発光デバイス
本発明は発光デバイスに関する。この発光デバイスには、第1の光出射側(1)と、第2の光出射側(2)と、これら第1の光出射側(1)と第2の光出射側(2)との間に配置された有機積層体(3)が設けられている。発光デバイス動作中、第1の光出射側(1)と第2の光出射側(2)を介して、それぞれ異なる光特性をもつ光(21,22)が出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光デバイスに関する。
【0002】
刊行物US 6,626,554には発光デバイスについて記載されている。
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、非常に多岐にわたり使用することのできる発光デバイスを提供することである。
【0004】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスは第1の光出射側と第2の光出射側を有している。つまりこの発光デバイスは2つの側を有しており、発光デバイス動作中、これら2つの側から光が送出される。その際、これらの光出射側ないしは光出射面は有利には、発光デバイスの互いに反対の側である。動作中、発光デバイスはたとえばその前面および背面から光を送出する。
【0005】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスはさらに有機積層体を有しており、これは第1の光出射面と第2の光出射面との間に配置されている。この有機積層体には少なくとも1つの有機層が含まれており、これは電磁放射を発生させるために設けられている。電磁放射の一部分は、発光デバイスの第1の光出射面の方向で有機積層体から出ていく。電磁放射の別の部分は、発光デバイスの第2の光出射面の方向で有機積層体から出ていく。
【0006】
有機積層体に電極層が接していると有利である。たとえば有機積層体において第1の光出射側ないしは光出射面に向いた側に、第1の電極層が接している。有機積層体において第2の光出射側ないしは光出射面に向いた側は第2の電極層に接している。第1の電極層をたとえばアノードとし、第2の電極層をたとえばカソードとすることができ、あるいはこの逆とすることができる。
【0007】
有機積層体には、電磁放射の発生に適した少なくとも1つの層のほかに、さらに別の有機層を含めることができ、たとえばホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などを含めることができる。
【0008】
その際に有利であるのは、ホール輸送層とホール注入層を有機積層体においてアノードに向いた側に設ける一方、電子輸送層と電子注入層を有機積層体においてカソードに向いた側に設けることである。
【0009】
この場合、一方の側に設けられたホール輸送層およびホール注入層と、他方の側に設けられた電子輸送層および電子注入層との間に、電磁放射の発生に適した有機層を配置すると有利である。有利には有機積層体の有機材料はたとえば、有機積層体から出射する光に対し光透過性であるよう形成されている。
【0010】
発光手段の少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスの動作中、第1および第2の光出射側を介してそれぞれ異なる光特性を有する光が発光デバイスから出射される。つまり第1の光出射側を介して第1の光特性をもつ光が発光デバイスから出射され、第2の光出射側を介して第2の光特性をもつ光が発光デバイスから出射される。この場合、第1の光特性は第2の光特性とは異なる。つまりこのことは、発光デバイスは自身の複数の光出射側からそれぞれ異なる光を放射することも意味する。
【0011】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスは第1の光出射側と第2の光出射側を有している。さらにこの発光デバイスは、第1の光出射側と第2の光出射側との間に配置されている有機積層体を有しており、発光デバイスの動作中、第1の光出射側と第2の光出射側を通って、それぞれ異なる光特性の光が出射される。
【0012】
本発明による発光デバイスは殊に以下の考察を基礎とするものである:
特定の用途のためには、たとえば液晶ディスプレイのバックライトに使用する場合などは、均質に発光する面放射体を発光デバイスとして組み込むのが望ましい。たとえば移動電話ここでは殊に折り畳み型携帯電話のような特定の製品において使用する場合、著しく狭い空間たとえば互いに「背中合わせ」に配置された2つの液晶ディスプレイを背後から照射することが必要になる。ここで説明したような発光デバイスは、2つのディスプレイを背後から照射するためにきわめて良好に適している。なぜならばこのようなディスプレイはそれぞれ異なる技術で実装されている可能性があるからであり、したがって第1の光出射側と第2の光出射側から送出される光が、背後から照射すべきディスプレイの特性にそれぞれ整合されていると有利である。
【0013】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその強度に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその光強度の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0014】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその輝度に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその輝度の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0015】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその放射特性に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。すなわち第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその放射特性の点でそれぞれ異なる光特性を有している。つまりたとえば、第1の光出射側を介して出射される光において第1の光出射側に対し相対的な強度角度分布は、第2の光出射側を介して出射される光において第2の光出射側に対し相対的な強度角度分布とは異なっている。
【0016】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射面から出射される光はその色に関して、第2の光出射面から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその色の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0017】
たとえば第1の光出射側を介して発光デバイスから白色光を送出させることができる。さらにその際、第2の光出射側を介して緑色、青色、赤色または他の色の光を発光デバイスから送出させることができる。
【0018】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側には波長変換材料が含まれている。
