説明

発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シート及び発光式路面標示の施工方法

【課題】視界不良の発生時に、とりわけ霧の発生により視界が悪くなった道路等を走行している車両等を、安全かつ簡易に誘導することができる簡易な路面標示を提供する。
【解決手段】ホットメルト樹脂100質量部に対し、発光粉末10〜250質量部を含有することを特徴とする発光式路面標示用材料及び発光式路面標示用シート1、並びに路面6の一部に対して、加熱流動状態の路面塗料を塗布して路面塗膜4を形成し、次いで発光式路面標示用シート1を路面塗膜4の表面に貼付し、路面塗膜4及び発光式路面標示用シート1を冷却して固着させて、発光式路面標示4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の視界不良の発生時、とりわけ霧の発生により視界が悪くなった場合に、道路などの路面を走行している車両などを安全に誘導するための発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シート及び発光式路面標示の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等が道路等を走行する際、運転者が必要とする情報は、路肩位置、道路の路線形、前方車両等の存在、及び前方車両等の走行挙動等である。視界不良時、とりわけ霧のように運転者の視界を極端に低下させるものは、前記の情報が運転者に伝達されることを妨げて走行が不可能となる。また、無理に走行することによって路外逸脱事故や前方車両等への追突事故等が発生するという問題がある。
従来、これらの対策としては、道路上の車両の停止線や中央分離線に車両のヘッドライトで反射する板や、あるいは発光源を内臓した標識を埋設する方法や、画像センサーにより路面標示を検出する方法等が取られている。
【0003】
また、とりわけ路外逸脱事故の発生を防止するものとして、従来、反射材料を含有した塗料で、白線等の路面標示を施工し、ここに車両から赤外線等を照射し、その反射波を検知して、道路形状等を効率的に認識できる走行支援システム(AHS)が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、人体に全く影響のない低パワーで、かつ視感度の高いレーザー光を、例えば、交通標識に照射することによって、昼夜を問わず、また濃霧や積雪などの天候に関係なく、遠くからレーザーに照射された交通標識を識別することができるレーザー光照射装置が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、これらの方法を用いても、霧の発生により視界不良の場合において路面標示を車両等から確認することが困難な場合があった。
このように、これまで、道路の路肩を確実に識別できる安全な方法については、充分に満足のいく対策が殆どなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−272087号公報
【特許文献2】特開平08−138420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、視界不良の発生時に、とりわけ霧の発生により視界が悪くなった道路等を走行している車両等を、安全かつ簡易に誘導することができる簡易な路面標示を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ホットメルト樹脂100質量部に対し、発光粉末10〜250質量部を含有することを特徴とする発光式路面標示用材料により上記課題が解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ホットメルト樹脂100質量部に対し、発光粉末10〜250質量部を含有することを特徴とする発光式路面標示用材料を提供する。
また、本発明は、前記発光式路面標示用材料において、前記発光粉末が紫外線で発光する蛍光性顔料である発光式路面標示用材料を提供する。
また、本発明は、前記発光式路面標示用材料において、前記ホットメルト樹脂が、90〜200℃の融点を有する発光式路面標示用材料を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記発光式路面標示用材料において、前記ホットメルト樹脂が、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂である発光式路面標示用材料を提供する。
また、本発明は、前記発光式路面標示用材料からなるシートであることを特徴とする発光式路面標示用シートを提供する。
また、本発明は、前記発光式路面標示用シートにおいて、前記発光式路面標示用シートに、ホットメルト接着剤層が積層されていることを特徴とする発光式路面標示用シートを提供する。
【0009】
また、本発明は、路面の一部に対して、加熱流動状態の路面塗料を塗布して路面塗膜を形成し、次いで前記発光式路面標示用シートを前記路面塗膜の表面に貼付し、路面塗膜及び発光式路面標示用シートを冷却して固着させて、発光式路面標示を形成することを特徴とする発光式路面標示の施工方法を提供する。
また、本発明は、上記発光式路面標示の施工方法において、発光式路面標示用シートと路面塗膜との輝度差が、30〜210である発光式路面標示の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光式路面標示用材料は、発光粉末を含むため、簡易な方法で発光する自発光式路面標示を提供することができる。また、本発明の発光式路面標示用材料で作られる発光式路面標示用シートは、大面積にすることができ、均一な発光が可能である。また、本発明の発光式路面標示の施工方法は、発光式路面標示用シート中にホットメルト樹脂を含有しているため、路面塗料を塗布する際に加熱流動状態の路面塗料の表面に貼付することで、簡易に施工することができ、また、発光式路面標示用シートの路面塗膜への密着性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の発光式路面標示用シートに剥離シートが積層されている断面図である。
