説明

発光材料、発光素子及び発光装置

【課題】発光材料に無機化合物を用いた電荷注入型の発光素子において、発光材料の電気伝導度を向上させて、直流電圧で駆動させる。
【解決手段】母材として硫化物が用いられる。発光材料の電気伝導度を高めるため、ドナー元素が添加される。ドナー元素は、当該ドナー元素がつくるドナー準位と伝導帯下端とのエネルギーギャップが0.3eV以内である元素が選択される。母材が硫化亜鉛(ZnS)であれば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ボロン(B)が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料に関する。また、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子に関する。また、発光素子を有する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、携帯電話、デジタルカメラ等における表示装置は、平面的で薄型の表示装置が求められており、この要求を満たすための表示装置として、自発光型である発光素子を利用した表示装置が注目されている。自発光型の発光素子の一つとして、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)を利用する発光素子があり、この発光素子は、発光材料を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、発光材料からの発光を得ることができるものである。
【0003】
このような自発光型の発光素子は、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、応答速度が非常に速いことも特徴の一つである。
【0004】
さらに、このような自発光型の発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形成することにより、面発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」という。)、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0006】
無機EL素子は、その発光層の構造により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。前者の発光層は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた構造であり、後者の発光層は、発光材料の薄膜構造である点に違いがある。なお、発光のメカニズムとしては、ドナー準位とアクセプタ準位を利用するドナー−アクセプタ再結合型発光と、金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光とがある。一般的に、分散型無機EL素子ではドナー−アクセプタ再結合型発光、薄膜型無機EL素子では局在型発光である場合が多い。
【0007】
また、無機EL素子は駆動方法の違いにより分類される。1つは、交流の電圧を印加して発光させる交流駆動型であり、他の1つは直流の電圧を印加して発光させる直流駆動型である。交流駆動型の無機EL素子は既に、面発光光源やセグメント方式のディスプレイとして実用化されている。また、非特許文献1のように、近年フルカラーディスプレイに必要とされる高輝度の青色発光の無機EL素子が開発されている。
【0008】
交流駆動型の無機EL素子では、発光層内で高電界を発生させて、電子(具体的には、ホットエレクトロン)を加速し、加速した電子によって母体材料または発光中心を衝突励起させることにより発光を得ている。つまり、交流駆動型の無機EL素子では電界励起型の発光が生じており、発光には発光層に1MV/cm以上の高電界をつくるため、駆動電圧が100V〜200Vと高いという問題がある(非特許文献1参照)。また、交流駆動型の無機EL素子を発光させるためには、交流電圧を発生させるためのインバータが必要となり、電源が複雑化するという問題もある。
【0009】
そのため、交流駆動型の無機EL素子は、有機EL素子と比較して長寿命であるという長所があるものの、消費電力が大きい点が商品化される製品の種類を制限している。無機EL素子は自発光であるというメリットを生かして、携帯電話などの携帯型電子機器のディスプレイに好適であるとの認識があるが、電子機器の電源がバッテリーであることから、100Vの交流電源を必要とする無機EL素子を採用することは現実的ではない。
【非特許文献1】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、Vol.38、L1291〜L1292
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題点を鑑み、本発明は、発光素子の低消費電力化を実現するための、無機の発光材料を提供することを課題とする。より具体的には、電荷注入型の発光素子を実現するための無機化合物を母材とする発光材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明らは、無機化合物でなる発光材料を用いて、低電圧で発光する発光素子を実現すべく、発光素子の発光機構を電界励起型でなく、電極からキャリアを発光層に注入して発光させる電荷注入型とすることに着目した。電荷注入型とすることで、ホットエレクトロンを用いずに発光させることができるため、発光層に高電界発生させる必要がない。そのため、直流電圧で、かつ数十〜十数ボルト程度の低電圧で発光素子を発光させることができる。
【0012】
本発明に係る発光材料は、母材として硫化物でなる無機化合物と、ドナー元素を少なくとも含む発光材料であって、無機化合物よりも100倍以上高い電気伝導度を示すことを特徴とする。母材の電気伝導度を高めるため、当該ドナー元素がつくるドナー準位と伝導帯下端とのエネルギーギャップが0.3eV以内である元素がドナー元素として選択される。本発明において、硫化物でなる無機化合物が硫化亜鉛(ZnS)であるとき、ドナー元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ボロン(B)が選択できる。
【0013】
上記のエネルギーギャップは、密度汎関数理論のバンド計算から算出することができる。例えば、硫化物でなる無機化合物がZnS、ドーパント元素がAlの場合、Alを含むZnSのエネルギーギャップと、ZnS単体のエネルギーギャップの差として求めることができる。
【0014】
