説明

発光素子

【課題】低電圧駆動かつ耐久性に優れた発光素子を提供すること。
【解決手段】陽極と陰極の間に少なくとも正孔注入層および発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔注入層が一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子。
【化1】


(R1〜Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基の中から選ばれる。但し、RおよびRのうち少なくとも一方は水素ではない。Xは単結合、アリーレン基の中から選ばれる。mおよびmは0以上の整数であり、1≦m+m≦8である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる素子であって、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機発光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり、注目を集めている。
【0003】
この研究は、コダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜発光素子が高輝度に発光することが示されて以来、多くの研究機関が検討を行っている。コダック社の研究グループが提示した有機薄膜発光素子の代表的な構成は、ITOガラス基板上に正孔輸送性のジアミン化合物、発光層であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)、そして陰極としてMg:Agを順次設けたものであり、10V程度の駆動電圧で1,000cd/mの緑色発光が可能であった(非特許文献1)。
【0004】
また、有機薄膜発光素子は、発光層に種々の発光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。有機薄膜発光素子における大きな課題に、素子の発光効率の向上、低駆動電圧化および発光寿命の向上が上げられる。素子発光効率を支配する因子としては、電子と正孔の注入バランス因子(キャリアバランス)、キャリア再結合による発光性励起子の生成効率、発光量子効率が重要であることが知られている(非特許文献2)。低駆動電圧化については、高キャリア移動度を有する電子輸送材料として、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体(非特許文献3)や、フェナントロリン誘導体(特許文献1および特許文献2参照)など数多くの材料が開発されている。一方、正孔輸送材料としては芳香族アミン系の化合物が多く用いられているが、近年、高い正孔移動度を示すポリチオフェンを正孔注入層として用いることで発光効率の向上と低駆動電圧化を達成できることが報告されている(特許文献3)。
【非特許文献1】アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)(米国)、1987年、第51巻、第12号、913−915頁
【非特許文献2】“有機EL材料とディスプレイ”、シーエムシー出版、2001年、31頁
【非特許文献3】“有機EL材料とディスプレイ”、シーエムシー出版、2001年、152頁
【特許文献1】特開2004− 55258号公報
【特許文献2】特開2004−281390号公報
【特許文献3】特開2006−287242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の技術では、素子の高効率化、低駆動電圧化および長寿命化の面で充分なレベルに達していない。特に、低駆動電圧化と長寿命の両立の点で更なる改善が望まれている。
【0006】
本発明はかかる従来技術の問題を解決し、高効率発光、低電圧駆動、長発光寿命が可能な発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、陽極と陰極の間に少なくとも正孔注入層および発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔注入層が一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子である。
【0008】
【化1】