【図2】図2は本発明のホットメルト接着剤層が付いた発光式路面標示用シートに剥離シートが積層されている断面図である。
【図3】図3は本発明の発光式路面標示用シートが路面上に形成された路面塗膜上に貼付されて形成された発光式路面標示の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発光式路面標示用材料は、ホットメルト樹脂と発光粉末を含有する。
ホットメルト樹脂は、常温ではタックがないか、又はタックが殆んどなく、加熱することで軟化し接着性が生じ、常温に戻すと固化して被着体に接着する樹脂である。
ホットメルト樹脂としては、特に限定されず、ゴム系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン樹脂系ホットメルト樹脂、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂等が挙げられる。これらのうち、汎用性、取り扱い容易性という点から、ポリオレフィン樹脂系ホットメルト樹脂、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂が特に好ましい。
【0013】
ゴム系ホットメルト樹脂としては、特に限定されず、具体例としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体や、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体に石油樹脂を添加したものなどが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂系ホットメルト樹脂の具体例としては、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0014】
ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂としては、特に限定されず、具体例としては、ジカルボン酸成分とジオール成分の重縮合体などが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの低級アルキルエステル、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチエレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分とジオール成分のうち各々1種以上を用いてポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂が得られる。
【0015】
ゴム系ホットメルト樹脂の市販品としては、松村石油(株)製、商品名「TY−70」(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)系ホットメルト接着剤)などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂系ホットメルト樹脂の市販品としては、(株)松村石油研究所製の「モレスコメルトEP」シリーズなどが挙げられる。
【0016】
本発明の発光式路面表示材料に適した、ポリエステル樹脂系ホットメルト接着剤の市販品としては、日本合成化学工業(株)の「ポリエスター」シリーズなどが挙げられる。
ホットメルト樹脂の融点(融点)は、路面塗料の融点に合わせて適宜選択することができ、90〜200℃が好ましく、95〜200℃がより好ましく、100〜180℃が最も好ましい。90℃未満であると、耐候性、耐久性が悪くなる傾向があり、200℃を超えると、路面塗膜との密着性が悪くなる傾向がある。
【0017】
発光粉末は、外部からの光等のエネルギーを吸収して、エネルギー変換をすることで発光する粒子状材料である。発光粉末としては、外部からのエネルギーを吸収して発光する粉末であれば、いずれの粉末であってもよく、例えば、外部から得た光エネルギーを蓄積し、燐光を発する燐光性顔料、蓄光性顔料、蛍光を発する蛍光性顔料などが挙げられる。なお、蛍光性顔料には、蛍光体粒子と称されるものも含まれる。これらのうち、長時間残光型の蓄光性顔料、紫外線で発光する蛍光性顔料が好ましく、紫外線で発光する蛍光性顔料がより好ましい。
【0018】
発光粉末の平均粒径は、0.5〜30μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。発光粉末の平均粒径が上記範囲にあれば、ホットメルト樹脂への分散性の点で好ましい。
なお、発光粉末は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0019】
長時間残光型の蓄光性顔料としては、例えば、根本特殊化学(株)製、商品名「N夜光」などが挙げられる。紫外線で発光する蛍光性顔料としては、例えば、根本特殊化学(株)製、青色発光蛍光体、品番「A−180」、東芝マテリアル社製「SPD−804B」などが挙げられる。
紫外線で発光する発光粉末を用いた場合、ブラックライト等のUVランプで発光式路面標示の表面に紫外線を照射している時は、鮮やかな色彩を路面標示等が発光し、車両等から視認することができる。また、ヘッドライト等の可視光光源から可視光が照射された場合には、通常の再帰性反射によって路面標示等が車両等から視認することができる。
【0020】
発光粉末は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
