説明

発光体モジュール

【課題】 耐環境性に優れた発光体モジュールを提供する。
【解決方法】 発光体モジュール1において、基板10と、基板10上に設置される1または複数の発光体30と、基板10上に設置されて1または複数の発光体30の発光状態を制御する制御回路50と、少なくとも基板10、1または複数の発光体30および制御回路50を覆う樹脂40とを有して構成される。これにより、劣悪な環境下においても、発光体、制御回路および基板が外部環境から受ける影響を大幅に低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発光体モジュールに係り、特に発光体および当該発光体の制御回路等が設置された基板全体を樹脂内に封入して耐環境性を向上させた発光体モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、現在、エネルギー変換効率が高く省電力であることから光源として広く利用されている。この発光ダイオードは、通常、半導体から成る発光体を樹脂で覆うことにより構成され、一方向に光を照射する点光源としての構造を有している。
【特許文献1】特開2006−049657
【特許文献2】特開2005−033114
【特許文献3】特開2006−049533
【特許文献4】特開2006−179572
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発光ダイオードや、当該発光ダイオードの発光状態の制御等を実行する制御回路等を有して構成される発光体モジュールは、劣悪な環境下においては、使用が控えられることが多いという課題があった。例えば、船舶に取り付けられる照明として使用する場合には、水分や塩分に起因する回路の短絡や金属部品の腐食等により、耐用年数が短くなる可能性がある。また、塵埃の多い場所での使用、紫外線の多い場所での使用、燃焼可能性のある場所での使用等においても、同様の問題が生じることが想定され、使用が控えられることがあった。
【0004】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、劣悪な環境下においても、十分な機能を発揮することができて、耐用年数を延ばすことができる発光体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本願発明に係る発光体モジュールは、基板と、基板上に設置される1または複数の発光体と、基板上に設置されて1または複数の発光体の発光状態を制御する制御回路と、少なくとも基板、1または複数の発光体および制御回路を覆う樹脂とを有して構成されるようにしたものである。
これにより、劣悪な環境下においても、発光体、制御回路および基板が外部環境から受ける影響を大幅に低減することが可能となり、発光体モジュールが十分にその機能を発揮することができるとともに、発光体モジュールの耐用年数を延ばすことができるという効果を奏する。また、発光体を樹脂内に封止することで、発光体モジュールを人間の手で取り扱い易い大きさとすることが可能となり、作業現場における操作性を向上することができるという効果を奏する。
【0006】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、1または複数の発光体の発光部に対向する樹脂の表面部に、凸状または凹状の1または複数の光拡散部が形成されるようにしたものである。
これにより、凸状の光拡散部の表面として与えられる凸面部の曲率または凹状の光拡散部の表面として与えられる凹面部の曲率を適宜設定することにより、発光体から出射される光の照射範囲が拡大されて、広い範囲にわたる視認性を得ることができるという効果を奏する。
【0007】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、1または複数の発光体の発光部に対向する樹脂の表面部に、複数の凸部および複数の凹部が形成されるようにしたものである。
これにより、複数の凸部および凹部により光が散乱されて、光の照射範囲が拡大され、広い範囲にわたる視認性を得ることができるという効果を奏する。また、照射範囲を広げるために、樹脂表面に凸状または凹状の光拡散部を所定の精度で形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0008】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、1または複数の発光体の発光部と、それらの発光部に対向する樹脂の表面部との間に存在する樹脂材料の屈折率が、段階的または連続的に変化するようにしたものである。
