説明

発光システム、発光方法及び発光用化学物質

本発明は、安価で安全に高効率で発光する新規な発光メカニズムに基づく発光システム、発光方法及び発光物質を提供することを目的とする。本発明は、第一の化学物質が、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化し発光することを特徴とする発光システムに関する。好ましくは、本発明は、第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る前記発光システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光システム、発光方法及び発光用化学物質に関する。また、本発明は、前記発光システム、発光方法及び発光用化学物質を利用した発光装置、好ましくは有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(EL)素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途に注目されており、また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されている。特に、素子材料が有機材料によって構成されている有機エレクトロルミネセンス(EL)素子は、低消費電力型のフルカラーフラットパネルディスプレイ(FPD)として製品化が進んでいる。
【0003】
有機エレクトロルミネセンス(EL)素子について、これまで、有機低分子型、有機高分子型ELとも精力的に研究が行われてきたが、発光効率が低く、フルカラーディスプレイを構築する上で、障害となっていた。
【0004】
この問題を解決する一つの手段として、励起三重項からのりん光を利用する素子の検討がなされている。励起三重項からのりん光を利用できれば、励起一重項からの蛍光を利用した場合に比べ原理的に少なくとも3倍の発光量子収率が期待できる。さらに、エネルギー的に高い励起一重項からのエネルギー的に低い励起三重項への項間交差による励起子の利用も考え合わせると、原理的には蛍光のみを利用した場合の25%に比べ4倍、即ち100%の発光量子収率が期待できる。
【0005】
これまでに、励起三重項からの発光を利用する研究例として、以下に示す材料が用いられた報告がある(例えば、M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999.75.4参照。)。
【0006】
Alq:アルミ−キノリノール錯体(tris(8−quinolinolato)aluminum)
α−NPD:N,N’−Di−naphthalen−1−yl−N,N’−diphenyl−biphenyl−4,4’−diamine
CBP:4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl
BCP:2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline
Ir(ppy):イリジウム−フェニルピリジン錯体(tris(2−phenylpyridine)iridium)
上記の他に、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子として、金属錯体を用い励起三重項からの発光を利用した例がある(例えば、特開平11−329739号公報、特開平11−256148号公報、特開平8−319482号公報等参照。)。
【0007】
しかし、りん光を利用できる化学物質は金属錯体を用いたものが大半であり、コスト等の問題が解決されていない。また、金属錯体には重金属が含まれるものが多い。したがって、金属錯体を用いない場合であっても、りん光を利用することができる化学物質が望まれている。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題に鑑み、安価で安全に、短波長(青色)から長波長(赤色)までの幅広い可視光領域において発光する発光メカニズムに基づく発光システム、発光方法及び発光物質を提供することを目的とする。また、本発明は、前記発光システム、発光方法及び発光物質を利用した発光装置、好ましくは有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、電荷の注入によって結合形成又は結合開裂反応が進行し、元の化学物質とは異なる化学物質に変化した後、高効率で発光し、さらに発光後に元の化学物質を再生する発光システムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、第一の化学物質が、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化し発光することを特徴とする発光システムに関する。
【0011】
また、本発明は、第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る上記発光システムに関する。
【0012】
また、本発明は、第一の化学物質に電荷を注入することにより、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質の酸化体又は還元体を生成し、さらに前記電荷と対となる電荷を注入することにより励起状態にある第二の化学物質を生成し発光させることを特徴とする化学物質の発光方法に関する。
【0013】
また、本発明は、第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る上記発光方法に関する。
【0014】
また、本発明は、第一の化学物質が、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化し発光することを特徴とする発光用化学物質に関する。
【0015】
また、本発明は、第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る上記発光用化学物質に関する。
【0016】
また、本発明は、第二の化学物質が、第一の化学物質からの結合生成反応を経て生成する上記発光用化学物質に関する。
【0017】
また、本発明は、第二の化学物質が、第一の化学物質からの結合開裂反応を経て生成する上記発光用化学物質に関する。
【0018】
また、本発明は、第二の化学物質が、結合開裂反応を経て第一の化学物質に戻る上記発光用化学物質に関する。
【0019】
また、本発明は、第二の化学物質が、結合生成反応を経て第一の化学物質に戻る上記発光用化学物質に関する。
【0020】
また、本発明は、第二の化学物質が、モノラジカル又はビラジカルを有する開殻種である上記発光用化学物質に関する。
【0021】
また、本発明は、第二の化学物質の基底多重度が三重項である上記発光用化学物質に関する。
【0022】
また、本発明は、下記式(1)で表される上記発光用化学物質に関する。
【化1】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R〜Rは、−R、−OR、−SR、−OCOR10、−COOR11、−SiR121314、および−NR1516(ただし、R〜R16は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R〜R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
【0023】
また、本発明は、下記式(4)で表される上記発光用化学物質に関する。
【化2】

(式中、R17〜R26は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R17〜R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R17〜R26は、−R27、−OR28、−SR29、−OCOR30、−COOR31、−SiR323334、および−NR3536(ただし、R27〜R36は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R27〜R36はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
【0024】
また、本発明は、下記式(7)で表される上記発光用化学物質に関する。
【化3】

(式中、R37〜R42は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R37〜R42はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R37〜R42は、−R43、−OR44、−SR45、−OCOR46、−COOR47、−SiR484950、および−NR5152(ただし、R43〜R52は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R43〜R52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。m及びnは、1〜3の整数である。)
【0025】
また、本発明は、下記式(10)で表される上記発光用化学物質に関する。
【化4】

(式中、R53〜R58は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R53〜R58はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R53〜R58は、−R59、−OR60、−SR61、−OCOR62、−COOR63、−SiR646566、および−NR6768(ただし、R59〜R68は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R59〜R68はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。mは、1〜3の整数である。)
