説明

発光素子用基板および発光装置

【課題】優れた特性を有するとともに製造コストの増大を抑制することが可能な発光素子用基板および発光装置を提供する。
【解決手段】発光素子用基板1は、ベース基板2と被覆層3とを備える。被覆層3は、ベース基板2の表面に接触するように形成される。被覆層3は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であるか、可視光に対して不透明である場合には白色であるかのいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子用基板および発光装置に関し、より特定的には、発光素子を表面に実装する発光素子用基板および当該発光素子用基板を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDなどの発光素子を表面に実装するための発光素子用基板が知られている(たとえば、特開2010−56460号公報(以下、「特許文献1」と呼ぶ)、特開2010−245258号公報(以下、「特許文献2」と呼ぶ)、特開2010−199167号公報(以下、「特許文献3」と呼ぶ)参照)。たとえば、特許文献1では、平面形状が円形状であって、主表面から裏面に貫通する複数の貫通孔が形成された基体と、当該貫通孔の内部に充填された金属部材と、基体の主表面上に配置されるとともに貫通孔の内部に充填された金属部材と接続された金属層とを備える発光素子用基板が開示されている。特許文献1では、金属層の表面に発光素子を搭載したときに、当該発光素子からの距離が一定となる円周上に複数の貫通孔を等間隔で配置することで、放熱のばらつきを低減できる、としている。
【0003】
また、特許文献2では、金属製のコア基板と、コア基板の表面を覆い金属層またはホーロー層により構成される耐酸化性被覆層と、耐酸化性被覆層上に形成された絶縁層と、絶縁層上に形成された配線層とを供える発光素子用基板が開示されている。特許文献2では、耐酸化性被覆層がコア基板表面に形成されているので、絶縁層の焼成の際にコア基板が酸化されることを防止でき、発光素子用基板の耐久性を向上させることができるとしている。
【0004】
また、特許文献3では、セラミック基板と、セラミック基板上に形成された導体配線と、セラミック基板上に配置され、発光素子が配置される部分の周囲を囲むような傾斜した側壁を有し、発光素子からの光を前方側に集光するための反射体と、セラミック基板の裏面に接合された銅板とを備える発光素子用パッケージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−56460号公報
【特許文献2】特開2010−245258号公報
【特許文献3】特開2010−199167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の発光素子用基板においては、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に開示された発光素子用基板では、均一な放熱性を得るために基体に貫通孔を形成するとともに、当該貫通孔の内部に金属を充填し、さらに基体の表面に金属層を形成するといった複雑な構成を採用しているため、製造コストが増大するという問題があった。また、特許文献2に開示された発光素子用基板については、コア基板表面上に耐酸化性被覆層および絶縁層という積層構造を採用しているため、特許文献1に開示された技術と同様に発光素子用基板の製造工程数が増加することで製造コストが増大するという問題があった。また、特許文献3に開示されたパッケージも、放熱性を向上させるために銅板を配置するとともに、発光素子から出射する光の利用効率を高めるためにブロック状の反射体を配置するといった複雑な構成を採用しているので、やはり製造コストが増大するという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のように耐酸化性被覆層や絶縁層をコア基板表面上に形成すると、結果的に発光素子用基板の放熱性(熱伝導性)がこれらの絶縁層の存在に起因して低下し、十分な放熱性を確保することが難しかった。一方、発光素子の大出力化などを図る場合には、発光素子用基板に一層の放熱性が要求される。
【0008】
また、特許文献3のようなブロックの反射体を用いると、発光素子用基板の高さやサイズを小さくする小型化、軽量化が難しいという問題もあった。
【0009】
また、発光素子から出射する光の利用効率を上げる(反射率を上げる)ため、発光素子用基板の材料としてエポキシ樹脂や芳香族ナイロンなどの白色樹脂を用いることも発明者は検討したが、これらの白色樹脂は成形性の点では優れるものの、熱と光によって変色(黄変)し、結果的に光の反射率が低下するという問題があった。また、光の利用効率を向上させるため、発光素子用基板の表面に銀メッキを施すことも検討したが、このような銀メッキについては微量なSiOなどの存在に起因してやはり変色し、結果的に光の反射率が低下するという問題があった。
【0010】
