説明

発光性インキ及びその用途

【課題】紫外線照射下で十分且つ安定した発光強度と樹脂や有機溶媒に対する高い溶解性を示す赤色発光性インキを提供すること。
【解決手段】下記の式(1)で表される発光化合物および液媒体を少なくとも含有する、発光性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を目的としたセキュリティー用途に使用される発光性インキ、並びにEL分野、LED分野における発光材料を含有する発光性素子の製造に用いられる発光性インキ及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性有機化合物という言葉が用いられるようになり、電子、光学ディバイスに機能性化合物を利用する研究が盛んになってきている。機能性有機化合物としては、例えばフォトルミネッセンス(PL)現象を有する発光化合物が知られている。ここでフォトルミネッセンスとは、紫外線、可視光、赤外線の刺激によって蛍光、燐光を生ずることをいう。このような発光化合物として、発光輝度が高いβ−ジケトンの希土類錯体が注目されている。
【0003】
発光化合物を含む発光層を調製する場合は、発光化合物を、基板、紙、フィルム、素子状等の材料の所望の箇所に確実に固定する必要がある。そして発光化合物を含む発光層の調製には一般に、発光化合物を含むインキ組成物が用いられる。発光化合物を含むインキ組成物を塗布またはコーティングすることによって、均一な薄層を調製することができる。また発光化合物を含むインキ組成物を用いることによって、発光像を有する印刷物または印字物を作成することができる。発光化合物を含むインキ組成物は、各種用途に適した方法で用いる試みがなされている。
【0004】
例えば特開2000−160083号公報(特許文献1)においては、発光材料として4,4,4‐トリフルオロ‐1‐(2‐チエニル)‐1,3‐ブタンジオナート・ユウロピウムキレート化合物の含有量が0.001〜5重量%であり、溶媒としてアルコール系溶媒を70重量%以上含有するインクジェット印刷用インキ組成物が提案されている。更に、特開2005−112947号公報(特許文献2)においては、ジケトンホスフィンオキシド錯体である光学活性希土類錯体を含む印刷インキ並びその印刷インキからなる印刷層を有することを特徴とする印刷物が提案されている。特開2001−354953号公報(特許文献3)においては、トリフェニルホスフィンオキシドを配位子とするジケトンのユウロピウム錯体及び赤色蛍光材料を含むインキ組成物が提案されている。これらのインキはセキュリティーインキ(または偽造防止インキ)である。そしてこれらのインキを用いて形成された画像および/または文字は、可視光線下においては視認することができないが、紫外線(例えばブラックライトランプ等)で照射した場合にはこれらの像が発光し視認可能となり、これによって記録画像および記録情報を判読することができる。
【0005】
更に、特開2003−81989号公報(特許文献4)においては、トリフェニルホスフィンオキシドを配位子とするジケトンの希土類錯体である光機能材料用の希土類錯体、それを透明固体担体に含ませた光機能材料、およびこれらの材料とLEDまたは半導体レーザーとの組み合わせによる発光装置、が提案されている。また特開2005−44930号公報(特許文献5)においては、β−ジケトンを骨格にフェナントロリンを配位子にする希土類錯体を含有し、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されたフッ素系ポリマーを、水素原子の一部がフッ素原子に置換されたフッ素置換溶媒、及びフッ素原子を含まないフッ素非置換溶媒に、溶解又は分散してなるLED素子の発光層形成用インク及びLED素子が提案されている。これらの発明は、β−ジケトン希土類錯体として有機蛍光体を用いたLED素子に関するものである。
【0006】
また特開平11−199865号公報(特許文献6)においては、少なくとも陽極、有機正孔輸送層、有機発光層および陰極を具える有機EL素子において、有機発光層として、メチルチオフェンを含むユウロピウム錯体またはその誘導体がドーピングされている層を具えることを特徴とする有機EL素子が提案されている。特開平10−158639号公報(特許文献7)においては、β−ジケトンのユーロピウム錯体を用いることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子が提案されている。これらは、β−ジケトン希土類錯体の有機蛍光体を、EL素子の発光層に用いたものである。
【0007】
このような発光化合物またはインキ組成物は、上記用途においては発光強度が未だ十分ではなく、発光強度がより高い発光化合物またはインキ組成物が求められている。また、上記発光化合物は、溶媒に対する溶解性、および樹脂に対する分散性が悪いという問題もある。インキ組成物は一般に溶媒を含み、そしてインキ成分がこの溶媒に安定に溶解または分散する必要がある。そしてこの溶媒として、安全性の高いアルコール系溶媒を使用することが望まれている。したがって、発光強度に優れ、可視光線下においては実質的に視認することができずそして紫外線照射下においては明確に視認できる記録画像を形成することができ、および溶媒、特にアルコール系溶媒、に対する溶解安定性が良好である、発光性インキの開発が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−160083号公報
【特許文献2】特開2005−112947号公報
【特許文献3】特開2001−354953号公報
【特許文献4】特開2003−81989号公報
【特許文献5】特開2005−44930号公報
【特許文献6】特開平11−199865号公報
【特許文献7】特開平10−158639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、可視光線下においては実質的に視認することができず、そして紫外線照射下においては明確に視認できる、つまり下地の色に影響されることなく紫外線照射下において高感度で検出できる記録画像を形成することができ、しかも人体に対して安全であり、更に貯蔵安定性に優れる発光性インキを提供することにある。
【0010】
また、本発明の第二の目的は、良好な発光特性を有しながら、溶解安定性および塗布適性に優れ、耐熱性の高いLED素子発光層形成用インキを提供することにある。また、本発明の第三の目的は、上記のLED素子発光層形成用インキを用いて調製される、発光効率等の素子特性が優れ、耐熱性、耐久性が良好であるLED素子を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第四の目的は、可視光線下においては実質的に視認することができずそして紫外線照射下においては明確に視認できる数字、文字、色彩、模様、記号、符号、バーコード等を、紙幣、有価証券、保険証、IDカード、文書等の紙類、木、プラスチック、金属、IC等のカード類、その他の物品上に記録することができる、上記発光性インキを含有するセキュリティー用途用インキ組成物を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第五の目的は、上記セキュリティー用途用インキ組成物を用いて印刷された偽造防止印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記の式(1)で表される発光化合物および液媒体を少なくとも含有する、発光性インキを提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、Rは炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基であり、LおよびLは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基、分岐または直鎖のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはパーフルオロアルキル基から構成されるホスフィンオキシドであり、但しLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする。]
【0016】
上記式(1)中のRが炭素数2〜3の直鎖パーフルオロアルキル基であるのがより好ましい。
【0017】
また、上記式(1)中のLおよびLは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基またはアリール基から構成されるホスフィンオキシドであり、但しLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とするのがより好ましい。
【0018】
本発明はまた、発光化合物および液媒体を少なくとも含有する発光性インキであって、この発光化合物が、下記式(3)で表されるジケトン化合物、3価のユウロピウム塩および2種類のホスフィンオキシド誘導体を混合する反応によって得られるユウロピウム錯体である、発光性インキも提供する。
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、Rは炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基である。]
【0021】
上記液媒体がアルコール系溶媒、エステル系溶媒または芳香族系溶媒であるのがより好ましい。
【0022】
本発明はまた、上記発光性インキを少なくとも含有する、セキュリティー用途用インキ組成物も提供する。
【0023】
本発明はまた、上記セキュリティー用途用インキ組成物を用いて得られる偽造防止印刷物も提供する。
【0024】
本発明は更に、上記発光性インキを少なくとも含有するセキュリティー用途用インキ組成物を用いて印刷する工程を包含する、偽造防止印刷物の製造方法も提供する。
【0025】
本発明はまた、上記発光性インキを少なくとも含有する、LED素子発光層形成用インキ組成物も提供する。
【0026】
上記LED素子発光層形成用インキ組成物は、更に撥水性ポリマーを含有するのが好ましい。
【0027】
また、上記撥水性ポリマーがフッ素系ポリマーであるのが好ましい。
【0028】
本発明は更に、上記LED素子発光層形成用インキ組成物を用いてLEDの発光層を形成する工程を包含する、LED素子の製造方法も提供する。
【0029】
本発明は更に、上記LED素子発光層形成用インキ組成物を用いて得られるLED素子も提供する。
【0030】
上記LED素子は、黄色、緑色または青色に発光する無機蛍光体の少なくとも1種類、および上記発光化合物が、蛍光層に含有されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の発光性インキは、可視光線下においては発色しないが、紫外線を照射することによって赤色の発光を放つという特徴を有する。そして本発明の発光性インキは、紫外線の照射による発色感度が、従来の発光性インキと比較して高感度であり、より高い発光強度を有している。本発明の発光性インキは更に、高温保存後であっても発光量の低下が少なく、経時安定性および貯蔵安定性に優れるという特徴も有している。
【0032】
更に本発明により、上記発光性インキを少なくとも含有するセキュリティー用途用インキ組成物を提供することができる。そしてこのセキュリティー用途用インキ組成物を用いて調製された記録画像は、可視光線下においては発色しないが、紫外線を照射することによって赤色の発光を放つ。この特性により、可視光下においては普通のインキによる記録画像との違いがわかりにくく、そして紫外線照射による検出時には普通のインキによる記録画像との違いが目視で容易に認識できるという特徴を有している。本発明のセキュリティー用途用インキ組成物は、偽造、改ざん等の不正を防止した記録情報を印刷するインキとして使用することができる。また、セキュリティー用途用インキ組成物を用いた判子の文字・模様を書類の一部分に押すことによって、その書類がコピー等によって偽造された書類であるか否かを、目視で簡易的に判定することが出来る。
【0033】
本発明の発光性インキは更に、耐光性にも優れているという利点も有している。本発明の発光性インキを少なくとも含有するセキュリティー用途用インキ組成物は、証明書類、有価証券類、小切手等の書類の偽造や改ざんを防止するためのインキとして有用である。本発明の発光性インキを用いることによって、優れた溶解性および発光輝度、そして優れた経時安定性を有するセキュリティー用途用インキ組成物を提供することができる。
【0034】
本発明はまた、良好な発光特性を有し、かつ溶解安定性および塗布適性に優れ、耐熱性の高いLED素子発光層形成用インキを提供することができる。更にこのLED素子発光層形成用インキ組成物を用いて発光層を形成することにより、色純度、演色性、耐久性に優れたLED素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の発光性インキは、下記の式(1)で表される発光化合物および液媒体を少なくとも含有することを特徴とする。
【0036】
【化3】

