説明

発光デバイス

【課題】発光デバイスを反射性の基板に実装した場合に、発光デバイスから出射した光が、基板で反射され発光デバイスに再入射することを防ぎ、さらなる光取出し効率の向上を図る。
【解決手段】発光素子110と、該発光素子の周囲を覆う透光性部材130と、一端が前記発光素子に接続され、他端が前記透光性部材の外部へと引き出された接続部材120と、表面が反射性であり、前記接続部材の他端を載置して前記表面が前記透光性部材と離間して対向する基板140と、を有する発光デバイスにおいて、前記基板上に、前記発光素子から前記基板に向けて出射した所定範囲の光を反射して、前記透光性部材に戻らないようにする反射部150を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性部材に発光素子を封入した発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光デバイス、特に発光ダイオード(LED)を透光性部材に封入した発光デバイスでは、その発光効率を向上させることが肝要である。LEDの発光効率向上策としては、発光層で発光する際の内部量子効率の向上と同様、発光した光を透光性部材の外部に取り出す際の光取出し効率の向上も重要である。
【0003】
かかる問題に対処した従来技術として、特許文献1の半導体発光装置がある。
【0004】
特許文献1に記載された発光デバイスとしての半導体発光装置を図22に図示する。半導体発光装置900は、半導体発光素子910、透明基板920、リード端子930、ボンディングワイヤ940、942、透明封止樹脂950から構成される。
【0005】
特許文献1に記載された発光デバイスとしての半導体発光装置900では、表面、裏面の両面から光を出射する半導体発光素子910を透明基板920上に実装し、それらをリード端子930、ボンディングワイヤ940、942とともに略球形の透明封止樹脂950に埋設して、光を全周方向に放射させることにより、光取出し効率の向上を図っている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された半導体発光装置900を、図23に図示するように、リード端子930を介して上面への光の取り出し効率を高めるために反射性の実装基板960に実装した場合、半導体発光素子910から実装基板960の方向に出射した光は実装基板960で反射され、透明封止樹脂950内に再入射する。図23中、白抜き矢印が半導体発光素子910からの出射光、黒塗矢印が実装基板960での反射光を示す。
【0007】
透明封止樹脂950内に再入射した光の多くは、半導体発光素子910まで達し、半導体発光素子910内で熱エネルギーに変換されて損失となったり、あるいは透明封止樹脂950内で反射を繰り返すうちに損失となったりして、その分光取出し効率が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−062493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような背景技術に鑑み、発光デバイスを基板に実装し、基板を反射性とした場合に、発光デバイスから出射した光が、基板で反射され発光デバイスに再入射することを防ぎ、さらなる光取出し効率の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明による発光デバイスは、下記に記載の手段を採用する。すなわち本発明の発光デバイスは、発光素子と、発光素子の全周囲を覆う透光性部材と、一端が発光素子に接続され、他端が透光性部材の外部へと引き出された接続部材
と、表面が反射性であり、接続部材の他端を載置して前記表面が透光性部材と離間して対向する基板とを有する発光デバイスにおいて、前記基板上の、発光素子から基板に向けて出射したが反射により前記透光性部材に戻る範囲に、透光性部材に戻らないようにする反射部を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明における反射部は、発光素子と基板との間にその頂点を有する円錐形状であることが好ましい。
【0012】
また、本発明における反射部は、発光素子と基板との間にその頂点を有するドーム形状であることが好ましい。
【0013】
また、本発明における反射部は、基板上に形成された粗面であることが好ましい。
【0014】
また、本発明による発光デバイスは、一端および他端を有するリードフレームをさらに有し、リードフレームの一端が接続部材の他端に接続され、リードフレームの他端が基板に載置されて前記基板の表面が透光性部材と離間して対向してもよい。
【0015】
また、本発明による発光デバイスは、接続部材の一端が、発光素子が実装されているサブマウントを介して発光素子に接続してもよい。
【0016】
また、本発明による発光デバイスは、発光素子が、前記透光性部材の中に発光素子から出射された光の波長を変換する波長変換材料を略均一に含んでいる波長変換部材で全周囲を覆われていることが好ましい。
【0017】
また、本発明による発光デバイスは、上記波長変換部材をさらに透光性部材で全周囲を覆っていることが好ましい。
【0018】
また、本発明における透光性部材、もしくは波長変換部材の形状は、発光素子を中心とする球形状であることが好ましい。
