説明

発光装置、画像形成装置、および発光装置の駆動方法

【課題】発光素子の温度を一定にするとともに、発光頻度の異なる発光素子間の温度差を抑制することが容易にできる発光装置、画像形成装置、および発光装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】発光素子HSと加熱素子KSが形成された基板11と、発光素子駆動回路12aおよび加熱素子駆動回路12bが形成された駆動回路12とから構成されている。発光素子HSは、発光素子駆動信号が出力されているときは、発光素子HS自身の発熱で、また、発光素子駆動信号が出力されていないときは、加熱素子KSの発熱で、常に加熱される状態が継続することになる。従って、発光素子HSを連続して加熱することができるので、発光素子HSの温度はほぼ一定となり、発光頻度の異なる発光素子間における温度差を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、この発光装置を有する画像形成装置、および発光装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の1つとして、有機EL(Electro-Luminescence)素子がある。有機EL素子は、発光層である有機EL材を、上下の電極で挟持した構造になっており、これらの電極間に、所定の電圧を印加したり、所定の電流を印加したりすることによって自発光する発光素子である。そして、発光素子に印加する電圧や電流を制御することによって、発光輝度を制御できることから、1つ、あるいは複数の発光素子を用いて発光装置としたり、さらに発光装置を用いた画像形成装置としたりして利用することができる。例えば、有機EL素子を所定の配置状態に複数並べてアレイ光源を形成し、この形成したアレイ光源をプリンタ用の光学ヘッドとして用いて画像形成装置として利用することができる。
【0003】
ところで、有機EL素子では、発光時における有機EL素子の温度によって、印加する電圧と発光輝度との関係、あるいは印加する電流と発光輝度との関係が変化し、発光輝度が温度に依存するという特性が存在する。一方、有機EL素子が発光すると少なからず熱を生じ、この生じる熱によって、その有機EL素子自身やその周辺部分の温度が上昇する。このため、有機EL素子の発光頻度が異なると、その発光頻度に応じて有機EL素子の発熱量が異なることになるため、有機EL素子の温度が一定にならずに変化する。従って、発光頻度に応じて温度差が生じることになり、輝度が不均一になってしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するための技術として、特許文献1には、有機EL素子などのように発光輝度に温度依存性が存在する発光素子の温度を、その駆動状態に基づいて推定し、発光素子の温度をパラメータとした駆動電流と駆動電圧との関係を示す特性データに基づいて入力データを補正することにより、発光素子の輝度を補正する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−150601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、発光素子を発光駆動するための入力データを発光素子毎に補正することで、各発光素子に印加する電圧または電流を補正し、各発光素子の明るさを補正するとともに、輝度が不均一にならないように防止するものである。このため、発光素子毎に入力データを補正する必要があり、補正処理が複雑になって容易ではないという課題がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術は、発光素子の輝度を補正するべく発光素子の駆動電圧または駆動電流を補正するものであり、発光駆動の頻度が多い発光素子と、発光駆動の頻度が少ない発光素子との間に生ずる温度差を解消するものではない。このため、発光頻度の異なる発光素子間に生ずる温度差に起因して、輝度の不均一が充分に抑制できないという課題が存在する。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、発光素子の温度を一定にするとともに、発光頻度の異なる発光素子間の温度差を抑制することが容易にできる発光装置、画像形成装置、および発光装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の発光装置は、発光素子と、当該発光素子を加熱するための加熱素子とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、発光素子を加熱するための加熱素子を設けるので、加熱素子によって発光素子を加熱することができる。従って、発光素子の温度が低い場合でも、加熱素子によって発光素子を加熱することができるので、発光素子の温度を容易に制御することができる。また、発光素子の発光頻度が異なっていても、発光駆動とは別に発光素子を加熱することができるので、発光素子の温度の補正制御を容易に行うことが可能となる。
【0011】
ここで、前記発光素子は1つ、あるいは複数備えられ、1つの前記発光素子毎に加熱素子が備えられていることとしてもよい。
【0012】
こうすれば、1つの発光素子毎に加熱素子を用いて、発光素子を加熱することができる。従って、1つの発光素子において発光頻度が変化する場合でも、この1つの発光素子を加熱するための加熱素子によって加熱することができるので、1つの発光素子の温度を略一定に補正制御することができる。また、発光素子が複数の場合、各発光素子の発光頻度に応じて、その発光素子を加熱するための加熱素子を用いて加熱することができる。従って、発光頻度の異なる発光素子間の温度差を抑制するとともに、総ての発光素子における温度が略同じになるように加熱することができるので、総ての発光素子の温度が不均一にならないように容易に抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の発光装置は、前記発光素子を発光させるべく駆動する発光素子駆動部と、前記加熱素子を発熱させるべく駆動する加熱素子駆動部と、を有し、前記発光素子駆動部および前記加熱素子駆動部は、前記発光素子を駆動しているときは前記加熱素子を駆動せず、前記発光素子を駆動していないときは前記加熱素子を駆動することとしてもよい。