【0037】
式(1)中、Rは炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基であり、LおよびLは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基、分岐または直鎖のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはパーフルオロアルキル基から構成されるホスフィンオキシドであり、これらの基は置換基を有してもよく、置換基を有さなくてもよい。そして本発明においては、式(1)中のLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする。
【0038】
式(1)で示される発光化合物は、より具体的には、下記式(2)で表すことができる。
【0039】
【化4】

【0040】
式(2)中、Rは式(1)のRと同意義であり、R〜Rは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基、分岐または直鎖のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはパーフルオロアルキル基を有するホスフィンオキシドであり、これらの基は置換基を有してもよく、置換基を有さなくてもよい。そして式(2)において、R〜Rを有するホスフィンオキシドは式(1)におけるLに相当し、R〜Rを有するホスフィンオキシドは式(1)におけるLに相当する。そして本発明においては。R〜Rを有するホスフィンオキシドと、R〜Rを有するホスフィンオキシドとは、同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする。
【0041】
式(1)および式(2)におけるRは、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基であり、より具体的にはC‐基、n‐C‐基、i‐C‐基、n‐C‐基、i‐C‐基、sec‐C‐基、n‐C11‐基、neo‐C11‐基、n‐C13‐基、n‐C15‐基、n‐C17‐基、2‐C17‐基、n‐C19‐基、n‐C1021‐基、n‐C1225‐基、n‐C1837‐基等を例示できる。これらの中でも、Rとして炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜3のパーフルオロアルキル基が更に好ましい。
【0042】
また、式(2)におけるR〜Rは、より好ましくは、それぞれ、分岐または直鎖の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖の炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するホスフィンオキシドであり、これらの基は置換基を有してもよく、置換基を有さなくてもよい。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、i‐プロピル基、n‐ブチル基、i‐ブチル基、sec‐ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基、n‐デシル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。
アルケニル基の例としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基等が挙げられる。
アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。
アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、α、α‐ジメチルベンジル基等が挙げられる。
そしてこれらの基が有してもよい置換基としては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の低級アルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、フェネチル基等のアリール基;ベンジル基、α、α‐ジメチルベンジル基等のアリールアルキル基;アミノ基;アルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;等が挙げられる。
【0043】
本発明で用いられる発光化合物は、上記式(1)で示されるとおり、3価のユウロピウムに、2‐ナフチル基が結合した特定のβ‐ジケトン誘導体が3分子、そして異なる2種類のホスフィンオキシドがそれぞれ1分子ずつ配位した化合物である。この発光化合物は紫外線励起型ユウロピウム錯体であり、紫外線の照射によって赤色に発光するという性質を有している。
【0044】
本発明においては、発光性インキに含有される発光化合物を、式(1)で示されるユウロピウム錯体に限定することにより、発光強度の向上、そして液媒体に対する溶解性および経時安定性の向上等に大きな効果があることを見いだしている。本発明の発光化合物は、式(1)に示す様に、ナフチル基と炭素数2以上のパーフルオロアルキル基(R)とを有するβ−ジケトンが配位したユウロピウム錯体であって、更にヘテロリン系配位子を有することによって、上記の優れた効果が得られることとなっている。また本発明においては、Rで示されるパーフルオロアルキル基の炭素数が2以上の場合は、炭素数が1の場合と比べて、より大きな向上効果があることを見出している。
【0045】
より好ましい発光化合物として、上記式(1)中のRが炭素数2〜3のパーフルオロアルキル基であり、LおよびLが、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基またはアリール基から構成されるホスフィンオキシドであって、但しLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする、発光化合物が挙げられる。LおよびLを構成する分岐または直鎖のアルキル基またはアリール基は、置換基を有してもよく、また置換基を有しなくてもよい。このような好ましい発光化合物のより具体的な例として、上記式(2)中のRが炭素数2〜3のパーフルオロアルキル基であり、R〜Rが、それぞれ分岐または直鎖のアルキル基であり、そしてR〜Rが、それぞれ、アリール基である化合物が挙げられる。R〜Rは置換基を有してもよく、また置換基を有しなくてもよい。これらの発光化合物は、発光強度がより強く、そして液媒体に対する溶解性および経時安定性がより優れている。
【0046】
本発明における発光化合物であるユウロピウム錯体は、下記式(3)で表されるジケトン化合物、3価のユウロピウム塩および2種類のホスフィンオキシド誘導体を混合する反応によって得られる。本発明における発光化合物の合成は、公知の方法を用いて合成することができる。発光化合物の合成の1例として、例えば式(2)で表される発光化合物の製造工程の概略を反応式(4)に示す。この反応式(4)は、下記式(3)で示されるジケトン化合物と、3価のユウロピウム化剤と、2種類のホスフィンオキシド誘導体とを1段階で混合して反応させることによって、式(2)で表される発光化合物を得る工程を示している。この反応式(4)において、2種類のホスフィンオキシド誘導体はO=PRおよびO=PRで示されており、ここでR〜Rは上記定義と同意義である。なお本明細書においては、反応式(4)で示される合成方法を1段階反応と称す。
【0047】
【化5】

