説明

発光素子

【課題】本発明の目的は、発光特性に優れ、かつ耐久性の高い発光素子、特に青色発光素子及び多色発光素子を提供することである。更には、該素子に使用する電子輸送材料及び/又はホスト材料を提供することである。
【解決手段】一対の電極間に発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する発光素子において、特定構造のアリ−ル基又は芳香族ヘテロ環基含有芳香族化合物を少なくとも1種該発光層又は該有機化合物層に含有する発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気エネルギーを光に変換して発光する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発に行われており、中でも有機電界発光(EL)素子は低電圧で高輝度の発光が可能であるため注目されている。発光特性に優れ、かつ耐久性の高い発光素子が望まれている。例えば、特許文献1には、一対の電極間に発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する発光素子において、特定の構造を有する芳香族化合物を用いるとともに三重項励起状態からの発光を利用した発光素子が開示されている。特許文献2には、発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する発光素子において、特定の構造を有する芳香族化合物を少なくとも1種含む発光素子が開示されている。更に発光特性に優れ、かつ耐久性の高い発光素子、特に青色発光素子及び多色発光素子に適用できる材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−27048号公報
【特許文献2】国際公開第03/007658号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発光特性に優れ、かつ耐久性の高い発光素子、特に青色発光素子及び多色発光素子を提供することである。更には、該素子に使用する電子輸送材料及び/又はホスト材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、特定の構造を有する芳香族化合物を用いた発光素子は発光特性及び耐久性に優れていることを発見し、本発明に到達した。
前記課題は下記の手段によって解決された。
【0006】
(1) 一対の電極間に発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する発光素子において、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種該発光層又は該有機化合物層に含有することを特徴とする発光素子。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表し、これらの基は下記に示す(ii)〜(iv)のいずれかの条件を満たす。
(ii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも2種が異なるアリール基である場合、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の少なくとも一つのアリール基はハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基を少なくとも一つ有する。この条件では、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基のみからなる場合が好ましい。
(iii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素5員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つはアリール基又は縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である。
(iv)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれ含窒素6員芳香族ヘテロ環基又はアリール基を表し、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つは置換基を有するアリール基である。
【0009】
(2) 前記条件(ii)を満足する前記一般式(1)で表される化合物におけるハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基がシアノ基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、スルホニル基のいずれかである(1)に記載の発光素子。
【0010】
(3) (1)又は(2)に記載の発光素子において、遷移金属錯体を前記発光層又は前記有機化合物層に含有することを特徴とする発光素子。
なお、本発明は上記(1)〜(3)に関するものであるが、参考のためその他の事項についても記載した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発光素子は電荷輸送の効率が高く、また発光材料に生成した励起状態のエネルギーロスを少なくできるため、外部量子効率が高く発光特性に優れており、色純度の高い青色発光素子や白色発光素子に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発光素子は一対の電極間に発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有し、前記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む。有機化合物層は有機化合物を含む層であり、有機層と称してもよい。発光素子は好ましくは、有機電界発光素子である。本発明の発光素子は三重項励起状態からの発光を利用した素子であることが特に好ましいが、一重項励起状態からの発光を利用した素子に適宜用いることが可能である。
【0013】
ここで、一般式(1)で表される化合物について詳しく述べる。
一般式(1)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。
アリール基は好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基である。
アリール基の例としてはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ベンゾアンスリル基、ベンゾフェナンスリル基等が挙げられる。中でもフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びフェナンスリル基が好ましく、フェニル基及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
芳香族ヘテロ環基は好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5若しくは6員の芳香族ヘテロ環基である。
芳香族ヘテロ環基の例としてはピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、アクリジル基、フェナントリジル基、フタラジル基、フェナンスロリル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、オキサゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等が挙げられる。中でもピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、及びベンゾチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、イミダゾリル基及びベンゾチアゾリル基が特に好ましい。
これらアリール基又は芳香族ヘテロ環基はこれらが互いに縮環した基であっても良く、イミダゾピリジル基、イミダゾピリミジル基などが好ましい例として挙げられる。
【0014】
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16は置換基を有していてもよい。該置換基の例としては好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
【0015】
アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5若しくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0016】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0017】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアミノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0018】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、 アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイルベンゾイル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリル)を表わす。
【0019】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0020】
一般式(1)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表すが、これらの基は下記に示す(i)〜(iv)のいずれかの条件を満たす。
(i)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16が同一のアリール基である場合、これらアリール基はフルオロアルキル基、フッ素原子、スルホニル基、シリル基から選ばれる置換基を少なくとも一つ有する。前記フルオロアルキル基としては、CF3、C25、CH(CF32、CF2CF2H等が挙げられる。前記スルホニル基としては、前記Ar11等で記載のアルキル及びアリールスルホニル基が挙げられる。前記シリル基としては、前記Ar11等で記載のシリル基が挙げられる。