本発明の発光材料の構成は、より具体的には、母材が硫化亜鉛(ZnS)であり、少なくともアルミニウム(Al)を含み、アルミニウムの濃度は硫化亜鉛に対して3mol%以上である発光材料である。また、母材が硫化亜鉛であり、少なくともガリウム(Ga)を含み、ガリウムの濃度は硫化亜鉛に対して9mol%以上である発光材料である。また、母材が硫化亜鉛であり、少なくともインジウム(In)を含み、インジウムの濃度は硫化亜鉛に対して8mol%以上である発光材料である。
【0015】
本発明の発光材料は、一対の電極間に発光層を挟んだ発光素子に適用できる。本発明に係る発光材料に発光層を含ませることにより、直流駆動型の発光素子を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発光材料を発光層に用いることで、電荷注入型の発光素子を作製することができる。その結果として、数十〜十数ボルト程度の低電圧でかつ直流電圧で発光素子を発光させることができるようになり、低消費電力化が実現できる。よって、従来、適用が困難であったバッテリー駆動の電子機器の表示部に無機化合物を用いた発光素子を適用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
発明者らは電荷注入型の発光素子に適した発光材料の研究を鋭意行い、本発明はその結果得られたものである。本発明者らは、低電圧で発光が生じるようにするため、発光層のキャリア密度を高くすることに着目した。
【0018】
本実施形態では、種々のドーパント元素を添加した無機化合物でなる発光材料(半導体)のコンダクタンスの理論計算を行い、ドープする元素の種類とその濃度とコンダクタンスの関係を考察する。本実施の形態では、母材を硫化亜鉛(ZnS)とし、ドーパント元素として、ドナー元素となるガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、およびボロン(B)、ならびにアクセプタ元素となるヒ素(As)、およびマンガン(Mn)を想定した。ドーパント元素のドープ濃度を変化させて、発光材料(半導体)のコンダクタンスの理論計算を行った。
【0019】
<発光素子の構造>
まず、図1、図2を用いて、計算に用いた発光素子の構造を説明する。図1に示すように、発光素子は、第1の電極(F1)と第2の電極(F2)の間に発光層(F3)を挟んだ構造である。計算には、第1の電極(F1)、第2の電極(F2)の材料を共にアルミニウム(Al)とした。また発光層は母材をZnSとし、上記のドーパント元素を添加した半導体である、図2は、理論計算に用いたAlとZnSの分子構造を示す。ZnSの結晶構造は立方晶(閃亜鉛鉱型)とした。ZnSは六方晶の結晶構造をとることもできるが、本発明者らは、六方晶よりも立方晶の方が、電気伝導度が高くなると予想し、立方晶のZnSについてコンダクタンスを理論計算した。
【0020】
なお、図2の発光層(F3)には添加したドーパント元素は図示されていない。また、第1の電極(F1)と第2の電極(F2)に図示されている直方体の枠は単位格子を表している。
【0021】
<計算方法>
コンダクタンスの計算は次のような理論に基づき行った。電流は第1の電極(F1)から第2の電極(F2)に流れることとする。第1の電極(F1)に注入する電子の運動量kとすると、そのとき第1の電極(F1)から発光層(F3)へと流れる電流Iin(k)は、次の式(1)で表される。(1)式において、eは電荷素量(1.602×10−19[C])、hはプランク定数(6.63×10−34[J/s])、Eはエネルギー[J]を示す。
【0022】
【数1】

【0023】
したがって、第2の電極(F2)から取り出される電流Iout(k)は透過率T[%]を用いると、次の(2)式で表される。なお、(2)式において透過率Tは発光層(F3)を透過する電子の割合を表す。
【0024】
【数2】

【0025】
また、発光素子を流れる全電流Iallは第2の電極(F2)から出でくる電流Iout(k)の総和であるので、次の(3)式で表すことができる。
【0026】
【数3】

【0027】
(3)式において、EF1およびEF2は、それぞれ、第1の電極(F1)および第2の電極(F2)でのエネルギーを表す。よって、第1の電極(F1)と第2の電極(F2)間の電位差は、(4)式で表される。
【0028】
【数4】

【0029】
(4)式を(3)式に代入すると、次の(5)式が得られる。
【0030】
【数5】

【0031】
(5)式の左辺のIall/Vが発光層(F3)のコンダクタンス(抵抗の逆数)である。eとhは定数であるから、透過率Tを計算することにより、発光層(F3)のコンダクタンスを求めることができる。
【0032】
<計算結果>
以下、(5)式を用いて計算した発光層(F3)のコンダクタンスを、表1及び図3(A)、図3(B)に示す。図3(A)および図3(B)のグラフは、表1のデータをプロットしたグラフであり、横軸が、母材ZnSに対するドーパント元素の濃度であり、縦軸が、所定のドーパント元素を含んだZnSのコンダクタンスである。図3(A)に、Ga、In、Al、As、およびMnのデータを示している。図3(B)にBのデータを示している。
【0033】
【表1】

【0034】
図3(A)および図3(B)のグラフは、Ga、In、AlおよびBをドープすることで、そのドープ濃度の増加に伴い、コンダクタンスが大きく増大することを示している。図3(A)および図3(B)、表1のデータから、これらのドーパント元素をある濃度以上ドープすることでZnSのコンダクタンスを100倍以上に向上できることが分かった。特にBをドープすることでコンダクタンスを10000倍以上にすることができる。
【0035】
ZnSに、2族のZnよりも電子数が多い、3族元素Al、Ga、In、Bをドープすると伝導帯の下にドナー準位ができる。このような元素はドナー元素と呼ばれる。ドナー元素を1つドープすると電子が一つ生まれ、そのドナー元素が多くドープされると電子も増加する。絶対零度付近の温度では、電子がドナー元素に束縛されているので伝導電子の密度は低いが、温度が上昇するとドナー元素がイオン化され、伝導帯に励起される電子の数は増大する。つまり、ドナー準位と伝導帯下端までのエネルギーギャップが小さいほうがドナー元素から伝導帯に電子が励起されやすい。この電子が電気伝導の担い手の役割をする。アクセプタ元素をドープする場合も、価電子帯に生じる正孔が電気伝導に寄与する。このような電子と正孔はキャリアと呼ばれ、キャリア密度が大きいと電気伝導度が増大する。
【0036】