【0019】
また、本発明における波長変換部材の形状は、透光性部材と略同心の球形状であることが好ましい。
【0020】
(作用)
発光素子と、発光素子の周囲を覆う透光性部材と、一端が発光素子に接続され、他端が透光性部材の外部へと引き出された接続部材と、表面が反射性であり、接続部材の他端を載置して前記表面が透光性部材と離間して対向することで上面への光の取り出し効率の向上に寄与する基板とを有する発光デバイスにおいて、前記基板上に、発光素子から基板に向けて出射した所定範囲の光を反射して、透光性部材に戻らないようにする反射部を設けたことで、発光素子から出射した光が、反射性基板で反射され透光性部材に再入射するのを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明のように、本発明の発光デバイスにおいては、下記に記載する効果を有する。
【0022】
発光素子と、発光素子の周囲を覆う透光性部材と、一端が発光素子に接続され、他端が透光性部材の外部へと引き出された接続部材と、表面が反射性であり、接続部材の他端を載置して前記表面が透光性部材と離間して対向する基板とを有する発光デバイスにおいて、前記基板上に、発光素子から基板に向けて出射した所定範囲の光を反射して、透光性部
材に戻らないようにする反射部を設けたことで、発光素子から出射した光が、反射性基板で反射され透光性部材に再入射するのを防ぐことが可能となる。
【0023】
したがって、発光デバイスを反射性基板に実装した場合において、発光素子から出射した光の一部が、透光性部材あるいは発光素子内部で吸収され、損失となることを防止できるので、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0024】
また、発光素子を覆い、発光素子から出射された光の波長を変換する波長変換部材を、発光素子と透光性部材との間に設けたことにより、透光性部材全体を波長変換部材とする場合と比較して、透光性部材と空気層との界面に対して、蛍光体で波長変換された光束をより点光源に近い状態とすることが可能となる。
【0025】
そのため、透光性部材から空気層へと入射する場合の臨界角以下の光線が増え、透光性部材と空気層との界面での全反射が低減されて、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。特に、透光性部材が蛍光体層を含んだ球形状の場合に、球形状としたことのメリットを最大限生かすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における発光デバイスの平面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の第一の変形例における発光デバイスの断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の第二の変形例における発光デバイスの断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態の第三の変形例における発光デバイスの断面図である。
【図6】図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図7】図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図8】図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図9】図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図10】図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【図11】図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【図12】図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【図13】図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【図14】図3の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図15】図3の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図16】図3の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図17】図3の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【図18】本発明の第二の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【図19】本発明の第三の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【図20】本発明の第四の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【図21】本発明の第五の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【図22】従来の発光デバイスの構成を示す図である。