(ii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも2種が異なるアリール基である場合、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の少なくとも一つのアリール基はハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基を少なくとも一つ有する。この条件では、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基のみからなる場合が好ましい。ここで、ハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基はいずれの位置に置換されてもよく、また複数置換している場合、それら置換基は同一であっても、異なっていてもよい。
ハメットのシグマパラ(σp)値が0.05以上の置換基の例も前記したものから適宜選択することができる。
ハメットの置換基定数σp値が0.05以上のものとして、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基が好ましく、フルオロアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基が更に好ましい。
ここで、ハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange's Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。また、本発明で用いる化合物の中には、ベンゼン誘導体ではない物も含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明において、σp値をこのような意味で使用する。
(iii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素5員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つはアリール基又は縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である。前記アリール基は置換を有していてもよい。
前記含窒素5員芳香族ヘテロ環基(好ましくは5員の置換若しくは無置換の、芳香族ヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−1,2,4−チアジアゾリル、2−1,3,4−オキサジアゾリルが挙げられる。
前記含窒素6員芳香族ヘテロ環基(好ましくは6員の置換若しくは無置換の、芳香族ヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、例えば、2−ピリジル、2−キノリル、2−ピラジニル、2−1,3,5−トリアジニル、2−イミダゾピリジルが挙げられる。
また、これら含窒素5員及び/又は6員芳香族ヘテロ環が互いに縮環した基も好ましい例として挙げられる。
(iv)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれ含窒素6員芳香族ヘテロ環基又はアリール基を表し、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つは置換基を有するアリール基である。
【0021】
一般式(1)で表される化合物は低分子化合物であるのが好ましいが、オリゴマー化合物又はポリマー化合物であってもよい。ポリマー化合物である場合、その質量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、特に好ましくは3000〜100000であり、一般式(1)で表される構造がポリマー主鎖中に含まれてもよく、ポリマー側鎖に含まれていてもよい。このようなポリマー化合物はホモポリマーであっても共重合体であってもよい。
【0022】
一般式(1)で表される化合物のT1レベル(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)はいずれの値を有していても良いが、特に青色発光素子の電子輸送層及び/又は発光層に用いる場合は60〜90kcal/mol(251.4〜377.1kJ/mol)が好ましく、62〜85kcal/mol(259.78〜356.15kJ/mol)がより好ましく、65〜80kcal/mol(272.35〜335.2kJ/mol)が特に好ましい。
【0023】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
一般式(1)で表される化合物は、例えばTetrahedron誌, 1997年, 53号(No. 45),15349頁、J.Am. Chem. Soc.誌, 1996年, 118号, 741頁、J.Am. Chem. Soc.誌, 1998年, 120号, 6834頁、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.誌, 1997年, 36号, 631頁、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.誌, 1999年, 38号, 3483頁、J. Organomet.Chem.誌, 1971年, 26号, 407頁、Org. Synth.Coll. Vol. 5誌, 1973年, 604頁、Chem. Ber.誌, 1960年, 93号, 1769頁、Bull. Soc. Chim.Belg.誌, 1998年,97号, 115頁等に記載の公知の手法を参考にして合成することができる。
【0033】
本発明の発光素子は発光材料の励起状態はいずれの励起状態からの発光も利用可能であるが三重項励起状態からの発光を利用した素子であることが特に好ましい。ここで、三重項励起状態からの発光はりん光発光と同義である。以下、りん光を発する材料を「りん光発光材料」と称する。本発明の発光素子がりん光発光材料である場合、少なくとも1種のりん光発光材料を含む。このとき、本発明で用いるりん光発光材料は特に限定されないが、遷移金属錯体が好ましい。遷移金属錯体の中心金属は特に限定されず、好ましくはイリジウム、白金、レニウム又はルテニウムであり、より好ましくはイリジウム又は白金であり、特に好ましくはイリジウムである。遷移金属錯体の中でも、オルトメタル化錯体が非常に好ましく使用できる。オルトメタル化錯体(Orthometalated Complex)とは、山本明夫著「有機金属化学基礎と応用」, 150頁及び232頁, 裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」, 71〜77頁及び135〜146頁, Springer-Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。
【0034】
上記りん光発光材料は、20℃でのりん光量子収率が70%以上であるのが好ましく、更には20℃でのりん光量子収率が80%以上であるのが好ましく、20℃でのりん光量子収率が85%以上であることが特に好ましい。
また、りん光λmax(発光極大値)はいずれの波長領域の発光素子にも適用可能であるが、特に技術的に困難とされるている495nm以下の波長領域であるのが好ましく、更にはりん光λmaxが480nm以下であるのが特に好ましい。
【0035】
本発明の発光素子のシステム、駆動方法、利用形態等は特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物を電荷輸送材料として利用する形態、及び一般式(1)で表される化合物とりん光発光材料を同一層に用いる形態が好ましい。一般式(1)で表される化合物とりん光発光材料を同一層に使用する場合、一般式(1)で表される化合物は主としてホスト材料として機能する。代表的な発光素子として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を挙げることができる。
【0036】
本発明の発光素子は、一対の電極(陽極及び陰極)間に、発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する。この発光層又は複数の有機化合物層のうち少なくとも一層は一般式(1)で表される化合物を含有する。一般式(1)で表される化合物を含有する層における該化合物の質量比は、例えば一般式(1)で表される化合物をホスト材料として使用する場合、好ましくは50〜99.9質量%であり、より好ましくは60〜99質量%である。電荷輸送材料として使用する場合には、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは60〜100質量%である。
【0037】
一般式(1)で表される化合物を含有する層の形成方法は特に限定されず、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、印刷法等の方法が使用可能である。中でも、素子の特性及び製造面から抵抗加熱蒸着法、コーティング法及び転写法が好ましい。
【0038】
本発明の発光素子は、発光層に加えて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層等を含んでいてよく、これらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。
一般式(1)で表される化合物これらの層のいずれに含まれていてもよい。
【0039】
本発明の発光素子においては、陰極と発光層の間に5.9eV以上のイオン化ポテンシャルを有する化合物を含有する層を設置するのが好ましい。このイオン化ポテンシャルは6.0eV以上であるのが特に好ましく、このような層は電子輸送層であることが特に好ましい。
【0040】
本発明の発光素子の発光極大波長は、青色色純度の観点から好ましくは390〜495nmであり、より好ましくは400〜490nmである。また、本発明の発光素子は500nm以上にも発光極大波長を有してよく、白色発光素子であってもよい。青色色純度の観点から、発光のCIE色度値のx値は好ましくは0.22以下、より好ましくは0.20以下であり、発光のCIE色度値のy値は好ましくは0.53以下、より好ましくは0.50以下である。また、青色色純度の観点から発光スペクトルの半値幅は好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、更に好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下である。以下、本発明の発光素子の各層について詳述する。
【0041】
(A)陽極
