説明

発光材料

本発明は、補助配位子とも呼ばれる1価イオン性キレート配位子(L)を含んだ、新規のオルトメタル化遷移金属錯体[C^N]2MLを含む発光材料に関する。補助配位子が、十分な電子供与特性を有する置換基を帯びた置換芳香環を含む場合、前記配位子(L)は、発光プロセスに有利にも関与し、発光を高エネルギーに有意に移行させ(ブルーシフト(blue-shift))、錯体[C^N]2MLの発光効率のかなりの改善を可能にすることが、意外にも発見された。本発明の更なる目的は、前記発光材料および前記発光材料を含む有機発光素子の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料、前記材料の使用、および電気エネルギーを光に変換することの可能な発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、様々な表示素子、特に有機材料からのエレクトロルミネセンス(EL)に基づくものの研究および開発が、活発に継続されてきた。
【0003】
フォトルミネセンス、即ち光吸収、および励起状態の輻射減衰による緩和の結果としての活性材料からの発光と対照的に、エレクトロルミネセンス(EL)は、基板への電界の印加がもたらす光の非熱的生成である。後者の場合、励起は、外部回路の存在下で有機半導体に注入される逆符号の電荷キャリア(電子および正孔)の再結合によって達成される。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)の簡単なプロトタイプ、即ち単層OLEDは、通常、2つの電極にはさまれる活性有機材料の薄膜から構成され、その1つは、有機層からの発光を観察するために半透明であることが必要で、普通は、インジウム錫酸化物(ITO)被覆のガラス基板を陽極に使用する。
【0005】
外部電圧がこの2つの電極に印加されると、電荷キャリア、即ち陽極の正孔および陰極の電子が、適用される有機材料によって決まる特定の閾値電圧を超えて、有機層に注入される。電界の存在下では、電荷キャリアは、活性層を通って移動し、逆に帯電した電極に達すると非輻射的に放電する。しかし、正孔および電子が、有機層を通って押し流される間にお互いに遭遇すると、励起された1重項(反対称的)および3重項(対称的)状態、いわゆる励起子が形成される。従って、分子励起状態(または励起子)の減衰を原因として、有機材料中で光が発生する。OLEDにおける電気的励起によって形成される3重項励起子3個毎に、反対称状態(1重項)励起子が、1個だけ作り出される。
【0006】
多くの有機材料が、1重項励起子からの蛍光(即ち、対称許容プロセスからのルミネセンス)を示し、このプロセスは、擬対称性の状態間で起こるので、非常に効率が良くなり得る。逆に、励起子の対称性が、基底状態のそれと異なっていると、励起子の輻射緩和が許されず、ルミネセンスが遅れかつ非効率的になる。通常、基底状態は反対称性なので、3重項からの減衰が、対称性を破り、従って、このプロセスが許されず、ELの効率は、非常に低くなる。従って、3重項の状態に含まれるエネルギーは、ほとんど浪費される。
【0007】
対称非許容プロセスからのルミネセンスは、燐光として知られている。特徴として、蛍光が発してから急速に減衰するのとは対照的に、燐光は、遷移の可能性が低いために励起後数秒間も持続できる。
【0008】
しかし、3重項からの効率的な室温燐光を示すごく少数の有機材料が、確認されている。
【0009】
燐光材料をうまく利用することは、有機エレクトロルミネセンス素子に関して大いに有望である。例えば、燐光材料を利用することの利点は、燐光素子として(部分的に)3重項に基づいている励起子(EL内で正孔および電子の組合せによって形成される)すべてが、エネルギー移動およびルミネセンスに関与し得ることである。このことは、3重項状態のホストから1重項状態のゲストへエネルギー移動を可能にする3重項状態のホストからの燐光によって、燐光発光それ自体を介するか、または燐光のホストもしくは蛍光のゲストにおけるドーパントとして蛍光プロセスの効率を改善するために燐光材料を使用するかのどちらかで達成され得る。
【0010】
いずれにせよ、発光材料が、OLEDにおける有色層として使用できるように、赤、緑、青の三原色の1つに対応する選択されたスペクトル領域近辺に集中する比較的狭い帯域でエレクトロルミネセンス発光を提供することが重要である。
【0011】
発光素子の特性を改善するための手段として、オルトメタル化イリジウム錯体からの発光を利用した緑色発光素子が報告されている。Ir(ppy)3、イリジウム(III)の2-フェニルピリジン付加トリスオルトメタル化錯体。Appl. Phys. lett.、1999、vol.75、4頁である。
【0012】
US2002034656A(THOMPSON MARK E)21/03/2002は、有機LEDにおいて燐光発光物質として使用される、好ましくは化学式L2MXの化合物である幾つかの有機金属錯体を開示しており、式中、LおよびXは、異なる2座配位子であり、Xは1価アニオン性2座配位子であり、Lは、この配位子のsp2混成炭素およびヘテロ原子を含むLの原子を介してMに配位し、Mは金属で、通常はIrである。前記文献における配位子Lの例は、特にフェニルピリジン配位子で、補助配位子であるXより高度に発光プロセスに関与すると主張されている。具体的に、この文献は、特に次の式を有する化合物を開示している。
【0013】
【化1】

【0014】
この錯体は、サリチルアニリド基のジアリールアミン置換基上の捕獲部位のために正孔トラップとして作用すると主張されており、ルミネセンスのプロセスには関与していないと報告されている。
【0015】
しかし、前述した従来技術の発光材料は、緑色に限られるので、OLED活性化合物として適用できる範囲は狭い。従って、すべての原色近辺、特に青色領域に集中した狭い発光帯域を有する光を発することが可能な発光材料の開発が、望まれてきた。
【特許文献1】US2002034656A
【非特許文献1】Appl. Phys. lett.、1999、vol.75、4頁
【非特許文献2】「Inorg.Chem.」、No.30、1685頁(1991)
【非特許文献3】「Inorg.Chem.」、No.27、3464頁(1988)
【非特許文献4】「Inorg.Chem.」、No.33、545頁(1994)
【非特許文献5】「Inorg.Chem.Acta」、No.181、245頁(1991)
【非特許文献6】「J.Organomet.Chem.」、No.35、293頁(1987)
【非特許文献7】「J.Am.Chem.Soc.」、No.107、1431頁(1985)
【非特許文献8】S.Sprouse、K.A.King、P.J.Spellane、R.J.Watts、J.Am.Chem.Soc.、1984、106、6647〜6653頁
【非特許文献9】M.E.Thompson等、Inorg.Chem.、2001、40(7)、1704頁
【非特許文献10】M.E.Thompson等、J.AM.Chem.Soc.、2001、123(18)、4304〜4312頁
【非特許文献11】Nonoyama Bull.Chem.Soc.Jpn.、No.47、767頁(1974)
【非特許文献12】Cuperly,D.;Gros,P.;Fort,Y.J.Org.Chem.、2002、67、238〜241頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、以下に詳述するように補助配位子を具備するオルトメタル化錯体を含む発光材料を提供することが、本発明の第1の目的である。
【0017】
本発明の更なる目的は、前記発光材料を含む発光層および前記発光材料を含む有機発光素子である。
【0018】
本発明の第1の目的は、式(I)の錯体を含む発光材料を提供することである。
【0019】
【化2】