これにより、発光体から出射される光の照射範囲が拡大されて、広い範囲にわたる視認性を得ることができるという効果を奏する。また、照射範囲を広げるために、樹脂表面に凸状または凹状の光拡散部を所定の精度で形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0009】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、1または複数の発光体の発光部と、それらの発光部に対向する樹脂の表面部との間に存在する樹脂材料の少なくとも一部が着色されるようにしたものである。
これにより、照射される光のスペクトルを適宜設定することが可能となり、照射対象に適合したスペクトルを有する光を照射することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、樹脂に、水酸化物の散乱材が混入されるようにしたものである。
これにより、発光体モジュールに難燃性を付与することが可能となり、燃焼可能性のある環境下においても、発光体モジュールが十分にその機能を発揮することができるとともに、発光体モジュールの耐用年数を延ばすことができるという効果を奏する。
【0011】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、基板、1または複数の発光体、あるいは制御回路に1または複数の放熱用部材が取り付けられ、1または複数の放熱用部材が樹脂内から外方へ突出するようにしたものである。
これにより、発光体モジュールを効率的に冷却することが可能となり、発熱に起因する発光体モジュールの故障を低減することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、樹脂に、樹脂の表面部にそれぞれ1または複数の開口部を有する1または複数の孔部が形成されるようにしたものである。
これにより、発光体モジュールを効率的に冷却することが可能となり、発熱に起因する発光体モジュールの故障を低減することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、1または複数の発光体の発光部に対向する樹脂の表面部の上側の空間を気密または水密に覆う筐体と、筐体内において1または複数の発光体の発光部に対向する樹脂の表面部の上側に設置され、発光体の発光部に対応する部位にそれぞれ開口部が形成される板状体と、板状体に形成されたそれぞれの開口部を覆うように設けられる1または複数のフィルムと、筐体内において板状体および1または複数のフィルムにより密封された空間内に気体または液体を流通させるために、筐体に設けられる流入口および流出口とをさらに有して構成されるようにしたものである。
これにより、筐体内を流通させられる流体(気体または液体)の圧力を制御することにより、発光部に対応する部位に形成された開口部に張られたフィルムが湾曲する際の湾曲面の曲率を変化させることが可能となり、発光体の発光部から出射される光の照射範囲を調整することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本願発明に係る発光体モジュールは、筐体内を流通する気体または液体が着色されるようにしたものである。
これにより、照射される光のスペクトルを適宜設定することが可能となり、照射対象に適合したスペクトルを有する光を照射することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、基板と、基板上に設置される1または複数の発光体と、基板上に設置されて1または複数の発光体の発光状態を制御する制御回路とを樹脂により覆うことで発光体モジュールを構成したので、劣悪な環境下においても、発光体、制御回路および基板が外部環境から受ける影響を大幅に低減することが可能となり、発光体モジュールが十分にその機能を発揮することができるとともに、発光体モジュールの耐用年数を延ばすことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施の形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による発光体モジュールの構成を概略的に示す斜視図である。図2は、この発明の実施の形態1による発光体モジュールの構成を示す断面図である。図1に示されるように、基板10上には、アレイ状に配列される複数の発光体30と、これらの発光体30の点灯、消灯、出射光出力等に係る発光状態を制御する制御回路50とが設置されている。基板10の表面部または内部には、それぞれの発光体30と制御回路50とを接続する(図示されない)配線が設けられている。
【0017】
