対照(アドリブ食、化学療法行わず)群の腫瘍の成長が異常に速かったため、一度だけ行った。多用されている化学療法薬のドキソルビシン(DXR)またはシクロホスファミド(CP)のいずれかを絶食と併用すると、最大の治療係数が観察された(図22A〜C)。4T1乳癌では、2サイクルの絶食により、最後の治療から20日後でも、腫瘍サイズはCP治療単独群の半分未満であった(図22A)。同様の効果が、皮下グリオーマおよびメラノーマモデルで観察された(図22B〜C)。注目すべきことに、絶食中の体重の減少は、化学療法治療後でも、通常、3日間の給餌再開で回復しており(図23A〜D)、腫瘍および化学療法がマウスの体重減少に及ぼす影響を、絶食は増幅させないことが確認され、これは、患者の絶食および化学療法についての先の研究での観察と一致している。
【0086】
マウス乳癌細胞(4T1)、メラノーマ細胞(B16)、および2種類の神経芽細胞腫細胞株(NXS2およびNeuro−2a)を免疫適格マウスに静脈注射することによって得られた転移モデルで、化学療法に対する絶食の影響を調べた。絶食は化学療法の効果を高め、全ての転移癌マウスモデルを延命させた(図24〜28)。メラノーマ転移モデルでは、転移に対するSTSの影響を調べるために、早期にマウスを犠牲にした。興味深いことに、DXRと併用したSTSは、通常の給餌下でDXRを受けたマウスと比較して、B16メラノーマ細胞の種々の臓器への転移が減少した(図25)。例えば、肺への転移は、通常給餌下および絶食下でDXRを受けたマウスで、それぞれ100%および65%見つけられた。さらに、通常給餌のマウスと異なり、絶食マウスの肝臓または脾臓には転移が検出されなかった(図25)。
【0087】
悪性の転移癌に対する複数サイクルの絶食および化学療法の効果を調べるために、2匹の神経芽細胞腫転移マウスモデルの生存をモニターした。アドリブ食群では死亡率が100%であったのに対して、2サイクルの絶食と高用量DXR(16mg/Kg)治療を受けた、マウス神経芽細胞腫(NXS2)を有するマウスでは、その42%が長期生存(180日超)を達成した(図26)。進行性転移癌のモデルを作るために、マウス神経芽細胞腫細胞(Neuro−2a)をマウスに静脈注射し、化学療法を始める前の9日間、腫瘍を拡大させた。標準療法と併用したSTSの効果を神経芽細胞腫転移モデルで調べるために、この子供の悪性腫瘍の治療に広く使用されている療法(10mg/KgのDXR+8mg/Kgのシスプラチン、CDDP)をベースとした高用量カクテル化学療法を、絶食と併用した。注目すべきことに、アドリブ食と併用したカクテル化学療法で治療したマウスが75日目までに全て死亡したのに対し、カクテル化学療法と併用して絶食を行ったマウスの25%は長期生存(300日超)を達成した(図27)。化学療法を行わずに多サイクルの絶食(STS)を行うことが神経芽細胞腫の進行を遅延させるのに有効であり得るか否かを調べるだけでなく、ヒト腫瘍モデルに対する効果も調べるために、ヒトACN神経芽細胞腫細胞を皮下注射した免疫無防備状態のヌードマウスに、5サイクルの絶食を実施した(図29)。36日後、5サイクルの絶食は、腫瘍サイズを、通常給餌マウスで到達したそれの半分に抑えることができた(図29)。
【0088】
インビトロで絶食モデルを作るために、アドリブ食給餌マウスまたは48時間絶食マウスのいずれかから採取した血清を含む培地で、癌細胞をインキュベートした。マウスでの結果と一致して、絶食マウスからの血清を加えた培地で培養した乳癌細胞(4T1)は、アドリブ食給餌マウスからの血清でインキュベートした場合と比べて、DXRおよびCPの双方に対する感受性が増大した(図30)。グルコースおよび成長因子の顕著な減少(例えば、成長因子IGF−Iの75%の減少)は、絶食に対する2つの重要な細胞外応答であるので、通常給餌マウスおよび絶食マウスの血中グルコースの測定(図31)をベースに、異なるグルコース濃度および血清濃度で細胞をインキュベート、すなわち、低グルコース(0.5g/L)と低血清(1%FBS)、または通常グルコース(ヒトおよびマウス細胞株でそれぞれ1.0および2.0g/L)と通常血清(10%FBS)で、薬剤処理前24時間、また薬剤処理中もインキュベートした(図32)。インビボの研究と一致して、グルコースおよび血清の制限によって、マウスメラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)および乳癌(4T1)の細胞を含む、17種の癌細胞株のうち15種で、DXRおよび/またはCPに対する感受性が増大した(図32〜34)。さらに、グルコースまたは血清のいずれかだけを制限しても、癌細胞に対するDXRおよび/またはCPの毒性を増大させたが、両者の併用ほどの効果はなかった(図33、34)。絶食依存DSRに関係する数多くの成長因子の中で、IGF−Iの減少が重要な変化であり、またIGF−Iを点滴すると化学療法に対するマウスの保護を逆行させ得ることは先に報告した。ここでも、4T1およびB16細胞をIGF−Iで処理すると、グルコース制限によって引き起こされた癌細胞のDXRに対する感受性の増大を逆行させることが示されており、IGF−Iを減少させることにより、STSが癌細胞の感受性を一部増大させることを示唆している(図35)。
【0089】
このSTS依存増感作用が生じるメカニズムを調べるために、化学療法に暴露した癌細胞中のDNA一本鎖および二本鎖の断裂に及ぼす低グルコースの影響をコメットアッセイにより調べた。後世生物の主なエネルギー源であるグルコースは、悪性細胞に特に重要であり(ワールブルク効果として知られている現象)、血中グルコース値が高くなると癌の成長を促進する。グルコース値を、アドリブ食(2.0g/L)から、低血清条件(1%FBS)と併用した絶食後に到達する値(0.5g/L)にまで低下させる(絶食依存の、血中の成長因子およびタンパク質の減少を模擬するためでもある)と、化学療法単独の場合よりDNAの損傷が増加し、0.5g/Lのグルコースと化学療法の併用では、4T1乳癌細胞(図36A)およびB16メラノーマ細胞(図36B)の双方で、DNAの損傷が大きく促進され、20倍に増大した。その代わりに、GL26グリオーマ細胞の処理では、低グルコースの効果はドキソルビシンの効果と相加的であった(図36C)。
【0090】
絶食に応答して癌細胞中で生じる遺伝子発現の変化について、先入観のない見解を得るために、48時間絶食させたマウス、またはアドリブ食を給餌したマウスのいずれかの心臓、筋肉、肝臓、および皮下4T1乳癌の腫瘤についてゲノム全域にわたるマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は、絶食が細胞増殖に関係する遺伝子を特異的に制御することを明確に示している(図37)。さらに、自家移植した乳癌(4T1)では、翻訳およびリボソームの生合成/アセンブリー遺伝子の発現が顕著に増加するが、正常組織では、それらは抑制されるか、または軽微な影響を受けるに過ぎないことがわかった(図38)。この翻訳成分の増加と一致して、予め飢餓状態にした自家移植腫瘍の癌細胞(図39A)で、そしてまたインビトロでも、特にCP治療と併用した場合(図39B)でも、AktおよびS6Kリン酸化反応が促進され、eIF2αリン酸化反応が抑制された。しかしながら、この翻訳メカニズムの飢餓依存活性化にもかかわらず、癌細胞の倍加はインビトロでは大幅に減少しており(図40)、これはインビボでの絶食による癌の進行抑制と一致している(図36、37)。翻訳は細胞サイクルの進行および細胞成長と密接な繋がりがあり、急速に増殖している細胞では細胞エネルギーの50〜75%を消費し得るコスト高のプロセスである。4T1腫瘍が、成長に必要な栄養素の欠乏を翻訳の増大によって補おうとし、その結果、細胞死に至る以上のエネルギーを消費することはあり得る。
【0091】
ストレス耐性転写因子FOXO3aは、AKTにより不活性化されることが知られているので、その発現に及ぼす絶食の影響を4T1腫瘤と正常組織で調べた。FOXO3aは絶食に応答して特異的に制御されることがわかった。その発現は腫瘍で顕著に抑制され、正常臓器では誘発された(図41)。自家移植乳癌(4T1)中の、他の主要なストレス応答転写因子、核因子カッパB(NFkB)に及ぼす絶食の影響も明らかになった。RT−PCRは、絶食によるNFkBの特異的発現を示しており、その発現は腫瘍で大きく抑制されたが、正常臓器では顕著に発現した(図41)。NFkBによって発現が誘導される保護遺伝子の中で、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)は、UVAおよび酸化ストレスを含む各種の刺激に応答して顕著に誘導される、進化的に保存されている酵素である。絶食はまた、腫瘍中でHO−1の発現を抑制するが、正常臓器ではこの発現を大幅に増加させることがわかった。これは、FOXO3aおよびNFkBと一致している(図41)。Studentのt−検定;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001.
【0092】
FOXO3aおよびNFkBの両者は、HO−1および/またはMnSODによって酸化ストレスを低下させるため、CPによる治療後の標準条件下およびSTS条件下でのスーパーオキシド値を推定する方法として、ジヒドロエチジウム(DHE)の酸化を利用して4T1細胞における活性酸素種(ROS)の濃度を測定した(図42,43)。絶食/化学療法の後でより高レベルのDHE酸化が癌細胞中に検出され、酸化ストレスの増大と、スーパーオキシド値の上昇の可能性を示唆している。さらに、カスパーゼ−3の濃度が、STS後の同種移植腫瘍でのみ増加したが、正常な臓器ではインビボ(図44A)でもインビトロ(図44B)でもそうでなかったことがわかり、これは、細胞死の促進におけるオキシダントの作用と、カスパーゼ−3の活性を阻害する際のHO−1の役割に一致するものであった。癌細胞のグルコース制限により誘発される細胞死が、自己貪食によっても促進されることは従来示唆されている。低血清インキュベーションでのグルコース制限は、4T1細胞での自己貪食を増加させた(図45)が、クロロキンによって自己貪食を阻害すると、細胞死が一層増加した。このことは、低グルコースが自己貪食依存細胞死による細胞死を促進するものではないことを示すものであった(図46)。
【0093】
化学療法に対する絶食依存の増感作用におけるHO−1の役割を確認するために、絶食中にヘミンを使用してHO−1の発現を誘導したところ、増感は部分的に逆行し得ることがわかった(図47、48)。反対に、HO−1阻害剤の亜鉛プロトポルフィリン(ZnPP)が化学療法に対する癌細胞の感受性を高めた(図49、50)。両者を併せれば、これらの研究は、HO−1の発現の低下が、4T1乳癌細胞の絶食依存増感作用を引き起こすメカニズムに関与していることを示している。
【0094】
要約すると、細胞培養およびマウスにおいて、飢餓/絶食に応答して生じることが知られている、グルコース、IGF−Iの大幅な減少と、可能性のある他の多くの変化が、特に化学療法と併用した際に、広範な腫瘍細胞において成長の抑制と細胞死の顕著な増加をもたらすことが示された(図51)。これらの結果は、癌療法において複数回の絶食サイクルを行うことにより、患者の保護および癌に対する増感効果の両方が提供され得ることを示唆している。
【0095】
方法
細胞培養
4T1−lucマウス乳癌細胞は、SibTech社(Brookfield、CT)から購入した。B16−flucマウスメラノーマ細胞は、Noah Craft(UCLA)から提供された。GL26マウスグリオーマ、U87−MGヒト神経膠芽細胞腫の細胞は、Thomas Chen(USC)から提供された。PC3および22RV1ヒト前立腺癌細胞は、Pinchas Cohen(UCLA)から提供された。MCF−7およびC42Bヒト乳癌細胞と、HeLaヒト子宮頚癌細胞は、Amy Lee(USC)から提供された。LOVOヒト結腸癌細胞は、Darryl Shibata(USC)から提供された。NXS2およびNeuro−2aマウス神経芽細胞腫、ヒトACNおよびSH−SY5Y神経芽細胞腫、OVCARヒト卵巣癌、MZ−MELヒトメラノーマ、A431類表皮癌細胞は、Gaslini InstituteのLaboratory of Oncologyで常法により培養された。4T1にはLC3−GFPが安定に移入されており、これは、USCのJae Jungからの自己貪食の研究に対する親切な贈り物であった。全ての細胞は、常法により、DMEM10%FBS中、37℃、5%CO2下で維持した。自己貪食を回避するために、インビトロでのSTS中、5μMのクロロキン(CQ)で細胞を48時間処理した。HO−1の活性を調節するために、4T1細胞を、化学療法治療前の24時間と、化学療法治療中の24時間、10μMのヘミン(Sigma)、または20μMの亜鉛プロトポルフィリン(ZnPP;Sigma)で処理した。
【0096】
化学療法
ドキソルビシン(DXR;Bedford Laboratories、USA)およびシクロホスファミド(CP;Baxter、USA)は、インビトロおよびインビボで使用した。
【0097】
インビトロ化学療法は、化学療法を含有した培地で細胞を24時間処理することにより行った。薬剤の最適量は、細胞々の細胞株毎に決定した。インビボの研究では、尾側部静脈からDXRを静脈注射し、CPは腹腔内に注射した。
【0098】
癌のマウスモデル
University of Southern CaliforniaのInstitutional Animal Care and Use Committeeと、Italy、GenoaのNational cancer Research Instituteのライセンスおよび倫理委員会により、そしてまたItalian Ministry of Healthにより認められている手順にしたがって、全ての動物実験を行った。皮下癌マウスモデルの作成には、12週齢のメスBALB/c、12週齢のメスおよびオスのC57BL/6マウス、ならびに7週齢のヌードマウスに、4T1乳癌細胞、B16メラノーマおよびGL26グリオーマ細胞、ならびにACNヒト神経芽細胞腫細胞をそれぞれ注射した。転移癌マウスモデルでは、12週齢のメスBALB/c、12週齢のメスおよびオスのC57BL/6マウスに、それぞれ2×105の4T1、B16、GL26細胞を、尾側部静脈から静脈注射し、6週齢のメスA/Jマウスに、2×105のNXS2および1×106のNeuro−2a細胞を、尾側部静脈から注射した。注射の前に、成長の対数期にある細胞を集め、2×106細胞/mlでPBSに懸濁させ、100μL(2×105細胞/マウス)を腰背部へ皮下注射、または尾側部静脈から静脈注射した。ACNおよびNeuro−2a細胞は、5×107および1×107細胞/mlの濃度でPBSに懸濁させ、それぞれ100μL(5×106ACN細胞/マウスおよび1×106Neuro−2a細胞/マウス)を腰背部へ皮下注射、または尾側部静脈から静脈注射した。全てのマウスは、皮下腫瘍注射の前に体毛を剃り、また静脈注射の前に穏やかに温めて静脈を膨張させた。定期的に体重を測定し、腫瘍サイズをデジタルノギスにより測定した。腫瘍体積を次式:腫瘍体積(mm3)=(長さ×幅×高さ)×π/6(長さ、幅および高さの単位はmmである)により算出した。
【0099】
インビトロ絶食
絶食マウスおよび通常給餌マウスの血中グルコースの測定に基づき、グルコースおよび/または血清を制限することにより、細胞を飢餓状態にした(低濃度約0.5g/Lおよび高濃度約2.0g/L)。ヒト細胞株には、通常のグルコースは1.0g/Lであるとみなした。絶食培地に変更する前に、細胞をPBSで2回洗浄した。
【0100】
インビボ絶食
餌を完全に取り去ったが、水は自由に飲めるようにして、動物をトータルで48〜60時間、絶食させた。マウスは、共食い、食糞および残留飼料を減少させるために、一匹ずつ清潔な新しいケージに入れた。絶食の直前、直後に体重を測定した。
【0101】
インビトロ測定法
臭化メチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウム(MTT)を還元する能力によって細胞毒性を測定した。簡単に説明すると、MTTをPBS中に5mg/mlの濃度で溶解し、測定用として0.5mg/mlの最終濃度に希釈し、37℃で3〜4時間インキュベートした。ホルマザンの結晶を、37℃で100μlの溶解緩衝液(SDS15%(w/v)、ジメチルホルムアミド50%(v/v)、pH4.7)に終夜(16時間)溶解した。生存率は、対照細胞に対する処理細胞のMTT還元レベルのパーセントで表示した。吸光度は、マイクロプレートリーダーSpectraMax250(Molecular Devices)およびSoftMax Pro 3.0ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して570nmで読み取った。
【0102】
スーパーオキシド値は、蛍光染料DHE(ジヒドロエチジン;Invitrogen、USA)の酸化により推定した。細胞をスライド上で培養し、処理し、PBSで二回洗浄した後、DHE(10μM;0.1%DMSO中)と共に30分間のインキュベーションを行った。
【0103】
免疫ブロット法
氷冷PBS中で細胞を一度洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Roche)およびホスファターゼ阻害剤のカクテル(Sigma)を含むRIPAlysis緩衝液中に集めた。同じプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を添加したRIPAlysis緩衝液中で腫瘍細胞を均質化した。全溶解液からのタンパク質を8〜12%のSDS−PAGEに溶解し、GAPDH、Aktおよびホスフォ−Ser473Akt、P70S6キナーゼおよびホスフォ−Thr389p70S6キナーゼ、eIF2αおよびホスフォ−Ser51 eIF2α用抗体(1:1000〜2000、Cell Signaling Technology)使用し、免疫ブロット法により分析した。
【0104】
コメットアッセイプロトコール
