説明

発光素子および発光装置

【課題】設計および作製に冗長性のある発光素子および発光装置を提供することを課題とする。
【解決手段】一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化している発光素子を提供する。複合材料を含む層は、含まれる化合物の組成比および化合物の種類を変化させることなく、電気的特性を変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子およびそれを備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物を用いた発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0003】
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子は、例えば0.1μm程度の有機薄膜で形成されるため、薄型軽量に作製できることが大きな利点である。また、キャリアが注入されてから発光に至るまでの時間は1μ秒程度あるいはそれ以下であるため、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。これらの特性は、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。
【0005】
また、これらの発光素子は膜状に形成されるため、大面積の素子を形成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0006】
このように、発光性の有機化合物を用いた電流励起型の発光素子は、発光装置や照明等への応用が期待されているが、未だ課題も多い。その課題の一つとして、消費電力の低減が挙げられる。消費電力を低減するためには、発光素子の駆動電圧を低減することが重要である。そして、電流励起型の発光素子は流れる電流量によって発光強度が決まるため、駆動電圧を低減するためには、低い電圧で多くの電流を流すことが必要となってくる。
【0007】
特許文献1によれば、陽極と接する部分の有機層に、有機層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物をドーピングすることにより、発光素子の駆動電圧が低減できるとの報告がある。また、電子受容性ドーパントをドーピングした有機層は厚膜にしても素子の電圧上昇をもたらすことがないので、電極間の距離を通常よりも長く設定することができ、短絡の危険性を大幅に軽減する手段として有用であると記載されている。
【0008】
一方、光学的距離を調整することにより、発光素子の光の外部取り出し効率を向上させることが試みられている。特許文献2によれば、陽極の発光層側の界面に設けた電子受容性化合物をドーピングした有機化合層の層厚を変化させることにより、発光スペクトルを制御することが記載されている。
【0009】
特許文献1および特許文献2に記載されている電子受容性化合物をドーピングした有機化合物層は、共蒸着法により電子受容性化合物がドーピングされている、または、有機化合物と電子受容性化合物を溶液中で作用させて溶液を調整し塗布するため、有機化合物と電子受容性化合物とが均一に混合されており、電子受容性化合物をドーピングした有機化合物層の導電率は等方性である。
【0010】
よって、導電率などの電気的特性を制御するためには、層に含まれている有機化合物と電子受容性化合物との組成比を変化させる、または、層に含まれている化合物の種類を変化させる必要があった。
【0011】
一方、層の組成比や層に含まれている化合物の種類を変化させると、電気的特性以外の特性、例えば光学的特性(屈折率など)が変化してしまう。光学的特性が変化してしまうと、発光スペクトルの変化による発光色の変化、発光の外部取り出し効率の変化が生じてしまう。よって、光学的特性を維持しつつ、電気的特性を変化させることは困難であった。
【0012】
つまり、発光素子の設計は、電気的特性、光学的特性等の様々な特性を考慮して厳密に設計しなければならず、発光素子の作製はその設計通りに厳密に管理されなければならなかった。
【特許文献1】特開平11−251067号公報
【特許文献2】特開2001−244079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明では、設計および作製に冗長性のある発光素子および発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、複合材料を含む層を有する発光素子を作製することにより、課題が解決できることを見いだした。
【0015】
よって、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化していることを特徴とする発光素子である。
【0016】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、無機化合物の濃度が周期的に変化していることを特徴とする発光素子である。
【0017】
上記構成において、無機化合物の濃度は、5wt%以上90wt%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10wt%以上80wt%以下であると好ましい。
【0018】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、有機化合物の濃度が周期的に変化していることを特徴とする発光素子である。
【0019】
上記構成において、有機化合物の濃度は、10wt%以上95wt%であることが好ましい。さらに好ましくは、20wt%以上90wt%以下であると好ましい。
【0020】
また、上記構成において、周期的な変化の一周期は、0.5nm以上30nm以下であることが好ましい。特に、1nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記構成において、複合材料を含む層は、一対の電極のうち、一方の電極と接して設けられていることが好ましい。または、複合材料を含む層は、一対の電極と接するように二層設けられていてもよい。
【0022】
また、上記構成において、無機化合物は、遷移金属酸化物であることを特徴とする。具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムのいずれか一種もしくは複数種を用いることができる。
【0023】
また、上記構成において、有機化合物は、正孔輸送性を有することを特徴とする。特にアリールアミン骨格を有する有機化合物又はカルバゾール骨格を有する有機化合物であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、平均原子量の大きい領域と平均原子量の小さい領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが0.5nm以上30nm以下である層を有することを特徴とする発光素子である。
【0025】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、平均原子量の大きい領域と平均原子量の小さい領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが1nm以上10nm以下である層を有することを特徴とする発光素子である。
【0026】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、色の濃い領域と色の淡い領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが0.5nm以上30nm以下である層を有することを特徴とする発光素子である。
【0027】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、色の濃い領域と色の淡い領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが1nm以上10nm以下である層を有することを特徴とする発光素子である。
【0028】
上記構成において、発光物質を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、発光素子と、発光素子の発光を制御する制御手段とを有するものである。具体的には、画像表示装置、もしくは光源(照明装置を含む)を含む。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の発光素子は、複合材料を含む層の電気的特性、特に導電率を、組成比や化合物の種類を変えずに変化させることができる。そのため光学特性などの他の特性はあまり変化しない。よって、発光素子および発光装置の作製に冗長性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の発光素子が有する複合材料を含む層について説明する。
【0033】
複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを有しており、有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化している。有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化していることにより、積層方向(膜厚方向ともいう)の導電率を制御することが可能となる。本明細書において、積層方向とは、複合材料を含む層の両側に設けられた電極の一方の電極から他方の電極への方向をいう。
【0034】
有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の周期の長さを変化させることにより、所望の導電率の層を得ることができる。例えば、濃度比の周期的変化の一周期を短くすることにより積層方向(膜厚方向)に対しての導電率を高くすることができ、一周期を長くすることにより、積層方向に対しての導電率を低くすることができる。本明細書において、周期的な変化とは、積層方向において、濃度の極大値と極小値が交互に繰り返されるように、変化していることをいう。なお、その周期的な変化の繰り返される周期は、全くの同一である必要はないし、また、その周期的な変化の繰り返される振幅は、全くの同一である必要はない。
【0035】
また、複合材料を含む層に含まれる有機化合物および無機化合物は絶縁体であることから、複合材料を含む層の面方向に対しては、概ね絶縁体としての導電率となる。よって、濃度比が周期的に変化している方向(積層方向、膜厚方向)に対しては所望の導電率を得ることができ、濃度比が周期的に変化していない方向(面方向)に対する導電率はある一定の値となるので、導電率に異方性が生じる。
