説明

発光表示装置

【課題】発光面が上方又は下方に傾斜した状態で発光表示が行われることに起因して、目視者に対し、発光画像が歪んで見えることを回避する。
【解決手段】角速度の絶対値|ω|がしきい値kよりも大きいとき筐体50が振られたと判断し(ステップS1)、筐体50の回動運動の法線方向の加速度、回動運動の接線方向の加速度に基づき算出した接線方向の速度値、及び角速度に基づいて、筐体50の上下を判断すると共に(ステップS3)、発光面3aが向いている方向への筐体50の傾斜度合を表すcosθを算出する(ステップS4)。筐体50の傾斜角度θが大きいときほど表示サイズが小さくなるように設定される表示サイズを、傾斜度合cosθに応じて特定し、この表示サイズで発光表示を行うための発光表示用データを選択しこれに基づいて発光表示を行う(ステップS6〜S8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光手段のそれぞれを所定のタイミングで発光させ、その残像効果を利用して発光画像を表示するようにした発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば棒状の筐体に、縦一列にLED等の発光手段を複数配置し、筐体の一端を持って旗振り動作させつつ、各発光手段を所定のタイミングで発光させることで、網膜の残像効果を利用して、文字や、図形、等を表示するようにした発光表示装置が知られている。
そして、例えば、角速度検出器により、旗振り動作の方向やその速度を検出しこれに応じて発光タイミングを調整することで、旗振り動作の方向によって文字や図形等表示すべき画像が左右反転表示されたり、旗振り動作の速度によって画像が縦長や横長に表示されたりすることを回避するようにしたもの(特許文献1参照)、また、加速度センサを用いて筐体の振り速度を検出しこれに応じて発光タイミングを調整するようにしたもの(特許文献2参照)等も提案されている。
【特許文献1】特開2001−242813号公報
【特許文献2】特開2004−264440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この発光表示装置により文字や図形等を表示する場合、利用者が、発光手段が配置された面を目視者に向け、且つ、この面を略垂直に維持した状態で旗振り動作を行った場合には、目視者は、全ての発光手段を均等に視認することができることから、表示された発光画像を適切に視認することができる。
しかしながら、目視者に対し、利用者が筐体を傾けて振っており、発光手段が配置された発光面が斜め下方を向いた状態で振った場合、或いは、発光面が斜め上方を向いた状態で振った場合等には、目視者は、全ての発光手段を均等に視認することができないため、発光画像の上下の何れか一方が密、他方が粗になって見えることになり、発光画像が歪んで見えてしまい、発光表示装置で表示している画像を、目視者が的確に視認することができない場合がある。
【0004】
また、利用者が筐体のグリップ部を握り、発光手段が配置された側を上にして振っている場合には、正常に発光画像が表示されている場合であっても、発光手段が配置された側を下にして振った場合には、表示すべき画像が、その上下が逆になって表示されてしまい、例えば、足元近傍で発光表示を行う場合等、筐体を下に向けた状態で発光表示を行う場合には、目視者に対して的確に発光画像を視認させることができないという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、旗振り動作を行う際の発光面の傾きに関わらず、文字や図形等の発光表示している画像を、的確に目視者に対して視認させることができ、また、筐体の上下を逆にした状態であっても所定の画像を、目視者に対して的確に視認させることのできる発光表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明の発光表示装置は、複数の発光手段が上下方向に配置された装置本体を備え、当該装置本体が左右に振られたとき、前記装置本体の移動に応じて前記発光手段を発光させ、その残像効果を利用して画像表示を行うようにした発光表示装置であって、前記装置本体の回動運動の接線方向の加速度を検出する接線方向加速度検出手段と、当該接線方向加速度検出手段で検出した加速度から前記回動運動の接線方向の速度を演算する速度演算手段と、前記回動運動の法線方向の加速度を検出する法線方向加速度検出手段と、前記装置本体の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の、前記発光面が向いている方向に対する傾斜度合を演算する傾斜度合演算手段と、当該傾斜度合演算手段で演算した傾斜度合に応じて発光表示すべき画像の表示形態を設定する表示形態設定手段と、前記発光表示すべき画像を、前記表示形態設定手段で設定された表示形態で発光表示するように前記発光手段を駆動制御する発光制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、装置本体の回動運動の接線方向の速度、前記回動運動の法線方向の角度及び回動運動の角速度に基づいて、この発光面が向いている方向への、装置本体の傾斜度合が演算され、装置本体が、発光面が向いている方向に対して前又は後にどの程度傾斜しているかが演算される。そして、この傾斜度合に応じて発光表示すべき画像の表示形態が設定されこれに応じて発光表示が行われる。発光面の向きによっては、目視者は発光画像が歪んで見えることから、この歪みを考慮して表示形態を設定することで、目視者には、歪みのない発光画像に見えることになり、発光表示すべき画像を、発光面の向きに関わらず、的確に目視者に対して視認させることができる。
【0008】
また、上記した発光表示装置において、前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光表示すべき画像の表示サイズを変更することを特徴としている。
上記構成によれば、傾斜度合によって、目視者が認識する発光画像の歪み度合が異なることから、傾斜度合に応じて生じる発光画像の歪み度合に応じて、表示サイズを設定し、歪みの影響を受けない表示サイズで、発光表示すべき画像の表示を行うことで、視聴者には、歪みのない発光画像が見えることになるから、視聴者にとって、歪みのない発光画像を表示することができる。
【0009】
また、上記した発光表示装置において、前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光表示すべき画像の配置を変更することを特徴としている。