細胞を培地中(10%FBSを含むDMEM/F12)、105/mlに希釈し、50μMのDXRにより37℃で1時間処理した。その後、氷冷PBSで細胞を1回洗浄し、製造業者が推奨する手順にしたがってCometAssay(Trevigen,Inc、Gaithersburg、MD)に供した。コメット像をNikon Eclipse TE300蛍光顕微鏡により取得し、ソフトウェアComet Score(TriTek Corp.、バージョン1.5)で分析した。遺伝子型/処理グループ毎に100〜300の細胞を採点した。
【0105】
血液の採取およびグルコース値の測定
マウスを2%イソフルラン吸入薬で麻酔し、左心室穿刺により血液を採取した。血液はK2−EDTAでコーティングしたチューブに採取し、血清を処理した(BD、USA)。血中グルコース値をPrecision Xtra血中グルコース値モニタリングシステム(Abbott Laboratories、USA)を使用して測定した。
【0106】
マイクロアレイ解析
Qiagen製RNeasyキット(カタログ番号74106)を使用し、製造者から示された手順にしたがって、組織からRNAを単離した。その後、IlluminaBeadchips(San Diego、CA)製のBD−202−0202チップにRNAをハイブリダイズした。先述したように、生データをZ正規化した。ANOVAフィルタリング(ANOVA p<0.05)を使用し、SAMプロトコールにしたがって、パラメータ化した有意性検定を行った。有意な遺伝子をそれぞれの対比較のために選択する。先述したPAGE法を使用して遺伝子セットの濃縮を試験した。Gene Ontology Database and Pathway Data Setにより提供される名前と説明に基づいて図面を選択した。さらに、Ingenuity Pathway Analysis System(Ingenuity Systems;Redwood City、CA)を使用し、遺伝子の系統的関係および標準経路の分析を行う。
【0107】
リアルタイムPCR
Qiagen製RNeasyキット(カタログ番号74106)を使用し、製造業者から示された手順にしたがって組織からRNAを単離した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(AB Applied Biosystems カタログ番号4368814)を使用してcDNAを合成し、SYBR Green PCR master mix(AB Applied Biosystems カタログ番号4309159)を使用してRT−PCRを行った。キャリブレータ遺伝子としてGAPDH遺伝子を使用した。分析したそれぞれの処理は、3つの生物学的レプリカを使用して行い、少なくとも3つの反応を使用して、発現を計算した。発現比を2−ΔΔCP法にしたがって計算した。
【0108】
実験4
化学療法を受けている癌患者の食計画を確認するために、様々な食組成をマウスモデルで試験した。目標点は、ホストの保護と広範な癌細胞の増感に有効であるとわかっている、血清グルコースおよび/またはIGF−1を20〜75%低下させることである。組成は、通常の体重を十分に維持することができるだけの栄養レベルが提供されるように選択される。毎日の食物摂取量、体重、および一般的健康(動作および身体的外見)がモニターされる。各給餌スケジュールの終わりには、グルコースおよびIGF−1の測定のために採血する。通常の総カロリーを有するが、特定のアミノ酸が不足している食(AA−D)では、5日間の給餌で(図52)、血清IGF−1(図52)とグルコース(図54A)は顕著に低下することがわかった。短期飢餓の後にAA−D食が続く再給餌パラダイム(図53および54B)で使用すれば、この有益な効果は増大する。
【0109】
2日間の極低カロリー食(VCM、通常のカロリー摂取量の6%)と、その後に続く1日のアミノ酸欠損食(AA)からなる食計画では、短期飢餓(STS)の場合より血清IGF−I値は顕著に低下した(図55A)。さらに、この食計画は化学療法薬、ドキソルビシン(DXR)からマウスを保護した(図55B)。ここでは、DXRは、2日間のVCM後、アミノ酸欠損食(AA)の再給餌開始時に注射される。
【0110】
低カロリーVegeGel製剤(野菜の推奨5食分に相当)は、短期飢餓(STS)に類似して血清グルコースおよびIGF−1を低下させることがわかった(図56AおよびB)。さらに、3日間のカロリー制限ケトン産生食(カロリーの90%が脂肪由来)では、血清IGF−1およびグルコースが低下することが実証された(図6AおよびB、緑色の三角形)。重要なことに、1日間のこのケトン産生食の後に2日間のVegeGel製剤を摂ると、ケトン産生食単独の場合よりグルコースおよびIGF−I低下に有益な効果が得られる(図57AおよびB、赤色の四角形)。
【0111】
以上、代表的な実施形態を記載したが、これらの実施形態により本発明の全ての可能な形態を記載することを意図するものではない。むしろ、この明細書で使用されている用語は、限定よりむしろ説明のための用語であり、本発明の精神と範囲から逸脱することなく各種の変更を加え得ることは理解される。さらに、各種実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらに他の実施形態を形成することも可能である。
【図1−1】
【図1−2】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年10月22日出願の米国仮特許出願第61/254,154号の利益を主張するものであり、その開示内容はすべて参照することによりここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、食事療法および癌の治療に関する。より詳しくは、本発明は、正常な細胞を保護しつつ、癌細胞の化学療法薬に対する感受性を高めるために使用することができる方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
化学療法は、様々な悪性腫瘍と診断された患者の生存を延長させることができる。しかしながら、正常な細胞および組織に対する有害な副作用のために、化学療法の用量の強度、頻度および効能が制限されている。例えば、広く処方されている抗癌剤のドキソルビシンおよびシスプラチンは、それぞれに現れる心毒性および腎毒性によって、その治療能力を完全に発揮することが制限されている(Rajagopalan,S.、Cancer Res. 1988;Hale,J.P.、Arch.Dis.Child 1994;Dobyan,D.C.、J.Pharmacol. E.T1980;Fillastre,J.P.、Toxicology let 1989)。したがって、悪性細胞の殺滅に妥協せずに正常な細胞を選択的に保護することにより、望ましくない毒性を減少させることは、癌治療を促進するための有望な戦略になる。
【0004】
最近、培養細胞、および神経芽細胞腫のマウスにおいて、高用量の化学療法に対し、癌細胞を除き正常な細胞のみを特異的に保護することができる、絶食に基づく治療介入が報告された(Raffaghello,L.、PNAS 2008)。神経芽細胞腫異種移植マウスモデルでは、マウスに、エトポシド治療前の48時間、水のみを与えた。アドリブ摂食(ad lib fed)のマウスでは、高用量のエトポシドが50%の致死率をもたらしたのに対して、絶食は、薬の化学毒性から保護しただけでなく、神経芽細胞腫の転移に依存する死亡も遅延させた(Raffaghello,L.、PNAS 2008)。
【0005】
酵母から哺乳動物に至る生命体においては、カロリー制限がストレス耐性を高め、寿命を延ばすことが知られている。カロリー制限はまた、癌の増殖を遅らせることが示されているが、その効果が小さいうえに、癌患者には有害かつ持続することが非常に困難な長期の体重減少が求められるため、化学療法と併用することはできず、また単独で適用することもできない。
【0006】
したがって、少なくともこれらの理由のために、治療の助けになるとともに、化学療法の副作用を軽減する食事療法を効果的に組み込んだ、さらなる癌の治療法が要望されている。
【発明の概要】
【0007】
このような先行技術の背景に対し、癌の増殖または癌の症状を軽減する方法を提供する。本実施形態の方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪、好ましくは一不飽和脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌細胞の増殖の阻害および抑制に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0008】
他の実施形態では、化学療法薬に対する癌の感受性を高める方法を提供する。この方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌の化学療法から/への感受性(特異的ストレス耐性)の増大に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0009】
絶食は、それまでの化学療法サイクルにより衰弱した、あるいは、ひどく痩せてしまっている癌患者には潜在的に有害であるとする、腫瘍学者が一般に認めている考え方からすれば、これらの結果は興味深い。
【0010】
さらに他の実施形態では、放射線治療に対する癌の感受性を高める方法を提供する。この方法は、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を提供するステップを含む。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る。その後、患者に、第2の所定期間、第2の食を提供する。第2の食では、患者に、最大500kcal/日を与える。その後、体重の回復と、正常な細胞および臓器の最適な回復と健康に必要な必須栄養素の補充を最適化する第3の食を、患者に提供する。本実施形態は、正常な細胞の保護と、癌の放射線療法から/への感受性の増大(ストレス耐性の差)に有効な、短期の改変食事療法プロトコールを提供する。このプロトコールと改変食事療法は、患者の長期の体重減少を引き起こすことなく、それらの効果を促進するであろう。
【0011】
他の実施形態では、単独で投与されたときに癌の増殖を遅延させ、あるいは、化学療法および/または放射線療法からホストを保護し、かつ癌細胞の化学療法および/または放射線療法に対する感受性を高めるための、特定の範囲のタンパク質、必須アミノ酸、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルおよび必須脂肪酸を含有する製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、症例1における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図1Aは好中球;(B)図1Bはリンパ球;(C)図1Cは白血球、WBC、(D)図1Dは血小板;(E)図1Eは赤血球、RBC(F)図1Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図1Gはヘマトクリット、Hct;(H)図1Hは体重、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示す。
【図2】図2は、症例1における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、2サイクルの化学療法単独の平均値と2サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図3】図3は、症例2における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、化学療法単独3サイクルの平均値と5サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図4】図4は、症例3における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図4Aは好中球;(B)図4Bはリンパ球;(C)図4Cは白血球、WBC、(D)図4Dは血小板;(E)図4Eは赤血球、RBC(F)図4Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図4Gはヘマトクリット、Hct;(H)図4Hは前立腺特異抗原(PSA)値、患者は垂直の破線で示した90日間のアビラテロンアセテート(CYP17阻害薬)トライアルに登録され、また、アビラテロンアセテートによる治療の期間を除いて、化学療法の日にG−CSF(Neulasta)を投与され、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、矢印はテストステロンの塗布(クリーム、1%)を示し、臨床検査値の正常範囲は水平の破線で示す。
【図5】図5は、症例3における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、5サイクルの化学療法単独の平均値と7サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図6】図6は、症例4における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図6Aは好中球;(B)図6Bはリンパ球;(C)図6Cは白血球、WBC、(D)図6Dは血小板;(E)図6Eは赤血球、RBC(F)図6Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図6Gはヘマトクリット、Hct;黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示す。
【図7】図7は、症例4における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、5サイクルの化学療法単独の平均値と1サイクルの化学療法−絶食治療を表す。
【図8】図8は、症例5における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、1サイクルの化学療法単独(第1サイクル)と5サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図9】図9は、症例6における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図9Aは好中球;(B)図9Bはリンパ球;(C)図9Cは白血球、WBC;(D)図9Dは血小板;(E)図9Eは赤血球、RBC(F)図9Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図9Gはヘマトクリット、Hct;黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者は71日目に赤血球の輸血(3単位)を受け、また、図示したようにG−CSF(Neulasta)を投与された。
【図10】図10は、症例6における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフである。
【図11】図11は、症例7における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図11Aは好中球;(B)図11Bはリンパ球;(C)図11Cは白血球、WBC;(D)図11Dは血小板;(E)図11Eは赤血球、RBC(F)図11Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図11Gはヘマトクリット、Hct;(H)図11Hは前立腺特異抗原(PSA)値、黒三角形は化学療法の日を示し;四角形は絶食を示し、矢印はアビラテロンの投与を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者はまた、図示したように、G−CSF Neulasta)を投与された。
【図12】図12は、症例7における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、8サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図13】図13は、症例8における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、4サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図14】図14は、症例9における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、4サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図15】図15は、症例10における血球数の臨床検査値のプロットを示す:(A)図15Aは好中球;(B)図15Bはリンパ球;(C)図15Cは白血球、WBC;(D)図15Dは血小板;(E)図15Eは赤血球、RBC(F)図15Fはヘモグロビン、Hgb;(G)図15Gはヘマトクリット、Hct;(G)図15Gはヘマトクリット、Hct、黒三角形は化学療法の日を示す;四角形は絶食を示し、臨床検査値の正常範囲は破線で示し、患者はまた、図示したようにG−CSF(Neulasta)を投与された。
【図16】図16は、症例10における化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフであり、データは、6サイクルの化学療法−絶食治療の平均値を表す。
【図17】図17は、絶食を併用した、または併用しなかった化学療法後の自己申告による副作用を示す棒グラフである。(A)図17Aのデータは、この研究の患者全員から報告されたCTCグレードの平均値を表し;アドリブ摂食下の18サイクルの化学療法を、46サイクルの化学療法−絶食治療と比較し;(B)図17Bのデータは、絶食および非絶食のサイクルのマッチングから得られたCTCグレードの平均値を示し;6人の患者が化学療法単独、または化学療法−絶食治療を受け、最も近い2つのサイクルからの自己申告による副作用を互いに比較し、マッチングしたサイクルからのみ統計的分析を行い、データを平均値の標準誤差(SEM)として表し、P値を対でない両側t−検定により計算した(*,P<0.05)。
