説明

発光媒体の真偽判定システムおよび真偽判定方法

【課題】偽造防止媒体に対する真偽判定を精度良く行う真偽判定システムを提供する。
【解決手段】偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光部12と、を有している。発光部12は、第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含んでいる。このような偽造防止媒体10に対して真偽判定を実施する真偽判定システム50は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、不可視光により励起されて発光部12から発光する光を受光する測定部25と、を備えている。また真偽判定システム50は、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が内蔵されたデータベース30と、光照射部20、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムおよび真偽判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金券やプリペイドカードを含む有価証券や、免許証を含む身分証明書など、偽造を防止することが必要とされる媒体において、セキュリティ性を高めるため、近年、マイクロ文字、コピー牽制パターン、赤外線吸収インキまたは蛍光インキなどが利用されている。このうち蛍光インキとは、可視光下ではほとんど視認されず、不可視光(紫外線または赤外線)が照射されたときに視認される蛍光体を含むインキである。このような蛍光インキを用いることにより、有価証券などに、特定の波長領域内の不可視光が照射されたときにのみ現れる発光部を形成することができる。このような発光部を利用することにより、有価証券などが正規のものかどうかを判定することが可能となる。
【0003】
例えば特許文献1において、蛍光体を含む発光部を有するID識別用媒体に対して励起光を照射する光源と、発光部から放射された光を受光し、当該光のスペクトルの強度を計測する計測部と、を備えた判定システムが提案されている。この場合、発光部から放射された光のスペクトルに複数のピークが包含されるよう、発光部が構成されている。そして、各ピークの強度比に基づいて、ID識別用媒体が正規のものであるかどうかが判定される。
【0004】
また特許文献2において、蛍光体を含む蛍光体担持物により形成された潜像マークに対して2つ以上の波長の異なる励起光を照射する発光素子と、潜像マークから放射された光を受光する受光素子と、を備えた判定システムが提案されている。この場合、2つ以上の波長の異なる励起光を潜像マークに対してそれぞれ照射した時に、受光素子において信号が発生するかどうかに基づいて、潜像マークが正規のものであるかどうかが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/023799号パンフレット
【特許文献2】特開平7−331239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、有価証券などにおいて、解析技術などの進歩により、偽造技術が向上してきている。このため、偽造をより確実に防ぐためには、容易には解析され得ない発光部を有する発光媒体を有価証券などとして用いるとともに、発光媒体からなる有価証券に対する真偽判定をより精度良く行うことが求められている。
【0007】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る発光媒体の真偽判定システムおよび真偽判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定システムは、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1光源と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2光源と、を含む光照射部と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ求める測定部と、参照用の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1参照照射強度および第2不可視光の第2参照照射強度と、前記第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の強度と、前記第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の強度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースと、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えたことを特徴とする真偽判定システムである。
【0009】
本発明による真偽判定システムにおいて、前記測定部は、前記第1放出光の光波長と、前記第2放出光の光波長と、をさらに求め、また前記データベースは、前記第1参照放出光の光波長と、前記第2参照放出光の光波長と、に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度および光波長と前記第1参照放出光の補正後の強度および光波長を比較し、かつ、前記第2放出光の強度および光波長と前記第2参照放出光の補正後の強度および光波長を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0010】
本発明による真偽判定システムにおいて、前記測定部は、複数の光波長における前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度をそれぞれ求め、また前記データベースは、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、複数の光波長における前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、複数の光波長における前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0011】
本発明による真偽判定システムにおいて、前記第1光源からの第1不可視光と、前記第2光源からの第2不可視光は、判定対象の発光媒体の発光部に対して同時に照射されてもよい。
【0012】
本発明による真偽判定システムにおいて、前記光照射部から判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能であってもよい。
【0013】
本発明による真偽判定システムにおいて、前記光照射部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光を複数回照射し、また前記測定部は、前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度を光照射部による照射の度にそれぞれ求めてもよい。この場合、前記真偽判定部は、光照射部による複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0014】
本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定方法は、参照用の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1参照照射強度および第2不可視光の第2参照照射強度と、前記第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の強度と、前記第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の強度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1照射工程と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2照射工程と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ求める測定工程と、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えたことを特徴とする真偽判定方法である。
【0015】
本発明による真偽判定方法の前記測定工程において、前記第1放出光の光波長と、前記第2放出光の光波長と、がさらに求められ、また前記データベースは、前記第1参照放出光の光波長と、前記第2参照放出光の光波長と、に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度および光波長と前記第1参照放出光の補正後の強度および光波長を比較し、かつ、前記第2放出光の強度および光波長と前記第2参照放出光の補正後の強度および光波長を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【0016】
本発明による真偽判定方法の前記測定工程において、複数の光波長における前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度がそれぞれ求められ、また前記データベースは、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、複数の光波長における前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、複数の光波長における前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【0017】
本発明による真偽判定方法において、前記第1照射工程と前記第2照射工程が同時に実施されてもよい。
【0018】
本発明による真偽判定方法において、前記第1照射工程における第1不可視光の第1照射強度、および前記第2照射工程における第2不可視光の第2照射強度が調整可能であってもよい。
【0019】
本発明による真偽判定方法の前記第1照射工程および前記第2照射工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光が複数回照射され、また前記測定工程において、前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度が、前記第1照射工程および前記第2照射工程における第1不可視光および第2不可視光の照射の度にそれぞれ求められてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記第1照射工程および前記第2照射工程における第1不可視光および第2不可視光の複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行う真偽判定システムおよび真偽判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体により構成される有価証券の一例を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の発光媒体の発光部に含まれる蛍光インキの蛍光発光スペクトルの一例を示す図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図4A】図4Aは、本発明の第1の実施の形態において、第1参照照射強度の第1不可視光のスペクトルおよび第2参照照射強度の第2不可視光のスペクトルを示す図。
【図4B】図4Bは、図4Aに示す第1不可視光および第2不可視光により励起されて参照用の偽造防止媒体の発光部から発光する第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルを示す図。
【図5A】図5Aは、本発明の第1の実施の形態において、第1照射強度の第1不可視光のスペクトルおよび第2照射強度の第2不可視光のスペクトルを示す図。
【図5B】図5Bは、図5Aに示す第1不可視光および第2不可視光により励起されて判定対象の偽造防止媒体の発光部から発光する第1放出光および第2放出光のスペクトルを示す図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例において、図5Aに示す第1不可視光および第2不可視光が判定対象の偽造防止媒体の発光部に対して同時に照射されたときに発光部から発光する光を示す図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図9A】図9Aは、本発明の第3の実施の形態において、第1不可視光および第2不可視光により励起されて参照用の偽造防止媒体の発光部から発光する第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルを示す図。
【図9B】図9Bは、本発明の第3の実施の形態において、第1不可視光および第2不可視光により励起されて判定対象の偽造防止媒体の発光部から発光する第1放出光および第2放出光のスペクトルを示す図。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図11A】図11Aは、参照用UV−Aのスペクトルの形状と、判定用UV−Aのスペクトルの形状が異なる例を示す図。
【図11B】図11Bは、図11Aに示す参照用UV−Aおよび判定用UV−Aにより励起されて発光部から発光する第1参照放出光および第1放出光のスペクトルを示す図。
【図12A】図12Aは、本発明の第4の実施の形態において、第1参照放出光の補正後のスペクトルを示す図。
【図12B】図12Bは、本発明の第4の実施の形態において、第2参照放出光の補正後のスペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1および図2を参照して、本発明の真偽判定システムおよび真偽判定方法により真偽判定が実施される発光媒体として偽造防止媒体10について説明する。
【0023】
偽造防止媒体
図1は、本実施の形態による偽造防止媒体10により構成される商品券(有価証券)の一例を示す図である。図1に示すように、偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光部12と、を有している。本実施の形態においては、後述するように、発光部12が、偽造防止媒体10の真偽を判定するための真偽判定用領域として機能する。この発光部12は、不可視光により励起されて蛍光を発する蛍光体を含む蛍光インキ13を印刷することにより形成されている。
【0024】
偽造防止媒体10において用いられる基材11の材料が特に限られることはなく、偽造防止媒体10により構成する有価証券の種類に応じて適宜選択される。例えば、基材11の材料として、優れた印刷適性および加工適性を有する白色のポリエチレンテレフタレートが用いられる。基材11の厚みは、偽造防止媒体10により構成される有価証券の種類に応じて適宜設定される。
【0025】
発光部12の大きさが特に限られることはなく、真偽判定のし易さや、求められる判定精度などに応じて適宜設定される。例えば、発光部12の長さlおよびlは、それぞれ1〜210mmおよび1〜300mmの範囲内となっている。また、発光部12を形成するよう印刷される蛍光インキ13の厚みは、有価証券の種類や、印刷の方式などに応じて適宜設定されるが、例えば、0.3〜100μmの範囲内となっている。
【0026】