【0048】
[式中、Rは式(1)のRと同意義である。]
【0049】
【化6】

(4)
【0050】
[式中、Eu−Aは3価のユウロピウム化剤であり、R、R〜R、R〜Rは式(2)のR、R〜RおよびR〜Rと同意義である。]
【0051】
反応式(4)中「Eu−A」で示される3価のユウロピウム化剤の例として、例えば、塩化ユウロピウム、酢酸ユウロピウム、硫酸ユウロピウム、水酸化ユウロピウム、ユウロピウムアルコキシド、有機酸のユウロピウム塩等が挙げられる。3価のユウロピウム化剤として、塩化ユウロピウムを用いるのがより好ましい。
【0052】
上記の1段階反応をより具体的に例示すると、式(3)で示されるジケトン化合物、3価のユウロピウム化剤、2種類のホスフィンオキシド誘導体および1N‐aq.NaOHを、例えば、それぞれ3モル、1モル、2モル(それぞれ1モルずつ)および3モルの比率で用いて、有機溶媒等の溶媒中、室温〜70℃、好ましく40〜60℃で加熱混合することにより、式(2)で表される発光化合物(ユウロピウム錯体)を得ることができる。反応に用いることができる有機溶媒として、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;および、ジメチルスルホキシド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチルラクトン等、が挙げられる。こうして得られた生成物は、必要に応じて、晶析或いは液−液抽出等の精製手段を行ってもよい。
【0053】
発光化合物の合成の他の1例として、例えば、式(2)で表される発光化合物の他の製造工程の概略を反応式(6)に示す。この反応式(6)は、下記式(3)で示されるジケトン化合物と3価のユウロピウム化剤とを反応させて、式(5)で示されるユウロピウム錯体を製造する工程;および得られた式(5)のユウロピウム錯体と、2種類のホスフィンオキシド誘導体とを同時又は順次に反応させて、式(2)で示される発光化合物を得る工程;を示している。この反応式(6)において、2種類のホスフィンオキシド誘導体はO=PRおよびO=PRで示されており、ここでR〜Rは上記定義と同意義である。なお本明細書においては、反応式(6)で示される合成方法を2段階反応と称す。
【0054】
【化7】

【0055】
[式中、Rは式(1)のRと同意義である。]
【0056】
【化8】

(6)
【0057】
[式中、Eu−Aは3価のユウロピウム化剤であり、R、R〜R、R〜Rは式(2)のR、R〜RおよびR〜Rと同意義である。]
【0058】
上記の2段階反応をより具体的に例示すると、まず第1段階として、式(3)で表されるβ‐ジケトン誘導体、3価のユウロピウム化剤および1N‐aq.NaOHを、例えば、それぞれ3モル、1モル、および3モルの比率で用いて、有機溶媒等の溶媒中、室温〜70℃、好ましく40〜60℃で加熱混合することにより、式(5)で表されるユウロピウム錯体を得ることができる。有機溶媒としては、上記したものを用いることができる。
【0059】
次に、式(5)で表されるユウロピウム錯体、および2種類のホスフィンオキシド誘導体を、例えば、それぞれ1モルおよび2モル(各1モルずつ)の比率で用いて、有機溶媒中、室温〜溶媒の沸点の温度範囲で、好ましくは20〜50℃で、加熱混合することによって、本発明における発光化合物(2)を製造することができる。ここで用いることができる溶媒として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。こうして得られた生成物は、必要に応じて、晶析或いは液−液抽出等の精製手段を行ってもよい。
【0060】
ここで、上記式(5)で表されるユウロピウム錯体の具体例を以下に示す。下記例は化合物を具体的に説明するものであるが、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
【化9】

【0062】
【表1】

【0063】
本発明の発光化合物は、上記式(4)または式(6)の反応として示されるとおり、2種類のホスフィンオキシド誘導体を反応させることによって合成される。本発明で用いることができる2種類のホスフィンオキシド誘導体の具体例を、下記式(7)を用いて以下の表2−1および表2−2に示す。下記例は化合物を具体的に説明するものであるが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
【化10】

【0065】
【表2−1】

【0066】
【表2−2】

【0067】
本発明で用いることができる発光化合物の具体例を、式(2)を用いて以下の表3−1および表3−2に示す。下記例は化合物を具体的に説明するものであるが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化11】