このように、従来は光の利用効率や放熱性といった特性の優れた発光素子用基板を低コストで製造することは難しかった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、優れた特性を有するとともに製造コストの増大を抑制することが可能な発光素子用基板および発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に従った発光素子用基板は、ベース基板と被覆層とを備える。被覆層は、ベース基板の表面に接触するように形成される。被覆層は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であるか、可視光に対して不透明である場合には白色であるかのいずれかである。
【0013】
このようにすれば、発光素子用基板がベース基板と被覆層とからなるという単純な構成であるため、従来のように基板に貫通孔を形成したり反射体を配置したりする場合より、発光素子用基板の製造コストが増大することを避けることができる。また、発光素子用基板の被覆層上に、発光素子をはんだのリフロー工程により固定するプロセスを実施した後においても、被覆層が透明または半透明、あるいは白色という状態を維持するので、発光素子用基板上に発光素子をはんだのリフロー工程により固定することが可能であるとともに、発光素子から出射した光(可視光)のうち被覆層側に入射する光を白色の被覆層の表面、あるいは透明または半透明の被覆層とベース基板との接触界面において反射することが可能となる。このため、発光素子用基板上に発光素子を搭載する工程を容易に実施できるとともに、発光素子から出射する光の利用効率を向上できる。
【0014】
なお、ここで可視光に対して透明とは、可視光について、被覆層を構成する材料の単位厚さ(たとえば1mm)あたりの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合が90%以上であることを意味する。また、可視光に対して半透明とは、可視光について、被覆層を構成する材料の単位厚さ(たとえば1mm)あたりの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合が50%以上90%未満であることを意味する。
【0015】
この発明に従った発光装置は、上記発光素子用基板と、当該発光素子用基板の被覆層上に実装された発光素子とを備える。この場合、製造コストの増大を抑制し、かつ放熱特性に優れるとともに、発光素子から出射する光の利用効率の高い発光装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、優れた特性を有するとともに製造コストの増大を抑制することが可能な発光素子用基板および発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による発光素子用基板の実施の形態1を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した発光素子用基板の変形例を示す断面模式図である。
【図3】本発明による発光素子用基板の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図4】図3に示した発光素子用基板の実施の形態2の変形例を示す断面模式図である。
【図5】本発明による発光素子用基板を用いた発光素子モジュールを示す断面模式図である。
【図6】図5に示した本発明による光源モジュールの第1の変形例を示す断面模式図である。
【図7】図5に示した本発明による光源モジュールの第2の変形例を示す断面模式図である。
【図8】本発明による光源ユニットを示す断面模式図である。
【図9】本発明による光源ユニットの他の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による発光素子用基板1を説明する。
【0020】
図1を参照して、本発明による発光素子用基板1は、板状のベース基板2と、ベース基板2の主表面上に形成された被覆層3とからなる。ベース基板2は、金属材料あるいは樹脂材料など任意の材料を用いることができるが、特に放熱性を重視すれば金属材料を用いることが好ましい。ベース基板2の材料としては、たとえばアルミニウムあるいはアルミニウム合金、また銅あるいは銅合金、あるいは、マグネシウム、ロジウム、ニッケル、銀、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。またベース基板2を構成する材料として樹脂材料を用いる場合には、たとえば液晶ポリマー(LCP)やポリイミド(PI)、あるいはエポキシ樹脂、PEEKなどの樹脂材料を用いることができる。
【0021】