蛍光インキ13は、後述するように、可視光下では発光せず、特定の不可視光下で発光する所定の蛍光体、例えば粒状の顔料を含んでいる。ここで、蛍光インキ13に含まれる顔料の粒径が特に限られることはなく、様々な顔料が用いられ得る。
例えば、0.1〜10μmの範囲内、より具体的には0.1〜3μmの範囲内の粒径を有する顔料を含む蛍光インキ13を用いることができる。この場合、蛍光インキ13に可視光が照射されると、光が顔料粒子によって散乱される。従って、可視光下で発光部12を見た場合、白色の領域として視認される。また上述のように、本実施の形態における基材11は、白色のポリエチレンテレフタレートから形成されている。このため、可視光下において、基材11および発光部12はいずれも白色のものとして視認される。従って、可視光下において発光部12が視認されることはない。このことにより、発光部12を有する偽造防止媒体10が容易に解析されるのを防ぐことができる。
また、0.1μm以下の粒径を有する顔料を含む蛍光インキ13が用いられてもよい。例えば、量子ドットを顔料として含む蛍光インキ13が用いられ得る。
【0027】
蛍光インキ
次に図2を参照して、蛍光インキ13についてより詳細に説明する。図2は、蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示す図である。
【0028】
図2においては、315〜400nmの波長域領域内(第1波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Aが照射されたときの蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルと、200〜280nmの波長域領域内(第2波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Cが照射されたときの蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルとがともに示されている。なお図2に示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が同一となるよう規格化されている。
【0029】
図2に示すように、蛍光インキ13は、UV−Aが照射されたとき、ピーク波長が約445nmである青色(第1色)の光を発し、UV−Cが照射されたとき、ピーク波長が約525nmである緑色(第2色)の光を発する。このように、蛍光インキ13は、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(蛍光体)を含んでいる。このような二色性蛍光体は、例えば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体と、を適宜組み合わせることにより構成される(例えば、特開平10−251570号公報参照)。
なおUV−A照射時には、図2に示すように約525nmの波長の光も発光される。しかしながら、約525nmの波長の光は、ピーク波長が約445nmである光に比べて強度が小さいため、UV−A照射時、蛍光インキ13からの光は青色光として視認される。同様に、UV−C照射時、図2に示すように約445nmの波長の光も発光されるが、その強度が小さいため、蛍光インキ13からの光は緑色光として視認される。
【0030】
本実施の形態によれば、上述のように、偽造防止媒体10の発光部12は、UV−Aが照射されたときに青色(第1色)の光を発光するとともに、UV−Cが照射されたときに緑色(第2色)の光を発光する蛍光体を含んでいる。このため、偽造防止媒体10の解析を困難にすることができ、これによって、偽造防止媒体10が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また後述するように、青色(第1色)の光および緑色(第2色)の光の双方に基づいて、偽造防止媒体10に対する真偽判定を行うことができる。このことにより、偽造防止媒体10から発光される光が単一色である場合に比べて、より高い精度で真偽判定を行うことができる。
【0031】
また本実施の形態によれば、図2に示すように、UV−AおよびUV−Cが照射されたときに発光部12の蛍光体からそれぞれ発光される光のスペクトルは、ほぼ単一のピークから形成されるスペクトルとなっている。このため、UV−AまたはUV−Cのいずれか一方のみが照射されたときに複数のピークを含むスペクトルを有する光を発光する蛍光体が発光部において用いられる場合に比べて、使用され得る蛍光体の選択肢がより広くなっている。このことにより、偽造防止媒体10の発光部12をより安価かつ容易に構成することができる。
【0032】
また本実施の形態によれば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体との比率を調整することにより、UV−AおよびUV−Cが照射されたときに発光部12からそれぞれ発光される光のスペクトルの強度比を任意に変えることができる。これに比べて、UV−AまたはUV−Cのいずれか一方のみが照射されたときに複数のピークを含むスペクトルを有する光を発光する蛍光体が発光部12において用いられる場合、各ピークの強度比は一律の値となっている。すなわち本実施の形態によれば、より多様な判定条件のもとで偽造防止媒体10の真偽判定を行うことが可能となる。
【0033】
真偽判定システム
次に図3を参照して、本発明の第1の実施の形態における真偽判定システム50について説明する。真偽判定システム50は、上述の偽造防止媒体10の真偽判定を行うためのシステムであり、偽造防止媒体10からなる有価証券が利用される様々な場所に設置されるものである。
【0034】
図3に示すように、真偽判定システム50は、偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、不可視光により励起されて発光部12から発光する放出光を受光する測定部25と、を備えている。また図3に示すように、真偽判定システム50は、データベース30と、光照射部20、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、をさらに備えている。
【0035】
はじめに真偽判定システム50の概要について説明する。真偽判定システム50においては、予め取得された参照用の偽造防止媒体(参照用の発光媒体)10に関する情報と、判定対象の偽造防止媒体(判定対象の発光媒体)10に関する情報とを比較し、両者の情報がほぼ一致した場合に、判定対象の偽造防止媒体10が正規品であると判定される。ここで、参照用の偽造防止媒体10とは、正規品であることが既に確定されている偽造防止媒体10のことである。参照用の偽造防止媒体10は、例えば偽造防止媒体10の発行元などから入手される。また判定対象の偽造防止媒体10とは、正規品かどうかが未だ確定されていない偽造防止媒体10のことであり、例えば店舗などにおいて顧客が会計の際に差し出す有価証券のことである。
【0036】
真偽判定システム50において、参照用の偽造防止媒体10に関する情報は、あらかじめ上述のデータベース30に内蔵されている。また、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報は、上述の光照射部20および測定部25を用いることにより取得される。以下、真偽判定システム50の各構成要素について詳細に説明する。
【0037】
(光照射部)
光照射部20は、図3に示すように、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1照射強度で照射する第1光源21と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2照射強度で照射する第2光源22と、を含んでいる。
【0038】
このうちUV−A(第1不可視光)を照射する第1光源21としては、例えば、発光ピーク波長が365nmである高圧水銀UVランプを使用することができる。また、UV−C(第2不可視光)を照射する第2光源22としては、例えば、発光ピーク波長が254nmである低圧水銀UVランプを使用することができる。
【0039】
なお、光照射部20の第1光源21から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Aの第1照射強度、光照射部20の第2光源22から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Cの第2照射強度は、それぞれ調整可能となっていてもよい。これによって、より多様な判定条件のもとで偽造防止媒体10の真偽判定を行うことが可能となる。
【0040】
UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整するための具体的な手段が特に限られることはなく、様々な手段が採用され得る。例えば、第1光源21および第2光源22各々に、開口率を自在に調整することができるシャッターを取り付け、これらシャッターの開口率を調整することにより、UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整してもよい。または、第1光源21の高圧水銀UVランプおよび第2光源22の低圧水銀UVランプに印加する電圧をそれぞれ調整することにより、UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整してもよい。
【0041】
(測定部)
次に測定部25について説明する。図3に示すように、測定部25には、第1照射強度のUV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第1放出光)と、第2照射強度のUV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第2放出光)とを受光する。この測定部25は、受光した第1放出光および第2放出光に基づいて、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ求めるよう構成されている。このような測定部25としては、例えば、図3に示すようにパワーメータ26が用いられる。
【0042】
なお図3に示すパワーメータ26において、検出される光の波長域が切替可能となっていてもよい。例えば、パワーメータ26が、青色光を含む400〜480nmの波長域の光の強度を求める第1モードと、緑色光を含む490〜570nmの波長域の光の強度を求める第2モードとを有していてもよい。この場合、青色光と緑色光とが同時にパワーメータ26に入射された場合であっても、第1モードと第2モードとを切り替えることにより、青色光および緑色光の強度をそれぞれ別個に求めることが可能である。
なお、パワーメータ26が検出可能な光の波長域は、上述の波長域に限られることはなく、任意に設定可能となっていてもよい。
【0043】
(データベース)
次にデータベース30について説明する。データベース30は、参照用の偽造防止媒体10(参照用の発光媒体)に関する情報を予め格納しておくためのものである。このデータベース30には、具体的には、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Aの第1参照照射強度およびUV−Cの第2参照照射強度と、第1参照照射強度のUV−A(第1不可視光)により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第1参照放出光)の強度と、第2参照照射強度のUV−C(第2不可視光)により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第2参照放出光)の強度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されている。このような情報は、例えば、偽造防止媒体10の発行元または真偽判定システム50の製造元などにおいて取得され、そしてデータベース30内に格納される。
【0044】
データベース30内に内蔵される情報を取得する際に用いられる上述の第1参照照射強度のUV−Aおよび第2参照照射強度のUV−Cを生成する光源が特に限られることはない。例えば、UV−AおよびUV−Cを生成する光源として、本実施の形態による真偽判定システム50の光照射部20が用いられてもよく、または、その他の汎用のUV−A光源およびUV−C光源が用いられてもよい。
【0045】
(真偽判定部)
次に真偽判定部35について説明する。真偽判定部35は、パワーメータ26からの情報と、データベース30に予め内蔵されている参照用の偽造防止媒体10に関する情報と、に基づいて、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行うものである。この真偽判定部35は、図3に示すように、光照射部20およびデータベース30からの情報が入力される強度補正部36と、強度補正部36およびパワーメータ26からの情報が入力される判定部37とを有している。まず強度補正部36について説明する。
【0046】
一般に、偽造防止媒体10の発光部12に照射されるUV−AおよびUV−Cの強度が大きくなるほど、発光部12から発光する第1放出光および第2放出光の強度も大きくなる。また、上述のように、データベース30内に内蔵される情報を取得する際に用いられるUV−AおよびUV−Cの光源と、真偽判定システム50の光照射部20とが同一であるとは限らない。従って、データベース30内に内蔵される情報を取得する際のUV−Aの第1参照照射強度およびUV−Cの第2参照照射強度と、真偽判定システム50の光照射部20から照射されるUV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度とが同一であるとは限らない。このため、パワーメータ26から得られる判定対象の偽造防止媒体10に関する情報と、データベース30に予め内蔵されている参照用の偽造防止媒体10に関する情報とを適切に比較するためには、上述の第1照射強度および第2照射強度と上述の第1参照照射強度および第2参照照射強度との相違を考慮する必要がある。
【0047】
強度補正部36は、このような点を考慮して設けられているものである。具体的には、強度補正部36は、上述の第1照射強度および第2照射強度と上述の第1参照照射強度および第2参照照射強度との相違を考慮した上で、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報と、参照用の偽造防止媒体10に関する情報とが適切に比較され得るよう、データベース30内の第1参照放出光の強度および第2参照放出光の強度を補正するものである。
【0048】
判定部37は、強度補正部36により補正された第1参照放出光の強度および第2参照放出光の強度と、パワーメータ26から入力される第1放出光の強度および第2放出光の強度とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行うものである。この場合、例えば、第1参照放出光の補正後の強度と第1放出光の強度とを比較し、かつ、第2参照放出光の補正後の強度と第2放出光の強度とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0049】
例えば第1/第2参照放出光の補正後の強度(後述するI ‘_R/I ‘_R)と第1/第2放出光の強度(後述するI_M/I_M)との差を、第1/第2参照放出光の補正後の強度(I’_R/I’_R)で割った値の絶対値が0.05以下の場合、偽造防止媒体10が正規品と判定される(〔数1〕参照)。なお、比較の際に用いられる真偽判定の基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【数1】