【0019】
波長変換材料は、第1の波長範囲の入射光を吸収して第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を送出する材料であり、一般に第2の波長範囲は第1の波長範囲よりも長い波長を有している。波長変換材料として有機材料たとえばペリレン発光材料を使用することができる。さらに以下の無機材料も波長変換材料として使用するのに適している。すなわち、希土類金属でドーピングされたガーネット、希土類金属でドーピングされたアルカリ土類硫化物、希土類金属でドーピングされたチオガレート、希土類金属でドーピングされたアルミ酸塩、希土類金属でドーピングされたオルトケイ酸塩、希土類金属でドーピングされたクロロシリケート、希土類金属でドーピングされたアルカリ土類ケイ素窒化物、希土類金属でドーピングされた酸窒化物、希土類金属でドーピングされたアルミニウム酸窒化物を有するグループも波長変換材料として使用するのに適している。
【0020】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側には波長変換材料が含まれている。この場合、第2の光出射側には波長変換材料が含まれていないか、別の波長変換材料、付加的な波長変換材料、または異なる濃度の波長変換材料が含まれている。これにより、第1の光出射側と第2の光出射側によってそれぞれ異なる色の光を発光デバイスから出射させることができる。
【0021】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側にはカラーフィルタ材料が含まれている。
【0022】
このカラーフィルタは、特定の波長範囲の光をフィルタリングするのに適している。つまりこの波長の光は、カラーフィルタによって少なくとも部分的に吸収される。このようにしてたとえば白色光から第1の色成分がフィルタリングされるようにすることができ、第2の色成分が実質的に阻止されることなくカラーフィルタを通過して放射されるようにすることができる。この場合、カラーフィルタによる色のサブ領域は実質的に第2の色成分の光を放出する。
【0023】
カラーフィルタはたとえば、カラーフィルタ材料の粒子の形態でマトリックス材料に埋め込まれている。
【0024】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側にはカラーフィルタ材料が含まれており、その場合、第2の光出射側にはカラーフィルタ材料は含まれていないか、または他のカラーフィルタ材料、付加的なカラーフィルタ材料または別の濃度のカラーフィルタ材料が含まれている。このようにして第1の光出射側から、第2の光出射側とは異なる色の光を送出させることができる。
【0025】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側には光散乱材料が含まれている。この光散乱材料は、光散乱材料を含む光出射側を介して光を散乱させるのに適している。このようにすることで、この光出射側を介して出射される光の角度分布ならびに強度を変えることができる。
【0026】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、たとえば第1の光出射側に光散乱材料が含まれている。この場合、第2の光出射側には光散乱材料が含まれていないか、別の光散乱材料、付加的な光散乱材料、または異なる濃度の光散乱材料が含まれている。このようにすれば、第1の光出射側と第2の光出射側から送出される光をその放射特性に関して異ならせることができる。
【0027】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスの第2の光出射側から白色光が送出され、第1の光出射側からカラー光が送出される。ここでカラー光とは、白色ではなく有彩色たとえば青色、緑色、赤色または黄色のことである。上述の色の混合も可能である。
【0028】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの半透過性の電極が有機積層体に接している。所定の反射特性と所定の透過特性をもつ半透過性の電極により、発光デバイスの光出射面を介して送出される光の強度、放射特性ならびに角度分布を、所期のように調整することができる。したがってたとえば、光出射側のうち少なくとも1つを介して出射される光の放射特性を、有機積層体において放射発生のために設けられている有機層と半透過性の電極との間隔によって定めることができる。これはたとえばいわゆるキャビティ効果の利用によって実現可能である。
【0029】
次に、既述の発光デバイスについて実施例およびそれらに係わる図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による発光デバイスに関する第1の実施例の概略断面図
【図2A】本発明による発光デバイスに関する第2の実施例の概略断面図
【図2B】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2C】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2D】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2E】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2F】白色の広帯域放出層における緑色と青色の励起子の分布をシミュレートした図
【図3A】本発明の第3の実施例による発光デバイスの概略断面図
【図3B】第1の光出射側と第2の光出射側により放出される光の強度を光の波長に依存して示す図
【図4A】本発明の第4の実施例による発光デバイスの概略断面図
【図4B】第1の光出射側から放出される光の波長に対する出射の改善について示す
【図5】本発明の第5の実施例による発光デバイスを示す概略断面図
【0031】
実施例および図面において、同一の構成要素または同じ働きをもつ構成要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。図示されている構成要素は必ずしも縮尺どおりに示されたものではなく、理解しやすくするため個々の要素が誇張されて大きく描かれている場合もある。
【0032】
図1は、本明細書で述べる発光デバイスに関する第1の実施例を概略的に示す断面図である。
【0033】
第1の実施例による発光デバイスには基板8が含まれている。基板8は光透過性として形成されている。この場合、基板8を透過性またはたとえば曇りガラスといったように拡散散乱性として形成することができる。基板8はたとえばガラスまたはプラスチックシートから成る。
【0034】
基板8には第1の電極5が取り付けられている。第1の電極をアノードまたはカソードとすることができる。第1の電極5は有利には放射透過性として形成されている。第1の電極5には、その基板8とは反対側に有機積層体3が続いている。有機積層体3には1つまたは複数の有機層が含まれている。有機層のうち1つの層3aは、有利には放射発生のために設けられている。有機積層体3にはさらに別の有機層3b、3cを含めることができ、これらの層はたとえば電荷キャリアを放射発生のために設けられた層3aへ輸送および/または注入するのに適したものである。