【0009】
(R1〜Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基の中から選ばれる。但し、RおよびRのうち少なくとも一方は水素以外の置換基から選ばれる。Xは単結合、アリーレン基の中から選ばれる。mおよびmは0以上の整数であり、1≦m+m≦8である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば高発光効率、低電圧駆動、長発光寿命が可能な発光素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の発光素子は、少なくとも陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極の間に存在する正孔注入層と発光層とで構成されている。
【0012】
本発明で用いられる陽極は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料であれば特に限定されないが、比較的仕事関数の大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、あるいはポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0013】
電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できれば十分であるが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、100Ω/□以下の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶことができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
【0014】
また、発光素子の機械的強度を保つために、電極を基板上に形成することが好ましい。基板としては、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、陽極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成してもよい。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0015】
本発明で用いられる陰極に用いられる材料としては、電子を有機層に効率良く注入できる物質であれば特に限定されないが、一般に白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの合金などが挙げられる。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は、一般に大気中で不安定であることが多く、取り扱いが困難である。このため、有機層に微量のリチウムやマグネシウム等の低仕事関数の金属、あるいはフッ化リチウムのような大気中で安定な無機塩をドーピング(真空蒸着の膜厚計表示で1nm以下)した後に、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの大気中でより安定な金属を積層して陰極とする方法が好ましい。更にこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを保護膜層として積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、特に制限されない。
【0016】
本発明において、発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、各層の発光材料は単一の材料でも複数の材料(ホスト材料、発光性ドーパント材料)の混合物であってもよいが、効率、色純度、寿命の観点から膜形成、正孔・電子輸送、発光の機能を分離できるホスト材料と発光性ドーパント材料との混合物の方が好ましい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくは発光性ドーパント材料のいずれか一種類のみが発光してもよいし、ホスト材料と発光性ドーパント材料がともに発光してもよい。ホスト材料と発光性ドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。発光性ドーパント材料は発光層の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。発光性ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法、ホスト材料と混合してから蒸着する方法、またはホスト材料と発光性ドーパント材料を望む割合で溶媒に溶かし塗布する方法が挙げられる。
【0017】
発光性ドーパント材料としては、具体的には従来から知られている、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−g,h]クマリン(C545T)などのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
ホスト材料としては、アントラセンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、具体的には、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体やテトラセン誘導体などのアセン化合物、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピロロピロール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体が好適に用いられる。
【0019】
発光層を形成する方法は、抵抗加熱式または電子ビーム式の真空蒸着による方法、発光材料を各種溶媒により溶解あるいは高分子結着剤を用いて混合物を調整した後に基板上に塗布する方法が用いられるが、素子特性の観点から真空蒸着による方法がより好ましい。
【0020】
本発明において、正孔注入層とは、陽極から注入された正孔を発光層に向けて移動させるための層であり、本発明の正孔注入層は少なくとも一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0021】
【化2】