【0069】
【表3−1】

【0070】
【表3−2】

【0071】
本発明で用いられる発光化合物は、インキに用いる液媒体に対する溶解性が高く、そして樹脂相溶性も良好であるという特徴を有している。この発光化合物は更に、高い発光強度を有しており、更に経時安定性にも優れている。本発明の発光化合物は、式(1)に示す様に、ナフチル基と炭素数2以上のパーフルオロアルキル基(R)とを有するβ−ジケトンが配位したユウロピウム錯体であって、更にヘテロリン系配位子を有することによって、更に溶解性と光吸収強度が大きくなり発光強度が向上し、更にアモルファス性が大きくなり、発光化合物がインキ中で経時的に析出しないという優れた効果を有することとなっている。
【0072】
本発明で用いられる発光化合物はさらに耐光性にも優れるという利点も有している。これは、本発明における発光化合物は、励起エネルギーが配位子からユウロピウムへと速やかに流れるという優れた性質を有することに由来していると考えられる。
【0073】
発光性インキおよび各種用途用インキ
次に本発明の発光性インキについて説明する。本発明の発光インキは、少なくとも液媒体および式(1)に示す発光化合物を含む。発光性インキに含まれる発光化合物の量は、発光性インキ全量に対して、0.001〜20重量%であるのが好ましく、0.05〜5重量%であるのがより好ましく、0.1〜3重量%であるのが更に好ましい。
【0074】
本発明の発光性インキに用いられる液媒体としては、
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン等のケトン系溶媒:
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系溶媒:
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒:
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、2,4,6−ヘキサントリオール等のポリオール、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール及びそのエーテル系溶媒:
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル等のエステル系溶媒:
1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒:
トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒:および、ジメチルスルホキシド:N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン:γ−ブチルラクトン:THF等が例示される。
【0075】
これらの中からアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル等エステル系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール等が推奨される。又、溶媒として上記溶媒に少量の水を併用して用いることも可能である。これらの溶媒は、単独ないし混合して用いることができる。
【0076】
本発明の発光性インキに含まれる発光化合物は、上記各種の溶媒および/または樹脂等に一般に可溶性もしくは良分散性を示す。そして本発明の発光性インキに、紫外線を照射することによって、発光化合物の励起が生じ、これにより赤色域(610〜630nm)の光の発光が生じる(詳しくは実施例参照)。例えばブラックライトランプのような紫外線ランプによる紫外光(約365nm)を、本発明の発光インキに照射することによって、発光化合物の励起が生じ、これにより赤色域に発光させることができる。したがって、本発明の発光性インキを用いて形成された印字物は、可視光のもとでは発光せず、紫外光のもとでは赤色に発光するという特徴を有する。
【0077】
本発明の発光性インキは、各種用途に用いることができる。そして本発明の発光性インキを含有させることによって、例えば、セキュリティー用途用インキ組成物、LED素子発光層形成用インキ組成物等を調製することができる。これらの各種用途用インキ組成物に含まれる発光化合物の量は、発光インキ全量に対して、0.001〜20重量%であるのが好ましく、0.05〜5重量%であるのがより好ましく、0.1〜3重量%であるのが更に好ましい。
【0078】
本発明の発光性インキそして各種用途用インキ組成物は、インクジェット印刷用インキ:オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、シルクスクリーン等の印刷インキ:感熱転写印刷用インキ:筆記具用インキ:蒸着用溶解液:スピンコーティング用溶解液、塗布用塗料等に適用することが可能である。
【0079】
本発明の発光性インキを含有するセキュリティー用途用インキ組成物を調製することによって、可視光の下では視認することができないが、紫外線照射等の特定の手段を用いることによって視認できる機密情報を印刷することができる。セキュリティー用途用インキ組成物、このような機密情報を印刷物に設けることによって、重要印刷物(例えば、クレジットカード、キャッシュカード、デビットカード、商品券、有価証券、身分証明書、紙幣、免許等)の偽造、変造、改ざん等を防止することができる。例えば、このような機密情報の有無を、紫外線照射等の特定の手段を用いて判別し、真正な機密情報が設けられた印刷物(物品)を真正品、そうでない印刷物(物品)を偽品として判断することができる。
【0080】
また、本発明の発光性インキを用いたLED素子発光層形成用インキ組成物は、インクジェット記録方式を用いたLED素子発光層の形成を良好に行うことができるという利点を有している。
【0081】
インクジェット記録は、インキ組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う記録方法である。このインクジェット記録は、高解像度、高品位な画像を、高速で印刷することができるという特徴を有している。更に近年においてインクジェット記録は、紙のみならず、電気回路、半導体基板形成においても注目されそして実用化されている。本発明の発光性インキは、発光化合物の溶解性が高く、安定であるので、インクジェット記録用途に好適である。
【0082】
また、発光性インキから得られたLED素子発光層形成用インキ組成物を、インクジェット記録方式を用いて素子上にコーティングすることにより、発光化合物の量がきわめて少量であっても、発光化合物量を均等に制御させることが容易となる。そのため、発光面における色むらや発光素子ごとのバラツキを、極めて少なくすることができる。またインクジェット記録方式は、所望の場所に適切な量の発光化合物を選択的に、何回でもコーティングすることができるという利点も有している。したがって、所望の発光素子を量産性よく形成することができる。
【0083】
発光素子の発光層の薄膜形成法としては一般に、インクジェット記録法の他に、物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)等が用いられており、特にPVD法の中でも真空蒸着法が通常用いられている。真空蒸着法は、真空中において、発光化合物を含む発光素子形成用インキを加熱蒸発させて、それを基材(例えば、二つの電極層の間)に付着させることによって薄膜を形成する方法である。本発明の発光性インキはこのような真空蒸着法にも用いることができる。更に、本発明のLED素子発光層形成用インキ組成物をスピンコート法により塗布して、薄膜状に被着させることもできる。
【0084】
本発明の発光性インキは更に各種添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えばバインダー(樹脂)、浸透剤、消泡剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、界面活性剤、pH調整剤、皮膜改質剤、荷電制御剤(電荷調節剤)、動・植物油等油脂等といった種々の添加剤が挙げられる、これらの添加剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。各種用途インキ組成物に適した添加剤を必要に応じて1種またはそれ以上用いることできる。
【0085】
上記バインダー(樹脂)成分としては、発光材料を良好に定着させるためであったり、発光層の薄膜層を形成したり、インキを安定したり、粘度を調整する等の目的で用いられる。上記液媒体に対して溶解するものであれば、公知の樹脂を好適に用いることができる。
【0086】
バインダー(樹脂)成分について具体的に例示すると、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン‐酢酸ビニル共重合体等のポリビニル系樹脂:
ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミン系樹脂:
ポリメチルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂:
ロジン、ロジン変性樹脂(フェノール、マレイン酸、フマル酸樹脂等):
エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂:
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂:
フェノール変性キシレン樹脂:キシレン樹脂:テルペンフェノール樹脂:フェノール樹脂:ケトン樹脂:アクリル樹脂:スチレン−アクリル樹脂:スチレン−マレイン酸樹脂:テルペン系樹脂:テルペン−マレイン酸樹脂:ポリスチレン樹脂:ポリウレタン樹脂:アクリルウレタン樹脂:ポリエステル樹脂:塩化ビニル樹脂:塩化ビニリデン樹脂:ポリビニルホルマール及びそれらの共重合体:アルキッド樹脂:エポキシ樹脂:ポリエステルイミド樹脂:ポリアミド樹脂:ポリアミドイミド樹脂:シリコ−ン樹脂:フッ素系樹脂(フッ素系ポリマー):天然樹脂系(アラビアゴム、ゼラチン等)等が挙げられる。上記に挙げる樹脂を1種または2種以上用いることができる。
【0087】
筆記具用インキやインクジェット印刷用インキ、あるいは印刷インキ用途においては、ポリビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアミン系樹脂等を用いるのが好ましい。
【0088】
また、本発明の発光性インキを用いて硬化膜または硬化層を調製する場合においては、バインダー(樹脂)成分として、紫外線硬化性、可視光硬化性、赤外線硬化性、電子線硬化性、酸化硬化性、熱硬化性または吸湿硬化性の樹脂組成物を併せて用いるのが好ましい。この中でも、紫外線硬化性樹脂組成物を用いるのがより好ましい。
【0089】
発光性インキにバインダー(樹脂)成分が含まれる場合、これらのバインダー(樹脂)成分の含有量は、インキ組成物中0.5〜30重量%であるのが好ましく、1〜10重量%であるのがより好ましい。0.5重量%よりも少ないと非浸透性の被記録体に対して発光材料を十分に定着できないおそれがある。また、30重量%を超える場合は、インキ組成物の溶解安定性を低下させることがある。また、発光材料の周囲をバインダー層が厚く覆うことになり、発光材料の発光の低下を招く恐れがある。なお、バインダー(樹脂)を用いることによって、記録物において強固な耐水性が得られるという利点がある。
【0090】
pH調整剤としては、ジエタノ―ルアミン、トリエタノ―ルアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物のほか、アミド化合物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物あるいは炭酸塩等が挙げられる。
【0091】
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性界面活性剤が例示される。
【0092】
具体的なアニオン系界面活性剤としては、アルキル基若しくはヒドロキシル基を0乃至2個有しても良いベンゼンスルホン酸若しくはその塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸若しくはその塩、α−オレフィンスルホン酸若しくはその塩、ポリスチレンスルホン酸若しくはその塩、アルキル硫酸エステル若しくはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等アニオン系界面活性剤を例示することができる。
【0093】
具体的な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等の非イオン性界面活性剤が例示することができる。また具体的なカチオン系界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム等カチオン系界面活性剤等を例示することができる。
【0094】
皮膜改質剤としては、大豆レシチン、マイクロシリカ、あるいはワックス等が挙げられる。
【0095】
発光性インキがインクジェット印刷用である場合、荷電制御剤を含めることができる。荷電制御方式インクジェットインキ用荷電制御剤としては、例えばLiNO3等のリチウム塩、KCN、KSCN等のカリウム塩、四級アンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のカチオン化合物等が挙げられる。
【0096】
本発明の発光性インキは、所望の範囲において、公知の染料及び顔料から選ばれる着色剤を添加することができる。着色剤として、例えば、アゾ系、アゾ含金系、アゾメチン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、インダンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、キノリン系、トリフェニルメタン系の各種染顔料等の有機染顔料が挙げられる。これらの着色剤を用いて、発光性インキの色相を印刷する下地の色相に合わせてもよい。
【0097】
本発明の発光性インキ等のインキ組成物は、上記発光化合物、液媒体、そして必要に応じたバインダー、添加剤等を混合し、攪拌して溶解し、必要に応じて希釈し、そして必要に応じて他の添加剤を加えることによって、調製することができる。混合攪拌は、通常の羽を用いた攪拌機による攪拌のほか、高速の分散機、乳化機等により行うこともできる。得られた発光性インキは、必要に応じて希釈の前あるいは後で、濾過、精製できる。濾過する場合は、例えば、孔径3.0μm以下のフィルター、好ましくは、1.0μm以下のフィルターにて濾過することができる
【0098】
本発明のインキ組成物は、その溶媒の種類、バインダーの使用の有無、種類、量等を選択し、粘度、表面張力、電導度、乾燥性等を調節することによって、種々のプリンターや種々の被記録体に適用することが可能となる。例えば紙等の吸収性の被記録体を対象とする場合は、発光化合物、液媒体、そして必要に応じてバインダー成分、添加剤等を溶解して用いる。
【0099】
以下に、本発明の発光性インキの具体的態様の例を記載する。下記例はインキを具体的に説明するものであるが、本発明はこれらに限定されない。
【0100】
(1)好ましい用途の実施様態1 アルコール系液媒体を用いたインキ
好適な例として、上記のアルコール系有機溶媒またはグリコール及びそのエーテル系有機溶媒を液媒体とした発光性インキが挙げられる。このような発光性インキは、安全性の高く、揮発性の高いインキとなる。この発光性インキは、例えば、発光化合物をアルコール系液媒体(アルコール系有機溶媒及び/又はグリコール及びそのエーテル系有機溶媒を称す。)に溶解し、必要によりバインダー樹脂、各種界面活性剤等に通常含まれる成分と混合することにより調製できる。尚、アルコール系液媒体とは、アルコールまたはグリコールエーテルを主成分として含む溶媒をいう。例えば、アルコールと水との混合物は、アルコールを主成分として含む場合、アルコール系液媒体に含まれる。ここで、主成分とは、その溶媒中に60重量%以上、好ましくは80重量%以上の量で含まれている成分をいう。このような発光性インキは、含有する発光化合物の発光強度が最大となるような比較的高濃度で、かつ安定に溶解する様に調整されたインキとすることができる。
【0101】
また、アルコール系液媒体としてアルコールと水との混合物を用いる場合は、各種界面活性剤(例えば、アルキル硫酸エステル類、リン酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルアミン塩等のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、あるいはフッ素系界面活性剤、あるいはアセチレングリコール系界面活性剤)、分散剤(例えば、ロジン酸石鹸、ステアリン酸石鹸、オレイン酸石鹸、Na‐ジ‐β‐ナフチルメタンジサルフェート、Na‐ラウリルサルフェート、Na‐ジエチルヘキルスルホサクシネート)、あるいはシクロデキストリン(CD)(例えば、β‐CD、ジメチル‐β‐CD、メチル‐β‐CD、ヒドロキシエチル‐β‐CD、ヒドロキシプロピル‐β‐CD等)、消泡剤等を添加することができる。これらの添加剤を用いる場合の含有量は、インキ組成物に対して0.1〜5重量%であるのが好ましく、1〜3重量%であるのがより好ましい。
【0102】
このような発光性インキは、フェルトペンやボールペン等マーキング、インクジエツトプリンタを用いたインクジェット印刷、刷毛塗り等の方法によって、各種物品の表面に印刷することができる。発光性インキを用いて、例えばバーコード、書類の隠し文字、記号、ダンボールのマーキング等の所望のマ―クからなる印刷層を形成することができ、印刷物を製造することができる。この印刷物は、可視光線下においては視認することができないが、特定の波長の光の照射により強い発光を放つため、セキュリティー機能を有する。この発光性インキはまた、人体に対して安全性の高いアルコール系液媒体を用いているため、環境に対する負荷が軽減されており、また使用に際してなんら制限を受けることなく、オフイス等でも安全に使用できる。また、印刷時の乾燥性にも優れており、印刷作業性に優れたものである。
【0103】
(2)好ましい用途の実施様態2 偽造防止印刷物
発光性インキの用途の一例として、発光性インキを用いたセキュリティー用途用インキ組成物(偽造防止インキ)が挙げられる。本発明における発光化合物は、ブラックライト等を用いて紫外線を照射することによって赤色に発光する性質を有する。この発光化合物を印刷インキに溶解または分散させて、その印刷インキを用い印刷することにより、印刷物を調製できる。これによって、ブラックライト等を用いた紫外線下では、前記印刷物が赤色の蛍光を発し、再生紙等に含有されている蛍光増白剤の蛍光(青色系の発光)とより明確に区別できる。なおこの赤色の発光は、可視光線下では生じない。これにより、真偽判定がより容易な偽造防止策が施された印刷物を製造することができる。このような偽造防止印刷物を製造する場合における印刷方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が例として挙げられる。また、印刷インキをマーキングペン等のインキとして使用することも可能である。本発明のセキュリティー用途用インキ組成物は、偽造防止策が施された印刷物であって、特に商品券や入場券等ライフサイクルの短い有価証券類等の製造に好適に用いることができる。特に、再生紙を用いた環境負荷の低減に寄与する偽造防止策が施された印刷物の調製において、優れた実用上の効果を発揮する。
【0104】
(3)好ましい用途の実施様態3 LED素子記載
発光性インキの用途の一例として、発光性インキを用いたLED素子発光層形成用インキ組成物が挙げられる。LED素子発光層形成用インキ組成物は、発光化合物、液媒体および撥水性ポリマーを含むものが好ましい。そしてこの撥水性ポリマーとして、フッ素系ポリマーを用いるのが好ましい。
【0105】
LED素子発光層形成用インキ組成物を用いてLED素子の蛍光層を形成する場合、発光化合物であるユーロピウム錯体を溶解するポリマーの性質が、得られるLED素子の発光特性、耐久性に大きな影響を及ぼす。このポリマーとしては、フッ素系ポリマーが、透明性、撥水性の面でより望ましい。
【0106】
LED素子発光層形成用インキ組成物に含まれるポリマーの量は、0.5〜40重量%の範囲であり、1〜30重量%の範囲であるのが好ましい。LED素子発光層形成用インキ組成物に含まれる発光化合物の濃度は、ポリマー固形分に対して10〜80重量%の範囲である場合、充分な発光強度を得ることができる。本発明で用いられるフッ素系ポリマーとしては、例えば下式に示すものが挙げられる。下式で示されるフッ素系ポリマーを用いる場合は、液媒体として酢酸エチルを用いるのが望ましい。
【0107】
【化12】

