説明

発光素子の製造方法、発光装置の製造方法および電子機器の製造方法

【課題】比較的簡単な工程で発光効率等の発光特性に優れた発光素子を製造し得る発光素子の製造方法、かかる発光素子の製造方法を含み信頼性の高い発光装置の製造方法およびかかる発光装置の製造方法を含み信頼性の高い電子機器の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の発光素子の製造方法は、陽極(第1の電極)13の一方の面側に、発光性を有する発光部と第1の重合性基とを備える第1の化合物と、正孔輸送性を有する正孔輸送部と第2の重合性基とを備える第2の化合物および電子輸送性を有する電子輸送部と第3の重合性基とを備える第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含む被膜を形成する工程と、前記被膜中において、第1の化合物と、第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させて、有機EL層15を得る工程と、有機EL層15の陽極13と反対側に、陰極(第2の電極)14を設ける工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法、発光装置の製造方法および電子機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が、陰極と陽極との間に設けられた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、無機EL素子に比べて印加電圧を大幅に低下させることができ、多彩な発光色の素子が作製可能である。
この有機EL素子は、具体的には、陽極と陰極を有し、この陽極と陰極の間に有機EL層が設けられて構成される。
この有機EL層は、正孔輸送層、発光層および電子輸送層の3層で構成されるのが一般的であり、さらに他の層が付加されて構成される場合もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、有機EL層において、隣接する層同士で構成材料の溶剤への溶解度が近似していると、上層を形成する際の溶媒(溶剤)によって下層の構成材料が溶出し、下層と上層との界面付近で構成材料が混和してしまう。これにより、当該層の性能が損なわれ、発光効率が低下する。
このため、有機EL層を形成する際には、上層と下層とで、溶剤への溶解度が異なる材料が、一般に選択される。このため、採用できる材料が制限され、デバイス特性を優先した材料の選択が困難であるという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決する方法として、有機EL層を1層(単層体)で構成することが考えられ、近年、正孔輸送性のユニット、電子輸送性のユニット、発光性のユニットのように機能毎のユニットを1つの分子中に備えるブロックコポリマーにより有機EL層(単層体)を構成して、当該層を発光させることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、このようなブロックコポリマーを合成するには、多くの工程を必要とするとともに、合成されるブロックコポリマーの収率が低いことも問題となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−302667号公報
【特許文献2】PCT/GB2001/001037
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、比較的簡単な工程で発光効率等の発光特性に優れた発光素子を製造し得る発光素子の製造方法、かかる発光素子の製造方法を含み信頼性の高い発光装置の製造方法およびかかる発光装置の製造方法を含み信頼性の高い電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子の製造方法は、第1の電極の一方の面側に、発光性を有する発光部と第1の重合性基とを備える第1の化合物と、正孔輸送性を有する正孔輸送部と第2の重合性基とを備える第2の化合物および電子輸送性を有する電子輸送部と第3の重合性基とを備える第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜中において、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させて、発光層を得る第2の工程と、
該発光層の前記第1の電極と反対側に、第2の電極を設ける第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、比較的簡単な工程で発光効率等の発光特性に優れた発光素子を製造することができる。
【0008】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第1の工程において、前記被膜は、液相プロセスにより形成されることが好ましい。
液相プロセスによれば、大掛かりな装置を用いることなく、第1の化合物と、第2の化合物および/または第3の化合物とを含む液状材料を一方の面側に供給するという比較的簡単な工程で被膜を形成し得ることから好ましい。
【0009】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第2の工程において、光を照射することにより、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させることが好ましい。
被膜に光を照射する光照射処理は、重合反応の反応速度を比較的容易に制御し得るとともに、重合反応させる領域の選択性が高いことから好ましい。
【0010】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第2の工程において、加熱することにより、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させることが好ましい。
被膜を加熱する加熱処理は、重合反応の反応速度を比較的容易に制御し得ることから好ましい。
【0011】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第1の化合物、前記第2の化合物、前記第3の化合物において、少なくともいずれか一つの化合物が、その重合性基を複数有することが好ましい。
これにより、発光層中に含まれるランダムコポリマーの形状が、線形すなわち直鎖状のものではなく、ネットワークを形成するように連結した構造を有するものすなわち3次元網目構造を有するものとなる。これにより、発光層の耐熱性の向上、および、発光部へのキャリア注入効率の向上等を図ることができる。
【0012】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第1の重合性基、前記第2の重合性基、前記第3の重合性基において、すべての重合性基がカチオン重合性を有することが好ましい。
これにより、第1の重合性基および第2および第3の重合性基の反応性が均一なものとなり、第1の化合物と第2の化合物とのランダム化をより確実に行うことができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記第1の重合性基、前記第2の重合性基、前記第3の重合性基において、すべての重合性基がラジカル重合性を有することが好ましい。
これにより、第1の重合性基および第2および第3の重合性基の反応性が均一なものとなり、第1の化合物と第2の化合物とのランダム化をより確実に行うことができる。
【0013】
本発明の発光素子の製造方法では、前記正孔輸送部は、アリールアミン骨格を含むものであることが好ましい。
このものを含む正孔輸送部は、特に正孔輸送性に優れるとともに、第2の重合性基を比較的容易な方法で正孔輸送部に導入(連結)し得ることから好ましい。
本発明の発光素子の製造方法では、前記電子輸送部は、オキサジアゾール骨格またはトリアゾール骨格を含むものであることが好ましい。
このものを含む電子輸送部は、特に電子輸送性に優れるとともに、第3の重合性基を比較的容易な方法で電子輸送部に導入(連結)し得ることから好ましい。
【0014】
本発明の発光素子の製造方法では、前記発光部は、フルオレン骨格またはカルバゾール骨格を含むものであることが好ましい。
これらのものを含む発光部は、特に高い発光性を有するとともに、第1の重合性基を比較的容易な方法で発光部に導入(連結)し得ることから好ましい。
本発明の発光素子の製造方法では、前記発光部は、イリジウム錯体またはアルミニウム錯体を含むものであることが好ましい。
これらのものを含む発光部は、特に高い発光性を有するとともに、第1の重合性基を比較的容易な方法で発光部に導入(連結)し得ることから好ましい。
【0015】
本発明の発光素子の製造方法では、前記被膜は、前記発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物を含むことが好ましい。
かかる構成とすることにより、形成される発光層において、正孔と電子が再結合する際に生じるホスト部におけるエネルギーの消失を確実に低減することができるため、発光部の発光効率の向上を図ることができる。
【0016】
本発明の発光素子の製造方法では、前記第4の化合物は、第4の重合性基を有することが好ましい。
これにより、形成される発光層中において、第1の化合物と、第2の化合物および/または第3の化合物と、第4の化合物とを重合反応させたランダムコポリマーを生成することができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記ホスト部は、アリールアミン骨格、カルバゾール骨格またはフルオレン骨格を含むものであることが好ましい。
これらのものを含むホスト部は、特に大きいバンドギャップを有することから好ましい。
【0017】
本発明の発光装置の製造方法は、本発明の発光素子の製造方法を含むことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い発光装置を製造することができる。
本発明の電子機器の製造方法は、本発明の発光装置の製造方法を含むことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発光素子の製造方法、発光装置の製造方法および電子機器の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
<発光素子>
まず、本発明の発光素子の製造方法により製造される発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)について説明する。
【0019】
図1は、本発明の発光素子の製造方法により製造される発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。図2は、発光素子が備える有機EL層の他の構成を示す模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)11は、基板12上に設けられた陽極13と、陰極14と、陽極13と陰極14との間に設けられた有機EL層15とを有し、その全体が封止部材16で封止されている。
【0020】
基板12は、発光素子11の支持体となるものである。本実施形態の発光素子11は、基板12側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板12および陽極13は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板12の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板12の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0021】
なお、発光素子11が基板12と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板12には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0022】
陽極13は、有機EL層15に正孔を注入する電極である。この陽極13の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極13の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極13の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0023】
一方、陰極14は、有機EL層15に電子を注入する電極である。この陰極14の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極14の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Cr、Oy、Ndまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0024】
特に、陰極14の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。これにより、陰極14の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極14の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0025】
なお、本実施形態の発光素子11は、ボトムエミッション型であるため、陰極14に、光透過性は、特に要求されない。
陽極13と陰極14との間には、これらの双方に接触して、有機EL層(発光層)15が設けられている。
陽極13と陰極14との間に通電(電圧を印加)すると、陽極13から正孔が、陰極14から電子が、それぞれ有機EL層15に注入され、この有機EL層15において正孔と電子が再結合することにより発光する。
【0026】
本発明の発光素子の製造方法では、この有機EL層15を形成する工程に特徴を有する。以下では、後述する本発明の発光素子の製造方法により形成された有機EL層15の構成について説明する。
有機EL層15は、発光性を有する発光部と第1の重合性基とを備える第1の化合物と、正孔輸送性を有する正孔輸送部と第2の重合性基とを備える第2の化合物および電子輸送性を有する電子輸送部と第3の重合性基とを備える第3の化合物のうちの少なくとも一方とを、第1の重合性基と、第2の重合性基および第3の重合性基のうちの少なくとも一方とにおいて重合反応させて得られたランダムコポリマーで構成される。
【0027】
換言すれば、有機EL層15は、発光部と、正孔輸送部および電子輸送部(以下、これらを総称して「キャリア輸送部」ということもある。)のうちの少なくとも一方とが、第1の重合性基と、第2の重合性基および第3の重合性基のうちの少なくとも一方との間で重合反応することにより形成された連結構造を介して任意の順序で結合した高分子で構成される。
【0028】
以下、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物について順次説明する。
第1の化合物は、発光性を有する発光部と、この発光部に連結する第1の重合性基とを備えている。
発光部は、有機EL層15中に注入された正孔と電子とがこの発光部において再結合することにより、蛍光や燐光を発光する機能を有するものである。
すなわち、有機EL層15中に注入された正孔と電子とがそれぞれ発光部に供給され再結合する。そして、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際に、発光部において、エネルギー(蛍光や燐光)を放出(発光)する。
【0029】
発光部としては、例えば、カルバゾール骨格、フルオレン骨格およびパラフェニレンビニレン骨格のうちの少なくとも1種を有する重合体を備えるものや、ペリレン、ルブレン、キナクリドン、クマリン、ナイルレッドのような色素、アルミニウム錯体、イリジウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体のような金属錯体等を備えるものが挙げられる。中でも、カルバゾール骨格を有する重合体、フルオレン骨格を有する重合体、アルミニウム錯体およびイリジウム錯体を備えるものであるのが好ましい。これらのものを備える発光部は、特に高い発光性を有するとともに、後述する第1の重合性基を比較的容易な方法で発光部に導入(連結)し得ることから好ましい。
これらを含む発光部の具体例としては、例えば、下記化1−1〜化1−6に示す化合物を含むものが挙げられる。
【0030】
【化1−1】

