説明

発光素子

【課題】
本発明の課題は、半導体積層体から照射される紫外線による内包体の黄変を防止し、長寿命の発光素子を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、半導体積層体が被覆層で被覆されることで、紫外線を吸収する被覆層が半導体積層体から照射される紫外線を吸収する。この半導体積層体と被覆層とを内包体によって内包することで、内包体が半導体積層体から照射される紫外線の影響を受けにくくなる。すなわち、従来、半導体積層体から照射されていた紫外線によって起こる内包体の黄変が起こりにくくなり、発光素子の寿命を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を吸収する被覆層を備える発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子として、発光する発光層を有する半導体積層体を有し、この半導体積層体を凸レンズを有する内包体で被覆封止した発光素子が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−197971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような発光素子は、半導体積層体を被覆封止した内包体に、紫外線によって架橋し、黄変が起きる材質が使用されている。また、発光層を有する半導体積層体からは可視光とともに紫外線も照射される。したがって、特許文献1のような発光素子では、半導体積層体の発光層から照射される紫外線によって、内包体が黄変し、発光輝度が顕著に低下するという問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、上記実状に鑑み、半導体積層体から照射される紫外線による内包体の黄変を防止し、長寿命の発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光素子は、半導体によって形成された発光層を含む半導体積層体と、前記半導体積層体を被覆し、紫外線を吸収する被覆層と、前記半導体積層体及び前記被覆層を内包する内包体とを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光素子は、半導体積層体が被覆層で被覆されることで、紫外線を吸収する被覆層が半導体積層体から照射される紫外線を吸収する。この半導体積層体と被覆層とを内包体によって内包することで、内包体が半導体積層体から照射される紫外線の影響を受けにくくなる。すなわち、従来、半導体積層体から照射されていた紫外線によって起こる内包体の黄変が起こりにくくなり、発光素子の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の発光素子について、図1乃至図4を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の説明に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0009】
本発明の発光素子1は、図1のように、半導体積層体10と、リードフレーム20,21と、配線22と、絶縁層23と、封止層30と、内包体40と、被覆層50と、第2の被覆層51とを有している。
【0010】
半導体積層体10は、n型及びp型半導体が積層され、pn接合が形成されている。そして、この半導体積層体10の表面に形成された図示しないn型電極、p型電極を介してpn接合に電圧をかけることで、pn接合から所定の波長の光が発光する。この半導体積層体10を構成する半導体としては、GaP、GaAs、GaAsP、GaAlAs、GaN、SiC等の半導体が挙げられる。このような半導体からなる半導体積層体10は、チップ状で、積層方向上面にn型又はp型のいずれか一方の電極を有し、積層方向面に他方の電極を有している。
【0011】
リードフレーム20は、底面から上方に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗状の凹部を有している。このリードフレーム20の凹部には、半導体積層体10の下面の電極がリードフレーム20と接触するように載置され、半導体積層体10の電極とリードフレーム20とが接続される。リードフレーム21は、絶縁層23を介してリードフレーム20の反対側に備えられる。このリードフレーム21は、配線22が接続されており、この配線22を介して、半導体積層体10の上面の電極と接続される。
【0012】
半導体積層体10は、図2のように、リードフレーム20の凹部に、下面の電極と接触するように載置された後、配線22によって、上面の電極とリードフレーム21とが接続され、半導体積層体10とリードフレーム20,21とが電気的に接続される。すなわち、リードフレーム20,21に電圧を印加することで、半導体積層体10のpn接合から光が発光し、発光素子1が発光する。
【0013】
上述のように、リードフレーム20,21に半導体積層体10が備えられ、配線22を介して、電気的に接続された後、図3のように、半導体積層体10とリードフレーム20が接触していない面と、リードフレーム20,21の表面の一部とに被覆層50が形成される。
【0014】
この被覆層50は、後述で詳細に説明する被覆層組成物から形成される層で、透光性で、紫外線を吸収することができる。この被覆層50は、この被覆層組成物を所定の厚さとなるように塗布した後、硬化させることで形成される。この被覆層組成物を塗布する方法としては、刷毛塗り、スプレーコート、スピンコート、カーテンコートなどの種々の方法が挙げられるが、ドブ漬けによる方法により、容易に被覆層組成物を塗布することができる。
【0015】
図1、図3及び図4に示される被覆層50は、ドブ漬けによって被覆層組成物が塗布されて形成されているため、半導体積層体10とリードフレーム20が接触していない面と、リードフレーム20,21の表面の一部とに被覆層50が形成されているが、本発明の被覆層50は、少なくとも半導体積層体10を被覆すればよい。この場合、ドブ漬け以外の適した塗布法により、被覆層組成物が半導体積層体10に塗布され、被覆層50が形成される。
【0016】
この被覆層50を形成することにより、発光素子1は、半導体積層体10から照射される紫外線を吸収することができる。
【0017】
被覆層50が形成された後、図4のように、リードフレーム20の凹部に半導体積層体10を封止する封止層30が形成され、半導体積層体10、被覆層50及び封止層30を内包体40で内包する。
【0018】
この封止層30は、半導体積層体10を水分や衝撃から保護することができる。この封止層30は、透光性で、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、フッ素系などの樹脂により形成される。
【0019】
また、内包体40は、リードフレーム20の一部、半導体積層体10、被覆層50及び封止層30を内包するための凹部が形成され、凹部が形成されている反対側の端部に凸レンズを有している。この内包体40の材質としては、例えば透光性のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0020】
