説明

発光素子アレイおよび紙葉類の認識装置

【課題】高い信頼性を備える発光素子アレイおよびその発光素子アレイが用いられた紙葉類の認識装置、を提供する。
【解決手段】発光素子アレイである光源ユニット30は、LED41およびLED42,43と、室32および室33を含む樹脂枠31とを備える。LED41およびLED42,43は、互いに異なる波長の光を発し、同一の共通電極であるリードフレーム51pに電気的に接続される。室32および室33は、一方向に開放され、透明樹脂により充填される。LED41とLED42,43とは、それぞれ室32および室33に分離して配置され、透明樹脂により覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、発光素子アレイおよび紙葉類の認識装置に関する。この発明は、たとえば金融端末機器、印刷機器などにおいて印刷物や記載事項などの印刷パターンを読み取り、印刷物の真偽や、印刷品質の検査を行なう判別装置に用いられる紙葉類の認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の認識装置は、たとえば、金融端末機器において紙幣や有価証券の鑑別装置や、印刷機器などにおいて紙葉類の形状などの認識に用いられる装置である。この紙葉類の認識装置は、基板上に受光素子を直線状に配したセンサと、原稿を照明するための棒状の照明装置と、原稿を透過あるいは反射した光を各受光素子に導くためのレンズアレイとから構成される。
【0003】
このような紙葉類の認識装置として、特開2006−39996号公報には、紙葉類の形状などを正確に認識でき、かつ安定した読み取りが可能で、かつ出射光の光量や光軸のばらつきを抑制することを目的とした紙葉類の認識装置が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−39996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は、従来技術における紙葉類を照明する照明装置を示す図である。図中には、紙葉類に向かう光の進路が模式的に表わされている。図14を参照して、照明装置101は、光源ユニット120と導光体107とを含む。光源ユニット120は、導光体107の両側にそれぞれ設けられている。光源ユニット120と導光体107との間には、隙間111が形成されている。導光体107には、光源ユニット120から入射された光を紙葉類105に向けて出射させるための光拡散層109が形成されている。
【0005】
図15は、図14中の光源ユニットを示す斜視図である。図16は、図15中のXVI−XVI線上に沿った光源ユニットの断面図である。図15および図16を参照して、従来技術における光源ユニット120は、複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)チップ125を含む。LEDチップ125は、リードフレーム131上にダイボンドされ、ワイヤ127で実装されている。LEDチップ125は、室137に配置されている。室137は、白色樹脂135により成型され、一方向に開放されている。室137は、LEDチップ125を覆う透明樹脂133により充填されている。この透明樹脂133としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が用いられる。
【0006】
図14から図16を参照して、LEDチップ125より発せられ、透明樹脂133を透過した光は、導光体107に入射する。光は、光拡散層109で反射されることによって、導光体107から出射し、紙葉類105を照射する。紙葉類105を透過または反射した光を図示しないセンサで受光することにより、紙葉類105の印刷パターンの読み取り等が行なわれる。
【0007】
このような構成を備える光源ユニット120においては、一般的に、透明樹脂133として酸無水物硬化型エポキシ樹脂が用いられる。しかしながら、近年、短波長のGaNを用いた青色LED、緑色LEDは、高輝度化が進み、チップ周辺のエポキシ樹脂が変色するおそれがある。この場合、エポキシ樹脂の変色に伴って、光源ユニット120から出射する光量が低下するという問題が生じる。これに対して、透明樹脂133の変色を防ぐための対策として、カチオン硬化型エポキシ樹脂が開発されている。しかしながら、この樹脂を用いた場合、樹脂の硬度が高いため、赤外などGaAsを用いたLEDチップが樹脂のストレスにより劣化するという問題が生じる。これらの場合、光源ユニットの信頼性を高く維持することができない。
【0008】
また、図14中に示す照明装置101において、光源ユニット120と導光体107とが接触するように配置された場合を想定すると、下記の点が問題となる。
【0009】