上記構成によれば、傾斜度合に応じて、発光表示すべき画像の表示サイズと共にその配置が変更される。ここで、装置本体を一振りした場合に発光手段の移動軌跡によって規定される発光表示可能領域内で、発光画像が閉める度合が異なるから、表示サイズを変更すると共に、変更後の発光表示すべき画像の表示サイズに応じて、発光表示可能領域内で、この変更後の画像を表示する際の配置をも変更することで、装置本体の一振りの前半で発光表示すべき画像が表示されてしまい、後半は何も表示されない等といった偏った発光表示が行われることを回避し、目視者に対して違和感のない発光画像を視認させることができる。
【0010】
また、上記した発光表示装置において、前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光すべき画像の形状を変更することを特徴としている。
上記構成によれば、傾斜度合に応じて、発光すべき画像の形状が変更される。ここで、傾斜度合によっては、目視者から見た発光画像が歪んで見えることから、この歪みが生じる部分の形状を歪みが生じることを考慮して予め補正した状態で発光表示を行うことで、結果的に、歪みのない発光画像を目視者に対して認識させることができる。
【0011】
また、上記した発光表示装置において、前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光すべき画像の上方及び下方の少なくとも何れか一方の形状を変更することを特徴としている。
上記構成によれば、発光面の向きが変化した場合には、発光画像の上方向又は下方に歪みが生じることから、この歪みを考慮して、傾斜度合に応じてこれらの少なくとも何れか一方の形状を変更することで、目視者にとって、歪みのない発光画像を容易に表示することができる。
【0012】
また、上記した発光表示装置において、前記発光すべき画像を、前記表示形態設定手段で設定される表示形態で発光表示するための発光表示用データを複数備え、前記発光制御手段は、前記複数の発光表示用データのうち、前記表示形態設定手段で設定された表示形態に対応する発光表示用データに基づいて前記発光手段を駆動制御することを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、発光すべき画像を、表示形態設定手段で設定される表示形態で発光表示するための発光表示用データを予め複数備えており、表示形態設定手段で表示形態が設定されたときにはこの設定された表示形態に対応する発光表示用データを選択し、これに基づいて発光表示を行うから、発光すべき画像を、指定された表示形態で容易に発光表示することができる。
【0014】
また、上記した発光表示装置において、前記発光制御手段は、前記傾斜度合演算手段で演算される傾斜度合が、予め設定した目視者が発光画像を視認することの可能な視認可能傾斜範囲内に含まれるときにのみ、前記発光表示を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、目視者が発光画像を視認することの可能な傾斜度合を表す視認可能領域範囲内に含まれるときにのみ、発光表示を行い、発光表示を行っても発光装置の傾斜度合から目視者がその発光画像を視認することができないと予測されるときには、発光表示を行わないから、目視者が視認することのできない状態で不要な発光表示を行うことを回避することができる。
【0015】
また、上記した発光表示装置において、前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の予め設定した表示基準が上下何れを向いているかを判断する上下判断手段を備え、前記発光制御手段は、前記発光表示すべき画像を、前記上下判断手段での判断結果に応じた向きであり、且つ、前記表示形態設定手段で設定された表示形態で発光表示するように前記発光手段を駆動制御することを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、装置本体の回動運動の接線方向の速度、前記回動運動の法線方向の角度及び回動運動の角速度に基づいて、装置本体の予め設定した表示基準、すなわち発光表示を行う際の上下の向きを決定するための基準となる位置が上下何れを向いているかが判断され、装置本体の傾斜度合に応じた表示形態であるだけでなく、装置本体の表示基準の上下の向きにも応じて、発光表示される。ここで、装置本体の表示基準の上下の向きに関わらず同じ方法で発光表示を行った場合、装置本体の表示基準の上下向きによっては、目視者に対して、発光画像は上下逆に見えることになるが、装置本体の表示基準の上下の向きを考慮して発光表示を行うから、装置本体の表示基準の上下の向きに関わらず、目視者は、上下逆になることなく発光画像を視認することができる。
【0017】
また、複数の発光手段が上下方向に配置された装置本体を備え、当該装置本体が左右に振られたとき、前記装置本体の移動に応じて前記発光手段を発光させ、その残像効果を利用して画像表示を行うようにした発光表示装置であって、前記装置本体の回動運動の接線方向の加速度を検出する接線方向加速度検出手段と、当該接線方向加速度検出手段で検出した加速度から前記回動運動の接線方向の速度を演算する速度演算手段と、前記回動運動の法線方向の加速度を検出する法線方向加速度検出手段と、前記装置本体の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の予め設定した表示基準が上下何れを向いているかを判断する上下判断手段と、発光表示すべき画像を、前記上下判断手段での判断結果に応じた向きで発光表示するように、前記発光手段を駆動制御する発光制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、装置本体の回動運動の接線方向の速度、前記回動運動の法線方向の角度及び回動運動の角速度に基づいて、装置本体の予め設定した表示基準、すなわち発光表示を行う際の上下の向きを決定するための基準となる位置が上下何れを向いているかが判断され、この装置本体の表示基準の上下の向きに応じて、発光表示が行われる。ここで、装置本体の表示基準の上下の向きに関わらず同じ方法で発光表示を行った場合、装置本体の表示基準の上下の向きによっては、目視者に対して、発光画像は上下逆に見えることになるが、装置本体の表示基準の上下の向きを考慮して発光表示を行うから、装置本体の表意基準の上下の向きに関わらず、目視者は、上下逆になることなく発光画像を視認することができる。
【0019】
