説明

発光異種核銅−イリジウム錯体及びこれを利用した有機電界発光素子

【課題】発光異種核銅−イリジウム錯体及びこれを利用した有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】高効率燐光を発する発光異種核銅−イリジウム錯体とこれを利用した有機電界発光素子を提供する。本発明の異種核銅−イリジウム錯体は、有機電界発光素子の有機膜形成時に利用可能であり、高効率の燐光材料として590〜630nmで発光するだけでなく、高い輝度と低い駆動電圧とを持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光異種核銅−イリジウム錯体及びこれを利用した有機電界発光素子に係り、より詳細には、赤色領域(590〜630nm)の発光が可能な銅−イリジウム錯体と、これを有機膜形成材料として採用している有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜という)に電流を流せば、電子と正孔とが有機膜で結合しつつ光が発生する現象を利用した能動発光型表示素子であり、軽量、部品が簡素で製作工程が簡単な構造を持っており、高画質に広視野角を確保している。また、高色純度及び動画を完壁に具現でき、低消費電力、低電圧駆動で携帯用電子機器に適した電気的特性を持っている。
【0003】
一般的な有機電界発光素子は、基板上部にアノードが形成されており、このアノード上部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードが順次に形成されている構造である。ここで、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層は有機化合物からなる有機膜である。前述したような構造を持つ有機電界発光素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノードとカソードとの間に電圧を印加すれば、アノードから注入された正孔は正孔輸送層を経由して発光層に移動する。一方、電子はカソードから電子輸送層を経由して発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子(エキシトン)を生成する。この励起子(エキシトン)が放射減衰されつつ物質のバンドギャップに該当する波長の光が放出されることである。
【0004】
前記有機電界発光素子の発光層形成材料は、その発光メカニズムによって一重項状態の励起子(エキシトン)を利用する蛍光物質と、三重項状態を利用する燐光物質とに区分可能である。このような蛍光物質または燐光物質を単独で、または適切なホスト物質にドーピングして発光層を形成し、電子励子の結果、ホストに一重項励起子と三重項励起子とが形成される。この時、一重項励起子と三重項励起子との統計的生成比率は1:3である(非特許文献1参照。)。
【0005】
発光層形成材料として蛍光物質を使用する有機電界発光素子において、ホストで生成された三重項が浪費されるという不利な点を持っている一方、発光層形成材料として燐光物質を使用する場合には、一重項励起子と三重項励起子とをいずれも使用できて、内部量子効率100%に到達できる長所を持っている(非特許文献2参照。)。したがって、発光層形成材料で燐光物質を使用する場合、蛍光物質より非常に高い発光効率を持つことができる。
【0006】
有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子の効果により発生するスピン−軌道カップリング(spin−orbital coupling)を通じて三重項状態と一重項状態とが混ざるが、これによって禁制(禁止)遷移が可能になり、常温でも効果的に燐光が起きる。
【0007】
前述したように燐光を利用した高効率発光材料として、イリジウム、白金などの遷移金属を含む遷移金属化合物を利用したいろいろな物質が発表されているが、高効率のフルカラー表示素子のための赤色領域(590〜630nm)の燐光物質が依然として要求されている。
【0008】
一方、ピラゾレート配位子(ピラゾレートリガンド)は、貨幣金属化学(coin metal chemistry)に重要な役割を行う。これらはCu(I)、Ag(I)及びAu(I)のような貨幣金属イオンとエキソ二座状(exo−bidentate mode)に配位して多核錯体(multinuclear complex)を形成する。このような貨幣金属ピラゾレート(Coin metal pyrazolate)は、反応条件及びピラゾリル成分(ピラゾリルモイエティ;pyrazolate moiety)上の置換体によって3量体、4量体、6量体からポリマーまで形成する。ピラゾレート配位子は、電子輸送成分(電子輸送モイエティ;electron transporting moiety)であり、有機電界発光素子の製造時に電子の注入を手伝って素子の性能を向上させる効果がある。
【0009】
このような貨幣金属ピラゾレートのうち、フッ素化ピラゾレート配位子を持つ多核貨幣金属(multinuclear coin metal)は、非常に興味のある発光特性を表す。フルオロ化は、揮発性を増加させて薄膜製造を促進して改善された熱安定性及び酸化安定性を表し、発光の濃度消光(ケンチング)が減少する。
【0010】
モハマドは、非特許文献3において、2,4,6−コリジンが銅原子に置換された貨幣金属ピラゾレート錯体(copper pyrazolate complex)を開示している。前記錯体は、明るい青色発光を表す。
【0011】
したがって、金属フルオロ化されたピラゾレート錯体の金属原子に多様な配位子を持って、青色以外の他の波長領域で優秀な発光特性を持つ化合物への要求が続いている。
【非特許文献1】Baldo,et al.,Phys.Rev.B,1999,60,14422
【非特許文献2】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151−154,1998
【非特許文献3】Mohammad A.Omary,Inorg Chem,2003,42,8612
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的課題は、赤色波長領域(590〜630nm)で効率的に発光できる異種核銅−イリジウム錯体を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記銅−イリジウム錯体を採用した有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題を解決するために本発明は、
下記化学式1で表示される異種核銅(I)−イリジウム(III)錯体を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
前記式で、A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子(1価陰イオン二座補助リガンド;mononegative bidentate auxiliary ligand)であり、Xは、N、P、SまたはOであり、CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基、またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子(シクロメタル化リガンド;cyclometalating ligand)を表す。
【0017】
また本発明では、下記化学式2で表示される多核銅錯体が提供される。
【0018】
【化2】