【0026】
また、本発明は、上記発光用化学物質を含む発光装置に関する。
【0027】
また、本発明は、上記発光用化学物質を含むエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0028】
さらに、本発明は、上記発光用化学物質と、低分子化合物及び/又は高分子化合物とを含有する発光用混合物に関する。
【0029】
本願の開示は、2003年12月22日に出願された特願2003−424882号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
これまで有機EL素子においては、発光を司る化学物質は電荷を持った状態や励起状態において化学構造が変化することはなく、またそのような化学構造の変化は望ましくないものであった。これは化学構造の変化によって異なる物質となり、発光を司る化学物質が減少するため、有機EL素子の寿命や効率に悪影響を及ぼすためであった。
【0031】
一方、本発明者らはこのような前例にとらわれることなく鋭意検討した結果、積極的に化学構造の変化を利用した発光システムを構築することができた。すなわち、本発明の発光システムは、第一の化学物質(元となる化学物質)から、第二の化学物質(元となる化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質)を生成し、発光させることを特徴とする発光システムである。本発明において、第二の化学物質(元となる化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質)とは、好ましくは第一の化学物質(元となる化学物質)の同一分子内における結合開裂反応、結合生成反応等の化学反応を経て化学構造が変化した化学物質をいう。
【0032】
本発明の発光システムに基づき、例えば、第一の化学物質に電荷(正孔又は電子)を注入することにより同一分子内における結合開裂反応、結合生成反応等の化学反応を引き起こし、元の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質の酸化体又は還元体を生成し、さらにこの酸化体又は還元体に対となる電荷を注入することにより、励起状態にある第二の化学物質を生成し、発光させる化学物質の発光方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明の発光システムに用いられる化学物質は、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化した後に発光する化学物質であり、好ましくは同一分子内において結合開裂反応、結合生成反応等の化学反応を経て化学構造が変化した後に発光する化学物質である。このような化学物質として、例えば、シクロプロパン、メチレンシクロプロパン、ビシクロプロパン等の小員環化合物類、ヘキサジエン等のジオレフィン類などが挙げられる。なお、小員環化合物類は、単環式であっても多環式であっても良い。
【0034】
本発明の発光システムにおいて、変化した後の第二の化学物質は、発光後速やかに第一の化学物質に戻ることが好ましい。
【0035】
また、第二の化学物質は、開殻種であることが好ましく、開殻種はモノラジカル又はビラジカルであることが好ましい。
【0036】
本発明の発光システムにおいて、第二の化学物質の基底多重度は、一重項、二重項又は三重項であり、本発明においては三重項であることが高い発光量子収率を得る上で好ましい。
【0037】
図1及び2に、本発明の発光システムの一実施態様を示す。図1に示すように、元になる化学物質(化合物1)は、例えば、有機EL素子の場合、電極からの電荷注入の後、速やかに結合開裂反応を起こすことによって発光を司る化学物質(元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質)の酸化体(化合物2+)を生成する。この酸化体に対となる電荷が注入されることで励起子(化合物2*)が生成され、発光する。発光後に基底状態となった元の化学構造と異なる化学構造を有する化学物質(化合物2)は、速やかに結合生成反応が進行することで元の化学物質(化合物1)を再生するものである。
【0038】
図1にはホールが注入されてカチオンラジカルが生成し、結合開裂反応が進行するものを示したが、注入される電荷や化合物の電荷はこれと異なっていてもよい。また、元になる化学物質(化合物1)から発光を司る化学物質(化合物2)を発生させるまでの同一分子内における化学反応の数は、1から10が望ましく、1から5がさらに望ましく、1から2が最も望ましい。発光後に元になる化学物質を再生するまでの化学反応の数は、1から10が望ましく、1から5がさらに望ましく、1から2が最も望ましい。化学反応の数が多すぎると副反応が進行しやすく、発光効率が低下する傾向がある。
【0039】
また、本発明の発光システムでは、図2に示すように結合開裂反応と結合生成反応の順序が図1に示す例と異なっていてもよい。すなわち、元になる化学物質(化合物1)は、例えば有機EL素子の場合、電極からの電荷注入の後、速やかに結合生成反応を起こすことによって発光を司る化学物質(元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質)の酸化体(化合物2+)を生成する。この化学物質に対となる電荷が注入されることで励起子(化合物2*)が生成し、発光する。発光後に基底状態となった元の化学構造と異なる化学構造を有する化学物質(化合物2)は、速やかに結合開裂反応が進行することで元の化学物質を再生するものである。
【0040】
図2にはホールが注入されてカチオンラジカルが生成し、結合生成反応が進行するものを示したが、注入される電荷や化合物の電荷はこれと異なっていてもよい。また、元になる化学物質(化合物1)から発光を司る化学物質(化合物2)を発生させるまでの同一分子内における化学反応の数は、1から10が望ましく、1から5がさらに望ましく、1から2が最も望ましい。発光後に元になる化学物質を再生するまでの化学反応の数は、1から10が望ましく、1から5がさらに望ましく、1から2が最も望ましい。化学反応の数が多すぎると副反応が進行しやすく、発光効率が低下する傾向がある。
【0041】
次に本発明の化学物質について具体的な化合物例を挙げて説明する。以下に示す化合物は、上述した発光システム、発光方法及び発光用化学物質に適用することが可能であり、好ましくは発光装置、特に好ましくは有機EL素子に用いられる。
【0042】
式(1)で示す化合物(図1における化合物1)は、陽極からホールが注入されることで速やかに結合開裂反応を起こし、式(2)で示す化合物(図1における化合物2+)を生成する。さらに陰極から電子が注入されると式(3)で示す化合物(図1における化合物2)の励起状態を生成し、式(3)で示す化合物が基底状態へ緩和する際に発光が起こる。ここで特徴的な点は式(3)で示す化合物の基底状態は3重項であり、よって、式(3)で示す化合物は励起状態において生成した75%の3重項励起子を、効率よく利用することができる点である。発光後、式(3)で示す化合物は速やかに結合生成反応を起こし、式(1)で示す化合物を再生する。
【0043】
【化5】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R〜Rは、−R、−OR、−SR、−OCOR10、−COOR11、−SiR121314、および−NR1516(ただし、R〜R16は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R〜R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基等を挙げることができる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ビフェニル残基、ターフェニル残基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等を挙げることができる。ヘテロアリール基としては、フラン残基、チオフェン残基、ピロール残基、オキサゾール残基、チアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、ピリミジン残基、ピラジン残基、トリアジン残基、キノリン残基、キノキサリン残基等を挙げることができる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基等を挙げることができる。ヘテロアリールオキシ基としては、ピリジノキシ基、キノリノキシ基等を挙げることができる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−tert−ブチルフェニルチオ基等を挙げることができる。ヘテロアリールチオ基としては、ピリジニルチオ基、キノリニルチオ基等を挙げることができる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ジフェニルメチル基等を挙げることができる。
【0045】
