説明

発光モジュールおよびその製造方法

【課題】高い放熱性が確保されると共に、様々な形状のセットに内蔵されることが可能となる発光モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】発光モジュール10は、金属基板12と、金属基板12の上面を被覆する絶縁層24と、絶縁層24の上面に形成された導電パターン14と、金属基板12の上面に固着されて導電パターン14と電気的に接続された発光素子20とを主要に備える。更に、金属基板12に溝を設けて曲折加工することにより曲折部13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールおよびその製造方法に関し、特に、高輝度の発光素子が実装される発光モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)に代表される半導体発光素子は、寿命が長く且つ視認性が高いので、交通信号機等や自動車のランプ等に使用されてきている。また、LEDは、照明機器としても採用されつつある。
【0003】
LEDを照明機器に使用するときは、一つのLEDのみでは明るさが不十分であるため、1つの照明機器に多数個のLEDが実装される。しかしながら、LEDは発光時に多量の熱を放出するので、放熱性に劣る樹脂材料から成る実装基板にLEDを実装したり、個々のLEDを個別に樹脂パッケージすると、LEDから放出された熱が外部に良好に放出されずに、LEDの性能が早期に低下してしまう問題があった。
【0004】
下記特許文献1を参照すると、パッケージ化されたLEDが実装される金属ベース回路基板を折り曲げる光源ユニットに関する技術が開示されている。具体的には、この文献の図1を参照すると、パッケージ化されたLED6を、表面が絶縁処理された金属箔1に実装し、金属箔1を所定箇所にて曲折させている。この様にすることで、放熱性を有する筐体8に、金属箔1を密着させて、LED6から放出される熱を、金属箔1および筐体8を経由して、良好に外部に放出させている。
【0005】
下記特許文献2では、LEDから発生する熱を良好に外部に放出させるために、アルミニウムから成る金属基板の上面にLEDを実装する技術が開示されている。特に、特許文献2の図2を参照すると、金属基板11の上面を絶縁性樹脂13により被覆し、この絶縁性樹脂13の上面に形成された導電パターン14の上面に発光素子15(LED)を実装している。この構成により、発光素子16から発生した熱は、導電パターン14、絶縁性樹脂13および金属基板11を経由して外部に放出される。
【特許文献1】特開2007−194155号公報
【特許文献2】特開2006−100753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、光源ユニットに内蔵されるものは1つのパッケージ化されたLEDのみであり、複数のLEDを実装することを前提としてない。従って、この文献記載の光源ユニットでは、照明用等に用いるには光量が不足している。更に、複数個のLEDを実装すると、ユニット全体の光量を増加させることが可能となるが、実装されるLEDの個数が増加するとその分放出される熱量も多くなる。従って、LEDから放出される熱が良好に放出されなければ、ユニット全体が高温となり、LEDの変換効率が低下したり、LEDが熱により破壊されてしまう恐れがある。
【0007】
更に、特許文献2に記載された技術では、LEDである発光素子15が固着される導電パターン14と金属基板11との間に絶縁性樹脂13が介在している。ここで、絶縁性樹脂13は放熱性向上の為にフィラーが高充填されているものであるが、金属と比較すると熱抵抗が高い。従って、例えば200mA以上の大電流が流れる高輝度のLEDを発光素子16として採用すると、特許文献2に記載された構成は、放熱が不十分である虞があった。
【0008】
更に、特許文献2に記載された技術では、金属基板11は平坦な板の状態である。従って、例えば、複雑な形状をしたセットの内部(例えば自動車の角部や、遊戯具の内部)に、このLEDが実装された金属基板11を内蔵させることが困難であった。
【0009】
本発明は、上述した問題を鑑みてなされ、本発明の主な目的は、高い放熱性が確保されると共に、様々な形状のセットに内蔵されることが可能となる発光モジュールおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発光モジュールは、一主面が絶縁層により被覆された金属基板と、前記絶縁層の主面に形成された導電パターンと、前記導電パターンと電気的に接続された発光素子とを備え、前記金属基板に他主面から溝が設けられ、前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に前記金属基板が曲折されることを特徴とする。
【0011】
本発明の発光モジュールの製造方法は、金属基板の一主面を被覆する絶縁層の主面に導電パターンを形成する工程と、金属基板に他主面から溝を設ける工程と、前記金属基板の前記一主面に発光素子を固着すると共に、前記発光素子と前記導電パターンとを電気的に接続する工程と、前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に前記金属基板を曲折させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の発光モジュールの製造方法は、基板の一主面を被覆する絶縁層の表面に、複数のユニットを構成する導電パターンを形成する工程と、前記ユニットの境界に対応する箇所の前記基板の前記一主面および他主面に分離溝を形成し、前記ユニットが曲折される箇所に対応する前記基板に溝を設ける工程と、前記基板の各前記ユニットに発光素子を固着すると共に、前記発光素子と前記導電パターンとを電気的に接続する工程と、前記分離溝が設けられた箇所にて前記基板を前記各ユニットに分離する工程と、前記各ユニットの前記基板を、前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に曲折させる工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光モジュールによれば、発光素子が実装される金属基板に裏面から溝を設け、この溝が設けられた箇所にて金属基板を曲折させている。このことにより、金属基板を所定の角度に容易に曲折されることが可能となるので、発光モジュールが組み込まれるセットの形状に応じて、所定の角度に金属基板が曲折された発光モジュールを構成することが可能となる。