【0035】
有機積層体3において第1の電極5とは反対側には第2の電極6が続いている。第1の電極5がアノードであるならば第2の電極6はカソードである。第1の電極5がカソードであるならば第2の電極6はアノードである。第2の電極5は有利には光透過性として形成されている。
【0036】
第2の電極6において有機積層体3とは反対側にカプセル封止部7が取り付けられている。カプセル封止部7は光透過性として形成されている。この場合、カプセル封止部7をたとえば曇りガラスといったように光学的に拡散散乱性として、あるいは透過性として形成することができる。カプセル封止部7はたとえばガラスまたはプラスチックシートから成る。さらにカプセル封止部7を薄膜カプセルとすることができる。
【0037】
薄膜カプセルは少なくとも1つのバリア層を有している。バリア層は、有機積層体ならびに敏感な電極材料をたとえば湿気や酸素といった悪影響を及ぼす物質の侵入から保護するために設けられている。
【0038】
薄膜カプセルは少なくとも1つの薄膜層たとえばバリア層を有しており、これはスパッタリング、蒸着、プラズマ支援型CVD(chemical vapour deposition)といった薄膜プロセスによって取り付けられている。
【0039】
有利には薄膜カプセルには交互に設けられた複数のバリア層が含まれており、この場合、材料組成の点で異なる少なくとも2つのバリア層が規則的な順序で配置されている。つまり換言すれば、薄膜カプセルは第1のバリア層と第2のバリア層を有しており、その際、第1のバリア層の材料組成は第2のバリア層の材料組成とは異なっている。第1のバリア層を、たとえば酸化ケイ素を有するかまたはこの材料から成るように形成することができ、第2のバリア層を、たとえば窒化ケイ素を有するかまたはこの材料から成るように形成することができる。さらに第1および第2のバリア層は、それらの材料組成に関して交互に配置されている。
【0040】
薄膜カプセル内におけるバリア層のこのような交互の層列によって、薄膜カプセルが著しく密に形成されるという利点が得られる。このことは一般に、個々のバリア層の取り付けによりそれらの層に発生する可能性のあるピンホールつまり小さい孔を、それらの上に位置するバリア層によって覆うことができ、もしくはそれらの材料によって充填することすらできる、ということに基づくものである。さらにこの場合、ある1つのバリア層のピンホールが隣り合うバリア層のピンホールと貫通して結合する確率は著しく低い。このことは、材料組成に関して交互に配置されているバリア層について殊にあてはまる。
【0041】
殊に有利であるのは、交互に配置されているバリア層のうち一方のバリア層が酸化ケイ素を有しており、他方のバリア層が窒化ケイ素を有することである。たとえば第1のバリア層がSiO2から成るようにし、その場合には第2のバリア層がSi3N4から成るようにすることができる。
【0042】
図1の実施例による発光デバイスは第1の光出射側1を有している。第1の光出射側1は、基板8において有機積層体3とは反対側に位置している。第1の光出射側1を通って、第1の光特性をもつ光21が発光デバイスから送出される。
【0043】
発光デバイスはさらに第2の光出射側2を有しており、これはカプセル封止部7において有機積層体とは反対側に位置している。第2の光出射側2を通って、第2の光特性をもつ光222が発光デバイスから送出される。
【0044】
第1の光特性をもつ光21は第2の光特性をもつ光22とは異なっている。つまり発光デバイスは第1の光出射側1と第2の光出射側2を介して、光特性がそれぞれ異なる光21,22を放出する。
【0045】
図2Aは、本明細書で説明する発光デバイスに関する第2の実施例の概略断面図である。
【0046】
この実施例によれば、第2の電極6はカソードである。カソードは、放射発生のために設けられた有機層3aにおいて発せられた電磁放射に対し少なくとも部分的に反射するように形成されている。放射発生のために設けられている有機層3aは、たとえば530nmの波長をもつ光の発生に適しており、1.7の屈折率を有している。放射発生のために設けられている有機層3aは、第2の電極6から間隔tを有している。
【0047】
図2B、図2C、図2D、図2Eには、前方方向すなわち第1の光出射側1の方向における光21の任意の単位での放出強度Iが、放射発生のために設けられている層3aと第2の電極6との間隔tに依存して示されている。いわゆるキャビティ効果ゆえに、強度Iならびにその角度分布は間隔tに依存する。したがって間隔tによって、第1の光出射側1から放射される光の放射特性を所期のように調節することができる。
【0048】
たとえば、放射発生のために設けられている層3aを白色広帯域発光体を備えた有機層3aとすることができる。この白色広帯域発光体において、種々の色に対する励起子の崩壊ゾーンにそれぞれ異なる長さをもたせることができる。このようにすることで、図2B〜図2Eに関連して説明されるキャビティ効果により、光出射側1,2から放射される光に対する色選択性の調整を実現することができる。この目的で図2Fには、放射発生のために設けられており白色広帯域発光体材料を含む有機層3aにおける緑色の励起子11と青色の励起子12のシミュレートされた分布が示されている。この場合、青色の励起子は平均的に、有機積層体3と第1の電極5との間の界面において著しく密に存在している。
【0049】
発光手段としてたとえば、それぞれ所定の反射特性を有する2つの半透過性の電極を使用した場合、キャビティ効果を利用して第1および第2の光出射側1,2により種々の色の光放射を達成することができる。その際、両方の電極に互いに異なる反射特性をもたせることができる。
【0050】
図3Aは、本発明の第3の実施例による発光デバイスの概略断面図である。第3の実施例による発光デバイスは、アノードを成す透過性の第1の電極5を有している。このアノードは、有機積層体3にホールの注入に適している。有利にはアノードは、たとえば酸化インジウムスズ(ITO, Indium Tin Oxide)のように電子に対し高い仕事関数をもつ材料を有している。
【0051】
第1の電極には有機積層体3が続いており、この有機積層体3はここではホール輸送層3bを有しており、この層はポリマーたとえばPEDOTから成る。ホール輸送層3bは120nmの厚さD23を有している。ホール輸送層3bには放射を発生させるための有機層3aが続いており、この有機層3aはここでは80nmの厚さD22を有しており、LEPによって形成されている。放射発生のために設けられている有機層3aには電子輸送層3cが続いており、この層はCaから成り、3nmの厚さD21を有している。電子輸送層3cには第2の電極6が取り付けられており、第2の電極6はここでは銀から成り、10nmの厚さD1を有している。第2の電極6はカソードを成し、これは電子に対し僅かな仕事関数を有している。
【0052】
カソードは半透過性ミラーを成しており、この場合、層厚D1によって所定の透過と反射の比が調節されている。第2の電極6を通って出射される光22すなわち第2の光出射側2を介して発光デバイスから出射される光の色成分と強度を、第2の電極6の厚さD1によって調節することができる。