【図18】図18は、マウス乳癌細胞(4T1−luc)を96ウェル細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、図18Aは、照射(5Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図18Bは、照射(10Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図18Cは、生存率をMTT法により求め、Studentのt−検定(N=60)により統計的分析を行った実験の結果を示した、棒グラフである。
【図19】図19は、マウスグリオーマ(GL26)細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させ、その後、図19Aは、照射(5Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図19Bは、照射(10Gy)前の48時間、培地を低または高グルコース培地に切り替え;図19Cは、生存率をMTT法により求め、Studentのt−検定(N=60)により統計的分析を行った実験の結果を示した、棒グラフである。
【図20】図20は、体重20〜25gのメスのBALB/cマウスに、同系の乳癌細胞(4T1−luc;2×105細胞/マウス)を皮下注射したところ、13日目には腫瘍が300〜500mm3まで著しく進んでおり、照射(IR;5Gy)前の48時間、マウスを絶食させる治療を開始し、1週間後、STS/IR(3Gy)の第2のサイクルを行い、毎日、Studentのt−検定により統計的分析を行った実験をプロットしたものである(*p<0.05)。
【図21】図21は、体重25〜30gのメスのC57BL/6マウスに、同系のグリオーマ癌細胞(GL26;3×105細胞/マウス)を皮下注射したところ、27日目には腫瘍が500〜1000mm3まで著しく進んでおり、照射(IR;7.5Gy)前の48時間、マウスを絶食させる治療を開始し、1週間後、STS/IR(3Gy)の第2のサイクルを行い、毎日、Studentのt−検定により統計的分析を行った実験をプロットしたものである(*p<0.05)。
【図22】図22は、絶食が腫瘍の化学療法に対する感受性を高めることを示すプロットであり、特に、マウスの(A)図22Aは乳癌(4T1)、(B)図22Bはメラノーマ(B16)および(C)図22Cはグリオーマ(GL26)の皮下腫瘍の進行を、48時間の各絶食サイクルの前後における腫瘍サイズの成長百分率で示している。
【図23】図23は、(A〜C)図23A〜Cは皮下性および(D)図23Dは転移性癌のマウスモデルにおいて、48〜60時間の絶食による体重の減少が、通常の給餌再開後、容易に回復したことを示すプロットである:(A)図23Aはマウス乳癌(4T1)罹患BALB/cマウス、(B)図23Bはマウスメラノーマ(B16)罹患C57BLマウス、および(C)図23Cはグリオーマ(GL26)罹患C57BLマウス、ならびに(D)図23Dはマウス神経芽細胞腫(Neuro2a)罹患A/Jマウス。
【図24】図24は、24〜48時間の絶食が、転移性マウスメラノーマ(B16)の生存を高めたことを示すプロットである。
【図25】図25は、種々の臓器へのB16メラノーマ細胞の転移を、通常の給餌下でDXRを投与されたマウスと比較して示す棒グラフである。
【図26】図26は、マウス神経芽細胞腫:NXS2の2つの転移モデルにおいて、絶食がまた腫瘍の感受性を高め(P<0.001)、長期生存をもたらしたことを示すプロットである。
【図27】図27は、マウス神経芽細胞腫:Neuro2aの2つの転移モデルにおいて、絶食がまた腫瘍の感受性を高め(P=0.005)、長期生存をもたらしたことを示すプロットである。
【図28】図28は、乳癌(4T1)の転移マウスモデルにおいて、絶食が癌細胞の化学療法に対する感受性を高めたことを示すプロットである(ログランク検定、P<0.0005)。
【図29】図29は、絶食がヌードマウスに皮下注射した異種移植ヒト神経芽細胞腫(ACN)の腫瘍進行を抑制したことを示すプロットであり;腫瘍が触知可能になった時点で、全部で5サイクルの絶食を行った[皮下モデルにTukeyポスト検定(27日目の(B)にStudentのt−検定)、転移モデルにログランク検定を使用した、一元配置分散分析、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001]。
【図30】図30は、アドリブ摂食マウスの血清で毒性の低かったDXRおよびCPの用量に対する乳癌細胞の感受性を絶食マウスの血清が増大させたことを示す棒グラフである。対照群は、ヒトおよびマウスの細胞をそれぞれ、10%FBSを加えた1.0g/Lおよび2.0g/Lのグルコース中で培養した。STS群は、1%FBSを加えた0.5g/Lのグルコース中で培養した。MTT還元法により生存率を求めた。グルコースと血清の全ての組み合わせがDXRとCPに及ぼす影響については、図33〜34を参照。
【図31】図31は、絶食マウスの血中グルコース値を示す棒グラフである。
【図32】図32は、STSが17種の癌細胞のうち15種でDXRin vitrに対する感受性を高めたという実験結果を示すプロットであり、4種のマウス癌細胞、すなわち乳癌(4T1)、メラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)および神経芽細胞腫(NXS2およびNeuro2a)、ならびに13種のヒト癌細胞、すなわち前立腺癌(PC3、22RV1)、乳癌(MCF−7、C42B)、神経膠芽細胞腫(U87−MG)、子宮頚癌(HeLa)、結腸癌(LOVO)、神経芽細胞腫(ACN、SH−SY5Y)、類表皮癌(A431)、メラノーマ(MZ−MEL)および卵巣がん(OVCAR)にSTSを適用し、DXRを併用した。
【図33】図33は、グルコースと血清の全ての組み合わせがDXRに及ぼす影響を示すプロットである。
【図34】図34は、グルコースと血清の全ての組み合わせがCPに及ぼす影響を示すプロットである。
【図35】図35は、化学療法に対する癌細胞のSTS依存の増感を、IGF−Iが無効にすることを示す棒グラフであり;グルコース制限下(1%FBS存在下、0.5g/L対2.0g/L)、マウス乳癌(4T1)およびメラノーマ(B16)細胞をrhIGF−I(200μM)で処理し、続いてDXR(16μM)で処理した;Studentのt−検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図36】図36は、その絶食と、酸化ストレスおよびDNA修復の調節とを示す試験結果であり;STSは、遺伝毒性があり、(A)図36Aは乳癌(4T1)においてCPと組み合せ、(B)図36Bはメラノーマ(B16)においてDXRと組み合わせ、および(C)図36Cはグリオーマ(GL26)細胞においてDXRと組み合わせ、コメットアッセイによる測定で、DNAの損傷を相乗的に増加させた。対照群およびSTS群の細胞は、1%FBSを加えた、通常グルコース(2.0g/L)または低濃度グルコース(0.5g/L)でそれぞれ培養した。薬剤は、図22A〜Cのインビボでの研究と一貫性が保たれるように選択した。
【図37】図37は、通常給餌マウスまたは絶食マウスからの皮下乳癌(4T1)に対するマイクロアレイ解析の結果を示したもので、細胞増殖経路の特異的制御を示している。
【図38】図38は、通常給餌マウスまたは絶食マウスからの皮下乳癌(4T1)に対するマイクロアレイ解析の結果を示したもので、リボソームアセンブリー/生合成を含む翻訳機構の増加を示している。
【図39】図39は、マウス乳癌細胞(4T1)において、絶食がAktおよびS6Kを増加させ、eIF2αリン酸化反応を減少させており、翻訳成分の増加と整合していることを示す試験結果であり、(A)図39Aはインビボ、(B)図39Bはインビトロである。
【図40】図40は、STSがインビトロで癌細胞の増殖を妨げており、マウスにおける腫瘍の増殖抑制と整合していることを示す棒グラフである。
【図41】図41は、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)、核因子カッパB(NFkB)、およびヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)などのストレス応答成分の発現において、絶食が、腫瘍においてはこれを顕著に抑制し、正常な臓器においてはこれを大量に誘導することにより、これを特異的に制御したことを示す棒グラフである;Studentのt−検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図42】図42は、STSが、スーパーオキシドマーカー(DHE)により推定される細胞内酸化ストレスを増加させたことを示す試験結果である。
【図43】図43は、STSがCP誘導細胞内スーパーオキシド値を増加させることを示す試験結果であり;インビトロで、マウス乳癌細胞(4T1)を絶食させ、CPで処理した。
【図44】図44は、絶食が、腫瘍内のカスパーゼ3の開裂/活性化レベルを選択的に増加させたが、正常臓器/細胞ではそうでなかったことを示す試験結果であり、(A)図44Aはインビボ、(B)図44Bはインビトロの結果である。
【図45】図45は、細胞のエネルギー機構を維持するために、STSが自己貪食を誘導したことを示す試験結果である。
【図46】図46は、STS処理中の自己貪食の遮断が細胞死をさらに増加させていることを示す棒グラフである。
【図47】図47は、マウス乳癌細胞(4T1)を、FBSを1%含有する通常または低濃度グルコース中において、最も一般的なHO−1誘発剤のヘミン(10μM)で処理し、その後CPを加えた実験結果のプロットである。
【図48】図48は、HO−1が絶食依存性DSRの主たるメディエータであることを示すプロットであり;FBSを通常(10%)または低濃度(1%)で含有する、通常または低濃度グルコース中において、最も一般的なHO−1誘発剤のヘミンで、CP処理前の24時間、およびCP処理中の24間、マウス乳癌細胞を処理した。
【図49】図49は、FBSを1%含有する通常または低濃度グルコース中において、一般に使用されているHO−1阻害剤のZnPP(20μM)でマウス乳癌細胞(4T1)を処理し、その後CPを加えた実験結果のプロットである。
【図50】図50は、HO−1が絶食依存性DSRの主たるメディエータであることを示すプロットであり;FBSを通常(10%)または低濃度(1%)で含有する、通常または低濃度グルコース中において、一般に使用されているHO−1阻害剤のZnPPで、CP処理前の24時間、およびCP処理中の24間マウス乳癌細胞を処理した。
【図51】図51は、絶食に応答して化学療法に対する感受性を高めた絶食依存性腫瘍のモデルを示し、グルコース、IGF−Iおよび他の成長促進分子/因子が減少し、この減少に応答して、悪性細胞が、AKT/S6KおよびeIF2αを活性化させ、翻訳を増加させるが、またストレス耐性タンパク質のFOXO3a、NFkBおよびHO−1の発現を減少させ、これらの変化によって、酸化ストレスおよびDNA損傷の増加、カスパーゼ−3の活性化、ならびに細胞死がもたらされている。
【図52】図52は、対照食(T.D.7912)もしくはアミノ酸処方(AA−D)を与えるか、または2.5日間飢餓させた(短期飢餓、STS)メスのCD1マウスにおける血清IGF−I値の実験結果を示すプロットであり;改変アミノ酸食では、5日間の給餌で、血清IGF−Iが50%まで低下した。
【図53】図53は、短期飢餓(STS)後、改変アミノ酸食を給餌することによって、低血清IGF−I値が維持されたことを示すプロットであり;メスCD1マウスに2.5日間飢餓させた後、2日または4日間、対照食(T.D.7912)または改変アミノ酸食(AA−Dを再び与えた。
【図54】図54は、血中グルコース値を示すプロットであり:(A)図54AはメスのCD1マウスに3日間飢餓させるか、あるいは低カロリー(通常のカロリー摂取量の6%)VCM食(3日間)、または改変アミノ酸食(AA−D、3または5日間)を与え;(B)図54BはメスCD1マウスに2.5日間飢餓させた後、4日間、対照食または改変アミノ酸食を再び与え、餌を取り上げてから4時間後にグルコースを測定した。
【図55】図55は、血清IGF−I値:メスのCD1マウスに2.5日間(STS)飢餓させるか、低カロリーVCM−M食(2日間)の後に、1日間の改変アミノ酸食(M/AA)を与えるか、または低カロリーVCM−H(2日間)の後に、1日間の変法アミノ酸食(H/AA)を与えて、Tukey検定で対照と比較し;(B)図55Bは2日間の低カロリーVCM食の後、1日間の改変アミノ酸食を与えることにより、ドキソルビシン(DXR,18mg/kg)で治療したマウスの生存率が増加した実験結果を示す棒グラフである。
【図56】図56は、メスのCD1マウスに2.5日間、対照(T.D.7912)を与えるか、飢餓させるか、またはVegeGelを与えた実験結果プロットである:(A)図56Aは絶食血中グルコース値;(B)図56Bは血清IGF−I値。
【図57】図57は、メスのCD1マウスに対照食(TD.7912)、カロリー制限ケトン産生食(3日間)、またはカロリー制限ケトン産生食(1日間)を与えた後、VegeGel(2日間)を与えた実験結果のプロットである:(A)図57Aは絶食血中グルコース値;(B)図57Bは血清IGF−I値。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の、現時点で好ましい組成物、実施形態および方法について詳しく説明するが、これは、本発明者らが現時点で知っている本発明の最良の実施モードを構成するものである。図面は必ずしも正確に縮尺したものではない。しかしながら、開示した実施形態が、種々の、他にも取り得る形態で実施することができる本発明の単なる例示であると理解されるべきである。したがって、ここで開示する具体的な詳細は、限定のためでなく、単に、本発明の任意の態様の代表的基礎として、かつ/または本発明を様々に使用するよう当業者に教示するための代表的な基礎として理解されるべきである。
【0014】
実施例を除き、あるいは他に明示されていなければ、物質の量、または反応および/もしくは使用の条件を示す本明細書中のあらゆる数値的量は、本発明の最も広い範囲を記述する際には、「約」という語で修飾されていると理解されるべきである。記述されている数値範囲内での実施が一般には好ましい。また、反対の記載がなければ:パーセント、「部」および比の値は、重量基準であり;本発明に関連した所与の目的に適した、または好ましい物質の群またはクラスについての記載は、群またはクラスのメンバーの任意の2種以上の混合物も同様に適しているか、または好ましいものであるという意味を含んでおり;化学的表現での成分の記載は、明細書中に特定された組み合わせに添加する時の成分をいい、混合後の混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく;頭字語または他の略語の最初の定義は、ここでの同一の略語のその後の全ての使用に適用され、また最初に定義された略語の通常の文法的な変更に準用され;かつ、反対の記載がなければ、特性の測定は、同一の特性に対して先に、または後に参照されたものと同じ手法によって測定される。
【0015】
また、特定の成分および/または条件は、当然ながら変更し得るものであるから、本発明が以下に記載の特定の実施形態および方法に限定されないことも理解されるべきである。さらに、ここで使用する用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的でのみ使用されるものであって、決して限定することを意図するものではない。
【0016】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、特に他の明示がなければ、単数形「a」、「an」および「the」が複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。例えば、ある構成要素を単数形で参照するとき、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0017】
用語「必須アミノ酸」は、有機体により合成できないアミノ酸をいう。ヒトの必須アミノ酸には、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンが含まれる。さらに、次のアミノ酸―すなわち、ヒスチジン、チロシンおよびセレノシステインも、ある条件下ではヒトに必須である。
【0018】
用語「キロカロリー」(kcal)および「大カロリー(Calorie)」は、食物のカロリーをいう。用語「カロリー(calorie)」はいわゆる小カロリーをいう。
【0019】
用語「患者」は、霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギおよびウシなどのあらゆる哺乳動物を含む、ヒトまたは動物をいう。
【0020】
用語「飢餓させる」は、細胞または患者を低栄養または無栄養状態にすることを意味する。
【0021】
用語「癌」は、無制御な細胞分裂と、増殖し隣接する組織へ直接侵入するか、または転移により離れた部位に生着することにより拡がっていくそれらの細胞の能力を特徴とする疾病または疾患をいう。癌の例としては、これらに限定はされないものの、原発癌、転移癌、癌腫、リンパ腫、白血病、肉腫、中皮腫、膠腫、胚細胞腫、絨毛癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、大腸癌、消化器癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、メラノーマ、脳癌、精巣腫瘍、腎臓癌、皮膚癌、甲状腺癌、頭頚部癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、骨髄腫、神経芽細胞腫、褐色細胞腫および網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0022】