【0036】
複合材料を含む層に含まれる有機化合物としては、正孔輸送性に優れた材料であることが好ましい。特にアリールアミン骨格を有する有機材料であることが好ましく、例えば4,4’−ビス(N−(4−N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BBPB)、1,5−ビス(ジフェニルアミノ)ナフタレン(略称:DPAN)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物を用いることができる。または、カルバゾール骨格を有する有機材料を用いることが好ましく、例えば、N−(2−ナフチル)カルバゾール(略称:NCz)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、9,10−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]アントラセン(略称:BCPA)、3,5−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ビフェニル(略称:BCPBi)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)などの化合物を用いることができる。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0037】
また、複合材料を含む層に含まれる無機化合物としては、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。特に、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、扱いやすく好ましい。
【0038】
なお、本発明の発光素子が有する複合材料を含む層は、蒸着法を用いて作製することができる。なお、酸化モリブデンは真空中で蒸発しやすく、作製プロセスの面からも好ましい。
【0039】
本発明の発光素子が有する複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物との共蒸着法により作製することができる。有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させることにより、積層方向(膜厚方向)の導電率を制御することが可能である。
【0040】
有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させる方法としては、基板、蒸発源、マスクを相対的に回転させることにより可能である。
【0041】
例えば、有機化合物が入った蒸発源と無機化合物が入った蒸発源とを距離を離して固定し、基板を回転(基板を自転)させることにより、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させることが可能である。一周期の長さは、蒸着速度と回転速度を制御することにより、変化させることが可能である。
【0042】
この場合、基板の回転速度を遅くすると、有機化合物と無機化合物の濃度比の変化の一周期は長くなり、積層方向に対しての導電率は小さくなる。
【0043】
また、基板の回転速度を一定にし、蒸発源からの蒸着速度を大きくすることにより、有機化合物と無機化合物の濃度比の変化の一周期を長くすることもできる。
【0044】
また、有機化合物が入った蒸発源と無機化合物が入った蒸発源とを距離を離して固定し、基板を移動させながら回転(基板を公転)させることにより、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させることが可能である。この場合、基板の公転を遅くすることにより、周期的変化の一周期を長くすることができる。
【0045】
また、自転と公転とを組み合わせて基板を回転させてもよい。この場合も、一周期の長さは、蒸着速度と基板の回転速度を制御することにより、変化させることが可能である。
【0046】
また、蒸発源と基板を固定し、マスクを回転させることにより、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させることも可能である。例えば、マスクの回転を速くすることにより、濃度比の一周期を短くすることができる。それにより、積層方向に対して導電率が高い層を得ることができる。
【0047】
また、基板を固定し、蒸発源を回転させることにより、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させることも可能である。
【0048】
また、蒸発源と基板は固定したまま、シャッターの開閉によって、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させてもよい。
【0049】
また、基板の温度を変化させることにより、吸着速度を変化させて、有機化合物と無機化合物の濃度比を周期的に変化させてもよい。つまり、基板の温度を高くしたり、低くしたりすることにより、吸着速度を変化させ、有機化合物と無機化合物との濃度比を変化させてもよい。
【0050】
なお、周期的変化の一周期は、基板の回転速度、蒸着速度以外に、基板と蒸発源との距離、蒸発源と蒸発源との距離等により変化するため、それぞれの装置において最適値を適宜設計すれば良い。
【0051】
以上の方法を用いることにより、有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化した層、つまり、本発明の複合材料を含む層を形成することができる。本発明の複合材料を含む層の、深さ方向の濃度分布の一例を図18に示す。図18に示すように、有機化合物の濃度と無機化合物の濃度とが深さ方向(積層方向、膜厚方向)に、周期的に変化することにより、導電率に異方性が生じる。無機化合物の濃度は、5wt%以上90wt%以下であることが好ましく、10wt%以上80wt%以下であるとさらに好ましい。また、有機化合物の濃度は、10wt%以上95wt%以下であることが好ましく、20wt%以上90wt%以下であるとさらに好ましい。
【0052】
また、濃度比の周期的変化の一周期は0.5nm以上30nm以下であることが好ましい。1nm以上10nm以下であるとさらに好ましい。
【0053】
本発明の複合材料を含む層は、周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、積層方向に対して所望の導電率の層を得ることができる。また、複合材料を含む層に含まれる有機化合物および無機化合物は絶縁体であることから、複合材料を含む層の面方向に対しては、概ね絶縁体としての導電率となり、その導電率は一定である。すなわち、濃度比が周期的に変化している方向(積層方向)に対しては所望の導電率を得ることができ、濃度比が周期的に変化していない方向(面方向)に対する導電率はある一定の値となるので、導電率に異方性が生じる。
【0054】
よって、有機化合物と無機化合物とを単に混合した層とは異なり、複合材料を含む層の導電率に異方性を持たせることが可能である。
【0055】
また、有機化合物のみからなる層と無機化合物のみからなる層を積層した場合と異なり、有機化合物と無機化合物とが混ざっていることにより結晶化を抑制することができる。
【0056】
また、複合材料を含む層は、層に含まれる有機化合物と無機化合物の組成比や、化合物の種類を変化させずに、電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光素子の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0057】
(実施の形態2)
本発明の実施に用いる蒸着装置及び、その蒸着装置を用いて複合材料を含む層を形成する方法について、図20〜23を用いて説明する。
【0058】
本発明の実施に用いる蒸着装置には、被処理物に対し蒸着する処理を行う処理室1001の他、搬送室1002が設けられている。被処理物は搬送室1002を経て処理室1001へ搬送される。搬送室1002には、被処理物を移載する為のアーム1003が備え付けられている(図23)。
【0059】
処理室1001内には、図20に示すように、被処理物を保持する為の保持部と、第1の材料が保持された蒸発源1011aと、第2の材料が保持された蒸発源1011bが設けられている。図20において、被処理物を保持する為の保持部は、軸1013を中心として回転する第1の回転板1012と、第1の回転板1012上に設けられた複数の第2の回転板1014a〜1014dとで構成されている。第2の回転板1014a〜1014dは、軸1013とは別に、第2の回転板1014a〜1014dのそれぞれに対して設けられた軸を中心として、それぞれ独立に回転する。被処理物1015a〜1015dは、第2の回転板1014a〜1014dのそれぞれの上に保持される。
【0060】
図20において、第2の回転板1014aには被処理物1015aが保持され、第2の回転板1014bには被処理物1015bが保持され、第2の回転板1014cには被処理物1015cが保持され、第2の回転板1014dには被処理物1015dが保持されている。
【0061】
複合材料を含む層は次のようにして形成する。先ず、蒸発源1011a、1011bに保持された材料を加熱して昇華させる。また、第1の回転板1012、及び被処理物が保持された第2の回転板1014a〜1014dを回転させる。図20に表されているように、被処理物1015aと蒸発源1011aとの距離が、被処理物1015aと蒸発源1011bとの距離よりも近いとき、被処理物1015a上には、第2の材料の濃度よりも第1の材料の濃度の方が高くなるように、それぞれの材料が蒸着される。これに対し、被処理物1015cのように、被処理物1015cと蒸発源1011bとの距離が、被処理物1015cと蒸発源1011aとの距離よりも近いとき、被処理物1015c上には、第1の材料の濃度よりも第2の材料の濃度の方が高くなるように、それぞれの材料が蒸着される。
次に、第1の回転板1012の回転により処理室1001内における第2の回転板1014aの位置が変わって、図20における第2の回転板1014cの位置において被処理物1015aが保持され、被処理物1015aと蒸発源1011bとの距離が、被処理物1015aと蒸発源1011aとの距離よりも近くなると、被処理物1015a上には、第1の材料の濃度よりも第2の材料の濃度が高くなるように、それぞれの材料が蒸着される。
【0062】