【図23】従来の発光デバイスを実装基板に搭載した構成を示す図である。
【図24】従来の蛍光体含有透明封止樹脂を備えた発光デバイスの光路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明を適用した発光デバイスの実施形態を説明する。
【0028】
以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。従って、それらの名称および機能も同じであるので、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0029】
また、以下の図面においては、各部構成の寸法比率は説明に応じて適宜誇張して描かれており、必ずしも実際の寸法比率を示すものではない。
【0030】
(第一の実施形態)
図1、図2を用いて本発明の第一の実施形態を説明する。発光デバイス100は、発光素子110、接続部材としてのボンディングワイヤ120、透光性部材としての透明封止樹脂130、基板140、基板に配置された配線層142、反射部としての反射部材150、反射層160から構成される。
【0031】
発光素子110は表面および裏面の両面から出射するタイプの発光ダイオード(LED)であり、例えば、サファイア等の透明基板上にN型層、発光層、P型層をこの順に積層したものを用いることができる。発光素子110の表面上の正極、負極の電極にボンディングワイヤ120が接続され、発光素子110とボンディングワイヤ120の一部を球形状の透明封止樹脂130で覆っている。発光素子110および透明封止樹脂130の大きさは特に限定されるものではないが、一例として、発光素子110の縦×横×厚さを0.3mm×0.3mm×200μm、透明封止樹脂130の直径を1.5mm程度とすることができる。
【0032】
透明封止樹脂130としては、透光性のあるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0033】
また、ボンディングワイヤ120としては、20〜30μmφ程度のAuワイヤ、Alワイヤ等の一般的な材料を用いることができる。
【0034】
上述のようにして構成した発光デバイスは、両ボンディングワイヤ120に所定の電源を接続することにより、発光デバイスの全方向に光を出射する。LEDは側面からも発光するからである。
【0035】
かかる発光デバイスとすることにより、発光素子の表面、裏面のいずれか1面から光を出射する場合に比べて光の取り出し効率を向上させることができる。発光素子110内に、損失の原因となる、光路を折り返すための反射部分、すなわち1面から光を出射させる場合に、光出射面に対し発光層と反対側に設ける反射ミラー等が存在しないからである。
【0036】
また、透明封止樹脂130を球形状とすることにより、透明封止樹脂130の中央に配された発光素子110から出射した光の光軸と、透明封止樹脂130とその周囲の空気層との界面が互いに垂直に近い状態で均質化され、光の取り出し効率がより向上するという効果もある。
【0037】
透明封止樹脂130の外部へと引き出されたボンディングワイヤ120は、基板140の配線層142に超音波熱圧着等一般的なボンディング方法で接続される。
【0038】
基板140としては、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、SiC等のセラミック基板、金属基板等を用いることができる。基板140の表面は、発光素子110より基板140に向けて出射された光を前方(発光素子110の方向)に反射すべく、全面を極力反射性に形成する。
【0039】
本実施形態では、基板140をガラスエポキシ基板とし、ガラスエポキシ基板上に絶縁材料で形成された反射層160を設け、その上に配線層142を設けている。
【0040】
反射層160は、例えば、白色顔料を含有した樹脂を塗布して形成することができる。
また、配線層142も反射率を高くすべく、銅配線にNiメッキ、その上にAgメッキを施したものを好適に用いることができる。
【0041】
そして、発光素子110の下部に位置する基板140上には、発光素子110と基板140との間にその頂点を有する円錐形状の反射部材150を載置する。本実施形態では、反射部材150として、表面に反射コーティングを施した円錐形状の部材を用い、これを反射層160上に接着剤等によって貼りつけている。
【0042】
この反射部材150は、発光素子110より出射した光のうち、反射部材150がない場合に、反射層160で反射されて透明封止樹脂130内に戻ってしまう範囲の光を、透明封止樹脂130に戻らないようにする。反射部材150の直径および頂角は、発光素子110および透明封止樹脂130の大きさ、発光素子110と基板140の距離等を勘案し、前記条件を充足する範囲で自由に設計することができる。また、円錐形状にすることで発光素子110より出射された光を対照的に反射することが可能である。
【0043】
反射部材150がない場合、発光素子110から出射した光のうち一部は、反射層160で反射されて透明封止樹脂130に再入射する。透明封止樹脂130に再入射した光は、発光素子110に吸収されて熱エネルギーとなり、損失となるか、あるいは透明封止樹脂130内で全反射を繰り返して損失となる恐れがある。