一般に、短期飢餓(STSまたは絶食)が、選択的に腫瘍の成長を妨げ、化学療法毒性から正常細胞を保護するが、癌細胞のそれに対する感受性は高めることがわかった。この目標を達成する方法および組成物の具体的な実施形態について、以下に説明する。本発明の作用は特定のメカニズムに限定されるものではないが、本発明の各種実施形態で観察される保護は、部分的には、その癌細胞に対する効果を妨害せずに、IGF−I経路およびグルコース濃度を調節することによるものである(特異的ストレス耐性、DSR)。絶食の保護効果の基礎は、栄養分が不足または欠乏するとき、再生/成長から保護/維持へエネルギーを配分し直す能力に基づいていると考えられる。長期の食事制限によって引き起こされるIGF−Iおよびグルコースの減少が、絶食に比べてはるかに小さいことを指摘しておかなければならない。さらに、絶食とは異なり、長期の食事制限は、慢性の体重減少を引き起こし、維持することが非常に困難であることから、大部分の癌患者に適していない。代わりに、化学療法前の平均約62時間と、化学療法後の24時間の絶食であれば、様々な毒性治療を受けている癌患者にとって十分に耐えられるものであった。
【0023】
また、細胞の増殖およびストレス応答に関係する経路で一般に見られる発癌突然変異が、絶食中であっても、悪性細胞における高い保護モードへの切り替えを防止し、増殖または増殖関連状態を推進することも指摘しておかなければならない。酵母および哺乳動物についての研究からは、悪性細胞の毒素/オキシダントに対する増感が、保護モードへの移行阻害における増殖促進経路の重複性のために、発癌突然変異のタイプとはほとんど無関係であり得ることが示唆されており、これは大部分の癌細胞および癌タイプが、STSまたは低IGF−Iに応答して保護されないことを示している。
【0024】
本発明の一実施形態においては、癌の増殖または癌の症状を緩和する方法が提供される。本実施形態によれば、癌患者は、同定後、第1の所定期間に第1の食が与えられる。第1の食は、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪、好ましくは一不飽和脂肪から得る。患者の通常のカロリー摂取量は、患者が彼/彼女の体重を維持するために消費するkcal数である。患者の通常のカロリー摂取量は、患者との面接により、あるいは患者の体重を考慮することにより推定し得る。おおまかな目安として、患者の通常のカロリー摂取量は、平均、男で2600kcal/日、女で1850kcal/日である。一つの態様(refinement)では、第1の食で700〜1200kcal/日を患者に与える。特に有用な態様では、第1の食で、平均体重の男性患者には約1100kcal/日を与え、平均体重の女性患者には900kcal/日を与える。通常、第1の所定期間は約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。第1の食における脂肪レベルを見直すために、U.S.Food and Drug Administrationは、典型的な1日当たり2000kcalの食事に対して、次のような栄養の内訳:脂肪65グラム(約585キロカロリー)、タンパク質50グラム(約200キロカロリー)、全炭水化物300グラム(約1200キロカロリー)を推奨している。したがって、第1の食の1つのバージョンでは、炭水化物とタンパク質からのカロリーの大部分は除かれる。
【0025】
第1の食は実質的にいかなる脂肪源を包含してもよいが、一不飽和脂肪源、多価不飽和脂肪源など、不飽和脂肪が多い脂肪源が特に有用である(例えば、オメガ−3/6必須脂肪酸)。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食にはまた、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0026】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。さらに他の一つの態様では、第2の食には、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源には、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0027】
第1の食および第2の食の効果は、患者の多くのパラメータを測定することによりモニターされる。例えば、患者のIGF−Iの血清中濃度は、第2の食の終わりまでには25〜90%減少していることが望ましい。また、患者の血中グルコース濃度も、第2の食の終わりまでには25〜75%減少していることが望ましい。
【0028】
本実施形態の変形では、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3食は、患者の通常の食を補充するためのものである。補充組成物に、必須アミノ酸、ミネラルおよび必須脂肪が含まれるのが特徴である。有利なことに、第3の食は、患者に正常な体重を回復させ、その体力を最大にするであろう。通常、第3の所定期間は、少なくとも5日である。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は、野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。補充組成物はまた、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含有する多成分ミネラル錠を含んでもよく、またビタミンB12などのビタミンB複合体を含有してもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態では、癌の化学療法薬に対する感受性を高める方法が提供される。本方法においては、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を与える。本方法に感受性の高い癌の例としては、限定はされないが、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、グリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫および褐色細胞腫が挙げられる。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得る。通常、第1の所定期間は、約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。上述したように、第1の食は、実質的に任意の脂肪源を包含するが、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪の脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないが、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0030】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。第2の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0031】
患者が第2の食を摂取している間、またはその後に、患者には化学療法薬剤が投与される。通常、化学療法薬剤は、第2の食の48〜72時間後に投与される。本方法が実質的にいかなる化学療法薬に対しても有効であることは、容易に理解される。有用な化学療法薬の例としては、限定はされないものの、DNAアルキル化剤、オキシダント、トポイソメラーゼ阻害薬、およびこれらの組み合わせが挙げられる。有用な化学療法薬の具体例としては、限定はされないものの、メチルメタンスルホネート、シクロホスファミド、エトポシド、および他のトポイソメラーゼ阻害薬、ドキソルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、および他のプラチナベースの薬剤、ゲムシタビン、ドセタキセルまたは5−FUが挙げられる。
【0032】
本発明の変形では、続いて、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3の食は、患者の通常のカロリー摂取量を補うものであり、補充組成物を含む。補充組成物に、必須アミノ酸が含まれるのが特徴である。補充組成物にはまた、天然の、必須脂肪酸源、ビタミン源およびミネラル源、ならびに鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含む多成分ミネラル錠が含まれていてもよく、また、ビタミンB12などのビタミンB複合体が含まれていてもよい。
【0033】
上記したように、第3の食を患者の通常の食と共に与えることにより、患者は正常な体重を回復し、体力が最大になるであろう。通常、第3の所定期間は少なくとも5日であり、無期限に続けてもよい。一つの態様では、第3の所定期間は、約4日〜約14日である。この目的のためには、1週間がほぼ最適であると推定される。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。第3の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0034】
本実施形態の方法は、多くの治療上の利点を提供する。例えば、この方法によれば、患者に第1の食および第2の食が与えられていないときの化学療法薬の標準的な使用期間よりもより長い期間、患者に化学療法薬を与えることが可能になる。このような期間の増大は、第1および第2の食が、化学療法薬の毒作用を減少させ、かつ/または癌細胞の化学療法薬に対する感受性を、正常(すなわち、非癌性の)細胞よりも高めたことの結果である。多くの患者で、第1および第2の食を使用しない治療プロトコールよりも、ホストを保護する第1および第2の食によって、化学療法薬をより大量に投与することが可能になる。通常、そのような薬剤は、一般に患者が耐えられる量より少なくとも10%多く投与することができる。しかしながら、ある種の患者では、そのような薬剤の用量は、10%〜40%増加させることができる。そのようなシナリオでは、患者をより積極的に治療することができる。他の一つの態様では、癌の感受性を高める第1および第2の食は、最適に近い、または増大した応答を維持しながら、患者に与える化学療法薬の量を通常より少なくできるという効果を有する。そのような場合、化学療法薬剤は、通常投与する量より少なくとも10%少ない量を投与することができる。ある種の患者では、望ましくない毒性を低下させるために、そのような薬剤の用量を10%〜40%減少させることができる。本方法によればまた、好ましくない副作用を示す化学療法治療を患者に継続させることが可能になる。その場合、患者が化学療法に関連する毒性症状を示すことを確認した後、上述した方法および期間で、第1、第2および第3の食を与える。有利なことに、本方法によればまた、末期にあると確認され、他の方法では治療を中断するであろう患者に対し、治療を継続することが可能になる。さらに他の変形では、長期に亘る化学療法薬の投与中、例えば、5−FUによる5日間の治療中に、第1および第2の食が与えられる。
【0035】
本発明の他の実施形態では、癌の放射線療法に対する感受性を高める方法が提供される。本方法においては、癌患者を同定した後、第1の所定期間、第1の食を与える。本方法に感受性の高い癌の例としては、限定はされないが、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、グリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫および褐色細胞腫が挙げられる。第1の食では、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、そのキロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得る。通常、第1の所定期間は、約1〜5日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。上述したように、第1の食は、実質的に任意の脂肪源を包含するが、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪の脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないが、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0036】
その後、患者には、第2の所定期間、第2の食が与えられる。第2の食では、最大500kcal/日を患者に与える。一つの態様では、第2の食は、最大200kcal/日を患者に与える。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は3日である。第2の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0037】
患者が第2の食を摂取している間、またはその後、患者には放射線療法が行われる。通常、放射線療法は第2の食の48〜72時間後に行われる。
【0038】
本発明の変形では、続いて、患者に、第3の所定期間、第3の食が与えられる。第3食は、患者の通常のカロリー摂取量を補うものであり、補充組成物を含む。補充組成物に、必須アミノ酸が含まれるのが特徴である。補充組成物にはまた、天然の、必須脂肪酸源、ビタミン源およびミネラル源、ならびに鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムを含む多成分ミネラル錠が含まれていてもよく、また、ビタミンB12などのビタミンB複合体が含まれていてもよい。
【0039】
上記したように、第3の食を患者の通常の食と共に与えることにより、患者は正常な体重を回復し、体力が最大になるであろう。通常、第3の所定期間は少なくとも5日であり、無期限に続けてもよい。一つの態様では、第3の所定期間は、約4日〜約14日である。この目的のためには、1週間がほぼ最適であると推定される。補充組成物にはまた、任意選択により、多くの追加の成分が含まれるであろう。例えば、補充組成物は野菜抽出物を含んでもよい。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。補充組成物はまた、オメガ−3/6必須脂肪酸および非必須アミノ酸を含んでもよい。適切な非必須アミノ酸の例としては、限定はされないものの、ヒスチジン、セリン、タウリン、チロシン、システイン、グルタミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。第3の食に関するさらなる詳細は、上で記載したものと同様である。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態では、癌患者に食事を提供するための、癌の増殖を抑制し、化学療法薬の効果を高める治療食パッケージが提供される。治療食パッケージは、上記の方法が必要とする適切な栄養とカロリーを提供するように考えられている。治療食パッケージには、第1の食事コンポーネント、第2の食事コンポーネントおよび補充組成物が含まれる。第1の食事コンポーネントは、上述した第1の食の栄養成分を提供する。第1の食事コンポーネントは、患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を患者に与え、かつそのキロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る食事に分割される。第1の食事コンポーネントは、第1の所定期間に十分な量の食事を提供する。ある一つの態様では、第1の食事コンポーネントはまた、5食分の野菜に相当する抽出物およびオメガ−3/6必須脂肪酸を含む。
【0041】
第2の食事コンポーネントは、上記第2のダイエット食の栄養成分を提供する。第2の食事コンポーネントは、癌患者に最大500kcal/日を与える食事に分割される。第2の食事コンポーネントは、第2の所定期間に十分な量の食事を提供する。第2の食事コンポーネントはまた、5食分の野菜に相当する抽出物の他、ミネラルおよびオメガ−3/6必須脂肪酸も含む。
【0042】
補充組成物は、少なくとも部分的に、上述した第3の食の栄養成分を提供する。通常、補充組成物は、患者に通常のカロリー摂取量の幾分かを提供するために、患者の通常の食と併用される。補充組成物は、必須アミノ酸を含む。補充組成物は、第3の所定期間に十分な量の補充物を提供する。
【0043】
上記したように、第1の食事コンポーネントは高脂肪である。第1の食事コンポーネントは実質的に任意の脂肪源を包含し得るが、脂肪の潜在的に有害な心血管の副作用を最小化するため、特にこの食を度々使用するであろう患者には、不飽和脂肪が多い脂肪源、特に一不飽和脂肪源が好ましい。一不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ペカン、ピスタチオ、カシュー)、アボカド、種子類(例えば、ゴマ)、オイル類(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物源の適切な例としては、限定はされないものの、クルミ、種子類(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、亜麻仁、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル類(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食事コンポーネントにはまた、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0044】