【0031】
【化1−2】

【0032】
【化1−3】

【0033】
【化1−4】

【0034】
【化1−5】

【0035】
【化1−6】

【0036】
ただし、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。
なお、これらの発光部には、第1の化合物の溶媒への溶解性、発光部の発光する色等を調整するために、1または複数の置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子のようなハロゲン原子や、炭素数6〜12の直鎖アルキル基等が挙げられる。
【0037】
また、これらの発光部のうち化1−1〜化1−3で表されるものは、エキシトンが基底状態に戻る際に、燐光を発光するものであり、化1−4〜化1−6で表されるものは、蛍光を発光するものである。
第1の重合性基は、隣接する第1の化合物が有する第1の重合性基、第2の化合物が有する第2の重合性基、または第3の化合物が有する第3の重合性基と重合反応して、第1の化合物(発光部)同士、第1の化合物(発光部)と第2の化合物(正孔輸送部)または第3の化合物(電子輸送部)とを連結する機能を有するものである。
【0038】
第1の重合性基としては、後述する発光素子の製造方法において、光照射や加熱等の所定の処理を施すことにより重合反応し得るものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基、オキセタン基のような環状エーテル基や、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニルベンジルエーテル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基を含むもの等をその末端に備える置換基が挙げられる。この第1の重合性基の種類は、前記所定の処理や後述する重合開始剤の種類等に応じて適宜選択される。
なお、第1の重合性基のうち、環状エーテル基をその末端に備える置換基は、ラジカル重合性を有するものであり、アルケニル基を含むものをその末端に備える置換基は、カチオン重合性を有するものである。
【0039】
第1の重合性基は、第1の化合物に少なくとも1つ導入されていればよいが、複数導入されているのが好ましい。すなわち、第1の重合性基は、発光部に複数連結しているのが好ましい。これにより、第1の化合物(発光部)に連結する第1の化合物(発光部)と、第2の化合物(正孔輸送部)および第3の化合物(電子輸送部)のうちの少なくとも一方との数が増加し、発光部同士間、さらには発光部とキャリア輸送部間の離間距離が所定の距離に保持(規定)されることとなり、発光部へのキャリアの注入効率が向上する。さらに、ランダムコポリマーの形状が、線形すなわち直鎖状のものではなく、ネットワークを形成するように連結した構造を有するものすなわち3次元網目構造を有するものとなる。これにより、有機EL層15の耐熱性の向上、および、発光部へのキャリア注入効率の向上等を図ることができる。
【0040】
なお、第1の化合物が第1の重合性基を複数有する場合、第1の重合性基は、上述したもののうち同種(または同一)のものであってもよく、異なるものであってもよいが、同種(特に、同一)のものであるのが好ましい。これにより、各第1の重合性基間の反応性が均一なものとなり、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方とのランダム化を確実に行うことができる。
【0041】
また、上述したような発光部を備える第1の化合物は、有機EL層15(ランダムコポリマー)中に、1種含まれるものであってもよいし、発光部の構造が異なる2種以上が含まれるものであってもよい。かかる構成とすることにより、有機EL層15の発光色を所望の色に調整することができるという利点が得られる。
さらに、有機EL層15中には、ランダムコポリマーに連結しない発光性を有する化合物が含まれていてもよい。発光性を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、第1の化合物から第1の重合性基を除いた構成のもの、すなわち、発光部で挙げた化合物を好適に用いることができる。
【0042】
第2の化合物および第3の化合物は、キャリア輸送性を有するキャリア輸送部と、それぞれ、このキャリア輸送部に連結する第2重合性基および第3の重合性基とを備えている。
キャリア輸送部としては、陽極13から注入された正孔を発光部に輸送する正孔輸送部と、陰極14から注入された電子を発光部に輸送する電子輸送部とが挙げられる。
【0043】
すなわち、第2の化合物は、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える化合物であり、第3の化合物は、電子輸送性を有する電子輸送部を備える化合物である。そして、有機EL層15中には、第2の化合物および第3の化合物の双方が含まれているのが好ましい。かかる構成とすることにより、正孔および電子の双方の発光部への注入効率を向上させることができ、発光部をより確実に発光させることができる。
【0044】
正孔輸送部としては、例えば、アリールアミン骨格、ジオキシチオフェン骨格、カルバゾール骨格、フタロシアニン骨格、ポリフィリン骨格を含むものが挙げられる。中でも、アリールアミン骨格を含むものであるのが好ましい。このものを含む正孔輸送部は、特に正孔輸送性に優れるとともに、後述する第2の重合性基を比較的容易な方法で正孔輸送部に導入(連結)し得ることから好ましい。
アリールアミン骨格を含む正孔輸送部の具体例としては、例えば、下記化2−1〜化2−6に示す化合物が挙げられる。
【0045】
【化2−1】

【0046】
【化2−2】

【0047】
【化2−3】

【0048】
【化2−4】

【0049】
【化2−5】

【0050】
【化2−6】

【0051】
なお、これらの正孔輸送部には、例えば、第2の化合物の溶媒への溶解性、または正孔輸送性等を調整するために、1または複数の置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子のようなハロゲン原子や、炭素数6〜12の直鎖アルキル基等が挙げられる。
電子輸送部としては、例えば、オキサジアゾール骨格、チアジアゾール骨格、トリアゾール骨格のようなアゾール系骨格、トリアジン骨格、ピリジン骨格を含むものが挙げられる。中でも、オキサジアゾール骨格またはトリアゾール骨格を含むものであるのが好ましい。このものを含む電子輸送部は、特に電子輸送性に優れるとともに、後述する第3の重合性基を比較的容易な方法で電子輸送部に導入(連結)し得ることから好ましい。
オキサジアゾール骨格を含む電子輸送部の具体例としては、例えば、下記化3−1〜化3−4に示す化合物が挙げられる。
【0052】
【化3−1】

