発光ダイオード
【課題】 発熱による電力損失を抑えることで、高輝度発光を可能とすると共に、実装基板の上面及び下面のいずれの面にも実装することができる高輝度タイプの発光ダイオードを提供することである。
【解決手段】 ダイボンド用の実装面22aを有する高熱伝導性の放熱基台22と、この放熱基台22上に載置され、前記実装面22aの一部を露出する孔部27及び前記放熱基台22の外周縁より外方に張り出す張出部29を有する回路基板24と、前記孔部27を通して前記実装面22a上に実装される発光素子23と、この発光素子23の上方を封止する透光性の樹脂体25とを備え、前記張出部29の外周縁に前記発光素子23と導通するスルーホール28を形成し、このスルーホール28の上面及び下面に外部接続電極28a,28bを設けた。
【解決手段】 ダイボンド用の実装面22aを有する高熱伝導性の放熱基台22と、この放熱基台22上に載置され、前記実装面22aの一部を露出する孔部27及び前記放熱基台22の外周縁より外方に張り出す張出部29を有する回路基板24と、前記孔部27を通して前記実装面22a上に実装される発光素子23と、この発光素子23の上方を封止する透光性の樹脂体25とを備え、前記張出部29の外周縁に前記発光素子23と導通するスルーホール28を形成し、このスルーホール28の上面及び下面に外部接続電極28a,28bを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱機能を備えた高輝度タイプの発光ダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発光ダイオードは、小型であると共に長寿命性といった特徴を生かして携帯電話機等の液晶パネルのバックライト光源に採用されている。また、近年においてはカラー発光するものや比較的広い範囲を高輝度で照明する高出力型のものも数多く製品化されている。このようなカラー発光や高出力タイプの発光ダイオードは、消費電力が多くなることから、放熱対策が重要な課題となっている。
【0003】
一般的に発光ダイオードは、一定の動作領域までは駆動電流と輝度が略比例関係になるため、高輝度を得ようとする場合は駆動電流を増やせばよい。しかしながら、駆動電流を増やすと、それに比例して発光ダイオード内での電力損失が大きくなる。この電力損失は、大部分が熱に変換されたエネルギーであり、発光ダイオードの温度が上昇してしまう。ここで、発光ダイオードはその特性として、温度が低いほど発光効率(電流―光変換効率)が高いので、発光ダイオード内の温度上昇に伴って、発光輝度が低下するといった問題が生じる。また、発光ダイオードの動作寿命も高温動作になるほど短くなり、更には発光素子を封止している透光性の樹脂体が熱による変色で透明度が低下するといった問題もある。以上のような問題があるため、高出力と寿命等の信頼性の両方を満足するような発光ダイオードの製品化が困難であった。
【0004】
これらの問題を解決するために、放熱対策が不可欠となっている。従来、このような放熱のための手段としていくつかの提案がなされている。その一つは、図8に示すように、熱伝導性を有する一対の導電部材2a,2bを電気的に分離する絶縁部材3で固定し、この絶縁部材3の上面を凹設した凹部3a内に発光素子4を前記一対の導電部材2a,2bにまたがって実装した後、透光性を有する封止部材5によって封止した発光ダイオード1(特許文献1参照)がある。前記発光ダイオード1は、前記導電部材2a,2bの一端をマザーボード等のプリント基板7に形成された電極パターン6a,6b上に載置して半田接合される。また、放熱対策の他の手段として、発光素子を実装する基板と端子電極としてのリードフレームを同一材料とし、前記基板とリードフレームの最下面を略同じ面に位置させ、前記基板を直接回路基板に実装形成した発光ダイオード(特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平11−307820号公報
【特許文献2】特開2002−252373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記図8で示した発光ダイオード1は、発光素子4から発せられる熱を一対の導電部材2a,2bから電極パターン6a,6bを通してプリント基板7に放熱させているため、このプリント基板7に熱伝導性の優れたメタルコア基板を用いた場合は、放熱効果が期待できるが、コストの比較的安いガラスエポキシ材からなる通常のプリント基板では大きな放熱効果が期待できない。これは、ガラスエポキシ材の熱伝導率は、銅合金などの金属材料と比較して数百分の一程度と小さいので、熱抵抗が大きくなり発生した熱を効率よく逃すことができないからである。このため、効率のよい放熱を実現するためにはメタルコア基板の使用が不可欠であるが、基板材料が限定されることからコスト高になると共に、このメタルコア基板は両面配線が難しく高密度実装が困難であるといった問題がある。さらには、前記メタルコア基板は導電性材料であるために、表面に絶縁層を設けて絶縁する必要があるが、この絶縁層によって熱伝導率が低下し、十分な放熱効果を発揮できないといった問題も有している。