上記したように、第2の食事コンポーネントは、患者に非常に低いカロリーを提供する。一つの態様では、第2の食事コンポーネントには、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が含まれる。一つの態様では、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨日量の5日分を提供する。適切な野菜抽出物源としては、限定はされないものの、青梗菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、バターナットカボチャ、アルファルファ、グリーンピース トマト、キャベツ カリフラワー、ビートが挙げられる。適切なオメガ−3/6必須脂肪酸源としては、サケ、マグロ、サバ、ブルーフィッシュ、メカジキなどの魚が挙げられる。
【0045】
補充組成物は、患者の通常の体重および体力が維持されるように(または、体重減少があったならば、回復するように)考えられている。一つの態様では、補充組成物はさらに、5食分の野菜に相当する抽出物の他、ミネラルおよびオメガ−3/6必須脂肪酸も含む。補充組成物は、目標とする体重および体力が達成されるように、通常の食と共に摂取すべきであると認識すべきである。上記したように、一般に、通常の食は患者の通常のカロリー摂取量をほぼ提供するであろう。
【0046】
一つの変型例では、治療食パッケージはまた、第1の食のコンポーネント、第2の食のコンポーネントおよび補充組成物を癌患者に与えるための使用説明書を含む。使用説明書は、方法に関し、上で記載した詳細を提供するであろう。一つの態様では、使用説明書には、第1の食のコンポーネントが、上記のように、第1の所定期間を通して患者に提供されるべきことが記載される。通常、第1の所定期間は約1〜2日である。一つの態様では、第1の所定期間は1日である。使用説明書にはまた、第2の食のコンポーネントが、上記のように、第2の所定期間を通して患者に提供されるべきことが記載される。通常、第2の所定期間は約2〜7日である。特に有用な態様では、第2の所定期間は約3日である。使用説明書にはまた、補充組成物が通常の食と共に、そして特に、患者の体重および体力を維持または回復するのに十分な量の追加食品と共に摂取すべきであることが記載される。通常、第3の所定期間は少なくとも5日である。一つの態様では、第3の所定期間は約4日〜約14日である。この目的のためには1週間がほぼ最適であることがわかっている。
【0047】
本実施形態の変形例では、治療食パッケージは、容器(例えば、箱)に詰められる。一つの態様では、第1の食のコンポーネントおよび第2の食事コンポーネントはそれぞれ、1日量に分けられ、それを示すラベルが付される。さらに他の態様では、各1日分はさらに3食分に分けられる。通常、各食事は、固形食、ミルクセーキおよびスープの組み合わせ(1日目)で、2、3および4日目はスープとミルクセーキのみ(3食/日)であろう。各パッケージにはまた、必須脂肪酸、ミネラルおよびビタミンを含む錠剤、および/または野菜抽出物が入っているであろう。箱にはまた、錠剤の形態をしているであろう1週間分の補充食も入っているであろう。一般に、食の全てのコンポーネントで、それらに含まれる品目はいずれも非天然のものは最小限にされる。
【0048】
以下の実施例は、本発明の各種実施形態を説明するものである。当業者であれば、本発明の精神と特許請求の範囲内に多くの変形があることを認めるであろう。
【実施例】
【0049】
実験1
多様な悪性腫瘍があると診断された患者らが、化学療法の前(48〜140時間)および/または後(24〜56時間)に自発的に絶食を行った10の症例について記載する。絶食と組み合わせて平均4サイクルの化学療法を受けた10人の患者は、空腹以外は誰も、絶食自体による重大な副作用を訴えることはなかった。毒性のグレード分け、National Cancer Institute(NCI)のCommon Toxicity Criteria(CTC)に基づいて行い、そして5人の患者が自己申告した副作用は、絶食が疲労、衰弱および消化器への副作用から保護し得ることを示している。癌の進行をモニターできた患者では、絶食が化学療法依存の腫瘍量または腫瘍マーカーの減少を阻害することはなかった。臨床転帰および患者の生活の質を高めることにおける絶食の役割を調べるには、制御した臨床試験が必要であるが、ここに示した10の症例は、化学療法と併用した絶食は、妥当であり、安全であり、かつ従来の化学療法を増強する可能性を有していることを示唆している。
【0050】
各種タイプの癌と診断され、化学療法の前後に自発的に絶食を行った患者について、10の症例を報告する。自己評価による健康転帰と血液検査の結果に基づいて示された結果は、絶食が安全であって、癌細胞の殺滅を阻害せずに化学療法による多くの副作用を軽減し得ることを示唆している。
【0051】
症例1:
ドセタキセル(DTX)およびシクロホスファミド(CP)による補助化学療法が推奨された、ステージIIAの乳癌と診断された51歳の白人女性。彼女は第1回の化学療法を実施する前に絶食を行った。絶食の方法は、化学療法前の120時間、および化学療法後の60時間(計180時間)はカロリーを完全に断ち、その間、彼女は水とビタミンのみを摂取するというものであった。患者は、この長期に亘る絶食を重大な不都合もなく終え、体重は7ポンド減少したが、これは治療が終わるまでに回復した(図IH)。絶食−化学療法のサイクル後、患者は軽い疲労、口内乾燥、吃逆を経験した(図2)が、それにもかかわらず、彼女は日々の活動(1日に12時間まで仕事)を行うことができた。対照的に、その後の化学療法サイクル(第2回および第3回)では、彼女は絶食せずに化学療法を受け、軽度から重度に至る疲労、衰弱、悪心、腹部痙攣および下痢を訴えた(図2)。今度は、副作用によって彼女はいつもの仕事のスケジュールをこなせなかった。第4回および最後のサイクルでは、化学療法前の120時間、および化学療法後の24時間の絶食からなる異なる方法であったが、再度、絶食することを選択した。注目すべきことに、前のサイクルで組織には蓄積された損傷が見込まれるにもかかわらず、彼女が自己申告した副作用は軽度なものであった。これと一致して、血液検査の結果も、絶食が血液細胞の保護に好ましい効果をもたらし得ることを支持するものであった。化学療法の前に絶食を行ったときは、総白血球数(WBC)および好中球絶対数(ANC)は、最下点で僅かではあるが一貫して増大した(図1A、C;表1)。さらに、絶食−化学療法において、第1および第4サイクルそれぞれで、血小板数は減少せず、むしろ安定を維持するか、または増加することが観察された。(図1D)。興味深いことに、144時間の絶食と併用した第4回化学療法サイクル後、ANC、WBCおよび血小板数は、80日前の化学療法の開始以来、最高値に達した(図1A、CおよびD)。研究室での数値とCTCの調査は、概ね、絶食が安全であって、化学療法による有害な副作用からこの患者を保護することができたことを示唆している。
【0052】
症例2:
2008年2月に食道腺癌と診断された68歳の白人男性。診断時までに、CT−PETスキャンで左副腎への転移が発見され、これはステージIVの疾患と一致する。初期の治療は、シスプラチン(CDDP)を併用した5−フルオロウラシル(5−FU)であった。この化学療法と同時に、彼はまた最初の2サイクルで局所放射線照射を受けた。この期間を通して患者は、重度の衰弱、極度の疲労、激しい嘔吐および重篤な末梢神経障害を含む多くの副作用を経験した(図3)。さらに患者は、放射線治療により最も引き起こされやすい、重篤な粘膜炎に続いて強い嚥下障害を訴えた。第3のサイクルの間、重度の悪心と難治性嘔吐のために、5−FUの投与を中断せざるを得なかった(図3)。化学療法と放射線を使用する攻撃的な治療にもかかわらず、彼の病気は進行した。2008年8月に測定した新しいCT−PETからは、右の副腎、右肺の下葉、左仙骨、および烏口突起への新たな転移の展開が示された。これらのことから、彼の化学療法の強化が促された(第4のサイクル)。カルボプラチン(CBDCA)のDTXおよび5−Fuとの併用(5−FUは96時間投与された)。患者は、第4のサイクルの間、化学療法前72時間と、化学療法後51時間の絶食を組み込んだ。化学療法後51時間絶食したのは、5−FUの継続投与から保護するためであった。患者は体重が約7ポンド減少したが、通常食を再開して最初の数日のうちに4ポンド回復した(データを示さず)。このサイクルの間、3種類の化学療法薬剤を併用したが、報告された自己申告の副作用は、アドリブ食−化学療法サイクルより一貫して軽度であった(図3)。第5の化学療法治療の前に、患者は再び絶食することを選択した。前に彼が受けたような96時間の5−FUの点滴を受ける代わりに、同用量の薬が48時間以内に投与され、絶食の方法も薬剤送達前の48時間と薬剤送達後56時間に修正された。興味深いことに、自己申告の副作用が軽度であったばかりでなく、CT−PETスキャンで記録された臨床応答も励みになるものであった。主な食道腫瘤、副腎転移、および肺の右下葉小結節の標準摂取率(SUV)が減少したことが、スキャンで示された。第6、第7、第8サイクルでは、患者は化学療法治療の前後で絶食を行った(表3)。毒性の蓄積が予想されたにもかかわらず、第7化学療法サイクルの間に軽い下痢と腹部痙攣があったことを除いて、ほとんどの副作用が絶食により軽減された。非常に攻撃的な癌であり、十分に耐えられた化学療法であったにもかかわらず、患者の病気は進行し、患者は2009年2月に死亡した。
【0053】
症例3:
2000年7月に、グリーソンスコア7、PSA値5.8ng/mlの両側前立腺癌と診断された74歳の白人男性。2000年9月に前立腺切除を行い、2003年1月にPSA値が1.4ng/mlに上昇するまでは、検出不能のPSA値であった。ビカルタミドおよびフィナステリドと共に酢酸リュープロリドが処方された。しかしながら、テストステロンの欠乏に関係した重度の副作用のために、2004年4月にはこれらの薬の投与を中止せざるを得なかった。この病気をコントロールするために、トリプトレリンパモ酸塩、ニルタミド、サリドマイド、CPおよびケトコナゾールを含む、異なる薬剤が使用された。2007年には、患者のPSA値は9ng/mlに達し、骨スキャン中に新たな転移が認められた。1週当たり25mg/m2のDTXを投与したが、PSA値は増加を続け、40.6ng/ml(データを示さず)に達した。ベバシズマブを治療に加え、それによって初めて、PSAが顕著に低下した(データを示さず)。これに一致して、新たな骨スキャンは全体的な改善を示した。化学療法を伴うサイクルを通じて、患者は、疲労、衰弱、金属味、眩暈、失念、短期記憶障害および末梢神経障害を含む重篤な副作用を経験した(図5)。化学療法治療の停止後、彼のPSAは急激に上昇した。3週サイクルで75mg/m2のDTX投与が方法として選択され、患者は、再度、重篤な副作用を経験することになった(図5)。2008年6月、化学療法を中止した。患者は、CYP17(非性腺アンドロゲンの生合成に必要な一連の反応を触媒するミクロゾーム酵素)を選択的に遮断することができる薬剤である酢酸アビラテロンのフェーズIII臨床試験に参加した(Derek RaghavanおよびEric A.Klein著、J.C.O、2008)。試験中、患者のPSA値は20.9ng/dlまで上昇し(図4H)、化学療法治療の再開を促された。今度は、患者は化学療法前に絶食することを選択した。彼の絶食スケジュールは、ほとんどが薬剤投与前60時間および薬剤投与後24であった(表3)。PSA値は化学療法−絶食治療(DTX 75mg/m2)を再開すると直ちに低下し、そして注目すべきことに、患者の副作用の報告は、以前のアドリブ食化学療法サイクルのときよりかなり少なかった(図5)。患者の経験と一致して、血液検査の結果は、治療の期間中一貫して安定しており、正常範囲に留まっていた(図4A〜G)。最後の3サイクルの間、患者に、絶食に加えて、化学療法前の5日間、テストステロン(クリーム1%)を塗布した。その結果、PSA値はテストステロン値と共に顕著に増加した。それにもかかわらず、絶食と併用した3サイクルの化学療法により、PSAは34.2ng/mlから6.43ng/mlへと低下した(図4H)。これらの結果は、絶食が癌細胞を部分的に保護し得る可能性を支持するものではない。
【0054】
症例4:
2008年6月に低分化の非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された61歳の白人女性。最初にCTスキャンで見られた腫瘤は、PETスタディ(2008年、6月)で異化亢進であることがわかり、生検の結果とも相関した。同じPETスキャンで、多数の縦隔および左の肺門周囲のリンパ節に、広範囲に及ぶ転移性の病変が認められた。骨、肝臓、脾臓および膵臓への転移も認められた。最初の治療は、21日毎にDTXを75mg/m2とCBDCAを540mg/m2投与することから始められた。彼女は通常の食を摂っていたが、最初の5サイクルの間、各化学療法治療の後で平均4ポンド体重が減少した。化学療法毒性が原因である可能性が最も高い。彼女の報告によれば、元の体重に戻るのに約3週間を要したということであった。経験した副作用の中でも、彼女は激しい筋痙攣、下肢神経障害、強い疲労、口内および舌の痛み、内出血のしやすさ、ならびに腸の不快感を訴えた(図7)。同じ薬と用量からなる第6サイクルの間、患者は、化学療法前48時間と化学療法後24時間、絶食した。この期間中に彼女の体重は約6ポンド減少したが、これは10日で回復した(データを示さず)。患者は、軽い疲労と衰弱以外は、先の5回のサイクルの間に経験した他の副作用を訴えることはなかった(図7)。なお、末梢神経障害、脱毛または短期記憶障害などの蓄積性の副作用は、一度発現すると絶食により元に戻すことはできないことに留意しなければならない。一方、急性の有毒な副作用は、絶食状態で化学療法を行うと、回避できた(図7)。第6および最後のサイクルの後で、患者から、薬剤投与の僅か3日後に3マイルを歩けるほど急速に活力が回復したとの報告があった。患者の血液検査では大きな差異は認められなかった(図6A〜G)。2009年2月に行われた最後の放射線検査(PET)は、ベースライン検査と比較して、主要腫瘤(左肺の下葉)の病変が安定しており、かつ脾臓および肝臓中のトレーサーの吸収が減少していることを示した。
【0055】
症例5:
2008年にステージIVの子宮体部漿液性腺癌であると診断された74歳の女性患者。外科的処置(TAH−BSO)に続いて補助化学療法を行うことが推奨された。さらに、骨盤、傍大静脈および大静脈前のリンパ節を切除した。最後に右尿管が大きく肥大していたので、右腎摘出を行った。CBDCA(480mg)およびパクリタクセル(280mg)の投与を、21日毎に、6サイクル行った。第1の治療の間、患者は通常の食を摂っており、疲労、衰弱、脱毛、頭痛を経験し、胃腸の不快感を訴えた(図8)。一方、サイクル2〜6の間は、患者は薬剤投与の前後に絶食を行い、化学療法後の副作用が軽減したことを報告した(表3;図8)。他の報告と一致して、絶食は化学療法依存の癌細胞殺滅を妨害することはなく、これは第4サイクルの後でCA−125腫瘍マーカーが87%減少したことで実証された(データを示さず)。
【0056】
症例6:
2007年7月に、右卵巣腫瘤(10×12cm)と診断された44歳の白人女性患者。外科的処置(TAH−BSO)が行われた。腫瘍は、卵巣被膜への浸潤がなく、切除した30+のリンパ節は全て陰性であった。彼女の病変はステージIAの卵巣癌肉腫とグレードづけられた。最初に行われた治療は、イホスファミドとCDDPによる6サイクルのコースであり、患者はこれを2007年7月から11月まで受けた。2008年1月に行われた彼女の最初のCTスキャンでは、卵巣の病変の拡大は認められなかった。7か月後、MRIによって新たな多数の肺結節が見出された。この発見はCTスキャンにより確認され、脾臓領域における数か所の異常(低密度の像=MTS?)、および脊椎の退行性変化と共に、20を超える新たな小結節が肺の内部に認められた。これらの結果に基づき、Taxol、カルボプラチンおよびアバスチンを含む薬剤による新たな投薬計画が立てられた。2008年8月に点滴が開始され、3週間のスケジュールで行われた。同時に、患者には、高用量のビタミンC(50mg/日)が追加された。2008年9月には、CTスキャンによる再評価が行われ、散在する多数の両側性肺結節のサイズと数が顕著に減少したことを示した。しかしながら、11月までに、主な結節の1つが0.5〜0.8cmまで拡大していることがCTスキャンにより判明し、病気が進行していることを示した。1日目にゲムシタビン、続いて8日目にゲムシタビンおよびドセタキセルからなる新たな治療が決められた。しかしながら、最初にゲムシタビンを総量(900mg/m2)投与した後、患者の好中球減少(図9A)および血小板減少(図9D)が長引き、そのためその後の治療を中止しなければならなくなった。第2のサイクルでは、患者へのゲムシタビンの投与量を減らした(720mg/m2)が、再び長期に亘る好中球減少および血小板減少がみられ、当初のスケジュールを完遂することは困難であった。第3サイクルの前に、患者は化学療法前62時間と化学療法後24時間の絶食を行った。患者は、絶食を行ったか否かにかかわらず、副作用を報告することはなかったが、興味深いことに、血液検査は絶食−化学療法治療の間に顕著な改善を示した(図10)。最下点はあまり明瞭でないが、最高点はANC、リンパ球およびWBC数においてはかなり高くなっていく傾向が認められた(それぞれ図9A、B、C;表2)。さらに、第1および第2の化学療法サイクルの間、ゲムシタビン単独では、血小板数が急速かつ大幅に減少し、回復にそれぞれ11および12日を要した(表2)。しかしながら、最初の絶食−化学療法併用治療(第3サイクル)の後は、血小板数は減少せず、むしろ増加した(図9D)。先の化学療法単独治療と比べて、血小板の最下点はより低い値となったが、これは、3種類の化学療法薬の相加効果で説明できよう(図9D;表2)。それにもかかわらず、化学療法単独と比較すれば、絶食−化学療法治療の間は、血小板数の最高点と正常値への回復時間は、それぞれきわめて明瞭であり、かつ短縮された(図9D;表2)。複数回の絶食/化学療法後の血小板の、この顕著な改善と急速な回復は、患者が化学療法治療を完遂させるのを可能としたばかりでなく、この戦略が、血液細胞前駆体に対する保護効果を有し得るものであり、血小板および顆粒球の急速な再増殖を可能にすることを示唆している。
【0057】
症例7:
1998年7月にグリーソンスコアー8の前立腺腺癌と診断された66歳の白人男性。同年に実施したProstaScint検査では、右腸骨リンパ節に放射性トレーサーの明白な吸収がみられ、ステージD1の病気と一致した。1998年に、患者は初めて、酢酸リュープロリドとビカルタミドによる治療を受けた。1999年9月には、これらの薬剤を減らして、フィナステライドが処方された。2000年12月、CTスキャンから、病気の局所進行が疑われた。彼は、酢酸リュープロリドによる第2サイクルを開始し、また高線量率(HDR)近接照射療法、および強度変調放射線療法(IMRT)による外部ビーム照射も受けた。病気をコントロールするために、ビカルタミド、トリプトレリンパモ酸塩およびナンドロロンなどの複数の薬剤を使用する相補的治療を行った。しかしながら、治療を止める度に、彼のPSA値は急激に上昇した。2008年4月、Combidexスキャンにより、3×5cmの骨盤腔内腫瘤と左の水腎症が見つかり、同年6月には、新たなPSA値の逆戻りがあり、そしてまた新たなCTスキャン測定により、さらに左腸骨領域の腫瘤を確認したため、DTXによる治療が促された。患者は、化学療法前60〜66時間と化学療法後8〜24時間の絶食を行うことを決めた(表3)。絶食中、患者は意識が朦朧とし、血圧が大きく低下する経験をしたが、化学療法後の自己申告による副作用は、7回の連続DTXサイクル後に発現した足の軽度の振動感覚以外にはほとんど何もなかった(図12)。患者の検査結果を解析すると、ANC、WBC,血小板およびリンパ球数は正常の範囲に維持されていたが、赤血球とその関連パラメータ(ヘマトクリットおよびヘモグロビン)はそうでなかった(図11A〜G)。このことは、血液細胞の中には絶食依存性の保護の利益を受け得るものがあり、その他はそうでないことを示唆している。最後に、サイクルを通してPSA値は一貫して減少傾向を示したが、これは絶食が前立腺癌細胞の殺滅を妨げなかったことを立証するものである(図11H)。
【0058】
症例8:
ステージIIAの乳癌(HER2+)と診断された53歳の白人女性患者。2008年に行われた乳腺腫瘤摘出手術後、患者は21日毎に予定された4サイクルの化学療法を受けた。投与計画にはDXT(75mg/m2)およびCP(600mg/m2)が含まれた。4サイクルを通して、患者は化学療法実施前64時間と化学療法実施後24時間の絶食を行った。報告された副作用には、軽度の衰弱および軽度の短期記憶障害が含まれた(図13)
【0059】
症例9:
乳癌と診断され、補助化学療法が推奨された乳癌と診断された48歳の白人女性患者。彼女の化学療法は、21日スケジュールの4サイクルのCP(1100mg)併用ドキソルビシン(DXR)(110mg)と、それに続く、週1回の頻度による12週のパクリタキセルおよびトラスツズマブからなるものであった。患者は、最初の化学療法治療の前に、48時間の絶食を行ったが、副作用の言及はなかった。第2のサイクルの間、患者は化学療法前60時間と、薬剤投与後5時間の絶食を組み込んだ。興味深いことに、彼女は絶食を行うことにいかなる困難も示さなかった。彼女は脱毛と軽度の衰弱を経験したが、化学療法でよく報告されている他の副作用に苦しむことはなかった(図14)。
【0060】
症例10:
RER2陽性乳癌と診断された78歳の白人女性。診断時および複雑な乳腺腫瘤摘出手術の後、患者は乳房全切除術を受けた。G−CSF(Neulasta)を補ったCBDCA400mg(AUC=6)、DTX(75mg/m2)による6サイクルの補助化学療法と、その後の6か月までのトラスツズマブによる化学療法が、腫瘍学者により指示された(表3)。化学療法治療の期間を通して、患者は薬剤投与の前後に絶食を行った。患者は変動がある絶食法を採用したが、重度の副作用は経験しなかった(図16;表3)。さらに血液検査の結果では、WBC、ANC、血小板およびリンパ球の数は、治療期間を通して正常な範囲であった(図15A〜D)。
【0061】
経験した副作用の重篤度を調べるために、10人の患者全員からの自己申告評価を得た。化学療法毒性の副作用の多くは蓄積性のものであるため、調査データは、絶食および非絶食を伴った化学療法の組み合わせの、全ての副作用を含めて比較した(図17A)。National Cancer InstituteのCommon Toxicity Criteriaに基づいて、毒性のグレードを付けた。励まされたことに、化学療法−絶食サイクルはほとんど治療の後期で行われたにもかかわらず、患者全員から、比較的良好な自己申告の健康転帰が語られた。化学療法−絶食が行われたときはいつも、10人の患者全員から悪心、嘔吐、下痢、腹部痙攣および口内触痛の報告がされることは実質的になかったが、一方、アドリブ食が与えられた患者では6人のうち5人までが、これらの症状の中の少なくとも1つを報告した(図17A)。全ての化学療法治療と併用して常に絶食が行われた4人の患者は、大部分の副作用で低い重篤度を報告した(図12、13、14、16)。軽度の衰弱と脱毛のみが多くの患者から報告された。絶食またはアドリブ食の両方と共に化学療法を受けた6人の患者では、自己申告の副作用の重篤度は、患者が絶食したか、しなかったかにかかわらず、化学療法の最も近接した2つのサイクルのみを考慮して決めた。絶食と併用した場合には、自己申告の副作用の多くで、重篤度の一般的かつ大きな減少が見られた(図17B)。疲労および衰弱などの症状が顕著に減少する(それぞれ、p<0.001およびp<0.00193)一方、絶食を併用したサイクルが一貫して最後に実施されたにもかかわらず、嘔吐および下痢は、絶食との併用時には決して経験されなかった(図17B)。注目すべきことに、CTC基準の調査に含まれる副作用で、絶食により平均重篤度が上昇したものは全くなかった(図17A、17B)。
【0062】
小規模かつ不均質な患者グループのこの調査結果は、絶食は安全であり、かつ癌患者が十分に耐え得るものであって、複数の化学療法依存副作用を改善し得ることを示唆している。患者による副作用の判断には先入観が影響し得るであろうが、化学療法後の血液検査の結果が示す改善傾向は、絶食が、実際、種々の化学療法薬から保護し得ることを立証している。注目すべきことに、絶食が各種毒物およびストレスから酵母およびマウスを保護することが知られており(Rafaghello、LPNAS、2008;Matsson,M.著、Annual Rev.Nutr 2005)、したがって、多くの化学療法薬からヒトを保護する効果があることは、驚くべきことではないであろう。
【0063】
結果
メジアン年齢が61歳(44〜78歳の範囲)の、女性7人および男性3人の、化学療法を受けている10人の癌患者が、この研究に参加している。4人は乳癌を患い、2人は前立腺癌、そして4人は卵巣癌、子宮、肺の非小細胞癌または食道腺癌を患っていた。患者は全員、彼らを治療する腫瘍学者の監視の下、化学療法前に合計48〜140時間の絶食および/または化学療法後24〜56時間の絶食を自発的に行った。全ての症例で、絶食によく耐えることができた。空腹および血圧低下が、長い絶食の後に患者が言う共通の症状であった。
【0064】
考察
癌治療中に一般に推奨される食は、栄養不足を防止または高める、脂肪のない体を保護する、栄養が関係する副作用(食欲減退、悪心、味覚の変化、または腸の変化など)を最小にするという総合的な目標に基づく(Doyle、Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment、2006)。化学療法後の標準的な食とは対照的に、このシリーズの大部分の患者は、疲労、衰弱、悪心、嘔吐および腹部痙攣などの副作用が軽減されるため、絶食は実行可能であり、有益であると報告した。絶食中に、眩暈、空腹または頭痛などの軽い症状は生じたが、仕事を含む通常な活動を妨げるほどのレベルではなかった。
【0065】
癌患者においては、体重の減少が重大な関心事である。これは、癌自体、化学療法後の食欲減退、または胃腸障害によるものであり得る。注目すべきことに、この症例報告では、ほとんどの患者が絶食中の体重減少を急激に回復した。絶食と、絶食を行わない両方の化学療法を受けた患者では、化学毒性の副作用は、絶食−化学療法サイクル中に低減するようであった。この介入によって寛解されると思われる症状は、主として胃腸および体質に関するものであった。
【0066】
非悪性細胞においては、絶食/グルコース欠乏などの厳しい条件になると、生命体を刺激して成長/再生を抑制し、そのエネルギーを維持/修復に使用させ、生存の機会を最大にさせる(Longo. Nature. 2005)。したがって、IGF−Iなどの成長因子は減少し(Thiessen,J.P. Endocrine Rev 1994;Stephen R.Spindler Annual review of nutrition 2007)、熱ショックタンパク質(HSP70)やグルコース応答タンパク質(GRP78)などの小胞体ストレス応答(UPR)などのストレス耐性機構が亢進する(Mote,P.L. Mechanism Age Dev 1998;Lee,A.S. Trends in biochemical science 2001;Ramachandra K.Reddy J.ofBiological.Chemistry 2003)。正常な細胞はこれらの変化に応答し、一方、悪性の細胞は増殖信号の自給自足のために応答しない(Hanahan. Hallmarks of cancer. 2000)。したがって、絶食は、癌細胞に対する薬剤活性を低下させることなく、化学療法の毒性から正常細胞を選択的に保護するであろう。
【0067】
結果は、僅かに10人の患者による、未だ予備的なものであるが、それにもかかわらず、ここに示された副作用の大部分は蓄積性パターンを有し、かつ化学療法−絶食サイクルの大半が治療の後の方で行われているので、有望である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
実験2
図18を参照すると、絶食は悪性細胞の放射線照射に対する感受性を高める。マウス乳癌(4T1−luc)細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、放射線照射前の48時間、培地を低または高グルコース培地のいずれかに切り替えた(5または10Gy;図18A、18B)。生存率をMTT試験により測定した(図18C)。統計的分析をStudentのt−検定(N=60)により行った。
【0081】
図19を参照すると、絶食は悪性細胞の放射線照射に対する感受性を高める。マウスグリオーマ(GL26)細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種し(20,000/ウェル)、平衡化させ、48時間かけて培養密度に到達させた。その後、放射線照射前の48時間、培地を低または高グルコース培地のいずれかに切り替えた(5または10Gy;図19A、19B)。生存率をMTT試験により測定した(図19C)。統計的分析をStudentのt−検定(N=60)により行った。
【0082】
図20を参照すると、STS(絶食)はマウス乳癌細胞の放射線照射に対する感受性を高め、マウスにおける腫瘍のコントロール性を増大させる。体重20〜25gのメスのBALB/cマウスに同系の乳癌細胞(4T1−luc;2×105細胞/マウス)を皮下注射した。13日目には、腫瘍は300〜500mm3にまで著しく進んでおり、放射線照射(IR;5Gy)前48時間、マウスを絶食させて治療を開始した。1週間後に第2のSTS/IR(3Gy)サイクルを行った。毎日、Studentの検定により統計的分析を行った。*p<0.05。
【0083】
図21を参照すると、STS(絶食)はマウスグリオーマ癌細胞の放射線照射に対する感受性を高め、マウスにおける腫瘍のコントロール性を増大させる。体重25〜30gのメスのC57BL/6マウスに同系のグリオーマ癌細胞(GL26;3×105細胞/マウス)を皮下注射した。27日目には、腫瘍は500〜1000mm3にまで著しく進んでおり、放射線照射(IR;7.5Gy)前の48時間、マウスを絶食させて治療を開始した。1週間後に第2のSTS/IR(3Gy)サイクルを行った。毎日、Studentの検定により統計的分析を行った。*p<0.05。
【0084】
実験3
絶食により引き起こされるエネルギー源、成長因子および他の細胞外因子の多くの変化が、保護を阻害するだけでなく、多様な癌細胞の化学療法薬に対する感受性の増大を促進するという仮説を試験した。
【0085】
絶食が化学療法毒性を相乗的に増大させるか否かを調べるために、マウス乳癌(4T1)、メラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)およびマウス神経芽細胞腫(NXS2、Neuro−2−a)、ならびにヒト神経芽細胞腫(ACN)の細胞を使用して、各種のマウス癌モデルについて研究を行った。水の摂取は常に可能にした状態で、48〜60時間、餌を全く与えないことによって、短期の飢餓(STS)状態、すなわち絶食状態にした。予想通り、アドリブ食下で行われた化学療法は、皮下腫瘍の成長を遅らせた(図22A〜C)。注目すべきことに、絶食単独の2サイクル(各48時間)は、化学療法治療の2サイクルと同等の効果があった。絶食単独の効果は第2サイクル後までは維持されなかったが、皮下メラノーマ腫瘤(B16細胞)を有するマウスで、類似の効果が観察され(図22B)、また皮下グリオーマ腫瘤(GL26細胞)を有するマウスでも類似の効果が観察された(図22C)。グリオーマモデルの絶食は、対照(アドリブ食、化学療法行わず)群の腫瘍の成長が異常に速かったため、一度だけ行った。多用されている化学療法薬のドキソルビシン(DXR)またはシクロホスファミド(CP)のいずれかを絶食と併用すると、最大の治療係数が観察された(図22A〜C)。4T1乳癌では、2サイクルの絶食により、最後の治療から20日後でも、腫瘍サイズはCP治療単独群の半分未満であった(図22A)。同様の効果が、皮下グリオーマおよびメラノーマモデルで観察された(図22B〜C)。注目すべきことに、絶食中の体重の減少は、化学療法治療後でも、通常、3日間の給餌再開で回復しており(図23A〜D)、腫瘍および化学療法がマウスの体重減少に及ぼす影響を、絶食は増幅させないことが確認され、これは、患者の絶食および化学療法についての先の研究での観察と一致している。
【0086】
マウス乳癌細胞(4T1)、メラノーマ細胞(B16)、および2種類の神経芽細胞腫細胞株(NXS2およびNeuro−2a)を免疫適格マウスに静脈注射することによって得られた転移モデルで、化学療法に対する絶食の影響を調べた。絶食は化学療法の効果を高め、全ての転移癌マウスモデルを延命させた(図24〜28)。メラノーマ転移モデルでは、転移に対するSTSの影響を調べるために、早期にマウスを犠牲にした。興味深いことに、DXRと併用したSTSは、通常の給餌下でDXRを受けたマウスと比較して、B16メラノーマ細胞の種々の臓器への転移が減少した(図25)。例えば、肺への転移は、通常給餌下および絶食下でDXRを受けたマウスで、それぞれ100%および65%見つけられた。さらに、通常給餌のマウスと異なり、絶食マウスの肝臓または脾臓には転移が検出されなかった(図25)。
【0087】
悪性の転移癌に対する複数サイクルの絶食および化学療法の効果を調べるために、2匹の神経芽細胞腫転移マウスモデルの生存をモニターした。アドリブ食群では死亡率が100%であったのに対して、2サイクルの絶食と高用量DXR(16mg/Kg)治療を受けた、マウス神経芽細胞腫(NXS2)を有するマウスでは、その42%が長期生存(180日超)を達成した(図26)。進行性転移癌のモデルを作るために、マウス神経芽細胞腫細胞(Neuro−2a)をマウスに静脈注射し、化学療法を始める前の9日間、腫瘍を拡大させた。標準療法と併用したSTSの効果を神経芽細胞腫転移モデルで調べるために、この子供の悪性腫瘍の治療に広く使用されている療法(10mg/KgのDXR+8mg/Kgのシスプラチン、CDDP)をベースとした高用量カクテル化学療法を、絶食と併用した。注目すべきことに、アドリブ食と併用したカクテル化学療法で治療したマウスが75日目までに全て死亡したのに対し、カクテル化学療法と併用して絶食を行ったマウスの25%は長期生存(300日超)を達成した(図27)。化学療法を行わずに多サイクルの絶食(STS)を行うことが神経芽細胞腫の進行を遅延させるのに有効であり得るか否かを調べるだけでなく、ヒト腫瘍モデルに対する効果も調べるために、ヒトACN神経芽細胞腫細胞を皮下注射した免疫無防備状態のヌードマウスに、5サイクルの絶食を実施した(図29)。36日後、5サイクルの絶食は、腫瘍サイズを、通常給餌マウスで到達したそれの半分に抑えることができた(図29)。
【0088】
インビトロで絶食モデルを作るために、アドリブ食給餌マウスまたは48時間絶食マウスのいずれかから採取した血清を含む培地で、癌細胞をインキュベートした。マウスでの結果と一致して、絶食マウスからの血清を加えた培地で培養した乳癌細胞(4T1)は、アドリブ食給餌マウスからの血清でインキュベートした場合と比べて、DXRおよびCPの双方に対する感受性が増大した(図30)。グルコースおよび成長因子の顕著な減少(例えば、成長因子IGF−Iの75%の減少)は、絶食に対する2つの重要な細胞外応答であるので、通常給餌マウスおよび絶食マウスの血中グルコースの測定(図31)をベースに、異なるグルコース濃度および血清濃度で細胞をインキュベート、すなわち、低グルコース(0.5g/L)と低血清(1%FBS)、または通常グルコース(ヒトおよびマウス細胞株でそれぞれ1.0および2.0g/L)と通常血清(10%FBS)で、薬剤処理前24時間、また薬剤処理中もインキュベートした(図32)。インビボの研究と一致して、グルコースおよび血清の制限によって、マウスメラノーマ(B16)、グリオーマ(GL26)および乳癌(4T1)の細胞を含む、17種の癌細胞株のうち15種で、DXRおよび/またはCPに対する感受性が増大した(図32〜34)。さらに、グルコースまたは血清のいずれかだけを制限しても、癌細胞に対するDXRおよび/またはCPの毒性を増大させたが、両者の併用ほどの効果はなかった(図33、34)。絶食依存DSRに関係する数多くの成長因子の中で、IGF−Iの減少が重要な変化であり、またIGF−Iを点滴すると化学療法に対するマウスの保護を逆行させ得ることは先に報告した。ここでも、4T1およびB16細胞をIGF−Iで処理すると、グルコース制限によって引き起こされた癌細胞のDXRに対する感受性の増大を逆行させることが示されており、IGF−Iを減少させることにより、STSが癌細胞の感受性を一部増大させることを示唆している(図35)。