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給するものである。陽極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料を用いる。具体例としては、金属(金、銀、クロム、ニッケル等)、導電性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等)、これら金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等)及びこれらとITOとの積層物等が挙げられる。陽極は導電性金属酸化物からなるのが好ましく、生産性、高導電性、透明性等の観点からITOが特に好ましい。
【0042】
陽極の形成法は用いる材料に応じて適宜選択すればよく、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル=ゲル法等)、酸化インジウムスズ分散物の塗布等の方法を用いることができる。陽極に洗浄等の処理を施すことにより、発光素子の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めたりすることも可能である。例えばITOからなる陽極の場合、UV-オゾン処理、プラズマ処理等が効果的である。陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とするのが好ましい。陽極の膜厚は材料に応じて適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmとするのが好ましく、50nm〜1μmとするのがより好ましく、100〜500nmとするのが特に好ましい。
【0043】
陽極は通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂等からなる基板上に形成する。ガラス基板の場合、ガラスからの溶出イオンを低減するためには無アルカリガラスを用いるのが好ましい。ソーダライムガラス基板を用いる場合は、予めその表面にシリカ等のバリアコートを形成するのが好ましい。基板の厚さは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラス基板の場合は通常0.2mm以上、好ましくは0.7mm以上とする。
【0044】
(B)陰極
陰極は電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。陰極の材料としては、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、発光層等の隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択すればよい。
具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K等)及びそのフッ化物や酸化物、アルカリ土類金属(Mg、Ca等)及びそのフッ化物や酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム及びカリウムからなる合金及び混合金属、リチウム及びアルミニウムからなる合金及び混合金属、マグネシウム及び銀からなる合金及び混合金属、希土類金属(インジウム、イッテリビウム等)、それらの混合物等が挙げられる。陰極は仕事関数が4eV以下の材料からなるのが好ましく、アルミニウム、リチウムとアルミニウムからなる合金又は混合金属、あるいはマグネシウムと銀からなる合金又は混合金属からなるのがより好ましい。
【0045】
陰極は、上記のような材料からなる単層構造であっても、上記材料からなる層を含む積層構造であってもよい。例えば、アルミニウム/フッ化リチウム、アルミニウム/酸化リチウム等の積層構造が好ましい。陰極は電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法等により形成することができる。蒸着法の場合、材料を単独で蒸着することも、二種以上の材料を同時に蒸着することもできる。合金電極を形成する場合は、複数の金属を同時蒸着して形成することが可能であり、また予め調整した合金を蒸着してもよい。陰極のシート抵抗は数百Ω/□以下とするのが好ましい。陰極の膜厚は材料に応じて適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmとするのが好ましく、50nm〜1μmとするのがより好ましく、100nm〜1μmとするのが特に好ましい。
【0046】
(C)正孔注入層及び正孔輸送層
正孔注入層及び正孔輸送層に用いる材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマーやポリチオフェン等の導電性高分子、有機シラン、上記一般式(1)で表される化合物、これらの誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0047】
正孔注入層及び正孔輸送層は1種又は2種以上の上記材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。正孔注入層及び正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法、LB法、上記材料を溶媒中に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法等)、インクジェット法、印刷法、転写法等が用いられる。コーティング法の場合、上記材料を樹脂成分と共に溶解又は分散させて塗布液を調製してもよく、該樹脂成分としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N-ビニルカル
バゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が使用できる。正孔注入層及び正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、通常1nm〜5μmとするのが好ましく、5nm〜1μmとするのがより好ましく、10〜500nmとするのが特に好ましい。
【0048】
(D)発光層
発光素子に電界を印加すると、発光層において陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から注入された正孔と、陰極、電子注入層又は電子輸送層から注入された電子とが再結合し、光を発する。発光層をなす材料は、電界印加時に陽極等から正孔を受け取る機能、陰極等から電子を受け取る機能、電荷を移動させる機能、及び正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであれば特に限定されない。発光層の材料としては例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ペリレン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、金属錯体(8-キノリノール誘導体の金属錯体等)、高分子発光材料(ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等)、有機シラン、遷移金属錯体(イリジウムトリスフェニルピリジン錯体、白金ポルフィリン錯体等)、これらの誘導体等が使用できる。ただし、発光層をなす材料の少なくとも1つは、りん光発光材料である。
【0049】
発光層は単一の材料で形成しても複数の材料で形成してもよい。発光層は1つであっても複数であってもよい。発光層が複数の場合も、それぞれの発光層は単一の材料で形成しても複数の材料で形成してもよい。また、複数の発光層がそれぞれ異なる発光色で発光し白色等を発してもよく、単一の発光層が白色発光してもよい。
【0050】
発光層の形成方法は特に限定されず、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法等)、インクジェット法、印刷法、LB法、転写法等が使用可能である。中でも抵抗加熱蒸着法及びコーティング法が好ましい。発光層の膜厚は特に限定されず、通常1nm〜5μmとするのが好ましく、5nm〜1μmとするのがより好ましく、10〜500nmとするのが特に好ましい。
【0051】
(E)電子注入層及び電子輸送層
電子注入層及び電子輸送層をなす材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、並びに陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、金属錯体(8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体等)、有機シラン、上記一般式(1)で表される化合物、これらの誘導体等が挙げられる。
【0052】
電子注入層及び電子輸送層は1種又は2種以上の上記材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。電子注入層及び電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法、LB法、上記材料を溶媒中に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法等)、インクジェット法、印刷法、転写法等が用いられる。コーティング法の場合、上記材料を樹脂成分と共に溶解又は分散させて塗布液を調製してもよい。該樹脂成分としては、前述した正孔注入層及び正孔輸送層の場合と同様のものが使用できる。電子注入層及び電子輸送層の膜厚は特に限定されず、通常1nm〜5μmとするのが好ましく、5nm〜1μmとするのがより好ましく、10〜500nmとするのが特に好ましい。
【0053】
(F)保護層
保護層は水分、酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有する。保護層の材料としては、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF3、CaF2等)、窒化物(SiNx、SiOxNy等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が使用できる。
【0054】
保護層の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法等が適用できる。
【0055】
[合成例]
[合成例1]
合成例1 化合物 (1-1)の合成
具体的化合物(1-1)を下記スキームに従って合成した。
【0056】
【化10】

