説明

発光表示パネル

【課題】 発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを良好な画質の下に表示するものを得易い発光表示パネルを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する透明基材1上に、発光領域及び非発光領域の両方に亘るようにして透明電極3を形成し、この透明電極のうちの非発光領域に対応する領域上に少なくとも1つの補助電極5a、5bを形成すると共に、透明電極のうちの非発光領域に対応する領域上に補助電極を覆うようにして電気絶縁層7a、7c、7dを形成し、さらに、少なくとも透明電極のうちの発光領域に対応する領域上に有機発光部9を形成し、この有機発光部上に背面電極11を形成することによって、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号、模様、又は静止画を表示する発光表示パネルに関し、更に詳しくは、電飾パネル等として利用することができる発光表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の1つとして知られる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する。)は、今日、可撓性の高いフラットパネルディスプレイの画素として、あるいはペーパーライクな面光源として、その実用化が進められている。また、例えば特許文献1に記載されているように、大面積の有機EL素子内に所定のパターンで非発光領域を形成し、この有機EL素子に通電したときに生じる発光領域と非発光領域との組合せによって、広告や宣伝のための文字、図形、記号等を表示するペーパーライクな発光表示パネルも開発されている。
【0003】
有機EL素子は、透明電極、有機発光部、及び背面電極がこの順番で基材上に順次積層された構成を基本的な層構成とする発光素子であり、透明電極及び背面電極のうちでエレクトロルミネセンス光を取り出そうとする側の電極は、透明電極材料によって形成される。
【0004】
ペーパーライクな有機EL素子を得るにあたっては、通常、上記の基材として透明樹脂フィルムが用いられる。しかしながら、透明電極の導電性は比較的低く、特に大面積の有機EL素子では透明電極への印加電圧が高くなり易い。そして、透明電極に高電圧を印可すると、通電に伴う発熱によって有機発光部が劣化したり、基材である透明樹脂フィルムが変形したり、透明樹脂フィルムが燃え出したりすることがある。
【0005】
このような不具合を防止するために、例えば特許文献2に記載された発光素子では、透明電極上に複数の金属バスライン電極を所定の間隔で設けることによって発光時の発熱等を抑えている。
【特許文献1】特開2004−111158号公報(特許請求の範囲、第0006〜0008段、図4、及び図5参照。)
【特許文献2】特開2003−133080号公報(特許請求の範囲及び図2参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されている発光素子のように、透明電極上に複数の金属バスライン電極を設けることは、有機EL素子の発光時の発熱を抑えるうえで有用である。しかしながら、金属バスライン電極の光反射率は比較的高い。
【0007】
このため、例えば特許文献2に記載されている発光素子におけるように、発光領域内にも金属バスライン電極を設けると、当該金属バスライン電極で反射した外光が視認され易くなる。金属バスライン電極による外光の反射は、例えば特許文献1に記載されている発光表示パネルのように広告や宣伝等のための文字、図形、記号等を表示する発光表示パネルにおいては画質の低下、ひいては訴求効果の低下につながるため、できるだけ抑制することが望まれる。
【0008】
勿論、金属バスライン電極の線幅を狭くすれば、当該金属バスライン電極で反射した外光が視認されるのを抑制することが可能になるが、金属バスライン電極の線幅を狭くすればするほど当該金属バスライン電極の電気抵抗が高くなるので、有機EL素子の発光時の発熱を抑え難くなる。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを良好な画質の下に表示するものを得易い発光表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する本発明の発光表示パネルは、発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを表示する発光表示パネルであって、可撓性を有する透明基材と、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘って前記透明基材上に形成された透明電極と、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に形成された少なくとも1つの補助電極と、前記透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に形成された電気絶縁層と、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に形成された有機発光部と、該有機発光部上に形成された背面電極とを有すると共に、前記補助電極が前記電気絶縁層によって覆われていることを特徴とする(以下、この発光表示パネルを「発光表示パネルI」ということがある。)。