【0053】
図3Bには、第1の光出射側1を介して放出された光21の強度(特性曲線14)と、第2の光出射側2を介して放出された光22の強度(特性曲線13)が、光の波長に依存して描かれている。
【0054】
図4Aには、本発明の第4の実施例による発光デバイスの概略断面図が示されている。図4の実施例の場合、基板8において有機積層体3とは反対側に散乱シートが取り付けられている。この散乱シートは50μmの厚さであり、光の散乱に適した材料の50重量%の粒子を有している。たとえばそれらの粒子をポリマーマトリックスにおけるポリマー粒とすることができる。つまり図4Aの実施例の場合、第1の光出射側1には光散乱性の材料が含まれている。これによって、第1の光出射側1を介して出射された光21の色成分にも強度にも作用を及ぼすことができる。
【0055】
図4Bには、表面法線nに対する0°の角度(特性曲線15)と、表面法線nに対する60°の角度(特性曲線16)に関して、第1の光出射側から放出される光21の波長に対する出射の改善度Vがパーセントで示されている。
【0056】
図5には、本発明の第5の実施例による発光デバイスを示す概略断面図が示されている。この実施例の場合、カラーフィルタおよび/または波長変換材料の粒子10が発光デバイスの基板8に取り込まれている。つまりこの場合、第1の光出射側1には、カラーフィルタ材料および/または波長変換材料が含まれている。
【0057】
たとえば、放射を発生するために設けられている有機層3aは青色光を放出するのに適している。その場合、粒子10はたとえば黄色を再放出する波長変換材料または赤緑色を再放出する波長変換材料となる。このようにして、第1の光出射側1から白色の混合光が放出される。第2の光出射側2からは青色光が放出される。これに対する代案としてたとえば、放射発生のために設けられている有機層3aを白色光の発生に適したものとすることもできる。その場合には粒子10は緑色のカラーフィルタ材料となる。このようにした場合、第2の光出射側2から白色の混合光が放出される。第1の光出射側1からは緑色光が放出される。
【0058】
ディスプレイのバックライト用発光デバイスとして使用することのほか、本発明による発光デバイスはたとえば2色の間仕切りないしはスペース分離部材あるいは効果照明としても適しており、その場合、発光デバイスは任意に選定可能な形状で構成され、旋回可能に支承されている。このようにすれば発光デバイスを急速に旋回させることにより、ストロボスコープのように2色の光効果を発生させることができる。
【0059】
さらに発光デバイスを窓のところで利用することもできる。窓全体を発光デバイスによって被層すれば、日中は透過性であり夜間は基本的に室内だけを照射する発光デバイスを実現することができる。この目的で、発光デバイスにおいて外側に向いた電極は、放射発生のために設けられた有機層3aにおいて発せられる光に対し反射性となるよう、半透過性に形成される。
【0060】
なお、本発明は実施例に基づくこれまでの説明によって限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴ならびにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴の組み合わせ各々が含まれ、このことはそのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていないにしてもあてはまる。
【0061】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第102006046196.7号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によって本願に取り込まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は発光デバイスに関する。
【0002】
刊行物US 6,626,554には発光デバイスについて記載されている。
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、非常に多岐にわたり使用することのできる発光デバイスを提供することである。
【0004】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスは第1の光出射側と第2の光出射側を有している。つまりこの発光デバイスは2つの側を有しており、発光デバイス動作中、これら2つの側から光が送出される。その際、これらの光出射側ないしは光出射面は有利には、発光デバイスの互いに反対の側である。動作中、発光デバイスはたとえばその前面および背面から光を送出する。
【0005】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスはさらに有機積層体を有しており、これは第1の光出射面と第2の光出射面との間に配置されている。この有機積層体には少なくとも1つの有機層が含まれており、これは電磁放射を発生させるために設けられている。電磁放射の一部分は、発光デバイスの第1の光出射面の方向で有機積層体から出ていく。電磁放射の別の部分は、発光デバイスの第2の光出射面の方向で有機積層体から出ていく。
【0006】
有機積層体に電極層が接していると有利である。たとえば有機積層体において第1の光出射側ないしは光出射面に向いた側に、第1の電極層が接している。有機積層体において第2の光出射側ないしは光出射面に向いた側は第2の電極層に接している。第1の電極層をたとえばアノードとし、第2の電極層をたとえばカソードとすることができ、あるいはこの逆とすることができる。
【0007】
有機積層体には、電磁放射の発生に適した少なくとも1つの層のほかに、さらに別の有機層を含めることができ、たとえばホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などを含めることができる。
【0008】
その際に有利であるのは、ホール輸送層とホール注入層を有機積層体においてアノードに向いた側に設ける一方、電子輸送層と電子注入層を有機積層体においてカソードに向いた側に設けることである。
【0009】
この場合、一方の側に設けられたホール輸送層およびホール注入層と、他方の側に設けられた電子輸送層および電子注入層との間に、電磁放射の発生に適した有機層を配置すると有利である。有利には有機積層体の有機材料はたとえば、有機積層体から出射する光に対し光透過性であるよう形成されている。
【0010】
発光手段の少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスの動作中、第1および第2の光出射側を介してそれぞれ異なる光特性を有する光が発光デバイスから出射される。つまり第1の光出射側を介して第1の光特性をもつ光が発光デバイスから出射され、第2の光出射側を介して第2の光特性をもつ光が発光デバイスから出射される。この場合、第1の光特性は第2の光特性とは異なる。つまりこのことは、発光デバイスは自身の複数の光出射側からそれぞれ異なる光を放射することも意味する。