被覆層3としては、可視光に対して透明、半透明な材料あるいは白色の材料を用いることができる。また、被覆層3としてより好ましくは、発光素子用基板1に搭載される発光素子が出射する光に関して透明、半透明な材料あるいは白色の材料を用いる。なお、ここで発光素子が出射する光に関して透明とは、発光素子が出射する特定の波長の光について、被覆層3を構成する材料の単位厚さ(たとえば1mm)あたりの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合が90%以上であることを意味する。また、発光素子が出射する光に関して半透明とは、発光素子が出射する特定の波長の光について、被覆層3を構成する材料の単位厚さ(たとえば1mm)あたりの、入射光の強度に対する透過光の強度の割合が50%以上90%未満であることを意味する。
【0022】
被覆層3の材料としては、たとえば架橋EFEP(エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンのコポリマー)、透明PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA、FEP、あるいは白色の樹脂材料であるフッ素樹脂、架橋EFEP、架橋ETFE、または透明の樹脂材料である架橋EFEP、ETFE、PTFE、PFA、FEPなどの樹脂材料を用いることができる。ベース基板2の厚みT2はたとえば1μm以上1000μm以下とすることができる。また、ベース基板2の厚みT2は好ましくは10μm以上300μm以下である。また、被覆層3の厚みT1は、たとえば1μm以上200μm以下とすることができる。また、被覆層3の厚みT1は好ましくは5μm以上30μm以下である。このように被覆層3の厚みT1を十分薄くすることで、当該被覆層3上に搭載された発光素子からの熱を迅速にベース基板2側へ伝えることができる。
【0023】
つまり、このような構成の発光素子用基板1を用いれば、当該発光素子用基板1の表面上に発光素子を配置して光を出射させる場合に、発光素子から発生する熱を十分薄い被覆層3を介してベース基板2へと迅速に伝えることができる。また、ベース基板2からその熱を発散させることにより、発光素子における温度上昇を抑制し、発光素子の光の出射能力が温度上昇によって劣化するといった問題の発生を抑制できる。また、被覆層3上に配置された発光素子から出射した光の一部が被覆層3側に入射しても、被覆層3とベース基板2との界面あるいは被覆層3の表面において、光を反射させることができる。この結果、被覆層3の表面またはベース基板2の表面を反射材として利用することができるので、発光素子から出射される光の利用効率を高めることができる。また、発光素子用基板1の構成が比較的単純な構造であるため、貫通孔を形成したりする場合より製造コストを低減できる。
【0024】
次に、図2を参照して、本発明による発光素子用基板の実施の形態1の変形例を説明する。
【0025】
図2に示した発光素子用基板1は、基本的には図1に示した発光素子用基板1と同様の構造を備えるが、ベース基板2の構造が図1に示した発光素子用基板1とは異なっている。すなわち、図2に示した発光素子用基板1では、ベース基板2が下地基板21と下地基板21の表面上に形成された反射層22とにより構成されている。下地基板21としては、図1に示したベース基板2と同様の材料を用いることができる。また、反射層22としては、たとえば金属膜を形成することができる。反射層22を構成する金属膜としては、たとえばアルミニウム、銅やその他の金属をめっき法により形成した金属膜を用いてもよい。また、ここで下地基板21の厚みT4はたとえば10μm以上1000μm以下とすることができる。また、下地基板21の厚みT4は好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下である。また、反射層22の厚みT3は、たとえば10μm以上100μm以下とすることができる。また、反射層22の厚みT3は好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。また、被覆層3としては、発光素子5から出射する光に関して透明または半透明となる材料により構成する。
【0026】
このような構成の発光素子用基板1によっても、図1に示した発光素子用基板1と同様の効果を得ることができる。また、図2に示した発光素子用基板1では、反射層22が形成されているため、被覆層3上に配置される発光素子から出射した光の一部が被覆層3側に入射した場合に、当該反射層22においてこれらの光を確実に反射することができる。この結果、発光素子から出射した光の利用効率を高めることができる。
【0027】
(実施の形態2)
図3を参照して、本発明による発光素子用基板の実施の形態2を説明する。
【0028】
図3を参照して、発光素子用基板1は、基本的には図1に示した発光素子用基板1と同様の構造を備えるが、ベース基板2と被覆層3との界面におけるベース基板2の表面性状が異なっている。具体的には、図3に示した発光素子用基板1においては、ベース基板2の上部表面(被覆層3とベース基板2との界面を構成する表面)が、凹凸部が形成された表面4となっている。
【0029】
このような構造の発光素子用基板1によっても、図1に示した発光素子用基板1と同様の効果を得ることができる。また、ベース基板2の表面4には複数の凹凸部が形成されているため、当該凹凸部により発光素子から出射した光の一部がベース基板2側に入射した場合に、表面4において当該光を乱反射させることができる。この結果、発光素子用基板1上に搭載された発光素子から出射した光の出射方向の偏りを低減することができる。