発光粉末を2種以上含有させる場合は、例えば、青、青緑、緑、オレンジ等の色の光を発光し、互いに独立するスペクトルを持つ発光粉末を、少なくとも2種類混合し、例えば白色等の種々の色に発光する発光式路面標示用材料を形成することができる。
【0021】
本発明の発光式路面標示用材料において、ホットメルト樹脂と発光粉末の含有割合は、ホットメルト樹脂100質量部に対し、発光粉末10〜250質量部の範囲であり、20〜230質量部の範囲が好ましく、30〜220質量部の範囲がより好ましく、50〜200質量部がさらに好ましい。発光粉末の含有量が上記範囲より小さいと、発光色の強度が十分でなく、上記範囲より大きいと発光色の強度が飽和してそれ以上の強度を出すことが難しく、後述する発光式路面標示用シートの耐久性(タイヤ付着性、耐アルカリ性、耐水性、耐摩耗性)が低下する可能性がある。
【0022】
本発明の発光式路面標示用材料は、ホットメルト樹脂と発光粉末を加熱して混合することにより製造することが好ましい。両成分を加熱混合することにより、発光粉末をホットメルト樹脂中に均一に分散させることができる。両成分の加熱温度は、100〜230℃が好ましく、110〜220℃がより好ましい。また、この加熱温度は、ホットメルト樹脂の融点よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。なお、この加熱温度の上限値は、ホットメルト樹脂の融点よりも90℃高い温度以下が好ましく、70℃高い温度以下がより好ましい。この温度範囲で混合することにより、発光粉末をホットメルト樹脂中に均一に分散させることができると共に、ホットメルト樹脂の変質を防止することができる。
【0023】
本発明の発光式路面標示用材料の粘度は、190℃の粘度が30〜600Pa・sの範囲が好ましく、50〜550Pa・sの範囲が特に好ましい。
発光式路面標示用材料の粘度がこの範囲にあると、発光式路面標示用材料を加熱しても、ホットメルト樹脂中に発光粉末が分散された状態を保つことができる。なお、粘度の測定は、試料温度を190℃とする以外は、JIS K6833に準じて行うものである。
【0024】
本発明の発光式路面標示用材料には、上記必須成分の他に、発光粉末以外の着色材粒子、ポリマー粒子、酸化防止剤などの成分を必要に応じて1種又は2種以上含有させることができる。
発光粉末以外の着色材粒子を含有させる場合、例えば、特定の光を発光する発光粉末と、その光と補色の関係にある着色材を混合し、白色等の種々の色の発光する発光式路面標示用材料を形成することができる。具体的には、青緑色の光を発光する発光粉末と、その光と補色の関係にある桃色着色材を混合し、白色発光する発光式路面標示用材料を形成することができる。なお、桃色着色材としては、例えば、ローダミン6G、ローダミンBなどを含有する着色材粒子が挙げられる。発光粉末以外の着色材粒子の含有量は、ホットメルト樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0025】
ポリマー粒子としては、例えば、アクリル微粒子等が挙げられ、特に限定されない。
発光式路面標示材料の強度を向上させるという点から、ポリマー粒子の含有量は、ホットメルト樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、種々の酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、ホットメルト樹脂100質量部に対して0.1〜1質量部が好ましい。
【0026】
本発明の発光式路面標示用シートは、前記発光式路面標示用材料からなるシートである。
発光式路面標示用シートは、後述する路面塗料により形成されている路面塗膜の表面の貼付するために必要な形状に成形されていればよい。その形状の具体例としては、例えば、平面形状が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形や、円形、楕円形等の円形類、これらの形状の中央部を取り除いたリング状形状などの種々の形状が挙げられる。
【0027】
発光式路面標示用シートは、一層のみから構成されていてもよいし、二層以上の複数層から構成されていてもよい。図1に示すように、剥離シートが積層されていてもよい。発光式路面標示用シートの厚さは、20〜1000μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
また、1種以上の発光粉末を含有するシート状発光式路面標示用材料を2以上複数作成し、それらのシート状発光式路面標示用材料の発光色を異なる発光色にし、それらのシート状発光式路面標示用材料を積層し、例えば白色等の種々の色に発光する発光式路面標示用シートを形成することができる。
【0028】
発光式路面標示用シートの製造方法は、剥離シートの剥離面上に発光式路面標示用材料を加熱して流動状態にしたものを塗工し、所定形状に切断する方法、発光式路面標示用材料を射出成形機で所定形状に成形する方法、発光式路面標示用材料を押出成形機で所定形状に成形する方法などの製造方法が挙げられる。
なお、発光式路面標示用シートが複数層の積層シートからなる場合は、剥離シートの剥離面上に同種又は異種の発光式路面標示用材料を加熱して流動状態にしたものを繰り返して塗工することにより製造できるし、同種又は異種の発光式路面標示用材料を押出成形機の複数のダイから押し出して、ラミネートすることにより製造することもできる。
【0029】
剥離シートの剥離面上に塗工する際の流動状態の発光式路面標示用材料の温度は、90〜220℃が好ましい。また、発光式路面標示用材料の射出成形温度は、110〜200℃が好ましい。
