説明

発光粒子、発光装置及びそれらの製造方法

【課題】出射される光の出射方向に指向性を持たせることができる発光粒子を提供する。
【解決手段】粒状の透明材料21と、透明材料21の中心からずれた位置に内包される蛍光体22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた発光素子、発光装置及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置として、LED(Light Emitting Diode)と蛍光体とを組み合わせたものが考えられている。この発光装置は、LEDにおいて発せられた光を蛍光体にあてることでこの蛍光体を発光させるものである。
【0003】
この発光装置においては、蛍光体をLEDの発光部上に堆積させることにより、蛍光体同士でその発光した光を吸収し合う結果、発光装置から出射される光の強度が低下する問題があった。
【0004】
この問題点を解決するための一つの方策として、各蛍光体の表面を透明な材質で被覆した発光粒子を用いることにより、隣接する蛍光体の間隔を広げて再吸収を起こり難くすることが考えられている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、単に蛍光体を透明な材質で被覆した場合、蛍光体は、該蛍光体を透明な材質で被覆してなる発光粒子の中心に配置されることにより、蛍光体において発光した光は、発光粒子から放射状に出射することになる。
【特許文献1】特開2003−46141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、発光素子から光が放射状に出射すると、この光を出射すべき所定の方向以外にも出射されることになり、出射すべき所定の方向への光の強度が低下する問題があった。
【0007】
このような技術的課題を解決するためになされた本発明の目的は、出射される光の出射方向に指向性を持たせることができる発光粒子、発光装置及びそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る特徴は、発光粒子において、粒状の透明材料と、透明材料の中心からずれた位置に内包される蛍光体とを備えることである。
【0009】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、発光装置において、発光素子と、発光素子において発光した光を吸収して発光する蛍光体及び中心からずれた位置に蛍光体を内包する粒状の透明材料を有する発光粒子とを備えることである。
【0010】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、発光粒子の製造方法において、蛍光体及び液状の熱硬化性の透明材料を混合して透明材料に蛍光体を内包させるステップと、蛍光体を内包する透明材料を落下させるステップと、落下中に透明材料を加熱して該透明材料の表面を硬化させるステップと、落下の後に、透明材料に内包される蛍光体をその重みによって透明材料の中心からずれた位置に沈降させるステップと、蛍光体が沈降した透明材料を加熱して該透明材料の内部を硬化させるステップとを備えることである。
【0011】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、発光装置の製造方法において、蛍光体及び液状の熱硬化性の透明材料を混合して透明材料に蛍光体を内包させるステップと、蛍光体を内包する透明材料を発光素子上に落下させるステップと、落下中に透明材料を加熱して該透明材料の表面を硬化させるステップと、落下の後に、透明材料に内包される蛍光体をその重みによって透明材料の中心からずれた位置に沈降させるステップと、蛍光体が沈降した透明材料を加熱して該透明材料の内部を硬化させるステップとを備えることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光粒子から出射される光の出射方向に指向性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものと異なる。更に、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置10は、発光素子(LED12)と、発光素子において発光した光を吸収して発光する蛍光体22及び中心からずれた位置に蛍光体22を内包する粒状の透明材料21を有する発光粒子20とを備える。