【0030】
次に、図4を参照して、本発明による発光素子用基板の実施の形態2の変形例を説明する。
【0031】
図4に示した発光素子用基板1は、基本的には図3に示した発光素子用基板1と同様の構造を備えるが、ベース基板2の構成が異なっている。すなわち、図4に示した発光素子用基板においては、ベース基板2が、下地基板21と、当該下地基板21の上部表面上に配置された反射層22とから構成されている。下地基板21の上部表面(反射層22が形成された表面)は、図3に示したベース基板2の表面4と同様に凹凸が形成されている。また、反射層22の厚みは十分薄くほぼ均一であるため、反射層22の上部表面も、下地基板21の表面の凹凸に倣って凹凸形状となっている。このような構成によっても、図3に示した発光素子用基板1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
なお、図3および図4に示した発光素子用基板1においては、被覆層3の厚みT1は、被覆層3の厚みの最も厚くなった領域での厚みとして規定している。また、下地基板21の厚みT4は、下地基板21の厚みが最も薄くなった領域での厚みとして規定している。
【0033】
(実施の形態3)
図5を参照して、本発明による発光素子モジュールを説明する。
【0034】
図5に示すように、本発明による発光素子モジュールは、光源モジュール10であって、本発明による発光素子用基板1の表面上(被覆層3上)に回路素子6と発光素子5とが配置されている。発光素子5と回路素子6とは電気的に接続されている。図5に示した光源モジュール10においては、複数の回路素子6上に積層するように発光素子5が配置されている。発光素子5としては、たとえばLEDなど任意の発光素子を用いることができる。なお、回路素子6および発光素子5は、被覆層3の表面上に形成された図示しない導電層と電気的に接続されている。また、発光素子5は、被覆層3の上部表面に対して垂直な方向に光を出射するものであってもよいが、当該上部表面に対して交差する方向あるいは上部表面に対して平行な方向に光を出射するような素子であってもよい。
【0035】
このような構成の光源モジュール10によれば、発光素子5からの熱が十分薄い被覆層3を介してベース基板2側に伝えられるので、発光素子5の過剰な温度上昇を効果的に抑制できる。また、被覆層3上に配置された発光素子5から出射した光の一部が被覆層3側に入射しても、被覆層3とベース基板2との界面あるいは被覆層3の表面において光を反射させることができる。この結果、発光素子から出射される光の利用効率を高めることができる。なお、図5に示した光源モジュール10では、発光素子5が回路素子6上に積層された状態となっているが、発光素子5が発光素子用基板1に直接接続されていてもよい。
【0036】
次に、図6を参照して、本発明による光源モジュールの第1の変形例を説明する。
図6に示した光源モジュール10は、基本的には図5に示した光源モジュール10と同様の構造を備えるが、被覆層3上に複数の回路素子6および発光素子5が配置されている点が異なっている。すなわち、図6に示した光源モジュール10においては、被覆層3の上部表面上に4つの発光素子5が配置されている。なお、回路素子6および発光素子5の接続構造などは基本的には図5に示した光源モジュール10と同様である。このような構成の光源モジュール10によっても、図5に示した光源モジュール10と同様の効果を得ることができる。
【0037】
図7を参照して、本発明による光源モジュールの第2の変形例を説明する。
図7に示した光源モジュール10は、基本的には図6に示した光源モジュール10と同様の構造を備えるが、発光素子5上を覆うようにレンズ部材7が配置されている点が異なる。レンズ部材7は、発光素子5の上部表面上を覆うとともに、発光素子5上に位置する領域においてレンズ部材7の表面形状が半球状のレンズ構造となっている。このような構造により、発光素子5から出射した光が被覆層3の上部表面に対してほぼ垂直な方向に揃った状態でレンズ部材7の表面から出射する。この結果、光源モジュール10から出射する光は、発光素子用基板1の上部表面に対して垂直な方向にほぼ進行方向が揃った光となる。
【0038】
また、このように発光素子5の上を覆うようにレンズ部材7が配置されるため、レンズ部材7側からの放熱は少なくなるものの、本発明による発光素子用基板1を用いることにより、発光素子用基板1からの放熱性が十分高くなっているため、発光素子5の温度上昇は抑制される。このため、当該温度上昇による発光素子5の特性の劣化などを避けることができる。
【0039】
(実施の形態4)
図8を参照して、本発明による光源ユニットを説明する。
【0040】