基板10、発光体30および制御回路50を樹脂40内に封止することで、発光体モジュール1が構成される。樹脂40内は、中空でなく中実状態となっている。すなわち、基板10、発光体30および制御回路50の周りの空間は全て樹脂40により充たされる。図1に示される実施の形態では、基板1の両面が樹脂40により完全に覆われているが、外部環境から受ける影響の程度に応じて、例えば基板10において発光体30および制御回路50が設置された側の面のみを樹脂40で覆う構成を採ることもできる。また、図2に示されるように、発光体30の発光部に対向する樹脂40の表面部(以下、「樹脂40の発光面」と称する)には、それぞれの発光部に対応する位置に、凸状の光拡散部41が形成されている。なお、制御回路50と外部に設置された電源部とを接続する電源用配線については、樹脂40内から外方へ延びるように取り付けられる。但し、樹脂40が電源用配線をも隙間無く覆うので、外気等が発光体モジュール内部に侵入して、発光体30や制御回路50に接触することはない。
【0018】
発光体30は、例えば、発光ダイオード(LED)、有機EL発光体、冷陰極管、半導体レーザ素子等として与えられる。なお、発光体30は樹脂40内に埋め込むことができるものであればよく、白熱電球や蛍光灯を発光体として用いることも可能である。樹脂40としては、ウレタン樹脂(ポリウレタン)を用いるのが好適である。また、樹脂40の材料は、ウレタン樹脂に限定されるものではなく、電子デバイスを保護するために少なくとも絶縁性を有して、発光体30または制御回路50から発生する熱による悪影響を受けない材料であればよい。但し、熱可塑性を有するアクリル、メタクリル、ポリカーボネート等の材料は発光体の発熱により溶融、焦げ、変色等を生じる可能性があるので、これらの材料を樹脂40として使用する場合には適切な放熱機構を設ける必要がある。なお、例えばウレタン樹脂から成る樹脂40に水酸化物を混入することで、発光体モジュールに難燃性を付与することが可能である。また、制御回路50は、通常、IC(集積回路)等を用いて構成される。
【0019】
発光体モジュール1を製造する際には、所定の形状の型の内部に樹脂40を流し込み、樹脂40内に発光体30および制御回路50が設置された基板10を埋設する。時間の経過とともに樹脂40が固化して基板10が樹脂40内に封止されることで、発光体モジュール1が構成される。型に所定の形状を設けることで、凸状の光拡散部41等を形成することが可能である。
【0020】
図2に示されるように、発光体30の発光部から出射された光31は、凸状に形成された光拡散部41の表面として与えられる凸面部において屈折して、矢印に示されるように拡散する。すなわち、凸状に形成された光拡散部41は、レンズとして機能する。これにより、発光体30から出射される光の照射範囲が拡大されるので、点光源である発光体30をアレイ状に配列して構成される発光体モジュールは、面光源としての機能を有するようになる。なお、光拡散部41の形状は凸状に限定されるものではなく、凹状であってもよい。この場合、出射された光は当初収束するが、焦点距離を越えれば拡散し、同様に広い照射範囲を得ることができる。
【0021】
なお、発光体30の発光部から出射される光を拡散する手段は、上記の手段に限定されるものではない。樹脂40の発光面に、多数の微小な凸部および凹部を形成して、出射された光を散乱させる構成としてもよい。これにより、樹脂40の発光面が曇りガラス(すりガラス)のような機能を有し、出射された光を拡散することができる。この場合、図2に示されるような凸状の光拡散部41を形成する必要はない。また、樹脂40内に散乱材としてラメを混入することにより、発光部から出射される光を散乱させて、光を拡散させることが可能である。また、樹脂40内に微小な気泡を適量包含させても、発光部から出射される光を散乱させて、光を拡散させることが可能である。
【0022】
発光体30の発光部から出射される光を拡散するために、発光体30の発光部と、樹脂40の発光面との間の領域a(以下、「上部領域a」と称する)において、樹脂材料の屈折率を段階的にまたは連続的に変化させるように構成してもよい。発光部に対して近い側の樹脂の屈折率を高くするとともに、発光部に対して遠い側の樹脂の屈折率を低くすることで、凹レンズと同等の光学的性能を得ることができる。高屈折率を有する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(屈折率:1.59)、変性アクリル(屈折率:1.52)、メタクリル(屈折率:1.50)、ウレタン(屈折率:1.50)等が挙げられる。低屈折率を有する樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(屈折率:1.40)、FEP(屈折率:1.34)等のフッ素系樹脂が挙げられる。
【0023】