剥離シートとしては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂のフィルム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂のフィルムなどのプラスチックフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、通常20〜200μmが好ましい。
【0030】
本発明の発光式路面標示用シートは、図2に示すように、発光式路面標示用材料からなるシートの少なくとも一方の表面にホットメルト接着剤層を積層することができる。
ホットメルト接着剤層は、ホットメルト樹脂を含有するホットメルト接着剤層形成用材料により構成される。このホットメルト樹脂としては、本発明の発光式路面標示用材料に含まれるホットメルト樹脂と同様なホットメルト樹脂が挙げられる。
ホットメルト接着剤層形成用材料には、ホットメルト樹脂だけ含有してもよいし、その他の成分として、発光粉末以外の本発明の発光式路面標示用材料に含まれる成分を含有してもよい。
ホットメルト接着剤層の厚さは、特に制限ないが、通常20〜1000μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0031】
発光式路面標示用シートの表面にホットメルト接着剤層を設ける方法は、発光式路面標示用シートの形成方法と同様な方法により行うことができる。具体的には、例えば、剥離シートの剥離面上にホットメルト接着剤層形成用材料を加熱して流動状態にしたものを塗工し、次いで形成されたホットメルト接着剤層の表面に発光式路面標示用材料を加熱して流動状態にしたものを塗工し、所定形状に切断する方法、ホットメルト接着剤層形成用材料と発光式路面標示用材料を押出成形機の複数のダイから押し出して、ラミネートする方法などが挙げられる。
【0032】
本発明の発光式路面標示の施工方法は、路面の一部に対して、加熱流動状態の路面塗料を塗布して路面塗膜を形成し、次いで前記発光式路面標示用シートを前記路面塗膜の表面に貼付し、路面塗膜及び発光式路面標示用シートを冷却して固着させて、図3に示すような発光式路面標示を形成するものである。
ここで、路面標示とは、アスファルト、コンクリート等の路面に記された中央線、横断歩道線、制限速度標示、路肩ライン、白線等の道路標識、駐車場等の表面に記された駐車区画線や、飛行場等の停止線等の路面に標示するものである。従来の路面標示は、殆どが白色又は黄色のものである。
この路面標示は、通常は、路面塗料を塗布して形成することができる。
【0033】
路面塗料には、通常、粘結剤、可塑剤、充填剤、顔料等が含有されている。
粘結剤としては、例えば、熱溶融型の石油樹脂、溶剤型のウレタン化アルキッド樹脂、多液反応型樹脂などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、植物油、鉱物油、液状合成ゴム等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、耐熱黄色鉛など、路面標示の着色用顔料等が挙げられる。
路面の一部に対して、加熱流動状態の路面塗料を塗布して路面塗膜を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。
路面塗膜の厚さは、特に制限ないが、通常1〜20mmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10mmの範囲である。
【0034】
次いで、発光式路面標示用シートを前記路面塗膜の表面に貼付するが、その前記路面塗膜の温度は、前記路面塗料が流動状態である温度であり、塗面塗料の融点以上の温度である。通常、150〜220℃が好ましい。この温度範囲であれば、路面塗料を塗布して形成する路面塗膜の表面と発光式路面標示用シートとの密着性が良好になる。
発光式路面標示用シートを貼付した後に、発光式路面標示用シートの表面にガラスビーズを散布することもできる。ガラスビーズを散布することにより、反射効果が得られ、夜間視認性が向上する。
【0035】
次いで、路面塗膜及び発光式路面標示用シートを冷却して固着させて、発光式路面標示を形成する。
また、本発明の発光式路面標示の施工方法においては、発光式路面標示用シートと路面塗膜との輝度差を、30〜210にすることが好ましい。発光式路面標示用シートと路面塗膜との輝度差は、発光式路面標示用シートの表面の輝度と路面塗膜の表面の輝度との差をいい、この輝度差が上記範囲にあると、発光式路面標示を視認し易くなる。この輝度差の好ましい範囲は、40〜205であり、より好まし範囲は50〜205である。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
【0037】
(実施例1)
(1)発光式路面標示用材料の調製
ホットメルト樹脂としてポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−185」、融点100℃)100質量部と、発光粉末として紫外線で発光する蛍光性顔料(東芝マテリアル社製、商品名「SPD−804B」、平均粒径6μm)50質量部を、混合機(プライミクス(株)製、商品名「T.K.ハイビスミックス2P−1」)に入れて、混合し、110℃に加熱し、30分間、混合し、発光式路面標示用材料を得た。
【0038】
(2)発光式路面標示用シートの作製
上記(1)で調製された発光式路面標示用材料を押出し機にて、押出し温度110℃でダイから厚さ50μmのシート状の発光式路面標示用材料を押出し、表面にシリコーン剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート樹脂からなる剥離シート(リンテック(株)製、商品名「SP−PET 100(T)」、厚さ100μm)の剥離処理面に、そのシート状の発光式路面標示用材料をラミネートし、常温まで冷却し、幅10cm×長さ10cmのシートに切断して発光式路面標示用シートを作製した。