このように、蒸発源1011a、1011bに対する被処理物1015a〜1015dの位置を変えることによって、被処理物1015a〜1015d上に、含まれている材料の濃度比がそれぞれ異なる複数の領域を有する複合材料を含む層を形成することができる。ここで、複合材料を含む層に含まれる各領域の積層方向(膜厚方向)の幅(濃度比の周期的変化の一周期の長さ)は、第1の回転板1012の回転速度等を調節することによって、適宜変えればよい。
【0063】
例えば、第1の回転板1012の回転を速くすると、第1の材料と第2の材料の濃度比の変化の一周期は短くなり、積層方向に対しての導電率は大きくなる。
【0064】
また、第1の回転板1012の回転速度を一定にし、蒸発源1011aおよび蒸発源1011bからの蒸着速度を大きくすることにより、第1の材料と第2の材料の濃度比の変化の一周期を長くすることもできる。
【0065】
なお、第1の回転板1012及び第2の回転板1014a〜1014dの形状について特に限定はなく、図20に表されるような円形の他、四角形等の多角形であってもよい。また、第2の回転板1014a〜1014dは、必ずしも設けなくてもよいが、第2の回転板1014a〜1014dを設けることによって、被処理物に形成される層の厚さ等の面内バラツキを低減することができる。
【0066】
処理室1001内の構成は図20に表されるものには限定されず、例えば、図21に表されるような蒸発源の位置が変わるような構成であってもよい。
【0067】
図21において、蒸発源1021a、1021bが固定され、軸1027を中心に回転する回転板1026と、被処理物を保持する為の保持部1022とが、対向して設けられている。また、保持部1022には、被処理物1025a〜1025dが保持されている。蒸発源1021aには第1の材料が、蒸発源1021bには第2の材料が、それぞれ保持されている。そして、蒸発源1021bよりも蒸発源1021aの方が被処理物1025aに近くなるようにそれぞれの蒸発源が位置しているとき、被処理物1025a上には、第2の材料の濃度よりも第1の材料の濃度の方が高くなるように、それぞれの材料が蒸着される。また、回転板1026が回転し、蒸発源1021aよりも蒸発源1021bの方が被処理物1025aに近くなるように位置するようなれば、被処理物1025a上には、第1の材料の濃度よりも第2の材料の濃度の方が高くなるように、それぞれの材料が蒸着される。このように、蒸着装置は、蒸発源の位置が変わることによって、被処理物に対する蒸発源の位置が変わるような構成を有するものであってもよい。つまり、蒸発源と被処理物とは、それぞれの位置が相対的に変化するように設けられていればよい。
【0068】
図21の構成の場合、蒸発源1021aおよび蒸発源1021bの回転を速くすると、第1の材料と第2の材料の濃度比の周期的変化の一周期の長さは短くなり、積層方向に対しての導電率は大きくなる。
【0069】
また、図20、図21に表されるような構成の他、図22に表されるように、蒸発源と保持部との間にマスクとして機能し、開口部を有する回転板が設けられ、回転板の開口部の位置が変わるような構成であってもよい。
【0070】
図22において、第1の材料が保持された蒸発源1031aと第2の材料が保持された蒸発源1031bとは開口部1040が設けられた回転板1038を間に挟んで、それぞれ保持部1032と対向するように設けられている。回転板1038は、軸1039を中心として回転し、回転することによって開口部1040の位置が変わる。開口部1040が、蒸発源1031bよりも蒸発源1031aに近くなるように位置しているとき、開口部1040から保持部1032の方へ、第1の材料の濃度の方が第2の材料の濃度よりも高い状態で気体が拡散し、保持部1032に保持された被処理物1035へ、第1の材料の濃度の方が第2の材料の濃度よりも高くなるようにそれぞれの材料が蒸着される。また、回転板1038が回転し、開口部1040が蒸発源1031aよりも蒸発源1031bに近くなるように位置すれば(例えば、点線1041で表されるように位置すれば)、第2の材料の濃度の方が第1の材料の濃度よりも高くなるように、被処理物1035上にそれぞれの材料が蒸着される。
【0071】
図22に構成の場合、回転板1038の回転を速くすると、第1の材料と第2の材料の濃度比の変化の一周期は短くなり、積層方向に対しての導電率は大きくなる。
【0072】
以上のように、蒸発源と、被処理物の位置が相対的に変わるようにすることで、複合材料を含む層を形成することができる。また、蒸発源の他、マスクとして機能する回転板に設けられた開口部の位置が相対的に変わるようにすることで、複合材料を含む層を形成することもできる。
【0073】
なお、蒸着装置の構成は、図23に示されたものには限定されず、例えば、発光素子を封止する為の封止室がさらに設けられた構成であってもよい。また、蒸着を行う処理室は、一室だけでなく、二室以上設けられていてもよい。
【0074】
(実施の形態3)
本発明の発光素子は、一対の電極間に複数の層を有する。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリア(担体)の再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。
【0075】
本発明の発光素子の一態様について図1(A)を用いて以下に説明する。
【0076】
本形態において、発光素子は、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106と、さらにその上に設けられた第2の電極107とから構成されている。なお、本形態では第1の電極102は陽極として機能し、第2の電極107は陰極として機能するものとして以下説明をする。
【0077】
基板101は発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0078】
第1の電極102としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したインジウム酸化物(IWZO)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)、アルミニウム−チタン(Al−Ti)、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)または金属材料の窒化物(TiN)等、を用いることができる。
【0079】
第1の層103は、実施の形態1で示した複合材料を含む層である。有機化合物と無機化合物とを含み、有機化合物と無機化合物との濃度比が周期的に変化している層である。
【0080】
第2の層104は、正孔輸送性の高い物質、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)やN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物からなる層である。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、第2の層104は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものであってもよい。
【0081】
第3の層105は、発光性の高い物質を含む層である。例えば、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)や3−(2−ベンソチアゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン(略称:クマリン6)等の発光性の高い物質とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)や9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)等のキャリア輸送性が高く結晶化しにくい物質とを自由に組み合わせて構成される。但し、AlqやDNAは発光性も高い物質であるため、これらの物質を単独で用いた構成とし、第3の層105としても構わない。
【0082】
第4の層106は、電子輸送性の高い物質、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−ビフェニリル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を第4の層106として用いても構わない。また、第4の層106は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0083】
第2の電極107を形成する物質としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)が挙げられる。しかしながら、第2の電極107と発光層との間に、電子注入を促す機能を有する層を、当該第2の電極と積層して設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素を含むITO等様々な導電性材料を第2の電極107として用いることができる。
【0084】
なお、電子注入を促す機能を有する層としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属の化合物又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。
【0085】
また、第2の層104、第3の層105、第4の層106の形成方法は、蒸着法の他、例えばインクジェット法またはスピンコート法など公知の方法を用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0086】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、第1の電極102と第2の電極107との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第3の層105において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり第3の層105に発光領域が形成されるような構成となっている。但し、第3の層105の全てが発光領域として機能する必要はなく、例えば、第3の層105のうち第2の層104側または第4の層106側にのみ発光領域が形成されるようなものであってもよい。
【0087】