【0006】
一方、特許文献2等に示されている発光ダイオードにおいても同様な問題がある。すなわち、基板は回路基板と密着して実装されるので、基板から回路基板への熱伝導率は比較的良好であるが、回路基板がガラスエポキシである場合には熱伝導率が悪くなり、大きな放熱効果は期待できない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、発熱による電力損失を抑えることで、高輝度発光を可能とすると共に、実装基板の上面及び下面のいずれの面に実装することができる高輝度タイプの発光ダイオードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の発光ダイオードは、ダイボンド用の実装面を有する高熱伝導性の放熱基台と、この放熱基台上に載置され、前記実装面の一部を露出する孔部及び前記放熱基台の外周縁より外方に張り出す張出部を有する回路基板と、前記孔部を通して前記実装面上に実装される発光素子と、この発光素子の上方を封止する透光性の樹脂体とを備え、前記張出部の外周縁に前記発光素子と導通するスルーホールを形成し、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発光ダイオードによれば、熱伝導率の高い放熱基台上に直接発光素子を実装した構造となっているので、前記発光素子から生じる熱を効率よく外部に逃すことができる。このため、消費電力を抑えつつ高輝度の発光が可能となる。また、前記発光素子と回路基板とが非接触であるため、回路基板側へ発光素子で生じた熱が伝播しない。これによって、前記回路基板が実装される他の実装基板への影響を最小限に抑えることができる。さらに、前記回路基板の外周縁が放熱基台の外周縁から突出したスルーホールを形成すると共に、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極が設けられているので、回路基板の上面あるいは下面のいずれの面からも実装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る発光ダイオードの実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの斜視図、図2は前記発光ダイオードの断面図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の発光ダイオード21は、高熱伝導性を有する略直方体形状の放熱基台22と、この放熱基台22の略中央部に固定される青色の発光素子23と、この発光素子23を取り囲むようにして前記放熱基台22の上に載置される回路基板24と、前記発光素子23を封止する透光性を有する樹脂体25とからなっている。
【0012】
前記放熱基台22は、放熱効果を高めるために、熱伝導率の高い銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金といった金属材料、あるいは、アルミ系セラミックスなどの非金属材料によって形成される。この放熱基台22は、上面が前記発光素子23をダイボンド実装するための実装面22aで、下面が図示しない装置等のフレームに接触させて熱を逃がす放熱面22bとなっている。放熱効果を高めるためには、前記放熱面22bを広くするのが好ましい。このため、図2に示したように、可能な限り放熱基台22の表面積を広く、また、厚みを持たせて形成するのが効果的である。なお、前記放熱基台22の形状については、直方体形状に限定されず、円筒形状であってもよい。
【0013】
前記発光素子23は、上面及び側面が発光面となっており、上面側に一対の素子電極部を有している。この発光素子23は、前記放熱基台22の実装面22a略中央部に下面側を接着剤等によってダイボンドし、素子電極部を後述する回路基板24にボンディングワイヤ26を介してワイヤボンド実装接続される。
【0014】
回路基板24は、ガラスエポキシ樹脂やBTレジン(Bismaleimide Triazine Resin)等の絶縁材料で形成され、中央部に前記発光素子23を露出させる孔部27が設けられている。前記発光素子23は、孔部27から上面に露出させた状態で実装される。この孔部27の周囲には、前記発光素子23に備える一対の素子電極部とボンディングワイヤ26を介して接続される図示しないボンディングパッド及び電極パターンが形成される。また、前記回路基板24の外周縁には前記電極パターンと繋がるスルーホール28が形成されている。図1及び図2に示されるように、回路基板24は、前記放熱基台22の実装面22aから外方向に張り出す張出部29を有して広く形成され、前記張出部29の周縁にスルーホール28が形成されている。また、前記スルーホール28の表面と裏面には一対の外部接続電極28a,28bが形成される。