また、上記した発光表示装置において、前記接線方向加速度検出手段及び前記法線方向加速度検出手段は、前記装置本体の、前記装置本体の回動運動の支点側の端部とは反対側の端部に配置されることを特徴としている。
上記構成によれば、接線方向加速度検出手段及び法線方向加速度検出手段は、装置本体の、その回動運動の支点側の端部とは反対側の端部に配置されており、すなわち、回動運動による接線方向及び法線方向の加速度が最も大きくなる地点に配置されていることから、ノイズ等の影響の少ない高精度な加速度を得ることができる。
【0020】
また、上記した発光表示装置は、バーサライタに適用されることを特徴としている。
上記構成によれば、バーサライタの振り方によってバーサライタが目視者側や反対側に傾斜した場合であっても画像が歪んだりすることなく、目視者に対して的確にその画像を視認させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す構成図である。
図中1はハウジングであって、このハウジングは、略円柱の細長い棒形状を有する。このハウジング1の長さは、約20cmから60cm程度に形成され、長手方向の一端部には、手で握るためのグリップ部2が形成され、ハウジング1とグリップ部2とで発光表示装置の筐体50が構成され、この筐体50は、グリップ部2を手で握った状態で、ハウジング1側を上又は下に向けた状態で振って使用する。また、ハウジング1の長手方向の他端からグリップ部2までの発光部3には、その長手方向に沿って、複数の発光ダイオードLEDが一列に配列されている。
【0022】
なお、ここでは、発光ダイオードLEDを一列に配置しているが二列或いはそれ以上の列数で配置してもよい。
前記発光部3のグリップ部2と逆側の端部近傍には、ハウジング1の長手方向に対して垂直方向の加速度であり、筐体50が旗振り動作されるときのその回動運動の接線方向の加速度を検出するための加速度センサ11Xと、筐体50の長手方向すなわち回動運動の法線方向の加速度を検出するための加速度センサ11Yとが配設されている。また、グリップ部2には、発光ダイオードLEDが配列された発光面3aと垂直な方向を軸とする軸周りの角速度、つまり、筐体50が振られるときの回動中心を軸とする軸周りの角速度を検出するためのジャイロセンサ等の角速度センサ12が配設されている。
【0023】
なお、前記接線方向の加速度センサ11X及び法線方向の加速度センサ11Yは、耐ノイズの点等から、筐体50の接線方向及び法線方向の加速度が最も大きく現れる、筐体50の回動運動の支点から最も離れた位置、すなわち、筐体50のグリップ部3とは逆側の端部近傍に設けることが好ましい。また、前記法線方向の加速度センサ11Yは、遠心力が作用する方向の加速度を正値としている。なお、前記角速度センサ12の配置位置は、グリップ部2に限るものではなく、筐体50の回動運動の回動中心の軸周り方向の角速度を検出することができればどの位置に配置されていてもよい。
【0024】
図2は、筐体50内部に配設され、発光ダイオードLEDの発光を制御するための制御装置60の機能構成を示すブロック図である。
この制御装置60は、図2に示すように、加速度センサ11Xで検出された接線方向の加速度、加速度センサ11Yで検出された法線方向の加速度、及び角速度センサ12で検出された角速度に基づいて、所定の文字や図形等の画像を発光表示させるための発光制御信号を出力する、マイクロコンピュータ等を含んで構成される演算処理装置20と、この演算処理装置20からの発光制御信号に基づき所定のタイミングで所定の発光ダイオードLEDを駆動するための駆動信号を生成する駆動回路30と、を備えている。
【0025】
前記演算処理装置20は、加速度センサ11Xの検出信号を時間積分し速度を演算する速度演算処理部21と、法線方向の加速度センサ11Yの検出信号、角速度センサ12の検出信号、及び速度演算処理部21で演算した速度値に基づいて、利用者の旗振り動作の開始に伴う筐体50の回動運動の開始を検出すると共に、旗振り動作時の筐体50の傾斜度合を検出する姿勢検出処理部22と、発光表示させる文字や図形等の発光表示用データが格納されたメモリ23と、姿勢検出処理部22で検出した傾斜度合に基づいて発光表示する際の表示サイズを決定し、この表示サイズとメモリ23に格納された発光表示用データとに基づいて各発光ダイオードLEDを駆動するための発光制御信号を出力する信号処理部24とを備える。
【0026】
前記速度演算処理部21は、例えば、図3に示すように、接線方向の加速度センサ11Xの検出信号をローパスフィルタ処理するローパスフィルタ21aと、ローパスフィルタ21aの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器21bと、A/D変換器21bの出力を時間積分する積分処理部21cとを備え、この積分処理21cの出力が速度値として姿勢検出処理部21に出力される。
【0027】
また、前記駆動回路30は、各発光ダイオードLEDに対応した駆動回路を有し、信号処理部23からの発光制御信号をD/A変換して各発光ダイオードLEDを発光させるための駆動信号を生成しこれを対応する発光ダイオードLEDに出力する。
なお、グリップ部2には図示しない電源スイッチが設けられ、この電源スイッチをオン状態とすることで、グリップ部2に格納された、図示しない電池から各部への電力供給が開始され、動作可能となるように構成されている。
【0028】
図4は演算処理装置20で実行される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
演算処理装置20ではまず、角速度センサ12の検出信号を読み込み、角速度の絶対値|ω|が、予め設定したしきい値kよりも大きいかどうかを判断する(ステップS1)。ここで、角速度センサ12の出力信号はアナログ値で得られるため、図5に示すように、筐体50が振られているかどうかを判断するための不感帯を設け、この不感帯相当のしきい値kを超えたとき、筐体50が振られたと判断する。
【0029】
そして、筐体50が振られていない場合にはそのまま処理を終了するが、筐体50が振られている場合にはステップS2に移行し、速度演算処理回路15から速度値を読み込む。つまり、角速度センサ12で検出される角速度の絶対値|ω|がしきい値kを超えた時点での加速度センサ11Xの検出信号を時間積分した速度値を読み込む。
次いで、ステップS3に移行し、筐体50が上下何れを向いているか、すなわち、グリップ部2を基準として発光部3が上を向いているか下を向いているかを判断する。
【0030】