【0050】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0051】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、蛍光インキ13を用いて、基材11上に発光部12を形成する。
【0052】
この際、蛍光インキ13としては、例えば、所定の蛍光特性を有する二色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキがそれぞれ用いられる。このうち蛍光インキ13用の二色性蛍光体としては、例えば、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−GB(根本特殊化学製)が用いられる。
【0053】
なお、蛍光インキ13における各構成要素の組成が上述の組成に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて最適な組成が設定される。
【0054】
真偽判定方法
次に、図3乃至図5Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを、真偽判定システム50を用いて判定する方法について説明する。
【0055】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。以下、図4Aおよび4Bを参照して、データベース30に内蔵される情報を取得する方法について説明する。
【0056】
はじめに、参照用の偽造防止媒体10を準備する。その後、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1参照照射強度で照射し、そして、この際に発光部12から発光される第1参照放出光の強度を測定する。次に、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2参照照射強度で照射し、そして、この際に発光部12から発光される第2参照放出光の強度を測定する。
【0057】
図4Aは、参照用の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cのスペクトルをそれぞれ示す図である。図4Aにおいて、参照用の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cのスペクトルが符号S_RおよびS_Rにより示されている。なお以下において、参照用の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cを、それぞれ参照用UV−Aおよび参照用UV−Cと称する。
【0058】
図4Aに示すように、参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rおよび波長λ_Rはそれぞれ2000および365nmとなっており、参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rおよび波長λ_Rはそれぞれ2000および254nmとなっている。なお本明細書における光の強度の単位はすべて任意単位(AU)となっている。
【0059】
なお図4Aに示すように、I_Rは、参照用UV−Aのピーク波長における強度を示している。I_Rについても同様である。しかしながら、これに限られることはなく、参照用UV−Aの第1参照照射強度および参照用UV−Cの第2参照照射強度として、スペクトルS_RまたはS_Rを積分することにより算出される強度(積分強度)が用いられてもよい。
【0060】
図4Bは、参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルをそれぞれ示す図である。図4Bにおいて、第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルが符号S_RおよびS_Rにより示されている。図4Bに示すように、第1参照放出光の強度I_Rおよび波長λ_Rはそれぞれ300および445nmとなっており、第2参照放出光の強度I_Rおよび波長λ_Rはそれぞれ1200および525nmとなっている。
【0061】
なお図4Bに示すように、第1参照放出光の強度I_Rは、第1参照放出光のピーク波長における強度を示している。第2参照放出光の強度I_Rについても同様である。しかしながら、これに限られることはなく、第1参照放出光の強度および第2参照放出光の強度として、スペクトルS_RまたはS_Rを積分することにより算出される強度(積分強度)が用いられてもよい。
【0062】
表1は、データベース30に格納される、参照用の偽造防止媒体10に関する情報を示している。表1に示すように、データベース内30には、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cの強度に関する情報と、対応する第1参照放出光および第2参照放出光の強度に関する情報とが格納される。
【表1】

