説明

発光表示装置

【課題】 導光板に形成される数字や文字等からなる複数の表示部を可視光及び不可視光による照射を選択的に切り換えることで、各表示部を区別させて発光表示させることのできる発光表示装置を提供することである。
【解決手段】 光源部14と、この光源部14に隣接して配置される導光板11と、この導光板11に設けられる表示部15とを備えた発光表示装置10において、前記光源部14は可視光LED14a,紫外線LED14b,赤外線LED14cを有し、前記表示部は前記導光板11の所定の位置に設けられる可視光発光部25a,紫外光発光部15b,赤外光発光部15cとを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やナビゲーション等の操作部や表示パネルなどに搭載可能な発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフラット型の表示装置には、発光ダイオードなどの光源から発せられる光を側面に受けて面状に発光させる薄型の導光板と、この導光板の表面に設けられる各種の表示部とを備えて構成されている。このような表示装置は、特許文献1に開示されているように、携帯電話機等の薄型の電子機器におけるキースイッチ類を発光表示させる目的で使用されていることが多い。
【0003】
前記表示部は、数字や文字、模様等の表示物を各色のインクや蛍光塗料などによって導光板の表面に直接印刷するか、前記表示物からなるフィルム部材を導光板上に配置するなどして形成されている。前記導光板に入光させるための光源は、白色光が多く用いられるが、前記表示部を各色で発光表示させるために、赤色や青色等の発光ダイオードやこれらの発光ダイオードと各色のフィルタを組み合わせて構成されている。
【0004】
また、前記表示装置を携帯電話機などの操作パネルとして使用する場合は、前記表示部を操作機能に合わせて選択的に発光表示させる場合がある。例えば、特許文献2に開示されている電子機器のキーパッドにあっては、基板上に複数配列されたキースイッチを覆うように導光板が設けられ、この導光板の一側面に光源である発光素子が配置された構成になっている。このキーパッドには、前記各キースイッチに対応するキーボタンが前記導光板の表面に配置されている。この発明では、前記キーボタンをそれぞれ異なった発光色で発光させるため、前記各キーボタンの下に種々のフィルタを配置して構成されている。
【0005】
また、特許文献3には、複数の発光領域を有する導光シートが開示されている。この導光シートは、前記発光領域が特定の光成分の吸収を抑える補正材料を含む光反射材料によって構成され、発光色のバラツキを抑える効果を有したものとなっている。このため、光源の配置位置に関わらずに導光シート全面を均一な色で発光させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−165490号公報
【特許文献2】特開2008−098160号公報
【特許文献3】特開2008−177106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来例では、単一あるいは複数の可視光波長を有する発光ダイオードを光源として使用しているため、表示部も前記発光ダイオードによって励起された単一あるいは同一の色で発光することとなる。また、前記表示部が複数ある場合にそれぞれの表示部を発光色が異なる蛍光剤によって形成したとしても、光源の波長が同一であれば発光効果は同一となるため、多様な発光効果を得ることができない。
【0008】
特許文献3では導光シートに複数の発光領域が形成され、この発光領域が特定の光成分の吸収を抑える補正材料を含んだ光反射材料によって形成されたものとなっている。このため、導光シート全体における発光バラツキは低減されるものの、発光領域ごとに発光色を変えたり、特定の表示部を選択的に発光させたりするような構成とはなっていない。
【0009】
上記従来例は、いずれも発光色を変化させることで導光板や導光シートの所定箇所に設けられる複数の表示部を区別させるものであるが、これは単に発光色の違いによって認識させるものであって、選択した表示部だけを見えるようにして、必要でない表示部は見えなくするような表示効果は得られなかった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、導光板に形成される数字や文字等からなる複数の表示部を可視光及び不可視光による照射を選択的に切り換えることで、各表示部を区別させて発光表示させることのできる発光表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の発光表示装置は、光源部と、この光源部に隣接して配置される導光板と、この導光板に設けられる表示部とを備えた発光表示装置において、前記光源部は少なくとも一つの可視光光源及び少なくとも一つの不可視光光源を有し、前記表示部は前記導光板の所定の位置に設けられる可視光発光部と不可視光発光部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発光表示装置によれば、一つの導光板に複数の異なる表示をさせる場合に、可視光光源及びこの可視光光源によって発光する可視光発光部と、不可視光光源及びこの不可視光光源によって発光する不可視光発光部とを設け、前記可視光及び不可視光を適宜選択的に切り換えることで、選択する表示部だけを発光表示させ、選択しない表示部は発光させずに見えなくすることができる。これによって、各表示部を完全に区別して発光表示させることができる。