図17は、配光性の悪化を説明するための図である。図16および図17を参照して、光源ユニット120と導光体107とが接触する場合、LEDチップ125より発せられた光が、透明樹脂133と導光体107との境界位置で内面反射することなく、導光体107内に直接、入射する。この場合、光源ユニット120から近いエリアでは、光拡散層109で反射され、紙葉類105に向かう光(図中の矢印210に示す経路を進行する光)に加えて、光源ユニット120から紙葉類105に直接向かう光(図中の矢印220に示す経路を進行する光)が、紙葉類105を照射する。このため、光源ユニット120から近いエリアと遠いエリアとの間で、紙葉類105上の照度にばらつきが生じ、配向性が悪化するという問題が生じる。
【0010】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、高い信頼性を備える発光素子アレイおよびその発光素子アレイが用いられた紙葉類の認識装置を提供することである。また、この発明の目的は、優れた配光性により、紙葉類の形状等を正確に認識し、かつ安定した読み取りが可能となる紙葉類の認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従った発光素子アレイは、第1発光素子および第2発光素子と、第1室および第2室を含む基材とを備える。第1発光素子および第2発光素子は、互いに異なる波長の光を発し、同一の共通電極に電気的に接続される。第1室および第2室は、一方向に開放され、樹脂により充填される。第1発光素子および第2発光素子は、それぞれ第1室および第2室に分離して配置され、樹脂により覆われる。
【0012】
このように構成された発光素子アレイによれば、発光波長の異なる第1発光素子および第2発光素子が、それぞれ第1室および第2室に分離して配置されている。このため、第1発光素子および第2発光素子を覆うのに適した樹脂を、第1室および第2室に別々に充填することができる。これにより、発光素子アレイの信頼性を向上させることができる。
【0013】
また好ましくは、第1発光素子は、主発光波長570nm未満の波長の光を発する。第2発光素子は、主発光波長570nm以上980nm以下の波長の光を発する。このように構成された発光素子アレイによれば、各発光素子の種類、波長範囲に応じた適当な樹脂を選択することができる。
【0014】
また好ましくは、第1室を充填する樹脂と、第2室を充填する樹脂との間で、材質または硬度が異なる。このように構成された発光素子アレイによれば、様々な発光素子の実装が可能となり、発光素子アレイの利用性を向上させることができる。
【0015】
この発明に従った紙葉類の認識装置は、上述のいずれかに記載の発光素子アレイが用いられた紙葉類の認識装置である。紙葉類の認識装置は、紙葉類に光を照射する照明装置と、照明装置から出射され、紙葉類を透過または反射した光を導くためのレンズアレイと、レンズアレイにより導かれた光を受光する受光素子とを備える。照明装置は、入射された光を紙葉類に向けて出射させる光拡散層が形成され、長手状に延びる導光体と、導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された発光素子アレイとを含む。
【0016】
このように構成された紙葉類の認識装置によれば、高い信頼性を維持しつつ、複数の発光波長を利用して、紙葉類の形状や印刷パターン等の読み取りを行なうことができる。
【0017】
また好ましくは、樹脂は、第1発光素子および第2発光素子から発せられた光を出射し、凹形状を有する出射面を含む。発光素子アレイは、導光体の端面と接触するように設けられる。このように構成された紙葉類の認識装置によれば、出射面が凹形状をなす構成により、出射面と導光体の端面との間に隙間を設けることができる。これにより、紙葉類に向けて照射される光の配光性を向上させることができる。優れた配光性により、紙葉類の形状等を正確に認識し、安定した読み取りを行なうことが可能となる。
【0018】
また好ましくは、発光波長の異なる第1発光素子および第2発光素子を、順次切り替えて点灯させる。このように構成された紙葉類の認識装置によれば、各発光素子の発光波長ごとに分解された印刷パターンを読み取ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明に従えば、高い信頼性を備える発光素子アレイおよびその発光素子アレイが用いられた紙葉類の認識装置を提供することができる。また、優れた配光性により、紙葉類の形状等を正確に認識し、かつ安定した読み取りが可能となる紙葉類の認識装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態における紙葉類の認識装置を示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態における紙葉類の認識装置10は、透過・反射併用型の認識装置である。紙葉類の認識装置10は、紙葉類(原稿)15に対して一方側に配置された、保護ガラス14mおよび透過用の照明装置20mと、紙葉類15に対して他方側に配置された、保護ガラス14n、反射用の照明装置20n、レンズアレイ13、受光素子12および基板11とを備える。