【0015】
発光装置10において、カップ11は、底面部11Aとその周縁部に沿って設けられた側面部11Bによって容器形状に構成され、底面部11Aに対向する部分は開口されている(開口部11C)。
【0016】
カップ11においては、底面部11Aから開口部11Cにかけて開口面積が次第に大きくなるように側面部11Bの内壁が傾斜している。このカップ11の底面部11Aに発光素子としてLED12が配置されるとともに、このLED12上に発光粒子20が堆積されている。
【0017】
図2に示すように、発光粒子20は、蛍光体22を、樹脂、ガラス又は誘電体でなる透明材料21によって被覆した構成を有する。透明材料21は、略球体形状に形成されており、蛍光体22は、この球体形状の中心からずれた位置に配置されている。すなわち、発光粒子20においては、蛍光体22を覆った透明材料21の厚みが厚い厚膜部分A1と、透明材料21の厚みが薄い薄膜部分A2とを有する。また、発光粒子20の透明材料21においては、隣接する発光粒子20が接する他は、空隙が接するようになされている。この空隙の屈折率は、発光粒子20の透明材料21の屈折率よりも小さいことにより、蛍光体22において発光した光は、この屈折率差によって透明材料21と空隙との境界において屈折する。
【0018】
このように、透明材料21の厚膜部分A1では、蛍光体22において発光した光は、透明材料21とそれに隣接する空隙との屈折率差によって屈折することにより、蛍光体22から厚膜部分A1が設けられた側に指向性をもって出射することになる。なお、複数の発光粒子20を封止剤で封止する場合には、各発光粒子20間の空隙に封止剤が満たされることにより、空隙の場合と同様にして、透明材料21の屈折率よりも低い屈折率を有する封止剤を用いる必要がある。この場合、封止剤と透明材料21との屈折率差を0.05以上とする。屈折率差が0.05以下の場合には、蛍光体22からの光がそのまま透過することになり、指向性を与えることが困難になる。
【0019】
また、発光装置10において、各発光粒子20は、その薄膜部分A2が、LED12側(底面部11A側)を向くように配置されている。すなわち、各発光粒子20の光の出射側となる厚膜部分A1がカップ11の開口部11Cの方向に向くように構成されている。これにより、蛍光体12の励起により発光した光の多くは、カップ11の開口部11C方向に向かって出射する。すなわち、LED12から発せられた光が蛍光体22を励起し、この結果発光した光が発光粒子20から開口部11C方向に出射することになる。
【0020】
なお、カップ11における発光粒子20の配置は、蛍光体22による自己吸収を低減するために細密構造で層数を少なくすることが有効である。このような構成例を図3に示す。図3においては、発光粒子20を2層に設け、下層の発光粒子20a(図中、破線で示す)に対して、上層の発光粒子20b(図中実線で示す)は、上方から見てその中心が下層において隣接する3つの発光粒子20の間に位置するようになされている。このように配置することにより、均一な白色光を得ることができる。
【0021】
以上説明した発光粒子20においては、透明材料21を用いて蛍光体22を被覆していることにより、この発光粒子20をカップ11内に堆積させた場合に、隣り合う発光粒子20の蛍光体22同士が透明材料21の厚みの分だけ離れて配置されることになる。蛍光体22同士が透明材料21の厚みの分だけ離れて配置されると、蛍光体22の自己吸収や複数色を用いた場合の他の色の蛍光体による吸収が少なくなり、発光効率を向上させることができるとともに、平均演色評価数Raを向上させることができる。図4(A)は、本実施の形態に係る発光粒子(蛍光体内包粒子)20を用いた場合の発光強度と、透明材料による被覆を行っていない蛍光体を用いた場合の発光強度との相対関係を示し、被覆を行っていない蛍光体を用いた場合(蛍光体塗布)の発光強度を1とした場合における発光粒子20を用いた場合(発光粒子使用)の発光強度の比率(相対強度)を表すものである。また、図4(B)は、本実施の形態に係る発光粒子(蛍光体内包粒子)20を用いた場合の平均演色評価数Raと、透明材料による被覆を行っていない蛍光体を用いた場合の平均演色評価数Raとの相対関係を示す。すなわち、被覆を行っていない蛍光体を用いた場合(蛍光体塗布)の平均演色評価数Raを1とした場合における発光粒子20を用いた場合(発光粒子使用)の平均演色評価数Raの比率(相対Ra)を表すものである。図4(A)、(B)に示すように、発光粒子(蛍光体内包粒子)20を用いると、発光効率及び平均演色評価数が向上することが分かる。