ZnSにAl、Ga、Inをそれぞれドープした半導体は、ドナー準位と伝導帯下端とのエネルギーギャップが小さいと考えられる。密度汎関数理論によるバンド計算を用いて、AlをドープしたZnS、GaをドープしたZnS、In、BをドープしたZnSのバンドギャップと、ZnSとのバンドギャップの差を、上記ドナー元素(Al、Ga、In、B)のドナー準位と伝導帯下端とのエネルギーギャップに相当するとして計算すると、それぞれ、0.3eV以内である。なお、密度汎関数理論に基づくバンド計算には、平面波基底に基づいた第一原理計算プログラムPhaseを用い、汎関数としてGGAPBE近似を与え、擬ポテンシャルにウルトラソフト擬ポテンシャルを採用した。
【0037】
以上の理論計算の結果、ZnSのようなn型半導体の場合、半導体の伝導帯下端とドナー元素によるドナー準位とのエネルギーギャップが0.3eV以内となるドナー元素をドープすることにより、母材の半導体の電気伝導度を100倍以上にできることが分かる。ZnSの100倍に相当するコンダクタンスを有するときのB、Al、Ga、Inのドープ濃度は、理論計算により、それぞれ0.3mol%、3mol%、9mol%、8mol%である。なお、母材がp型の半導体の場合も同様、母材の価電子帯上端とアクセプタ元素によるアクセプタ準位とのエネルギーギャップが0.3eV以内であるアクセプタ元素をドープすることで、半導体の電気伝導度を向上できると考えられる。
【0038】
本実施形態の理論計算は、立方晶(閃亜鉛鉱型)の硫化亜鉛(ZnS)として計算したが、本実施形態の計算結果は、ZnSと同様の閃亜鉛鉱型の結晶構造を持ち、n型半導体である、硫化カドミウム(CdS)、セレン化亜鉛(ZnSe)について同様に適用できる。
【0039】
なお、母材にGaをドープするには、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム(GaSe)ガリウムヒ素(GaAs)を用いることができる。また、Alをドープするには、硫化アルミニウム(Al)やセレン化アルミニウムセレン(AlSe)を用いることができる。また、インジウムをドープするには、硫化インジウム(In)、セレン化インジウム(InSe)を用いることができる。なお、母体が硫化物のときはドーパント元素の硫化物を用い、母体がセレン化合物であるときはドーパント元素のセレン化合物を用いればよい。
【0040】
また、本発明の発光材料は、母材の電気伝導度を高めるための元素の他、所望の波長で発光させるために別の元素を含んでいてもよい。具体的には、発光材料に発光中心を形成するための元素を含めることができる。
【0041】
局在型発光の発光中心としては、例えば、マンガン(Mn)、銅(Cu)、銀(Ag)、テルビウム(Tb)、ユーロピウム(Eu)、ツリウム(Tm)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、エルビウム(Er)等を用いることができる。これらの元素を添加するときは、これらのフッ素化合物、塩素化合物などのハロゲン化合物を用いることが好ましい。ハロゲン化合物を用いることで、電荷補償として、フッ素(F)、塩素(Cl)などのハロゲン元素を添加することができる。
【0042】
また、ドナー−アクセプタ再結合型発光の発光中心として、ドナー準位を形成する第ドナー元素及びアクセプタ準位を形成するアクセプタ元素を添加することもできる。アクセプタ元素としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群より選択した少なくとも1つの元素を用いることができる。ドナー元素としては、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、塩素(Cl)、ヨウ素(I)および臭素(Br)からなる群より選択した少なくとも1つの元素を添加することができる。なお、ドナー−アクセプタ再結合型発光の発光中心として、ドナー元素は必ずしも添加する必要はない。それは、母材の格子欠陥などがドナー準位を形成する場合があること、本発明の発光材料は、母材にドナー元素を含ませているからである。
【0043】
以下、母材ZnSにCu、Cl、Mnを含んだ発光材料(以下、「ZnS:Cu、Cl、Mn」と示す。)にGaを添加し、Gaの濃度に対する、発光材料のコンダクタンスの値を計算した。計算に使用した発光素子のモデルは図1、図2と同様であり、コンダクタンスの計算には(5)式を用いた。
【0044】
ここでは、ZnS:Cu、Cl、MnにGaを添加するのにガリウムヒ素(GaAs)を用いることを想定した。GaAsの濃度に対して、発光材料ZnS:Cu、Cl、Mnのコンダクタンスを計算した。ZnS:Cu、Cl、MnにおけるCu、Cl、Mn濃度は一定とし、発光材料(ZnS:Cu、Cl、MnにGaAsを添加した材料)に対して、Cu、Cl、Mnの濃度は、それぞれ、6.8mol%、6.8mol%、3.6mol%である。計算結果を図4及び表2に示す。図4のグラフは、横軸がGaAsの濃度であり、縦軸がGaAsを添加したZnS:Cu、Cl、Mnのコンダクタンスである。なお、表2、図4において、GaAsの濃度は、発光材料(ZnS:Cu、Cl、MnにGaAsを添加した材料)に対する濃度である。
【0045】
【表2】

【0046】
図4、表2から、母材ZnSに発光色を決定するための元素を添加した発光材料に対して、ドナー元素であるガリウム(Ga)を添加することで、電気伝導度を高めることができることが理解される。表1に示すように、理論計算によると、母材ZnS自体のコンダクタンスは、1.50×10−12[μS]であるので、GaAsを27mol%以上添加することで、GaAsを添加したZnS:Cu、Cl、Mnのコンダクタンスを母材ZnSのコンダクタンスの100倍以上とすることができる。
【0047】
発光材料の作製方法としては、固相法や液相法(共沈法)等の様々な方法を用いることができる。また、噴霧熱分解法、複分解法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、凍結乾燥法などの液相法なども用いることができる。
【0048】
固相法は、反応させる元素又はその元素を含む化合物を秤量し、乳鉢で混合、電気炉で加熱、焼成を行い、固相反応により合成を行う方法である。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が高すぎる場合は母体材料が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。比較的高温での焼成を必要とするが、簡単な方法であるため、生産性がよく大量生産に適している。
【0049】