【0022】
照明装置20mおよび20nは、紙葉類15に向けて光を出射する。レンズアレイ13は、紙葉類15を透過または反射した光を受光素子12に導く。受光素子12は、光を受けて光電変換により光出力として画像を読み取る。受光素子12は、基板11に実装されている。本実施の形態では、照明装置20m、レンズアレイ13および受光素子12が、同一直線上に配置されている。照明装置20nは、その直線上からずれた位置に配置されている。
【0023】
受光素子12の材質・構造は、特に限定されず、アモルファスシリコン、結晶シリコンもしくはCdS、CdSeなどを含むフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したもの、またはCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであっても良い。さらに受光素子12として、フォトダイオードやフォトトランジスタと、駆動回路やアンプ回路とを一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサが用いられても良い。
【0024】
また、必要に応じて基板11上に、ドライブICやアンプ回路などの電気回路、または信号を外部に取り出すためのコネクタなどが実装されても良い。
【0025】
図2は、図1中の受光素子を説明するためのブロック図である。さらに図2中のブロック図に示すように、基板11上に、A/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装して、デジタル信号を外部に取り出すこともできる。
【0026】
レンズアレイ13は、紙葉類の原稿面で散乱された光を受光素子12に等倍で結像する。レンズアレイ13として、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイを用いることができる。
【0027】
保護ガラス14mおよび14nは、必ずしも本発明に必要ではなく省略することもできる。しかしながら、照明装置20mおよび20nやレンズアレイ13を、使用中のごみの飛散や傷つきから保護するために、保護ガラス14mおよび14nを設置することが望ましい。また、保護ガラス14mおよび14nは、ガラスに限られず、たとえばアクリルやポリカーボネート等の透明の樹脂の表面に必要に応じてハードコートを施した部材であっても良い。
【0028】
図3は、図1中の透過用の照明装置の分解組み立て図である。図3を参照して、照明装置20mは、長手状に延びる導光体21と、光源ユニット30と、導光体21を保持するカバー23とを含む。導光体21には、光拡散層22が形成されている。
【0029】
導光体21は、端面21aおよび端面21bを含む。端面21aおよび端面21bは、導光体21が延びる長手方向の両端に形成されている。端面21aおよび端面21b付近にはそれぞれ、光源ユニット30が設けられている。2つの光源ユニット30は、同一のものであっても良いし、別のものであっても良い。たとえば、一方の光源ユニット30と他方の光源ユニット30とに発光波長の異なるLEDを設置すれば、複数の波長を同時にあるいは切り替えて使用することができる。
【0030】
なお、図2中に示す構成に限らず、光源ユニット30は、導光体21が延びる長手方向の一方端にのみ配置されても良い。光源ユニット30は、導光体21の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置される。
【0031】
導光体21は、出射面21cを含む。出射面21cは、図1中の紙葉類15と対向する。導光体21を透過し、出射面21cから出射した光が、紙葉類15に向けて照射される。出射面21cは、導光体21が延びる長手方向に延在する。光拡散層22は、出射面21cと対向して形成されている。
【0032】
導光体21は、アクリルやポリカーボネートなどの光透過性の高い樹脂、または光学ガラスで形成されている。特に光源として紫外波長を用いる場合には、導光体21として、フッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が用いられることが好ましい。
【0033】
図4は、図1中の反射用の照明装置の分解組み立て図である。図5は、図4中の照明装置に設けられる導光体を示す斜視図である。図4および図5を参照して、照明装置20nと図3中の照明装置20mとは、同様の構造を有する。照明装置20nは、光拡散層22が形成された導光体21と、光源ユニット30と、カバー23とを含む。照明装置20nでは、光源ユニット30が端面21a側にのみ配置されている。導光体21は、導光体21が延びる長手方向に直交する平面で切断された場合に、台形の断面形状を有する。