【0014】
更に、裏面から溝が設けられた箇所にて金属基板を曲折させるので、金属基板を曲折させることにより発生する曲げ応力を低減させることができる。従って、金属基板の上面に設けられる絶縁層および導電パターンが、この曲げ応力により損傷されることが防止される。
【0015】
更にまた、金属基板を被覆する絶縁層を部分的に除去して開口部を設け、この開口部の底面に露出する金属基板の上面に発光素子を固着している。従って、発光素子から発生した熱は直に金属基板に伝導して外部に放出されるので、発光素子の温度上昇を抑制することができる。また、絶縁層の上面に発光素子が固着されないので、熱抵抗を低減させるために絶縁層に多量のフィラーを混入させる必要が無い。従って、樹脂材料を主体として絶縁層を構成することが可能となり、この様な構成の絶縁層は柔軟性に優れるので、上記した曲げ応力により絶縁層や導電パターンが破損してしまうことが防止される。
【0016】
製法上に於いては、溝が形成された箇所にて金属基板を折り曲げるので、溝の形状を変化させることにより、金属基板が曲折される角度を容易に調節できる。
【0017】
更に、1枚の基板から多数個のユニット(発光モジュール)を形成する場合に於いては、各ユニット同士の間に形成される分離用の分離溝と、金属基板を曲折させるために設けられる溝とを同一の工程にて加工することができる。従って、金属基板に対して折り曲げ加工を施すことによる工数の増加が抑制される。
【0018】
更に、基板を加熱した後に曲折加工を施せば、金属基板を被覆する絶縁層が軟化した状態で曲折加工が行われるので、曲折加工に伴い発生する曲げ応力が絶縁層により緩和される。従って、金属基板が曲折される箇所に形成された導電パターンおよび絶縁層が、金属基板の曲折加工により損傷することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1の実施の形態:発光モジュールの構成>
本形態では、図1から図3を参照して、発光モジュール10の構成を説明する。
【0020】
図1(A)は発光モジュール10の断面図であり、図1(B)は発光モジュール10を上方から見た平面図である。
【0021】
図1(A)を参照して、発光モジュール10は、金属基板12と、金属基板12の上面を被覆する絶縁層24と、絶縁層24の上面に形成された導電パターン14と、金属基板12の上面に固着されて導電パターン14と電気的に接続された発光素子20とを主要に備えた構成となっている。
【0022】
発光モジュール10は、一枚の板状の金属基板12の上面に複数の発光素子20が実装されている。そして、導電パターン14および金属細線16を経由して、これらの発光素子20が直列に接続されている。この様な構成の発光モジュール10に直流の電流を供給することにより、発光素子20から所定の色の光が発光され、発光モジュール10は、例えば蛍光灯の如き照明器具として機能する。
【0023】
金属基板12は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の金属から成る基板であり、例えば、厚さは0.5mm〜2.0mm程度であり、幅は5mm〜20mm程度であり、長さは、10cm〜50cm程度である。金属基板12は、所定の光量を確保するために、多数の発光素子20が列状に配置されるので、非常に細長い形状を呈している。そして、金属基板12の長手方向の両端には、外部の電源と接続される外部接続端子が形成されている。この端子は、差込型のコネクタでも良いし、配線を導電パターン14に半田付けするものでも良い。
【0024】
金属基板12の上面は、樹脂を主体とする材料から成る絶縁層24により被覆されており、この絶縁層24の上面に所定形状の導電パターン14が形成されている。そして、金属基板12の上面に固着された発光素子20は、金属細線16を経由して導電パターン14と接続されている。
【0025】
導電パターン14は、絶縁層24の上面に形成されており、各発光素子20を導通させる経路の一部として機能している。この導電パターン14は、絶縁層24の上面に設けられた銅等から成る導電箔をエッチングすることにより形成される。更に、金属基板12の両端に設けられた導電パターン14は、外部との接続に寄与する外部接続端子として機能する場合もある。
【0026】
本形態の発光モジュールでは、金属基板12を厚み方向に曲折させた曲折部13が設けられている。ここでは、2つの曲折部13を境界として、発光モジュール10を、モジュール部11A、11B、11Cに区分けしている。各モジュール部には、所定の個数の発光素子20が互いに接続されて配置されており、各モジュール部の金属基板12は平坦に形成されている。
【0027】
曲折部13は、金属基板12に裏面から溝を設け、この溝に沿って金属基板12を曲折させた部位である。ここでは、断面がV字型の溝を金属基板12に裏面から設け、この溝が閉じるように金属基板12が曲折されている。即ち、曲折部13にて金属基板12が曲折される方向は、金属基板12に発光素子20が実装される方向とは逆方向である。紙面上では、発光素子20は金属基板12の上面に固着され、曲折部13において金属基板12は下方向に向かって曲折されている。
【0028】
また、曲折部13により区画された各モジュール部は、曲折部13を跨って延在する導電パターンにより電気的に接続されている。具体的には、左端のモジュール部11Aと中央のモジュール部11Bとの間には、導電パターン14Aが延在している。この導電パターン14Aは、曲折部13の上方を跨ってモジュール部11Aからモジュール部11Bまで延在している。より具体的には、モジュール部11Aの右端に位置する発光素子20は、金属細線16および導電パターン14Aを経由して、モジュール部11Bの左端に位置する発光素子20と電気的に接続される。
【0029】