【0011】
ここで、本発明でいう「発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを表示する」とは、宣伝、電飾、装飾等のための文字、図形、記号、模様、静止画等を、目視可能な大きさを有する1又は複数の発光領域と、当該発光領域に隣接する1又は複数の非発光領域(大きさは、目視可能な大きさであっても目視不能な大きさであってもよい。)との組合せにより表示することを意味する。
【0012】
本発明の発光表示パネルIでは、透明電極、有機発光部、及び背面電極によって有機EL素子を構成することができ、かつ、透明基材が可撓性を有しているので、有機EL素子を利用した可撓性の高い表示パネルを得ることが容易である。また、透明電極上に少なくとも1つの補助電極が形成されているので、透明電極の材料よりも導電性の高い金属又は合金によって所望形状の補助電極を形成することにより、当該補助電極と透明電極とを併せた電極全体の導電性を高めることができ、結果として、有機EL素子の発光時の発熱を抑えることができる。そして、発光領域内には補助電極が分布していないので、補助電極での外光の反射に起因する画質の低下を容易に抑制することができる。
【0013】
したがって、発光表示パネルIによれば、発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを良好な画質の下に表示するものを得ることが容易になる。
【0014】
本発明の発光表示パネルIにおいては、(1)前記透明基材と前記透明電極との間にガスバリアー層が介在している(以下、この発光表示パネルを「発光表示パネルII」ということがある。)こと、が好ましい。
【0015】
この発光表示パネルIIによれば、酸素や水分が透明基材を透過して有機発光部に侵入することが抑制されるので、有機発光部の劣化が抑制され、結果として、寿命の長いものを得易くなる。
【0016】
本発明の発光表示パネルI及び発光表示パネルIIのいずれにおいても、(2)前記背面電極の露出面及び前記有機発光部の露出面を覆う封止層を有する(以下、この発光表示パネルを「発光表示パネルIII」 ということがある。)こと、が好ましい。
【0017】
この発光表示パネルIII によれば、酸素や水分が背面電極を透過して有機発光部に侵入すること、及び、酸素や水分が有機発光部の側面から当該有機発光部に侵入することが抑制されるので、有機発光部の劣化が抑制され、結果として、寿命の長いものを得易くなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンを良好な画質の下に表示する発光表示パネルを得易くなるので、訴求効果が高い宣伝用発光表示パネル、訴求効果が高い電飾用発光表示パネル、高品位の装飾用発光表示パネル等、種々の用途の発光表示パネルを提供し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の発光表示パネルの形態を、図面を適宜参照して詳述する。
【0020】
<第1形態>
図1は、本発明の発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。本発明の発光表示パネルは、前述のように、発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターン(文字、図形、記号、模様、静止画等)を表示するものであり、図1に示した発光表示パネル20では、8つの表示領域R 〜R と6つの非発光領域NR 〜NR との組合せによって、「ABC」という文字列と、「あいう」という文字列とが上下2段に分かれて表示される。
【0021】
なお、図1においては、発光領域R 〜R と非発光領域NR 〜NR とを区別し易くするために、各非発光領域NR 〜NR にスマッジングを付してある。また、同図中の参照符号5a、5bは、それぞれ、後述する補助電極を示している。
【0022】
図2は、本発明の発光表示パネルの基本的な断面構造の一例を示す概略図であり、図1に示した発光表示パネル20でのII−II線断面の概略図に相当する。同図に示すように、発光表示パネル20は、可撓性を有する透明基材1と、透明基材1上に形成された1つの透明電極3と、透明電極3上に形成された2つの補助電極5a、5b及び6つの電気絶縁層7a〜7f(ただし、図2においては3つの電気絶縁層7a、7c、7dのみが現れている。)と、各電気絶縁層7a〜7f上及び当該電気絶縁層7a〜7fによって覆われずに露出している透明電極3上に形成された1つの有機発光部9と、有機発光部9上に形成された1つの背面電極11とを有している。