【0022】
また、透明材料21の中心からずれた位置に蛍光体22を配置した発光粒子20において、薄膜部分A2がLED12側を向き、厚膜部分A1がカップ11の開口部11C側を向くように配置することにより、蛍光体22において発光した光は、発光粒子20から開口部11C側に指向性をもって出射することとなる。発光粒子20からの光が開口部11C側に指向性をもって出射されると、LED12側に戻る光が少なくなることにより、開口部11Cから光を出射する発光装置10として、発光効率が向上する。
【0023】
図5は、発光粒子20の中心と該発光粒子20に内包される蛍光体22の位置とのずれ量(中心のずれ)と、発光強度との相対関係を、発光粒子20の径が20μm、60μm及び100μmのそれぞれについて表し、中心のずれが0である場合の発光強度を1とした場合の各ずれ量における相対強度を表す。図5に示すように、いずれの径においても、ずれ量が大きいほど発光強度が大きくなることが分かる。
【0024】
また図6は、発光粒子(蛍光体内包粒子)20の大きさと発光強度との関係を示す。これは、各大きさの発光粒子(蛍光体内包粒子)20に対して、下方から励起光を照射し、上方より蛍光体により変換された光の発光強度を測定した結果である。この場合、5μm、10μm、30μm、50μm、100μm、200μmの各粗さのふるいにかけた発光粒子20毎にその発光強度を求めた結果である。すなわち、1〜5μm、5〜10μm、10〜30μm、30〜50μm、50〜100μm、100〜200μmの大きさの発光粒子(蛍光体内包粒子)20ごとの発光強度を表すものである。発光強度は、100〜200μmの大きさの発光粒子20の発光強度を1として場合の相対強度を表している。
【0025】
この図6に示すように、発光粒子(蛍光体内包粒子)20の大きさ(径)として、5μm〜100μmの場合に強い発光強度を得ることができる。
【0026】
なお、上述の実施の形態においては、同じ大きさの発光粒子20を複数堆積させる場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示すように、異なる大きさの発光粒子20を用いるようにしてもよい。この場合、例えば、粒子径の大きな発光粒子20Lを最下層に配置し、その上層に粒子径の小さな発光粒子20Sを配置することにより、LED12からの光が上層の発光粒子20Sに届き易くなる。
【0027】
また、異なる色(赤色、黄色、緑色、青色)の蛍光体22を用いる場合、緑色の蛍光体は視感度が高く、発光効率も高いため緑色の蛍光体を用いた発光粒子20の数を少なくし、赤色及び青色の蛍光体を用いた発光粒子20の数を多く配置する。この場合、発光粒子20を大きく形成することにより、該発光粒子20の数を少なくすることができ、発光粒子20を小さく形成することにより、該発光粒子20の数を多くすることができる。
【0028】
従って、図8に示すように、緑色の蛍光体22Gを用いた発光粒子20Gを、赤色及び青色の蛍光体22R、22Bを用いた発光粒子20R、20Bに比べて大きく形成することにより、該緑色の発光粒子20Gの数を少なく配置することができる。なお、図8に示すように、赤色の発光粒子20Rを配列してなる層L1、緑色の発光粒子20Gを配列してなる層L2及び青色の発光粒子20Bを配列してなる層L3によって3層構造とする場合、赤色の発光粒子20Rを構成する赤色の蛍光体22Rとして、青色の蛍光体22Bにおいて発光した光を吸収しない種類のもの(La2O2S:Eu)を用いた場合には、赤色の発光粒子20Rを最上層に配置する。これに対して、赤色の発光粒子20Rを構成する赤色の蛍光体22Rとして、青色の蛍光体22Bにおいて発光した光を吸収する種類のもの(CaAlSiN3:Eu)を用いた場合には、図9に示すように、赤色の発光粒子20Rを配列してなる層L1を最下層に配置することにより、青色の蛍光体22Bにおいて発光した光が吸収されることを防止することができる。