同様に、中央部のモジュール部11Bと右端のモジュール部11Cとは、両者の間に位置する曲折部13の上方を跨って延在する導電パターン14Bにより接続される。
【0030】
上記のように、曲折部13の上方に渡って導電パターン14A、14Bを設けることにより、曲折部13にて区画された各モジュール部11A、11B、11Cに含まれる発光素子20の全てを電気的に接続することが可能となる。
【0031】
ここで、導電パターン14A、14Bに替えて金属細線等の接続手段を用いることも可能である。この場合は、モジュール部11Aの右端の導電パターン14と、モジュール部11Bの左端の導電パターン14とが、金属細線を経由して接続される。
【0032】
図1(B)を参照して、金属基板12は、長手方向の側面である第1側面12Aおよび第2側面12Bと、短手方向の側面である第3側面12Cおよび第4側面12Dを有する。上記したように、本形態の金属基板12は、例えば、幅が2mm〜50mm程度であり、長さが5cm〜50cm程度の細長い形状であり、長手方向に列状態で発光素子20、および導電パターン14が配置されている。
【0033】
紙面上では、曲折部13は点線で示されており、第1側面12Aから第2側面12Bに到るまで連続して形成されている。換言すると、曲折部13にて金属基板12の裏面に設けられる溝は、第1側面12Aから第2側面12Bに到るまで連続して形成されている。この様にすることで、曲折部13に於ける金属基板12の折り曲げ加工が容易になる利点がある。
【0034】
以上の説明では、金属基板12に2つの曲折部13を設けたが、更に多数の曲折部13を金属基板12に設けることも可能である。更に、図1(A)を参照すると、曲折部13の角度θ1は鈍角(例えば150度)となっているが、この角度θ1は直角でも良いし鋭角でも良い。
【0035】
更にまた、図1(A)を参照して、曲折部13に於いて、金属基板12に上面から溝を設けて、金属基板12全体が紙面上にて下に凸となるように、折り曲げ加工を行っても良い。更には、曲折部13に於いて、金属基板12の上面および下面の両方から溝を形成して、この箇所で折り曲げ加工を行うことも可能である。
【0036】
次に、図2および図3を参照して、金属基板12に実装される発光素子20等の詳細な構成を説明する。
【0037】
図2(A)は図1(B)に示したA−A’線に於ける断面図であり、図2(B)は図1(B)に示したB−B’線に於ける断面図である。
【0038】
図2(A)および図2(B)を参照して、本形態では、絶縁層24を部分的に除去して開口部48を設け、この開口部48から露出する金属基板12の上面に発光素子20を実装している。更に本形態では、金属基板12の上面を部分的に凹状にすることで設けられた凹部18を形成し、この凹部18に発光素子20を収納させている。
【0039】
この様な構成の発光モジュール10を以下にて詳述する。
【0040】
先ず、金属基板12がアルミニウムから成る場合、金属基板12の上面および下面は、アルミニウムを陽極酸化させた酸化膜22(アルマイト膜:Al(SO)により被覆される。図2(A)を参照して、金属基板12を被覆する酸化膜22の厚みは、例えば1μm〜10μm程度である。
【0041】
図2(B)を参照して、金属基板12の側面は、外側に突出する形状となっている。具体的には、金属基板12の上面から連続して外側に向かって傾斜する第1傾斜部36と、金属基板12の下面から連続して外側に向かって傾斜する第2傾斜部38とから、金属基板12の側面は構成されている。この構成により、金属基板12の側面の面積を、平坦な状態と比較すると大きくすることが可能となり、金属基板12の側面から外部に放出される熱量が増大される。特に、金属基板12の側面は、熱抵抗が大きい酸化膜22により被覆されずに、放熱性に優れる金属材料が露出する面であるので、この構成によりモジュール全体の放熱性が向上される。
【0042】
図2(A)を参照して、金属基板12の上面は、Al等のフィラーが混入された樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)から成る絶縁層24により被覆されている。絶縁層24の厚みは、例えば50μm程度である。絶縁層24は、金属基板12と導電パターン14とを絶縁させる機能を有する。また、絶縁層24には多量のフィラーが混入されており、このことにより、絶縁層24の熱膨張係数を金属基板12に近似させることができると共に、絶縁層24の熱抵抗が低減される。例えば、絶縁層24には、フィラーが70体積%〜80体積%程度含まれる。更に、含まれるフィラーの平均粒径は例えば、4μm程度または10μm程度である。
【0043】
ここで、本形態では、発光素子20は絶縁層24の上面に載置されないので、絶縁層24に含まれるフィラーの量を低減させることができる。または、フィラーを含まない樹脂のみにより絶縁層24を構成することも可能である。具体的には、絶縁層24に含まれるフィラーの量は、例えば50体積%以下にすることができる。この様にすることで、絶縁層24の柔軟性を向上させることができる。従って、図1(A)に示したような曲折部13を形成するための曲折加工を金属基板12に対して行っても、絶縁層24により曲折加工に伴う曲げ応力が緩和されるので、曲折加工による絶縁層24および導電パターン14の破損が防止される。
【0044】
発光素子20は、上面に2つの電極(アノード電極、カソード電極)を有し、所定の色の光を発光させる素子である。発光素子20の構成は、GaAs、GaN等なら成る半導体基板の上面にN型の半導体層と、P型の半導体層が積層された構成と成っている。また、発光素子20の具体的な大きさは、例えば、縦×横×厚み=0.3〜1.0mm×0.3〜1.0mm×0.1mm程度である。更に、発光素子20の厚みは、発光する光の色により異なり、例えば、赤色の光を発光する発光素子20の厚みは100〜3000μm程度であり、緑色の光を発光する発光素子20の厚みは100μm程度であり、青色の光を発光する発光素子20の厚みは100μm程度である。発光素子20に電圧を印加すると、上面および側面の上部から光が発光される。ここで、本発明の発光モジュール10の構成は、放熱性に優れているので、例えば100mA以上の電流が通過する発光素子20(パワーLED)に対して特に有効である。