【0023】
上記の透明基材1としては、透明樹脂フィルムや透明ガラスシートを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等からなるものが好ましい。透明樹脂フィルムの膜厚が50μm程度未満では、発光表示パネル20の製造過程で変形が生じ易くなる。透明樹脂フィルムの膜厚の上限値は、得ようとする発光表示パネルの用途や、当該発光表示パネルに求められる可撓性等に応じて、適宜選定可能である。
【0024】
上記の透明樹脂フィルムは、耐溶媒性、耐熱性、耐光性、及びガスバリアー性(水蒸気及び酸素に対するバリアー性を意味する。以下同じ。)に優れているものほど好ましいが、透明樹脂フィルムのガスバリアー性は、後述するガスバリアー層(第2形態の欄参照)を別途設けることによって改善可能である。
【0025】
一方、透明基材1として透明ガラスシートを用いる場合、この透明ガラスシートは、厚さが100μm程度以下のもであることが好ましい。また、必要に応じて、透明ガラスシートを機械的に保護する保護プラスチック層を別途設けることができる。この保護プラスチック層としては、ガスバリアー層としても機能するものが好ましい。
【0026】
透明電極3は、有機EL素子の陽極として利用されるものであり、発光領域R 〜R 及び非発光領域NR 〜NR (図1参照)の両方に亘るようにして透明基材1上に形成されている。この透明電極3の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)等の無機透明導電性酸化物や、ポリアニリン等の有機導電性材料を用いることができ、中でもITO又はIZOが好ましく用いられる。透明電極3の膜厚は、0.005〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
【0027】
透明電極3の形成に伴って生じる透明基材1での残留応力をできるだけ小さくして当該透明基材1の変形を防止するという観点から、透明電極3は真空蒸着法、イオンプレーティング法、又は印刷法によって形成することが好ましい。印刷法によって透明電極3を形成する場合には、導電性インキ又は導電性ペーストをスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の方法によって所定形状に塗工して塗膜を形成した後、この塗膜を熱処理して透明電極3とする。
【0028】
補助電極5a、5bは、透明電極3と共同して導電性の高い電極を形成するものである。発光表示パネル20では、文字列「ABC」(図1参照)を正面視上取り囲む矩形枠状の補助電極5aと、文字列「あいう」(図1参照)を正面視上取り囲む矩形枠状の補助電極5bとが透明電極3上に形成されている。
【0029】
各補助電極5a、5bは、透明電極3の材料よりも導電性が高い合金材料又は金属材料、例えば銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等からなる。これら補助電極5a、5bの膜厚及び線幅は、当該補助電極5a、5bと透明電極3とを併せた体積抵抗率が1×10−6〜1×10−4Ω・cm程度の範囲内となるように、透明電極3の電気的特性、透明電極3の大きさ、及び当該補助電極5a、5bの材料に応じて適宜選定される。ただし、膜厚を選定するにあたっては、後述する電気絶縁層7aによって補助電極5a、5bそれぞれの全体が覆われることになるように、電気絶縁膜7aの膜厚も考慮される。
【0030】
このような補助電極5a、5bは、補助電極5a、5bの形成に伴う透明基材1での残留応力をできるだけ小さくして当該透明基材1の変形を防止するという観点から、所定形状の蒸着用マスクを用いた真空蒸着法、所定形状の蒸着用マスクを用いたイオンプレーティング法、又は印刷法によって形成することが好ましい。印刷法によって補助電極5a、5bを形成する場合には、導電性インキ又は導電性ペーストをスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の方法によって所定形状に塗工して塗膜を形成した後、これらの塗膜を熱処理して補助電極5a、5bとする。
【0031】
電気絶縁層7a〜7fは、有機発光部9が発光領域R 〜R (図1参照)においてのみ発光するように、透明電極3と背面電極11とを局所的に絶縁するものであり、各補助電極5a、5bを覆った状態で、透明電極3のうちの非発光領域NR 〜NR に対応する領域上に形成されている。電気絶縁層7aが非発光領域NR に対応し、電気絶縁層7b(図示せず。)が非発光領域NR に対応し、電気絶縁層7cが非発光領域NR に対応する。また、電気絶縁層7dが非発光領域NR に対応し、電気絶縁層7e(図示せず。)が非発光領域NR に対応し、電気絶縁層7f(図示せず。)が非発光領域NR に対応する。