発光体モジュールから照射される光について所望のスペクトルを得るために、上部領域aの全体または一部を、例えば色素を混入することで、着色するようにしてもよい。この場合には、例えば、発光体30として白色光源を使用するのが好適である。所望のスペクトルを得るために、所定の波長の光を吸収または透過させる種々の着色材料を使用することが可能である。例えば、730nmの波長を有する光(赤光)は種子の発芽を抑制する作用があるので、種子を低温環境に保存する低温保存庫内において730nmの波長を有する光を照射する発光体モジュールを使用することにより、低温保存庫の消費電力を低減することが可能となる。その他にも、人間の目に生理的に適合するとされている月光のスペクトルに近似したスペクトルを有する光を照射することが考えられる。また、植物の栽培に適するように、特定の波長を透過させて生成される光を照射することが考えられる。
【0024】
以上のように、この実施の形態1による発光体モジュールによれば、基板10と、基板10上にアレイ状に配列される発光体30と、発光体30の発光状態を制御する制御回路50とを樹脂40により覆うことで発光体モジュール1を構成したので、劣悪な環境下においても、発光体30、制御回路50および基板10が外気に接触することがないので、発光体モジュール1が十分にその機能を発揮することができるとともに、発光体モジュール1の耐用年数を延ばすことができるという効果を奏する。例えば、水分や塩分に対して十分な耐性を有するので、実施の形態1に係る発光体モジュールを船舶に取り付けられる照明として使用することができる。また、樹脂40として紫外線を遮断できるような材料を用いることで、屋外で使用される場合の耐用年数を延ばすことができる。さらに、耐衝撃性、耐埃性、難燃性等についても、優れた性能を発揮することができる。
【0025】
次に、樹脂40の発光面に、凸状または凹状の光拡散部41が形成されるように構成したので、光拡散部41の凸面部または凹面部の曲率を適宜設定することにより、発光体30から出射される光の照射範囲が拡大されて、広い範囲にわたる視認性を得ることができる。次に、樹脂40の発光面に、多数の微小な凸部および凹部が形成されるように構成したので、多数の凸部および凹部により光が散乱されて、光の照射範囲が拡大され、広い範囲にわたる視認性を得ることができる。また、照射範囲を広げるために、樹脂40の表面部に凸状または凹状の光拡散部41を所定の精度で形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0026】
次に、上部領域aに存在する樹脂材料の屈折率が段階的または連続的に変化するように構成したので、発光体30から出射される光の照射範囲が拡大されて、広い範囲にわたる視認性を得ることができる。また、照射範囲を広げるために、樹脂40の表面部に凸状または凹状の光拡散部41を所定の精度で形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。次に、上部領域aに存在する樹脂材料の少なくとも一部が着色されるように構成したので、発光体モジュールから照射される光のスペクトルを適宜設定することが可能となり、照射対象に適合したスペクトルを有する光を照射することができる。次に、樹脂40に、水酸化物の散乱材が混入されるように構成したので、発光体モジュールに難燃性を付与することが可能となり、燃焼可能性のある環境下においても発光体モジュールを使用することができる。
【0027】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による発光体モジュールの構成を示す断面図である。図3において、図1および図2と同一符号は、同一の構成要素を示すものとする。この実施の形態2は、発光体30または制御回路50から発生する熱を放熱する構成を有する点で実施の形態1に対して差異を有する。図3に示されるように、基板10において発光体30が設置されている面と反対側の面上に、放熱板(放熱用部材)60が取り付けられている。放熱板60は、樹脂40の内部から外方に突出するように、すなわち一部が樹脂40の外部に露出するような大きさを有するように形成されている。なお、放熱板60の取り付けについては、基板10に取り付けられる形態に限定されるものではない。放熱板60を1または複数の発光体30、あるいは制御回路50に取り付けるようにしてもよく、複数の上記構成要素に取り付けるようにしてもよい。また、放熱板60の個数も1つに限定されるものではなく、複数の放熱板を取り付ける構成としてもよい。
【0028】
この実施の形態による発光体モジュールは、樹脂40が放熱板60を隙間無く覆うように構成したので、外気等が発光体モジュール内に侵入して、発光体30や制御回路50に接触することはない。これにより、発光体30や制御回路50を外気に接触させることなく、発光体30や制御回路50から発生する熱を効率的に放熱することが可能となる。なお、放熱板60は、金属から形成されるのが好適である。また、高い熱伝導率を有するプラスチックを用いてもよい。樹脂40を高い熱伝導率を有する同一の材料から形成する場合には、放熱板60と樹脂40とを一体成形により形成することが可能である。
【0029】