【0020】
式中、Mは、原子番号が少なくとも40、好ましくは8〜12族、より好ましくはIrまたはPt、最も好ましくはIrである遷移金属を表し、
E1は、追加の芳香族部分または非芳香環と場合によっては縮合している5員または6員環芳香環または芳香族複素環の形成に必要な非金属原子群であって、前記芳香環または芳香族複環が1つまたは複数の置換基を場合によっては有し、E2を含む環と縮合構造を場合によっては形成しており、sp2混成炭素を介して金属Mに配位している、非金属原子群を表し、
E2は、追加の芳香族部分または非芳香環と場合によっては縮合している5員または6員環芳香族複素環の形成に必要な非金属原子群であって、前記芳香族複素環が1つまたは複数の置換基を場合によっては有し、E1を含む環と縮合構造を場合によっては形成しており、sp2混成窒素を介して金属Mに配位している、非金属原子群を表し、
Lは、補助配位子とも呼称され、少なくとも1つの酸素原子および少なくとも1つのsp2混成窒素原子を通して金属Mに配位しており、少なくとも1つの芳香環および/または芳香族複素環を含む、1価イオン性キレート配位子であって、前記環が、-Cl、-F、-Br等のハロゲン、-OR0、-SR0、-N(R0)2、-P(OR0)2および-P(R0)2からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、式中、R0が、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5(nが、1〜8の整数である)を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルである、1価イオン性キレート配位子であり、好ましくは、前記環は、-OR0および-N(R0)2から選択される少なくとも1つの置換基を含み、式中、R0は、上記の意味を有する。
【0021】
E1およびE2部分を含み、上記の式(I)で特定されるように金属に結合する2つの1価アニオン性配位子を、一般的にオルトメタル化配位子(以下、C^N配位子)と表す。
【0022】
補助配位子とも呼ばれる1価イオン性キレート配位子(L)が、十分な電子供与特性を有し、上記に定義したような置換基を有する置換芳香環を含む場合、前記配位子(L)は、好都合にも発光プロセスに関与し、高エネルギー(ブルーシフト)へ発光を有意に移行させ、上記の式(I)の錯体[C^N]2MLの発光効率を相当に改善できることが意外にも発見された。
【0023】
更に、上記に特定したような置換された1価イオン性キレート配位子(L)によって、好都合なことに430nmおよび500nmの間、つまり青色発光に対応する発光最大値を有する、上記の式(I)の[C^N]2ML錯体を含む発光材料を得ることが可能である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、上に詳述したような5員または6員環芳香環または芳香族複素環の形成に必要な上記の式(I)における非金属原子群E2は、前記環において、1つまたは複数の-NRxRyタイプの置換基を含み、前記環は-NRxRyと異なる1つまたは複数の置換基を場合によっては有し、E1を含む環と縮合構造を場合によっては形成する。式中、
RxおよびRyは、相互におよび出現毎に等しいかまたは異なっており、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル基、あるいは1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル基から選択される。
【0025】
従って、本発明のこの実施形態による発光材料は、以下の式(I-bis)の錯体を含む。
【0026】
【化3】

【0027】
式中、E1、E2、M、L、RxおよびRyは、上記定義と同じ意味を有し、wは、1および4の間の整数である。
【0028】
特に、この上の式(I)に適合する錯体の適切な例は、以下である。
【0029】
【化4A】

【0030】
【化4B】

【0031】
【化4C】

【0032】
式中、LおよびMは、上記定義と同じ意味を有する。
【0033】
好ましくは、本発明の発光材料は、以下の式(II)に適合する錯体を含む。
【0034】
【化5】

【0035】
式中、
Lは、上記定義と同じ意味を有し、
Xは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、S、またはSeからなる群から選択される基であり、好ましくは、Xは、-CH=CH-、-CR=CH-またはSから選択される基であり、最も好ましくは、Xは、-CH=CH-であり、
Yは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、S、またはSeからなる群から選択される基であり、好ましくは、Yは、-CH=CH-、-CR=CH-またはSから選択される基であり、最も好ましくは、Yは、-CH=CH-であり、
Rは、出現毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基またはジアルキルアミノ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族ラジカル-Rで置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基Rは、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
R1およびR2は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、それぞれHまたは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり、
aは、0〜4の整数であり、
bは、0〜4の整数である。
【0036】
本発明の実施形態によれば、本発明の好ましい発光材料は、以下の式(II-bis)の錯体を含む。
【0037】
【化6】

【0038】
式中、L、Rx、Ry、X、Y、R、a、bおよびwは、上記定義と同じ意味を有する。
【0039】
より好ましくは、1価イオン性キレート配位子(L)は、次の式(III)〜(VII)またはそれらの互変異性体によって表される構造体から選択される。
【0040】
【化7】

【0041】
式中、
Zは、-Cl、-F、-Br等のハロゲン、-OR0、-SR0、-N(R0)2、-P(OR0)2および-P(R0)2からなる群から選択される置換基で、式中、R0は、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7、を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルで、nは、1〜8の整数であり、好ましくは、Zは、-OR0および-N(R0)2から選択され、式中、R0は、上記の意味を有する。
Jは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、SまたはSeからなる群から選択される基であり、
R'、R*、R●は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族ラジカル-R'で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基R'は、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
R"、R1およびR2は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、それぞれにHまたは1〜20個の炭素原子を有する、置換されていてもよい脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり、
cは、1〜3の整数であり、
dは、0〜4の整数である。
【0042】
本発明の目的のために、互変異性体という用語は、平衡状態で存在する2つ以上の構造異性体の1つを示すことを意図しており、例えば、電子および/または水素原子の同時移行によって1つの異性体形から他方へ容易に変換される。
【0043】
上述(式III〜VII)の1価イオン性キレート配位子(L)を用いて、良い結果が得られており、式中、基Zは、-OR0または-N(R0)2で、式中、R0は、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルで、nは、1〜8の整数である。
【0044】
好ましくは、1価イオン性キレート配位子(L)は、上記の構造体(III)、(IV)および(V)からなる群から選択される。
【0045】
最も好ましくは、1価イオン性キレート配位子(L)は、上記の式(III)または(IV)に対応している。
【0046】
本発明に特に適した発光材料は、以下の式(VIII)または(IX)の錯体を含む。
【0047】
【化8】

【0048】
式中、R'およびdは、上記定義と同じ意味を有する。
Qは、-OR0または-N(R0)2で、式中、R0は、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルで、nは、1〜8の整数である。
c'は、1および3の間の整数である。
R#は、出現する毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基またはジアルキルアミノ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-(R1およびR2は、それぞれHまたは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である)と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族ラジカル-R#で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基R#は、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
a'およびb'は、互いに等しいかまたは異なっており、独立に0〜4の間の整数であり、
R§は、Hおよび1〜20個の炭素原子を有する、置換されていてもよい脂肪族または芳香族炭化水素基から選択される。
【0049】
本発明の実施形態によれば、特に適した前記発光材料は、以下の式(VIII-bis)または(IX-bis)の錯体を含む。
【0050】
【化9】