【0108】
(式中、x、y及びzは1以上の整数である)
【0109】
LED素子発光層形成用インキ組成物は、発光性インキと同様にして調製することができる。この調製の際、予めフッ素系ポリマーが液媒体に溶解されていることが望ましい。
【0110】
本発明のLED素子発光層形成用インキ組成物は、本発明の発光化合物以外の他の発光化合物を含んでもよい。本発明の発光化合物以外の、他の発光化合物として、例えば黄色、緑色または青色に発光する無機蛍光体が挙げられる。
【0111】
黄色に発光する無機蛍光体として、例えばYAG:εアルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体等が挙げられる。
【0112】
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常490nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下が望ましい。このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0113】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、例えばSrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu等のEu付活ケイ酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活ケイ酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活ホウ酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロケイ酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活ケイ酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活ケイ酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活ケイ酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活ホウ酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロケイ酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロケイ酸塩蛍光体などを用いることも可能である。
【0114】
青色蛍光体としては、例えば、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行うBaMgAl1017:Euで表されるユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表されるユーロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行う(Sr,Ca,Ba)Al:Euまたは(Sr,Ca、Ba)Al1425:Euで表されるユーロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0115】
また、そのほか、青色蛍光体としては、例えば、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活ケイ酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活ケイ酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn,(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活ホウ酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロケイ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0116】
(4)好ましい用途の実施様態4 EL素子記載
本発明の発光性インキを用いて、発光化合物を発光層に含有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を製造することができる。有機エレクトロルミネッセンス素子は積層構造を有し、一般に、透明な絶縁性基板上に、陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極からなる構成を有する。このような有機EL素子の発光層を、本発明の発光性インキを用いて調製することができる。絶縁性基板の材料として、ガラス、樹脂等が用いられる。陽極の材料として、Au等の金属、インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明電極が用いられる。正孔注入輸送層の材料として、電荷を効果的に輸送できるヒドラゾン系やトリアリールアミン系の化合物が用いられる。電子注入輸送層の材料として、電子を発光層に効率よく輸送できるトリス(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム(Alq)、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体等が用いられる。陰極の材料としてMg/Ag、Mg/Au、Al/Li等が用いられる。
【0117】
有機EL素子の発光層は、本発明の発光性インキを用いて、蒸着、スピンコート、インクジェット印刷方法等により薄層を形成することによって形成することができる。発光層の形成方法は、例えば、発光性化合物を陽極または正孔輸送層の表面に蒸着する方法、発光性有機化合物を適量含む発光性インキを陽極または正孔輸送層の表面に塗布乾燥させる方法等がある。発光性インキを塗布することにより発光層を形成する場合、発光化合物を1〜10重量%およびバインダー樹脂を10〜80重量%含む発光性インキを用いるのが好ましい。
【0118】
こうして、上記式(1)で示される本発明の発光化合物が、発光層に発光色素として含有される有機EL素子を製造することができる。発光層中の発光色素は、発光素子となる上記発光化合物と、他の発光素子となる青発光のジスチリルベンゼン誘導体または緑発光のトリス(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム(Alq)等とが、マトリックスを形成したものであってもよい。発光性有機化合物のような発光色素は、陽極や正孔注入層からの正孔と負極や電子注入層からの電子との再結合により発光する性質を有する。
【0119】
上記により製造される有機EL素子は更に、発光層中に他の蛍光性有機材料がドープされていてもよい。他の蛍光性有機材料をドープすることによって、有機エレクトロルミネッセンスの発光効率を向上させることができ、これによりフルカラー表示を可能とすることができる。他の蛍光性有機材料としては、例えば、スチルベン系色素、クマリン系色素、キサンテン系色素、キナクリドン系色素、ユウロピウム錯体、亜鉛ポルフィリン誘導体等のようなドープ色素材料が挙げられる。
【0120】
更に本発明のインキ組成物に、キャリア輸送能を有するポリマーを含有させることによって、インクジェット印刷法によって有機EL素子の発光層を形成することができる。
【実施例】
【0121】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0122】
製造例1
(1−a)化合物例1−1の製造例
メチルペンタフルオロプロピオネート21.4g(0.12mol)(Lancaster社製)、2−アセチルナフタレン17.0g(0.10mol)(東京化成社製)を、乾燥エーテル50ml中、ナトリウムメチラート16.2g(0.30mol)(和光純薬社製)の存在下、反応させ、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン30gを得た。
【0123】
得られた4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン9.48g(0.03mol)、塩化ユウロピウム六水和物3.66g(0.01mol)(和光純薬社製)、および1Nの水酸化ナトリウム30mlを、エタノール100ml中に混合、40℃に調整しながら2時間加熱撹拌することにより、下記の式(a1)で表される化合物例1−1 10gを得た。
【0124】
【化13】