【0022】
ここでR1〜Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基の中から選ばれる。但し、RおよびRのうち少なくとも一方は水素以外の置換基から選ばれる。Xは単結合、アリーレン基の中から選ばれる。mおよびmは0以上の整数であり、1≦m+m≦8である。
【0023】
これらの置換基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20の範囲、より好ましくは1以上6以下の範囲、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基である。
【0024】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。
【0025】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜40の範囲、より好ましくは6〜18の範囲、さらに好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基である。
【0026】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基などの炭素以外の原子を環内に有する芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常2〜30の範囲である。
【0027】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素原子への結合を有する官能基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。
【0028】
アリーレン基とは、芳香族炭化水素基から導かれる2価の基を示し、これらは置換基を有していても有していなくてもよい。アリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜40の範囲である。好ましい具体例としてはフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン-ジイル基、フェナントレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基、ピレン--ジイル基が挙げられ、より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
正孔注入層を形成する方法は、抵抗加熱式または電子ビーム式の真空蒸着による方法、または各種溶媒により溶解あるいは高分子結着剤を用いて混合物を調整した後に基板上に塗布する方法が用いられる。中でも、素子特性および量産安定性の観点から真空蒸着による方法が好ましい。また上記蒸着安定性および合成の容易さの観点から一般式(1)の化合物は1≦m+m≦8であり、より好ましくは1≦m+m≦6であり、さらに好ましくは1≦m+m≦4である。
チオフェンの硫黄原子の隣接部位は化学反応性が高いため、通電時における素子の劣化の原因となりうる。そのため一般式(1)のRおよびRの少なくとも一方は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基で置換されていることが好ましい。さらに蒸着安定性の観点からアルキル基またはアリール基で置換されていることが好ましく、電気化学的安定性から特にアリール基で置換されていることが好ましい。RおよびRの少なくとも一方がこれらの置換基で置換されていれば、素子劣化の抑制効果を発現するが、より顕著な効果を発揮するにはRおよびRともにこれらの置換基で置換されているのがより好ましい。
本発明の正孔注入層は、一般式(1)で表される化合物一種のみに限る必要はなく、本発明の複数の化合物を混合して用いたり、その他の正孔注入材料の一種類以上を本発明の化合物と混合して用いてもよい。その他の正孔注入材料としては、例えば4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
さらに、本発明の正孔注入層は電子受容性ドーパント材料を本発明の化合物と混合して用いてもよい。ここで電子受容性ドーパント材料とは塩化鉄(III)や塩化アルミニウムのようなルイス酸化合物、酸化モリブデンまたは酸化バナジウムのような金属酸化物、テトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4−TCNQ)のようなキノン誘導体、5−スルホサリチル酸のようなスルホン酸化合物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)のようなアンモニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
上記正孔注入層と発光層とが直接接する構成の場合、用いる発光材料によっては一般式(1)で表される化合物と発光層の材料との間で相互作用が起こり、所望の発光が得られない場合がある。この時は、正孔注入層と発光層との間に、相互作用を防止するバッファ層を挿入することが効果的である。この場合バッファ層としては相互作用を防止するだけでなく、正孔注入層からの正孔を効率よく輸送できることが好ましいため、バッファ層に用いる材料としては、具体的には4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、オリゴフェニレン
誘導体などの正孔輸送材料として知られているものを好ましい例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、バッファ層についても正孔注入層同様、一種のみの化合物に限る必要はなく、複数の材料を組み合わせて用いてもよい。
次に本発明の一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
次に一般式(1)で表される化合物を得る方法の合成法について説明する。これらの化合物は遷移金属触媒存在の下、アリール金属反応剤とハロゲン化アリール誘導体とのカップリング反応により合成される。例えばパラジウム触媒存在下、アリールスズ反応剤とハロゲン化アリールをカップリングさせる方法[ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)(米国)、2006年、第128巻、第17号、5792−5801頁]、ニッケル触媒存在下、アリールグリニャール反応剤とハロゲン化アリールをカップリングさせる方法[特開2000−026451号公報]、パラジウム触媒と塩基存在下、アリールボロン酸とハロゲン化アリールを反応させる方法[特開2004−59457号公報]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明においては、発光層内での正孔および電子の再結合確率を高め、高効率発光が得られることから、電子輸送層を発光層と陰極間に設けることが好ましい。電子輸送層とは、陰極から注入された電子を発光層に移動させるために設ける層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質で構成されることが望ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0035】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、本発明の一般式(1)で表される化合物と組み合わせて用いることで、顕著な駆動電圧の低減効果および長寿命発光が得られることから、不対電子を有する電子受容性窒素を含む含窒素芳香環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0036】
本発明における電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環は、高い電子親和性を有し、電子輸送能に優れ、電子輸送層に用いることで発光素子の駆動電圧を低減できる。電子受容性窒素を含むヘテロアリール環は、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
【0037】
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス[6’−(2’,2”−ビピリジル)]−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス[4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル)]ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の点から好ましく用いられる。
【0038】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属と混合して用いることも可能である。電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、特に限定されないが、好ましくは5.8eV以上8.0eV以下であり、より好ましくは6.0eV以上7.5eV以下である。
【0039】
電子輸送層を形成する方法は、抵抗加熱式または電子ビーム式の真空蒸着による方法、電子輸送材料を各種溶媒により溶解あるいは高分子結着剤を用いて混合物を調整した後に基板上に塗布する方法が用いられるが、素子特性の観点から真空蒸着による方法がより好ましい。
【0040】
本発明の発光素子の有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmの間から選ばれる。発光層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの有機層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0041】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
【0042】
本発明の発光素子は、例えばマトリクスまたはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0043】