【0019】
前記式で、A−X−B、X、CyN、CyC、CyN−CyCは、前記化学式1で定義した通りである。
【0020】
また本発明では、下記化学式3で表示される多核銅錯体が提供される。
【0021】
【化3】

【0022】
前記式で、A−X−B、X、CyN、CyC、CyN−CyCは、前記化学式1で定義した通りである。
【0023】
前記化学式3の化合物は、下記の化学式4または5の化合物でありうる。
【0024】
【化4】

【0025】
前記式で、X、CyN、CyCは、前記化学式1で定義した通りであり、CCyは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、NCyXは、イリジウム(III)と結合する窒素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyN−CyC及びNCyX−CCyは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【0026】
【化5】

【0027】
前記化学式5で、X、CyN、CyCは、前記化学式1で定義した通りであり、NCyは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CCyXは、イリジウム(III)と結合する炭素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyN−CyC及びNCy−CCyXは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【0028】
前記化学式1ないし3でA−X−Bの例としては、下記の例を挙げることができる。
【0029】
【化6】

【0030】
式中、R、Rは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基のうちから選択されてなるものである。前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。なお、前記Rを2つ以上有する場合、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
前記他の技術的課題を達成するために本発明は、一対の電極間に有機膜を含む有機電界発光素子において、前記有機膜は、前述した異種核銅−イリジウム錯体を含む有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による異種核銅−イリジウム錯体は、赤色領域(590〜630nm)の光を効率的に発光でき、このような銅−イリジウム錯体は、有機電界発光素子の有機膜形成時に利用でき、高効率の燐光材料として590〜630nm波長領域で発光するだけでなく、緑色発光物質または青色発光物質と共に使用して白色光を出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本発明は、下記化学式1ないし3の異種核銅−イリジウム錯体を提供するところ、このような構造の銅−イリジウム錯体は、金属ピラゾレート配位子を持つことによって、ピラゾール(pyrazole)の優秀な電子輸送能力のために素子の性能を向上させ、銅原子に置換されたヘテロ芳香族環基によって赤色発光をする効果があり、イリジウム金属原子に置換されたヘテロ芳香族環基のために赤色発光をする効果が優秀である。
【0035】
【化7】

【0036】
前記式で、A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子(1価陰イオン二座補助リガンド)であり、Xは、N、P、SまたはOであり、CyNは、2価の基として、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyCは、2価の基として、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基、またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【0037】
【化8】

【0038】
前記式で、A−X−B、X、CyN、CyC及びCyN−CyCは、前記化学式1で定義した通りである。
【0039】
【化9】

【0040】
前記式で、A−X−B、X、CyN、CyC及びCyN−CyCは、前記化学式1で定義した通りである。
【0041】
前記化学式1でA−X−B配位子の具体的な例としては、次のような基を挙げられる。
【0042】
【化10】