【0014】
こうすれば、発光素子が発光しているときは、発光に伴って生ずる熱によって発光素子自体が発光素子を加熱し、発光素子が発光していないときは、加熱素子の発熱によって発光素子を加熱する。つまり、発光素子の加熱が継続されることになる。従って、発光素子の発光頻度が異なっていても、発光素子が発光していないときに、加熱素子が発光素子を加熱するので、発光素子の温度を略一定に保てる確率が高くなる。
【0015】
ここで、前記発光素子駆動部および前記加熱素子駆動部は、前記発光素子の駆動と前記加熱素子の駆動とが連続するように駆動することとしてもよい。
【0016】
こうすれば、発光素子の加熱を連続して行うことになる。従って、発光素子が加熱されていないときに生ずる放熱による温度低下が抑制され、発光素子の温度を略一定に保つことができることから、発光素子の温度変化を抑制することが可能となる。この結果、発光頻度の異なる発光素子であっても、加熱素子によって連続して発光素子を加熱することができるので、発光素子の温度変化を容易に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の発光装置は、前記発光素子の駆動状態を検出する発光駆動状態検出部と、前記検出された駆動状態に基づいて前記発光素子の温度を推定する温度推定部と、を備え、前記加熱素子駆動部は、前記推定された温度に応じて、前記加熱素子の発熱量を制御するように駆動することとしてもよい。
【0018】
こうすれば、発光素子の温度をその駆動状態に基づいて推定する。そして推定した温度に応じて、発光素子を加熱する加熱素子の発熱量を制御する。このように、推定された発光素子の温度に応じて加熱素子の発熱量を制御することによって、発光素子の温度を制御することができるので、発光素子間の温度差を容易に抑制することが可能となる。
【0019】
ここで、前記発光素子駆動部は、前記発光素子に所定の電圧を印加して駆動し、前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電圧が印加されたとき、前記発光素子に流れる電流を前記駆動状態として検出し、前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された発光素子に流れる電流と前記所定の電圧とから前記発光素子の温度を推定することとしてもよい。
【0020】
こうすれば、発光素子に所定の電圧を印加したとき、発光素子に流れる電流の大きさを駆動状態として検出する。そして、検出された電流と所定の電圧とから発光素子の特性データに基づいてパラメータとなる温度を求める。この結果、求められた温度は、発光素子の温度であると推定することができる。
【0021】
また、前記発光素子駆動部は、前記発光素子に所定の電流を印加して駆動し、前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電流が印加されたとき、前記発光素子に発生する電圧を前記駆動状態として検出し、前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された発光素子に発生する電圧と前記所定の電流とから前記発光素子の温度を推定することとしてもよい。
【0022】
こうすれば、発光素子に所定の電流を印加したとき、発光素子に発生する電圧を駆動状態として検出する。そして、検出された電圧と所定の電流とから発光素子の特性データに基づいてパラメータとなる温度を求める。この結果、求められた温度は、発光素子の温度であると推定することができるのである。
【0023】
あるいは、前記発光素子駆動部は、前記発光素子を駆動するための駆動素子を介して、前記発光素子に所定の電圧を印加して駆動し、前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電圧が印加されたとき、前記駆動素子に流れる電流を前記駆動状態として検出し、前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された駆動素子に流れる電流と前記所定の電圧とから前記発光素子の温度を推定することとしてもよい。
【0024】
こうすれば、駆動素子を介して発光素子に所定の電圧を印加したとき、駆動素子に流れる電流の大きさを駆動状態として検出する。このとき駆動素子に流れる電流は、発光素子に流れる電流と同一であるので、検出されたこの駆動素子に流れる電流と所定の電圧とから発光素子の特性データに基づいてパラメータとなる温度を求める。この結果、求められた温度は、発光素子の温度であると推定することができるのである。
【0025】
ここで、前記加熱素子駆動部は、前記加熱素子に印加する電圧の大きさ、もしくは印加する電流の大きさを変更することによって、前記加熱素子の発熱量を制御するように駆動することとしてもよい。
【0026】
こうすれば、電圧もしくは電流の大きさを変更することで加熱素子の発熱量を制御するので、加熱素子を用いて発光素子の温度差の抑制を容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明の発光装置において前記発光素子は有機EL(Electro-Luminescence)素子であることとしてもよい。有機EL素子は素子が微細に形成できる自発光素子であることから、例えば小型の発光装置を形成するための発光素子として好適である。そして、本発明の主旨である加熱素子によって発光素子間の温度差を抑制することによって、発光輝度の不均一を抑制することができるため、発光装置として好適である。
【0028】
さらに、上述した本発明の発光装置を有し、当該発光装置の発光を制御することによって、感光体上に所定の画像を潜像として形成する手段を少なくとも備えた画像形成装置としてもよい。
【0029】
本発明の発光装置は、加熱素子によって輝度の不均一が抑制された発光装置とするものであることから、発光素子の発光を制御することによって形成された潜像は、輝度のムラが抑制された発光光で露光された画像であることから、濃度ムラのない高品質の画像となることが期待できる。従って、本発明の発光装置は、画像形成装置に好適である。
【0030】