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0044】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0045】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例にある化合物の番号は上の化学式に記載した番号を指す。
【0047】
合成例1 化合物[6]の合成
一つの口にセプタムラバーを取り付けた300mlの三口フラスコをアルゴン雰囲気にし、これに2−フェニルチオフェン7.0gのテトラヒドロフラン50ml溶液を加え、攪拌しながらドライアイス/アセトン浴につけて冷却した。次に1.58mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液34mlをセプタムラバーを通じてシリンジにより滴下し、1.5時間攪拌した。続いて塩化トリブチルスズ17.3gをセプタムラバーを通じてシリンジにより滴下し、10分間攪拌したのちドライアイス/アセトン浴を除き、さらに1時間攪拌した。この反応液に1mol/lの塩酸100mlを注入し、酢酸エチル200mlで抽出した。有機層に100g/lのフッ化カリウム水溶液100mlを加えて攪拌し、析出した沈殿を濾過により除いたのち濾液から水層を除いた。この操作を沈殿の精製がなくなるまで繰り返した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで濃縮し、2−フェニル−5−(トリブチルスタニル)チオフェン17.6gを得た。
【0048】
次に2−フェニル−5−(トリブチルスタニル)チオフェン8.5g、2,5’−ビチオフェン2.6g、テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム92mgとトルエン70mlの混合溶液をアルゴン気流下110℃で14時間攪拌した。室温にまで冷却したのち、1mol/l塩酸100mlを加えて30分間攪拌した。生じた赤色固体を濾過し、大量の熱水、熱メタノール、熱アセトンで順に洗浄した。さらに赤色固体を1,2,4−トリクロロベンゼン400mlに加え200℃に加熱して溶かしたのち、熱時濾過して不純物を除いた。濾液を放冷すると赤色固体が再び析出するのでこれを濾過し、さらにアセトンで洗浄したのち、真空乾燥機中、60℃で1時間乾燥し、化合物[6] 2.5gを得た。この化合物を、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、280度で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0049】
合成例2 化合物[11]の合成
2−フェニル−5−(トリブチルスタニル)チオフェン8.5g、1,4−ジブロモベンゼン1.9g、テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム92mgとトルエン70mlの混合溶液をアルゴン気流下110℃で14時間攪拌した。室温にまで冷却したのち、1mol/l塩酸100mlを加えて30分間攪拌した。生じた黄緑色沈殿を濾過し、大量の熱水、熱メタノール、熱アセトンで順に洗浄した。さらに黄緑色固体を1,2,4−トリクロロベンゼン300mlに加え200℃に加熱して溶かしたのち、熱時濾過して不純物を除いた。濾液を放冷すると黄色固体が再び析出するのでこれを濾過し、さらにアセトンで洗浄したのち、真空乾燥機中、60℃で1時間乾燥し、化合物[11] 1.7gを得た。この化合物は実施例1と同様に昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。
【0050】
合成例3 化合物[14]の合成
2−フェニル−5−(トリブチルスタニル)チオフェン6.1g、1,3−ジブロモベンゼン1.6g、テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム162mgおよびトルエン25mlの混合溶液をアルゴン気流下110℃で10時間攪拌した。室温にまで冷却したのち、生じた黄色固体を濾取した。これにトルエン100mlを加えて溶解させたのちシリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶法により精製して化合物[14]2.1gを得た。
【0051】
合成例4 化合物[28]の合成
2−(トリブチルスズ)チオフェン12g、3−ブロモトルエン5.6g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム695mgおよびのトルエン120mlの混合溶液をアルゴン気流下110℃で10時間攪拌した。室温にまで冷却したのち水100mlを加えて撹拌し、分液ロートに移して水層を除いた。続いて濾液の有機層を飽和食塩水で洗浄したのち、乾燥、濃縮した。この粗精製物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=20/1)で精製したのち、トルエンで再結晶を行い2−(3−メチルフェニル)チオフェン5.4gを得た。
【0052】
次に2−(3−メチルフェニル)チオフェン5.4gとテトラヒドロフラン50mlをアルゴン封入した反応溶液に入れ、アセトン/ドライアイス浴で−70℃以下に冷却し撹拌した。続いてn−ブチルリチウム(1.6mol/L ヘキサン溶液, 24ml)を滴下したのち、2時間かけて−20℃に昇温した。これにトリメトキシボラン3.9gを加え、室温で一昼夜撹拌した。ヘキサン30mlを加えた後、沈殿を濾取し、これをヘキサン/ジエチルエーテル(60ml/10ml)混合溶媒で洗浄後、真空乾燥し、5−(3−メチルフェニル)チオフェン−2−ボロン酸1.7gを得た。
【0053】
続いて、5−(3−メチルフェニル)チオフェン−2−ボロン酸1.6g、1,4−ジブロモベンゼン788mg、トルエン80mlおよびエタノール20mlを反応容器にいれ、これに1.5mol/L炭酸カリウム水溶液10mlとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム381mgを加え、80℃の油浴上で24時間加熱撹拌した。放冷後、沈殿を濾取し、トルエン、ジクロロメタン、酢酸エチル、ヘキサンの順で洗浄したのち、真空乾燥し、化合物[28]980mgを得た。
【0054】
合成例5 化合物[29]の合成
4−tert−ブチルフェニルボロン酸10g、2−ブロモチオフェン9.1g、炭酸カリウム16g、トルエン100ml、エタノール20mlおよび水20mlを反応容器にいれ、これにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 1.2gを加え80℃の油浴上で一昼夜加熱撹拌した。放冷後、水100mlを加えて撹拌し、分液ロートに移して酢酸エチルで抽出を行った。有機層を集めて飽和食塩水で洗浄し、乾燥、濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン100%)で精製し2−(4−tert−ブチルフェニル)チオフェン11gを得た。
【0055】
次に2−(3−メチルフェニル)チオフェンの代わりに2−(4−tert−ブチルフェニル)チオフェンを用いた以外は合成例4と同様にして5−(4−tert−ブチルフェニル)チオフェン−2−ボロン酸7.1gを得た。
【0056】
続いて5−(4−tert−ブチルフェニル)チオフェン−2−ボロン酸2.5g、1,4−ジブロモベンゼン0.94g、トルエン80mlおよびエタノール20mlを反応容器にいれ、これに1.5mol/L炭酸カリウム水溶液12mlとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム455mgを加え、80℃の油浴上で24時間加熱撹拌した。放冷後沈殿を濾取し、これをキシレン200mlに溶解させたのちシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物[29]1.4gを得た。
【0057】
実施例1
正孔注入層に化合物[6]を使った発光素子を次のように作製した。38mm×46mmの無アルカリガラス基板(コーニング(株)製、#1737)上にITO導電膜(スパッタ品)を、ガラス基板中央部分に38mm×13mm、膜厚150nm(11Ω/□)に形成し陽極とした。陽極が形成された基板をアセトン、“セミコクリン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールで15分間超音波洗浄してから熱メタノールに15分間浸漬させて乾燥させた。素子を作製する直前にこの基板を1時間UV−オゾン処理し、さらに真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として化合物[6]を50nmの厚さに成膜した。次にバッファ層として4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下NPD)を10nm積層した。その上に発光層を以下の通りに形成した。ホスト材料としてトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)を、発光性ドーパントとして4−(ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(以下DCJTB)をドープ濃度が2重量%になるように40nmの厚さに積層した。次に電子輸送層として下記に示すE−1を35nmの厚さに積層した。以上のようにして形成した有機層上に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウム100nmを蒸着して陰極とし、5×5mm角の発光素子を作製した。ここで示した膜厚は水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率3.3lm/Wの赤色発光が得られた。またこの発光素子を10mA/cmで直流駆動した時の輝度半減時間は10000時間であった。
【0058】
【化5】