【0045】
図2(A)では、発光素子20から発光される光を白抜きの矢印で示している。発光素子20の上面から発光された光は、そのまま上方に照射される。一方、発光素子20の側面から側方に発光した光は、凹部18の側面30にて上方に反射される。更に、発光素子20は、蛍光体が混入された封止樹脂32により被覆されているので、発光素子20から発生した光は、封止樹脂32を透過して外部に発光される。
【0046】
発光素子20の上面には、2つの電極(アノード電極、カソード電極)が設けられ、これらの電極は金属細線16を経由して、導電パターン14と接続される。ここで、発光素子20の電極と金属細線16との接続部は、封止樹脂32により被覆されている。
【0047】
図2(A)を参照して、LEDである発光素子20が実装される箇所の形状を説明する。先ず、絶縁層24を部分的に円形の除去することにより開口部48が設けられている。そして、開口部48の内側から露出する金属基板12の上面を凹状に窪ませることで、凹部18が形成され、この凹部18の底面28に発光素子20が固着されている。更に、凹部18および開口部48に充填された封止樹脂32により、発光素子20が被覆されている。
【0048】
凹部18は、金属基板12を上面から凹状に形成することにより設けられ、底面28は円形を呈している。また、凹部18の側面は、発光素子20の側面から側方に発光された光を上方に反射するためのリフレクタとして機能しており、側面30の外側と底面28とが成す角度θ2の角度は、例えば40度〜60度程度である。また、凹部18の深さは、発光素子20の厚みよりも長くても良いし短くても良い。例えば、凹部18の厚みを、発光素子20と接合材26の厚みを加算した長さよりも長くすると、発光素子20が凹部18に収納され、発光素子20の上面を金属基板12の上面よりも下方に位置させることができる。このことが、モジュール全体の薄型化に寄与する。
【0049】
凹部18の底面28、側面30およびその周辺部の金属基板12の上面は、被覆層34により被覆されている。被覆層34の材料としては、メッキ処理により形成された金(Au)や銀(Ag)が採用される。また、被覆層34の材料として金属基板12の材料よりも反射率が大きい材料(例えば金や銀)を採用すると、発光素子20から側方に発光された光をより効率的に、上方に反射させることができる。また、被覆層34は、発光モジュール10の製造工程に於いて、金属が露出する凹部18の内壁が酸化することを防止する機能を有する。
【0050】
更に凹部の底面28では、金属基板12の表面を被覆する酸化膜22が除去されている。酸化膜22は、金属基板12を構成する金属よりも熱抵抗が大きい。従って、発光素子20が実装される凹部18の底面から酸化膜22を除去することで、金属基板12全体の熱抵抗が低減される。
【0051】
封止樹脂32は、凹部18および開口部48に充填されて、発光素子20を封止している。封止樹脂32は、耐熱性に優れたシリコン樹脂に蛍光体が混入された構成となっている。例えば、発光素子20から青色の光が発光されて、封止樹脂32に黄色の蛍光体が混入されると、封止樹脂32を透過した光は白色となる。従って、発光モジュール10を、白色の光を発光させる照明器具として利用することが可能となる。また、開口部48に面する絶縁層24の側面は、フィラーが露出する粗面となっている。このことから、粗面である絶縁層24の側面と封止樹脂32との間にアンカー効果が発生して、封止樹脂32の剥離を防止できる利点がある。
【0052】
更にここで、図2(A)を参照して、金属細線16が全面的に被覆されるように封止樹脂32が形成されても良い。この場合は、金属細線と発光素子20との接続部および金属細線16と導電パターン14との接続部も封止樹脂32により被覆される。
【0053】
接合材26は、発光素子20の下面と凹部18とを接着させる機能を有する。発光素子20は下面に電極を有さないので、接合材26としては、絶縁性の樹脂から成るものでも良いし、放熱性向上のために半田等の金属から成るものでも良い。また、凹部18の底面は、半田の濡れ性に優れる銀等から成るメッキ膜(被覆層34)により被覆されているので、接合材26として、容易に半田を採用できる。
【0054】
本発明では、金属基板12の上面にベアの発光素子20を実装することにより、発光素子20から発生する熱を極めて効率的に外部に放出できる利点がある。具体的には、上記した従来例では、絶縁層の上面に形成された導電パターンに発光素子を実装していたので、絶縁層により熱の伝導が阻害されて、発光素子20から放出された熱を効率的に外部に放出させることが困難であった。一方、本発明では、発光素子20が実装される領域では、絶縁層24および酸化膜22を除去して開口部48を形成し、この開口部48から露出する金属基板12の表面に発光素子20を固着している。このことにより、発光素子20から発生した熱は、直ちに金属基板12に伝わり外部に放出されるので、発光素子20の温度上昇が抑制される。また、温度上昇が抑制されることにより、封止樹脂32の劣化も抑制される。
【0055】
更に、本発明によれば、金属基板12の上面に設けた凹部18の側面をリフレクタとして利用できる。具体的には、図2(A)を参照して、凹部18の側面は、金属基板12の上面に近づくに従って幅が広くなる傾斜面となっている。従って、この側面30により、発光素子20の側面から側方に向かって発光された光が反射して、上方に向かって照射される。即ち、発光素子20を収納させる凹部18の側面30が、リフレクタとしての機能を兼用している。従って、一般的な発光モジュールのようにリフレクタを別途用意する必要がないので、部品点数を削減してコストを安くすることができる。更に、上記したように、凹部の側面30を反射率が大きい材料により被覆することで、側面30のリフレクタとしての機能を高めることもできる。
【0056】
図3(A)を参照して、発光素子20が金属基板12に実装される他の構成を説明する。この図に示す構成では、上述したような凹部18は設けられず、開口部48から露出する金属基板12の上面に直に発光素子20が接合材26を介して実装されている。そして、発光素子20の側面および上面が被覆されると共に、開口部48に充填されるように、封止樹脂32が形成されている。