【0125】
(1−b)化合物例3−1の製造例
化合物例1−1のユウロピウム錯体2.0g(1.73mmol)とトリブチルホスフィンオキシド0.377g(1.73mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド0.482g(1.73mmol)とをクロロホルム20mlに投入し、40℃で0.5時間加熱撹拌し、2.7gの下記構造の化合物例3−1の発光化合物を得た(収率:98.8%)。
【0126】
【化14】

【0127】
(1−c)化合物例3−1の同定
得られた化合物例3−1の発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を行った、その結果を表4に示す。またHNMR及び13CNMRを測定した、その結果を図1および図2に示す。これらの結果より、得られた発光化合物が上記の式(b1)に表される構造であることを支持している。
【0128】
【表4】

【0129】
製造例2
(2−a)化合物例1−2の製造例
製造例2の(2−a)では製造例1の(1−a)のメチルペンタフルオロプロピオネートに代えて、メチルヘプタフルオロブチレートを同モル用いる以外は、製造例1の(1−a)と同様にして、下記の式(a2)で表される化合物例1−2 34gを得た。
【0130】
【化15】

【0131】
(2−b)化合物例3−4の製造例
化合物例1−2のユウロピウム錯体2.0g(1.46mmol)とトリブチルホスフィンオキシド0.319g(1.46mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド0.407g(1.46mmol)とをクロロホルム20mlに投入し、40℃で0.5時間加熱撹拌し、2.4gの下記構造の化合物例3−4の発光化合物を得た(収率:93.3%)。
【0132】
【化16】

【0133】
(2−c)化合物例3−4の同定
得られた化合物例3−4の発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を行った、その結果を表5に示す。またHNMR及び13CNMRを測定した、その結果を図3および図4に示す。これらの結果より、得られた発光化合物が上記の式(b2)に表される構造であることを支持している。
【0134】
【表5】

【0135】
製造例3
(3−a)化合物例1−1の製造例
製造例1の(1−a)と同様にして、式(a1)で表される化合物例1−1を得た。
【0136】
(3−b)化合物例3−3の製造例
製造例1の(1−b)のトリフェニルホスフィンオキシド0.482g(1.73mmol)をトリオクチルホスフィンオキシド0.597g(1.73mmol)に代えて、それ以外は製造例1と同様にして、下記の式(b3)に示す化合物例3−3の発光化合物2.6gを得た。
【0137】
【化17】

【0138】
比較製造例1
製造例1に従い、下記式(b4)の比較化合物例1を合成した。得られた発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を測定し、表6に示し、構造を確認した。
【0139】
【化18】

【0140】
【表6】

【0141】
比較製造例2
製造例1に従い、下記式(b5)の比較化合物例2を合成した。得られた発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を測定し、表7に示し、構造を確認した。
【0142】
【化19】

【0143】
【表7】

【0144】
比較製造例3
製造例1に従い、下記式(b6)の比較化合物例3を合成した。得られた発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を測定し、表8に示し、構造を確認した。
【0145】
【化20】

【0146】
【表8】

【0147】
比較製造例4
製造例1に従い、下記式(b6)の比較化合物例4を合成した。得られた発光化合物について、原子吸光分析及び元素分析を測定し、表9に示し、構造を確認した。
【0148】
【化21】