【0059】
実施例2〜3
正孔注入材料として化合物[11]および[29]を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、評価した。各実施例の結果は表1に示した。
【0060】
比較例1
正孔注入層としてm−MTDATAを用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果は表1に示した。
【0061】
比較例2
正孔注入層としてα−セキシチオフェンを用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果は表1に示した。
【0062】
実施例4
電子輸送層として下記の化合物E−2を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率3.2lm/Wの赤色発光が得られた。またこの発光素子を10mA/cmで直流駆動した時の輝度半減時間は9000時間であった。
【0063】
【化6】

【0064】
実施例5〜7
電子輸送層として下記の化合物E−3〜E−5を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製、評価した。各実施例の結果は表1に示した。
【0065】
【化7】

【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に少なくとも正孔注入層および発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔注入層が一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子。
【化1】

(R1〜Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基の中から選ばれる。但し、RおよびRのうち少なくとも一方は水素ではない。Xは単結合、アリーレン基の中から選ばれる。mおよびmは0以上の整数であり、1≦m+m≦8である。)
【請求項2】
1およびRのうち少なくとも一方がアルキル基またはアリール基であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
発光層と陰極の間に少なくとも電子輸送層が存在し、電子輸送層が不対電子を有する含窒素芳香族化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載の発光素子。

【公開番号】特開2008−306170(P2008−306170A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113592(P2008−113592)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】