【0057】
以上説明したように、本形態では、金属基板12の上面に直に発光素子20が固着されている。従って、絶縁層24に含まれるフィラーの量を低減させて、絶縁層24を柔軟性に優れたものとすることができる。このことにより、図1(A)に示した曲折部13に於いて金属基板12を曲折しても、この曲折に伴う絶縁層24および導電パターン14の破損が防止される。
【0058】
図3(B)を参照して、次に、半導体装置15としてパッケージ化された発光素子20が金属基板12に実装された構造を説明する。
【0059】
半導体装置15は、実装基板19と、実装基板19の上面に実装された発光素子20と、発光素子20を取り囲むように実装基板19の上面に固着された反射枠17と、発光素子20を封止する封止樹脂32と、発光素子20と電気的に接続される導電路21とを備えた構成と成っている。
【0060】
実装基板19は、ガラスエポキシ樹脂等の樹脂材料やセラミック等の無機物から成り、発光素子20を機械的に支持する機能を有する。実装基板19の上面に発光素子20および反射枠17が配置される。具体的には、発光素子20は実装基板19の上面の中央部付近に配置され、この発光素子20を取り囲むように反射枠17が実装基板の19の上面に固着されている。
【0061】
反射枠17は、アルミニウム等の金属を額縁状に形成したものであり、内側の側面は上部よりも下部が内側に位置する傾斜面と成っている。従って、発光素子20の側面から側方に発光された光は、反射枠17の内側の側面で上方に反射される。また、反射枠17に囲まれる領域には、発光素子20を封止する封止樹脂32が充填されている。
【0062】
導電路21は、実装基板19の上面から下面まで引き回されている。実装基板19の上面において導電路21は金属細線16を経由して発光素子20と電気的に接続される。そして、実装基板19の下面に形成された導電路21は、接合材26を介して、金属基板12の上面に形成された導電パターン14と接続されている。
【0063】
<第2の実施の形態:発光モジュールの製造方法>
次に、図4から図13を参照して、上記した構成の発光モジュール10の製造方法を説明する。
【0064】
第1工程:図4参照
図4を参照して、先ず、発光モジュール10の基材となる基板40を用意して、導電パターンを形成する。
【0065】
図4(A)を参照して、先ず、基板40としては、例えば銅またはアルミニウムを主材料とする金属から成り、厚みは0.5mm〜2.0mm程度である。基板40の平面的な大きさは、例えば、1m×1m程度であり、多数個の発光モジュールが一枚の基板40から製造される。基板40がアルミニウムから成る基板である場合、基板40の上面および下面は、上述した陽極酸化膜により被覆されている。
【0066】
基板40の上面は、厚みが50μm程度の絶縁層42により全面的に被覆されている。この絶縁層42の組成は、上述した絶縁層24と同様であり、フィラーが高充填された樹脂材料(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)から成る。ここで、絶縁層24は、後の工程に於ける基板の曲折による導電パターンの損傷を防止するために、少量のフィラー(例えば充填率が50体積%以下)を含む樹脂により構成されても良いし、樹脂材料のみから構成されても良い。また、絶縁層42の上面には、厚みが50μm程度の銅から成る導電箔44が全面的に形成されている。
【0067】
図4(B)を参照して、次に、選択的なウェットエッチングを行うことにより、導電箔44をパターニングして、導電パターン14を形成する。この導電パターン14は、基板40に設けられるユニット46毎に同一の形状を有する。ここで、ユニット46とは、1つの発光モジュールを構成する部位のことである。
【0068】
図4(C)に、本工程が終了した基板40の平面図を示す。ここでは、ユニット46同士の境界が点線により示されている。ユニット46の形状は、例えば縦×横が=30cm×0.5cm程度であり、極めて細長い形状を有する。
【0069】
第2工程:図5参照
図5を参照して、次に、基板40の各ユニット46に関して、絶縁層を部分的に除去して開口部48を設ける。
【0070】
図5(A)を参照して、上方から絶縁層42にレーザを照射する。ここでは、照射されるレーザは矢印により示されており、発光素子が載置される部分に対応した絶縁層42に対して、レーザが照射される。ここで、使用されるレーザは、YAGレーザが好適である。
【0071】
図5(B)及び図5(C)を参照して、上記したレーザ照射により、絶縁層42が部分的に円形または長方形に除去されて開口部48が形成されている。特に、図5(C)を参照すると、レーザ照射により、絶縁層42だけでなく、基板40の上面を被覆する酸化膜22も除去されている。従って、開口部48の底面からは、基板40を構成する金属材料(例えばアルミニウム)が露出する。
【0072】
図5(D)を参照して、上述した開口部48は円形または長方形であり、各ユニット46の発光素子が固着される領域に対応して設けられている。ここで、開口部48の平面的な大きさは、後の工程にて開口部48の内部に形成される凹部よりも大きく形成されている。即ち、開口部48の外周端部は、形成予定の凹部の外周端部から離間されている。このことにより、凹部を形成するために行われるプレスによる衝撃により、脆い絶縁層42が破壊されることを抑止することができる。
【0073】
第3工程:図6参照
図6を参照して、次に、開口部48から露出する基板40の上面から凹部18を形成する。凹部18の形成は、選択的なエッチング、ドリル加工、プレス加工等により可能であるが、本工程ではプレス加工を採用した。
【0074】
図6(A)に形成された凹部18の形状を示す。プレス加工により、底面28が円形であり側面30が傾斜面である凹部18が形成される。また、形成される凹部18の深さは、後の工程にて実装される発光素子が完全に収納される程度でも良いし、発光素子が部分的に収納される程度でも良い。具体的には、凹部18の深さは、例えば100μm〜300μm程度である。
【0075】
図6(B)を参照して、各ユニット46の発光素子が載置される予定の領域に、上述した方法で、凹部18が形成される。