【0032】
このような電気絶縁層7a〜7fは、例えば、光硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型樹脂組成物を含む。)や電子線硬化型樹脂組成物等を塗工して塗膜を形成し、この塗膜をフォトリソグラフィー法や電子線リソグラフィー法で所定形状にパターニングすることによって得られる。電気絶縁層7a〜7fの膜厚は、透明電極3と背面電極11とを局所的に絶縁し、かつ、補助電極5a、5bと背面電極11とを絶縁することができるように、電気絶縁層7a〜7fの材料や発光表示パネル20の駆動電圧等に応じて、0.5〜7.0μm程度の範囲内で適宜選定される。
【0033】
なお、製造過程で発光表示パネル20に変形が生じることを抑制するうえからは、透明基材1及び電気絶縁層7a〜7fそれぞれの熱膨張係数をできるだけ近似させることが好ましい。
【0034】
有機発光部9は、透明電極3及び背面電極11と共に有機EL素子を構成するものであり、少なくとも、透明電極3のうちの発光領域R 〜R (図1参照)に対応する領域上に形成されている。発光表示パネル20では、電気絶縁層7a〜7fの表面上及び当該電気絶縁層7a〜7fによって覆われずに露出している透明電極3上に、有機発光部9が形成されている。
【0035】
この有機発光部9は、例えば、(1)有機発光材料のみからなる単層構造、(2)正孔輸送材料からなる正孔輸送層と有機発光材料からなる有機発光材料層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、(3)有機発光材料からなる有機発光材料層と電子輸送材料からなる電子輸送層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、又は、(4)正孔輸送層と、有機発光材料層と、電子輸送層とがこの順番で透明電極3側から積層された3層構造とすることができる。
【0036】
また、(5)正孔輸送層と、電子輸送層の性質を兼ね備えた有機発光材料層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、(6)正孔輸送層の性質を兼ね備えた有機発光材料層と、電気輸送層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、又は、(7)有機発光材料層の性質と、正孔輸送層の性質及び電子輸送層の性質の少なくとも一方とを兼ね備えた有機混合物層のみからなる単層構造、とすることもできる。
【0037】
上記の有機発光材料層、正孔輸送層、電子輸送層、及び有機混合物層は、それぞれ、有機EL素子用の材料として知られる種々の有機発光材料、正孔輸送材料、又は電子輸送材料を用いて形成することができる。これらの層の形成は、例えば、真空蒸着法や湿式法等によって行うことができる。湿式法では、有機発光材料、正孔輸送材料、又は電子輸送材料を含有したコーティング組成物をインクジェット法、スピンコート法、印刷法、ディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法等の方法によって塗工して塗膜を形成し、この塗膜を真空熱処理等の方法で加熱して硬化ないし固化させることにより、有機発光材料層、正孔輸送層、電子輸送層、又は有機混合物層を形成する。
【0038】
発光表示パネル20によって複数色のカラー表示を行おうとする場合には、発光色が互いに異なる複数種の有機発光材料を用意し、発光色が互いに異なる複数の有機発光材料層又は有機発光部をそれぞれ所望箇所に形成する。このとき、異なる有機発光材料層又は有機発光部同士の間には、樹脂材料を用いて透明電極3上に予め隔壁を設けておくことが好ましい。隔壁は、例えば厚膜印刷、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の方法によって形成することができる。
【0039】
発光表示パネル20によってモノカラー表示及び複数色のカラー表示のいずれを行う場合でも、発光領域R 〜R での有機発光部9の膜厚は、透明電極3と背面電極11との短絡を防止しつつ輝度の高い有機EL素子を形成するという観点から、0.1〜2.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
【0040】