【0063】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2照射強度で照射する(第2照射工程)。
【0064】
図5Aは、上述の第1照射工程により照射されるUV−Aおよび第2照射工程により照射されるUV−Cのスペクトルをそれぞれ示す図である。図5Aにおいて、判定対象の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cのスペクトルが符号S_MおよびS_Mにより示されている。なお以下において、判定対象の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cを、それぞれ判定用UV−Aおよび判定用UV−Cと称する。
【0065】
図5Aに示すように、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mおよび波長λ_Mはそれぞれ2000および365nmとなっており、判定用UV−Cの第2照射強度I_Mおよび波長λ_Mはそれぞれ1000および254nmとなっている。なお図5Aに示すように、I_Mは、判定用UV−Aのピーク波長における強度を示している。I_Mについても同様である。しかしながら、これに限られることはなく、判定用UV−Aの第1照射強度および判定用UV−Cの第2照射強度として、スペクトルS_MまたはS_Mを積分することにより算出される強度(積分強度)が用いられてもよい。
【0066】
(測定工程)
次に、パワーメータ26を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ測定する。
【0067】
図5Bは、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光および第2放出光のスペクトルをそれぞれ示す図である。図5Bにおいて、第1放出光および第2放出光のスペクトルが符号S_MおよびS_Mにより示されている。図5Bに示すように、第1放出光の強度I_Mおよび波長λ_Mはそれぞれ300および445nmとなっており、第2参照放出光の強度I_Mおよび波長λ_Mはそれぞれ600および525nmとなっている。
【0068】
なお図5Bに示すように、第1放出光の強度I_Mは、第1放出光のピーク波長における強度を示している。第2放出光の強度I_Mについても同様である。しかしながら、これに限られることはなく、第1放出光の強度および第2放出光の強度として、スペクトルS_MまたはS_Mを積分することにより算出される強度(積分強度)が用いられてもよい。
【0069】
表2は、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報を示している。具体的には、表2は、判定対象の偽造防止媒体10に照射される判定用UV−Aおよび判定用UV−Cの強度に関する情報を示している。また表2は、パワーメータ26により測定される、第1放出光および第2放出光の強度に関する情報も示している。
【表2】

【0070】
(補正工程)
次に、強度補正部36により、第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rと第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mとの相違を考慮して、データベース30内の第1参照放出光の強度I_Rおよび第2参照放出光の強度I_Rを補正する。具体的には、以下の〔数2〕に基づいて、第1参照放出光の補正後の強度I’_Rを算出する。
【数2】

ここで上述のように、第1参照照射強度I_Rは2000となっており、第1照射強度I_Mも2000となっている。このため、第1参照放出光の補正後の強度I’_Rとして、2000/2000×300=300が算出される。
【0071】
同様にして、以下の〔数3〕に基づいて、第2参照放出光の補正後の強度I’_Rを算出する。
【数3】