【0051】
式中、a'、b'、d、w、R#、Rx、Ry、R'は、上記に定義したような意味を有する。
【0052】
良い結果をもたらした発光材料は、以下の式(X)に適合するものである。
【0053】
【化10】

【0054】
式中、
Aは、H、-RH、-ORH、-N(RH)2から選択され、RHは、C1〜C20のアルキルまたはアルコキシ基で、好ましくはメチル基であり、アリールまたはヘテロアリール基は、4〜14個の炭素原子を有し、好ましくはカルバゾール部分の次式である。
【0055】
【化11】

【0056】
Bは、-ORH'および-N(RH")2から選択され、RH'は、C1〜C20のアルキルまたはアルコキシ基で、好ましくは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3または-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3であり、nは、1〜8の整数で、好ましくはn=1であり、RH"は、C1〜C20のアルキル基で、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチル基である。
【0057】
以下の式(XI)〜(XVI)、またはそれらの2種以上の混合物から選択された錯体を含む発光材料で、優れた結果が得られた。
【0058】
【化12A】

【0059】
【化12B】

【0060】
【化12C】

【0061】
式(XI)〜(XVI)の錯体は、補助配位子として置換ピコリン酸部分を含み、それらの化学的安定性の故にも本発明の目的のために特に好都合であって、分解または劣化の恐れも全くなしに更なる加工技術においてそれらの取り扱いおよび処理を可能にする。
【0062】
上記の式(I)の錯体、即ち上記に特定したような2個のオルトメタル化配位子(C^N配位子)および補助配位子(L)を含む金属錯体の合成は、任意の既知の方法によっても達成され得る。上記の式(I)の錯体の調製に適する合成法の詳細は、「Inorg.Chem.」、No.30、1685頁(1991);「Inorg.Chem.」、No.27、3464頁(1988);「Inorg.Chem.」、No.33、545頁(1994);「Inorg.Chem.Acta」、No.181、245頁(1991)、「J.Organomet.Chem.」、No.35、293頁(1987)、「J.Am.Chem.Soc.」、No.107、1431頁(1985)で、特に開示されている。
【0063】
通常、合成は、次のスキームに従って2つのステップで行われる。
ステップ1:
【0064】
【化13】

【0065】
ステップ2:
【0066】
【化14】

【0067】
式中、X°は、ハロゲンで、好ましくはClであり、M、L、C^Nは、上記に定義したような意味を有する。
【0068】
オルトメタル化配位子の酸性型(H-C^N)および補助配位子の酸性型(L-H)は、商業的に入手でき、または公知の有機合成反応経路によって容易に合成することができる。
【0069】
遷移金属が、イリジウムならば、IrCl3・H2O等の3ハロゲン化イリジウム(III)化合物、M°3IrX°6等の6ハロゲン化イリジウム(III)化合物であって、式中、X°はハロゲンで、好ましくはClかつM°はアルカリ金属で、好ましくはKである化合物、およびM°2IrX°6等の6ハロゲン化イリジウム(IV)化合物であって、式中、X°はハロゲンで、好ましくはClかつM°はアルカリ金属で、好ましくはKである化合物(以後、ハロゲン化Ir前駆物質)を、上記の式(I)の錯体を合成するための出発物質として使用することができる。
【0070】
従って、[C^N]2Ir(μ-X°)2Ir[C^N]2錯体(式XVIII、式中M=Ir)は、X°がハロゲンであってClが好ましいが、前記Irハロゲン化前駆物質および適当なオルトメタル化配位子から文献の手順によって調製することができる(S.Sprouse、K.A.King、P.J.Spellane、R.J.Watts、J.Am.Chem.Soc.、1984、106、6647〜6653頁;M.E.Thompson等、Inorg.Chem.、2001、40(7)、1704頁;M.E.Thompson等、J.AM.Chem.Soc.、2001、123(18)、4304〜4312頁)。
【0071】
反応は、好都合なことに、過剰な中性型オルトメタル化配位子(H-C^N)を使用して行われ、高沸点溶媒が好ましい。
【0072】
本発明の目的のために、高沸点溶媒という用語は、少なくとも80℃、好ましくは少なくとも85℃、より好ましくは少なくとも90℃の沸点を有する溶媒を表すことを意図している。適切な溶媒は、例えば、エトキシエタノール、グリセロール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等であり、前記溶媒は、そのままあるいは水と混合して使用することができる。
【0073】
場合により、反応を、適切なブレーンステッド塩基の存在下で行うことができる。
【0074】
補助配位子の酸性型(L-H)と前記[C^N]2Ir(μ-X°)2Ir[C^N]2錯体との反応によって、最終的に[C^N]2IrL錯体を得ることができる。反応、
[C^N]2Ir(μ-X°)2Ir[C^N]2+L-H→[C^N]2IrL+H-X°
を、高沸点溶媒中または低沸点溶媒中で行うことができる。
【0075】
適切な高沸点溶媒は、特に、エトキシエタノール、グリセロール、DMF、NMP、DMSO等のアルコールであり、前記溶媒は、そのまままたは水と混合して使用することができる。
【0076】
反応を、炭酸金属塩、特に炭酸カリウム(K2CO3)、金属水素化物、特に水素化ナトリウム(NaH)、金属エトキシドまたは金属メトキシド、特にNaOCH3、NaOC2H5等のブレーンステッド塩基の存在下で行うことが好ましい。
【0077】
適切な低沸点溶媒は、特に塩化炭化水素、特に塩化メタン類(例えば、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3)であり、ジクロロメタンが好ましい。
【0078】
場合によっては、配位子Lの前駆物質を上記に定義した合成の第2ステップで使用することができ、前記第2ステップでの反応性媒体中で有利に反応して、目的のL配位子を生じる。
【0079】
本発明の別の目的は、有機発光素子の発光層における上記の発光材料の使用である。
【0080】
特に、本発明は、有機発光素子において発光層として機能し、ホスト層におけるドーパントとしての上記の発光材料の使用に関する。
【0081】
発光材料をホスト層でドーパントとして使用するのであれば、一般的にはホストおよびドーパントの総重量に対して、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、および一般的には最大でも25重量%、好ましくは最大でも20重量%、より好ましくは最大でも15重量%の量で使用する。
【0082】
本発明は、発光層(EML)を含む有機発光素子(OLED)も対象とし、前記発光層は、ホスト材料(ただし、上記の発光材料がドーパントとして存在することが好ましい)を場合によっては伴い、上記の発光材料を含み、前記ホスト材料は素子構造全体に電圧が印加される時に、ルミネセンスを発するよう特に構成される。
【0083】
OLEDは、一般的に以下を含む。
ガラス基板、
陽極、インジウム錫酸化物(ITO)陽極等の一般的に透明な陽極、
正孔輸送層(HTL)、
発光層(EML)、
電子輸送層(ETL)、
陰極、一般的にAl層等の金属陰極。
【0084】
正孔伝導発光層のために、発光層と電子輸送層との間に励起子遮断層、特に正孔遮断層(HBL)を有することができる。電子伝導発光層のために、発光層と正孔輸送層との間に励起子遮断層、特に電子遮断層(EBL)を有することができる。発光層は、正孔輸送層(励起子遮断層が、陽極またはその近くにある場合)または電子輸送層(励起子遮断層が、陰極またはその近くにある場合)と同一になることがある。
【0085】
発光層をホスト材料で形成することができ、上記の発光材料がゲストとして存在するかまたは発光層が本質的に上記の発光材料自体からなっていてもよい。前者の場合は、ホスト材料が、置換トリアリールアミンの群から選択される正孔輸送材料であってよい。発光層を、発光材料がゲストとして存在しているホスト材料で形成することが好ましい。ホスト材料は、金属キノクソレート(metal quionoxolate)(例えば、アルミニウムキノレート(Alq3)、リチウムキノレート(Liq))、オキサジアゾール、およびトリアゾールの群から選択される電子輸送材料でよい。ホスト材料の例としては4,4'-N,N'-ジカルバゾールビフェニル[「CBP」]があり、次式を有している。
【0086】
【化15】