【0149】
【表9】

【0150】
上記製造例により得られた化合物の物性を確認した。本発明の発光化合物である化合物例3−1および化合物例3−4、そして比較化合物例として、ジケトン構造にナフチル基およびトリフルオロメチル基(本発明の発光化合物のRの位置)を有する化合物(比較化合物例1)、これにさらにホモリン系配位子を有する化合物(比較化合物例2、3)、および、ジケトン構造にナフチル基およびペンタフルオロエチル基(本発明の発光化合物のRの位置)を有しそしてホモリン系配位子を有する化合物(比較化合物例4)を、物性の測定に用いた。これらの化合物の蛍光強度および液媒体に対する溶解性(溶解度)を、下記方法により測定した。
【0151】
発光化合物の蛍光強度
上記製造例より得られた本発明のインキ組成物に用いる発光化合物および比較製造例の発光化合物について蛍光強度の評価を行った。評価の方法は、100mlのエタノールにそれぞれの発光化合物を25mg溶解させ、発光性インキを得た。蛍光分光光度計(島津製作所社製RF‐5300PC)を用いて、そのインキの蛍光強度(フォトルミネッセンス強度PL)を測定した。上記蛍光強度は、比較化合物例2の発光化合物の蛍光強度を100としたときの蛍光強度の相対値として以下の表10に示した。
【0152】
発光化合物の溶解度
また、各発光化合物の溶解度について比較した。溶解度の測定は、100mlのエタノール、クロロホルムおよびトルエン(TL)に溶解させ、24時間、室温にて放置後、不溶分を濾過により取り除き、溶解度(g/溶媒100ml)を算出した。溶解度の大きな場合は、約5.0g/100mlの単位で測定した。結果を以下の表10に示す。
【0153】
【表10】

【0154】
表10に示されるとおり、上記の結果から蛍光強度(発光強度)について述べると、RとしてC基を有する化合物例3−1は168、RとしてC基を有する化合物例3−4は159の値を示し、一方でRの位置にCF基を有する比較化合物例1は139である。この結果から、ユウロピウム錯体に配位するβ‐ジケトン誘導体の置換基を変更することによって、蛍光強度が20以上も向上することが確認できた。更に、比較化合物2及び比較化合物3の蛍光強度は、更に低い値を示した(比較化合物例2 100、比較化合物例3 105)。すなわち本発明の式(1)で示されるユウロピウム錯体を用いることは、発光強度を高くすることに非常に効果的であることが実験により確認できた。また、本願の実施化合物例は、比較化合物例4と比較しても高い蛍光強度を示すことが確認できた。
【0155】
また、液媒体に対する溶解安定性について述べると、RとしてC基を有する化合物例3−1、およびRとしてC基を有する化合物例3−4は、エタノール、クロロホルム、トルエンにおいて50g以上溶解性を示した。これに対し、Rの位置にCF基を有する比較化合物例1は、エタノールにおいて1g以下の溶解性であり、溶解性が低く、トルエンにおいても、25〜30gであり、溶解性にやや劣る結果となった。したがって、置換基を変更することにより、溶解性が向上することが確認された。本発明の発光化合物は、特にアルコール系溶媒に対する溶解性が著しく高いことがわかる。
また、比較化合物例2及び比較化合物3の溶解度は、更に低い溶解性を示した(比較化合物例2、比較化合物例3は上記の3種類の溶媒とも10g以下である)。すなわち、本発明の発光化合物は、ヘテロリン系配位子を有することも重要な意義を有している。本発明の配位子有するユウロピウム錯体構造を選択することは、溶解性を高くすることに非常に効果的である。
【0156】
インキ組成A
実施例1
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に製造例1で得られた化合物例3−1 1.0gを溶解し、これに4.0gの2‐ピロリドンを加えてインキ組成物を調製した。インクジェット記録装置「エプソン社製のHG5130」を使用して、普通紙に図6に示すパターンを有するバーコードを印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0157】
上記で得られたインキの蛍光スペクトルを図5に示した。
【0158】
実施例2
実施例2は、実施例1の化合物例3−1の発光化合物を、下記表11の発光化合物に代えたこと以外は実施例1と同様にして、インキ組成物を調製した。実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0159】
実施例2で得られたインキの蛍光スペクトルを図5に示した。
【0160】
実施例3
実施例3は、実施例1の化合物例3−1の発光化合物を、下記表11の発光化合物に代えたこと以外は実施例1と同様にして、インキ組成物を調製した。実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0161】
比較例1〜3
比較例1〜3は、実施例1の化合物例3−1の発光化合物を、下記表11の発光化合物に代えたこと以外は実施例1と同様にして、インキ組成物を調製した。実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、発光した。
【0162】
比較例1で得られたインキの蛍光スペクトルを図5に示した。
【0163】
実施例1〜2及び比較例1〜3のインキの評価
(a)経時安定性試験
透明容器に上記で得られたインキ組成物100gを、50℃に調節下インキュベーターに入れて1ヶ月間保存した。その後、保存したインキ組成物について沈殿物の有無を目視観察することにより評価した。評価基準は以下の通りとした。得られた結果を表11に示した。
評価基準
○:沈殿物が認められなかった。
△:沈殿物がわずかに認められた。
×:沈殿物が多く認められた。
【0164】
(b)視認性試験
上記で得られた印刷されたバーコードが、紫外線照射下ではっきりと視認出来るか否かを、目視観察することにより評価した。評価基準は以下の通りとした。得られた結果を表11に示した。
評価基準
◎:0.001%の濃度で視認できる
○:0.01%の濃度ではっきり視認できる。
△:0.01%の濃度で視認困難
【0165】
(c)相対蛍光評価
(i)初期相対蛍光評価
上記で得られたインキ組成物について発光強度を調べるため、前述の発光化合物の蛍光強度と同様に蛍光分光光度計を用いて蛍光強度を測定した。各インキ組成物の蛍光強度は、比較化合物例3を含んだインキ組成物(比較例3、6および8で得られたインキ組成物)の613nmの蛍光強度を100としたときの相対値(%)とした。得られた結果を表11に示した。
【0166】
(ii)相対蛍光強度の熱安定性評価
上記で得られたインキ組成物について、40℃、常圧下、5日間暗所で保存した後、再度、蛍光強度を測定した。各インキ組成物の相対蛍光強度は、比較化合物例3を含んだインキ組成物(比較例3、6および8で得られたインキ組成物)の初期蛍光強度を100とした相対値で示し、以下の式を用いて、両者の値から計算により消光率(%)を決定した。得られた結果を表11に示した。
【数1】

【0167】
正の値は蛍光強度の増加を示し、負の値は蛍光強度の減少(消光)を示している。
各インキ組成物の熱安定性の評価は、以下の評価基準を用いて評価した。
【0168】
評価基準
○: 3%以下 △: 3〜5% ×: 5%以上
【0169】
なお、インキ相対蛍光強度(%)の比較は、比較化合物例3を含んだインキ組成物(比較例3、6および8で得られたインキ組成物)を用いて測定した初期の蛍光強度を100とした場合の相対強度で示した。
【0170】
【表11】