【0013】
また、不可視光光源として紫外線及び赤外線を用いることで異なった発光色効果を得ることができる。
【0014】
また、可視光発光部及び不可視光発光部を導光板上に平面的に配置形成したり、同一箇所に層状に積層形成したりすることが可能となる。特に積層構成にした場合は、1つの表示部で2以上の異なった表示を色の変化と合わせて発光表示させることができる。
【0015】
さらに、可視光光源と不可視光光源の点灯間隔や点灯時間を制御することによって、バリエーションに富んだ発光表示効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第1実施形態の発光表示装置の斜視図である。
【図2】上記発光表示装置をスイッチボードに組み合わせる場合の組立斜視図である。
【図3】上記発光表示装置を中心として構成された発光スイッチユニットの断面図である。
【図4】上記発光表示装置での可視光及び不可視光による発光作用を示す説明図である。
【図5】第2実施形態の発光表示装置の断面図である。
【図6】第2実施形態の発光表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図7】光学フィルタを配置した上記発光表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る発光表示装置の実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の発光表示装置10は、導光板11と、この導光板11に隣接して設けられる光源部14とを備えている。前記導光板11の表面には、数字や文字等からなる複数の表示部15が直接形成される。前記光源部14は、ピーク波長の異なる3種の側面発光型の発光ダイオードを備え、それぞれの出射面が前記導光板11の一端に向けて配置される。本実施形態では、可視光波長を有する可視光光源と、不可視光波長を有する2種類の不可視光光源とによって構成されている。前記可視光光源は、ピーク波長が450〜650nmの可視光発光ダイオード(可視光LED)14aであり、不可視光光源は、ピーク波長が350〜410nmの紫外線発光ダイオード(紫外線LED)14bと、ピーク波長が700〜2000nmの赤外線発光ダイオード(赤外線LED)14cである。
【0018】
前記導光板11は、アクリル樹脂やシリコーン樹脂などが使用され、表面が発光面13であり、側面の一つが前記光源部14から発せられる光を受ける受光面12となっている。この導光板11は、前記表示部の数や大きさ、配列によって発光面13の広さや厚みが設定される。
【0019】
本実施形態では、図2に示すように、発光表示装置10を携帯電話機等のスイッチボード31に組み合わせた場合の応用例について説明する。前記スイッチボード31は、電極パターンが形成された基板32と、この基板32上に配置される複数のキースイッチ33とによって形成される。前記基板32はガラスエポキシ等の樹脂基板あるいはシート状のフレキシブル基板が使用される。キースイッチ33は、前記基板32の電極パターン上に形成される固定接点33aと、この固定接点33a上に配置されるドーム状の可動接点33bとによって構成されている。
【0020】
前記導光板11の表示部15は、前記各キースイッチ33と対応した箇所に設けられる。この表示部15は、数字や記号等からなり、図2に示したように、その表示エリアは、符号15a,15b,15cの3つに分けることができ、例えば、十字キー、ファンクションキー、テンキーなどの表示エリアに割り当てることができる。前記可視光LED14aに面したエリアは可視光発光部15a、紫外線LED14bに面したエリアは紫外光発光部15b、赤外線LED14cに面したエリアは赤外光発光部15cとなっている。
【0021】