図8に示した光源ユニット20は、液晶表示装置などの平面ディスプレイに用いられるバックライト装置であって、本発明による発光素子用基板1と、当該発光素子用基板1の表面上に配置された回路素子6および発光素子5と、発光素子用基板1の表面上に配置された制御回路素子32と、発光素子5と対向する位置に配置された拡散板31とを備える。拡散板31は、発光素子5から拡散板31側へと出射した光を拡散させて、拡散板31を透過して上方へと出射する光の出射方向の偏りを抑制する(光の出射方向の出射角度依存性を低減する)ためのものである。制御回路素子32は、発光素子用基板1の表面上に形成された複数の発光素子5の発光状態を制御するために用いられる。制御回路素子32は、発光素子用基板1の表面に形成された図示しない導電線によって回路素子6および発光素子5と電気的に接続されている。
【0041】
このような光源ユニット20は、本発明による発光素子用基板1を用いているため、発光素子5からの熱を効果的に放熱し、発光素子5の温度上昇を抑制することができる。また、発光素子用基板1側に入射した光を被覆層3とベース基板2との界面、あるいは被覆層3の表面において反射することで、当該光を拡散板31側へと出射させることができる。このため、発光素子5から出射した光の利用効率を高めることができる。
【0042】
図9を参照して、本発明による光源ユニットの他の例を説明する。
図9に示した光源ユニット20は、本発明による発光素子用基板1と、当該発光素子用基板1の表面上に配置された複数の回路素子6および発光素子5と、発光素子用基板1の端部に配置された制御回路素子32および電源回路素子33とを備える。制御回路素子32は、発光素子5および回路素子6と電気的に接続され、発光素子5の発光制御を行なうためのものである。また、電源回路素子33は、回路素子6および発光素子5へと供給される電力を制御するためのものである。制御回路素子32および電源回路素子33は、図示しない導電線によって回路素子6および発光素子5と電気的に接続されている。
【0043】
このような構成の光源ユニット20においても、本発明による発光素子用基板1を用いることで発光素子5の温度上昇を抑制できるとともに、発光素子5から出射した光の利用効率を高めることができる。
【0044】
ここで、上述した説明と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0045】
この発明に従った発光素子用基板1は、ベース基板2と被覆層3とを備える。被覆層3は、ベース基板2の表面に接触するように形成される。被覆層3は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であるか、可視光に対して不透明である場合には白色であるかのいずれかである。
【0046】
このようにすれば、発光素子用基板1がベース基板2と被覆層3とからなるという単純な構成であるため、従来のように基板に貫通孔を形成したり反射体を配置したりする場合より、発光素子用基板1の製造コストが増大することを避けることができる。また、発光素子用基板1の被覆層3上に、発光素子5をはんだのリフロー工程により固定するプロセスを実施した後においても、被覆層3が透明または半透明、あるいは白色という状態を維持するので、発光素子用基板1上に発光素子5をはんだのリフロー工程により固定することが可能であるとともに、発光素子5から出射した光(可視光)のうち被覆層3側に入射する光を白色の被覆層3の表面、あるいは透明または半透明の被覆層3とベース基板2との接触界面において反射することが可能となる。このため、発光素子用基板1上に発光素子5を搭載する工程を容易に実施できるとともに、発光素子5から出射する光の利用効率を向上できる。
【0047】
上記発光素子用基板1において、図2や図4に示すように、被覆層3は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であってもよく、ベース基板2は、被覆層3と接触する表面を構成する反射層22を含んでいてもよい。
【0048】
この場合、反射層22の表面において発光素子5から出射した光のうち被覆層3側(反射層22側)に入射した光を、反射層22の表面から被覆層3側へと確実に反射することができる。このため、発光素子5から出射した光の利用効率を向上させることができる。
【0049】
上記発光素子用基板1において、反射層22の厚みは10μm以上100μm以下であってもよい。また、ベース基板2は、反射層22と、当該反射層22において上記被覆層3と接触する上面と反対側の裏面に接触する下地基板21とを含んでいてもよい。反射層22を構成する材料は金属であってもよい。また、下地基板21の厚みは10μm以上1000μm以下であってもよい。この場合、ベース基板2の厚みが十分薄く、また下地基板21の材料が金属であってその熱伝導特性が良好であるため、発光素子5から発光素子用基板1を介して容易に熱が伝わる。このため、発光素子5において放熱が不十分なため当該発光素子5の温度が上昇し、発光素子5の特性が劣化する、あるいは発光素子5の発光能力が十分発揮できない、といった問題の発生を抑制できる。
【0050】
上記発光素子用基板1において、ベース基板2を構成する材料は、金属、樹脂、セラミックスのいずれかを含んでいてもよい。このような材料は、強度や加工性の観点から発光素子用基板1のベース基板2として好ましく用いられる。