この判断は具体的には、図6に示すように、予め設定される、筐体50が静止しているときの電圧信号からなる法線方向の加速度センサ11Yの出力信号Vref相当の静止時加速度Arefと、後述の加速度センサ11Yの不感帯相当のしきい値αと、角速度センサ12から得られる角速度ω及び速度演算処理回路15で検出した速度値vの積から算出される遠心力とをもとに、法線方向の加速度センサ11Yから得られる加速度値Ayが、次式(1)を満足するかどうかを判断する。そして、加速度センサ11Yから得た加速度値Ayが(1)式を満足するとき、筐体50は発光部3が下方向を向いていると判断し、(1)式を満足しないときには上方向を向いていると判断する。
【0031】
Ay<Aref−α−ω・v ……(1)
つまり、この(1)式では、法線方向の加速度のうち、重力加速度成分が正の値か負の値かを判断しており、重力加速度成分が負値のときに、発光部3は下方向を向いていると判断している。
なお、法線方向の加速度センサ11Yの出力信号はアナログ値で得られるため、ある程度の不感帯幅を設け、出力信号は不感帯幅相当のしきい値αを超えたとき加速度が生じていると判断している。
【0032】
次いで、ステップS4に移行し、筐体50の傾斜度合を算出する。ここでは、傾斜度合として、図7に示すように、垂直方向を基準とし、この垂直方向からの傾斜角度をθとしたときの、cosθで表す。
この傾斜度合cosθは次の手順で算出する。
角速度センサ12で検出される角速度の絶対値|ω|がしきい値kを超えたときの接線方向の速度をvとしたとき、法線方向の加速度センサ11Yで検出される筐体50の法線方向の加速度Ayは、次式(2)で表すことができる。
【0033】
Ay=g・cosθ−k・v ……(2)
なお、(2)式中のgは、重力加速度である。
したがって、前記(2)式から、cosθは、次式(3)から算出することができる。
cosθ=(Ay+k・v)/g ……(3)
次いで、ステップS5に移行し、ステップS4で算出した傾斜度合cosθの絶対値が予め設定したしきい値Sthよりも大きいかどうかを判断する。このしきい値Sthは、筐体50が比較的水平に近い傾きに保持されておりこの状態で発光表示を行ったとしても、目視者が発光画像を視認することができないとみなすことの可能な値に設定される。
【0034】
そして、傾斜度合cosθの絶対値がしきい値Sthよりも大きい場合には、筐体50は、その発光ダイオードLEDが配置された発光面3aを、目視者が視認可能であると判断してステップS6に移行する。一方、傾斜度合cosθがしきい値Sth以下である場合には、筐体50は略水平状態に保たれ、その発光面3aは上又は下を向いており利用者と対向した位置にいる目視者が発光面3aを的確に視認することはできず、発光画像を視認することは不可と判断し、そのまま処理を終了する。
【0035】
前記ステップS6では、傾斜度合cosθに応じた表示サイズを決定する。
この表示サイズは、図8に示すように、傾斜度合cosθの絶対値が、しきいSthより大きいときに設定され、傾斜度合cosθの絶対値が大きいときほど表示サイズは大きくなるように設定され、cosθ=1、すなわち、筐体50において発光画像を行うときの表示基準となる発光部3の先端側が上又は下を向いて垂直に保持されるとき100%となるように設定される。なお、傾斜度合cosθの絶対値がしきい値Sth以下の領域は、加速度センサ11Xの出力が不感帯領域の値であって傾斜度合cosθが正しく演算されていないか、又はこの領域で発光表示を行ったとしても目視者が、その発光画像を的確に視認することができない領域であることから、発光表示を行わない未表示ゾーンとして設定される。
【0036】
そして、メモリ23から、傾斜度合cosθに応じた表示サイズに対応する、発光表示用データを特定する。
ここで、メモリ23には、同一の画像を表示するための、表示サイズの異なる複数の発光表示用データが格納されている。
つまり、図9に示すように、例えば正方形を発光表示する場合、筐体50が垂直に保たれた状態で旗振り動作が行われたときには、この発光画像を目視した目視者は、図9(a)に示すように、発光画像は正方形であると視認することができる。しかしながら、筐体50が目視者側に前傾した状態で旗振り動作が行われたときには、図9(b)に示すように、目視者には、発光画像の上方の画像は密に見え、下方の画像は粗に見えることから、発光画像が歪んで見え、発光画像が正方形であるかどうか視認しにくく、正方形と認識できない可能性がある。
【0037】
逆に、筐体50が後に傾斜した状態で旗振り動作が行われるときは、目視者には、発光画像の上方の画像は粗に見え、下方の画像は密に見えることから、同様に発光画像が歪んで見え、この場合も、正方形には見えない可能性がある。このように、密の部分と粗の部分とが現れ発光画像が歪んで見えると、図形や模様、また、「あ」と「ぬ」等類似した形状の文字などの場合には、文字や、形状を誤って認識してしまう可能性がある。
【0038】
これを回避するためには、図9(c)に示すように、筐体50が傾斜していても表示画像に粗の部分と密の部分とが生じないか又はその影響の小さい領域内で、発光表示すべき画像全体が表示されるように縮小表示すれば、筐体50の傾斜状態に関わらず、目視者には、発光表示させている画像と同等の発光画像が見えることになる。
したがって、メモリ23には、この筐体50の傾斜度合に応じた発光表示用データであって、且つその傾斜度合で発光表示を行った場合でも、目視者がその発光画像を的確に視認することの可能なサイズで発光表示を行うための発光表示用データが、傾斜度合に応じて複数設定されて格納されている。
【0039】
具体的には、傾斜度合cosθが“1”程度であって、筐体50が略垂直に保持されている状態で表示可能な領域内で発光表示を行った際に、目視者に対して、発光画像が歪んで見えることなく、且つ、その大きさや、間隔等の点からも、適切な配置の発光画像として目視者が認識することの可能な、垂直時の発光表示用データ、また、傾斜角度θが比較的小さく、目視者に対して、発光画像の上方や下方が密又は粗になって見え発光画像が多少歪んで見える状態であるときに、例えばこの密又は粗に見えてしまう部分に相当する発光ダイオードを除く発光ダイオードを用いて、発光表示させる画像全体を表示しすなわち垂直時よりも縮小した画像を表示するための発光表示用データであって、傾斜状態であっても目視者に対して発光画像が歪んで見えることがなく、且つ、その大きさや、間隔等の点からも、適切な配置の発光画像として目視者が認識することの可能な、傾斜が小さいときの発光表示用データ、さらに、傾斜角度θが比較的大きく、発光画像が比較的大きく歪んでいるときに、傾斜が小さいときよりもさらに小さく縮小した画像を表示するための、傾斜が大きいときの発光表示用データ、等、表示サイズは異なるが、同一の画像を表示するための発光表示用データが複数設定されている。