【0039】
(3)発光式路面標示の施工
粘結剤として溶剤型のウレタン化アルキッド樹脂、可塑剤として鉱物油、充填剤として炭酸カルシウム、顔料として酸化チタンを含有するJIS K5665の2種Bで規定される路面塗料を150℃に加熱し、流動状態にしてアスファルト路面の一部に幅20cmの白線を描くように塗布し、路面塗膜(厚さ5mm)を形成した。次に、上記(2)で作製した発光式路面標示用シートの剥離シートを剥がして、発光式路面標示用シートを路面塗膜の表面に貼付し、放置冷却して、発光式路面標示を施工した。
【0040】
(実施例2)
紫外線で発光する蛍光性顔料の配合量を50質量部から100質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例1と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0041】
(実施例3)
紫外線で発光する蛍光性顔料の配合量を50質量部から200質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例1と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0042】
(比較例1)
紫外線で発光する蛍光性顔料を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、路面標示用材料、路面標示用シートを作製し、実施例1と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0043】
(比較例2)
紫外線で発光する蛍光性顔料の配合量を50質量部から5質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例1と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0044】
(比較例3)
紫外線で発光する蛍光性顔料の配合量を50質量部から300質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例1と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0045】
得られた発光式路面標示用シート、発光式路面標示を用いて、以下の評価試験を行った。その結果を発光式路面標示用材料の組成(質量部)と共に、表1に示す。
発光式路面標示用シートの密着性試験
発光式路面標示用シートと路面塗膜の密着性試験は、発光式路面標示用シートの表面に碁盤目状に切り込みを入れ、100個の碁盤目を形成し、形成された100個の碁盤目の表面に粘着テープを貼り付けて、剥がして、剥がれた碁盤目の数を測定し、以下の基準で評価した。
◎:剥がれた碁盤目の数が0〜30個である。
○:剥がれた碁盤目の数が31〜60個である。
×:剥がれた碁盤目の数が61〜100個である。
【0046】
輝度差の測定
発光式路面標示用シートを、被着体としてのJIS K5665の2種Bに従って成形した路面塗膜に150℃で貼付し、常温に戻して輝度の測定を行った。発光式路面標示用シートの表面に向かって100mm離れた場所から、紫外線ランプ(アズワン(株)製、商品名「Handy UV Lamp SLUV−4」)により波長365nmの光を照射し、その状態で発光式路面標示用シートの表面の輝度と露出している路面塗膜の表面の輝度を、輝度計(コニカミノルタ(株)製、商品名「LS−100」)により100mm離れた場所からそれぞれ測定し、両者の輝度の差を計算した。
【0047】
視認性試験
また、発光式路面標示用シートの視認性は、目視により確認した。5m離れた場所から、発光粉末を含まない比較例1の路面標示用シートの見え度合いを基準とし、それよりも視認性がかなり優れているものを◎とし、やや優れているものを○とし、同等以下のものを×として評価した。
【0048】
タイヤ付着性試験
発光式路面標示の表面をJIS K5665:2008に準じて、試験用ロールを発光式路面標示用シートを通過する時間が1秒になるように一定の速さで転がし、試験用ロールのタイヤに発光式路面標示用シートが付着しているかどうかを目視で調べ、以下の基準に従って評価した。
◎:試験用ロールのタイヤに発光式路面標示用シートが付着していなかった。
○:試験用ロールのタイヤに発光式路面標示用シートが少し付着した。
×:試験用ロールのタイヤに発光式路面標示用シートが多く付着した。
【0049】
耐アルカリ性試験
JIS K5665:2008に準じて、発光式路面標示用シートの最下部より60mmまで没するように、水酸化カルシウム飽和水溶液に浸漬し、18時間浸漬状態を維持した。その後、発光式路面標示用シートを取り出して、直ちに水洗し、水を振り切って立てかけ、その表面の状態を目視で観察し、さらにその2時間放置した後のその表面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面に膨れ、割れ、はがれ及び穴のいずれもなく、更に2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて変色が見られなかった。
○:表面に膨れ、割れ、はがれ及び穴のいずれもないが、2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて変色がやや見られた。
×:表面に膨れ、割れ、はがれ及び穴のいずれかがあり、2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて変色が見られた。
【0050】
耐水性試験