この実施の形態2による発光体モジュールによれば、基板10、発光体30、あるいは制御回路50に放熱板60が取り付けられ、放熱板60が樹脂40の内部から外方へ突出するように構成したので、発光体モジュールを効率的に冷却することが可能となり、発熱に起因する発光体モジュールの故障を低減することができる。なお、実施の形態2に記載された発光体モジュールに実施の形態1の発光体モジュールについて記載された技術的特徴を組み込むことにより、実施の形態1の発光体モジュールにより得られる効果をも同様に奏することが可能である。
【0030】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3による発光体モジュールの構成を示す断面図である。図4において、図1および図2と同一符号は、同一の構成要素を示すものとする。この実施の形態3は、発光体30または制御回路50から発生する熱を放熱する構成を有する点で実施の形態1に対して差異を有する。図4に示されるように、樹脂40には、樹脂40の表面部に1つの開口部を有する孔部43が複数形成されるとともに、樹脂40の表面部に2つの開口部を有する孔部42が複数形成されている。
【0031】
樹脂40の周りに冷却用の流体を供給することで、発光体モジュールを冷却することができる。冷却用流体は、気体であっても液体であってもよい。樹脂40の表面部に2つの開口部を有する孔部42内には流体を流通させることが可能であり、冷却効率を高めることができる。なお、樹脂40の表面部において、孔部が開口する数は3以上であってもよい。また、熱による冷却用流体の対流を促進させるような形状を有するように、孔部42,43を形成することが可能である。
【0032】
この実施の形態3による発光体モジュールによれば、樹脂40に、樹脂40の表面部に1または2の開口部を有する複数の孔部42,43が形成されるように構成したので、発光体モジュールを効率的に冷却することが可能となり、発熱に起因する発光体モジュールの故障を低減することができる。なお、実施の形態3に記載された発光体モジュールに実施の形態1の発光体モジュールについて記載された技術的特徴を組み込むことにより、実施の形態1の発光体モジュールにより得られる効果をも同様に奏することができる。
【0033】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4による発光体モジュールの構成を示す断面図である。図5において、図1および図2と同一符号は、同一の構成要素を示すものとする。この実施の形態4は、発光体モジュールを構成する樹脂の発光面上の空間を覆うケース(筐体)内に形成された流路内を流通する流体の圧力を制御することにより、発光体の発光部に対応して設けられたフィルムが湾曲する程度を変化させて照射範囲を調整する構成を有する点で、実施の形態1に対して差異を有する。また、図6は、ケース内に設置される板状体を示す平面図である。
【0034】
図5に示されるように、発光体30等が設置された基板10を内部に封止する樹脂40の発光面の上側の空間を覆うように、ケース80が設けられている。樹脂40の発光面の上側の空間を覆うために、図5に示される実施の形態では樹脂40をケース80内に収容する構成を採っているが、例えば底部が開放されているケース80を樹脂40に上側から被せてケース80の側面部を樹脂40の側面部に接合する構成を採ることもできる。ケース80は透明であるのが好適であるが、使用用途に応じて特定の波長を透過させる半透明材料から形成するようにしてもよい。
【0035】
ケース80内において、樹脂40の発光面の上側には、板状体70が設置されている。板状体70より上側の空間を密封できるように、板状体70の周縁部はケース80の内側面に接合されている。板状体70には、発光体30の発光部に対応する部位に、それぞれ円形の開口部71が形成されている。開口部71の形状は円形に限定されるものではなく、三角形、四角形、星形等の他の形状を採用することも可能である。板状体70の材料としては、プラスチックが好適であるが、金属等の他の材料を用いてもよい。また、板状体70は、透明であるのが好適であるが、半透明であっても、白濁していても、あるいは不透明であってもよい。
【0036】
板状体70に形成されたそれぞれの開口部71を覆うように、フィルム90が固定される。開口部71を覆うために、開口部71周りにそれぞれフィルム90を貼り付ける構成とすることができる。また、板状体70の上面部全体にわたって1枚のフィルム90を張る構成としてもよい。フィルム90は、フィルム表面に作用する圧力に応じて湾曲する適度な材料を用いて形成される。フィルム90の材料としては、例えばウレタンゲルが好適であるが、他のエラストマー材料を用いてもよい。なお、フィルム90は板状体70の上面部または下面部のいずれの側の面上にも固定することができる。固定する際の作業性を考慮すれば、板状体70においてフィルム90が張られる面は、平面状の形態を有するのが好適である。また、樹脂40の発光面と板状体70およびフィルム90との間の空間には、例えば大気圧の空気が封入される。また、この空間に所定の圧力を有する気体または液体を封入する構成としてもよい。