背面電極11は、有機発光部9上に形成されて有機EL素子の陰極として利用されるものである。有機EL素子の陰極として好適な背面電極を得るうえからは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属を成分として含有する合金、及びアルカリ土類金属を成分として含有する合金等のように仕事関数が小さい金属もしくは合金を用いて背面電極11を形成することが好ましい。このとき、背面電極11は単層構造とすることもできるが、アルカリ金属やその合金、及びアルカリ土類金属やその合金は化学的活性が高いので、図2に示すように、アルカリ金属もしくはその合金、又はアルカリ土類金属もしくはその合金からなる第1背面電極11aを、化学的活性が低い銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)等の導電性材料からなる第2背面電極11bで保護した積層構造とすることが好ましい。
【0041】
透明電極材料を用いて第2背面電極11bを形成した場合には、透明基材1側及び背面電極11側のいずれからも発光領域R 〜R での発光を視認することが可能になる。換言すれば、透明基材1側及び背面電極11側のいずれからも、発光表示パネル20によって表示される文字列「ABC」及び「あいう」、もしくはこれらの文字列の鏡像を視認することが可能になる。
【0042】
背面電極11を単層構造及び積層構造のいずれにする場合でも、当該背面電極11は、発光領域R 〜R に対応する領域にのみ形成することもできるし、発光領域R 〜R と非発光領域NR 〜NR の両方に亘って形成することもでき、その膜厚は、0.005〜1μm程度の範囲内で適宜選定可能である。背面電極11を積層構造とする場合、第1背面電極11a及び第2背面電極11bそれぞれの膜厚は、0.005〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。背面電極11は、例えば真空蒸着法によって形成することができる。
【0043】
以上説明した構造を有する発光表示パネル20では、透明電極3、有機発光部9、及び背面電極11によって有機EL素子が構成されており、かつ、透明基材1が可撓性を有しているので、有機EL素子を利用した可撓性の高い表示パネルを得ることが容易である。また、発光表示パネル20では、透明電極3上に補助電極5a、5bが形成されているので、当該補助電極5a、5bと透明電極3とを併せた電極全体の導電性を高めることができ、結果として、有機EL素子の発光時の発熱を抑えることができる。そして、表示しようとする文字「A」、「B」、「C」、「あ」、「い」、及び「う」の内側(発光領域R 〜R 内)には補助電極5a、5bが分布していないので、補助電極5a、5bでの外光の反射に起因する画質の低下を容易に抑制することができる。
【0044】
したがって、発光表示パネル20では、発光領域R 〜R と非発光領域NR 〜NR との組合せにより、上記の各文字を良好な画質の下に表示することが容易である。
【0045】
発光領域及び非発光領域の組合せを適宜変更して所望の文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンが表示されるように構成することにより、訴求効果が高い宣伝用発光表示パネルや、訴求効果が高い電飾用発光表示パネル、あるいは高品位の装飾用発光表示パネル等、種々の用途の発光表示パネルを得ることができる。
【0046】
<第2形態>
有機EL素子に使用される有機発光材料は酸素や水分によってその特性が劣化するので、有機EL素子には、通常、有機発光部への酸素や水分の侵入を防ぐための封止処理が施される。本発明の発光表示パネルにおいても、上記の封止処理を施すことが好ましい。
【0047】
図3は、封止処理が施された本発明の発光表示パネルの一例を概略的に示す断面図である。同図に示す発光表示パネル30は、図1及び図2に示した発光表示パネル20における透明基材1上にガスバリアー層22を設け、さらに、背面電極11上に封止層25を設けた構造を有している。ガスバリアー層22及び封止層25を共に除いた残りの構成は発光表示パネル20の構成と同じであるので、図3に示した構成部材のうちで図2に示した構成部材と共通するものについては、図2で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。ただし、透明基材1として透明樹脂フィルを用いる場合、可撓性の高い発光表示パネル30を容易に得るという観点からは、その膜厚を50〜200μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
【0048】
上記のガスバリアー層22は、酸素や水分が透明基材1を透過して有機発光部9に侵入するのを防止するための層である。このガスバリアー層22は、透明基材1の外表面上に設けることもできるが、図示のように、透明基材1の内表面上に設ける方が好ましい。
【0049】