【0011】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスは第1の光出射側と第2の光出射側を有している。さらにこの発光デバイスは、第1の光出射側と第2の光出射側との間に配置されている有機積層体を有しており、発光デバイスの動作中、第1の光出射側と第2の光出射側を通って、それぞれ異なる光特性の光が出射される。
【0012】
本発明による発光デバイスは殊に以下の考察を基礎とするものである:
特定の用途のためには、たとえば液晶ディスプレイのバックライトに使用する場合などは、均質に発光する面放射体を発光デバイスとして組み込むのが望ましい。たとえば移動電話ここでは殊に折り畳み型携帯電話のような特定の製品において使用する場合、著しく狭い空間たとえば互いに「背中合わせ」に配置された2つの液晶ディスプレイを背後から照射することが必要になる。ここで説明したような発光デバイスは、2つのディスプレイを背後から照射するためにきわめて良好に適している。なぜならばこのようなディスプレイはそれぞれ異なる技術で実装されている可能性があるからであり、したがって第1の光出射側と第2の光出射側から送出される光が、背後から照射すべきディスプレイの特性にそれぞれ整合されていると有利である。
【0013】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその強度に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその光強度の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0014】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその輝度に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその輝度の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0015】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側から出射される光はその放射特性に関して、第2の光出射側から出射される光とは異なっている。すなわち第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその放射特性の点でそれぞれ異なる光特性を有している。つまりたとえば、第1の光出射側を介して出射される光において第1の光出射側に対し相対的な強度角度分布は、第2の光出射側を介して出射される光において第2の光出射側に対し相対的な強度角度分布とは異なっている。
【0016】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射面から出射される光はその色に関して、第2の光出射面から出射される光とは異なっている。つまり第1の光出射側から出射される光と第2の光出射側から出射される光は、少なくともその色の点でそれぞれ異なる光特性を有している。
【0017】
たとえば第1の光出射側を介して発光デバイスから白色光を送出させることができる。さらにその際、第2の光出射側を介して緑色、青色、赤色または他の色の光を発光デバイスから送出させることができる。
【0018】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側には波長変換材料が含まれている。
【0019】
波長変換材料は、第1の波長範囲の入射光を吸収して第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を送出する材料であり、一般に第2の波長範囲は第1の波長範囲よりも長い波長を有している。波長変換材料として有機材料たとえばペリレン発光材料を使用することができる。さらに以下の無機材料も波長変換材料として使用するのに適している。すなわち、希土類金属でドーピングされたガーネット、希土類金属でドーピングされたアルカリ土類硫化物、希土類金属でドーピングされたチオガレート、希土類金属でドーピングされたアルミ酸塩、希土類金属でドーピングされたオルトケイ酸塩、希土類金属でドーピングされたクロロシリケート、希土類金属でドーピングされたアルカリ土類ケイ素窒化物、希土類金属でドーピングされた酸窒化物、希土類金属でドーピングされたアルミニウム酸窒化物を有するグループも波長変換材料として使用するのに適している。
【0020】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側には波長変換材料が含まれている。この場合、第2の光出射側には波長変換材料が含まれていないか、別の波長変換材料、付加的な波長変換材料、または異なる濃度の波長変換材料が含まれている。これにより、第1の光出射側と第2の光出射側によってそれぞれ異なる色の光を発光デバイスから出射させることができる。
【0021】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側にはカラーフィルタ材料が含まれている。
【0022】
このカラーフィルタは、特定の波長範囲の光をフィルタリングするのに適している。つまりこの波長の光は、カラーフィルタによって少なくとも部分的に吸収される。このようにしてたとえば白色光から第1の色成分がフィルタリングされるようにすることができ、第2の色成分が実質的に阻止されることなくカラーフィルタを通過して放射されるようにすることができる。この場合、カラーフィルタによる色のサブ領域は実質的に第2の色成分の光を放出する。
【0023】
カラーフィルタはたとえば、カラーフィルタ材料の粒子の形態でマトリックス材料に埋め込まれている。
【0024】
発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の光出射側にはカラーフィルタ材料が含まれており、その場合、第2の光出射側にはカラーフィルタ材料は含まれていないか、または他のカラーフィルタ材料、付加的なカラーフィルタ材料または別の濃度のカラーフィルタ材料が含まれている。このようにして第1の光出射側から、第2の光出射側とは異なる色の光を送出させることができる。
【0025】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この発光デバイスの少なくとも1つの光出射側には光散乱材料が含まれている。この光散乱材料は、光散乱材料を含む光出射側を介して光を散乱させるのに適している。このようにすることで、この光出射側を介して出射される光の角度分布ならびに強度を変えることができる。
【0026】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、たとえば第1の光出射側に光散乱材料が含まれている。この場合、第2の光出射側には光散乱材料が含まれていないか、別の光散乱材料、付加的な光散乱材料、または異なる濃度の光散乱材料が含まれている。このようにすれば、第1の光出射側と第2の光出射側から送出される光をその放射特性に関して異ならせることができる。