【0089】
このSTS依存増感作用が生じるメカニズムを調べるために、化学療法に暴露した癌細胞中のDNA一本鎖および二本鎖の断裂に及ぼす低グルコースの影響をコメットアッセイにより調べた。後世生物の主なエネルギー源であるグルコースは、悪性細胞に特に重要であり(ワールブルク効果として知られている現象)、血中グルコース値が高くなると癌の成長を促進する。グルコース値を、アドリブ食(2.0g/L)から、低血清条件(1%FBS)と併用した絶食後に到達する値(0.5g/L)にまで低下させる(絶食依存の、血中の成長因子およびタンパク質の減少を模擬するためでもある)と、化学療法単独の場合よりDNAの損傷が増加し、0.5g/Lのグルコースと化学療法の併用では、4T1乳癌細胞(図36A)およびB16メラノーマ細胞(図36B)の双方で、DNAの損傷が大きく促進され、20倍に増大した。その代わりに、GL26グリオーマ細胞の処理では、低グルコースの効果はドキソルビシンの効果と相加的であった(図36C)。
【0090】
絶食に応答して癌細胞中で生じる遺伝子発現の変化について、先入観のない見解を得るために、48時間絶食させたマウス、またはアドリブ食を給餌したマウスのいずれかの心臓、筋肉、肝臓、および皮下4T1乳癌の腫瘤についてゲノム全域にわたるマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は、絶食が細胞増殖に関係する遺伝子を特異的に制御することを明確に示している(図37)。さらに、自家移植した乳癌(4T1)では、翻訳およびリボソームの生合成/アセンブリー遺伝子の発現が顕著に増加するが、正常組織では、それらは抑制されるか、または軽微な影響を受けるに過ぎないことがわかった(図38)。この翻訳成分の増加と一致して、予め飢餓状態にした自家移植腫瘍の癌細胞(図39A)で、そしてまたインビトロでも、特にCP治療と併用した場合(図39B)でも、AktおよびS6Kリン酸化反応が促進され、eIF2αリン酸化反応が抑制された。しかしながら、この翻訳メカニズムの飢餓依存活性化にもかかわらず、癌細胞の倍加はインビトロでは大幅に減少しており(図40)、これはインビボでの絶食による癌の進行抑制と一致している(図36、37)。翻訳は細胞サイクルの進行および細胞成長と密接な繋がりがあり、急速に増殖している細胞では細胞エネルギーの50〜75%を消費し得るコスト高のプロセスである。4T1腫瘍が、成長に必要な栄養素の欠乏を翻訳の増大によって補おうとし、その結果、細胞死に至る以上のエネルギーを消費することはあり得る。
【0091】
ストレス耐性転写因子FOXO3aは、AKTにより不活性化されることが知られているので、その発現に及ぼす絶食の影響を4T1腫瘤と正常組織で調べた。FOXO3aは絶食に応答して特異的に制御されることがわかった。その発現は腫瘍で顕著に抑制され、正常臓器では誘発された(図41)。自家移植乳癌(4T1)中の、他の主要なストレス応答転写因子、核因子カッパB(NFkB)に及ぼす絶食の影響も明らかになった。RT−PCRは、絶食によるNFkBの特異的発現を示しており、その発現は腫瘍で大きく抑制されたが、正常臓器では顕著に発現した(図41)。NFkBによって発現が誘導される保護遺伝子の中で、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)は、UVAおよび酸化ストレスを含む各種の刺激に応答して顕著に誘導される、進化的に保存されている酵素である。絶食はまた、腫瘍中でHO−1の発現を抑制するが、正常臓器ではこの発現を大幅に増加させることがわかった。これは、FOXO3aおよびNFkBと一致している(図41)。Studentのt−検定;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001.
【0092】
FOXO3aおよびNFkBの両者は、HO−1および/またはMnSODによって酸化ストレスを低下させるため、CPによる治療後の標準条件下およびSTS条件下でのスーパーオキシド値を推定する方法として、ジヒドロエチジウム(DHE)の酸化を利用して4T1細胞における活性酸素種(ROS)の濃度を測定した(図42,43)。絶食/化学療法の後でより高レベルのDHE酸化が癌細胞中に検出され、酸化ストレスの増大と、スーパーオキシド値の上昇の可能性を示唆している。さらに、カスパーゼ−3の濃度が、STS後の同種移植腫瘍でのみ増加したが、正常な臓器ではインビボ(図44A)でもインビトロ(図44B)でもそうでなかったことがわかり、これは、細胞死の促進におけるオキシダントの作用と、カスパーゼ−3の活性を阻害する際のHO−1の役割に一致するものであった。癌細胞のグルコース制限により誘発される細胞死が、自己貪食によっても促進されることは従来示唆されている。低血清インキュベーションでのグルコース制限は、4T1細胞での自己貪食を増加させた(図45)が、クロロキンによって自己貪食を阻害すると、細胞死が一層増加した。このことは、低グルコースが自己貪食依存細胞死による細胞死を促進するものではないことを示すものであった(図46)。
【0093】
化学療法に対する絶食依存の増感作用におけるHO−1の役割を確認するために、絶食中にヘミンを使用してHO−1の発現を誘導したところ、増感は部分的に逆行し得ることがわかった(図47、48)。反対に、HO−1阻害剤の亜鉛プロトポルフィリン(ZnPP)が化学療法に対する癌細胞の感受性を高めた(図49、50)。両者を併せれば、これらの研究は、HO−1の発現の低下が、4T1乳癌細胞の絶食依存増感作用を引き起こすメカニズムに関与していることを示している。
【0094】
要約すると、細胞培養およびマウスにおいて、飢餓/絶食に応答して生じることが知られている、グルコース、IGF−Iの大幅な減少と、可能性のある他の多くの変化が、特に化学療法と併用した際に、広範な腫瘍細胞において成長の抑制と細胞死の顕著な増加をもたらすことが示された(図51)。これらの結果は、癌療法において複数回の絶食サイクルを行うことにより、患者の保護および癌に対する増感効果の両方が提供され得ることを示唆している。
【0095】
方法
細胞培養
4T1−lucマウス乳癌細胞は、SibTech社(Brookfield、CT)から購入した。B16−flucマウスメラノーマ細胞は、Noah Craft(UCLA)から提供された。GL26マウスグリオーマ、U87−MGヒト神経膠芽細胞腫の細胞は、Thomas Chen(USC)から提供された。PC3および22RV1ヒト前立腺癌細胞は、Pinchas Cohen(UCLA)から提供された。MCF−7およびC42Bヒト乳癌細胞と、HeLaヒト子宮頚癌細胞は、Amy Lee(USC)から提供された。LOVOヒト結腸癌細胞は、Darryl Shibata(USC)から提供された。NXS2およびNeuro−2aマウス神経芽細胞腫、ヒトACNおよびSH−SY5Y神経芽細胞腫、OVCARヒト卵巣癌、MZ−MELヒトメラノーマ、A431類表皮癌細胞は、Gaslini InstituteのLaboratory of Oncologyで常法により培養された。4T1にはLC3−GFPが安定に移入されており、これは、USCのJae Jungからの自己貪食の研究に対する親切な贈り物であった。全ての細胞は、常法により、DMEM10%FBS中、37℃、5%CO2下で維持した。自己貪食を回避するために、インビトロでのSTS中、5μMのクロロキン(CQ)で細胞を48時間処理した。HO−1の活性を調節するために、4T1細胞を、化学療法治療前の24時間と、化学療法治療中の24時間、10μMのヘミン(Sigma)、または20μMの亜鉛プロトポルフィリン(ZnPP;Sigma)で処理した。
【0096】
化学療法
ドキソルビシン(DXR;Bedford Laboratories、USA)およびシクロホスファミド(CP;Baxter、USA)は、インビトロおよびインビボで使用した。
【0097】
インビトロ化学療法は、化学療法を含有した培地で細胞を24時間処理することにより行った。薬剤の最適量は、細胞々の細胞株毎に決定した。インビボの研究では、尾側部静脈からDXRを静脈注射し、CPは腹腔内に注射した。
【0098】
癌のマウスモデル
University of Southern CaliforniaのInstitutional Animal Care and Use Committeeと、Italy、GenoaのNational cancer Research Instituteのライセンスおよび倫理委員会により、そしてまたItalian Ministry of Healthにより認められている手順にしたがって、全ての動物実験を行った。皮下癌マウスモデルの作成には、12週齢のメスBALB/c、12週齢のメスおよびオスのC57BL/6マウス、ならびに7週齢のヌードマウスに、4T1乳癌細胞、B16メラノーマおよびGL26グリオーマ細胞、ならびにACNヒト神経芽細胞腫細胞をそれぞれ注射した。転移癌マウスモデルでは、12週齢のメスBALB/c、12週齢のメスおよびオスのC57BL/6マウスに、それぞれ2×105の4T1、B16、GL26細胞を、尾側部静脈から静脈注射し、6週齢のメスA/Jマウスに、2×105のNXS2および1×106のNeuro−2a細胞を、尾側部静脈から注射した。注射の前に、成長の対数期にある細胞を集め、2×106細胞/mlでPBSに懸濁させ、100μL(2×105細胞/マウス)を腰背部へ皮下注射、または尾側部静脈から静脈注射した。ACNおよびNeuro−2a細胞は、5×107および1×107細胞/mlの濃度でPBSに懸濁させ、それぞれ100μL(5×106ACN細胞/マウスおよび1×106Neuro−2a細胞/マウス)を腰背部へ皮下注射、または尾側部静脈から静脈注射した。全てのマウスは、皮下腫瘍注射の前に体毛を剃り、また静脈注射の前に穏やかに温めて静脈を膨張させた。定期的に体重を測定し、腫瘍サイズをデジタルノギスにより測定した。腫瘍体積を次式:腫瘍体積(mm3)=(長さ×幅×高さ)×π/6(長さ、幅および高さの単位はmmである)により算出した。
【0099】
インビトロ絶食
絶食マウスおよび通常給餌マウスの血中グルコースの測定に基づき、グルコースおよび/または血清を制限することにより、細胞を飢餓状態にした(低濃度約0.5g/Lおよび高濃度約2.0g/L)。ヒト細胞株には、通常のグルコースは1.0g/Lであるとみなした。絶食培地に変更する前に、細胞をPBSで2回洗浄した。
【0100】
インビボ絶食
餌を完全に取り去ったが、水は自由に飲めるようにして、動物をトータルで48〜60時間、絶食させた。マウスは、共食い、食糞および残留飼料を減少させるために、一匹ずつ清潔な新しいケージに入れた。絶食の直前、直後に体重を測定した。
【0101】
インビトロ測定法
臭化メチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウム(MTT)を還元する能力によって細胞毒性を測定した。簡単に説明すると、MTTをPBS中に5mg/mlの濃度で溶解し、測定用として0.5mg/mlの最終濃度に希釈し、37℃で3〜4時間インキュベートした。ホルマザンの結晶を、37℃で100μlの溶解緩衝液(SDS15%(w/v)、ジメチルホルムアミド50%(v/v)、pH4.7)に終夜(16時間)溶解した。生存率は、対照細胞に対する処理細胞のMTT還元レベルのパーセントで表示した。吸光度は、マイクロプレートリーダーSpectraMax250(Molecular Devices)およびSoftMax Pro 3.0ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して570nmで読み取った。
【0102】
スーパーオキシド値は、蛍光染料DHE(ジヒドロエチジン;Invitrogen、USA)の酸化により推定した。細胞をスライド上で培養し、処理し、PBSで二回洗浄した後、DHE(10μM;0.1%DMSO中)と共に30分間のインキュベーションを行った。
【0103】
免疫ブロット法
氷冷PBS中で細胞を一度洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Roche)およびホスファターゼ阻害剤のカクテル(Sigma)を含むRIPAlysis緩衝液中に集めた。同じプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を添加したRIPAlysis緩衝液中で腫瘍細胞を均質化した。全溶解液からのタンパク質を8〜12%のSDS−PAGEに溶解し、GAPDH、Aktおよびホスフォ−Ser473Akt、P70S6キナーゼおよびホスフォ−Thr389p70S6キナーゼ、eIF2αおよびホスフォ−Ser51 eIF2α用抗体(1:1000〜2000、Cell Signaling Technology)使用し、免疫ブロット法により分析した。
【0104】
コメットアッセイプロトコール
細胞を培地中(10%FBSを含むDMEM/F12)、105/mlに希釈し、50μMのDXRにより37℃で1時間処理した。その後、氷冷PBSで細胞を1回洗浄し、製造業者が推奨する手順にしたがってCometAssay(Trevigen,Inc、Gaithersburg、MD)に供した。コメット像をNikon Eclipse TE300蛍光顕微鏡により取得し、ソフトウェアComet Score(TriTek Corp.、バージョン1.5)で分析した。遺伝子型/処理グループ毎に100〜300の細胞を採点した。
【0105】
血液の採取およびグルコース値の測定
マウスを2%イソフルラン吸入薬で麻酔し、左心室穿刺により血液を採取した。血液はK2−EDTAでコーティングしたチューブに採取し、血清を処理した(BD、USA)。血中グルコース値をPrecision Xtra血中グルコース値モニタリングシステム(Abbott Laboratories、USA)を使用して測定した。
【0106】
マイクロアレイ解析
Qiagen製RNeasyキット(カタログ番号74106)を使用し、製造者から示された手順にしたがって、組織からRNAを単離した。その後、IlluminaBeadchips(San Diego、CA)製のBD−202−0202チップにRNAをハイブリダイズした。先述したように、生データをZ正規化した。ANOVAフィルタリング(ANOVA p<0.05)を使用し、SAMプロトコールにしたがって、パラメータ化した有意性検定を行った。有意な遺伝子をそれぞれの対比較のために選択する。先述したPAGE法を使用して遺伝子セットの濃縮を試験した。Gene Ontology Database and Pathway Data Setにより提供される名前と説明に基づいて図面を選択した。さらに、Ingenuity Pathway Analysis System(Ingenuity Systems;Redwood City、CA)を使用し、遺伝子の系統的関係および標準経路の分析を行う。
【0107】
リアルタイムPCR
Qiagen製RNeasyキット(カタログ番号74106)を使用し、製造業者から示された手順にしたがって組織からRNAを単離した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(AB Applied Biosystems カタログ番号4368814)を使用してcDNAを合成し、SYBR Green PCR master mix(AB Applied Biosystems カタログ番号4309159)を使用してRT−PCRを行った。キャリブレータ遺伝子としてGAPDH遺伝子を使用した。分析したそれぞれの処理は、3つの生物学的レプリカを使用して行い、少なくとも3つの反応を使用して、発現を計算した。発現比を2−ΔΔCP法にしたがって計算した。
【0108】
実験4
化学療法を受けている癌患者の食計画を確認するために、様々な食組成をマウスモデルで試験した。目標点は、ホストの保護と広範な癌細胞の増感に有効であるとわかっている、血清グルコースおよび/またはIGF−1を20〜75%低下させることである。組成は、通常の体重を十分に維持することができるだけの栄養レベルが提供されるように選択される。毎日の食物摂取量、体重、および一般的健康(動作および身体的外見)がモニターされる。各給餌スケジュールの終わりには、グルコースおよびIGF−1の測定のために採血する。通常の総カロリーを有するが、特定のアミノ酸が不足している食(AA−D)では、5日間の給餌で(図52)、血清IGF−1(図52)とグルコース(図54A)は顕著に低下することがわかった。短期飢餓の後にAA−D食が続く再給餌パラダイム(図53および54B)で使用すれば、この有益な効果は増大する。
【0109】
2日間の極低カロリー食(VCM、通常のカロリー摂取量の6%)と、その後に続く1日のアミノ酸欠損食(AA)からなる食計画では、短期飢餓(STS)の場合より血清IGF−I値は顕著に低下した(図55A)。さらに、この食計画は化学療法薬、ドキソルビシン(DXR)からマウスを保護した(図55B)。ここでは、DXRは、2日間のVCM後、アミノ酸欠損食(AA)の再給餌開始時に注射される。
【0110】
低カロリーVegeGel製剤(野菜の推奨5食分に相当)は、短期飢餓(STS)に類似して血清グルコースおよびIGF−1を低下させることがわかった(図56AおよびB)。さらに、3日間のカロリー制限ケトン産生食(カロリーの90%が脂肪由来)では、血清IGF−1およびグルコースが低下することが実証された(図6AおよびB、緑色の三角形)。重要なことに、1日間のこのケトン産生食の後に2日間のVegeGel製剤を摂ると、ケトン産生食単独の場合よりグルコースおよびIGF−I低下に有益な効果が得られる(図57AおよびB、赤色の四角形)。
【0111】