JIS K5665:2008に準じて、発光式路面標示用シートの最下部より60mmまで没するように、水に浸漬し、24時間浸漬状態を維持した。その後、発光式路面標示用シートを取り出して、その表面の状態を目視で観察し、さらにその2時間放置した後のその表面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にしわ、膨れ、割れ及びはがれのいずれもなく、更に2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて白化及び変色が見られた。
○:表面にしわ、膨れ、割れ及びはがれのいずれもないが、2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて白化及び変色がやや見られた。
×:表面にしわ、膨れ、割れ及びはがれのいずれかがあり、2時間放置した後の表面が耐アルカリ性試験前の表面に比べて白化及び変色が見られた。
【0051】
耐摩耗性試験後の視認性の確認
JIS K5665:2008に準じて、発光式路面標示用シートをテーパー形摩耗試験機で200回転させ、発光式路面標示用シートに前記輝度差の測定と同様にして、紫外線ランプを照射し、目視により前記の方法と同様にして視認性を評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
(実施例4)
実施例3において、剥離シートの剥離処理面にシート状の発光式路面標示用材料をラミネートする前に、剥離シートの剥離処理面に、ホットメルト接着剤層形成用材料としてポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−185」、融点100℃)を押出機にて、押出し温度110℃でダイから厚さ50μmのシート状のホットメルト樹脂を押出し、ラミネートし、さらに、そのホットメルト樹脂シートの表面に、上記(1)で調製された発光式路面標示用材料を押出し機にて、押出し温度110℃でダイから厚さ50μmのシート状の発光式路面標示用材料を押出し、ラミネートし、常温まで冷却し、幅10cmのシートに切断してホットメルト接着剤層付き発光式路面標示用シートを作製した以外は、実施例3と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、ホットメルト接着剤層付き発光式路面標示用シートを路面塗膜にホットメルト接着剤層が接するように貼付した以外は、実施例3と同様にして発光式路面標示を施工した。実施例4の密着性試験結果は10/100であり、実施例3に比べて路面塗膜との密着性が優れていた。
【0054】
(実施例5)
実施例2において、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−185」、融点100℃)の代わりに、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−182」、融点120℃)を使用した以外は、実施例2と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例2と同様にして発光式路面標示を施工した。
【0055】
(実施例6)
実施例2において、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−185」、融点100℃)の代わりに、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂(東洋インキ(株)製、商品名「AD−76H5」、融点180℃)を使用した以外は、実施例2と同様にして、発光式路面標示用材料、発光式路面標示用シートを作製し、実施例2と同様にして発光式路面標示を施工した。
【符号の説明】
【0056】
1 発光式路面標示用シート
2 剥離シート
3 ホットメルト接着剤層
4 路面塗膜
5 発光式路面標示
6 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト樹脂100質量部に対し、発光粉末10〜250質量部を含有することを特徴とする発光式路面標示用材料。
【請求項2】
前記発光粉末が紫外線で発光する蛍光性顔料である請求項1に記載の発光式路面標示用材料。
【請求項3】
前記ホットメルト樹脂が、90〜200℃の融点を有する請求項1又は2に記載の発光式路面標示用材料。
【請求項4】
前記ホットメルト樹脂が、ポリエステル樹脂系ホットメルト樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の発光式路面標示用材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発光式路面標示用材料からなるシートであることを特徴とする発光式路面標示用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の発光式路面標示用シートに、ホットメルト接着剤層が積層されていることを特徴とする発光式路面標示用シート。
【請求項7】
路面の一部に対して、加熱流動状態の路面塗料を塗布して路面塗膜を形成し、次いで請求項5又は6に記載の発光式路面標示用シートを前記路面塗膜の表面に貼付し、路面塗膜及び発光式路面標示用シートを冷却して固着させて、発光式路面標示を形成することを特徴とする発光式路面標示の施工方法。
【請求項8】
発光式路面標示用シートと路面塗膜との輝度差が、30〜210である請求項7に記載の発光式路面標示の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202052(P2012−202052A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65754(P2011−65754)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】