【0029】
なお、図10(A)は、3種類の蛍光体を混ぜ合わせた後、LED上部へ塗布した場合の配光角と発光強度との相対関係を示し、配光角が0°の場合の波長440nmの光の発光強度を1とした場合における各配光角での波長440nm及び530nmの光の発光強度の比率(相対強度)を表す。また、図10(B)は、本実施の形態に係る発光素子20を用いた場合の配光角と発光強度との相対関係を示し、配光角が0°の場合の波長440nmの光の発光強度を1とした場合における各配光角での波長440nm及び530nmの光の発光強度の比率(相対強度)を表す。すなわち、光の波長430nm及び530nmについて、ある角度を基準にした配光角(0〜90°)での相対強度をプロットすることにより配光特性を示したものである。図10(A)では、ある角度では発光強度が逆転する領域が生じるが、図10(B)の場合には、設計による最適化で角度による発光強度の比はほぼ同じ値が得られた。
【0030】
(実施例1)
蛍光体及び液状の樹脂を混合してヒータ内を落下させることで発光粒子20及び発光装置10を製造する製造装置について説明する。
【0031】
図11は、発光粒子20を製造するための製造装置30を示し、蛍光体22を被覆する透明材料21としての液状の熱硬化性の樹脂31を貯留するための樹脂タンク32及び蛍光体22を貯留するための蛍光体タンク33を有する材料供給部34と、材料供給部34から供給された樹脂31及び蛍光体22を混合する混合部35と、混合部35において混合された樹脂31及び蛍光体22を落下させながら加熱する加熱部39とを備える。
【0032】
樹脂31は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等を用いることができるが、耐熱性の高いシリコン樹脂が望ましい。また、蛍光体22は、酸化物系、窒化物系、硫化物系のいずれかを用いることができるが、耐熱性の高い窒化物系又は酸化物系が望ましい。蛍光体22は、赤色の蛍光体、緑色の蛍光体、青色の蛍光体を用いることができる。赤色の蛍光体としては、La2O2S:Eu,Sm(記号「:」以下は付活元素を表す)等を用いることができ、緑色の蛍光体としては、lnGaN又はBaMgAl27O17:Eu,Mn等を用いることができ、青色の蛍光体としては、lnGaN又は(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu等を用いることができる。これら3原色の蛍光体22を用いることにより、LED12から発光される光によってこれらの色の蛍光体22が励起されて発光を生じ、各色の蛍光体22による発光が重ね合わされることにより白色光を得ることができる。なお、緑色の蛍光体22に代えて、または緑色の蛍光体22と併せて黄色の蛍光体(例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu等)を用いることができる。なお、図8又は図9に示すように、赤色の蛍光体を22Rを内包した発光粒子20R、緑色の蛍光体22Gを内包した発光粒子20G及び青色の蛍光体22Bを内包した発光粒子20Bを層毎に分けて配置する場合には、各色ごとに蛍光体タンク33を用意すればよい。
【0033】
樹脂タンク32及び蛍光体タンク33は、外部から供給されるエアーによって樹脂31及び蛍光体22を混合部35に供給するようになされている。混合部35は、樹脂タンク32から樹脂31を導入させるための樹脂供給用の配管37Aと、蛍光体タンク33から蛍光体22を導入させるための蛍光体供給用の配管37Bと、これらを合流させるための合流部37Cと、合流部37Cにおいて合流した樹脂31及び蛍光体22を同一経路で排出させる配管37Dとを備える。配管37Dの先端部には、ノズル37Eが設けられている。
【0034】