【0053】
【化3−2】

【0054】
【化3−3】

【0055】
【化3−4】

【0056】
トリアゾール骨格を含む電子輸送部の具体例としては、例えば、下記化4−1〜化4−2に示す化合物が挙げられる。
【0057】
【化4−1】

【0058】
【化4−2】

【0059】
なお、これらの電子輸送部には、例えば、第3の化合物の溶媒への溶解性、または電子輸送性等を調整するために、1または複数の置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子のようなハロゲン原子や、炭素数6〜12の直鎖アルキル基等が挙げられる。
第2の重合性基は、隣接する第1の化合物が有する第1の重合性基、第2の化合物が有する第2の重合性基、または第3の化合物が有する第3の重合性基と重合反応して、第2の化合物(正孔輸送部)同士、第2の化合物(正孔輸送部)と第1の化合物(発光部)または第3の化合物(電子輸送部)とを連結する機能を有するものである。
【0060】
また、第3の重合性基は、隣接する第1の化合物が有する第1の重合性基、第2の化合物が有する第2の重合性基、または第3の化合物が有する第3の重合性基と重合反応して、第3の化合物(電子輸送部)同士、第3の化合物(電子輸送部部)と第1の化合物(発光部)または第2の化合物(正孔輸送部)とを連結する機能を有するものである。
第2および第3の重合性基としては、前述した第1の重合性基と同様の置換基が挙げられる。
【0061】
また、第2および第3の重合性基は、第2および第3の化合物に少なくとも1つ導入されていればよいが、複数導入されているのが好ましい。すなわち、第2および第3の重合性基は、キャリア輸送部に複数連結しているのが好ましい。これにより、第2および第3の化合物(キャリア輸送部)に連結する、第1の化合物(発光部)および第2および第3の化合物(キャリア輸送部)の数が増加し、発光部とキャリア輸送部間、さらにはキャリア輸送部同士間の離間距離が所定の距離に保持(規定)されることとなり、キャリア輸送部から発光部へのキャリアの注入効率が向上する。さらに、ランダムコポリマーの構造(形状)が、線形のものではなく、ネットワークを形成するように連結した構造を有するものすなわち3次元網目構造を有するものとなる。これにより、有機EL層15の耐熱性の向上、および、キャリア輸送部から発光部へのキャリア注入効率の向上等を図ることができる。
【0062】
なお、第2および第3の化合物が第2および第3の重合性基を複数有する場合、第2および第3の重合性基は、同種(または同一)のものであっても異なるものであってもよいが、同種(特に同一)のものであるのが好ましい。これにより、各第2および第3の重合性基間の反応性が均一なものとなり、第1の化合物と第2および第3の化合物とのランダム化を確実に行うことができる。
【0063】
また、第1の重合性基と第2および第3の重合性基とは、同種(または同一)のものであっても異なるものであってもよいが、同種(特に同一)のものであるのが好ましい。これにより、第1の重合性基、第2重合性基および第3の重合性基の反応性が均一なものとなり、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物とのランダム化をより確実に行うことができる。
【0064】
なお、上述したような第2の化合物は、有機EL層15(ランダムコポリマー)中に、1種含まれるものであってもよいし、正孔輸送部の構造が異なる2種以上が含まれるものであってもよい。また、第3の化合物も同様に、有機EL層15(ランダムコポリマー)中に、1種含まれるものであってもよいし、電子輸送部の構造が異なる2種以上が含まれるものであってもよい。
【0065】
さらに、有機EL層15には、上述した第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物の他に、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物が含まれていてもよい。
このような第4の化合物が有機EL層15に含まれる構成とすることにより、正孔および電子の少なくとも一部が発光部に注入(供給)されることなくホスト部に注入され、このホスト部から励起エネルギ−が発光(ゲスト)部に移動されることとなる。
【0066】
すなわち、ホスト部に、陽極13から注入された正孔と、陰極14から注入された電子とがそれぞれ供給され、このホスト部において再結合する。そして、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成され、このエキシトンが基底状態に戻る際に励起エネルギーを放出し、この励起エネルギーが発光(ゲスト)部に移動されることとなる。その結果、この励起エネルギーにより、エキシトンが生成され、基底状態に戻る際に蛍光や燐光を発光する。かかる構成とすることにより、ホスト部において正孔と電子が再結合する際に生じるエネルギーの消失を確実に低減することができるため、発光部の発光効率の向上を図ることができる。
【0067】
ホスト部としては、各種の化合物が用いられるが、そのバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさが3eV以上であるものが好適に用いられ、例えば、カルバゾール骨格、アリールアミン骨格、フルオレン骨格、フェナントロリン骨格のうちの少なくとも1種を有する重合体を含むものが挙げられる。中でも、カルバゾール骨格またはアリールアミン骨格を有する重合体を含むものであるのが好ましい。これらのものを含むホスト部は、特に大きいバンドギャップを有することから好ましい。
これらを含むホスト部の具体例としては、例えば、前記と同様の化合物が挙げられる。
【0068】
なお、これらのホスト部には、1または複数の置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子のようなハロゲン原子や、炭素数6〜12の直鎖アルキル基等が挙げられる。
【0069】
なお、有機EL層15中に、このようなホスト性化合物が含まれる構成とするのは、特に、第1の化合物が有する発光部として、前記化1−1〜1−3で表される化合物のような燐光を発光する化合物を用いる場合に適応するのが有効である。
また、第4の化合物は、有機EL層15中において、第1の化合物と、第2化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合反応させて得られたランダムコポリマーに連結することなく含まれるものであってもよいが、第1の化合物と、第2化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方と、この第4の化合物とを重合反応させて得られたランダムコポリマーとして含まれるものであるのが好ましい。
そのため、第4の化合物は、ホスト部に連結する第4の重合性基を備えるものであるのが好ましい。これにより、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方と、第4の化合物とを重合反応させたランダムコポリマーを得ることができる。
【0070】
第4の重合性基は、前述した第1の重合性基と同様の置換基を用いることができる。
また、第4の重合性基は、第4の化合物に少なくとも1つ導入されていればよいが、複数導入されているのが好ましい。すなわち、第4の重合性基は、ホスト部に複数連結しているのが好ましい。これにより、第4の化合物(ホスト部)に連結する、第1の化合物(発光部)と、第2の化合物(正孔輸送部)および第3の化合物(電子輸送部)のうちの少なくとも一方と、第4の化合物(ホスト部)との数が増加し、発光部、キャリア輸送部およびホスト部間の離間距離が所定の距離に保持(規定)されることとなり、キャリア輸送部からホスト部へのキャリアの注入効率さらにはホスト部から発光部への励起エネルギーの移動効率が向上する。さらに、ランダムコポリマーの構造(形状)が、線形のものではなく、ネットワークを形成するように連結した構造を有するものすなわち3次元網目構造を有するものとなる。これにより、有機EL層15の耐熱性の向上、および、キャリア輸送部からホスト部へのキャリアの注入効率の向上、ホスト部から発光部への励起エネルギーの移動効率の向上等を図ることができる。
【0071】
なお、第4の化合物が第4の重合性基を複数有する場合、第4の重合性基は、同一のものであっても異なるものであってもよいが、同種(特に同一)のものであるのが好ましい。これにより、各第4の重合性基間の反応性が均一なものとなり、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方と、第4の化合物とのランダム化を確実に行うことができる。
【0072】
また、第1の重合性基、第2の重合性基、第3の重合性基および第4の重合性基は、同一のものであっても異なるものであってもよいが、同種(特に同一)のものであるのが好ましい。これにより、第1の重合性基、第2の重合性基、第3の重合性基および第4の重合性基の反応性が均一なものとなり、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物のランダム化をより確実に行うことができる。
【0073】
以上説明したようなランダムコポリマーに含まれる第1の化合物(発光部)、第2の化合物(正孔輸送部)、第3の化合物(電子輸送部)および第4の化合物(ホスト部)の組み合わせは、第1の化合物(発光部)の種類に応じて、得られる有機EL層15がより優れた発光効率を発揮し得るものが適宜選択され、例えば、以下に示すような組み合わせのものが挙げられる。
【0074】
A:発光部として化1−1で表されるものを選択した場合、
正孔輸送部として、化2−5および/または化2−6で表されるもの、電子輸送部として、化3−2で表されるもの、ホスト部として、化1−5で表されるものが好適に選択される。
B:発光部として化1−2で表されるものを選択した場合、
正孔輸送部として、化2−6で表されるもの、電子輸送部として、化3−2または化4−1で表されるもの、ホスト部として、化1−5で表されるものが好適に選択される。
【0075】
C:発光部として化1−3で表されるものを選択した場合、
正孔輸送部として、化2−5および/または化2−6で表されるもの、電子輸送部として、化3−2で表されるものが好適に選択される。
D:発光部として化1−4で表されるものを選択した場合、
正孔輸送部として、化2−5および/または化2−6で表されるもの、電子輸送部として、化3−2で表されるものが好適に選択される。
【0076】
E:発光部として化1−5で表されるものを選択した場合、
正孔輸送部として、化2−5および/または化2−6で表されるもの、電子輸送部として、化3−2で表されるものが好適に選択される。
ランダムコポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、10000〜1000000程度であるのが好ましく、15000〜300000程度であるのがより好ましい。これにより、有機EL層15中において、ランダムコポリマー同士が高密度に絡み合うこととなり、第2の化合物(キャリア輸送部)から第1の化合物(発光部)へのキャリアの受け渡しをより円滑に行うことができる。
【0077】
なお、有機EL層15は、発光部が優れた発光特性を発揮し得る範囲において、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物の低分子(モノマーやオリゴマー)を含んでいてもよい。
このようなランダムコポリマーは、1分子(高分子)中に、発光部とキャリア輸送部(正孔輸送部、電子輸送部)とを有しているので、1層で、発光層およびキャリア輸送層の機能を併せもつ有機EL層15を得ることができる。したがって、後述する有機EL層15を形成するための工程数を削減すること、すなわち比較的簡単な工程で有機EL層15を形成することができ、素子の生産性の向上を図ることができる。また、層同士の界面の乱れによる特性劣化を回避することができ、高い発光効率を得ることができる。
【0078】
また、発光部とキャリア輸送部(正孔輸送部および/または電子輸送部)とが1分子内で連結しているので、キャリア輸送部から発光部へのキャリア注入の障壁が低減する。
また、本実施形態では、有機EL層15は、第1の化合物と、第2の化合物および/または第3の化合物とを含むランダムコポリマーで構成される単層体である場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、以下に示すような構成の積層体であってもよい。
【0079】
この場合、積層体の構成としては、各層を構成する高分子(ランダムコポリマーまたはポリマー)に含まれる発光部をL、正孔輸送部をH、電子輸送部をLとして示すと、例えば、図2(a)〜図2(g)に示すようなものが挙げられる。
ここで、図2(a)に示す構成では、有機EL層15は2層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eを含むポリマーで構成されている。
【0080】
図2(b)に示す構成では、有機EL層15は2層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hを含むポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
図2(c)に示す構成では、有機EL層15は2層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
【0081】
図2(d)に示す構成では、有機EL層15は3層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hを含むポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eを含むポリマーで構成され、陽極13側の層と陽極14側の層との間の層は、正孔輸送部H、電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
図2(e)に示す構成では、有機EL層15は3層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eを含むポリマーで構成され、陽極13側の層と陽極14側の層との間の層は、正孔輸送部H、電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
【0082】
図2(f)に示す構成では、有機EL層15は3層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hを含むポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陽極13側の層と陽極14側の層との間の層は、正孔輸送部H、電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
【0083】
図2(g)に示す構成では、有機EL層15は3層の積層体で構成され、陽極13側の層は正孔輸送部Hおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陰極14側の層は電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成され、陽極13側の層と陽極14側の層との間の層は、正孔輸送部H、電子輸送部Eおよび発光部Lを含むランダムコポリマーで構成されている。
【0084】
なお、図2(a)〜図2(g)に示すように、有機EL層15を積層体で構成する場合であっても、各層が高分子(ランダムコポリマーまたはポリマー)で構成されていることから、この積層体を構成する各層の耐久性すなわち耐溶剤性を向上させることができる。その結果、下層上に、上層を形成するための液状材料を供給して上層を形成する際に、この液状材料に含まれる溶媒または分散媒により、下層に含まれる高分子が膨潤または溶解されることを抑制または防止することができる。これにより、上層と下層との相溶解を確実に防止することができる。
【0085】
このような有機EL層15の平均厚さは、特に限定されないが、10〜300nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
また、発光素子11は、有機EL層15と陽極13との間に、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送層を備えるものであってもよく、有機EL層15と陰極14との間に、電子を輸送する機能を有する電子輸送層を備えるものであってもよい。
【0086】
正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、ポリアニリン:ポリスチレンスルホネート、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