【0034】
光拡散層22は、光源ユニット30が配置される端面21a側ほど細く、かつ切れ目のピッチが小さく、光源ユニット30が配置されない端面21b側ほど太く、かつ切れ目のピッチが大きくなるパターンを有する。光拡散層22をこのようなパターンに形成することにより、主走査方向における照度むらを大幅に低減することができる。この光拡散層22は、たとえば、白色塗料を導光体21に塗布したものや、導光体21の表面に形成した凹凸であっても良い。光拡散層22は、導光体21内を伝播する光を効率的に出射面21cから出射させることができるものであれば良い。なお、導光体21の断面形状は、図4に示す形状に限定されるものではない。
【0035】
カバー23は、上記の乱反射した光のうち出射面21cに到達しなかった光を再び導光体21内に反射させるため、光反射率の高い白色樹脂や白色塗料を塗布した樹脂の成型品、またはステンレスやアルミニウムなどの金属板で形成されることが好ましい。
【0036】
図6は、図3中の照明装置に設けられた光源ユニット30を示す平面図である。図6を参照して、光源ユニット30は、互いに発光波長の異なる、LED41と、LED42および43とを含む。LED41は、緑の波長の光を発する。LED42およびLED43は、それぞれ、赤および近赤外の波長の光を発する。LED41は、主発光波長570nm未満の波長の光を発する。LED42およびLED43は、主発光波長570nm以上980nm以下の波長の光を発する。LED41は、相対的に小さい波長の光を発し、LED42およびLED43は、相対的に大きい波長の光を発する。LED41は、GaNを用いたLEDである。LED42およびLED43は、GaAsを用いたLEDである。LED41は、青の波長(470nm)の光を発するLEDであっても良い。LED41は、UVの波長(365nm,375nm)の波長の光を発するLEDであっても良い。
【0037】
赤および近赤外の波長の光を発するLED42およびLED43は、正の電圧が印加されるリードフレーム51pにワイヤーボンディングにより電気的に接続されている。LED42およびLED43は、それぞれ、負の電圧が印加されるリードフレーム51qおよびリードフレーム51rにAgペーストにより電気的に接続されている。緑の波長の光を発するLED41は、正の電圧が印加されるリードフレーム51pおよび負の電圧が印加されるリードフレーム51sの双方に、ワイヤーボンディングにより電気的に接続されている。すなわち、LED41〜43は、同一の共通電極であるリードフレーム51pに電気的に接続されている。
【0038】
なお、上記の接続形態に限定されるものでなく、各LEDは電気的にリードフレームに接続されることが必要である。
【0039】
図7は、図6中のVII−VII線上に沿った光源ユニットの断面図である。図6および図7を参照して、光源ユニット30は、樹脂枠31を含む。リードフレーム51p、51q、51rおよび51s(以下、特に区別しない場合にはリードフレーム51と称する)は、樹脂枠31によって一括に支持されている。
【0040】
樹脂枠31は、室32および室33を含む。室32および室33は、樹脂枠31に成型され、一方向に開口する凹部により形成されている。樹脂枠31は、図3中の導光体21と対向する頂面31aを含む。室32および33は、頂面31aに開口する凹部により形成されている。室32と室33とは、互いに独立して形成されている。リードフレーム51pは、LED41〜43が電気的に接続される主表面51aを含む。室32および33は、主表面51a上に形成されている。室32および33を取り囲む樹脂枠31の壁面は、主表面51aに平行な平面で切断した場合に得られる室32および33の断面積が、主表面51aから離れるに従って徐々に増大するように傾斜する。
【0041】
LED41は、室32に配置されている。LED42および43は、室33に配置されている。LED41と、LED42および43とは、分離して配置されている。
【0042】
樹脂枠31は、LED41〜43より発せられた光を反射する樹脂から形成されている。樹脂枠31は、LEDから発せられた光を効率よく前面に導くために白色樹脂で形成されていることが好ましい。また、樹脂枠31は、端子ハンダ付けおよびLEDの発熱に耐えるためにポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)などの耐熱樹脂で形成されていることが好ましい。
【0043】
室32および室33は、それぞれ、透明樹脂34および透明樹脂35により充填されている。LED41は、透明樹脂34によって覆われている。LED42および43は、透明樹脂35によって覆われている。透明樹脂34および35は、LED41〜43より発せられた光を透過させる樹脂から形成されている。LED41〜43は、透明樹脂34および35に封止されることによりコーティング保護されている。