ガスバリアー層22の材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、及び酸化カリウム等の無機酸化物や、窒化ケイ素等の無機窒化物、あるいは酸窒化ケイ素等の酸窒化物を用いることができる。ガスバリアー層22の膜厚は、有機発光部9への酸素や水分の侵入を防止し、かつ、発光表示パネル30の可撓性を良好にするという観点から、0.01〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。このようなガスバリアー層22は、例えば真空蒸着法により形成することができる。
【0050】
一方、上記の封止層25は、酸素や水分が背面電極11を透過して有機発光部9に侵入するのを防止するための層であると共に、酸素や水分が有機発光部9の側面から当該有機発光部9に侵入するのを防止するための層であり、背面電極11の露出面及び有機発光部9の露出面を覆っている。
【0051】
この封止層25は、例えば無溶剤型の樹脂組成物を硬化させてなる比較的厚肉の単層構造とすることもできるが、有機発光部9への酸素や水分の侵入を防止するという観点からは、図示のように、可撓性を有する基材25a上にガスバリアー層25bが設けられ、このガスバリアー層25b上に接合剤層25cが設けられた積層構造とした方が好ましい。
【0052】
上記の基材25aは、透明であっても透明でなくてもよいが、透明基材1と同程度ないしそれ以上の可撓性を有していることが好ましい。このような基材25aの材料としては、例えば、透明基材1の材料として例示した透明樹脂フィルムと同じものを用いることができる。また、その膜厚は50〜300μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
【0053】
基材25a上に設けられているガスバリアー層25bは、上述したガスバリアー層22と同様の材料によって当該ガスバリアー層22と同様にして形成することができる。そして、ガスバリアー層22上に設けられている接合剤層25cは、封止層25をガスバリアー層22の内縁部上、電気絶縁層7a及び有機発光部9それぞれの露出面上、並びに背面電極11の外表面上に接合するための層であり、例えばエポキシ樹脂系の熱硬化型樹脂組成物、アクリル樹脂系の紫外線硬化型樹脂組成物等によって形成される。
【0054】
接合剤層25cを無溶剤タイプの熱硬化型樹脂組成物によって形成する場合、この接合剤層25cは、ガスバリアー層25bの上面全体に形成することもできるし、所望箇所にのみ局所的に形成することもできる。また、接合剤層25cを上記の紫外線硬化型樹脂組成物によって形成する場合、この接合剤層25cは、背面電極11及び有機発光部9と接触しないように、ガスバリアー層25bの表面(上面)の内縁部に形成することが好ましい。接合剤層25cの厚さは、その材料の種類に拘わらず、1〜200μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
【0055】
なお、製造過程で発光表示パネル30に変形が生じるのを抑制するうえからは、透明基材1、電気絶縁層7a〜7f、及び基材25aそれぞれの熱膨張係数をできるだけ近似させることが好ましい。また、発光表示パネル30の総膜厚は、当該発光表示パネル30の用途や、求められる可撓性等に応じて、1mm以下程度の範囲内で適宜選択可能である。
【0056】
このような構造を有する発光表示パネル30では、有機発光部9への酸素や水分の侵入をガスバリアー層22及び封止層25によって防止することができるので、図1及び図2に示した発光表示パネル20よりも長寿命のものを容易に得ることができる。
【0057】
<変形例>
本発明の発光表示パネルを構成する補助電極の平面視上の形状は、図1に示した補助電極5a、5bのような矩形枠状に限定されるものではなく、表示しようとする文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンの形状や、当該パターンを構成するパーツの配置等に応じて、矩形枠状以外の種々の閉じた形状、直線状、曲線状、面状等とすることができる。
【0058】
図4は、直線状の補助電極を複数有する発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。同図に示す発光表示パネル40は、図1に示した発光表示パネル20と同様に、「ABC」という文字列と「あいう」という文字列とを上下2段に分けて表示する。発光表示パネル40における発光領域及び非発光領域の分布は、図1に示した発光表示パネル20での発光領域及び非発光領域の分布と同じであるので、これらの領域には図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してある。また、非発光領域にはスマッジングを付してある。
【0059】
図示の発光表示パネル40では、正面視上、文字列「ABC」の上下に分かれて2本の補助電極5a 、5a が配置され、これらの補助電極5a 、5a の間に、発光領域R 〜R と重ならないようにして8本の補助電極5a 〜5a10が配置されている。また、正面視上、文字列「あいう」の上下に分かれて2本の補助電極5b 、5b が配置され、これらの補助電極5b 、5b の間に、発光領域R 〜R と重ならないようにして8本の補助電極5b 〜5b10が配置されている。