【0015】
樹脂体25は、透光性を有するエポキシまたはシリコーン系の樹脂材が用いられ、回路基板24上に設けられた封止枠体30の内部に充填して形成される。また、この樹脂体25に適宜イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)蛍光体を含有させることによって、白色発光も可能となる。前記封止枠体30は、発光素子23を囲うようにして、回路基板24上に接着剤を介して接合される。なお、前記封止枠体30の内周面を鏡面加工、あるいは、金属膜などの光反射部材を設けることによって、前記発光素子23から発せられる光をある方向に向けて高輝度発光させる反射枠体を形成することもできる。
【0016】
前記構造の発光ダイオード21を各種電子機器内に配設されているプリント基板に実装する場合は、図3及び図4に示すように、プリント基板32に窓孔33を開設し、この窓孔33に前記放熱基台22または封止枠体30を通し、張出部29の外周部に設けられている外部接続電極28a,28bを前記窓孔33の縁部に半田付けすることによって行われる。本実施形態の発光ダイオード21は、放熱基台22に直接発光素子23をダイボンドした構造となっているので、前記発光素子23の発光に伴って放出される熱が前記放熱基台22を通して空気中に発散されるが、前記放熱基台22を各種電子機器の筐体に接触させることでより放熱効果を高めることができる。
【0017】
前記発光ダイオード21の実装形態としては二通り考えられる。第1の実装形態としては、図3に示したように、プリント基板32に開設した窓孔33に前記放熱基台22を通し、放熱面22bを図示しない電子機器の筐体31の外表面に接触させて載置した後、プリント基板32の縁部上に回路基板24のスルーホール28の下面に形成されている外部接続電極28bを半田接続するものである。第2の実装形態としては、図4に示したように、プリント基板32の窓孔33の下から封止枠体30を通し、前記プリント基板32の下面側にスルーホール28の上面に形成されている外部接続電極28aを半田接続するものである。前記第1及び第2の実施形態において、放熱面22bを図示しない電子機器の筐体31に接触させることがより大きな放熱効果を得る点で好ましい。本実施形態の発光ダイオード21は、上述したように、張出部29にスルーホール28を設けた構造になっているため、前記スルーホール28の上面及び下面に設けられている外部接続電極28a,28bのいずれの面からも接続が可能である。このため、前記図3及び図4で示したように、筐体31に対するプリント基板32の配設位置に応じて発光ダイオード21の実装方向を変えることが可能となる。また、前記プリント基板32の配設位置が予めわかっている場合は、その配設位置に合わせて前記放熱基台22の厚みを設定することができ、より最適な放熱効果を得ることができる。
【0018】
次に、上記図3及び図4に基づいて、発光ダイオード21の発光及び放熱作用を説明する。前記発光素子23に所定の駆動電圧を印加すると、前記発光素子23は印加した駆動電圧と駆動電流との積に等しい電力を消費し、そのエネルギーの一部は光となって樹脂体25を透過して外部に放射される。一方、光に変換されなかったエネルギーは熱となって発光素子23全体から放出される。ここで、前記発光素子23はその下面が放熱基台22に接した状態となっているので、発生した熱は放熱基台22に放熱され、放熱面22bから筐体31に効率よく逃がすことができる。前記放熱面22bと接触させる筐体31は、熱伝導率の高い金属部分に設定することで、より効果的な放熱作用が得られる。
【0019】
また、前記回路基板24にあっては、発熱源となる発光素子23と接触しないように孔部27から露出させているので、前記発光素子23から生じる熱の影響を直接受けなくて済む。これによって、回路基板24を接続しているプリント基板32側への熱の拡散を抑えられ、電子回路の劣化や破壊を有効に防止することができる。
【0020】
図5は第2実施形態の発光ダイオード41を示したものである。この発光ダイオード41は、素子電極部を上面と下面に有する発光素子43を実装するための構造になっている。発光素子23は、下面側の素子電極部を放熱基台22の実装面22aに載置された専用のサブマウント基板44に向けて実装され、上面側の素子電極部からはボンディングワイヤ26によって回路基板24に形成されている電極パターンに接続される。前記サブマウント基板44は、放熱効果を高めるために、アルミ系セラミックス、または、シリコンが使用される。また、前記サブマウント基板44の表面には、前記発光素子43の下面側の素子電極部を表面実装するダイボンドパターンと、このダイボンドパターンから引き出される引出パターンが形成され、この引出パターンから延びるボンディングワイヤ26によって回路基板24の他方の電極パターンに接続される。この構造の発光ダイオード41にあっては、発光素子43で生じた熱が最初にサブマウント基板44に拡散され、このサブマウント基板44から放熱基台22に拡散され、放熱面22bから外部に放熱される。