【0171】
上記の表11に示される結果から、各実施例で得られたインキは相対蛍光強度(%)、初期のインキ評価において、比較例で得られたインキに比べて蛍光強度が数段に優れていることがわかる。本発明の蛍光性インキは蛍光強度が高く、視認性に優れていることが明らかである。特に、初期相対蛍光強度が130以上の場合に、視認性「◎」の評価結果を与えた。また、初期インキの安定性評価において、本発明の発光化合物を用いたインキは沈澱が全く認められないが、一方、比較化合物を用いた場合には沈澱が認められた。即ち、本発明の発光化合物を用いたインキは、経時安定性および貯蔵安定性が非常に優れていることが確認された。
【0172】
従って、本発明のインキに用いる式(1)で表される発光化合物のRをパーフルオロアルキル鎖の炭素数2以上のものを選択し、更にヘテロリン系配位子を導入することにより、発光輝度および溶媒溶解性・樹脂相溶性が向上するだけでなく、インキの経時安定性に関しても優れた特性を有していることが分かる。
【0173】
インキ組成B
実施例4
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、製造例1で得られた化合物例3−1 1.0gを溶解し、これに4.0gのポリビニルブチラール(積水化学社製 商品名:エレックスBL‐1)加えてインキ組成物を調製した。インクジェット記録装置「エプソン社製のHG5130」を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0174】
実施例5
実施例5は実施例4の化合物例3−1の発光化合物を下記表12の発光化合物に代えて、インキ組成物を調製した、実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0175】
比較例4〜6
比較例4〜6は実施例4の化合物例3−1の発光化合物を下記表12の発光化合物に代えて、インキ組成物を調製した、実施例4と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、発光した。
【0176】
実施例4〜5及び比較例4〜6のインキの評価
実施例4〜5及び比較例4〜6のインキの評価は実施例1と同様に行った。評価結果を表12に示した。但し、相対蛍光評価において、比較例6で得られたインキ組成物の初期蛍光強度を100とした相対値とした。
【0177】
【表12】

【0178】
インキ組成C
実施例6
90gのエタノールと5gのエチレングリコールとに30gの酢酸エチルを加えた溶液に、製造例1で得られた化合物3−1 1.0gを溶解し、これに4.0gのポリアクリレート系樹脂(アビシア社製 商品名:NeoCRylB‐818)を加えてインキ組成物を調製した。インクジェット記録装置「エプソン社製のHG5130」を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0179】
実施例7
実施例7は実施例6の化合物例3−1の発光化合物を下記表13の発光化合物に代えて、インキ組成物を調製した。実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、本発明の偽造防止印刷物を得た。得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した。
【0180】
比較例7〜8
比較例7は実施例6の化合物例3−1の発光化合物を下記表13の発光化合物に代えて、インキ組成物を調製した。実施例1と同様にインクジェット記録装置を使用して、普通紙にバーコード印刷し、得られた印刷物にブラックライトランプを用い、紫外光(約365nm)を照射したところ、発光した。
【0181】
実施例6〜7及び比較例7〜8のインキの評価は実施例1と同様に行った。評価結果を表13に示した。但し、相対蛍光評価において、比較例8で得られたインキ組成物の初期蛍光強度を100とした相対値とした。
【0182】
【表13】

【0183】
LED素子の製造
実施例8、9、比較例9、10は本発明の発光化合物を用いたLED素子の製造例を示す。
【0184】
実施例8
化合物例3−4の発光化合物 5部と下式のフッ素系ポリマー 15部が酢酸エチル 80部に共に溶解してなるインキ組成Dを作成し、発光層形成用インキ組成物を得た。これを中心発光波長395nmのLEDチップ上に、塗布して発光させた(20mA、3.4Vの電圧)。光度の測定値は200mcdと非常に大きい値を示した。
【0185】
【化22】

【0186】
[式中、x、y及びzは1以上の整数である。]
【0187】
実施例9
中心発光波長395nmのLEDチップ上に、イエローに発光するアルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体が含有されたシリコンポリマーの層を設け、更に、その上部に、実施例8で得られたインキを用い、第二の蛍光層を形成した(20mA、3.4Vの電圧)。光度の測定値は500mcdと非常に大きい値を示した。
【0188】
比較例9
実施例8で用いた化合物例3−4に代えて、比較化合物例1を用いる以外は実施例8と同様に、発光層形成用インキ組成物を得た。これを中心発光波長395nmのLEDチップ上に、塗布して発光させた(20mA、3.4Vの電圧)。光度の測定値は130mcdであった。
【0189】
比較例10
実施例8で用いた化合物例3−4に代えて、比較化合物例3を用いる以外は実施例8と同様に、発光層形成用インキ組成物を得た。これを中心発光波長395nmのLEDチップ上に、塗布して発光させた(20mA、3.4Vの電圧)。光度の測定値は120mcdであった。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明のインキ組成物は、偽造防止のために設けられるセキュリティー用途に使用される各種印刷用インキおよびEL分野、LED分野における発光材料を含有する発光性素子を作製するために供せられるインキ組成物の用途に利用することができる。本発明の発光性インキは、紫外線の照射による発色感度が、従来の発光性インキと比較して高感度であり、より高い発光強度を有しているため、上記用途に好適に用いることができる。また本発明の発光性インキは、高温保存後であっても発光量の低下が少なく、経時安定性および貯蔵安定性に優れるという産業利用上の利点も有している。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】実施例で用いた化合物例3−1のH‐NMRスペクトル(1a)である。
【図2】実施例で用いた化合物例3−1の13C‐NMRスペクトル(1b)である。
【図3】実施例で用いた化合物例3−4のH‐NMRスペクトル(2a)である。
【図4】実施例で用いた化合物例3−4の13C‐NMRスペクトル(2b)である。
【図5】実施例1、実施例2、比較例1から得られたインキの蛍光スペクトルである。
【図6】実施例において印刷したバーコードのパターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される発光化合物および液媒体を少なくとも含有する、発光性インキ。
【化1】

[式中、Rは炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基であり、LおよびLは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基、分岐または直鎖のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはパーフルオロアルキル基から構成されるホスフィンオキシドであり、但しLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする。]
【請求項2】
前記式(1)中のRが炭素数2〜3の直鎖パーフルオロアルキル基である、請求項1記載の発光性インキ。
【請求項3】
前記式(1)中のLおよびLは、それぞれ、分岐または直鎖のアルキル基またはアリール基から構成されるホスフィンオキシドであり、但しLおよびLは同一のホスフィンオキシドではないことを条件とする、請求項1記載の発光性インキ。
【請求項4】
発光化合物および液媒体を少なくとも含有する発光性インキであって、該発光化合物が、下記式(3)で表されるジケトン化合物、3価のユウロピウム塩および2種類のホスフィンオキシド誘導体を混合する反応によって得られるユウロピウム錯体である、発光性インキ。
【化2】

[式中、Rは炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基である。]
【請求項5】
前記液媒体がアルコール系溶媒、エステル系溶媒または芳香族系溶媒である、請求項1記載の発光性インキ。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の発光性インキを少なくとも含有する、セキュリティー用途用インキ組成物。
【請求項7】
請求項6記載のセキュリティー用途用インキ組成物を用いて得られる偽造防止印刷物。
【請求項8】
請求項1〜5いずれかに記載の発光性インキを少なくとも含有するセキュリティー用途用インキ組成物を用いて印刷する工程を包含する、偽造防止印刷物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5いずれかに記載の発光性インキを少なくとも含有する、LED素子発光層形成用インキ組成物。
【請求項10】
更に撥水性ポリマーを含有する、請求項9記載のLED素子発光層形成用インキ組成物。
【請求項11】
撥水性ポリマーがフッ素系ポリマーである、請求項10記載のLED素子発光層形成用インキ組成物。
【請求項12】
請求項9〜11いずれかに記載のLED素子発光層形成用インキ組成物を用いてLEDの発光層を形成する工程を包含する、LED素子の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜11いずれかに記載のLED素子発光層形成用インキ組成物を用いて得られるLED素子。
【請求項14】
黄色、緑色または青色に発光する無機蛍光体の少なくとも1種類、および請求項1の式(1)で示される発光化合物が、蛍光層に含有されることを特徴とする、請求項13記載のLED素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−115225(P2008−115225A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297928(P2006−297928)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】