発光は、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質で成る。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(A)に示すように、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極107のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(B)に示すように、発光は第2の電極107を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極107がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図1(C)に示すように、発光は第1の電極102および第2の電極107を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0088】
なお第1の電極102と第2の電極107との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極102および第2の電極107から離れた部位に正孔と電子とが再結合する領域を設けた構成であり、且つ、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有するものであれば、上記以外のものでもよい。
【0089】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等から成る層を、本発明の複合材料を含む層と自由に組み合わせて構成すればよい。また、第1の電極102上には、酸化珪素膜等からなる層を設けることによってキャリアの再結合部位を制御したものであってもよい。
【0090】
図2に示す発光素子は、陰極として機能する第1の電極302の上に電子輸送性の高い物質からなる第1の層303、発光性の高い物質を含む第2の層304、正孔輸送性の高い物質からなる第3の層305、本発明の複合材料を含む層である第4の層306、陽極として機能する第2の電極307とが順に積層された構成となっている。なお、301は基板である。
【0091】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板以外に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTアレイ基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型またはP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0092】
本発明の発光素子は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有する。そのため、複合材料を含む層に含まれている有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、複合材料を含む層の電気的特性を変化させることが可能である。つまり、層に含まれる有機化合物と無機化合物の組成比や化合物の種類を変化させずに、電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光素子の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0093】
また、本発明の複合材料を含む層は、積層方向に対しては導電率が高く、そのため発光素子の低電圧駆動を実現することができる。また、面方向に対しては、導電率が低く、隣接する発光素子間でクロストークが発生することを抑制することができる。
【0094】
また、本発明で用いる複合材料を含む層は、積層方向に対しては導電率が高いため、複合材料を含む層を厚膜化した場合でも、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0095】
また、複合材料を含む層を所望の厚さで形成することができることにより、発光素子の駆動電圧を上昇させることなく、光学設計による色純度の向上、光の取り出し効率の向上を実現することができる。
【0096】
また、複合材料を含む層を厚膜化することにより、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるため、信頼性の高い発光素子を得ることができる。例えば、通常の発光素子の電極間の膜厚が100nm〜150nmであるのに対し、複合材料を含む層を用いた発光素子の電極間の膜厚は、100〜500nm、好ましくは、200〜500nmとすることができる。
【0097】
また、本発明の発光素子に用いる複合材料を含む層は、電極とオーム接触することが可能であり、電極との接触抵抗が小さい。そのため、仕事関数等を考慮することなく、電極材料を選ぶことができる。つまり、電極材料の選択肢が広がる。
【0098】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について、図5および図6を用いて説明する。本実施の形態で示す構成は、陰極として機能する電極に接するように本発明の複合材料を含む層を設けることができる。
【0099】
図5(a)に本発明の発光素子の構造の一例を示す。第1の電極401と、第2の電極402との間に、第1の層411、第2の層412、第3の層413が積層された構成となっている。本実施の形態では、第1の電極401が陽極として機能し、第2の電極402が陰極として機能する場合について説明する。
【0100】
第1の電極401、第2の電極402は、実施の形態3と同じ構成を適用することができる。また、第1の層411は発光性の高い物質を含む層である。第2の層412は電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層であり、第3の層413は実施の形態1で示した複合材料を含む層である。第2の層412に含まれる電子供与性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびそれらの酸化物や塩であることが好ましい。具体的には、リチウム、セシウム、カルシウム、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0101】
このような構成とすることにより、図5(a)に示した通り、電圧を印加することにより第2の層412および第3の層413の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第2の層412は電子を第1の層411に輸送すると同時に、第3の層413は正孔を第2の電極402に輸送する。すなわち、第2の層412と第3の層413とを合わせて、キャリア発生層としての役割を果たしている。また、第3の層413は、正孔を第2の電極402に輸送する機能を担っていると言える。
【0102】
また、第3の層413は、積層方向に対しては導電率が高く、面方向に対しては導電率が低い。よって、発光素子の駆動電圧を低減することが可能である。また、隣接する発光素子間のクロストークの発生を抑制することができる。また、第3の層413を厚膜化した場合、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0103】
また、第3の層413を厚膜化しても、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができるため、第3の層413の膜厚を自由に設定でき、第1の層411からの発光の取り出し効率を向上させることができる。また、第1の層411からの発光の色純度が向上するように、第3の層413の膜厚を設定することも可能である。
【0104】
また、第3の層413を厚膜化することにより、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができる。
【0105】
また、図5(a)を例に取ると、第2の電極402をスパッタリングにより成膜する場合などは、発光性の物質が存在する第1の層411へのダメージを低減することもできる。
【0106】
なお、本実施の形態の発光素子においても、第1の電極401や第2の電極402の材料を変えることで、様々なバリエーションを有する。その模式図を図5(b)、図5(c)および図6に示す。なお、図5(b)、図5(c)および図6では、図5(a)の符号を引用する。また、400は、本発明の発光素子を担持する基板である。
【0107】
図5は、基板400側から第1の層411、第2の層412、第3の層413の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極401を光透過性とし、第2の電極402を遮光性(特に反射性)とすることで、図5(a)のように基板400側から光を射出する構成となる。また、第1の電極401を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極402を光透過性とすることで、図5(b)のように基板400の逆側から光を射出する構成となる。さらに、第1の電極401、第2の電極402の両方を光透過性とすることで、図5(c)に示すように、基板400側と基板400の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0108】
図6は、基板400側から第3の層413、第2の層412、第1の層411の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極401を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極402を光透過性とすることで、図6(a)のように基板400側から光を取り出す構成となる。また、第1の電極401を光透過性とし、第2の電極402を遮光性(特に反射性)とすることで、図6(b)のように基板400と逆側から光を取り出す構成となる。さらに、第1の電極401、第2の電極402の両方を光透過性とすることで、図6(c)に示すように、基板400側と基板400の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0109】
なお、本実施の形態における発光素子を作製する場合には、湿式法、乾式法を問わず、公知の方法を用いることができる。ただし、複合材料を含む層は、実施の形態1および実施の形態2で示した方法により形成することが好ましい。
【0110】
また、図5に示すように、第1の電極401を形成した後、第1の層411、第2の層412、第3の層413を順次積層し、第2の電極402を形成してもよいし、図6に示すように、第2の電極402を形成した後、第3の層413、第2の層412、第1の層411を順次積層し、第1の電極401を形成してもよい。
【0111】