【0051】
上記発光素子用基板1において、ベース基板2を構成する材料について、金属としてはたとえばアルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、を用いることができる。また、樹脂としては液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、セラミックスとしては窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。このような材料を用いることで、発光素子用基板の強度を維持するとともに、好ましい放熱特性を得ることができる。
【0052】
上記発光素子用基板において、被覆層3を構成する材料は、EFEP(エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンのコポリマー)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、白色フッ素樹脂からなる群から選択される1つであってもよい。この場合、発光素子5を固定するためのはんだのリフロー工程における加熱温度にも十分に耐える被覆層3を得ることができる。また、被覆層3の材料として架橋フッ素樹脂も用いることができるが、このような樹脂は熱伝導性が良好であり、かつ薄くコーティングすることが可能である。このため、発光素子用基板の熱伝導性を良好に保つことができる。また、上記のような被覆層3をベース基板2の上に形成する場合、通常は被覆層3の密着性を向上させるためベース基板2の表面をエッチング加工するが、このようなエッチング加工により発光素子用基板の光の反射特性や透明性が劣化していた。しかし、上記のような樹脂を被覆層3として用いることで、ベース基板2のエッチングを行なわずに被覆層3をベース基板2上に固定(たとえば固着あるいは接着)できるので、発光素子用基板の光の反射特性や透明性を良好に保つことができる。
【0053】
上記発光素子用基板1において、ベース基板2の厚みは10μm以上1000μm以下であってもよく、被覆層3の厚みは1μm以上20μm以下であってもよい。この場合、被覆層3やベース基板2の厚みが十分に薄いため、発光素子用基板1を介して発光素子5からの熱を迅速に外部へ放散することができる。
【0054】
この発明に従った発光装置としての光源モジュール10や光源ユニット20は、上記発光素子用基板1と、当該発光素子用基板1の被覆層3上に実装された発光素子5とを備える。この場合、製造コストの増大を抑制し、かつ放熱特性に優れるとともに、発光素子5から出射する光の利用効率の高い発光装置を得ることができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、特にレーザダイオード(LD)やLEDなどの発光素子を搭載する発光素子用基板および当該発光素子用基板を用いた発光装置に有利に適用される。
【符号の説明】
【0057】
1 発光素子用基板、2 ベース基板、3 被覆層、4 表面、5 発光素子、6 回路素子、7 レンズ部材、10 光源モジュール、20 光源ユニット、21 下地基板、22 反射層、31 拡散板、32 制御回路素子、33 電源回路素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板の表面に接触するように形成された被覆層とを備え、
前記被覆層は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であるか、前記可視光に対して不透明である場合には白色であるかのいずれかである、発光素子用基板。
【請求項2】
前記被覆層は、260℃まで加熱された後において、可視光に対して透明または半透明であり、
前記ベース基板は、
前記被覆層と接触する前記表面を構成する反射層を含む、請求項1に記載の発光素子用基板。
【請求項3】
前記ベース基板を構成する材料は、金属、樹脂、セラミックスのいずれかを含む、請求項1または2に記載の発光素子用基板。
【請求項4】
前記被覆層を構成する材料は、EFEP、PTFE、白色フッ素樹脂からなる群から選択される1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項5】
前記ベース基板の厚みは10μm以上1000μm以下であり、前記被覆層の厚みは1μm以上20μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項6】
請求項1に記載の発光素子用基板と、
前記発光素子用基板の前記被覆層上に実装された発光素子とを備える、発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−235016(P2012−235016A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103691(P2011−103691)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】