電子輸送層の構成材料としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、アクリジン系化合物、スチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエン系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビスチリル系化合物、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリン系化合物、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール系化合物、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロン系化合物、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレン系化合物、ピロール系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
また、封止部材16は、発光素子11(陽極13、有機EL層15および陰極14)を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、外気からの酸素や水分の浸入を抑制する機能を有する。封止部材16を設けることにより、発光素子11の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材16の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材16の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材16と発光素子11との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材16は、平板状として、基板12と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0089】
<発光素子の製造方法>
上述したような発光素子11は、本発明の発光素子の製造方法により、例えば、次のようにして製造することができる。
【0090】
以下、発光素子11の製造方法(本発明の発光素子の製造方法)について説明する。
[1]陽極形成工程
まず、基板12を用意し、この基板12上に陽極13を形成する。
陽極13は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0091】
[2]有機EL層形成工程
次に、陽極13上に、有機EL層15を形成する。
さて、本発明の発光素子の製造方法では、この有機EL層15の形成方法に特徴を有する。
前述した背景技術で説明したように、有機EL層を予め合成されたブロックコポリマーで構成することによっても、優れた発光特性を発揮させ得ることが知られている。ところが、この場合、ブロックコポリマーを合成するのに、多くの工程を要したり、その収率が低いという問題がある。
【0092】
そこで、本発明者は、ブロックコポリマーを用いることなく、有機EL層を1層で構成し得る方法について鋭意検討した結果、ブロックコポリマーで構成される有機EL層に代えてランダムコポリマーで構成される有機EL層を形成することによっても有機EL層を発光させ得ることを見出した。
ところが、合成したランダムコポリマーを溶媒中に溶解した液状材料を調製し、この液状材料を陽極上に供給した後に乾燥させることにより有機EL層を形成すると、層中に含まれるランダムコポリマー同士の絡まり合いが高密度とならないことに起因して、優れた発光特性が得られないという問題が生じた。
【0093】
そこで、本発明者は、さらに検討を重ね、発光性を有するモノマー(第1の化合物)とキャリア輸送性を有するモノマー(第2および/または第3の化合物)とを陽極(第1の電極)上に供給し、この陽極上でこれらのモノマー同士を重合反応させることによりランダムコポリマーを陽極上に形成する構成について検討を行った。その結果、三次元的に密に絡まりあった架橋構造のランダムコポリマーすなわち高密度なランダムコポリマーにより有機EL層を形成することができ、この有機EL層に優れた発光特性を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0094】
以下、この有機EL層15の形成方法について詳述する。
[3−1] まず、陽極(第1の電極)13上に、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含む被膜を形成する(第1の工程)。
この被膜を形成する方法としては、液相プロセスや気相プロセスのような各種プロセスにより形成することができるが、液相プロセスにより形成するのが好ましい。
液相プロセスによれば、気相プロセスで用いられる真空装置のような大掛かりな装置を用いることなく、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含む液状材料を陽極13に供給するという比較的簡単な工程で前記被膜を形成し得ることから好ましい。
【0095】
以下では、液相プロセスにより陽極13上に前記被膜を形成する場合を一例に説明する。
まず、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含有する液状材料を陽極13上に塗布法等を用いて供給して、被膜を形成する。
この被膜中における第1の化合物(発光性モノマー)と、第2の化合物および第3の化合物の合計量(キャリア輸送性モノマー)との比は、用いる第1の化合物(発光部)、第2の化合物(正孔輸送部)および第3の化合物(電子輸送部)の種類によっても大きく異なるが、重量比で1:100〜90:10(発光性モノマーが1〜90%)であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、形成される有機EL層15中において、電極から注入されたキャリアを、キャリア輸送部を介して確実に発光部に供給することができる。
【0096】
塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法が挙げられる。かかる塗布法によれば、液状材料を比較的容易に陽極13上に供給することができる。
【0097】
液状材料の調製に溶媒または分散媒を用いる場合、溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0098】
また、液状材料には、重合開始剤が含まれるのが好ましい。これにより、次工程[3−2]において、加熱や光照射のような所定の処理を施す際に、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物のうちの少なくとも一方との重合反応を促進させることができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合開始剤や光ラジカル重合開始剤のような光重合開始剤、熱重合開始剤および嫌気重合開始剤等が挙げられる。
【0099】
なお、第1の重合性基、第2の重合性基および第3の重合性基(以下、これらを総称して「重合性基」ということもある。)は、前述したように、同種(特に同一)のものであるのが好ましく、これらの重合性基として、例えば、その末端に(メタ)アクリロイル基、ビニルベンジルエーテル基、またはアリル基を有するものを選択した場合、すなわち、ラジカル重合性を有するものを選択した場合、重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を用いるのが特に好ましい。
【0100】
光ラジカル重合開始剤としては、各種の光ラジカル重合開始剤を用いることができるが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、ベンジケタ−ル系、ミヒラ−ズケトン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ケトクマリン系、キサンテン系およびチオキサントン系等の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
また、重合性基として、例えば、その末端にエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基を有するものを選択した場合、すなわち、カチオン重合性を有するものを選択した場合、重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を用いるのが特に好ましい。
【0101】
光カチオン重合開始剤としては、各種の光カチオン重合開始剤を用いることができるが、例えば、芳香族スルホニウム塩系、芳香族ヨードニウム塩系、芳香族ジアゾニウム塩系、ピリジウム塩系および芳香族ホスホニウム塩系等のオニウム塩系の光カチオン重合開始剤や、鉄アレーン錯体およびスルホン酸エステル等の非イオン系の光カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0102】
用いる重合性基の種類に応じて、上述したような重合開始剤を適宜選択することにより、次工程[3−2]において、第1の化合物と、第2および/または第3の化合物との重合反応を比較的容易に進行させることができる。
なお、重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤に適した増感剤を液状材料中に添加するようにしてもよい。
【0103】
[3−2] 次に、陽極3上に形成された被膜中において、第1の化合物と、第2および/または第3の化合物とを重合させて、有機EL層(発光層)15を得る(第2の工程)。
第1の化合物と、第2および/または第3の化合物とを重合させる処理としては、各種の処理方法を用いることができ、例えば、被膜に光を照射する光照射処理、被膜を加熱する加熱処理および被膜とガスとの接触を遮断する嫌気性処理等が挙げられるが、これらの中でも、加熱処理または光照射処理を用いるのが好ましく、特に、光照射処理を用いるのが好ましい。加熱処理および光照射処理は、重合反応の反応速度を比較的容易に制御し得ることから好ましく、特に、光照射処理は、重合反応させる領域の選択性が高いことから好ましい。
【0104】
被膜に光照射する光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線およびX線等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線を用いるのが特に好ましい。これにより、第1の化合物と、第2および/または第3の化合物との重合反応を容易かつ確実に進行させることができる。
光照射する紫外線の波長は、100〜420nm程度であるのが好ましく、150〜400nm程度であるのがより好ましい。
【0105】
また、紫外線の照射強度は、1〜600mW/cm程度であるのが好ましく、1〜300mW/cm程度であるのがより好ましい。
さらに、紫外線の照射時間は、10〜900秒程度であるのが好ましく、10〜600秒程度であるのがより好ましい。
紫外線の波長、照射強度および照射時間をかかる範囲にすることにより、被膜中の第1の化合物と第2の化合物との重合反応の進行を比較的容易に制御することができる。
【0106】
[4]陰極形成工程
次に、有機EL層15上(陽極13と反対側)に、陰極14を形成する(第3の工程)。
陰極14は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
【0107】
[5]封止部材形成工程
最後に、陽極13、有機EL層15および陰極14を覆うように、封止部材16を被せ、基板12に接合する。
以上のような工程を経て、発光素子11が製造される。
以上のような製造方法によれば、有機EL層15の形成や、金属微粒子インクを使用する場合は陰極の形成においても、真空装置等の大掛かりな設備を要しないため、発光素子11の製造時間および製造コストの削減を図ることができる。
【0108】
また、有機EL層15は、これを構成するランダムコポリマーが、発光機能およびキャリア輸送機能を有しているので、1層で、発光層およびキャリア輸送層の機能を発揮することができる。したがって、発光素子11を製造するための工程数を削減すること、すなわち有機EL層15を比較的簡単な工程で形成することができ、素子の生産性の向上を図ることができる。
【0109】
このような本発明の発光素子の製造方法により製造された発光素子11は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子11をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0110】
<発光装置>
次に、上述した発光素子を備える発光装置として、ディスプレイ装置を一例に説明する。
図3は、発光素子を備えるディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図3に示すディスプレイ装置100は、基体200と、この基体200上に設けられた複数の発光素子11とで構成されている。
【0111】
基体200は、基板210と、この基板210上に形成された回路部220とを有している。
回路部220は、基板210上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層230と、保護層230上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)240と、第1層間絶縁層250と、第2層間絶縁層260とを有している。
【0112】
駆動用TFT240は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部220上に、各駆動用TFT240に対応して、それぞれ、発光素子11が設けられている。また、隣接する発光素子11同士は、第1隔壁部310および第2隔壁部320により区画されている。
【0113】
本実施形態では、各発光素子11の陽極13は、画素電極を構成し、各駆動用TFT240のドレイン電極245に配線270により電気的に接続されている。また、各発光素子11の陰極14は、共通電極とされている。
そして、各発光素子11を覆うように封止部材(図示せず)が基体200に接合され、各発光素子11が封止されている。
【0114】
ディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、発光部の種類が異なるランダムコポリマーを選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100は、各種の電子機器に組み込むことができる。
上述したような構成のディスプレイ装置(発光装置)の製造方法には、先に説明した発光素子の製造方法が含まれていればよい。
【0115】
<電子機器>
以下、上述した発光装置を備える電子機器について説明する。
図4は、発光装置を備えるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0116】
図5は、発光装置を備える携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0117】
図6は、発光装置を備えるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0118】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0119】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0120】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0121】
なお、発光装置を備える電子機器は、図4のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図5の携帯電話機、図6のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
このような構成の電子機器の製造方法には、先に説明した発光装置(発光素子)の製造方法が含まれていればよい。
以上、本発明の発光素子の製造方法、発光装置の製造方法および電子機器の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例】
【0122】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.化合物の合成
まず、以下に示すような化合物をそれぞれ合成した。
・下記化5−1に示す重合性イリジウム錯体[A1]の合成
【0123】
【化5−1】