液相法(共沈法)は、反応させる元素又はその元素を含む化合物を溶液中で反応させ、乾燥させた後、焼成を行う方法である。発光材料の粒子が均一に分布し、粒径が小さいため、低い焼成温度でも反応を進めることができる。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図5を用いて本発明に係る発光素子について説明する。
【0051】
まず、図5(A)は、薄膜型発光素子の断面構造を示す。図5(A)に示す発光素子は、基板100の上に、第1の電極101及び第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層103を有する素子構成である。本実施の形態で示す発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102の間に直流電圧を印加することで発光層103より発光が得られる。
【0052】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えば、ガラス、プラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでも用いることができる。
【0053】
第1の電極101及び第2の電極102は、金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。なお、面発光を得るためには、第1の電極101又は第2の電極102のいずれか一方又は両方を透明にしておく必要がある。透明電極としては、例えば、酸化インジウム−スズ(略称ITO)、珪素、又は酸化珪素を含有した酸化インジウム−スズ(略称ITSO)、酸化インジウム−亜鉛(略称IZO)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−スズ(略称IWZO)等が挙げられる。
【0054】
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリングにより成膜される。例えば、IZOは、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。IWZOは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。
【0055】
この他、第1の電極101及び第2の電極102には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)を材料として用いることができる。さらに、これら金属材料の窒化物、例えば、窒化チタン等を用いることができる。これらの可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm程度の厚さで、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極とすることができる。なお、第1の電極101、第2の電極102を形成するための導電膜の成膜は、スパッタリング以外にも、真空蒸着、CVD、ゾル−ゲル法を用いることができる。
【0056】
発光層103は、実施の形態1で示した発光材料を含む層であり、抵抗加熱蒸着や電子ビーム蒸着(EB蒸着)等の真空蒸着法、スパッタリング法、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。膜厚は特に限定されることはないが、好ましい範囲は、10nm以上1μm以下である。
【0057】
次に、図5(B)を用いて、分散型発光素子について説明する。図5(B)に示すように、分散型発光素子は、基板110の上に、第1の電極111と及び第2の電極112と、第1の電極111と第2の電極112との間に発光層113を有する素子構成である。本実施の形態で示す発光素子は、第1の電極111と、第2の電極112の間に直流電圧を印加することで発光層113より発光が得られる。
【0058】
発光層113は、実施の形態1で示した粒子状の発光材料113aをバインダ113b中に分散させた膜である。粒子状の発光材料113aは、銅などでコーティングして、導電性を高めることが好ましい。バインダとは、粒状の発光材料を分散した状態で固定し、発光層としての形状に保持するための物質であり、発光材料は、このバインダにより発光層中に均一に分散し固定される。なお、発光材料の作製方法によって、十分に所望の大きさの粒子が得られない場合は、乳鉢等で粉砕し、所定の大きさの粒子に加工すればよい。
【0059】
発光層の形成方法としては、選択的に発光層を形成できる液滴吐出法や、スクリーン印刷やオフセット印刷等の印刷法、スピンコート法などの塗布法、ディッピング法、ディスペンサ法等を用いることができる。膜厚は特に限定されることはないが、好ましい範囲は10nm以上1μm以下である。また、発光材料及びバインダを含む発光層において、発光材料の割合は50wt%以上80wt%以下が好ましい。
【0060】
本実施の形態に用いることのできるバインダは絶縁材料であり、有機材料を用いることができる。例えば、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)などの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いてもよい。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂である。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オキサゾール樹脂(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂材料を用いることもできる。
【0061】
発光層113を作製工程において、発光材料はバインダを含む溶液中に分散されるが、本実施の形態に用いることのできるバインダを含む溶液の溶媒としては、バインダ材料が溶解し、発光層を形成する方法(各種ウエットプロセス)及び所望の膜厚に適した粘度の溶液を作製できるような溶媒を適宜選択すればよい。有機溶媒としては、例えば、バインダとしてシロキサン樹脂を用いる場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトシキ−3メチル−1−ブタノール(MMB)などを用いることができる。
【0062】
本発明において、電気伝導度の高い発光材料を用いたことにより、発光素子を低電圧で直流駆電圧で駆動できるようになる。低駆動電圧で発光可能なため、消費電力も低減された発光素子を得ることができる。また、交流駆動型の無機EL素子では、発光層と電極の間に絶縁膜が必要であったが、図5(A)の薄膜型EL素子や図5(B)に示した分散型EL素子において、発光層を一対の電極で挟むという非常に単純な構成とすることができる。
【0063】