【0044】
透明樹脂34および35に用いる樹脂は、室32および33に配置されるLEDの種類に応じて適宜、選定される。透明樹脂34と透明樹脂35との間では、用いられる樹脂の材質または硬度が異なる。本実施の形態では、互いに発光波長が異なるLED41と、LED42および43とが、それぞれ室32および室33に別々に実装されているため、各LEDに適した樹脂を用いてこれらのLEDを封止することが可能となる。
【0045】
たとえば、緑の波長の光を発するGaN系の高出力のLED41を封止する透明樹脂34として、耐短波長に優れたカチオン硬化型エポキシ樹脂が用いられる。また、透明樹脂34として、近年開発が進んでいる変成シリコーン系の樹脂を使用することも可能である。赤および近赤外の光を発するGaAs系のLED42および43を封止する透明樹脂35として、柔らかい酸無水物硬化型エポキシ樹脂が用いられる。
【0046】
このような構成により、LED41より発せられた緑の波長の光によって透明樹脂34が変色することを防ぎ、光源ユニット30から出射する光量の低下を防止できる。また、透明樹脂35から受けるストレスによってGaAs系のLED42および43が劣化することを防ぎ、光源ユニット30の信頼性を高く維持することができる。
【0047】
リードフレーム51には、光を反射させるため、Cu合金の表面をAgメッキしたものが用いられる。透明樹脂としてシリコーン樹脂を用いた場合、シリコーン樹脂のガス透過性が高いために、このAgメッキ部分で腐食が起こるおそれがある。これに対して、透明樹脂として、上記のカチオン硬化型エポキシ樹脂、変成シリコーン系の樹脂または酸無水物硬化型エポキシ樹脂を用いた場合、これらの樹脂はガス透過性が低いため、腐食の発生を防止できる。
【0048】
図7を参照して、透明樹脂34および35は、出射面36を含む。LED41〜43より発せられ、透明樹脂34および35を透過した光は、出射面36から出射する。出射面36は、凹形状を有する。出射面36は、頂面31aから凹んだ形状を有する。出射面36は、室32および33を形成する樹脂枠31の壁面から中央部に向かうほど大きく窪む凹形状を有する。出射面36は、湾曲面により構成されている。頂面31aは、室32と室33との境界位置において同一平面上に延在する。
【0049】
なお、出射面36は、図7中に示す形状に限られず、たとえば、頂面31aから段差を持って凹む凹形状を有し、平面により構成されても良い。
【0050】
図8は、図6中の光源ユニットから出射された光の進路を模式的に表わす図である。図8を参照して、光源ユニット30は、導光体21と接触するように設けられている。樹脂枠31の頂面31aと導光体21の端面21aとが密着する。出射面36は凹形状を有するため、出射面36と導光体21との間に空気層37が形成されている。
【0051】
出射面36と導光体21との間に空気層37を設けることにより、光源ユニット30から紙葉類15に直接向かう光を、端面21aでより積極的に反射させることができる。これにより、光拡散層22で反射されず、紙葉類15を直接照射する光を低減させ、紙葉類15に光をより均一に照射することができる。一方、光源ユニット30との間に隙間を設けて導光体21を配置した場合を想定すると、温度変化による導光体21の伸縮に伴って、導光体21と光源ユニット30との間の距離が変化したり、両者が干渉したりするおそれがある。これに対して、本実施の形態では、予め光源ユニット30と導光体21とが接触して設けられているため、優れた配光性を安定して得ることができる。
【0052】
この発明の実施の形態における発光素子アレイとしての光源ユニット30は、第1発光素子としてのLED41および第2発光素子としてのLED42,43と、第1室としての室32および第2室としての室33を含む基材としての樹脂枠31とを備える。LED41およびLED42,43は、互いに異なる波長の光を発し、同一の共通電極としてのリードフレーム51pに電気的に接続される。室32および室33は、一方向に開放され、樹脂としての透明樹脂34,35により充填される。LED41およびLED42,43は、それぞれ室32および室33に分離して配置され、透明樹脂34,35により覆われる。
【0053】
紙葉類の認識装置10は、紙葉類15に光を照射する照明装置20m,20nと、照明装置20m,20nから出射され、紙葉類15を透過または反射した光を導くためのレンズアレイ13と、レンズアレイ13により導かれた光を受光する受光素子12とを備える。照明装置20m,20nは、入射された光を紙葉類15に向けて出射させる光拡散層22が形成され、長手状に延びる導光体21と、導光体21の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された発光素子アレイとしての光源ユニット30とを含む。