【0027】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、発光デバイスの第2の光出射側から白色光が送出され、第1の光出射側からカラー光が送出される。ここでカラー光とは、白色ではなく有彩色たとえば青色、緑色、赤色または黄色のことである。上述の色の混合も可能である。
【0028】
本発明による発光デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの半透過性の電極が有機積層体に接している。所定の反射特性と所定の透過特性をもつ半透過性の電極により、発光デバイスの光出射面を介して送出される光の強度、放射特性ならびに角度分布を、所期のように調整することができる。したがってたとえば、光出射側のうち少なくとも1つを介して出射される光の放射特性を、有機積層体において放射発生のために設けられている有機層と半透過性の電極との間隔によって定めることができる。これはたとえばいわゆるキャビティ効果の利用によって実現可能である。
【0029】
次に、既述の発光デバイスについて実施例およびそれらに係わる図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による発光デバイスに関する第1の実施例の概略断面図
【図2A】本発明による発光デバイスに関する第2の実施例の概略断面図
【図2B】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2C】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2D】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2E】放射発生のために設けられている層と第2の電極との間隔に依存して前方方向での放出強度Iを示す図
【図2F】白色の広帯域放出層における緑色と青色の励起子の分布をシミュレートした図
【図3A】本発明の第3の実施例による発光デバイスの概略断面図
【図3B】第1の光出射側と第2の光出射側により放出される光の強度を光の波長に依存して示す図
【図4A】本発明の第4の実施例による発光デバイスの概略断面図
【図4B】第1の光出射側から放出される光の波長に対する出射の改善について示す
【図5】本発明の第5の実施例による発光デバイスを示す概略断面図
【0031】
実施例および図面において、同一の構成要素または同じ働きをもつ構成要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。図示されている構成要素は必ずしも縮尺どおりに示されたものではなく、理解しやすくするため個々の要素が誇張されて大きく描かれている場合もある。
【0032】
図1は、本明細書で述べる発光デバイスに関する第1の実施例を概略的に示す断面図である。
【0033】
第1の実施例による発光デバイスには基板8が含まれている。基板8は光透過性として形成されている。この場合、基板8を透過性またはたとえば曇りガラスといったように拡散散乱性として形成することができる。基板8はたとえばガラスまたはプラスチックシートから成る。
【0034】
基板8には第1の電極5が取り付けられている。第1の電極をアノードまたはカソードとすることができる。第1の電極5は有利には放射透過性として形成されている。第1の電極5には、その基板8とは反対側に有機積層体3が続いている。有機積層体3には1つまたは複数の有機層が含まれている。有機層のうち1つの層3aは、有利には放射発生のために設けられている。有機積層体3にはさらに別の有機層3b、3cを含めることができ、これらの層はたとえば電荷キャリアを放射発生のために設けられた層3aへ輸送および/または注入するのに適したものである。
【0035】
有機積層体3において第1の電極5とは反対側には第2の電極6が続いている。第1の電極5がアノードであるならば第2の電極6はカソードである。第1の電極5がカソードであるならば第2の電極6はアノードである。第2の電極5は有利には光透過性として形成されている。
【0036】
第2の電極6において有機積層体3とは反対側にカプセル封止部7が取り付けられている。カプセル封止部7は光透過性として形成されている。この場合、カプセル封止部7をたとえば曇りガラスといったように光学的に拡散散乱性として、あるいは透過性として形成することができる。カプセル封止部7はたとえばガラスまたはプラスチックシートから成る。さらにカプセル封止部7を薄膜カプセルとすることができる。
【0037】
薄膜カプセルは少なくとも1つのバリア層を有している。バリア層は、有機積層体ならびに敏感な電極材料をたとえば湿気や酸素といった悪影響を及ぼす物質の侵入から保護するために設けられている。
【0038】
薄膜カプセルは少なくとも1つの薄膜層たとえばバリア層を有しており、これはスパッタリング、蒸着、プラズマ支援型CVD(chemical vapour deposition)といった薄膜プロセスによって取り付けられている。
【0039】
有利には薄膜カプセルには交互に設けられた複数のバリア層が含まれており、この場合、材料組成の点で異なる少なくとも2つのバリア層が規則的な順序で配置されている。つまり換言すれば、薄膜カプセルは第1のバリア層と第2のバリア層を有しており、その際、第1のバリア層の材料組成は第2のバリア層の材料組成とは異なっている。第1のバリア層を、たとえば酸化ケイ素を有するかまたはこの材料から成るように形成することができ、第2のバリア層を、たとえば窒化ケイ素を有するかまたはこの材料から成るように形成することができる。さらに第1および第2のバリア層は、それらの材料組成に関して交互に配置されている。
【0040】
薄膜カプセル内におけるバリア層のこのような交互の層列によって、薄膜カプセルが著しく密に形成されるという利点が得られる。このことは一般に、個々のバリア層の取り付けによりそれらの層に発生する可能性のあるピンホールつまり小さい孔を、それらの上に位置するバリア層によって覆うことができ、もしくはそれらの材料によって充填することすらできる、ということに基づくものである。さらにこの場合、ある1つのバリア層のピンホールが隣り合うバリア層のピンホールと貫通して結合する確率は著しく低い。このことは、材料組成に関して交互に配置されているバリア層について殊にあてはまる。
【0041】
殊に有利であるのは、交互に配置されているバリア層のうち一方のバリア層が酸化ケイ素を有しており、他方のバリア層が窒化ケイ素を有することである。たとえば第1のバリア層がSiO2から成るようにし、その場合には第2のバリア層がSi3N4から成るようにすることができる。
【0042】
図1の実施例による発光デバイスは第1の光出射側1を有している。第1の光出射側1は、基板8において有機積層体3とは反対側に位置している。第1の光出射側1を通って、第1の光特性をもつ光21が発光デバイスから送出される。
【0043】
発光デバイスはさらに第2の光出射側2を有しており、これはカプセル封止部7において有機積層体とは反対側に位置している。第2の光出射側2を通って、第2の光特性をもつ光222が発光デバイスから送出される。
【0044】
第1の光特性をもつ光21は第2の光特性をもつ光22とは異なっている。つまり発光デバイスは第1の光出射側1と第2の光出射側2を介して、光特性がそれぞれ異なる光21,22を放出する。