本実施の形態で示した発光素子は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。なお、本発明は、本実施形態で説明した発光素子を用いた発光装置を含むものである。発光装置としては、画素に発光素子を多数配列した表示装置、発光素子を光源に用いた照明機器などが挙げられる。以下、実施形態において、本発明に係る発光装置の具体例を説明する。
【0064】
(実施の形態3)
実施形態2で説明した発光素子は表示装置の画素に適用することができる。本実施の形態では、図6〜図10を参照して、発光装置の一態様としてパッシブマトリクス型の表示装置について説明する。
【0065】
図6は表示装置の主要部を示す外観図である。基板410には、第1の電極416と、その電極と交差する方向に伸びる第2の電極418が設けられている。少なくとも、第1の電極416と第2の電極418との交差部には、実施の形態1〜2で説明したものと同様な発光層が設けられ、発光素子を形成している。図6の発光装置は、第1の電極416と第2の電極418を複数本配置して、画素となる発光素子をマトリクス状に配列させ、表示部414を形成している。この表示部414は、第1の電極416と第2の電極418の電位を制御して個々の発光素子の発光及び非発光を制御して、動画及び静止画を表示することができる。
【0066】
この発光装置は、基板410の一方向に延設される第1の電極416と、それと交差する第2の電極418のそれぞれに映像を表示する信号を印加して発光素子の発光及び非発光を選択する。すなわち、画素の駆動は、もっぱら外部回路から与えられる信号で行う単純マトリクス型の表示装置である。このような表示装置は、構成が簡単であるので、大面積化をしても容易に製造をすることができる。
【0067】
上記において、第1の電極416としてアルミニウム、チタン、タンタルなどを用い、第2の電極418として酸化インジウム、酸化インジウム・酸化スズ(ITO)、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛を用いれば、対向基板412側に表示部414が形成される表示装置とすることができる。この場合、第1の電極416の表面に薄い酸化膜を形成しておくとバリア層が形成され、キャリアブロッキング効果により発光効率を高めることができる。
【0068】
第1の電極416として酸化インジウム、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛を用い、第2の電極418としてアルミニウム、チタン、タンタルなどを用いれば、基板410側に表示部414が形成される表示装置とすることができる。また、第1の電極416と第2の電極418を共に透明電極で形成すれば、両面表示型の表示装置とすることができる。
【0069】
なお、対向基板412は必要に応じて設ければよく、表示部414の位置に合わせて設けることで保護部材とすることもできる。これは、板状の硬材としなくても、樹脂フィルム又は樹脂材料を塗布して代用することもできる。第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部に引き出され、外部回路と接続する端子を形成している。すなわち第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部でフレキシブル配線基板420、422とコンタクトを形成する。外部回路としては、映像信号を制御するコントローラ回路の他、電源回路、チューナ回路などが含まれる。
【0070】
図7は表示部414の構成を示す部分拡大図を示す。基板410に形成された第1の電極416の側端部は隔壁層424が形成されている。そして、少なくとも第1の電極416の露出面上にはEL層426が形成されている。第2の電極418は、EL層426上に設けられている。第2の電極418は第1の電極416と交差するので、隔壁層424上に延設されている。隔壁層424は、第1の電極416と第2の電極418の間で短絡が起こらないように絶縁材料で形成されている。隔壁層424が第1の電極416の端部を覆う部位では、段差が急峻とならないように隔壁層424の側端部に勾配を持たせた、いわゆるテーパー形状としている。隔壁層424をこのような形状とすることで、EL層426や第2の電極418の被覆性が向上し、ひび割れや断裂などの不良を無くすことができる。
【0071】
図8は表示部414の平面図であり、第1の電極416、第2の電極418、隔壁層424、EL層426の配置を示している。補助電極428は第2の電極418を酸化インジウムスズ、酸化亜鉛などの酸化物透明導電膜で形成する場合に、抵抗損失を低減するために設けると好ましいものである。この場合、補助電極428はチタン、タングステン、クロム、タンタルなどの高融点金属、若しくは高融点金属とアルミニウム、銀などの低抵抗金属とを組み合わせて形成するとよい。
【0072】
図8において、A−B線及びC−D線に沿った断面図を図9(A)(B)に示す。図9(A)は第1の電極416が配列する断面図であり、図9(B)は第2の電極418が配列する断面図を示す。第1の電極416と第2の電極418の交差部にはEL層426が形成され、その部位に発光素子が形成される。図9(B)で示す補助電極428は隔壁層424上にあって、第2の電極418と接触するように設けている。補助電極428を隔壁層424上に設けることにより、第1の電極416と第2の電極418の交差部に形成される発光素子を遮光することがないので、発光した光を有効に利用することができる。また、補助電極428が第1の電極416と短絡してしまうことを防ぐことができる。
【0073】
図9では、対向基板412に色変換層430を配設した一例を示している。色変換層430は、EL層426で発光した光を波長変換して発光色を変化させるためのものである。この場合、EL層426で発光する光は、エネルギーの高い青色又は紫外光であることが好ましい。色変換層430として、赤色、緑色、青色に変換するものを配列させれば、RGBカラー表示を行う表示装置とすることができる。また、色変換層430を着色層(カラーフィルタ)に置き換えることもできる。その場合は、EL層426は白色発光するように構成すればよい。充填材432は基板410と対向基板412を固定するものであり適宜設ければよい。
【0074】