【0057】
3.4gのパラトリフルオロエチニルベンゼン及び5.98gのパラトリフルオロメチルヨードベンゼンをアセトニトリル50mlに溶解させ、ここに塩化パラジウム84mg、沃化銅30mg、トリフェニルフォスフィン157mg、ピペリジン7.91mlを加え、40℃で2時間撹拌した。反応後、反応液を室温に冷却し、析出した固体をろ別し、アセトニトリル30mlにて洗浄した。こうして中間体(A)を白色固体として得た(4.53g、収率72.1%)。
得られた中間体(A)3.14gをジオキサン50mlに溶解し、ここにコバルトカルボニル錯体50mgを投入、3時間加熱還流させた。反応後、反応液を室温に冷却し、析出した固体をろ別し、ジオキサン30mlにて洗浄した。こうして具体的化合物例(1-1)を白色固体として得た(1.68g、収率53.5%)。
具体的化合物(1-1)はマススペクトルの測定、及び1H-NMRの測定によりその構造を確認した。1H-NMR:in CDCl3 δ(ppm) 6.92 (d , 12H) , 7.19 (d , 12H)
【0058】
[合成例2]
合成例2 化合物 (3-3)の合成
具体的化合物(3-3)を下記スキームに従って合成した。
【0059】
【化11】