合流部37Cを介して配管37Dに供給される液体31及び蛍光体22の供給量によって、樹脂球40(発光粒子20)の大きさ及びその中に含まれる蛍光体22の個数を制御するようになされている。すなわち、樹脂球40の大きさは、配管37Aを移動する樹脂31の移動速度とその粘性によって制御することができる。また、樹脂球40に含まれる蛍光体22の個数は、配管37Bを移動する蛍光体22の移動速度と、配管37Aを移動する樹脂31の移動速度とによって制御することができる。
【0035】
具体的には、樹脂31の流速を0.001ml/sとし、蛍光体22の流速を2個/sとする。この状態で径が0.3mmの配管37D内でこれらを混合し、500msごとに先端のノズル37Eから吐出させる。
【0036】
樹脂31と蛍光体22との混合物は、ノズル41から離れると、蛍光体22を中心としてこれを樹脂31によって被覆してなる球状となって配管41内を落下する。配管41内において、樹脂球40の落下経路の一部には、加熱部39が設けられている。この加熱部39においては、樹脂球40の落下経路の所定の落下長に渡って、その落下経路の周囲を取り囲むようにヒータ38が配置されている。このヒータ38によって、配管41内を落下する樹脂球40を加熱する。
【0037】
すなわち、樹脂球40は、落下によって所定長のヒータ38を通過し、その通過時間に応じて加熱される。ヒータ38は、200℃に加熱されており、このヒータ38を通過した樹脂球40は、その表面側から硬化を開始する。このように、200℃程度の高温で短時間に樹脂球40を加熱することにより、樹脂球40においては、まずその表面のみが硬化した状態で配管37の下端部に設けられたカップ11内に落下する。配管41内での樹脂球40の落下速度は、配管41の下方から気体供給部45によって配管41内を上昇する酸素Oの風速により制御することができる。このように樹脂球40の落下速度を制御して樹脂球40がヒータ38内を通過する時間を300ms程度とすることにより、樹脂球40は、熱による劣化を生じることなくその表面が硬化する。
【0038】
落下中の樹脂球40は、表面が硬化した状態でカップ11内に落下する。このカップ11がセットされた落下位置は、ヒータ44によって200℃程度に保たれており、ここに落下した樹脂球40は、その環境下において60秒程度で内部まで完全に硬化する。
【0039】
かかる製造装置30においては、樹脂球40が落下中に加熱部39のヒータ38内に存在する時間によって樹脂球40内での蛍光体22の位置が決まる。すなわち、ヒータ38内に存在する時間が短い場合、樹脂球はその表面が硬化し内部がほとんど硬化していない状態(内部の粘性が低い状態)でカップ11内に落下する。この場合、カップ11内に落下した樹脂球内部では、樹脂の粘性が低いことにより、蛍光体22が最も低い位置まで沈降した状態で全体が完全に硬化する。これに対して、ヒータ38内に存在する時間が長い場合、樹脂球はその表面が硬化するとともに内部もある程度硬化した状態でカップ11内に落下する。この場合、カップ11内に落下した樹脂球内部では、樹脂の粘性が高くなっていることにより、蛍光体22が最も低い位置まで沈降する前に全体が完全に硬化することになる。このように、樹脂球40がヒータ38内に存在する時間によって、樹脂球40内での蛍光体22の位置を制御することができる。しかして、製造装置40においては、配管41の下方から送りこまれる酸素の量(風量)を制御することで、配管41内での樹脂球40の落下速度を制御することができ、この結果、樹脂球40がヒータ38内に存在する時間を制御することができる。
【0040】
かくして、蛍光体22が樹脂球40の中心からずれた位置に移動した状態で樹脂球40全体を完全に硬化させることにより、樹脂球40の中心からずれた位置に蛍光体22を配置した発光粒子20を得る。
【0041】