あるいは、本発明を発光装置の駆動方法として捉えることもできる。すなわち、発光素子と、当該発光素子を加熱するための加熱素子とを備えた発光装置の駆動方法であって、前記発光素子を発光させるべく駆動する発光素子駆動工程と、前記加熱素子を発熱させるべく駆動する加熱素子駆動工程と、を有し、前記発光素子駆動工程および前記加熱素子駆動工程は、前記発光素子を駆動しているときは前記加熱素子を駆動せず、前記発光素子を駆動していないときは前記加熱素子を駆動することを要旨とする。
【0031】
本発明の駆動方法によれば、上述した本発明の発光装置と同様の作用効果を得ることができる。なお、この駆動方法は、上述した種々の態様を有する発光装置において実行すべく必要な工程を追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態について、実施例を用いて説明する。
【0033】
(発光装置の実施例)
図1は本発明の発光装置10の一実施例を示したもので、発光素子HSと加熱素子KSが形成された基板11と、発光素子駆動回路12aおよび加熱素子駆動回路12bが形成された駆動回路12とから構成されている。
【0034】
基板11には、網掛け部分で示した略円形状を有する発光素子HSが、合計8個、千鳥状に2次元配置状態で形成されている。そして、発光素子HSの近傍であって、ハッチング部分で示したように、所定の周囲範囲に渡って、所定の幅を有する薄膜状のパターンが、発光素子HSを加熱するための加熱素子KSとして形成されている。もとより、図1に示した発光装置10は、説明の簡略化のために発光素子HSの数を8個としたものであり、実際に形成される発光素子の数や配列は、実施例に限らず、1つであったり、数百個以上といった相当数存在するものであったりすることは勿論である。
【0035】
なお、本実施例では、基板11は光透過性を有するガラス板であり、図面奥の方向となるガラス板の下面側に発光素子や加熱素子が形成されるものとする。もとより、基板11は、ガラス板以外に、光透過性を有する材料(例えばセラミック材料やプラスチック材料)であっても差し支えない。また、基板11が光透過性を有しない不透明な材料を用いた場合は、発光素子HSや加熱素子KSを、基板11の上面側(図面表の方向)に形成することとしても勿論差し支えない。
【0036】
発光素子HSは、本実施例では有機EL素子であるものとする。従って、網掛け部分で示した略円形状の部分は発光層であって、その図面表側には、光透過性を有する略透明な図示しない上電極(例えば酸化スズ)が形成されている。一方、発光層の図面裏面側には金属材料等で形成された図示しない下電極が形成されている。また、発光素子HSを発光駆動する場合に、上電極と下電極との電極間に電圧を印加したり電流を印加したりするためのパターン11aとパターン11bとが、それぞれその一端が上電極と下電極とに結線された状態で形成されている。
【0037】
各発光素子HSに結線されているパターン11aとパターン11bの他端は、一方が駆動回路12に形成された各発光素子駆動回路12aに結線され、他方が、後述するパターン11dを介して接地(GND)されている。従って、各発光素子駆動回路12aから所定の電圧や電流を出力すると、出力された電圧や電流がそれぞれの発光素子HSに印加されて、各発光素子駆動回路12aに対応する発光素子HSが発光駆動され、電圧や電流が印加されている期間発光する。
【0038】
一方、加熱素子KSは、本実施例では発熱抵抗体として好適な材料(例えば、ニッケルクロムやタングステン)で形成された薄膜抵抗であるものとする。そして、ハッチング部分で示した発熱体となるパターン部分、つまり加熱素子KSに電圧や電流を印加するため、パターン11cとパターン11dとが、加熱素子KSの両端にそれぞれ結線されて形成されている。
【0039】
各加熱素子KSに結線されたパターン11cの他端は、駆動回路12に形成された各加熱素子駆動回路12bと結線されている。また、各加熱素子KSに結線されたパターン11dの他端は接地(GND)されている。従って、各加熱素子駆動回路12bから所定の電圧や電流を出力すると、出力された電圧や電流が、各加熱素子駆動回路12bに結線された加熱素子KSに印加され、加熱素子KSは、電圧や電流が印加されている期間発熱する。
【0040】
なお、パターン11dは、加熱素子KSとの結線部分において、パターン11bと結線されている。また、パターン11a,11b,11c,11dは、本実施例では電気的な導通性を有する材料(例えば酸化スズやアルミニウム)で形成されており、加熱素子KSに比べて発熱量は小さい材料であるものとする。
【0041】
本実施例では、このように形成された発光素子HSと加熱素子KSとを、所定の駆動方法によって発光駆動および発熱駆動し、各発光素子HSの動作温度を一定にするとともに、発光素子間の温度差を抑制しようとするものである。それでは、その駆動方法について図2を用いて説明する。
【0042】
図2は、発光装置10の回路構成の一例を示したものである。図示するように、発光素子駆動回路12aは、駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor)を有し、TFTのソースSとドレインD間を導通させる閾値電圧以上の電圧であるハイレベル信号がゲートGに加わると、TFTのソースSとドレインDが導通して、発光用電圧Veを発光素子HSに印加して発光駆動を行うように回路構成されている。従って、本実施例では、ハイレベル信号が、発光素子HSを発光させるための発光素子駆動信号として出力されるものとする。
【0043】
加熱素子駆動回路12bは、同じく駆動素子としてのTFTと、このTFTのゲートG電極に結線されたインバータINVとを有している。そして、発光素子HSを駆動するためのハイレベル信号が、発光素子駆動回路12aのTFTのゲートGに出力されているときは、インバータINVによってハイレベル信号が反転されたローレベル信号が、加熱素子駆動回路12bのTFTのゲートGに出力される。ローレベル信号は、TFTのソースSとドレインD間を導通させる閾値電圧よりも低い電圧であるので、TFTのソースSとドレインD間は導通しない。従って、発光素子HSが発光駆動されているときは、加熱素子KSは加熱駆動されないので、発光素子HS自身の発熱によってのみ発光素子HSは加熱されることになる。