【0087】
場合によっては、発光層は、前記ホスト材料中にドーパントとして存在し、双極子モーメントを有する極性分子を含有していてもよく、一般的に、ドーパントとして使用される上記の前記発光材料がルミネセンスを発するときに放出される光の波長に影響を及ぼす。
【0088】
電子輸送材料から形成された層は、有利には、発光材料および(場合によっては)ホスト材料を含む発光層に電子を輸送するために使用される。電子輸送材料は、金属キノクソレート(例えば、Alq3、Liq)、オキサジアゾールおよびトリアゾールの群から選択される電子輸送基質であってよい。電子輸送材料の例としては、次式[「Alq3」]のトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムがある。
【0089】
【化16】

【0090】
正孔輸送材料から形成される層は、有利には、上記の発光材料および(場合によっては)ホスト材料を含む発光層に正孔を輸送するために使用される。正孔輸送材料の例としては、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル[「α-NPD」]がある。
【0091】
【化17】

【0092】
ルミネセンス層(「ルミネセンス帯」)内に励起子を閉じ込めるための励起子遮断層(「障壁層」)の使用は、大いに好ましい。正孔輸送ホストのために、遮断層を発光層と電子輸送層との間に設けることができる。このような障壁層用の材料の例としては、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(バソクプロインまたは「BCP」とも呼ばれる)があり、次式を有する。
【0093】
【化18】

【0094】
OLEDは、図1に図示するように多層構造を有していることが好ましく、図中では、1は、ガラス基板であり、2は、ITO層であり、3は、α-NPDを含むHTL層であり、4は、ホスト材料としてのCBPおよびドーパントとして上記に定義してホストにドーパントを加えた総重量に対して約8重量%の量の発光材料を含むEMLであり、5はBCPを含むHBLであり、6はAlq3を含むETLであり、7はAl層の陰極である。
【0095】
本発明の幾つかの実施例を以下に報告するが、その目的は、例示するだけであって、本発明自体の範囲を制限するものではない。
【0096】
NMR分光測定
【0097】
NMRのスペクトルは、Oxford NMR分光計またはVarian Mercury Plus分光計を使用し、どちらも300MHzで作動させて記録した。
【0098】
UV-VIS分光測定
【0099】
紫外可視スペクトルをShimadzu UV-3101PC型(紫外可視近赤外分光光度計)で測定した。別段の指定がない限り、エタノール溶液中で0.01〜0.02mMの濃度で紫外可視スペクトル測定を行った。
【0100】
フォトルミネセンス分光測定
【0101】
フォトルミネセンスのスペクトルをJASCO FP-750型蛍光分光光度計で測定した。別段の指定がない限り、室温でエタノール溶液中で375nmの励起波長を使用してフォトルミネセントスペクトルの測定(0.001〜0.002mMの濃度で)を行った。発光量子収率を、対照としてfac-Ir(tpy)3を使用して決定した。
【0102】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
【0103】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、シリカプレートを使用して実施した。
【実施例1】
【0104】
(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジン(d-Fppy)の合成
以下に組み込んだ反応スキームに従って、d-Fppyを合成した。
【0105】
【化19】

【0106】
凝縮器を装備した250mlの一口丸底フラスコ中に、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(Aldrich Chem.より市販、4g、25.3mmol)、Ba(OH)2・8H2O(Aldrich Chem.より市販、24g、76.0mmol)、およびPd(PPh3)4(TCI Co.より市販、1.83g、1.6mmol)を入れた。反応フラスコは、排気してArガスを3回満たした。1,4-ジオキサン(90ml)、H2O(30ml)、および2-ブロモ-4-メチルピリジン(TCI Co.より市販、2.26ml、20.3mmol)を加えた。反応混合物を、Arガスの下で24時間還流し、室温まで冷却した。ジオキサンを除去し、内容物をCH2Cl2(150ml)中に注ぎ込み、濾紙を通して沈殿物を除去し、有機層を1M NaOH水溶液(2×150ml)およびNaCl飽和水溶液(150ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒の蒸発後に、液相クロマトグラフィー(シリカゲル、1:15のEtOAc/n-ヘキサンで溶出)による生成物の精製で、油としてd-Fppy(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジン)2.91g(70%)を得た。
TLC Rf=0.51 (1:4 EtOAc/n-ヘキサン); 1H NMR (300MHz, CDCl3): δ 2.43 (s, 3H)、7.11〜7.20 (m, 3H)、7.63 (s, 1H)、8.08 (q, 1H) 8.53 (d, 1H)。
【実施例2】
【0107】
d-Fppyを伴うシクロメタル化Ir(III)-μ-クロロ架橋二量体[(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2]の合成
シクロメタル化Ir(III)μ-クロロ架橋二量体、[(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2]を、以下の反応スキームに図示したように、Nonoyama Bull.Chem.Soc.Jpn.、No.47、767頁(1974)によって報告された方法に従って合成した。
【0108】
【化20】

【0109】
凝縮器を装備した100mlの一口丸底フラスコ中に、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジン(2.1g、10.3mmol)、IrCl3・3H2O(Across Organicsより市販、1.80g、5.2mmol)、2-エトキシエタノール(Aldrich Chem.より市販、22.5ml)を入れ、最後にH2O(7.5ml)を加えた。フラスコは、排気してArガスを3回満たした。反応混合物を、Arガスの下で15時間還流し、室温まで冷却した。有色の沈殿物を濾別し、水で洗浄した後でエタノールで4回洗浄した(収率80%)。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.67 (s, 12H)、5.30〜5.34 (m, 4H)、6.34 (t, 4H)、6.60 (d, 4H)、8.14 (s, 4H)、8.89 (q, 4H)。元素分析: 実測値 C 45.57, H 2.40 N 4.37。計算値: C 45.32, H 2.54, N 4.40。
【実施例3】
【0110】
[イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')-4-(2-エトキシエトキシ)ピコリネート][Me(dFppy)2Ir(EtOPic)](式XI)の合成
次の反応スキームに従って、溶媒2-エトキシエタノール中での(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2と4-クロロピコリン酸との反応からMe(dFppy)2Ir(EtOPic)を得た。
【0111】
【化21】