−Rの例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ビフェニル残基、ターフェニル残基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フラン残基、チオフェン残基、ピロール残基、オキサゾール残基、チアゾール残基、イミダゾール残基、ピリジン残基、ピリミジン残基、ピラジン残基、トリアジン残基、キノリン残基、キノキサリン残基、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ジフェニルメチル基、またはこれらがフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等で置換されたハロゲン置換体を挙げることができる。−ORの例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基を挙げることができる。−SRの例としては、メルカプト基、メチルチオ基、エチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−tert−ブチルフェニルチオ基を挙げることができる。−OCOR10の例としては、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基を挙げることができる。−COOR11の例としては、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基を挙げることができる。−SiR121314の例としては、シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基を挙げることができる。−NR1516の例としては、アミノ基、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基を挙げることができる。
【0046】
本発明で用いた式(3)で示した元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質は、励起3重項から基底3重項への遷移の発光を利用しており、りん光発光とは異なっている。この遷移はスピン許容であるため、りん光発光よりも効率よく進行する。実際、式(3)で表される化合物を用いた場合では発光量子収率は1〜99%と高い値までも得ることが可能であり、有機EL素子の発光材料に適した材料である。
【0047】
また、式(1)〜(3)中のRで表される置換基を変化させることで発光波長を400nmから800nmまで変化させることができることから、任意の発光色を発光する物質を得ることができる。具体的には、式(1)〜(3)中のRで表される置換基の共役長が長い場合、また、電子供与性である場合には発光波長が長波長となる傾向がある。また、式(1)〜(3)中のRで表される置換基は、カチオン及びラジカルを安定化できるような共役系を持った置換基であることが好ましい。
【0048】
式(1)〜(3)において、R〜Rのいずれか一つ以上がアリール基であることが好ましい。また、アリール基は−R又は−ORで表される置換基を有していてもよい。−Rとしてはハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。−ORとしてはアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。
例えば、式(1)〜(3)において、R〜Rを水素原子、R及びRをメトキシフェニル基とすることにより、高い発光量子収率で緑色の発光色を得ることができる。また、式(1)〜(3)において、R〜Rのいずれかをアリール基とする場合、フルオロ基をアリール基へ導入することにより発光強度を増加させることができ好ましい。さらに、式(1)〜(3)において、R〜Rを水素原子、Rをナフチル基、Rをフェニル基とすることにより、高い発光量子収率で赤色の発光色を得ることができる。赤色の発光色は、従来の金属錯体では得ることが難しい発光色であり特に好ましい。
【0049】
上記式(1)で示す化合物は、オレフィン類を出発物質とし、カルベン付加反応、メチル化反応、塩基による脱臭化水素反応を順次適用することで合成することができる。
【0050】
次に本発明の式(4)で示す化合物(図2における化合物1)は、陽極からホールが注入されることで速やかに結合生成反応を起こし、式(5)で示す化合物(図2における化合物2+)を生成する。さらに陰極から電子が注入されると式(6)で示す化合物(図2における化合物2)の励起状態を生成し、式(6)で示す化合物の基底状態へ緩和する際に発光が起こる。発光後、式(6)で示す化合物は速やかに結合開裂反応を起こし、式(4)で示す化合物を再生する。
【0051】
【化6】

(式中、R17〜R26は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R17〜R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R17〜R26は、−R27、−OR28、−SR29、−OCOR30、−COOR31、−SiR323334、および−NR3536(ただし、R27〜R36は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R27〜R36はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
17〜R26の例としては、上述のR〜Rと同様のものを挙げることができ、R27〜R36の例としては、上述のR〜R16と同様のものを挙げることができる。
【0052】
式(4)〜(6)中のRで表される置換基は、カチオン及びラジカルを安定化できるような共役系を持った置換基であることが好ましい。
【0053】
上記式(4)で示す化合物は、1,4−ジケトン類へのWittig反応により合成することができる。
【0054】
また、本発明の式(7)で示す化合物(図1における化合物1)は、陽極からホールが注入されることで速やかに結合開裂反応を起こし、式(8)で示す化合物(図1における化合物2+)を生成する。さらに陰極から電子が注入されると式(9)で示す化合物(図1における化合物2)の励起状態を生成し、式(9)で示す化合物の基底状態へ緩和する際に発光が起こる。発光後、式(9)で示す化合物は速やかに結合生成反応を起こし、式(7)で示す化合物を再生する。
【0055】
【化7】

(式中、R37〜R42は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R37〜R42はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R37〜R42は、−R43、−OR44、−SR45、−OCOR46、−COOR47、−SiR484950、および−NR5152(ただし、R43〜R52は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R43〜R52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。m及びnは、1〜3の整数である。)
37〜R42の例としては、上述のR〜Rと同様のものを挙げることができ、R43〜R52の例としては、上述のR〜R16と同様のものを挙げることができる。
【0056】
式(7)〜(9)中のRで表される置換基は、カチオン及びラジカルを安定化できるような共役系を持った置換基であることが好ましい。
【0057】
上記式(7)で示す化合物は、m=1、n=3の場合、トシルヒドラゾン類へ三フッ化ホウ素を作用させてジアゼン類へ誘導し、加熱により脱窒素させることにより合成することができる。m=2、n=2の場合、式(4)に光増感電子移動反応を行うことにより合成することができる。
【0058】
さらに、本発明の式(10)で示す化合物(図1における化合物1)は、陽極からホールが注入されることで速やかに結合開裂反応を起こし、式(11)で示す化合物(図1における化合物2+)を生成する。さらに陰極から電子が注入されると式(12)で示す化合物(図1における化合物2)の励起状態を生成し、式(12)で示す化合物の基底状態へ緩和する際に発光が起こる。発光後、式(12)で示す化合物は速やかに結合生成反応を起こし、式(10)で示す化合物を再生する。
【0059】
【化8】

(式中、R53〜R58は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R53〜R58はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R53〜R58は、−R59、−OR60、−SR61、−OCOR62、−COOR63、−SiR646566、および−NR6768(ただし、R59〜R68は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R59〜R68はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。mは、1〜3の整数である。)
53〜R58の例としては、上述のR〜Rと同様のものを挙げることができ、R59〜R68の例としては、上述のR〜R16と同様のものを挙げることができる。
【0060】
式(10)〜(12)中のRで表される置換基は、カチオン及びラジカルを安定化できるような共役系を持った置換基であることが好ましい。
【0061】
上記式(10)で示す化合物は、m=1の場合、オレフィン類へのカルベン付加反応により合成することができる。m=2、3の場合、1,4−ジケトン類または1,5−ジケトン類へMc−Murry反応を行ってシクロブテン類またはシクロペンテン類へ誘導し、水素付加反応によって合成することができる。
【0062】
本発明の化学反応を伴う発光システムは、元になる化学物質が金属原子を含有していないため、低価格で提供することが可能である。また、本発明の発光システムにおいては、元の化学物質と、実際に発光する化学物質とが異なる化学構造を有することから、実際に発光する化学物質は元になる化学物質の吸収波長とは大きく異なる発光波長を示すものである。本発明の発光システムにおいては、透明性の高い材料として、化学反応によって発光波長が長波長側にシフトする化学物質を好ましく使用することができる。