【0040】
そして、さらに、これら発光表示用データのそれぞれについて、発光部3を上方に向けて発光表示を行った場合に適切な発光画像として目視者に視認させるための上方表示用の発光表示用データと、発光部3を下方向に向けて発光表示を行った際に適切な発光画像として目視者に視認させることの可能な下方表示用の発光表示用データとが設定されている。
【0041】
なお、表示サイズの異なる発光表示用データは、例えば、表示サイズを複数段階に設定し、段階毎に、これに応じた表示サイズの発光表示用データを設定し、傾斜度合cosθに応じて特定された表示サイズに対応する段階の発光表示用データを選択すればよい。また、傾斜度合cosθに応じた表示サイズで表示するための、発光表示用データを、例えば、特開2004−333542号公報に記載されたように、基準となる表示サイズの発光表示用データに基づき、これを補間して拡大表示するための発光表示用データを生成したり、また、隣接する発光データの平均値を取ること等により縮小表示するための発光表示用データを生成したりする等、公知の拡大及び縮小方法を用いて、回動運動の半径rに応じた表示サイズで表示するための発光表示用データをその都度生成し、これを用いて発光表示を行うようにしてもよい。
【0042】
この発光表示用データは、例えば図10に示すように、発光画像として数字の“1”を表示するものとし、発光ダイオードLEDの数を例えば8個とすると、図11に示すように、8行×12列の行列データで構成され、行列の各要素には、「0」又は「1」のデータが格納される。図1に示す各発光ダイオードLEDを、発光部3の先端の発光ダイオードから順にLED1、LED2、…、LED8としたとき、発光表示用データの一行目は発光ダイオードLED1の発光データを表す。また、二行目は発光ダイオードLED2の発光データを表し、以下同様に、各行が各発光ダイオードにそれぞれ対応し、最下行の8行目が発光ダイオードLED8に対応している。そして、この場合図10に示すように数字の“1”を発光表示することから、図11(a)に示すように、各発光ダイオードを、各列データを切り換えて発光表示させた時、数字の“1”を発光表示し得るように発光データが設定されている。
【0043】
なお、図10(b)に示すように、発光部3を下に向けて振る場合の発光表示用データも、同様であって、例えば図11(b)に示すように、設定される。
このようにして傾斜度合cosθに応じた表示サイズの発光表示用データを特定したならば、ステップS7に移行し、特定した発光表示用データに基づく発光表示処理を行う。例えば、一列分の列データ毎に、列データを所定のタイミングで駆動回路30に出力し、駆動回路30によって、列データで指定される発光ダイオードを駆動させて発光させ、例えば、発光データとして“1”が設定されていれば対応する発光ダイオードを発光させ、発光データとして“0”が設定されていれば対応する発光ダイオートを発光させない。したがって、図11の発光表示用データにおいて“1”が設定されている部分が発光することになって、結果的に数字の“1”が表示されることになる。
【0044】
なお、この発光表示処理は公知の手順で行えばよく、例えば、特開2004−333542号公報に記載されているように、振り始めからの経過時間を計測し、所定の経過時間毎に列データを順次読み出して表示するようにしてもよい。また、角速度センサ12で検出した角速度ωに基づき単位時間当たりの角速度を積算することで回転角度を算出し、この回転角度が予め設定した角度となる毎に列データを順次読み出して表示するようにしてもよい。このように回転角度に応じて列データを更新することで、旗振り動作時を行う際の振る速度に関わらず、適切に発光表示を行うことができる。
【0045】
また、角速度センサ12の検出信号の符号に基づいて筐体50を右から左、左から右の何れの方向に振っているかを判断し、これに応じて、発光表示データを列毎に読み出す際の列データの読み出し方向を変更することで、筐体50の旗振り動作の方向が換わることによって左右反転して発光表示されることなく、常に適切な発光画像を表示するようにしてもよい。
【0046】
また、筐体50の回動運動の接線方向への加速度を検出する加速度センサ11Xの検出信号に基づいて、例えば、特開2004−264440号公報に記載されているように、この加速度センサ11Xで検出した加速度を積分して接線方向への速度を算出し、この接線方向への速度に基づいて発光表示タイミングを決定するようにしてもよく、利用者が旗振り動作等、筐体50を移動させることでこれに伴って発光表示を行うようにした発光表示装置であれば、発光タイミングの決定方法や発光データの更新方法等はどのような方法であっても適用することができる。
【0047】
そして、一列分の列データについて発光表示処理を行ったならばステップS8に移行し、角速度センサ12からの角速度の絶対値|ω|がしきい値k以下となったかどうかを判断し、しきい値k以下とならない場合には、筐体50は振られていると判断し、ステップS7に戻って、次の一列分の列データに対する発光表示処理を行う。
そして、角速度の絶対値|ω|がしきい値k以下となったとき筐体50は停止した、すなわち旗振り動作が終了したと判断し、処理を終了する。
【0048】
次に、上記実施の形態の動作を説明する。
図示しない電源スイッチが投入されると、各部は動作可能状態となり、演算処理装置20では、図4に示す演算処理を開始する。
筐体50が振られていない場合、或いは、筐体50がその長手方向と直交する方向に振られておらず角速度センサ12の検出軸周り方向に振られていない場合には、角速度の絶対値|ω|がそのしきい値k以下となる。このため、演算処理装置20では、ステップS1で処理を終了し、発光表示は行わない。
【0049】
この状態から、利用者が筐体50の旗振り動作を開始し、筐体50が角速度センサ12の検出軸周り方向に振られると、角速度の絶対値|ω|がそのしきい値kを上回った時点で、ステップS1からステップS2に移行し、速度演算処理部21から速度値を読み込み、この速度値と、角速度センサ12から得られる角速度ωと、加速度センサ11Yの出力Ayが前記(1)式を満足するかどうかを判断する(ステップS3)。
【0050】