なお、上述の実施例においては、樹脂31を用いた樹脂球40の内部に蛍光体22を含ませて発光粒子20を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、樹脂タンク32に貯留する樹脂31に代えて、スピンオンガラスを貯留することにより、蛍光体22をガラスで包んだ構造の蛍光体内包ガラス粒子を作成することができる。スピンオンガラスを用いる場合、ヒータ38の温度を800℃に設定することが望ましい。このような蛍光体内包ガラス粒子を発光素子として用いることもできる。スピンオンガラスとしては、シリケート系、シラノール系、シロキサン系があり、それぞれの粘性やガラス化温度が異なるため、蛍光体内包粒子の径に応じて使い分ける。例えば、ハネウエル製ACCUGLASS(登録商標)を用いた場合には、滴下後に通過するヒータ38の温度を500℃に設定することが望ましい。この場合は、蛍光体22と被覆ガラスの位置の調整は、ヒータ38内での気流により制御する。すなわち、ヒータ38内に酸素を5m/sで下から上に流し、この中を蛍光体22とスピンオンガラスを混ぜたものを滴下することにより、粒子は、落下しながら気流の影響で蛍光体22がスピンオンガラスの中心から偏心した位置でガラス化する。
【0042】
(実施例2)
ホットプレート上で蛍光体22に樹脂を被覆させて発光粒子20を製造する製造装置について説明する。
【0043】
図12(A)は、ホットプレート51を用いて発光粒子20を製造するための製造装置50を示し、ホットプレート51は、駆動部55によってx−y平面内で円運動するようになされ、また、ヒータ54によって加熱可能となっている。ホットプレート51の上方には、液状の樹脂31をホットプレート51上に噴霧するための噴霧装置56が設けられており、噴霧制御部53によって噴霧量及び噴霧時間を制御し得るようになされている。
【0044】
製造装置50全体の動作を制御するための制御部52は、駆動部55、ヒータ54及び噴霧制御部53をそれぞれ制御することにより、蛍光体22を樹脂31によって被覆してなる発光粒子20を製造する。
【0045】
すなわち、制御部52は、図13に示す製造処理手順を実行することにより、発光粒子20を製造する。ホットプレート51上に蛍光体22を配置した状態において(図12(A))、制御部52は、ステップS11において、駆動部55を制御することにより、ホットプレート51をx−y平面内において円運動開始させるとともに、ステップS12において、ヒータ54を制御することにより、ホットプレート51を加熱する。この状態において、制御部52は、ステップS13に移って、噴霧制御部53を制御することにより、噴霧装置56から液状の樹脂31をホットプレート51上に噴霧する。これによりホットプレート51上の蛍光体22に樹脂31が付着する。噴霧量及び噴霧時間は予め噴霧制御部53に設定されているものとする。
【0046】
この状態において、ホットプレート51は、上述のステップS11において開始された円運動が続けられていることにより、蛍光体22においては、その表面に樹脂31を付着させながらホットプレート51上を転がる。これにより、図12(B)に示すように、樹脂31が蛍光体22の表面を雪だるま式に包んでなる樹脂球40が出来上がる。樹脂球40の径は、予め噴霧制御部53に設定される噴霧量及び噴霧時間によって決定することができる。
【0047】
ホットプレート51を加熱するヒータ54の温度は、樹脂31が完全に固化する温度よりも低い温度に設定する。
【0048】
樹脂31の噴霧後、制御部52は、ステップS14に移って、駆動部55を制御することにより、ホットプレート51の円運動を停止させる。これにより、図12(C)に示すように、蛍光体22が中心にある樹脂球40が得られる。この状態において、ホットプレート51は、ヒータ54によって、樹脂31が完全に固化しない程度の温度で加熱されていることにより、樹脂球40の内部は固化していない状態となっている。従って、ホットプレート51の円運動の停止により、樹脂球40の中心にある蛍光体22は、その重みによって樹脂球40内を沈降する。
【0049】
制御部52は、ステップS14における円運動の停止制御を行った後、ステップS15において、内部タイマをスタートさせ、さらにステップS16において、内部タイマのカウント結果が予め設定されているカウント値に至ったか否かを判断する。内部タイマの設定カウント値は、樹脂球40内において蛍光体22が沈降するのに必要な時間に設定されている。従って、ステップS16において否定結果が得られると、このことは、樹脂球40内において蛍光体22が完全に沈降していないことを意味しており、制御部52は肯定結果が得られるまで当該ステップS16の判断を繰り返す。ステップS16において肯定結果が得られると、このことは、樹脂球40内において蛍光体22が完全に沈降したことを意味しており、制御部52は、ステップS16からステップS17に移って、ヒータ54を制御することにより、ホットプレート51の温度を、樹脂31が完全に硬化する温度に上昇させる。これにより、図12(D)に示すように、樹脂球40内において蛍光体22が沈降した状態で硬化する。かくして、蛍光体22が中心からずれた位置にある発光粒子20が完成する。