本発明の発光素子は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有する。そのため、複合材料を含む層に含まれている有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、複合材料を含む層の電気的特性を変化させることが可能である。つまり、層に含まれる有機化合物と無機化合物の組成比や化合物の種類を変化させずに、電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光素子の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0112】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0113】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態3および実施の形態4に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について、図3および図4を用いて説明する。本実施の形態で示す構成は、発光素子の2つの電極に接するように複合材料を含む層を設けることができる。
【0114】
図3(a)に本発明の発光素子の構造の一例を示す。第1の電極201と、第2の電極202との間に、第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214が積層された構成となっている。本実施の形態では、第1の電極201が陽極として機能し、第2の電極202が陰極として機能する場合について説明する。
【0115】
第1の電極201、第2の電極202は、実施の形態3と同じ構成を適用することができる。また、第1の層211は実施の形態1で示した複合材料を含む層であり、第2の層212は発光性の高い物質を含む層である。第3の層213は電子供与性物質と電子輸送性の高い化合物とを含む層であり、第4の層214は実施の形態1で示した複合材料を含む層である。第3の層213に含まれる電子供与性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびそれらの酸化物や塩であることが好ましい。具体的には、リチウム、セシウム、カルシウム、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0116】
このような構成とすることにより、図3(a)に示した通り、電圧を印加することにより第3の層213および第4の層214の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第3の層213は電子を第2の層212に輸送すると同時に、第4の層214は正孔を第2の電極202に輸送する。すなわち、第3の層213と第4の層214とを合わせて、キャリア発生層としての役割を果たしている。また、第4の層214は、正孔を第2の電極202に輸送する機能を担っていると言える。なお、第4の層214と第2の電極202との間に、さらに第2の層および第3の層を再び積層することで、タンデム型の発光素子とすることも可能である。
【0117】
また、第1の層211や第4の層214は、積層方向に対しては導電率が高く、面方向に対しては導電率が低い。よって、発光素子の駆動電圧を低減することが可能である。また、隣接する発光素子間のクロストークの発生を抑制することができる。また、第1の層211や第4の層214を厚膜化した場合、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0118】
また、第1の層211や第4の層214を厚膜化しても、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができるため、第1の層211や第4の層214の膜厚の自由に設定でき、第2の層212からの発光の取り出し効率を向上させることができる。また、第2の層212からの発光の色純度が向上するように、第1の層211や第4の層214の膜厚を設定することも可能である。また、第1の層211や第4の層214は可視光の透過率が高く、厚膜化による発光の外部取り出し効率の低減を抑制できる。
【0119】
また、本実施の形態の発光素子は、発光機能を担う第2の層の陽極側および陰極側を非常に厚くすることが可能となり、さらに発光素子の短絡を効果的に防止できる。また、図3(a)を例に取ると、第2の電極202をスパッタリングにより成膜する場合などは、発光性の物質が存在する第2の層212へのダメージを低減することもできる。さらに、第1の層211と第4の層214を同じ材料で構成することにより、発光機能を担う層を挟んで両側に同じ材料で構成された層を設けることができるため、応力歪みを抑制する効果も期待できる。
【0120】
なお、本実施の形態の発光素子においても、第1の電極201や第2の電極202の材料を変えることで、様々なバリエーションを有する。その模式図を図3(b)、図3(c)および図4に示す。なお、図3(b)、図3(c)および図4では、図3(a)の符号を引用する。また、200は、本発明の発光素子を担持する基板である。
【0121】
図3は、基板200側から第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極201を光透過性とし、第2の電極202を遮光性(特に反射性)とすることで、図3(a)のように基板200側から光を射出する構成となる。また、第1の電極201を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極202を光透過性とすることで、図3(b)のように基板200の逆側から光を射出する構成となる。さらに、第1の電極201、第2の電極202の両方を光透過性とすることで、図3(c)に示すように、基板200側と基板200の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0122】
図4は、基板200側から第4の層214、第3の層213、第2の層212、第1の層211の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極201を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極202を光透過性とすることで、図4(a)のように基板200側から光を取り出す構成となる。また、第1の電極201を光透過性とし、第2の電極202を遮光性(特に反射性)とすることで、図4(b)のように基板200と逆側から光を取り出す構成となる。さらに、第1の電極201、第2の電極202の両方を光透過性とすることで、図4(c)に示すように、基板200側と基板200の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0123】
なお、第1の層211が、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含み、第2の層212が発光性の物質を含み、第3の層213が実施の形態1で示した複合材料を含む層であり、第4の層214が、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む構成にすることも可能である。
【0124】
なお、本実施の形態における発光素子を作製する場合には、湿式法、乾式法を問わず、公知の方法を用いることができる。ただし、複合材料を含む層は、実施の形態1および実施の形態2で示した方法により形成することが好ましい。
【0125】
また、図3に図示するように、第1の電極201を形成した後、第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214を順次積層し、第2の電極202を形成してもよいし、図4に図示するように、第2の電極202を形成した後、第4の層214、第3の層213、第2の層212、第1の層211を順次積層し、第1の電極201を形成してもよい。
【0126】
本発明の発光素子は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有する。そのため、複合材料を含む層に含まれている有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、複合材料を含む層の電気的特性を変化させることが可能である。つまり、層に含まれる有機化合物と無機化合物の組成比や化合物の種類を変化させずに、電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光素子の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0127】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0128】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態3〜実施の形態5に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について説明する。本実施の形態で示す構成は、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子の電荷発生層として、本発明の複合材料を適用した構成である。
【0129】
本実施の形態では、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、タンデム型素子という)について説明する。つまり、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。図19に2つの発光ユニットを積層したタンデム型素子を示す。
【0130】
図19において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には、電荷発生層513が形成されている。
【0131】
第1の電極501と第2の電極502は、公知の材料を用いることができる。
【0132】
第1の発光ユニット511および第2の発光ユニット512は、それぞれ公知の構成を用いることができる。
【0133】
電荷発生層513には、実施の形態1で示した複合材料を含む層が含まれている。複合材料を含む層は積層方向に対しては導電率が高い。よって、発光素子の駆動電圧を低減することが可能である。また、複合材料を含む層は面方向に対しては導電率が低い。よって、隣接する発光素子間のクロストークの発生を抑制することができる。
【0134】