【0037】
ケース80内において板状体70およびフィルム90により密封された空間内に気体または液体を流通させるために、ケース80の一方の側面部には流入口81が設けられ、ケース80の他方の側面部には流出口82が設けられている。流入口81に連結される管路には、流体の圧力または流量を調整する入口バルブ83が取り付けられている。流出口82に連結される管路には、流体の圧力または流量を調整する出口バルブ84が取り付けられている。入口バルブ83は、連結される管路を介して、例えば加圧タンクに接続される。出口バルブ84は、連結される管路を介して、例えば減圧タンクに接続される。入口バルブ83および出口バルブ84を共に開放することで、矢印に示されるように、流入口から流出口に向けて、密封された空間内を流体が流通する。なお、染料等を使用して、流体を着色する構成としてもよい。
【0038】
図7は、流体の圧力の変化に応じたフィルム90の形状の変化を示す図である。図7(a)に示されるように、流体の圧力が小さい際には、板状体70の開口部71に張られたフィルム90は、ほとんど湾曲することはない。この場合、フィルム90はレンズ効果を有しない。次に、例えば入口バルブ83に接続される加圧タンクを駆動して、流入口81から流入する流体の圧力を大きくすると、図7(b)に示されるように、フィルム90は湾曲して、流体とともに凸レンズとしての機能を有するようになる。これにより、発光体30から出射される光を収束することが可能となる。また、流体の圧力をさらに大きくすると、図7(c)に示されるように、湾曲面の曲率がさらに大きくなる。これにより、フィルム90をレンズ面とした場合の焦点距離が短くなり、光をさらに収束させることが可能となる。
【0039】
また、樹脂40の発光面と板状体70およびフィルム90との間の空間に所定の圧力を有する気体または液体が封入される構成を採る場合には、例えば出口バルブ84に接続される減圧タンクを駆動して、流体の圧力を小さくすることにより、図7(b)や図7(c)に示される湾曲方向と逆の方向にフィルム90を湾曲させることが可能である。この場合においても、フィルム90はレンズ面として機能し、圧力を制御することで照射範囲を調整することが可能となる。
【0040】
この実施の形態4による発光体モジュールによれば、樹脂40の発光面の上側の空間を気密または水密に覆うケース80と、ケース80内において樹脂40の発光面の上側に設置されて発光体30の発光部に対応する部位にそれぞれ開口部71が形成される板状体70と、板状体70に形成されたそれぞれの開口部71を覆うように設けられたフィルム90と、ケース80内において流体を流通させるようにケース80に設けられた流入口81および流出口82とを有するように構成したので、ケース80内を流通させられる流体の圧力を制御することで、湾曲させられるフィルム90の曲率を変化させることが可能となり、発光体30の発光部から出射される光の照射範囲を調整することができる。
【0041】
次に、この実施の形態による発光体モジュールは、ケース80内を流通する気体または液体が着色されるように構成したので、照射される光のスペクトルを適宜設定することが可能となり、照射対象に適合したスペクトルを有する光を照射することができる。なお、実施の形態4に記載された発光体モジュールに、実施の形態1、実施の形態2または実施の形態3の発光体モジュールについて記載された技術的特徴を組み込むことにより、実施の形態1、実施の形態2または実施の形態3の発光体モジュールにより得られる効果をも同様に奏することができる。
【0042】
なお、上記の実施の形態1から実施の形態4により説明される発光体モジュールは、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により定められるものであり、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲内において種々の設計的変更が可能である。例えば、実施の形態4においては、ケース80の上側部分と板状体70およびフィルム90との間の密封空間内に流体を流通させる構成を採っているが、樹脂40の発光面と板状体70およびフィルム90との間の密封空間内に流体を流通させる構成としてもよい。また、湾曲したフィルム90が開口部71から外方へ突出することのないように板状体70が十分な厚みを有する場合には、ケース80内において板状体70を樹脂40の発光面に当接するように設置する構成を採ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、船舶用照明器具等の種々の照明器具に幅広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1による発光体モジュールの構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1による発光体モジュールの構成を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2による発光体モジュールの構成を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3による発光体モジュールの構成を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4による発光体モジュールの構成を示す断面図である。
