説明

発光枕木

【課題】ガード下等の給電源のない場所でも、列車の通過する振動を光エネルギーに変換することにより発光し、防犯灯の代替としうる発光枕木を提供する。
【解決手段】発光枕木1は、鉄道軌道と交差する道路上に設けられた橋桁の上に配置されてレール7を支持する枕木本体2と、該枕木本体2に設けられて振動を電気エネルギーに変換する発電装置4と、枕木本体2の下面に設けられて発電装置4からの電力供給を受けて発光する少なくとも1つのLED(発光素子)5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道に用いられる枕木に関し、特に、防犯灯の代替えとすることができる発光枕木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、防犯灯や道路灯などは水銀灯からメタルハライドランプや、高圧ナトリウムランプが主流となっている。特に高圧ナトリウムランプは、省電力化を目的に低ワットで高効率の光源が開発され、それを光源とした防犯灯が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−298614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの防犯灯が設置されている場所は、給電設備が満足なところであるのに対し、鉄道のガード下等は、給電設備も設置されていない箇所が多く、犯罪の温床となっていた。
【0005】
そこで本発明は、ガード下等の給電源のない場所でも、列車の通過する振動を光エネルギーに変換することにより発光し、防犯灯の代替としうる発光枕木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明による発光枕木は、鉄道軌道と交差する道路上に設けられた橋桁の上に配置されてレールを支持する枕木本体と、枕木本体に設けられて振動を電気エネルギーに変換する発電装置と、枕木本体の下面に設けられた少なくとも1つの発光素子とを備えていることを特徴とするものである。
この発明の発光枕木は、鉄道用高架橋(ガード)に配置されている複数の枕木の一部または全部をこれに置き換えることによって、防犯灯の代替えとしうる。
【0007】
発電装置は、枕木本体のレールに接しない上面、側面、及び直接路盤に接しない底面の少なくともいずれか一部に設けられる。枕木本体は、一般に使用されている横枕木をそのまま使用して、その端部を発電装置設置部とすればよい。枕木本体は、両端よりも内側で下から橋桁に支持され、上面にレールが支持されることで、両端が自由端の片持ちになっており、端部での振動が大きいものとなっている。枕木本体は、例えば、切欠き部を入れるなどして、発電装置設置部における振動エネルギーが大きくなるような形状とすることもできる。
【0008】
発電装置において、振動を電気エネルギーに変換する変換素子としては、圧電素子、電場応答性高分子などが使用される。発光素子としては、例えばLEDが使用される。変換素子および発光素子は、枕木本体の各端部の橋桁よりも外側にある位置に少なくとも1つずつ配置されることが好ましい。発電装置を構成する圧電素子又は電場応答性高分子の設置位置は、枕木本体の上面であってもよく、下面であってもよく、側面であってもよい。
【0009】
一般にLEDを初めとする発光素子は、電圧が低い間は電圧を上げていってもほとんど電流が増えず、発光もしない。ある電圧を越えると電圧上昇に対する電流の増え方が急になり、電流量に応じて光を発するようになる。したがって、所望の電圧を得るために、例えば圧電素子を使用する発電装置では、圧電素子を複数使用して、振動により得られた電圧が直列になるように配置することが好ましい。出力電流自体は、発電装置からのエネルギーにより決まる。
【0010】
請求項1の発明によると、列車がレール上を通行するのに伴って枕木本体に生じる振動が発電装置によって電気エネルギーに変換され、この電気エネルギーを使用して発光素子を発光させ、この発光素子を光源として利用する。発光素子は、橋桁上に位置する枕木本体の下面に設けられているので、橋桁下(ガード下)の道路を照らすことができる。
【0011】
請求項2の発明は、前記枕木本体が樹脂によって成形されることを特徴とする請求項1に記載の発光枕木である。
【0012】
枕木本体は、繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で成されるのがより好ましい。
【0013】