【0060】
このようにして補助電極5a 〜5a10及び補助電極5b 〜5b10を設けることによっても、図1に示した発光表示パネル20と同様の技術的効果を奏する発光表示パネル40を得ることができる。なお、補助電極5a 〜5a10及び補助電極5b 〜5b10は、表示しようとする文字「A」、「B」、「C」、「D」、「あ」、「い」、「う」が小さいときには、省略することも可能である。同様に、文字列「ABC」と文字列「あいう」の間隔が狭いときには、補助電極5a 及び補助電極5b のいずれか一方又は両方を省略することも可能である。
【0061】
図1に示した発光表示パネル20や、図4に示した発光表示パネル40は、いずれも、表示しようとする文字が光るものであるが、本発明の発光表示パネルは、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンを表示するものであればよく、表示しようとする文字、図形、記号、模様、静止画等は光らずにその周囲が光るように構成することもできる。
【0062】
図5は、表示しようとする文字は光らずにその周囲が光る発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。同図に示す発光表示パネル50は、図1に示した発光表示パネル20と同様に、「ABC」という文字列と「あいう」という文字列とを上下2段に分けて表示する。
【0063】
この発光表示パネル50では、文字列「ABC」は3つの非発光領域NR11〜NR13によって構成され、文字列「あいう」は5つの非発光領域NR14〜NR18によって構成されている。各非発光領域NR11〜NR13の周囲には発光領域R10が形成されており、各非発光領域NR14〜NR18の周囲には発光領域R11が形成されている。そして、各発光領域R10、R11の周囲には、非発光領域NR10が形成されている。このような発光表示パネル50は、電気絶縁層の全体形状を非発光領域NR1018に対応した形状とする以外は、図1に示した発光表示パネル20又は図3に示した発光表示パネル30と同様にして作製することができる。
【0064】
なお、図5においては、発光領域R10、R11と非発光領域NR10〜NR18とを区別し易くするために、非発光領域NR10〜NR18にスマッジングを付してある。また、図5中の参照符号「5a」、「5b」は、それぞれ、補助電極を示している。
【0065】
以上、本発明の発光表示パネルについて説明したが、本発明の発光表示パネルは上述した構造の発光表示パネルに限定されるものではなく、これらの発光表示パネルに種々の変形、修飾、組合せ等を施すことが可能である。
【実施例】
【0066】
<実施例1>
まず、膜厚100μmのポリエーテルサルホンフィルムの片面に膜厚0.1μmのITO膜が形成された積層樹脂フィルムを用意した。この積層樹脂フィルムにおけるポリエーテルサルホンフィルムが本発明でいう「可撓性を有する透明基材」に相当し、ITO膜が「透明電極」に相当する。
【0067】
次に、所定形状の蒸着用マスクを用いた真空蒸着法により、上記の透明電極上に銀(Ag)を蒸着させて、図1に示した発光表示パネル20における補助電極5a、5bと同様の形状及び配置の補助電極(計2つ)を形成した。いずれの補助電極も、厚さは0.2μmであり、線幅は1mmである。
【0068】
次いで、補助電極が形成された透明電極上にフォトレジストをスピンコートして塗膜を形成し、この塗膜をプレベークした後に所定形状の露光マスクを用いて選択的に露光し、ポストベークを行ってから現像処理を施して、所定パターンの電気絶縁膜を形成した。透明電極上での当該電気絶縁膜の膜厚は2μmであり、この電気絶縁膜は各補助電極を覆っている。
【0069】
次に、正孔輸送層形成用のコーティング組成物としてバイエル社製のバイトロンP(商品名)を用意し、このコーティング組成物をスピンコート法によって上記の電気絶縁膜及び透明電極上に塗工して塗膜を形成した。そして、この塗膜を150℃の熱処理により硬化させて、膜厚0.08μm(ただし、透明電極上での膜厚を意味する。)の正孔輸送層を形成した。
【0070】
また、有機発光層形成用のコーティング組成物として、ポリビニルカルバゾール70重量部と、オキシジアゾール30重量部と、シアノメチレンフィラン誘導体1重量部と、モノクロロベンゼン4900重量部との混合物を用意し、このコーティング組成物をスピンコート法によって上記の正孔輸送層上に塗工して塗膜を形成した。そして、この塗膜を150℃の熱処理により硬化させて、膜厚0.07μmの有機発光層を形成した。これにより、正孔輸送層と有機発光層とからなる2層構造の有機発光部が得られた。