ここで上述のように、第2参照照射強度I_Rは2000となっており、一方、第2照射強度I_Mは1000となっている。このため、第2参照放出光の補正後の強度I’_Rとして、1000/2000×1200=600が算出される。
【0072】
(判定工程)
次に、判定部37により、第1参照放出光の補正後の強度I’_Rおよび第2参照放出光の強度I’_Rと、パワーメータ26により測定された第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mとを比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う。この場合、具体的な比較方法が特に限られることはなく、上述の〔数1〕などに基づいて、判定対象の偽造防止媒体10が正規のものかどうかが判定される。
【0073】
このように本実施の形態によれば、真偽判定システム50は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される光の強度を測定する測定部25と、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30と、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、を備えている。このうち光照射部20は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−Aを第1照射強度I_Mで照射する第1光源21と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−Cを第2照射強度I_Mで照射する第2光源22と、を含んでいる。このように、UV−AおよびUV−Cの双方を利用して偽造防止媒体10の真偽判定を行うことにより、偽造防止媒体10に対する真偽判定を厳格に行うことができる。
【0074】
また本実施の形態によれば、測定部25は、第1照射強度I_MのUV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、第2照射強度I_MのUV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mをそれぞれ求める。またデータベース30には、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Aの第1参照照射強度I_RおよびUV−Cの第2参照照射強度I_Rと、第1参照照射強度I_RのUV−Aにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光の強度I_Rと、第2参照照射強度I_RのUV−Cにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2参照放出光の強度I_Rと、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されている。そして、真偽判定部35の強度補正部36は、第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rと第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mとの関係(相違)を考慮して、第1参照放出光の強度I_Rおよび前記第2参照放出光の強度I_Rを補正する。その後、真偽判定部35の判定部37は、第1放出光の強度I_Mと第1参照放出光の補正後の強度I’_Rを比較し、かつ、第2放出光の強度I_Mと第2参照放出光の補正後の強度I’_Rを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行う。このため、偽造防止媒体10に対する真偽判定を精度良く行うことができる。
【0075】
第1の変形例
なお本実施の形態において、第1参照放出光の補正後の強度I’_Rと第1放出光の強度I_Mとを比較し、かつ、第2参照放出光の補正後の強度I’_Rと第2放出光の強度I_Mとを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、はじめに第1参照放出光の補正後の強度I’_Rと第2参照放出光の補正後の強度I’_Rとの強度比(参照放出光強度比)を算出し、次に第1放出光の強度I_Mと第2放出光の強度I_Mとの強度比(放出光強度比)を算出し、そして参照放出光強度比と放出光強度比とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽を判定してもよい。このことにより、以下に述べるように様々な要因によって第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mがばらつく場合であっても、偽造防止媒体10の真偽判定を正確に実施することが可能となる。
【0076】
例えば、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12を構成する蛍光インキ13(蛍光体)の厚みや濃度にはばらつき(個体差)があると考えられる。また、真偽判定システム50により真偽判定を行う際に光照射部20から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に照射される不可視光の強度、判定対象の偽造防止媒体10の載置場所、または、発光部12から発光される放出光の強度を測定するためのパワーメータ26の設置場所なども、真偽判定の度にある程度ばらつくことが考えられる。このようなばらつきがあると、測定される第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mの値もばらつくことが考えられる。また、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に用いられる蛍光体の経年劣化によって、測定される第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mの値が経時的に変化することも考えられる。従って、第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mの値の大きさに基づいて真偽判定を行う場合、所定の確率で誤った判定がなされることが考えられる。
【0077】
これに対して本変形例によれば、第1放出光の強度I_Mと第2放出光の強度I_Mとの強度比(放出光強度比)に基づいて真偽判定が行われる。この場合、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12を構成する蛍光インキ13(蛍光体)の厚みや濃度にばらつきがあったとしても、第1放出光の強度I_Mと第2放出光の強度I_Mとが同様に変動するため、放出光強度比は略一定となっている。このことにより、偽造防止媒体10の真偽判定をより精度良く行うことができる。
【0078】
例えば、参照放出光強度比と放出光強度比との差を参照放出光強度比で割った値の絶対値が0.05以下の場合、偽造防止媒体10が正規品と判定される(〔数4〕参照)。なお、比較の際に用いられる真偽判定の基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【数4】

【0079】
第2の変形例
また本実施の形態において、はじめに第1光源21からの判定用UV−Aが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射され(第1照射工程)、次に第2光源22からの判定用UV−Cが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射される(第2照射工程)例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源22からの判定用UV−Cが、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射されてもよい。すなわち、第1照射工程と第2照射工程が同時に実施されてもよい。
【0080】
この場合、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される第1放出光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される第2放出光とが同時にパワーメータ26に到達することになる。図6は、パワーメータ26に到達する光のスペクトルSOUT_Mを示す図である。図6に示すように、スペクトルSOUT_Mは、第1放出光のスペクトルS_Mと第2放出光のスペクトルS_Mを足し合わせたものとなっている。
【0081】
パワーメータ26においては、400〜480nmの波長域の光を対象とする上述の第1モードによる測定と、490〜570nmの波長域の光を対象とする上述の第2モードによる測定がそれぞれ別個に実施される。ここで図6に示すように、400〜480nmの波長域の光には、第1放出光だけでなく第2放出光の一部も含まれている。このため、第1モードの測定により求められる強度IOUT_M(λ)は、一般に、第1放出光の強度I_Mよりも大きくなる。同様に、490〜570nmの波長域の光には、第2放出光だけでなく第1放出光の一部も含まれている。このため、第2モードの測定により求められる強度IOUT_M(λ)は、一般に、第2放出光の強度I_Mよりも大きくなる。
【0082】
そして、上述の強度IOUT_M(λ)およびIOUT_M(λ)と、データベース30に内蔵されている参照用の偽造防止媒体10に関する情報とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。なおこの場合、データベース30に内蔵されている情報が、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cを参照用の偽造防止媒体10に対して同時に照射することにより取得されたものであってもよい。すなわち、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cを参照用の偽造防止媒体10に対して同時に照射することにより発光される第1参照放出光および第2参照放出光を足し合わせた光をパワーメータ26の第1モードおよび第2モードで測定することにより得られる強度に関する情報が、データベース30に内蔵されていてもよい。
【0083】
第2の実施の形態
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7に示す第2の実施の形態においては、第1放出光の強度および光波長と第1参照放出光の強度および光波長を比較し、かつ、第2放出光の強度および光波長と第2参照放出光の強度および光波長を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。図7に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0084】
真偽判定システム
図7は、本実施の形態における真偽判定システム50を示す図である。図7に示すように、本実施の形態においては、測定部25として、第1放出光および第2放出光の強度および光波長を測定するスペクトルアナライザ27が用いられる。スペクトルアナライザ27の例としては、例えば、日立ハイテク社製の分光蛍光光度計F4500を挙げることができる。
【0085】
真偽判定方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0086】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。本実施の形態において、データベース30は、表3に示すように、参照用UV−A、参照用UV−C、第1参照放出光および第2参照放出光について、強度に関する情報だけでなく光波長に関する情報も含んでいる。
【表3】

【0087】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aを第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Cを第2照射強度で照射する(第2照射工程)。
【0088】
(測定工程)
次に、スペクトルアナライザ27を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光の強度および光波長を測定する。測定により得られる情報と、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cに関する情報とをあわせて表4に示す。
【表4】