【0063】
本発明の化学反応を伴う発光システムは、単独でエレクトロルミネセンス素子の発光層として使用することができる。また、ホスト材料中に分散させた状態でもエレクトロルミネセンス素子の発光層として使用することができる。ホスト材料としては、アノード(陽極)からホールを受け取る機能、カソード(陰極)から電子を受け取る機能、ホールと電子を移動する機能、ホールと電子を本発明の化学反応を伴う発光システムに授与する機能があれば特に限定されず、例えば金属錯体又はトリフェニルアミン誘導体などが使用可能である。特に、ホールの注入によって発光を担う化学物質の酸化体を生成する場合、ホスト材料としてホールの注入効率、ホール輸送能が高い材料が望ましい。
【0064】
本発明の発光用化学物質と、低分子化合物及び/又は高分子化合物とを含む混合物は、有機EL素子の製造に好ましく使用される。
【0065】
本発明の発光用化学物質と低分子化合物とを含む混合物としては、Alq等の金属錯体や、α−NPD等のトリフェニルアミン誘導体等を混合させた組成物を挙げることができる。
【0066】
本発明の発光用化学物質と高分子化合物とを含む混合物としては、上記化合物に共役あるいは非共役ポリマーに混合させたポリマー組成物を挙げることができる。ポリマー組成物として用いることができる共役あるいは非共役のポリマーとしては、例えば、置換または非置換であってもよいポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリトリフェニルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリイミド誘導体、ポリアミドイミド誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリアクリル誘導体、ポリスチレン誘導体などが挙げられる。また、これら共役あるいは非共役のポリマーとしては、必要に応じてその他モノマー単位として、置換または非置換であってもよいアリーレン及び/又はヘテロアリーレンモノマー単位であるベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、クリセン、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチオフェンなど、置換または非置換のトリフェニルアミン骨格を有するモノマー単位であるトリフェニルアミン、N−(4−ブチルフェニル)−N−ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(2−ナフチル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどを共重合したポリマーを用いてもよい。
【0067】
本発明の発光用化学物質と、低分子化合物との混合物において、低分子化合物に対して本発明の発光用化学物質は、重量パーセント濃度にして0.1から50%が好ましく、0.5から30%がさらに好ましく、1から10%が最も好ましい。低分子化合物として、例えばα−NPDと混合する場合、2から10%が最も好ましい。
【0068】
本発明の発光用化学物質と、高分子化合物との混合物において、高分子化合物に対して本発明の発光用化学物質は、重量パーセント濃度にして0.1から50%が好ましく、0.5から30%がさらに好ましく、1から10%が最も好ましい。高分子化合物として、例えばポリビニルカルバゾール誘導体と混合する場合、2から10%が最も好ましい。
【0069】
本発明の発光用化学物質と、低分子化合物及び高分子化合物との混合物において、低分子化合物と高分子化合物の総量に対して本発明の発光用化学物質は、重量パーセント濃度にして0.1から50%が好ましく、0.5から30%がさらに好ましく、2から10%が最も好ましい。例えばポリビニルカルバゾール誘導体とオキサジアゾール誘導体との混合物へ混合する場合、2から10%が最も好ましい。
【0070】
さらに、本発明においては、本発明の発光用化学物質を上記の共役あるいは非共役ポリマー等の高分子化合物中に導入した高分子化合物を、有機EL素子の製造等に使用することもできる。
【0071】
本発明の化学反応を伴う発光システムを用いた素子、具体的には本発明の発光用化学物質とポリマーとの混合物からなる本発明のエレクトロルミネセンス素子の一般構造は、米国特許第4,539,507号および米国特許第5,151,629号に記載されている。また、ポリマー含有のエレクトロルミネセンス素子については、例えば、国際公開WO第90/13148号または欧州特許公開第0 443 861号に記載されている。
【0072】
これらは通常、電極の少なくとも1つが透明であるカソード(陰極)とアノード(陽極)との間に、エレクトロルミネセント層(発光層)を含むものである。さらに、1つ以上の電子注入層および/または電子移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とカソードとの間に挿入され得るもので、および/または、1つ以上の正孔注入層および/または正孔移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とアノードとの間に挿入され得るものである。カソード材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba,Mg/Ag、LiF、CsFなどの金属または金属合金であるのが好ましい。アノードとしては、透明基体(例えば、ガラスまたは透明ポリマー)上に、金属(例えば、Au)または金属導電率を有する他の材料、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)を使用することもできる。
【0073】
本発明の発光用化学物質をエレクトロルミネセンス素子の発光層材料として使用するためには、単体、または混合物の溶液から、または、固体の形状で基体に、当業者に公知の方法、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、インクジェット法、キャスト法、浸漬法、印刷法またはスピンコーティング法などを用いて積層することにより達成することが可能で、これらに特に限定されることはない。このような積層方法は、通常、−20〜+500℃の温度範囲、好ましくは10〜200℃、特に好ましくは15〜100℃で実施することができる。また、積層されたポリマー溶液の乾燥は、通常、常温乾燥、ホットプレートによる加熱乾燥などで実施することができる。
溶液に用いられる溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等を用いることができる。
【0074】
さらに、本発明の化学反応を伴う発光システムは、サーモルミネセンスを用いた発光装置に利用することができる。サーモルミネセンスを用いた発光装置は、エネルギー線の照射によって固体中で元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質の酸化体または還元体を生成させ、加熱することによって固体を溶解させて対となる電荷と結合させ、発光させるものである。
【0075】
サーモルミネセンスを用いた発光装置において、本発明の化学物質は種々の溶媒に溶解させた状態で使用することができる。溶媒は可視部が透明なものなら特に限定されないが、固体の透明性が高い1−クロロブタン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルシクロヘキサンが好適に用いられる。
【0076】
元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質の酸化体または還元体を生成させるためのエネルギー線の照射は、溶媒の融点以下ならば実施することが可能である。しかし、副反応を押えるためには−78℃以下、さらに好ましくは−100℃以下、最も好ましくは−180℃以下の低温で行うことが好ましい。
【0077】
元の化学物質とは異なる化学構造を有する化学物質の酸化体または還元体を生成させるためのエネルギー線としては、元の化学物質をイオン化させることができれば使用することができる。例えば紫外線、真空紫外線、エックス線、電子線、ガンマ線等を用いることができるが、ガンマ線の照射が最も好ましい。
【0078】
さらに、本発明の発光システムは、上述した有機エレクトロルミネセンス素子、サーモルミネセンスを用いた発光装置の他、その発光現象が十分に検出可能な条件の下で、例えば、各種診断薬の検出剤、各種発光プローブ、非常用光源等に使用することができる。その場合、必要に応じて、本発明の発光物質を、発光現象を損なわないような条件で、各種被検出物質に結合させることもできる。被検出物質としては、例えば、抗体、抗原、生体内タンパク質、合成タンパク質等の各種タンパク質、多糖類、脂質、DNA、RNA等の核酸などの生体関連物質、各種高分子材料、その成形体などである。
【0079】
また、例えば癌等のミサイル療法の治療用などとして適用することも可能である。具体的には、本発明の発光物質で癌細胞等の表面抗原に対する特異的抗体を修飾し、これを体内に入れ、癌細胞に抗原抗体反応によって結合させた状態で体外から微量のγ線等を照射して前記発光物質を発光させ、その温熱効果により癌細胞を死滅させることができる。
【0080】