【0112】
凝縮器を装備した50mlの一口丸底フラスコ中に、[(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2]錯体(0.182g、0.14mmol)、4-クロロピコリン酸(TCI Co.、0.057g、0.36mmol)、炭酸ナトリウム(0.16g、1.86mmol)を入れ、最後に2-エトキシエタノール(Aldrich Chem.、12ml)を加えた。フラスコは、排気してArガスを3回満たした。反応混合物を、Arガスの下で24時間還流し、室温まで冷却した。2-エトキシエタノールを減圧下で除去した。生成物をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。淡黄色の残渣を、シリカゲル上を流すクロマトグラフィー(1:4:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール)によって精製した。結晶化(塩化メチレン、n-ヘキサン)による生成物の更なる精製で、0.041g(収率70%)のMe(dFppy)2Ir(EtOPic)[イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')4-(2-エトキシエトキシ)ピコリネート](XI)を淡黄色の結晶として得た。
TLC Rf=0.16 (1:1:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール); 1H NMR (300MHz, CDCl3): δ 1.19〜1.24 (t, 3H)、2.54 (s, 6H)、3.53〜3.60 (q, 2H)、3.78〜3.81 (t, 2H)、4.22〜4.26 (q, 2H)、5.58〜5.62 (dd, 1H)、5.79〜5.83 (dd, 1H)、6.36〜6.44 (m, 2H)、6.78〜6.80 (dd, 1H)、6.91〜6.94 (dd, 1H)、6.98〜7.01 (dd, 1H)、7.27〜7.29 (d, 1H)、7.48〜7.50 (d, 1H)、7.82〜7.83 (d, 1H)、8.02 (s, 1H) 8.09 (s, 1H)、8.51〜8.53 (d, 1H)。
【0113】
図2は、実施例3(式XI)のオルトメタル化錯体の吸収(A)および発光(E)スペクトルを図示[横軸は波長nm;縦軸は強度(任意の単位)]し、(λmax)464nmで発光最大値を示し、量子収率(F)が0.69である。
【0114】
Me(dFppy)2Ir(EtOPic)(XI)のルミネセンススペクトルは、464nmで新しく強力な第2の発光ピークの出現を示し、青色領域での発光部分は、64%にまで増加した。ルミネセンスの主要部分は、非常に高い発光量子収率(Φ=0.69)で500nmを下回る青色領域に現れた。
【実施例4】
【0115】
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')-4-ジブチルアミノピコリネート[Me(dFppy)2Ir(dbNPic)](式XII)の合成
次の反応スキームに従って、2-エトキシエタノール中でNa2CO3の存在下で(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2と4-クロロピコリン酸とn-ブチルアミンとの反応からMe(dFppy)2Ir(dbNPic)を得た。
【0116】
【化22】

【0117】
凝縮器を装備した50mlの一口丸底フラスコ中に、[(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2]錯体(0.165g、0.13mmol)、4-クロロピコリン酸(TCI Co.、0.051g、0.32mmol)、炭酸ナトリウム(0.14g、1.69mmol)およびn-ジブチルアミン(Aldrich Chem.、14ml)を入れ、最後に2-エトキシエタノールを加えた。フラスコは、排気してArガスを3回満たした。反応混合物を、Arガスの下で24時間還流し、室温まで冷却した。n-ジブチルアミンおよび溶媒を蒸発させて除去した。生成物をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。淡黄色の残渣をシリカゲル上を流すクロマトグラフィー(1:4:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール)によって精製した。結晶化(塩化メチレン、n-ヘキサン)による生成物の更なる精製で、0.038g(収率70%)のMe(dFppy)2Ir(dbNPic)(XII)[イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')4-ジブチルアミノピコリネート]を淡黄色の結晶として得た。
TLC Rf=0.44 (1:1:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール); 1H NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.91〜0.96 (t, 6H)、1.25〜1.37 (m, 4H)、1.53〜1.58 (m, 4H)、2.53〜2.54 (d, 6H)、3.27〜3.32 (dd, 4H)、5.59〜5.63 (dd, 1H)、5.79〜5.83 (dd, 1H)、6.30〜6.44 (m, 2H)、6.35〜6.39 (q, 1H) 6.80〜6.83 (dd, 1H)、7.00〜7.03 (dd, 1H)、7.18〜7.20 (d, 1H)、7.43〜7.47 (d, 1H)、7.45〜7.46 (d, 1H)、8.02 (s, 1H)、8.07 (s, 1H)、8.56〜8.58 (d, 1H)
【0118】
図3は、実施例4(式XII)のオルトメタル化錯体の吸収(A)および発光(E)スペクトルを図示[横軸は波長nm;縦軸は強度(任意の単位)]し、(λmax)466nmで発光最大値を示し、量子収率(F)が0.57である。
【0119】
補助ピコリナト配位子上に強力な電子供与性のジアルキルアミノ基を有する、Me(dFppy)2Ir(dbNPic)は、466nmにそれのルミネセンススペクトルの発光ピークを有することが示され、ルミネセンス強度のおおよそ66%が、500nmを下回る青色領域に現れることが見出された。
【実施例5】
【0120】
(比較)
Me(dFppy)2Ir(Pic)[イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')ピコリネート]の合成
次の反応スキームに従って、Me(dFppy)2Ir(Pic)を、溶媒2-エトキシエタノール中での(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2と2-ピコリン酸との反応から得た。
【0121】
【化23】

【0122】
凝縮器を装備した50mlの一口丸底フラスコ中に、[(dFppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(dFppy)2]錯体(0.28g、0.22mmol)、2-ピコリン酸(Aldrich Chem.、0.068g、0.55mmol)、炭酸ナトリウム(0.24g、2.86mmol)を入れ、最後に2-エトキシエタノール(Aldrich Chem.、18ml)を加えた。フラスコは、排気してArガスを3回満たした。反応混合物を、Arガスの下で20時間還流し、室温まで冷却した。2-エトキシエタノールを減圧下で除去し、生成物をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。淡黄色の残渣をシリカゲル上を流すクロマトグラフィー(1:4:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール)によって精製した。結晶化(塩化メチレン、n-ヘキサン)による生成物の更なる精製で、0.036g(収率75%)のMe(dFppy)2Ir(Pic)[イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-メチルピリジナト-N,C2')ピコリネート]を淡黄色の結晶として得た。
TLC Rf=0.21 (1:1:0.1 EtOAc/n-ヘキサン/メタノール); 1H NMR (300MHz, CDCl3): δ 2.52 (s, 6H)、5.56〜5.60 (dd, 1H)、5.80〜5.84 (dd, 1H)、6.30〜6.48 (m, 2H)、6.76〜6.79 (dd, 1H)、6.98〜7.00 (dd, 1H)、7.22〜7.24 (d, 1H)、7.36〜7.42 (td, 1H)、7.74〜7.76 (d, 1H)、7.88〜7.94 (td, 1H)、8.03 (s, 1H)、8.08 (s, 1H)、8.29〜8.31 (d, 1H)、8.52〜8.54 (d, 1H)。
【0123】
図4は、実施例5のオルトメタル化錯体の吸収(A)および発光(E)スペクトルを図示[横軸は波長nm;縦軸は強度(任意の単位)]し、(λmax)512nmで発光最大値を示し、量子収率(F)が0.44である。
【0124】
補助ピコリナト配位子上に置換基がないMe(dFppy)2Ir(Pic)は、それのルミネセンススペクトルの発光ピークが512nm(緑色領域)で、実施例3および4の置換錯体に対してより低い量子効率を有することを示した。この比較は、適切な電子供与特性を有する置換基の存在が、発光をより高エネルギーに有意に移行(ブルーシフト)させ、発光効率のかなりの改善を可能にすることをよく実証している。
【実施例6】
【0125】
2-ヨード-4-ジメチルアミノピリジンの合成
【0126】
【化24】