【0043】
式中、R、Rは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基のうちから選択されてなるものである。前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。なお、前記Rを2つ以上有する場合、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
前記化学式1のCyNは、2価の基として、中心金属であるイリジウムと直接的に配位結合を形成する窒素原子を含むヘテロ環基あるいはヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)を表す。前記ヘテロ環基は、環を形成する主要元素であり、N、O、S及び/またはPのようなヘテロ原子を含む炭素数3ないし60の置換または非置換のヘテロ環基を表し、具体的な例としては、ピロリジン、モルホリン、チオモルホリン、チアゾリジンなどのヘテロ原子を含む炭素数3ないし60の置換または非置換のヘテロ環化合物(複素環式化合物)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(窒素原子含有のヘテロ環化合物由来の基または窒素原子含有のヘテロ環化合物残基)があるが、これらに限定されるものではない。前記ヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)は、環を形成する主要元素としてN、O、S及び/またはPのようなヘテロ原子を含む炭素数3ないし60の置換または非置換のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)を表し、具体的な例としては、ピリジン、4−メトキシピリジン、キノリン、ピロール、インドール、ピラジン、ピラゾール、イミダゾール、ピリミジン、キナゾリン、チアゾール、オキサゾール、トリアジン、1,2,4−トリアゾールなどのヘテロ原子を含む炭素数3ないし60の置換または非置換のヘテロ芳香族化合物(ヘテロ芳香族炭化水素)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(窒素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素由来の基、または窒素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素残基、またはヘテロ原子を含む単環または縮合環から誘導される基)があるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記化学式1のCyCは、2価の基で、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基の具体的な例としては、シクロへキサン、シクロペンタンなどの炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環化合物から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(炭素環化合物由来の基または炭素環化合物残基)があるが、これらに限定されるものではない。前記化学式1のCyCで、前記イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基の具体的な例としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、1,3−ジチオラン、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカン、1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−2−オンなどの炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環化合物から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(炭素原子含有のヘテロ環化合物由来の基または炭素原子含有のヘテロ環化合物残基)があるが、これらに限定されるものではない。前記化学式1のCyCで、前記イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60のアリール基(アリーレン基)の具体的な例としては、ベンゼン、1,3−ベンゾジオキソール、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、アズレンなどの炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の芳香族化合物(芳香族炭化水素)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(炭素原子含有の芳香族化合物ないし芳香族炭化水素由来の基、または炭素原子含有の芳香族化合物ないし芳香族炭化水素残基、または単環または縮合環から誘導される基)があるが、これらに限定されるものではない。前記化学式1のCyCで、前記イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)の具体的な例としては、チオフェン、フラン2(5H)−フラノン、ピリジン、クマリン、イミダゾール、2−フェニルピリジン、2−ベンゾチアゾール、2−ベンゾオキサゾール、1−フェニルピラゾール、1−ナフチルピラゾール、5−(4−メトキシフェニル)ピラゾール、2,5−ビスフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2、3−ベンゾフラン、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾールなどの炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ芳香族化合物(ヘテロ芳香族炭化水素)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(炭素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素由来の基、または炭素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素残基、またはヘテロ原子を含む単環または縮合環から誘導される基)を挙げることができる。
【0046】
前記化学式1で、CyN−CyCの各置換基は互いに連結されて、2価の基として、置換または非置換の4−7原子環基または置換または非置換の4−7原子ヘテロ環基を形成し、特に、縮合4−7原子環基またはヘテロ環基を形成できる。ここで、環基またはヘテロ環基は、2価の基として、C−C30シクロアルキル基(シクロアルキレン基)、C−C30ヘテロシクロアルキル基(ヘテロシクロアルキレン基)、C−C30アリール基(アリーレン基)またはC−C30ヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)を表し、各環基またはヘテロ環基は一つまたはそれ以上の置換体によって置換されうる。ここで“ヘテロ”の意味は、N、O、P、Sのようなヘテロ原子を含む場合を称する。
【0047】
前記化学式1の化合物で一つ以上の水素原子は多様な置換基に置換でき、このような置換体はハロゲン原子、−OR、−N(R、−P(R、−POR、−PO、−PO、−SR、−Si(R、−B(R、−B(OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SO、−SOであり、前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。なお、前記Rを2つ以上有する場合、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
前記化学式3の化合物は、下記化学式4または化学式5の化合物でありうる。
【0049】
【化11】

【0050】
前記式で、Xは、N、P、SまたはOであり、CyNは、2価の基として、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、2価の基として、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基(アリーレン基)またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、CCyは、2価の基として、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基(アリーレン基)またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、NCyXは、2価(3価)の基として、イリジウム(III)と結合する窒素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、CyN−CyC及びNCyX−CCyは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【0051】
【化12】

【0052】
前記化学式5で、X、CyN、CyCは、前記化学式1で定義した通りであり、NCyは、2価の基として、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、CCyXは、2価(3価)の基として、イリジウム(III)と結合する炭素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基(アリーレン基)または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)であり、CyN−CyC及びNCy−CCyXは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【0053】
前記化学式1ないし5で、シクロメタル化配位子(CyN−CyC)は下記化学式で表示されうるが、これに限定されるものではない。
【0054】
【化13】