【0076】
第4工程:図7及び図8参照
本工程では、各ユニット46同士の間に分離用の分離溝(第1溝54および第2溝56)を設けると共に、各ユニット46に、曲折のための溝58を設ける。本工程では、高速で回転するカットソーにより、これらの溝を一括して形成することができる。
【0077】
図7(A)はこれらの溝を形成した後の基板40の斜視図であり、図7(B)は図7(A)のB−B’線に於ける断面図であり、図7(C)は図7(A)に示した基板40を下方から見た平面図である。
【0078】
図7(A)では、基板40に形成される溝58を示すために、絶縁層42が形成される基板40の主面を下面にした状態の基板40を示している。ここで、第1溝54および第2溝56と溝58とは、基板40の一側辺に対して平行に形成される。そして、溝58は、第1溝54および第2溝56に対して直角方向に形成される。
【0079】
溝58は、後の工程にて各ユニット46を曲折するために設けられる溝であり、ここでは、V字型の断面形状を呈している。溝58の深さは基板40の厚みよりも浅く設定され、基板40の厚みが例えば1.5mmの場合は、溝58の深さは1.0mm程度である。
【0080】
図7(B)および図7(C)を参照して、各ユニット46同士の間には、絶縁層42が形成された主面から第1溝54が形成され、反対面からは第2溝56が形成されている。両溝の断面は、V字型の形状を呈する。第1溝54と第2溝56の深さを加算した長さは、基板40の厚みよりも短く設定されているので、両溝を形成した後も、基板40は全体として一枚の板の状態である。ここで、第1溝54および第2溝56は、両方とも同じ大きさ(深さ)でも良いし、一方が他方よりも大きく形成されても良い。更には、第1溝54および第2溝56のどちらか一方のみが設けられても良い。
【0081】
図8を参照して、本工程で形成される溝58の断面の形状を説明する。図8の各図は、基板の曲折のために設けられる溝58の各形状を示す断面図である。
【0082】
本形態では、図1に示したように、1つの金属基板12(上記したユニット46)に複数のモジュール部11A、11B等が設けられ、モジュール部同士の境界に、曲折加工を容易にするための溝58が形成される。従って、金属基板の曲折を容易とする形状であれば、溝58の断面形状は様々な形状を採用することができる。
【0083】
図8(A)では、V字型の断面形状を有する溝58が、モジュール部11Aとモジュール部11Bとの境界に形成されている。ここで、V字型を形成する溝58の角度θ3は、例えば30度〜90度程度であり、基板40が曲折される角度に合わせて変更される。
【0084】
図8(B)を参照して、ここでは、モジュール部11Aとモジュール部11Bとの境界に、断面が四角形形状の溝58が形成されている。この様な形状の溝58によっても、溝58が形成された領域の基板40の厚みが薄くなるので、この領域にて基板40を容易に曲折することができる。ここで、溝58の上面を曲面形状にして、溝58の形状をU字状にしても良い。
【0085】
図8(C)を参照して、ここでは、モジュール部11Aとモジュール部11Bとの境界に、複数の溝58が形成されている。この様に複数の溝58を設けることにより、基板40の曲折を容易にできると共に、基板40の曲折が絶縁層42および導電パターン14に与えるダメージが小さくなる。ここで、複数個設けられる溝58の断面形状は四角形形状以外でも良く、例えば、上記したように、V字型、U字型等の断面形状でも良い。
【0086】
第5工程:図9参照
本工程では、開口部48から露出する基板40の表面を被覆層34により被覆する。
【0087】
具体的には、金属から成る基板40を電極として用いて通電させることにより、開口部48から露出する基板40の表面に、メッキ膜である被覆層34を被着させる。即ち、電解メッキ処理により被覆層34は形成される。被覆層34の材料としては、金または銀等が採用される。また、第1溝54、第2溝56及び溝58(図7参照)の表面にメッキ膜が付着することを防止するためには、これらの部位の表面をレジストにより被覆すればよい。また、基板40の裏面に関しては、絶縁物である酸化膜により被覆されているので、メッキ膜は付着されない。
【0088】
本工程にて、凹部18が被覆層34により被覆されることにより、例えばアルミニウムから成る金属面が酸化することを防止することができる。更に、凹部18の底面28が被覆層34により被覆されることで、被覆層34が銀等の半田の濡れ性に優れる材料であれば、後の工程にて、半田を介して発光素子を容易に実装できる。更にまた、凹部18の側面30が、反射率が高い材料から成る被覆層34により被覆されることで、側面30のリフレクタとしての機能を向上させることができる。
【0089】
第6工程:図10参照
次に、各ユニット46の凹部18に発光素子20(LEDチップ)を実装して、電気的に接続する。
【0090】
図10(A)および図10(B)を参照して、発光素子20の下面は、接合材26を介して凹部18の底面28に実装される。発光素子20は下面に電極を有さないので、接合材26としては、樹脂から成る絶縁性接着剤または導電性接着材の両方が採用可能である。また、導電性接着材としては、半田または導電性ペーストの両方が採用可能である。更に、凹部18の底面28は、半田の濡れ性に優れる銀等のメッキ膜から成るので、絶縁性材料よりも熱伝導性に優れた半田を接合材26として採用できる。
【0091】
発光素子20の固着が終了した後に、発光素子20の上面に設けた各電極と導電パターン14とを金属細線16を経由して接続する。
【0092】
第7工程:図11参照
次に、基板40に設けた各ユニット46の凹部に封止樹脂32を充填させて、発光素子20を封止する。封止樹脂32は、蛍光体が混入されたシリコン樹脂からなり、液状または半固形状の状態で、封止樹脂32を凹部18および開口部48に充填されて固化される。このことにより、発光素子20の側面および上面と、発光素子20と金属細線16との接続部が、封止樹脂32により被覆される。
【0093】
各凹部18に対して、個別に封止樹脂32を供給して封止することにより、基板40の上面に全体的に封止樹脂32を形成した場合と比較して、封止樹脂32に含まれる蛍光体の隔たりが抑止される。従って、発光モジュールから発光される色が均一化される。