発泡樹脂の種類としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化樹脂であって硬質のものや、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等が好適に使用される。なお、樹脂には固体の充填材が混合されていてもよいし、補強繊維で補強されていても構わない。即ち、発泡樹脂中に、圧縮強度の向上や低コスト化を図るために、炭酸カルシウム、石膏、タルク、水酸化アルミニウム、クレーなどの無機充填材や、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン等の軽量骨材が添加されても良い。板材の硬質樹脂発泡材を補強する繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機質繊維や、芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維や天然繊維等の有機質繊維の何れかであればよいが、強度や経済性の面からガラス繊維が適している。繊維の形態は、ヤーン、クロス、ロービング、ロービングクロス、クロスマット等の長繊維形態のものが好適であり、必要に応じてチップ、ミドルファイバー等の短繊維やシラスバルーン等の中空充填材を併用しても良い。ガラス繊維としては、ガラスロービング、ガラスロービングクロス、ガラスマット、コンティニュアスストランドマット等の形態のものが挙げられる。この繊維は単独で使用しても良いし、2層以上積層して使用しても良く、また、長繊維と短繊維を混ぜて使用しても良い。最も好適な材料としては硬質ウレタン樹脂を長手方向へ引き揃えられたガラス長繊維で補強した発泡体である。
【0014】
本発明の発光枕木では、枕木本体が樹脂によって成形されるため、木製の枕木を用いる場合より耐用年数を長くすることができる。また、コンクリート製の枕木に比べて弾性率が小さいため振動エネルギーへの変換が容易で、発電効率も高い。枕木本体を樹脂製とすると、端部での振動を大きくするための形状に成形することが容易となるので、切欠き部を入れるなどして、発電効果を高めることもできる。
【0015】
請求項3の発明は、前記発電装置が、圧電素子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光枕木である。
【0016】
圧電素子には、水晶・ロシェル塩・チタン酸バリウム等の任意の結晶が使用される。
【0017】
本発明の発光枕木では、発電装置に圧電素子を使用することにより無駄であった枕木振動を活用して発電する事ができると共に、外部に伝わる振動も減少させることが出来る。本発明の発光枕木では、振動を効率良く圧電素子に作用させることができるため、発電効率が良い。
【0018】
請求項4の発明は、前記発電装置が、電場応答性高分子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光枕木である。
【0019】
本発明の発光枕木では、発電装置に電場応答性高分子を用いるため、無駄であった枕木振動を活用して発電する事ができると共に、外部に伝わる振動も減少させることが出来る。本発明の発光枕木では、振動を効率的に電場応答性高分子に作用させて、効率の高い発電を行う事が出来る。
【0020】
電場応答性高分子は、人工筋肉とも称せられており、通常は、誘電性エラストマーに電圧を印加して、これを伸縮させる形態で使用されるが、この発明では、電極間に挟まれた誘電性エラストマーに電極間方向に圧縮歪みを発生させる事により電圧が生じる形態で使用される。電場応答性高分子は、ゴム状の薄い高分子膜を伸び縮み可能な電極で挟んだ構造で、電極間に電位差を与えると、両方の電極が引き合い、その結果、高分子膜が厚さ方向に収縮し、面方向に伸縮する。これを発電用として使用する形態は、圧電素子と類似しているが、誘電性エラストマーの方が大きな歪みにより発電する特徴を有している。誘電性エラストマーとしては、シリコンやアクリル、ウレタンのエラストマーなどが使用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発光枕木は、鉄道軌道と交差する道路上に設けられた橋桁の上に配置されてレールを支持する枕木本体と、枕木本体に設けられて振動を電気エネルギーに変換する発電装置と、枕木本体の下面に設けられて発電装置からの電力供給を受けて発光する少なくとも1つの発光素子とを備えているので、ガード下等の給電源のない場所でも、列車の通過する振動を光エネルギーに変換することにより発光し、防犯灯の代替としうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の発光枕木の1実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、要部の断面図である。
【図3】図3は、本発明の発光枕木の回路構成を示す図である。
【図4】この発明の発光枕木が使用される一例としての鉄道用高架橋を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0024】
図4は、この発明の発光枕木が使用される一例としての鉄道用高架橋(いわゆる「ガード」)を示しており、高架橋は、鉄道軌道に交差する道路(21)の両側に設けられた1対の橋台(22)と、橋台(22)間に架け渡された1対の橋桁(23)と、1対の橋桁(23)上に所定間隔で載置された複数の枕木(1)と、枕木(1)に支持されたレール(7)とを有しており、複数の枕木(1)がこの発明による発光枕木とされている。
【0025】
図1は、本発明による発光枕木(1)を下から見た状態を示しており、発光枕木(1)は、枕木本体(2)と、枕木本体(2)のレール支持部外側の発電装置設置部(3)に設けられて振動を電気エネルギーに変換する発電装置(4)と、発電装置(4)からの電力供給を受けて発光するLED(発光素子)(5)と、発電装置(4)およびLED(5)に接続された蓄電池(6)とを備えている。