【0055】
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものであり、Zは、S、OまたはNR(Rは、水素原子またはC−C20アルキル基である)である。前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。なお、前記Rを2つ以上有する場合、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
前記化学式1で、A及びBが持つことができる置換基としては、特に制限されないが、2価の基として、炭素数2ないし8のシクロアルキル基(シクロアルキレン基)、炭素数6ないし20のアリール基(アリーレン基)、炭素数1ないし20のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)、シリル基(シリレン基)、ボリル基(ボリレン基)等が挙げられる。このうち、炭素数2ないし8のシクロアルキル基(シクロアルキレン基)としては、シクロへキシル基(シクロへキシレン基)、シクロペンチル基(シクロペンチレン基)、シクロオクチル基(シクロオクチレン基)などがあるが、これらに限定されるものではない。炭素数6ないし20のアリール基(アリーレン基)としては、ベンゼン、1,3−ベンゾジオキソール、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、アズレンなどの炭素数6ないし20の芳香族化合物(芳香族炭化水素)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(芳香族化合物ないし芳香族炭化水素由来の基、または芳香族化合物ないし芳香族炭化水素残基、または単環または縮合環から誘導される基)があるが、これらに限定されるものではない。炭素数1ないし20のヘテロアリール基(ヘテロアリーレン基)としては、チオフェン、フラン2(5H)−フラノン、ピリジン、クマリン、イミダゾール、2−フェニルピリジン、2−ベンゾチアゾール、2−ベンゾオキサゾール、1−フェニルピラゾール、1−ナフチルピラゾール、5−(4−メトキシフェニル)ピラゾール、2,5−ビスフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2,3−ベンゾフラン2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾールなどの炭素数1ないし20のヘテロ芳香族化合物(ヘテロ芳香族炭化水素)から、環炭素原子の水素原子を除去することにより生成される2価の基(炭素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素由来の基、または炭素原子含有のヘテロ芳香族化合物ないしヘテロ芳香族炭化水素残基、またはヘテロ原子を含む単環または縮合環から誘導される基)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
シリル基(シリレン基)としては、トリアリルシリル基(トリアリルシリレン基)、トリアルキルシリル基(トリアルキルシリレン基)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ボリル基(ボリレン基)としては、ジアルキルボリル基(ジアルキルボリレン基)、ジアリルボリル基(ジアリルボリレン基)、ジフルオロボリル基(ジフルオロボリレン基)、ジフルオロヘテロアリールボリル基(ジフルオロヘテロアリールボリレン基)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
電子正孔輸送成分(電子正孔輸送モイエティ;electron transporting moietie)A−X−Bとしては、キノリル基(キノリレン基)、置換されたキノリル基(キノリレン基)、イミダゾリル基(イミダゾリレン基)、置換されたイミダゾリル基(イミダゾリレン基)、ベンズイミダゾリル基(ベンズイミダゾリレン基)、置換されたベンズイミダゾリル基(ベンズイミダゾリレン基)、トリアゾリル基(トリアゾリレン基)、置換されたトリアゾリル基(トリアゾリレン基)、オキサゾリル基(オキサゾリレン基)、置換されたオキサゾリル基(オキサゾリレン基)、1,10−フェナントロリル基(1,10−フェナントロリレン基)、置換された1,10−フェナントロリル基(1,10−フェナントロリレン基)、キノキサリニル基(キノキサリニレン基)及び置換されたキノキサリニル基(キノキサリニレン基)などを挙げることができる。
【0059】
前記化学式4でNCyX−CCyの例としては、下記化学式のものを挙げることができる。
【0060】
【化14】

【0061】
前記化学式5でNcy−CcyXの例としては、下記の化学式を挙げることができる。
【0062】
【化15】

【0063】
式中、R及びRは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。なお、前記Rを2つ以上有する場合、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
本発明による化学式1ないし3の具体的な化合物としては、次のようなものが挙げられる。
【0065】
【化16】

【0066】
【化17】

【0067】
【化18】

【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
本発明による前記化学式1ないし3で表示される銅−イリジウム錯体は、下記化学式11の{[3,5−CFPz}−Cu}を下記化学式12の化合物と反応させて製造されうる。
【0071】
【化21】

【0072】
【化22】

【0073】
前記式で、A−X−B、X、CyN及びCyN−CyCは、化学式1で定義した通りである。
【0074】
化学式1の代表的な化合物の製造方法は、下記反応式に示した通りである。
【0075】
【化23】