本発明の発光システム、発光方法及び発光用化学物質を用いることにより、短波長(青色)から長波長(赤色)までの幅広い可視光領域において発光する種々の発光装置を提供することができる。例えば、本発明の発光システム、発光方法及び発光用化学物質を有機エレクトロルミネセンス素子に適用した場合、金属錯体を用いない場合であっても、短波長(青色)から長波長(赤色)までの幅広い可視光領域において高効率(内部量子効率)、高輝度で発光する新規な素子を提供することが可能である。特に、元の化学物質の吸収波長が、元の化学物質とは異なる構造を有する化学物質の発光波長よりも短い場合、光が元の化学物質に吸収されることがなく、高い外部量子効率を有する素子を提供することが可能である。
【0081】
本発明の発光用化学物質は、新規な有機エレクトロルミネセンス材料として好適に用いられる。本発明において特定の構造式で表される化学物質は、金属を含まない安価で安全な化合物であり、また、基底状態が三重項であるため内部量子効率が高く、有機エレクトロルミネセンス素子をはじめとし種々の発光装置に使用することができる。
【実施例】
【0082】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらに限定されるものではなく、上述の種々の化合物を用いた場合にも高効率で発光する発光装置を提供することができる。
【0083】
(合成例1)1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパンの合成
1,1−ビス(4−メトキシフェニル)エチレン(4.8g、20mmol)、ブロモホルム(50.5g、200mmol)、50%水酸化ナトリウム水溶液(16g、200mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(185mg、1mmol)を三角フラスコに入れ、室温で2日間激しく攪拌した。100mLの水を加えて塩化メチレンで抽出し、溶媒を留去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2−ジブロモシクロプロパンを得た。収率76%。融点173−175℃。
【0084】
得られた1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2−ジブロモシクロプロパン(6.2g、15mmol)、ヨードメタン(4.4g、30mmol)、乾燥THF100mLを丸底フラスコに入れ、窒素置換した。−78℃に冷却しながらn−ブチルリチウム溶液(11mL、18mmol)を滴下し、−78℃で6時間攪拌した。室温に戻した後100mLの水に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。溶媒を留去して粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−ブロモ−2−メチルシクロプロパンを得た。収率82%。融点97−104℃。
【0085】
丸底フラスコに得られた1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−ブロモ−2−メチルシクロプロパン(4.3g、12mmol)、乾燥ジメチルスルホキシド(100mL)を入れ、窒素置換した。カリウム−t−ブトキシド(1.4g,12mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。100mLの水に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーと再結晶により精製することで1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(化(13))を得た。収率95%。融点31−32℃。H NMR(200MHz,CDCl)δ1.81(dd,J=2.6,2.0Hz,2H),3.77(s,6H),5.66(t,J=2.0Hz,1H),5.77(d,J=2.6Hz,1H),6.81(AA’BB’,J=8.0Hz,4H),7.20(AA’BB’,J=8.0Hz,4H)。
【0086】
【化9】

【0087】
(合成例2)1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
丸底フラスコにマグネシウム(1.94g、80mmol)を入れ,窒素置換した。50mLの乾燥THFに溶かしたブロモベンゼン(11g、70mmol)を攪拌しながらゆっくりと滴下し、黒色のグリニヤル試薬を得た。ここに50mLの乾燥THFに溶かした2−アセトナフトン(8.51g、50mmol)をゆっくりと滴下し、室温で1時間攪拌した。さらに2時間加熱還流したのち室温まで冷却し、水を加えた後にエーテルで抽出した。溶媒を留去して得られた油状物を丸底フラスコに移し、THF10mL,20%硫酸水溶液50mLを加え、12時間加熱還流した。室温まで冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和を行った。エーテルで抽出し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより1−(2−ナフチル)−1−フェニルエチレンを得た。収率75%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);5.56(s,1H),5.60(s,1H),7.33−7.86(m,12H)。
【0088】
丸底フラスコに得られた1−(2−ナフチル)−1−フェニルエチレン(8.64g、37.5mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(10mg)、ブロモホルム(28.6g、113mmol)を入れ、窒素置換した。攪拌しながら50%水酸化ナトリウム水溶液(9mL)を加え、室温で18時間攪拌した。希硫酸で中和した後、エーテルで抽出した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで生成することで1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2,2−ジブロモシクロプロパンを得た。収率44%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);2.55(AA’BB’,J=7.8Hz,1H),2.62(AA’BB’,J=7.8Hz,1H),7.18−7.90(m,12H)。
【0089】
丸底フラスコに得られた1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2,2−ジブロモシクロプロパン(4.02g、10mmol)、ヨードメタン(2.84g、20mmol)、乾燥THF(35mL)を入れ、窒素置換した。−78℃に冷却ながらn−ブチルリチウム溶液(7.7mL,12mmol)をゆっくり滴下し、2時間攪拌した。この混合物を室温に戻し、さらに1時間攪拌した。水を加えた後、エーテルで抽出した。溶媒を留去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで生成することで1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−ブロモ−2−メチルシクロプロパンを得た。収率98%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.78−1.81(m,3H),2.03−2.17(m,2H),7.16−7.91(m,12H)。
【0090】
丸底フラスコにカリウム−t−ブトキシド(1.55g、13.8mmol)、乾燥ジメチルスルホキシド(35mL)を入れ、窒素置換した。ここに1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−ブロモ−2−メチルシクロプロパン(3.3g、9.8mmol)を乾燥ジメチルスルホキシド(10mL)に溶かした溶液をゆっくり滴下した。室温で2時間攪拌し、水を加えてエーテルで抽出した。溶媒を留去し、ヘキサンから再結晶することで1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパン(化(14))を得た。収率67%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.99(s,2H),5.65(s,1H),5.86(s,1H),7.21−7.80(m,12H)。
【0091】
【化10】

【0092】
(合成例3)1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
スチレンを出発原料とし、合成例1と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.20(m,1H),1.71(m,1H),2.58(m,1H),5.56(s,2H),7.10−7.28(m,5H)。
【0093】
(合成例4)1−メチル−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
α−メチルスチレンを出発原料とし、合成例1と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.38−1.40(m,2H),1.53(s,1H),5.47(s,1H),5.58(s,1H),7.11−7.32(m,5H)。
【0094】
(合成例5)1−(1−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
ブロモベンゼンと1−アセトナフトンを出発原料とし、合成例2と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);2.01(ddd,J=8.8Hz,J=2.7Hz,J=2.7Hz,1H),2.14(ddd,J=8.8Hz,J=2.7Hz,J=2.7Hz,1H),5.67(br,1H),5.89(dd,J=2.7Hz,J=2.7Hz,1H),7.06−8.13(m,12H)。