【0044】
逆に、発光素子HSが駆動されないときは、発光駆動信号はローレベル信号が出力されるので、加熱素子駆動回路12bのTFTのゲートGには、インバータINVによってローレベル信号が反転されたハイレベル信号が印加されることになる。従って、加熱素子駆動回路12bのTFTのソースSとドレインD間は導通し、加熱用電圧Vhが加熱素子KSに印加され、加熱素子KSは発熱する。この結果、発光素子HSが発光駆動されないときは、加熱素子KSが発熱駆動されて発光素子HSを加熱する。
【0045】
このように、発光素子HSは、発光素子駆動信号が出力されているとき、つまりハイレベル信号が出力されているときは、発光素子自身の発熱で、また、発光素子駆動信号が出力されていないとき、つまりローレベル信号が出力されているときは、加熱素子の発熱で、常に発光素子HSが加熱される状態が継続することになる。従って、発光素子HSを連続して加熱することができるので、発光素子の温度を略一定に保つことができるとともに、発光頻度の異なる発光素子間における温度差を抑制することができる。
【0046】
さらに、予め発光素子HSの発光時に発生する発熱量と、加熱素子KSの発熱量とを調べておき、発光素子HS自身の発熱量と、加熱素子KSの発熱量とが同じになるように、加熱用電圧Vhを設定しておいてもよい。こうすれば、発光素子HS毎に発光時間や発光頻度が異なっていても、各発光素子HSは常に同じ発熱量による加熱状態が続くことになるので、発光素子HSの温度変化を抑制し、温度が常に一定である状態を保つとともに、各発光素子HS間の温度差を抑制することができる。
【0047】
なお、本実施例において、駆動回路12を基板11に形成することとしてもよいし、別の基板に構成されていることとしてもよい。また、駆動素子としてTFTを用いることとしたが、バルクタイプのトランジスタを用いてもよい。また加熱素子KSも薄膜抵抗としたが特にこれに限るものではなく、厚膜抵抗やバルク抵抗であっても差し支えない。
【0048】
(画像形成装置の第1実施例)
次に、このような発光装置を有する画像形成装置の一実施例について、図3を用いて説明する。
【0049】
図3は、感光体ドラムに潜像を形成して画像を形成する画像形成装置100において、上述した発光装置10を光学ヘッドとして利用する場合を示した機能ブロック図である。なお、図3に示した画像形成装置100は、通常、トナーカートリッジや帯電器、転写ベルト、転写ローラー、紙送り機構など、画像形成装置として必要な構成を備えているが、これらの構成は既に画像形成装置としては周知であり、また本発明の本質ではないので、ここでは図示および説明は省略する。
【0050】
図3に示したように、発光装置10は、図1に示した発光素子HSが形成された基板11が光学ヘッドとして機能し、発光素子HSの配列方向が感光体ドラム20の円筒軸方向になるように設置されている。そして、必要に応じて図示しないレンズを介して、円筒軸を中心に回転する感光体ドラム20に帯電した電荷を発光素子HSの発光光によって露光して、感光体ドラム20上に潜像を形成する。その後、形成された潜像にトナーが付着され、付着されたトナーが印刷紙に転写および定着されて画像が形成されるのである。もとより、基板11に形成される発光素子HSの数は、形成する潜像の解像度や印刷用紙の幅に応じて決定される。ちなみに、解像度が600DPI(Dot Per Inch)であれば、発光素子HSの配列方向におけるピッチ間距離は約42.3μmであり、この間隔を保ちながら、感光体ドラム20の円筒軸方向、つまり印刷用紙の搬送方向と略直交する方向であって、印刷用紙の幅に応じて所定の数の発光素子HSが形成されるのである。また配列状態も千鳥状とせず、一本の直線状に配列されることとしてもよい。
【0051】
形成される画像の画像データは、画像形成装置100内の回路基板(不図示)に形成された駆動信号生成回路21によって発光素子駆動信号に変換され、画像データの階調値に応じた時間分それぞれの発光素子HSを発光駆動するためのハイレベル信号を駆動回路12に出力する。
【0052】
駆動回路12には、発光素子駆動信号に加えて、同じく画像形成装置100内の回路基板(不図示)に形成された定電圧生成回路16にて生成された発光用電圧Veと加熱用電圧Vhとが入力される。そして、入力されたハイレベル信号に基づいて、各発光素子HSに対して、発光用電圧Veを階調値に応じた時間分印加して発光素子HSを発光駆動し、回転する感光体ドラム20上に潜像を形成する一方、発光素子HSが発光しない時間分加熱素子KSに加熱用電圧Vhを印加して発熱駆動を行う。
【0053】
駆動回路12にて行われる発光駆動と発熱駆動の様子について、その一例を図4を用いて説明する。図4は、光学ヘッドを構成する発光素子HSのうち光学ヘッドの一方の端部の発光素子HSからn番目に存在する発光素子HSとその発光素子HSを加熱するためのn番目の加熱素子KS、およびn+1番目に存在する発光素子HSとその発光素子HSを加熱するためのn+1番目の加熱素子KSについての駆動例を示すタイミングチャートである。
【0054】
ここで、画像データは階調値が0〜255までの256階調の階調データで表されるものとする。そして、感光体ドラム20の回転方向に対してm画素目の画像データであって、光学ヘッドの方向に対してn番目の画素の画像データは階調値255(黒)であり、n+1番目の画素の画像データは、階調値64(灰色)であるものとする。
【0055】
このような画像データの場合、図示するように、n番目の発光素子HSには、発光用電圧Veが階調値「255」の時間分つまり1画素期間(t1)の時間分印加されて発光駆動され、このとき、n番目の発光素子HSを加熱するn番目の加熱素子KSには、加熱用電圧Vhは印加されない。従って発光素子HS自らの発熱のみが生ずる。
【0056】
また、n+1番目の発光素子HSには、発光用電圧Veが階調値「64」の時間分つまり1画素期間(t1)の255分の64となる時間分印加されて発光駆動され、このとき、n+1番目の発光素子HSを加熱するn+1番目の加熱素子KSには、階調値「64」の発光駆動時間分経過直後に加熱用電圧Vhの印加が開始され、1画素期間の終了時間まで印加が継続する。従って発光素子HS自らの発熱に継続して加熱素子KSが発熱するので、n+1番目の発光素子HSは加熱される状態が継続することになる。