【0060】
フェニルアセチレンカルボン酸7.32gをアセトニトリル40ml、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)0.1mlに溶解させ、ここに室温下で塩化オキサリル6.4mlを25分かけて滴下した。滴下後更に1時間攪拌した後この反応液を、化合物(B)9.96g、重曹16.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.1gの酢酸エチル150ml、水150mlの混合溶媒に15分かけて滴下した。滴下後更に30分反応させた後、有機層を抽出操作により取り出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を留去させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフに付し、ヘキサン/酢酸エチル=3/1溶出分より中間体(C)を白色固体として得た(10.56g、収率64.5%)。
得られた中間体(C)8.18g及びパラトルエンスルホン酸・一水和物0.2gをキシレン50ml中で5時間加熱還流した。反応後、室温まで冷却した後、反応液をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフに付し、ヘキサン/酢酸エチル=2/1溶出分より中間体(D)を油状物として得た(3.21g、収率41.4%)。
こうして得られた中間体(D)1.84g及びテトラフェニルシクロペンタジエノン3.44gをジフェニルエーテル15mlに溶解させ、230℃にて2時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、酢酸エチル70mlを注いだ。析出した結晶をろ別し、酢酸エチル30mlにて洗浄した。更にクロロホルム/酢酸エチル=1/4混合液で再結晶させ、具体的化合物(3-3)を白色固体として得た(2.59g、収率65.3%)。
具体的化合物(3-3)はマススペクトルの測定、及び1H-NMRの測定によりその構造を確認した。1H-NMR:in CDCl3 δ(ppm) 0.96 (s , 3H) , 6.50-7.45 (m , 30H) , 7.91 (d , 1H) , 8.18 (d , 1H)
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
[実施例1]
【0062】
[比較例1]
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、TPD(N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)-ベンジジン)を40nm蒸着し、この上に下記化合物a及びbを17対1の質量比で20nm共蒸着し、更にこの上に下記アゾール化合物cを40nm蒸着した。得られた有機薄膜上に発光面積が4mm×5mmとなるようにパターニングしたマスクを設置し、蒸着装置内でマグネシウム及び銀(マグネシウム:銀=10:1)を50nm共蒸着した後、銀を50nm蒸着して比較例1の発光素子を作製した。
【0063】
【化12】