前記可視光発光部15aは、白色系の塗膜層あるいは可視光を照射することによって励起される例えば、YAG蛍光剤が含有された白色系の塗膜層である。前記不可視光発光部は、紫外線を照射することによって発光する紫外光発光部15bと、赤外線を照射することによって発光する赤外光発光部15cからなっている。前記紫外光発光部15bは、350〜410nmの波長によって励起される無機系あるいは有機系の紫外線励起蛍光剤、例えば、CaAiSiN3:Eu、(SrCa)AlSiN3:Eu、CaSc2O4:Ce、(BaSr)2SiO4:Eu等が含有された塗膜層であり、赤外光発光部15cは、700〜2000nmの波長によって励起される無機系あるいは有機系の赤外線励起蛍光剤、例えば、エルビウム(Er)、塩素(Cl)、イットリウム(Y)、鉛(Pb)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ナトリウム(Na)、銀(Ag)等が含有された塗膜層である。
【0022】
前記可視光発光部15a,紫外光発光部15b,赤外光発光部15cは、発光面13上に直接印刷するか、表示形態に沿って発光面13上を凹設した部分に所定の蛍光剤が含有された塗料を充填するなどして形成される。本実施形態では、携帯電話機を例にして説明したが、携帯電話機であっても機種が異なる場合や携帯電話機以外の他の電子機器に応用する場合には、それぞれの用途に合わせて前記表示部15の文字種や配置構成などが適宜設定される。
【0023】
前記可視光LED14a,紫外線LED14b,赤外線LED14cは、前記基板32の一側面の端部に発光面がそれぞれの表示部15に向かうように配置される。これら可視光LED14a,紫外線LED14b,赤外線LED14cは、それぞれ独立して点灯及び消灯が可能であり、図示しない操作部や制御手段によって、任意の組み合わせで発光させたり、所定のインターバルによって点灯及び消灯を繰り返したりするように制御することもできる。
【0024】
また、図3に示すように、前記導光板11を面状のバックライトとして使用し、前記可視光発光部15a,紫外光発光部15b,赤外光発光部15cが形成された表示パネル34を前記導光板11の上に配置して構成することもできる。前記表示パネル34の裏面には、前記キースイッチ33と対応する部分に合わせた突起35が設けられ、この突起35を介して導光板11に載置することで、面状に発光する導光板11からの光を漏れなく前記可視光発光部15a,紫外光発光部15b,赤外光発光部15cに照射させることができる。
【0025】
図4は可視光、紫外光、赤外光のそれぞれに対応した発光作用と発光波長を示したものである。図4(a)は、可視光LED14aの発光正面と対向する位置に可視光発光部15aを設けたものであり、可視光LED14aを点灯することによって、可視光発光部15aを特に際出させて発光させることができる。このときの発光色は、可視光LED14aが有する波長に応じた発光色となる。一方、紫外光発光部15bと赤外光発光部15cは発光せず、その表示形態は視認できないようになっている。
【0026】
図4(b)は、紫外線LED14bの発光正面と対向する位置に紫外光発光部15bを設けることによって、この紫外光発光部15bのみが発光し、その表示形態を視認可能としたものである。一方、赤外光発光部15cは発光せず、その表示形態は視認することができない。なお、可視光発光部15aは、明るく発光はしないが、その表示形態は視認可能な状態となっている。
【0027】
図4(c)は、赤外線LED14cの発光正面と対向する位置に赤外光発光部15cを設けることによって、この赤外光発光部15cのみが発光し、その表示形態を視認可能としたものである。一方、紫外光発光部15bは発光せず、その表示形態は視認することができない。なお、可視光発光部15aは、明るく発光はしないが、その表示形態は視認可能な状態となっている。
【0028】
前記可視光LED14a、紫外線LED14b、赤外線LED14cの点灯制御については、いずれか一方を選択して行なったり、一定の周期ごとに相互の点灯及び消灯を繰り返して行なったりすることができる。また、それぞれのLEDに流す電流値を可変させることによって、発光輝度を調整したり、混色した中間色を発生したりすることが可能となる。
【0029】
図5は、第2実施形態における発光表示装置を示したものである。この発光表示装置20は、導光板21の同一箇所に可視光発光部25a、紫外光発光部25b、赤外光発光部25cの積層構造による積層表示部25を形成したものである。この構造の導光板21は、例えば、図6に示すように、前記可視光発光部25a、紫外光発光部25b、赤外光発光部25cが形成された3枚の導光薄板21a,21b,21cを積層させることで形成することができる。光源部14は、第1実施形態と同様に、導光板21の一側面に可視光LED14a、紫外線LED14b、赤外線LED14cを配置して構成される。この可視光LED14a、紫外線LED14b、赤外線LED14cのうちからいずれか一つを選択して発光することで、この発光させたLEDに対応する前記積層表示部25内の可視光発光部25a、紫外光発光部25b、赤外光発光部25cのいずれかを励起させて発光表示させることができる。この実施形態は、例えば、携帯電話機やパソコンなどのように、一つのスイッチに対して、複数の機能が割り当てられた複合スイッチの発光表示部などに応用することができる。このようなスイッチを採用することによって、選択されていない表示部分を隠し、選択された表示部分のみを発光表示させることができるので、誤操作の防止と操作性の向上効果が得られる。