このとき、利用者が、図10(a)に示すように、グリップ2を持ち発光部3が上にくる状態で旗振り動作を行っている場合には、法線方向の加速度において、重力加速度成分が正値として現れるから、前記(1)式を満足しない。このため、発光部3を上にして振られている状態であると判断する。そして、このときの加速度センサ11Yから得られる加速度Ayと、角速度ωがしきい値kを超えたときの速度値v及びしきい値kの積から算出される、角速度ωがしきい値kを超えたときの遠心力と、重力加速度gとから前記(3)式にしたがって、傾斜度合cosθを算出する。
【0051】
このとき、例えば図7に示すように、筐体50が垂直よりも目視者側に前傾させた状態で旗振り動作されている場合には、その傾斜角度θに相当する傾斜度合cosθが算出されることになる。
このとき、傾斜角度θが比較的小さいものとすると、この状態で発光表示を行った場合、目視者は発光画像を視認することができるから、傾斜度合の絶対値|cosθ|は、そのしきい値Sthをこえるため、ステップS5からステップS6に移行し、図8の特性図から、この傾斜度合cosθに応じた表示サイズが特定される。この場合、傾斜角度θが比較的小さく、傾斜度合cosθは比較的大きいことから、表示サイズは比較的大きなサイズに特定され、この特定した表示サイズでの表示を行い、且つ発光部3を上にした状態での発光表示を可能とする発光表示用データが特定される。
【0052】
そして、この発光表示用データに基づいて、所定のタイミングで列データに応じて駆動回路30により発光ダイオードLEDが駆動され、列データに応じて指定された発光データが発光する(ステップS7)。
したがって、例えば、筐体50が振られると、図11(a)に示す、上方表示用の発光表示用データにおいてその左端の列データから順に読み出されてこれに応じて各発光ダイオードLEDが発光することから、例えば、図11(a)に示すように、“1”という数字が残像効果により発光表示されることになる。このとき、筐体50は比較的垂直状態に保持されているから、この発光表示された発光画像を視認した目視者は、“1”として視認することができ、また、発光画像が歪んで見えることもない。
【0053】
そして、利用者が、筐体50をさらに目視者側に前傾した状態で振っている場合には、法線方向の加速度の重力加速度成分が、さらに小さくなることから、傾斜度合cosθの絶対値はより小さな値となる。
このため、傾斜度合cosθが小さいときほど、図8で特定される表示サイズは小さくなり、比較的小さな表示サイズの画像を表示するための発光表示用データが選択される。
【0054】
したがって、このときの傾斜度合cosθに対応する発光表示用データを用いて発光表示を行った場合には、図12(b)に示すように、筐体50を垂直に保持した状態で筐体50を振る場合(図12(a))に比較して、その表示サイズは小さい。
ここで、前述のように、筐体50が前傾した状態で旗振り動作が行われた場合には、目視者には、発光画像の上方や下方が密や粗になって見えるため、発光画像が歪んで見える場合がある。しかしながら、上述のように、垂直状態で振られる場合の表示サイズよりもより小さな表示サイズで発光表示を行っており、図12(b)に示すように、発光画像の上方や下方が密や粗となって見える部分は発光させないようにしているから、多少表示画像は小さいものの、歪み等が生じることなく、発光表示させている画像と同等の発光画像を目視者に対して視認させることができる。
【0055】
また、このとき、発光表示用データは、前述のように、その表示サイズ、及び、表示間隔等、傾斜した状態で発光表示が行われた場合でも目視者が適切な表示画像として視認することの可能となるように設定しているから、表示サイズが変更された場合であっても、発光画像の表示が、旗振り動作の開始時点前半で終了してしまい、偏って表示されてしまったりすることはない。
【0056】
また、例えば、利用者が筐体50をさらに倒して水平に近い状態に維持し、目視者から見てその発光画像を視認することができない程度まで傾斜した状態で旗振り動作を行い、このときの傾斜度合cosθの絶対値がしきい値Sth以下となると、ステップS5からそのまま処理を終了し、発光表示は行わない。
したがって、目視者がその発光画像を目視することができない状態で発光表示を行うことを回避し、不要な発光表示を行うことを回避し、これによる、無駄な電力消費を回避することができる。
【0057】
さらに、この状態から、利用者が、図10(b)に示すように、筐体50の先端部3を下方に向けた状態で旗振り動作を行った場合には、法線方向の加速度の、重力加速度成分は、負値となり前記(1)式を満足することから、ステップS3の処理で発光部3は下向いていると判断される。そして、このときの傾斜度合θに応じた表示サイズが特定され、これに対応する発光表示用データが特定されるが、この場合、発光部3を下に向けた状態で旗振り動作を行っているから、下方表示用の発光表示用データが特定される。
【0058】
したがって、傾斜度合cosθに応じた下方表示用の発光表示用データを用いて発光表示処理を行うことによって、図10(b)に示すように、発光部3を下に向けた状態で、数字“1”が表示されることになり、発光部3の上下が変化した場合であっても、表示画像が上下反転して表示されることはなく、的確に表示を行うことができる。
また、発光部3を下に向けて旗振り動作を行う場合にも筐体50の前又は後への傾斜度合に応じて発光表示用データを変更しているから、筐体50の傾斜度合に関わらず、目視者に対し適切な発光画像を視認させることができる。
【0059】
また、このように発光部3を下に向けた状態であっても、目視者に対し、的確に発光画像を視認させることができるから、例えば、上方で旗振り動作を行う場合と下方で旗振り動作を行う場合とで異なる画像を表示させることも可能である。
また、筐体50の傾斜度合cosθの検出を、筐体50の旗振り動作の開始を検出する毎に行っているから、旗振り動作の一振り毎に傾斜度合が変化する場合であっても、これに応じて適切に発光表示を行うことができる。
【0060】
また、上述のように、角速度センサ12で検出される角速度に基づいて旗振り動作の開始を判断している。ここで、加速度センサを用いて旗振り動作の開始判断を行う場合、例えば、電車内にいる状態で、電車が発進した場合にも加速度センサでこれを検出するため、実際には旗振り動作が行われていない場合であっても旗振り動作が行われたと判断し誤動作する可能性がある。しかしながら、上述のように角速度センサ12を用いて旗振り動作の開始判断を行っているから、誤動作することを回避し、旗振り動作の開始を的確に判断することができる。
【0061】