【0094】
第8工程:図12参照
次に、第1溝54および第2溝56が形成された箇所で、基板40を各ユニット46に分離する。
【0095】
各ユニット46同士の間には、両溝が形成されているので、基板40の分離は容易に行うことができる。この分離方法としては、プレスによる打ち抜き、ダイシング、両溝が形成された箇所に於ける基板40の折り曲げ等が採用できる。
【0096】
第9工程:図13参照
本工程では、前工程にて分離された各ユニットの金属基板12に対して、折り曲げ加工を行う。図13(A)は折り曲げ加工を施す前の金属基板12の断面図であり、図13(B)は折り曲げ加工を行った後の金属基板12の断面図である。
【0097】
本工程の曲折は、例えば、金属基板12の側面を固定して行われる。具体的には、図13(B)に示すように、モジュール部11Bとモジュール部11Cとの境界(溝58が設けられた部分)にて金属基板12を曲折する場合は、先ず、モジュール部11Aおよびモジュール部11Bの金属基板12を側面から固定する。そして、モジュール部11Cを上方から押圧することにより、溝58が設けられた箇所にて金属基板12が折れ曲がり、図13(B)に示す曲折部13が形成される。
【0098】
ここで、上記した金属基板12の曲折は金型を使用して行っても良い。この場合は、先ず、図1(A)に示した様な形状に上部が加工された金型を用意して、この金型の上面に図13(A)に示す状態の金属基板12を載置する。次に、モジュール部11Aおよびモジュール部11Cに上方から押圧力を加えると、両溝58の箇所にて金属基板12が曲折される。
【0099】
更に、モジュール部11Aとモジュール部11Bとの境界(溝58が設けられた部分)にて、金属基板12を折り曲げる。この場合は、モジュール部11Bおよびモジュール部11Cを固定して、モジュール部11Aを上方から押圧することで、モジュール部11Aとモジュール部11Bとの境界にて金属基板12が曲折される。
【0100】
上記した本工程の曲折は、金属基板12、絶縁層24および導電パターン14が加熱された状態で行った方が好適である。この様にすることで、高温下での導電パターンの弾性領域が広がり、金属基板12を曲折した際の曲げ応力が緩和されるので、導電パターン14および絶縁層24の破損が防止される。具体的には、加熱される際の温度は、80℃以上が好適である。この事項に関する実験結果は後述する。
【0101】
以上の工程により、図1に示した構成の発光モジュールが製造される。
【0102】
ここで、上記した工程は、順序を入れ替えることも可能である。例えば、図7に示した溝を加工する工程を行った直後に、基板40を個別のユニット46に分離して、各ユニット46の曲折加工を行い、発光素子20を各ユニットに実装しても良い。
【0103】
<第3の実施の形態:実験結果の説明>
本形態では、図14を参照して、金属基板を曲折させて、この曲折が導電パターンに示す影響を確認した実験結果を説明する。図14(A)は曲折された金属基板を側方から撮影した写真であり、図14(B)、図14(C)、図14(D)および図14(E)は金属基板が加熱される温度を変化させて金属基板を曲折させた後に、曲折部の導電パターンを撮影したSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
【0104】
図14(A)を参照して、ここでは、第2の実施の形態にて上記した方法にて、金属基板を曲折している。金属基板の上面は、ポリイミド系絶縁樹脂から成る絶縁層により被覆され、この絶縁層の上面に導電パターンが形成されている。ここで、金属基板が曲折される角度θ4は、実測値で148度である。
【0105】
図14(B)は、金属基板を60℃に加熱した状態で、上記した金属基板の折り曲げを行った後の、導電パターンを撮影したSEM画像である。この図から明らかなように、導電パターンの曲折部では、クラックが発生している。この様にクラックが発生する原因は、金属基板を折り曲げる際に曲げ応力が導電パターンに作用するからである。また、この温度で導電パターンにクラックが発生することを考慮すると、常温(例えば30℃)で上記した金属基板の折曲げを行っても、このケースと同様に導電パターンにクラックが発生することが予測される。
【0106】
図14(C)は、加熱温度を70℃にして金属基板の曲折を行った導電パターンを示すSEM画像である。図14(D)は図14(C)の部分的な拡大図である。図14(C)を参照すると、導電パターンにクラックは発生していないように見受けられるが、その拡大図である図14(D)を参照すると、導電パターンに縦方向に微細なクラックが発生していることが確認される。
【0107】
図14(E)は、加熱温度を80℃に上昇させて金属基板を曲折した場合の導電パターンを示すSEM画像である。この図を参照すると、導電パターンには全くクラックは発生していない。加熱温度が80℃の状態でクラックが発生していない原因は、金属基板が加熱されることにより、高温とされた導電パターンの弾性領域が広がるからである。また、加熱温度が80℃以上となると、更に弾性領域が広がるため、上記した導電パターンにクラックが発生する問題は80℃以上では発生しないと予測される。
【0108】
以上の実験により、金属基板を加熱した後に曲折することで、曲折加工が導電パターンに与えるダメージが小さくなることが明らかとなった。特に、金属基板が加熱される温度を80℃以上にすると、金属基板の曲折が絶縁層および導電パターンに与えるダメージを非常に小さくできることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の発光モジュールの構成を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図2】本発明の発光モジュールの構成を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図3】本発明の発光モジュールの構成を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図4】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図5】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)〜(C)は断面図であり、(D)は平面図である。