【0095】
(合成例6)1−フェニル−1−(4−フェニルフェニル)−2−メチレンシクロプロパンの合成
4−ブロモビフェニルとアセトフェノンを出発原料とし、合成例2と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.94(dd,J=2.4Hz,J=2.2Hz,2H),5.63(dd,J=1.8Hz,J=1.8Hz,1H),5.84(dd,J=2.6Hz,J=2.4Hz,1H),7.26−7.59(m,14H)。
【0096】
(合成例7)1−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
カリウム−t−ブトキシド(6.06g、54mmol)の乾燥THF(65ml)溶液とメチルホスホニウム塩(27.3g、68mmol)から窒素雰囲気下でウイッティヒ試薬を調整した。そこへ4−ブロモベンゾフェノン(11.8g、45mmol)の乾燥THF(125ml)溶液を滴下し、室温で1時間撹拌後エーテルで抽出し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーにより精製し、1−(4−ブロモフェニル)−1−フェニルエチレンを得た。収率96%。
【0097】
得られた1−(4−ブロモフェニル)−1−フェニルエチレンを用い、合成例1と同様の方法を適用することで1−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.84(d,J=13.6Hz,1H),1.92(d,J=13.6Hz,1H),5.6(s,1H),5.78(s,1H),7.13(d,J=8.6Hz,2H),7.20_7.28(m,5H),7.38(d,J=8.6Hz,2H)。
【0098】
(合成例8)1,1−ビス(4−フルオロフェニル)−2−メチレンシクロプロパンの合成
4、4’−ジフルオロベンゾフェノンを出発原料とし、合成例7と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.85(dd,J=2.6Hz,J=2.0Hz,2H),5.61(dd,J=2.1Hz,J=1.8Hz,1H),5.79(dd,J=2.6Hz,J=1.8Hz,1H),6.91−7.00(m,4H),7.19−7.26(m,4H)。
【0099】
(合成例9)1,1−ジフェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
ベンゾフェノンを出発原料とし、合成例7と同様の方法で合成を行った。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.90(dd,J=2.7Hz,J=2.0Hz,2H),5.60(t,J=2.0Hz,1H),5.80(d,J=2.7Hz,1H),7.21−7.30(m,10H)。
【0100】
(合成例10)1−(3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
窒素雰囲気下、丸底フラスコへ1,3,5−トリブロモベンゼン(6.3g、20mmol)、乾燥エーテル(150ml)を加えた。ここへ−78℃に冷却しながらn−ブチルリチウム溶液(12.5ml、20mmol)を滴下し、−78℃で2時間撹拌した。さらにN,N−ジメチルアセトアミド(1.92g,22mmol)の乾燥エーテル(15ml)溶液を滴下した。−78℃から徐々に室温に戻し20時間撹拌した後、エーテルで抽出し溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーと再結晶により精製し,3,5−ジブロモアセトフェノンを得た。収率41%。
【0101】
ブロモベンゼン(4.98g、32mmol)の乾燥THF(15ml)溶液とマグネシウム(717mg、30mmol)から窒素雰囲気下でグリニャール試薬を調製した。ここへ3,5−ジブロモアセトフェノン(6.30g、23mmol)の乾燥THF(30ml)溶液を滴下し、室温で1時間撹拌後、15時間加熱還流した。室温に戻した後エーテルで抽出し、溶媒を留去した。これを丸底フラスコへ移し、トルエン(100ml)とp−トルエンスルホン酸・1水和物(432mg,2.3mmol)を加え、15時間加熱還流した。溶媒を留去後、減圧蒸留により精製し、1−(3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニルエチレンを得た。収率78%。
【0102】
得られた1−(3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニルエチレンを用いて、合成例1と同様の反応を行うことで1−(3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンを合成した。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.84(d,J=9.2Hz,1H),1.95(d,J=9.2Hz,1H),5.64(s,1H),5.82(s,1H),7.23−7.31(m,7H),7.49(s,1H)。
【0103】
(合成例11)1−(3,5−ジフェニルフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンの合成
窒素雰囲気下、1−(3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパン(130mg、0.36mmol)、フェニルボロン酸(100mg、0.82mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(60.2mg、0.054mmol)、炭酸カリウム(986mg、7.2mmol)、テトラブチルアンモニウムクロライド(27.8mg、0.089mmol)、ベンゼン(7ml)および水(7ml)を丸底フラスコに入れ、75℃で48時間撹拌した。室温に戻した後、エーテルで抽出し溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーにより精製することで、1−(3,5−ジフェニルフェニル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンを得た。収率93%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.97(m,2H),5.65(s,1H),5.88(s,1H),7.21−7.65(m,18H)。
【0104】
(合成例12)1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサンの合成
窒素気流下、丸底フラスコにトリフェニルメチルホスホニウムヨージド(8.08g、20mmol)、乾燥THF(60mL)を入れ、カリウム−t−ブトキシド(2.24g、20mmol)を加えて30分間室温で攪拌し、黄色溶液を得た。この溶液を、別の丸底フラスコに入れた1,5−ジ(4−メトキシフェニル)−1,5−ペンタジオン(6.25g、20mmol)の乾燥THF溶液(140mL)にゆっくり加えた。12時間攪拌した後、水を加え、エーテルで抽出した。カラムクロマトグラフィーによって精製し、1,5−ジ(4−メトキシフェニル)−5−ヘキセン−1−オンを得た。収率56%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.89(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),2.59(t,J=7.3Hz,2H),2.92(t,J=7.3Hz,2H),3.81(s,3H),3.86(s,3H),5.00(s,1H),5.25(s,1H),6.87(AA’XX’,J=6.5Hz,2H),6.91(AA’XX’,J=8.8Hz,2H),7.38(AA’XX’,J=8.8Hz,2H),7.89(AA’XX’,J=6.5Hz,2H)。
【0105】
窒素気流下、フラスコに1,5−ジ(4−メトキシフェニル)−5−ヘキセン−1−オン(1.55g、5mmol)、メタノール(15mL)を入れ、4−トシルヒドラゾン(1.02g、5.5mmol)のメタノール(5mL)溶液を一気に加えた。室温で5日間攪拌し、析出した粉末をろ過した。この粉末をヘキサンでよく洗浄し、5−(4−トシルヒドラゾノ)−1,5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン−1−オンを得た。収率93%。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.54(m,2H),2.39(s,3H),2.50(m,4H),3.80(s,3H),3.84(s,3H),4.98(s,1H),5.27(s,1H),6.78(AA’XX’,J=9.0Hz,2H),6.89(AA’XX’,J=8.8Hz,2H),7.26(AA’XX’,J=8.4Hz,2H),7.31(AA’XX’,J=8.8Hz,2H),7.45(AA’XX’,J=9.0Hz,2H),7.79(AA’XX’,J=8.4Hz,2H)。
【0106】