なお、電荷発生層513は、複合材料を含む層と公知の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、実施の形態4で示したように、複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0135】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、実施の形態1に示した複合材料を含む層を適用することが可能である。例えば、3つの発光ユニットを積層した発光素子は、第1の発光ユニット、第1の電荷発生層、第2の発光ユニット、第2の電荷発生層、第3の発光ユニット、の順に積層されるが、実施の形態1に示した複合材料を含む層は、いずれか一つの電荷発生層のみに含まれていてもよいし、全ての電荷発生層に含まれていてもよい。
【0136】
本発明の発光素子は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有する。そのため、複合材料を含む層に含まれている有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、複合材料を含む層の電気的特性を変化させることが可能である。つまり、層に含まれる有機化合物と無機化合物の組成比や化合物の種類を変化させずに、電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光素子の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0137】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0138】
(実施の形態7)
本実施の形態では、発光素子の光学設計について説明する。
【0139】
実施の形態3〜実施の形態6に示した発光素子において、各発光色を発する発光素子ごとに、少なくとも第1の電極及び第2の電極を除く各層のいずれか一つの膜厚を異ならせることにより、発光色毎の光の取り出し効率を高めることができる。
【0140】
例えば、図10に示すように、赤系色(R)、緑系色(G)、青系色(B)を発光する発光素子は、反射電極である第1の電極1101、及び透光性を有する第2の電極1102を共有しており、それぞれ第1の層1111R、1111G、1111B、第2の層1112R、1112G、1112B、第3の層1113R、1113G、1113B、第4の層1114R、1114G、1114Bを有する。そして、第1の層1111R、1111G、1111Bの厚さを発光色毎に異ならせる。
【0141】
なお、図10に示す発光素子において、第2の電極1102の電位よりも第1の電極1101の電位が高くなるように電圧を印加すると、第1の層1111から第2の層1112へ正孔が注入される。第3の層1113および第4の層1114の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第3の層1113は電子を第2の層1112に輸送すると同時に、第4の層1114は正孔を第2の電極1102に輸送する。正孔と、電子とが、第2の層1112において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
【0142】
図10に示すように、第1の層1111R、1111G、1111Bの厚さを発光色毎に異ならせることにより、直接第2の電極を介して認識する場合と、第1の電極で反射して第2の電極を介して認識する場合とで光路が異なることによる、光の取り出し効率の低下を防止することができる。
【0143】
具体的には、第1の電極に光が入射した場合、反射光には位相の反転が生じ、これによって生じる光の干渉効果が生じる。その結果、発光領域と反射電極との光学距離、つまり屈折率×距離が、発光波長の(2m−1)/4倍(mは任意の正の整数)、即ち、発光波長の1/4、3/4、5/4・・・倍の時には、発光の外部取り出し効率が高くなる。一方、m/2倍(mは任意の正の整数)即ち、発光波長の1/2、1、3/2・・・倍の時には発光の外部取り出し効率が低くなってしまう。
【0144】
したがって、本発明の発光素子において、発光領域と反射電極との光学距離、つまり屈折率×距離が、発光波長の(2m−1)/4倍(mは任意の正の整数)となるように、第1の層から第4の層のいずれかの膜厚を各発光素子で異ならせる。
【0145】
特に、第1の層から第4の層において、電子と正孔が再結合する層から反射電極との間の層の膜厚を異ならせるとよいが、電子と正孔が再結合する層から透光性を有する電極との間の膜厚を異ならせてもよい。さらに両者の膜厚を異ならせても構わない。その結果、発光を効率よく外部に取り出すことができる。
【0146】
第1の層から第4の層のいずれかの膜厚を異ならせるためには、層を厚膜化する必要がある。本発明の発光素子は、厚膜化する層に、実施の形態1で示した複合材料を含む層を用いることを特徴とする。
【0147】
一般に、発光素子の層を膜厚化すると、駆動電圧が増加してしまうため、好ましくなかった。しかし、厚膜化する層に、実施の形態1で示した複合材料を含む層を用いると、駆動電圧自体を低くでき、厚膜化することによる駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0148】
なお、図10では、赤系色(R)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の1/4倍、緑系色(G)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の3/4倍、青系色(B)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の5/4倍のものを示した。なお、本発明はこの値に限られず、適宜mの値を設定することが可能である。また、図10に示すように、(2m−1)/4のmの値は各発光素子で異なっていてもよい。
【0149】
また、第1の層から第4の層のいずれかを厚膜化することにより、第1の電極と第2の電極とが短絡することを防止でき、量産性を高めることもでき、非常に好ましい。
【0150】
このように本発明の発光素子は、少なくとも第1の層から第4の層の膜厚を、各発光色で異ならせることができる。このとき、電子と正孔が再結合する層から反射電極との間となる層の膜厚を、各発光色で異ならせることが好ましい。さらに厚膜化する必要のある層には、実施の形態1で示した複合材料を含む層とすると、駆動電圧が高くならず好ましい。
【0151】
なお、本実施の形態では、実施の形態5に示した構成の発光素子を用いて説明したが、他の実施の形態と適宜組み合わせることも可能である。
【0152】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0153】
本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図7を用いて説明する。なお、図7(A)は、発光装置を示す上面図、図7(B)は図7(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0154】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0155】
次に、断面構造について図7(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0156】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバーと画素部の一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0157】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0158】
また、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型レジスト、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型レジストのいずれも使用することができる。
【0159】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0160】
発光物質を含む層616は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有している。また、発光物質を含む層616を構成する他の材料としては、低分子系材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子系材料であっても良い。また、発光物質を含む層に用いる材料としては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。また、発光物質を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の公知の方法によって形成される。ただし、複合材料を含む層は、実施の形態1および実施の形態2で示した方法により形成することが好ましい。
【0161】
さらに、発光物質を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi、CaF、LiF、または窒化カルシウム)を用いることが好ましい。なお、発光物質を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0162】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0163】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0164】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0165】
本発明の発光装置は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有している。そのため、複合材料を含む層に含まれている有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化の一周期の長さを変化させることにより、複合材料を含む層の電気的特性を変化させることが可能である。つまり、層に含まれている化合物の組成比や化合物の種類を変えずに電気的特性を変化させることができる。そのため、光学的特性など、電気的特性以外はあまり変化しない。よって、発光装置の設計および作製に冗長性を持たせることができる。
【0166】