また、表示部414の他の構成を図10に示す。図10の構造は、第1の電極452の端部が絶縁層453で覆われている。そして、絶縁層453上には隔壁層454が設けられている。隔壁層454の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層454の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層453の面方向と同様の方向を向き、絶縁層453と接する辺)の方が上辺(絶縁層453の面方向と同様の方向を向き、絶縁層453と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層454を設けることで、隔壁層454を使って、EL層455及び第2の電極456を自己整合的に形成することができる。
【0075】
本実施形態の表示装置は低電圧で発光素子が発光するので、昇圧回路などが不要となるため、装置の構成を簡略化することができる。
【0076】
(実施の形態4)
図11を用いて、本実施の形態では、トランジスタにより発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。なお、図11(A)は、発光装置を示す上面図、図11(B)は図11(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0077】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0078】
次に、断面構造について図11(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部601、603、画素部602が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0079】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成してもよい。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。また、半導体材料についても特に限定されず、無機化合物を用いてもよいし、有機化合物を用いてもよい。
【0080】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612と、そのドレインに電気的に接続された発光素子618とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0081】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0082】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成され、このような積層構造により発光素子618を形成している。第1の電極613と第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、EL層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。EL層616は、実施の形態1、2で示した発光層を有している。
【0083】
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0084】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0085】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0086】
以上のようにして、本発明を適用して作製した発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0087】
本実施の形態で示す発光装置は、実施の形態1、2で示した発光素子を有し、低駆動電圧で動作が可能である。そのため、消費電力を低減された発光装置を得ることができる。また、本実施の形態で示す発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【0088】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態3、4に示す発光装置をその一部に含む電子機器について説明する。本実施の形態で示す電子機器は、実施の形態2で示した発光素子を有する。本発明の発光素子は、低電圧の直流電圧で駆動電圧の低減されているため、消費電極の低減された電子機器を提供することが可能である。よって、従来の交流駆動の無機EL素子では実現が困難であった、バッテリー駆動の電子機器に本発明の発光装置を表示部に用いることが可能になる。
【0089】
本発明を適用して作製された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図12に示す。
【0090】
図12(A)は本実施の形態に係るテレビ装置の外観図である。テレビ装置は、筐体711、支持台712、表示部713、スピーカー部714、ビデオ入力端子715等を含む。このテレビ装置において、表示部713は、実施の形態2で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は駆動電圧が低いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部713も同様の特徴を有するため、テレビ装置は画質の劣化がなく、低消費電力化を図ることができる。さらに、劣化補償機能や電源回路の大幅な削減、および縮小ができるので、筐体711や支持台712の小型軽量化を図ることが可能である。
【0091】
図12(B)は本実施の形態に係るコンピュータの外観図である。コンピュータは、本体721、筐体722、表示部723、キーボード724、外部接続ポート725、ポインティングデバイス726等を含む。このコンピュータにおいて、表示部723は、実施の形態2で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、駆動電圧が低いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部723も同様の特徴を有するため、コンピュータ全体の低消費電力化を図ることができる。さらに、劣化補償機能や電源回路の大幅な削減、および縮小ができるので、本体721や筐体722の小型軽量化を図ることが可能である。
【0092】
図12(C)は本実施の形態に係る携帯電話の外観図である。携帯電話は、本体731、筐体732、表示部733、音声入力部734、音声出力部735、操作キー736、外部接続ポート737、アンテナ738等を含む。この携帯電話において、表示部733は、実施の形態2で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は駆動電圧が低いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部733も同様の特徴を有する。このような特徴により、携帯電話において、低消費電力化を図ることができる。さらに劣化補償機能や電源回路の大幅な削減、および縮小ができるので、本体731や筐体732の小型軽量化を図ることが可能である。