窒素気流下、フラスコに5−(4−トシルヒドラゾノ)−1,5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン−1−オン(476.8mg、1.0mmol),乾燥塩化メチレン10mLを入れ、遮光、氷浴しながらトリフルオロボラン・エーテラート(0.14mL、1.1mmol)を加え、20分間攪拌した。さらに室温で3時間攪拌し、水(5mL)を加えた。暗所にて塩化メチレンで抽出し、溶媒を留去した。ここにベンゼン(10mL)を入れ、窒素下で2時間加熱還流した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーと再結晶により精製することで1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサンを得た。収率40%。融点92−93℃。H−NMR(200MHz,CDCl,δppm);1.24−1.50(m,3H),1.79(m,1H),2.052.37(m,4H),3.72(s,6H),6.69(d,J=8.8Hz,4H),6.98(d,J=8.8Hz,4H)。
【0107】
(実施例1)CIDEP法によるトリメチレンメタンカチオンラジカルの観測 CIDEPスペクトルの測定には従来より行われている方法(例えば、第4版実験化学講座、第8巻、分光III、541頁、1992、丸善を参照)によって行った。光源にルモニクス社製エキシマーレーザーEX600、スペクトル測定にバリアン社製電子スピン共鳴測定装置E−109およびブルカー社製電子スピン共鳴測定装置ESP−380Eを用い、デジタルオシロスコープによって過渡変化を観測した。合成例1で得た1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(50mM)のDMSO溶液に、増感剤としてクロラニル(10mM)を加えた。この溶液に室温でクマリン440を用いたXeClレーザー(441nm)を照射しながらCIDEPスペクトルを測定したところ、図3に示すスペクトルが得られた。文献(H.Ikedaら、J.Am.Chem.Soc.2003,125,9147−9157)との比較から、トリメチレンメタンカチオンラジカルが発生していることが確認された。
【0108】
(実施例2)ESRによるトリメチレンメタンビラジカルの観測
ESRスペクトルの測定には、ブルカー社製電子スピン共鳴測定装置ESP−380Eを用いた。合成例1で得た1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(50mM)の塩化メチレン溶液に、増感剤としてアントラキノン(50mM)を加えた。この溶液を20Kに冷却し、Quanta−Ray社製YAGレーザーGCR−14(355nm)を照射してESRスペクトルを測定したところ、図4に示すスペクトルが得られた。文献(H.Ikedaら、J.Am.Chem.Soc.1998,120,5832−5833)との比較から、トリメチレンメタンビラジカルが発生していることが確認された。5Kまでさらに冷却し、シグナル強度の温度変化の観測を行ったところ、このトリメチレンメタンビラジカルは基底3重項であることが確認された。
【0109】
(実施例3)トリメチレンメタンカチオンラジカルの過渡吸収スペクトル観測
過渡吸収スペクトルの測定には、従来より行われている方法(例えば、第4版実験化学講座、第7巻、分光II、275頁、1992、丸善を参照)によって行った。光源にルモニクス社製エキシマーレーザーEX600、スペクトル測定にユニソク社製検出器USP−600を用いた。合成例1で得た1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(3mM)のアセトニトリル溶液に、増感剤としてテトラシアノベンゼン(0.8mM)を加えた。この溶液に室温でXeClレーザー(308nm)を照射しながら過渡吸収スペクトルを測定したところ、図5に示すトリメチレンメタンカチオンラジカルの吸収スペクトルが得られ、吸収極大波長は500nmであった。
【0110】
(実施例4)サーモルミネセンスの観測
合成例1で得た1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(5mM)のメチルシクロヘキサン溶液を合成石英製セルに入れ、脱気封管した。このセルを液体窒素中に浸して溶液を凝固させ、コバルト60からのガンマ線を40時間照射した。液体窒素中で吸収スペクトルをヒューレットパッカード製分光光度計HP8452Aで測定したところ、510nmに吸収を観測した。実施例3との比較から、この吸収はトリメチレンメタンカチオンラジカルと同定された。このセルを液体窒素より取り出して昇温すると、緑色の発光が観測された。発光スペクトルを浜松フォトニクス社製マルチチャンネル検出器PMA11で測定したところ、図6に示した発光スペクトルが得られ、発光極大波長は561nmであった。
【0111】
つまり、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパンの一電子酸化によってトリメチレンメタンカチオンラジカルが発生し、電子との再結合によってトリメチレンメタンビラジカルからの発光が進行した。
【0112】
(実施例5)1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパンを用いた有機EL素子の作製
ポリビニルカルバゾール(77重量部)、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(15重量部)、合成例1で得た1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパン(8重量部)の混合物をアニソールに溶解し(濃度2wt%)、塗布溶液を調製した。ITO(酸化インジウム錫)を1.6mm幅にパターンニングしたガラス基板上に、乾燥窒素環境下でスピン塗布して1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパンを共存させたポリマー発光層(膜厚100nm)を形成した。次いで、乾燥窒素環境下、ホットプレート上で80℃/5分間加熱乾燥した。得られたガラス基板を真空蒸着機中に移し、上記発光層上にCa(膜厚20nm)、Al(膜厚100nm)の順に電極を形成した。有機EL素子の特性は室温にて、電流電圧特性をヒューレットパッカード社製の微小電流計4140Bで測定し、発光輝度はトプコン社製SR−3で測定した。ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約30Vで淡黄色発光が観測された。発光スペクトルを図8の実線で示す。
【0113】
(比較例1)
1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチレンシクロプロパンを添加しないこと以外は、実施例5と同様にしてITO/ポリマー発光層/Ca/Al素子を作製した。得られたITO/ポリマー発光層/Ca/Al素子を電源に接続し、ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約20Vで青色発光が観測された。発光スペクトルを図8の破線で示す。
【0114】
(実施例6)サーモルミネセンスの観測
合成例2で得た1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパン(5mM)のメチルシクロヘキサン溶液を合成石英製セルに入れ、脱気封管した。このセルを液体窒素中に浸して溶液を凝固させ、コバルト60からのガンマ線を40時間照射した。液体窒素より取り出して昇温すると、赤色の発光が観測された。発光スペクトルを図9に示す。
【0115】
(実施例7)1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンを用いた有機EL素子の作製
ポリビニルカルバゾール(72重量部)、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(21重量部)、合成例2で得た1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパン(7重量部)の混合物をアニソールに溶解し(濃度2wt%)、塗布溶液を調製した。実施例5と同様にして有機EL素子を作成し、ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約20Vでピンク色発光が観測された。発光スペクトルを図10の実線で示す。
【0116】
(比較例2)
1−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−メチレンシクロプロパンを添加しないこと以外は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子を電源に接続し、ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約15Vで青色発光が観測された。発光スペクトルを図10の破線で示す。
【0117】
(実施例8)サーモルミネセンスの観測
合成例12で得た1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(5mM)のメチルシクロヘキサン溶液を合成石英製セルに入れ、脱気封管した。このセルを液体窒素中に浸して溶液を凝固させ、コバルト60からのガンマ線を40時間照射した。液体窒素より取り出して昇温すると、黄色の発光が観測された。発光スペクトルを図11に示す。
【0118】
(実施例9)1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサンを用いた有機EL素子の作製
ポリビニルカルバゾール(72重量部)、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(21重量部)、合成例12で得た1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(7重量部)の混合物をアニソールに溶解し(濃度2wt%)、塗布溶液を調製した。実施例5と同様にして有機EL素子を作成し、ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約25Vで淡ピンク色発光が観測された。発光スペクトルを図12の実線で示す。