被覆層50が形成された後、リードフレーム20の凹部に、上述した封止層30の樹脂の組成物が注入され、半導体積層体10を封止する。そして、内包体40と封止層30との間に気泡が入らないように内包体40を被せる。その後、加熱などにより、封止層30を硬化させて、半導体積層体10を封止、内包することができる。
【0021】
これにより、リードフレーム20及びリードフレーム21を介して、半導体積層体10に電圧が印加されると、半導体積層体10が発光し、光が内包体40の凸レンズによって集光されて外部へ放射される。
【0022】
内包体40によって半導体積層体10を封止、内包した後、内包体40の外側表面に、被覆層50と同様の材質からなる第2の被覆層51が形成される。この第2の被覆層51は、後述で詳細に説明する被覆層組成物からなる層で、透光性で、紫外線を吸収することができる。この第2の被覆層51は、この被覆層組成物を所定の厚さとなるように塗布した後、硬化させることで形成される。この被覆層組成物を塗布する方法としては、刷毛塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの種々の方法が挙げられるが、ドブ漬けによる方法により、容易に被覆層組成物を塗布することができる。
【0023】
上述のように、本発明の発光素子1は、半導体積層体10が被覆層50で被覆されることで、紫外線を吸収する被覆層50が半導体積層体10から照射される紫外線を吸収する。この半導体積層体10と被覆層50とを内包体40によって内包することで、内包体40が半導体積層体10から照射される紫外線の影響を受けにくくなる。すなわち、従来、半導体積層体から照射されていた紫外線によって起こる内包体の黄変が起こりにくくなり、発光素子1の寿命を長くすることができる。
【0024】
本発明の発光素子1は、照明、プリンタヘッド等、種々の用途などに使用することができるが、発光素子1の外部からの紫外線に曝されるおそれが少ないような用途等、その用途によっては、第2の被覆層51が形成されていなくてもよい。例えば、太陽光などの紫外線に直接曝されないような看板内部などに備えられる照明として、本発明の発光素子1を使用する場合、看板によって発光素子1の外部からの紫外線が遮られるため、第2の被覆層51が形成されていなくても、内包体40への紫外線の影響が少なく、内包体40の黄変が起こりにくい。
【0025】
また、例えば、発光素子1が太陽光など露出するように備えられる場合、この第2の被覆層51を形成することにより、太陽光など、外部から照射される紫外線を吸収し、内包体40のエポキシ樹脂の架橋を防止し、外部から照射される紫外線による内包体40の黄変を防止することができる。これにより、より長寿命の発光素子1を提供することができる。
【0026】
上述のような発光素子1の被覆層50と第2の被覆層51は、以下のような被覆層組成物により形成される。
【0027】
被覆層50と第2の被覆層51は、下記一般式(I)で示されるモノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート単量体が10〜70重量部、
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、X11、X12、X13、X22、X23、・・・・・・Xn2、Xn3及びX14のうち少なくとも3個はCH=CR−COO−基で、残りは−OH基である。また、nは1〜5の整数であり、Rは水素又はメチル基を示す。)
【0030】
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートと分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物、或は分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートにポリオール、ポリエステル又はポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、その残ったイソシアネート基にヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物であって、1分子内に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する分子量1000〜5000のウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種が5〜50重量部、
【0031】
下記一般式(II)又は一般式(III)で示されるポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物が5〜50重量部、
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
(式中、X、X及びXはアクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子又はアルキル基を示し、これらのうちの少なくとも2個は(メタ)アクリロイル基であり、R、R及びRは炭素数1〜4のオキシアルキレン基を示す。)
【0035】
紫外線吸収剤が2〜30重量部、並びに、
【0036】
光重合開始剤が0.1〜10重量部からなる被覆層組成物から形成される層であり、
【0037】
前記被覆層組成物は、前記単量体、前記ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、前記ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、前記紫外線吸収剤、前記光重合開始剤の合計重量が100重量部である。
【0038】
この被覆層組成物を上述のように、半導体積層体10、あるいは、内包体40の外側表面に塗布し、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより、架橋硬化被膜を有する耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、耐久性、耐侯性に優れた樹脂層を得ることができる。この被覆層組成物の各成分の詳細を以下に示す。
【0039】
上述のアクリレート単量体であるモノ又はポリペンタエリスリト−ルのポリ(メタ)アクリレ−トは、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示し、また高度な架橋密度を有する耐摩耗性に優れたポリマーを形成する。したがって、基材表面に耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0040】
一般式(I)で示されるアクリレート単量体の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
このアクリレート単量体の使用割合は、単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分の合計量100重量部中、10〜70重量部、より好ましくは25〜50重量部である。アクリレート単量体の量が10重量部末満では、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られず、70重量部を超えると、硬化被膜にクラックが生じ易くなり、耐久性試験や耐侯性試験後の硬化被膜にはクラックが生じる。また、硬化被膜の耐熱性も低下する。