【0044】
そこで本実施形態では、上述の反射部材150を設けることにより、発光素子110より基板140に向けて出射される光のうち、反射層160で反射されて透明封止樹脂130に戻る光をなくすようにしている。
【0045】
上述のように、本発明によれば、発光素子110と、発光素子110の周囲を覆う透明封止樹脂130と、一端が発光素子110に接続され、他端が透明封止樹脂130の外部へと引き出されたボンディングワイヤ120と、表面が反射性であり、ボンディングワイヤ120の他端を載置して表面が透明封止樹脂130と離間して対向する基板140とを有する発光デバイス100において、基板140上に、発光素子110から基板140に向けて出射したが反射により透明封止樹脂130へ戻る範囲に、透明封止樹脂130に戻らないようにする反射部材150を設けたことで、発光素子110から出射した光が、反射性の基板140で反射され透明封止樹脂130に再入射するのを防ぐことが可能となる。つまり、反射部材は、前記範囲を含んでいれば、前記範囲よりも広い範囲に設置されても良く、また、前記範囲の一部に設置されても良い。
【0046】
したがって、発光デバイス110を反射性の基板140に実装した場合において、発光素子110から出射した光の一部が、透明封止樹脂130あるいは発光素子110内部で吸収され、損失となることを防止できるので、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0047】
(第一の実施形態の第一の変形例)
図3を用いて本発明の第一の実施形態の第一の変形例を説明する。本変形例に係る発光デバイス600は、発光素子110をボンディングワイヤ620によりリードフレーム610に接続し、一体化された発光素子110とボンディングワイヤ620とリードフレーム610の一部を透明封止樹脂130で覆い、反射部材150を載置した基板140に実装して構成している。リードフレーム610の材料としては、例えばCuコアにAuコートしたものを用いることができる。
【0048】
本変形例によっても、発光デバイス600を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐ
ことが可能となり、第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本変形例では、発光デバイス600の実装構造がより強固になるという効果がある。
【0049】
(第一の実施形態の第二の変形例)
図4を用いて本発明の第一の実施形態の第二の変形例を説明する。本変形例に係る発光デバイス200は、発光素子110をリードフレーム210にフリップチップ実装し、反射部材150を載置した基板140に実装して構成している。
【0050】
本変形例によっても、発光デバイス200を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐことが可能となり、第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本変形例では、発光デバイス200の実装構造がより強固になるという効果がある。
【0051】
(第一の実施形態の第三の変形例)
図5を用いて本発明の第一の実施形態の第三の変形例を説明する。本変形例に係る発光デバイス250は、発光素子110をサブマウント260にフリップチップ実装し、サブマウント260の背面に接続部材としてのボンディングワイヤ120を接続し、反射部材150を載置した基板140に実装して構成している。
【0052】
サブマウント260は、透光性を有するシリカガラス等で形成し、その表面、裏面および側面に、サブマウント260の表面および裏面を接続する配線層をAuスパッタ等で形成している(図示せず)。
【0053】
本変形例によっても、発光デバイス250を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐことが可能となり、第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本変形例では、発光素子110がより扱い易くなるという効果がある。
【0054】
ここで、本発明による発光デバイスの製造方法について説明する。
【0055】
[発光デバイス100の製造方法1]
図1に示す発光デバイス100の製造工程を図6ないし図9を用いて説明する。
【0056】
まず、図6に図示するように、反射部材150が載置された基板140上に台座510を配置し、台座510上に発光素子110を樹脂、粘着テープ、吸着等により仮固定する。
【0057】
つぎに、図7に図示するように、発光素子110と基板140の配線層142とをボンディングワイヤ120で接続する。
【0058】
つぎに、図8に図示するように、発光素子110の仮固定を外した後、台座510を外す。
【0059】
つぎに、図9に図示するように、発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下する。この滴下の過程において、透明封止樹脂130は表面張力により発光素子110を中心とした球形状となる。
【0060】
以上の製造工程により発光デバイス100を得ることができる。
【0061】
[発光デバイス100の製造方法2]