【0057】
ここで、仮にn+1番目の加熱素子KSが継続して発熱しないとすると、n番目の発光素子HSの発熱量とn+1番目の発光素子HSの発熱量とは明らかに差が生じる。このため、隣接する発光素子間で温度差が生じてしまい、その結果、各発光素子HSの発光輝度に差が生じてしまうことになる。そこで、このように発熱が継続するように駆動することによって、生ずる温度差を抑制することができるので、各発光素子HSの発光輝度が均一となり、画像データの各階調値に基づいて露光した潜像は、画像データを正しく形成した画像となる可能性が高くなる。このように本実施例の発光装置を光学ヘッドとして用いた画像形成装置100は、高品質の画像を形成することが可能となる。
【0058】
(画像形成装置の第2実施例)
ところで、一般的に画像形成装置では、発光装置の設置位置などといった設置条件によって発光装置の放熱状態が異なり、発光素子毎に温度上昇の度合いが異なる場合や、発光素子自体の発熱量の差によって、発光素子毎に温度上昇が異なる場合が考えられる。このような場合、発光素子の温度を計測し、計測した温度に応じて発光素子の温度を制御するべく加熱素子の発熱量を制御することが好ましい。そこで、発光素子の温度を計測し、発光素子の温度を制御する発光装置を備えた画像形成装置の一実施例となる第2実施例を、図5を用いて説明する。
【0059】
図5は、図3と同様、感光体ドラム20に潜像を形成して画像を形成する画像形成装置200であって、発光素子HSの温度を制御する発光装置10aを光学ヘッドとして利用する場合を示した機能ブロック図である。なお、図5に示した画像形成装置200は、図3と同様に、転写ベルト、転写ローラーや紙送り機構など、画像形成装置として必要な構成が省略されている。
【0060】
図5に示したように、発光装置10aは、光学ヘッドとして機能する基板11、基板11に形成された発光素子HSおよび加熱素子KSを駆動する駆動回路12、発光素子HSの発光駆動状態を検出する発光駆動状態検出部13、検出された発光駆動状態から、発光素子HSの温度を推定する温度推定部14、推定された発光素子HSの温度に応じた加熱用電圧Vhと、発光用電圧Veとを生成する定電圧生成回路16aとから構成されている。これらの機能ブロックは、図示しない画像形成装置200内の回路基板に設けられた中央演算処理回路や記憶回路などによって構成されている。
【0061】
図5に示した各機能ブロックが行う具体的な処理について説明する。なお、図5において、図3と同じ機能を有する機能ブロックについては同じ符号を付した。従って、基板11、駆動回路12、および駆動信号生成回路21については説明を省略する。
【0062】
発光駆動状態検出部13は、駆動回路12において、各発光素子HSを発光駆動する駆動素子であるTFTのソースSとドレインD間に流れる電流値が、各発光素子を流れる電流値と略一致することから、このTFTに流れる電流を各発光素子の駆動状態として検出する。具体的には、図2において、各発光素子HSとドレインDとの結線部分における電圧とソースSの電圧(つまり発光用電圧Ve)との電位差を測定し、測定した電位差をTFTのソースSとドレインD間の抵抗値で除した値を各発光素子HSに流れる電流値として検出する。つまり、TFTを電流計として用いるのである。そして、検出した電流値を温度推定部14に出力する。もとより、TFTを電流計として用いず、後述する定電圧生成回路16aに電流計を設けて測定することとしてもよい。
【0063】
温度推定部14は、出力された電流値と、そのとき各発光素子HSに印加された発光用電圧Veとから、記憶回路に格納され、各発光素子HSの温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、各発光素子HSの温度を推定し、これを定電圧生成回路16aに出力する。なお、各発光素子HSの特性データは、発光素子HS毎に予め測定され、所定のテーブルとして記憶回路に格納されているものとする。もとより、各発光素子HSの特性データが同じデータであれば、代表となる特性データのみ格納しておいてもよい。
【0064】
格納されている特性データの一例を、図6に示した。この特性データは、温度をパラメータとして電圧と電流の関係を調べたもので、横軸を発光素子HSに印加する電圧Veとし、縦軸を発光素子HSに流れる電流Ieとしたとき、発光素子HSの温度を温度TH1から温度THnまでをパラメータとして示したものである。温度推定部14は、この特性データに基づいて、検出された電流値が値IeSであり、そのとき印加された発光用電圧Veが値VeSであったとすると、それぞれの値に対応する位置(図中白丸点)に応じた温度TH3をテーブルから読み取り、読み取った温度TH3を発光素子の温度として推定する。
【0065】
図5に戻り、定電圧生成回路16aは、推定された温度に応じて発光素子HS毎に加熱用電圧Vhの大きさを変更する。例えば、推定された温度が、隣接する発光素子HSの温度より低い発光素子HSに対して、加熱用電圧Vhを大きくして駆動回路12に出力する。こうすることで、加熱素子KSの発熱量を多くし、温度が低い発光素子HSの温度を上昇させることができる。あるいは、推定された温度が、隣接する発光素子HSの温度より高い場合は、加熱用電圧Vhを小さくして駆動回路12に出力する。こうすることで、加熱素子KSの発熱量を少なくし、温度が高い発光素子HSの温度を下降させることができる。
【0066】
発光素子HSの温度の測定と加熱用電圧Vhの変更は、1つの発光素子HSにつき所定量の画素データ分(例えば50画素分の画像データ分)を露光する都度、行うこととしてもよいし、1画素分を露光する毎に行うこととしてもよい。もとより、発光素子の温度が不均一になることによって潜像に露光ムラが発生するまでの画素数を調べておき、この画素数よりも少ない画素数が露光される毎に、発光素子HSの温度測定と加熱用電圧Vhの変更処理を行ってもよい。
【0067】