【0021】
図6に示す第3実施形態の発光ダイオード51は、非金属材料を使用して放熱基台52を構成したものである。前記放熱基台52の材質としては、絶縁性と高熱伝導性を備えたアルミ系セラミックスが好ましい。このようなセラミックス材を使用することで、前記第2実施形態の発光ダイオード41のように、サブマウント基板44を介することなく、直接前記放熱基台52上の実装面52aに電極パターンを形成することができる。また、前記放熱基台52全体がセラミックスで形成されているため、十分な放熱効果も得ることができる。
【0022】
上記実施形態の発光ダイオード21,41,51は、いずれも単一の発光素子23,43によって構成したものであるが、前記放熱基台22,52上の実装面及び孔部27を広く形成することによって複数の発光素子を実装することもできる。図7に示す第4実施形態の発光ダイオード61は、放熱基台62の実装面62aに赤、青、緑の三原色の発光色を備えた発光素子63a,63b,63cを実装し、この発光素子63a,63b,63cに対応させて、アノード電極(A1〜A3)及びカソード電極(K1〜K3)からなるスルーホールを回路基板64の張出部69に設けている。前記回路基板64には、前記発光素子63a,63b,63cを露出させる孔部67が開設され、その上方に封止枠体70が設けられる。この発光ダイオード61は、前記アノード電極(A1〜A3)及びカソード電極(K1〜K3)に印加する電圧を調整することによって、様々な発光色を得ることができると共に、複数の発光素子を備えたことに伴う大きな発熱量を放熱基台62によって効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1実施形態の発光ダイオードの斜視図である。
【図2】上記発光ダイオードの断面図である。
【図3】上記発光ダイオードの第1の実装例を示す図である。
【図4】上記発光ダイオードの第2の実装例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態における発光ダイオードの断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態における発光ダイオードの断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態における発光ダイオードの斜視図である。
【図8】従来の放熱機能を備えた発光ダイオードの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
21,41,51 発光ダイオード
22,52,62 放熱基台
22a 実装面
22b 放熱面
23,43 発光素子
24 回路基板
25 樹脂体
26 ボンディングワイヤ
27 孔部
28 スルーホール
28a,28b 外部接続電極
29,69 張出部
30,70 封止枠体
44 サブマウント基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱機能を備えた高輝度タイプの発光ダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発光ダイオードは、小型であると共に長寿命性といった特徴を生かして携帯電話機等の液晶パネルのバックライト光源に採用されている。また、近年においてはカラー発光するものや比較的広い範囲を高輝度で照明する高出力型のものも数多く製品化されている。このようなカラー発光や高出力タイプの発光ダイオードは、消費電力が多くなることから、放熱対策が重要な課題となっている。
【0003】
一般的に発光ダイオードは、一定の動作領域までは駆動電流と輝度が略比例関係になるため、高輝度を得ようとする場合は駆動電流を増やせばよい。しかしながら、駆動電流を増やすと、それに比例して発光ダイオード内での電力損失が大きくなる。この電力損失は、大部分が熱に変換されたエネルギーであり、発光ダイオードの温度が上昇してしまう。ここで、発光ダイオードはその特性として、温度が低いほど発光効率(電流―光変換効率)が高いので、発光ダイオード内の温度上昇に伴って、発光輝度が低下するといった問題が生じる。また、発光ダイオードの動作寿命も高温動作になるほど短くなり、更には発光素子を封止している透光性の樹脂体が熱による変色で透明度が低下するといった問題もある。以上のような問題があるため、高出力と寿命等の信頼性の両方を満足するような発光ダイオードの製品化が困難であった。
【0004】