【0124】
なお、この重合性イリジウム錯体[A1]は、緑色に発光する化合物である。
まず、下記化5−2に示す合成経路を経て、2−(4−ビニルフェニル)ピリジン[A11]を合成した。
【0125】
【化5−2】

【0126】
まず、2−ヨードピリジン(10mmol)のキシレン溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1mmol)、および4−ビニルフェニルボロン酸(10mmol:東京化成社製)を加え、撹拌した。
次に、窒素雰囲気下、この混合溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、12時間加熱還流した。
【0127】
次に、この反応混合物に、塩化メチレン/水を加え、水層を塩化メチレンで抽出した。
次に、回収した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧濃縮し、析出した固体をキシレンで再結晶を行って、2−(4−ビニルフェニル)ピリジン[A11](収率65%)を得た。
次に、下記化5−3に示す合成経路を経て、重合性イリジウム錯体(2−(4−ビニルフェニル)ピリジン・イリジウム錯体)[A1]を合成した。
【0128】
【化5−3】

【0129】
まず、三塩化イリジウム(III)水和物(300mg)、および前記合成した2−(4−ビニルフェニル)ピリジン[A11](4.5g,25mmol)を、エチレングリコール(40mL)に加え、この混合溶液に窒素バブリングを行った。
次に、この混合溶液を窒素気流下でマントルヒータを用いて6時間加熱還流した。
次に、この反応溶液を室温まで冷却した後、析出した固体を濾別し、水、キシレンの順で洗浄した後、減圧乾燥を行って、重合性イリジウム錯体[A1](収率48%)を得た。
なお、重合性イリジウム錯体[A1]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化6−1に示す重合性イリジウム錯体[A2]の合成
なお、この重合性イリジウム錯体[A2]は、緑色に発光する化合物である。
【0130】
【化6−1】

【0131】
まず、下記化6−2に示す合成経路を経て、ベンジルエーテルボロン酸誘導体[A23]を合成した。
【0132】
【化6−2】

【0133】
まず、4−ブロモベンジルアルコール(1mol)を、無水ジメチルホルムアミド中で、4−メトキシベンジルブロミドと水素化ナトリウムとで処理し、ヒドロキシル基を4−メトキシベンジルエーテル基に変換して、4−ブロモベンジルエーテル誘導体[A22]を得た。
次に、前記合成した4−ブロモベンジルエーテル誘導体[A22](15mmol)と、金属マグネシウム(20mmol)とを無水THFに溶解し、グリニャール試薬を調製した。
【0134】
次に、窒素ガス雰囲気下、この反応混合液を−15℃に保ちながら、トリメトキシボロン酸(15mmol)の無水THF溶液をゆっくり滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。
次に、この反応混合液に、10%硫酸水溶液を10g加え、そのまま室温に戻しながら、24時間撹拌した。
【0135】
次に、この反応混合液から、THFを減圧除去し、純水/エーテルを加え、エーテルで水層を抽出した。
次に、回収した有機層に無水硫酸マグネシウムを添加し乾燥させた後、溶媒を減圧濃縮して、析出した固体を取り出し、キシレンで再結晶を行って、ベンジルエーテルボロン酸誘導体[A23](収率60%)を得た。
なお、ベンジルエーテルボロン酸誘導体[A23]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IRにより確認した。
次に、下記化6−3に示す合成経路を経て、2−(4−(4−メトキシベンジルオキシ)メチルフェニル)ピリジン[A21]を合成した。
【0136】
【化6−3】