【0064】
得られた比較例1の発光素子に、東陽テクニカ製「ソースメジャーユニット2400型」を用いて直流定電圧を印加して発光させ、その発光輝度をトプコン社製「輝度計BM-8」を用いて測定し、発光波長を浜松フォトニクス社製「スペクトルアナライザーPMA-11」を用いて測定した。その結果、色度値(0.21,0.53)の青色発光が得られ、外部量子効率は1.2%であった。なお、外部量子効率は発光輝度、発光スペクトル、電流密度及び比視感度曲線より算出した。
【0065】
[比較例2]
化合物bに替えて下記化合物dを用いたこと以外は上記比較例1と同様にして、比較例2の発光素子を作製した。比較例2の発光素子の発光輝度及び発光波長を比較例1と同様に測定した結果、色度値(0.18,0.38)の青色発光が得られ、外部量子効率は0.3%であった。
【0066】
【化13】

【0067】
[本発明3〜7]
化合物aに替えて本発明の化合物(1-1)、(1-3)、(3-3)、(4-2)、(4-7)を用いたこと以外は上記比較例1と同様にして、本発明3〜7の発光素子を作製した。本発明3〜7の発光素子の発光輝度及び発光波長を比較例1と同様に測定した結果をまとめて表1に示した。なお、化合物(1-1)、(1-3)を用いた発光素子は参考例である。
【0068】
【表1】

【0069】
[本発明8〜12]
化合物aに替えて本発明の化合物(1-1)、(1-3)、(2-11)、(3-3)、(4-2)を用いたこと以外は上記比較例2と同様にして、本発明8〜12の発光素子を作製した。本発明8〜12の発光素子の発光輝度及び発光波長を比較例2と同様に測定した結果をまとめて表2に示した。なお、化合物(1-1)、(1-3)を用いた発光素子は参考例である。
【0070】
【表2】