【0050】
完成した発光粒子20は、ふるいにかけ、粒径ごとに分けておき、LEDの周りに配置する。
【0051】
(実施例3)
CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、SiO2で蛍光体を被覆する方法について説明する。
【0052】
蛍光体は、準備槽で500℃程度に加熱しておき、反応槽内部にその上部から導入する。反応槽の内部には、原料ガスとしてSiH4と酸素が予め導入されており、蛍光体がこの中を落下することにより、この落下中に蛍光体表面にSiO2が形成される。
【0053】
原料ガスは、反応槽の下側から導入され、蛍光体は、導入ガスにより落下速度が減少し、比較的短い落下距離で厚いSiO2膜が形成される。この際に、SiO2は、成膜中でのガスの流れの異方性により下側が上側より厚くなるように非対称に形成される。透明なSiO2を形成するためには、蛍光体をSiO2で被覆する前に、蛍光体表面を洗浄する必要がある。
【0054】
なお蛍光体をSiO2膜で被覆する前の処理として、焼結形成した後の蛍光体を砕いて粒体にし、粒体の表面を均質化するために、酸化物系では、オゾン雰囲気中で処理を行い、窒化物系では、窒素ラジカル中で処理を行うと良好な結果が得られた。この際に、表面のみならず、粒体内部まで処理が及ぶと発光効率に変化が生じるため、粒体内部まで処理が及ばないようにする。
【0055】
また、蛍光体を炉内に設置した石英盤上に分散させて配置し、炉内にSiH4と酸素を導入して炉内の温度を400℃に3分間保つことにより、蛍光体の上部にSiO2が形成され、偏心した蛍光体内包SiO2を形成することができる。
【0056】
(実施例4)
メタルマスクを用いて発光素子を作成する方法を説明する。
【0057】
規則的に100μmの穴が開いたメタルマスクを剥離剤を塗った下メタル上に設置し、10μm径の蛍光体をメタルマスクの穴の中に滴下する。その後、樹脂を塗布し、穴の中が樹脂で覆われるようにする。そして、ブレードですり切った後、加熱して樹脂を硬化させる。加熱は、100℃で1時間行う。蛍光体は、樹脂の内部で沈降しており、この状態で樹脂が加熱により硬化する。
【0058】
下メタルには剥離液が塗布されており、樹脂がメタルマスクの穴に付着したままの状態で該メタルマスクを下メタルから引き離すことにより、樹脂を下メタルから剥離させることができる。そして、下メタルから引き離されたメタルマスクの両面に気圧差を生じさせることにより、メタルマスクから樹脂を離脱させることができ、これにより、蛍光体を内包した粒子が得られる。
【0059】
(実施例5)
上述の実施例2〜実施例4のいずれかにおいて作成された発光粒子を、モールド法によりカップ11(図1)内に固定する方法について説明する。
【0060】
LED12を底面上に固定したカップ11(図1)をエタノール中に設置し、蛍光体内包粒子である発光粒子20をエタノール中に沈降させる。この際、各カップ11上にはロート状の絞りが設けられて選択的にカップ11の中のみに蛍光体内包粒子を沈降させる。
【0061】
各材料の典型的な密度(比重)は、蛍光体が5.2、樹脂が1.2、エタノールが0.79であるため、沈降とともに蛍光体内包粒子は蛍光体が偏っている側を下にしてカップ11の底面に設置することができる。
【0062】
なお、エタノール以外には、プロパノール又は液体窒素を用いることができる。プロパノールの密度は0.86、液体窒素の密度は0.83であり、また、粘性が温度により変化するため、蛍光体内包粒子の沈降の速度を温度により制御することができる。
【0063】