【0093】
図12(D)はカメラの外観図である。図12(D)に示すように、カメラは本体741、表示部742、筐体743、外部接続ポート744、リモコン受信部745、受像部746、バッテリー747、音声入力部748、操作キー749、接眼部750等を含む。このカメラにおいて、表示部742は、実施の形態2で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、駆動電圧が低いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部742も同様の特徴を有するため、カメラにおいて、低消費電力化が図ることができる。さらに、劣化補償機能や電源回路の大幅な削減、および縮小ができるので、本体741の小型軽量化を図ることも可能である。
【0094】
図13を用いて、音響再生装置の具体例としてカーオーディオについて説明する。図13は、カーオーディオの外観図であり、カーオーディオは本体771、表示部772、操作スイッチ773、774を含む。表示部772は実施の形態3の発光装置(パッシブマトリクス型)又は実施の形態4の発光装置(アクティブマトリクス型)で実現することができる。また、この表示部772はセグメント方式の発光装置で形成してもよい。いずれにしても、本発明に係る発光材料を用いることにより、車両用電源(12〜42V)を使って、低消費電力化を図りつつ、寿命が長い表示部を構成することができる。また、本実施の形態では車載用オーディオを示すが、携帯型や家庭用のオーディオ装置に用いてもよい。なお、表示部772は黒色の背景に白色、緑色、青色、橙色などの文字を表示することで消費電力を抑えられる。
【0095】
図14に、音響再生装置の一例としてデジタルプレーヤーの外観図を示す。図14に示すデジタルプレーヤーは、本体780、表示部781、メモリ部782、操作部783等を含んでいる。さらに、付属品としてイヤホン784等を含んでいる。なお、イヤホン784の代わりにヘッドホンや無線式イヤホンを用いることができる。表示部781として、実施の形態3の発光装置(パッシブマトリクス型)又は実施の形態4の発光装置(アクティブマトリクス型)で実現することができる。また、この表示部781はセグメント方式の発光装置で形成してもよい。いずれにしても、本発明に係る発光材料を用いることにより、二次電池(ニッケル−水素電池など)を使っても表示が可能であり、低消費電力化を図りつつ、寿命が長い表示部を構成することができる。さらに、発光素子が直流電圧で駆動できるため、表示部781への電源回路にインバータが不要である。
【0096】
また、メモリ部782は、ハードディスクや不揮発性メモリを用いている。例えば、記録容量が20〜200ギガバイト(GB)のNAND型不揮発性メモリを用い、操作部783を操作することにより、映像や音声(音楽)を記録、再生することができる。なお、表示部781は黒色の背景に白色、緑色、青色、橙色などの文字を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型のオーディオ装置において特に有効である。
【0097】
以上の様に、本発明を適用した発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明を適用することにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する電子機器を作製することが可能となる。
【0098】
また、本発明を適用した発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明を適用した発光素子を照明装置として用いる一態様を、図15を用いて説明する。
【0099】
図15は、本発明を適用した発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図15に示した液晶表示装置は、筐体501、液晶層502、バックライト503、筐体504を有し、液晶層502は、ドライバIC505と接続されている。また、バックライト503は、本発明の発光装置が用いられおり、端子506により、電圧が印加されている。
【0100】
本発明の発光装置は、面発光の発光装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、発光素子は薄型で低消費電力であるため、表示装置の薄型化、低消費電力化も可能となる。
【0101】
また、本発明を適用した発光装置は自動車、自転車、船などのヘッドライトとして用いることが可能である。図16は、本発明を適用した発光装置を自動車のヘッドライトとして用いた例である。図16(B)は図16(A)のヘッドライト1000の部分を拡大した断面図である。図16(B)において、光源1011として本発明の発光装置が用いられている。光源1011から出た光は、反射板1012により反射され、外部へ取り出される。図16(B)に示すように、複数の光源を用いることで、より明るくすることができる。また、図16(C)は、円筒形状に作製した本発明の発光装置を光源として用いた例である。光源1021からの発光は反射板1022により反射され、外部へ取り出される。
【0102】
図17は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図17に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、本発明の発光装置が用いられている。
【0103】
図18は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である。本発明の発光装置は大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化の照明装置として用いることが可能となる。このように、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた部屋に、図12(A)で説明したような、本発明に係るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場合、両装置は低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある映像を鑑賞することができる。また、低消費電力であることから常夜灯としても、本発明の発光装置は好適である。