【0089】
(補正工程)
次に、強度補正部36により、第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rと第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mとの相違を考慮して、データベース30内の第1参照放出光の強度I_Rおよび第2参照放出光の強度I_Rを補正する。当該補正工程は、上述の第1の実施の形態における補正工程と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0090】
(判定工程)
次に、判定部37により、第1参照放出光の補正後の強度I’_Rおよび光波長λ_Rと、第1放出光の強度I_Mおよび光波長λ_Mを比較する。加えて、第2参照放出光の補正後の強度I ‘_Rおよび光波長λ_Rと、第2放出光の強度I_Mおよび光波長λ_Mを比較する。これによって、判定対象の偽造防止媒体10が正規のものであるかどうかが判定される。例えば光波長については、第1参照放出光の光波長λ_Rと第1放出光の光波長λ_Mの差が5nm以下であり、かつ、第2参照放出光の光波長λ_Rと第2放出光の光波長λ_Mの差が5nm以下である場合に合格と判定される。また強度については、第1の実施の形態の場合と同様にして判定される。なお、光波長を比較する際に用いられる真偽判定の基準値が5nmに限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【0091】
このように本実施の形態によれば、第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mだけでなく、第1放出光の光波長λ_Mおよび第2放出光の光波長λ_Mも考慮して、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。このため、真偽判定をより精度良く実施することができ、これによって、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0092】
なお本実施の形態において、はじめに第1光源21からの判定用UV−Aが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射され(第1照射工程)、次に第2光源22からの判定用UV−Cが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射される(第2照射工程)例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第1の実施の形態の第2の変形例の場合と同様に、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源22からの判定用UV−Cが、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射されてもよい。
【0093】
第3の実施の形態
次に、図8乃至図9Bを参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8乃至図9Bに示す第3の実施の形態においては、複数の光波長における第1放出光の強度と第1参照放出光の強度を比較し、かつ、複数の光波長における第2放出光の強度と第2参照放出光の強度を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。図8乃至図9Bに示す第3の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態および図7に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
真偽判定システム
図8は、本実施の形態における真偽判定システム50を示す図である。図8に示すように、本実施の形態において、真偽判定部35は、複数の光波長における第1放出光の強度と第1参照放出光の強度との間の相関係数を算出し、かつ、複数の光波長における第2放出光の強度と第2参照放出光の強度との間の相関係数を算出する演算部38をさらに含んでいる。
【0095】
真偽判定方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0096】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。本実施の形態においては、図9Aおよび表5に示すように、データベース30は、スペクトルS_Rで表される第1参照放出光に関して、複数の光波長λ(k)(k=1〜100)における第1参照放出光の強度I_R(k)(k=1〜100)に関する情報を有している。さらにデータベース30は、スペクトルS_Rで表される第2参照放出光に関して、複数の光波長λ(m)(m=1〜100)における第2参照放出光の強度I_R(m)(m=1〜100)に関する情報を有している。ここでλ(k)およびλ(m)には各々、光波長400〜700nmの範囲を100分割した値が割り当てられる。なお、λ(k)およびλ(m)に割り当てられる光波長の範囲や分解能(分割数)が上述の値に限られることはなく、真偽判定に求められる精度などに応じて適宜設定される。
【表5】

【0097】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aを第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Cを第2照射強度で照射する(第2照射工程)。
【0098】
(測定工程)
次に、スペクトルアナライザ27を用いることにより、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光について、複数の光波長λ(k)(k=1〜100)における強度I_M(k)(k=1〜100)が求められる(図9Bおよび表6参照)。同様に、スペクトルアナライザ27を用いることにより、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光について、複数の光波長λ(m)(m=1〜100)における強度I_M(m)(m=1〜100)が求められる。
【表6】

【0099】
(補正工程)
次に、強度補正部36により、第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rと第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mとの相違を考慮して、データベース30内の第1参照放出光の強度I_R(k)および第2参照放出光の強度I_R(k)を補正する。具体的には、以下の〔数5〕に基づいて、第1参照放出光の補正後の強度I’_R(k)を算出する。
【数5】

【0100】
同様にして、以下の〔数6〕に基づいて、第2参照放出光の補正後の強度I’_R(m)を算出する。
【数6】

【0101】
(演算工程)
次に、演算部38により、以下の〔数7〕に基づいて、第1参照放出光の補正後の強度I’_R(k)と、測定された第1放出光の強度I_M(k)との間の相関係数R_Iを算出する。
【数7】

【0102】
同様にして、演算部38により、以下の〔数8〕に基づいて、第2参照放出光の補正後の強度I’_R(m)と、測定された第2放出光の強度I_M(m)との間の相関係数R_Iを算出する
【数8】