【0071】
この有機発光部上に金属カルシウム(Ca)を真空蒸着法により堆積させて膜厚0.008μmのカルシウム層を成膜し、引き続き、このカルシウム層上に銀(Ag)を真空蒸着法により堆積させて膜厚0.5μmの銀層を成膜して、カルシウム層からなる第1背面電極と銀層からなる第2背面電極とを有する2層構造の背面電極を形成した。
【0072】
この後、透明電極の露出面、電気絶縁層の外側側面、有機発光部の側面、及び背面電極の外表面を覆うようにして封止層を積層して、ガスバリアー層22(図3参照)がない以外は図3に示した発光表示パネル30と同様の構造を有する発光表示パネルを得た。この発光表示パネルは、「ABC」という文字列と、「あいう」という文字列とを各文字が光った状態で上下2段に分けて表示することできる。
【0073】
なお、上記の封止層は、膜厚300μmのポリエーテルサルホンフィルムからなる基材の片面全体に膜厚0.1μmの酸窒化ケイ素製ガスバリアー層が形成され、その表面の内縁部上にアクリル樹脂系の紫外線硬化型樹脂組成物からなる膜厚150μmの接合剤層が形成されたものであり、窒素ガス雰囲気中で接合剤層が内側となる向きで積層した後、接合剤層に所定波長の紫外線を照射して、当該接合剤層を硬化させると共にその下地に接着させたものである。
【0074】
<比較例1>
補助電極を形成しなかった以外は実施例1と同じ条件の下に、発光表示パネルを作製した。
【0075】
<評価>
実施例1及び比較例1でそれぞれ作製した発光表示パネルについて、透明電極を陰極とし、背面電極を陽極として5Vの直流電圧を印加したときの発光効率を比較したところ、実施例1で作製した発光表示パネルの発光効率は、比較例1で作製した発光表示パネルの発光効率よりも1.5倍から3倍程度高かった。
【0076】
また、実施例1で作製した発光表示パネルにより文字列「ABC」、及び文字列「あいう」を表示したときの画質を目視により評価したところ、外光の反射に起因する視認性の低下は実質的になく、その画質は良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。
【図2】本発明の発光表示パネルの基本的な断面構造の一例を示す概略図であり、図1に示したII−II線断面の概略図に相当する。
【図3】封止処理が施された本発明の発光表示パネルの一例を概略的に示す断面図である。
【図4】直線状の補助電極を複数有する本発明の発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。
【図5】表示しようとする文字は光らずにその周囲が光る本発明の発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1 可撓性を有する透明基材
3 透明電極
5a、5a 〜5a10、5b、5b 〜5b10 補助電極
7a〜7f 電気絶縁層
9 有機発光部
11 背面電極
11a 第1背面電極
11b 第2背面電極
20、30、40、50 発光表示パネル
22 ガスバリアー層
25 封止層
25a 可撓性を有する基材
25b ガスバリアー層
25c 接合材層
〜R 、R10、R11 発光領域
NR 〜NR 、NR10〜NR18 非発光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを表示する発光表示パネルであって、
可撓性を有する透明基材と、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘って前記透明基材上に形成された透明電極と、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に形成された少なくとも1つの補助電極と、前記透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に形成された電気絶縁層と、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に形成された有機発光部と、該有機発光部上に形成された背面電極とを有すると共に、前記補助電極が前記電気絶縁層によって覆われていることを特徴とする発光表示パネル。
【請求項2】
前記透明基材と前記透明電極との間にガスバリアー層が介在していることを特徴とする請求項1に記載の発光表示パネル。
【請求項3】
前記背面電極の露出面及び前記有機発光部の露出面を覆う封止層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−107996(P2006−107996A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295174(P2004−295174)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】