これらの問題を解決するために、放熱対策が不可欠となっている。従来、このような放熱のための手段としていくつかの提案がなされている。その一つは、図8に示すように、熱伝導性を有する一対の導電部材2a,2bを電気的に分離する絶縁部材3で固定し、この絶縁部材3の上面を凹設した凹部3a内に発光素子4を前記一対の導電部材2a,2bにまたがって実装した後、透光性を有する封止部材5によって封止した発光ダイオード1(特許文献1参照)がある。前記発光ダイオード1は、前記導電部材2a,2bの一端をマザーボード等のプリント基板7に形成された電極パターン6a,6b上に載置して半田接合される。また、放熱対策の他の手段として、発光素子を実装する基板と端子電極としてのリードフレームを同一材料とし、前記基板とリードフレームの最下面を略同じ面に位置させ、前記基板を直接回路基板に実装形成した発光ダイオード(特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平11−307820号公報
【特許文献2】特開2002−252373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記図8で示した発光ダイオード1は、発光素子4から発せられる熱を一対の導電部材2a,2bから電極パターン6a,6bを通してプリント基板7に放熱させているため、このプリント基板7に熱伝導性の優れたメタルコア基板を用いた場合は、放熱効果が期待できるが、コストの比較的安いガラスエポキシ材からなる通常のプリント基板では大きな放熱効果が期待できない。これは、ガラスエポキシ材の熱伝導率は、銅合金などの金属材料と比較して数百分の一程度と小さいので、熱抵抗が大きくなり発生した熱を効率よく逃すことができないからである。このため、効率のよい放熱を実現するためにはメタルコア基板の使用が不可欠であるが、基板材料が限定されることからコスト高になると共に、このメタルコア基板は両面配線が難しく高密度実装が困難であるといった問題がある。さらには、前記メタルコア基板は導電性材料であるために、表面に絶縁層を設けて絶縁する必要があるが、この絶縁層によって熱伝導率が低下し、十分な放熱効果を発揮できないといった問題も有している。
【0006】
一方、特許文献2等に示されている発光ダイオードにおいても同様な問題がある。すなわち、基板は回路基板と密着して実装されるので、基板から回路基板への熱伝導率は比較的良好であるが、回路基板がガラスエポキシである場合には熱伝導率が悪くなり、大きな放熱効果は期待できない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、発熱による電力損失を抑えることで、高輝度発光を可能とすると共に、実装基板の上面及び下面のいずれの面に実装することができる高輝度タイプの発光ダイオードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の発光ダイオードは、ダイボンド用の実装面を有する高熱伝導性の放熱基台と、この放熱基台上に載置され、前記実装面の一部を露出する孔部及び前記放熱基台の外周縁より外方に張り出す張出部を有する回路基板と、前記孔部を通して前記実装面上に実装される発光素子と、この発光素子の上方を封止する透光性の樹脂体とを備え、前記張出部の外周縁に前記発光素子と導通するスルーホールを形成し、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発光ダイオードによれば、熱伝導率の高い放熱基台上に直接発光素子を実装した構造となっているので、前記発光素子から生じる熱を効率よく外部に逃すことができる。このため、消費電力を抑えつつ高輝度の発光が可能となる。また、前記発光素子と回路基板とが非接触であるため、回路基板側へ発光素子で生じた熱が伝播しない。これによって、前記回路基板が実装される他の実装基板への影響を最小限に抑えることができる。さらに、前記回路基板の外周縁が放熱基台の外周縁から突出したスルーホールを形成すると共に、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極が設けられているので、回路基板の上面あるいは下面のいずれの面からも実装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る発光ダイオードの実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの斜視図、図2は前記発光ダイオードの断面図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の発光ダイオード21は、高熱伝導性を有する略直方体形状の放熱基台22と、この放熱基台22の略中央部に固定される青色の発光素子23と、この発光素子23を取り囲むようにして前記放熱基台22の上に載置される回路基板24と、前記発光素子23を封止する透光性を有する樹脂体25とからなっている。
【0012】