図1に示す発光デバイス100の製造方法の別法を図10ないし図13を用いて説明する。
【0062】
まず、図10に図示するように、基板140上に発光素子110を樹脂、粘着テープ、吸着等により仮固定する。
【0063】
つぎに、図11に図示するように、発光素子110と基板140の配線層とをボンディングワイヤ120で接続する。この時のワイヤ形状は、発光デバイス100の最終形態として必要な長さを確保すべくループを大きくとる。
【0064】
つぎに、図12に図示するように、発光素子110の仮固定を外すとワイヤの弾性で発光素子110は押し上げられる。
【0065】
つぎに、図13に図示するように、反射部材150を載置する。
【0066】
つぎに、上述の製造方法1と同様に発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下して、発光デバイス100を得ることができる(図9参照)。
【0067】
[発光デバイス600の製造方法]
図3に示す発光デバイス600の製造工程を図14ないし図17を用いて説明する。
【0068】
まず、図14に図示するように、ステージ520に発光素子110を吸引固定もしくは、樹脂、粘着テープ等で仮固定して、リードフレーム610と位置合わせする。
【0069】
つぎに、図15に図示すように、ボンディングワイヤ620で発光素子110の電極とリードフレーム610とを接続する。
【0070】
つぎに、図16に図示するように、ステージ520による吸着を解除して、あるいはステージ520と発光素子110との間の樹脂あるいは粘着テープを剥離してステージ520を取り除く。
【0071】
つぎに、図17に図示するように、発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下して、発光デバイスを得る。
【0072】
以上のようにして製造した発光デバイスのリードフレーム610を、図3に図示する反射部材150を搭載した基板140の配線層142に、はんだ付け等により固定して発光デバイス600を得ることができる。
【0073】
(第二の実施形態)
図18を用いて本発明の第二の実施形態を説明する。本実施形態は、第一の実施形態において反射部の形成方法を変えたものである。第二の実施形態に係る発光デバイス300は、反射層310、絶縁層320、反射部材330、樹脂332を構成として含む点で図1の発光デバイス100と異なり、その他の構成については図1と同様である。
【0074】
図18を参照して、反射部材330の形成方法の一例を説明する。
【0075】
まず基板140上の反射部材330の形成個所にシリコーン等の樹脂332を滴下してドーム形状に形成する。つぎに、基板140、樹脂332上にAgスパッタ等により反射層310を形成する。その上に絶縁層320を介して配線層142を形成する。
【0076】
要は基板上に反射性のドーム形状を形成すればよいので、反射部材330の形成方法は上記に限定されず、樹脂で形成したドーム状の部材を基板140上に接着剤等によって貼りつけてもよい。
【0077】
本実施形態によっても、発光デバイス300を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐことが可能となり、透明封止樹脂130あるいは発光素子110内部で吸収され、損失となることを防止できるので、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0078】
(第三の実施形態)
図19を用いて本発明の第三の実施形態を説明する。本実施形態は、第一の実施形態において反射部の形成方法を変えたものである。第三の実施形態に係る発光デバイス350は、反射層360、反射部材370を構成として含む点で図1の発光デバイス100と異なり、その他の構成については図1と同様である。
【0079】
図19を参照して、反射部材370の形成方法の一例を説明する。
【0080】
まず基板140上に白色顔料を含有した樹脂層を塗布して反射層360を形成し、その上に配線層142を形成する。つぎに、反射層360上の反射部材370の形成個所にシボ加工、サンドブラスト加工等の粗面化処理を施して、散乱構造を形成する。
【0081】
反射層360の白色顔料による光の散乱反射に加え、この散乱構造によって、発光素子110から基板140方向に出射された、発光素子110の直下から少なくとも発光素子110から発された光が反射層にて反射して透明封止樹脂130へ戻る範囲の光がさらに散乱反射され、透明封止樹脂130あるいは発光素子110に再入射する光の割合が減少する。
【0082】
したがって、本実施形態によっても、発光デバイス350を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐことが可能となり、透明封止樹脂130あるいは発光素子110内部で吸収され、損失となることを防止できるので、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0083】
(第四の実施形態)
図20を用いて本発明の第四の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス700は、図1に図示する第一の実施形態の発光デバイス100において、透明封止樹脂130に蛍光体粒子732を略均一に含有させ、反射部材150を載置した基板140に実装して構成している。