【0026】
枕木本体(2)は、繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で形成されており、その形状は、通常使用されているものと同じ形状で、必要に応じて、発電装置(4)設置のための凹所などが設けられたものとされる。繊維強化硬質樹脂発泡体としては、例えば、商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製が適している。
【0027】
レール(7)は、従来周知のレール締結用タイプレートや板バネ式締結装置等のレール支持部材によって、枕木本体(2)の適宜の位置に固定される。
【0028】
発電装置設置部(3)としては、振動が大きい枕木本体(2)の各端部が使用されている。
【0029】
発電装置(4)は、振動エネルギーを電力エネルギーに変換するもので、図2に拡大して示すように、枕木本体(2)の下面に設けられている。発電装置(4)は、圧力又は振動を加えることによってこれに応じた電力を取り出すことのできる性質を持つ1又は複数の変換素子(4a)を有している。変換素子(4a)としては、圧電素子、電場応答性高分子などが使用される。
【0030】
発電装置(4)の変換素子(4a)は、2本のリード線(13)を介してLED(5)に接続されている。LED(5)は、固有の閾値を越えた電圧がかかると発光するので、変換素子(4a)の仕様、配置位置および数などは、予め必要な電圧となるように設定される。
【0031】
変換素子(4a)によって生成される電圧は、枕木本体(2)の振動に従い、極性が変化するので、LED(5)は、2つ使用されて、図3(a)に示すように、2つのLED(5)が互いに極性が逆になるように発電装置(4)と接続されている。図3(b)に示すように、整流素子(14)およびコンデンサ(15)からなる平滑回路を設けて、LED(5)を1つとすることもできる。
【0032】
昼間に得られる電気エネルギーは、蓄電池(6)に蓄えられ、LED(5)は、列車の運行が少なくなる深夜から未明にかけては、蓄電池(6)からの電力供給によって発光させられる。
【0033】
上記発光枕木(1)によると、列車の通行などにより、レール(7)から枕木本体(2)に振動が伝わった際に、発電装置設置部(3)が上下方向に振幅の大きな振動を行う。そのことにより、発電装置(4)に大きな振動が伝わり、同じ振動で発電量の大きな効率のよい発電を行うことができる。そして、列車がレール(7)上を通行することで生じる枕木本体(2)の振動が電気エネルギーに変換され、この電気エネルギーがLED(5)の発光に使用される。
【0034】
鉄道のガード下等は、給電設備も設置されていない箇所が多く、防犯灯の設置が困難であったが、上記発光枕木(1)を鉄道軌道と交差する道路上に設けられた橋桁(23)の上に配置することで、防犯灯の代替とすることができる。
【0035】
なお、発電装置設置部(3)は、切欠き部を設けるなどして、振動が大きくなる形状としてもよい。発電装置(4)は、雨や雪等による発電装置(4)の劣化を軽減するという点からは、枕木本体(2)の下面に設けられることが好ましいが、枕木本体(2)の上面または側面に設けてもよく、枕木本体(2)の端部に限定されるものでもない。要は、枕木本体(2)の振動が発電装置(4)に伝達されればよい。また、発電装置(4)は、任意に取り付け、または取り外し可能であり、変換素子(4a)は、複数取り付けてもよく、その配置位置や数は、発電量等に応じて任意に変更してよい。
【符号の説明】
【0036】
(1) 発光枕木
(2) 枕木本体
(3) 発電装置設置部
(4) 発電装置
(5) LED(発光素子)
(7) レール
(23) 橋桁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道と交差する道路上に設けられた橋桁の上に配置されてレールを支持する枕木本体と、枕木本体に設けられて振動を電気エネルギーに変換する発電装置と、枕木本体の下面に設けられて発電装置からの電力供給を受けて発光する少なくとも1つの発光素子とを備えていることを特徴とする発光枕木。
【請求項2】
前記枕木本体が樹脂によって成形されることを特徴とする請求項1に記載の発光枕木。
【請求項3】
前記発電装置が、圧電素子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光枕木。
【請求項4】
前記発電装置が、電場応答性高分子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光枕木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74744(P2011−74744A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230448(P2009−230448)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】