また、本発明の発光装置は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有しているため、面方向に対しては導電率が低い状態で、積層方向に対しては面方向よりも導電率を高くすることができる。そのため、隣接する発光素子間でクロストークが発生することを抑制しつつ、発光素子の低電圧駆動を実現することができる。
【0167】
また、実施の形態1で示した複合材料を含む層は、積層方向に対しては導電率が高いため、複合材料を含む層を厚膜化した場合でも、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。よって、複合材料を含む層を厚くして、発光素子の短絡を防止することができる。また、消費電力の低減された発光装置を得ることができる。
【0168】
また、複合材料を含む層を所望の厚さで形成することができることにより、発光素子の駆動電圧を上昇させることなく、光学設計による色純度の向上、光の取り出し効率の向上を実現することができる。よって、消費電力が少なく、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0169】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。図8には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示す。図8において、基板951上には、電極952と電極956との間には発光物質を含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0170】
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態8に示す発光装置をその一部に含む本発明の電気機器について説明する。本発明の電気機器は、実施の形態1に示した複合材料を含む層を含み、低消費電力の表示部を有する。また、ゴミや衝撃等による短絡が抑制された信頼性の高い表示部を有する。
【0171】
本発明の発光装置を用いて作製された電気機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電気機器の具体例を図9に示す。
図9(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、実施の形態3〜7で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、外部への光の取り出し効率が高く、駆動電圧が低く、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。また、隣接する素子間のクロストークの発生が抑制されるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、このテレビ装置は画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビ装置において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体9101や支持台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0172】
図9(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態3〜7で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、外部への光の取り出し効率が高く、駆動電圧が低く、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。また、隣接する素子間のクロストークの発生が抑制されるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特徴を有するため、このコンピュータは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、コンピュータにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、環境に適合した製品を提供することができる。また、持ち運ぶことも可能となり、持ち運ぶときの衝撃にも強い表示部を有しているコンピュータを提供することができる。
【0173】
図9(C)は本発明に係るゴーグル型ディスプレイであり、本体9301、表示部9302、アーム部9303を含む。このゴーグル型ディスプレイにおいて、表示部9302は、実施の形態3〜7で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、外部への光の取り出し効率が高く、駆動電圧が低くゴミや衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。また、隣接する素子間のクロストークの発生が抑制されるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9302も同様の特徴を有するため、このゴーグル型ディスプレイは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、ゴーグル型ディスプレイにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9301の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るゴーグル型ディスプレイは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、装着したときの負担が少なく、違和感なく使用することができる製品を提供することができる。また、装着して動いたときの衝撃にも強い表示部を有するゴーグル型ディスプレイを提供することができる。
【0174】
図9(D)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の形態3〜7で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、外部への光の取り出し効率が高く、駆動電圧が低く、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。また、隣接する素子間のクロストークの発生が抑制されるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9403も同様の特徴を有するため、この携帯電話は画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、携帯電話において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯したときの衝撃にも強い表示部を有している製品を提供することができる。
【0175】
図9(E)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、実施の形態3〜7で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、外部への光の取り出し効率が高く、駆動電圧が低く、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。また、隣接する素子間のクロストークの発生が抑制されるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、このカメラは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、カメラにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯したときの衝撃にも強い表示部を有している製品を提供することができる。
【0176】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する電気機器を提供することが可能となる。
【実施例1】
【0177】
本実施例では、複合材料を含む層について具体的に説明する。
【0178】
基板上に、珪素を含有したインジウム錫酸化物を形成した。その上に、DNTPDと酸化モリブデンとを共蒸着した層を、層全体のDNTPDと酸化モリブデンとの重量比が1:0.67となるように120nmの厚さで形成した。
【0179】
そして、DNTPDと酸化モリブデンとを共蒸着した層の上に、アルミニウムを200nm形成し、その素子特性を調べた。
【0180】
有機化合物の蒸着レートを0.4nm/sとし、基板の回転(公転)数を8rpmとしてDNTPDと酸化モリブデンとを含む層を形成した素子を素子1、有機化合物の蒸着レートを0.4nm/sとし、基板の回転(公転)数を2rpmとしてDNTPDと酸化モリブデンとを含む層を形成した素子を素子2、有機化合物の蒸着レートを1.6nm/sとし、基板の回転(公転)数を8rpmとしてDNTPDと酸化モリブデンとを含む層を形成した素子を素子3とした。素子1〜素子3の電流密度―電圧特性を図11に示す。
【0181】
図11からわかるように、素子1は、素子2や素子3よりも、電極間の方向(積層方向)に電流が流れやすいことがわかる。
【0182】
また素子1〜素子3の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)を用いて観察した。観察して得られた像(TEM像)を図12〜図17に示す。図12は素子1を観察して得られた像(倍率:15万倍)であり、図13は素子1を観察して得られた像(倍率:100万倍)であり、図14は素子2を観察して得られた像(倍率:15万倍)であり、図15は素子2を観察して得られた像(倍率:100万倍)であり、図16は素子3を観察して得られた像(倍率:15万倍)であり、図17は素子3を観察して得られた像(倍率:100万倍)である。
【0183】
図12〜図17から、色の濃い第1の領域と色の淡い第2の領域とが交互に存在することがわかる。色の濃い第1の領域は、平均原子量が高い領域であり、色の淡い第2の領域は平均原子量の小さい部分である。本発明の複合材料を含む層に含まれる無機化合物は有機化合物よりも原子量が大きいため、TEM像における色の濃い第1の領域は無機化合物が多く含まれる領域であり、色の淡い第2の領域は有機化合物が多く含まれる領域である。
【0184】
本実施例の場合では、色の濃い第1の領域は酸化モリブデンの濃度が高い領域であり、色の淡い第2の領域はDNTPDの濃度が高い領域である。したがって、本実施例で作製した素子では、酸化モリブデンの濃度が高い領域と酸化モリブデンの濃度が低い領域とが交互に存在していることがわかった。
【0185】