【0084】
発光デバイスにおいては、発光素子から出射した光を蛍光体により波長変換し、白色光等のさまざまな色を得るということが一般的に行われている。このような発光デバイスにおいては、発光素子を埋設する透明封止樹脂に蛍光体を一様に含有させることにより、発光素子の周囲に配された蛍光体が、発光素子から出射された光の一部を吸収して他の色の光を発光し波長変換する。発光デバイスは、波長変換された光と発光素子から直接出射された光との混合等により所望の色を放射する。
【0085】
本実施形態は、本発明をこのような波長変換型発光デバイスに適用したものである。
【0086】
発光素子110、蛍光体粒子732の材料等は特に限定されないが、一例として、発光素子110を波長450nm程度(青色)のInGaN等の窒化物系化合物半導体とし、
蛍光体粒子732を青色光を吸収して黄色光を発光するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体とし、発光デバイス700の発光色を疑似白色とすることができる。
【0087】
本実施形態で例示するように、本発明は、波長変換型発光デバイスに適用した場合においても、発光デバイス700を基板140に実装した場合に、発光素子110から出射した光が蛍光体粒子732を含有する透明封止樹脂130あるいは発光素子110へ再入射するのを防ぐことが可能となり、蛍光体粒子732を含有する透明封止樹脂130あるいは発光素子110内部で吸収され、損失となることを防止できるので、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0088】
(第五の実施形態)
図21を用いて本発明の第五の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス400は、波長変換部材としての蛍光体層410を発光素子110の全周囲に設け、さらにその全周囲を透明封止樹脂130で覆って構成している。
【0089】
本実施形態は、第四の実施形態において、さらに光取出し効率の向上を企図したものである。
【0090】
蛍光体層410としては、例えば蛍光体粒子を含有させた透明封止樹脂を用いることができる。蛍光体粒子を分散させる透明封止樹脂は、透明封止樹脂130と同じものであることが好ましい。
【0091】
発光素子110、蛍光体層410の材料等は特に限定されないが、一例として、第四の実施形態における例示と同様とすることができる。
【0092】
本実施形態では、蛍光体層410の形状を、球形状の透明封止樹脂130と略同心の球形状としている。しかしながら、これに限定されず、発光素子110の各面に沿って一様な厚さとすることもできる。
【0093】
本実施形態の発光デバイスは、発光素子110にボンディングワイヤ120をボンディングした後、蛍光体粒子を含有させた透明封止樹脂を滴下して球形状に固化させ蛍光体層410を形成し、ついで透明封止樹脂130で球形状に封止して得ることができる。
【0094】
上記のように構成された発光デバイス400によれば、つぎのような効果を得ることができる。
【0095】
すなわち、第四の実施形態のように、発光素子の周囲に配された透明封止樹脂に蛍光体粒子を一様に含有させた場合には、透明封止樹脂とその周囲の空気層との界面近傍まで蛍光体粒子が存在するため、透明封止樹脂とその周囲の空気層との界面近辺まで蛍光体粒子による散乱が発生する。散乱する方向がさまざまであることに起因して、透明封止樹脂から空気層へ入射する場合の臨界角以上となる光線の割合が多くなり、透明封止樹脂と空気層との界面で全反射する光が増える。全反射した光は、全反射を繰り返すうちに発光デバイス内で吸収され、結果的に光取出し効率の低下を招くという問題があった。
【0096】
図24は上述の問題を発光素子から出射された光線の光路により説明した図である。図24においては、発光デバイス970内の発光素子972より出射された光が、透明封止樹脂974に略均一に含有された蛍光体粒子976によって反射され、さらに透明封止樹脂974と空気層との界面で全反射する様子を黒矢印で示している。点線の矢印は、蛍光体粒子976がない場合の光線の光路を示す。
【0097】
特に球形状の透明封止樹脂を用いる場合には、発光素子972より出射した光が透明封止樹脂974と空気層の界面に対して等方的に略垂直に入射することにより、全反射を抑えて光の損失を低減するという特性を生かし切れなくなるという問題がある。
【0098】
かかる問題に対し、本実施形態においては、発光素子110を覆い、発光素子110から出射された光の波長を変換する蛍光体層410を、発光素子110と透明封止樹脂130との間に設けたことで、透明封止樹脂130と空気層との界面に対して、蛍光体層410で波長変換された光束を点光源に近い状態とすることが可能となる。
【0099】
すなわち、発光素子110より出射した光は蛍光体層410の内部で散乱するものの、蛍光体層410が従来より薄く形成されているため光路を曲げられる頻度が減少する。蛍光体層410から出射した光は、その後透明封止樹脂130内を遮られることなく直進する。したがって、発光素子110は、透明封止樹脂130の外形に対して点光源に近い状態となる。
【0100】