【図6】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図7】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図8】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)〜(C)は断面図である。
【図9】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図10】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図11】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図12】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図13】本発明の発光モジュールの製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図14】本発明の発光モジュールの製造方法に於いて、金属基板を曲折した実験結果を示す図であり、(A)は実験の状態を示す写真であり、(B)〜(E)はSEM画像である。
【符号の説明】
【0110】
10 発光モジュール
11A、11B、11C モジュール部
12 金属基板
12A 第1側面
12B 第2側面
12C 第3側面
12D 第4側面
13 曲折部
14、14A、14B 導電パターン
15 半導体装置
16 金属細線
17 反射枠
18 凹部
19 実装基板
20 発光素子
21 導電路
22 酸化膜
24 絶縁層
26 接合材
28 底面
30 側面
32 封止樹脂
34 被覆層
36 第1傾斜部
38 第2傾斜部
40 基板
42 絶縁層
44 導電箔
46 ユニット
48 開口部
54 第1溝
56 第2溝
58 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面が絶縁層により被覆された金属基板と、前記絶縁層の主面に形成された導電パターンと、前記導電パターンと電気的に接続された発光素子とを備え、
前記金属基板に他主面から溝が設けられ、前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に前記金属基板が曲折されることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記金属基板が曲折される曲折部では、V字型の断面形状を有する前記溝が形成されることを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記金属基板は、長手方向に対向する第1側辺および第2側辺と、短手方向に対向する第3側辺および第4側辺とを有し、
前記溝は、前記第1側辺から第2側辺まで連続して形成されることを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記発光素子は、前記金属基板の長手方向に沿って複数個が設けられ、
前記金属基板が曲折される箇所を跨って設けられた導電パターンを介して、前記発光素子同士が電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記絶縁層を除去した開口部が設けられ、
前記発光素子は、前記開口部の底部から露出する前記金属基板の主面に固着されることを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記開口部から露出する前記金属基板を凹状にすることにより凹部が設けられ、
前記発光素子は、前記凹部に収納されることを特徴とする請求項5記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記凹部は、底面と、前記底面と前記金属基板の主面とを連続させる側面とを具備し、
前記側面は、前記金属基板の主面に接近するほど幅が広くなる傾斜面であることを特徴とする請求項6記載の発光モジュール。
【請求項8】
金属基板の一主面を被覆する絶縁層の主面に導電パターンを形成する工程と、
金属基板に他主面から溝を設ける工程と、
前記金属基板の前記一主面に発光素子を固着すると共に、前記発光素子と前記導電パターンとを電気的に接続する工程と、
前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に前記金属基板を曲折させる工程と、を具備することを特徴とする発光モジュールの製造方法。
【請求項9】
基板の一主面を被覆する絶縁層の表面に、複数のユニットを構成する導電パターンを形成する工程と、
前記ユニットの境界に対応する箇所の前記基板の前記一主面および他主面に分離溝を形成し、前記ユニットが曲折される箇所に対応する前記基板に溝を設ける工程と、
前記基板の各前記ユニットに発光素子を固着すると共に、前記発光素子と前記導電パターンとを電気的に接続する工程と、
前記分離溝が設けられた箇所にて前記基板を前記各ユニットに分離する工程と、
前記各ユニットの前記基板を、前記溝が設けられた箇所にて、前記発光素子が実装される側とは反対側に曲折させる工程と、を具備することを特徴とする発光モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記基板を曲折させる工程では、
前記基板を加熱した状態で曲折することを特徴とする請求項8または請求項9記載の発光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−81193(P2009−81193A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247875(P2007−247875)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】