【0127】
BF3・Et2O(8.4g、59mmol)を、0℃で4-ジメチルアミノピリジン(6g、49mmol)の乾燥THF(250ml)溶液に滴加した。生じた混合物を、窒素下で0℃で1時間攪拌した。-78℃の温度まで冷却され、BuLi(ヘキサン中に1.6M、46ml、74mmol)を滴加した。生じた混合物を、-78℃で1時間攪拌し、I2(18.7g、74mmol)の乾燥THF(50ml)溶液を滴加した。生じた混合物を、-78℃で2時間攪拌し、室温まで温めた(2時間)。THFを蒸発させ、飽和Na2S2O5溶液を加えた。生じたスラリーを、EtOAc(5×150ml)で抽出した。合わせた有機分画を、飽和Na2S2O5(50ml)、塩水(50ml)で続けて洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過して蒸発乾固させた。生じた残渣を、クロマトグラフィーのカラム(SiO2、EtOAc/石油エーテル、1/1)によって精製し、放置すると固化する無色の油として所望する化合物7g(57%)を得た。
1Hおよび13C NMRは、文献(Cuperly,D.;Gros,P.;Fort,Y.J.Org.Chem.2002、67、238〜241頁)で報告されたものと一致していることが見出された。
【実施例7】
【0128】
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ジメチルアミノピリジン(p-A-Fppy)の合成
【0129】
【化25】

【0130】
トルエン(60ml)および水(10ml)の中に2-ヨード-4-ジメチルアミノピリジン(3g、12mmol)、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(2.3g、14.5mmol)およびK2CO3(6g、43.5mmol)を入れた混合物を、15分間窒素で脱気した。Pd(PPh3)4(800mg、0.66mmol)を加え、生じた混合物を、窒素の下で48時間90℃まで加熱した。室温まで冷却した後、水相を分離し、EtOAc(3×100ml)で抽出した。合わせた有機分画を、塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過して蒸発させた。粗製化合物を、カラムクロマトグラフィー(SiO2、CHCl3次いでCHCl3/MeOH、97/3)によって精製し、放置すると固化するわずかに黄色の油として項目名の化合物2.2g(78%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 298K, 200MHz, δ ppm) 3.05 (s, 6H)、6.49 (dd, J=2.5および6Hz, 1H)、6.92 (m, 3H)、7.94 (m, 1H)、8.33 (d, J=6Hz, 1H)。
【実施例8】
【0131】
p-A-Fppyを用いるシクロメタル化Ir(III)-μ-クロロ架橋二量体[(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ジメチルアミノピリジン)2IrCl]2:[(p-A-Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(p-A-Fppy)2]の合成
【0132】
【化26】

【0133】
IrCl3・3H2Oおよび2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ジメチルアミノピリジンの2.5当量を、2-エトキシエタノールおよび水(3/1、v/v)の混合物中で、一晩窒素の下で110℃に加熱した。室温に冷却後、生じた沈殿物を濾別し、引き続きメタノールで洗浄し、最後に乾燥して所望の二量体を得た。この化合物の溶解性が低いので、その1H-NMRを、そのL2Ir(Cl)(DMSO)誘導体としてDMSO-d6で記録した。
1H-NMR (DMSO-d6, 298K, 200MHz, δ ppm) 3.16 (s, 6H)、3.19 (s, 6H)、5.35 (dd, J=2および8.7Hz, 1H)、5.83 (dd, J=2および8.7Hz, 1H)、6.70〜7.00 (m, 4H)、7.37 (m, 2H)、8.86 (d, J=7Hz, 1H)、9.21 (d, J=7Hz, 1H)。
【実施例9】
【0134】
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ジメチルアミノピリジナト-N,C2')-4-ジメチルアミノピコリネート[(p-A-Fppy)2Ir(dmNPic)](式XIII)の合成
【0135】
【化27】

【0136】
錯体[(p-A-Fppy)2Ir(dmNPic)](XIII)を、ジクロロ架橋イリジウム(III)二量体[(p-A-Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(p-A-Fppy)2]を対応する補助配位子と反応させることによって低沸点溶媒のジクロロメタン中で都合好く合成した。この錯体をエタノール石油エーテル混合物から再結晶させ、分光技術によって特性を明らかにした。図5は、X-線の結果を模型化することによって確定した錯体(XIII)の結晶構造を示す。図6は、実施例9の錯体(XIII)のジクロロメタン溶液中での298Kで測定された発光スペクトルであり、380nmでこの錯体を励起することによって得られた。横軸は、波長nmを表すが、縦軸は発光強度をcpsで図示する。2つの発光ピークは、それぞれに(λmax)460および503nmで発光極大値を有することが確認された。
【実施例10】
【0137】
(比較)
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ジメチルアミノピリジナト-N,C2')-ピコリネート[(p-A-Fppy)2Ir(Pic)]の合成
【0138】
【化28】

【0139】
錯体[(p-A-Fppy)2Ir(Pic)]を、非置換2-ピコリン酸を使用する以外は、上記の実施例9で詳述したものと同じ手順に従って都合好く合成した。図7は、比較実施例10の錯体のジクロロメタン溶液中での298Kで測定した発光スペクトルであり、380nmでこの錯体を励起することによって得られた。横軸は、波長nmを表すが、縦軸は、発光強度をcpsで図示する。発光ピークは、(λmax)565nmで発光最大値を有することが確認された。補助ピコリナト配位子上に置換基がない[(p-A-Fppy)2Ir(Pic)]は、565nm(黄色領域)にそれの発光スペクトルの発光ピークを有し、実施例9の対応置換錯体(XIII)に対してより低い量子効率を有することを示した。この比較は、適切な電子供与特性を有する置換基の存在が、発光を有意により高エネルギーに移行(ブルーシフト)させ、発光効率のかなりの改善を可能にすることをよく実証している。
【実施例11】
【0140】
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-ピリジン(Fppy)の合成
Fppyを、以下に組み込んだ反応スキームに従って、上記の実施例1に記載したものと同じ手順に従って合成した。
【0141】
【化29】