【0137】
まず、2−ヨードピリジン(10mmol)のキシレン溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1mmol)、前記合成したベンジルエーテルボロン酸誘導体[A23](10mmol)を加え、撹拌した。
次に、窒素雰囲気下、この混合溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、15時間加熱還流した。
【0138】
次に、この反応混合物に、塩化メチレン/水を加え、水層を塩化メチレンで抽出した。
次に、回収した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧濃縮し、析出した固体をキシレンで再結晶を行って、2−(4−(4−メトキシベンジルオキシ)メチルフェニル)ピリジン[A21](収率58%)を得た。
次に、下記化6−4に示す合成経路を経て、イリジウム錯体[A24]を合成した。
【0139】
【化6−4】

【0140】
まず、三塩化イリジウム(III)水和物(300mg)、および前記合成したピリジン誘導体[A21](6.9g,25mmol)を、エチレングリコール(50mL)に加え、この混合溶液に窒素バブリングを行った。
次に、この混合溶液を窒素気流下でマントルヒータを用いて6時間加熱還流した。
次に、この反応溶液を室温まで冷却した後、析出した固体を濾別し、水、キシレンの順で洗浄した後、減圧乾燥して、イリジウム錯体[A24]を得た。
次に、下記化6−5に示す合成経路を経て、重合性イリジウム錯体(2−(4−(グリシジルオキシメチル)フェニル)ピリジン・イリジウム錯体)[A2]を合成した。
【0141】
【化6−5】

【0142】
まず、得られたイリジウム錯体[A24](10mmol)、およびパラジウム炭素0.5gを添加したキシレン/酢酸エチル混合液(150mL)を、窒素雰囲気下で水素還元し、ベンジル基の脱保護を行って、2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)ピリジン・イリジウム錯体[A25]を得た。
次に、この反応溶液を、エピクロルヒドリン(30g)、および少量のテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(相関移動触媒)を添加した50%水酸化ナトリウム水溶液に加え、室温下で12時間撹拌した。
【0143】
次に、反応溶液中の固体を濾別し、キシレン/メタノールで数回精製して、重合性イリジウム錯体[A2]を得た。
なお、重合性イリジウム錯体[A2]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化7に示す重合性イリジウム錯体[A3]の合成
【0144】
【化7】

【0145】
なお、この重合性イリジウム錯体[A3]は、赤色に発光する化合物である。
この重合性イリジウム錯体(2−(4−ビニルフェニル)キノリン・イリジウム錯体)[A3]は、2−ヨードピリジンに代えて、2−クロロキノリンを用いた以外は、前記重合性イリジウム錯体[A1]と同様にして合成した。
なお、重合性イリジウム錯体[A3]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化8に示す重合性イリジウム錯体[A4]の合成
【0146】
【化8】

【0147】
なお、この重合性イリジウム錯体[A4]は、青色に発光する化合物である。
この重合性イリジウム錯体(2−(2−フルオロ−4−グリシジルオキシメチルフェニル)ピリジン・イリジウム錯体)[A4]は、4−ブロモベンジルアルコールに代えて、4−ブロモ−2−フルオロベンジルブロミドを用いた以外は、前記重合性イリジウム錯体[A2]と同様にして合成した。
なお、重合性イリジウム錯体[A3]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化9−1に示す重合性イリジウム錯体[A5]の合成
【0148】
【化9−1】

【0149】
なお、この重合性イリジウム錯体[A5]は、赤色に発光する化合物である。
まず、下記化9−2に示す合成経路を経て、2−(4−ベンジルオキシメチルフェニル)−1,3−ベンゾチアゾール[A51]を合成した。
【0150】
【化9−2】

【0151】
まず、4−ヒドロキシメチル安息香酸(10mmol)と、2−アミノチオフェノール(10mmol)とを、ポリリン酸(50g)に添加し、激しく撹拌した。
次に、この混合液をゆっくりと250℃まで加熱し、そのままの温度で4時間撹拌した。
次に、100℃まで反応液を冷却し、液を撹拌しながら多量の純水を注いだ。
【0152】
次に、析出した固体を濾別し、少量の純水で洗った後、その固体を10%炭酸ナトリウム水溶液中で再度撹拌して固体を濾別し、純水で濾液が中性になるまで洗った後、乾燥して、2−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−1,3−ベンゾチアゾール[A52]を得た。
次に、水酸基をベンジル基で保護するために、無水ジメチルホルムアミド中で、ベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、水酸基をベンジルエーテル基に変換した2−(4−ベンジルオキシメチルフェニル)−1,3−ベンゾチアゾール[A51]を得た。
【0153】
次に、前記化6−4および化6−5と同様の合成経路により、重合性イリジウム錯体(2−(4−グリシジルオキシメチルフェニル)−1,3−ベンゾチアゾール・イリジウム錯体)[A5]を合成した。
なお、重合性イリジウム錯体[A5]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化10−1に示す重合性イリジウム錯体[A6]の合成
【0154】
【化10−1】

【0155】
なお、この重合性イリジウム錯体[A6]は、緑色に発光する化合物である。
まず、前記化6−1〜8に示す合成経路を経て、2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)ピリジン・イリジウム錯体[A25]を合成した。
次に、下記化10−2に示す合成経路を経て、重合性イリジウム錯体2−[4−(2−オキセタニルブチルオキシメチル)フェニル] ピリジン・イリジウム錯体[A6]を合成した。
【0156】
【化10−2】

【0157】
まず、前記合成した2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)ピリジン・イリジウム錯体[A25]と、臭化チオニルとを混合し、この混合液を加熱して、2−(4−(ブロモメチル)フェニル)ピリジン・イリジウム錯体[A61]を得た。
次に、この反応溶液を、3−エチルー3−ヒドロキシメチルオキセタン、および少量のテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(相関移動触媒)を添加した50%水酸化ナトリウム水溶液に加え、室温下で12時間撹拌した。
【0158】
次に、反応溶液中の固体を濾別し、キシレン/メタノールで数回精製して、重合性イリジウム錯体[A6]を得た。
なお、重合性イリジウム錯体[A6]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化11−1に示す重合性アルミニウム錯体[A7]の合成
【0159】
【化11−1】

【0160】
なお、この重合性アルミニウム錯体[A7]は、緑色に発光する化合物である。
まず、下記化11−2に示す合成経路を経て、5−ヒドロキシメチル−7−プロピルキノリノール[A71]を合成した。
【0161】
【化11−2】

【0162】
まず、7−プロピル−8−キノリノール(20mmol)と、パラホルムアルデヒド(0.75g)とを、1,2−ジメトキシエタン/キシレン混合溶液(100mL)に加え撹拌した。
次に、この混合液を135℃で12時間加熱還流した。
次に、室温まで冷却後、反応混合物にメタノールを加え、析出した固体を濾別し、少量のキシレンで洗った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=3:97)にて分離精製し、5−ヒドロキシメチル−7−プロピルキノリノール[A71](収率23%)を得た。
また、下記化11−3に示す合成経路を経て、アルミニウム錯体[A72]を合成した。
【0163】
【化11−3】

【0164】
まず、25wt%トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(20mL;36mmol)に、8−キノリノール(72mmol)のトルエン溶液(100mL)を室温で1時間かけて滴下した。
次に、室温下、そのまま12時間攪拌した後、沈殿している固体を濾別した後、その濾液を減圧濃縮し、析出した固体を少量のトルエンで洗浄し、アルミニウム錯体[A72](収率95%)を得た。
次に、下記化11−4に示す合成経路を経て、アルミニウム錯体のアルコール体[A73]を合成した。
【0165】
【化11−4】

【0166】
まず、前記合成したアルミニウム錯体[A72](3mmol)のキシレン溶液(30mL)に、前記合成した8−キノリノール誘導体[A71](3mmol)のキシレン溶液(15mL)を室温で1時間かけて滴下した。
次に、この反応混合物を室温で8時間攪拌した。
次に、この反応混合物を減圧濃縮し、析出した固体を少量のキシレンで洗浄した。
【0167】
次に、得られた固体を塩化メチレンを用いて再結晶して、アルミニウム錯体のアルコール体[A73]を得た。
次に、前記化6−5と同様の合成経路によりエポキシ基を導入して、重合性アルミニウム錯体[A7]を得た。
なお、重合性アルミニウム錯体[A7]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化12に示す重合性アルミニウム錯体[A8]の合成
【0168】
【化12】