以上、代表的な実施形態を記載したが、これらの実施形態により本発明の全ての可能な形態を記載することを意図するものではない。むしろ、この明細書で使用されている用語は、限定よりむしろ説明のための用語であり、本発明の精神と範囲から逸脱することなく各種の変更を加え得ることは理解される。さらに、各種実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらに他の実施形態を形成することも可能である。
【図1−1】
【図1−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の増殖または癌の症状を軽減する方法において、
a)癌患者を同定するステップと
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップと、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第1の所定期間が約1日であり、かつ前記第2の所定期間が約3日であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記第2の食は、前記患者に最大200kcal/日を与えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記第1の食は、前記患者に700〜1200kcal/日を与えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記患者に、第3の所定期間、第3の食を提供するステップであって、前記第3の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの50%を超えるカロリーを有する食品と補充組成物とを含み、前記補充組成物は必須アミノ酸を含むステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記第3の所定期間が少なくとも5日であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記補充組成物が、野菜抽出物源、オメガ−3/6必須脂肪酸、タンパク質および/または必須アミノ酸と非必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記患者の血清中のIGF−I濃度を、25〜90%減少させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記患者の血中グルコース濃度を、25〜75%減少させることを特徴とする方法。
【請求項10】
癌の化学療法薬に対する感受性を高める方法において、
a)癌患者を同定するステップ、および
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップ、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップ、および
d)前記患者が前記第2の食を少なくとも48時間摂取している間、またはその後に、化学療法薬剤を前記患者に投与するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、DNAアルキル化剤、オキシダントまたはトポイソメラーゼ阻害薬であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、メチルメタンスルホネート、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、またはメナジオンシスプラチン、カルボプラチン、および他のプラチナベースの薬剤、ゲムシタビン、ドセタキセル、5−FU、またはトポイソメラーゼ阻害薬であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、前記癌が、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、および前立腺癌、またはグリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫、褐色細胞腫であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、前記患者に前記第1の食および前記第2の食が与えられないとき、前記化学療法薬剤は、前記化学療法薬剤の標準の実施基準よりも長期間投与されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤の長期投与中、前記第1および前記第2の食が投与されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、前記患者に前記第1の食および前記第2の食が与えられないとき、前記化学療法薬剤は、前記化学療法薬剤の標準の実施基準よりも短期間投与されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、通常与えられる量より少なくとも10%多く投与されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、通常与えられる量より少なくとも10%少なく投与されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法において、ステップb)の前に、前記患者が化学療法に関連する毒性症状を示していることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項10に記載の方法において、ステップb)の前に、前記患者が末期と診断されていることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項10に記載の方法において、前記第1の所定期間が約1日であり、かつ前記第2の所定期間が約3日であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項10に記載の方法において、前記第2の食が最大200kcal/日であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項10に記載の方法において、前記患者に、第3の所定期間、第3の食を提供するステップであって、前記患者の通常の食を補う前記第3の食が補充組成物を含み、前記補充組成物は必須アミノ酸および他のアミノ酸を含むステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記第3の所定期間が少なくとも5日であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、前記補充組成物が、野菜抽出物源、オメガ−3/6必須脂肪酸、非必須アミノ酸、ミネラル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
癌の放射線療法に対する感受性を高める方法において、
a)癌患者を同定するステップ、および
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップ、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップ、および
d)前記患者が前記第2の食を少なくとも48時間摂取している間、またはその後に、放射線療法を前記患者に実施するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
癌患者に食事を提供するための、癌の増殖を抑制し、化学療法薬の効果を高める治療食パッケージであって、
前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記癌患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る食事に分割され、第1の所定期間に十分な量の食事を提供する第1の食のコンポーネントと、
前記癌患者に最大500kcal/日を与える食事に分割され、第2の所定期間に十分な量の食事を提供する第2の食事コンポーネントと、
必須アミノ酸および他の非必須アミノ酸、必須脂肪酸、ミネラル、ビタミン、並びに/または野菜抽出物を含む、第3の所定期間のための補充組成物と、
前記第1の食のコンポーネントおよび前記第2の食事コンポーネントを前記癌患者に与えるための使用説明書と
を含むことを特徴とする治療食パッケージ。
【請求項28】
請求項27に記載の治療食パッケージにおいて、前記第1の食のコンポーネント、前記第2の食事コンポーネント、および前記第3食コンポーネントはそれぞれ独立して、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含んでいることを特徴とする治療食パッケージ。
【請求項1】
癌の増殖または癌の症状を軽減する方法において、
a)癌患者を同定するステップと
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップと、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第1の所定期間が約1日であり、かつ前記第2の所定期間が約3日であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記第2の食は、前記患者に最大200kcal/日を与えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記第1の食は、前記患者に700〜1200kcal/日を与えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記患者に、第3の所定期間、第3の食を提供するステップであって、前記第3の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの50%を超えるカロリーを有する食品と補充組成物とを含み、前記補充組成物は必須アミノ酸を含むステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記第3の所定期間が少なくとも5日であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記補充組成物が、野菜抽出物源、オメガ−3/6必須脂肪酸、タンパク質および/または必須アミノ酸と非必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記患者の血清中のIGF−I濃度を、25〜90%減少させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記患者の血中グルコース濃度を、25〜75%減少させることを特徴とする方法。
【請求項10】
癌の化学療法薬に対する感受性を高める方法において、
a)癌患者を同定するステップ、および
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップ、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップ、および
d)前記患者が前記第2の食を少なくとも48時間摂取している間、またはその後に、化学療法薬剤を前記患者に投与するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、DNAアルキル化剤、オキシダントまたはトポイソメラーゼ阻害薬であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、メチルメタンスルホネート、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、またはメナジオンシスプラチン、カルボプラチン、および他のプラチナベースの薬剤、ゲムシタビン、ドセタキセル、5−FU、またはトポイソメラーゼ阻害薬であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、前記癌が、皮膚癌、結腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、および前立腺癌、またはグリオーマ、メラノーマ、神経芽細胞腫、褐色細胞腫であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、前記患者に前記第1の食および前記第2の食が与えられないとき、前記化学療法薬剤は、前記化学療法薬剤の標準の実施基準よりも長期間投与されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤の長期投与中、前記第1および前記第2の食が投与されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、前記患者に前記第1の食および前記第2の食が与えられないとき、前記化学療法薬剤は、前記化学療法薬剤の標準の実施基準よりも短期間投与されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、通常与えられる量より少なくとも10%多く投与されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、前記化学療法薬剤が、通常与えられる量より少なくとも10%少なく投与されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法において、ステップb)の前に、前記患者が化学療法に関連する毒性症状を示していることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項10に記載の方法において、ステップb)の前に、前記患者が末期と診断されていることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項10に記載の方法において、前記第1の所定期間が約1日であり、かつ前記第2の所定期間が約3日であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項10に記載の方法において、前記第2の食が最大200kcal/日であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項10に記載の方法において、前記患者に、第3の所定期間、第3の食を提供するステップであって、前記患者の通常の食を補う前記第3の食が補充組成物を含み、前記補充組成物は必須アミノ酸および他のアミノ酸を含むステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記第3の所定期間が少なくとも5日であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、前記補充組成物が、野菜抽出物源、オメガ−3/6必須脂肪酸、非必須アミノ酸、ミネラル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
癌の放射線療法に対する感受性を高める方法において、
a)癌患者を同定するステップ、および
b)前記患者に、第1の所定期間、第1の食を提供するステップであって、前記第1の食は、前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%は脂肪から得るステップ、
c)前記患者に、第2の所定期間、第2の食を提供するステップであって、前記第2の食は、前記患者に、最大500kcal/日を与えるステップ、および
d)前記患者が前記第2の食を少なくとも48時間摂取している間、またはその後に、放射線療法を前記患者に実施するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
癌患者に食事を提供するための、癌の増殖を抑制し、化学療法薬の効果を高める治療食パッケージであって、
前記患者が通常摂取するカロリーの最大でも50%を前記癌患者に与え、前記キロカロリーの少なくとも50%を脂肪から得る食事に分割され、第1の所定期間に十分な量の食事を提供する第1の食のコンポーネントと、
前記癌患者に最大500kcal/日を与える食事に分割され、第2の所定期間に十分な量の食事を提供する第2の食事コンポーネントと、
必須アミノ酸および他の非必須アミノ酸、必須脂肪酸、ミネラル、ビタミン、並びに/または野菜抽出物を含む、第3の所定期間のための補充組成物と、
前記第1の食のコンポーネントおよび前記第2の食事コンポーネントを前記癌患者に与えるための使用説明書と
を含むことを特徴とする治療食パッケージ。
【請求項28】
請求項27に記載の治療食パッケージにおいて、前記第1の食のコンポーネント、前記第2の食事コンポーネント、および前記第3食コンポーネントはそれぞれ独立して、野菜抽出物、ミネラル、オメガ−3/6必須脂肪酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含んでいることを特徴とする治療食パッケージ。
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【公表番号】特表2013−508411(P2013−508411A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535426(P2012−535426)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053821
【国際公開番号】WO2011/050302
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508230226)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053821
【国際公開番号】WO2011/050302
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508230226)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (8)
【Fターム(参考)】
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