【実施例12】
【0142】
Fppyを用いたシクロメタル化Ir(III)-μ-クロロ架橋二量体[(Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(Fppy)2]の合成
この錯体を、次の反応スキームに従って、実施例8に記載したものと同じ手順に従って合成した。
【0143】
【化30】

【実施例13】
【0144】
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')-4-ジメチルアミノピコリネート[(Fppy)2Ir(dmNPic)](式XIV)の合成
【0145】
【化31】

【0146】
錯体[(Fppy)2Ir(dmPic)](XIV)を、ジクロロ架橋イリジウム(III)二量体[(Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(Fppy)2]を対応する補助配位子と反応させることによって低沸点溶媒のジクロロメタン中で都合好く合成した。この錯体をエタノール石油エーテル混合物から再結晶化し、分光技術によって特性を明らかにした。図8は、実施例13の錯体(XIV)のジクロロメタン溶液中での298Kで測定された発光スペクトルであり、380nmでこの錯体を励起することによって得られた。横軸は、波長nmを表すが、縦軸は発光強度をcpsで図示する。2つの発光ピークは、それぞれに(λmax)476および520nmで発光極大値を有することが確認された。
【実施例14】
【0147】
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジン(m-A-Fppy)の合成
(1)2-ブロモ-5-ジメチルアミノピリジンの合成
2-ブロモ-5-アミノピリジン(11.7g、67.6mmol)を、0℃でHCO2H(20ml)に少しずつ加えた。次いで、ホルムアルデヒド(37%水溶液、17ml、210mmol)を加え、混合物を数時間加熱して還流させた。次いで、反応物を室温まで冷却し、KOH水溶液(1N、ml)を加えた。混合物をEt2O(3×100ml)で抽出し、合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過して蒸発乾固させた。残渣油を、フラッシュクロマトグラフィーによってシリカ上で(CH2Cl2)精製した。黄色みがかった固体を、最小体積のCH2Cl2に溶解し、石油エーテル(150ml)を加え、溶液を冷蔵庫内に一晩放置した。白い結晶質の固体を濾過し、少量の冷石油エーテルで洗浄し、所望の化合物5.2g(40%)を白い結晶質固体として得た。
1H-NMR (CDCl3, 298K, 200MHz, δ ppm) δ 2.96 (s, 6H)、6.87 (dd, J=2.5×9Hz, 1H)、7.25 (d, J=9Hz, 1H)、7.84 (d, J=2.5Hz, 1H)。
(2)2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジンの合成
脱気したDME/H2O(60/50ml)混合物中に2-ブロモ-5-ジメチルアミノピリジン(3.2g、16mmol)、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(4.8g、30mmol)、K2CO3(13g、94mmol)、およびPd(PPh3)4(400mg、0.35mmol)を入れ、窒素下で24時間還流した。室温に冷却した後、有機層を分離し、水相をEtOAc(100ml)で抽出した。合わせた有機分画を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥して蒸発乾固した。粗製化合物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、CH2CL2次いでCH2Cl2/MeOH:97/3)によって精製した。生じた茶色の固体をCH2Cl2に溶解し、チャコールを用いて脱色した。溶媒の濾過および蒸発によって、所望の化合物3g(80%)をわずかに黄色の結晶質固体として得た。
1H-NMR (CDCl3, 298K, 200MHz, δ ppm) δ 3.03 (s, 6H)、6.9〜7.1 (m, 3H)、7.60 (dd, J=2.5×9Hz, 1H)、7.95 (m, 1H)、8.24 (d, J=2.5Hz, 1H)。
【実施例15】
【0148】
m-A-Fppyを用いたシクロメタル化Ir(III)-μ-クロロ架橋二量体[2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジン]2IrCl]2 [(m-A-Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(m-A-Fppy)2]の合成
【0149】
【化32】

【0150】
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジン(1.35g、5.76mmol)およびIrCl3・3H2O(820mg、2.32mmol)を、エトキシエタノール/H2O(20/15ml)の混合物中で一晩還流した。室温に冷却した後、水を加えて沈殿物を濾過し、水およびEt2Oで洗浄して、1.4g(87%)の所望の二量体を黄色みを帯びた粉末として得た。この化合物の溶解性が低いので、その1H-NMRを、そのL2Ir(Cl)(DMSO)誘導体としてDMSO-d6で記録した。
1H-NMR (DMSO-d6, 298K, 200MHz, δ ppm) δ 3.05 (s, 6H)、3.07 (s, 6H)、5.14 (dd, J=2.5×9Hz, 1H)、5.71 (dd, J=2.5×9Hz, 1H)、6.67 (m, 2H)、7.51 (m, 2H)、8.01 (m, 2H)、9.07 (s, 1H)、9.48 (s, 1H)。
【実施例16】
【0151】
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジナト-N,C2')-4-ジメチルアミノピコリネート)[(m-A-Fppy)2Ir(dmNPic)](式XV)の合成
【0152】
【化33】

【0153】
錯体[(m-A-Fppy)2Ir(dmNPic)](XV)を、ジクロロ架橋イリジウム(III)二量体[(m-A-Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(m-A-Fppy)2]を対応する補助配位子と反応させることによって低沸点溶媒のジクロロメタン中で都合好く合成した。図9は、実施例16の錯体(XV)のジクロロメタン溶液中での298Kで測定された発光スペクトルであり、380nmでこの錯体を励起することによって得られた。横軸は、波長nmを表すが、縦軸は発光強度をcpsで図示する。2つの発光ピークは、それぞれに(λmax)528および562nmで発光極大値を有することが確認された。
【実施例17】
【0154】
【化34】

【0155】
(1)5-ジメチルアミノ-2-カルボキシメチルピリジンの合成
2-ブロモ-5-ジメチルアミノピリジン(1.45g、7.2mmol)の-78℃に冷却されたTHF溶液(100ml)に、nBuLi(1.6M、6.3ml、10mmol)を滴加した。生じたオレンジ色の溶液を、-78℃で40分間窒素下で攪拌した。次いで、温度が室温に達するのを許容しながら、溶液にCO2(ドライアイスから)の気泡を3時間吹き込んだ。次いで、MeOH(2ml)を加え、溶媒を真空下で除去した。MeOH(100ml)および濃H2SO4(4ml)を加え、生じた混合物を一晩還流させた。真空下で溶媒を除去し、水(100ml)を加えた。混合物をK2CO3水溶液で中和し、CH2Cl2(3×50ml)で抽出した。合わせた有機分画を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、CH2Cl2/MeOH:95/5)で精製した。得られたオレンジ色の油をCH2Cl2(1ml)中に溶解し、石油エーテル(100ml)を加えた。溶液を一晩冷蔵庫内に放置した。形成した沈殿物を濾過し、少量の冷石油エーテルで洗浄し、600mg(46%)の所望の化合物をわずかに黄色の固体として得た。
1H-NMR (CDCl3, 298K, 200MHz, δ ppm) δ 3.09 (s, 6H)、3.96 (s, 3H)、6.94 (dd, J=2.5×9Hz, 1H)、7.99 (d, J=9Hz, 1H)、8.17 (d, J=2.5Hz, 1H)。
13C-NMR (CDCl3, 298K, 50MHz, δ ppm) δ 39.7、52.2、116.8、126.2、133.9、134.9、147.7、166.1。
(2)5-ジメチルアミノ-2-カルボキシピリジンの合成
対応するメチルエステルから、標準的な加水分解の手順に従って遊離酸を得た。
【実施例18】
【0156】
イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-ジメチルアミノピリジナト-N,C2')-5-ジメチルアミノピコリネート[(m-A-Fppy)2Ir(5dmNPic)](式XVI)の合成
【0157】
【化35】