また、上述のように、筐体50の回動運動の接線方向の加速度を検出するための接線方向加速度センサ11X及び法線方向の加速度を検出するための法線方向加速度センサ11Yを、回動運動の支点から最も遠い、発光部3の端部に設けているから、ノイズの影響のより少ない加速度検出値を得ることができこれに基づいて傾斜度合θを算出することで、より高精度な傾斜度合θを獲得することができる。
【0062】
なお、上記実施の形態においては、傾斜度合に応じてその表示サイズを変更することで、目視者が、的確に発光画像を視認することができるようにした場合について説明したが、これに限るものではない。
前述のように、筐体50が傾斜した状態で発光表示が行われた場合、目視者には、発光画像の上方或いは下方が密又は粗に見えることから、発光画像が歪んで見えることになる。
【0063】
そこで、図13(a)に示す、筐体50が略垂直な状態で発光表示が行われた場合の発光表示用データを、図13(b)に示すように、傾斜度合に応じて補正する。図14に示すように、目視者に対し、筐体50を後に傾斜させた状態で、上方で旗振り動作を行った場合、目視者は、発光画像の上方は画像が粗、下方は密になって見えることから、例えば数字の“8”を表示する場合には、図13(b)に示すように、粗になって見える上方部分の同時に発光させる発光ダイオード数を増加させ、逆に、密になって見える下方部分については同時に発光させる発光ダイオード数を減少させることで、目視者に対して、密になって見えていた部分及び粗になって見えていた部分が補正されて、結果的に、目視者は、発光表示している画像と同等の形状の発光画像を、視認することになる。
【0064】
したがって、目視者は、筐体50の傾斜度合に関わらず、発光表示している画像と同等形状の発光画像を視認することができる。
なお、ここでは、図14に示すように、筐体50を後に傾斜させた状態で、旗振り動作を行った場合に、発光表示する画像の形状自体を補正する場合について説明したが。前方に傾斜させた状態であっても同様である。したがって、例えば、発光表示用データとして、筐体50が前傾した場合の傾斜度合に応じた、発光表示する画像の形状自体を補正した複数の発光表示用データと、後に傾斜した場合の傾斜度合に応じた、発光表示する画像の形状自体を補正した複数の発光表示用データとを予め生成してこれをメモリ23に格納しておき、これら複数の発光表示用データの中から、前及び後の何れに傾斜しているか、またその傾斜度合に応じて、傾斜度合に応じて発光表示する画像の形状自体を補正した発光表示用データを選択すればよい。
【0065】
また、上述のように傾斜度合に応じて表示サイズを変更する方法と、傾斜度合に応じて発光表示する画像の形状自体を変更する方法とを組み合わせ、傾斜度合に応じて表示サイズ及び発光表示する画像の形状自体を共に変更するようにしてもよく、このようにすることによって、適度な発光画像の大きさを保ちつつ目視者に対して、的確に発光画像を視認させることができる。
【0066】
また、ここでは、図14に示すように、筐体50を後に傾斜させた状態で、上方で振る場合について説明したが前方に傾斜させた状態、また下方で振る場合も同様に、その傾斜度合に応じて画像形状を補正した発光表示用データを作成しこれをメモリ23に格納しておけばよい。
また、上記実施の形態においては、棒状の筐体50に適用した場合について説明したが、筐体の形状は棒状に限るものではなく、どのような形状であっても適用することができ、バーサライタ等、利用者が旗振り動作を行うことで発光表示を行うようにした発光表示装置であれば適用することができる。
【0067】
また、上記実施の形態においては、数字1文字を表示する場合について説明したが、複数の文字や数字を表示する場合や、複数の言葉を交替で表示するような場合であっても適用することができ、また、スキャナ等で発光表示させる画像を読み取り、この読み取った画像を発光表示するような発光表示装置であっても適用することができる。この場合には、読み取った画像に基づいて、この読み取った画像を、傾斜度合に応じた表示サイズで表示するための発光表示用データを生成し、これに基づいて発光表示処理を行えばよい。
【0068】
また、上記実施の形態においては、傾斜度合cosθの絶対値が予め設定したしきい値Sth以下である場合には、発光表示を行わないようにしているが、例えば、別途、スイッチ手段を設け、「傾斜度合cosθがしきい値Sth以下であるときには発光表示を行わないという処理」を、前記スイッチ手段により選択可能に構成し、傾斜度合cosθがしきい値以下、つまり、水平近傍で旗振り動作が行われているときにも、発光表示が可能となるように構成してしてもよい。このように構成することによって、例えば、筐体50の利用者よりも、上方或いは下方に位置する目視者に対して発光画像を目視させたい場合等、筐体50を略水平状態で旗振り動作させて発光表示することも可能である。この場合には、目視者は、上方或いは下方に位置すると予測されることから発光画像の歪みの補正を行う必要はない。したがって、発光画像の歪みを考慮した発光表示用データではなく、筐体50が略垂直に維持された状態で旗振り動作が行われたときの発光表示用データを用いて発光表示を行えばよい。
【0069】
ここで、上記実施の形態において、筐体50が装置本体に対応し、発光ダイオードLEDが発光手段に対応し、加速度センサ11Xが接線方向加速度検出手段に対応し、速度演算処理部21が速度演算手段に対応し、加速度センサ11Yが法線方向加速度検出手段に対応し、角速度センサ12が角速度検出手段に対応し、図4のステップS4の処理が傾斜度合演算手段に対応し、ステップS6の処理が表示形態設定手段に対応し、ステップS7の処理が発光制御手段に対応している。
【0070】
また、図4のステップS3の処理が上下判断手段に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態を示す外観図である。
【図2】本発明の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2の速度演算処理部の一例である。
【図4】図2の演算処理装置で実行される演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】角速度センサで検出される検出値のしきい値を説明するための説明図である。
【図6】法線方向の加速度センサで検出される検出値のしきい値を説明するための説明図である。
【図7】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図8】傾斜度合と表示サイズとの対応を示す特性図である。