このように、本実施例の画像形成装置200によれば、発光素子HS毎に温度上昇の度合いが異なる場合であっても、各発光素子HSの温度を計測し、各発光素子HSの温度を制御するように各発光素子HSに対応する加熱素子KSの発熱量を制御することができる。従って、各発光素子HSの温度差を抑制することができる。この結果、各発光素子HSの発光輝度がおおよそ一定となり、画像データの階調値に基づいて露光した潜像は、濃度ムラが抑制された画像となる可能性が高くなる。このように本実施例の発光装置10aを光学ヘッドとして用いた画像形成装置200は、濃度ムラの少ない高品質の画像を形成することが可能となる。
【0068】
ここで、請求項との対応関係について説明する。図1および図3に示した発光装置10においては、駆動回路12が発光素子駆動部および加熱素子駆動部に相当する。また、図5に示した発光装置10aにおいては、定電圧生成回路16aと駆動回路12とが、発光素子駆動部および加熱素子駆動部に相当する。
【0069】
以上、発光頻度の異なる発光素子間の温度差を抑制することが容易にできる発光装置および画像形成装置を提供することを目的とした本発明について、これを具体化した実施例により、本発明の発光装置の駆動方法を含めて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0070】
(第1変形例)
有機ELなど発光輝度が温度によって変化する温度依存性を有する発光素子では、発光素子の輝度が最も明るくなる温度や、発光素子に印加する電力に対する発光輝度が、最も効率がよい温度といった動作推奨温度が存在する場合がある。従って、このような場合は、画像形成装置では、この動作推奨温度にて発光装置を動作させることが好ましい。
【0071】
しかしながら、例えば印刷を行っていない期間(印刷休止期間)や、印刷と印刷との間となる紙間期間が長い場合は、発光装置の温度が放熱等によって冷却され、発光素子の温度が低くなっている場合が発生する。このような場合、発光素子を発光駆動しても、発光輝度が低下するために感光体の露光量が少なくなってしまい、感光体ドラムに高品質な潜像を形成することができないことになる。
【0072】
そこで、変形例として、上記第2実施例の画像形成装置200において、加熱素子KSを用いて発光素子HSを加熱することによって、印刷開始時点から発光素子HSの温度を動作推奨温度にすることとしてもよい。これを図7のフローチャートを用いて説明する。なお、この処理は、発光装置10aに設けられた図示しない中央演算処理回路によって行われるものとする。
【0073】
この処理が開始されると、まずステップS1にて印刷休止期間または紙間期間であるか否かを判定処理する。つまり、感光体ドラム20に潜像を形成する期間か否かを判定するのである。ここでは、説明は省略するが、画像形成装置200における印刷制御命令に基づいて、印刷休止期間または紙間期間かを判定する。そして、印刷休止期間または紙間期間と判定されるまでステップS1の処理を繰返し(NO)、印刷休止期間または紙間期間と判定されると(YES)、次のステップS2に進む。
【0074】
ステップS2では、各発光素子HSに温度測定用電圧を印加する処理を行う。ここでは、定電圧生成回路16a(図5)にて、温度測定用として予め定められた一定の電圧値を生成し、駆動回路12に出力する。もとより、温度測定用電圧を発光用電圧Veとしても差し支えない。そして、発光素子駆動信号となるハイレベル信号を駆動回路12に所定の期間(例えば3画素分の期間)出力し、駆動回路12に形成された各発光素子駆動回路12aを介して各発光素子HSに温度測定用電圧を印加する。
【0075】
そして、ステップS3にて、各発光素子HSに流れる電流値を検出する処理を行い、次のステップS4にて、テーブルを参照して各発光素子HSの温度を推定処理する。ステップS3とステップS4の処理は、前述した図5にて説明した処理と同じであるので、具体的な説明は省略する。
【0076】
次に、ステップS5にて、各発光素子HSは動作推奨温度か否かを判定処理する。前述したように、発光素子HSの発光輝度は温度依存性が存在するため、画像形成装置200において、発光装置10aに用いられる発光素子HSには、好ましい動作温度つまり動作推奨温度が存在する。そこで、推定された発光素子HSの温度が、この動作推奨温度に対して所定の閾値以内であるか否かを判定するのである。
【0077】
そして、発光素子HSの推定温度が動作推奨温度でない場合(NO)、ステップS6にて、この動作推奨温度でない発光素子HSに対応する加熱素子KSに印加する加熱用電圧Vhを変更して、この加熱素子KSに印加する処理を行う。具体的には、発光素子HSの温度が動作推奨温度より低い場合は、加熱用電圧Vhを大きく変更する。そして、所定の期間(例えば10画素分の期間)、変更した加熱用電圧Vhを加熱素子KSに印加する。もとより、発光素子HSの温度が加熱によって動作推奨温度より高くなってしまった場合は、加熱用電圧Vhを小さく変更して加熱素子KSに印加する。
【0078】
そして、再びステップS2に戻り、ステップS5までの処理を繰り返す。つまり、各発光素子HSの温度が動作推奨温度になるまで、ステップS2からステップS6の処理を繰り返すのである。
【0079】
こうして加熱処理が行われ、各発光素子HSが動作推奨温度になると(ステップS5:YES)、ステップS7にて印刷を続行処理し、続くステップS8にて、印刷終了の判定処理を行う。そして、印刷すべき画像データが残っていれば(NO)、次の印刷休止期間または紙間期間の判定処理(ステップS1)以降の処理を繰り返す。一方、印刷すべき画像データが終了すれば(YES)、この処理を終了する。
【0080】
本変形例によれば、発光装置10aを加熱するための専用のヒータ等を設けることなく、発光素子HSの近傍に形成された加熱素子KSを用いて、効率よく発光素子HSを加熱することができる。なお、発光素子HSを発光させることによって発光素子HS自身を加熱してもよいが、発光素子HSに印加する電圧や電流の値に制限がある場合は、動作推奨温度に到達するまでに相当の時間を要することになる。そこで、本変形例のように加熱素子KSを用いれば、発光素子HSに比べて大きな電圧や大きな電流を印加することが可能であり、発光素子HSの温度を短時間に動作推奨温度に到達させることが可能となる。
【0081】
(第2変形例)