【0045】
図2Aは、本明細書で説明する発光デバイスに関する第2の実施例の概略断面図である。
【0046】
この実施例によれば、第2の電極6はカソードである。カソードは、放射発生のために設けられた有機層3aにおいて発せられた電磁放射に対し少なくとも部分的に反射するように形成されている。放射発生のために設けられている有機層3aは、たとえば530nmの波長をもつ光の発生に適しており、1.7の屈折率を有している。放射発生のために設けられている有機層3aは、第2の電極6から間隔tを有している。
【0047】
図2B、図2C、図2D、図2Eには、前方方向すなわち第1の光出射側1の方向における光21の任意の単位での放出強度Iが、放射発生のために設けられている層3aと第2の電極6との間隔tに依存して示されている。いわゆるキャビティ効果ゆえに、強度Iならびにその角度分布は間隔tに依存する。したがって間隔tによって、第1の光出射側1から放射される光の放射特性を所期のように調節することができる。
【0048】
たとえば、放射発生のために設けられている層3aを白色広帯域発光体を備えた有機層3aとすることができる。この白色広帯域発光体において、種々の色に対する励起子の崩壊ゾーンにそれぞれ異なる長さをもたせることができる。このようにすることで、図2B〜図2Eに関連して説明されるキャビティ効果により、光出射側1,2から放射される光に対する色選択性の調整を実現することができる。この目的で図2Fには、放射発生のために設けられており白色広帯域発光体材料を含む有機層3aにおける緑色の励起子11と青色の励起子12のシミュレートされた分布が示されている。この場合、青色の励起子は平均的に、有機積層体3と第1の電極5との間の界面において著しく密に存在している。
【0049】
発光手段としてたとえば、それぞれ所定の反射特性を有する2つの半透過性の電極を使用した場合、キャビティ効果を利用して第1および第2の光出射側1,2により種々の色の光放射を達成することができる。その際、両方の電極に互いに異なる反射特性をもたせることができる。
【0050】
図3Aは、本発明の第3の実施例による発光デバイスの概略断面図である。第3の実施例による発光デバイスは、アノードを成す透過性の第1の電極5を有している。このアノードは、有機積層体3にホールの注入に適している。有利にはアノードは、たとえば酸化インジウムスズ(ITO, Indium Tin Oxide)のように電子に対し高い仕事関数をもつ材料を有している。
【0051】
第1の電極には有機積層体3が続いており、この有機積層体3はここではホール輸送層3bを有しており、この層はポリマーたとえばPEDOTから成る。ホール輸送層3bは120nmの厚さD23を有している。ホール輸送層3bには放射を発生させるための有機層3aが続いており、この有機層3aはここでは80nmの厚さD22を有しており、LEPによって形成されている。放射発生のために設けられている有機層3aには電子輸送層3cが続いており、この層はCaから成り、3nmの厚さD21を有している。電子輸送層3cには第2の電極6が取り付けられており、第2の電極6はここでは銀から成り、10nmの厚さD1を有している。第2の電極6はカソードを成し、これは電子に対し僅かな仕事関数を有している。
【0052】
カソードは半透過性ミラーを成しており、この場合、層厚D1によって所定の透過と反射の比が調節されている。第2の電極6を通って出射される光22すなわち第2の光出射側2を介して発光デバイスから出射される光の色成分と強度を、第2の電極6の厚さD1によって調節することができる。
【0053】
図3Bには、第1の光出射側1を介して放出された光21の強度(特性曲線14)と、第2の光出射側2を介して放出された光22の強度(特性曲線13)が、光の波長に依存して描かれている。
【0054】
図4Aには、本発明の第4の実施例による発光デバイスの概略断面図が示されている。図4の実施例の場合、基板8において有機積層体3とは反対側に散乱シートが取り付けられている。この散乱シートは50μmの厚さであり、光の散乱に適した材料の50重量%の粒子を有している。たとえばそれらの粒子をポリマーマトリックスにおけるポリマー粒とすることができる。つまり図4Aの実施例の場合、第1の光出射側1には光散乱性の材料が含まれている。これによって、第1の光出射側1を介して出射された光21の色成分にも強度にも作用を及ぼすことができる。
【0055】
図4Bには、表面法線nに対する0°の角度(特性曲線15)と、表面法線nに対する60°の角度(特性曲線16)に関して、第1の光出射側から放出される光21の波長に対する出射の改善度Vがパーセントで示されている。
【0056】
図5には、本発明の第5の実施例による発光デバイスを示す概略断面図が示されている。この実施例の場合、カラーフィルタおよび/または波長変換材料の粒子10が発光デバイスの基板8に取り込まれている。つまりこの場合、第1の光出射側1には、カラーフィルタ材料および/または波長変換材料が含まれている。
【0057】
たとえば、放射を発生するために設けられている有機層3aは青色光を放出するのに適している。その場合、粒子10はたとえば黄色を再放出する波長変換材料または赤緑色を再放出する波長変換材料となる。このようにして、第1の光出射側1から白色の混合光が放出される。第2の光出射側2からは青色光が放出される。これに対する代案としてたとえば、放射発生のために設けられている有機層3aを白色光の発生に適したものとすることもできる。その場合には粒子10は緑色のカラーフィルタ材料となる。このようにした場合、第2の光出射側2から白色の混合光が放出される。第1の光出射側1からは緑色光が放出される。
【0058】
ディスプレイのバックライト用発光デバイスとして使用することのほか、本発明による発光デバイスはたとえば2色の間仕切りないしはスペース分離部材あるいは効果照明としても適しており、その場合、発光デバイスは任意に選定可能な形状で構成され、旋回可能に支承されている。このようにすれば発光デバイスを急速に旋回させることにより、ストロボスコープのように2色の光効果を発生させることができる。
【0059】
さらに発光デバイスを窓のところで利用することもできる。窓全体を発光デバイスによって被層すれば、日中は透過性であり夜間は基本的に室内だけを照射する発光デバイスを実現することができる。この目的で、発光デバイスにおいて外側に向いた電極は、放射発生のために設けられた有機層3aにおいて発せられる光に対し反射性となるよう、半透過性に形成される。
【0060】
なお、本発明は実施例に基づくこれまでの説明によって限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴ならびにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴の組み合わせ各々が含まれ、このことはそのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていないにしてもあてはまる。