前記放熱基台22は、放熱効果を高めるために、熱伝導率の高い銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金といった金属材料、あるいは、アルミ系セラミックスなどの非金属材料によって形成される。この放熱基台22は、上面が前記発光素子23をダイボンド実装するための実装面22aで、下面が図示しない装置等のフレームに接触させて熱を逃がす放熱面22bとなっている。放熱効果を高めるためには、前記放熱面22bを広くするのが好ましい。このため、図2に示したように、可能な限り放熱基台22の表面積を広く、また、厚みを持たせて形成するのが効果的である。なお、前記放熱基台22の形状については、直方体形状に限定されず、円筒形状であってもよい。
【0013】
前記発光素子23は、上面及び側面が発光面となっており、上面側に一対の素子電極部を有している。この発光素子23は、前記放熱基台22の実装面22a略中央部に下面側を接着剤等によってダイボンドし、素子電極部を後述する回路基板24にボンディングワイヤ26を介してワイヤボンド実装接続される。
【0014】
回路基板24は、ガラスエポキシ樹脂やBTレジン(Bismaleimide Triazine Resin)等の絶縁材料で形成され、中央部に前記発光素子23を露出させる孔部27が設けられている。前記発光素子23は、孔部27から上面に露出させた状態で実装される。この孔部27の周囲には、前記発光素子23に備える一対の素子電極部とボンディングワイヤ26を介して接続される図示しないボンディングパッド及び電極パターンが形成される。また、前記回路基板24の外周縁には前記電極パターンと繋がるスルーホール28が形成されている。図1及び図2に示されるように、回路基板24は、前記放熱基台22の実装面22aから外方向に張り出す張出部29を有して広く形成され、前記張出部29の周縁にスルーホール28が形成されている。また、前記スルーホール28の表面と裏面には一対の外部接続電極28a,28bが形成される。
【0015】
樹脂体25は、透光性を有するエポキシまたはシリコーン系の樹脂材が用いられ、回路基板24上に設けられた封止枠体30の内部に充填して形成される。また、この樹脂体25に適宜イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)蛍光体を含有させることによって、白色発光も可能となる。前記封止枠体30は、発光素子23を囲うようにして、回路基板24上に接着剤を介して接合される。なお、前記封止枠体30の内周面を鏡面加工、あるいは、金属膜などの光反射部材を設けることによって、前記発光素子23から発せられる光をある方向に向けて高輝度発光させる反射枠体を形成することもできる。
【0016】
前記構造の発光ダイオード21を各種電子機器内に配設されているプリント基板に実装する場合は、図3及び図4に示すように、プリント基板32に窓孔33を開設し、この窓孔33に前記放熱基台22または封止枠体30を通し、張出部29の外周部に設けられている外部接続電極28a,28bを前記窓孔33の縁部に半田付けすることによって行われる。本実施形態の発光ダイオード21は、放熱基台22に直接発光素子23をダイボンドした構造となっているので、前記発光素子23の発光に伴って放出される熱が前記放熱基台22を通して空気中に発散されるが、前記放熱基台22を各種電子機器の筐体に接触させることでより放熱効果を高めることができる。
【0017】
前記発光ダイオード21の実装形態としては二通り考えられる。第1の実装形態としては、図3に示したように、プリント基板32に開設した窓孔33に前記放熱基台22を通し、放熱面22bを図示しない電子機器の筐体31の外表面に接触させて載置した後、プリント基板32の縁部上に回路基板24のスルーホール28の下面に形成されている外部接続電極28bを半田接続するものである。第2の実装形態としては、図4に示したように、プリント基板32の窓孔33の下から封止枠体30を通し、前記プリント基板32の下面側にスルーホール28の上面に形成されている外部接続電極28aを半田接続するものである。前記第1及び第2の実施形態において、放熱面22bを図示しない電子機器の筐体31に接触させることがより大きな放熱効果を得る点で好ましい。本実施形態の発光ダイオード21は、上述したように、張出部29にスルーホール28を設けた構造になっているため、前記スルーホール28の上面及び下面に設けられている外部接続電極28a,28bのいずれの面からも接続が可能である。このため、前記図3及び図4で示したように、筐体31に対するプリント基板32の配設位置に応じて発光ダイオード21の実装方向を変えることが可能となる。また、前記プリント基板32の配設位置が予めわかっている場合は、その配設位置に合わせて前記放熱基台22の厚みを設定することができ、より最適な放熱効果を得ることができる。
【0018】