【0104】
照明装置としては、図16、図17、図18で例示したものに限られず、住宅や公共施設の照明をはじめ、様々な形態の照明装置として応用することができる。このような場合において、本発明に係る照明装置は、発光媒体が薄膜状であるので、デザインの自由度が高いので、様々な意匠を凝らした商品を市場に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】理論計算に用いた発光素子の積層構造を説明する図(実施形態1)
【図2】理論計算に用いた発光素子の材料の分子構造を説明する図(実施形態1)
【図3】理論計算により得られた発光材料のコンダクタンスを示すグラフ(実施形態1)
【図4】理論計算により得られた発光材料のコンダクタンスを示すグラフ(実施形態1)
【図5】薄膜型および分散型の発光素子の断面構造を示す図(実施形態2)
【図6】本発明の発光装置を説明する図(実施形態3)
【図7】本発明の発光装置を説明する図(実施形態3)
【図8】本発明の発光装置を説明する図(実施形態3)
【図9】本発明の発光装置を説明する図(実施形態3)
【図10】本発明の発光装置を説明する図(実施形態3)
【図11】本発明の発光装置を説明する図(実施形態4)
【図12】本発明の電子機器を説明する図(実施形態5)
【図13】本発明の電子機器を説明する図(実施形態5)
【図14】本発明の電子機器を説明する図(実施形態5)
【図15】本発明の照明装置を説明する図(実施形態5)
【図16】本発明の照明装置を説明する図(実施形態5)
【図17】本発明の照明装置を説明する図(実施形態5)
【図18】本発明の照明装置を説明する図(実施形態5)
【符号の説明】
【0106】
100 基板
101 第1の電極
102 第2の電極
103 発光層
110 基板
111 第1の電極
112 第2の電極
113 発光層
113a 発光材料
113b バインダ
410 基板
412 対向基板
414 表示部
416 第1の電極
418 第2の電極
420、422 フレキシブル配線基板
424 隔壁層
426 EL層
428 補助電極
430 色変換層
432 充填材
452 第1の電極
453 絶縁層
454 隔壁層
455 EL層
456 第2の電極
501 筐体
502 液晶層
503 バックライト
504 筐体
505 ドライバIC
506 端子
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 EL層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
711 筐体
712 支持台
713 表示部
714 スピーカー部
715 ビデオ入力端子
721 本体
722 筐体
723 表示部
724 キーボード
725 外部接続ポート
726 ポインティングデバイス
731 本体
732 筐体
733 表示部
734 音声入力部
735 音声出力部
736 操作キー
737 外部接続ポート
738 アンテナ
741 本体
742 表示部
743 筐体
744 外部接続ポート
745 リモコン受信部
746 受像部
747 バッテリー
748 音声入力部
749 操作キー
750 接眼部
771 本体
772 表示部
773 操作スイッチ
780 本体
781 表示部
782 メモリ部
783 操作部
784 イヤホン
1000 ヘッドライト
1011 光源
1012 反射板
1021 光源
1022 反射板
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
3002 テレビ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材として硫化物でなる無機化合物と、ドナー元素を少なくとも含む発光材料であって、前記無機化合物よりも100倍以上高い電気伝導度を示すことを特徴とする発光材料。
【請求項2】
母材として硫化物でなる無機化合物と、ドナー元素を少なくとも含む発光材料であって、当該ドナー元素によるドナー準位と伝導帯下端とのエネルギーギャップが0.3eV以内であることを特徴とする発光材料。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記無機化合物は硫化亜鉛であり、前記ドナー元素は、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)のいずれかであることを特徴とする発光材料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記無機化合物は立方晶であることを特徴とする発光材料。
【請求項5】
母材が硫化亜鉛(ZnS)であり、少なくともアルミニウム(Al)を含み、アルミニウムの濃度は硫化亜鉛に対して3mol%以上であることを特徴とする発光材料。
【請求項6】
母材が硫化亜鉛であり、少なくともガリウム(Ga)を含み、ガリウムの濃度は硫化亜鉛に対して9mol%以上であることを特徴とする発光材料。
【請求項7】
母材が硫化亜鉛であり、少なくともインジウム(In)を含み、インジウムの濃度は硫化亜鉛に対して8mol%以上であることを特徴とする発光材料。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項において、前記硫化亜鉛は立方晶であることを特徴とする発光材料。
【請求項9】
一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた発光層を有し、 前記発光層は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光材料を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項10】
一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた発光層を有する発光装置であって、 前記発光層は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光材料を含むことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−7755(P2008−7755A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140147(P2007−140147)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】