【0042】
ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物は、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートと分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物、或は分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートにポリオール、ポリエステル又はポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、その残ったイソシアネート基にヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物であって、1分子内に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する分子量が1000〜5000である。
【0043】
このウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物は、硬化被膜の強靱性、可撓性、耐熱性及び耐侯性を向上させる化合物である。後者の分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートにポリオール、ポリエステル又はポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、その残ったイソシアネート基にヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物が、硬化被膜の強靱性や可撓性をより向上することができ好ましい。また、硬化被膜の基材への密着性が向上させるという点で、これらの分子量は1000〜5000のものが用いられる。
【0044】
脂環構造を有するポリイソシアネート化合物の具体例としては、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)イソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートのモノマー、及び、そのビューレットやトリマー、更にそれらと各種ポリオールとの付加体等をあげることができる。
【0045】
付加体の合成に使用するポリオールは特に限定されなく、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等のアルキルポリオール及びこれらポリエーテルポリオールや、多価アルコ−ルと多塩基酸から合成されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等がある。
【0046】
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のほか、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のモノエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトンジオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0047】
ポリイソシアネートと各種ジオールとヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートとの反応は、ジラウリン酸n−ブチル錫等の錫系触媒の存在下、イソシアネート基と水酸基がほぼ等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱する。反応物は、一般に高粘性となることが多いので、反応中又は、反応終了後に、有機溶剤や他の稀釈モノマーで稀釈するのが好ましい。
【0048】
ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物の使用割合は、アクリレート単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分の合計量100重量部中、5〜50重量部、より好ましくは15〜35重量部である。ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物の量が5重量部未満では、十分な強靱性、耐侯性を有する硬化被膜が得られず、また空気雰囲気下での硬化性が悪くなる。50重量部を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0049】
一般式(II)又は(III)で示されるポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物は、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示し、また高い耐摩耗性を損なうことなく硬化被膜の強靱性、耐熱性を向上させることのできる。ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物の具体例としては、ジ(2−アクロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(2−アクロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ジ(2−アクロイルオキシエチル)シアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、ジ(2−アクロイルオキシプロピル)シアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)シアヌレート等が挙げられる。
【0050】
ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物の使用割合は、アクリレート単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分の合計量100重量部中、5〜50重量部、より好ましくは、10〜40重量部である。ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物の量が5重量部未満では、充分な強靱性、耐熱性を有する硬化被膜が得られず、50重量部を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0051】