【0071】
[本発明13〜22]
比較例2において、化合物dに替えて化合物fを使用した発光素子を比較例3とし、更に比較例3の化合物cに替えて本発明の化合物(1-1)、(1-3)、(1-4)、(2-1)、(2-11)、(3-3)、(3-10)、(3-13)、(4-2)、(4-7)を用いたこと以外は前記比較例3と同様にして、本発明13〜22の発光素子を作製した。本発明13〜22の発光素子の発光輝度を比較例3と同様に測定した結果をまとめて表3に示した。なお、化合物(1-1)、(1-3)、(1-4)を用いた発光素子は参考例である。
【0072】
【化14】

【0073】
【表3】

[実施例2]
【0074】
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、TPDを40nm蒸着し、この上に本発明の化合物(2-3)及び下記化合物gを17対1の質量比で5nm共蒸着し、この上に本発明の化合物(1-1)及び化合物bを17対1の質量比で15nm共蒸着し、さらこの上に本発明の化合物(3-13)を40nm蒸着した。得られた有機薄膜上に発光面積が4mm×5mmとなるようにパターニングしたマスクを設置し、蒸着装置内でフッ化リチウムを3nm蒸着した後、アルミニウムを60nm蒸着して本発明23の発光素子を作製した。本発明23の発光素子の発光輝度及び発光波長を比較例1と同様に測定した結果、色度値(0.32,0.33)の白色発光が得られ、この発光素子の外部量子効率を算出したところ、φEL=4.2%であった。
【0075】
【化15】

[実施例3]
【0076】
Baytron P(PEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)溶液、バイエル社製)を洗浄したITO基板上にスピンコート(1000rpm、30sec)し、150℃で1.5時間、真空乾燥して膜厚70nmの有機層を得た。次に、18mgの本発明の化合物(1−3)及び2mgの化合物bを1.5mlのジクロロエタンに溶解し、これを上記有機層の上にスピンコートして110nmの有機薄膜を得た。これを蒸着装置に入れ有機薄膜上に本発明の化合物(3−13)を40nm真空蒸着した後、発光面積が4mm×5mmとなるようにパターニングしたマスクを設置し、蒸着装置内でフッ化リチウムを3nm蒸着した後、アルミニウムを60nm蒸着して本発明24の発光素子を作製した。本発明24の発光素子の発光輝度及び発光波長を比較例1と同様に測定した結果、青色発光が得られ、最高輝度は1200cd/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の発光素子は外部量子効率が高く発光特性に優れており、色純度の高い青色発光素子や白色発光素子に適用できるため、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層を有する発光素子において、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種該発光層又は該有機化合物層に含有することを特徴とする発光素子。
【化1】

一般式(1)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれアリール基又は芳香族ヘテロ環基を表し、これらの基は下記に示す(ii)〜(iv)のいずれかの条件を満たす。
(ii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも2種が異なるアリール基である場合、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の少なくとも一つのアリール基はハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基を少なくとも一つ有する。
(iii)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素5員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つはアリール基又は縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である。
(iv)Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16はそれぞれ含窒素6員芳香族ヘテロ環基又はアリール基を表し、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内、少なくとも一つが縮環構造を有していても良い含窒素6員芳香族ヘテロ環基である時、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16の内少なくとも一つは置換基を有するアリール基である。
【請求項2】
前記条件(ii)を満足する前記一般式(1)で表される化合物におけるハメットのシグマパラ値が0.05以上の置換基がシアノ基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、スルホニル基のいずれかである請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光素子において、遷移金属錯体を前記発光層又は前記有機化合物層に含有することを特徴とする発光素子。

【公開番号】特開2010−219544(P2010−219544A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107527(P2010−107527)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2004−324095(P2004−324095)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】