【0169】
なお、この重合性アルミニウム錯体[A8]は、緑色に発光する化合物である。
この重合性アルミニウム錯体[A8]は、エピクロルヒドリンに代えて、4−ビニルベンジルクロリドを用いた以外は、前記重合性アルミニウム錯体[A7]と同様にして合成した。
・下記化13−1に示す重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]の合成
【0170】
【化13−1】

【0171】
まず、下記化13−2に示す合成経路を経て、4−ビニルベンジルエーテル誘導体(スチレン誘導体)[B11]を合成した。
【0172】
【化13−2】

【0173】
なお、この重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]は、青色に発光する化合物である。
4−ビニルベンジルクロリド(アルドリッチ社製)と、ベンジルアルコールとから、4−ビニルベンジルエーテル誘導体[B11]を合成した。
次に、下記化13−3に示す合成経路を経て、ビニルカルバゾール・スチレン共重合体のエーテル誘導体[B12]を合成した。
【0174】
【化13−3】

【0175】
まず、4−ビニルベンジルエーテル誘導体(10mmol)と、N−ビニルカルバゾール(100mmol:東京化成社製)とのキシレン混合溶液(300mL)を用意し、アゾイソブチロニトリル(AIBN:1mmol)を添加した。
次に、窒素バブリングにより溶存酸素を除去した後、80℃で12時間加熱撹拌した。
次に、この反応混合液にメタノールを加え、析出した固体を取り出した。
次に、取り出した固体を再度キシレンに溶解させ、メタノールで析出させる操作を2回繰り返した後、溶剤を除去して、ビニルカルバゾール・スチレン共重合体のベンジルエーテル誘導体[B12]を得た。
【0176】
次に、前記化6−5と同様の合成経路によりエポキシ基を導入して、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体(エポキシ基含有ビニルカルバゾール・スチレン共重合体)[B1]を得た。
なお、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化14に示す重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B2]の合成
【0177】
【化14】

【0178】
この重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B2]は、エピクロルヒドリンに代えて、4−ビニルベンジルクロリドを用いた以外は、前記ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]と同様にして合成した。
・下記化15−1に示す重合性オキサジアゾール誘導体[C1]の合成
【0179】
【化15−1】

【0180】
まず、下記化15−2に示す合成経路を経て、ビフェニルカルボン酸エチルエステル[C13]を合成した。
【0181】
【化15−2】

【0182】
まず、4−ブロモ安息香酸メチル(10mmol)のトルエン溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3mmol)、4−(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸(10mmol:アルドリッチ社製)を加え、撹拌した。
次に、この混合溶液に炭酸ナトリウム水溶液を添加し、24時間還流した。
次に、反応終了後、この反応混合物に、塩化メチレン/水を加え、水層を有機溶媒で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、余分な溶媒を減圧除去し、ビフェニルカルボン酸誘導体[C11](収率60%)を得た。
【0183】
次に、このビフェニルカルボン酸誘導体[C11]に、硫酸酸性下、エタノールを作用させ、カルボキシル基をエチルエステル化(C12)した。次に、ベンジルブロミドを作用させ、水酸基をベンジル保護基に変換し、ビフェニルカルボン酸エチルエステル誘導体[C13]を得た。
次に、下記化15−3に示す合成経路を経て、ビフェニルカルボン酸ヒドラジド誘導体[C14]を合成した。
【0184】
【化15−3】

【0185】
前記合成したビフェニルカルボン酸エチルエステル誘導体[C13](10mmol)のエタノール懸濁液に、ヒドラジン水溶液を作用させ、ビフェニルカルボン酸ヒドラジド誘導体[C14]を得た。
次に、下記化15−4に示す合成経路を経て、ヒドラジン中間体[C15]を合成した。
【0186】
【化15−4】

【0187】
まず、十分に乾燥させたフラスコ内に、4−t−ブチル安息香酸(10mmol)と、塩化チオニル(25mL)とを入れ、窒素気流下で5時間穏やかに加熱還流して、塩化4−t−ブチルベンゾイル[C16]を得た。
次に、過剰の塩化チオニルを減圧下で除去した後、前記合成した塩化4−t−ブチルベンゾイル[C16]に、室温でピリジン100mLを加え、さらに前記合成したビフェニルカルボン酸ヒドラジド誘導体[C14](10mmol)を少量ずつ加えた。これにより、系が発熱し、懸濁状態から均一な溶液へと変わった。
【0188】
次に、この混合溶液を窒素気流下に、室温で30分間攪拌した後、50℃の油浴で加熱しながらさらに3時間攪拌した。
次に、得られた反応液を多量の氷水に注ぎ入れることにより、粉末状の固体生成物を析出させ、この固体生成物を濾別し、水、メタノールの順で洗浄した後、乾燥を行って、ヒドラジン中間体[C15](収率75%)を得た。
次に、下記化15−5に示す合成経路を経て、オキサジアゾール誘導体[C17]を合成した。
【0189】
【化15−5】

【0190】
まず、前記合成したヒドラジン中間体[C15](10mmol)の無水キシレン溶液に、塩化ホスホリル10mLを加え、窒素気流下で6時間穏やかに加熱還流することにより、ヒドラジン中間体の脱水反応を行った。
次に、得られた反応液中のキシレンおよび塩化ホスホリルの大部分を減圧蒸留によって除去し、その後、氷冷しながら大量の水を注意深く加えて懸濁液を調製した。
【0191】
次に、得られた懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、この懸濁液を濾過することにより、粉末状の生成物を得、この生成物を、水、メタノールの順で洗浄した後、乾燥を行って、オキサジアゾール誘導体[C17](収率65%)を得た。
次に、前記化6−5と同様の合成経路によりエポキシ基を導入して、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を得た。
なお、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化16に示す重合性オキサジアゾール誘導体[C2]の合成
【0192】
【化16】

【0193】
この重合性オキサジアゾール誘導体[C2]は、エピクロルヒドリンに代えて、4−ビニルベンジルクロリドを用いた以外は、前記重合性オキサジアゾール誘導体[C1]と同様にして合成した。
・下記化17−1に示す重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]の合成
【0194】
【化17−1】

【0195】
まず、下記化17−2に示す合成経路を経て、ベンジルエーテル誘導体[D11]を合成した。
【0196】
【化17−2】

【0197】
無水ジメチルホルムアミド中で、3−(p−ブロモフェニル)プロパノールを、ベンジルブロミドおよび水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換したベンジルエーテル誘導体[D11]を得た。
一方、下記化17−3に示す合成経路を経て、3-メチルベンズアミド誘導体[D12]を合成した。
【0198】
【化17−3】

【0199】
まず、m‐トルイジン(1mol)を酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。
次に、反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥して3-メチルベンズアミド誘導体[D12]を得た。
次に、下記化17−4に示す合成経路を経て、ジフェニルアミン誘導体[D13]を合成した。
【0200】
【化17−4】

【0201】
まず、ベンジルエーテル誘導体[D11](0.5mol)、3-メチルベンズアミド誘導体[D12](0.6mol)、炭酸カリウム(1.1mol)、銅粉、およびヨウ素を混合し、200℃で加熱した。
次に、放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、および水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥して、ジフェニルアミン誘導体[D13]を得た。
次に、下記化17−5に示す合成経路を経て、トリフェニルアミン誘導体[D14]を合成した。
【0202】
【化17−5】

【0203】
まず、前記合成したジフェニルアミン誘導体[D13](200mmol)、トリス(4−ブロモフェニル)アミン(60mmol)、酢酸パラジウム(2.1mmol)、t−ブチルホスフィン(8.4mmol)、t−ブトキシナトリム(400mmol)、およびキシレン600mLを混合して、120℃で撹拌した。
次に、この反応液を、放冷し、析出した固体を濾別し、少量のキシレンで洗って、トリフェニルアミン誘導体[D14]を得た。
【0204】
次に、前記化6−5と同様の合成経路によりエポキシ基を導入して、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]を得た。
なお、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化18に示す重合性トリフェニルアミン誘導体[D2]の合成
【0205】
【化18】

【0206】
この重合性トリフェニルアミン誘導体[D2]は、エピクロルヒドリンに代えて、4−ビニルベンジルクロリドを用いた以外は、前記重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]と同様にして合成した。
・下記化19−1に示す重合性アリールアミン誘導体[E1]の合成
【0207】
【化19−1】