【0103】
(判定工程)
次に、判定部37により、算出された相関係数R_Iおよび相関係数R_Iに基づいて、偽造防止媒体10が正規のものであるかどうかが判定される。例えば、相関係数R_Iおよび相関係数R_Iがそれぞれ0.8〜1.0の範囲内となっている場合、偽造防止媒体10が正規のものであると判定される。なお真偽判定の際の相関係数の基準値が0.8〜1.0に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【0104】
このように本実施の形態によれば、複数の光波長における第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mを考慮して、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。このため、真偽判定をより精度良く実施することができ、これによって、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0105】
なお本実施の形態において、はじめに第1光源21からの判定用UV−Aが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射され(第1照射工程)、次に第2光源22からの判定用UV−Cが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射される(第2照射工程)例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第1の実施の形態の第2の変形例の場合と同様に、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源22からの判定用UV−Cが、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射されてもよい。この場合、スペクトルアナライザ27により、第1放出光のスペクトルS_Mと第2放出光のスペクトルS_Mを足し合わせたスペクトルSOUT_M(図6参照)に関して、複数の波長における強度が求められる。また、当該スペクトルSOUT_Mと、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cを参照用の偽造防止媒体10に対して同時に照射することにより発光される第1参照放出光および第2参照放出光を足し合わせた光のスペクトルとの間の相関係数が、演算部38により算出される。そして、算出された相関係数に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0106】
また本実施の形態において、演算部38により算出される相関係数に基づいて、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、様々な方法により、複数の光波長における第1放出光の強度と第1参照放出光の強度を比較し、かつ、複数の光波長における第2放出光の強度と第2参照放出光の強度を比較し、これによって偽造防止媒体10の真偽判定をおこなうことができる。
【0107】
第4の実施の形態
次に、図10乃至図12Bを参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図10乃至図12Bに示す第4の実施の形態においては、照射部20から偽造防止媒体10に照射される判定用UV−Aおよび判定用UV−Cのスペクトルに基づいて、データベース内に内蔵されている第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルが補正される。図10乃至図12Bに示す第4の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態、図7に示す第2の実施の形態および図8乃至図9Bに示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0108】
(課題)
はじめに、本実施の形態による真偽判定システム50により解決される課題について、図11Aおよび図11Bを参照して説明する。図11Aは、判定用UV−AのスペクトルS_Mおよび参照用UV−AのスペクトルS_Rの一例を示す図であり、図11Bは、図11Aに示す判定用UV−Aおよび参照用UV−Aにより励起されて偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光のスペクトルS_Mおよび第1参照放出光のスペクトルS_Rを示す図である。図11Aにおいて、スペクトルS_Mを積分することにより得られる判定用UV−Aの強度と、スペクトルS_Rを積分することにより得られる参照用UV−Aの強度とは略同一となっている。
【0109】
一般に、データベース30に内蔵される参照用の偽造防止媒体10に関する情報を取得するための測定と、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報を取得するための測定とは、異なる場所および機会において実施される。このため、図11Aに示すように、データベース30用の測定の際に用いられる参照用UV−Aと、真偽判定用の測定の際に用いられる判定用UV−Aについて、両者の積分強度(各UV−Aのスペクトルを波長に対して積分することにより得られる強度)は略同一であるがスペクトル形状は異なる、という状況が生じ得る。この場合、判定対象の偽造防止媒体10が正規品であったとしても、図11Bに示すように、参照用UV−Aにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光のスペクトルS_Rと、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光のスペクトルS_Mとが異なるという事態が生じることが考えられる。
【0110】
また図示はしないが、データベース30用の測定の際に用いられる参照用UV−Aと、真偽判定用の測定の際に用いられる判定用UV−Aについて、両者のピーク波長における強度は略同一であるがスペクトル形状は異なる、という状況も生じ得る。この場合においても、判定対象の偽造防止媒体10が正規品であったとしても、参照用UV−Aにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光のスペクトルS_Rと、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光のスペクトルS_Mとが異なるという事態が生じることが考えられる。
【0111】
従って、参照用UV−Aと判定用UV−Aのスペクトルの形状が大きく異なる場合、単に参照用UV−Aの積分強度またはピーク波長での強度に基づいて第1参照放出光の補正を行うのみでは、真偽判定を精度良く行うことができないことが考えられる。本実施の形態は、このような課題を効果的に解決し得る真偽判定システム50に関するものである。より具体的には、参照用UV−Aと判定用UV−Aのスペクトルの形状の相違を考慮して、第1参照放出光のスペクトルを適切に補正することのできる真偽判定システム50に関するものである。
【0112】
なお、図示はしないが、発光部12にUV−Cが照射される場合についても同様の事態が生じることが考えられる。従って、本実施の形態による真偽判定システム50によれば、参照用UV−Cと判定用UV−Cのスペクトルの形状の相違を考慮して、第2参照放出光のスペクトルも適切に補正される。
【0113】
真偽判定システム
図10は、本実施の形態における真偽判定システム50を示す図である。図10に示すように、真偽判定部35は、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cと判定用UV−Aおよび判定用UV−Cのスペクトルの形状の相違を考慮して、第1参照放出光および第2参照放出光のスペクトルを補正するスペクトル補正部36Aを有している。
【0114】
真偽判定方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0115】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。表7は、データベース30に内蔵される情報を示している。表7に示すように、データベース30は、UV−Aの範囲(光波長315〜400nmの範囲)に含まれる様々な波長λ_1〜λ_100の光を参照用の偽造防止媒体10に照射した場合に、参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光される光のスペクトルS_R_1〜S_R_100に関する情報を有している。なお、各スペクトルS_R_1〜S_R_100は、参照用の偽造防止媒体10に照射される各波長λ_1〜λ_100の光の各第1参照照射強度が1(単位強度)である場合のスペクトルとなっている。
【表7】

【0116】
次に、表7に示す情報を取得する方法について説明する。はじめに、参照用の偽造防止媒体10を準備する。次に、様々な波長λ_1〜λ_100の光を順次、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射する。ここで、波長λ_1〜λ_100には、例えば、光波長315〜400nmの範囲を100分割した値が割り当てられる。そして、参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光される放出光のスペクトルをそれぞれ測定する。このようにして、表7に示すように、参照用の偽造防止媒体10の発光部12にUV−Aが照射される場合に関して、発光部12に照射される光の波長と、その際に発光部12から発光される光のスペクトルとの関係を表す情報が得られる。
【0117】
同様にして、参照用の偽造防止媒体10の発光部12にUV−Cが照射される場合に関して、発光部12に照射される光の波長と、その際に発光部12から発光される光のスペクトルとの関係を表す情報が得られ、そして当該情報がデータベース30に格納される。ここで、波長λ_1〜λ_100には、例えば、光波長200〜280nmの範囲を100分割した値が割り当てられる。
【0118】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aを第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Cを第2照射強度で照射する(第2照射工程)。
また、この際に用いられた判定用UV−Aの各波長λ_1〜λ_100における強度I_M_1〜I_M_100に関する情報が、真偽判定部35のスペクトル補正部36Aに送られる。なお、各強度I_M_1〜I_M_100に関する情報は、第1光源21が予め有していてもよく、または、スペクトルアナライザ27を用いて第1光源21からの光を測定することにより得られてもよい。
同様に、判定用UV−Cの各波長λ_1〜λ_100における強度I_M_1〜I_M_100に関する情報が、真偽判定部35のスペクトル補正部36Aに送られる。
【0119】
(測定工程)
次に、スペクトルアナライザ27を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光のスペクトルS_Mを測定する。同様に、スペクトルアナライザ27を用いて、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光のスペクトルS_Mを測定する。
【0120】
(補正工程)
次に、スペクトル補正部36により、データベース30に内蔵されている情報と、判定用UV−Aの各波長λ_1〜λ_100における各第1照射強度I_M_1〜I_M_100に関する情報とに基づいて、第1参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rを算出する。具体的には、図12Aに示すように、はじめに、データベース30に内蔵されている各スペクトルS_R_nのデータに、判定用UV−Aの対応する波長λ_nにおける強度I_M_nを掛けることにより、スペクトルS’_nを算出する。次に、各スペクトルS’_nを足し合わせる。これによって、図12Aに示すように、第1参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rが算出される。同様にして、図12Bに示すように、第2参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rが算出される。このような過程を式で表すと以下の〔数9〕のようになる。
【数9】

【0121】
なお、光波長315〜400nmの範囲または光波長200〜280nmの範囲を100分割することにより、波長λ_1〜λ_100または波長λ_1〜λ_100が得られる例を示したが、これに限られることはない。各波長に割り当てられる範囲や分解能(分割数)は、真偽判定に求められる精度などに応じて適宜設定される。例えば、分割数が無限大となっている場合、上述の〔数9〕は以下のように表される。
【数10】