また、図13、図15、図17に示す矢印は、DNTPDと酸化モリブデンの濃度比の周期的変化の一周期を示している。素子1において、濃度比の周期的変化の一周期は、約3nmであった。また、素子2および素子3において、濃度比の周期的変化は、約12nmであった。
【0186】
よって、素子1は、素子2や素子3に比べ非常に短い周期で、酸化モリブデンの濃度が高い領域と酸化モリブデンの濃度が低い領域とが繰り返されていることがわかる。これは、蒸着レートを大きくすること、または、基板回転数を遅くすることにより、DNTPDと酸化モリブデンとの濃度比の周期的変化の一周期は長くなったことを示している。
【0187】
また、図12〜図17の透過型電子顕微鏡による観察結果と、図11の電流密度―電圧特性から、DNTPDと酸化モリブデンとの濃度比の周期的変化の周期を短くすることにより、積層方向の電流が流れやすくなり、導電率が向上したことがわかる。よって、有機化合物と無機化合物との濃度比の周期的変化を制御することにより、所望の導電率を有する層を形成することができる。
【0188】
本実施例では、透過型電子顕微鏡を用いて素子の断面を観察したが、電子密度や平均原子量の差を検知する手段であれば、素子の観察は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の発光素子を説明する図。
【図4】本発明の発光素子を説明する図。
【図5】本発明の発光素子を説明する図。
【図6】本発明の発光素子を説明する図。
【図7】本発明の発光装置を説明する図。
【図8】本発明の発光装置を説明する図。
【図9】本発明の発光装置を用いた電気機器を説明する図。
【図10】本発明の発光素子を説明する図。
【図11】複合材料を含む層の電流密度―電圧特性を示す図。
【図12】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図13】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図14】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図15】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図16】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図17】複合材料を含む層の透過型電子顕微鏡観察結果を示す図。
【図18】複合材料を含む層の濃度分布の一例を示す図。
【図19】本発明の発光素子を説明する図。
【図20】本発明の発光素子を作製する方法を説明する図。
【図21】本発明の発光素子を作製する方法を説明する図。
【図22】本発明の発光素子を作製する方法を説明する図。
【図23】本発明の発光素子を作製する方法を説明する図。
【符号の説明】
【0190】
101 基板
102 第1の電極
103 第1の層
104 第2の層
105 第3の層
106 第4の層
107 第2の電極
200 基板
201 第1の電極
202 第2の電極
211 第1の層
212 第2の層
213 第3の層
214 第4の層
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第2の電極
400 基板
401 第1の電極
402 第2の電極
411 第1の層
412 第2の層
413 第3の層
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光物質を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光物質を含む層
956 電極
1001 処理室
1002 搬送室
1003 アーム
1012 回転板
1013 軸
1022 保持部
1026 回転板
1027 軸
1032 保持部
1035 被処理物
1038 回転板
1039 軸
1040 開口部
1041 点線
1101 第1の電極
1102 第2の電極
1111 第1の層
1112 第2の層
1113 第3の層
1114 第4の層
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9301 本体
9302 表示部
9303 アーム部
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部
1011a 蒸発源
1011b 蒸発源
1014a 回転板
1014b 回転板
1014c 回転板
1014d 回転板
1015a 被処理物
1015b 被処理物
1015c 被処理物
1015d 被処理物
1021a 蒸発源
1021b 蒸発源
1025a 被処理物
1031a 蒸発源
1031b 蒸発源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、
前記複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、前記有機化合物と前記無機化合物との濃度比が積層方向に周期的に変化していることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、
前記複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、前記無機化合物の濃度が積層方向に周期的に変化していることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記無機化合物の濃度は、5wt%以上90wt%以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記無機化合物の濃度は、10wt%以上80wt%以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、複合材料を含む層を有し、
前記複合材料を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含み、前記有機化合物の濃度が積層方向に周期的に変化していることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項1または請求項5において、前記有機化合物の濃度は、10wt%以上95wt%以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項1または請求項5において、前記有機化合物の濃度は、20wt%以上90wt%以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、前記周期的な変化の一周期は、0.5nm以上30nm以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、前記周期的な変化の一周期は、1nm以上10nm以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、前記複合材料を含む層は、前記一対の電極のうち、一方の電極と接して設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、前記複合材料を含む層は、前記一対の電極と接するように二層設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項において、前記無機化合物は、遷移金属酸化物であることを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項において、前記無機化合物は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムのいずれか一種もしくは複数種であることを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項において、前記有機化合物は、正孔輸送性を有することを特徴とする発光素子。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項において、前記有機化合物は、アリールアミン骨格を有する有機化合物またはカルバゾール骨格を有する有機化合物であることを特徴とする発光素子。
【請求項16】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、平均原子量の大きい領域と平均原子量の小さい領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが0.5nm以上30nm以下である層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項17】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、平均原子量の大きい領域と平均原子量の小さい領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが1nm以上10nm以下である層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項18】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、色の濃い領域と色の淡い領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが0.5nm以上30nm以下である層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項19】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した像では、色の濃い領域と色の淡い領域とが交互に積み重なっており、積み重なりの厚さが1nm以上10nm以下である層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項20】
請求項16乃至請求項19のいずれか一項において、
前記発光物質を含む層は、有機化合物と無機化合物とを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子の発光を制御する制御手段とを有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−319325(P2006−319325A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108564(P2006−108564)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】