そのため、透明封止樹脂130から空気層へと入射する場合の臨界角以下の光線が増え、透明封止樹脂130と空気層との界面での全反射が低減されて、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0101】
なお、本発明の発光デバイスは、上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例が可能である。具体的には、反射部材の形状は、反射する光に対象性の必要が無ければ、三角錐や、四角錐、高さの異なる平板状であっても良い。
【0102】
上記各実施形態においては、球形状の透明封止樹脂を例示して説明したが、四角柱形状等任意の形状の透明封止樹脂について本発明の適用が可能である。
【0103】
さらに、上記各実施形態における発光素子の実装形態と反射部の構成は任意に組み合わせて採用することができる。
【0104】
上記各実施形態では、透明基板上に半導体層を積層した表裏面発光型の発光素子を例示して説明したが、薄膜LED等他の形態の発光素子にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 発光デバイス
110 発光素子
120 ボンディングワイヤ
130 透明封止樹脂
140 基板
142 配線層
150 反射部材
160 反射層
200 発光デバイス
210 リードフレーム
250 発光デバイス
260 サブマウント
300 発光デバイス
310 反射層
320 絶縁層
330 反射部材
332 樹脂
350 発光デバイス
360 反射層
370 反射部材
400 発光デバイス
410 蛍光体層
510 台座
520 ステージ
600 発光デバイス
610 リードフレーム
620 ボンディングワイヤ
700 発光デバイス
732 蛍光体粒子
900 半導体発光装置
910 半導体発光素子
920 透明基板
930 リード端子
940、942 ボンディングワイヤ
950 透明封止樹脂
960 実装基板
970 発光デバイス
972 発光素子
974 透明封止樹脂
976 蛍光体粒子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
該発光素子の全周囲を覆う透光性部材と、
一端が前記発光素子に接続され、他端が前記透光性部材の外部へと引き出された接続部材と、
表面が反射性であり、前記接続部材の他端を載置して前記表面が前記透光性部材と離間して対向する基板と、を有し、
前記基板上の、前記発光素子から前記基板に向けて出射したが反射により前記透光性部材に戻る範囲に、前記透光性部材に戻らないようにする反射部を有することを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記反射部が、
前記発光素子と前記基板との間にその頂点を有する円錐形状であることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記反射部が、
前記発光素子と前記基板との間にその頂点を有するドーム形状であることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記反射部が、
前記基板面上に形成された粗面であることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
一端および他端を有するリードフレームをさらに有し、
前記リードフレームの一端が前記接続部材の他端に接続され、前記リードフレームの他端が前記基板に載置されて前記基板の表面が前記透光性部材と離間して対向することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記接続部材の一端が、発光素子が実装されているサブマウントを介して前記発光素子に接続されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記発光デバイスは、前記透光性部材の中に前記発光素子から出射された光の波長を変換する波長変換材料を略均一に含んでいる波長変換部材で、前記発光素子の全周囲を覆われていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記波長変換部材をさらに透光性部材で全周囲を覆っていることを特徴とする請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記透光性部材の形状が前記発光素子を中心とする球形状であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記波長変換部材の形状が、前記透光性部材と略同心の球形状であることを特徴とする請求項9に記載の発光デバイス。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−38222(P2013−38222A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173061(P2011−173061)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「LED照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】