次に、上記図3及び図4に基づいて、発光ダイオード21の発光及び放熱作用を説明する。前記発光素子23に所定の駆動電圧を印加すると、前記発光素子23は印加した駆動電圧と駆動電流との積に等しい電力を消費し、そのエネルギーの一部は光となって樹脂体25を透過して外部に放射される。一方、光に変換されなかったエネルギーは熱となって発光素子23全体から放出される。ここで、前記発光素子23はその下面が放熱基台22に接した状態となっているので、発生した熱は放熱基台22に放熱され、放熱面22bから筐体31に効率よく逃がすことができる。前記放熱面22bと接触させる筐体31は、熱伝導率の高い金属部分に設定することで、より効果的な放熱作用が得られる。
【0019】
また、前記回路基板24にあっては、発熱源となる発光素子23と接触しないように孔部27から露出させているので、前記発光素子23から生じる熱の影響を直接受けなくて済む。これによって、回路基板24を接続しているプリント基板32側への熱の拡散を抑えられ、電子回路の劣化や破壊を有効に防止することができる。
【0020】
図5は第2実施形態の発光ダイオード41を示したものである。この発光ダイオード41は、素子電極部を上面と下面に有する発光素子43を実装するための構造になっている。発光素子23は、下面側の素子電極部を放熱基台22の実装面22aに載置された専用のサブマウント基板44に向けて実装され、上面側の素子電極部からはボンディングワイヤ26によって回路基板24に形成されている電極パターンに接続される。前記サブマウント基板44は、放熱効果を高めるために、アルミ系セラミックス、または、シリコンが使用される。また、前記サブマウント基板44の表面には、前記発光素子43の下面側の素子電極部を表面実装するダイボンドパターンと、このダイボンドパターンから引き出される引出パターンが形成され、この引出パターンから延びるボンディングワイヤ26によって回路基板24の他方の電極パターンに接続される。この構造の発光ダイオード41にあっては、発光素子43で生じた熱が最初にサブマウント基板44に拡散され、このサブマウント基板44から放熱基台22に拡散され、放熱面22bから外部に放熱される。
【0021】
図6に示す第3実施形態の発光ダイオード51は、非金属材料を使用して放熱基台52を構成したものである。前記放熱基台52の材質としては、絶縁性と高熱伝導性を備えたアルミ系セラミックスが好ましい。このようなセラミックス材を使用することで、前記第2実施形態の発光ダイオード41のように、サブマウント基板44を介することなく、直接前記放熱基台52上の実装面52aに電極パターンを形成することができる。また、前記放熱基台52全体がセラミックスで形成されているため、十分な放熱効果も得ることができる。
【0022】
上記実施形態の発光ダイオード21,41,51は、いずれも単一の発光素子23,43によって構成したものであるが、前記放熱基台22,52上の実装面及び孔部27を広く形成することによって複数の発光素子を実装することもできる。図7に示す第4実施形態の発光ダイオード61は、放熱基台62の実装面62aに赤、青、緑の三原色の発光色を備えた発光素子63a,63b,63cを実装し、この発光素子63a,63b,63cに対応させて、アノード電極(A1〜A3)及びカソード電極(K1〜K3)からなるスルーホールを回路基板64の張出部69に設けている。前記回路基板64には、前記発光素子63a,63b,63cを露出させる孔部67が開設され、その上方に封止枠体70が設けられる。この発光ダイオード61は、前記アノード電極(A1〜A3)及びカソード電極(K1〜K3)に印加する電圧を調整することによって、様々な発光色を得ることができると共に、複数の発光素子を備えたことに伴う大きな発熱量を放熱基台62によって効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1実施形態の発光ダイオードの斜視図である。
【図2】上記発光ダイオードの断面図である。
【図3】上記発光ダイオードの第1の実装例を示す図である。
【図4】上記発光ダイオードの第2の実装例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態における発光ダイオードの断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態における発光ダイオードの断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態における発光ダイオードの斜視図である。
【図8】従来の放熱機能を備えた発光ダイオードの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
21,41,51 発光ダイオード
22,52,62 放熱基台
22a 実装面
22b 放熱面
23,43 発光素子
24 回路基板
25 樹脂体
26 ボンディングワイヤ
27 孔部
28 スルーホール
28a,28b 外部接続電極
29,69 張出部