【0054】
このように構成された、この発明の実施の形態における光源ユニット30および紙葉類の認識装置10によれば、高い信頼性を維持したまま、複数の波長光源を光源ユニット30に実装することが可能となる。これにより、紙葉類15の印刷パターンを容易に読み取ることができ、真偽判定が可能となる。また、優れた配光性により、紙葉類15の形状等を正確に認識し、安定した読み取りを行なうことができる。
【0055】
続いて、光源ユニット30、紙葉類の認識装置10の構造の各種変形例や具体例について説明を行なう。
【0056】
図9は、図6中の光源ユニットの第1の変形例を示す平面図である。図9を参照して、本変形例では、光源ユニット30が5色光源を構成する。光源ユニット30は、緑および青の波長の光をそれぞれ発するLED61およびLED62と、赤、近赤外および黄の波長の光をそれぞれ発するLED63、LED64およびLED65とを備える。LED61およびLED62は、樹脂枠31に形成された室32に配置されている。LED63、LED64およびLED65は、樹脂枠31に形成された室33に配置されている。LED61〜65は、同一の共通電極であるリードフレーム51pに電気的に接続されている。
【0057】
図10は、図6中の光源ユニットの第2の変形例を示す平面図である。図10を参照して、本変形例では、光源ユニット30が3色光源を構成する。光源ユニット30は、緑の光を発する2つのLED71と、赤および近赤外の波長の光をそれぞれ発するLED72およびLED73とを備える。2つのLED71は、樹脂枠31に形成された室32に配置されている。LED72およびLED73は、樹脂枠31に形成された室33に配置されている。LED71〜73は、同一の共通電極であるリードフレーム51pに電気的に接続されている。
【0058】
本変形例では、LED71を異なるリードフレーム上に2つ実装している。これは、緑の光を発するLED71の発光効率が悪いことから、他の波長と光出力を合わせるために複数個として光強度を高めているものである。なお、各リードフレーム上に実装されるLED71の数は1個に限られず、目的に応じて複数個を同時に実装することもできる。
【0059】
光源ユニット30は、所定の周期を有するパルス信号により点滅発光させることが好ましい。このように光源をパルス信号により点滅発光させる場合、瞬間的に発光強度を高くすることができるため、S/N比(signal-to-noise ratio)を高くできる。これにより、安定した読み取りが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態では、光源ユニット30が、異なる発光波長の複数の発光素子を備える。これにより、受光素子12の走査に合わせて発光波長を切り替えれば、各波長ごとに色分解された印刷パターンを読み取ることができる。また、発光波長を目的の紙葉類により任意に選択することができる。具体的には、赤、緑、青の3色の発光波長を用いて前述のように各色を切り替えて発光させて走査すれば、RGB3原色に色分解された印刷パターンが読み取れ、3色を同時に発光させて走査すれば白色光源によるモノクロ画像を得ることができる。また、発光波長に近赤外を選択すると、印刷物に使用されているインクの種類を容易に判別することができ、特に紙幣の真偽鑑別といった用途に好適である。
【0061】
また、受光素子に蓄積センサを用いることもできる。
図11は、受光素子に特公平5−31865号公報などに示される構成の電荷蓄積型リニアイメージセンサを用いた場合のタイミング図の一例を示したものである。図11を参照して、まずLED49aをオンして蓄積を開始し、オフした直後にスタートパルスを入力してLED49aによる信号を出力する。LED49aの信号出力が終了した後、LED49b、LED49cのそれぞれの信号を出力して1ラインの読み込みを行なうことができる。
【0062】
図12は、電荷の蓄積と信号の読み出しを独立して行なう場合のタイミング図の一例を示したものである。図12を参照して、まずLED49aをオンしてスタートパルスを入力し蓄積を行なうと同時に前回の蓄積信号(ここではLED49cの信号)を出力する。LED49aをオフして蓄積を終了した後、LED49bをオンしてスタートパルスを入力し蓄積を行なうと同時にLED49aの信号を出力する。このようにしてLED49aからLED49cの信号を出力して1ラインの読み込みを行なうことができる。図12のタイミングでは図11のタイミングと比較して、LEDの点灯時間を長くすることができるため、特に高速動作の場合には好適である。
【0063】
なお、上記のように複数のLEDを切り替える場合には、必然的にLEDをパルス駆動(パルス信号による点滅発光)することになる。
【0064】