【0119】
(比較例3)
1,5−ジ(4−メトキシフェニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサンを添加しないこと以外は、実施例9と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子を電源に接続し、ITOを陽極、Ca/Alを陰極にして電圧を印加したところ、約15Vで青色発光が観測された。発光スペクトルを図12の破線で示す。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明の発光システムの一実施態様を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の発光システムの一実施態様を示す概念図である。
【図3】図3は、実施例1において観測されたトリメチレンメタンカチオンラジカルのCIDEPスペクトル。
【図4】図4は、実施例2において観測されたトリメチレンメタンビラジカルのESRスペクトル。
【図5】図5は、実施例3において観測されたトリメチレンメタンカチオンラジカルの過渡吸収スペクトル。
【図6】図6は、実施例4において観測されたサーモルミネッセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。
【図7】図7は、実施例4において観測されたサーモルミネッセンスを利用した発光装置からの発光を示す図面代用写真。
【図8】図8は、実施例5及び比較例1において観測されたエレクトロルミネセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。
【図9】図9は、実施例6において観測されたサーモルミネッセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。
【図10】図10は、実施例7及び比較例2において観測されたエレクトロルミネセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。
【図11】図11は、実施例8において観測されたサーモルミネッセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。
【図12】図12は、実施例9及び比較例3において観測されたエレクトロルミネセンスを利用した発光装置の発光スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の化学物質が、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化し発光することを特徴とする発光システム。
【請求項2】
第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る請求項1記載の発光システム。
【請求項3】
第一の化学物質に電荷を注入することにより、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質の酸化体又は還元体を生成し、さらに前記電荷と対となる電荷を注入することにより励起状態にある第二の化学物質を生成し発光させることを特徴とする化学物質の発光方法。
【請求項4】
第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る請求項3記載の発光方法。
【請求項5】
第一の化学物質が、第一の化学物質とは異なる化学構造を有する第二の化学物質に変化し発光することを特徴とする発光用化学物質。
【請求項6】
第二の化学物質が、発光後に第一の化学物質に戻る請求項5記載の発光用化学物質。
【請求項7】
第二の化学物質が、第一の化学物質からの結合生成反応を経て生成する請求項5又は6記載の発光用化学物質。
【請求項8】
第二の化学物質が、第一の化学物質からの結合開裂反応を経て生成する請求項5又は6記載の発光用化学物質。
【請求項9】
第二の化学物質が、結合開裂反応を経て第一の化学物質に戻る請求項5〜7いずれか記載の発光用化学物質。
【請求項10】
第二の化学物質が、結合生成反応を経て第一の化学物質に戻る請求項5、6又は8記載の発光用化学物質。
【請求項11】
第二の化学物質が、モノラジカル又はビラジカルを有する開殻種である請求項5〜10いずれか記載の発光用化学物質。
【請求項12】
第二の化学物質の基底多重度が三重項である請求項5〜11いずれか記載の発光用化学物質。
【請求項13】
下記式(1)で表される請求項5〜12いずれか記載の発光用化学物質。
【化1】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R〜Rは、−R、−OR、−SR、−OCOR10、−COOR11、−SiR121314、および−NR1516(ただし、R〜R16は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R〜R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
【請求項14】
下記式(4)で表される請求項5〜12いずれか記載の発光用化学物質。
【化2】

(式中、R17〜R26は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R17〜R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R17〜R26は、−R27、−OR28、−SR29、−OCOR30、−COOR31、−SiR323334、および−NR3536(ただし、R27〜R36は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R27〜R36はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)
【請求項15】
下記式(7)で表される請求項5〜12いずれか記載の発光用化学物質。
【化3】

(式中、R37〜R42は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R37〜R42はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R37〜R42は、−R43、−OR44、−SR45、−OCOR46、−COOR47、−SiR484950、および−NR5152(ただし、R43〜R52は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R43〜R52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。m及びnは、1〜3の整数である。)
【請求項16】
下記式(10)で表される請求項5〜12いずれか記載の発光用化学物質。
【化4】

(式中、R53〜R58は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基、炭素数6〜30個のアリールオキシ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールオキシ基、炭素数6〜30個のアリールチオ基、炭素数2〜30個のヘテロアリールチオ基又は炭素数7〜30個のアラルキル基を表し、R53〜R58はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。さらに、R53〜R58は、−R59、−OR60、−SR61、−OCOR62、−COOR63、−SiR646566、および−NR6768(ただし、R59〜R68は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基;炭素数1〜22個の直鎖、環状もしくは分岐アルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アルキル基;炭素数6〜30個のアリール基、炭素数2〜30個のヘテロアリール基もしくは炭素数7〜30個のアラルキル基又はそれらの水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換ヘテロアリール基、ハロゲン置換アラルキル基を表し、R59〜R68はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)からなる群から選択される置換基を有していてもよい。mは、1〜3の整数である。)
【請求項17】
請求項5〜16いずれか記載の発光用化学物質を含む発光装置。
【請求項18】
請求項5〜16いずれか記載の発光用化学物質を含むエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項5〜16いずれか記載の発光用化学物質と、低分子化合物及び/又は高分子化合物とを含有する発光用混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【国際公開番号】WO2005/062677
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516518(P2005−516518)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019252
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】