【0076】
前記反応は、ベンゼンのような溶媒中で1:6のモル比で12ないし16時間室温で行われうる。
【0077】
本発明による有機電界発光素子は、化学式1ないし3で表示される銅−イリジウム錯体を利用して有機膜、特に、発光層を形成して製作される。この時、前記化学式1ないし化学式3で表示される銅−イリジウム錯体は、発光層形成物質である燐光ドーパント材料として非常に有効であり、赤色波長領域(590〜630nm)で優秀な発光特性を表す。
【0078】
前記化学式1ないし3で表示される銅−イリジウム錯体を燐光ドーパントとして用いる場合、有機膜が1種以上の高分子ホスト、高分子と低分子との混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択された一つ以上をさらに含むことができる。ここで高分子ホスト、低分子ホスト、非発光高分子マトリックスとしては、有機電界発光素子用発光層の形成時に通常、一般的に使われるものならばいずれも使用可能であり、高分子ホストの例としては、PVK(ポリ(ビニルカルバゾール))、ポリフルオレンなどがあり、低分子ホストの例としては、CBP(4,4’−N、N’−ジカルバゾール−ビフェニル)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1−1,1’−ビフェニル{4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1−1,1’−ビフェニル}、9,10−ビス[(2’,7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、非発光高分子マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記化学式1ないし3で表示される銅−イリジウム錯体の含有量は、有機膜、例えば、発光層形成材料の総重量100重量部を基準として1ないし30重量部であることが望ましい。1重量部未満である場合には、発光物質が足りなくて効率及び寿命が低下して望ましくなく、30重量部を超過する場合には三重項の消光現象が起きて効率が低下して望ましくない。そして、このような有機金属錯体を発光層に導入しようとする場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、プリンティング法、コーティング法、インクジェット方法などを利用できる。
【0080】
また、前記化学式1ないし3で表示される銅−イリジウム錯体は緑色発光物質または青色発光物質と共に使用して白色光を発光できる。
【0081】
図1Aないし図1Fは、本発明の望ましい一実施形態による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【0082】
図1Aを参照すれば、第1電極10の上部に前記化学式1ないし化学式3の銅−イリジウム錯体を含む発光層12が積層され、前記発光層12の上部には第2電極14が形成される。
【0083】
図1Bを参照すれば、第1電極10の上部に前記化学式1ないし化学式3の銅−イリジウム錯体を含む発光層12が積層され、前記発光層12の上部に正孔抑制層(HBL)13が積層されており、その上部には第2電極14が形成される。
【0084】
図1Cの有機EL素子は、第1電極10と発光層12との間に正孔注入層(HIL)11が形成されたことを除いては、図1Bの場合と同じ積層構造を持つ。
【0085】
図1Dの有機EL素子は、発光層12上部に形成された正孔抑制層(HBL)13の代りに電子輸送層(ETL)15が形成されたことを除いては、図1Cの場合と同じ積層構造を持つ。
【0086】
図1Eの有機EL素子は、化学式1ないし化学式3の銅−イリジウム錯体を含む発光層12の上部に形成された正孔抑制層(HBL)13の代りに、正孔抑制層(HBL)13と電子輸送層15とが順次に積層された2層膜を使用することを除いては、図1Cの場合と同じ積層構造を持つ。場合によっては、図1Eの有機EL素子で電子輸送層15と第2電極14との間には電子注入層がさらに形成されることもある。
【0087】
図1Fの有機EL素子は、正孔注入層11と発光層12との間に正孔輸送層16をさらに形成したことを除いては、図1Eの有機EL素子と同じ構造を持っている。この時、正孔輸送層16は、正孔注入層11から発光層12への不純物侵入を抑制する役割を行う。
【0088】
前述した積層構造を持つ有機EL素子は、通常、一般的な製作方法によって形成可能であり、その製作方法が特別に限定されるものではない。
【0089】
ここで、前記有機膜の厚さは30ないし100nmであることが望ましい。前記有機膜の厚さが30nm未満であれば、効率及び寿命が低下し、100nmを超過すれば、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0090】
一方、前記有機膜とは、発光層以外にも電子輸送層、正孔輸送層のように有機電界発光素子で一対の電極間に形成される有機化合物からなる膜を称する。
【0091】
前記有機電界発光素子では各層間にバッファ層が形成されうるところ、このようなバッファ層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、またはこれらの誘導体を使用できるが、これに限定されない。
【0092】
前記正孔輸送層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、例えば、TPD(N,N’−bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine)、NPD(N,N’−di(naphthalenyl−1−yl)−N,N’−diphenyl−benzidine)、mCP(1,3−bis(carbazol−9−yl)−benzene)、TCP(1,3,5−tris−(carbazol−9−yl)−benzene)、m−MTDATA(4,4’4”−tris−(N−3methylphenyl−N−phenyl amino)−triphenylamine、TCTA(4,4’4”−tris−(carbazol−9−yl)−triphenylamine)、ポリトリフェニルアミンなどを挙げることができ、望ましくは、ポリトリフェニルアミンを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0093】
前記電子輸送層の素材としては、通常、一般的に使われる物質を使用でき、例えば、PBD(2−(4−biphenylyl)−5−(4−tert−butylphenyl)−1,3,4−oxadiazole、TPBI(2,2’,2”−(1,3,5−benzenetriyl)−tris−(1−phenyl−1−H−benzimidazole)、BCP(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline)、BPhen(4,7diphenyl−1,10−phenanthroline)、BAlQ(Bis−2−methyl−8−quinolinolato)4−(phenylphenolato)Aluminium)、ポリオキサジアゾールなどを挙げることができ、望ましくは、ポリオキサジアゾールを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0094】
前記正孔注入層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スターバース型トアミン誘導体類であるTCTA、m−MTDATA、m−MTDAPB、溶解性のある伝導性高分子であるPani/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid:ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)またはPEDOT/PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸))、Pani/CSA(Polyaniline/Camphorsulfonicacid:ポリアニリン/カンファースルホン酸)、及びPANI/PSS(Polyaniline)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホン酸))を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記電子注入層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、NaCl、CsF、LiO及びBaOを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0096】
前記正孔抑制(遮断)層の素材としては、通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、BaFまたはMgFなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0097】
本発明の有機電界発光素子の製作は、特別の装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を利用した有機電界発光素子の製作方法によって製作できる。
【0098】
前記本発明による化学式1ないし3の銅−イリジウム錯体は、約590〜630nmで発光できる。このような有機金属錯体を利用した発光ダイオードは、フルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾に使用可能である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を下記実施例を挙げてさらに説明するが、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
<参考例1:[{3,5−(CFPz}Cu]の製造>
【0101】
【化24】