紫外線吸収剤は特に限定されず、組成物に均一に溶解し、かつその耐侯性が良好なものであれば使用可能であるが、組成物に対する良好な溶解性及び耐侯性改善効果という点から、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、安息香酸フェニル系から誘導された化合物で、それらの最大吸収波長が240〜380nmの範囲である紫外線吸収剤が好ましく、特に、組成物に多量に含有させることができるという点から、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が好ましい。この上記2種を組み合わせて用いるのがさらに好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1、3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ビチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、これらのうち、ベンゾフェノン系の2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール系の2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールが特に好ましく、これらは2種以上を組み合わせて使うのがより好ましい。
【0053】
紫外線吸収剤の使用割合は、アクリレート単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分の合計量100重量部中、2〜30重量部、より好ましくは、5〜15重量部である。紫外線吸収剤の量が2重量部未満では、硬化被膜の耐侯性、及び基材の紫外線からの保護が十分でなく、30重量部を超えると被膜自身の硬化が不十分となり、硬化被膜の強靱性、耐熱性、耐摩耗性が低下する。
【0054】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキシド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合系で使用される。これらの中でも、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタールがより好ましい。
【0055】
光重合開始剤の使用割合は、アクリレート単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分の合計量100重量部中、0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。光重合開始剤の量が0.1重量部未満では、硬化性が不十分となり、10重量部を越えると硬化被膜の着色を招き、また耐侯性も低下する。
【0056】
このような被覆層組成物は、アクリレート単量体、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、紫外線吸収剤、及び、光重合開始剤の各成分からなるが、必要に応じて、有機溶剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。これにより、静電気などによる半導体積層体10への影響を防止することができる。有機溶剤は、基材の種類により選択して用いるのが良い。溶剤の使用量は被覆層組成物100重量部に対して20〜800重量部を用いるのが良い。
【0057】
この被覆層組成物を被覆層50として、半導体積層体10、より詳細には、半導体積層体10とリードフレーム20が接触していない面と、リードフレーム20,21の表面の一部に塗布するには、ハケ塗り、ドブ漬け、スプレーコート、スピンコート、カーテンコートなどの方法が用いられるが、被覆層組成物の塗布作業性、被覆の平滑性、均一性、密着性向上の点から、適当な有機溶剤を添加して塗布するのが好ましい。本発明の被覆層組成物は、塗布した後の例えば紫外線照射により、架橋し、硬化被膜を形成する。紫外線照射により硬化する際には、被覆層組成物を膜厚1〜50μm、好ましくは、3〜20μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて、100〜400nmの紫外線を1000〜5000mJ/cmとなるように照射する。照射する雰囲気は、空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0058】
この被覆層組成物を第2の被覆層51として、内包体40の外側表面に塗布する場合も、被覆層50と同様に塗布し、紫外線を照射する。これにより、被覆層50及び第2の被覆層51とが形成される。上述で説明した被覆層組成物は、紫外線の吸収性に優れており、より好適に内包体40の黄変を防止することができる。
【0059】
上述のように、本発明の発光素子1は、被覆層50及び第2の被覆層51を備えることで、内包体40の黄変を防止することができ、長寿命の発光素子1を提供することができる。この評価方法としては、QUV促進耐候試験等の加速試験が利用できる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例及び比較例を掲げ本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例中の「部」はすべて「重量部」を意味する。また実施例中の測定評価は次のような方法で行った。
【0061】
(1)硬化被膜の外観
組成物の塗布、硬化後の外観を目視評価した。表面が平滑で、透明であるものを○とし、一部、クモリがあるものを△とし、白化やクモリが観察されるものを×とした。
【0062】
(2)耐摩耗性
♯000のスチールウールを直径25mmの円筒先端に装着し、水平に置かれたサンプル面に接触させ、1Kgの荷重で50回往復摩耗した後、拡散透過率(ヘイズ値)を測定し、耐摩耗性の判定を行った。耐摩耗性の判定基準は次ぎの通りである。○は、増加ヘイズ値=0〜0.5:ほとんど傷はついていない。△は、増加ヘイズ値=0.5〜3.0:少し傷がつく。×は、増加ヘイズ値=3.0以上:ひどく傷がつく。
【0063】
(3)密着性
硬化被膜に1mm間隔で基材まで達するクロスカットを入れ、1mmの碁板目を100個作り、その上にセロテ−プ(登録商標)を貼り付け急激にはがし、剥離した碁盤目を数えた。剥離が全く無いものを○、剥離の数が1〜50個のものを△、剥離の数が51〜100個のものを×とした。
【0064】
(4)耐熱性
塗板サンプルを120℃の熱風乾燥機に24時間入れ、硬化被膜の外観変化を目視により観察した。変化がないものを○とし、小さなクラックが発生したものを△とし、塗板の全面にクラックが発生したものを×とした。
【0065】
(5)耐侯性
サンシャインカーボンウエザオメーター(スガ試験機製、WEL−SUN−HC−B型)耐候試験機を用いて、ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクルで試験した。1000時間、2000時間曝露後の硬化被膜の変化を観察し、密着性を試験した。
【0066】
(a)外観の変色については、変色がないものを○、若干黄変があったものを△、黄変が大きかったものを×とした。
【0067】
(b)クラックの発生及び膜の剥離については、無かったものを○、有ったものを×とした。
【0068】
実施例1〜6、比較例1〜7
表1及び2に示す配合比で被覆層組成物を調整し、厚さ3mmのポリカ−ボネ−ト樹脂板(GE社製、商品名:レキサンLS−II)に、硬化後の塗膜が8μmになるようにディップコートで8μmになるように塗装し、60℃雰囲気化の乾燥機中で5分間放置し、その後、波長340nm〜380nmの積算光量が3000mJ/cmのエネルギ−を照射し、硬化塗膜を得た。得られた塗膜の評価結果を表1及び表2に示した。耐候性の試験の結果、実施例1乃至実施例6に示す被覆層組成物は、変色が確認されなかった。
【0069】