なお〔数10〕において、I_M(λ)は、波長λにおける判定用UV−Aの強度を表しており、S_R(λ)は、単位強度を有する波長λの光により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光される光のスペクトルを表している。同様に、I_M(λ)は、波長λにおける判定用UV−Cの強度を表しており、S_R(λ)は、単位強度を有する波長λの光により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光される光のスペクトルを表している。
【0122】
(演算工程)
次に、演算部38により、上述のようにして算出された第1参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rと、スペクトルアナライザ27を用いて測定された第1放出光のスペクトルS_Mとの間の相関係数R_Iが算出される。また、上述のようにして算出された第2参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rと、スペクトルアナライザ27を用いて測定された第2放出光のスペクトルS_Mとの間の相関係数R_Iが算出される。当該演算工程は、上述の第3の実施の形態における演算工程と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0123】
(判定工程)
次に、判定部37により、算出された相関係数R_Iおよび相関係数R_Iに基づいて、偽造防止媒体10が正規のものであるかどうかが判定される。当該判定工程は、上述の第3の実施の形態における判定工程と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0124】
このように本実施の形態によれば、判定用UV−Aのスペクトルの形状を考慮した上で、第1参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rが算出される。また、判定用UV−Cのスペクトルの形状を考慮した上で、第2参照放出光の補正後のスペクトルS’_Rが算出される。このため、偽造防止媒体10に対する真偽判定をより精度良く実施することが可能となる。
【0125】
第1の変形例
なお本実施の形態において、演算部38により算出される相関係数に基づいて、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第1の場合と同様に、スペクトルS’_Rを積分することにより求められる強度と、スペクトルS_Mを積分することにより求められる強度とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行ってもよい。同様に、スペクトルS’_Rを積分することにより求められる強度と、スペクトルS_Mを積分することにより求められる強度とを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行ってもよい。また、上述の第1の実施の形態の第1の変形例の場合と同様に、強度比に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行ってもよい。
【0126】
第2の変形例
また本実施の形態において、はじめに第1光源21からの判定用UV−Aが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射され(第1照射工程)、次に第2光源22からの判定用UV−Cが判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射される(第2照射工程)例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第1の実施の形態の第2の変形例の場合と同様に、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源22からの判定用UV−Cが、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射されてもよい。この場合、スペクトルアナライザ27により、第1放出光のスペクトルS_Mと第2放出光のスペクトルS_Mを足し合わせたスペクトルSOUT_M(図6参照)に関して、複数の波長における強度が求められる。また、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cの各波長における強度に基づいて、上述の〔数9〕または〔数10〕に示される手法により、スペクトルSOUT_Mと比較されるべき参照用のスペクトルが算出される。そして、算出された参照用のスペクトルとスペクトルSOUT_Mとを比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0127】
その他の変形例
また上記各実施の形態において、光照射部20は、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mを変化させながら、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aおよび判定用UV−Cを複数回照射してもよい。この場合、測定部25は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される第1放出光の強度I_Mおよび第2放出光の強度I_Mを、光照射部20による照射の度にそれぞれ求める。また、真偽判定部35は、光照射部20による複数回の照射のそれぞれに対して、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mと、データベース30内の第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rとの相違を考慮したうえで、偽造防止媒体10の真偽判定を行う。これによって、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cの1回の照射に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定が行われる場合に比べて、より精度良く真偽判定を行うことができる。この場合、真偽判定部35による真偽判定において、第2の形態の場合と同様に、第1放出光および第2放出光の光波長がさらに考慮されてもよく、また上述の第3の形態の場合と同様に、相関係数が算出されてもよい。
【0128】
また上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−GBが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、発光部12の蛍光体として、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて赤色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−RB(根本特殊化学製)など、様々な二色性蛍光体を用いることができる。
【0129】
また上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、UV−AまたはUV−Cに対する励起特性を有する蛍光体が用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、UV−Bまたは赤外線に対する励起特性を有する蛍光体を用いてもよい。すなわち、本発明における「第1波長領域内の不可視光」または「第2波長領域内の不可視光」として、任意の波長領域内の不可視光を用いることができる。
【0130】
また上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の基材11がポリエチレンテレフタレートからなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、様々な材料から基材11を構成することができる。また基材11として、紙材料からなる紙基材が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10 偽造防止媒体
11 基材
12 発光部
13 蛍光インキ
20 光照射部
21 第1光源
22 第2光源
25 測定部
26 パワーメータ
27 スペクトルアナライザ
30 データベース
35 真偽判定部
36 強度補正部
36A スペクトル補正部
37 判定部
38 演算部
50 真偽判定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定システムは、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1光源と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2光源と、を含む光照射部と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ求める測定部と、
参照用の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1参照照射強度および第2不可視光の第2参照照射強度と、前記第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の強度と、前記第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の強度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースと、
前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定システム。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1放出光の光波長と、前記第2放出光の光波長と、をさらに求め、
前記データベースは、前記第1参照放出光の光波長と、前記第2参照放出光の光波長と、に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度および光波長と前記第1参照放出光の補正後の強度および光波長を比較し、かつ、前記第2放出光の強度および光波長と前記第2参照放出光の補正後の強度および光波長を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の真偽判定システム。
【請求項3】
前記測定部は、複数の光波長における前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度をそれぞれ求め、
前記データベースは、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、複数の光波長における前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、複数の光波長における前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の真偽判定システム。
【請求項4】
前記光照射部から判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真偽判定システム。
【請求項5】
前記光照射部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光を複数回照射し、
前記測定部は、前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度を光照射部による照射の度にそれぞれ求め、
前記真偽判定部は、光照射部による複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の真偽判定システム。
【請求項6】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定方法は、
参照用の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1参照照射強度および第2不可視光の第2参照照射強度と、前記第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の強度と、前記第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の強度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1照射工程と、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2照射工程と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の強度および第2放出光の強度をそれぞれ求める測定工程と、
前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定方法。
【請求項7】
前記測定工程において、前記第1放出光の光波長と、前記第2放出光の光波長と、がさらに求められ、
前記データベースは、前記第1参照放出光の光波長と、前記第2参照放出光の光波長と、に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度および光波長と前記第1参照放出光の補正後の強度および光波長を比較し、かつ、前記第2放出光の強度および光波長と前記第2参照放出光の補正後の強度および光波長を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項6に記載の真偽判定方法。
【請求項8】
前記測定工程において、複数の光波長における前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度がそれぞれ求められ、
前記データベースは、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、複数の光波長における前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、複数の光波長における前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、複数の光波長における前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項6に記載の真偽判定方法。
【請求項9】
前記第1照射工程における第1不可視光の第1照射強度、および前記第2照射工程における第2不可視光の第2照射強度が調整可能である
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の真偽判定方法。
【請求項10】
前記第1照射工程および前記第2照射工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光が複数回照射され、
前記測定工程において、前記第1放出光の強度および前記第2放出光の強度が、前記第1照射工程および前記第2照射工程における第1不可視光および第2不可視光の照射の度にそれぞれ求められ、
前記真偽判定工程において、前記第1照射工程および前記第2照射工程における第1不可視光および第2不可視光の複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との相違を考慮して、前記第1参照放出光の強度および前記第2参照放出光の強度を補正し、その後、前記第1放出光の強度と前記第1参照放出光の補正後の強度を比較し、かつ、前記第2放出光の強度と前記第2参照放出光の補正後の強度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の真偽判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate


【公開番号】特開2012−73897(P2012−73897A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219339(P2010−219339)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】