図1中に示す本実施の形態における紙葉類の認識装置10は、2種類の照明装置を透過用、反射用として備えるが、反射用の照明装置20nのみでも認識装置として機能するし、透過用の照明装置20mのみでも機能する。
【0065】
図13は、図1中の紙葉類の認識装置の変形例を示す断面図である。図13を参照して、本変形例における紙葉類の認識装置は、透過型および表裏両面についての反射型を併用したものである。紙葉類の認識装置は、実施の形態1における紙葉類の認識装置10が備える構成に加えて、紙葉類15に対して一方側に配置された、照明装置81、レンズアレイ82、受光素子83および基板84をさらに備える。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態における紙葉類の認識装置を示す断面図である。
【図2】図1中の受光素子を説明するためのブロック図である。
【図3】図1中の透過用の照明装置の分解組み立て図である。
【図4】図1中の反射用の照明装置の分解組み立て図である。
【図5】図4中の照明装置に設けられる導光体を示す斜視図である。
【図6】図3中の照明装置に設けられた光源ユニット30を示す平面図である。
【図7】図6中のVII−VII線上に沿った光源ユニットの断面図である。
【図8】図6中の光源ユニットから出射された光の進路を模式的に表わす図である。
【図9】図6中の光源ユニットの第1の変形例を示す平面図である。
【図10】図6中の光源ユニットの第2の変形例を示す平面図である。
【図11】受光素子に特公平5−31865号公報などに示される構成の電荷蓄積型リニアイメージセンサを用いた場合のタイミング図の一例を示したものである。
【図12】電荷の蓄積と信号の読み出しを独立して行なう場合のタイミング図の一例を示したものである。
【図13】図1中の紙葉類の認識装置の変形例を示す断面図である。
【図14】従来技術における紙葉類を照明する照明装置を示す図である。
【図15】図14中の光源ユニットを示す斜視図である。
【図16】図15中のXVI−XVI線上に沿った光源ユニットの断面図である。
【図17】配光性の悪化を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
10 紙葉類の認識装置、12 受光素子、13 レンズアレイ、15 紙葉類、20m,20n 照明装置、21 導光体、21a,21b 端面、22 光拡散層、30 光源ユニット、31 樹脂枠、32,33 室、34,35 透明樹脂、36 出射面、41〜43,61〜65,71〜73 LED、51p リードフレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長の光を発し、同一の共通電極に電気的に接続される第1発光素子および第2発光素子と、
一方向に開放され、樹脂により充填される第1室および第2室を含む基材とを備え、
前記第1発光素子および前記第2発光素子は、それぞれ前記第1室および前記第2室に分離して配置され、前記樹脂により覆われる、発光素子アレイ。
【請求項2】
前記第1発光素子は、主発光波長570nm未満の波長の光を発し、
前記第2発光素子は、主発光波長570nm以上980nm以下の波長の光を発する、請求項1に記載の発光素子アレイ。
【請求項3】
前記第1室を充填する樹脂と、前記第2室を充填する樹脂との間で、材質または硬度が異なる、請求項1または2に記載の発光素子アレイ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の発光素子アレイが用いられた紙葉類の認識装置であって、
紙葉類に光を照射する照明装置と、
前記照明装置から出射され、前記紙葉類を透過または反射した光を導くためのレンズアレイと、
前記レンズアレイにより導かれた光を受光する受光素子とを備え、
前記照明装置は、入射された光を前記紙葉類に向けて出射させる光拡散層が形成され、長手状に延びる導光体と、前記導光体の長手方向の少なくとも一方の端面付近に配置された前記発光素子アレイとを含む、紙葉類の認識装置。
【請求項5】
前記樹脂は、前記第1発光素子および前記第2発光素子から発せられた光を出射し、凹形状を有する出射面を含み、
前記発光素子アレイは、前記端面と接触するように設けられる、請求項4に記載の紙葉類の認識装置。
【請求項6】
発光波長の異なる前記第1発光素子および前記第2発光素子を、順次切り替えて点灯させる、請求項4または5に記載の紙葉類の認識装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−112301(P2008−112301A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294518(P2006−294518)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】