【0102】
20ないし30mLのベンゼンに0.40g(1.90mmole)のCuO及び1g(4.9mmole)の3,5−トリフルオロメチルピラゾールを添加して48−72時間60℃で反応させた。反応混合物を低圧(減圧)で冷却させた後、溶媒を蒸発させた。生成された白色粉末をベンゼンとヘキサンとの混合物から再結晶した。
【0103】
H NMR CDCl:ppm 6.97(s,1H,CH),13.07−11.23(broad,NH)
<実施例1:化学式6で表示される化合物の合成>
【0104】
【化25】

【0105】
20ないし30mLのベンゼンに0.50g(0.6mmole)のIrPIQOBT(ビス−[N,C’−2−フェニルイソキノリアート]1−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾ−1,2,5−トリアゾラートイリジウム(III))及び参考例1で得られた0.080g(0.1mmole)の[(3,5−トリフルオロメチルピラゾラート)Cu][{3,5−(CFPz}−Cu]を添加して、室温で12〜16時間反応させた。反応混合物を低圧(減圧)でろ過した後、溶媒を蒸発させた。生成された赤色固体をベンゼンとヘキサンとの混合物から再結晶した。
【0106】
H NMR CDCl:ppm 9.15−9.04(m,2H),8.91(d,1H),8.42(d,1H),8.14(d,1H),7.95(d,1H),7.88(t,2H),7.82−7.74(m,3H),7.70−7.65(dd,2H),7.63(d,1H),7.37(s,0.5H),7.34(d,1H),7.17(t,1H),7.12−7.00(m,2H),6.94(t,1H),6.94−6.66(m,4H),6.49(d,1H),6.29(d,1H),6.15(d,1H),6.08(d,1H),2.18(s,3H)
前記最終目的物の構造は、H NMRスペクトルを通じて分析して確認し、その結果は図3に示した。図3で(a)は、化学式6の銅−イリジウム錯体に該当し、(b)は、IrPIQOBTに該当するNMRスペクトルである。前記二つのNMRスペクトルは、ジ(トリフルオロメチル)ピラゾールの結合如何による差を持つ。
【0107】
前記過程によって得た化学式6の化合物の発光特性は、前記化合物を塩化メチレンに溶解して10−4M溶液に作った後、溶液状態での発光特性を調べ、ニート(Neat)フィルム上に前記化合物をスピンコーティングして、フィルム状態での発光特性を調べた。
【0108】
前記実施例1から得た化学式6の化合物の発光特性及びCIE(色座標)特性を整理して下記表1に表し、化学式6の化合物の発光特性を図4に示した。
【0109】
【表1】