かくして、蛍光体内包粒子をカップ11の底面部に沈降させた後、エタノール、プロパノール又は液体窒素を蒸発させ、封止剤により蛍光体内包粒子をカップ11内に固定する。固定するための封止剤(樹脂)は、蛍光体内包粒子(発光粒子)の屈折率よりも屈折率が低いシリコン系のものを用いる。これにより、蛍光体において発光した光は、蛍光体内包粒子とその周囲の封止剤との境界において反射し、指向性を持った光となってカップ11の開口方向に出射することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図2】図1の発光粒子の構成を示す断面図である。
【図3】発光粒子の配置例を示す平面図である。
【図4】発光効率及び平均演色評価数を示すグラフである。
【図5】発光粒子の中心と蛍光体の位置とのずれ量と発光強度との関係を示すグラフである。
【図6】発光粒子(蛍光体内包粒子)と相対発光強度との関係を示すグラフである。
【図7】発光粒子の配置例を示す断面図である。
【図8】赤色、緑色及び青色の発光粒子の配置例を示す側面図である。
【図9】赤色、緑色及び青色の発光粒子の他の配置例を示す側面図である。
【図10】配向角と光強度との関係を示すグラフである。
【図11】発光装置の製造装置を示す概略図である。
【図12】ホットプレートを用いた発光粒子の製造方法の説明に供する概略図である。
【図13】ホットプレートを用いた発光粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10 発光装置
11 カップ
12 LED
20、20R、20G、20B、20L、20S 発光粒子
21 透明材料
22、22R、22G、22B 蛍光体
30 製造装置
31 樹脂
32 樹脂タンク
33 蛍光体タンク
34 材料供給部
35 混合部
38、44 ヒータ
39 加熱部
40 樹脂球


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の透明材料と、
前記透明材料の中心からずれた位置に内包される蛍光体と
を備えることを特徴とする発光粒子。
【請求項2】
前記透明材料の粒径は、5〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の発光粒子。
【請求項3】
前記透明材料は、樹脂、誘電体又はガラスであることを特徴とする請求項1に記載の発光粒子。
【請求項4】
発光素子と、
前記発光素子において発光した光を吸収して発光する蛍光体及び中心からずれた位置に前記蛍光体を内包する粒状の透明材料を有する発光粒子と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
前記内包される蛍光体の発光波長が異なる複数の発光粒子を備え、
前記発光粒子は、内包される蛍光体の発光波長ごとに異なる粒径を有し、該粒径は、前記内包された蛍光体の発光波長が短いほど小さいことを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
蛍光体及び液状の熱硬化性の透明材料を混合して前記透明材料に前記蛍光体を内包させるステップと、
前記蛍光体を内包する前記透明材料を落下させるステップと、
前記落下中に前記透明材料を加熱して該透明材料の表面を硬化させるステップと、
前記落下の後に、前記透明材料に内包される蛍光体をその重みによって前記透明材料の中心からずれた位置に沈降させるステップと、
前記蛍光体が沈降した透明材料を加熱して該透明材料の内部を硬化させるステップと
を備えることを特徴とする発光粒子の製造方法。
【請求項7】
蛍光体及び液状の熱硬化性の透明材料を混合して前記透明材料に前記蛍光体を内包させるステップと、
前記蛍光体を内包する前記透明材料を発光素子上に落下させるステップと、
前記落下中に前記透明材料を加熱して該透明材料の表面を硬化させるステップと、
前記落下の後に、前記透明材料に内包される蛍光体をその重みによって前記透明材料の中心からずれた位置に沈降させるステップと、
前記蛍光体が沈降した透明材料を加熱して該透明材料の内部を硬化させるステップと
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−19380(P2008−19380A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194076(P2006−194076)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】