上記実施例および第1変形例では、発光素子の発光駆動および加熱素子の発熱駆動において、一定の電圧を印加するものとしたが、一定の電流を印加することとしてもよい。発光素子の輝度が発光素子に流れる電流値に依存する発光素子では、輝度の制御を、電圧よりも電流によって行うことが好ましい。
【0082】
具体的には、例えば図5において、定電圧生成回路16aを定電流生成回路とすればよい。そして、発光用電圧Veに替えて発光用電流を出力する。もとより、加熱用電圧Vhも加熱用電流としてもよいし、このまま加熱用電圧Vhを出力するものとしてもよい。
【0083】
また、図5において、このように発光用電流を出力する場合、発光駆動状態検出部13は、発光素子HSに発生する電圧、つまり上下の電極間に生ずる電圧を駆動状態として検出する。本変形例では、定電流生成回路が発光用電流を生成する際に発生させる電圧を取得し、取得した電圧が発光素子HSの駆動状態を示す電圧であることとして検出する。そして、温度推定部14は、検出された電圧と発光用電流とを用いて、前述したテーブルから発光素子HSの動作温度を推定するのである。
【0084】
ところで、本変形例において、発光素子HSに発生する電圧は、定電流生成回路が発光用電流を生成する際に発生させる電圧に対して、原理的に、駆動素子において発生する電圧分少ない電圧になる。そこで、予め駆動素子であるTFTのソースSとドレインD間の抵抗値を調べておき、調べた抵抗値に、印加された発光用電流を乗算した値を差し引いた値を、発光素子HSの駆動状態を示す電圧であることとして検出してもよい。こうすれば、発光素子に生ずる電圧をより正しく検出することができる。もとより、駆動素子の抵抗値が低い場合は、駆動素子で発生する電圧降下分は小さいことになるので、本変形例のように、定電流生成回路が発光用電流を生成する際に発生させる電圧を、発光素子HSの駆動状態を示す電圧であることとしても差し支えない。
【0085】
(その他の変形例)
また、上記実施例および変形例における発光装置10,10aでは、発光素子HSを加熱するための加熱素子KSを、図1に示したように、発光素子HSの近傍であって所定の周囲範囲に渡る薄膜状のパターンによって形成したが、これに限るものではないことは勿論である。例えば、加熱素子KSを、発光素子HSの下電極の更に図面裏面方向、つまり、下電極の下側に形成することとしてもよい。こうすれば、発光素子HSと重なる位置に加熱素子KSが形成されるので、発光素子HSを効率よく加熱することができるとともに、加熱素子KSによる発熱が、隣接する発光素子HSの温度に影響を与えることも抑制することができる。従って、発光素子HS毎に適切に動作温度を制御することが可能となる。
【0086】
また、上記実施例および変形例における発光装置10,10aでは、発光素子HSを加熱するための加熱素子KSを、図1に示したように、1つの発光素子HSに対して1つ形成したが、これに限るものではないことは勿論である。例えば、2つの発光素子HSが1つの画素分の階調値を露光する場合は、2つの発光素子HSに対して1つの加熱素子KSを設ければよい。また、隣接する発光素子HSに対して温度が不均一になり易い発光素子HSが特定される場合は、この特定される発光素子HSに対して加熱素子KSを形成すればよい。また、逆に1つの発光素子HSに対して1つの加熱素子KSでは加熱が困難な場合は、1つの発光素子HSに対して複数の加熱素子KSを形成することとしてもよい。
【0087】
また、上記実施例および変形例における発光装置10,10aでは、発光素子HSを加熱するための加熱素子KSに印加する電圧もしくは電流を、各加熱素子KS1つずつ独立して変更することとしたが、これに限るものではないことは勿論である。例えば、発光装置の両端部分が中央部分に比べて放熱が多い場合は、端部における所定の数の発光素子の動作温度が動作推奨温度から逸脱する場合が発生する。このような場合、この逸脱する発光素子に対応する加熱用電圧もしくは電流を一括して変更することとしてもよい。あるいは、逆に、隣接する発光素子間での熱伝播が行われ易く、発光装置全体が比較的均一状態になり易い発光装置である場合は、総ての加熱素子に同じ加熱用電圧もしくは加熱用電流を印加することとしてもよい。こうすれば、加熱素子の発熱駆動が容易になる。
【0088】
また、上記実施例および変形例における発光装置10,10aでは、図4に示したように、1画素期間において、発光素子HSの発光駆動の終了と同時に加熱素子KSを発熱駆動し、発光素子HSが発光駆動されない期間、発熱駆動を継続することとしたが、これに限るものではないことは勿論である。例えば、上記第2実施例の画像形成装置200において、発光素子HSが駆動されない期間よりも短い期間分、発熱駆動することとしてもよい。
【0089】
例えば、加熱素子KSを加熱するための加熱用電圧Vhが、定電圧生成回路16aの回路上の制約から、所定の電圧値刻みで生成される場合がある。このような場合、実際に印加される加熱用電圧Vhが本来印加すべき加熱用電圧の値よりも大きく、発光素子HSが発光されない期間分この加熱用電圧Vhを印加して加熱素子KSを発熱させると、発光素子HSの動作温度が変更すべき温度から逸脱してしまう場合がある。そこで、例えば、本来印加すべき加熱用電圧に対して実際に印加する加熱用電圧との自乗比率に応じて、加熱時間を短くする。こうすれば、加熱素子KSに印加する電力を、本来印加すべき電力と略同じにすることができ、発光素子HSの動作温度を、略変更すべき動作温度にすることができる。
【0090】
また、上記実施例および変形例における発光装置10,10aでは、発光素子HSは有機EL素子であるものとしたが、これに限るものではないことは勿論である。本発明の主旨から明らかなように、発光輝度が温度依存性を有する発光素子であれば、どのような発光素子であっても本発明を適用することができる。
【0091】
さらに、上記実施例における発光装置10では、発光素子駆動回路と加熱素子駆動回路とを含むものとして説明したが、基板11のみを発光装置としてもよい。例えば、発光素子の発熱量が小さく、発光素子の温度が加熱素子の発熱量に依存しているような場合は、発光素子の発光頻度に関係なく、加熱素子を発熱させる期間によって発光素子の温度を制御すればよいので、特に上記実施例および変形例にて示した発光素子駆動回路と加熱素子駆動回路を用いる必要はない。従って、本発明の発光装置は、発光素子と加熱素子とが形成されたものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示すブロック構成図。