【0208】
まず、下記化19−2に示す合成経路を経て、ベンジルエーテル誘導体[E11]を合成した。
【0209】
【化19−2】

【0210】
無水ジメチルホルムアミド中で、1−(p−アミノフェニル)ブタノールを、ベンジルブロミドおよび水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換したベンジルエーテル誘導体[E11]を得た。
次に、下記化19−3に示す合成経路を経て、ベンジルエーテル誘導体[E11]からベンズアミド誘導体[E12]を合成した。
【0211】
【化19−3】

【0212】
まず、ベンジルエーテル誘導体[E11](1mol)を酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。
次に、反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥してベンズアミド誘導体[E12]を得た。
次に、下記化19−4に示す合成経路を経て、ジフェニルアミン誘導体[E13]を合成した。
【0213】
【化19−4】

【0214】
まず、4−ブロモトルエン(0.5mol)、ベンズアミド誘導体[E12](0.6mol)、炭酸カリウム(1.1mol)、銅粉、およびヨウ素を混合し、200℃で加熱した。
次に、放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、および水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥して、ジフェニルアミン誘導体[E13]を得た。
次に、下記化19−5に示す合成経路を経て、アリールアミン誘導体[E14]を合成した。
【0215】
【化19−5】

【0216】
まず、前記合成したジフェニルアミン誘導体[E13](130mmol)、4,4’−ジヨードビフェニル(62mmol)、酢酸パラジウム(1.3mmol)、t−ブチルホスフィン(5.2mmol)、t−ブトキシナトリム(260mmol)、およびキシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
次に、この反応液を、放冷し、析出した固体を濾別し、少量のキシレンで洗って、トリフェニルアミン誘導体[E14]を得た。
【0217】
次に、前記化6−5と同様の合成経路によりエポキシ基を導入して、重合性トリフェニルアミン誘導体[E1]を得た。
なお、重合性トリフェニルアミン誘導体[E1]が得られたことは、H−NMRおよびFT−IR等により確認した。
・下記化20に示す重合性アリールアミン誘導体[E2]の合成
【0218】
【化20】

【0219】
この重合性アリールアミン誘導体[E2]は、エピクロルヒドリンに代えて、4−ビニルベンジルクロリドを用いた以外は、前記重合性アリールアミン誘導体[E1]と同様にして合成した。
【0220】
2.有機EL素子の製造
(実施例1)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A2]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性アリールアミン誘導体[E1]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
【0221】
[有機EL素子の作製]
−1− まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
−2− 次に、ITO電極上に、前記液状材料を、スピンコート法により塗布し乾燥して被膜を形成した。
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、乾燥大気中で波長365nm、照射強度500mW/cmの紫外線を15秒間照射後、110℃で60分間加熱することにより、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物を重合反応させて、ランダムコポリマーで構成される平均厚さ50nmの有機EL層(発光層)を形成した。
【0222】
−3− 次に、有機EL層上に、真空蒸着法により、CaおよびAlを順次供給して平均厚さ300nmのCaAl電極(陰極)を形成した。
−4− 次に、形成した陽極、有機EL層および陰極を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
【0223】
(実施例2)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A4]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0224】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0225】
(実施例3)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A5]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]および重合性アリールアミン誘導体[E1]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0226】
なお、第1の化合物と、第2化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0227】
(実施例4)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A6]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]および重合性アリールアミン誘導体[E1]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0228】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0229】
(実施例5)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性アルミニウム錯体[A7]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]および重合性アリールアミン誘導体[E1]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0230】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量との混合比を重量比で30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0231】
(実施例6)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B1]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D1]および重合性アリールアミン誘導体[E1]、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C1]を、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0232】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量との混合比を重量比で30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物の合計重量と光カチオン重合開始剤の重量との比(重量比)を99:1とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0233】
(実施例7)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A1]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性アリールアミン誘導体[E2]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C2]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B2]を、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光ラジカル重合開始剤重量との比(重量比)を99.5:0.5とした。
【0234】
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用い、前記工程−2−に代えて、以下に示す工程−2’−のようにした以外は、前記実施例1と同様にして、有機EL素子を製造した。
−2’− 次に、ITO電極上に、前記液状材料を、スピンコート法により塗布し乾燥して被膜を形成した。
【0235】
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、アルゴンガス雰囲気下で波長365nm、照射強度2mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物を重合反応させて、ランダムコポリマーで構成される平均厚さ50nmの有機EL層(発光層)を形成した。
【0236】
(実施例8)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性イリジウム錯体[A3]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性トリフェニルアミン誘導体[D2]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C2]を、発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B2]を、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0237】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量と、第4の化合物との混合比を重量比で3:30:70とした。また、第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物および第4の化合物の合計重量と光ラジカル重合開始剤重量との比(重量比)を99.5:0.5とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0238】
(実施例9)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性アルミニウム錯体[A8]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性アリールアミン誘導体[E2]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C2]を、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
【0239】
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量との混合比を重量比で30:70とした。また、第1の化合物、第2および第3の化合物の合計重量と光ラジカル重合開始剤重量との比(重量比)を99.5:0.5とした。
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、有機EL素子を製造した。
【0240】
(実施例10)
[液状材料の調製]
発光性を有する発光部を備える第1の化合物として、重合性ビニルカルバゾール・スチレン共重合体[B2]を、正孔輸送性を有する正孔輸送部を備える第2の化合物として、重合性アリールアミン誘導体[E2]を、電子輸送性を有する電子輸送部を備える第3の化合物として、重合性オキサジアゾール誘導体[C2]を、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)をそれぞれ用い、これらのものをキシレンに溶解させて1.0wt%の液状材料を調製した。
なお、第1の化合物と、第2の化合物および第3の化合物の合計量との混合比を重量比で30:70とした。また、第1の化合物、第2および第3の化合物の合計重量と光ラジカル重合開始剤重量との比(重量比)を99.5:0.5とした。
【0241】
[有機EL素子の作製]
液状材料として、ここで調製した液状材料を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、有機EL素子を製造した。
以上のような各実施例について、陽極と陰極との間に6Vの電圧を印加して、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定するとともに、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定したが、各実施例はいずれも優れた結果を示し優れた発光特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】本発明の発光素子の製造方法により製造される発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】発光素子が備える有機EL層の他の構成を示す模式図である。
【図3】発光素子を備えるディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】発光装置を備えるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図5】発光装置を備える携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図6】発光装置を備えるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0243】
11……発光素子 12……基板 13……陽極 14……陰極 15……有機EL層 16……封止部材 E……電子輸送部 H……正孔輸送部 L……発光部 100……ディスプレイ装置 200……基体 210……基板 220……回路部 230……保護層 240……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 250……第1層間絶縁層 260……第2層間絶縁層 270……配線 310……第1隔壁部 320……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極の一方の面側に、発光性を有する発光部と第1の重合性基とを備える第1の化合物と、正孔輸送性を有する正孔輸送部と第2の重合性基とを備える第2の化合物および電子輸送性を有する電子輸送部と第3の重合性基とを備える第3の化合物のうちの少なくとも一方とを含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜中において、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させて、発光層を得る第2の工程と、
該発光層の前記第1の電極と反対側に、第2の電極を設ける第3の工程とを有することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記被膜は、液相プロセスにより形成される請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、光を照射することにより、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させる請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、加熱することにより、前記第1の化合物と、前記第2の化合物および前記第3の化合物のうちの少なくとも一方とを重合させる請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1の化合物、前記第2の化合物、前記第3の化合物において、少なくともいずれか一つの化合物が、その重合性基を複数有する請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1の重合性基、前記第2の重合性基、前記第3の重合性基において、すべての重合性基がカチオン重合性を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1の重合性基、前記第2の重合性基、前記第3の重合性基において、すべての重合性基がラジカル重合性を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記正孔輸送部は、アリールアミン骨格を含むものである請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記電子輸送部は、オキサジアゾール骨格またはトリアゾール骨格を含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記発光部は、フルオレン骨格またはカルバゾール骨格を含むものである請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記発光部は、イリジウム錯体またはアルミニウム錯体を含むものである請求項1ないし10のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記被膜は、前記発光部に励起エネルギーを供給するホスト部を備える第4の化合物を含む請求項1ないし11のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第4の化合物は、第4の重合性基を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記ホスト部は、アリールアミン骨格、カルバゾール骨格またはフルオレン骨格を含むものである請求項13に記載の発光素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の発光素子の製造方法を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の発光装置の製造方法を含むことを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−257897(P2007−257897A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77831(P2006−77831)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】