【0030】
また、上記第1及び第2実施形態において、前記導光板11,21の可視光発光部15a,紫外光発光部15b,赤外光発光部15c又は積層表示部25が形成されている裏面側にドットやプリズムのような反射効果あるいは拡散効果を得るようなパターン加工を施すことによって、各表示部を明るく且つ視認性よく発光表示させることができる。
【0031】
図7は、上記発光表示装置10において、所定の波長成分をカットする光学フィルタ30を組み合わせた場合の使用例を示したものである。図7(a)は、導光板11の発光面13上に前記光学フィルタ30を配置したもので、可視光発光部15a、紫外光発光部15b、赤外光発光部15cから発せられる光を制限することができる。また、図7(b)は、光源部14の発光面13と導光板11の受光面12との間に前記光学フィルタ30を配置したもので、光源部14から発せられる光を制限することができる。
【0032】
前記光学フィルタ30は、図7(c)に示すように、可視光成分又は不可視光成分のいずれかをカットあるいはパスさせるものや、可視光成分、紫外線成分、赤外線成分に分けて必要な波長成分のみをカットあるいはパスさせるものなどを適宜組み合わせて使用することができる。このような光学フィルタ30を併用することで、前記可視光LED14a、紫外線LED14b、赤外線LED14cの点灯制御だけでは対応できないような視認性あるいはバリエーションに富んだ発色効果を得ることが可能となる。
【0033】
以上、説明したように、本発明の発光表示装置によれば、数字や文字等からなる表示部を照明する光源部に可視光と不可視光の組み合わせからなる発光ダイオードを備えるとともに、前記表示部が可視光と不可視光とに対応して発光するように構成されているため、状態に応じて必要とされる表示と必要とされない表示とを完全に区別して発光表示させることができる。このため、携帯電話機やパソコンなどのように、機能単位に分けて操作状態や動作状態を表示させる場合や多機能スイッチの表示部などに最適である。
【符号の説明】
【0034】
10 発光表示装置
11 導光板
12 受光面
13 発光面
14 光源部
14a 可視光LED
14b 紫外線LED
14c 赤外線LED
15 表示部
15a 可視光発光部
15b 紫外光発光部
15c 赤外光発光部
20 発光表示装置
21 導光板
21a,21b,21c 導光薄板
25 積層表示部
25a 可視光発光部
25b 紫外光発光部
25c 赤外光発光部
30 光学フィルタ
31 スイッチボード
32 基板
33 キースイッチ
33a 固定接点
33b 可動接点
34 表示パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、この光源部に隣接して配置される導光板と、この導光板に設けられる表示部とを備えた発光表示装置において、
前記光源部は少なくとも一つの可視光光源及び少なくとも一つの不可視光光源を有し、前記表示部は前記導光板の所定の位置に設けられる可視光発光部と不可視光発光部とを備えていることを特徴とする発光表示装置。
【請求項2】
前記可視光光源は可視光発光ダイオードで構成され、前記不可視光光源は紫外線発光ダイオード及び赤外線発光ダイオードの少なくともいずれかによって構成される請求項1記載の発光表示装置。
【請求項3】
前記可視光発光部は前記可視光光源と略対向するように配置され、前記不可視光発光部は前記不可視光光源と略対向するように配置される請求項1記載の発光表示装置。
【請求項4】
前記不可視光発光部には、前記紫外線発光ダイオードの発光によって励起される紫外線励起蛍光剤又は赤外線発光ダイオードの発光によって励起される赤外線励起蛍光剤が含有される請求項1又は2記載の発光表示装置。
【請求項5】
前記可視光発光部と不可視光発光部とが導光板の表面又は内部に積層して形成されている請求項1記載の発光表示装置。
【請求項6】
前記導光板上又は該導光板と前記光源部との間に可視光光源又は不可視光光源の所定の波長成分をカットあるいはパスさせるための光学フィルタを備える請求項1記載の発光表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237247(P2010−237247A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81807(P2009−81807)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】