【0061】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第102006046196.7号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によって本願に取り込まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスにおいて、
第1の光出射側(1)と、
第2の光出射側(2)と、
有機積層体(3)が設けられており、
該有機積層体(3)は前記第1の光出射側(1)と前記第2の光出射側(2)との間に配置されており、発光デバイス動作中、前記第1の光出射側(1)と前記第2の光出射側(2)を介して、それぞれ異なる光特性をもつ光(21,22)が出射されることを特徴とする、
発光デバイス。
【請求項2】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは強度(I)に関して異なる、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは輝度に関して異なる、請求項1または2記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは放射特性に関して異なる、請求項1から3のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは色に関して異なる、請求項1から4のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの光出射側(1,2)には波長変換材料(10)が含まれている、請求項1から5のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの光出射側(1,2)にはカラーフィルタ材料(10)が含まれている、請求項1から6のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの光出射側(1,2)には光を散乱させる材料(9)が含まれている、請求項1から7のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの半透過性の電極(5,6)が設けられており、該電極(5,6)は前記有機積層体(3)に接している、請求項1から8のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記第2の光出射側(2)から白色光が放出され、前記第1の光出射側(1)からカラー光たとえば青色光、緑色光または赤色光が放出される、請求項1から9のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記光出射側(1,2)の1つから出射される光(21,22)の放射特性は、前記有機積層体(3)において放射発生のために設けられている有機層(3a)と前記半透過性の電極(5,6)との間隔(t)に依存する、請求項1から10のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記光出射側(1,2)の1つから出射される光(21,22)の放射特性はキャビティ効果を利用して調節される、請求項1から11のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項1】
発光デバイスにおいて、
第1の光出射側(1)と、
第2の光出射側(2)と、
有機積層体(3)が設けられており、
該有機積層体(3)は前記第1の光出射側(1)と前記第2の光出射側(2)との間に配置されており、発光デバイス動作中、前記第1の光出射側(1)と前記第2の光出射側(2)を介して、それぞれ異なる光特性をもつ光(21,22)が出射されることを特徴とする、
発光デバイス。
【請求項2】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは強度(I)に関して異なる、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは輝度に関して異なる、請求項1または2記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは放射特性に関して異なる、請求項1から3のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記第1の光出射側(1)を介して出射された光(21)は、前記第2の光出射側(2)を介して出射された光(22)とは色に関して異なる、請求項1から4のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの光出射側(1,2)には波長変換材料(10)が含まれている、請求項1から5のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの光出射側(1,2)にはカラーフィルタ材料(10)が含まれている、請求項1から6のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの光出射側(1,2)には光を散乱させる材料(9)が含まれている、請求項1から7のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの半透過性の電極(5,6)が設けられており、該電極(5,6)は前記有機積層体(3)に接している、請求項1から8のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記第2の光出射側(2)から白色光が放出され、前記第1の光出射側(1)からカラー光たとえば青色光、緑色光または赤色光が放出される、請求項1から9のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記光出射側(1,2)の1つから出射される光(21,22)の放射特性は、前記有機積層体(3)において放射発生のために設けられている有機層(3a)と前記半透過性の電極(5,6)との間隔(t)に依存する、請求項1から10のいずれか1項記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記光出射側(1,2)の1つから出射される光(21,22)の放射特性はキャビティ効果を利用して調節される、請求項1から11のいずれか1項記載の発光デバイス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【公表番号】特表2010−505246(P2010−505246A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529515(P2009−529515)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001537
【国際公開番号】WO2008/040275
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001537
【国際公開番号】WO2008/040275
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
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