【図9】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図10】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図11】発光表示用データの一例である。
【図12】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図13】発光表示用データの補正方法を説明するための説明図である。
【図14】発光表示用データの補正方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 ハウジング、2 グリップ部、3 発光部、11X 接線方向の加速度センサ、11Y 法線方向の加速度センサ、12 角速度センサ、20 演算処理装置、21 速度演算処理部、22 姿勢検出処理部、23 メモリ、24 信号処理部、30 駆動回路、50 筐体、60 制御装置、LED 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光手段が上下方向に配置された装置本体を備え、
当該装置本体が左右に振られたとき、前記装置本体の移動に応じて前記発光手段を発光させ、その残像効果を利用して画像表示を行うようにした発光表示装置であって、
前記装置本体の回動運動の接線方向の加速度を検出する接線方向加速度検出手段と、
当該接線方向加速度検出手段で検出した加速度から前記回動運動の接線方向の速度を演算する速度演算手段と、
前記回動運動の法線方向の加速度を検出する法線方向加速度検出手段と、
前記装置本体の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、
前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の、前記発光面が向いている方向に対する傾斜度合を演算する傾斜度合演算手段と、
当該傾斜度合演算手段で演算した傾斜度合に応じて発光表示すべき画像の表示形態を設定する表示形態設定手段と、
前記発光表示すべき画像を、前記表示形態設定手段で設定された表示形態で発光表示するように前記発光手段を駆動制御する発光制御手段と、を備えることを特徴とする発光表示装置。
【請求項2】
前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光表示すべき画像の表示サイズを変更することを特徴とする請求項1記載の発光表示装置。
【請求項3】
前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光表示すべき画像の配置を変更することを特徴とする請求項2記載の発光表示装置。
【請求項4】
前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光すべき画像の形状を変更することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発光表示装置。
【請求項5】
前記表示形態設定手段は、前記傾斜度合に応じて前記発光すべき画像の上方及び下方の少なくとも何れか一方の形状を変更することを特徴とする請求項4記載の発光表示装置。
【請求項6】
前記発光すべき画像を、前記表示形態設定手段で設定される表示形態で発光表示するための発光表示用データを複数備え、
前記発光制御手段は、前記複数の発光表示用データのうち、前記表示形態設定手段で設定された表示形態に対応する発光表示用データに基づいて前記発光手段を駆動制御することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発光表示装置。
【請求項7】
前記発光制御手段は、前記傾斜度合演算手段で演算される傾斜度合が、予め設定した目視者が発光画像を視認することの可能な視認可能傾斜範囲内に含まれるときにのみ、前記発光表示を行うことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発光表示装置。
【請求項8】
前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の予め設定した表示基準が上下何れを向いているかを判断する上下判断手段を備え、
前記発光制御手段は、前記発光表示すべき画像を、前記上下判断手段での判断結果に応じた向きであり、且つ、前記表示形態設定手段で設定された表示形態で発光表示するように前記発光手段を駆動制御することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の発光表示装置。
【請求項9】
複数の発光手段が上下方向に配置された装置本体を備え、
当該装置本体が左右に振られたとき、前記装置本体の移動に応じて前記発光手段を発光させ、その残像効果を利用して画像表示を行うようにした発光表示装置であって、
前記装置本体の回動運動の接線方向の加速度を検出する接線方向加速度検出手段と、
当該接線方向加速度検出手段で検出した加速度から前記回動運動の接線方向の速度を演算する速度演算手段と、
前記回動運動の法線方向の加速度を検出する法線方向加速度検出手段と、
前記装置本体の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、
前記速度演算手段、前記法線方向加速度検出手段及び前記角速度検出手段の検出結果に基づいて、前記装置本体の予め設定した表示基準が上下何れを向いているかを判断する上下判断手段と、
発光表示すべき画像を、前記上下判断手段での判断結果に応じた向きで発光表示するように、前記発光手段を駆動制御する発光制御手段と、を備えることを特徴とする発光表示装置。
【請求項10】
前記接線方向加速度検出手段及び前記法線方向加速度検出手段は、前記装置本体の、前記装置本体の回動運動の支点側の端部とは反対側の端部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の発光表示装置。
【請求項11】
バーサライタに適用されることを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項に記載の発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−163856(P2007−163856A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360314(P2005−360314)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】