【図2】本実施例の発光装置の回路構成の一例を示した模式図。
【図3】本実施例の発光装置を光学ヘッドとした画像形成装置の機能ブロック図。
【図4】光学ヘッドを構成する発光素子の加熱駆動例を示すタイミングチャート。
【図5】発光素子を温度制御する発光装置を備えた画像形成装置の機能ブロック図。
【図6】温度をパラメータとする電圧と電流の特性データの一例を示すテーブル。
【図7】印刷休止期間における発光素子の温度制御の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0093】
10…発光装置、10a…発光装置、11…基板、11a,11b,11c,11d…パターン、12…駆動回路、12a…発光素子駆動回路、12b…加熱素子駆動回路、13…発光駆動状態検出部、14…温度推定部、16,16a…定電圧生成回路、20…感光体ドラム、21…駆動信号生成回路、100,200…画像形成装置、HS…発光素子、KS…加熱素子、INV…インバータ、Ve…発光用電圧、Vh…加熱用電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
当該発光素子を加熱するための加熱素子とを備えた発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記発光素子は1つ、あるいは複数備えられ、1つの前記発光素子毎に前記加熱素子が備えられていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置であって、
前記発光素子を発光させるべく駆動する発光素子駆動部と、
前記加熱素子を発熱させるべく駆動する加熱素子駆動部と、
を有し、
前記発光素子駆動部および前記加熱素子駆動部は、前記発光素子を駆動しているときは前記加熱素子を駆動せず、前記発光素子を駆動していないときは前記加熱素子を駆動することを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置であって、
前記発光素子駆動部および前記加熱素子駆動部は、前記発光素子の駆動と前記加熱素子の駆動とが連続するように駆動することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の発光装置であって、
前記発光素子の駆動状態を検出する発光駆動状態検出部と、
前記検出された駆動状態に基づいて前記発光素子の温度を推定する温度推定部と、
を備え、
前記加熱素子駆動部は、前記推定された温度に応じて、前記加熱素子の発熱量を制御するように駆動することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記発光素子駆動部は、前記発光素子に所定の電圧を印加して駆動し、
前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電圧が印加されたとき、前記発光素子に流れる電流を前記駆動状態として検出し、
前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された発光素子に流れる電流と前記所定の電圧とから前記発光素子の温度を推定することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記発光素子駆動部は、前記発光素子に所定の電流を印加して駆動し、
前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電流が印加されたとき、前記発光素子に発生する電圧を前記駆動状態として検出し、
前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された発光素子に発生する電圧と前記所定の電流とから前記発光素子の温度を推定することを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記発光素子駆動部は、前記発光素子を駆動するための駆動素子を介して、前記発光素子に所定の電圧を印加して駆動し、
前記発光駆動状態検出部は、前記発光素子に前記所定の電圧が印加されたとき、前記駆動素子に流れる電流を前記駆動状態として検出し、
前記温度推定部は、前記発光素子の温度をパラメータとする電圧と電流との関係を示す特性データに基づいて、前記検出された駆動素子に流れる電流と前記所定の電圧とから前記発光素子の温度を推定することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記加熱素子駆動部は、前記加熱素子に印加する電圧の大きさ、もしくは印加する電流の大きさを変更することによって、前記加熱素子の発熱量を制御するように駆動することを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記発光素子は有機EL(Electro-Luminescence)素子であることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の発光装置を有し、
前記発光装置の発光を制御することによって、感光体上に所定の画像を潜像として形成する手段を少なくとも備えた画像形成装置。
【請求項12】
発光素子と、当該発光素子を加熱するための加熱素子とを備えた発光装置の駆動方法であって、
前記発光素子を発光させるべく駆動する発光素子駆動工程と、
前記加熱素子を発熱させるべく駆動する加熱素子駆動工程と、
を有し、
前記発光素子駆動工程および前記加熱素子駆動工程は、前記発光素子を駆動しているときは前記加熱素子を駆動せず、前記発光素子を駆動していないときは前記加熱素子を駆動することを特徴とする発光装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−177107(P2008−177107A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11093(P2007−11093)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】