30,70 封止枠体
44 サブマウント基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイボンド用の実装面を有する高熱伝導性の放熱基台と、この放熱基台上に載置され、前記実装面の一部を露出する孔部及び前記放熱基台の外周縁より外方に張り出す張出部を有する回路基板と、前記孔部を通して前記実装面上に実装される発光素子と、この発光素子の上方を封止する透光性の樹脂体とを備え、
前記張出部の外周縁に前記発光素子と導通するスルーホールを形成し、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極を設けたことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記放熱基台は、金属、金属合金、または、セラミックで形成される請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記放熱基台は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミ系セラミックスのいずれかによって形成される請求項1または2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記実装面上にサブマウント基板を載置し、このサブマウント基板を介して前記発光素子を実装した請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記サブマウント基板は、アルミ系セラミックス、または、シリコンで形成される請求項4記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記樹脂体の周囲に封止枠体、または、内周面に光反射部材を有する反射枠体を配設した請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記発光素子が、前記孔部から露出する実装面内に複数実装される請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記張出部に、前記発光素子と導通するスルーホールが複数形成される請求項1または7記載の発光ダイオード。
【請求項1】
ダイボンド用の実装面を有する高熱伝導性の放熱基台と、この放熱基台上に載置され、前記実装面の一部を露出する孔部及び前記放熱基台の外周縁より外方に張り出す張出部を有する回路基板と、前記孔部を通して前記実装面上に実装される発光素子と、この発光素子の上方を封止する透光性の樹脂体とを備え、
前記張出部の外周縁に前記発光素子と導通するスルーホールを形成し、このスルーホールの上面及び下面に外部接続電極を設けたことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記放熱基台は、金属、金属合金、または、セラミックで形成される請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記放熱基台は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミ系セラミックスのいずれかによって形成される請求項1または2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記実装面上にサブマウント基板を載置し、このサブマウント基板を介して前記発光素子を実装した請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記サブマウント基板は、アルミ系セラミックス、または、シリコンで形成される請求項4記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記樹脂体の周囲に封止枠体、または、内周面に光反射部材を有する反射枠体を配設した請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記発光素子が、前記孔部から露出する実装面内に複数実装される請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記張出部に、前記発光素子と導通するスルーホールが複数形成される請求項1または7記載の発光ダイオード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−5290(P2006−5290A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182403(P2004−182403)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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