【0110】
前記表1から、本発明による銅−イリジウム錯体から優秀な燐光特性を持つドーパントが形成され、赤色領域(590〜630nm)で発光する燐光材料に適しているということが分かる。
【0111】
<実施例2:有機電界発光素子の製作>
ITO(indium−tin oxide)がコーティングされた透明電極基板をきれいに洗浄した後、ITOを感光性樹脂とエッチング液とを利用してパターニングしてITO電極パターンを形成し、これを再びきれいに洗浄した。このように洗浄された結果物上にPEDOT{ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン[CH8000]}を約50nmの厚さにコーティングした後、120℃で約5分間ベーキングして正孔注入層を形成した。
【0112】
前記正孔注入層の上部に、クロロホルムに溶解させたドーパント(実施例1から得た化学式6で表示される銅−イリジウム錯体)を発光層形成材料(ドーパント+ホスト)の総重量100重量部を基準として8重量部及びホスト[mHost5、PBD及びTPD=12:8:3(質量比)]をスピンコーティングし、100℃で1時間ベーキング処理した後、真空オーブン内で溶媒を完全に除去して厚さ50nmの発光層を形成させた。
【0113】
次いで、前記高分子発光層の上部に真空蒸着器を利用して真空度を4×10−6torr以下に維持しつつ、TPBIを真空蒸着して45nm厚さの電子輸送層を形成した後、この上部にLiFを0.1/secの速度で真空蒸着して0.8nm厚さの電子注入層を形成した。
【0114】
次いで、Alを10Å/secの速度で蒸着して200nm厚さのアノードを蒸着して封止することで有機電界発光素子を完成した。この時、封止過程は、乾燥した窒素ガス雰囲気下のグローブボックスでBaO粉末を取り入れて金属缶で密封した後、UV硬化剤で最終処理する過程を通じて行われた。
【0115】
前記EL素子は多層型素子であり、概略的な構造は図2に図示した通りであり、発光面積は6mmであった。符号20は基板である。
【0116】
実施例2で得られた有機電界発光素子の電界発光特性、CIE(色座標)、電流効率、駆動電圧、輝度特性を下記表2に表した。
【0117】
【表2】

【0118】
前記表2から、本発明による実施例1の化学式6の化合物を採用する実施例2の電界発光素子は赤色発光領域で高い輝度を表し、低い電圧でも駆動が可能であり、低い電圧でも高い電流密度を表したことが分かる。
【0119】
前記実施例2によって製作された有機電界発光素子の波長によるEL発光特性変化を図5にさらに具体的に示した。本発明の化合物をドーパントとして使用する場合、これら特性がいずれも改善されていることが分かる。
【0120】
<実施例3:化学式7の化合物の合成>
【0121】
【化26】

【0122】
IrPPYPYB(ビス−[N,C’−2−フェニルピリジナート](2−ピリジル)ベンズイミダゾラートイリジウム(III))0.84g(1.2mmole)及び参考例1で得られた[(3,5−トリフルオロメチルピラゾラート)Cu][{3,5−(CFPz}−Cu] 0.16g(0.2mmole)をベンゼン20〜30mLに添加し、室温で12〜16時間反応させた。反応生成物から溶媒を蒸発させた。得た緑色固体生成物をベンゼンとヘキサンとの混合物を使用して再結晶した。化合物は赤色発光した。
【0123】
<実施例4:化学式9の化合物の合成>
【0124】
【化27】