【図6】筐体内に設置される板状体を示す平面図である。
【図7】流体の圧力の変化に応じたフィルムの形状の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 発光体モジュール、10 基板、30 発光体、31 光、40 樹脂、41 光拡散部、42,43 孔部、50 制御回路、60 放熱板(放熱用部材)、70 板状体、71 開口部、80 ケース(筐体)、81 流入口、82 流出口、83 入口バルブ、84 出口バルブ、90 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設置される1または複数の発光体と、前記基板上に設置されて前記1または複数の発光体の発光状態を制御する制御回路と、少なくとも前記基板、前記1または複数の発光体および前記制御回路を覆う樹脂とを有して構成されることを特徴とする発光体モジュール。
【請求項2】
前記1または複数の発光体の発光部に対向する前記樹脂の表面部に、凸状または凹状の1または複数の光拡散部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項3】
前記1または複数の発光体の発光部に対向する前記樹脂の表面部に、複数の凸部および複数の凹部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項4】
前記1または複数の発光体の発光部と、それらの発光部に対向する前記樹脂の表面部との間に存在する樹脂材料の屈折率が、段階的または連続的に変化することを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項5】
前記1または複数の発光体の発光部と、それらの発光部に対向する前記樹脂の表面部との間に存在する樹脂材料の少なくとも一部が着色されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項6】
前記樹脂には、水酸化物の散乱材が混入されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項7】
前記基板、前記1または複数の発光体、あるいは前記制御回路に1または複数の放熱用部材が取り付けられ、該1または複数の放熱用部材が前記樹脂内から外方へ突出することを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項8】
前記樹脂に、該樹脂の表面部にそれぞれ1または複数の開口部を有する1または複数の孔部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項9】
前記1または複数の発光体の発光部に対向する前記樹脂の表面部の上側の空間を気密または水密に覆う筐体と、
該筐体内において前記1または複数の発光体の発光部に対向する前記樹脂の表面部の上側に設置され、前記発光体の前記発光部に対応する部位にそれぞれ開口部が形成される板状体と、
該板状体に形成された前記それぞれの開口部を覆うように設けられる1または複数のフィルムと、
前記筐体内において前記板状体および前記1または複数のフィルムにより密封された空間内に気体または液体を流通させるために、前記筐体に設けられる流入口および流出口とを、さらに有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の発光体モジュール。
【請求項10】
前記筐体内を流通する気体または液体が着色されることを特徴とする請求項9に記載の発光体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−141189(P2008−141189A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290243(P2007−290243)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504049730)株式会社光フィジクス研究所 (20)
【出願人】(501304674)有限会社アキュートエッグ (2)
【Fターム(参考)】