【0158】
錯体[(m-A-Fppy)2Ir(5dmNPic)](XVI)を、ジクロロ架橋イリジウム(III)二量体[(m-A-Fppy)2Ir(μ-Cl)2Ir(m-A-Fppy)2]を対応する補助配位子と反応させることによって低沸点溶媒のジクロロメタン中で都合好く合成した。図10は、実施例18の錯体(XVI)のジクロロメタン溶液中での298Kで測定された発光スペクトルであり、380nmでこの錯体を励起することによって得られた。横軸は、波長nmを表すが、縦軸は発光強度をcpsで図示する。2つの発光ピークは、それぞれに(λmax)528および562nmで発光極大値を有することが確認された。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の錯体を含む発光材料であって、
【化1】

式中、
Mは、原子番号が少なくとも40、好ましくは8〜12族、より好ましくはIrまたはPt、最も好ましくはIrである遷移金属を表し、
E1は、追加の芳香族部分または非芳香環と場合によっては縮合している5員または6員環芳香環または芳香族複素環の形成に必要な非金属原子群であって、前記芳香環または芳香族複環が1つまたは複数の置換基を場合によっては有し、E2を含む環と縮合構造を場合によっては形成しており、sp2混成炭素を介して金属Mに配位している、非金属原子群を表し、
E2は、追加の芳香族部分または非芳香環と場合によっては縮合している5員または6員環芳香族複素環の形成に必要な非金属原子群であって、前記芳香族複素環が1つまたは複数の置換基を場合によっては有し、E1を含む環と縮合構造を場合によっては形成しており、sp2混成窒素を介して金属Mに配位している、非金属原子群を表し、
Lは、補助配位子とも呼称され、少なくとも1つの酸素原子および少なくとも1つのsp2混成窒素原子を通して金属Mに配位しており、少なくとも1つの芳香環および/または芳香族複素環を含む、1価イオン性キレート配位子であって、前記環が、-Cl、-F、-Br等のハロゲン、-OR0、-SR0、-N(R0)2、-P(OR0)2および-P(R0)2からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、式中、R0が、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5(nが、1〜8の整数である)を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルである、1価イオン性キレート配位子である、
発光材料。
【請求項2】
以下の式(I-bis)の錯体を含む発光材料であって、
【化2】

式中、E1、E2、M、Lは、上記で定義した意味を有し、
RxおよびRyは、相互におよび出現毎に等しいかまたは異なっており、-CH3,-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル基、あるいは1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル基から選択され、
wが、1〜4の間の整数である、
請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
以下の式(II)に適合する錯体を含み、
【化3】

式中、
Lは、上記定義と同じ意味を有し、
Xは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、S、またはSeからなる群から選択される基であり、好ましくはXは、-CH=CH-、-CR=CH-またはSから選択される基であり、最も好ましくはXは、-CH=CH-であり、
Yは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、S、またはSeからなる群から選択される基であり、好ましくはYは、-CH=CH-、-CR=CH-またはSから選択される基であり、最も好ましくはYは、-CH=CH-であり、
Rは、出現毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基またはジアルキルアミノ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族基-Rで置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基Rは、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
R1およびR2は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、それぞれHまたは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり、
aは、0〜4の整数であり、
bは、0〜4の整数である
請求項1または2に記載の発光材料。
【請求項4】
1価イオン性キレート配位子(L)が、次式(III)〜(VII)またはそれらの互変異性体によって表される構造体から選択され、
【化4】

式中、
Zは、-Cl、-F、-Br等のハロゲン、-OR0、-SR0、-N(R0)2、-P(OR0)2および-P(R0)2からなる群から選択される置換基であって、式中、R0は、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5(nは1〜8の整数である)を例とする、1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルであり、
Jは、-CH=CH-、-CR=CH-、-CR=CR-、N-H、N-R1、O、SまたはSeからなる群から選択される基であり、
R'、R*、R●は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族ラジカル-R'で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基R'は、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
R"、R1およびR2は、相互におよび出現毎に同じかまたは異なっており、それぞれH、または1〜20個の炭素原子を有する、置換されていてもよい脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり、
cは、1〜3の整数であり、
dは、0〜4の整数である
請求項1から3のいずれか一項に記載の発光材料。
【請求項5】
以下の式(VIII)または(IX)の錯体を含み、
【化5】

式中、
R'およびdは、上記定義と同じ意味を有し、
Qは、-OR0または-N(R0)2であって、式中、R0は、-CH3、-nC4H9、-iC3H7、-CF3、-C2F5、-C3F7を例とするC1〜C6のアルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキル、あるいは-CH2-(CH2-O-CH2)n-CH3、-CH2-[CH2(CH3)-O-CH2]n-CH3、-(CF2O)n-C2F5(nは1〜8の整数である)を例とする1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6アルキル、フルオロまたはパーフルオロアルキルであり、
c'は、1および3の間の整数であり、
R#は、出現毎に同じかまたは異なっており、F、Cl、Br、NO2、CNであるか;1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基もしくはアルコキシ基またはジアルキルアミノ基であって、それらの各々で1つまたは複数の隣接しない-CH2-基が、-O-、-S-、-NR1-、または-CONR2-(R1およびR2は、それぞれHまたは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である)と置き換わってもよく、かつそれらの各々で1つまたは複数の水素原子が、Fと置き換わってもよい前記の基であるか; 4〜14個の炭素原子を有し、1つまたは複数の非芳香族ラジカル-R#で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、複数の置換基R#は、同じ環上または2つの異なった環上にあるいずれの場合でも、一緒になって更なる単環または多環系、場合によっては芳香環系を形成してもよく、
a'およびb'は、互いに等しいかまたは異なっており、独立に0〜4の間の整数であり、
R§は、H、および1〜20個の炭素原子を有する、置換されていてもよい脂肪族または芳香族炭化水素基から選択される
請求項4に記載の発光材料。
【請求項6】
以下の式(XI)〜(XVI)またはそれらの2種以上の混合物から選択される錯体を含む、請求項5に記載の発光材料。
【化6A】

【化6B】

【請求項7】
有機発光素子の発光層における、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光材料の使用。
【請求項8】
有機発光素子における発光層として機能するホスト層中のドーパントとしての、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光材料の使用。
【請求項9】
ホスト材料を場合によっては伴う、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光材料を含んだ、発光層(EML)を含む有機発光素子(OLED)。

【公表番号】特表2009−511655(P2009−511655A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534024(P2008−534024)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067134
【国際公開番号】WO2007/042474
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】