【0125】
IrPIQPZP(ビス−[N,C’−2−フェニルキノリナート](2−フェニル)ピラゾラートイリジウム(III))0.46g(0.6mmole)及び参考例1で得られた[(3,5−トリフルオロメチルピラゾラート)Cu]([{3,5−(CFPz}−Cu])0.16g(0.2mmole)をベンゼン20−30mLに添加し、室温で12〜16時間反応させた。溶媒を反応生成物から蒸発させた。得られた緑色固体生成物をベンゼンとへキサンとの混合物を使用して再結晶した。化合物は赤色発光した。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、有機電界発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図1B】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図1C】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図1D】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図1E】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図1F】本発明の一具現例による有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【図2】本発明によって製造された有機電界発光素子の一具現例を示す図面である。
【図3】実施例1で得られた発光銅−イリジウム錯体(a)及びIr(PIQ)OBT(bis−[N,C−2−フェニルイソキノリアート](2−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ベンゾ−1,2,5トリアゾラートイリジウム(III)(b)のNMRスペクトルを示す図面である。
【図4】実施例1で得られた発光銅−イリジウム錯体の熱重量分析結果を示すグラフである。
【図5】実施例1で得られた発光銅−イリジウム錯体を利用した有機電界発光素子のELスペクトルを示す図面である。
【符号の説明】
【0128】
10 第1電極、
11 正孔注入層、
12 発光層、
13 正孔抑制層、
14 第2電極、
15 電子輸送層、
16 正孔輸送層、
20 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される異種核銅(I)−イリジウム(III)錯体:
【化1】

前記式で、
A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子であり、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基、またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項2】
下記化学式2で表示される異種核銅(I)−イリジウム(III)錯体:
【化2】

前記式で、
A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子であり、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項3】
下記化学式3で表示される異種核銅(I)−イリジウム(III)錯体:
【化3】

前記式で、
A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子であり、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項4】
前記化学式3の化合物が、下記化学式4の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の銅−イリジウム錯体:
【化4】

前記式で、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CCyは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
NCyXは、イリジウム(III)と結合する窒素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyC及びNCyX−CCyは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項5】
前記化学式3の化合物は下記化学式5の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の異種核銅−イリジウム錯体:
【化5】

前記式で、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
NCyは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CCyXは、イリジウム(III)と結合する炭素を含み、ヘテロ原子Xを含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基または置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyC及びNCy−CCyXは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項6】
前記シクロメタル化配位子(CyN−CyC)は、下記化学式のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の異種核銅−イリジウム錯体:
【化6】

式中、
11、R12、R13、R14及びR15は、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものであり、
Zは、S、OまたはNR(Rは、水素原子またはC−C20アルキル基である)である。
【請求項7】
前記A−X−Bは、下記化学式の基のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の銅−イリジウム錯体:
【化7】

、Rは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、
前記Rは、水素、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。
【請求項8】
前記NCyX−CCyは、下記化学式の基のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載の銅−イリジウム錯体:
【化8】

式中、
及びRは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。
【請求項9】
前記NCy−CCyXは、下記化学式の基のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項5に記載の銅−イリジウム錯体:
【化9】

式中、
及びRは、互いに関係なく一置換または多置換された作用基であり、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20アルキル基、またはC−C20アリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40アリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40アルキルアリール基、置換または非置換のC−C40ヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40ヘテロアルキルアリール基のうちから選択されてなるものである。
【請求項10】
前記化学式1の化合物は、下記化学式6の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の異種核銅−イリジウム錯体。
【化10】

【請求項11】
前記化学式2の化合物は、下記化学式7および化学式8の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の異種核銅−イリジウム錯体。
【化11】

【化12】

【請求項12】
前記化学式3の化合物は、下記化学式9および化学式10の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載の多核銅錯体。
【化13】

【化14】

【請求項13】
下記化学式11の{[3,5−CFPz}−Cu}を下記化学式12の化合物と反応させることを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載の異種核銅−イリジウム錯体の製造方法:
【化15】

【化16】

前記式で、
A−X−Bは、ヘテロ原子Xを含有した1価陰イオンの二座配位の補助配位子であり、
Xは、N、P、SまたはOであり、
CyNは、イリジウム(III)と結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、またはイリジウムと結合する窒素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyCは、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数4ないし60の炭素環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロ環基、イリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のアリール基またはイリジウムと結合する炭素を含む置換または非置換の炭素数3ないし60のヘテロアリール基であり、
CyN−CyCは、窒素(N)と炭素(C)を通じてイリジウムと結合されているシクロメタル化配位子を表す。
【請求項14】
一対の電極間に有機膜を含む有機電界発光素子において、
前記有機膜が、請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載の異種核銅−イリジウム錯体を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項15】
前記有機膜は、発光層であることを特徴とする請求項14に記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記異種核銅−イリジウム錯体の含有量は、有機膜形成材料または発光層形成材料の総重量100重量部を基準として1ないし30重量部であることを特徴とする請求項14または15に記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
前記有機膜は、1種以上の高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストとの混合物、低分子ホスト及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択された一つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項14〜16のうちいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項18】
前記有機膜は、緑色発光物質または青色発光物質をさらに含むことを特徴とする請求項14〜17のうちいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308498(P2007−308498A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133497(P2007−133497)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】