【表1】

【0070】

【表2】

【0071】
なお、表1中の化合物の記号は次の通りである。
DPHA :ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
TAIC :トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
UA1 :ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(2mol)、ノナブチレングリコール(1mol)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2mol)から合成した分子量2500のウレタンアクリレート。
UA2 :イソホロンジイソシアネート(2mol)、2,2’−(ヒドロキシエチルオキシフェニル)プロパン(1mol)及び2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2mol)から合成した分子量2200のウレタンアクリレ−ト。
UA3 :ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(1mol)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2mol)から合成した分子量500のウレタンアクリレート。
【0072】
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
BIP :ベンゾインイソプロピルエーテル
BPN :ベンゾフェノン
MPG :メチルフェニルグリオキシレート
HBPB :2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
HOBP :2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン
DHBP :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
【0073】
次に、上述した実施例1乃至6に示される被覆層組成物をディップコート法によって塗布し、被覆層50及び被覆層51を形成し、QUV試験機(スガ試験機製、デューパネル 光コントロールウェザーメーターFDP)によるQUV促進耐候試験を行った。このQUV促進耐候試験は、光照射4時間、暗黒4時間のサイクルで72サイクル及び108サイクル行った。光照射の条件は、ブラックパネル60℃、相対湿度50%、4時間で、暗黒の条件は、槽内温度50℃、相対湿度95%、4時間である。この結果、共に、発光素子に黄変が見られなかった。このことから、本発明は、紫外線の吸収性に優れた上述した被覆層組成物からなる被覆層50及び第2の被覆層51を備えることで、長寿命の発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の発光素子の概略断面図である。
【図2】本発明の発光素子の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の発光素子の製造工程を示す図である。
【図4】本発明の発光素子の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 発光素子
10 半導体積層体
20,21 リードフレーム
22 配線
23 絶縁層
30 封止層
40 内包体
50 被覆層
51 第2の被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体によって形成された発光層を含む半導体積層体と、
前記半導体積層体を被覆し、紫外線を吸収する被覆層と、
前記半導体積層体及び前記被覆層を内包する内包体とを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記内包体の外側表面に紫外線を吸収する第2の被覆層を有することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記被覆層及び前記第2の被覆層は、
下記一般式(I)で示されるモノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート単量体が10〜70重量部、
【化1】

(式中、X11、X12、X13、X22、X23、・・・・・・Xn2、Xn3及びX14のうち少なくとも3個はCH=CR−COO−基で、残りは−OH基である。また、nは1〜5の整数であり、Rは水素又はメチル基を示す。)
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートと分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物、或は分子内に脂環構造と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートにポリオール、ポリエステル又はポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、その残ったイソシアネート基にヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物であって、1分子内に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する分子量1000〜5000のウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種が5〜50重量部、
下記一般式(II)又は一般式(III)で示されるポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物が5〜50重量部、
【化2】

【化3】

(式中、X、X及びXはアクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子又はアルキル基を示し、これらのうちの少なくとも2個は(メタ)アクリロイル基であり、R、R及びRは炭素数1〜4のオキシアルキレン基を示す。)
紫外線吸収剤が2〜30重量部、並びに、
光重合開始剤が0.1〜10重量部からなる被覆層組成物から形成される層であり、
前記被覆層組成物は、前記アクリレート単量体、前記ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、前記ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレート化合物、前記紫外線吸収剤、前記光重合開始剤の合計重量が100重量部であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−166512(P2008−166512A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354768(P2006−354768)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(591039791)
【Fターム(参考)】